(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095943
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02K 33/18 20060101AFI20230629BHJP
G02B 26/10 20060101ALN20230629BHJP
G02B 26/08 20060101ALN20230629BHJP
【FI】
H02K33/18 C
H02K33/18 A
G02B26/10 104Z
G02B26/08 E
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075688
(22)【出願日】2023-05-01
(62)【分割の表示】P 2021194093の分割
【原出願日】2013-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【弁理士】
【氏名又は名称】江上 達夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】藤本 健二郎
(57)【要約】
【課題】容易な構成で適切な駆動力を実現する。
【解決手段】駆動装置(101)は、被駆動部と連結した第1ベース部(110)と、第1ベース部上に配置されたコイル(300)と、コイルの外周の一部を囲うように配置された第1磁石(710)と、コイルの外周の一部であって、第1磁石により囲われていない部分を囲うように配置された第2磁石(720)と、第1磁石上に設けられた第1ミドルヨーク(810)と、第2磁石上に設けられた第2ミドルヨーク(820)とを備え、第1磁石は、第2磁石よりも小さく、第1ミドルヨークは、コイルから被駆動部が配置された方向にある第2ミドルヨークまでの距離より、コイルから見て異なる方向にある第1ミドルヨークまでの距離が近くなるように配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被駆動部と連結した第1ベース部と、
前記第1ベース部上に配置されたコイルと、
前記コイルの外周の一部を囲うように配置された第1磁石と、
前記コイルの外周の一部であって、前記第1磁石により囲われていない部分を囲うように配置された第2磁石と、
前記第1磁石上に設けられた第1ミドルヨークと、
前記第2磁石上に設けられた第2ミドルヨークと
を備え、
前記第1磁石は、前記第2磁石よりも小さく、
前記第1ミドルヨークは、前記コイルから前記被駆動部が配置された方向にある前記第2ミドルヨークまでの距離より、前記コイルから前記方向とは異なる方向にある前記第1ミドルヨークまでの距離が近くなるように配置されている
ことを特徴とする駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばミラー等の被駆動物を駆動させるMEMSスキャナ等の駆動装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ディスプレイ、プリンティング装置、精密測定、精密加工、情報記録再生などの多様な技術分野において、半導体工程技術によって製造されるMEMS(Micro Electro Mechanical System)デバイスについての研究が活発に進められている。このようなMEMSデバイスとして、例えば、光源から入射された光を所定の画面領域に対して走査して画像を具現するディスプレイ分野、または所定の画面領域に対して光を走査して反射された光を受光して画像情報を読み込むスキャニング分野では、微小構造のミラー駆動装置(光スキャナないしはMEMSスキャナ)が注目されている。
【0003】
ミラー駆動装置では、コイルと磁石を用いてミラーを駆動する構成が一般的である。この場合、コイルに電流を流すことで生ずる磁界と磁石の磁界との間の相互作用によってミラーに対して回転方向の力が加えられ、その結果、ミラーが回転させられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1では、コイルの側方に2つの磁石を配置することで磁界を発生させている。しかしながら、例えばMEMSスキャナと磁石とを平面的に重なるように配置しようとする場合、MEMSスキャナの駆動領域確保のために、磁石の配置スペースが限定されてしまう。他方で、磁石にはMEMSスキャナに対してバランスのよい磁場を付与するものであることが望ましい。このため、磁石を適切にレイアウトすることは容易ではなく、結果として装置構成の複雑化や大型化を招くおそれもある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題には上記のようなものが一例として挙げられる。本発明は、容易な構成で適切な駆動力を実現可能な駆動装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、駆動装置は、被駆動部と連結した第1ベース部と、前記第1ベース部上に配置されたコイルと、前記コイルの外周の一部を囲うように配置された第1磁石と、前記コイルの外周の一部であって、前記第1磁石により囲われていない部分を囲うように配置された第2磁石と、前記第1磁石上に設けられた第1ミドルヨークと、前記第2磁石上に設けられた第2ミドルヨークとを備え、前記第1磁石は、前記第2磁石よりも小さく、前記第1ミドルヨークは、前記コイルから前記被駆動部が配置された方向にある前記第2ミドルヨークまでの距離より、前記コイルから前記方向とは異なる方向にある前記第1ミドルヨークまでの距離が近くなるように配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例に係るMEMSスキャナを表側から見た場合の構成を示す平面図である。
【
図2】実施例に係るMEMSスキャナを裏側から見た場合の構成を示す平面図である。
【
図3】実施例に係るMEMSスキャナの積層構造を示す断面図である。
【
図4】実施例に係るMEMSスキャナの動作の態様を概念的に示す側面図である。
【
図5】実施例に係るMEMSスキャナに対する磁石及びミドルヨークの配置を示す平面図である。
【
図6】実施例に係るMEMSスキャナに磁場を印加する部材の構成を示す断面図である。
【
図7】コイルに磁場を印加する部材の位置関係を示す概念図である。
【
図8】第1比較例に係るMEMSスキャナに対する磁石及びミドルヨークの配置を示す平面図である。
【
図9】第2比較例に係るMEMSスキャナに対する磁石及びミドルヨークの配置を示す平面図である。
【
図10】V軸駆動時におけるミドルヨークとの干渉の有無について説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、駆動装置の実施形態について順に説明する。
【0010】
<1>
本実施形態の駆動装置は、第1ベース部と、第2ベース部と、前記第1ベース部と前記第2ベース部とを連結する弾性部と、前記第1ベース部上に配置されたコイルと、前記コイルの一方側に配置された第1磁石と、前記コイルから見て前記第1磁石とは反対側に配置された第2磁石と、前記第1磁石の前記コイルと対向する面上に設けられた第1ミドルヨークと、前記第2磁石の前記コイルと対向する面上に設けられた第2ミドルヨークとを備え、前記第1磁石は、前記第2磁石よりも小さく、前記第1ミドルヨークは、前記第2ミドルヨークよりも前記コイルに近い位置に配置されている。
【0011】
本実施形態の駆動装置によれば、第1ベース部と第2ベース部とが、弾性を有する弾性部(例えば、後述するバネ部等)によって直接的に又は間接的に連結(言い換えれば、接続)されている。ここで、弾性部が弾性を有していることに起因して、弾性部の剛性は、第1ベース部及び第2ベース部の双方又は一方の剛性よりも低いことが好ましい。言い換えれば、弾性部は、第1ベース部及び第2ベース部の双方又は一方よりも相対的に変形しやすいことが好ましい。更に言い換えれば、弾性部が相対的に変形し易い一方で第1ベース部及び第2ベース部の双方又は一方は相対的に変形しにくいことが好ましい。
【0012】
第1ベース部上には、コイルが配置されている。例えば、第1ベース部は開孔部を有する枠状のフレームとして構成され、開孔部を周回するようにコイルが巻回される。また、コイルの一方側には第1磁石が配置されており、コイルから見て第1磁石とは反対側には第2磁石が配置されている。即ち、コイルを挟むようにして2つの磁石が配置されている。このため、コイル周辺には2つの磁石に起因する磁場が発生する。従って、コイルに所定の制御電流を流すことにより、コイルに対するローレンツ力を発生させることができる。
【0013】
第1磁石のコイルに対向する側の面と、第2磁石のコイルに対向する側の面とは、典型的には異なる極性とされる。具体的には、第1磁石のコイルに対向する側の面がN極である場合は、第2磁石のコイルに対向する側の面はS極とされる。或いは、第1磁石のコイルに対向する側の面がS極である場合は、第2磁石のコイルに対向する側の面はN極とされる。この場合に、コイルに制御電流を流すと、コイルの第1磁石側と、第2磁石側とには、それぞれ向きの異なるローレンツ力が発生する。このようなローレンツ力は、コイルが配置された第1ベース部を回転運動させるための駆動力として働く。尚、このような駆動力は、第1ベース部に連結された弾性部を介して、第2ベース部に伝達可能とされてもよい。
【0014】
第1磁石のコイルと対向する面上には、第1ミドルヨークが設けられている。また、第2磁石のコイルと対向する面上には、第2ミドルヨークが設けられている。第1ミドルヨーク及び第2ミドルヨークは、例えば純鉄、パーマロイ、ケイ素鉄、センダスト等の比透磁率が高い軟磁性材料を含んで構成されることが好ましい。このような第1ミドルヨーク及び第2ミドルヨークによれば、第1磁石及び第2磁石より発生する磁束を、コイルに対して好適に集束させることができる。従って、コイルに付与される駆動力を向上させることができる。
【0015】
ここで本実施形態では特に、第1磁石が、第2磁石よりも小さいものとして構成されている。より具体的には、例えば第1磁石のコイル側の表面積が、第2磁石のコイル側の表面積より狭くなるように構成されている。これに加えて、第1ミドルヨークは、第2ミドルヨークよりもコイルに近い位置に配置されている。即ち、小さい方の磁石に設けられたミドルヨークは、大きい方の磁石に設けられたミドルヨークよりも、コイルに近い位置に配置されている。
【0016】
上述した構成によれば、第1磁石が第2磁石よりも小さいことに起因して、第1磁石がコイルに与える磁場は、第2磁石がコイルに与える磁場よりも小さいものとなる。しかしながら、第1磁石に設けられた第1ミドルヨークが第2磁石に設けられた第2ミドルヨークよりもコイルに近接しているため、第1ミドルヨークは第2ミドルヨークよりもコイルに対する磁束集束効果が高い。よって、第1磁石と第2磁石の大きさに起因する磁場の大きさの違いが、第1ミドルヨーク及び第2ミドルヨークの距離の違いに起因する磁束集束効果の違いより相殺され、結果としてコイルに対してバランスのとれた磁場を与えることができる。これにより、コイルに発生するローレンツ力を偶力に近づけることができ、第1ベース部のより好適な駆動が実現できる。
【0017】
尚、バランスのとれた磁場は、第1磁石及び第2磁石の大きさを揃えても実現可能と考えられるが、磁石の配置可能スペース次第では、2つの磁石の大きさを揃えることが難しい場合もある。特に、本実施形態のように、コイルが設けられる第1ベース部に第2ベース部が接続される態様においては、各部材をコイルに対して非対称に配置することが要求される可能性が高い。
【0018】
しかるに本実施形態では、上述したように、第1磁石及び第2磁石に大きさの違いがある場合であっても、第1ミドルヨーク及び第2ミドルヨークとコイルとの距離を調整することで、適切な磁場をコイルに与えることができる。従って、コイルに対して適切な駆動力を付与し、好適な駆動を実現できる。
【0019】
<2>
本実施形態の駆動装置の他の態様では、前記第2磁石は、前記コイルから見て前記第2ベース部側に配置されている。
【0020】
この態様によれば、大きい方の磁石である第2磁石が、コイルから見て第2ベース部側に配置される。言い換えれば、小さい方の磁石は、コイルから見て第2ベース部とは反対側に配置されることになる。
【0021】
ここで、第2磁石が設けられる第2ベース部側には、必然的に第2ベース部を配置するためのスペースが生じる。よって、例えば第2ベース部と平面的に重なるスペースを利用すれば、比較的大きい第2磁石を配置することが容易である。
【0022】
他方で、第2ベース部も第1駆動部から伝達される駆動力で駆動することを考えれば、第2ベース部が駆動する領域を確保しておくことが求められる。しかしながら、ミドルヨークのようにコイルに近い位置(言い換えれば、第2ベース部にも近い位置)に配置されることが望まれる部材は、第2ベース部の駆動を妨げてしまうおそれがある。
【0023】
しかしながら、第2磁石に設けられる第2ミドルヨークは、第1ミドルヨークよりもコイルとの距離が大きくされるものである。従って、第2ミドルヨークは、例えば第2ベース部の駆動領域を妨げない程度に距離を置いて配置することが容易である。
【0024】
<3>
上述の如く第2磁石が第2ベース部側に配置される態様では、前記第1磁石は、前記第1ベース部の前記第2ベース部と対向しない側の第1の辺に沿って設けられた第1部分と、前記第1の辺と隣り合う第2の辺に沿って設けられた第2部分とを有しており、前記第2磁石は、前記第1ベース部の前記第2ベース部と対向する側の第3の辺に沿って設けられた第3部分と、前記第3の辺と隣り合う第4の辺に沿って設けられた第4部分とを有しており、前記第1部分は、前記第3部分よりも小さく、前記第1ミドルヨークのうち前記第1部分の面上に設けられた部分は、前記第2ミドルヨークのうち前記第3部分の面上に設けられた部分よりも前記コイルに近い位置に配置されてもよい。
【0025】
この場合、第1磁石の第1部分が、第2磁石の第3部分よりも小さく設けられる。具体的には、第1ベース部の第1の辺(即ち、第2ベース部と対向しない側の辺)に沿って設けられた第1部分が、第1ベース部の第3の辺(即ち、第2ベース部と対向する側の辺)に沿って設けられた第3部分よりも小さく設けられる。従って、第2ベース部側に配置される第2磁石の方が、第1磁石よりも大きいものとされる。尚、その他の第2部分及び第4部分の大きさについては、典型的には概ね同程度とされるが、特に限定されるものではない。
【0026】
他方で、第1ミドルヨークのうち第1部分の面上に設けられた部分は、第2ミドルヨークのうち第3部分の面上に設けられた部分よりも、コイルに近い位置に配置される。よって、第1部分と第3部分の大きさに起因する磁場の大きさの違いが、第1部分及び第3部分の各々に設けられたミドルヨークの距離の違いに起因する磁束集束効果の違いより相殺される。従って、コイルに対してバランスのとれた磁場を与えることができる。
【0027】
<4>
本実施形態の駆動装置の他の態様では、前記第1ミドルヨーク及び前記第2ミドルヨークは、前記第1ベース部及び前記第2ベース部と平面的に見て重ならないように配置されている。
【0028】
この態様によれば、第1ミドルヨーク及び第2ミドルヨークが、第1ベース部及び第2ベース部の駆動を妨げてしまうことを回避できる。言い換えれば、第1ミドルヨーク及び第2ミドルヨークは、平面的には第1ベース部及び第2ベース部とは重ならないように配置されるものの、高さ的にみれば第1ベース部及び第2ベース部に近接した状態で配置できる。従って、第1ミドルヨーク及び第2ミドルヨークによる磁束集束機能を効果的に発揮させることができる。
【0029】
<5>
本実施形態の駆動装置の他の態様では、前記第1ベース部の開孔部に挿通されたヨークを更に備える。
【0030】
この態様によれば、第1ベース部の開孔部に挿通されたヨークにより、コイルに対して磁束を集束させることができる。よってコイルに制御電流を流すことで発生するローレンツ力を高めることができる。即ち、コイルにより付与される駆動力を大きくすることができる。ヨークは、第1ミドルヨーク及び第2ミドルヨークと同様に、例えば純鉄、パーマロイ、ケイ素鉄、センダスト等の比透磁率が高い軟磁性材料を含んで構成されることが好ましい。
【0031】
尚、ヨークによる磁束の集束効果を高めるためには、ヨークとコイルとの距離は小さい方が好ましい。このためヨークは、コイルの配置された第1ベース部の駆動を妨げない範囲で大きくされることが好ましい。また、ヨークの断面は、第1ベース部の開孔部の形状に近い形状であることが好ましい。
【0032】
更に、ヨークは、例えば第1ベース部の下方側から上方側へ挿通されるが、ヨークによる磁束の集束効果を高めるためには、ヨークをある程度上方まで延びるように構成することが好ましい。このためヨークは、コイルの配置された第1ベース部の駆動を妨げない範囲で長く構成されることが好ましい。
【0033】
<6>
本実施形態の駆動装置の他の態様では、前記第2ベース部に支持された被駆動部を更に備える。
【0034】
この態様によれば、第2ベース部は、例えばミラー等として構成される被駆動部を支持している。このとき、第2ベース部は、被駆動部が駆動可能(例えば、回転可能又は移動可能)となるように被駆動部を支持している。より具体的には、例えば第2ベース部と被駆動部とが弾性を有する弾性部によって連結されることで、第2ベース部は、駆動可能な態様で第1被駆動部を支持していてもよい。
【0035】
このような構成を有する駆動装置によれば、被駆動部を好適に駆動させる(例えば、回転させる又は移動させる)ことができる。つまり、このような構成を有する駆動装置によれば、被駆動部は好適に駆動する(例えば、回転する又は移動する)ことができる。具体的には、例えば、第1ベース部が動くと、弾性部を介して第1ベース部に連結されている第2ベース部もまた、当該第1ベース部の動きに伴って動くことになる。第2ベース部が動くと、第2ベース部によって支持されている被駆動部もまた、当該第2ベース部の動きに伴って動くことになる。その結果、被駆動部は好適に駆動することができる。
【実施例0036】
以下、図面を参照しながら、本発明の駆動装置の実施例について説明する。尚、以下では、駆動装置をMEMSスキャナに適用した例について説明する。但し、本発明の駆動装置をMEMSスキャナ以外の任意の駆動装置に適用してもよいことは言うまでもない。
【0037】
(1)基本構成
初めに、
図1から
図3を参照して、本実施例に係るMEMSスキャナ101の構成について説明する。ここに、
図1は、実施例に係るMEMSスキャナ101を表側から見た場合の構成を示す平面図であり、
図2は、実施例に係るMEMSスキャナ101を裏側から見た場合の構成を示す平面図である。また
図3は、実施例に係るMEMSスキャナ101の積層構造を示す断面図である。
【0038】
図1及び
図2に示すように、本実施例に係るMEMSスキャナ101は、第1ベース110と、第2ベース120と、Vトーションバー150及び160と、バネ部210と、配線バネ部220と、コイル300と、ミラー400と、Hトーションバー450とを備えて構成されている。
【0039】
第1ベース110は、内部に空隙(開孔部)を備える枠形状を有している。つまり、第1ベース110は、図中のY軸方向に延伸する2つの辺と図中のX軸方向(つまり、Y軸方向に直交する方向)に延伸する2つの辺とを有すると共に、Y軸方向に延伸する2つの辺とX軸方向に延伸する2つの辺とによって取り囲まれた空隙を有する枠形状を有している。なお、
図1及び
図2に示す例では、第1ベース110は、正方形の形状を有しているが、これに限定されることはなく、例えばその他の形状(例えば、長方形等の矩形の形状や円形の形状等)を有していてもよい。また、第1ベースは、枠形状に限定されるものでものない。
【0040】
第1ベース上には、コイル300が配置されている。コイル300は、例えば相対的に導電率の高い材料(例えば、金や銅等)から構成される複数の巻き線である。本実施例では、コイル300は、第1ベース110に沿った正方形の形状を有している。但し、コイル300は、任意の形状(例えば、長方形やひし形や平行四辺形や円形や楕円形やその他の任意のループ形状)を有していてもよい。
【0041】
コイル300には、図示せぬ電源端子等を介して、電源から制御電流が供給される。尚、電源は、MEMSスキャナ101自身が備えている電源であってもよいし、MEMSスキャナ101の外部に用意される電源であってもよい。コイル300の周辺には、図示せぬ磁石が配置されており、コイル300に制御電流を流すことで生ずる磁界と磁石の磁界との間の相互作用によって回転方向の力が加えられ、その結果、コイル300が設けられている第1ベース110が、磁界と制御電流の方向に応じた方向に回転させられる。
【0042】
第2ベース部120は、第1ベース部110と同様に、内部に空隙を備える枠形状を有している。そして、第2ベース120の空隙内には、ミラー400が配置されている。ミラー400は、Hトーションバー450によって吊り下げられる又は支持されるように配置される。
【0043】
Hトーションバー450は、例えばシリコン、銅合金、鉄系合金、その他金属、樹脂等を材料とするバネ等のような弾性を有する部材である。Hトーションバー450は、
図1中Y軸方向に延伸するように配置される。言い換えれば、Hトーションバー450は、Y軸方向に延伸する長手を有すると共にX軸方向に延伸する短手を有する形状を有している。Hトーションバー450の一方の端部は、第2ベース110に接続される。また、Hトーションバー450の他方の端部は、ミラー400に接続される。このため、ミラー400は、Hトーションバー450の弾性によって、Y軸方向に沿った軸を回転軸として回転可能となる。ミラー400は、「被駆動部」の一具体例である。
【0044】
第1ベース110及び第2ベース120間は、バネ部210によって互いに連結されている。バネ部210は、「弾性部」の一具体例であり、第1ベース110においてコイル300から得られた駆動力を、第2ベース120に伝達する機能を有している。また、第1ベース110及び第2ベース120間には、配線バネ部220が設けられている。配線バネ部220は、第1ベース110及び第2ベース120の電気的接続を実現するために設けられている。具体的には、配線バネ部220には、第1ベース110のコイル300と、第2ベース120の配線500とを接続するための接続配線225が配置されている。
【0045】
第1ベース110及び第2ベース120は、Vトーションバー150及び160を介して、不図示の基板ないしは支持部材等に対して固定されている(言い換えれば、MEMSスキャナ101という系の内部においては固定されている)。或いは、第1ベース110は、不図示のサスペンション等によって吊り下げられていてもよい。
【0046】
図3に示すように、本実施例に係るMEMSスキャナ101は、支持層10、活性層20、BOX層30及び金属層40の積層構造によって構成されている。ただし、他の層を含む積層構造とされても構わない。
【0047】
支持層10及び活性層20の各々は、例えばシリコン等を含んで構成されている。BOX層30は、例えばSiO2等の酸化膜等によって構成されており、支持層10及び活性層20間に配置されている。BOX層30は、支持層10と活性層20とを絶縁している。金属層40は、例えば導電率の高い金属等を含んで構成されており、活性層20上に配置されている。金属層40は、第1ベース110におけるコイル300や、第2ベース120における配線500、配線バネ部220における接続配線225等を構成している。
【0048】
支持層10は、第1ベース110から、バネ部210及び第2ベース120に至るまで延在するように形成されている(具体的には、
図2を参照)。一方で、活性層20、BOX層30及び金属層40は、第1ベース110及び第2ベース120には夫々形成されているものの、バネ部210には形成されていない。言い換えれば、バネ部210は、支持層20のみによって構成されている。また、バネ部210は、第1ベース110の支持層10及び第2ベース120の支持層と一体的に構成されている。なお、バネ部210には活性層20が形成されていないが、配線バネ部220には活性層20が形成されている(
図1を参照)。このため、第1ベース110と第2ベース120の電気的接続を実現できる。
【0049】
(2)MEMSスキャナの動作
次に、
図4を参照して、本実施例に係るMEMSスキャナ101の動作について説明する。ここに
図4は、実施例に係るMEMSスキャナの動作の態様を概念的に示す側面図である。なお、
図4以降の図では、説明の便宜上、
図1から
図3等に記載したMEMSスキャナ101を構成する詳細な部材について、適宜省略して簡略的に図示している。
【0050】
図4(a)に示すように、本実施例に係るMEMSスキャナ101では、コイル300に対して、図中の右上方向から右下方向に向けて外部磁界が印加されている。外部磁界は、後述する磁石によって印加されている。ただし、ここでの磁界の向きは一例であり、磁界が他の方向に印加されてもよい。
【0051】
図4(a)及び(b)において、本実施例に係るMEMSスキャナ101の動作時には、コイル300に対して制御電流が供給される。すると、コイル300に制御電流が供給されることで生じる磁界と外部磁界との電磁相互作用に起因してローレンツ力が発生する。具体的には、コイル300の一端と他端とで逆向きのローレンツ力が発生する。
【0052】
ローレンツ力が発生すると、コイル300が設けられた第1ベースが駆動する。第1ベース110の駆動力は、バネ部210を介して第2ベース120に伝達される。よって、第1ベース110の駆動に連動して第2ベース120も駆動する。また第2ベースの駆動力は、Hトーションバーを介してミラー400にも伝達される。よって、第2ベース120の駆動に連動してミラー400も駆動する。このように、コイル300にローレンツ力が発生することで、第1ベース110、第2ベース120及びミラー400の各々が駆動されることになる。
【0053】
ここで、コイル300に供給される制御電流の周波数がDC~数100Hzの場合、MEMSスキャナ101は、X軸を中心として回転運動する。具体的には、MEMSスキャナ101は、Vトーションバー150及び160を回転軸として回転運動する。これによりミラー400もX軸を回転軸として回転運動し、いわゆる縦スキャンが実行される。
【0054】
図4(c)に示すように、コイル300に供給される制御電流が、固有共振モードに対応する周波数とされる場合、MEMSスキャナ101は、Y軸を中心として回転運動する。具体的には、MEMSスキャナ101の第1ベース110、第2ベース120の各々が、Y軸に沿った相異なる軸を回転軸として回転運動する。これによりミラー400もY軸を回転軸として回転運動し、いわゆる横スキャンが実行される。
【0055】
上述した駆動時において、コイル300に発生するローレンツ力は偶力であることが好ましい。特に、Y軸を回転軸とする駆動においては、コイル300の回転中心は、構造各部の寸法、硬さ、重さによって決まっているのみで、外力が加わった場合に影響を受けやすい。仮にコイル300に発生するローレンツ力が偶力からずれると、共振運動に対し他の運動(例えば、コイル300が並進する動き)が混ざり、スムースな共振運動の妨げとなる。
【0056】
コイル300に発生するローレンツ力を偶力に近づけるためには、コイル300に印加される磁界が水平であり、コイル300の左右(即ち、ローレンツ力が発生する2箇所の領域)における強度が同程度であることが好ましい。
【0057】
(3)磁石及びヨークの配置
次に、本実施例に係るMEMSスキャナ101に対する磁界を発生させる磁石及びヨークの構成について、
図5から
図7を参照して説明する。ここに
図5は、実施例に係るMEMSスキャナに対する磁石及びミドルヨークの配置を示す平面図である。また
図6は、実施例に係るMEMSスキャナに磁場を印加する部材の構成を示す断面図である。
図7は、コイルに磁場を印加する部材の位置関係を示す概念図である。
【0058】
図5において、本実施例に係るMEMSスキャナ101によれば、コイル300の一方側(図中の右上方)には、第1磁石710が配置されている。第1磁石710は、コイル300が設けられる第1ベース110の2辺に沿うように、くの字形状とされている。第1磁石710のコイル300に対向する側の面には、第1ミドルヨーク810が設けられている。
【0059】
また、コイル300の他方側(図中の左下方)には、第2磁石720が配置されている。第2磁石720は、コイル300が設けられる第1ベース110の2辺(具体的には、第1磁石710が沿う2辺とは異なる2辺)に沿うように、くの字形状とされている。第2磁石720のコイル300に対向する側の面には、第2ミドルヨーク820が設けられている。尚、第2磁石720は、第2ベース120の下方からVトーションバー160の下方に至るまで比較的広いスペースを利用して配置される。即ち、第2磁石720は、第1磁石710より大きい磁石として構成されている。更に、第2ミドルヨーク820は、第2磁石720の表面を全て覆うのではなく、第2ベースと平面的に重ならない位置に設けられている。
【0060】
図6において、コイル300には、下部ヨーク650から上方に向けて延びるヨーク600が挿通されている。また、MEMSスキャナ101の上方側には、第3磁石730及び第4磁石740が配置されている。第3磁石730のコイル300に対向する側の面には、第3ミドルヨーク830が設けられている。第4磁石740のコイル300に対向する側の面には、第4ミドルヨーク840が設けられている。
【0061】
ここで、上述したヨーク600、下部ヨーク650、第1ミドルヨーク810、第2ミドルヨーク820、第3ミドルヨーク830及び第4ミドルヨーク840の各ヨークは、例えば純鉄、パーマロイ、ケイ素鉄、センダスト等の比透磁率が高い軟磁性材料を含んで構成されている。これら各ヨークによれば、第1磁石710、第2磁石720、第3磁石730及び第4磁石740により発生する磁束を、コイル300に対して好適に集束させ、平行なものとすることができる。この結果、コイル300に付与される駆動力を向上させることができる。
【0062】
図7において、本実施例に係るMEMSスキャナ101では特に、第1ミドルヨーク810のうちコイル300の図中右側の辺に沿う部分と、ヨーク600との距離L1が、第2ミドルヨーク820のうちコイル300の図中左側の辺に沿う部分と、ヨーク600との距離L2よりも小さくなるように構成されている。このため、第1ミドルヨーク810のコイル300に対する磁束集束機能は、第2ミドルヨーク820と比べて高くなる。このため、第1磁石710及び第2磁石720の大きさの違いによる磁界の強さの違いが、第1ミドルヨーク810及び第2ミドルヨーク820の距離の違いによる磁束集束機能の違いにより相殺される。言い換えれば、第1ミドルヨーク810及び第2ミドルヨーク820とヨーク600との距離であるL1及びL2は、第1磁石710及び第2磁石720の磁界の強さの違いを相殺できるような値として調整されればよい。
【0063】
この結果、コイル300にはバランスのよい磁界が印加されることになる。従って、駆動時にコイル300に発生するローレンツ力を偶力に近づけることができ、より好適な駆動を実現できる。
【0064】
(4)比較例との比較
次に、
図8から
図10を参照して説明する第1比較例に係るMEMSスキャナ101b及び第2比較例に係るMEMSスキャナ101cとの比較により、本実施例に係るMEMSスキャナ101の有利な点について具体的に説明する。ここに
図8は、第1比較例に係るMEMSスキャナに対する磁石及びミドルヨークの配置を示す平面図である。また
図9は、第2比較例に係るMEMSスキャナに対する磁石及びミドルヨークの配置を示す平面図である。
図10は、V軸駆動時におけるミドルヨークとの干渉の有無について説明する概念図である。
【0065】
図8において、第1比較例に係る第1磁石710b及び第1ミドルヨーク810bは、本実施例に係るMEMSスキャナ101の第1磁石710及び第1ミドルヨーク810(
図5参照)と同様のものとして設けられている。一方で、第1比較例に係る第2磁石720b及び第2ミドルヨーク820bは、本実施例に係るMEMSスキャナ101の第2磁石720及び第2ミドルヨーク820(
図5参照)より小さいものとして設けられている。具体的には、第1比較例に係る第1磁石710b及び第2磁石720bは、互いに同程度の大きさであり、コイル300に対して同等の磁界を印加するものとして構成されている。
【0066】
しかしながら、第1比較例では、本実施例と比較して第2磁石720の大きさが小さいため、駆動効率が悪化してしまう。具体的には、第2ベース120の左側の空きスペースを有効活用できていないため、その分コイル300に印加される磁界が弱くなり、コイル300に発生するローレンツも小さくなってしまう。
【0067】
図9において、第2比較例に係る第1磁石710c及び第1ミドルヨーク810cは、本実施例に係るMEMSスキャナ101の第1磁石710及び第1ミドルヨーク810(
図5参照)と比べて大きいものとして設けられている。一方で、第1比較例に係る第2磁石720bは、本実施例に係るMEMSスキャナ101の第2磁石720と同様のものとして設けられている。但し、第2実施例にかかる第2ミドルヨーク820は、本実施例に係る第2ミドルヨーク820のように部分的に設けられるのではなく、第2磁石720のコイル300側の表面全体を覆うように設けられている。従って、第2比較例においても、上述した第1比較例と同様に、第1磁石710c及び第2磁石720cは互いに同程度の大きさであり、コイル300に対して同等の磁界を印加するものとして構成されている。
【0068】
しかしながら、第2比較例では、本実施例と比較して第1磁石710の大きさが大きいため、チップ外側に飛び出してしまっている。このため、磁気回路を含んだデバイス寸法が大きくなり装置の大型化を招いてしまう。
【0069】
図10(a)において、第1比較例及び第2比較例では更に、第2ミドルヨーク820が第2ベース120と平面的に重なる位置に配置されている。よって、例えばMEMSスキャナ101b又は101cがV軸(X軸)を回転軸とする駆動をする場合、第2ベース120と第2ミドルヨーク820とが干渉してしまう。このような干渉を回避する方法として、例えば第2ミドルヨーク820を第2ベース120から離れた位置に配置する方法も考えられるが、その分第2ミドルヨーク820による磁束集束機能が低下してしまう。
【0070】
他方、
図10(b)において、本実施例によれば、第2ミドルヨーク820が第2ベース120と平面的に重なる位置には配置されていない。よって、例えばMEMSスキャナ101がV軸(X軸)を回転軸とする駆動をする場合であっても、第2ベース120と第2ミドルヨーク820とが干渉してしまうことを回避できる。
【0071】
以上説明したように、本実施例に係るMEMSスキャナ101によれば、駆動時におけるMEMSスキャナ101との干渉を回避可能な態様で、複数の磁石及びヨークが配置されており、コイル300に対してバランスのよい磁界が印加される。従って、MEMSスキャナ101の好適な駆動が実現される。
【0072】
なお、上述した各実施例に係るMEMSスキャナ101は、例えば、ヘッドアップディスプレイや、ヘッドマウントディスプレイや、レーザスキャナや、レーザプリンタや、走査型駆動装置等の各種電子機器に対して適用することができる。従って、これらの電子機器もまた、本発明の範囲に含まれるものである。
【0073】
また、本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取るこのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う駆動装置もまた本発明の技術思想に含まれる。