(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094182
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】船外機およびドライブシャフト組付方法
(51)【国際特許分類】
B63H 20/14 20060101AFI20230628BHJP
【FI】
B63H20/14 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209506
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】彦坂 智和
(57)【要約】
【課題】駆動ギヤをドライブシャフトに一体形成した場合でも、ドライブシャフトおよび駆動ギヤをロアケース内に組み付けることができるようにする。
【解決手段】船外機のロアケース11の下側ギヤ室15内において、前側被動ギヤ47の前方には、前側被動ギヤ47の前後方向の位置を設定するギヤ位置設定部材67が設けられ、また、設定部材配置穴61およびギヤ位置設定部材67には、ギヤ位置設定部材67をその軸線Aを中心として回転させたときにギヤ位置設定部材67を前後方向に移動させるねじ機構が設けられている。メイン駆動ギヤ46が一体形成された下側ドライブシャフト38をロアケース11内に組み付ける際には、ギヤ位置設定部材67を回転させることによりギヤ位置設定部材67を前方に移動させ、これにより、前側被動ギヤ47を前方に移動させ、下側ギヤ室15内においてドライブシャフト配置穴16の下方に位置する空き領域を拡大させる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギヤ室、前記ギヤ室の上方から前記ギヤ室と連通したドライブシャフト配置穴、および前記ギヤ室の後方から前記ギヤ室と連通したプロペラシャフト配置穴を有するケースと、
上下方向に伸長し、前記ドライブシャフト配置穴内に配置されたドライブシャフトと、
前後方向に伸長し、前記プロペラシャフト配置穴内に配置されたプロペラシャフトと、
ベベルギヤであり、前記ドライブシャフトの下端側に結合され、前記ギヤ室内に配置された駆動ギヤと、
ベベルギヤであり、前記プロペラシャフトの前端側に結合され、前記ギヤ室内において前記駆動ギヤの前方に配置され、前記駆動ギヤと噛合した被動ギヤと、
前記ケース内において前記被動ギヤの前方に設けられ、前記被動ギヤの前後方向の位置を設定するギヤ位置設定部材と、
前記ギヤ位置設定部材を前後方向に伸長した当該ギヤ位置設定部材の軸線を中心として回転させたときに前記ギヤ位置設定部材を前後方向に移動させるねじ機構とを備え、
前記ねじ機構は、
前記ケースに設けられ、前後方向に伸長した軸線を有する第1のねじと、
前記ギヤ位置設定部材に設けられ、前後方向に伸長した軸線を有し、前記第1のねじと螺合した第2のねじとを備えていることを特徴とする船外機。
【請求項2】
前記ギヤ位置設定部材は、前後方向に伸長した軸線を有する円柱状または有底円筒状に形成され、
前記ギヤ位置設定部材の中心部には、前記ギヤ位置設定部材を回転させるための工具を取り付ける工具取付部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の船外機。
【請求項3】
前記ケースに着脱可能に設けられ、前記ギヤ位置設定部材を前記ケースに回転不能に固定する固定部材を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の船外機。
【請求項4】
前記駆動ギヤは前記ドライブシャフトと一体形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の船外機。
【請求項5】
ギヤ室、前記ギヤ室の上方から前記ギヤ室と連通したドライブシャフト配置穴、および前記ギヤ室の後方から前記ギヤ室と連通したプロペラシャフト配置穴を有するケースと、
上下方向に伸長し、前記ドライブシャフト配置穴内に配置されたドライブシャフトと、
前後方向に伸長し、前記プロペラシャフト配置穴内に配置されたプロペラシャフトと、
ベベルギヤであり、前記ドライブシャフトの下端側に当該ドライブシャフトと一体形成され、前記ギヤ室内に配置された駆動ギヤと、
ベベルギヤであり、前記プロペラシャフトの前端側に結合され、前記ギヤ室内において前記駆動ギヤの前方に配置され、前記駆動ギヤと噛合した被動ギヤと、
前記ケース内において前記被動ギヤの前方に設けられ、前記被動ギヤの前後方向の位置を設定するギヤ位置設定部材と、
前記ギヤ位置設定部材を前後方向に伸長した当該ギヤ位置設定部材の軸線を中心として回転させたときに前記ギヤ位置設定部材を前後方向に移動させるねじ機構とを備えた船外機において、前記駆動ギヤが一体形成された前記ドライブシャフトを前記ケース内に組み付けるドライブシャフト組付方法であって、
前記被動ギヤを前記駆動ギヤと噛合させる設定位置よりも前方に前記被動ギヤを配置した状態で、前記ドライブシャフトを前記プロペラシャフト挿通穴から前記ギヤ室内に挿入し、続いて、当該ドライブシャフトを前記ギヤ室内から前記ドライブシャフト挿通穴内に挿入するドライブシャフト挿入工程と、
前記ギヤ位置設定部材を回転させるための工具を前記プロペラシャフト挿通穴から前記ギヤ室内へ挿入し、前記工具を前記ギヤ位置設定部材に取り付ける工具取付工程と、
前記工具により前記ギヤ位置設定部材を回転させ、前記被動ギヤを前記設定位置に移動させて前記駆動ギヤと噛合させる被動ギヤ移動工程とを備えていることを特徴とするドライブシャフト組付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船外機、および駆動ギヤが一体形成されたドライブシャフトを船外機のロアケースに組み付けるドライブシャフト組付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの船外機は、船外機の上部に設けられた動力源と、動力源から下方に伸長したドライブシャフトと、船外機の下部に設けられ、前後方向に伸長したプロペラシャフトと、プロペラシャフトに取り付けられたプロペラと、船外機の下部に設けられ、ドライブシャフトの回転をプロペラシャフトに伝達するギヤ機構とを備えている。
【0003】
また、このような船外機において、ギヤ機構等は、船外機の下部に設けられたロアケース内に配置されている。具体的に述べると、ロアケース内にはギヤ室が設けられ、ギヤ室内にギヤ機構が収容されている。また、ロアケース内には、ギヤ室の上方からギヤ室と連通したドライブシャフト配置穴が設けられ、ドライブシャフト配置穴内に、ドライブシャフトが配置されている。また、ロアケース内には、ギヤ室の後方からギヤ室と連通したプロペラシャフト配置穴が設けられ、プロペラシャフト配置穴内には、プロペラシャフトが配置されている。
【0004】
また、ギヤ機構は、ドライブシャフトの下端部に結合された駆動ギヤ、およびプロペラシャフトの前端部に結合された被動ギヤを有している。上下方向に伸長したドライブシャフトの回転を、前後方向に伸長したプロペラシャフトに伝達するために、駆動ギヤおよび被動ギヤとしてそれぞれベベルギヤが用いられる。また、多くの船外機のギヤ機構は2個の被動ギヤを有している。すなわち、二重反転プロペラ方式の船外機のギヤ機構には、ドライブシャフトの回転を2本のプロペラシャフトにそれぞれ伝達するために、2個の被動ギヤが設けられている。また、プロペラシャフトが1本である船外機においても、多くの場合、ドライブシャフトからプロペラシャフトへ伝達する回転の方向をクラッチにより切替可能にするために、ギヤ機構には2個の被動ギヤが設けられている。また、二重反転プロペラ方式の船外機のギヤ機構においても、プロペラシャフトが1本の船外機のギヤ機構においても、2個の被動ギヤのうち、一方の被動ギヤは、駆動ギヤの前方に配置され、駆動ギヤの前方から駆動ギヤに噛合しており、他方の被動ギヤは、駆動ギヤの後方に配置され、駆動ギヤの後方から駆動ギヤに噛合している。
【0005】
このような構成を有する従来の二重反転プロペラ式の船外機において、ドライブシャフトと駆動ギヤとはそれぞれ別々に形成され、駆動ギヤはドライブシャフトの下端部に嵌合されている。また、プロペラシャフトと被動ギヤもそれぞれ別々に形成され、被動ギヤはプロペラシャフトの前端部に嵌合されている。また、上記構成を有する従来の船外機であって、プロペラシャフトが1本のものにおいても、ドライブシャフトと駆動ギヤとはそれぞれ別々に形成され、駆動ギヤはドライブシャフトの下端部に嵌合されている。また、プロペラシャフトが1本の船外機においては、各被動ギヤがクラッチを介してプロペラシャフトに接続される構造となっており、その構造上、被動ギヤとプロペラシャフトとはそれぞれ別々に形成されている。
【0006】
下記の特許文献1の
図2に記載された従来の二重反転プロペラ式の船外機(1)は、ピニオン歯車(18)および下側ドライブ軸(172)を備えている。ピニオン歯車(18)は駆動ギヤに対応し、下側ドライブ軸(172)はドライブシャフトに対応する。船外機(1)において、下側ドライブ軸(172)とピニオン歯車(18)とはそれぞれ別々に形成され、ピニオン歯車(18)は下側ドライブ軸(172)に嵌合されている。また、船外機(1)は、前側歯車(21)、後側歯車(22)、内側軸(231)および外側軸(232)を備えている。前側歯車(21)および後側歯車(22)はそれぞれ被動ギヤに対応し、内側軸(231)および外側軸(232)はそれぞれプロペラシャフトに対応する。船外機(1)において、内側軸(231)と前側歯車(21)とはそれぞれ別々に形成され、前側歯車(21)は内側軸(231)に嵌合されている。また、外側軸(232)と後側歯車(22)とはそれぞれ別々に形成され、後側歯車(22)は外側軸(232)に嵌合されている。なお、上記丸括弧付きの符号は特許文献1に記載された符号である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来の船外機において、ドライブシャフトと駆動ギヤとはそれぞれ別々に形成され、駆動ギヤはドライブシャフトの下端部に嵌合されている。しかしながら、動力源のトルクを増大させた場合、駆動ギヤをドライブシャフトに嵌合させる構造では、動力源の動力のドライブシャフトからプロペラシャフトへの伝達を安定させることが困難な場合がある。そこで、駆動ギヤをドライブシャフトに一体形成することが考えられる。駆動ギヤをドライブシャフトに一体形成することにより、ドライブシャフトと駆動ギヤとの結合強度を高めることができ、ドライブシャフトからプロペラシャフトへの動力伝達の安定性を高めることができる。
【0009】
ところが、駆動ギヤをドライブシャフトに一体形成した場合、ドライブシャフトおよび駆動ギヤをロアケース内に組み付けることが困難になるという問題がある。
【0010】
例えば、上記従来の二重反転プロペラ式の船外機において、ドライブシャフト、2本のプロペラシャフト、駆動ギヤおよび2個の被動ギヤをロアケース内に組み付ける作業は、概ね次のように行われる。まず、2個の被動ギヤのうち、駆動ギヤの前方に配置される被動ギヤ(以下、これを「前側被動ギヤ」という。)を、ロアケースの後方からプロペラシャフト配置穴を通してギヤ室内に挿入し、ギヤ室内に取り付ける。次に、駆動ギヤをロアケースの後方からプロペラシャフト配置穴を通してギヤ室内に挿入し、また、ドライブシャフトをロアケースの上方からドライブシャフト配置穴を通し、ギヤ室内において、駆動ギヤを前側被動ギヤに噛合させつつドライブシャフトの下端部に嵌合し、かつドライブシャフトをドライブシャフト配置穴に取り付ける。次に、駆動ギヤの後方に配置される被動ギヤ、および2本のプロペラシャフトを、ロアケースの後方からプロペラシャフト配置穴内に挿入し、これらをギヤ室内またはプロペラシャフト配置穴内に組み付ける。
【0011】
駆動ギヤをドライブシャフトに一体形成した場合には、駆動ギヤが一体形成されたドライブシャフトをロアケース内に組み付ける必要がある。駆動ギヤが一体形成されたドライブシャフトをロアケース内に組み付ける方法として次の2通りの方法が考えられる。
【0012】
第1の方法は、
図10(A)に示すように、駆動ギヤ121が一体形成されたドライブシャフト122をロアケース123の上方からドライブシャフト配置穴126内に挿入し、駆動ギヤ121をギヤ室125内に入れると共に、ドライブシャフト122をドライブシャフト配置穴126内に取り付ける方法である。
【0013】
第2の方法は、
図10(B)に示すように、駆動ギヤ121が一体形成されたドライブシャフト122をロアケース123の後方からプロペラシャフト配置穴124を通してギヤ室125内に挿入し、そのドライブシャフト122を、ドライブシャフト配置穴126内に下方から挿入してドライブシャフト配置穴126内に取り付ける方法である。
【0014】
しかしながら、第1の方法は次の理由により採用することが困難である。すなわち、
図10(A)を見るとわかる通り、ドライブシャフト配置穴126の直径は、駆動ギヤ121の直径よりも小さいので、駆動ギヤ121をドライブシャフト配置穴126内に挿入することができない。それゆえ、第1の方法では、駆動ギヤ121が一体形成されたドライブシャフト122をロアケース123内に組み付けることができない。この点、ドライブシャフト配置穴126の直径を駆動ギヤ121の直径よりも大きくすることにより、駆動ギヤ121が一体形成されたドライブシャフト122をロアケース123内に組み付けることが可能になる。しかしながら、ドライブシャフト配置穴126の直径を駆動ギヤ121の直径よりも大きくした場合には、ロアケース123の横幅が大きくなり、航行時の水の抵抗が増大する。したがって、ドライブシャフト配置穴126の直径を駆動ギヤ121の直径よりも大きくすることは好ましくない。
【0015】
また、第2の方法は次の理由により採用することが困難である。すなわち、
図10(B)に示すように、駆動ギヤ121が一体形成されたドライブシャフト122をプロペラシャフト配置穴124内に挿入する前に、前側被動ギヤ127をギヤ室125内に取り付けておく必要がある。前側被動ギヤ127がギヤ室125内に取り付けられた状態では、この前側被動ギヤ127が邪魔になって、駆動ギヤ121が一体形成されたドライブシャフト122を、ドライブシャフト配置穴126に下方から挿入することができない。
【0016】
本発明は例えば上述したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、駆動ギヤをドライブシャフトに一体形成した場合であっても、ドライブシャフトおよび駆動ギヤをロアケース内に組み付けることができる船外機およびドライブシャフト組付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明の船外機は、ギヤ室、前記ギヤ室の上方から前記ギヤ室と連通したドライブシャフト配置穴、および前記ギヤ室の後方から前記ギヤ室と連通したプロペラシャフト配置穴を有するケースと、上下方向に伸長し、前記ドライブシャフト配置穴内に配置されたドライブシャフトと、前後方向に伸長し、前記プロペラシャフト配置穴内に配置されたプロペラシャフトと、ベベルギヤであり、前記ドライブシャフトの下端側に結合され、前記ギヤ室内に配置された駆動ギヤと、ベベルギヤであり、前記プロペラシャフトの前端側に結合され、前記ギヤ室内において前記駆動ギヤの前方に配置され、前記駆動ギヤと噛合した被動ギヤと、前記ケース内において前記被動ギヤの前方に設けられ、前記被動ギヤの前後方向の位置を設定するギヤ位置設定部材と、前記ギヤ位置設定部材を前後方向に伸長した当該ギヤ位置設定部材の軸線を中心として回転させたときに前記ギヤ位置設定部材を前後方向に移動させるねじ機構とを備え、前記ねじ機構は、前記ケースに設けられ、前後方向に伸長した軸線を有する第1のねじと、前記ギヤ位置設定部材に設けられ、前後方向に伸長した軸線を有し、前記第1のねじと螺合した第2のねじとを備えていることを特徴とする。
【0018】
また、上記課題を解決するために、本発明のドライブシャフト組付方法は、ギヤ室、前記ギヤ室の上方から前記ギヤ室と連通したドライブシャフト配置穴、および前記ギヤ室の後方から前記ギヤ室と連通したプロペラシャフト配置穴を有するケースと、上下方向に伸長し、前記ドライブシャフト配置穴内に配置されたドライブシャフトと、前後方向に伸長し、前記プロペラシャフト配置穴内に配置されたプロペラシャフトと、ベベルギヤであり、前記ドライブシャフトの下端側に当該ドライブシャフトと一体形成され、前記ギヤ室内に配置された駆動ギヤと、ベベルギヤであり、前記プロペラシャフトの前端側に結合され、前記ギヤ室内において前記駆動ギヤの前方に配置され、前記駆動ギヤと噛合した被動ギヤと、前記ケース内において前記被動ギヤの前方に設けられ、前記被動ギヤの前後方向の位置を設定するギヤ位置設定部材と、前記ギヤ位置設定部材を前後方向に伸長した当該ギヤ位置設定部材の軸線を中心として回転させたときに前記ギヤ位置設定部材を前後方向に移動させるねじ機構とを備えた船外機において、前記駆動ギヤが一体形成された前記ドライブシャフトを前記ケース内に組み付けるドライブシャフト組付方法であって、前記被動ギヤを前記駆動ギヤと噛合させる設定位置よりも前方に前記被動ギヤを配置した状態で、前記ドライブシャフトを前記プロペラシャフト挿通穴から前記ギヤ室内に挿入し、続いて、当該ドライブシャフトを前記ギヤ室内から前記ドライブシャフト挿通穴内に挿入するドライブシャフト挿入工程と、前記ギヤ位置設定部材を回転させるための工具を前記プロペラシャフト挿通穴から前記ギヤ室内へ挿入し、前記工具を前記ギヤ位置設定部材に取り付ける工具取付工程と、前記工具により前記ギヤ位置設定部材を回転させ、前記被動ギヤを前記設定位置に移動させて前記駆動ギヤと噛合させる被動ギヤ移動工程とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、駆動ギヤをドライブシャフトに一体形成した場合であっても、ドライブシャフトおよび駆動ギヤをロアケース内に組み付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施例の船外機を示す全体図である。
【
図2】本発明の実施例の船外機の下部の内部を示す断面図である。
【
図3】
図2中の上側ギヤ機構およびクラッチ等を拡大して示す断面図である。
【
図4】
図2中の下側ギヤ機構等を拡大して示す断面図である。
【
図5】本発明の実施例の船外機における下側ギヤ室を示す断面図である。
【
図6】本発明の実施例の船外機におけるギヤ位置設定部材を前方から見た状態を示す説明図である。
【
図7】(A)は
図6中のギヤ位置設定部材を左方から見た状態を示す説明図であり、(B)は
図6中の切断線VII-VIIに沿って切断したギヤ位置設定部材の断面および工具を示す説明図である。
【
図8】本発明の実施例におけるドライブシャフト組付作業工程を示す説明図である。
【
図9】本発明の船外機のねじ機構および工具取付部等の他の実施例を示す説明図である。
【
図10】従来の船外機において、駆動ギヤが一体形成されたドライブシャフトのロアケース内への組付の困難性を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態の船外機は、ギヤ室、ギヤ室の上方からギヤ室と連通したドライブシャフト配置穴、およびギヤ室の後方からギヤ室と連通したプロペラシャフト配置穴を有するケースと、上下方向に伸長し、ドライブシャフト配置穴内に配置されたドライブシャフトと、前後方向に伸長し、プロペラシャフト配置穴内に配置されたプロペラシャフトとを備えている。また、本発明の実施形態の船外機は駆動ギヤおよび被動ギヤを備えている。駆動ギヤは、ベベルギヤであり、ドライブシャフトの下端側に結合され、ギヤ室内に配置されている。被動ギヤは、ベベルギヤであり、プロペラシャフトの前端側に結合され、ギヤ室内において駆動ギヤの前方に配置され、駆動ギヤと噛合している。さらに、本発明の実施形態の船外機はギヤ位置設定部材およびねじ機構を備えている。ギヤ位置設定部材は、ケース内において被動ギヤの前方に設けられ、被動ギヤの前後方向の位置を設定する部材である。ねじ機構は、ギヤ位置設定部材を前後方向に伸長した当該ギヤ位置設定部材の軸線を中心として回転させたときにギヤ位置設定部材を前後方向に移動させる機構である。また、ねじ機構は、ケースに設けられ、前後方向に伸長した軸線を有する第1のねじと、ギヤ位置設定部材に設けられ、前後方向に伸長した軸線を有し、第1のねじと螺合した第2のねじとを備えている。
【0022】
本実施形態の船外機によれば、駆動ギヤがドライブシャフトに一体形成されている場合でも、そのドライブシャフトをケース内に組み付けることができる。すなわち、ギヤ位置設定部材をその軸線を中心に回転させ、ギヤ位置設定部材を前方に移動させることにより、ギヤ室内に配置された被動ギヤを前方に移動させることができる。被動ギヤが前方に移動することにより、ギヤ室内に連通しているドライブシャフト配置穴のギヤ室内への開口部から被動ギヤが離れ、その結果、ギヤ室内において、ドライブシャフト配置穴の下方に位置する空き領域が拡大する。したがって、被動ギヤを前方に移動させた後においては、駆動ギヤが一体形成されたドライブシャフトをケースの後方からプロペラシャフト配置穴を通してギヤ室内に挿入し、そのドライブシャフトを、ドライブシャフト配置穴内に下方から挿入してドライブシャフト配置穴に取り付けることができる。その後、ギヤ位置設定部材を反対方向に回転させ、ギヤ位置設定部材と共に被動ギヤを後方に移動させ、被動ギヤを駆動ギヤと噛合させることができる。
【0023】
また、本発明の実施形態のドライブシャフト組付方法は、上記本発明の実施形態の船外機であって、駆動ギヤがドライブシャフトの下端側に当該ドライブシャフトと一体形成された構成を有するものにおいて、駆動ギヤが一体形成されたドライブシャフトをケース内に組み付ける方法である。本発明の実施形態のドライブシャフト組付方法は、被動ギヤを駆動ギヤと噛合させる設定位置よりも前方に被動ギヤを配置した状態で、ドライブシャフトをプロペラシャフト挿通穴からギヤ室内に挿入し、続いて、当該ドライブシャフトをギヤ室内からドライブシャフト挿通穴内に挿入するドライブシャフト挿入工程と、ギヤ位置設定部材を回転させるための工具をプロペラシャフト挿通穴からギヤ室内へ挿入し、工具をギヤ位置設定部材に取り付ける工具取付工程と、工具によりギヤ位置設定部材を回転させ、被動ギヤを設定位置に移動させて駆動ギヤと噛合させる被動ギヤ移動工程とを備えている。本実施形態のドライブシャフト組付方法によれば、駆動ギヤが一体形成されたドライブシャフトをケース内に容易に組み付けることができる。
【実施例0024】
本発明の船外機の実施例について説明する。実施例において、上(Ud)、下(Dd)、前(Fd)、後(Bd)、左(Ld)、右(Rd)の方向を述べる際には、
図1~
図8の右下に描いた矢印に従う。
【0025】
(船外機)
図1は本発明の実施例の船外機1を示している。
図1に示すように、船外機1は、二重反転プロペラ方式の船外機である。船外機1は、動力源としてのエンジン2と、前側プロペラ3と、前側プロペラ3が取り付けられた外側プロペラシャフト4と、後側プロペラ5と、後側プロペラ5が取り付けられた内側プロペラシャフト6と、エンジン2の動力を各プロペラシャフト4、6に伝達する動力伝達機構7とを備えている。エンジン2は船外機1の上部に配置され、各プロペラシャフト4、6は船外機1の下部に配置され、動力伝達機構7はエンジン2と各プロペラシャフト4、6との間に配置されている。また、動力伝達機構7は、上側ドライブシャフト21、上側ギヤ機構22、クラッチ27、中間ドライブシャフト35、連結部材36、下側ドライブシャフト38、および下側ギヤ機構45を備えている。
【0026】
エンジン2はボトムカウル8およびトップカウル9により覆われている。また、上側ドライブシャフト21はアッパーケース10内に配置されている。また、上側ギヤ機構22、クラッチ27、中間ドライブシャフト35、連結部材36、下側ドライブシャフト38および下側ギヤ機構45は、船外機1の下部に設けられたロアケース11内に配置されている。また、外側プロペラシャフト4および内側プロペラシャフト6のそれぞれの前端側部分はロアケース11内に配置されている。なお、ロアケース11は「ケース」の具体例であり、下側ドライブシャフト38は「ドライブシャフト」の具体例である。また、外側プロペラシャフト4および内側プロペラシャフト6はそれぞれ「プロペラシャフト」の具体例である。
【0027】
(ロアケース)
図2は、各ドライブシャフト21、35、38および各プロペラシャフト4、6のそれぞれの軸心を含む前後方向および上下方向に拡がる平面で、船外機1の下部に設けられた部品を切断した断面を左方から見た状態を示している。
図2において、ロアケース11は上部が開口した大略箱状に形成され、ロアケース11の上部には、ロアケース11の上部の一部を覆う蓋部材12が設けられている。また、蓋部材12にはドライブシャフト挿入穴13が形成されている。
【0028】
また、ロアケース11内の前上部には上側ギヤ室14が設けられている。ドライブシャフト挿入穴13は上側ギヤ室14と連通している。また、ロアケース11の前下部には下側ギヤ室15が設けられている。また、ロアケース11内において上側ギヤ室14と下側ギヤ室15との間には、両室間を接続するドライブシャフト配置穴16が形成されている。ドライブシャフト配置穴16は、上下方向に伸長しており、下側ギヤ室15の上方から下側ギヤ室15と連通している。また、ロアケース11内において下側ギヤ室15の後方には、プロペラシャフト配置穴17が形成されている。プロペラシャフト配置穴17は、前後方向に伸長しており、下側ギヤ室15の後方から下側ギヤ室15と連通している。なお、下側ギヤ室15は「ギヤ室」の具体例である。
【0029】
(上側ドライブシャフト)
図1に示すように、上側ドライブシャフト21は上下方向に伸長し、その上端側がエンジン2に接続されている。また、上側ドライブシャフト21の下端側は、
図2に示すように、ドライブシャフト挿入穴13に挿入されている。上側ドライブシャフト21はエンジン2の動力により一方向に回転する。上側ドライブシャフト21の回転方向を正方向とする。
【0030】
(上側ギヤ機構、クラッチ)
図3は、
図2中の上側ギヤ機構22およびクラッチ27等を拡大して示している。上側ギヤ機構22は、上側ドライブシャフト21の回転に対して逆方向の回転を生成する機構である。上側ギヤ機構22は上側ギヤ室14内に配置されている。上側ギヤ機構22は、
図3に示すように、リバース駆動ギヤ23、リバース中間ギヤ24およびリバース出力ギヤ25を備えている。
【0031】
リバース駆動ギヤ23は、ベベルギヤであり、歯が形成された部分が下を向くように上側ギヤ室14の上部に配置され、蓋部材12にベアリングを介して回転可能に支持されている。また、リバース駆動ギヤ23は上側ドライブシャフト21の下端部に例えばスプライン結合(嵌合)され、上側ドライブシャフト21と一体に回転する。
【0032】
リバース中間ギヤ24は、ベベルギヤであり、歯が形成された部分が後ろを向くように上側ギヤ室14の前部に配置されている。また、リバース中間ギヤ24にはシャフトが一体形成されており、リバース中間ギヤ24のシャフトは、ロアケース11にベアリングを介して回転可能に支持されている。
【0033】
リバース出力ギヤ25は、ベベルギヤであり、歯が形成された部分が上を向くように上側ギヤ室14の下部に配置され、ロアケース11にベアリングを介して回転可能に支持されている。また、リバース出力ギヤ25の中心部には貫通穴26が形成されている。貫通穴26内には中間ドライブシャフト35の上端側部分が挿入されているが、貫通穴26と中間ドライブシャフト35の上端側部分とは互いに離間している。
【0034】
リバース駆動ギヤ23はリバース中間ギヤ24と噛合し、リバース中間ギヤ24はリバース出力ギヤ25と噛合している。リバース駆動ギヤ23が正方向に回転したとき、その回転がリバース中間ギヤ24を介してリバース出力ギヤ25に伝達され、リバース出力ギヤ25が逆方向に回転する。
【0035】
クラッチ27はドッグクラッチであり、円筒状に形成され、上端面および下端面にそれぞれクラッチ爪28が形成されている。また、クラッチ27の外周面には溝29が全周に亘って形成されている。クラッチ27はリバース駆動ギヤ23とリバース出力ギヤ25との間に配置されている。上側ギヤ室14内において、中間ドライブシャフト35の上端側部分が、リバース出力ギヤ25の貫通穴26を貫通して、リバース駆動ギヤ23とリバース出力ギヤ25との間に進入している。クラッチ27は、中間ドライブシャフト35の上端側部分に、中間ドライブシャフト35に対して周方向には移動不能であるが、軸方向には移動可能となるように結合されている。これにより、クラッチ27と中間ドライブシャフト35とは一体に回転するが、クラッチ27は中間ドライブシャフト35に対して上下方向に移動することができる。
【0036】
また、ロアケース11内には、シフト部材30およびクラッチ制御部31が設けられている。シフト部材30の一端側は、クラッチ27の溝29内に、シフト部材30に対してクラッチ27が回転自在となるように挿入されている。また、シフト部材30の他端側は、クラッチ制御部31に設けられたアクチュエータ(図示せず)に接続されている。このアクチュエータを作動させることにより、シフト部材30を上下方向に移動させ、クラッチ27を上下方向に移動させることができる。クラッチ27が上方に移動したとき、クラッチ27の上端面に形成されたクラッチ爪28が、リバース駆動ギヤ23の下端面に形成されたクラッチ爪32と係合する。これにより、上側ドライブシャフト21の回転が直接的に中間ドライブシャフト35に伝達され、中間ドライブシャフト35が正方向に回転する。一方、クラッチ27が下方に移動したとき、クラッチ27の下端面に形成されたクラッチ爪28が、リバース出力ギヤ25の上端面に形成されたクラッチ爪33と係合する。これにより、リバース出力ギヤ25の回転が中間ドライブシャフト35に伝達され、中間ドライブシャフト35が逆方向に回転する。
【0037】
(中間ドライブシャフト、連結部材)
中間ドライブシャフト35は、上下方向に伸長し、上側ドライブシャフト21の下方に位置し、上側ドライブシャフト21と同軸に配置されている。また、中間ドライブシャフト35の上端側部分は上述したようにクラッチ27と結合されている。また、中間ドライブシャフト35の下端部は連結部材36を介して下側ドライブシャフト38に接続されている。連結部材36は筒状に形成され、その内周面にはスプラインが形成されている。また、中間ドライブシャフト35の下端部の外周面にもスプラインが形成され、下側ドライブシャフト38の上端部の外周面にもスプラインが形成されている。中間ドライブシャフト35の下端部は連結部材36の上部に挿入され、連結部材36とスプライン結合(嵌合)されている。また、下側ドライブシャフト38の上端部は連結部材36の下部に挿入され、連結部材36とスプライン結合(嵌合)されている。また、連結部材36はベアリング37を介してロアケース11に回転可能に支持されている。
【0038】
(下側ドライブシャフト)
図4は、
図2中の下側ドライブシャフト38および下側ギヤ機構45等を拡大して示している。下側ドライブシャフト38は、上下方向に伸長し、中間ドライブシャフト35の下方に位置し、中間ドライブシャフト35と同軸に配置されている。また、下側ドライブシャフト38は、
図4に示すように、ドライブシャフト配置穴16内に配置され、ドライブシャフト配置穴16にベアリング39、40を介して回転可能に支持されている。また、下側ドライブシャフト38には、ベアリング39、40のそれぞれの内輪の配置を設定するためのスペーサ41、およびベアリング39、40のそれぞれの内輪を下側ドライブシャフト38に固定するためのナット42が取り付けられている。
【0039】
また、下側ドライブシャフト38の下端部には、メイン駆動ギヤ46が一体形成されている。下側ドライブシャフト38およびメイン駆動ギヤ46は、両者が一体化した一塊の部品であり、例えば鍛造加工および切削加工により形成されている。
【0040】
(下側ギヤ機構、プロペラシャフト)
下側ギヤ機構45は、上側ドライブシャフト21、上側ギヤ機構22、クラッチ27、中間ドライブシャフト35、連結部材36および下側ドライブシャフト38を介して伝達されるエンジン2の動力を外側プロペラシャフト4および内側プロペラシャフト6に伝達する機構である。下側ギヤ機構45は下側ギヤ室15内に配置されている。下側ギヤ機構45は、
図4に示すように、メイン駆動ギヤ46、前側被動ギヤ47および後側被動ギヤ49を備えている。なお、メイン駆動ギヤ46は、下側ドライブシャフト38に一体形成されているが、機能的に見れば、下側ギヤ機構45の構成要素の1つである。また、メイン駆動ギヤ46は「駆動ギヤ」の具体例であり、前側被動ギヤ47は「被動ギヤ」の具体例である。
【0041】
メイン駆動ギヤ46は、ベベルギヤであり、歯が形成された部分が下を向くように下側ギヤ室15の上部に配置されている。
【0042】
前側被動ギヤ47は、ベベルギヤであり、歯が形成された部分が後ろを向くように下側ギヤ室15の前部に配置されている。また、前側被動ギヤ47は、ベアリング48を介してロアケース11に回転可能に支持されている。また、前側被動ギヤ47は、メイン駆動ギヤ46の前方に配置され、メイン駆動ギヤ46と噛合している。
【0043】
後側被動ギヤ49は、ベベルギヤであり、歯が形成された部分が前を向くように下側ギヤ室15の後部に配置されている。また、後側被動ギヤ49は、ベアリング50を介してロアケース11に回転可能に支持されている。また、後側被動ギヤ49は、メイン駆動ギヤ46の後方に配置され、メイン駆動ギヤ46と噛合している。
【0044】
外側プロペラシャフト4は、
図2に示すように、筒状に形成され、前後方向に伸長している。外側プロペラシャフト4は、その前端側部分がプロペラシャフト配置穴17内に配置され、ベアリング51、52を介してロアケース11に回転可能に支持されている。また、外側プロペラシャフト4の前端部には、後側被動ギヤ49がスプライン結合(嵌合)されている。これにより、後側被動ギヤ49と外側プロペラシャフト4とは一体に回転する。また、外側プロペラシャフト4の後端部には前側プロペラ3が取り付けられている。
【0045】
内側プロペラシャフト6は、前後方向に伸長し、その前部が外側プロペラシャフト4内に配置されている。また、内側プロペラシャフト6は外側プロペラシャフト4と同軸に配置されている。また、内側プロペラシャフト6は、外側プロペラシャフト4および後側被動ギヤ49に、ベアリング53、54を介して外側プロペラシャフト4および後側被動ギヤ49に対して回転可能に支持されている。また、内側プロペラシャフト6の前端部には、前側被動ギヤ47がスプライン結合(嵌合)されている。これにより、前側被動ギヤ47と内側プロペラシャフト6とは一体に回転する。また、内側プロペラシャフト6の後端部には後側プロペラ5が取り付けられている。
【0046】
下側ドライブシャフト38と一体にメイン駆動ギヤ46が回転したとき、その回転は、後側被動ギヤ49および前側被動ギヤ47にそれぞれ伝達される。その結果、外側プロペラシャフト4および内側プロペラシャフト6がそれぞれ回転する。このときの外側プロペラシャフト4および内側プロペラシャフト6の回転方向は互いに反対の方向となる。外側プロペラシャフト4および内側プロペラシャフト6の回転に伴い、前側プロペラ3および後側プロペラ5がそれぞれ回転する。
【0047】
また、クラッチ27により、上側ドライブシャフト21の正方向の回転が中間ドライブシャフト35、下側ドライブシャフト38および下側ギヤ機構45等を介して外側プロペラシャフト4および内側プロペラシャフト6に伝達されたときには、前側プロペラ3および後側プロペラ5により船舶を前進させる推進力が生成される。また、クラッチ27により、リバース出力ギヤ25の逆方向の回転が中間ドライブシャフト35、下側ドライブシャフト38および下側ギヤ機構45等を介して外側プロペラシャフト4および内側プロペラシャフト6に伝達されたときには、前側プロペラ3および後側プロペラ5により船舶を後進させる推進力が生成される。
【0048】
(設定部材配置穴、ギヤ位置設定部材)
図5は、下側ギヤ機構45等が設けられていない状態の下側ギヤ室15を示している。
図5に示すように、ロアケース11内において下側ギヤ室15の前部には、設定部材配置穴61が形成されている。設定部材配置穴61は、下側ギヤ室15から前方に伸長し、横断面形状が円形の有底の穴である。また、設定部材配置穴61は、下側ギヤ室15内に配置される前側被動ギヤ47と同軸となるように形成されている。また、設定部材配置穴61の後部の開口部付近の周面には、前後方向に伸長した軸線を有するねじ62が形成されている。なお、ねじ62は「第1のねじ」の具体例である。
【0049】
また、
図2に示すように、ロアケース11において設定部材配置穴61の上方には、ロアケース11の上部から下方に伸長した縦穴63が形成されている。この縦穴63と設定部材配置穴61との間の隔壁64には、
図5に示すように、挿通穴65が形成されている。挿通穴65は隔壁64を上下方向に貫通し、挿通穴65の下端は設定部材配置穴61の周面の最上部に開口している。また、挿通穴65は、設定部材配置穴61の前部(奥側の部分)に配置され、ねじ62の前方に位置している。また、設定部材配置穴61の周面の最下部には、止め穴66が形成されている。止め穴66は、設定部材配置穴61の周面の最下部から下方に伸長した有底の穴であり、挿通穴65の真下に位置し、挿通穴65と同軸に配置されている。また、本実施例において、挿通穴65および止め穴66は互いに同一の直径を有している。
【0050】
図4に示すように、設定部材配置穴61内にはギヤ位置設定部材67が設けられている。ギヤ位置設定部材67は、前側被動ギヤ47の前方に位置している。ギヤ位置設定部材67は、前側被動ギヤ47の前後方向の位置を設定する機能を有している。
【0051】
図6はギヤ位置設定部材67を前方から見た状態を示している。
図7(A)はギヤ位置設定部材67を左方から見た状態を示している。
図7(B)は、
図6中の切断線VII-VIIで切断したギヤ位置設定部材67の断面を左方から見た状態、および工具81を示している。
【0052】
図6および
図7(A)に示すように、ギヤ位置設定部材67は、例えば金属材料により、前後方向に伸長した軸線Aを有する有底円筒状に形成されている。ギヤ位置設定部材67の外径は、ギヤ位置設定部材67が設定部材配置穴61内において上下方向および左右方向に位置ずれすることなく、設定部材配置穴61と同軸に回転可能となるように、設定部材配置穴61の内径よりも僅かに小さい値に設定されている。また、ギヤ位置設定部材67は、前側被動ギヤ47と同軸となるように配置されている。
【0053】
また、ギヤ位置設定部材67の外周面には、前後方向に伸長した軸線を有するねじ68が形成されている。ギヤ位置設定部材67のねじ68は、設定部材配置穴61のねじ62と螺合している。なお、ねじ68は「第2のねじ」の具体例である。
【0054】
設定部材配置穴61のねじ62およびギヤ位置設定部材67のねじ68は、ギヤ位置設定部材67をその軸線Aを中心として回転させたときにギヤ位置設定部材67を設定部材配置穴61内において前後方向に移動させるねじ機構を構成している。設定部材配置穴61内に配置されたギヤ位置設定部材67を後方から見た場合、ギヤ位置設定部材67を時計回りに回転させたとき、ねじ62に対してねじ68が時計回りに回転することにより、ギヤ位置設定部材67は前方に移動する。一方、ギヤ位置設定部材67を反時計回りに回転させたとき、ねじ62に対してねじ68が反時計回りに回転することにより、ギヤ位置設定部材67は後方に移動する。
【0055】
また、ギヤ位置設定部材67の中心部には、
図6および
図7(B)に示すように、ギヤ位置設定部材67をその軸線Aを中心として回転させるための工具81を取り付けるための工具取付穴69が設けられている。工具取付穴69は、開口形状が角形(例えば六角形)の穴である。工具81は、
図8(C)に示すように、例えば、ロアケース11の後方からプロペラシャフト配置穴17を介して、設定部材配置穴61内に配置されたギヤ位置設定部材67の工具取付穴69に届く程度の長さを有する棒状の軸部82を有している。また、軸部82の先端には、
図7(B)に示すように、工具取付穴69に嵌合させることができる角形(例えば六角形)の横断面形状を有する嵌合部83が設けられている。なお、工具取付穴69は「工具取付部」の具体例である。
【0056】
また、
図4に示すように、ギヤ位置設定部材67の外周側部分の後端面67Aは、前側被動ギヤ47をロアケース11に支持しているベアリング48の外輪48Aの前端面に接触している。工具81を用いてギヤ位置設定部材67を時計回りに回転させることにより、前側被動ギヤ47およびベアリング48を前方に移動させることが可能になる。また、工具81を用いてギヤ位置設定部材67を反時計回りに回転させることにより、前側被動ギヤ47およびベアリング48を押して、後方に移動させることができる。
【0057】
また、
図7(A)に示すように、ギヤ位置設定部材67の外周側部分には、前方に突出した環状の環状部70が形成され、環状部70の前端には、複数の係止凹部71が全周に亘って等間隔に形成されている。係止凹部71の個数は偶数であり、例えば16個である。また、
図4に示すように、ロアケース11の設定部材配置穴61には、ギヤ位置設定部材67を回転不能に固定する固定部材72が着脱可能に設けられている。固定部材72は、例えば金属材料により形成された長い管状の部材である。固定部材72は、隔壁64に形成された挿通穴65、および設定部材配置穴61の周面に形成された止め穴66に挿入されている。固定部材72の直径は、固定部材72が挿通穴65および止め穴66に、挿抜可能であり、かつ略ぴったりと嵌まるように、挿通穴65および止め穴66のそれぞれの直径よりも僅かに小さい値に設定されている。固定部材72が挿通穴65および止め穴66に挿入された状態では、固定部材72は、ギヤ位置設定部材67の例えば16個の係止凹部71のうち、互いに対向する2個の係止凹部71のそれぞれと係合している(
図6を参照)。これにより、ギヤ位置設定部材67は設定部材配置穴61内に回転不能に固定されている。固定部材72によりギヤ位置設定部材67を回転不能に固定することにより、前側被動ギヤ47およびベアリング48の前後方向の位置を定めることができる。
【0058】
また、固定部材72は、例えば縦穴63から手または工具を差し入れて挿通穴65および止め穴66から引き抜くことができる。固定部材72が引き抜かれた状態では、工具81を用いてギヤ位置設定部材67を回転させることが可能になり、ギヤ位置設定部材67を回転させることにより、前側被動ギヤ47およびベアリング48の前後方向の位置を変更することが可能になる。
【0059】
本実施例において、固定部材72は、潤滑オイルを下側ギヤ室15内に供給するオイル供給管としても機能する。
図4の左下に示すように、固定部材72の内部は潤滑オイルを流通させるオイル流通部73となっており、固定部材72の下端部には潤滑オイルを下側ギヤ室15内に流出させるオイル流出穴74が形成されている。また、固定部材72の上端部には、ロアケース11の外部から固定部材72内へ潤滑オイルを流入させるオイル導入管75を接続することができる。
【0060】
(下側ドライブシャフトの組付)
図8(A)~(D)は、メイン駆動ギヤ46が一体形成された下側ドライブシャフト38をロアケース11内に組み付ける作業工程を示している。
図8および
図4において、Pは、前側被動ギヤ47をメイン駆動ギヤ46に噛合させる位置(詳しくは、前側被動ギヤ47がメイン駆動ギヤ46に噛合した状態における前側被動ギヤ47の後端(先端)の前後方向の位置)を示している。以下、この位置を「設定位置P」という。
【0061】
本実施例の船外機1において、下側ドライブシャフト38をロアケース11内に組み付ける作業工程は次の通りである。
【0062】
第1の工程:作業者は、まず、設定部材配置穴61内に設けられたギヤ位置設定部材67を、工具81を用いて回転させ、ギヤ位置設定部材67を設定部材配置穴61内における例えば最前位置付近まで移動させる。この状態で、作業者は、ベアリング48および前側被動ギヤ47を、ロアケース11の後方からプロペラシャフト配置穴17を介して下側ギヤ室15内に入れ、ベアリング48および前側被動ギヤ47を下側ギヤ室15内の前部に取り付ける。さらに、作業者は、ベアリング48の外輪48Aの前端面がギヤ位置設定部材67の後端面67Aに接触するように、ベアリング48および前側被動ギヤ47を前方に押し込む。これにより、前側被動ギヤ47は、設定位置Pよりも前方に配置される。このように、ギヤ位置設定部材67を設定部材配置穴61内における例えば最前位置付近まで移動させことにより、前側被動ギヤ47を設定位置Pよりも前方に配置することができる。
【0063】
第2の工程:
図8(A)に示すように、前側被動ギヤ47が設定位置Pよりも前方に配置された状態で、次に、作業者は、下側ドライブシャフト38を、ロアケース11の後方からプロペラシャフト挿通穴65を介して下側ギヤ室15内に挿入する。このとき、作業者は、下側ドライブシャフト38を、メイン駆動ギヤ46が一体形成されていない側の端部(上端部)からプロペラシャフト配置穴17に挿入し、下側ギヤ室15内へ運び入れる。
【0064】
第3の工程:次に、作業者は、下側ギヤ室15内に入れた下側ドライブシャフト38を、メイン駆動ギヤ46が一体形成されていない側の端部が上を向くように回転させつつ、下側ドライブシャフト38を
図8(B)に示すようにドライブシャフト配置穴16内に下方から挿入する。そして、下側ドライブシャフト38をドライブシャフト配置穴16に取り付ける。
【0065】
第4の工程:次に、作業者は、
図8(C)に示すように、ロアケース11の後方からプロペラシャフト配置穴17内に工具81を差し込み、さらに、その工具81を前側被動ギヤ47の軸穴47A内に通し、工具81の先端に設けられた嵌合部83を、ギヤ位置設定部材67の工具取付穴69に嵌合させる。
【0066】
第5の工程:次に、作業者は、工具81を
図8(C)中の矢印の方向に回転させることにより、ギヤ位置設定部材67を回転させ、ギヤ位置設定部材67を後方に移動させる。これにより、ベアリング48および前側被動ギヤ47がギヤ位置設定部材67により押されて後方に移動する。作業者は、工具81を回転させて、前側被動ギヤ47を設定位置Pまで移動させ、前側被動ギヤ47をメイン駆動ギヤ46と噛合させる。
【0067】
第6の工程:次に、作業者は、
図8(D)に示すように、ロアケース11の上方から固定部材72を縦穴63内に入れ、その固定部材72を、挿通穴65、ギヤ位置設定部材67の各係止凹部71、および止め穴66に順次挿入する。これにより、ギヤ位置設定部材67が回転不能に設定部材配置穴61内に固定され、ギヤ位置設定部材67の前後方向の位置が固定され、前側被動ギヤ47の前後方向の位置が設定位置Pに定まる。
【0068】
例えば、船外機1の製造時においては、このようにして、メイン駆動ギヤ46が一体形成された下側ドライブシャフト38、および前側被動ギヤ47をロアケース11内に組み付けた後、作業者は、後側被動ギヤ49、内側プロペラシャフト6および外側プロペラシャフト4を下側ギヤ室15内およびプロペラシャフト配置穴17内に組み付ける作業、連結部材36を介して下側ドライブシャフト38に中間ドライブシャフト35を接続する作業、上側ギヤ機構22およびクラッチ27を上側ギヤ室14内に組み付ける作業等を行う。
【0069】
なお、上記第2の工程および第3の工程は「ドライブシャフト挿入工程」の具体例である。また、上記第4の工程は「工具取付工程」の具体例である。また、上記第5の工程は「被動ギヤ移動工程」の具体例である。
【0070】
(メイン駆動ギヤと前側被動ギヤとの噛み合い調整)
本実施例の船外機1において、作業者は、メイン駆動ギヤ46と前側被動ギヤ47との噛み合い(歯当たり、バックラッシュ等)の調整を次のように行うことができる。作業者は、まず、後側被動ギヤ49、内側プロペラシャフト6および外側プロペラシャフト4をロアケース11から取り外す。次に、作業者は、工具81を用いてギヤ位置設定部材67を回転させ、前側被動ギヤ47の前後方向の位置を変え、メイン駆動ギヤ46と前側被動ギヤ47との噛み合いを調整する。次に、作業者は、後側被動ギヤ49、内側プロペラシャフト6および外側プロペラシャフト4をロアケース11に組み付ける。
【0071】
以上説明した通り、本実施例の船外機1は、前側被動ギヤ47の前後方向の位置を設定するギヤ位置設定部材67、およびギヤ位置設定部材67をその軸線Aを中心として回転させたときにギヤ位置設定部材67を前後方向に移動させるねじ機構(ねじ62およびねじ68)を備えている。これにより、前側被動ギヤ47の前後方向の位置を変えることによって、メイン駆動ギヤ46が一体形成された下側ドライブシャフト38をロアケース11内に組み付けることができる。すなわち、本実施例の船外機1によれば、ギヤ位置設定部材67を前方に移動させることによって、下側ギヤ室15内に取り付けられた前側被動ギヤ47を設定位置Pよりも前方に移動させることができる。これにより、前側被動ギヤ47を、ドライブシャフト配置穴16の下側ギヤ室15内への開口部から離すことができる。その結果、下側ギヤ室15内において、ドライブシャフト配置穴16の下方に位置する空き領域を拡大させることができる。したがって、メイン駆動ギヤ46が一体形成された下側ドライブシャフト38をロアケース11の後方からプロペラシャフト配置穴17および下側ギヤ室15を通し、ドライブシャフト配置穴16内に下方から挿入するに当たり、前側被動ギヤ47が下側ドライブシャフト38またはメイン駆動ギヤ46に接触して、下側ドライブシャフト38のドライブシャフト配置穴16内への挿入を妨害することを防止することができる。よって、メイン駆動ギヤ46が一体形成された下側ドライブシャフト38をロアケース11の後方からプロペラシャフト配置穴17および下側ギヤ室15を通し、ドライブシャフト配置穴16内に下方から挿入してドライブシャフト配置穴16に取り付ける方法により、メイン駆動ギヤ46が一体形成された下側ドライブシャフト38をロアケース11内に組み付けることができる。
【0072】
また、本実施例の船外機1によれば、メイン駆動ギヤ46が一体形成された下側ドライブシャフト38をロアケース11のプロペラシャフト配置穴17および下側ギヤ室15を通してドライブシャフト配置穴16内に下方から取り付けることができるので、下側ドライブシャフト38に一体形成されたメイン駆動ギヤ46を通すための大径の穴をロアケース11に追加することなく、メイン駆動ギヤ46が一体形成された下側ドライブシャフト38をロアケース11内に組付可能にすることができる。したがって、大径の穴をロアケース11に追加することによってロアケース11の横幅が大きくなることを防止することができ、航行時の水の抵抗が増大することを防止することができる。
【0073】
また、本実施例の船外機1によれば、ギヤ位置設定部材67およびねじ機構(ねじ62、68)を備えているので、前側被動ギヤ47の前後方向の位置を変えることにより、メイン駆動ギヤ46と前側被動ギヤ47との噛み合い調整を容易かつ迅速に行うことができる。すなわち、従来の船外機においては、前側被動ギヤのボスに取り付けられたシムを、厚さの異なる別のシムに交換する方法により、駆動ギヤと前側被動ギヤとの噛み合い調整を行っている。そのため、駆動ギヤと前側被動ギヤとの噛み合い調整を行うために、駆動ギヤおよび前側被動ギヤをロアケースから取り外す必要がある。これに対し、本実施例の船外機1によれば、メイン駆動ギヤ46および前側被動ギヤ47がロアケース11に取り付けられた状態で、前側被動ギヤ47の前後方向の位置を変えることにより、メイン駆動ギヤ46と前側被動ギヤ47との噛み合い調整を行うことができる。したがって、メイン駆動ギヤ46と前側被動ギヤ47との噛み合い調整を行うに当たり、メイン駆動ギヤ46および前側被動ギヤ47をロアケース11に対して脱着する工程を省くことができる。よって、メイン駆動ギヤ46と前側被動ギヤ47との噛み合い調整の作業工数を減らすことができ、当該噛み合い調整の作業の容易化および迅速化を図ることができる。また、本実施例によれば、このような作用効果を、ねじ機構によってギヤ位置設定部材67を移動させるといった簡単な構造により得ることができる。
【0074】
また、本実施例の船外機1において、ギヤ位置設定部材67の中心部には、ギヤ位置設定部材67を回転させるための工具81を取り付ける工具取付穴69が設けられている。この構成により、工具81を、ロアケース11の後方から、プロペラシャフト配置穴17および前側被動ギヤ47の軸穴47Aを通してギヤ位置設定部材67に取り付け、工具81を用いてギヤ位置設定部材67を回転させて、前側被動ギヤ47の前後方向の位置を容易に変えることができる。したがって、メイン駆動ギヤ46が一体形成された下側ドライブシャフト38のロアケース11内への組付、およびメイン駆動ギヤ46と前側被動ギヤ47との噛み合い調整を容易に行うことができる。
【0075】
また、本実施例の船外機1は、下側ギヤ室15に形成された設定部材配置穴61に着脱可能に設けられ、ギヤ位置設定部材67を回転不能に固定する固定部材72を備えている。この構成により、作業者は、固定部材72を設定部材配置穴61に着脱するだけで、ギヤ位置設定部材67が前後方向に移動可能な状態と、ギヤ位置設定部材67が前後方向に移動不能な状態とを切り替えることができる。したがって、メイン駆動ギヤ46が一体形成された下側ドライブシャフト38のロアケース11内への組付、およびメイン駆動ギヤ46と前側被動ギヤ47との噛み合い調整を一層容易に行うことができる。特に、本実施例によれば、固定部材72を挿通穴65、止め穴66およびギヤ位置設定部材67の係止凹部71に抜き差しするだけで、ギヤ位置設定部材67が前後方向に移動可能な状態と、ギヤ位置設定部材67が前後方向に移動不能な状態とを切り替えることができるので、上記下側ドライブシャフト38の組付、および上記噛み合い調整をより一層容易に行うことができる。
【0076】
また、本実施例の船外機1においては、中間ドライブシャフト35と下側ドライブシャフト38とが連結部材36により接続されている。この構成により、メイン駆動ギヤ46が一体形成された下側ドライブシャフト38の長さを短くすることができる。したがって、メイン駆動ギヤ46が一体形成された下側ドライブシャフト38を、ロアケース11の後方からプロペラシャフト配置穴17および下側ギヤ室15を通した後、ドライブシャフト配置穴16内に下方から円滑に挿入することができる。
【0077】
また、本実施例において、固定部材72は、ギヤ位置設定部材67を固定する機能に加え、潤滑オイルを下側ギヤ室15内に供給するオイル供給管の機能をも有している。これにより、オイル供給管を減らすことができ、船外機1の部品点数を削減することができる。
【0078】
また、本実施例においては、メイン駆動ギヤ46が下側ドライブシャフトと一体形成されているので、下側ドライブシャフト38とメイン駆動ギヤ46との結合強度を高めることができる。したがって、下側ドライブシャフト38から各プロペラシャフト4、6への動力伝達の安定性を高めることができる。
【0079】
なお、ギヤ位置設定部材を回転させたときにギヤ位置設定部材を前後方向に移動させるねじ機構は、上記実施例のねじ62、68に限定されない。また、ギヤ位置設定部材の工具取付部は、上記実施例の工具取付穴69に限定されない。また、固定部材と係合してギヤ位置設定部材を回転不能にする係止部の構成は、上記実施例の係止凹部71に限定されない。
図9に示すように、ねじ機構については、設定部材配置穴91の前面(底面)に、その中央から後方に突出する突出部92を設け、突出部92の外周面にねじ93を形成し、一方、有底円筒状に形成されたギヤ位置設定部材94の前部(底部)の中心部に、内周面にねじ96が形成されたねじ穴95を形成し、ねじ穴95内に突出部92を挿入し、ねじ96とねじ93とを螺合させる構成としてもよい。また、工具取付部については、ギヤ位置設定部材94の前部(底部)に、その中心部から後方に突出し、横断面形状が角形(例えば六角形)の工具取付突部97を設ける構成としてもよい。また、係止部については、ギヤ位置設定部材94の周壁に前後方向に長い係止穴98を設ける構成としてもよい。
【0080】
また、上記実施例では、オイル供給管の機能を有する管状の固定部材72を例にあげたが、固定部材を、オイル供給管の機能を有しない単純なピン状または棒状の部材としてもよい。
【0081】
また、本発明は、二重反転プロペラ式の船外機に限らない。本発明は、ドライブシャフトの下端側に結合された駆動ギヤと、当該駆動ギヤにその前方から噛合する被動ギヤとを備えた船外機であれば、プロペラシャフトが1本の船外機にも適用することができる。
【0082】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う船外機およびドライブシャフト組付方法もまた本発明の技術思想に含まれる。