(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096044
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】免疫調節融合タンパク質
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20230629BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20230629BHJP
C07K 14/52 20060101ALI20230629BHJP
C07K 14/715 20060101ALI20230629BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20230629BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20230629BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20230629BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230629BHJP
A61K 41/00 20200101ALI20230629BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230629BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230629BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20230629BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230629BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230629BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230629BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20230629BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20230629BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20230629BHJP
C12N 15/19 20060101ALN20230629BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C07K16/00
C07K14/52
C07K14/715
A61K35/17
A61K35/76
A61K38/02
A61K39/395 Y
A61K41/00
A61K45/00
A61K45/00 101
A61P29/00
A61P31/00
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 111
A61P43/00 121
C12N15/62 Z
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/19
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081001
(22)【出願日】2023-05-16
(62)【分割の表示】P 2020517588の分割
【原出願日】2018-09-27
(31)【優先権主張番号】62/564,145
(32)【優先日】2017-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518246958
【氏名又は名称】エピセントアールエックス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】ラーソン,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】リード,トニー,アール.
(72)【発明者】
【氏名】オロンスキー,ブライアン,ティー.
(57)【要約】
【課題】免疫調節融合タンパク質を提供すること。
【解決手段】(i)IL-10受容体の一部;および
(ii)アミノ酸リンカー;ならびに
(iii)サイトカイン、サイトカイン受容体または免疫調節タンパク質の細胞外ドメイン、膜貫通ドメインまたは細胞内ドメインの一部;
(iv)免疫グロブリン(Ig)ヒンジ領域;または
(v)免疫グロブリン(Ig)Fcドメイン
の少なくとも1つ
を含む、単離された融合タンパク質。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)IL-10受容体の一部;および
(ii)アミノ酸リンカー;ならびに
(iii)サイトカイン、サイトカイン受容体または免疫調節タンパク質の細胞外ドメイン、膜貫通ドメインまたは細胞内ドメインの一部;
(iv)免疫グロブリン(Ig)ヒンジ領域;または
(v)免疫グロブリン(Ig)Fcドメイン
の少なくとも1つ
を含む、単離された融合タンパク質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願についての相互参照
本願は、その全体において参照により本明細書に援用される2017年9月27日に出願された米国仮特許出願第62/564,145号の利益およびそれに対する優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明の分野は、分子生物学、具体的には免疫学および融合タンパク質、例えばサイトカイン受容体融合タンパク質である。
【背景技術】
【0003】
背景
サイトカインは、細胞の増殖および分化の制御ならびに免疫機能の調節を含む広範囲の活性を有する小さい、分泌される細胞シグナル伝達タンパク質である。サイトカイン、サイトカイン受容体および特定の他の免疫調節タンパク質は、種々の医学的状態を治療するための治療剤として使用されている。しかしながら、例えば皮下または血管の経路によるかかるタンパク質の投与は、不適切な細胞性および細胞外の局在を生じ得、それにより治療活性が制限されおよび/または毒性のリスクが増加する。
【0004】
IL-10は、活性化されたTh2細胞、B細胞、ケラチノサイト、単球およびマクロファージを含む細胞により産生される、免疫制御特性を有するホモ二量体サイトカインである(非特許文献1)。IL-10は、T細胞、単球およびマクロファージを含む種々の細胞の活性化およびエフェクター機能を阻害する。特に、IL-10は、Th1細胞、ナチュラルキラー細胞、単球およびマクロファージなどの細胞によるIL-1、IFN-γおよびTNFの合成を含む、サイトカイン合成を阻害する(非特許文献2; 非特許文献3; 非特許文献4; 非特許文献4; 非特許文献5; 非特許文献6; 非特許文献7)。細胞内病原体を含む複数の病原体は、免疫系による病原体の効果的な除去を遅らせるかまたは避ける(stall)ためにIL-10産生を誘発する(Moore et al. (1993)上述)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Moore et al. (1993) ANNU. REV. IMMUNOL. 11:165
【非特許文献2】Fiorentino et al. (1989) J. EXP. MED. 170:2081-2095
【非特許文献3】Fiorentino et al. (1991) J. IMMUNOL.146:3444
【非特許文献4】Hsu et al. (1992) INT. IMMUNOL. 4:563
【非特許文献5】D'Andrea et al. (1993) J. EXP. MED. 178:1041
【非特許文献6】de Waal Malefyt et al. (1991) J. EXP. MED. 174:915
【非特許文献7】Fiorentino et al. (1991) J. IMMUNOL.147:3815
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
IL-10媒介性障害の治療において今日までなされた進歩に関わらず、かかる障害を治療するための向上された治療の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
本発明は、部分的に、融合タンパク質、例えばサイトカイン受容体融合タンパク質、例えばIL-10受容体(IL-10R)融合タンパク質、例えばIL-10受容体サブユニットα(IL-10RA)融合タンパク質、例えばIL-10トラップの機能を向上するリンカー配列の発見に基づく。該リンカー配列は、融合タンパク質(例えばサイトカイン受容体)のリガンド結合部分をリガンド(例えばサイトカイン)に最適に結合させ得るか、融合タンパク質の2つ以上の構成要素(例えば二量体サイトカインの2つのサブユニット)の時間的および空間的な共局在を提供し得るか、発現ベクター(例えばウイルスベクター)からの発現を最適化し得るか、免疫原性を低減し得るか、または融合タンパク質の構成要素の放出を可能にする切断部位を提供し得る。例えば、リンカー配列は、サイトカイン受容体のリガンド結合ドメインが、融合タンパク質の状況において天然の立体配座を採用することを可能にするのに十分な柔軟性を提供し得、治療剤としての使用のために融合タンパク質のあり得る免疫原性を最小化し得る。
【0008】
一局面において、本発明は、例えばN末端~C末端の方向で:サイトカイン、サイトカイン受容体または免疫調節タンパク質の細胞外ドメイン、膜貫通ドメインまたは細胞内ドメインの第1の部分;アミノ酸リンカー;ならびにサイトカイン、サイトカイン受容体または免疫調節タンパク質の細胞外ドメイン、膜貫通ドメインまたは細胞内ドメインの第2の部分;免疫グロブリン(Ig)ヒンジ領域;および免疫グロブリン(Ig)Fcドメインの少なくとも1つを含む単離された融合タンパク質を提供する。ある態様において、リンカーは約5~約40アミノ酸残基を含む。ある態様において、融合タンパク質は、IL-10受容体、例えばヒトIL-10受容体、例えばIL-10RAの一部を含む。
【0009】
別の局面において、本発明は、N末端~C末端の方向で:サイトカイン受容体の細胞外ドメインの可溶性部分;アミノ酸リンカー;免疫グロブリン(Ig)ヒンジ領域;および免疫グロブリン(Ig)Fcドメインを含む単離された融合タンパク質を提供し、ここで該リンカーは約5~約40アミノ酸残基を含む。ある態様において、サイトカイン受容体は、IL-10受容体、例えばヒトIL-10受容体、例えばIL-10RAである。
【0010】
前述の融合タンパク質のいずれかのある態様において、アミノ酸リンカーは、例えば約5~約15、約5~約20、約5~約30、約10~約15、約10~約20、約10~約30、約10~約40、約15~約20、約15~約30または約15~約40アミノ酸残基を含み得る。
【0011】
前述の融合タンパク質のいずれかのある態様において、アミノ酸リンカー配列は、内因性のヒトタンパク質、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgE、IgM、アルブミンまたはカゼインに由来する。ある態様において、アミノ酸リンカーは、免疫グロブリン(Ig)CH1ドメイン、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgEまたはIgMのCH1ドメインのC末端部分を含む。ある態様において、アミノ酸リンカーは、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:53、配列番号:54および配列番号:57から選択されるアミノ酸配列を含む。ある態様において、アミノ酸リンカーは、IgG1 CH1ドメインのC末端部分を含み、例えばアミノ酸リンカーは、配列番号:1、配列番号:53、配列番号:54および配列番号:57から選択されるアミノ酸配列、例えば配列番号:57のアミノ酸配列を含む。
【0012】
前述の融合タンパク質のいずれかのある態様において、アミノ酸リンカーは、サイトカイン、シグナル伝達分子、免疫調節タンパク質もしくは免疫調節ペプチドまたは生物学的に活性なペプチド由来の配列を含む。
【0013】
前述の融合タンパク質のいずれかのある態様において、アミノ酸リンカーは、切断部位、例えばタンパク質分解性切断部位、例えば真核細胞の小胞体またはゴルジに存在するプロテアーゼにより切断されるタンパク質分解性切断部位を含む。ある態様において、タンパク質分解性切断部位は、フューリン切断部位、例えば配列RX1X2R (配列番号:50)(式中、X1は任意のアミノ酸であり、X2はLysまたはArgである)を含むフューリン切断部位、例えば配列RAKR (配列番号:51)を含むフューリン切断部位である。前述の融合タンパク質のいずれかのある態様において、アミノ酸リンカーは、哺乳動物または植物において、タンパク質分解的に安定である。
【0014】
前述の融合タンパク質のいずれかのある態様において、サイトカイン受容体の細胞外ドメインの可溶性部分は、ヒトIL-10R、例えばIL-10RAの細胞外ドメインの可溶性部分である。例えば、ある態様において、サイトカイン受容体の細胞外ドメインの可溶性部分は、配列番号:12のアミノ酸配列または配列番号:12のアミノ酸残基22~229を含む。
【0015】
前述の融合タンパク質のいずれかのある態様において、融合タンパク質は、IL-10、TGF-β、TGFβ受容体、例えばTGFβII型受容体(TβRII)、CD80、CD19、CD20、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-12B/p40、IL-23A/p19、IL27A/p28、IL-27B/EBI3、IL-15、CD154、CD70、TNF-α、CD86、CD137、CD137L、BORIS/CTCFL、FGF、ICAM、IL-24、GM-CSF、MAGE、NY-ESO-1、アンギオスタチン、エンドスタチン、アセチルコリン、インターフェロン-γ、DKK1/Wnt、p53、Ox40L、GM-CSF、IL-15受容体融合タンパク質、GITRL、CD40L、CD70、分泌フラジェリン、IL-12、チミジンキナーゼ、抗PD-1抗体重鎖もしくは軽鎖、抗PD-L1抗体重鎖もしくは軽鎖および抗CTLA-4抗体重鎖もしくは軽鎖またはそれらの機能性断片の1つ以上を含む。
【0016】
前述の融合タンパク質のいずれかのある態様において、Igヒンジ領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgEおよびIgMのヒンジ領域から選択され、Ig Fcドメインは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgEおよびIgMのFcドメインから選択される。ある態様において、Igヒンジ領域およびFcドメインは、一緒になって、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:19、配列番号:20および配列番号:21から選択されるアミノ酸配列を含む。ある態様において、Ig Fc、Igヒンジ領域およびIg CH1ドメインは単一の免疫グロブリンに由来する。
【0017】
前述の融合タンパク質のいずれかのある態様において、融合タンパク質は、配列番号:22、配列番号:23、配列番号:24、配列番号:25、配列番号:26、配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29、配列番号:30、配列番号:31、配列番号:32、配列番号:33、配列番号:55、配列番号:56および配列番号:58から選択されるアミノ酸配列を含む。ある態様において、融合タンパク質は、配列番号:22、配列番号:55、配列番号:56および配列番号:58から選択されるアミノ酸配列を含む。ある態様において、融合タンパク質は、配列番号:58のアミノ酸配列を含む。
【0018】
前述の融合タンパク質のいずれかのある態様において、融合タンパク質は、配列番号:22、配列番号:23、配列番号:24、配列番号:25、配列番号:26、配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29、配列番号:30、配列番号:31、配列番号:32、配列番号:33、配列番号:55、配列番号:56および配列番号:58から選択される配列に対して、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%より高い配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0019】
別の局面において、本発明は、一緒になって共有結合する前述の融合タンパク質のいずれかの2つを含む二量体サイトカイン結合タンパク質を提供し、ここでそれぞれの融合タンパク質は、サイトカイン受容体の細胞外ドメインを含み、2つの細胞外ドメインは一緒になって、サイトカインについての結合部位を画定する。
【0020】
別の局面において、本発明は、前述の融合タンパク質のいずれかをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。
【0021】
別の局面において、本発明は、前述の核酸のいずれかを含む発現ベクターを提供する。
【0022】
別の局面において、本発明は、前述の発現ベクターのいずれかを含む宿主細胞を提供する。別の局面において、本発明は、宿主細胞を、融合タンパク質を発現する条件下で増殖させる工程および融合タンパク質を精製する工程を含む、融合タンパク質を作製する方法を提供する。別の局面において、本発明は、標的細胞を、前述の発現ベクターのいずれかの有効量に暴露する工程を含む、標的細胞中で融合タンパク質を発現する方法を提供する。ある態様において、融合タンパク質は、翻訳後に、2つのポリペプチド鎖に切断される。
【0023】
別の局面において、前述の融合タンパク質または発現ベクターのいずれかは、例えば被験体においてサイトカイン活性を低減して、それによりサイトカイン、例えばIL-10により媒介される種々の医学的徴候を治療するために使用され得る。別の局面において、前述の融合タンパク質または発現ベクターのいずれかは、インビトロおよび/またはインビボで腫瘍細胞の増殖を阻害するため、腫瘍増殖の阻害の必要がある被験体において腫瘍増殖を阻害するため、または癌の治療の必要がある被験体において癌を治療するために使用され得る。被験体は、例えば動物、例えば哺乳動物、例えばヒト、例えば小児のヒトであり得る。例えば、癌を有するヒト被験体に投与される場合、融合タンパク質または発現ベクターは、該被験体において腫瘍増殖を阻害もしくは低減するかまたは腫瘍負荷を低減する。
【0024】
ある態様において、癌は、黒色腫、皮膚の扁平上皮癌、基底細胞癌、頭頸部癌、乳癌、肛門癌、子宮頸癌、非小細胞肺癌、中皮腫、小細胞肺癌、腎細胞癌、前立腺癌、胃食道癌、結腸直腸癌、精巣癌、膀胱癌、卵巣癌、肝臓癌、肝細胞癌、胆管癌、脳および中枢神経系の癌、甲状腺癌、副甲状腺癌(例えば副甲状腺癌腫)、子宮内膜癌、神経内分泌癌、リンパ腫(例えばホジキンおよび非ホジキン)、白血病、メルケル細胞癌、消化管間質腫瘍、多発性骨髄腫、子宮癌、肉腫、腎臓癌、眼の癌、膵臓癌ならびに生殖細胞癌(例えば卵巣生殖細胞癌)から選択され得る。ある態様において、癌は、白血病、乳癌、肺癌、膵臓癌、子宮内膜癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮頸癌、脳癌、皮膚癌、結腸直腸癌、胃癌、頭頸部癌および白血病から選択され得る。
【0025】
ある態様において、融合タンパク質または発現ベクターは、手術、放射線、化学療法、免疫療法、ホルモン療法およびウイルス療法から選択される1つ以上の治療と組み合わせて投与される。ある態様において、融合タンパク質または発現ベクターは、リンパ球、例えばT細胞、例えばCAR T細胞と組み合わせて投与される。
【0026】
前述の融合タンパク質または発現ベクターのいずれかはまた、炎症状態または感染の治療を必要とする被験体において、炎症状態または感染を治療するために使用され得る。
【0027】
本発明のこれらおよび他の局面および利点は、以下の図面、詳細な説明および特許請求の範囲により説明される。
【0028】
即ち、本発明の要旨は、以下のものに関する。
項1
(i)IL-10受容体の一部;および
(ii)アミノ酸リンカー;ならびに
(iii)サイトカイン、サイトカイン受容体または免疫調節タンパク質の細胞外ドメイン、膜貫通ドメインまたは細胞内ドメインの一部;
(iv)免疫グロブリン(Ig)ヒンジ領域;または
(v)免疫グロブリン(Ig)Fcドメイン
の少なくとも1つ
を含む、単離された融合タンパク質。
項2
リンカーが、約5~約40アミノ酸残基を含む、項1記載の単離された融合タンパク質。
項3
N末端~C末端の方向に、
(i)IL-10受容体の細胞外ドメインの可溶性部分;
(ii)アミノ酸リンカー;
(iii)免疫グロブリン(Ig)ヒンジ領域;および
(iv)免疫グロブリン(Ig)Fcドメイン
を含む、単離された融合タンパク質であって、リンカーが、約5~約40アミノ酸残基を含む、単離された融合タンパク質。
項4
リンカーが、約5~約30アミノ酸残基を含む、項1~3いずれか記載の単離された融合タンパク質。
項5
リンカーが、約5~約20アミノ酸残基を含む、項1~3いずれか記載の単離された融合タンパク質。
項6
リンカーが、約5~約15アミノ酸残基を含む、項1~3いずれか記載の単離された融合タンパク質。
項7
リンカーが、約10~約40アミノ酸残基を含む、項1~3いずれか記載の単離された融合タンパク質。
項8
リンカーが、約10~約30アミノ酸残基を含む、項1~3いずれか記載の単離された融合タンパク質。
項9
リンカーが、約10~約20アミノ酸残基を含む、項1~3いずれか記載の単離された融合タンパク質。
項10
リンカーが、約10~約15アミノ酸残基を含む、項1~3いずれか記載の単離された融合タンパク質。
項11
リンカーが、内因性のヒトタンパク質由来の配列を含む、項1~10いずれか記載の単離された融合タンパク質。
項12
リンカーが、免疫グロブリン(Ig)CH1ドメインのC末端部分を含む、項1~11いずれか記載の単離された融合タンパク質。
項13
Ig CH1ドメインが、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgEおよびIgMのCH1ドメインから選択される、項12記載の単離された融合タンパク質。
項14
リンカーが、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:53、配列番号:54および配列番号:57から選択されるアミノ酸配列を含む、項13記載の単離された融合タンパク質。
項15
Ig CH1ドメインがIgG1 CH1ドメインである、項14記載の単離された融合タンパク質。
項16
リンカーが、配列番号:1、配列番号:53、配列番号:54および配列番号:57から選択されるアミノ酸配列を含む、項15記載の単離された融合タンパク質。
項17
リンカーが、配列番号:57のアミノ酸配列を含む、項16記載の単離された融合タンパク質。
項18
リンカーが、アルブミンおよびカゼインから選択されるヒトタンパク質由来の配列を含む、項1~11いずれか記載の単離された融合タンパク質。
項19
リンカーが、配列番号:10および配列番号:11から選択されるアミノ酸配列を含む、項18記載の単離された融合タンパク質。
項20
リンカーが、サイトカイン、シグナル伝達分子、免疫調節タンパク質または免疫調節ペプチド由来の配列を含む、項1~11いずれか記載の単離された融合タンパク質。
項21
リンカーが、切断部位を含む、項1~20いずれか記載の単離された融合タンパク質。
項22
切断部位が、タンパク質分解性切断部位である、項21記載の単離された融合タンパク質。
項23
タンパク質分解性切断部位が、真核細胞の小胞体またはゴルジ体に存在するプロテアーゼにより切断される、項22記載の単離された融合タンパク質。
項24
タンパク質分解性切断部位が、フューリン切断部位である、項22または23記載の単離された融合タンパク質。
項25
フューリン切断部位が、RX1X2R (配列番号:50)(式中、X1は任意のアミノ酸であり、X2はLysまたはArgである)を含む、項24記載の単離された融合タンパク質。
項26
フューリン切断部位が、RAKR (配列番号:51)を含む、項22記載の単離された融合タンパク質。
項27
リンカーが、哺乳動物または植物においてタンパク質分解に安定であるアミノ酸配列を含む、項1~20いずれか記載の単離された融合タンパク質。
項28
IL-10受容体が、ヒトIL-10受容体である、項1~27いずれか記載の単離された融合タンパク質。
項29
IL-10受容体の細胞外ドメインの可溶性部分が、配列番号:12のアミノ酸配列を含む、項28記載の単離された融合タンパク質。
項30
IL-10受容体の細胞外ドメインの可溶性部分が、配列番号:12のアミノ酸残基22~229を含む、項28記載の単離された融合タンパク質。
項31
Ig FcドメインおよびIgヒンジ領域が、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgEおよびIgMのFcドメインおよびヒンジ領域から選択される、項1~30いずれか記載の単離された融合タンパク質。
項32
Ig FcドメインおよびIgヒンジ領域が、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:19、配列番号:20および配列番号:21から選択されるアミノ酸配列を含む、項31記載の単離された融合タンパク質。
項33
Ig FcドメインおよびIgヒンジ領域が、ヒトIgG1 FcドメインおよびヒトIgG1ヒンジ領域である、項32記載の単離された融合タンパク質。
項34
Ig FcドメインおよびIgヒンジ領域が、配列番号:13のアミノ酸配列を含む、項33記載の単離された融合タンパク質。
項35
Ig Fc、Igヒンジ領域およびIg CH1ドメインが、単一の免疫グロブリンに由来する、項1~34いずれか記載の単離された融合タンパク質。
項36
配列番号:22、配列番号:23、配列番号:24、配列番号:25、配列番号:26、配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29、配列番号:30、配列番号:31、配列番号:32、配列番号:33、配列番号:55、配列番号:56および配列番号:58から選択されるアミノ酸配列を含む、項1~35いずれか記載の単離された融合タンパク質。
項37
配列番号:22、配列番号:55、配列番号:56および配列番号:58から選択されるアミノ酸配列を含む、項36記載の単離された融合タンパク質。
項38
配列番号:58のアミノ酸配列を含む、項37記載の単離された融合タンパク質。
項39
項1~38いずれか記載の2つの融合タンパク質を含むサイトカイン結合タンパク質であって、それぞれの融合タンパク質がサイトカイン受容体の細胞外ドメインを含み、2つの融合タンパク質が共有結合されて一緒になり、2つの細胞外ドメインが一緒になってサイトカインに結合するための結合部位を画定する、サイトカイン結合タンパク質。
項40
項1~39いずれか記載の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸。
項41
項40記載の核酸を含む発現ベクター。
項42
項41記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
項43
(a)融合タンパク質を発現する条件下で項42記載の宿主細胞を増殖させる工程;および
(b)融合タンパク質を精製する工程
を含む、融合タンパク質を作製する方法。
項44
(i)項1~39いずれか記載の融合タンパク質または項41記載の発現ベクター;および(ii)少なくとも1つの薬学的に許容され得る担体または希釈剤を含む、医薬組成物。
項45
標的細胞を、項41記載の発現ベクターの有効量に暴露して、融合タンパク質を発現させる工程を含む、標的細胞において融合タンパク質を発現させる方法。
項46
融合タンパク質が、翻訳後に2つのポリペプチド鎖に切断される、項45記載の方法。
項47
腫瘍細胞を、項39記載の二量体融合タンパク質の有効量に暴露して、腫瘍細胞の増殖を阻害する工程を含む、腫瘍細胞の増殖を阻害する方法。
項48
腫瘍細胞を、項1~38いずれか記載の融合タンパク質の有効量に暴露して、腫瘍細胞の増殖を阻害する工程を含む、腫瘍細胞の増殖を阻害する方法。
項49
腫瘍増殖の阻害を必要とする被験体に、項39記載の二量体融合タンパク質の有効量を投与して、腫瘍の増殖を阻害する工程を含む、腫瘍増殖の阻害を必要とする被験体において腫瘍増殖を阻害する方法。
項50
腫瘍増殖の阻害を必要とする被験体に、項1~38いずれか記載の融合タンパク質の有効量を投与して、腫瘍の増殖を阻害する工程を含む、腫瘍増殖の阻害を必要とする被験体において腫瘍増殖を阻害する方法。
項51
癌の治療を必要とする被験体に、項39記載の二量体融合タンパク質の有効量を投与する工程を含む、癌の治療を必要とする被験体において癌を治療する方法。
項52
癌の治療を必要とする被験体に、項1~38いずれか記載の融合タンパク質の有効量を投与する工程を含む、癌の治療を必要とする被験体において癌を治療する方法。
項53
細胞を、項39記載の二量体融合タンパク質の有効量に暴露して、IL-10活性を低減する工程を含む、細胞においてIL-10活性を低減する方法。
項54
細胞を、項1~38いずれか記載の融合タンパク質の有効量に暴露して、IL-10活性を低減する工程を含む、細胞においてIL-10活性を低減する方法。
項55
炎症状態の治療を必要とする被験体に、項39記載の二量体融合タンパク質の有効量を投与する工程を含む、炎症状態の治療を必要とする被験体において炎症状態を治療する方法。
項56
炎症状態の治療を必要とする被験体に、項1~38いずれか記載の融合タンパク質の有効量を投与する工程を含む、炎症状態の治療を必要とする被験体において炎症状態を治療する方法。
項57
腫瘍細胞を、項41記載の発現ベクターの有効量に暴露して、腫瘍細胞の増殖を阻害する工程を含む、腫瘍細胞の増殖を阻害する方法。
項58
腫瘍増殖の阻害を必要とする被験体に、項41記載の発現ベクターの有効量を投与して、腫瘍の増殖を阻害する工程を含む、腫瘍増殖の阻害を必要とする被験体において腫瘍増殖を阻害する方法。
項59
癌の治療を必要とする被験体に、項41記載の発現ベクターの有効量を投与する工程を含む、癌の治療を必要とする被験体において癌を治療する方法。
項60
細胞を、項41記載の発現ベクターの有効量に暴露して、IL-10活性を低減する工程を含む、細胞においてIL-10活性を低減する方法。
項61
炎症状態の治療を必要とする被験体に、項41記載の発現ベクターの有効量を投与する工程を含む、炎症状態の治療を必要とする被験体において炎症状態を治療する方法。
項62
感染の治療を必要とする被験体に、項41記載の発現ベクターの有効量を投与する工程を含む、感染の治療を必要とする被験体において感染を治療する方法。
項63
癌が、黒色腫、皮膚の扁平上皮癌、基底細胞癌、頭頸部癌、乳癌、肛門癌、子宮頸癌、非小細胞肺癌、中皮腫、小細胞肺癌、腎細胞癌、前立腺癌、胃食道癌、結腸直腸癌、精巣癌、膀胱癌、卵巣癌、肝臓癌、肝細胞癌、胆管癌、脳および中枢神経系の癌、甲状腺癌、副甲状腺癌(例えば副甲状腺癌腫)、子宮内膜癌、神経内分泌癌、リンパ腫(例えばホジキンおよび非ホジキン)、白血病、メルケル細胞癌、消化管間質腫瘍、多発性骨髄腫、子宮癌、肉腫、腎臓癌、眼の癌、膵臓癌ならびに生殖細胞癌(例えば卵巣生殖細胞癌)から選択される、項51、52または59記載の方法。
項64
癌が、白血病、乳癌、肺癌、膵臓癌、子宮内膜癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮頸癌、脳癌、皮膚癌、結腸直腸癌、胃癌、頭頸部癌および白血病から選択される、項51、52または59記載の方法。
項65
癌が、皮膚癌、頭頸部癌および肺癌から選択される、項64記載の方法。
項66
融合タンパク質または発現ベクターが、手術、放射線、化学療法、免疫療法、ホルモン療法およびウイルス療法から選択される1つ以上の治療と組み合わせて被験体に投与される、項49~52、55、56、58、59または61~65いずれか一項記載の方法。
項67
融合タンパク質または発現ベクターが、リンパ球と組み合わせて被験体に投与される、項49~52、55、56、58、59または61~65いずれか一項記載の方法。
項68
リンパ球がT細胞である、項67記載の方法。
項69
T細胞がCAR T細胞である、項68記載の方法。
項70
被験体がヒトまたは動物である、項49~52、55、56、58、59または61~69いずれか一項記載の方法。
項71
被験体が小児のヒトである、項70記載の方法。
【発明の効果】
【0029】
本発明により、免疫調節融合タンパク質が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図面の説明
本発明は、以下の図面を参照してより完全に理解され得る。
【
図1】
図1Aは、細胞表面上の二量体サイトカイン受容体(左)、抗体(中央)および標的サイトカインに最適に結合する受容体-Fc融合体(右)の模式図を示す。
図1Bは、標的サイトカインへの最適な結合が立体的に妨げられた(左)または最適な結合立体配座を採用した(右)受容体-Fc融合体、例えばサイトカイントラップを示す。
【
図2】
図2は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgEおよびIgMのCH1ドメイン(上)ならびにCH2ドメイン(下)のアミノ酸配列の配列アラインメントを示す。
【
図3】
図3は、示されるような、IL-10および/またはIL-10RA融合タンパク質IL-10R-IgGおよびIL-10R-Fcを用いた受容体細胞の処理後のリン酸化Stat3についてのウエスタンブロットを示す。総Stat3は負荷対照として使用した。IL-10活性は、IL-10R-Fcと比較して、IL-10R-IgGにより顕著に低減された。
【発明を実施するための形態】
【0031】
詳細な説明
本発明は、被験体における種々の医学的状態の治療、例えば腫瘍細胞の増殖の阻害、腫瘍増殖の阻害、癌の治療、炎症状態の治療または感染の治療における使用のための組み換え融合タンパク質を提供する。例示的な融合タンパク質は:サイトカイン、サイトカイン受容体または免疫調節タンパク質の細胞外ドメイン、膜貫通ドメインまたは細胞内ドメインの第1の部分;アミノ酸リンカー;およびサイトカイン、サイトカイン受容体または免疫調節タンパク質の細胞外ドメイン、膜貫通ドメインまたは細胞内ドメインの第2の部分;免疫グロブリン(Ig)ヒンジ領域;または免疫グロブリン(Ig)Fcドメインの少なくとも1つを含む。第1および第2の部分は、同じタンパク質の部分または異なるタンパク質の部分であり得、同じタンパク質であったとしても、第1および第2の部分は、同じタンパク質の異なる部分であり得ることが企図される。ある態様において、リンカーは、約5~約40アミノ酸残基を含む。本発明の例示的な融合タンパク質としてはサイトカイントラップが挙げられる。
【0032】
サイトカイントラップ、例えばIL-10トラップは、標的サイトカインに結合するかまたはそうでなければ標的サイトカインを引き離す(sequester)ように設計されたサイトカイン受容体、例えばIL-10受容体(IL-10R)、例えばIL-10受容体αサブユニット(IL-10RA)の細胞外ドメインの可溶性部分を含む分子である。サイトカイントラップにおいて、サイトカイン受容体の細胞外ドメインは、免疫グロブリン(Ig)ヒンジ領域および免疫グロブリン(Ig)Fcドメインに融合され得、これらは例えば増加した安定性、Fcエフェクター機能および/または多量体化、例えば二量体化を可能にし得る。Igヒンジ領域およびIg Fcドメインへの融合によりもたらされる二量体化は、例えばTβRIIなどの、細胞表面上に二量体受容体複合体として存在するサイトカイン受容体に特に有利である。
【0033】
従来のサイトカイントラップ、例えばIL-10トラップは、2つのポリペプチド鎖を含み、それぞれのポリペプチド鎖は、Igヒンジ領域およびIg Fcドメインに融合されたサイトカイン受容体の細胞外ドメインの可溶性部分を含む。サイトカイン受容体の細胞外ドメインの可溶性部分は典型的に、介在配列なしでIgヒンジ領域に直接融合される。2つのポリペプチド鎖は、それぞれのIgヒンジ領域のシステイン残基の間のジスルフィド結合により共有結合される。それぞれのポリペプチド鎖は、サイトカイン受容体、例えばIL-10R、例えばIL-10RAの細胞外ドメインの可溶性部分を提供し、サイトカイン受容体の細胞外ドメインの2つの可溶性部分は、一緒になって、サイトカインについての結合部位を画定する。二量体サイトカイン受容体、免疫グロブリン(抗体)分子ならびにそれぞれがIgヒンジ領域およびIg Fcドメインに融合されたサイトカイン受容体の細胞外ドメインの可溶性部分を含む2つの共有結合した融合タンパク質を含む二量体タンパク質の模式的表示を
図1Aに示す。
【0034】
本発明は部分的に、サイトカイン受容体の細胞外ドメインの可溶性部分とIgヒンジ領域およびIg Fcドメインとの融合タンパク質を含む従来のサイトカイントラップ、例えばIL-10トラップは、それらの標的サイトカインに最適には結合しないという発見に基づく。例えば、従来のIL-10トラップは、2つのIL-10リガンド結合ドメインが一緒になって、IL-10結合部位を画定するための最適な立体配座になることを可能にするのに十分な柔軟性を、2つのIL-10リガンド結合ドメインの間に提供しない。
【0035】
したがって、一局面において、本発明は、N末端~C末端の方向で:サイトカイン受容体の細胞外ドメインの可溶性部分;アミノ酸リンカー;免疫グロブリン(Ig)ヒンジ領域;および免疫グロブリン(Ig)Fcドメインを含む単離された融合タンパク質を提供し、ここで該リンカーは約5~約40アミノ酸残基を含む。リンカー配列は、例えばサイトカイン受容体の細胞外ドメイン中の結合ドメインが、その標的サイトカインに最適に結合することを可能にする。サイトカイン結合タンパク質が標的サイトカインに結合するための結合部位を一緒になって画定する前述の融合タンパク質の2つを含む二量体である場合に、これは特に重要である。リンカーなしでは、2つの結合ドメインは、最適な結合部位を形成することを立体的に妨げられ得る(
図1B)。本発明の種々の特徴および局面を、以下により詳細に議論する。
【0036】
I. 融合タンパク質
例示的な融合タンパク質は:サイトカイン、サイトカイン受容体または免疫調節タンパク質の細胞外ドメイン、膜貫通ドメインまたは細胞内ドメインの第1の部分;アミノ酸リンカー;ならびにサイトカイン、サイトカイン受容体または免疫調節タンパク質の細胞外ドメイン、膜貫通ドメインまたは細胞内ドメインの第2の部分;免疫グロブリン(Ig)ヒンジ領域;および免疫グロブリン(Ig)Fcドメインの少なくとも1つを含み得る。例えば開示される融合タンパク質は、N末端~C末端の方向で:サイトカイン受容体の細胞外ドメインの可溶性部分;アミノ酸リンカー;免疫グロブリン(Ig)ヒンジ領域;および免疫グロブリン(Ig)Fcドメインを含み得、ここで該リンカーは、約5~約40アミノ酸残基を含む。
【0037】
例示的なサイトカインとしては、IL-1α、IL-1β、IL-18、IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-13、IL-15、IL-3、IL-5、GM-CSF、IL-6、IL-11、G-CSF、IL-12、LIF、OSM、IL-10、IL-20、IL-14、IL-16、IL-17、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、CD154、LT-β、TNF-α、TNF-β、4-1BBL APRIL、CD70、CD153、CD178、GITRL、LIGHT、OX40L、TALL-1、TRAIL、TWEAK、TRANCE、TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、Epo、Tpo、Flt-3L、SCF、M-CSFおよびMSPが挙げられる。
【0038】
本明細書で使用する場合、「免疫調節」タンパク質は、被験体の免疫系の機能を調節するタンパク質をいう。免疫調節タンパク質は、例えばB細胞、T細胞の機能および/または抗体の産生を、例えば調節し得る。例示的な免疫調節タンパク質としては、チェックポイント阻害剤が挙げられる。例示的な免疫調節タンパク質としては、例えばCTLA-4、CD70、IL-2、CD40L、OX40L、IL-12、IL-7、PD-1もしくはPD-L1、またはそれらの活性を調節する任意のタンパク質が挙げられ得る。さらなる例示的な免疫調節タンパク質としては、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体が挙げられ得る。
【0039】
本明細書で使用する場合、「サイトカイン受容体の細胞外ドメインの可溶性部分」は、標的サイトカインに結合し得るサイトカイン受容体の任意の細胞外ドメインまたはサイトカイン受容体の細胞外ドメインの断片をいう。サイトカイン受容体の細胞外ドメインの可溶性部分はまた、単独または第2の結合ドメインとの組み合わせ(例えば二量体融合タンパク質の場合)のいずれかで標的サイトカインに結合し得る結合ドメインを含む細胞外ドメインの部分を企図することが理解される。
【0040】
例示的なサイトカイン受容体としては、I型サイトカイン受容体(例えばGM-CSF受容体、G-CSF受容体、I型IL受容体、Epo受容体、LIF受容体、CNTF受容体またはTPO受容体)、II型サイトカイン受容体(例えばIL-10受容体、IFN-α受容体(例えばIFNAR1またはIFNAR2)、IFN-β受容体、IFN-γ受容体(例えばIFNGR1またはIFNGR2)、ケモカイン受容体(例えばCCケモカイン受容体、CXCケモカイン受容体、CX3Cケモカイン受容体またはXCケモカイン受容体)、腫瘍壊死因子スーパーファミリー受容体(TNFR;例えばTNFRSF5/CD40、TNFRSF8/CD30、TNFRSF7/CD27、TNFRSF1A/TNFR1/CD120aまたはTNFRSF1B/TNFR2/CD120b)、TGFβスーパーファミリー受容体(例えばTGFβI型受容体またはTGFβII型受容体)、または免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリー受容体(例えばインターロイキン-1受容体、CSF-1R、PDGFR(例えばPDGFRAまたはPDGFRB)またはSCFR)が挙げられる。好ましいサイトカイン受容体としては、二量体サイトカイン受容体、例えばTGFβスーパーファミリー受容体、例えばヒトTGFβII型受容体(TβRII)が挙げられる。ある態様において、サイトカイン受容体の細胞外ドメインの可溶性部分は、例えば配列番号:12のアミノ酸配列もしくは配列番号:12に対して85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%より高い配列同一性を有するアミノ酸配列、および/またはIL-10に結合する結合ドメインを含むそれらの断片を含むヒトIL-10R、例えばヒトIL-10RAの細胞外ドメインの可溶性部分である。
【0041】
サイトカイン受容体の細胞外ドメインの可溶性部分は、その天然のリガンドに結合する能力を保持する。ある態様において、細胞外ドメインの可溶性部分は、全長サイトカイン受容体と比較した場合にその天然のリガンドに対する結合活性の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%または95%を保持する。
【0042】
ある態様において、融合タンパク質は、例えばTβRII、TGF-β、CD80、CD19、CD20、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-12B/p40、IL-23A/p19、IL-27A/p28、IL-27B/EBI3、IL-15、CD154、CD70、TNF-α、CD86、CD137、CD137L、BORIS/CTCFL、FGF、ICAM、IL-24、GM-CSF、MAGE、NY-ESO-1、アンギオスタチン、エンドスタチン、アセチルコリン、インターフェロン-γ、DKK1/Wnt、p53、Ox40L、GM-CSF、IL-15受容体融合タンパク質、GITRL、CD40L、CD70、分泌フラジェリン、IL-12、チミジンキナーゼ、抗PD-1抗体重鎖もしくは軽鎖、抗PD-L1抗体重鎖もしくは軽鎖および抗CTLA-4抗体重鎖もしくは軽鎖、またはそれらの機能性断片の1つ以上を含み得る。
【0043】
本明細書で使用する場合、用語「免疫グロブリン(Ig)ヒンジ領域」は、典型的に免疫グロブリン重鎖定常領域のCH1ドメインとCH2ドメインを連結するアミノ酸配列をいう。Igヒンジ領域は、例えば別のタンパク質鎖中のシステイン残基とジスルフィド結合を形成し得る1つ以上のシステイン残基を含み得る。本明細書で使用する場合、用語「免疫グロブリン(Ig)Fcドメイン」は、Fc受容体に結合し得る免疫グロブリン重鎖定常領域の断片をいう。Ig Fcドメインは、例えば免疫グロブリン(Ig)CH2ドメインおよびCH3ドメインを含み得る。Ig CH1ドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインの間の境界は当該技術分野で周知であり、例えばPROSITEデータベース(prosite.expasy.orgのワールドワイドウェブ上で利用可能)において見られ得る。明確さのために、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgEおよびIgMのCH1ドメインおよびCH2ドメインのアミノ酸配列のアラインメントを
図2に示す。
【0044】
ある態様において、Igヒンジ領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgEおよびIgMのヒンジ領域から選択され、Ig Fcドメインは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgEおよびIgMのFcドメインから選択される。ある態様において、Igヒンジ領域およびFcドメインは一緒になって、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:19、配列番号:20および配列番号:21から選択されるアミノ酸配列を含む。ある態様において、Igヒンジ領域およびFcドメインは一緒になって、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:19、配列番号:20および配列番号:21から選択される配列と85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%より高い同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0045】
アミノ酸リンカーは、融合タンパク質(例えばサイトカイン受容体)のリガンド結合部分をリガンド(例えばサイトカイン)に最適に結合させ得るか、融合タンパク質の2つ以上の構成要素(例えば二量体サイトカインの2つのサブユニット)の時間的および空間的な共局在を提供し得るか、発現ベクター(例えばウイルスベクター)からの発現を最適化し得るか、免疫原性を低減し得るか、または融合タンパク質の構成要素の放出を可能にする切断部位を提供し得る。
【0046】
アミノ酸リンカーは、例えば約5~約15、約5~約20、約5~約25、約5~約30、約5~約35、約5~約40、約10~約15、約10~約20、約10~約25、約10~約30、約10~約35、約10~約40、約15~約20、約15~約25、約15~約30、約15~約35または約15~約40アミノ酸残基を含み得る。リンカー内のアミノ酸は、天然に存在するアミノ酸または修飾されたアミノ酸であり得る。
【0047】
ある態様において、アミノ酸リンカー配列は、内因性のヒトタンパク質、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgE、IgM、アルブミンまたはカゼインに由来する。ある態様において、アミノ酸リンカーは、免疫グロブリン(Ig)CH1ドメイン、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgEまたはIgMのCH1ドメインのC末端部分、例えば約5~約40アミノ酸を含む。ある態様において、アミノ酸リンカーは、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:53、配列番号:54、配列番号:57、配列番号:59、配列番号:60、配列番号:61、配列番号:62、配列番号:63および配列番号:64から選択されるアミノ酸配列を含む。ある態様において、アミノ酸リンカーは、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:53、配列番号:54、配列番号:57、配列番号:59、配列番号:60、配列番号:61、配列番号:62、配列番号:63および配列番号:64から選択されるアミノ酸配列に対して85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%より高い配列同一性を有する配列を含む。
【0048】
タンパク質またはポリペプチドが参照タンパク質またはポリペプチドの野生型アミノ酸配列の全部または対応する部分と実質的に同様のアミノ酸配列を含む場合、タンパク質またはポリペプチドは、参照タンパク質またはポリペプチドに「由来する」。ある態様において、野生型タンパク質またはポリペプチドに由来するタンパク質またはポリペプチドは、野生型タンパク質またはポリペプチドに対して1つ以上のアミノ酸置換を有し得る。例えば、野生型タンパク質またはポリペプチドに由来するタンパク質またはポリペプチドが、野生型タンパク質またはポリペプチドに対して70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%より高い配列同一性を有し得ることが企図される。さらに、野生型タンパク質またはポリペプチドに由来するタンパク質またはポリペプチドが、野生型タンパク質またはポリペプチドに対してより保存的な置換を含み得ることが企図される。本明細書で使用する場合、用語「保存的な置換」は、構造的に類似のアミノ酸による置換をいう。例えば、保存的な置換としては、以下の群:SerおよびCys;Leu、IleおよびVal;GluおよびAsp;LysおよびArg;Phe、TyrおよびTrp;ならびにGln、Asn、Glu、AspおよびHis内のものが挙げられ得る。保存的な置換はまた、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)アルゴリズム、BLOSUM置換マトリックス(例えばBLOSUM 62マトリックス)またはPAM置換:pマトリックス(例えばPAM 250マトリックス)により画定され得る。
【0049】
ある態様において、アミノ酸リンカー配列は、サイトカイン、シグナル伝達分子、免疫調節タンパク質もしくはペプチドまたは生物学的に活性なペプチドに由来する。
【0050】
さらなる企図されるリンカー配列としては、グリシンおよびセリンリッチリンカー、例えば(G4S)3(配列番号:49)が挙げられる。さらなる例示的なリンカー配列は、例えばGeorge et al. (2003) PROTEIN ENGINEERING15:871-879ならびに米国特許番号第5,482,858号および第5,525,491号に開示される。
【0051】
ある態様において、アミノ酸リンカーは、切断部位、例えばタンパク質分解性または非タンパク質分解性の切断部位を含み得る。ある態様において、タンパク質分解性切断部位は、特定の組織、細胞小器官または細胞内区画に存在するプロテアーゼにより切断される。ある態様において、リンカーは、タンパク質分解性切断部位およびタンパク質分解性切断後にジスルフィド結合を生じる2つのシステイン残基を含む。ある態様において、タンパク質分解性切断部位は、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)、フューリン、PC1、PC2、PC3、カテプシンB、プロテイナーゼ3およびカスパーゼ3から選択されるプロテアーゼにより切断される。ある態様において、切断部位は、真核細胞の小胞体またはゴルジ内に存在するプロテアーゼにより切断されるタンパク質分解性切断部位である。ある態様において、タンパク質分解性切断部位は、フューリン切断部位である。フューリンは、遍在的に発現されてゴルジに局在されるプロテアーゼであり、フューリンは、コンセンサス配列RX1X2R (配列番号:50)(式中、X1は任意のアミノ酸であり、X2はLysまたはArgである)を認識し、最後のArgの後ろを切断する。フューリンは、ゴルジを通るタンパク質のプロペプチドの切断において生物学的役割を果たす。したがって、ある態様においてタンパク質分解性切断部位は、配列RX1X2R (配列番号:50)(式中、X1は任意のアミノ酸であり、X2はLysまたはArgである)を含むフューリン切断部位であり、例えば配列RAKR (配列番号:51)を含むフューリン切断部位である。
【0052】
ある態様において、Ig Fc、Igヒンジ領域およびIg CH1ドメインは、単一の免疫グロブリンに由来する。
【0053】
ある態様において、融合タンパク質は、配列番号:22、配列番号:23、配列番号:24、配列番号:25、配列番号:26、配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29、配列番号:30、配列番号:31、配列番号:32、配列番号:33、配列番号:55、配列番号:56および配列番号:58から選択されるアミノ酸配列を含む。ある態様において、開示される融合タンパク質は、配列番号:22、配列番号:23、配列番号:24、配列番号:25、配列番号:26、配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29、配列番号:30、配列番号:31、配列番号:32、配列番号:33、配列番号:55、配列番号:56および配列番号:58から選択される配列に対して85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%より高い配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0054】
配列同一性は、当該技術分野における技術の範囲内にある種々の方法で、例えば公的に利用可能なコンピューターソフトウェア、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign (DNASTAR)ソフトウェアを使用して決定され得る。プログラムblastp、blastn、blastx、tblastnおよびtblastxにより使用されるアルゴリズムを使用したBLAST (Basic Local Alignment Search Tool)分析(Karlin et al., (1990) PROC. NATL. ACAD. SCI. USA 87:2264-2268; Altschul, (1993) J. MOL. EVOL. 36, 290-300; Altschul et al., (1997) NUCLEIC ACIDS RES. 25:3389-3402、参照により援用される)は、配列類似性の検索のために調整される。配列データベースの検索における基本的な問題の議論については、参照により十分に援用されるAltschul et al., (1994) NATURE GENETICS 6:119-129参照。当業者は、比較される配列の全長にわたり最大の整列(alignment)を達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、整列を測定するための適切なパラメーターを決定し得る。ヒストグラム、ディスクリプション、アラインメント、エクスペクト(すなわちデータベース配列に対する適合を報告するための統計的有意さ閾値)、カットオフ、マトリックスおよびフィルターについての検索パラメーターは、デフォルト設定にある。blastp、blastx、tblastnおよびtblastxにより使用されるデフォルトスコアリングマトリックスは、BLOSUM62マトリックスである(Henikoff et al., (1992) PROC. NATL. ACAD. SCI. USA 89:10915-10919、参照により十分に援用される)。4つのblastnパラメーターは以下の通りに調整され得る:Q=10(ギャップ生成ペナルティー);R=10(ギャップ伸長ペナルティー(gap extension penalty));wink=1(クエリに沿ってwink.sup.thの位置毎にワードヒットを生じる);およびgapw=16(ギャップのあるアラインメントが生成されるウィンドウ幅を設定する)。同等のBlastpパラメーター設定は、Q=9;R=2;wink=1;およびgapw=32であり得る。検索はまた、NCBI (National Center for Biotechnology Information) BLAST Advanced Optionパラメーターを使用して実施され得る(例えば:-G、オープンギャップについてのコスト[整数]:デフォルト=ヌクレオチドについて5/タンパク質について11;-E、伸長ギャップについてのコスト[整数]:デフォルト=ヌクレオチドについて2/タンパク質について1;-q、ヌクレオチドミスマッチについてのペナルティー[整数]:デフォルト=-3;-r、ヌクレオチド適合についての報酬(reward)[整数]:デフォルト=1;-e、予測値[実数]:デフォルト=10;-W、ワードサイズ[整数]:デフォルト=ヌクレオチドについて11/megablastについて28/タンパク質について3;-y、ビットでのblast伸長についてのドロップオフ(X):デフォルト=blastnについて20/その他について7;-X、ギャップのあるアラインメントについてのXドロップオフ値(ビット(in bit)):デフォルト=全てのプログラムについて15であるがblastnには適用可能ではない;および-Z、ギャップのあるアラインメントについての最終Xドロップオフ値(ビット):blastnについて50、その他について25)。ペアワイズタンパク質アラインメントについてのClustalWも使用され得る(デフォルトパラメータは、例えばBlosum62マトリックスおよびギャップオープンペナルティー(Gap Opening Penalty)=10およびギャップ伸長ペナルティー=0.1を含み得る)。GCGパッケージバージョン10.0において利用可能な配列間の最適合比較はDNAパラメーターGAP=50(ギャップ生成ペナルティー)およびLEN=3(ギャップ伸長ペナルティー)を使用し、タンパク質比較における同等の設定はGAP=8およびLEN=2である。
【0055】
一局面において、本発明は、2つの融合タンパク質を含むサイトカイン結合タンパク質を提供し、それぞれの融合タンパク質は、N末端~C末端の方向で:サイトカイン受容体の細胞外ドメインの可溶性部分;アミノ酸リンカー;免疫グロブリン(Ig)ヒンジ領域;および免疫グロブリン(Ig)Fcドメインを含み、ここで該リンカーは約5~約40のアミノ酸残基を含み、2つの融合タンパク質は共有結合されて一緒になり、2つの細胞外ドメインは一緒になってサイトカインについての結合部位を画定する。
【0056】
サイトカイン結合タンパク質は、共有結合されて一緒になる前述の融合タンパク質の2つを含み得、ここでそれぞれの融合タンパク質はサイトカイン受容体の細胞外ドメインを含み、2つの細胞外ドメインは一緒になってサイトカインについての結合部位を画定する。融合タンパク質は、例えばそれぞれの融合タンパク質のIgヒンジ領域中のシステイン残基の間のジスルフィド結合により共有結合され得る。ある態様において、単量体または多量体(例えば二量体)のいずれかである融合タンパク質は、天然の全長サイトカイン受容体と比較した場合、標的リガンドの結合活性の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%または95%を保持する。
【0057】
ある態様において、本発明のサイトカイン結合タンパク質は、200nM、100nM、20nM、15nM、10nM、9nM、8nM、7nM、6nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、50pM、25pM以下のKDでサイトカインと結合する。ある態様において、本発明のサイトカイン結合タンパク質は、200nM~100nM、200nM~20nM、200nM~10nM、200nM~5nM、200nM~1nM、200nM~50pM、200nM~25pM、100nM~20nM、100nM~10nM、100nM~5nM、100nM~1nM、100nM~50pM、100nM~25pM、20nM~10nM、20nM~5nM、20nM~1nM、20nM~50pM、20nM~25pM、10nM~5nM、10nM~1nM、10nM~50pM、10nM~25pM、5nM~1nM、5nM~50pM、5nM~25pM、1nM~50pM、1nM~25pMまたは50pM~25pMのKDでサイトカインと結合する。ある態様において、本発明のサイトカイン結合タンパク質は、200nM、100nM、20nM、15nM、10nM、9nM、8nM、7nM、6nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、50pM、25pM以下のKDでIL-10と結合する。ある態様において、本発明のサイトカイン結合タンパク質は、200nM~100nM、200nM~20nM、200nM~10nM、200nM~5nM、200nM~1nM、200nM~50pM、200nM~25pM、100nM~20nM、100nM~10nM、100nM~5nM、100nM~1nM、100nM~50pM、100nM~25pM、20nM~10nM、20nM~5nM、20nM~1nM、20nM~50pM、20nM~25pM、10nM~5nM、10nM~1nM、10nM~50pM、10nM~25pM、5nM~1nM、5nM~50pM、5nM~25pM、1nM~50pM、1nM~25pMまたは50pM~25pMのKDでIL-10と結合する。KD値は、表面プラスモン共鳴または生体層干渉法(bio-layer interferometry method)などの当該技術分野で周知の方法により決定され得る。
【0058】
本発明の例示的な融合タンパク質としては、配列番号:22、配列番号:23、配列番号:24、配列番号:25、配列番号:26、配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29、配列番号:30、配列番号:31、配列番号:32、配列番号:33、配列番号:55、配列番号:56および配列番号:58から選択されるアミノ酸配列を含むタンパク質が挙げられる。明確さのために、これらのタンパク質の個々の要素および個々の要素の配列が由来するタンパク質、例えばサイトカイン受容体の細胞外ドメインの可溶性部分、アミノ酸リンカー、Igヒンジ領域およびIg Fcドメインの配列を表1に示す。
【0059】
【0060】
【0061】
II. 融合タンパク質作製
本発明の融合タンパク質を作製する方法は当該技術分野で公知である。例えば、開示される融合タンパク質をコードするDNA分子は、本明細書に提供される配列情報を使用して化学的に合成され得る。合成DNA分子を、他の適切なヌクレオチド配列、例えば発現制御配列等に連結して、所望の融合タンパク質をコードする従来の遺伝子発現構築物を作製し得る。画定された遺伝子構築物の作製は当該技術分野の常套的な技術の範囲内にある。配列番号:22~32の融合タンパク質をコードする例示的な核酸配列、配列番号:37~47は表2に見られ得る。
【0062】
所望の融合タンパク質をコードする核酸は、発現ベクターに組み込まれ(連結され)得、該ベクターは、従来のトランスフェクションまたは形質転換技術により宿主細胞に導入され得る。例示的な宿主細胞は、大腸菌細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、新生児ハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えばHep G2)および骨髄腫細胞である。形質転換された宿主細胞は、宿主細胞に所望の融合タンパク質をコードする遺伝子を発現させる条件下で増殖され得る。
【0063】
特定の発現および精製条件は、使用される発現系に応じて変化する。例えば、遺伝子が大腸菌中で発現される場合、遺伝子は最初に、適切な細菌プロモーター、例えばTrpまたはTacおよび原核生物シグナル配列の下流に作り変えられた遺伝子を配置することにより発現ベクター中にクローニングされる。発現され、分泌されたタンパク質は、屈折体(refractile)または封入体中に蓄積し、フレンチプレスまたは超音波処理による細胞の破砕後に回収され得る。次いで屈折体を可溶化して、タンパク質を当該技術分野で公知の方法によりリフォールディングし、切断する。
【0064】
作り変えられた遺伝子が真核生物宿主細胞、例えばCHO細胞中で発現される場合、該遺伝子は最初に、適切な真核生物プロモーター、分泌シグナル、ポリA配列および停止コドンを含む発現ベクターに挿入され、任意に、エンハンサーおよび種々のイントロンを含み得る。遺伝子構築物は、従来技術を使用して真核生物宿主細胞に導入され得る。
【0065】
開示される融合タンパク質を含むポリペプチドは、かかるタンパク質をコードする発現ベクターでトランスフェクトされた宿主細胞を、ポリペプチドの発現を可能にする条件下で増殖させる(培養する)ことにより作製され得る。発現に続いて、ポリペプチドは、当該技術分野で公知の技術、例えばプロテインA、プロテインG、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)またはヒスチジンタグなどの親和性タグを使用して、回収および精製または単離され得る。
【0066】
III. 発現ベクター
目的の融合タンパク質は、目的の融合タンパク質をコードする遺伝子を適切な発現ベクターに組み込むことにより目的の細胞中で発現され得る。本明細書で使用する場合、「発現ベクター」は、発現されるヌクレオチド配列に操作可能に連結された発現制御配列を含む組み換えポリヌクレオチドを含むベクターをいう。発現ベクターは、発現のための十分なシス作用因子を含み、発現のための他の因子は、宿主細胞により供給され得るかまたはインビトロ発現系において供給され得る。発現ベクターとしては、目的の組み換えポリヌクレオチドを組み込むコスミド、プラスミド(例えばネイキッドであるかまたはリポソームに含まれる)、レトロトランスポゾン(例えばpiggyback、sleeping beauty)およびウイルス(例えばレンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)などの当該技術分野において公知の全てのものが挙げられる。
【0067】
ある態様において、開示される発現ベクターはウイルスベクターである。用語「ウイルスベクター」および「ウイルス」は、タンパク質合成機構またはエネルギー生成機構を有さない細胞内偏生寄生体のいずれかをいうように、本明細書において交換可能に使用される。ウイルスゲノムはRNAまたはDNAであり得る。本発明の実施に有用なウイルスとしては、好ましくはバキュロウイルス科、パルボウイルス科、ピコルナウイルス科(picornoviridiae)、ヘルペスウイルス科、ポックスウイルス科(poxyiridae)またはアデノウイルス科から選択される組み換えにより改変されて封入されるかまたは封入されないDNAウイルスおよびRNAウイルスが挙げられる。ウイルスは、組み換えDNA技術により改変されて、外来性トランスジーンの発現を含み得、複製不完全、条件的複製または複製コンピテントであるように作り変えられ得る。親ベクターの特性のそれぞれの有利な要素を利用するキメラウイルスベクター(例えばFeng et al. (1997) NATURE BIOTECHNOLOGY 15:866-870)も本発明の実施において有用であり得る。治療対象である種由来のウイルスを使用することが一般的に好ましいが、いくつかの例において、好ましい病原性特徴を有する異なる種由来のベクターを使用することが有利であり得る。例えば、ヒト遺伝子治療についてウマヘルペスウイルスベクターがPCT公開公報WO 98/27216に記載される。該ベクターは、ウマウイルスがヒトに対して病原性ではないのでヒトの治療に有用であると記載される。同様に、ヒツジアデノウイルスベクターは、ヒトアデノウイルスベクターに対する抗体を回避することが主張されているので、ヒト遺伝子治療に使用され得る。かかるベクターはPCT公開公報WO 97/06826に記載される。
【0068】
ある態様において、ウイルスベクターはアデノウイルスである。アデノウイルスは、ヌクレオカプシドおよび二本鎖直鎖DNAゲノムで構成される中程度のサイズ(90~100nm)で、封入されておらず(ネイキッド)、正二十面体のウイルスである。アデノウイルスは、宿主の複製機構を使用して哺乳動物細胞の核内で複製する。用語「アデノウイルス」は、ヒト、ウシ、ヒツジ、ウマ、イヌ、ブタ、マウスおよびサルのアデノウイルス亜属を含むが限定されないアデノウイルス属(genus Adenoviridiae)の任意のウイルスをいう。特に、ヒトアデノウイルスは、A-F亜属およびその個々の血清型を含み、個々の血清型およびA-F亜群は、限定されないがヒトアデノウイルス型1、2、3、4、4a、5、6、7、8、9、10、11(Ad11aおよびAd11p)、12、13、14、15、16、17、18、19、19a、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、34a、35、35p、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48および91型を含む。ヒトアデノウイルス2および5型由来のベクターが好ましい。そうではないと記載されない限り、全てのアデノウイルス5型ヌクレオチド番号は、本明細書中配列番号:52に示されるNCBI参照配列AC_000008.1に関連する。
【0069】
アデノウイルス複製サイクルは2つの段階:4つの転写単位(E1、E2、E3およびE4)が発現される初期段階、およびウイルスDNA合成の開始後、後期転写産物が主要後期プロモーター(major late promoter)(MLP)から主に発現される際に起こる後期段階を有する。後期メッセージは、ウイルスの構造タンパク質のほとんどをコードする。E1、E2およびE4の遺伝子産物は、転写活性化、細胞形質転換、ウイルスDNA複製およびその他のウイルス機能の原因であり、ウイルス増殖に必要である。
【0070】
用語「操作可能に連結される」は、機能的な関係にあるポリヌクレオチド要素の連結をいう。核酸配列は、別の核酸配列と機能的な関係に配置される場合「操作可能に連結される」。例えば、プロモーターまたはエンハンサーは、遺伝子の転写に影響を及ぼす場合に遺伝子に操作可能に連結される。操作可能に連結されたヌクレオチド配列は典型的に連続である。しかしながら、エンハンサーは一般的に、プロモーターから数キロベース分離される場合に機能し、イントロン配列は不定の長さであり得るので、いくつかのポリヌクレオチド要素は、直接隣り合わないが、操作可能に連結され得、異なる対立遺伝子または染色体からトランスに機能しさえし得る。
【0071】
IV. 融合タンパク質改変
治療剤として使用する場合、融合タンパク質は、親和性および/または特異性などの生化学的特性を向上するため、凝集、安定性、沈殿および/または非特異的相互作用などの生物物理学的特性を向上するためおよび/または免疫原性を低減するために、最適化(例えば親和性成熟(affinity-mature))され得る。親和性成熟手順は、当該技術分野における通常の技術の範囲内にある。例えば、DNAシャッフリング、鎖シャッフリング、CDRシャッフリング、ランダム突然変異誘発および/または部位特異的突然変異誘発により、開示される融合タンパク質に多様性を導入し得る。
【0072】
一般的に、最適化された融合タンパク質は、リガンドについて、該融合タンパク質が由来する最適化されていない(または親)融合タンパク質と少なくとも同じまたは実質的に同じ(例えば少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の親和性を有する。好ましくは、最適化された融合タンパク質は、親融合タンパク質と比較した場合、リガンドについてより高い親和性を有する。
【0073】
融合タンパク質(例えば親および最適化されたバリアント)は、特定のエフェクター機能(例えば抗体依存的細胞傷害性(ADCC))を有する特定の定常(すなわちFc)領域を含むように作り変えられ得る。ヒト定常領域は当該技術分野で公知である。
【0074】
さらに、融合タンパク質が治療剤としての使用のためのものである場合、融合タンパク質は、標準的なインビトロコンジュゲーション化学を使用して、小分子毒素または放射性核種などのエフェクター剤にコンジュゲートされ得る。エフェクター剤がポリペプチドである場合、抗体は、エフェクターに化学的にコンジュゲートされ得るかまたは融合タンパク質としてエフェクターに結合され得る。融合タンパク質の構築は当該技術分野の通常の技術の範囲内である。
【0075】
V. 治療方法
前述の融合タンパク質または発現ベクターを使用して、種々の医学的徴候を治療し得る。ある態様において、前述の融合タンパク質または発現ベクターを使用して、サイトカイン、例えばIL-10により媒介される医学的徴候を治療し得る。例えば、融合タンパク質および発現ベクターを使用して、種々の癌または炎症性疾患を治療し得る。
【0076】
本明細書で使用する場合、「治療する(treat)」、「治療すること(treating)」および「治療(treatment)」は、被験体、例えば哺乳動物、例えばヒトにおける疾患の治療を意味する。これは、(a)疾患を阻害すること、すなわちその進展を止めること;および(b)疾患を軽減すること、すなわち疾患状態の後退を引き起こすことを含む。本明細書で使用する場合、用語「被験体」および「患者」は、本明細書に記載される方法および組成物により治療される生物をいう。好ましくは、かかる生物としては限定されないが、哺乳動物(例えば、マウス、サル、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ等)が挙げられ、より好ましくはヒトが挙げられる。
【0077】
ある態様において、本明細書に開示される融合タンパク質および発現ベクターを使用して、種々の癌を治療し得る。癌細胞の増殖を阻害または低減するように、癌細胞を、融合タンパク質または発現ベクターの治療有効量に暴露する。ある態様において、癌細胞への融合タンパク質または発現ベクターの治療有効量の投与は、細胞中のIL-10活性を少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも95%低減する。IL-10活性は、実施例2に記載されるようにウエスタンブロットによりアッセイされ得る。いくつかの態様において、開示される融合タンパク質または発現ベクターを使用して、被験体(例えばヒト患者、ヒト被験体とも称される)において腫瘍増殖を阻害し得、これは該被験体に、融合タンパク質または発現ベクターの有効量を投与することにより達成され得る。ある態様において、被験体に、融合タンパク質または発現ベクターの有効量を投与することで、該被験体における腫瘍負荷が少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%低減される。
【0078】
癌の例としては、固形腫瘍、軟部組織腫瘍、血液の腫瘍および転移性の病変が挙げられる。血液の腫瘍の例としては、白血病、急性白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、B細胞、T細胞またはFAB ALL、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄球白血病(CML)、慢性リンパ球白血病(CLL)、例えば変形(transformed)CLL、びまん性大B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫、毛様細胞性白血病、骨髄異形成症候群(myelodyplastic syndrome)(MDS)、リンパ腫、ホジキン病、悪性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、多発性骨髄腫またはリクター症候群(リクター形質転換(Richter's Transformation))が挙げられる。固形腫瘍の例としては悪性疾患、例えば種々の臓器系の肉腫、腺癌および癌腫、例えば頭部および頸部(咽頭を含む)、甲状腺、肺(小細胞または非小細胞肺癌(NSCLC))、乳房、リンパ系、胃腸(例えば口腔、食道、胃、肝臓、膵臓、小腸、結腸および直腸、肛門管)、生殖器および尿生殖器管(例えば腎臓、尿路上皮、膀胱、卵巣、子宮、子宮頸、子宮内膜、前立腺、精巣)、CNS(例えば神経細胞またはグリア細胞、例えば神経芽腫または神経膠腫)、または皮膚(例えば黒色腫)が冒されるものが挙げられる。
【0079】
ある態様において、癌は、黒色腫、皮膚の扁平上皮癌、基底細胞癌、頭頸部癌、乳癌、肛門癌、子宮頸癌、非小細胞肺癌、中皮腫、小細胞肺癌、腎細胞癌、前立腺癌、胃食道癌、結腸直腸癌、精巣癌、膀胱癌、卵巣癌、肝臓癌、肝細胞癌、胆管癌、脳および中枢神経系の癌、甲状腺癌、副甲状腺癌(例えば副甲状腺癌腫)、子宮内膜癌、神経内分泌癌、リンパ腫(例えばホジキンおよび非ホジキン)、白血病、メルケル細胞癌、消化管間質腫瘍、多発性骨髄腫、子宮癌、肉腫、腎臓癌、眼の癌、膵臓癌ならびに生殖細胞癌(例えば卵巣生殖細胞癌)から選択される。ある態様において、癌は、白血病、乳癌、肺癌、膵臓癌、子宮内膜癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮頸癌、脳癌、皮膚癌、結腸直腸癌、胃癌、頭頸部癌および白血病から選択され得る。ある態様において、癌は、白血病、乳癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、肺癌、膵臓癌、前立腺癌、胃癌、頭頸部癌、子宮内膜癌および卵巣癌から選択される。
【0080】
ある態様において、本開示の融合タンパク質または発現ベクターは、1つ以上のサイトカインのレベルの減少を必要とする被験体(例えば炎症状態を有する被験体)において1つ以上のサイトカインのレベルを減少するために投与される。ある態様において、開示される融合タンパク質または発現ベクターを使用して、被験体(例えばヒト被験体)において炎症状態を治療し得、これは被験体に、融合タンパク質または発現ベクターの有効量を投与することにより達成され得る。
【0081】
本明細書で使用する場合、炎症状態は、全体または部分的に患者における炎症または炎症性応答を特徴とする疾患または状態である。本発明の融合タンパク質または発現ベクターを使用して治療可能な炎症状態は、例えば罹患した主な組織、該状態の基礎にある作用機構または誤制御されたもしくは過剰に活性な免疫系の部分に基づいて特徴付けられ得る。ある態様において、治療され得る炎症状態の例としては、肺(例えば喘息、成人呼吸促進症候群、気管支炎、肺の炎症、肺の線維症および嚢胞性線維症)、関節(例えば関節リウマチ、リウマチ様脊椎炎、若年性関節リウマチ、変形性関節炎、痛風関節炎および他の関節性状態)、結合組織、眼(例えばブドウ膜炎(虹彩炎を含む)、結膜炎、強膜炎および乾性角結膜炎)、鼻腔、腸(例えばクローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、炎症性腸症候群および遠位直腸炎)、腎臓(例えば糸球体腎炎、間質性腎炎、ループス腎炎、ヴェーゲナー病に続発性の腎炎、急性腎炎に続発性の急性腎不全、グッドパスチャー症候群、後閉塞性症候群(post-obstructive syndrome)および管状虚血)、肝臓(例えば肝炎(ウイルス感染、自己免疫応答、薬物治療、毒素、環境因子からまたは原発性障害の続発性の結果として生じる)、肥満、胆道閉鎖、原発性胆汁性肝硬変および原発性硬化性胆管炎)、皮膚(例えば乾癬、湿疹および皮膚炎、例えば湿疹性皮膚炎、局所および脂漏性皮膚炎、アレルギー性または刺激性接触皮膚炎、亀裂性湿疹(eczema craquelee)、光アレルギー性皮膚炎、光毒性皮膚炎、植物性光線皮膚炎、放射線皮膚炎、およびうっ血性皮膚炎)、中枢神経系(例えば多発性硬化症および神経変性性疾患、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病またはHIV感染に関連する痴呆)、脈管系(例えば冠状梗塞損傷、末梢血管疾患、心筋炎、脈管炎、狭窄の血管再生、アテローム硬化症、およびII型糖尿病に関連する血管疾患)、内分泌系(例えば自己免疫甲状腺炎(橋本病)、I型糖尿病、II型糖尿病に関連する肝臓および脂肪組織における炎症、ならびに急性および慢性の副腎皮質の炎症)心臓、または脂肪組織の炎症が挙げられる。本開示は、いくつかの炎症状態が複数の組織における炎症を含むことを企図する。さらに、本開示は、いくつかの炎症状態が複数のカテゴリーに分類され得ることを企図する。ある態様において、炎症状態は自己免疫疾患である。例示的な自己免疫疾患としては、限定されないが、関節リウマチ、乾癬(斑乾癬(plaque psoriasis)を含む)、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症、狼瘡、脱毛、自己免疫膵臓炎、セリアック病、ベーチェット病、クッシング症候群、およびグレーブス病が挙げられる。ある態様において、炎症状態は、リウマチ様障害である。例示的なリウマチ様障害としては限定されないが、関節リウマチ、若年性関節炎、滑液包炎、脊椎炎、痛風、強皮症、スティル病および脈管炎が挙げられる。特定のカテゴリーの状態が重複することに注意されたい。例えば、関節リウマチは、炎症性リウマチ様障害、炎症性関節障害および自己免疫障害である。
【0082】
用語「有効量」は、本明細書で使用する場合、有益または所望の結果をもたらすのに十分な活性成分の量(例えば本発明の融合タンパク質または発現ベクターの量)をいう。有効量は1つ以上の投与、適用または用量において投与され得、特定の製剤または投与経路に限定されることを意図しない。
【0083】
ある態様において、融合タンパク質の治療有効量は、0.1mg/kg~100mg/kg、例えば1mg/kg~100mg/kg、1mg/kg~10mg/kg、1mg/kg~5mg/kg、10mg/kg、7.5mg/kg、5mg/kgまたは2.5mg/kgの範囲内にある。ある態様において、発現ベクター、例えば組み換えウイルスの治療有効量は、102~1015プラーク形成単位(pfu)、例えば102~1010、102~105、105~1015、105~1010または1010~1015プラーク形成単位の範囲内にある。投与量は、治療される疾患または徴候の種類および程度、患者の全体的な健康状態、融合タンパク質または発現ベクターのインビボ効力、医薬製剤、ならびに投与経路などの変数に依存する。所望の血液レベルまたは組織レベルを迅速に達成するために、初期用量は、上限を超えて増加され得る。代替的に、初期用量は、最適よりも小さくあり得、日用量は治療経過の間に段々に増加され得る。ヒト用量は、例えば0.5mg/kgから20mg/kgまで行うように設計された従来の第I相用量段階的拡大試験において最適化され得る。投与頻度は、投与経路、投与量、抗体の血清半減期、および治療されている疾患などの要因に応じて変化し得る。例示的な投与頻度は、1日に1回、1週間に1回および2週間毎に1回である。好ましい投与経路は非経口、例えば静脈内注入である。融合タンパク質または発現ベクターに基づく薬物の調製は当該技術分野における通常の技術の範囲内にある。いくつかの態様において、融合タンパク質または発現ベクターは凍結乾燥され、次いで投与の時点で、緩衝化食塩水中で再構成される。
【0084】
治療用途のために、融合タンパク質または発現ベクターは、好ましくは薬学的に許容され得る担体と組み合される。本明細書で使用する場合、「薬学的に許容され得る担体」は、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症なく、妥当な利益/リスク比に釣り合って、ヒトおよび動物の組織との接触における使用に適した緩衝剤、担体および賦形剤を意味する。担体(1つまたは複数)は、製剤の他の成分と適合性であり、レシピエントに対して有害ではない意味というにおいて「許容され得る」べきである。薬学的に許容され得る担体としては、医薬投与と適合性である、緩衝剤、溶媒、分散媒体、コーティング、等張化剤および吸収遅延剤等が挙げられる。薬学的に活性な物質のためのかかる媒体および薬剤の使用は当該技術分野で公知である。
【0085】
本明細書に開示される融合タンパク質または発現ベクターを含む医薬組成物は、単位剤型で存在し得、任意の適切な方法により調製され得る。医薬組成物は、その意図される投与経路に適合性となるように調製されるべきである。投与経路の例は、静脈内(IV)、皮内、吸入、眼内、鼻腔内、経皮、局所、経粘膜および直腸の投与である。
【0086】
融合タンパク質のための好ましい投与経路はIV注入である。有用な製剤は、医薬の分野で公知の方法により調製され得る。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th ed. (Mack Publishing Company, 1990)参照。非経口投与に適した製剤成分としては、注射用水、食塩水溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒などの滅菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウムなどの酸化防止剤;EDTAなどのキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩などの緩衝剤;および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの浸透圧の調整のための薬剤が挙げられる。
【0087】
静脈内投与のための、適切な担体としては、生理的食塩水、静菌水、Cremophor ELTM (BASF, Parsippany, NJ)またはリン酸緩衝化食塩水(PBS)が挙げられる。担体は、製造および保存の条件下で安定であるべきであり、微生物に対して保護されるべきである。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール)を含む溶媒または分散媒体、ならびにそれらの適切な混合物であり得る。
【0088】
好ましくは、医薬製剤は滅菌したものである。滅菌は、任意の適切な方法、例えば滅菌濾過膜を通した濾過により達成され得る。組成物が凍結乾燥される場合、凍結乾燥および再構成の前後に濾過滅菌を行い得る。ある態様において、本発明の送達ビヒクル(例えば組み換えウイルス)および/または治療剤は、チェックポイント阻害剤、例えば抗CTLA-4抗体、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体と組み合わせて投与される。例示的な抗PD-1抗体としては、例えばニボルマブ(Opdivo(登録商標), Bristol-Myers Squibb Co.)、ペンブロリズマブ(Keytruda(登録商標), Merck Sharp & Dohme Corp.)、PDR001 (Novartis Pharmaceuticals)およびピジリズマブ(pidilizumab)(CT-011, Cure Tech)が挙げられる。例示的な抗PD-L1抗体としては、例えばアテゾリズマブ(atezolizumab)(Tecentriq(登録商標), Genentech)、デュバルマブ(duvalumab)(AstraZeneca)、MEDI4736、アベルマブ(Bavencio(登録商標), EMD Serono)およびBMS 936559 (Bristol Myers Squibb Co.)が挙げられる。
【0089】
本明細書で使用する場合、用語「組み合わせて」投与されるは、被験体の障害による苦痛の過程の間に、被験体に対する治療の効果がある時点で(at a point in time)重複するように、2つ(またはそれ以上)の異なる治療を被験体に送達することを意味することが理解される。ある態様において、1つの治療の送達は、第2の送達が開始された場合に依然として行われているので、投与期間の重複がある。これは本明細書において時々「同時(simultaneous)」または「同時(concurrent)送達」と称される。他の態様において、1つの治療の送達は、他の治療の送達が開始する前に終了する。いずれかの場合のいくつかの態様において、組み合わせの投与のために治療はより効果的になる。例えば、第2の治療はより効果的であり、例えばより少ない第2の治療で同等の効果が見られるか、もしくは第2の治療は、第1の治療の非存在下で第2の治療を投与した場合に見られるよりも大きな程度まで症状を低減し、または第1の治療により同様の状況が見られる。ある態様において、送達は、症状または障害に関連のある他のパラメーターの低減が、もう一方の治療の非存在下で1つの治療を送達して観察されるものよりも大きくなるようなものである。2つの治療の効果は、部分的に相加的、全体的に相加的または相加的よりも大きくあり得る。送達は、送達される第1の治療の効果が第2のものを送達する場合に依然として検出可能であるようなものであり得る。
【0090】
明細書を通して、組成物、デバイスおよび系が特定の構成要素を有する、含む(including)もしくは含む(comprising)と記載される場合、またはプロセスおよび方法が特定の工程を有する、含む(including)もしくは含む(comprising)と記載される場合、追加的に、記載される構成要素から本質的になるかまたは記載される構成要素からなる本発明の組成物、デバイスおよび系があることならびに記載されるプロセス工程から本質的になるかまたは記載されるプロセス工程からなる本発明のプロセスおよび方法があることが企図される。
【0091】
本願において、要素もしくは構成要素が記載される要素もしくは構成要素のリストに含まれるおよび/または該リストから選択されるといわれる場合、要素もしくは構成要素は、記載される要素もしくは構成要素のいずれか1つであり得るか、または要素もしくは構成要素は、記載される要素もしくは構成要素の2つ以上からなる群より選択され得ることが理解されるべきである。
【0092】
さらに、本明細書に記載される組成物または方法の要素および/または特徴は、本明細書において明示的であるか黙示的であるのいずれにせよ、本発明の精神および範囲から逸脱することなく種々の方法で組み合され得ることが理解されるべきである。例えば、特定のウイルスについて参照がなされる場合、該ウイルスは、文脈からそうではないと理解されない限り、本発明の組成物および/または本発明の方法の種々の態様で使用され得る。すなわち、本願の範囲内で、態様は、明確かつ簡潔な適用が記載および図示されるのを可能にする様式で記載され、示されるが、態様は、本教示および本発明(1つまたは複数)から逸脱することなく、種々に組み合され得るかまたは分離され得ることが意図され理解される。例えば、本明細書に記載されかつ示される全ての特徴は、本明細書に記載されかつ示される本発明(1つまたは複数)の全ての局面に適用可能であり得ることが理解される。
【0093】
文脈および用途からそうではないと理解されない限り、語句「の少なくとも1つ」は個々に、該語句の後に記載される物のそれぞれおよび記載される物の2つ以上の種々の組み合わせを含むことが理解されるべきである。3つ以上の記載される物に関しての語句「および/または」は、文脈からそうではないと理解されない限り、同じ意味を有することが理解されるべきである。
【0094】
用語「含む(include)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(have)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含む(contain)」、「含む(contains)」または「含む(containing)」の使用は、それらの文法上の同等物を含めて、そうではないと具体的に記されるかまたは文脈から理解されない限り、一般的に開放型であり非限定的であり、例えば記載されないさらなる要素または工程を排除しないと理解されるべきである。
【0095】
用語「約」の使用が量的値の前にある場合、そうではないと具体的に記されない限り、本発明は特定の量的値自身も含む。本明細書で使用する場合、用語「約」は、そうではないと示されるかまたは推測されることがない限り、名目上の値からの±10%の変動をいう。
【0096】
工程の順序または特定の行為を行う順序は、本発明が実施可能なままである限りは重要ではないことが理解されるべきである。さらに、2つ以上の工程または行為は、同時に行われてもよい。
【0097】
本明細書における任意および全ての例または例示的な用語、例えば「など(such as)」または「含む(including)」の使用は、単に本発明をよりよく説明することを意図し、特許請求されない限り本発明の範囲に対して限定を与えない。本明細書における用語は、任意の特許請求されない要素を、本発明の実施に必須のものとして示すと解釈されるべきではない。
【実施例0098】
実施例
以下の実施例は単なる例示であり、いかなる方法においても本発明の範囲または内容を限定することを意図しない。
【0099】
実施例1:IL-10RA融合タンパク質プラスミド構築
この実施例には、IL-10RA融合タンパク質をコードするプラスミドおよびウイルス発現ベクターの作製が記載される。
【0100】
一連のヒトIL-10RA融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を生成した。第1の融合タンパク質、hIL-10R-IgG1 (配列番号:58)は、ヒトIL-10RAの残基1~229(SLTRQにおいて終結)、直後にヒトIgG1配列の残基84~330(NVNHKで開始)を含んだ。第2の融合タンパク質、hIL-10R-Fc (配列番号:48)は、ヒトIL-10RAの残基1~235(FTVTNにおいて終結)、直後にヒトIgG1の残基104~324(DKTHTで開始)を含んだ。融合タンパク質の詳細を表3に示す。
【0101】
【0102】
融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を、適切に下流の適用のためにプラスミドにクローニングした。特に、トランスジーンを発現しないか、hIL-10R-IgG1またはhIL-10RA-Fcを発現する組み換えアデノウイルスベクターを生成した。
【0103】
実施例2:IL-10R融合タンパク質活性
A549細胞(ヒト肺癌細胞)に、実施例1に記載されるような、トランスジーンを発現しないか、hIL-10R-IgG1またはhIL-10RA-Fcを発現するウイルスベクターを、10MOIで感染させ、4日間培養した。細胞培養物から条件づけ培地(conditioned medium)を回収し、THP-1細胞(ヒト白血病性単球)を、5×106細胞/mlで条件づけ培地に懸濁した。細胞は、50ng/mlのヒトIL-10で、37℃、30分間処理したかまたは対照として保持したかのいずれかであった。IL-10活性についてアッセイするために、THP-1細胞から抽出した細胞性タンパク質を、リン酸化Stat3についてのウエスタンブロットにより調べた。総Stat3を、充填対照として使用した。
【0104】
IL-10は、トランスジーンを発現しないかまたはhIL-10RA-Fcを発現するウイルスベクターを感染させた細胞由来の条件づけ培地中で培養したTHP-1細胞においてStat3リン酸化を誘導した。しかしながら、IL-10は、hIL10R-IgG発現ウイルスを感染させた細胞由来の条件づけ培地中で培養したTHP-1細胞においてStat3リン酸化を誘導しなかった。これらの結果により、hIL-10R-IgG1融合タンパク質は、IL-10がStat3シグナル伝達カスケードを活性化することを遮ることが示される。
【0105】
参照による援用
本明細書に参照される特許文献および科学文献のそれぞれの全開示は、全ての目的で参照により援用される。
【0106】
均等物
本発明は、その精神または本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態において具体化され得る。そのため、前述の態様は、全ての局面において本明細書に記載される発明の限定ではなく例示とみなされる。したがって、本発明の範囲は、前述の記載ではなく添付の特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲の均等物の意味および範囲に入る全ての変更が本発明に含まれることが意図される。