(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094640
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】給紙装置、紙送りロールおよび分離ロール
(51)【国際特許分類】
B65H 5/06 20060101AFI20230629BHJP
B65H 3/06 20060101ALI20230629BHJP
B65H 3/52 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
B65H5/06 C
B65H5/06 B
B65H3/06 330E
B65H3/52 330M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210048
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】作田 学
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 里志
【テーマコード(参考)】
3F049
3F343
【Fターム(参考)】
3F049CA02
3F049CA16
3F049LA01
3F049LB01
3F343FA02
3F343FB01
3F343GA01
3F343GB01
3F343GC01
3F343GD01
3F343JA11
3F343JD09
3F343JD37
3F343KB04
3F343KB05
3F343KB16
(57)【要約】
【課題】長期使用後であっても用紙の搬送性に優れ、紙詰まりが抑えられる給紙装置、紙送りロールおよび分離ロールを提供する。
【解決手段】回転駆動され、用紙を搬送する紙送りロール12と、紙送りロール12に圧接されるとともにトルクリミッターが内蔵され、用紙の重送を抑える分離ロール14と、を備え、紙送りロール12および分離ロール14は、軸体と、前記軸体の外周面に形成された弾性体層と、を有し、紙送りロール12の弾性体層は、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)を含む第1相と、イソプレンゴム(IR)若しくは天然ゴム(NR)のいずれか1種以上を含む第2相と、を主成分として含有し、紙送りロール12表面のJIS-A硬度が25~50°であり、分離ロール14の弾性体層は、ポリウレタンを主成分として含有し、前記分離ロール14の弾性体層の表面は、高さ20~300μmの凸部を有し、分離ロール14の弾性体層14bの表面のJIS-A硬度が45~80°であることを特徴とする給紙装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動され、用紙を搬送する紙送りロールと、
前記紙送りロールに圧接されるとともにトルクリミッターが内蔵され、用紙の重送を抑える分離ロールと、を備え、
前記紙送りロールおよび前記分離ロールは、軸体と、前記軸体の外周面に形成された弾性体層と、を有し、
前記紙送りロールの弾性体層は、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)を含む第1相と、イソプレンゴム(IR)若しくは天然ゴム(NR)のいずれか1種以上を含む第2相と、を有し、
前記紙送りロールの弾性体層の表面のJIS-A硬度が25~50°であり、
前記分離ロールの弾性体層は、ポリウレタンを有し、
前記分離ロールの弾性体層の表面は、高さ20~300μmの凸部を有し、
前記分離ロールの弾性体層の表面のJIS-A硬度が45~80°であることを特徴とする給紙装置。
【請求項2】
前記紙送りロールの弾性体層のどの場所においても2.5μm×2.5μm角の範囲内において、前記第2相の面積割合が30~70%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の給紙装置。
【請求項3】
前記分離ロールの弾性体層の表面は、高さ60~100μmの凸部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の給紙装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の紙送りロール。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の分離ロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器において好適に用いられる給紙装置、紙送りロールおよび分離ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器において、紙送りロールは、例えばゴム架橋体などの弾性材料によって円筒状に形成され、その周面が用紙との接触面となる。紙送りロールの周面には、用紙から発生する紙粉が付着することがある。そして、用紙と繰り返し接触するうちに、紙送りロールの周面には紙粉が蓄積することがある。紙粉が蓄積すると、用紙に対する周面の接触面積が低下し、用紙に対する接触面の摩擦係数が低下する。また、紙送りロールと分離ロールに材料種の違いや硬度の差があると、一方のロール(例えば、分離ロール)が他方のロール(例えば、紙送りロール)の弾性体層の表面を摩耗させる。その結果、弾性体層の表面の摩擦係数が低下して、長期使用後に用紙の搬送不良が生じることがある。
【0003】
用紙の搬送不良を抑制するために、紙送りロールの周面に凹凸を形成したものが知られている(特許文献1)。例えば特許文献1には、紙送りロールの軸方向と平行に複数本の凸条および凹溝を形成したものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-065907号公報
【特許文献2】特開2001-151371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、紙送りロール単体と用紙との間の摩擦係数を問題にしている。一方で、特許文献2には、給送ロールと分離ロールを備えるシート供給装置の発明が提案されている。給送ロールは、シート搬送方向に回転駆動されるロールであり、分離ロールは、給送ロールと同方向に従動回転するものであり、内蔵されるトルクリミッターによりシートの重送を抑えるロールである。特許文献2では、分離ロールの硬度よりも給送ロールの硬度を低硬度とすることで、分離ロールと給送ロールの圧接部において分離ロールと給送ロールの間に微小な滑りが生じるようにし、分離ロールの弾性体層の表面に付着した紙粉を給送ロールがクリーニングして、紙粉による分離ロールの摩擦係数の低下を抑えている。しかしながら、特許文献2の構成だけでは、長期使用後のシートの重送を抑える機能は十分ではなく、長期使用後の用紙の搬送不良(紙詰まり)を解消できないという問題がある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、前記紙送りロールと前記分離ロールの弾性体層の表面に紙粉が付着して紙粉が蓄積しても、用紙に対する接触面の摩擦係数が低下することを防ぎ、また、前記紙送りロールと前記分離ロールに材料種の違いや硬度の差が存在しても、前記分離ロールが前記紙送りロールの弾性体層の表面の摩耗を抑制することによって、長期使用後であっても用紙の搬送性に優れ、紙詰まりを回避できる給紙装置、紙送りロールおよび分離ロールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明に係る給紙装置は、回転駆動され、用紙を搬送する紙送りロールと、前記紙送りロールに圧接されるとともにトルクリミッターが内蔵され、用紙の重送を抑える分離ロールと、を備え、前記紙送りロールおよび前記分離ロールは、軸体と、前記軸体の外周面に形成された弾性体層と、を有し、前記紙送りロールの弾性体層は、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)を含む第1相と、イソプレンゴム(IR)若しくは天然ゴム(NR)のいずれか1種以上を含む第2相と、を含有し、前記紙送りロールの弾性体層の表面のJIS-A硬度が25~50°であり、前記分離ロールの弾性体層は、ポリウレタンを含有し、前記分離ロールの弾性体層の表面は、高さ20~300μmの凸部を有し、前記分離ロールの弾性体層の表面のJIS-A硬度が45~80°であることを要旨とする。
【0008】
前記弾性体層の任意の2.5μm×2.5μm角の範囲内において、前記第2相の面積割合が30~70%の範囲内であることが好ましい。
前記分離ロールの弾性体層の表面は、高さ60~100μmの凸部を有することが好ましい。
【0009】
そして、本発明に係る紙送りロールは、前記給紙装置に用いられる紙送りロールである。また、本発明に係る分離ロールは、前記給紙装置に用いられる分離ロールである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る給紙装置によれば、前記紙送りロールはエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)を含む第1相と、イソプレンゴム(IR)若しくは天然ゴム(NR)のいずれか1種以上とを有する第2相、を主成分として含有し、前記紙送りロールの弾性体層の表面のJIS-A硬度は25~50°で、前記分離ロールの弾性体はポリウレタンを主成分として含有し、前記分離ロール弾性体の表面は、高さ20~300μmの凸部を有し、前記分離ロールの弾性体層の表面のJIS-A硬度は45~80°であることから、前記紙送りロールと前記分離ロールの弾性体層の表面に紙粉が付着して紙粉が蓄積しても、用紙に対する接触面の摩擦係数が低下することを防ぎ、前記分離ロールにより前記紙送りロールの弾性体層の表面を摩耗することを抑制できる。その結果、長期使用後であっても紙搬送性に優れ、紙詰まりを回避させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る給紙装置の模式図である。
【
図2】
図1に示す給紙装置の紙送り動作の図である。
図2(a)は、1枚の用紙がロール間に到着する前の状態を示したものであり、
図2(b)は、1枚の用紙がロール間に到着したときの動作を示したものである。
【
図3】
図1に示す給紙装置の紙送り動作の図である。
図3(a)は、2枚の用紙がロール間に到着する前の状態を示したものであり、
図3(b)は、2枚の用紙がロール間に到着したときの動作を示したものである。
【
図4】
図4(a)は、前記紙送りロールの一実施形態に係る外観模式図である。
図4(b)は、分離ロールの一実施形態に係る外観模式図である。
【
図5】
図5は、前記紙送りロールの弾性体層を構成するエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)を含む第1相と、イソプレンゴム(IR)若しくは天然ゴム(NR)のいずれか1種以上を含む第2相の両相の面積比率を計測する方法を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る給紙装置について詳細に説明する。
【0013】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る給紙装置10は、紙送りロール12(フィードロール)と、分離ロール14(リタードロール)と、を備える。紙送りロール12は、軸体12aと、軸体12aの外周に形成された弾性体層12bを有する。分離ロール14は、軸体14aと、軸体14aの外周に形成された弾性体層14bを有する。紙送りロール12は、図示しない駆動源(モータ)からの動力を受けて回転駆動され、用紙Pを搬送する機能を有する。分離ロール14は、図示しない付勢部材(ばねなど)により所定の圧力で紙送りロール12に圧接される。また、分離ロール14は、図示しないトルクリミッターが内蔵され、用紙Pの搬送方向(矢印の方向)と反対の方向にブレーキトルクが付与されるように構成されている。
【0014】
搬送される用紙は、給紙カセット16内に積載されている。積載された用紙Pの上面には、引込ロール18(ピックアップロール)の弾性体層18bの表面が摩擦接触しており、引込ロール18によって、給紙カセット16から紙送りロール12に向けて用紙Pを順に繰り出すように構成されている。引込ロール18は、軸体18aと、軸体18aの外周に形成された弾性体層18bと、を有する。引込ロール18は、図示しない連結部材(ギアやタイミングベルトなど)によって紙送りロール12の駆動に連動して回転するように構成されている。
尚、上記構成は例示であり、上記構成に限定されない。
【0015】
紙送りロール12の回転駆動に伴い、引込ロール18が回転し、給紙カセット16から紙送りロール12に向けて用紙Pが1枚ずつ繰り出される。
図2(a)に示すように、紙送りロール12は、用紙Pが到着する前から回転駆動している。紙送りロール12に圧接される分離ロール14は、紙送りロール12の回転に伴い、紙送りロール12と分離ロール14の間(ロール間)の摩擦力により、ブレーキトルクに逆らって従動回転する。繰り出された1枚の用紙Pがロール間に到着すると、
図2(b)に示すように、ロール間を通って用紙Pが搬出される。
【0016】
給紙カセット16から紙送りロール12に向けて用紙Pが2枚繰り出されたときには、
図3(a)に示すように、用紙P1、P2が到着する前においては、紙送りロール12は回転駆動し、分離ロール14は、紙送りロール12の回転に伴い、ブレーキトルクに逆らって従動回転する。繰り出された2枚の用紙P1、P2がロール間に到着すると、
図3(b)に示すように、分離ロール14は2枚の用紙P1、P2を介して紙送りロール12に接触する状態となる。2枚の用紙P1、P2の間に働く摩擦力は小さいため、ブレーキトルクによって分離ロール14は紙送りロール12の回転には従動せず、停止する。これにより、紙送りロール12に接触する用紙P1は紙送りロール12の回転に伴い、ロール間を通って搬出される一方で、分離ロール14に接触する用紙P2は搬出されない。これにより、用紙Pの重送が抑えられる。
【0017】
紙送りロール12の弾性体層12bは、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)を含む第1相と、イソプレンゴム(IR)若しくは天然ゴム(NR)のいずれか1種以上を含む第2相と、を有する。紙送りロール12の弾性体層12bの表面のJIS-A硬度は25~50°である。
前記表面は、任意の凹凸で構成することができる。前記表面の凹凸は、複数の凸部によって形成されるものであってもよいし、複数の凹部によって形成されるものであってもよいし、シボ形状のような複数の凸部と複数の凹部によって形成されるものであってもよい。
【0018】
また、同様に、分離ロール14の弾性層14bはポリウレタンを有する。分離ロール14の弾性層14bは外周表面に高さ20~300μmの凸部を有する。上記表面凹凸は、複数の凸部によって形成されるものであってもよいし、複数の凹部によって形成されるものであってもよいし、シボ形状のような複数の凸部と複数の凹部によって形成されるものであってもよい。分離ロール14の弾性体層14bの表面のJIS-A硬度は45~80°である。
【0019】
図4(a)には、紙送りロール12の一実施形態に係る外観模式図を示す。
【0020】
紙送りロール12の弾性体層12bは、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)を含む第1相と、イソプレンゴム(IR)若しくは天然ゴム(NR)のいずれか1種以上を含む第2相と、を有している。第2相はイソプレンゴム(IR)であることが好ましい。第2相がイソプレンゴム(IR)若しくは天然ゴム(NR)のいずれか1種以上であると、第2相のイソプレンゴム(IR)若しくは天然ゴム(NR)は、前記給紙ロールの弾性体層に含まれるポリウレタンよりも、耐摩耗性に優れる材料であるため、分離ロール14による紙送りロール12の弾性体層12bの表面の摩耗を抑制することができる。その結果、長期使用後であっても用紙の搬送性に優れ、紙詰まりを回避させることができる。
【0021】
エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)とイソプレンゴム(IR)若しくは天然ゴム(NR)のいずれか1種以上の2相から構成される紙送りロール12の弾性体層12bは、任意の2.5μm×2.5μm角の範囲内において、イソプレンゴム(IR)若しくは天然ゴム(NR)のいずれか1種以上の相の面積割合が30~70%の範囲内となることが好ましい。より好ましくは、面積割合が40~60%の範囲内であり、さらに好ましくは、面積割合が45~55%の範囲内である。第1相や第2相の面積割合は、走査型プローブ顕微鏡(SPM)を用いて表面分析することにより測定することができる。
【0022】
任意とは、どの場所においても、という意味である。エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)相とイソプレンゴム(IR)若しくは天然ゴム(NR)のいずれか1種以上の相の両相の面積比率は、任意の2.5μm×2.5μm角の範囲内におけるものであるが、具体的には、
図5に示すように、紙送りロール12の弾性体層12bの任意の断面を観察し、その断面における任意の20×20μmの範囲を64分割し、斜線が引いてある斜め方向に並ぶ16マスを選択し、各2.5×2.5μm角内における第1相や第2相の面積割合をそれぞれ計測し、選択した16マスのうちの14マス以上(8.5割以上)が該当する値である。走査型プローブ顕微鏡(SPM)による撮影は、弾性体層の軸方向の左端部、中央部、右端部のそれぞれ周方向4か所(合計12か所)について行う。
【0023】
紙送りロール12の弾性体層12bは、任意の2.5μm×2.5μm角の範囲内においてエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)相とイソプレンゴム(IR)若しくは天然ゴム(NR)のいずれか1種以上の相の両相が所定の割合で存在するように、イソプレンゴム(IR)若しくは天然ゴム(NR)のいずれか1種以上の相が紙粉レベルにおいて均一に分散(微分散)されている場合には、紙粉サイズレベルの摩擦力制御や、分離ロール14による紙送りロール12の弾性体層12bの表面の部位による偏摩耗を抑制できるため、長期使用後であっても紙搬送性に優れ、紙詰まりを回避できる。
【0024】
このように、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)相とイソプレンゴム(IR)若しくは天然ゴム(NR)のいずれか1種以上の相の両相が均一に分散(微分散)するには、例えば、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)相とイソプレンゴム(IR)若しくは天然ゴム(NR)のいずれか1種以上の相の両相の分散性を向上させる分散剤を用いる、所望の分散度まで十分に混練する、などの方法を用いることが考えられる。
【0025】
紙送りロール12は、弾性体層12bの表面のJIS-A硬度が25~50度の範囲内に構成されている。好ましくは30~40度の範囲内である。紙送りロール12の弾性体層12bの表面とは、弾性体層12bの外周面である。紙送りロール12の弾性体層12bの表面硬度は、弾性体層12bの材料構成などにより調整することができる。紙送りロール12の弾性体層12bの表面のJIS-A硬度が25度以上であると、分離ロール14による紙送りロール12の弾性体層12bの表面の摩耗が抑制できる。紙送りロール12の弾性体層12bの表面のJIS-A硬度が50度以下であると、紙送りロール12による分離ロール14の弾性体層14bの表面の摩耗が抑制できる。その結果、長期使用後であっても用紙の搬送性に優れ、紙詰まりを回避させることができる。
【0026】
紙送りロール12の弾性体層12bは、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)を含む第1相と、イソプレンゴム(IR)若しくは天然ゴム(NR)のいずれか1種以上を含む第2相と、を主成分として含有し、更に他のゴム成分を有してもよい。他のゴム成分としては、ポリポリウレタンゴム、EPDM、塩素化ポリエチレンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。
ここで、主成分とは、弾性体層中に占める重量割合が60重量%以上であることを意味する。
【0027】
前記EPDMに含まれるジエン系モノマー(第3成分)としては、炭素数5~20のジエン系モノマーが好ましく、具体的には、1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、2,5-ジメチル-1,5-ヘキサジエン、1,4-オクタジエン、1,4-シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン(DCP)、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)、5-ブチリデン-2-ノルボルネン、2-メタリル-5-ノルボルネン、2-イソプロペニル-5-ノルボルネン等があげられる。これらジエン系モノマー(第3成分)のなかでも、ジシクロペンタジエン(DCP)、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)が好ましい。
【0028】
上記EPDMは、摩耗性の点から、ジエン系モノマー(第3成分)の含有量が少ないものが好ましく、第3成分の含有量はヨウ素価で1~7の範囲が好ましく、特に好ましくは10~50の範囲である。
【0029】
また、上記EPDMのジエン量は、摩耗性の点から、1.5~5重量%が好ましく、特に好ましくは2~4重量%である。
【0030】
前記イソプレンゴム(IR)若しくは天然ゴム(NR)のいずれか1種以上とは、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)の両者であってもよいし、一方であっても良い。摩耗性に優れる等の観点から、イソプレンゴム(IR)が好ましい。
【0031】
前記分散剤は、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)成分からなるブロックとイソプレンゴム(IR)若しくは天然ゴム(NR)のいずれか1種以上からなるブロックとを有するポリマーや、変性天然ゴム、変性イソプレンゴムなどが挙げられる。
【0032】
変性天然ゴムとしては、エポキシ化天然ゴム、塩素化天然ゴム、ニトリル化天然ゴム(アクリロニトリル化天然ゴム)などが挙げられる。変性イソプレンゴムとしては、エポキシ化イソプレンゴム、塩素化イソプレンゴム、ニトリル化イソプレンゴム(アクリロニトリル化イソプレンゴム)、マレイン酸変性イソプレンゴム、(メタ)アクリル酸変性イソプレンゴムなどが挙げられる。これらは、分散剤として単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、分散効果に特に優れるなどの観点から、エポキシ化天然ゴム、エポキシ化イソプレンゴムが特に好ましい。
【0033】
紙送りロール12の弾性体層12bは、必要に応じて、各種添加剤を適宜添加しても良い。添加剤としては、滑剤、加硫促進剤、老化防止剤、光安定剤、粘度調整剤、加工助剤、難燃剤、可塑剤、充填剤、分散剤、消泡剤、顔料、離型剤などを挙げることができる。
【0034】
紙送りロール12の軸体12aの材料としては、ポリアセタール(POM)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、ポリカーボネート、ナイロン等の合成樹脂、または、鉄、ステンレス、アルミニウム等の金属材料を挙げることができる。軸体12aは、中空状に形成されていても良いし、中実体であっても良い。
【0035】
紙送りロール12の弾性層12bは、軸体12aをロール成形金型の中央部に同軸的に配置し、EPDM組成物を注入して、加熱・硬化(架橋)させた後、脱型して軸体12aの外周に弾性体層12bを形成する。
【0036】
図4(b)には、分離ロール14の一実施形態に係る外観模式図を示す。
図4(b)に示すように、分離ロール14は、弾性体層14cの外周表面に複数の凸部14cを有する。分離ロール14の外周面には、複数の凸部14cにより表面凹凸が設けられている。
【0037】
図4(b)では、複数の凸部14cは、半球状の凸部で構成されている。また、
図4(b)では、複数の凸部14cは、弾性体層14bの外周表面に千鳥状に規則正しく配置されている。具体的には、分離ロール14の軸方向Xに並ぶ一列目の凸部14cと凸部14cの間に分離ロール14の軸方向Xに並ぶ二列目の凸部14cが配置され、分離ロール14の軸方向Xに並ぶ二列目の凸部14cと凸部14cの間に分離ロール14の軸方向Xに並ぶ三列目の凸部14cが配置され、分離ロール14の軸方向Xに並ぶ三列目の凸部14cと凸部14cの間に分離ロール14の軸方向Xに並ぶ四列目の凸部14cが配置されており、凸部14cが互い違いに配列されている。複数の凸部14cは、弾性体層14bの周面において、分離ロール14の軸方向Xに配列されているが、分離ロール14の軸方向Xに対し45°の角度の方向にも配列されている。なお、複数の凸部14cは、半球状の凸部に限定されるものではない。また、複数の凸部14cは、規則正しく配置されていなくてもよいし、配列されていなくてもよい。
【0038】
分離ロール14の弾性体層14bの表面は、高さ20~300μmの凸部14cを有する。前記凸部14c高さが20μm以上であることで、分離ロール14の弾性体層14bの表面に紙粉が付着して紙粉が蓄積しても、用紙に対する接触面の摩擦係数が低下することを防ぐことができる。その結果、長期使用後であっても用紙の搬送性に優れ、紙詰まりを回避させることができる。前記凸部14c高さは、より好ましくは30μm以上、さらに好ましくは50μm以上である。一方、前記凸部14c高さは、分離ロール14により紙送りロール12の弾性体層12bの表面を摩耗することを抑制するなどの観点から、300μm以下である。好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下である。
【0039】
分離ロール14は、弾性体層14bの表面のJIS-A硬度が45~80度の範囲内に構成されている。分離ロール14の表面とは、弾性体層14bの外周面である。分離ロール14の表面硬度は、弾性体層14bの材料構成などにより調整することができる。分離ロール14の弾性体層14bの表面のJIS-A硬度が40度以上であると、用紙の搬送力を保持することができる。分離ロール14の弾性体層14の表面のJIS-A硬度が80度以下であると、分離ロール14により紙送りロール12の弾性体層12bの表面を摩耗することを抑制する。その結果、長期使用後であっても用紙の搬送性に優れ、紙詰まりを回避させることができる。好ましくは50~70度の範囲内、より好ましくは55~65度の範囲内である。
【0040】
分離ロール14の弾性層14bは、ポリウレタンを主成分として含む材料で構成されているとよい。主成分とは、分離ロール14の弾性体層14b中に占める重量割合が60重量%以上であることを意味する。
【0041】
ここで、前記ポリウレタンとは、ポリオール成分とイソシアネート成分の反応により、ポリウレタン結合を有する重合体である。付加反応を促進させるための触媒や反応促進剤等を用いてもよいし、必要に応じてその他の添加剤を用いてもよい。
【0042】
分離ロール14の弾性体層14b、表層14cは、必要に応じて、各種添加剤を適宜添加しても良い。添加剤としては、滑剤、加硫促進剤、老化防止剤、光安定剤、粘度調整剤、加工助剤、難燃剤、可塑剤、充填剤、分散剤、消泡剤、顔料、離型剤などを挙げることができる。
【0043】
分離ロール14の軸体14aの材料としては、ポリアセタール(POM)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、ポリカーボネート、ナイロン等の合成樹脂、または、鉄、ステンレス、アルミニウム等の金属材料を挙げることができる。軸体14aは、中空状に形成されていても良いし、中実体であっても良い。
【0044】
分離ロール14の弾性層14bは、軸体14aをロール成形金型の中央部に同軸的に配置し、未反応のポリウレタン組成物を注入して、加熱・硬化(架橋)させた後、脱型して軸体14aの外周に弾性体層14bを形成する。成形金型は、その内周面に凸部14cに対応する形状の凹部が形成されたものを用いることができる。弾性体層14bの凸部14cは、例えば、成形金型による型転写によって形成することができる。
【0045】
以上に示す給紙装置10では、紙送りロール12の弾性体層12bがエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)を含む第1相と、イソプレンゴム(IR)若しくは天然ゴム(NR)のいずれか1種以上を含む第2相とを含み、紙送りロール12の弾性体層12bの表面のJIS-A硬度が25~50°であり、分離ロール14の弾性体層14bが、ポリウレタンを主成分として含み、分離ロール14の弾性体層14bの表面は、高さ20~300μmの凸部を有し、分離ロール14の弾性体層14bの表面のJIS-A硬度が45~80°であることで、分離ロール14の弾性体層14bによる紙送りロールの弾性層12bの表面の摩耗発生を防ぐことができる。その結果、長期使用後であっても紙搬送性に優れ、紙詰まりが抑えられる。
【0046】
また、給紙装置10では、紙送りロール12の弾性体層12bのどの場所においても2.5μm×2.5μm角の範囲内において、前記イソプレンゴム(IR)若しくは天然ゴム(NR)のいずれか1種以上を有する相の面積割合が30~70%の範囲内であることにより、分離ロール14の弾性体層14bによる紙送りロール12の弾性層12bの表面の偏摩耗発生を更に防ぐことができる。その結果、長期使用後であっても用紙の搬送性に優れ、紙詰まりが抑えられる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【0048】
図4(a)の紙送りロール12は、表面凹凸について記載は無いが、任意の凹凸で構成することができる。前記表面凹凸は、複数の凸部によって形成されるものであってもよいし、複数の凹部によって形成されるものであってもよいし、シボ形状のような複数の凸部と複数の凹部によって形成されるものであってもよい。シボ形状とは、シワ模様をいう。シボ形状は、放電加工などで内面を加工された成形金型を用いて形成することができる。シボ形状としては、皮革(ウロコ)、梨地、木目、岩目、砂目、布目、絹目、筋目(ヘアライン)、幾何学模様などが挙げられる。
【0049】
図4(b)の分離ロール14は、複数の凸部14cにより弾性体層14bの外周表面に表面凹凸が設けられているが、上記表面凹凸は、任意の凹凸で構成することができる。上記表面凹凸は、複数の凸部によって形成されるものであってもよいし、複数の凹部によって形成されるものであってもよいし、シボ形状のような複数の凸部と複数の凹部によって形成されるものであってもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、分離ロール14の複数の凸部14cは半球状とされているが、複数の凸部14cの形状は、半球状の凸部に限定されず、種々の形状のものであってもよい。なお、球状とは、略球状であり、曲面を有する球状に近い形状のものであればよい。球状とは、真球状、楕円球状が含まれる。半球状とは、球の中心を通る面で切断された球の半分の形状のものや、球の中心を通らない面で切断された、球の半分よりも大きい形状のもの、球の半分よりも小さい形状のものも含まれる。凸部14cが半球状であると、用紙Pとの接触面が曲面なので、比較的紙粉の発生が抑えられ、また、紙送り性能にも優れる。
【0051】
凸部14cの形状としては、不定形、柱体、錐体、球台、楔形などが挙げられる。柱体としては、円柱体、楕円柱体、角柱体(四角柱体、五角柱体など)、扇形柱体、D形柱体、ギア形柱体などが挙げられる。また、柱体の頭部が斜面状、曲面状に切り取られたような形状の截頭柱体(截頭円柱体、截頭角柱体など)であってもよい。錐体としては、円錐体、楕円錐体、角錐体(四角錐体、五角錐体など)などが挙げられる。また、錐体の頭部が平面状(錐台)、斜面状、曲面状に切り取られたような形状の截頭錐体(截頭円錐体、截頭角錐体など)であってもよい。球台は、球体が二つの平行な平面で切り取られたような形状の立体である。球面が二つの平行な平面に交わるときに、これら二平面に挟まれた球面の部分が球帯であり、球帯とこれらの二平面で囲まれた立体が球台である。球台の二平面のうちの一方の平面は球の中心を通る面であってもよいし、球台の二平面の両方が球の中心を通らない面であってもよい。球台の二平面は、平面に近い面であればよく、例えば球帯よりも曲率半径の大きい曲面であってもよい。また、円柱体、楕円柱体、角柱体、扇形柱体、D形柱体、ギア形柱体、錐台、球台の各上底(上側平面)は、研磨面であってもよい。研磨面は、各上底を研磨することにより形成することができる。
【0052】
また、上記実施形態では、分離ロール14の複数の凸部14cは、弾性体層14bの周面に千鳥状に配置されているが、複数の凸部14cは、弾性体層14bの周面に、均一に分布・配置されていてもよいし、ランダムに配置されていてもよい。また、配列するように配置されていてもよい。凸部14cが弾性体層14bの周面に沿って配列していると、列と列の間に溝が形成され、発生した紙粉の逃げ道となって紙粉を排出しやすい。凸部14cは、弾性体層14bの周面に沿って周方向に配列していてもよいし、周方向とは異なる方向に配列していてもよい。周方向とは異なる方向とは、弾性体層12b、14bの周面に沿って周方向に対し所定の角度の方向に沿って配列している形態などをいう。また、凸部14cは、弾性体層14bの周面に沿ってらせん状に配列してもよい。
【実施例0053】
以下、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明する。
【0054】
(弾性体層の材料)
<材料1>
3官能ポリオール(旭硝子製「エクセノール5030」)100質量部に、2官能ポリオール(旭硝子製「エクセノール2020」6.7質量部と、触媒(東ソー製「TEDA-L33」)0.1質量部と、イソシアネート(東ソー「ミリオネートMT」)8.8質量部と、を混合することにより得た。
<材料2>
イソシアネート(東ソー「ミリオネートMT」)12.6質量部に変更した以外は、材料1と同様に調整した。
<材料3>
イソシアネート(東ソー「ミリオネートMT」)6.3質量部に変更した以外は、材料1と同様に調整した。
<材料4>
イソシアネート(東ソー「ミリオネートMT」)13.5質量部に変更した以外は、材料1と同様に調整した。
<材料5>
イソシアネート(東ソー「ミリオネートMT」)5.1質量部に変更した以外は、材料1と同様に調整した。
<材料6>
非油展EPDM(住友化学製「エスプレン512F」)50質量部に、ナフテンオイル(出光興産製「ダイアナプロセスNS-100」)30質量部と、IR(日本ゼオン製「IR2200」)50質量部と、酸化亜鉛(堺化学工業製「酸化亜鉛2種」)5質量部と、カーボンブラック(CABOT製「ショウブラックMAF-G」)0.25質量部と、シリカ(東ソー・シリカ製「二プシールVN3」と、過酸化物架橋剤(日油製「パークミルD」)3質量部と、を6インチロールで混練することにより得た。
<材料7>
ナフテンオイル(出光興産製「ダイアナプロセスNS-100」)25質量部に変更した以外は、材料4と同様に調整した。
<材料8>
ナフテンオイル(出光興産製「ダイアナプロセスNS-100」)35質量部に変更した以外は、材料4と同様に調整した。
<材料9>
分散剤(クラレ製「LIR-290」)3質量部を追加した以外は、材料4と同様に調整した。
<材料10>
非油展EPDM(住友化学製「エスプレン512F」)100質量部に、IR(日本ゼオン製「IR2200」)を使用しない以外は、材料4と同様に調整した。
<材料11>
ナフテンオイル(出光興産製「ダイアナプロセスNS-100」)20質量部に変更した以外は、材料4と同様に調整した。
<材料12>
ナフテンオイル(出光興産製「ダイアナプロセスNS-100」)40質量部に変更した以外は、材料4と同様に調整した。
【0055】
(分離ロール用の成形金型の調整)
内径20mmの円筒形の弾性体層用成型金型を準備した。準備した弾性体層用成形金型の内周面に対して、放電加工機(三菱電機社製「DIAX VX10」)による放電加工を行った。上記放電加工は、成形される弾性体層の表面に任意の高さの凸形状を付与するために行った。上記放電加工の条件により、弾性体層の高さを調整した。
【0056】
(紙送りロールの作製)
実施例1~11、比較例1~8では、内径12mmの円筒形の内層用成型金型に直径6mmの軸体を装着した。この金型内に、弾性体層用の組成物<材料4~8>を加圧注入した。その後、金型を150℃で加熱することにより、弾性体層用組成物を架橋させ、紙送りロールの弾性体層を形成した。加熱後、成形体を金型から取り出して、実施例1~11、比較例1~8の紙送りロールを作製した。
【0057】
(分離ロールの作製)
実施例1~11、比較例1~8では、内径12mmの円筒形の内層用成型金型に直径6mmの軸体を装着した。この金型内に、上記で調製した液状のポリウレタンゴム組成物<材料1~3>を流し込んだ。その後、金型を120℃で加熱することによりポリウレタンゴム組成物を硬化させ、ポリウレタンゴムからなる弾性層体を形成した。加熱後、軸体の外周に弾性体層が形成された円筒状の成形体を金型から取り出して、実施例1~11、比較例1~8の分離ロールの作製をした。
【0058】
実施例1~11、比較例1~8の分離ロールでは、成形される弾性体層の表面の凸部高さがそれぞれ、80μm(実施例1)、20μm(実施例2)、300μm(実施例3)、80μm(実施例4~9、比較例1~6)、60μm(実施例10)、100μm(実施例11)、350μm(比較例7)及び、10μm(比較例8)となるように、上記成形金型の放電加工の条件を調整した。
【0059】
(表面硬度の測定)
紙送りロールの表面硬度は、紙送りロールの弾性体層の表面のJIS-A硬度とした。同様に、分離ロールの表面硬度は、分離ロールの弾性体層の表面のJIS-A硬度とした。
【0060】
(表面高さの測定)
紙送りロールの弾性体層の表面高さは、弾性体層の弾性体層から、凸高さの最も高い場所の距離であり、断面写真を解析することにより求めた。
【0061】
(耐久性の評価)
紙送りロールおよび分離ロールを、FRR方式の給紙システムを持った市販の複写機に組み込み、紙送り性の評価を行った。用紙には市販のPPC用紙を用い、30万枚通紙を行い、紙詰まりの発生回数を測定した。紙詰まりの発生回数が1回以下のものを「A」、紙詰まりの発生回数が2回以上4回以下のものを「B」、紙詰まりの発生回数が5回以上6回以下のものを「C」、紙詰まりの発生回数が7回以上10回以下のものを「D」、紙詰まりの発生回数が11回以上のものを「E」とした。
【0062】
(面積割合)
走査型プローブ顕微鏡(島津製作所製「SPM-9700」)を用いて測定した。
図5に示すように、弾性体層の任意の表面を観察し、その表面における任意の20×20μmの範囲を64分割し、斜線が引いてある斜め方向に並ぶ16マスを選択し、各2.5μm×2.5μm角内における第1相と第2相の面積割合をそれぞれ計測し、16マスのうち14マス以上(8.5割以上)が該当する値とした。
・測定個所:弾性体層の左端部、中央部、右端部のそれぞれ周方向4か所(合計12か所)
・カンチレバー:SI-DF40
・走査範囲:5.0000μm
・走査速度:1.00Hz
【0063】
【0064】
【0065】
比較例1は、紙送りロールの弾性体層の材料がイソプレンゴム(IR)若しくは天然ゴム(NR)のいずれか1種以上を含んでいないため、30万枚通紙の耐久試験において、紙詰まりが多かった。比較例2は、分離ロールの弾性体層の材料がポリウレタンでは無いため、30万枚通紙の耐久試験において、紙詰まりが多かった。比較例3は、紙送りロールの弾性体層の硬度が50°より高いため、30万枚通紙の耐久試験において、紙詰まりが多かった。比較例4は、紙送りロールの弾性体層の硬度が25°より低いため、30万枚通紙の耐久試験において、紙詰まりが多かった。比較例5は、分離ロールの弾性体層の硬度が80°より高いため、30万枚通紙の耐久試験において、紙詰まりが多かった。比較例6は、分離ロールの弾性体層の硬度が45°より低いため、30万枚通紙の耐久試験において、紙詰まりが多かった。比較例7は、分離ロールの弾性体層の表面凸高さが300μmより高いため、30万枚通紙の耐久試験において、紙詰まりが多かった。比較例8は、分離ロールの弾性体層の表面凸高さが20μmより低いため、30万枚通紙の耐久試験において、紙詰まりが多かった。
【0066】
実施例および比較例によれば、紙送りロールはエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)を含む第1相と、イソプレンゴム(IR)若しくは天然ゴム(NR)のいずれか1種以上とを有する第2相、を有し、紙送りロールの弾性体層の表面のJIS-A硬度は25~50°で、分離ロールの弾性体はポリウレタンを有し、分離ロール弾性体の表面は、高さ20~300μmの凸部を有し、分離ロール14弾性層の表面のJIS-A硬度は45~80°であることから、紙送りロールと分離ロールの弾性体層の表面に紙粉が付着して紙粉が蓄積しても、用紙に対する接触面の摩擦係数が低下することを防ぎ、分離ロールにより紙送りロールの弾性体層の表面を摩耗することを抑制できる。その結果、長期使用後であっても紙搬送性に優れ、紙詰まりを回避させることができることがわかる。
【0067】
以上、本発明の実施形態・実施例について説明したが、本発明は上記実施形態・実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。