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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094907
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】ブドウ果汁含有飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/00 20060101AFI20230629BHJP
   A23L 2/02 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
A23L2/00 B
A23L2/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210502
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】阿部 彰宏
(72)【発明者】
【氏名】永山 唯
【テーマコード(参考)】
4B117
【Fターム(参考)】
4B117LC03
4B117LG01
4B117LK06
4B117LK08
(57)【要約】
【課題】味の濃さを向上させつつ、後切れの良さを維持又は向上させたブドウ果汁含有飲料を提供する。
【解決手段】酢酸ヘキシルの含有量が0.01~5ppmであり、酢酸の含有量が10~100ppmである、ブドウ果汁含有飲料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸ヘキシルの含有量が0.01~5ppmであり、
酢酸の含有量が10~100ppmである、
ブドウ果汁含有飲料。
【請求項2】
前記酢酸の含有量が40~100ppmである、
請求項1に記載のブドウ果汁含有飲料。
【請求項3】
ブドウ果汁含有飲料において、酢酸ヘキシルの含有量が0.01~5ppm、酢酸の含有量が10~100ppmとなるように、該酢酸ヘキシル及び該酢酸を添加することを含む、
ブドウ果汁含有飲料の製造方法。
【請求項4】
ブドウ果汁含有飲料の味の濃さを向上させつつ、後切れの良さを維持又は向上させる嗜好性向上方法であって、
ブドウ果汁含有飲料において、酢酸ヘキシルの含有量が0.01~5ppm、酢酸の含有量が10~100ppmとなるように、該酢酸ヘキシル及び該酢酸を添加することを含む、
ブドウ果汁含有飲料の嗜好性向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブドウ果汁含有飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
果汁含有飲料は、嗜好性の高い飲料のひとつとして、消費者に幅広く受け入れられている。果汁含有飲料では、飲用した際に感じられる味の濃さを向上させることで嗜好性を高める方法が求められている。そのような方法としては、例えば、ブドウ果汁含有飲料において、β-ダマセノンを含有させることで味の濃さを高める方法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-129727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記方法では十分ではなく、味の濃さをより向上させることが求められている。
【0005】
また、味の濃さを向上させるほど後切れの良さが低下するという問題があり、味の濃さを向上させつつ、後切れの良さを低下させないことが求められている。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、味の濃さを向上させつつ、後切れの良さを維持又は向上させたブドウ果汁含有飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ブドウ果汁含有飲料において、所定量の酢酸ヘキシル及び酢酸を含有させることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の(1)~(4)のように構成される。
(1)酢酸ヘキシルの含有量が0.01~5ppmであり、酢酸の含有量が10~100ppmである、ブドウ果汁含有飲料。
【0009】
(2)前記酢酸の含有量が40~100ppmである、(1)に記載のブドウ果汁含有飲料。
【0010】
(3)ブドウ果汁含有飲料において、酢酸ヘキシルの含有量が0.01~5ppm、酢酸の含有量が10~100ppmとなるように、該酢酸ヘキシル及び該酢酸を添加することを含む、ブドウ果汁含有飲料の製造方法。
【0011】
(4)ブドウ果汁含有飲料の味の濃さを向上させつつ、後切れの良さを維持又は向上させる嗜好性向上方法であって、ブドウ果汁含有飲料において、酢酸ヘキシルの含有量が0.01~5ppm、酢酸の含有量が10~100ppmとなるように、該酢酸ヘキシル及び該酢酸を添加することを含む、ブドウ果汁含有飲料の嗜好性向上方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、味の濃さを向上させつつ、後切れの良さを維持又は向上させたブドウ果汁含有飲料、及び該飲料の製造方法を提供することができる。また、ブドウ果汁含有飲料の味の濃さを向上させつつ、後切れの良さを維持又は向上させる嗜好性向上方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書において、「X~Y」(X、Yは任意の数値)との表記は、「X以上Y以下」を意味する。
【0014】
<1.ブドウ果汁含有飲料>
本実施の形態に係るブドウ果汁含有飲料は、酢酸ヘキシルの含有量が0.01~5ppmであり、酢酸の含有量が10~100ppmである。このようなブドウ果汁含有飲料によれば、味の濃さを向上させつつ、後切れの良さを維持又は向上させることができる。なお、本明細書において、「後切れの良さ」とは「飲料を飲用した後に感じられる呈味が速やかに消えていく感覚」を意味する。
【0015】
(1)ブドウ果汁
ブドウ果汁は、ブドウの果実からの搾汁を用いて得られる。例えば、搾汁(ストレート果汁)をそのままブドウ果汁として用いてもよく、搾汁を加工したものをブドウ果汁として用いてもよい。搾汁を加工したものとしては、搾汁液を濃縮した濃縮果汁、搾汁液の濃縮果汁を希釈した還元果汁等が挙げられる。搾汁を加工する方法としては、酵素処理法、精密濾過法、限外濾過法等が挙げられる。搾汁は清澄処理した透明果汁でもよく、混濁果汁でもよい。
【0016】
ブドウ果汁に使用されるブドウの品種は特に限定されないが、本発明の効果が良好に得らやすい傾向がある点から、白ブドウ(ホワイトグレープ)が好ましい。白ブドウであれば、例えば、マスカット(マスカット・オブ・アレキサンドリア)、ナイアガラ、ロザリオ・ビアンコ、ピッテロ・ビアンコ、シャルドネ、トムソン・シードレス等が挙げられる。赤ブドウであれば、例えば、コンコード、巨峰、紅マスカット、デラウェア、安芸クイーン、サニードルチェ、サニールージュ、ピオーネ、藤稔、ナガノパープル、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、ピノ・ノワール、シラーズ、キャンベル・アーリー、スチューベン等が挙げられる。このようなブドウは、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0017】
また、ブドウ果汁は、ブドウ以外の果実等から得られる果汁(例えば、オレンジ果汁、ミカン果汁、マンダリン果汁、グレープフルーツ果汁、レモン果汁、ライム果汁、リンゴ果汁、モモ果汁、イチゴ果汁、バナナ果汁、マンゴー果汁等)と併用してもよい。ブドウ果汁含有飲料において、このような果汁をブドウ果汁と併用する場合、その配合量は得ようとする風味等に応じて適宜調整できる。
【0018】
ブドウ果汁含有飲料における果汁率は、特に限定されないが、本発明の効果が発揮されやすい傾向がある点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。果汁率の上限は、特に限定されず、100質量%であってもよいが、低果汁率の方が果汁由来の味の濃さを付与しにくく、本発明の効果が発揮されやすい傾向がある点から、70質量%が好ましく、40質量%がより好ましい。
【0019】
なお、「果汁率」とは、果実を搾汁して得られるストレート果汁を100質量%としたときの相対濃度であり、JAS規格(果実飲料の日本農林規格)に示される糖用屈折計示度の基準(°Bx)に基づいて換算される。例えば、ブドウ果汁はJAS規格が11°Bxであるから、55°Bxの濃縮ブドウ果汁を飲料中10質量%配合した場合、果汁含有率は50質量%となる。ただし、果汁の果汁率をJAS規格の糖用屈折計示度に基づいて換算する際には、果汁に加えられた糖類、はちみつ等の糖用屈折計示度を除くものとする。また、通常果汁率は質量%(すなわち飲料100gあたりの果汁量(g)(w/w))で表される。
【0020】
(2)酢酸ヘキシル
酢酸ヘキシルとしては、特に限定されないが化合物の市販品を用いて配合したり、酢酸ヘキシルが含まれる天然物やその抽出液を配合したりすることができる。上述したブドウ果汁に由来するものであってもよい。
【0021】
ブドウ果汁含有飲料において、酢酸ヘキシルの含有量は0.01~5ppmである。酢酸ヘキシルの含有量の下限は、0.05ppmが好ましく、0.1ppmがより好ましい。また、酢酸ヘキシルの含有量の上限は、3ppmが好ましい。上記範囲内であると、味の濃さと後切れの良さをより向上させやすい傾向がある。
【0022】
本明細書において、酢酸ヘキシルの含有量は、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)を用いて測定できる。GC-MSの測定は例えば実施例に示す条件に基づいて行うことができる。
【0023】
(3)酢酸
酢酸としては、特に限定されないが化合物の市販品を用いて配合したり、酢酸が含まれる天然物やその抽出液を配合したりすることができる。上述したブドウ果汁に由来するものであってもよい。
【0024】
ブドウ果汁含有飲料において、酢酸の含有量は10~100ppmである。酢酸の含有量の下限は、40ppmが好ましい。また、酢酸の含有量の上限は、80ppmが好ましい。上記範囲内であると、味の濃さと後切れの良さをより向上させやすい傾向がある。
【0025】
本明細書において、酢酸の含有量は、高速液体クロマトグラフ(HPLC)を用いて測定できる。
【0026】
(4)その他
本実施の形態に係るブドウ果汁含有飲料においては、必要に応じて、一般的な飲料に通常用いられる原材料や添加剤を適宜配合することができる。例えば、糖類(砂糖、果糖、ぶどう糖、乳糖、麦芽糖等の単糖や二糖やオリゴ糖、エリスリトールやマルチトール等のような糖アルコール、果糖ぶどう糖液糖等の異性化糖)、甘味料、抗酸化剤、乳化剤、増粘安定剤、色素、香料、保存料、防腐剤、pH調整剤、防かび剤、ビタミン類やミネラル類、酸味料、食物繊維等が挙げられる。
【0027】
<2.ブドウ果汁含有飲料の製造方法>
本実施の形態に係るブドウ果汁含有飲料は、通常の飲料の製造方法に用いられる装置や条件によって製造することができる。
【0028】
具体的に、このブドウ果汁含有飲料の製造方法は、例えば、ブドウ果汁を含有する溶液に、酢酸ヘキシルの含有量が0.01~5ppm、酢酸の含有量が10~100ppmとなるように、酢酸ヘキシル及び酢酸を添加し、更に必要に応じてその他の成分を添加する工程を有する。なお、ブドウ果汁、酢酸ヘキシル、酢酸、及びその他の成分の配合の順序や配合方法等は特に限定されず、当業者が適宜設定することができる。
【0029】
このようにして調製した飲料を、容器に充填することによって、容器詰めブドウ果汁含有飲料を製造することができる。
【0030】
なお、製造されたブドウ果汁含有飲料においては、例えば容器に充填する前又は後に、適宜殺菌処理してもよい。殺菌処理の方法は特に限定されず、通常のプレート式殺菌、チューブラー式殺菌、レトルト殺菌、バッチ殺菌、オートクレーブ殺菌等が挙げられる。
【0031】
ブドウ果汁含有飲料を充填する容器の種類としては、特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(PETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、ガラス瓶等の密封容器等が挙げられる。
【0032】
<3.嗜好性向上方法>
上述したように、本実施の形態に係るブドウ果汁含有飲料は、酢酸ヘキシルの含有量が0.01~5ppmであり、酢酸の含有量が10~100ppmであることで、味の濃さを向上させつつ、後切れの良さを維持又は向上させるという効果を奏する。
【0033】
このことから、酢酸ヘキシルの含有量が0.01~5ppm、酢酸の含有量が10~100ppmとなるように、酢酸ヘキシル及び酢酸を添加する、というブドウ果汁含有飲料の味の濃さを向上させつつ、後切れの良さを維持又は向上させる嗜好性向上方法と定義することができる。
【0034】
このような方法に基づいて、味の濃さを向上させつつ、後切れの良さを維持又は向上させたブドウ果汁含有飲料を提供することができる。
【実施例0035】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0036】
[試験1:酢酸又は酢酸ヘキシルの添加による検証]
(試験サンプルの調製)
68°ホワイトグレープ透明濃縮果汁が35g/L(ストレート換算:216.4g/L)、果糖ぶどう糖液糖が94g/L、無水クエン酸が3.0g/L、クエン酸Naが0.6g/Lとなる割合で各成分と水を混合し、得られた飲料を95℃で瞬間殺菌して、果汁率20%の試験用飲料1(対照例1)を調製した。また、試験用飲料1に、表1に示す割合となるように80%酢酸又は酢酸ヘキシルを添加し、各試験用飲料(参考例)を調製した。
【0037】
各試験用飲料における酢酸ヘキシルの含有量は、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)を用いて下記の条件にて測定した。具体的には、ゲステル社製MPSを用いるMVM(Multi Volatile Method)法によりGC-MSに導入した。以降の試験でも、同様にして各試験用飲料における酢酸ヘキシルの含有量を測定した。
・機器 GC:Agilent Technologies社製 7890B
MS:Agilent Technologies社製 5977B MSD
HS:Gerstel社製MPS
TUBE:Tenax TA、CarbopackB/X
・カラム:DB-WAX UI 0.25mm×30m×0.25μm
・定量イオン:酢酸ヘキシルm/z=84
・温度条件:40℃(2分)~8℃/分→240℃(10分)
・キャリアガス流量:He 1mL/分
・注入法:スプリットレス
・イオン源温度:230℃
【0038】
(特性)
各試験用飲料の特性は、以下の方法で測定して、結果を表1に示した。以降の試験でも同様にして各試験用飲料の特性を測定し、結果を各表に示した。
【0039】
Brix:各試験用飲料の液温を20℃に調整してから、糖用屈折計(商品名「RX-5000α」、株式会社アタゴ製)を用いて、Brix値を測定した(単位:°Bx)。
【0040】
pH:各試験用飲料の液温を20℃に調整してから、pHメーター(商品名「HM-30R」、東亜ディーケーケー株式会社製)を用いて、pHを測定した。
【0041】
酸度:各試験用飲料の酸度を、日本農林規格(平成18年8月8日農水告第1127号)に定められた酸度の測定方法に基づき、以下の式で算出した(単位:無水クエン酸g/100ml)。
酸度(%)=A×f×100/V×0.0064
A:0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液による滴定量(mL)
f:0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液の力価
V:試料体積(mL)
0.0064:0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液1mLに相当する無水クエン酸の重量(g)
【0042】
(官能評価)
各試験用飲料について、専門パネリスト5名にて官能評価を行い、結果を表1に示した。官能評価は、具体的には、対照例1を基準として、「おいしさ」、「味の濃さ」、「後切れの良さ」、「ぶどうらしさ」について比較評価することで行った。各評価点数は、下記の評価基準に従って各パネリストがつけた評価点数の平均値として算出した。かかる評価においては、対照例1の点数を基準値(4点)として、下記評価基準に基づき7段階で評価した。
[評価基準]
7点:基準と比較して、非常に良く(強く)感じる
6点:基準と比較して、良く(強く)感じる
5点:基準と比較して、やや良く(強く)感じる
4点:基準と同等
3点:基準と比較して、やや悪く(弱く)感じる
2点:基準と比較して、悪く(弱く)感じる
1点:基準と比較して、非常に悪く(弱く)感じる
【0043】
【表1】
【0044】
表1に示される通り、酢酸の含有量が10~100ppmであるが、酢酸ヘキシルの含有量が0.01ppm未満である参考例1では、味の濃さが向上することが分かったが、より向上することが求められた。また、後切れの良さが低下することが分かった。
【0045】
また、酢酸ヘキシルの含有量が0.01~5ppmであるが、酢酸の含有量が10ppm未満である参考例2では、味の濃さが向上することが分かったが、より向上することが求められた。
【0046】
[試験2:酢酸の含有量の違いによる検証]
(試験サンプルの調製)
試験1で得られた試験用飲料1に、表2に示す割合となるように、酢酸ヘキシル、又は80%酢酸及び酢酸ヘキシルを添加し、各試験用飲料(対照例及び実施例)を調製した。なお、対照例2は試験1で得られた参考例2と同一である。
【0047】
(官能評価)
各試験用飲料について、試験1と同様にして官能評価を行い、結果を表2に示した。かかる評価においては、対照例2を基準とし、その点数を基準値(4点)とした。
【0048】
【表2】
【0049】
表2に示される通り、酢酸ヘキシルの含有量が1ppmである場合に、含有量が10~100ppmとなるように酢酸を添加すると、味の濃さが向上し、後切れの良さが向上することが分かった。特に、含有量が44~84ppmとなるように酢酸を添加すると、この効果がより良好に得られることが分かった。
【0050】
[試験3:酢酸ヘキシルの含有量の違いによる検証]
(試験サンプルの調製)
試験1で得られた試験用飲料1に、表3に示す割合となるように、酢酸ヘキシル、又は80%酢酸及び酢酸ヘキシルを添加し、各試験用飲料(対照例及び実施例)を調製した。
【0051】
(官能評価)
各試験用飲料について、試験1と同様にして官能評価を行い、結果を表3に示した。かかる評価においては、実施例6に対しては対照例3を、実施例7に対しては対照例4を基準とし、それらの点数を基準値(4点)とした。
【0052】
【表3】
【0053】
表3に示される通り、酢酸ヘキシルの含有量が0.01ppmである場合でも、味の濃さが向上し、後切れの良さが低下しないことが分かった。また、酢酸ヘキシルの含有量が5ppmである場合でも、味の濃さが向上し、後切れの良さが向上することが分かった。
【0054】
[試験4:酸味料(有機酸)の違いによる検証]
(試験サンプルの調製)
試験1で得られた試験用飲料1に、表4に示す割合となるように、酢酸ヘキシル、又は酸味料となる各有機酸及び酢酸ヘキシルを添加し、各試験用飲料(対照例、実施例及び比較例)を調製した。
【0055】
(官能評価)
各試験用飲料について、試験1と同様にして官能評価を行い、結果を表4に示した。かかる評価においては、対照例2を基準とし、その点数を基準値(4点)とした。
【0056】
【表4】
【0057】
表4に示される通り、同程度の酸度となるように各有機酸を添加した場合、クエン酸や酒石酸では、味の濃さの向上が十分ではないことが分かった。
【0058】
[試験5:ブドウ果汁率の違いによる検証]
(試験サンプルの調製)
ホワイトグレープ透明濃縮果汁が170g/L(ストレート換算:1050.9g/L)、無水クエン酸が2.6g/L、クエン酸Naが0.6g/Lとなる割合で各成分と水を混合して、果汁率100%の飲料を得た。得られた飲料を95℃で瞬間殺菌した後、表5に示す割合となるように、酢酸ヘキシル、又は80%酢酸及び酢酸ヘキシルを添加し、各試験用飲料(対照例及び実施例)を調製した。
【0059】
(官能評価)
各試験用飲料について、試験1と同様にして官能評価を行い、結果を表5に示した。かかる評価においては、対照例5を基準とし、その点数を基準値(4点)とした。
【0060】
【表5】
【0061】
表5に示される通り、ブドウ果汁率が20質量%である試験2と同様に、ブドウ果汁率が100質量%であっても、酢酸ヘキシルの含有量が1ppmである場合に、含有量が10~100ppmとなるように酢酸を添加すると、味の濃さが向上し、後切れの良さが向上することが分かった。
【0062】
[試験6:りんご果汁含有飲料における検証]
(試験サンプルの調製)
70°アップル透明濃縮果汁が30g/L(ストレート換算:210g/L)、無水クエン酸が3.0g/L、クエン酸Naが0.6g/Lとなる割合で各成分と水を混合して果汁率20%の飲料を得た。得られた飲料を95℃で瞬間殺菌した後、表6に示す割合となるように、酢酸ヘキシル、又は80%酢酸及び酢酸ヘキシルを添加し、各試験用飲料(対照例及び比較例)を調製した。
【0063】
(官能評価)
各試験用飲料について、試験1と同様にして官能評価を行い、結果を表6に示した。「りんごらしさ」の評価点数も、試験1と同様の評価基準に従って各パネリストがつけた評価点数の平均値として算出した。かかる評価においては、対照例6を基準とし、その点数を基準値(4点)とした。
【0064】
【表6】
【0065】
表6に示される通り、リンゴ果汁含有飲料では、酢酸ヘキシルの含有量が1ppmである場合に、含有量が10~100ppmとなるように酢酸を添加しても、味の濃さが向上するものの、後切れの良さが低下することが分かった。この結果から、酢酸ヘキシル及び酢酸の併用により後切れの良さを維持又は向上させる効果は、ブドウ果汁含有飲料に特有であることが分かった。