IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン電子株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-光量調節装置及び撮像装置 図1
  • 特開-光量調節装置及び撮像装置 図2
  • 特開-光量調節装置及び撮像装置 図3
  • 特開-光量調節装置及び撮像装置 図4
  • 特開-光量調節装置及び撮像装置 図5
  • 特開-光量調節装置及び撮像装置 図6
  • 特開-光量調節装置及び撮像装置 図7
  • 特開-光量調節装置及び撮像装置 図8
  • 特開-光量調節装置及び撮像装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094046
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】光量調節装置及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 9/02 20210101AFI20230628BHJP
   G03B 11/00 20210101ALI20230628BHJP
【FI】
G03B9/02 A
G03B11/00
G03B9/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209261
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小宮谷 宏典
【テーマコード(参考)】
2H080
2H083
【Fターム(参考)】
2H080AA31
2H080AA57
2H080AA61
2H080AA64
2H080AA66
2H080CC09
2H083AA04
2H083AA05
2H083AA26
(57)【要約】
【課題】フィルタと他の部材とのクリアランスを最小限のものとすることによって、薄く構成できる光量調節装置を提供する。
【解決手段】開口部を有する第1の開口形成部材と、開口部を有し、前記第1の開口形成部材との間に空間を有するように配置された第2の開口形成部材と、前記空間に配置された光学フィルタと、前記第1及び第2の開口形成部材の開口部の少なくとも一方によって規定される光通過開口に対して、前記光学フィルタを出し入れさせるフィルタ駆動機構とを備えた光量調節装置において,前記光学フィルタの、前記第1及び第2の開口形成部材にそれぞれ対向する面の少なくとも一方に、他の部材と当接した際の衝撃を緩和する緩衝部材を設けたことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する第1の開口形成部材と、
開口部を有し、前記第1の開口形成部材との間に空間を有するように配置された第2の開口形成部材と、
前記空間に配置された光学フィルタと、
前記第1及び第2の開口形成部材の開口部の少なくとも一方によって規定される光通過開口に対して、前記光学フィルタを出し入れさせるフィルタ駆動機構と
を備えた光量調節装置であって、
前記光学フィルタの、前記第1及び第2の開口形成部材にそれぞれ対向する面の少なくとも一方に、他の部材と接触した際の衝撃を緩和する緩衝部材を設けたことを特徴とする光量調節装置。
【請求項2】
前記空間の、光軸方向から見て前記光学フィルタと重なる位置に更なる光学フィルタを有し、前記緩衝部材は、前記光学フィルタの前記更なる光学フィルタに対向する面に設けられている請求項1に記載の光量調節装置。
【請求項3】
更に、前記空間を光軸方向に分割する仕切り部材を有し、前記光学フィルタ及び前記更なる光学フィルタは、仕切り部材によって分割された空間のそれぞれに配置され、前記仕切り部材は開口部を有し、前記光学フィルタは前記仕切り部材の開口部を挟んで前記更なる光学フィルタと対向するように配置されている請求項2に記載の光量調節装置。
【請求項4】
前記光学フィルタが前記光通過開口に挿入された状態のときに、光軸方向から見て、前記光通過開口と重ならない位置に前記緩衝部材が設けられている請求項1~3のいずれか1項に記載の光量調節装置。
【請求項5】
光通過開口を規定する第1の開口部を有する第1の開口形成部材と、
第2の開口部を有し、前記第1の開口形成部材との間に空間を有するように配置された第2の開口形成部材と、
前記空間に配置された光学フィルタと、
前記光通過開口に対して、前記光学フィルタを出し入れさせるフィルタ駆動機構と
を備えた光量調節装置において、
前記第2の開口形成部材の前記空間に対向する面とは反対側の面に緩衝部材が設けられ、前記緩衝部材は、前記光学フィルタが前記光通過開口に挿入された状態のときに、光軸方向から見て、前記光通過開口と重ならない位置であって、前記光学フィルタと重なる位置に配置されていることを特徴とする光量調節装置。
【請求項6】
前記第2の開口部は、前記第1の開口部よりも面積が大きく、前記光学フィルタは、光軸方向から見て前記第2の開口部と重なる範囲で、前記光通過開口に対して出し入れされる請求項5に記載の光量調節装置。
【請求項7】
前記光学フィルタは、弾性を有するシート状部材に支持されている請求項1~6のいずれか1項に記載の光量調節装置。
【請求項8】
撮像素子と、前記撮像素子上に被写体像を形成する光学系と、前記光学系の光路中に配置された請求項1~7のいずれか1項に記載の光量調節装置とを備えた撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光量調節装置に関する。より詳細には光路中に光学フィルタを出し入れすることにより、光量あるいは光スペクトルの調節が可能な光量調節装置及びこれを備えた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像装置は、CCD(charge-coupled device)やCMOS(complementary metal-oxide semiconductor)センサ等の撮像素子上に、レンズ等の光学系で像を形成することによって撮影が行われる。ここで、撮像装置の光路上には、絞りや光学フィルタ等の光量調整装置が設けられ、撮像素子で受光する光量の調節を行っている。
【0003】
上記の光学フィルタとしては、例えばIR(infrared)フィルタ(赤外線遮断フィルタ)が知られており、この赤外線遮断フィルタは撮像装置を夜間・暗視で使用するタイミングにおいては、光路外に退避させる必要がある。このため、このような撮像装置には、赤外線遮断フィルタを光路中に出し入れするための駆動手段を備えた光量調整装置が搭載されている。
【0004】
特許文献1には、開口面積を変化させて光量を調節する絞り機構と、絞りの開口位置にフィルタを出し入れするフィルタ切替機構とを備えた光量調節装置が記載されている。この光量調節装置では、ベース部材とカバー部材との間の空間を分離部材によって仕切り、それぞれの空間に絞りとフィルタとを配置している。そして、この分離部材には、フィルタが接触しないように収容する空間を形成する凹形状部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-150220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1においては、フィルタが他の部材と接触しないよう、充分なクリアランスを設ける必要があり、光量調整装置の厚さが厚くなってしまい、この光量調整装置を備えた撮像装置の小型化の障害にもなっていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に鑑み、本発明の光量調節装置は、開口部を有する第1の開口形成部材と、開口部を有し、前記第1の開口形成部材との間に空間を有するように配置された第2の開口形成部材と、前記空間に配置された光学フィルタと、前記第1及び第2の開口形成部材の開口部の少なくとも一方によって規定される光通過開口に対して、前記光学フィルタを出し入れさせるフィルタ駆動機構とを備えた光量調節装置であって,前記光学フィルタの、前記第1及び第2の開口形成部材にそれぞれ対向する面の少なくとも一方に、他の部材と当接した際の衝撃を緩和する緩衝部材を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光学フィルタの、第1及び第2の開口形成部材にそれぞれ対向する面の少なくとも一方に緩衝部材を設けたので、フィルタが他の部材と当接した際の衝撃を緩和し、フィルタや他の部材が破損する恐れを低減できる。また、このため、フィルタと他の部材とのクリアランスを最小限のものとすることができ、光量調節装置を薄く構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る光量調節装置の分解斜視図。
図2】本発明の第1実施形態におけるフィルタの切り替えを説明する概略正面図。
図3】本発明の第1実施形態におけるNDフィルタの切り替えを説明する概略正面図。
図4】第1実施形態の光量調節装置の図3(A)の状態における概略断面図。
図5】第1実施形態の光量調節装置の図3(C)の状態における概略断面図。
図6】本発明の第2実施形態に係る光量調節装置の分解斜視図。
図7】本発明の第2実施形態におけるNDフィルタの切り替えを説明する概略正面図。
図8】第2実施形態の光量調節装置の概略断面図。
図9】本発明の光量調節装置を搭載した撮像装置の一例を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を用いて本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形、応用が可能である。本発明は、特許請求の範囲を逸脱しない限りにおいて、このような変形、応用を全て包含するものである。
【0011】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態係る光量調節装置の分解斜視図である。図1において、第1の開口形成部材である地板110には、開口部110aが設けられている。一方、この地板110との間に空間を有するように配置されたカバー123にも、開口部123aが設けられている。ここで、カバー123は第2の開口形成部材を構成する。
【0012】
光束は、図示のZ方向を光軸として、これらの開口部110a及び123aを通過する。本実施形態においては、開口部123aの面積が開口部110aよりも大きく、地板110の開口部110aが光通過開口を規定する。ここで、「光通過開口を規定する」とは、光量調節装置を通過する光束のX方向及びY方向の幅が、この開口部110aによって定められる(光の通過領域が制限される)ことを言う。この構成に限らず、カバー123の開口部123aが光通過開口を規定するようにしても構わないし、開口部110a及び123aが同一の形状を有し、これらの両方で光通過開口が規定されるようにしても良い。
【0013】
地板110とカバー123との間には、仕切り部材118が設けられている。この仕切り部材118は、地板110とカバー123との間の空間を2つに分割している。そして、地板110側の空間に、光学フィルタとして、赤外線透過フィルタ115及び赤外線遮断フィルタ116が配置されている。これらのフィルタは、保持羽根114によって支持され、保持羽根114は、後述する機構によって図示のX方向に往復移動する。保持羽根114には、それぞれのフィルタに対応する位置に開口部114f及び114eが設けられている。そして、保持羽根114の移動に伴って、上記の2つのフィルタがそれぞれ光通過開口に出し入れされる。つまり、光軸方向(Z方向)から見て、光通過開口に赤外線透過フィルタ115が重なる第1の状態と、光通過開口に赤外線遮断フィルタ116が重なる第2の状態とが切り替えられる。
【0014】
一方、仕切り部材118には、開口部118eが設けられている。この開口部118は、地板110の開口部110aよりも面積が大きく、光軸方向(Z方向)から見たときに、開口部118eの内側に開口部110aが包含されるように配置されている。前述の赤外線透過フィルタ115及び赤外線遮断フィルタ116は、保持羽根114の仕切り部材118に対向する側に取り付けられている。
【0015】
仕切り部材118のカバー123側の空間には、第1のND(Neutral Density)フィルタ(減光フィルタ)119及び第2のNDフィルタ122が配置されている。これらは互いに光学濃度の異なるフィルタである。第1のNDフィルタ119は、第1の保持羽根120に支持され、この第1の保持羽根120のX方向の移動に伴って、光通過開口に出し入れされる。第1の保持羽根120には、第1のNDフィルタ119に対応する位置に、開口部120eが設けられている。また、第2のNDフィルタ122は、第2の保持羽根121に支持され、この第2の保持羽根121のX方向の移動に伴って、光通過開口に出し入れされる。第2の保持羽根121には、第2のNDフィルタ122に対応する位置に、開口部121eが設けられている。
【0016】
第1のNDフィルタ119は、第1の保持羽根120の仕切り部材118に対向する側に取り付けられている。そして、第1のNDフィルタ119は、第1の保持羽根120の移動に伴い、仕切り部材118の開口部118eに対応する領域内で移動する。そのため、第1の保持羽根120と仕切り部材118との間のクリアランスを最小限とすることができ、光量調節装置を薄く構成することが可能となる。
【0017】
第2のNDフィルタ122は、第2の保持羽根121のカバー123に対向する側に取り付けられている。そして、第2のNDフィルタ122は、第2の保持羽根121の移動に伴い、カバー123の開口部123aに対応する領域内で移動する。そのため、第2の保持羽根121とカバー123との間のクリアランスを最小限とすることができ、光量調節装置を薄く構成することが可能となる。
【0018】
本実施形態においては、以上説明した構成によって、光量調節装置を薄型に構成することが可能となる。ただ、上記の構成では、仕切り部材118の開口部118e内で、赤外線遮断フィルタ116と第1のNDフィルタ119が直接対向することになる。このような状態で、撮像装置を落下させる等、光量調節装置に衝撃が加わると、これらのフィルタが接触し、これらの一方あるいは両方とも破損する恐れがある。
【0019】
本実施形態においては、上記のようなフィルタの破損を防止するため、赤外線遮断フィルタ116のカバー123に対向する面に、緩衝部材としての衝撃緩和シート117を設けている。カバー123に対向する面とは、仕切り部材118の開口部118eを挟んで、第1のNDフィルタ119に対向する側ということである。この衝撃緩和シート117には、開口部117aが設けられ、前述の第2の状態においても、開口部117aを光束が通過するように構成されている。言い換えると、第2の状態において、光通過開口の周囲に衝撃緩和シート117が位置するように構成されている。
【0020】
本実施形態の光量調整装置においては、上記の衝撃緩和シート117によって、フィルタ間の接触を防ぐことができる。つまり、赤外線遮断フィルタ116が、第1のNDフィルタ119に近づいても、これらの間に介在することで、これらのフィルタが直接接触することを防ぐ。また、この衝撃緩和シート117が、接触・衝突による衝撃を吸収・緩和し、フィルタが破損しないようにする。
【0021】
(赤外線透過フィルタ及び赤外線遮断フィルタの切り替え)
図1において、赤外線透過フィルタ115或いは赤外線遮断フィルタ116を支持する保持羽根114は、駆動部としての電磁アクチュエータ130によって駆動される。電磁アクチュエータ130は、コイル107、ヨーク108、ロータ109から構成され、軸109b回りに駆動ピン109aが回動する。これらは、ヨーク抑え部材106を介して、ビス105によって地板110に固定されている。軸109bには、地板110の孔110fを通して、メータギア111の孔111bが通され、メータギア111が回動可能に取り付けられている。また、駆動ピン109aには長孔111aが係合し、駆動ピン109aが回動すると、メータギア111が孔111bを中心に回動する。
【0022】
地板110の軸110eには、アームギア112が孔112aを中心に回動可能に取り付けられている。メータギア111にはギア部111cが形成されており、このギア部111cは、アームギア112のギア部112cと噛み合っている。メータギア111が時計方向あるいは反時計方向に回転すると、それに伴ってアームギア112が反対方向に回転する。アームギア112には、駆動ピン112bが設けられており、ギアカバー113の長孔を通して、保持羽根114の長孔114bに係合している。
【0023】
保持羽根114に設けられた長孔114a、114d及び114cは、それぞれ地板110のガイドピン110d、110c及び110bに係合し、保持羽根114をX方向に沿って移動するようにガイドする。長孔114aは、抜け止め形状のため、ガイドピン110dに対して0.2mm程度のガタを持たせている。上記のアームギア112が反時計方向或いは時計方向に回転すると、駆動ピン112bを介して駆動力が伝達され、保持羽根114がX軸のプラス方向或いはマイナス方向に往復移動する。これらの構成によってフィルタ駆動機構が形成されている。
【0024】
図2は、本発明の第1実施形態におけるフィルタの切り替えを説明する概略正面図である。図2は、仕切り部材118よりカバー123側にある部材を取り去った状態を示す。図2において、図1と同一の部材には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。図2(A)は、地板110の開口部110a(光通過開口)に赤外線透過フィルタ115が入っている、前述の第1の状態を示す。この状態から電磁アクチュエータ130によって各ギアを介して保持羽根114をX軸のプラス方向に移動させると、図2(B)に示す状態へと移行する。図2(B)は、地板110の開口部110a(光通過開口)に赤外線遮断フィルタ116が入っている、前述の第2の状態を示す。
【0025】
一方、図2(B)の状態から電磁アクチュエータ130を反対方向に駆動させると、保持羽根114がX軸のマイナス方向に移動して、図2(A)の状態となる。このようにして、赤外線透過フィルタ115と赤外線遮断フィルタ116との切り替えが行われる。ここで、電磁アクチュエータ130のロータ109は、磁気的付勢力によって上記第1及び第2の状態のそれぞれ状態で保持されている。
【0026】
(NDフィルタの切り替え)
図1において、第1の絞り駆動部103は、第1の保持羽根120を駆動し、第2の絞り駆動部101は、第2の保持羽根121を駆動する。これらの駆動部は、不図示のロータと、通電されてロータを回転させる磁力を発生する不図示のコイルとによって構成される電磁駆動モータである。これらの駆動部は、ステッピングモータ、ガルバノメータ等から構成されていても良い。第1の絞り駆動部103及び第2の絞り駆動部101は、地板110にフック或いはビス止め等の方法で固定されている。
【0027】
第1の絞り駆動部103の不図示のロータには駆動レバー104が一体に取り付けられ、第1の絞り駆動部103によって回動される。駆動レバー104に設けられた羽根駆動ピン104aは、第1の保持羽根120の長孔120aに係合している。また、第1の保持羽根120に設けられたガイド長孔120b、120c及び120dはそれぞれ、仕切り部材118に設けられたガイドピン118a、118c及び118dと摺動可能に係合している。これらのガイドピンは、ガイド部(ガイド軸部)として機能し、第1の保持羽根120がX方向に沿って移動するようにガイドする。このような構成で、第1の絞り駆動部103を駆動し、駆動レバー104を時計方向或いは反時計方向に回動させると、羽根駆動ピン104aを介して、駆動力が伝達され、第1の保持羽根120がX軸に沿ったマイナス方向或いはプラス方向に往復移動する。
【0028】
第2の絞り駆動部101の不図示のロータには駆動レバー102が一体に取り付けられ、第1の絞り駆動部101によって回動される。駆動レバー102に設けられた羽根駆動ピン102aは、第2の保持羽根121の長孔121aに係合している。また、第2の保持羽根121に設けられたガイド長孔121b、120d及び120cはそれぞれ、仕切り部材118に設けられたガイドピン118b、118c及び118dと摺動可能に係合している。これらのガイドピンは、ガイド部(ガイド軸部)として機能し、第2の保持羽根121がX方向に沿って移動するようにガイドする。このような構成で、第2の絞り駆動部101を駆動し、駆動レバー102を時計方向或いは反時計方向に回動させると、羽根駆動ピン102aを介して、駆動力が伝達され、第2の保持羽根121がX軸に沿ったプラス方向或いはマイナス方向に往復移動する。
【0029】
図3は、本発明の第1実施形態におけるNDフィルタの切り替えを説明する概略正面図である。図3は、カバー123を取り去った状態を示す。図3において、図1と同一の部材には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。図3(A)は、地板110の開口部110a(光通過開口)から、第1及び第2のNDフィルタ119及び122がともに退避している状態を示す。それぞれの状態は、第1及び第2の絞り駆動部103及び101のロータ(不図示)の磁気的付勢力によって保持されている。
【0030】
図3(A)の状態から、第2の絞り駆動部101に通電し、駆動レバー102を所定の角度範囲で時計回りに回動させる。すると、羽根駆動ピン102aを介して駆動力が伝達され、第2の保持羽根121がX軸のプラス方向に移動する。そして、図3(B)に示すように、開口部110a(光通過開口)に第2のNDフィルタ122が入った状態(光軸方向に重なった状態)へと移行する。
【0031】
一方、図3(A)の状態から、第1の絞り駆動部103に通電し、駆動レバー104を所定の角度範囲で反時計回りに回動させる。すると、羽根駆動ピン104aを介して駆動力が伝達され、第1の保持羽根120がX軸のプラス方向に移動する。そして、図3(C)に示すように、開口部110a(光通過開口)に第1のNDフィルタ119が入った状態(光軸方向に重なった状態)へと移行する。このように、第1及び第2のNDフィルタは互いに独立して移動可能であり、光通過開口を所望の光量が通過するように、光通過開口に挿入される。
【0032】
(衝撃緩和シートの機能)
次に、本実施形態において、フィルタ同士が近づいたときの衝撃緩和シートの働きを説明する。上記の説明において、赤外線遮断フィルタ116と第1のNDフィルタ119が近づくケースは、図3(A)の状態と、図3(C)の状態である。図4図3(A)の状態における光量調節装置の概略断面図である。図4において、図1と同一の部材には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。図4において、開口部110a(光通過開口)の光軸OP上には、赤外線遮断フィルタ116が挿入されており、第1及び第2のNDフルタ119及び122はいずれも挿入されていない。
【0033】
図4の状態で、赤外線遮断フィルタ116と第1のNDフィルタ119とは、図中Eに示す領域において互いにその一部がZ方向で重なる。これらのフィルタ間には、静的状態では互いに接触することが無いように、一定のクリアランスが設けられている。ところが、光量調節装置を搭載した撮像装置を落下させてしまったような場合、この際の衝撃で保持羽根が想定以上に撓んで、フィルタ同士が接触する恐れがある。この場合でも、本実施形態では、フィルタ間に衝撃緩和シート117が介在し、2つのフィルタが直接接触することがないので、衝撃によるフィルタの破損や特性変化を防止することができる。
【0034】
図5図3(C)の状態における光量調節装置の概略断面図である。図5において、図1と同一の部材には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。図5において、開口部110a(光通過開口)の光軸OP上には、赤外線遮断フィルタ116及び第1のNDフィルタ119がともに挿入されている。この状態では、図中Fに示す領域において、2つのフィルタがZ方向に重なっている。この状態で、光量調節装置に衝撃が加わった場合にも、図4の場合と同様に衝撃緩和シートがフィルタ同士の接触の衝撃を吸収・緩和し、フィルタの破損や特性変化を防止することができる。
【0035】
(フィルタの配置)
図4及び図5に示すように、本実施形態において、第1のNDフィルタ119の地板110側の面は、仕切り部材118のカバー123側の面よりも、地板110側に位置するように構成されている。つまり、第1のNDフィルタ119と仕切り部材118とは、光軸方向(Z方向)に重なる位置に配置されている。言い換えると、光軸方向(Z方向)と直交する方向から見て、第1のNDフィルタ119と仕切り部材118とは、それぞれの一部が重なるように見える。この構成によって、第1のNDフィルタ119を地板110側に近づけた位置に配置することができ、光量調節装置をより薄型化することが可能になる。
【0036】
一方、本実施形態において、第1のNDフィルタ119が取り付けられた第1の保持羽根120は、仕切り部材118に対して、一定のクリアランスを持った位置に設けられている。そして、第1のNDフィルタ119は、仕切り部材118に設けられた開口部118eの範囲内で移動される。つまり、第1のNDフィルタ119がどの位置に移動しても、開口部118eと対向するように構成されている。そのため、前述のように、第1のNDフィルタ119と仕切り部材118とが光軸方向に一部重なるように設けられていても、第1のNDフィルタ119を支障なく移動させることができる。
【0037】
また、図4及び図5に示すように、本実施形態において、第2のNDフィルタ122のカバー123側の面は、カバー123の地板110側の面とクリアランスのない状態、即ち、同一平面上に位置するように構成されている。この構成によって、第2のNDフィルタ122をカバー123に近づけた位置に配置することができ、光量調節装置をより薄型にすることができる。ここで、第2のNDフィルタ122のカバー123側の面を、カバー123の地板110側の面よりも、カバー123側に位置するように構成しても良い。つまり、第2のNDフィルタ122とカバー123とを、光軸方向(Z方向)に重なる位置に配置しても良い。この構成によって、光量調節装置の更なる薄型化が実現できる。
【0038】
上記のいずれの場合においても、第2のNDフィルタ122は、カバー123に設けられた開口部123aの範囲内で移動される。つまり、第2のNDフィルタ122がどの位置に移動しても、開口部123aと対向するように構成されている。そのため、前述のように、第2のNDフィルタ122とカバー123とが光軸方向に一部重なるように設けられていても、第2のNDフィルタ122を支障なく移動させることができる。
【0039】
(各部材の構成)
以下に、本実施形態における各部材の構成を説明する。赤外線遮断フィルタ116は、基材上に赤外線のみを反射あるいは吸収する薄膜を蒸着等で形成することによって構成される。基材は、ガラスであっても、樹脂であっても良いが、耐熱性を考慮すると、ガラスを材料としていることが好ましい。薄膜は、例えば赤外線吸収体と赤外線反射体とを組み合わせて用いられる。赤外線吸収体は、典型的には、620nm~660nmの波長帯域の波長の光に対して、50%の光透過特性を示す。一方、赤外線反射体は、典型的には、670nm~690nmの波長帯域の波長の光に対して、50%の光透過特性を示す。これらの組み合わせによって、620nm~660nmの波長帯域の波長の光に対して、50%の光透過特性を示すフィルタが得られる。
【0040】
赤外線透過フィルタ115は、ガラス或いは樹脂から成る基板上に、反射防止膜等の薄膜を蒸着等で形成することによって構成される。この赤外線透過フィルタ115は、400nm~1000nmの波長帯域の光に対して透過率を高めたフィルタである。それ以外の波長帯域の光に対しては、撮像素子に悪影響を及ぼしうるノイズ等を防止するため、反射率を高めている。ただし、上記した赤外線遮断フィルタ116及び赤外線透過フィルタ115の特性は一例であり、上記とは異なる波長範囲に対して光透過或いは反射特性を有していても良い。
【0041】
赤外線遮断フィルタ116及び赤外線透過フィルタ115は、保持羽根114にそれぞれ融着、接着等の方法により固定されている。赤外線遮断フィルタ116には、衝撃緩和シート117が貼られている。この衝撃緩和シート117は、緩衝部材を構成するものである。衝撃緩和シート117は、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)材等を用いて形成することができるが、衝撃を緩和できる材料であれば、材質はどのようなものでも構わない。本実施形態においては、衝撃緩和シート117が開口部117aを有し、赤外線遮断フィルタ116の外周を囲む形状としているが、コの字形状であっても良いし、フィルタの一辺を保護する形状でも良い。フィルタ同士或いはフィルタと他の部材との直接の衝突を防止するものであれば、どのような形状でも構わない。
【0042】
第1及び第2のNDフィルタ119及び122は、PET材を用いて形成するのが一般的である。ただ、この場合、レンズの集光によりPET材が反ってしまい、光学特性が変化する恐れがある。そのため、大型の撮像装置に搭載する場合は、材質を耐熱性の高いガラスとすることが好ましい。撮像装置にNDフィルタを用いるのは、次のような理由による。撮像装置においては、羽根の開閉によって開口径を変化させて光量を調節する絞りが設けられている。ここで、ある大きさより開口径を小さくすると、光線の回折現象が起き、撮像された画像の解像度が低下する。解像度が低下しない範囲の最小の開口径を「小絞り」と呼んでいるが、この小絞りよりも透過光量を減少させたいときがある。このようなときに、光路中にNDフィルタを挿入し、撮像素子に到達する光量を減らしている。近年、撮像素子の感度が向上するに従い、上記のNDフィルタの光学濃度を濃くして、被写界の明るさが同一でも、更に上記絞りの開口を大きくする様になってきている。
【0043】
地板110及び仕切り部材118は、例えば樹脂を用いた成形によって形成される。そのため、これらの部材に設けられた各ガイドピンや絞り駆動部の収容形状等が、部材の本体と一体に成形される。保持羽根114、第1の保持羽根120及び第2の保持羽根121は、弾性を有するシート状部材から構成される。これらの保持羽根は、例えば薄板のシート材をプレス加工等によって型抜きすることによって形成される。
【0044】
(本実施形態の変形例)
本実施形態の変形例を以下に説明する。本実施形態においては、光通過開口から退避している状態でも、第1のNDフィルタ119と光軸方向(Z方向)に一部が重なる赤外線遮断フィルタ116に衝撃緩和シート117を設けた。ただ、赤外線透過フィルタ115にも衝撃緩和シートを設けても良い。この場合、赤外線透過フィルタ115が第1のNDフィルタ119と対向する状態となったときの、接触による破損を防止することができる。また、仕切り部材118との接触によるフィルタや仕切り部材118の破損も防止することができる。本実施形態では、赤外線遮断フィルタ116のカバー側の面に衝撃緩和シート117を設けているが、地板側の面にも衝撃緩和シートを設けても良い。更に、第1のNDフィルタ119の地板110側にも、衝撃緩和シートを設けても構わない。
【0045】
<第2実施形態>
図6は、本発明の第2実施形態係る光量調節装置の分解斜視図である。図6において、図1と同一の部材には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。本実施形態は、後述するカバー側衝撃緩和シートを設けた以外は、第1実施形態と同一の構成を有する。そのため、以下の説明においては、第1実施形態と同一の構成については説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
【0046】
図6に示すように、本実施形態においては、カバー123の外側の面(地板110との間に形成される空間とは反対側の面)に、他の緩衝部材として、カバー側衝撃緩和シート124が設けられている。このカバー側衝撃緩和シート124は、カバー123に融着、接着等の方法により固定される。ここで、カバー側衝撃緩和シート124は開口部124aを有し、光軸方向(Z方向)から見たときに、開口部124aとカバー123の開口部123aとの一部が重なるように構成されている。第1実施形態で説明したように、地板110の開口部110aが光通過開口を規定する。一方、カバー123の開口部123aは、開口部110aよりも面積が大きい。
【0047】
図7は、本発明の第2実施形態におけるフィルタの移動を説明する概略正面図である。図7において、図6と同一の部材には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。図7(A)は、第1及び第2のNDフィルタ119及び122のいずれも、地板110の開口部110a(光通過開口)に挿入されていない状態である。一方、図7(B)は、第2のNDフィルタ122が、光通過開口に挿入された状態を示す。これらの図に示すように、カバー側衝撃緩和シート124における開口部124aの幅(Y方向の長さ)は、第2のNDフィルタ122の外形の幅(Y方向の長さ)よりも狭く形成されている。これらの幅とは、光軸方向(Z方向)とフィルタの移動方向(X方向)の両方に直交する方向(Y方向)の長さと言い換えることができる。
【0048】
図8図7(A)の状態における光量調節装置の概略断面図である。図8において、図6と同一の部材には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。図8において、光量調節装置のカバー123側には、撮像装置の鏡筒部品125が配置されている。この鏡筒部品125の外装は、金属や樹脂で構成されるのが一般的である。第2のNDフィルタ122は、通常の動作状態(静的状態)では、鏡筒部品125側のカバー123の面よりも地板110側で動作する。ところが、光量調節装置を搭載した撮像装置を落下させてしまったような場合、この際の衝撃で絞り保持羽根121が想定以上に撓んで、第2のNDフィルタ122がカバー123から飛び出してしまう恐れがある。
【0049】
上記のような場合、カバー側衝撃緩和シート124が第2のNDフィルタ122の動きを規制することにより、鏡筒部品125との接触による破損を防ぐことができる。また、この構成によって、光量調整装置と鏡筒部品125とのクリアランスを必要以上に広く取る必要がなくなる。例えば、このクリアランスをカバー側衝撃緩和シート124の厚さ分まで狭くすることもできる。このため、撮像装置全体を光軸方向に小型化することができる。撮像装置においては、鏡筒部品125以外にも、多くの部材を狭いクリアランスで配置する場合が多い。本発明は、このような撮像装置において特に、小型化の効果を発揮するものである。
【0050】
(光量調整装置を搭載した撮像装置)
図9は、以上説明したような光量調節装置を搭載した撮像装置の一例を示す概略構成図である。このような撮像装置としては、例えばビデオカメラ等が挙げられる。図9の撮像装置は、CCDセンサやCMOSセンサ等の光電変換素子により構成される撮像素子225を備えている。この撮像素子225の受光面には、撮像光学系221によって被写体像が形成される。撮像光学系221は、変倍レンズ232、第1及び第2実施形態のいずれかの光量調節装置100及びフォーカスレンズ229を含む。
【0051】
撮像素子225は、撮像光学系221によって形成された被写体像を光電変換して電気信号を出力する。ここで、光量調節装置100の駆動部5を制御することにより、各実施形態で説明したように、赤外線遮断フィルタと赤外線透過フィルタを切り替えることができる。また、第1及び第2のNDフィルタを光通過開口に対して進退させることにより、撮像素子225上に形成される被写体像の明るさ(つまりは撮像素子225に到達する光量)を適正に設定することができる。ここで、駆動部5は、第1及び第2実施形態における電磁アクチュエータ130、第1の絞り駆動部103及び第2の絞り駆動部101を含むものである。
【0052】
図9の撮像素子225から出力された電気信号は、画像処理回路226においてデジタル信号に変換されるとともに、種々の画像処理を施される。これにより、画像信号が生成される。また、ユーザは、ズームリング231を回転操作することにより、変倍レンズ232を移動させて変倍(ズーミング)を行わせることが出来る。コントローラ222は、画像信号のコントラストを検出し、そのコントラストに応じてフォーカスモータ228を制御し、フォーカスレンズ229を移動させてオートフォーカスを行う。また、コントローラ222は、不図示の位相差検出方式を用いた焦点検出手段の検出信号に基づいて、フォーカスモータ228を制御し、フォーカスレンズ229を移動させてオートフォーカスを行ってもよい。
【0053】
さらに、コントローラ222は、不図示の測光手段の測光値あるいは画像信号に基づいて、絞り装置100の駆動部5を制御し、光量を調節する。これにより、撮影時のボケやゴーストを自然な形状にすることができ、高画質の画像を記録することができる。
【符号の説明】
【0054】
110 地板
114 保持羽根
115 赤外線透過フィルタ
116 赤外線遮断フィルタ
117 衝撃緩和シート
118 仕切り部材
123 カバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9