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特開2023-93724情報処理装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093724
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】情報処理装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/487 20060101AFI20230627BHJP
   G01S 17/931 20200101ALN20230627BHJP
【FI】
G01S7/487
G01S17/931
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074450
(22)【出願日】2023-04-28
(62)【分割の表示】P 2020103653の分割
【原出願日】2016-02-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】林 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】阿部 義徳
(57)【要約】
【課題】測定範囲内に存在する物体に対する測距結果を好適に出力することが可能な情報処理装置を提供する。
【解決手段】ライダユニット100の信号処理部2は、コア部1が出力するセグメント信号Ssegに基づいて、レーザ光の照射方向を示すスキャン角度と、ターゲット距離Ltagと、におけるレーザ光の受光強度を示す極座標空間フレームFpを生成し、直交座標空間フレームFoに変換して表示制御部3に出力する。また、信号処理部2は、コア部1が出力するセグメント信号Ssegが閾値Apth以上の受光強度を示す照射方向については、当該セグメント信号Ssegに基づいて計測点情報Ipを生成して点群処理部5に出力する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射方向を変えながらパルスレーザとなるレーザ光を照射する照射部と、
対象物にて反射された前記レーザ光を受光する受光部と、
前記受光部が受光した前記照射方向ごとの受光信号から、受光信号の受光強度が所定値以上となるピークを検出する検出部と、
前記ピークの位置及び振幅が同一となるパルス信号を、第3情報として生成する生成部と、
前記照射方向と、照射位置に関する基準位置からの当該照射方向における距離と、における前記レーザ光の受光強度を示し、前記ピークに対応する前記対象物以外の対象物を検出するための第1情報を出力する出力部と、を備え、
前記出力部は、前記ピークが含まれる前記照射方向ごとの前記受光信号から前記第3情報の前記パルス信号を減算したパルス信号を、前記第1情報として生成する、
情報処理装置。
【請求項2】
前記出力部は、所定時間幅にわたり生成した複数の第1情報に基づいて、時間軸上で平均化された第1情報を出力する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記出力部は、前記受光信号が前記所定値以上の受光強度を示す照射方向については、前記受光信号に基づいて前記対象物までの距離を示す第2情報を生成して出力する、請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記出力部は、前記照射方向に対する前記ピークが複数存在する場合、前記ピークごとに前記第3情報を生成し、当該照射方向の前記受光信号から前記第3情報の各々の信号成分を減算させる請求項1~3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記出力部が出力する前記第1情報を、照射平面に対する直交座標系における受光強度を示す第4情報に変換する変換部をさらに有する請求項1~4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記第4情報は、水平面と平行な2次元空間の受光強度を示し、
前記第4情報に基づく画像を表示部に表示させる表示制御部をさらに備える請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
照射方向を変えながらパルスレーザとなるレーザ光を照射する照射部と、
対象物にて反射された前記レーザ光を受光する受光部と、を備える情報処理装置が実行する制御方法であって、
前記受光部が受光した前記照射方向ごとの受光信号から、受光信号の受光強度が所定値以上となるピークを検出する検出工程と、
前記ピークの位置及び振幅が同一となるパルス信号を、第3情報として生成する生成工程と、
前記照射方向と、照射位置に関する基準位置からの当該照射方向における距離と、における前記レーザ光の受光強度を示し、前記ピークに対応する前記対象物以外の対象物を検出するための第1情報を出力する出力工程と、を備え、
前記出力工程は、前記ピークが含まれる前記照射方向ごとの前記受光信号から前記第3情報の前記パルス信号を減算したパルス信号を、前記第1情報として生成する、
制御方法。
【請求項8】
照射方向を変えながらパルスレーザとなるレーザ光を照射する照射部と、
対象物にて反射された前記レーザ光を受光する受光部と、を備える情報処理装置のコンピュータが実行するプログラムであって、
前記受光部が受光した前記照射方向ごとの受光信号から、受光信号の受光強度が所定値以上となるピークを検出する検出部と、
前記ピークの位置及び振幅が同一となるパルス信号を、第3情報として生成する生成部と、
前記照射方向と、照射位置に関する基準位置からの当該照射方向における距離と、における前記レーザ光の受光強度を示し、前記ピークに対応する前記対象物以外の対象物を検出するための第1情報を出力する出力部
として前記コンピュータを機能させ、
前記出力部は、前記ピークが含まれる前記照射方向ごとの前記受光信号から前記第3情報の前記パルス信号を減算したパルス信号を、前記第1情報として生成する、
プログラム。
【請求項9】
請求項8に記載のプログラムを記憶した記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測距技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、周辺に存在する物体に対する距離を測定する技術が知られている。例えば、特許文献1には、レーザ光を間欠的に発光させつつ水平方向を走査し、その反射光を受信することで、物体表面の点群を検出するライダが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-106854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のライダでは、水平方向での照射方向ごとに受信パルスのピーク位置を検出し、ピーク位置までの遅延時間に基づき測距を行うのが一般的であるが、受信パルスのピークが雑音に比べて低い又は同程度の場合には、ピーク位置を適切に検出することができないため、遠方の物体等については、対応する点群を検出できないという問題がある。一方、ライダの出力を車両の周辺環境認識等に用いる場合には、リアルタイムでの対象物の検出が必要となる。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、測定範囲内に存在する物体に対する測距結果を好適に出力することが可能な情報処理装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項に記載の発明は、情報処理装置であって、
照射方向を変えながらパルスレーザとなるレーザ光を照射する照射部と、
対象物にて反射された前記レーザ光を受光する受光部と、
前記受光部が受光した前記照射方向ごとの受光信号から、受光信号の受光強度が所定値以上となるピークを検出する検出部と、
前記ピークの位置及び振幅が同一となるパルス信号を、第3情報として生成する生成部と、
前記照射方向と、照射位置に関する基準位置からの当該照射方向における距離と、における前記レーザ光の受光強度を示し、前記ピークに対応する前記対象物以外の対象物を検出するための第1情報を出力する出力部と、を備え、
前記出力部は、前記ピークが含まれる前記照射方向ごとの前記受光信号から前記第3情報の前記パルス信号を減算したパルス信号を、前記第1情報として生成することを特徴とする。
【0007】
また、請求項に記載の発明は、
照射方向を変えながらパルスレーザとなるレーザ光を照射する照射部と、
対象物にて反射された前記レーザ光を受光する受光部と、を備える情報処理装置が実行する制御方法であって、
前記受光部が受光した前記照射方向ごとの受光信号から、受光信号の受光強度が所定値以上となるピークを検出する検出工程と、
前記ピークの位置及び振幅が同一となるパルス信号を、第3情報として生成する生成工程と、
前記照射方向と、照射位置に関する基準位置からの当該照射方向における距離と、における前記レーザ光の受光強度を示し、前記ピークに対応する前記対象物以外の対象物を検出するための第1情報を出力する出力工程と、を備え、
前記出力工程は、前記ピークが含まれる前記照射方向ごとの前記受光信号から前記第3情報の前記パルス信号を減算したパルス信号を、前記第1情報として生成することを特徴とする。
【0008】
また、請求項に記載の発明は、
照射方向を変えながらパルスレーザとなるレーザ光を照射する照射部と、
対象物にて反射された前記レーザ光を受光する受光部と、を備える情報処理装置のコンピュータが実行するプログラムであって、
前記受光部が受光した前記照射方向ごとの受光信号から、受光信号の受光強度が所定値以上となるピークを検出する検出部と、
前記ピークの位置及び振幅が同一となるパルス信号を、第3情報として生成する生成部と、
前記照射方向と、照射位置に関する基準位置からの当該照射方向における距離と、における前記レーザ光の受光強度を示し、前記ピークに対応する前記対象物以外の対象物を検出するための第1情報を出力する出力部
として前記コンピュータを機能させ、
前記出力部は、前記ピークが含まれる前記照射方向ごとの前記受光信号から前記第3情報の前記パルス信号を減算したパルス信号を、前記第1情報として生成することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ライダユニットの概略構成である。
図2】コア部のブロック構成を示す。
図3】トリガ信号及びセグメント抽出信号の波形を示す。
図4】信号処理部のブロック構成を示す。
図5】(A)セグメント信号の波形を示す。(B)基準パルスの波形を示す。(C)レプリカパルスの波形を示す。
図6】レプリカパルスの減算処理の概要を示す。
図7】フレーム方向フィルタリング部の機能的な構成を示すブロック図である。
図8】ライダユニットの周辺を模式的に描いた俯瞰図である。
図9】(A)0番目のフレーム処理のタイミングで検出した計測点の点群を直交座標系でプロットした図である。(B)5番目のフレーム処理のタイミングで検出した計測点の点群を直交座標系でプロットした図である。
図10】(A)10番目のフレーム処理のタイミングで検出した計測点の点群を直交座標系でプロットした図である。(B)15番目のフレーム処理のタイミングで検出した計測点の点群を直交座標系でプロットした図である。
図11】レプリカパルスによる減算処理を行わない場合の直交座標空間フレームの表示例である。
図12】レプリカパルスによる減算処理を行った場合の直交座標空間フレームの表示例である。
図13】変形例における信号処理部のブロック構成図を示す。
図14】変形例におけるレプリカパルスの減算処理で得られる信号の波形を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の好適な実施形態によれば、情報処理装置は、照射方向を変えながらレーザ光を照射する照射部と、対象物にて反射された前記レーザ光を受光する受光部と、前記受光部が出力する受光信号に基づいて、(i)照射方向と、照射位置に関する基準位置からの当該照射方向における距離と、における前記レーザ光の受光強度を示す第1情報を生成して出力し、(ii)前記受光信号が所定値以上の受光強度を示す照射方向については、前記受光信号に基づいて前記対象物までの距離を示す第2情報を生成して出力する出力部と、を備える。
【0011】
上記情報処理装置は、照射部と、受光部と、出力部とを有する。照射部は、照射方向を変えながらレーザ光を照射する。受光部は、対象物にて反射されたレーザ光を受光する。「対象物」は、レーザ光が到達する範囲に存在する物体を指す。出力部は、受光部が出力する受光信号に基づいて、第1情報を生成して出力する。ここで、第1情報は、照射方向と、照射位置に関する基準位置からの当該照射方向における距離と、におけるレーザ光の受光強度を示す。ここで、出力部は、第1情報をディスプレイに出力して表示させてもよく、他の処理部へ第1情報を出力してもよい。さらに、出力部は、受光部が出力する受光信号が所定値以上の受光強度を示す照射方向については、受光信号に基づいて対象物までの距離を示す第2情報を生成して出力する。ここで、出力部は、第2情報をディスプレイに出力して表示させてもよく、他の処理部へ第2情報を出力してもよい。また、「第2情報」には、対象物までの距離の情報に加えて、受光強度を示す情報等が含まれていてもよい。例えば、第2情報が点群で出力された場合には、受光強度の情報は、距離補正して反射強度に変換され白線検出等に用いられる。
【0012】
この態様により、情報処理装置は、受光強度が所定値以上となる比較的近距離の対象物の情報については第2情報として出力しつつ、他の対象物の情報についても第1情報として出力することができる。
【0013】
上記情報処理装置の一態様では、前記出力部は、所定時間幅にわたり生成した複数の第1情報に基づいて、時間軸上で平均化された第1情報を出力する。この態様により、情報処理装置は、雑音による影響が好適に低減された第1情報を生成して出力することができる。
【0014】
上記情報処理装置の他の一態様では、前記出力部は、前記第2情報を生成した照射方向の前記受光信号から、第3情報を生成し、前記受光部が出力する受光信号から前記第3情報の信号成分を減算させることで、前記第1情報を生成する。これにより、情報処理装置は、第2情報の生成に用いた照射方向の受光信号から生成した第3情報を、第1情報から除外することができる。
【0015】
上記情報処理装置の他の一態様では、前記出力部は、前記照射方向ごとに、前記第2情報を生成した照射方向の前記受光信号の波形と前記所定値以上の振幅となるピークの位置及び振幅が同一となる信号を、前記第3情報として生成し、対象の照射方向の前記受光信号から前記第3情報の信号成分を減算させる。この態様により、情報処理装置は、第2情報として検出した対象物の点群の情報を、第1情報から好適に除外することができる。
【0016】
上記情報処理装置の他の一態様では、前記出力部は、対応する前記照射方向に対する前記ピークが複数存在する場合、前記ピークごとに前記第3情報を生成し、当該照射方向の前記受光信号から前記第3情報の各々の信号成分を減算させる。この態様により、情報処理装置は、マルチパスにより照射方向ごとの受光信号から複数のピークを検出した場合であっても、当該ピークの情報を的確に除外した第1情報を出力することができる。
【0017】
上記情報処理装置の他の一態様では、前記第1情報を、照射平面に対応する直交座標系(直交する2つの軸で表わされた座標)における受光強度を示す第4情報に変換する変換部を更に備える。これにより、情報処理装置は、例えば、直感的にユーザが対象物を把握しやすいように第1情報を座標変換して出力することができる。
【0018】
上記情報処理装置の他の一態様では、前記第4情報は、水平面と平行な2次元空間の受光強度を示し、情報処理装置は、前記第4情報に基づく画像を表示部に表示させる表示制御部をさらに備える。この態様により、情報処理装置は、周辺に存在する対象物の存在を好適にユーザに視認させることができる。
【0019】
本発明の他の好適な実施形態によれば、照射方向を変えながらレーザ光を照射する照射部と、対象物にて反射された前記レーザ光を受光する受光部と、を備える情報処理装置が実行する制御方法であって、前記受光部が出力する受光信号に基づいて、(i)照射方向と、照射位置に関する基準位置からの当該照射方向における距離と、における前記レーザ光の受光強度を示す第1情報を生成して出力し、(ii)前記受光信号が所定値以上の受光強度を示す照射方向については、前記受光信号に基づいて前記対象物までの距離を示す第2情報を生成して出力する出力工程を備える。情報処理装置は、この制御方法を実行することで、受光強度が所定値以上となる比較的近距離の対象物の情報については第2情報として出力しつつ、他の対象物の情報についても第1情報として出力することができる。
【0020】
本発明の他の好適な実施形態によれば、照射方向を変えながらレーザ光を照射する照射部と、対象物にて反射された前記レーザ光を受光する受光部と、を備える情報処理装置のコンピュータが実行するプログラムであって、前記受光部が出力する受光信号に基づいて、(i)照射方向と、照射位置に関する基準位置からの当該照射方向における距離と、における前記レーザ光の受光強度を示す第1情報を生成して出力し、(ii)前記受光信号が所定値以上の受光強度を示す照射方向については、前記受光信号に基づいて前記対象物までの距離を示す第2情報を生成して出力する出力部として前記コンピュータを機能させる。情報処理装置は、このプログラムを実行することで、受光強度が所定値以上となる比較的近距離の対象物の情報については第2情報として出力しつつ、他の対象物の情報についても第1情報として出力することができる。好適には、上記プログラムは、記憶媒体に記憶される。
【実施例0021】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。
【0022】
[全体構成]
図1は、本実施例に係るライダユニット100のブロック構成図である。図1に示すライダユニット100は、TOF(Time Of Flight)方式のライダ(Lidar:Light Detection and Ranging、または、Laser Illuminated Detection And Ranging)であって、水平方向の全方位における物体の測距を行う。ライダユニット100は、例えば、先進運転支援システムの一部として、車両の周辺環境認識補助の目的で用いられる。ライダユニット100は、主に、コア部1と、信号処理部2と、表示制御部3と、ディスプレイ4と、点群処理部5とを有する。ライダユニット100は、本発明における「情報処理装置」の一例である。
【0023】
コア部1は、出射方向を徐変させながら水平方向の360°の全方位を対象にパルスレーザを出射する。このとき、コア部1は、水平方向の360°の全方位を等角度により区切ったセグメント(本実施例では900セグメント)ごとにパルスレーザを出射する。そして、コア部1は、パルスレーザ出射後の所定期間内に当該パルスレーザの反射光を受光することで生成したセグメントごとの受光強度に関する信号(「セグメント信号Sseg」とも呼ぶ。)を、信号処理部2へ出力する。
【0024】
信号処理部2は、コア部1から受信したセグメントごとのセグメント信号Ssegの波形からピーク位置をそれぞれ検出し、検出したピーク位置に基づきレーザが照射された対象物の照射位置(「計測点」とも呼ぶ。)までの距離を算出する。そして、信号処理部2は、セグメントごとに算出した距離と、当該セグメントに対応するスキャン角度との組み合わせを、計測点の情報(「計測点情報Ip」とも呼ぶ。)として点群処理部5へ供給する。
【0025】
また、信号処理部2は、コア部1から受信したセグメントごとのセグメント信号Ssegを統合することで、水平方向の360°の全方位における各セグメントとライダユニット100からの距離との関係を表す極座標空間の2次元画像(「極座標空間フレームFp」とも呼ぶ。)を生成する。そして、信号処理部2は、極座標空間フレームFpに基づき、パルスレーザの走査面(照射平面)を基準とした直交座標空間の2次元画像(「直交座標空間フレームFo」とも呼ぶ。)を生成し、表示制御部3へ出力する。このとき、後述するように、信号処理部2は、極座標空間フレームFpを生成する前の各セグメントのセグメント信号Ssegに対し、検出した計測点の点群(単に「点群」とも呼ぶ。)に対応する情報を除外する処理を行う。これにより、信号処理部2は、点群として検出した比較的近距離の対象物が直交座標空間フレームFoに表示されないようにする。
【0026】
表示制御部3は、信号処理部2から受信した直交座標空間フレームFoに基づく画像をディスプレイ4に表示させる。点群処理部5は、信号処理部2から受信した計測点情報Ipに基づく処理を行う。例えば、点群処理部5は、ライダの出力を用いた公知の周辺環境認識処理、自己位置推定処理、又は/及びディスプレイ4への表示処理などを行う。
【0027】
[コア部の構成]
図2は、コア部1の概略的な構成例を示す。図2に示すように、コア部1は、主に、水晶発振器10と、同期制御部11と、LDドライバ12と、レーザダイオード13と、スキャナ14と、モータ制御部15と、受光素子16と、電流電圧変換回路(トランスインピーダンスアンプ)17と、A/Dコンバータ18と、セグメンテータ19とを有する。
【0028】
水晶発振器10は、同期制御部11及びA/Dコンバータ18にパルス状のクロック信号「S1」を出力する。本実施例では、一例として、クロック周波数は、1.8GHzであるものとする。また、以後では、クロック信号S1が示すクロックを「サンプルクロック」とも呼ぶ。
【0029】
同期制御部11は、パルス状の信号(「トリガ信号S2」とも呼ぶ。)をLDドライバ12に出力する。本実施例では、トリガ信号S2は、131072(=217)サンプルクロック分の周期で周期的にアサートされる。以後では、トリガ信号S2がアサートされてから次にアサートされるまでの期間を「セグメント期間」とも呼ぶ。また、同期制御部11は、後述するセグメンテータ19がA/Dコンバータ18の出力を抽出するタイミングを定める信号(「セグメント抽出信号S3」とも呼ぶ。)をセグメンテータ19に出力する。トリガ信号S2及びセグメント抽出信号S3は、論理信号であり、後述する図3に示すように同期している。本実施例では、同期制御部11は、セグメント抽出信号S3を、2048サンプルクロック分の時間幅(「ゲート幅Wg」とも呼ぶ。)だけアサートする。
【0030】
LDドライバ12は、同期制御部11から入力されるトリガ信号S2に同期してパルス電流をレーザダイオード13へ流す。レーザダイオード13は、例えば赤外(905nm)パルスレーザであって、LDドライバ12から供給されるパルス電流に基づき光パルスを出射する。本実施例では、レーザダイオード13は、5nsec程度の光パルスを出射する。
【0031】
スキャナ14は、送出及び受信光学系の構成を含み、レーザダイオード13が出射する光パルスを水平面で360°走査すると共に、出射された光パルスが照射された物体(「対象物」とも呼ぶ。)で反射された戻り光を受光素子16に導く。本実施例では、スキャナ14は、回転するためのモータを含み、モータは、900セグメントで一回転するように、モータ制御部15により制御される。この場合の角度分解能は、1セグメントあたり0.4°(=360°/900)となる。LDドライバ12及びスキャナ14は、本発明における「照射部」の一例である。
【0032】
好適には、スキャナ14のスキャン面は、傘状ではなく平面であることが望ましく、かつ、ライダユニット100が移動体に搭載される場合には、移動体が走行する地表に対して平行(即ち水平)であることが望ましい。これにより、後述する時系列で連続して生成される極座標空間フレームFp間の相関が高くなり、より高精度な周辺環境の表示を行うことができる。
【0033】
受光素子16は、例えば、アバランシェフォトダイオードであり、スキャナ14により導かれた対象物からの反射光の光量に応じた微弱電流を生成する。受光素子16は、生成した微弱電流を、電流電圧変換回路17へ供給する。電流電圧変換回路17は、受光素子16から供給された微弱電流を増幅して電圧信号に変換し、変換した電圧信号をA/Dコンバータ18へ入力する。
【0034】
A/Dコンバータ18は、水晶発振器10から供給されるクロック信号S1に基づき、電流電圧変換回路17から供給される電圧信号をデジタル信号に変換し、変換したデジタル信号をセグメンテータ19に供給する。以後では、A/Dコンバータ18が1クロックごとに生成するデジタル信号を「サンプル」とも呼ぶ。1サンプルは、後述する極座標空間フレームFpの1ピクセル分のデータに相当する。受光素子16、電流電圧変換回路17及びA/Dコンバータ18は、本発明における「受光部」の一例である。
【0035】
セグメンテータ19は、セグメント抽出信号S3がアサートされているゲート幅Wg分の期間における2048サンプルクロック分のA/Dコンバータ18の出力であるデジタル信号を、セグメント信号Ssegとして生成する。セグメンテータ19は、生成したセグメント信号Ssegを信号処理部2へ供給する。
【0036】
図3は、トリガ信号S2及びセグメント抽出信号S3の時系列での波形を示す。図3に示すように、本実施例では、トリガ信号S2がアサートされる1周期分の期間であるセグメント期間は、131072サンプルクロック(図面では「smpclk」と表記)分の長さに設定され、トリガ信号S2のパルス幅は64サンプルクロック分の長さ、ゲート幅Wgは2048サンプルクロック分の長さに設定されている。
【0037】
この場合、トリガ信号S2がアサートされた後のゲート幅Wgの期間だけセグメント抽出信号S3がアサートされているため、セグメンテータ19は、トリガ信号S2がアサート中の2048個分のA/Dコンバータ18が出力するサンプルを抽出することになる。そして、ゲート幅Wgが長いほど、ライダユニット100からの最大測距距離(測距限界距離)が長くなる。
【0038】
本実施例では、セグメント期間の周波数は、約13.73kHz(≒1.8GHz/131072)となり、信号処理部2がセグメント信号Ssegに基づき生成する極座標空間フレームFpのフレーム周波数(即ちスキャナ14の回転速度)は、1フレームが900セグメントで構成されることから、約15.36Hz(≒13.73kHz/900)となる。また、最大測距距離は、単純計算した場合、ゲート幅Wgに相当する時間幅で光が往復する距離に相当する170.55m(≒{2048/1.8GHz}・c/2、「c」は光速)となる。後述するように、最大測距距離は、電気的及び光学的な遅れにより170.55mよりも若干短くなる。
【0039】
ここで、トリガ信号S2がアサートされてから当該トリガ信号S2に基づき出射された光パルスに相当するサンプルが出力されるまでの遅延時間(「遅延時間Td」とも呼ぶ。)と、対象物までの距離(「ターゲット距離Ltag」とも呼ぶ。)との関係について補足説明する。
【0040】
スキャナ14の走査角度に相当するセグメントのインデックスを「s」(s=0~899)、セグメント抽出信号S3がアサートされる期間においてA/Dコンバータ18が生成する2048個分のサンプルのインデックスを「k」(k=0~2047)とすると、サンプルのインデックスkの大きさは、ターゲット距離Ltagに対応する。具体的には、サンプルのインデックスkと、遅延時間Tdの関係は、クロック周波数を「fsmp」(=1.8GHz)とすると、電気的及び光学的遅れ等を考慮しない場合、
Td=k/fsmp≒k×0.55555nsec
となる。この場合、ターゲット距離Ltagと遅延時間Tdとの関係は、遅れ等を考慮しない場合、
Ltag=Td・(c/2)=(k/fsmp)・(c/2)
となる。
【0041】
なお、実際には、同期制御部11からLDドライバ12へトリガ信号S2を送出してからスキャナ14が光を出射するまでの送出ルート、及び、スキャナ14に戻り光が入射してからA/Dコンバータ18によりデジタル信号に変換されるまでの受信ルートのそれぞれに電気的及び光学的な遅れが存在する。従って、サンプルのインデックスkからターゲット距離Ltagを算出するには、インデックスkに対してオフセット(「始点オフセットk0」とも呼ぶ。)を設け、始点オフセットk0の分だけインデックスkを減算する必要がある。始点オフセットk0を考慮した場合、ターゲット距離Ltagは、以下の式により表される。
Ltag={(k-k0)/fsmp}・(c/2)
【0042】
[信号処理部の詳細]
(1)ブロック構成
図4は、信号処理部2の論理的な構成を示すブロック図である。図4に示すように、信号処理部2は、セグメント信号処理部21と、点検出部22と、基準パルス記憶部23と、レプリカパルス生成部24と、演算部25と、フレーム方向フィルタリング部26と、を有する。
【0043】
セグメント信号処理部21は、セグメント信号Ssegに対して雑音抑圧を行うための信号処理を行う。例えば、セグメント信号処理部21は、マッチドフィルタ等を適用してセグメント信号Ssegに対してSNの最大化を行う。
【0044】
点検出部22は、セグメント信号処理部21による処理後のセグメント信号Ssegの波形からピークを検出し、検出したピークに対応する振幅(「振幅Ap」とも呼ぶ。)及び遅延時間Tdの推定を行う。そして、点検出部22は、セグメント信号Ssegが示す波形のピークのうち、推定した振幅Apが所定の閾値(「閾値Apth」とも呼ぶ。)以上となるピークが存在する場合に、当該ピークの振幅Ap及び遅延時間Tdの情報をレプリカパルス生成部24に供給する。また、点検出部22は、推定した振幅Apが閾値Apth以上となるピークごとに、遅延時間Tdに対応する距離と、対象のセグメントに対応するスキャン角度との組み合わせを示す計測点情報Ipを生成し、点群処理部5へ供給する。なお、計測点情報Ipには、遅延時間Tdに対応する距離に加えて、受光強度を示す情報(即ち振幅Apに相当する情報)が含まれていてもよい。この場合、例えば、点群処理部5は、計測点情報Ipに含まれる受光強度の情報を、距離補正して反射強度に変換することで、白線検出等の処理に用いる。閾値Apthは、本発明における「所定値」の一例であり、計測点情報Ipは、本発明における「第2情報」の一例である。
【0045】
基準パルス記憶部23は、反射光を受光素子16が理想的に受信した場合のセグメント信号Ssegの波形(「基準パルス」とも呼ぶ。)を予め記憶する。本実施例では、基準パルスは、ライダユニット100に近づけた対象物に対してレーザ光を出射させた場合の反射光を受光素子16が理想的に受信した場合のセグメント信号Ssegの波形を示すものとし、例えば実験等に基づき予め生成される。基準パルスは、レプリカパルス生成部24により読み出される。
【0046】
レプリカパルス生成部24は、点検出部22によって検出されたピークの波形を示す信号(「レプリカパルスSrep」とも呼ぶ。)を生成する。具体的には、レプリカパルス生成部24は、点検出部22から供給された振幅Ap及び遅延時間Tdの推定値に基づき、基準パルス記憶部23から読み出した基準パルスを補正することで、レプリカパルスSrepを生成する。レプリカパルスSrepの生成方法の具体例については、図5を参照して後述する。レプリカパルスSrepは、本発明における「第3情報」の一例である。
【0047】
レプリカパルス生成部24は、セグメント信号処理部21から供給されるセグメント信号Ssegに対し、レプリカパルス生成部24から供給されるレプリカパルスSrepの減算処理を行う。そして、レプリカパルス生成部24は、レプリカパルスSrepを減算した後のセグメント信号Sseg(「ピーク除去信号Ssub」とも呼ぶ。)を、フレーム方向フィルタリング部26へ供給する。
【0048】
フレーム方向フィルタリング部26は、900セグメント分のセグメント信号Ssegの各々から抽出されたピーク除去信号Ssubから1つの極座標空間フレームFpを生成し、さらにフレーム方向でのフィルタリングを行うことで、直交座標空間フレームFoを生成する。フレーム方向フィルタリング部26が実行する処理については、図6を参照して後述する。なお、点検出部22及びフレーム方向フィルタリング部26は、本発明における「出力部」の一例である。
【0049】
(2)レプリカパルスの生成及び減算処理
次に、レプリカパルス生成部24が実行するレプリカパルスSrepの生成処理及び演算部25が実行するレプリカパルスSrepの減算処理の具体例について、図5及び図6を参照して説明する。
【0050】
図5(A)は、あるセグメントに対してセグメント信号処理部21が出力するセグメント信号Ssegの波形の一例を示す。図5(A)の縦軸の受光強度は、受光素子16が理想的に反射光を受光したときが「1」となる。
【0051】
この場合、点検出部22は、閾値Apth以上の振幅Apを有するピーク(枠90参照)を検出し、当該ピークの振幅Apが「0.233」、遅延時間Tdに相当するサンプルインデックスkが「231.1」であると推定する。
【0052】
図5(B)は、基準パルスの波形の一例を示す。図5(B)に示すように、この場合、遅延時間Tdに相当するサンプルインデックスkが「0」付近となり、振幅Apは「1」となっている。基準パルス記憶部23は、図5(B)に示すような基準パルスを予め記憶しておき、レプリカパルス生成部24に供給する。
【0053】
図5(C)は、図5(A)に示すセグメント信号Ssegから推定した振幅Ap及び遅延時間Tdと図5(B)に示す基準パルスとに基づき生成したレプリカパルスSrepを示す。この場合、レプリカパルス生成部24は、図5(B)の基準パルスを、図5(A)の例で推定した振幅Ap及び遅延時間Tdに基づき補正することで、図5(C)のレプリカパルスSrepを生成する。具体的には、レプリカパルス生成部24は、基準パルスの振幅Apを、点検出部22から取得した振幅Apの推定値「0.233」に変更すると共に、基準パルスのピーク位置のサンプルインデックスkを、点検出部22から取得したサンプルインデックスkの推定値「231.1」に変更する。
【0054】
図6は、演算部25が実行するレプリカパルスSrepの減算処理の概要を示す図である。図6に示すように、演算部25は、図5(A)のセグメント信号Sseg(図6の左上参照)に対し、図5(C)のレプリカパルスSrep(図6の右上参照)を減算することで、図5(A)のセグメント信号Ssegから閾値Apth以上のピークが除去されたピーク除去信号Ssub(図6の中央下参照)を生成する。このように、演算部25は、レプリカパルスSrepに基づき、点検出部22が検出した点群の情報をセグメント信号Ssegから除外したピーク除去信号Ssubを生成することができる。
【0055】
(3)フレームフィルタリング
図7は、フレーム方向フィルタリング部26の機能的な構成を示すブロック図である。フレーム方向フィルタリング部26は、主に、フレーム生成部31と、バッファ部32と、フレームフィルタ33と、直交空間変換部34とを有する。
【0056】
フレーム生成部31は、900セグメント分のセグメント信号Ssegの各々から抽出されたピーク除去信号Ssubから1つの極座標空間フレームFpを生成し、バッファ部32に記憶させる。本実施例では、1セグメントにつき2048個分のサンプルが存在し、全セグメントは900個存在することから、フレーム生成部31は、極座標空間フレームFpとして、900×2048の画像を生成する。このように、フレーム生成部31は、インデックス「k=0」から「k=899」までの900個分のセグメントに対応するピーク除去信号Ssubを演算部25から受信した場合に、これらを統合して1つの極座標空間フレームFpを生成し、バッファ部32に蓄積する。ここで、極座標空間フレームFpの座標空間は、走査角度(即ち角度)に相当する縦軸と、ターゲット距離Ltag(即ち半径)に相当する横軸とを有する極座標空間となっている。極座標空間フレームFpは、本発明における「第1情報」の一例である。
【0057】
バッファ部32は、フレーム生成部31が生成した極座標空間フレームFpを少なくとも所定期間記憶する。上述の所定期間は、フレームフィルタ33で用いられる個数分の極座標空間フレームFpがバッファ部32に蓄積される期間以上の長さに設定される。
【0058】
フレームフィルタ33は、バッファ部32に蓄積された時系列で連続する所定個数分(例えば16フレーム分)の極座標空間フレームFpを抽出し、フレームフィルタリングを行うことで、時間軸上で平均化された極座標空間フレームFp(「平均化フレームFa」とも呼ぶ。)を生成する。これにより、フレームフィルタ33は、各極座標空間フレームFpに存在する雑音が抑圧された平均化フレームFaを生成する。ここで、フレームフィルタリングは、時系列で連続する極座標空間フレームFpを用いて雑音を低減する処理であればよい。例えば、フレームフィルタ33は、バッファ部32から抽出した所定個数分の極座標空間フレームFpから移動平均を算出することにより平均化フレームFaを生成してもよく、一次IIRフィルタを適用することにより平均化フレームFaを生成してもよい。
【0059】
直交空間変換部34は、フレームフィルタ33が出力する平均化フレームFaの座標系を極座標系から直交座標系に変換した直交座標空間フレームFoを生成する。このとき、直交空間変換部34は、直交座標空間フレームFoの各ピクセルが対応する平均化フレームFaのピクセルを特定することで、直交座標空間フレームFoを生成する。そして、直交空間変換部34は、生成した直交座標空間フレームFoを表示制御部3へ供給する。直交空間変換部34は、本発明における「変換部」の一例である。直交座標空間フレームFoは、本発明における「第4情報」の一例である。
【0060】
(4)具体例
次に、図8図12を参照し、信号処理部2が実行する処理の具体例について説明する。
【0061】
図8は、実験時のライダユニット100の周辺を模式的に描いた俯瞰図である。図8に示すように、ライダユニット100の周辺には、対象物として、主に、複数の壁、樹木、樹木群、金網1と金網2、及び移動中である走行車両などが存在する。以後では、スキャナ14の回転速度に応じたフレーム周波数に基づき、信号処理部2が0番目から15番目までの16個分のフレーム処理を行う場合について説明する。
【0062】
図9(A)は、0番目のフレーム処理で点検出部22が検出した点群を直交座標系でプロットした図であり、図9(B)は、5番目のフレーム処理で点検出部22が検出した点群を直交座標系でプロットした図である。また、図10(A)は、10番目のフレーム処理で点検出部22が検出した点群を直交座標系でプロットした図であり、図10(B)は、15番目のフレーム処理で点検出部22が検出した点群を直交座標系でプロットした図である。ここで、枠80は、走行車両の位置を示し、枠81は、図8の枠79内の壁の位置を示す。なお、各計測点に対応する画素を白に設定し、他の画素を黒に設定している。
【0063】
この場合、枠80内の走行車両については、図9(A)、(B)、図10(A)、(B)のいずれにおいても、ライダユニット100から比較的近距離に存在するため、精度良く検出されている。ここで、走行車両の移動により、走行車両に対応する点群(枠80参照)は、フレームの番号が大きくなるにつれて左に移動している。
【0064】
一方、枠81内の壁については、ライダユニット100から比較的遠方にあり、かつ、ライダユニット100との間に樹木群が存在するため、点検出部22により点群として検出されず、点検出部22の検出結果によっては対象の壁の存在を認識することができない。
【0065】
図11は、レプリカパルスSrepによる減算処理を行わないセグメント信号Ssegに基づき生成した直交座標空間フレームFoの表示例である。図11の例では、フレーム方向フィルタリング部26は、0番目から15番目までのフレーム処理でレプリカパルスSrepによる減算を行わないセグメント信号Ssegに基づき極座標空間フレームFpを生成した後、これらの16個の極座標空間フレームFpから生成した平均化フレームFaを直交座標空間に変換することで、図11に示す直交座標空間フレームFoを生成している。図11では、A/Dコンバータ18が出力するデジタル信号の値(即ち受光強度)が高いほど白に近くなっている。ここで、枠80Aは、走行車両の位置を示し、枠81Aは、図8の枠79内の壁の位置を示す。
【0066】
図11の直交座標空間フレームFoでは、16フレームにわたる平均化処理により、図9及び図10に示す各フレームでは確認できなかった壁(枠81A参照)などの比較的遠方の対象物が表示されている。一方、図11の例では、走行車両に対応する受光強度が高い部分が計測期間での移動軌跡に従い尾を引いている。このように、レプリカパルスSrepによる減算処理を行わない場合、移動物体の点群が直交座標空間フレームFo内で尾を引いてしまい、実際の形状よりも移動方向に長い形状として検出される。
【0067】
図12は、本実施例に従いレプリカパルスSrepによる減算後のピーク除去信号Ssubに基づき生成した直交座標空間フレームFoの表示例である。この場合、走行車両に対応する点群を含め、図9及び図10に示す各フレームにおいて表示されていた点群の情報が除去されている。一方、図12では、図11の例と同様、図9及び図10に示す各フレームでは確認できなかった壁(枠81A参照)などの比較的遠方の対象物が表示されている。このように、ライダユニット100は、レプリカパルスSrepによる減算処理を行うことで、点検出部22が検出できなかった比較的遠方に存在する対象物を好適に直交座標空間フレームFoにより表示することができる。なお、仮に点検出部22が点群として検出できない遠方の移動物体が存在する場合であっても、直交座標空間フレームFo上での当該移動物体の移動距離は、点検出部22が検出可能な近傍の移動物体と比べて短くなる傾向があるため、尾を引く長さは許容できる程度に短くなることが想定される。
【0068】
以上説明したように、本実施例に係るライダユニット100の信号処理部2は、コア部1が出力するセグメント信号Ssegに基づいて、レーザ光の照射方向を示すスキャン角度と、ターゲット距離Ltagと、におけるレーザ光の受光強度を示す極座標空間フレームFpを生成し、直交座標空間フレームFoに変換して表示制御部3に出力する。また、信号処理部2は、コア部1が出力するセグメント信号Ssegが閾値Apth以上の受光強度を示す照射方向については、当該セグメント信号Ssegに基づいて計測点情報Ipを生成して点群処理部5に出力する。この態様により、ライダユニット100は、比較的近距離に存在する対象物の点群については計測点情報Ipとして出力しつつ、遠方に存在する対象物を直交座標空間フレームFoにより表示することができる。換言すれば、例えばライダユニット100を周辺環境認識用として車両に搭載した場合、比較的近距離に存在する対象物(例えば他の移動物体等)については、点群処理を行うことにより高速に対象物を検出し、遠方に存在する対象物については、直交座標空間フレームを例えば時間軸上で平均化処理を行うことにより精度良く対象物を検出することが可能となる。
【0069】
[変形例]
次に、実施例に好適な変形例について説明する。以下の変形例は、任意に組み合わせて上述の実施例に適用してもよい。
【0070】
(変形例1)
一般に、レーザ光の対象物への一部照射等に起因したマルチパスにより、1つのセグメントのセグメント信号Ssegに複数の閾値Apth以上となるピークが存在する場合がある。この場合、信号処理部2は、ピーク除去信号Ssubに閾値Apth以上のピークがなくなるまで、レプリカパルスSrepによる減算処理を繰り返して実行してもよい。
【0071】
図13は、本変形例における信号処理部2Aのブロック構成図を示す。図13の例では、信号処理部2Aは、複数の点検出部22(22A、22B、…)と、複数のレプリカパルス生成部24(24A、24B、…)と、複数の演算部25(25A、25B、…)とを有する。
【0072】
そして、点検出部22Aは、セグメント信号処理部21が出力するセグメント信号Ssegから最も振幅Apが大きいピークを検出する。そして、点検出部22Aは、振幅Apが閾値Apth以上の場合、対応する振幅Ap及び遅延時間Tdに相当するサンプルインデックスkをレプリカパルス生成部24Aに供給すると共に、検出したピークに対応する計測点情報Ipを点群処理部5へ供給する。その後、レプリカパルス生成部24Aは、点検出部22Aから受信した振幅Ap及びサンプルインデックスkに基づきレプリカパルスSrepを生成し、演算部25Aは、レプリカパルス生成部24Aが生成したレプリカパルスSrepを、セグメント信号処理部21が出力するセグメント信号Ssegから減算する。
【0073】
同様に、点検出部22Bは、演算部25が出力するセグメント信号Ssegから最も振幅Apが大きいピークを検出する。そして、点検出部22Bは、振幅Apが閾値Apth以上の場合、対応する振幅Ap及び遅延時間Tdに相当するサンプルインデックスkをレプリカパルス生成部24Bに供給すると共に、検出したピークに対応する計測点情報Ipを点群処理部5へ供給する。その後、レプリカパルス生成部24Bは、点検出部22Bから受信した振幅Ap及びサンプルインデックスkに基づきレプリカパルスSrepを生成し、演算部25Bは、レプリカパルス生成部24Bが生成したレプリカパルスSrepを、演算部25Aが出力する信号から減算する。なお、点検出部22Bは、検出したピークの振幅Apが閾値Apth未満の場合、レプリカパルス生成部24BにレプリカパルスSrepの生成を実行させることなく、演算部25Aが出力した信号をピーク除去信号Ssubとしてフレーム方向フィルタリング部26に入力させる。
【0074】
このように、図13の構成例では、信号処理部2Aは、1つのセグメントから複数個の計測点を検出可能であり、これらの計測点に関する計測点情報Ipを点群処理部5へ供給すると共に、これらの計測点の情報を全て除去したピーク除去信号Ssubを生成して直交座標空間フレームFoを生成することができる。
【0075】
図14(A)は、あるセグメントに対してセグメント信号処理部21が出力するセグメント信号Ssegの波形の一例を示す。この例では、レーザ光のマルチパスにより、閾値Apth以上の振幅Apとなるピークが2つ存在する。この場合、まず、点検出部22Aは、振幅Apが1番大きなピーク(枠91参照)を検出し、当該ピークの振幅Ap及び遅延時間Tdに相当するサンプルインデックスkを、レプリカパルス生成部24Aに供給する。これにより、レプリカパルス生成部24Aは、レプリカパルスSrepを生成する。
【0076】
図14(B)は、レプリカパルス生成部24Aが生成したレプリカパルスSrepにより演算部25Aがセグメント信号Ssegを減算した後の波形を示す。図14(B)の波形では、図14(A)の枠91が示すピークが除去されている。そして、点検出部22Bは、図14(B)に示す信号から、振幅Apが1番大きなピーク(枠92参照)を検出し、当該ピークの振幅Ap及び遅延時間Tdに相当するサンプルインデックスkをレプリカパルス生成部24Bに供給する。これにより、レプリカパルス生成部24Bは、レプリカパルスSrepを生成する。
【0077】
図14(C)は、演算部25Bが出力する信号の波形を示す。図14(C)では、演算部25Bは、演算部25Aが出力する信号に対し、レプリカパルス生成部24Bが生成したレプリカパルスSrepを減算することで、枠92が示すピークを除去している。そして、図14(C)に示す信号は、ピーク除去信号Ssubとしてフレーム方向フィルタリング部26へ入力される。このように、振幅Apが閾値Apth以上となるピークが存在しないピーク除去信号Ssubが好適に生成される。
【0078】
(変形例2)
ライダユニット100の構成は、図1に示す構成に限定されない。
【0079】
例えば、ライダユニット100は、表示制御部3及びディスプレイ4を有しなくともよい。この場合、例えば、ライダユニット100は、信号処理部2が生成した直交座標空間フレームFoに対して公知の画像認識処理を行うことで、特定の対象物を検出し、当該対象物の存在を図示しない音声出力装置により報知してもよい。他の例では、ライダユニット100は、信号処理部2が生成した直交座標空間フレームFoを、図示しないGPS受信機等が出力するライダユニット100の現在位置情報等と共に、図示しない記憶部に蓄積してもよい。
【0080】
また、ライダユニット100は、スキャナ14による水平方向の走査を鉛直方向の複数列(レイヤ)について繰り返すことで、レイヤごとに点検出部22による計測点情報Ipの生成及びフレーム方向フィルタリング部26による直交座標空間フレームFoの生成を行ってもよい。
【0081】
(変形例3)
図2に示すコア部1の構成は一例であり、本発明が適用可能な構成は、図2に示す構成に限定されない。例えば、レーザダイオード13及びモータ制御部15は、スキャナ14と共に回転する構成であってもよい。
【0082】
(変形例4)
ライダユニット100は、レプリカパルスSrepによる減算処理を行わないセグメント信号Ssegに基づき直交座標空間フレームFoを生成し、ディスプレイ4に表示させてもよい。
【0083】
この場合、フレーム方向フィルタリング部26は、レプリカパルスSrepによる減算を行わないセグメント信号Ssegに基づき極座標空間フレームFpを生成した後、当該極座標空間フレームFpから生成した平均化フレームFaを直交座標空間に変換することで、直交座標空間フレームFoを生成する。
【0084】
(変形例5)
ライダユニット100が車両に搭載される場合、ライダユニット100は、ライダユニット100が載せられた車両が停止中か否か判定し、車両が停止中であると判断した場合にのみ、フレームフィルタ23による処理を実行してもよい。この場合、ライダユニット100は、車両の走行時では、極座標空間フレームFpを直交座標空間に変換して直交座標空間フレームFoを生成する。これにより、尾を引いた線が直交座標空間フレームFo上に表示されるのを防ぐことができる。
【0085】
他の例では、ライダユニット100は、車両の移動速度に応じ、直交座標空間フレームFoの生成に用いる極座標空間フレームFpの枚数(即ちフィルタの深さ)、言い換えると、極座標空間フレームFpの平均化を行う時間幅を決定してもよい。この場合、フレームフィルタ23は、所定のマップ等を参照し、車両の速度が高いほど、直交座標空間フレームFoの生成に用いる極座標空間フレームFpの枚数を少なくする。上述のマップは、車両の速度と、直交座標空間フレームFoの生成に用いる極座標空間フレームFpの枚数を決定するパラメータとのマップであり、例えば実験等に基づき予め生成される。この例によっても、尾を引いた線が直交座標空間フレームFo上に表示されるのを低減することができる。
【0086】
なお、上述の(変形例4)では、レプリカパルスSrepによる減算処理を行わないため、ライダユニット100に対して相対的に移動する近傍の対象物の点群が直交座標空間フレームFo上で尾を引いて表示される。よって、本変形例は、(変形例4)と組み合わせると好適である。
【符号の説明】
【0087】
1 コア部
2、2A 信号処理部
3 表示制御部
4 ディスプレイ
5 点群処理部
100 ライダユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14