(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095064
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】らせん案内路付き縦管
(51)【国際特許分類】
E03F 5/02 20060101AFI20230629BHJP
F16L 9/18 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
E03F5/02
F16L9/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210721
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】南 吾郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅治
【テーマコード(参考)】
2D063
3H111
【Fターム(参考)】
2D063CA25
2D063DA07
3H111AA01
3H111CA13
3H111DA26
3H111DB05
(57)【要約】
【課題】案内路を必要十分に備え、内部の渦流が消えることなく、かつ費用を抑えたらせん案内路付き縦管を提供する。
【解決手段】縦管本体100と、縦管本体100の内部に複数配置された中心筒体110と、複数の中心筒体110のうちの最も上方に位置する中心筒体110と、前記中心筒体110の周りにらせん状に形成された上部らせん状案内路121と、を有する上部中心筒体と、複数の中心筒体110のうちの最も下方に位置する中心筒体110と、上部中心筒体の下側に配置された下部らせん状案内路125と、を有する下部中心筒体と、を有し、複数の中心筒体110として、上部中心筒体と、下部中心筒体と、の間に形成された中心筒案内路を有し、上部中心筒体と中心筒案内路との間と、中心筒案内路と下部中心筒体との間には梯子が設置されていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直管からなり上下方向に配置された縦管本体と、
前記縦管本体の内部に上下方向に複数配置された中心筒体と、
複数の前記中心筒体のうちの最も上方に位置する前記中心筒体と、前記中心筒体の周りにらせん状に形成された上部らせん状案内路と、を有する上部中心筒体と、
複数の前記中心筒体のうちの最も下方に位置する前記中心筒体と、前記上部中心筒体の下側に配置された下部らせん状案内路と、を有する下部中心筒体と、
を有し、
複数の前記中心筒体として、前記上部中心筒体と、前記下部中心筒体と、の間に形成された少なくとも一つの中心筒案内路を有し、
前記上部中心筒体と前記中心筒案内路との間と、前記中心筒案内路と前記下部中心筒体との間には梯子が設置されていることを特徴とする、
らせん案内路付き縦管。
【請求項2】
前記下部中心筒体の上部には、水流入防止屋根と、空気排出口と、が設けられていることを特徴とする、
請求項1に記載のらせん案内路付き縦管。
【請求項3】
前記下部中心筒体の下端部は、前記縦管本体の下部側面に配置された下流側水平管路よりも上の位置にあることを特徴とする、
請求項1又は2に記載のらせん案内路付き縦管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流入した液体が縦管本体内をらせん状に流下するらせん案内路付き縦管に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、下水道において流域下水道の幹線は、地中の比較的深い位置に計画され、関連公共下水道との接続点が高落差接合となり、マンホール内に設けられる縦管が長くなるので、縦管下端へ流下する下水の落下衝撃が大きく、底部を損傷するおそれがあった。
【0003】
そこで、上方に配置された上流側水平管路と下方に配置された下流側水平管路とを接続するための縦管として、らせん案内路付き縦管(中心筒昇降型ドロップシャフト)を配置する技術が普及しつつある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
らせん案内路付き縦管(中心筒昇降型ドロップシャフト)は、一般的には、縦管本体内に配置した中心筒体の周囲にらせん状案内路が形成され、らせん状案内路が最下部まで継続した構成とされている。
縦管本体内にらせん案内路付き縦管を設置する際には、らせん状案内部材をFRP積層によって縦管本体の内周面に固定する作業を縦管本体内の狭い空間で行うことから、技術的に非常に特殊かつ困難な作業が必要となる。
【0005】
また、らせん案内路付き縦管は、上流側水平管路と下流側水平管路が高落差になると中心筒体が長くなり、らせん状案内路を形成するらせんの周回数も多くなるので、経済的に不利になるケースがある。
【0006】
一方、中心筒昇降型ドロップシャフト(らせん案内路付き縦管)におけるらせん状案内路のらせん数を削減して経済的な不利を解消するために、上部らせんと下部らせんを分離して、その部分のらせん状案内路を省略する方式の中抜き式が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-179920号公報
【特許文献2】特開2011-089338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
日本下水道協会発刊の下水道設計指針では、「踊り場(中間スラブ、中心筒体)」の上下方向の間隔を5m以内とすることを求めている。このため、一般的に中心筒体の間隔は3~5mとなるように設計されている。
また、上述のらせん状案内路について、縦管の内部に発生させた渦流が消えないようにするためには、らせん状案内路の上下方向の間隔が縦管の呼び径の10倍(10D)以内であることが必要である。
【0009】
ここで、下水道に配置される縦管においては、前記10Dが5m以上となることがある。このため、らせん状案内路が設けられた中心筒体を、上述の設計指針に従って3~5m間隔で設置することは、縦管の内部の渦流を消えないようにする目的に対しては必要以上である。このため、建設費用の削減に課題があった。
【0010】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、案内路を必要十分に備え、内部の渦流が消えることなく、かつ費用を抑えたらせん案内路付き縦管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係るらせん案内路付き縦管は、直管からなり上下方向に配置された縦管本体と、前記縦管本体の内部に上下方向に複数配置された中心筒体と、複数の前記中心筒体のうちの最も上方に位置する前記中心筒体と、前記中心筒体の周りにらせん状に形成された上部らせん状案内路と、を有する上部中心筒体と、複数の前記中心筒体のうちの最も下方に位置する前記中心筒体と、前記上部中心筒体の下側に配置された下部らせん状案内路と、を有する下部中心筒体と、を有し、複数の前記中心筒体として、前記上部中心筒体と、前記下部中心筒体と、の間に形成された少なくとも一つの中心筒案内路を有し、前記上部中心筒体と前記中心筒案内路との間と、前記中心筒案内路と前記下部中心筒体との間には梯子が設置されていることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、複数の中心筒体として、上部中心筒体と、下部中心筒体と、の間に形成された少なくとも一つの中心筒案内路を有する。つまり、上部中心筒体と下部中心筒体との間に、らせん状案内路を有さない中心筒体を有する。これにより、上部中心筒体と下部中心筒体との間隔を10D以内の必要十分な距離にしつつ、中心筒体の間隔を3~5mの間隔に設定することが出来る。よって、らせん状案内路を必要十分に備え、また内部の渦流が消えることがないらせん案内路付き縦管とすることができる。さらに、らせん状案内路を有さないことで、製品を安価とすることができる。また、製品を軽量化することで、施工期間を短縮することができる。これらから、より費用を抑えたらせん案内路付き縦管とすることができる。
【0013】
また、上部中心筒体と中心筒案内路との間と、中心筒案内路と下部中心筒体との間には梯子が設置されている。これにより、上部中心筒体と中心筒案内路との間、及び、中心筒案内路と下部中心筒体との間を梯子によって移動することができる。よって、優れたメンテナンス性を確保することができる。
【0014】
また、前記下部中心筒体の上部には、水流入防止屋根と、空気排出口が設けられていることを特徴としてもよい。
【0015】
この発明によれば、下部中心筒体の上部には、水流入防止屋根と、空気排出口と、が設けられている。水流入防止屋根が設けられることで、下部中心筒体の内部に水が侵入することを防ぐことができる。ここで、下部らせん状案内路を流下した排水には、空気が含まれることがある。この空気が、らせん案内路付き縦管より下流側に流下すると、排水効率が低下する。下部中心筒体の上部に空気排出口が設けられることで、下部中心筒体を介して流下した排水に含まれる空気が、下部中心筒体を介して排水の内部から除かれる。よって、空気がらせん案内路付き縦管より下流側に流下することを防ぎ、排水効率を向上することができる。
【0016】
また、前記下部中心筒体の下端部は、前記縦管本体の下部側面に接続された下流側水平管路よりも上の位置にあることを特徴としてもよい。
【0017】
この発明によれば、下部中心筒体の下端部は、縦管本体の下部側面に配置された下流側水平管路よりも上の位置にある。これにより、下流側水平管路を介して下部中心筒体の下端部から水が侵入することを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、案内路を必要十分に備え、内部の渦流が消えることなく、かつ費用を抑えたらせん案内路付き縦管を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るらせん案内路付き縦管の概略構成を説明する
図4に矢視I-Iで示す側面から見た概略構成図である。
【
図2】第1実施形態に係るらせん案内路付き縦管の概略構成を説明する
図4に矢視II-IIで示す側面から見た概略構成図である。
【
図3】第1実施形態に係るらせん案内路付き縦管の要部を説明する
図4に矢視II-IIで示す側面から見た図である。
【
図4】第1実施形態に係るらせん案内路付き縦管の概略構成を説明する
図1に矢視IV-IVで示す平面視した概念図である。
【
図5】第1実施形態に係る下部上端スラブの拡大図である。
【
図7】らせん案内路付き縦管が中間中心筒体を有する変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、
図1~
図7を参照し、本発明の第1実施形態について説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係るらせん案内路付き縦管の概略構成を説明する
図4に矢視I-Iで示す側面から見た概略構成図であり、
図2は
図4に矢視II-IIで示す側面から見た概略構成図である。また、
図3はらせん案内路付き縦管の要部を説明する
図4に矢視II-IIで示す側面から見た図であり、
図4は
図1に矢視IV-IVで示す平面視した概念図である。
図5は、第1実施形態に係る下部上端スラブの拡大図である。
図6は、
図5に示す下部上端スラブの平面図である。
図7は、らせん案内路付き縦管が中間中心筒体を有する変形例である。なお、
図1~
図7において、必要な箇所だけ破線や断面を用いて図示する場合がある。
【0021】
図1~
図7において、符号10はらせん案内路付き縦管を、符号100は縦管本体を、符号110は中心筒体を、符号120はらせん状案内路を、符号121は上部らせん状案内路を、符号125は下部らせん状案内路を、符号130は中抜き空間を、符号140は平板状ガイド部材を、符号150は中心筒体固定支持部材を、符号160は中心筒案内路を、符号Oは縦管本体の管軸を、符号Pはピッチを示している。また、符号R1、R2は、上部らせん状案内路、下部らせん状案内路における下水(液体)等の移動方向を概念的に示している。また、寸法関係は強調した箇所があるものとする。
【0022】
らせん案内路付き縦管10は、
図1~
図4に示すように、例えば、縦管本体100と、中心筒体110と、らせん状案内路120と、中抜き空間130と、平板状ガイド部材140と、中心筒体固定支持部材150と、中心筒案内路160と、を備えている。
また、この実施形態では、縦管本体100と中心筒体110は、管軸Oが同軸とされている。
【0023】
そして、らせん案内路付き縦管10は、地盤Gに上下方向に形成されたコンクリート地下構造物(例えば、マンホール)11内に上下方向に配置され、マンホール11内において、上流側水平管路12と下流側水平管路13とを、上下方向に接続している。
また、この実施形態において、上流側水平管路12と下流側水平管路13とは、平面視したときに、互いに直交する方向に形成されている。
【0024】
マンホール11は、コンクリート等で形成されていて、軸線が上下方向に沿うように配置された円筒状壁部と、円筒状壁部の上側に形成された上部壁部(不図示)を備え、下面にはコンクリート底面が形成されている。
そして、上部壁部には開口部(不図示)が形成されて、地上に通じるマンホール出入口(不図示)が接続されている。
また、例えば、マンホール11は、内径が数m程度に形成されていて、複数の管体が積み上げられて形成される組立式であっても、現場打ちのコンクリートにより形成されていてもよい。
【0025】
縦管本体100は、
図1~
図4に示すように、内部に縦管空洞部101が形成された円筒形状の直管により形成され、マンホール11の内部に管軸Oに沿って上下方向に沿って配置されている。
縦管本体100を形成する材料は任意に設定することが可能であるが、この実施形態では、例えば、FRP(Fiber Reinforced Plastics)により形成されている。
【0026】
また、縦管本体100の上部側面には上部開口102が形成され、この上部開口102には上流側水平管路12が接続されている。
また、縦管本体100の下部側面には下部開口103が形成され、この下部開口103には下流側水平管路13が接続されている。つまり、下流側水平管路13は縦管本体100の下部側面に配置されている。
【0027】
中心筒体110は、縦管本体100の内部に上下方向に複数配置される。具体的には、中心筒体110は、
図1~
図4に示すように、内部に中心筒体空洞部111が形成された円筒形状の直管により形成され、マンホール11の内部に管軸Oに沿って上下方向に沿って配置されている。
本実施形態において、複数の中心筒体110のうち最も上方に位置するものを上側中心筒体110aと呼称する。また、複数の中心筒体110のうち最も下方に位置するものを下側中心筒体110bと呼称する。また、上側中心筒体110aと下側中心筒体110bとの間に位置するものを中間中心筒体110cと呼称する。以下、上側中心筒体110a、下側中心筒体110b及び中間中心筒体110cを区別しない場合に、中心筒体110と呼称する。
また、中心筒体110を形成する材料は任意に設定することが可能であるが、この実施形態では、例えば、FRP(Fiber Reinforced Plastics)により形成されている。
【0028】
また、中心筒体110の内部には、上下方向に沿って、複数の点検用はしご115が間隔をあけて配置されている。また、点検用はしご115の下方には、格納式の引掛はしご116が配置されている。
また、点検用はしご115と点検用はしご115の間及び格納式の引掛はしご116の上端部近傍には、ステップ114が形成されている。
【0029】
らせん状案内路120は、縦管本体100に流下した排水が流れる方向を誘導する。具体的には、排水が縦管本体100の内部をらせん状に流下するようにすることで、排水が渦を形成するようにする。これにより排水の効率を上げる役割を有する。排水が渦を形成するために、らせん状案内路120は、上端から下端までの間に少なくとも3周のらせんが形成されることが好ましい。
【0030】
らせん状案内路120は、
図1~
図4に示すように、中心筒体110の外周面110Aに接続され、管軸Oを中心として、平面視したときに反時計回りのらせん状に形成されている。
らせん状案内路120を形成する材料は任意に設定することが可能であるが、この実施形態では、例えば、FRP(Fiber Reinforced Plastics)により形成されている。
また、らせん状案内路120は、例えば、縦管本体100の内周面100BにFRP積層を施すことにより接続されている。
【0031】
また、らせん状案内路120は、
図1~
図4に示すように、上側中心筒体110aに配置された上部らせん状案内路121と、下側中心筒体110bに配置された下部らせん状案内路125と、を備えている。
上部らせん状案内路121は、上側中心筒体110aの周りにらせん状に形成される。本実施形態において、上部らせん状案内路121は、上端から下端までの間に少なくとも3周のらせんを有する。以下において、上側中心筒体110aと上部らせん状案内路121とを有する構成を、上部中心筒体121aと呼称する。
下部らせん状案内路125は、下側中心筒体110bの周りにらせん状に形成される。本実施形態において、下部らせん状案内路125は、上端から下端までの間に少なくとも3周以上のらせんを有する。以下において、下側中心筒体110bと下部らせん状案内路125とを有する構成を、下部中心筒体125aと呼称する。
【0032】
図3に示すように、上部中心筒体121aにおいて、上部らせん状案内路121の下端部と、上側中心筒体110aの下端部とは、管軸O方向において同じ位置に設けられる。あるいはこれに限らず、上側中心筒体110aの下端部は、上部らせん状案内路121の下端よりも下側に位置していてもよい。上側中心筒体110aの下端部付近の内部には、上部終端スラブ121Sが設置されている。上部終端スラブ121Sには、伸縮はしご117(梯子)が設置されている。伸縮はしご117は、3mから5mの範囲で伸縮する。伸縮はしご117が伸びた状態において、伸縮はしご117は、上部中心筒体121aと下部中心筒体125aとの間に位置する。つまり、伸縮はしご117は、上部終端スラブ121Sから下方に向けて延びる。
【0033】
下側中心筒体110bの上部には、下部上端スラブ125Sが設けられている。また、下部上端スラブ125Sの外周には、
図5に示すように転落防止の安全柵125fが設置されている。
図5に示すように、下部上端スラブ125Sには、水流入防止屋根125rと、空気排出口125dと、が設けられている。
【0034】
水流入防止屋根125rは、管軸O方向上方から下側中心筒体110bへの水の侵入を防止する。下側中心筒体110bと水流入防止屋根125rとは、梁Bにより接続される。具体的には、次のように接続される。まず、水流入防止屋根125rの下面と、
図5に示す第1フランジ枠F1とを溶接等により接続する。次に、第1フランジ枠F1と、下側中心筒体110bの上端部に設けられた第2フランジ枠F2とをフランジボルトFBによって接続する。第2フランジ枠F2は、施工前に予め下側中心筒体110bに設けられていることが好ましい。第2フランジ枠F2は、下側中心筒体110bに溶接により取り付けられてもよいし、下側中心筒体110bの製造時に一体に成形されてもよい。
【0035】
図5及び
図6に示すように、水流入防止屋根125rには、蓋125cが設けられる。蓋125cは、水流入防止屋根125rに対して固定ボルト125bにより固定される。蓋125cは、下部中心筒体125aの内部に作業者が進入する際に開口される。これにより、らせん案内路付き縦管10の使用中は下側中心筒体110bの上端部を閉塞した状態とし、点検時には開口して内部に侵入することができるようにする。蓋125cには、FRPが好適に用いられる。
【0036】
図5に示すように、空気排出口125dは、下側中心筒体110bと水流入防止屋根125rとの間に設けられる。空気排出口125dは、管軸O方向に直交する方向に開口する、下側中心筒体110bと水流入防止屋根125rとの間の隙間である。
らせん案内路付き縦管10の内部を排水が流下する時、排水に空気が含まれることがある(連行空気)。この連行空気が下流側水平管路13に流下すると、排水の効率が低下する原因となる。空気排出口125dは、排水に含まれる連行空気を、下側中心筒体110bを介して排出する役割を有する。
【0037】
ここで、
図3に示すように、らせん案内路付き縦管10は、排水の際に底部から水が跳ねることがある。これにより、下部中心筒体125aの内部に下方から排水が侵入することがある。これを防ぐために、下部中心筒体125aの下端部は、下流側水平管路13の上端部よりも上の位置に配置する。
下部中心筒体125aの下端部は、作業者がらせん案内路付き縦管10の底部において直立可能として維持管理が容易となる高さを確保することが好ましい。この観点より、下部中心筒体125aの下端部は、らせん案内路付き縦管10の底部から管軸O方向上方に2m程度の位置であることが好ましい。下部らせん状案内路125の下端部と、下側中心筒体110bの下端部とは、管軸O方向において同じ位置に設けられる。
下部らせん状案内路125の上端部と、下側中心筒体110bの上端部とは、管軸O方向において同じ位置に設けられる。あるいはこれに限らず、下側中心筒体110bの上端部は、下部らせん状案内路125の上端よりも上側に位置していてもよい。
【0038】
管軸O方向における上部中心筒体121aと下部中心筒体125aとの間には、らせん状案内路120及び中心筒体110が配置されておらず、下水等の液体が重力により自由落下することが可能な中抜き空間130が形成されている。本実施形態において、中抜き空間130は、少なくとも一つ形成されている。中抜き空間130を管軸O方向に移動する際、すなわち上側中心筒体110aと下側中心筒体110bとの間を移動する際は、伸縮はしご117を用いて移動する。このため、中抜き空間130の管軸O方向の寸法は、3mから5mであることが好ましい。
【0039】
図3に示すように、上部らせん状案内路121は、例えば、上端122が上流側水平管路12の底面よりも下方に配置されている。
そして、上部らせん状案内路121は、上流側水平管路12から縦管本体100に流入した下水等の液体を受け入れて、上部らせん状案内路121に沿って中心筒体110の周りにらせん状(矢印R1方向)に流下させて、下端123から中抜き空間130内に排出する。
【0040】
下部らせん状案内路125は、下端127が下流側水平管路13よりも上方に配置されている。
そして、下部らせん状案内路125は、中抜き空間130を流下してきた下水等の液体を受け止めて、下部らせん状案内路125に沿って中心筒体110の周りにらせん状に流下させて、下端127から排出するように構成されている。
【0041】
下水等の液体は、遠心力により縦管本体100の内周面100Bに沿う流れとなる。そして、空気は内周側(管軸O側)に集められ、縦管空洞部101を通って上方に向かって移動する。また、下水は、上部らせん状案内路121に沿ってらせん状(矢印R2方向)に流下しつつ流下エネルギーを減衰させて、縦管本体100の底面部100Cに強く衝突するのが抑制される。そして、底面部100Cまで流下した下水(液体)は、下流側水平管路13を通じて排出される。
【0042】
上述のように、らせん状案内路120は、流下した排水が渦を形成するようにして、排水の効率を上げる役割を有する。このとき、上部らせん状案内路121の下端と下部らせん状案内路125の上端との間が縦管本体100の内径Dの10倍(10D)以下である場合は、上部らせん状案内路121によって形成された渦が消失せずに下部らせん状案内路125まで移動する。このため、縦管本体100の管軸O方向において、らせん状案内路120を有さない領域は、10Dまで設けることができる。
【0043】
上述の10Dが5mを超える場合、つまり、上側中心筒体110aの下端から下側中心筒体110bの上端までの管軸O方向の寸法が5mを超える場合、
図7に示すように、上側中心筒体110aと下側中心筒体110bとの間に中間中心筒体110cが設けられる。このとき、上側中心筒体110aの下端と中間中心筒体110cの上端との間、及び中間中心筒体110cの下端と下側中心筒体110bの上端との間の管軸O方向の寸法は、3mから5mであることが好ましい。
【0044】
中間中心筒体110cの上端には、下側中心筒体110bと同様に下部上端スラブ125Sが設けられる。中間中心筒体110cの内部には、上側中心筒体110a及び下側中心筒体110bと同様に点検用はしご115及び格納式の引掛はしご116が配置される。また、中間中心筒体110cの下端には、上側中心筒体110aと同様に上部終端スラブ121Sが設置されている。上部終端スラブ121Sには、伸縮はしご117が設置されている。
【0045】
中間中心筒体110cは、管軸O方向において3mから5mの間隔をあけて複数設けられていてもよい。このとき、上部らせん状案内路121の下端から下部らせん状案内路125の上端までの管軸O方向の寸法が10Dを超える場合は、上部らせん状案内路121によって形成された渦が消失する。この場合、渦を消失させないために、上部らせん状案内路121と下部らせん状案内路125との間に、不図示の中部らせん状案内路が設けられる。
【0046】
中部らせん状案内路は、中間中心筒体110cの外周に設けられる。中部らせん状案内路は、上部らせん状案内路121及び下部らせん状案内路125と同様の構成である。本実施形態において、中部らせん状案内路は、上端から下端までの間に少なくとも3周のらせんを有する。以下において、中間中心筒体110cと中部らせん状案内路とを有する構成を、中部中心筒体と呼称する。また、中部らせん状案内路を有さない中間中心筒体110cを、中心筒案内路160と呼称する。
【0047】
中部中心筒体は、管軸O方向に1箇所設けられてもよいし、複数設けられてもよい。中部中心筒体を複数設ける場合は、中部中心筒体と中心筒案内路160とが交互に設けられることが好ましい。なお、上下方向における中部中心筒体と中部中心筒体との距離が10D以下である場合は、この限りでない。具体的には、中部中心筒体と中部中心筒体との間に、複数の中心筒案内路160が配置されてもよい。
中心筒案内路160は、複数の中心筒体110の1つとして、上部中心筒体121aと、下部中心筒体125aと、の間に少なくとも1つ形成される。中心筒案内路160は、管軸O方向に1箇所設けられてもよいし、複数設けられてもよい。
【0048】
平板状ガイド部材140は、例えば、矩形平板状の板部材である。平板状ガイド部材140は、管軸O方向に沿って配置されている。平板状ガイド部材140を形成する材料は任意に設定することが可能であるが、この実施形態では、例えば、ステンレス鋼により形成されている。平板状ガイド部材140は、中心筒体110の外周面において、らせん状案内路120が設けられていない部位に設けられる。具体的には、平板状ガイド部材140は、以下の態様で配置される。
【0049】
例えば、平板状ガイド部材140は、上側中心筒体110aの下端が上部らせん状案内路121の下端よりも下方に位置する場合に、上側中心筒体110aにおける上部らせん状案内路121が設けられていない部位に設けられる。
又は、平板状ガイド部材140は、下側中心筒体110bの上端が下部らせん状案内路125の上端よりも上方に位置する場合に、下側中心筒体110bにおける下部らせん状案内路125が設けられていない部位に設けられる。
あるいは、平板状ガイド部材140は、中心筒案内路160の外周面に設けられる。
本実施形態において、平板状ガイド部材140は、下側中心筒体110bにおける下部らせん状案内路125が設けられていない部位に設けられる。
【0050】
平板状ガイド部材140は、例えば、幅が縦管本体100と中心筒体110の半径方向の間隔(内径差の1/2)に対応して形成されている。
そして、平板状ガイド部材140は、平面視したときに、外周側縁部140Aが縦管本体100の内周面100Bと接続され、内周側縁部140Bが中心筒体110の外周面110Aと接続されている。
その結果、平板状ガイド部材140は、中心筒体110と縦管本体100を固定、支持する機能を有する。
【0051】
また、この実施形態においては、
図3に示すように、平板状ガイド部材140の上端部141から上部らせん状案内路121の下端までの間隔Lは、例えば、縦管本体100の内径をDとしたときに、間隔L=1.0Dに設定されている。
【0052】
なお、平板状ガイド部材140の上端部141の管軸O方向における位置は、間隔L
≧0.8D の範囲で任意に設定してもよい。
平板状ガイド部材140の上端部141の管軸O方向における上部らせん状案内路121の下端123からの間隔Lを、間隔L ≧0.8D の範囲で設定することは、間隔Lがらせん状案内路120の1周分よりも下方となり、流下する液体の周方向速度を充分に減速できる点で好適である。また、間隔L ≧0.8D は、上部らせん状案内路121における1P(ピッチ)以上、下方位置にあることを意味する。
かかる構成により、上部らせん状案内路121から流れ出た下水は、中心筒体110の周りを1周してから平板状ガイド部材140に衝突することになる。
【0053】
また、平板状ガイド部材140は、平面視したときに、上部らせん状案内路121の下端123に対して、周方向において同じ位置に配置されている。すなわち、平板状ガイド部材140は、上部らせん状案内路121の下端123の真下に配置されている。
【0054】
平板状ガイド部材140の下端部142は、管軸O方向における下部らせん状案内路125の上端126と対応させて配置されている。
【0055】
すなわち、平板状ガイド部材140は、管軸O方向において、上部らせん状案内路121の下端123に対して間隔Lをあけた位置から、下部らせん状案内路125の上端126までの範囲に形成されていることになる。
【0056】
具体的には、平板状ガイド部材140の下端部142は、下部らせん状案内路125の上端126に対して、下水(液体)が上流から下流に向かって流れる際の周回方向において、1/4回転ほど前方側(下流側)、言い換えると管軸O回りに90°ほど前方側に形成されている。
なお、平板状ガイド部材140の下端部142の周方向位置については、下部らせん状案内路125の上端126に対して1/4回転前方側に限定されることなく任意に設定してもよい。
【0057】
中心筒体固定支持部材150は、縦管本体100の内部において上部中心筒体121a、下部中心筒体125a及び中間中心筒体110cを支持する。
中心筒体固定支持部材150を形成する材料は任意に設定することが可能であるが、この実施形態において、中心筒体固定支持部材150は、例えば、ステンレス鋼により形成されている。ステンレス鋼により形成により形成することは、らせん案内路付き縦管10内において、下水等と接触した場合でも中心筒体固定支持部材150が腐食するのが抑制されるので好適である。
なお、中心筒体固定支持部材150を、ステンレス鋼以外の材料により形成してもよいし、複数の材料により形成してもよい。
【0058】
次に、らせん案内路付き縦管10の作用について説明する。
(1)まず、らせん案内路付き縦管10内に下水等の液体が流入する。具体的には、上流側水平管路12から、縦管本体100内に液体が流入する。
(2)縦管本体100に流入した液体は、縦管本体100内を落下して上部らせん状案内路121に流入する。
(3)上部らせん状案内路121に流入した液体は、上部らせん状案内路121に案内されて、中心筒体110の周囲を周回しながら、矢印R1方向にらせん状に流下する。
そして、液体は、上部らせん状案内路121内において周方向の流速が増加するとともに、遠心力が増加する。
このとき、液体は、遠心力により縦管本体100の内周面100Bに沿う流れとなる。
そして、空気は内周側(管軸O側)に集められ、縦管空洞部101を通って上方に向かって移動する。
【0059】
(4)その後、液体、上部らせん状案内路121の下端123から中抜き空間130に排出される。
上部らせん状案内路121から排出された液体は、中抜き空間130内において、重力により落下速度が加速されるとともに、上部らせん状案内路121による周方向の速度が減速され、ばらける。ばらけた液体は、中心筒体110の周囲を一回転周回した後に、平板状ガイド部材140に衝突する。よって、ばらけた液体が霧状や粒状になってしまうことを抑制できる。
らせん流は、上部らせん状案内路121の下端123から寸法L(1.0D)だけ下方に導かれるので、周方向の流速が充分に減速される。ここで、上部らせん状案内路121の上下方向の1P(ピッチ)は、概ね0.8Dである。
なお、ピッチとは、上部らせん状案内路121が上下方向に延在する仮想の円柱を周回するときの上下方向(高さ方向)の寸法のことであり、上部らせん状案内路121の1周分の高さが1P(ピッチ)である。
【0060】
(5)平板状ガイド部材140に衝突した液体は、平板状ガイド部材140に沿って下方(略鉛直方向、矢印V方向)に整流される。言い換えると、ばらけた液体が、平板状ガイド部材140でまとめられる。
そして、平板状ガイド部材140によって整流された液体は、平板状ガイド部材140の下端部142で、下部らせん状案内路125に流入する。
(6)下部らせん状案内路125に流入した液体、下部らせん状案内路125に沿って中心筒体110の周囲を周回しながららせん状に流下する。このときの液体の挙動は、上部らせん状案内路121の場合と同様である。
そして、下部らせん状案内路125に沿って矢印R2方向にらせん状に流下した液体は、鉛直方向の流速が小さいので、縦管本体100の底面部100Cに強く衝突するのが抑制される。また、液体が衝突することによって生じる騒音、振動、水しぶきは抑制される。
そして、底面部100Cまで流下した下水(液体)は、下流側水平管路13を通じて排出される。
【0061】
以上説明したように、本実施形態に係るらせん案内路付き縦管10によれば、複数の中心筒体110として、上部中心筒体121aと、下部中心筒体125aと、の間に形成された少なくとも一つの中心筒案内路160を有する。つまり、上部中心筒体121aと下部中心筒体125aとの間に、らせん状案内路120を有さない中心筒体110を有する。これにより、上部中心筒体121aと下部中心筒体125aとの間隔を10D以内の必要十分な距離にしつつ、中心筒体110の間隔を3~5mの間隔に設定することが出来る。よって、らせん状案内路120を必要十分に備え、また内部の渦流が消えることがないらせん案内路付き縦管10とすることができる。さらに、らせん状案内路120を有さないことで、製品を安価とすることができる。また、製品を軽量化することで、施工期間を短縮することができる。これらから、より費用を抑えたらせん案内路付き縦管10とすることができる。
【0062】
また、上部中心筒体121aと中心筒案内路160との間と、中心筒案内路160と下部中心筒体125aとの間には梯子が設置されている。これにより、上部中心筒体121aと中心筒案内路160との間、及び、中心筒案内路160と下部中心筒体125aとの間を梯子によって移動することができる。よって、優れたメンテナンス性を確保することができる。
【0063】
また、下部中心筒体125aの上部には、水流入防止屋根125rと、空気排出口125dと、が設けられている。水流入防止屋根125rが設けられることで、下部中心筒体125aの内部に水が侵入することを防ぐことができる。ここで、下部らせん状案内路125を流下した排水には、空気が含まれることがある。この空気が、らせん案内路付き縦管10より下流側に流下すると、排水効率が低下する。下部中心筒体125aの上部に空気排出口125dが設けられることで、下部中心筒体125aを介して流下した排水に含まれる空気が、下部中心筒体125aを介して排水の内部から除かれる。よって、空気がらせん案内路付き縦管10より下流側に流下することを防ぎ、排水効率を向上することができる。
【0064】
また、下部中心筒体125aの下端部は、縦管本体100の下部側面に配置された下流側水平管路13よりも上の位置にある。これにより、下流側水平管路13を介して下部中心筒体125aの下端部から水が侵入することを防ぐことができる。
【0065】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、中心筒体110は一対に配置されるとして説明したが、これに限らない。例えば、中心筒体110は3以上の複数設けられていてもよい。
【0066】
また、下部らせん状案内路の下端部142と、下側中心筒体110bの下端部142とは、管軸O方向において同じ位置に設けられなくてもよい。
また、上記実施形態においては、らせん案内路付き縦管10に流入する液体が下水等である場合について説明したが、らせん案内路付き縦管10に流入する液体は、下水に限定されることなく任意に設定することが可能である。
【0067】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0068】
10 縦管
13 下流側水平管路
100 縦管本体
110 中心筒体
121 上部らせん状案内路
121a 上部中心筒体
125 下部らせん状案内路
125a 下部中心筒体
125d 空気排出口
125r 水流入防止屋根