(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094237
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】熱延鋼帯の製造装置、及び熱延鋼帯の製造方法
(51)【国際特許分類】
B21B 45/02 20060101AFI20230628BHJP
B21B 1/26 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
B21B45/02 330
B21B1/26 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209606
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 伯公
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 良洋
(72)【発明者】
【氏名】建部 勝利
【テーマコード(参考)】
4E002
【Fターム(参考)】
4E002AD04
4E002BA01
4E002BD07
4E002BD10
4E002CB03
(57)【要約】
【課題】効果的な水切りを実現することが可能な熱延鋼帯の製造装置、及び熱延鋼帯の製造方法を提供する。
【解決手段】熱間圧延された鋼帯に対して使用された冷却水を水切りするための流体を噴射する噴射部と、噴射部と鋼帯の板幅方向において対向する位置に設けられ、かつ鉛直方向の下方に行くほど、鉛直方向に対して鋼帯から離隔する方向に傾斜しているサイドガイドと、を備える熱延鋼帯の製造装置。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱間圧延された鋼帯に対して使用された冷却水を水切りするための流体を噴射する噴射部と、
前記鋼帯の板幅方向において前記噴射部と対向する位置に設けられ、かつ鉛直方向の下方に行くほど、前記鉛直方向に対して前記鋼帯から離隔する方向に傾斜しているサイドガイドと、を備える
熱延鋼帯の製造装置。
【請求項2】
前記対向する位置は、前記流体の噴射方向から所定の角度の範囲を含む位置である
請求項1に記載の熱延鋼帯の製造装置。
【請求項3】
前記所定の角度は、下記式(1)で求められる
請求項2に記載の熱延鋼帯の製造装置。
α=arctan(p1/p2)・・・(1)
ここで、α:所定の角度
p1:前記鋼帯とともに移動する冷却水の運動量
p2:前記流体の運動量
【請求項4】
前記サイドガイドは、前記鋼帯の搬送方向の上流に行くほど前記搬送方向に対して前記鋼帯から離隔する方向に傾斜している
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の熱延鋼帯の製造装置。
【請求項5】
前記サイドガイドは、前記鋼帯の搬送方向の上流側において、前記鉛直方向の下方に行くほど前記鋼帯から離隔する方向に傾斜し、前記搬送方向の下流側において、前記鉛直方向に沿っている
請求項1から請求項4の何れか一項に記載の熱延鋼帯の製造装置。
【請求項6】
熱間圧延された鋼帯に対して使用された冷却水を水切りするための流体を噴射すること、及び、
前記流体が噴射された位置と前記鋼帯の板幅方向において対向する位置に設けられ、かつ鉛直方向に対して下方に行くほど、前記鋼帯から離隔する方向に傾斜しているサイドガイドを介して前記冷却水を排出すること、
を含む熱延鋼帯の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱延鋼帯の製造装置、及び熱延鋼帯の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱間圧延工程の仕上げ圧延後の熱延鋼帯は、仕上げ圧延機から巻取装置までをランアウトテーブルによって搬送される間に、ランアウトテーブルの上下に設けられている冷却装置によって所定の温度まで冷却された後、巻取装置に巻き取られる。熱延鋼帯の熱間圧延においては、この仕上げ圧延後の冷却の履歴が熱延鋼帯の強度や延性、靭性などの機械的特性や、成形加工性、溶接性などの材質を決定する重要な因子となっており、熱延鋼帯を均一に所定の温度に冷却することが重要となっている。
【0003】
この仕上げ圧延後の冷却工程では、通常、冷却媒体として例えば水(以下、冷却水と呼称する)を用いて熱延鋼帯を冷却する。具体的には、熱延鋼帯の材質を造り込むための所定の冷却履歴を得るための冷却領域において、冷却水を用いて熱延鋼帯を冷却している。そして、上述したように熱延鋼帯を均一に所定の温度に冷却するためには、この冷却領域以外に余分な冷却水が流出するのを防止する必要がある。
【0004】
そこで、このような冷却領域から流出した余分な熱延鋼帯上の冷却水(以下、「板上水」ともいう。)の水切り(すなわち、熱延鋼帯の表面上からの冷却水の排出)が行われている。この冷却水の水切り方法としては、例えば、特許文献1には、冷却水に対して水切りのための流体を噴射し、鋼帯表面に滞留する冷却水を除去する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、冷却水の一部が鋼帯上に残存することがあり、依然として冷却水の除去を効果的に行うには改善の余地があるといった問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、より効果的な水切りを実現することが可能な熱延鋼帯の製造装置、及び熱延鋼帯の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、熱間圧延された鋼帯に対して使用された冷却水を水切りするための流体を噴射する噴射部と、上記鋼帯の板幅方向において上記噴射部と対向する位置に設けられ、かつ鉛直方向の下方に行くほど、上記鉛直方向に対して上記鋼帯から離隔する方向に傾斜しているサイドガイドと、を備える
熱延鋼帯の製造装置が提供される。
【0009】
上記対向する位置は、上記流体の噴射方向から所定の角度の範囲を含む位置であってもよい。
【0010】
上記所定の角度は、下記式(1)で求められてもよい。
α=arctan(p1/p2)・・・(1)
ここで、α:所定の角度
p1:上記鋼帯とともに移動する冷却水の運動量
p2:上記流体の運動量
【0011】
上記サイドガイドは、上記鋼帯の搬送方向の上流に行くほど上記搬送方向に対して上記鋼帯から離隔する方向に傾斜してもよい。
【0012】
上記サイドガイドは、上記鋼帯の搬送方向の上流側において、上記鉛直方向の下方に行くほど上記鋼帯から離隔する方向に傾斜し、上記搬送方向の下流側において、上記鉛直方向に沿っていてもよい。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明のその他の観点によれば、熱間圧延された鋼帯に対して使用された冷却水を水切りするための流体を噴射すること、及び、上記流体が噴射された位置と上記鋼帯の板幅方向において対向する位置に設けられ、かつ鉛直方向に対して下方に行くほど、上記鋼帯から離隔する方向に傾斜しているサイドガイドを介して上記冷却水を排出すること、を含む熱延鋼帯の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
以上、説明したように本発明によれば、より効果的な水切りを実現することが可能な熱延鋼帯の製造装置、及び熱延鋼帯の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る熱延鋼帯の製造装置の概略構成の一例を示す模式図である。
【
図2】従来技術に係る冷却装置及び水切り装置の概略構成の一例を示す斜視図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る冷却装置及び水切り装置の概略構成の一例を示す斜視図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係るサイドガイドの概略構成の一例を示す平面図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る所定角度を説明するための概念図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係るサイドガイドの概略構成の一例を示す斜視図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態に係る熱延鋼帯の製造工程の一例を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の第2の実施形態に係るサイドガイドの概略構成の一例を示す平面図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態に係るサイドガイドの概略構成の一例を示す斜視図である。
【
図10】本発明の第3の実施形態に係るサイドガイドの概略構成の一例を示す平面図である。
【
図11】本発明の第3の実施形態に係るサイドガイドの概略構成の一例を示す斜視図である。
【
図12】本発明の第3の実施形態の変形例に係るサイドガイドの概略構成の一例を示す平面図である。
【
図13】本発明の第3の実施形態の変形例に係るサイドガイドの概略構成の一例を示す斜視図である。
【
図14】本発明の実施例に係る板上水量の比較結果を示すグラフである。
【
図15】本発明の一の変形例に係るサイドガイドの概略構成の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0017】
<第1の実施形態>
まず、
図1~
図6を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る熱延鋼帯の製造装置10の概略構成について説明する。
図1は、熱延鋼帯の製造装置10の概略構成を示す図である。
【0018】
熱延鋼帯の製造装置10では、加熱したスラブをロールで上下に挟んで連続的に圧延し、例えば1mmの板厚まで薄くして熱延鋼帯1(以下単に「鋼帯1」と称する)を巻き取る。熱延鋼帯の製造装置10は、スラブを加熱するための加熱炉(図示省略)と、この加熱炉において加熱されたスラブを幅方向に圧延する幅方向圧延機(図示省略)と、この幅方向に圧延されたスラブを上下方向から圧延して粗バーにする粗圧延機(図示省略)とを備えている。
【0019】
図1に示すように、熱延鋼帯の製造装置10は、粗バーをさらに所定の厚みまで連続して熱間仕上圧延をする仕上圧延機14と、この仕上圧延機14により熱間仕上圧延された鋼帯1を冷却水Wにより冷却する冷却装置15と、冷却装置15から噴射された冷却水を水切りする水切り装置16と、冷却装置15により冷却された鋼帯1をコイル状に巻き取る巻取装置17とを備えている。
【0020】
仕上圧延機14は、搬送されてきた粗バーを数mm程度の板厚まで仕上げ圧延する。これら仕上圧延機14は、6~7スタンドに亘って上下一直線に並べた仕上圧延ロール14aの間隙に粗バーを通過させ、これを徐々に圧下していく。この仕上圧延機14により所定の板厚まで仕上げ圧延された鋼帯1は、搬送ロール18により搬送されて冷却装置15へと送られる。
【0021】
冷却装置15は、冷却水Wにより鋼帯1を冷却する設備である。冷却装置15は、例えば、パイプラミナーノズル方式の冷却装置である。すなわち、鋼帯1の搬送方向(すなわち、
図1に示すY方向)に沿って複数列設けられ、かつ鋼帯1の幅方向(すなわち、
図1に示すX方向)に沿って複数列設けられたパイプラミナーノズルから冷却水Wが鋼帯1に対して供給される。なお、冷却方式は、これに限定されず、例えば、スプレーノズル方式の冷却装置であってもよい。
【0022】
水切り装置16は、鋼帯1の表面に対して、冷却水Wを水切りするための流体Fを噴射する装置である。水切り装置16は、水切りノズル16aを備える。流体Fが水切りノズル16aから噴射されることにより、鋼帯1の表面に滞留した冷却水Wが、鋼帯1の表面外に排出される。具体的には、所定の圧力及び流量で噴射された流体Fが冷却水Wと衝突することで、冷却水Wが鋼帯1の表面から板幅方向に押し流される。この結果、冷却水Wが鋼帯1の表面上から排出される。流体Fは、例えば、水であってもよいし、空気及び水から成る混合流体であってもよい。流体Fが噴射される際の圧力及び流量は、冷却水Wの流量等に応じて適宜設定される。
【0023】
巻取装置17は、冷却装置15により冷却された鋼帯1を所定の巻取温度で巻き取る。巻取装置17によりコイル状に巻き取られた鋼帯1は、熱延鋼帯の製造装置10から次工程へと搬送される。以上、熱延鋼帯の製造装置10について説明した。
【0024】
ここで、鋼帯1を搬送する際、鋼帯1に生じる張力の変化、又は鋼帯1の搬送速度の変化等に起因して鋼帯1が蛇行(すなわち、板幅方向WDに移動)する場合がある。この蛇行に伴う板幅方向WDの移動量が過度になることを抑制するために、熱延鋼帯の製造装置10には、
図2に示すように、サイドガイド19が設けられている。サイドガイド19は、搬送ロール18の軸方向端部18aの近傍に設けられた板状の部材である。サイドガイド19は、その板厚方向が鋼帯1の板幅方向WDに沿うように配置されている。すなわち、サイドガイド19は、板厚方向を法線方向とする平面が鋼帯1の板幅方向WDの端面と対向するように配置されている。ここで、
図2に示したような、従来技術に係るサイドガイド19のように、搬送方向TDに沿って長手方向を有する平板状のサイドガイドを考える。サイドガイド19は、搬送方向TDに沿って連続しているため水切りによって板幅方向WDに移動した冷却水Wは、その一部が搬送ロール18の隙間から排出されるものの、それ以外はサイドガイド19に衝突する。サイドガイド19は、その板幅方向が鉛直方向に沿って配置されている。従って、冷却水Wの大部分は、サイドガイド19によって反射され、再び鋼帯1の表面上に戻ってくる。この結果、冷却領域以外での冷却が過度に進行することとなり、鋼帯1の材質に影響を及ぼす可能性がある。
【0025】
そこで、本実施形態に係る熱延鋼帯の製造装置10は、
図3に示すように、サイドガイド部100を備える。サイドガイド部100は、第1サイドガイド101と、第2サイドガイド102とを含んでいる。第1サイドガイド101は、
図3及び
図4に示すように、鋼帯1の板幅方向WD(すなわち、図中に示すX方向)において、水切りノズル16aと対向する位置に設けられている。第1サイドガイド101は、板状部材であり、板厚方向を法線方向とする面を鋼帯1の側に向けて配置されている。第1サイドガイド101は、搬送ロール18の軸方向端部18aの近傍に設けられている。
【0026】
第1サイドガイド101は、
図3に示すように鉛直方向(すなわち、
図3に示すZ方向)の下方に行くほど、鉛直方向に対して鋼帯1から離隔する方向に傾斜している。換言すれば、第1サイドガイド101と搬送ロール18の軸方向端部18aとの間隔は、鉛直方向の下方に行くほど広くなっている。第1サイドガイド101の傾斜角度は、特に限定されず、第1サイドガイド101による冷却水Wの排出を実現でき、かつ鋼帯1の蛇行を抑制するという趣旨を逸脱しない範囲で設定される。また、第1サイドガイド101の上端縁111は、第2サイドガイド102の上流側端部102a以外の部位と、搬送方向TDにおいて延長線上にあるように配置されている。
【0027】
第2サイドガイド102は、板状部材であり、板厚方向を法線方向とする面を鋼帯1の側に向けて配置されている。第2サイドガイド102は、第1サイドガイド101が設けられた位置以外の搬送ロール18の軸方向端部18aの近傍に設けられている。
図3に示す例では、第2サイドガイド102は、複数設けられている。複数の第2サイドガイド102は、複数の搬送ロール18の各々に対応して設けられている。
【0028】
図4に示すように、第2サイドガイド102を平面視したとき、第2サイドガイド102の搬送方向TDの上流側端部102aは、搬送方向TDに対して鋼帯1と離隔する方向に傾斜している。第2サイドガイド102の搬送方向TDにおける上流側端部102aが、鋼帯1と離隔する方向に傾斜していることで、冷却水Wがより排出されやすくなる。なお、
図3及び
図4に示した第2サイドガイド102が複数設けられている形態は、あくまでも例示に過ぎず、第2サイドガイド102は、搬送方向TDに沿って連続していてもよく、複数の搬送ロール18に亘って設けられていてもよい。また、第2サイドガイド102の上流側端部102aは、搬送方向TDに対して鋼帯1と離隔していない形状(すなわち、平板形状)であってもよい。
【0029】
図4に示すように、第1サイドガイド101は、水切りノズル16aに対して対向する位置に設けられている。ここで、対向する位置とは、水切りノズル16aから噴射される流体Fの噴射方向から所定の角度の範囲を含んだ位置である。具体的には、鋼帯1の平面視(すなわち、鉛直方向視)において、水切りノズル16aから流体Fが噴射される方向に沿った直線を仮想直線L1とする。また、同じく鋼帯1の平面視において、仮想直線L1との間で所定の角度αを成す直線であって、板幅方向WDに対して搬送方向TDの下流側に傾斜した直線を仮想直線L2とする。なお、仮想直線L2の起点は、鋼帯1における水切りの開始位置(すなわち、流体Fが鋼帯1に接触を開始する位置)である。水切りの開始位置は、例えば、鋼帯1の板幅方向WDの中央部分である。対向する位置とは、サイドガイド部100の設置される搬送ロール18の軸方向端部18aの近傍において、仮想直線L1と仮想直線L2とに挟まれる領域を指す。
【0030】
ここで、所定の角度αは、次式(1)で表される。
α=arctan(p1/p2)・・・(1)
ここで、α:所定の角度
p1:鋼帯1とともに移動する冷却水Wの運動量
p2:水切りノズル16aから噴射される流体Fの運動量
【0031】
鋼帯1とともに移動する冷却水Wの運動量p1は、冷却水Wの流量と鋼帯1の表面上で移動する冷却水Wの移動速度の積である。ここで、冷却水Wの移動速度は、例えば、鋼帯1の搬送速度の半分として見積もることができる。また、冷却水Wの流量は、例えば、2本の水切りノズル16aで鋼帯1の両側から水切りする場合には、鋼帯1上の冷却水Wの半分として見積もることができる。また、水切りノズル16aから噴射される流体Fの運動量p2は、流体Fの流量と流体Fの噴射速度の積である。流体の噴射速度は、一例として、20m/sが挙げられる。
【0032】
以下、
図5を参照して、水切りの際の冷却水Wの移動方向の変化について説明する。なお、以下の説明においては、
図3及び
図4に示したように鋼帯1の両側から水切りが行われる態様を示すが、これはあくまでも一例に過ぎない。水切りは、鋼帯1の片側から行われる態様であってもよい。
図5に示すように、所定の角度αは、流体Fによって水切りされる冷却水Wの移動方向の変化の範囲に対応している。冷却水Wは、鋼帯1上において鋼帯1とともにある速度(例えば、1.5m/s)で移動している。そして、冷却水Wは、水切りノズル16aから噴射された流体Fによって水切りされる。ここで、水切りノズル16aから板幅方向WDに沿って流体Fが噴射されるとする。これにより、鋼帯1上の冷却水Wは、鋼帯1の移動に伴う運動量ベクトルVp1と流体Fの噴射に伴う運動量ベクトルVp2との合成ベクトルを有する運動量ベクトルVp3で示される運動量を得る。
図5に示すように、運動量ベクトルVp3と運動量ベクトルVp1との成す角は、上記式(1)で表される角度αである。すなわち、冷却水Wは、水切りによって、流体Fの噴射方向から所定の角度αの範囲に移動方向が変化する。
【0033】
例えば、鋼帯1とともに移動する冷却水Wの運動量p1を、250L/min(鋼帯1上の冷却水Wの半分と仮定)×1.5m/s(水切り開始位置での流速)とする。また、流体Fの運動量p2を80L/min×20m/sとする。このとき、これらを合成した運動量の向き(α)は13°となる。従って、冷却水Wの水切りによる移動方向の変化の範囲は、α=13°下流側に拡がる範囲と考えられる。
【0034】
図6に示すように、冷却水Wは、水切りノズル16a(
図3及び
図4参照)から噴射される流体Fによって水切りされる。具体的には、冷却水Wは、流体Fの噴射によって、鋼帯1の板幅方向WDの端部に向かって移動する。さらに、冷却水Wの一部は、第1サイドガイド101に衝突する。このとき、第1サイドガイド101は、鉛直方向の下方に行くほど、鉛直方向に対して鋼帯1から離隔する方向に傾斜している。従って、第1サイドガイド101に衝突した冷却水Wは、鉛直方向の下方に移動方向が変化する(図中矢印A参照)。すなわち、冷却水Wは、第1サイドガイド101に衝突した後、その大部分が鉛直方向の下方に排出される。このように、冷却水Wは、鋼帯1の表面上から排出される。
【0035】
次に、
図7を参照しながら、本実施形態に係る熱延鋼帯1の製造方法について説明する。
図7は、本実施形態に係る熱延鋼帯1の製造工程の一部を説明するためのフローチャートである。
図7に示すように、先ず、ステップST10において、鋼帯1の表面上に滞留する冷却水Wを水切りするための流体Fが噴射される。ステップST10の工程が実行された後、製造工程は、ステップST12に移行する。ステップST12において、ステップST10で噴射された流体Fによって、鋼帯1の表面上の冷却水Wは、鋼帯1の板幅方向WDの端部に向かって移動する。さらに、冷却水Wは、第1サイドガイド101を介して排出される。上述したように、第1サイドガイド101は、鉛直方向の下方に行くほど、鉛直方向に対して鋼帯1から離隔する方向に傾斜している。このため、冷却水Wの大部分が、鉛直方向の下方に排出される。ステップST12の工程が実行された後、本実施形態に係る熱延鋼帯1の製造工程の一部は終了する。
【0036】
以上説明したように、本第1実施形態に係る熱延鋼帯の製造装置10では、水切りノズル16aと鋼帯1の板幅方向WDにおいて対向する位置に設けられ、かつ鉛直方向の下方に行くほど、鉛直方向に対して鋼帯1から離隔する方向に傾斜している第1サイドガイド101が設けられている。これにより、流体Fが噴射されることで水切りされた冷却水Wが、第1サイドガイド101に衝突した後、その大部分が鉛直方向の下方に排出される。この結果、鋼帯1の表面上に滞留している冷却水Wに対して、より効果的な水切りが実現される。
【0037】
すなわち、
図2に示したサイドガイド19のように鉛直方向に沿って配置された場合では、サイドガイド19に衝突した冷却水Wの大部分が、鋼帯1の表面上に戻ってくるため、水切りが十分に行われないことがあった。本実施形態に係る熱延鋼帯の製造装置10では、流体Fが噴射されることで水切りされた冷却水Wが、第1サイドガイド101に衝突した後、その大部分が鉛直方向の下方に排出される。このため、冷却水Wが鋼帯1の表面上に戻ることが抑制される。この結果、鋼帯1の表面上に滞留している冷却水Wに対して、より効果的な水切りが実現される。
【0038】
また、本第1実施形態に係る熱延鋼帯の製造装置10では、第1サイドガイド101は、水切りノズル16aに対向する位置に設けられる。ここで、水切りノズル16aに対向する位置は、流体Fの噴射方向から所定の角度の範囲を含む位置である。すなわち、水切りノズル16aから流体Fが噴射される方向に沿った直線を仮想直線L1とする。また、同じく鋼帯1の平面視において、仮想直線L1との間で所定の角度αを成す直線であって、板幅方向WDに対して、搬送方向TDにおける下流側に傾斜した直線を仮想直線L2とする。このとき、対向する位置は、所定の角度αで規定される範囲となっている。従って、本構成によれば、第1サイドガイド101が流体Fの噴射方向に対して十分な範囲とされるので、冷却水Wを効果的に排出することができるとともに、サイドガイド部100として鋼帯1の蛇行を抑制できる。
【0039】
また、本実施形態に係る熱延鋼帯の製造装置10では、所定の角度αは、上記数式(1)で求められる。上記数式(1)は、冷却水Wの運動量p1及び流体Fの運動量p2を考慮した式である。従って、本構成によれば、所定の角度αが、冷却水W及び流体Fの運動量との関係で適切な範囲に設定されるので、冷却水Wを効果的に排出することができるとともに、サイドガイド部100として鋼帯1の蛇行を抑制できる。
【0040】
すなわち、鋼帯1上に滞留する冷却水Wが流体Fによって水切りされる際、冷却水Wの移動方向が変化する。換言すれば、冷却水Wは水切りされることにより、冷却水Wの運動量と流体Fの運動量とが合成された運動量の向きに、冷却水Wの移動方向の範囲が広がる。本実施形態に係る熱延鋼帯の製造装置10では、所定の角度αで規定される範囲に第1サイドガイド101が配置されているので、移動方向が変化した冷却水Wを効果的に排出できる。
【0041】
<第2の実施形態>
次に、
図8及び
図9を参照しながら、本発明の第2の実施形態に係る熱延鋼帯の製造装置10について説明する。上記第1実施形態に係る熱延鋼帯の製造装置10では、第1サイドガイド101は、鉛直方向に対して傾斜している形態を挙げて説明したが、本第2実施形態に係る第1サイドガイド101Aは、鉛直方向だけではなく、鋼帯1を平面視したときに第1サイドガイド101Aの全体が搬送方向TDに対して傾斜している。なお、本第2実施形態の説明において、上記第1実施形態と共通する構成の説明は省略する。
【0042】
図8に示すように、本第2実施形態に係る第1サイドガイド101Aは、鋼帯1の搬送方向TDの上流に行くほど搬送方向TDに対して鋼帯1から離隔する方向に傾斜している。換言すれば、第1サイドガイド101Aと搬送ロール18の軸方向端部18aとの間隔は、搬送方向TDの上流に行くほど広くなっている。また、第1サイドガイド101Aの上端縁111の下流側端部111Aは、第2サイドガイド102の上流側端部102a以外の部位と搬送方向TDにおいて延長線上にあるように配置されている。
【0043】
第1サイドガイド101Aの搬送方向TDに対する角度βは、特に限定されず、第1サイドガイド101Aによる冷却水Wの排出を実現でき、かつ鋼帯1の蛇行を抑制するという趣旨を逸脱しない範囲で設定される。例えば、角度βは、冷却水Wの排出に関する流体シミュレーション結果、又は実機を用いた試験結果に基づいて設定される。
【0044】
また、第1サイドガイド101Aは、鉛直方向の下方に行くほど鉛直方向に対して鋼帯1から離隔する方向に傾斜している。さらに、第1サイドガイド101Aは、水切りノズル16aに対して対向する位置に設けられている。ここで、対向する位置とは、水切りノズル16aから噴射される流体Fの噴射方向から所定の角度の範囲を含んだ位置である。所定の角度αは、上記数式(1)を用いて求められる。
【0045】
図9に示すように、冷却水Wは、水切りノズル16aから噴射される流体Fによって水切りされる。具体的には、冷却水Wは、流体Fの噴射によって、鋼帯1の板幅方向WDの端部に向かって移動する。さらに、冷却水Wの一部は、第1サイドガイド101Aに衝突する。第1サイドガイド101Aは、鋼帯1の搬送方向TDの上流に行くほど、搬送方向TDに対して鋼帯1から離隔する方向に傾斜している。従って、第1サイドガイド101Aに衝突した冷却水Wの一部は、搬送方向TDの上流側に移動方向が変化する(図中矢印B参照)。すなわち、冷却水Wは、第1サイドガイド101Aに衝突した後、その一部が搬送方向TDの上流側に向かって排出される。このように、冷却水Wは、鋼帯1の表面上から排出される。
【0046】
また、第1サイドガイド101Aは、鉛直方向の下方に行くほど、鉛直方向に対して鋼帯1から離隔する方向に傾斜している。従って、第1サイドガイド101Aに衝突した冷却水Wの一部は、鉛直方向の下方に移動方向が変化する(図中矢印A参照)。すなわち、冷却水Wは、第1サイドガイド101Aに衝突した後、その一部が鉛直方向の下方に排出される。このように、冷却水Wは、鋼帯1の表面上から排出される。
【0047】
以上説明したように、本第2実施形態に係る熱延鋼帯の製造装置10では、第1サイドガイド101Aは、鋼帯1の搬送方向TDの上流に行くほど搬送方向TDに対して鋼帯1から離隔する方向に傾斜している。従って、本構成によれば、流体Fが噴射されることで水切りされた冷却水Wの一部が、鋼帯1の平面視において、第1サイドガイド101Aに対して90度より大きい角度で衝突することが実現される。すなわち、第1サイドガイド101Aにおいて、冷却水Wの第1サイドガイド101Aに対する衝突角度が、90度よりも大きい角度となる領域が存在する。これにより、第1サイドガイド101Aに衝突した後、冷却水Wの一部は、搬送方向TDの上流側に向かって排出される。このため、冷却水Wが鋼帯1の表面上に戻ることが抑制される。この結果、鋼帯1の表面上に滞留している冷却水Wに対して、より効果的な水切りが実現される。
【0048】
また、本第2実施形態に係る第1サイドガイド101Aは、鉛直方向の下方に行くほど、鉛直方向に対して鋼帯1から離隔する方向に傾斜している。従って、本構成によれば、流体Fが噴射されることで水切りされた冷却水Wが、第1サイドガイド101Aに衝突した後、その一部が鉛直方向の下方に排出される。この結果、鋼帯1の表面上に滞留している冷却水Wに対して、より効果的な水切りが実現される。
【0049】
このように本第2実施形態に係る第1サイドガイド101Aでは、冷却水Wの一部が、鋼帯1の平面視において、第1サイドガイド101Aに対して90度より大きい角度で衝突することが実現される。一方、冷却水Wの一部が、第1サイドガイド101Aに対して90度以下の角度で衝突する場合でも、第1サイドガイド101Aが鉛直方向に対して傾斜しているので、冷却水Wの一部は、鉛直方向の下方に排出される。従って、本構成によれば、第1サイドガイド101Aの搬送方向TDに対する角度βが十分に取れない配置であっても、冷却水Wが鋼帯1の表面上に戻ることが抑制され、より効果的な水切りが実現される。
【0050】
<第3の実施形態>
次に、
図10及び
図11を参照しながら、本発明の第3の実施形態に係る熱延鋼帯の製造装置10について説明する。上記第1実施形態に係る熱延鋼帯の製造装置10では、第1サイドガイド101Bの全体が、鉛直方向に対して傾斜している形態を挙げて説明したが、本第3実施形態に係る第1サイドガイド101Bでは、搬送方向TDにおける上流側の部分が、鉛直方向に対して傾斜している。なお、本第3実施形態の説明において、上記第1実施形態と共通する構成の説明は省略する。
【0051】
図10に示すように、第1サイドガイド101Bは、搬送方向TDの上流側において、鉛直方向の下方に行くほど、鋼帯1から離隔する方向に傾斜している。一方、第1サイドガイド101Bは、搬送方向TDの下流側において、鉛直方向に沿っている。換言すれば、第1サイドガイド101Bの上端縁111は、搬送方向TDに沿っている。一方、第1サイドガイド101Bの下端縁113は、搬送方向TDの上流側において、鋼帯1から離隔する方向に傾斜している。
【0052】
すなわち、
図11に示すように、第1サイドガイド101Bは、搬送方向TDの上流側から下流側にかけて、鉛直方向に対して傾斜した部位が、次第に鉛直方向に沿った部位に変化するように、ねじれた形状を有している。換言すれば、第1サイドガイド101Bは、搬送方向TDの下流側端縁121は鉛直方向に沿っており、上流側端縁123は鉛直方向下側が開き、かつ下流側端縁121と上流側端縁123の2辺を曲面で繋げたねじり形状ともいえる。なお、「第1サイドガイド101Bの上流側において」とは、第1サイドガイド101Bの下流側端縁121を除く領域を指す。すなわち、
図11に示すように、第1サイドガイド101Bの下流側端縁121のみが鉛直方向に沿っており、下流側端縁121以外の領域が傾斜している態様を含み、さらに、下流側端縁121から搬送方向TDにおける所定範囲の領域が鉛直方向に沿っており、それ以外の領域が傾斜している態様も含む。なお、第1サイドガイド101Bのねじれの度合いを、第1サイドガイド101Bを平面視したときの上端縁111と下端縁113との距離D(
図10参照)とする。この場合、距離Dは、第1サイドガイド101Bによる冷却水Wの排出を実現でき、かつ鋼帯1の蛇行を抑制するという趣旨を逸脱しない範囲で設定される。
【0053】
以上説明したように、本第3実施形態に係る熱延鋼帯の製造装置10では、第1サイドガイド101Bの上流側が鉛直方向の下方に行くほど鋼帯1から離隔する方向に傾斜しており、かつ下流側が鉛直方向に沿っている。これにより、流体Fが噴射されることで水切りされた冷却水Wが、第1サイドガイド101Bに衝突した後、その大部分が鉛直方向の下方に排出される(
図11中矢印A参照)。この結果、鋼帯1の表面上に滞留している冷却水Wに対して、より効果的な水切りが実現される。
【0054】
また、本第3実施形態に係る第1サイドガイド101Bは、下流側が鉛直方向に沿っている。また、第1サイドガイド101Bの搬送方向TDの下流側には、第2サイドガイド102が設けられている。第2サイドガイド102は、鉛直方向に沿って配置されている。これにより、第1サイドガイド101Bと第2サイドガイド102との間で設置角度の差が低減されるので、鋼帯1の蛇行が生じても、第1サイドガイド101Bと第2サイドガイド102との間に鋼帯1が引っ掛かる現象(すなわち、鋼帯1の噛み込み)が生じにくくなる。
【0055】
(変形例)
なお、上記第3実施形態では、第1サイドガイド101Bの上端縁111は搬送方向TDに沿っており、下端縁113は、搬送方向TDに対して傾斜している形態例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されない。変形例に係る第1サイドガイド101Cは、第1サイドガイド101Cの全体が搬送方向TDに対して傾斜して配置されている。
【0056】
図12に示すように、第1サイドガイド101Cの全体が、搬送方向TDの上流側において、鉛直方向の下方に行くほど、鋼帯1から離隔する方向に角度βで傾斜して配置されている。換言すれば、第1サイドガイド101Cと搬送ロール18の軸方向端部18aとの間隔は、搬送方向TDの上流に行くほど広くなっている。
【0057】
第1サイドガイド101Cは、搬送方向TDの上流側において、鉛直方向の下方に行くほど、鋼帯1から離隔する方向に傾斜している。一方、第1サイドガイド101Cは、搬送方向TDの下流側において、鉛直方向に沿っている。換言すれば、第1サイドガイド101Cの上端縁111は、搬送方向TDに対して角度βで傾斜している。一方、第1サイドガイド101Cの下端縁113は、搬送方向TDの上流側において、上端縁111よりもさらに鋼帯1から離隔する方向に傾斜している。すなわち、
図13に示すように、第1サイドガイド101Cは、搬送方向TDの上流側から下流側にかけて、鉛直方向に対して傾斜した部位が鉛直方向に沿った部位となるように、ねじれた形状を有している。なお、第1サイドガイド101Cのねじれの度合いを、第1サイドガイド101Cを平面視したときの上端縁111と下端縁113との距離D(
図12参照)とする。この場合、距離Dは、第1サイドガイド101Cによる冷却水Wの排出を実現でき、かつ鋼帯1の蛇行を抑制するという趣旨を逸脱しない範囲で設定される。例えば、距離Dは、角度βが大きくなるに従って小さくなるように、冷却水Wの排出に関する流体シミュレーション結果、又は実機を用いた試験結果に基づいて設定される。
【0058】
以上説明したように、本変形例によれば、上記第3実施形態の第1サイドガイド101Bと同様な効果が得られるとともに、上記第2実施形態の第1サイドガイド101Aと同様な効果が得られる。
【0059】
なお、本第3実施形態及び変形例では、第1サイドガイド101B及び101Cが、曲面状にねじれている形態例を挙げて説明したが、本開示の技術は、これに限定されない。第1サイドガイド101B及び101Cは、上流側において鉛直方向に対して傾斜し、下流側において鉛直方向に沿っていればよく、平面と曲面とを組み合わせたり、平面を繋ぎ合わせたりすることでねじれ形状を実現してもよい。
【実施例0060】
本発明に係る熱延鋼帯の製造装置10及び熱延鋼帯の製造方法について性能を評価するため、流体シミュレーションを用いて、冷却水Wの排出挙動を調べた。具体的には、シミュレーション結果に基づいて、水切りが行われた後に、鋼帯1の表面上に滞留している水量を算出した。
【0061】
比較例1は、冷却水Wの水切りを行わない場合とした。
図14に示すように、比較例1において、鋼帯1の表面上に滞留している水量(以下、板上水量と称する)は、502(L/min)であった。比較例2は、水切りを行い、かつ第2サイドガイド102のみでサイドガイド部100が構成された場合とした。比較例2では、板上水量は、22(L/min)であった。比較例3は、水切りを行い、かつ第1サイドガイド101が、搬送方向に対してのみ傾斜している場合とした。比較例3では、板上水量は、14(L/min)であった。
【0062】
一方、実施例1は、水切りを行い、かつ第1サイドガイド101が、鉛直方向に対して傾斜している構成とした。
図14に示すように、実施例1では、板上水量は、10(L/min)であった。実施例2は、水切りを行い、かつ第1サイドガイド101が、鉛直方向に対して傾斜し、かつ搬送方向に対して傾斜している構成とした。
図14に示すように、実施例2では、板上水量は、8(L/min)であった。このように本実施形態に係る熱延鋼帯の製造装置10では、第1サイドガイド101を備えることにより、板上水量が低減できることから、水切りによって冷却水Wが効果的に排出できることが示された。
【0063】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は応用例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0064】
例えば、上記実施形態において、水切りノズル16aが板幅方向WDの両側に設けられ、鋼帯1上の冷却水Wに対して板幅方向WDの両側から水切りが行われる例を示したが、本発明は、かかる例に限定されない。例えば、
図15に示すように、水切りノズル16aが板幅方向WDの一方に設けられ、冷却水Wに対して板幅方向WDの片側から水切りが行われる態様であってもよい。この場合、水切りが開始される位置は、一例として水切り水が鋼帯1に噴射される範囲の水切りノズル16a側(例えば、鋼帯1の板幅方向WDにおける水切りノズル16a側の端部近傍)である。
【0065】
また、上記実施形態において、サイドガイド部100が、第2サイドガイド102を含んだ例を示したが、本発明は、かかる例に限定されない。本発明に係るサイドガイド部100は、水切りノズル16aに対向する位置に第1サイドガイド101を有していればよく、その他の領域のガイド部材の形状は、例えば、長手方向が搬送方向TDに沿って配置された平板状の長板であってもよい。