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特開2023-95297レンズアレイの製造方法、レンズアレイ、および固体撮像素子
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  • 特開-レンズアレイの製造方法、レンズアレイ、および固体撮像素子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095297
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】レンズアレイの製造方法、レンズアレイ、および固体撮像素子
(51)【国際特許分類】
   G02B 3/00 20060101AFI20230629BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
G02B3/00 A
H01L27/146 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211100
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】茂木 涼真
【テーマコード(参考)】
4M118
【Fターム(参考)】
4M118AB01
4M118BA14
4M118EA01
4M118EA14
4M118FA06
4M118GC08
4M118GD04
4M118GD07
(57)【要約】
【課題】エッチバックを用いつつ、表面凹凸が軽減されたマイクロレンズを形成できるレンズアレイの製造方法を提供する。
【解決手段】複数のマイクロレンズを有するレンズアレイの製造方法は、レンズアレイとなる母材層100を形成するステップAと、母材層上に、母材層よりも厚さが薄い表面改善層110を形成するステップBと、表面改善層上に、複数の転写レンズを有する転写アレイを形成するステップCと、エッチングにより転写アレイおよび表面改善層を消失させるとともに、転写レンズに対応する形状を母材層に転写するステップDとを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のマイクロレンズを有するレンズアレイの製造方法であって、
前記レンズアレイとなる母材層を形成するステップAと、
前記母材層上に、前記母材層よりも厚さが薄い表面改善層を形成するステップBと、
前記表面改善層上に、複数の転写レンズを有する転写アレイを形成するステップCと、
エッチングにより前記転写アレイおよび前記表面改善層を消失させるとともに、前記転写レンズに対応する形状を前記母材層に転写するステップDと、
を備える、
レンズアレイの製造方法。
【請求項2】
前記表面改善層の厚みが2μm以下である、
請求項1に記載のレンズアレイの製造方法。
【請求項3】
前記表面改善層の厚みが前記母材層の厚みの50%以下である、
請求項1または2に記載のレンズアレイの製造方法。
【請求項4】
複数のマイクロレンズを有するレンズアレイであって、
前記マイクロレンズの表面の表面粗さRaが110オングストローム以下である、
レンズアレイ。
【請求項5】
請求項4に記載のレンズアレイを備える、
固体撮像素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズアレイの製造方法およびレンズアレイに関する。このレンズアレイを用いた固体撮像素子についても言及する。
【背景技術】
【0002】
持ち運び可能で薄型の携帯電話にも組み込み可能な、固体撮像素子を用いた距離画像センサが知られている。
例えば、特許文献1には、複数の光電変換部と、光電変換部の上に設けられたマイクロレンズアレイを備えた光電変換基板が記載されている。マイクロレンズアレイは、入射した光を各光電変換部に集光する機能を有する。
【0003】
マイクロレンズを形成する方法の一つとしてエッチバック形成法が知られている(例えば、特許文献1参照)。エッチバック形成法は露光・現像や熱フロー等によって母材上に形成した一次レンズに対してフッ素系ガスなどを用いたドライエッチングを施し、母材に一次レンズの形状を転写することにより母材からなるマイクロレンズを形成する方法である。この方法は、ドライエッチングの時間を調節することにより、マイクロレンズ間のギャップを調節できるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-200279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エッチバック形成法により形成されたマイクロレンズは、その原理上、表面に一定の凹凸が生じることを避けられない。表面凹凸が過度となると、集光性等のレンズアレイの性能に影響を及ぼす可能性がある。
発明者は、これを軽減する方法について種々検討した結果、本発明を完成させた。
【0006】
本発明は、エッチバックを用いつつ、表面凹凸が軽減されたマイクロレンズを形成できるレンズアレイの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様は、複数のマイクロレンズを有するレンズアレイの製造方法である。
この製造方法は、レンズアレイとなる母材層を形成するステップAと、母材層上に、母材層よりも薄い表面改善層を形成するステップBと、表面改善層上に、複数の転写レンズを有する転写アレイを形成するステップCと、エッチングにより転写アレイおよび表面改善層を消失させるとともに、転写レンズに対応する形状を母材層に転写するステップDとを備える。
【0008】
本発明の第二の態様は、複数のマイクロレンズを有するレンズアレイであって、マイクロレンズの表面の表面粗さRaが100オングストローム以下であるレンズアレイである。
本発明の第三の態様は、第二の態様に係るレンズアレイを備えた固体撮像素子である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、エッチバックを用いつつ、表面凹凸が軽減されたマイクロレンズを形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るレンズアレイを備えた固体撮像素子の模式断面図である。
図2】同レンズアレイの製造時の一過程を示す図である。
図3】同レンズアレイの製造時の一過程を示す図である。
図4】同レンズアレイの製造時の一過程を示す図である。
図5】同レンズアレイの製造時の一過程を示す図である。
図6】従来のプロセスで形成したマイクロレンズの走査電子顕微鏡(SEM)像である。
図7】本発明の一実施形態に係るレンズアレイの製造方法で形成したマイクロレンズのSEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について、図1から図7を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る固体撮像素子の模式断面図である。固体撮像素子10は、基板20と、CMOSイメージセンサ24と、カラーフィルタ28と、レンズアレイ30とを備える。
レンズアレイ30は、本発明に係るレンズアレイである。
【0012】
基板20は、例えばシリコン(Si)基板である。基板20の材料は、例えばSiであるが、CMOSイメージセンサ24等の画素や受光素子を備えてこれらを電気的に機能させることが可能な材料であれば特に限定されない。
【0013】
基板20は、複数のCMOSイメージセンサ24を有する。複数のCMOSイメージセンサ24は、固体撮像素子10の平面視において、二次元マトリクス状に配列されている。
上述した基板20の構成やイメージセンサの種類、配列等は一例であり、固体撮像素子10の用途等に応じて適宜設定できる。
【0014】
カラーフィルタ28は、各々のCMOSイメージセンサ24の受光面25の上に設けられている。本実施形態においてカラーフィルタ28は光の3原色である赤(R)・緑(G)・青(B)の何れかの色の波長帯の光を透過させる機能を有する。カラーフィルタ28が透過する色は、複数のCMOSイメージセンサ24の配置等に応じて、複数のCMOSイメージセンサ24毎に適宜決められている。
固体撮像素子10の用途により、カラーフィルタの色の構成が変更されたり、カラーフィルタ自体が省略されたりしてもよい。
【0015】
レンズアレイ30は、カラーフィルタ28上に形成されており、カラーフィルタに対応して整列配置された複数のマイクロレンズ31を有する。
【0016】
マイクロレンズ31の表面の凹凸が強いと、入射光の屈折に乱れが生じ、結果として集光性が低下する可能性がある。
発明者は、エッチバックによりレンズアレイを形成しつつ表面の凹凸を低減することについて種々検討した結果、後述するようにエッチバックを行うプロセスに変更を加えることにより、表面の凹凸を低減できることを見出した。これにより、マイクロレンズの表面粗さをRaとして110オングストローム(Å)以下とすることに成功した。
【0017】
本実施形態に係るレンズアレイ30の製造方法について説明する。
まず、図2に示すように、母材層100を形成する(ステップA)。母材層100の厚さは、形成するマイクロレンズ31の高さ等を考慮して適宜設定する。母材層の材質は、レンズアレイ30に求められる透過率、耐光性、耐熱性等を考慮しつつ、公知の各種透明樹脂から選択できる。
レンズアレイ30を固体撮像素子10に直接設ける場合は、カラーフィルタ28上に直接母材層100を形成すればよい。レンズアレイ30を別の用途に用いる場合は、下地となる樹脂フィルム等の上に母材層100を形成してもよい。
【0018】
次に、図3に示すように、母材層100上に、母材層100よりも厚さが薄い表面改善層110を形成する(ステップB)。表面改善層110の材質は、エッチングが可能な樹脂であれば特に制限はなく、母材層と同一であってもよい。表面改善層を形成する場合は、母材層のベイクが終了し、完全に硬化してから表面改善層を形成することにより、母材層との間に確実に界面を生じさせるように留意する。母材層と同一の材料で表面改善層を形成する場合は、母材層と一体化しやすいため特に留意する。
【0019】
次に、図4に示すように、転写アレイ120を形成する(ステップC)。転写アレイ120は、二次元マトリクス状に配置された複数の転写レンズ121を有する。各転写レンズ121は、レンズアレイ30の各マイクロレンズ31を設ける位置に対して、概ね真上に配置される。
転写アレイ120は、光硬化性の樹脂を用いることにより簡便に形成できる。転写アレイは、グレースケールマスクを用いた露光および現像により形成されてもよいし、フォトリソグラフィによるパターニングと熱フローにより形成されてもよい。
【0020】
続いて、フッ素系ガス等を用いたドライエッチングを行う(ステップD)。ステップDにおいては、転写レンズ121のある部位ではまず転写レンズ121が削られ、転写レンズ121のない部位では表面改善層110が削られる。これにより、転写レンズ121の形状が徐々に転写アレイ120の下の層に転写されていく。
【0021】
ステップDが終了すると、転写アレイ120および表面改善層110がエッチングにより消失し、図5に示すように、母材層100の材料からなり、転写レンズに対応する形状が転写されてマイクロレンズ31が形成されたレンズアレイ30が完成する。
【0022】
ドライエッチングは、材料の表面に直接作用するため、原理上表面が荒れることが避けられない。発明者が、これを軽減するために種々検討をしたところ、レンズアレイとなる母材層の上に母材層よりも薄い表面改善層を設けると表面の荒れの程度が小さくなることを見出した。
表面改善層を設けることによる荒れ抑制のメカニズムについては十分明らかになってはいないが、表面改善層のエッチングにより生成される微細小片は、厚い母材層のエッチングにより生成される微細小片に比べて薄いため、これが、エッチングされた母材層の表面に落下して荒れた表面の一部を埋めることによると考えられる。
【0023】
発明者の検討では、プロピレングリコールモノメチルアセテートとアクリル系樹脂の混合物からなる厚さ4.5μmの母材層にドライエッチングを施して形成したマイクロレンズの表面粗さRaは323Åであった。これに対し、プロピレングリコールモノメチルアセテートとアクリル系樹脂の比率のみ変更した混合物からなる厚さ1.10μmの表面改善層を母材層上に設け、同一条件のドライエッチングによりにマイクロレンズを形成したところ、その表面粗さRaは52Åとなり、表面改善層がない場合に比して1/6以下に低減できた。図6に表面改善層を設けずに形成したマイクロレンズの走査電子顕微鏡(SEM)像を、図7に上記表面改善層を設けて形成したマイクロレンズのSEM像を、それぞれ示す。図6図7のSEM像は同一倍率であるが、図7のマイクロレンズの表面の方が滑らかであることがわかる。
さらに、母材層に用いた混合物で厚さ1.10μmの表面改善層を設けて2回製造したところ、マイクロレンズの表面粗さRaは98Åおよび105Åとなり、いずれについても表面粗さを改善できた。これにより、材質に関係なく、母材層よりも薄い表面改善層を設けることによりマイクロレンズの表面性状を改善できることが確認できた。
【0024】
上述した推定メカニズムや、上記検討結果を考慮すると、表面改善層の厚さは、母材層の50%以下が好ましく、母材層の25%以下がより好ましい。厚さの具体的数値としては、2μm以下が好ましく、1.5μm以下がより好ましい。
【0025】
以上説明したように、本実施形態に係るレンズアレイの製造方法によれば、表面改善層を設けるステップCを備えるため、母材層の材料として、透過率、耐光性、耐熱性等を考慮した最適なものを選択しつつ、従来のプロセスでは実現がかなり困難な表面性状のマイクロレンズを備えたレンズアレイを製造することも可能になり、より高性能な固体撮像素子等の実現に寄与できる。
【0026】
本実施形態において、ステップDは、少なくとも転写アレイおよび表面改善層が完全に消失するまで行われるが、完全に消失した後に一定時間継続されてもよい。これにより、レンズアレイにおけるマイクロレンズ間のギャップを調節することができ、ゼロギャップとすることも可能になる。
【0027】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明は特定の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせなども含まれる。以下にいくつか変更を例示するが、これらはすべてではなく、それ以外の変更も可能である。これらの変更が2以上適宜組み合わされてもよい。
【0028】
・ステップCにおいて、複数種類の表面改善層が設けられてもよい。
【0029】
・上述の実施形態では、本発明に係るレンズアレイの適用例として、基板上に直接カラーフィルタが形成されたオンチップタイプの固体撮像素子を示したが、本発明に係るレンズアレイの適用範囲はこれには限られず、例えば有機EL(OLED)上に配置されるレンズシート等にも広く適用できる。
【0030】
・本発明に係るレンズアレイは、マイクロレンズを覆う機能層を有してもよい。機能層としては、低屈折率層、防眩層、防汚層等を例示できる。
【符号の説明】
【0031】
10 固体撮像素子
30 レンズアレイ
31 マイクロレンズ
100 母材層
110 表面改善層
120 転写アレイ
121 転写レンズ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7