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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009456
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】車体後部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20230113BHJP
【FI】
B62D25/08 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021112762
(22)【出願日】2021-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】茶木 雄太
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB06
3D203BB07
3D203BB09
3D203BB24
3D203BB25
3D203BC10
3D203BC15
3D203BC16
3D203CA53
3D203CA67
3D203CA69
3D203DA73
3D203DA76
(57)【要約】
【課題】凹部を有するリアフロアパネルの剛性を確保できるようにする。
【解決手段】車体後部構造は、リアフロアパネル10と、リアフロアパネル10の両側に配置され、ショックアブソーバを取り囲むサスペンションタワー16とを有する。リアフロアパネル10には車両下方に凹む凹部11が設けられている。凹部11には、車幅方向に延びるクロスメンバ20が設けられる。クロスメンバ20の車幅方向の端部は、サスペンションタワー16に接続されており、クロスメンバ20は、凹部11の上面側に設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体後部に設けられたリアフロアパネルと、該リアフロアパネルの車幅方向両側に配置され、車両上下方向に延びるショックアブソーバを取り囲むサスペンションタワーと、を有し、
前記リアフロアパネルの車幅方向の中間部には、車両下方に凹む凹部が設けられている車体後部構造において、
前記凹部には、車幅方向に延びるクロスメンバが設けられ、
該クロスメンバの車幅方向の端部は、前記サスペンションタワーに接続されており、
前記クロスメンバは、前記凹部の上面側に設けられていることを特徴とする、車体後部構造。
【請求項2】
前記サスペンションタワーには、前記ショックアブソーバが取り付けられる取付部が設けられ、
前記クロスメンバの車幅方向の端部は、前記取付部に連続する位置に接合されていることを特徴とする、請求項1に記載の車体後部構造。
【請求項3】
前記クロスメンバは、複数の長尺の直線部と、該直線部が屈曲されることにより形成される複数の屈曲部と、を有し、
前記屈曲部の厚みは、前記直線部及び前記側壁部の厚みよりも厚いことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の車体後部構造。
【請求項4】
前記凹部は、底面部と、該底面部の端から車両上方に延び、前記底面部の少なくとも一部を取り囲む側壁部とを有し、
前部凹部の前記底面部には、スペアタイヤを載置可能であり、
前記クロスメンバのうち、前記底面部の上面に接合されている部分は、前記スペアタイヤの径方向に沿った面形状に対応していることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の車体後部構造。
【請求項5】
前記クロスメンバは、前記凹部の車両前後方向の中間部に配置されていることを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の車体後部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体後部には、リアフロアパネルが設けられている。例えば、特許文献1に開示されているように、リアフロアパネルが車両後部の荷室の床部を構成する構造が知られている。このようなリアフロアパネルは、平坦な部分の面積が大きいため、面剛性が低い構造になりやすい。
【0003】
また、リアフロアパネルには、スペアタイヤが収容可能な凹部が設けられている。スペアタイヤを搭載したときの荷重を支持するため、リアフロアパネルには、所定の面剛性が要求される。特許文献1に開示された構造では、リアフロアパネルにクロスメンバを接合することにより、リアフロアパネルの面剛性を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3493361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記例のような凹部を有するリアフロアパネルには、複数の屈曲する部分が形成されるため、当該屈曲する部分を起点する変形が生じやすくなる。これに対して、上記例では、左右のストラットハウジングを繋ぐクロスメンバを設けることによって、変形を抑制しているが、凹部に形成される屈曲する部分を補強していない。
【0006】
そのため、上記例の構造では、荷重が作用することにより、屈曲する部分を起点とする変形が生じやすい。このため、凹部を有するリアフロアパネルの剛性を確保する上で、上記例の構造には改善の余地があった。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、凹部を有するリアフロアパネルの剛性を確保することが可能な車体後部構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る車体後部構造は、車体後部に設けられたリアフロアパネルと、該リアフロアパネルの車幅方向両側に配置され、車両上下方向に延びるショックアブソーバを取り囲むサスペンションタワーと、を有し、前記リアフロアパネルの車幅方向の中間部には、車両下方に凹む凹部が設けられている。当該車体後部構造において、前記凹部には、車幅方向に延びるクロスメンバが設けられ、該クロスメンバの車幅方向の端部は、前記サスペンションタワーに接続されており、前記クロスメンバは、前記凹部の上面側に設けられている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、凹部を有するリアフロアパネルの剛性を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る車体後部構造の一実施形態を示す平面図である。
図2図1の車体後部構造を車両前方側から見た斜視図で、クロスメンバを省略している。
図3図2の後面図である。
図4図3のA部を拡大した拡大後面図である。
図5図3のB部を拡大した拡大後面図である。
図6図1のクロスメンバの変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る車両の車体後部構造の一実施形態について、図面(図1図6)を参照しながら説明する。なお、図において、矢印Fr方向は車両前後方向における前方を示す。実施形態の説明における「前部(前端)及び後部(後端)」は、車両前後方向における前部及び後部に対応する。また、矢印R及び矢印Lは、乗員が車両前方を見たときの右側及び左側を示している。
【0012】
本実施形態の車体後部構造は、リアフロアパネル10と、リアサイドメンバ13と、サスペンションタワー16と、リアホイルハウスパネル15と、クロスメンバ20と、リアスカートパネル12と、を有している。
【0013】
リアフロアパネル10は、図1及び図2に示すように、車体の後部に配置される部材で、この例では、荷室のフロア部を構成している金属製の部材である。リアフロアパネル10の車幅方向の中間部には、上面10aに対して車両下方に凹む凹部11が設けられている。凹部11の詳細は後で説明する。
【0014】
リアサイドメンバ13は、図1及び図2に示すように、車体骨格を構成する剛性の高い部材であり、リアフロアパネル10の下面側における車幅方向両側部に配置されている。リアサイドメンバ13は、車両前後方向に延びており、車両前後方向視で、車両上方に開口するU字状の横断面形状を有している。詳細な図示は省略しているが、リアサイドメンバ13の上部の開口縁には、フランジが設けられており、該フランジは、リアフロアパネル10の下面にスポット溶接等により接合されている。
【0015】
リアホイルハウスパネル15は、図示しないリアホイールを、車両上方側から覆うパネル材であり、リアフロアパネル10の車幅方向外側に配置されている。リアホイルハウスパネル15は、車体後部の側壁を構成するクォータパネル17の内壁から車両室内側に膨出している。この例では、リアホイルハウスパネル15は、クォータパネル17の車両上下方向の中間部から、車両下方に向かうに従い、車両室内側に向かって膨出している。リアホイルハウスパネル15の下端は、リアフロアパネル10の上面10aにおける車幅方向外側部に接続されている。この例では、リアホイルハウスパネル15の下端は、リアフロアパネル10を介して、リアサイドメンバ13の車幅方向外側に接続されている。
【0016】
サスペンションタワー16は、図示しないショックアブソーバが取り付けられる部分であり、リアホイルハウスパネル15に設けられている。この例では、図1及び図2に示すように、サスペンションタワー16は、リアホイルハウスパネル15の車両前後方向の中間部が車両下方に凹む部分であり、円形の底面が設けられている。サスペンションタワー16は、円形の底面から上方に延びる円筒状の側壁面を有している。円形の底面には、ショックアブソーバの上部が取り付けられる取付部16aが設けられている。当該取付部16aは、例えば、図1に示すように、底面に貫通孔が設けられ、ショックアブソーバの上端がボルト等の締結部材によって取り付けられている。ショックアブソーバは、円形の底面から、車両下方に延びている部材である。
【0017】
リアスカートパネル12は、図1図3に示すように、車体の後端に配置され、車体の後壁を構成する板状の部材であり、車幅方向に延びている。車体後部には、車両の外側から荷室にアクセス可能なバックドア開口部18が設けられている。リアスカートパネル12は、リアフロアパネル10の後端から車両上方に延びており、バックドア開口部18の下部に配置されている。
【0018】
ここで、リアフロアパネル10の凹部11について説明する。図1図2に示すように、凹部11は、スペアタイヤを収容することができ、底面部11a及び側壁部11bを有している。底面部11aは、リアフロアパネル10の平坦な上面10aに対して、車両下方に配置される平坦な部分で、この例の底面部11aの外形状は、底面部11aの車両前後方向の中央よりも車両前方側の部分では、ほぼ半円形状に形成されており、該中央よりも車両後方側の部分では、車両後方に向かって延びている。
【0019】
側壁部11bは、底面部11aの外周端が車両上方に屈曲して、車両上方に延びる壁面である。側壁部11bの上端の輪郭形状は、上面視で、底面部11aの外周端の形状に沿って湾曲している。この例の側壁部11bは、上面視で車両後方に開口するU字形状で、開口をやや狭めたような形状である。
【0020】
また、側壁部11bは、底面部11aの外周端から車両上方に向かうに従い、底面部11aから離れる方向にやや傾斜している。すなわち、底面部11aと側壁部11bとによって形成される屈曲する部分は、鈍角に形成されており、凹部11の開口面積は、底面部11aの面積よりやや広く形成されている。底面部11aの後端部分には、側壁部11bは設けられていないが、リアスカートパネル12によって塞がれている。
【0021】
続いて、クロスメンバ20について説明する。クロスメンバ20は、図3図5に示すように、凹部11に設けられる中央部材21と、中央部材21の車幅方向外側に設けられている外側補強部材22と、を有している。この例では、クロスメンバ20の中央部材21は、凹部11の上面側を横断するように配置されており、中間部(直線部)21aと、縦部(直線部)21bと、外側部(直線部)21cと、を有している。中間部21aは、車幅方向に延びている部分で、凹部11の底面部11aにおける車両前後方向の中央に接合されている。中間部21aの車幅方向外側部は、車両上方に屈曲されている下側屈曲部25aが設けられている。縦部21bは、下側屈曲部25aから車両上方に延びている部分である。縦部21bは、凹部11の側壁部11bに沿って傾斜している。縦部21bの上端には、車幅方向外側に屈曲されている上側屈曲部25bが設けられ、外側部21cは、縦部21bの上端の上側屈曲部25bから車幅方向外側に延びている。
【0022】
また、外側補強部材22は、図4及び図5に示すように、底部(直線部)22aと縦壁部(直線部)22bとを有し、車両前後方向視で、略L字形の断面形状をなしている。底部22bは、車幅方向に延びる部分で、一方端は、中央部材21の外側部21cの車幅方向端に接合され、他方端は、サスペンションタワー16の下部に配置されている。また、他方端には、車両上方に屈曲されている外側屈曲部25cが設けられている。縦壁部22bは、底部22aの上記他方端の外側屈曲部25cから、サスペンションタワー16の側壁に沿って車両上方に延びている。縦壁部22bの上端は、サスペンションタワー16に接合されている。
【0023】
本実施形態では、屈曲部25a,25b,25cは、下側屈曲部25a、上側屈曲部25b及び外側屈曲部25cを有している。上記したように、屈曲部25a,25b,25cに沿うようにクロスメンバ20を設けることにより、凹部11の屈曲部25a,25b,25cを起点とする変形を抑制することができる。また、リアフロアパネル10の底面部11aの中央領域にクロスメンバ20が配置されることにより、底面部11aの平坦な部分が2つの領域に分割される。その結果、平坦な部分の面積が小さくなり、面剛性が向上する。さらに、面剛性の向上により、フロア振動を抑制することができ、その結果、車両室内の騒音レベルを低減させることが可能となる。
【0024】
また、クロスメンバ20を車両室外側(リアフロアパネル10の下面側)に配置すると、ショックアブソーバやリアサイドメンバ13に干渉するため、クロスメンバ20の形状やレイアウトが制限され、その結果、設計の自由度が低下する。これに対して、本実施形態では、クロスメンバ20を車両室内側(リアフロアパネル10の上面10a)に配置されているため、上記した制限がなくなり、設計の自由度が向上する。
【0025】
サスペンションタワー16には、ショックアブソーバが取り付けられる取付部16aが設けられ、クロスメンバ20の車幅方向の端部が取付部16aに隣接する位置に接合されている。この例では、クロスメンバ20の外側補強部材22の上端が、サスペンションタワー16のうち、取付部16aに連続する位置に接合されている。これにより、車幅方向両側(左右)の取付部16aをクロスメンバ20によって繋ぐ構造となるため、車体ねじり剛性が向上し、さらに、取付部16aの剛性が向上する。さらに、振動が入力されるショックアブソーバとクロスメンバ20とが接続される構造となるため、取付部16aの振動抑制が可能となり、凹部11の屈曲部25に荷重が入力されることで生じるリアフロアパネル10の変形を、抑制することが可能となる。
【0026】
また、本実施形態のクロスメンバ20は、複数の長尺の直線部と、上記したように、該直線部が屈曲されることにより形成される屈曲部25と、を有している。この例では、直線部は、中間部21a、縦部21b、外側部21c、底部22a及び縦壁部22b等を含む。また、これらの部分が接続される位置に、屈曲部25が設けられている。
【0027】
本実施形態では、屈曲部25の厚みは、直線部の厚みよりも厚く設定されている。ここで、厚みとは、屈曲部25及び直線部の板厚としもよいし、車両前後方向視における車体に接合される面(例えば、リアフロアパネル10)と車両内側の面(例えば、中間部21aの上面)との距離としてもよい。このように屈曲部25の厚みを設定することにより、曲げ変形が抑制することが可能となる。
【0028】
また、本実施形態では、上記したように、凹部11の底面部11aには、スペアタイヤを載置可能であり、底面部11aに設置されるクロスメンバ20は、スペアタイヤの形状に沿って形成されている。この例では、これにより、スペアタイヤが底面部11aに固定されるとき、クロスメンバ20の中間部21aが干渉することが抑制され、スペアタイヤの底面部11aへの固定状態を安定させることが可能となる。
【0029】
また、本実施形態では、クロスメンバ20は、凹部11の車両前後方向の中央(中間部)に配置されている。これにより、凹部11の底面部11aの面剛性を効果的に向上させることができる。また、本実施形態では、クロスメンバ20は、リアスカートパネル12に対して平行に延びている。クロスメンバ20とリアスカートパネル12とが剛性部材として働くことにより、凹部11において、車両前後方向におけるリアスカートパネル12とクロスメンバ20との間の領域の変形を抑制することが可能となる。
【0030】
本実施形態の説明は、本発明を説明するための例示であって、特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではない。また、本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【0031】
本実施形態では、クロスメンバ20は、図1に示すように、上面視で車幅方向に直線的に延びているがこれに限らない。例えば、図6に示すように、中間部21aを、車両前方側に屈曲または湾曲させて屈曲中間部21dを設けて、クロスメンバ20の車幅方向外側端部がサスペンションタワー16に設けられた取付部16aに接続する位置を車両前方にややシフトさせてもよい。これは、例えば、凹部11の底面部11aの中央位置と、取付部16aの位置が車両前後方向にずれている場合に適用するとよい。なお、図6では、屈曲中間部21dは、右側のみを仮想線で示しているが、左側も当然に適用可能である。
【符号の説明】
【0032】
10 リアフロアパネル
10a 上面
11 凹部
11a 底面部
11b 側壁部
12 リアスカートパネル
13 リアサイドメンバ
15 リアホイルハウスパネル
16 サスペンションタワー
16a 取付部
17 クォータパネル
18 バックドア開口部
20 クロスメンバ
21 中央部材
21a 中間部(直線部)
21b 縦部(直線部)
21c 外側部(直線部)
21d 屈曲中間部
22 外側補強部材
22a 底部(直線部)
22b 縦壁部(直線部)
25 屈曲部
図1
図2
図3
図4
図5
図6