(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096360
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】水処理方法および水処理装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20230101AFI20230630BHJP
B01D 61/22 20060101ALI20230630BHJP
B01D 71/34 20060101ALI20230630BHJP
B01D 65/06 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
C02F1/44 D
C02F1/44 A
B01D61/22
B01D71/34
B01D65/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212051
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 源紀
(72)【発明者】
【氏名】前田 智宏
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA06
4D006GA07
4D006HA01
4D006HA21
4D006HA41
4D006HA77
4D006KA16
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4D006KE07P
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4D006KE23Q
4D006MA01
4D006MA02
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4D006MC11
4D006MC29
4D006MC48
4D006MC54
4D006MC58
4D006PA01
4D006PB03
4D006PB04
4D006PB08
(57)【要約】
【課題】
本発明の目的は、原水を膜モジュールで膜ろ過する水処理装置において、膜ろ過水のSDI(Silt Density Index)が基準範囲を逸脱または悪化傾向にある場合に、良質な膜ろ過水を得る水処理方法を提供することにある。
【解決手段】
原水を精密ろ過分離膜または限界ろ過分離膜によって処理し、膜ろ過水を得る膜ろ過工程と、前記分離膜を、化学薬品を用いて洗浄する化学洗浄工程を含む膜ろ過水を得る水処理方法であって、前記膜ろ過水のSDI(Silt Density Index)に基づき、前記分離膜の化学洗浄条件を変更することを特徴とする水処理方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水を精密ろ過分離膜または限外ろ過分離膜によって処理して膜ろ過水を得る膜ろ過工程と、前記分離膜を化学薬品を用いて洗浄する化学洗浄工程と、前記膜ろ過水をさらに半透膜で処理する半透膜分離工程とを有する水処理方法であって、前記膜ろ過水のSDI(Silt Density Index)に基づき、前記分離膜の化学洗浄条件を変更することを特徴とする水処理方法。
【請求項2】
前記膜ろ過水のSDIについて、下記i~iiiのいずれかの基準範囲を予め定め、該基準範囲を逸脱するタイミングで、前記分離膜の化学洗浄条件を変更することを特徴とする請求項1に記載の水処理方法。
i:膜ろ過水SDIの測定値
ii:膜ろ過水SDIの測定値の経時変化に対する移動平均値
iii:膜ろ過水SDIの測定値の経時変化による予測値
【請求項3】
前記基準範囲の上限値として、前記膜ろ過水のSDI3以上の値を設定することを特徴とする請求項2に記載の水処理方法。
【請求項4】
前記基準範囲の下限値として、前記膜ろ過水のSDI2以下の値を設定することを特徴とする請求項2または3に記載の水処理方法。
【請求項5】
前記分離膜の化学洗浄条件の変更が、化学洗浄頻度f[回/日]、洗浄薬液接触時間t[分]、化学薬品濃度C[mg/L]、洗浄薬液温度T[℃]の少なくともいずれかを変更するものであることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の水処理方法。
【請求項6】
前記分離膜の化学洗浄条件が、以下の条件(1)~(4)のいずれかを満たすことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の水処理方法。
範囲上限値を超過した時:
条件(1) fA < fB
条件(2) fA × tA × CA × TA ≦ fB × tB × CB × TB
範囲下限値を下回った時:
条件(3) fA ≧ fB
条件(4) fA × tA × CA × TA ≧ fB × tB × CB × TB
(ここで、Aは条件変更前を、Bは条件変更後を表す。)
【請求項7】
前記化学薬品が、次亜塩素酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の水処理方法。
【請求項8】
前記分離膜の素材が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂で構成されていることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の水処理方法。
【請求項9】
原水を処理して膜ろ過水を得る分離膜と、前記膜ろ過水を処理する半透膜と、前記分離膜を化学薬品を用いて洗浄する洗浄ユニットとを有する水処理装置であって、前記膜ろ過水のSDI(Silt Density Index)を計測するSDI測定ユニットと、前記膜ろ過水のSDIに基づき化学洗浄条件を変更する化学洗浄制御ユニットを備えた水処理装置。
【請求項10】
前記膜ろ過水のSDIについて、下記i~iiiのいずれかの基準範囲を予め定め、該基準範囲を逸脱するタイミングで前記分離膜の化学洗浄条件を変更する変更手段を有することを特徴とする請求項9に記載の水処理装置。
i:膜ろ過水SDIの測定値
ii:膜ろ過水SDIの測定値の経時変化に対する移動平均値
iii:膜ろ過水SDIの測定値の経時変化による予測値
【請求項11】
前記基準範囲の上限値として、前記膜ろ過水のSDI3以上の値を設定することを特徴とする請求項10に記載の水処理装置。
【請求項12】
前記基準範囲の下限値として、前記膜ろ過水のSDI2以下の値を設定することを特徴とする請求項10~11に記載の水処理装置。
【請求項13】
原水を処理して膜ろ過水を得る分離膜と、前記膜ろ過水を処理する半透膜と、前記分離膜を化学薬品を用いて洗浄する洗浄ユニットとを有する水処理装置の制御プログラムであって、前記分離膜の化学洗浄条件を変更するためのコンピュータに、膜ろ過水のSDIを取得するステップと、前記膜ろ過水SDIデータから洗浄条件を算出するステップとを実行させることを特徴とする水処理装置の制御プログラム。
【請求項14】
前記膜ろ過水のSDIについて、下記i~iiiのいずれかの基準範囲を予め定め、該基準範囲を超過するタイミングで前記分離膜の化学洗浄条件を算出するステップを実行させることを特徴とする請求項13に記載の水処理装置の制御プログラム。
i:膜ろ過水SDIの測定値
ii:膜ろ過水SDIの測定値の経時変化に対する移動平均値
iii:膜ろ過水SDIの測定値の経時変化による予測値
【請求項15】
前記基準範囲として、前記膜ろ過水のSDI3以上の値を設定することを特徴とする請求項14に記載の水処理装置の制御プログラム。
【請求項16】
前記基準範囲の下限値として、前記膜ろ過水のSDI2以下の値を設定することを特徴とする請求項14または15に記載の水処理装置の制御プログラム。
【請求項17】
請求項13~16のいずれかに記載の水処理装置の制御プログラムを記録したコンピュータで読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原水を膜モジュールで膜ろ過する水処理装置において、良質な膜ろ過水を得るための水処理方法および水処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
膜分離法は、省エネルギー・スペース、および良好な膜ろ過水質向上等の特長を有するため、様々な分野での使用が拡大している。例えば、精密ろ過分離膜や限外ろ過分離膜は、河川水や地下水や下水処理水から工業用水や水道水を製造する浄水プロセスへの適用や、海水淡水化用途や下水再利用用途における逆浸透膜処理工程の前処理や、食品工業分野での製造プロセスへの適用が挙げられる。
【0003】
逆浸透膜処理にとって、逆浸透膜供給水中に含まれる懸濁物質、コロイド性の有機物と無機物、ウィルスおよび細菌等の微生物から形成される汚れの付着・堆積(膜ファウリング)による透水性能の低下や生産水質の悪化が問題であり、従前、逆浸透膜ファウリングを抑制するために、様々な逆浸透膜供給水質から多くの運転方法が開発されてきた。特許文献1では、吸光度、生物の活性度、アデノシン三リン酸を計測し、その計測値に基づき、二酸化炭素を注入して、海水中の溶解性成分の析出および生物の活性度を阻害することで逆浸透膜ファウリングを抑制する方法が開示されている。また、特許文献2では、多糖類濃度に基づき、凝集剤注入量、洗浄タイミング等の前処理の運転条件を制御する方法が開示されている。しかし、現在、海水淡水化用途や下水再利用用途における逆浸透膜供給水の水質監視指標として、ASTM(Standard Test Method for silt density Index of Water D4289-07)によって規定されているSDI(Silt Density Index)が広く使用されている。海水や下水などの原水を前処理した後、逆浸透膜へ供給する場合、基準範囲(例えば、SDIの値が4以下)となるように、前処理水のSDIの値が基準範囲を超過または悪化傾向にあるときはSDIの値を減少させなければならない。そのため、SDIの値が基準範囲を逸脱または悪化傾向にあるときに、基準範囲内を維持できるような水処理方法の提供が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-177604号公報
【特許文献2】特開2012-223723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、原水を膜モジュールで膜ろ過する水処理装置において、膜ろ過水のSDI(Silt Density Index)が基準範囲を逸脱または悪化傾向にある場合に、良質な膜ろ過水を得る水処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)原水を精密ろ過分離膜または限外ろ過分離膜によって処理して膜ろ過水を得る膜ろ過工程と、前記分離膜を化学薬品を用いて洗浄する化学洗浄工程と、前記膜ろ過水をさらに半透膜で処理する半透膜分離工程とを有する水処理方法であって、前記膜ろ過水のSDI(Silt Density Index)に基づき、前記分離膜の化学洗浄条件を変更することを特徴とする水処理方法。
(2)前記膜ろ過水のSDIについて、下記i~iiiのいずれかの基準範囲を予め定め、該基準範囲を逸脱するタイミングで、前記分離膜の化学洗浄条件を変更することを特徴とする(1)に記載の水処理方法。
i:膜ろ過水SDIの測定値
ii:膜ろ過水SDIの測定値の経時変化に対する移動平均値
iii:膜ろ過水SDIの測定値の経時変化による予測値
(3)前記基準範囲の上限値として、前記膜ろ過水のSDI3以上の値を設定することを特徴とする(2)に記載の水処理方法。
(4)前記基準範囲の下限値として、前記膜ろ過水のSDI2以下の値を設定することを特徴とする(2)または(3)に記載の水処理方法。
(5) 前記分離膜の化学洗浄条件の変更が、化学洗浄頻度f[回/日]、洗浄薬液接触時間t[分]、化学薬品濃度C[mg/L]、洗浄薬液温度T[℃]の少なくともいずれかを変更するものであることを特徴とする(1)~(4)のいずれかに記載の水処理方法。
(6) 前記分離膜の化学洗浄条件が、以下の条件(ア)~(エ)のいずれかを満たすことを特徴とする(1)~(5)のいずれかに記載の水処理方法。
範囲上限値を超過した時:
条件(ア) fA < fB
条件(イ) fA × tA × CA × TA ≦ fB × tB × CB × TB
範囲下限値を下回った時:
条件(ウ) fA ≧ fB
条件(エ) fA × tA × CA × TA ≧ fB × tB × CB × TB
(ここで、Aは条件変更前を、Bは条件変更後を表す。)
(7) 前記化学薬品が、次亜塩素酸ナトリウムであることを特徴とする(1)~(6)のいずれかに記載の水処理方法。
(8) 前記分離膜の素材が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂で構成されていることを特徴とする(1)~(7)のいずれかに記載の水処理方法。
(9) 原水を処理して膜ろ過水を得る分離膜と、前記膜ろ過水を処理する半透膜と、前記分離膜を化学薬品を用いて洗浄する洗浄ユニットとを有する水処理装置であって、前記膜ろ過水のSDI(Silt Density Index)を計測するSDI測定ユニットと、前記膜ろ過水のSDIに基づき化学洗浄条件を変更する化学洗浄制御ユニットを備えた水処理装置。
(10)前記膜ろ過水のSDIについて、下記i~iiiのいずれかの基準範囲を予め定め、該基準範囲を逸脱するタイミングで前記分離膜の化学洗浄条件を変更する変更手段を有することを特徴とする(9)に記載の水処理装置。
i:膜ろ過水SDIの測定値
ii:膜ろ過水SDIの測定値の経時変化に対する移動平均値
iii:膜ろ過水SDIの測定値の経時変化による予測値
(11)前記基準範囲の上限値として、前記膜ろ過水のSDI3以上の値を設定することを特徴とする(10)に記載の水処理装置。
(12)前記基準範囲の下限値として、前記膜ろ過水のSDI2以下の値を設定することを特徴とする(10)または(11)に記載の水処理装置。
(13) 原水を処理して膜ろ過水を得る分離膜と、前記膜ろ過水を処理する半透膜と、前記分離膜を化学薬品を用いて洗浄する洗浄ユニットとを有する水処理装置の制御プログラムであって、前記分離膜の化学洗浄条件を変更するためのコンピュータに、膜ろ過水のSDIを取得するステップと、前記膜ろ過水SDIデータから洗浄条件を算出するステップとを実行させることを特徴とする水処理装置の制御プログラム。
(14)前記膜ろ過水のSDIについて、下記i~iiiのいずれかの基準範囲を予め定め、該基準範囲を逸脱するタイミングで前記分離膜の化学洗浄条件を算出するステップを実行させることを特徴とする(13)に記載の水処理装置の制御プログラム。
i:膜ろ過水SDIの測定値
ii:膜ろ過水SDIの測定値の経時変化に対する移動平均値
iii:膜ろ過水SDIの測定値の経時変化による予測値
(15)前記基準範囲として、前記膜ろ過水のSDI3以上の値を設定することを特徴とする(14)に記載の水処理装置の制御プログラム。
(16)前記基準範囲の下限値として、前記膜ろ過水のSDI2以下の値を設定することを特徴とする(14)または(15)に記載の水処理装置の制御プログラム。
(17) (13)~(16)のいずれかに記載の水処理装置の制御プログラムを記録したコンピュータで読み取り可能な記録媒体。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、原水を膜モジュールで膜ろ過する水処理装置において、膜ろ過水のSDI(Silt Density Index)が基準範囲を逸脱または悪化傾向にある場合に、良質な膜ろ過水を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態を示す水処理装置の概略図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施態様について図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
本発明に係る水処理装置は、例えば
図1に示すように、原水を貯留する原水貯留槽1と、原水貯留槽1から原水を供給する原水供給ポンプ2と、原水貯留槽1の原水を原水供給ポンプ2に供給する原水供給ライン3と、原水をろ過する分離膜モジュール4と、分離膜モジュールの膜ろ過水を貯留する膜ろ過水貯留槽5と、分離膜モジュール4の膜ろ過水を膜ろ過水貯留槽に供給する膜ろ過水ライン6、分離膜モジュール4の膜ろ過水を分離膜の2次側から1次側に供給して分離膜モジュール4を逆圧洗浄する逆洗ポンプ7、膜ろ過水貯留槽5から分離膜モジュール4に膜ろ過水を供給する逆洗ライン8と、分離膜モジュール4の膜ろ過水のSDI(Silt Density Index)を計測するSDI測定ユニット9と、分離膜モジュール4を洗浄する化学薬品を貯留する化学薬品貯留槽10、化学薬品貯留槽の化学薬品を分離膜モジュール4に供給する化学薬品供給ポンプ11、膜ろ過水を塩分などの溶質が濃縮された濃縮水と塩分などの溶質が除去された透過水に分離する半透膜ユニット12、膜ろ過水貯留槽5から半透膜ユニット12に膜ろ過水を供給する半透膜ユニット供給ポンプ13、膜ろ過水を昇圧する昇圧ポンプ14が設けられている。
次に、分離膜モジュールの運転について、説明する。
本発明の水処理装置において、原水を分離膜モジュール4でろ過して膜ろ過水を得るために、例えば、
図1に示すように、バルブV1、V2を開、バルブV3、V4、V5を閉として、原水供給ポンプ2を作動させ、原水を分離膜モジュール4に供給する。分離膜モジュール4の膜ろ過水は、膜ろ過水貯留槽5に貯められる(膜ろ過工程)。ろ過継続に伴って、水中の汚れ成分が分離膜の表面および細孔内部に蓄積し、分離膜のろ過抵抗、即ち、分離膜モジュール4の1次側(原水供給側)と2次側(膜ろ過水側)の圧力差(以後、ろ過差圧)が上昇する。このろ過差圧の上昇を抑制するために、定期的に洗浄を行い(洗浄工程)、ろ過と洗浄を繰り返しながら運転するのが一般的である。
洗浄工程は、分離膜モジュール4の2次側(膜ろ過水側)から1次側(原水供給側)に膜ろ過水を逆流させる逆洗や、分離膜モジュール4の1次側(原水供給側)の下部から加圧空気を供給し、分離膜を揺動させる空洗などの物理洗浄工程と、化学薬品を分離膜モジュール4内に供給し、分離膜の表面および細孔内部に蓄積した汚れ成分を分解除去する化学洗浄工程に大別される。
物理洗浄工程はろ過工程を一次停止し、逆洗工程、空洗工程、排水工程、給水工程の順に実施するのが一般的であるが、逆洗工程と空洗工程を同時に実施する、排水工程後に逆洗工程を実施する、もしくはいずれかの工程を省略あるいは複数回実施しても構わない。物理洗浄工程の頻度は、通常15分~120分に1回程度である。
逆洗工程は、膜ろ過水貯留槽5に貯められた膜ろ過水を、逆洗ポンプ7から、分離膜モジュール4の2次側(膜ろ過水側)から1次側(原水供給側)へと、ろ過とは反対方向に膜ろ過水を逆流させて分離膜を洗浄するものであり、1次側(原水供給側)から出てくる逆洗排水は逆洗排水ライン15から系外に排出され、所定時間逆洗後、逆洗ポンプ7を停止して逆洗工程は終了となる。
空洗工程は、空洗ブロア16より、空気を分離膜モジュール4の下部に加圧空気を供給し、分離膜を揺動するように洗浄する工程のことであり、所定時間空洗後、空洗ブロアを停止して空洗工程は終了となる。なお、空気発生源は、ブロアであってもコンプレッサーであっても構わない。
排水工程は、逆洗工程および空洗工程にて分離膜より取り除かれた汚れ成分を系外に排出するものであり、分離膜の下部に接続される排水ライン17から系外に排出され、所定排水時間後、排水工程は終了となる。
給水工程は、排水工程後に、分離膜の1次側(原水供給側)に原水を供給する工程であり、原水供給ポンプ2により、分離膜モジュール4の1次側(原水供給側)へと原水が供給され、1次側が満水状態となると過剰分は逆洗排水ライン15からオーバーフローされ、所定給水時間後、給水工程は終了となる。
【0010】
また、化学洗浄工程は、膜ろ過工程と物理洗浄工程を繰り返しながら運転を行っても、分離膜の表面および細孔内部に蓄積した汚れ成分によって、ろ過差圧が上昇するため、物理洗浄工程と併用することが好適であり、例えば、化学薬品供給ポンプ11を作動させて、化学薬品(例えば、次亜塩素酸ナトリウム)を添加した原水の膜ろ過や、逆洗工程時に、膜ろ過水に化学薬品を添加した洗浄水を用いた逆洗や、化学薬品を添加した原水や膜ろ過水を分離膜モジュール4の1次側(原水供給側)または2次側(膜ろ過水側)から供給し、分離膜を浸漬する薬液洗浄等が挙げられる。
SDI測定方法は、ASTM(Standard Test Method for silt density Index of Water D4289-07)によって規定されており、以下の計算式により算出される。
SDI
15=(1-T
0 /T
15)×100/15
T
0 :孔径0.45μm、直径47mmのメンブレンフィルターに圧力206kPaで
試料をろ過し、初期の試料500mlをろ過するのに要する時間(秒)
T
15 :更にろ過を15分継続し、その後試料500mlをろ過するのに要する時間(秒)
SDI
15の値は、0~6.66の値を示し、数値が大きいほど膜ろ過水の水質が悪いことを示す。一般に、海水や下水などの原水を前処理した後、半透膜へ供給する場合、SDI
15の値が4以下(以後、基準範囲とする。)となるように、前処理を最適化する。例えば、前処理が加圧浮上分離処理DAF(Dissolved Air Flotation)の場合、前処理水のSDIの値が基準範囲を逸脱または悪化傾向にある場合に、曝気負荷の増加や凝集剤添加量の増加など、前処理の負荷を高くして対応するのが一般的である。しかし、DAFは、一般的に、動力コストや薬品コストが高いことに加えて、洗浄排水中に凝集剤が多量に含まれるために環境負荷が高くなってしまう。
本発明者は上記の課題に鑑み鋭意検討した結果、前処理が膜ろ過の場合、分離膜モジュールを化学薬品で洗浄することで、膜ろ過水のSDI(Silt Density Index)を改善できることを見出し、膜ろ過水のSDIに基づき、分離膜の化学洗浄条件を変更することで、良好な膜ろ過水を得ることが可能な本発明に到達した。
本発明における分離膜の変更する化学洗浄条件として、化学洗浄頻度、化学薬品濃度、洗浄薬液接触時間、洗浄薬液温度の少なくともいずれかが好適である。
化学洗浄薬品としては、塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸、シュウ酸、アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム(SBS)、水酸化ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム等を含有する水溶液を使用できる。とりわけ、次亜塩素酸ナトリウムは、海水、河川水、下廃水処理水などの有機物を含んだ汚れ成分を除去するのに効果的であり有効である。次亜塩素酸ナトリウムの濃度は10mg/Lから10000mg/Lであることが好ましい。10mg/Lから10000mg/Lの範囲にすることにより、洗浄効果を得つつ、化学薬品コストを経済的な範囲に抑えることができ、また、分離膜や分離膜モジュールの部材劣化を促進させることもない。さらに、100mg/Lから5000mg/Lであることがより好ましく、好適な濃度範囲内で高濃度であればあるほど、SDI改善効果が高く、さらに好ましい。洗浄薬液温度は化学反応の観点から、温度を高くした方が洗浄効果は高くなり、40℃以下にすることで分離膜や分離膜モジュールの部材の劣化を促進させることもない。また、化学薬品を添加した後は、一定時間の化学薬品接触時間を設けたほうが、洗浄効果は高くなる。膜と薬液を接触させる時間は、毎回逆洗時に接触させる場合、10秒から60秒、1日1回逆洗時に接触させる場合、10分から60分、ろ過差圧上限値逸脱時に接触させる場合、1時間から5時間が好ましい。また、膜と薬液を接触させる時間を各場合の接触時間の範囲にすることで洗浄効果を得つつ、運転効率を経済的な範囲に抑えることができる。化学洗浄頻度は、多ければ多いほどSDIを良好に維持できるという観点では良いが、膜ろ過水中に化学薬品が混入するリスクが高まるため、物理洗浄工程を実施するタイミングに合わせて、化学洗浄することが好ましい。膜ろ過水中に化学薬品が混入した場合、半透膜ユニット12における半透膜に化学薬品が接触し、半透膜が劣化してしまうリスクがある。毎回の逆圧洗浄時に適用しても構わないが、必ずしも全逆洗工程で実施する必要はない。薬品コスト削減のためには、1日に数回~1週間に1回程度の頻度で実施することがより好ましい。
化学洗浄頻度、化学薬品濃度の組み合わせは、特に限定されるものではないが、例えば、化学洗浄頻度を、毎回の逆圧洗浄時に化学洗浄するとした場合は、化学薬品濃度10mg/Lで、化学洗浄頻度を、1日に1回、逆圧洗浄時に化学洗浄をするとした場合は、化学薬品濃度300mg/Lで、化学洗浄頻度を、ろ過差圧上限値を逸脱した時に化学洗浄をするとした場合は、化学薬品濃度3000mg/Lである。
前述した範囲内において、分離膜モジュール4の化学洗浄条件の変更を実行するか否かは、分離膜モジュール4の膜ろ過水SDIが基準範囲を逸脱したタイミングで決定する。一般的に、海水や下水などの原水を前処理した後、半透膜へ供給する場合、膜ろ過水SDI
15の基準範囲が4以下であることが好ましく、半透膜をより安定して運転するためにも、膜ろ過水SDI
15の基準範囲が3以下であることがより好ましい。また、測定誤差や異常値に対して過敏に反応し過ぎると、分離膜モジュール4の運転効率低下、薬品コスト増加に繋がるため、膜ろ過水SDIの移動平均値が基準範囲を逸脱したタイミングで分離膜モジュール4の化学洗浄条件の変更を実行するか否か決定しても構わない。移動平均値とは、直近N(2以上の整数)点の膜ろ過水SDI
15の値の相加平均をいう。また、膜ろ過水SDIの経時変化から基準範囲を逸脱するタイミングを予測し、分離膜モジュール4の化学洗浄条件を決定することは、水処理プラントの維持管理の観点から好適である。経時変化は、時間と膜ろ過水SDI
15の値の相関関係から得られる近似線を用いて算出される。
前述の分離膜モジュール4の化学洗浄変更方法は、例えば、
図2に示すような制御方法であり、入力条件31では、SDI測定ユニット9で測定した膜ろ過水SDI測定値と膜ろ過水SDI基準範囲(上限値と下限値)を入力し、演算ステップ32では、膜ろ過水SDI測定値を用いて、測定値と基準上下限値との差分、移動平均値等を計算する。化学洗浄変更実施判定ステップ33では、演算ステップ32で出力された膜ろ過水SDI計算値と基準範囲を比較し、膜ろ過水SDI計算値と基準範囲が逸脱している場合、化学洗浄変更の実施と判定する。化学洗浄条件決定ステップ34では、化学洗浄条件である化学洗浄頻度f[回/日]、洗浄薬液接触時間t[分]、化学薬品濃度C[mg/L]、洗浄薬液温度T[℃]を、上限値を超過した場合は、膜ろ過水SDI値を低減させるように以下の条件(1)または(2)を満たすように決定する。また、下限値を下回った場合は、分離膜モジュール4の運転効率低下、薬品コスト増加を抑えるように以下の条件(3)または(4)を満たすように決定する。
範囲上限値を超過した時:
条件(1) f
A < f
B
条件(2) f
A × t
A × C
A × T
A ≦ f
B × t
B × C
B × T
B
範囲下限値を下回った時:
条件(3) f
A ≧ f
B
条件(4) f
A × t
A × C
A × T
A ≧ f
B × t
B × C
B × T
B
(ここで、Aは条件変更前を、Bは条件変更後を表す。)
分離膜の化学洗浄条件決定方法として、特に限定されるものではないが、例えば、過去の化学洗浄条件と膜ろ過水SDI測定値またはろ過差圧測定値の経時データから化学洗浄条件の各要因に対して関係式を作成し、化学洗浄条件を決定するとなお好適である。変更ステップ35においては、化学洗浄条件決定ステップ34で決定した化学洗浄を実施させるように化学洗浄制御ユニットに制御信号を送信する。
分離膜の化学洗浄条件変更内容として、前述した範囲内において、特に限定されるものではないが、例えば、化学洗浄頻度を、1日に1回、逆圧洗浄時に化学洗浄とし、化学薬品濃度を次亜塩素酸ナトリウム300mg/Lの条件を、膜ろ過水SDI計算値(例えば測定値)が膜ろ過水SDI基準範囲の上限値(例えば3)を逸脱したタイミングで、化学洗浄頻度を、毎回の逆圧洗浄時に化学洗浄とし、化学薬品濃度を次亜塩素酸ナトリウム10mg/Lと切り替えるように変更することや、化学洗浄頻度を、毎回の逆圧洗浄時に化学洗浄とし、化学薬品濃度を次亜塩素酸ナトリウム10mg/Lの条件を膜ろ過水SDI計算値(例えば測定値)が膜ろ過水SDI基準範囲の下限値(例えば1)を逸脱したタイミングで、化学洗浄頻度を、1日に1回、逆圧洗浄時に化学洗浄とし、化学薬品濃度を次亜塩素酸ナトリウム300mg/Lと切り替えるように変更することなどが挙げられる。
より好ましい形態として、特に限定されるものではないが、例えば、膜ろ過水SDI基準範囲に加えて、ろ過差圧計算値(例えば測定値)が基準範囲(例えば上限値150kPa)を設定することで、前述の分離膜モジュール4の膜ろ過水SDIとろ過差圧を基準範囲内に維持しながら運転することなどが挙げられる。
分離膜モジュール4の膜ろ過水SDIを測定する頻度は、高頻度であるに越した事はないが、1回/日以上が好ましく、3回/日以上がより好ましい。SDI測定は、手動測定でも自動機での測定でも構わないが、分離膜モジュール4の膜ろ過水SDIが基準範囲を逸脱または悪化傾向にある場合に、迅速に適切な化学洗浄条件を決定できるといった観点では自動機での測定が好適である。
本発明の水処理装置で使用される分離膜は、多孔質であれば特に限定されるものではなく、精密ろ過分離膜(MF膜)や限外ろ過分離膜(UF膜)を用いるのが好適である。分離膜の形状としては、中空糸膜、平膜、管状膜、モノリス膜等があるが、いずれでも構わない。
また、中空糸膜素材については特に制限されず、あらゆる素材の中空糸膜について適用することができるが、膜強度や耐薬品性の観点から中空糸膜として採用されることが多い、主成分がフッ素系樹脂である中空糸膜、中でも、疎水性のポリフッ化ビニリデン系樹脂からなる中空糸膜の場合に本発明の効果がより発揮される。ポリフッ化ビニリデン系樹脂とは、フッ化ビニリデンホモポリマーおよび/またはフッ化ビニリデン共重合体を含有する樹脂のことである。複数の種類のフッ化ビニリデン共重合体を含有しても構わない。フッ化ビニリデン共重合体は、フッ化ビニリデン残基構造を有するポリマーであり、典型的にはフッ化ビニリデンモノマーとそれ以外のフッ素系モノマー等の共重合体である。共重合体としては、例えば、フッ化ビニル、四フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、三フッ化塩化エチレンから選ばれた1種類以上とフッ化ビニリデンとの共重合体が挙げられる。また、耐汚れ性を高める目的で、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の化学的耐久性および物理的強度を損なわない範囲において、セルロースエステル、脂肪酸ビニルエステル、ビニルピロリドン、エチレンオキサイド、アクリロニトリル、ビニルアルコールなどから選ばれる少なくとも1種を有する親水性高分子を含有しても構わない。ここでの主成分とは、50重量%以上、好ましくは60重量%以上含有することをいう。このような膜のうち、その平均孔径が0.001~10μmの膜が好ましく、平均孔径0.05~1μmの膜がさらに好ましい。平均孔径が0.001μm未満では、目詰まりが早くなり、10μmを超えると汚濁物質を除去しにくくなる。また、ポリフッ化ビニリデン系樹脂からなる中空糸膜は、前述の分離膜モジュール4の化学洗浄変更方法を実施することで、ファウリング物質の吸着能力を効果的に発現させることができるため、膜ろ過水SDI値を低減させることが可能になる。
分離膜モジュール4は、中空糸膜、平膜、管状膜、モノリス膜等を用いたモジュールでも構わない。また、分離膜モジュール4におけるろ過方式は、全量ろ過方式、クロスフローろ過方式のどちらでも良いが、エネルギー消費が少ないという観点から全量ろ過が好ましい。ここで、分離膜モジュールにおけるろ過流量の制御方法としては、定流量ろ過であっても定圧ろ過であっても差し支えはないが、膜ろ過水の生産水量の制御のし易さの点から定流量ろ過である方が好ましい。また、膜の外側から原水を供給し、内側から透過水を得る外圧式であっても、膜の内側から原水を供給し、外側から透過水を得る内圧式であっても差し支えないが、前処理の簡便さの観点から外圧式である方が好ましい。
一方、半透膜ユニット12における半透膜とは、膜ろ過水中の一部の成分、例えば、溶媒を透過させ他の成分を透過させない半透性を有する膜であり、ナノろ過分離膜(NF膜)や逆浸透膜(RO膜)を包含する。その素材には酢酸セルロース系ポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ビニルポリマーなどの高分子素材がよく利用されている。また、その膜構造には、膜の少なくとも片面に緻密層を持ち、緻密層から膜内部あるいはもう片方の面に向けて徐々に大きな孔径の微細孔を有する非対称膜や、非対称膜の緻密層の上に別の素材で形成された非常に薄い分離機能層を有する複合膜などを適宜使用できる。膜形態には中空糸膜、平膜がある。本発明は、これら膜素材、膜構造や膜形態によらず実施することができいずれも効果があるが、代表的な膜としては、例えば、酢酸セルロース系やポリアミド系の非対称膜およびポリアミド系、ポリ尿素系の分離機能層を有する複合膜などがあり、造水量、耐久性、塩排除率の観点から、酢酸セルロース系の非対称膜、ポリアミド系の複合膜を用いることが好ましい。
半透膜ユニット12の運転圧力は通常0.1MPa~15MPaであることが好ましく、供給水の種類、運転方法などで適宜使い分けられる。かん水や超純水などの浸透圧の低い水を供給水とする場合には比較的低圧で、海水淡水化や廃水処理、有用物の回収などの場合には比較的高圧で使用される。
NF膜またはRO膜を備えた半透膜ユニット12としては、特に制約はないが、取り扱いを容易にするため、中空糸膜状や平膜状の半透膜を筐体に納めて流体分離素子(エレメント)としたものを耐圧容器に充填したものを用いることが好ましい。流体分離素子は、平膜で形成する場合、例えば、多数の孔を穿設した筒状の中心パイプの周りに、半透膜を流路材(ネット)とともに円筒状に巻回したものが一般的であり、市販品としては、東レ(株)製逆浸透膜エレメントTM700シリーズやTM800シリーズを挙げることができる。これら流体分離素子は1本で半透膜ユニットを構成してもよいが、複数本の流体分離素子を直列あるいは並列に接続して半透膜ユニットを構成することも好ましい。
また、本発明の形態は、
図3に示す通り、変更方法を、コンピュータで読み取れるプログラムとして、当該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に保存し、運転管理装置41として水処理装置20の運転に活用しても良い。その場合プログラム44は、コンピュータ42のハードディスクなどの記録媒体43や、水処理装置に通常設置されているPLC(Programmable Logic Controller)機械が行う動作に対して事前に順序を付けて記憶させ機械を自動的に制御するシステムやDCS(distributed control system)システムを構成する機器ごとに制御装置を設けるシステムでそれぞれの制御装置はネットワークで接続され、お互いに通信し監視する分散制御システムなどの制御管理システムの記録媒体に記録可能であり、制御管理システムから遠方監視装置を用いて、運転データをインターネット経由で取り出し、任意の場所に設置されるオンプレミスサーバーもしくは、クラウドサーバーの記録媒体に保存しても差し支えない。
【実施例0011】
以下に具体例実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は、これら実施例により何ら限定されるものではない。
<実施例1>
図1に示す水処理装置を用意し、造水を実施した。分離膜モジュール4には東レ(株)のポリフッ化ビニリデン製中空糸UF膜を備えた加圧型中空糸膜モジュール(HFU-2020)1本を用いた。また、半透膜ユニット12には、東レ(株)製逆浸透膜エレメント(TM820-440)を4本用いた。
【0012】
分離膜モジュール4における膜ろ過工程では、バルブV1とバルブV2を開き、原水供給ポンプ2を稼働させ、海水をろ過流束3m/dで全量ろ過した。また、半透膜ユニット12における分離工程では、透過水流量60m3/d、濃縮水流量120m3/d、回収率33%で膜分離した。
【0013】
分離膜モジュール4で30分ろ過した後、バルブV1とバルブV2を閉じ、原水供給ポンプ4を停止すると同時に、バルブV3とV5とV6を開き、逆洗ポンプ7を稼働させ、膜ろ過水を用いた流束3.3m/dの逆圧洗浄と分離膜モジュールの下方から100L/minで空気を供給する空気洗浄を同時に1分間実施した。また、1日に1回、逆圧洗浄時に、化学薬品貯留タンク10a内の次亜塩素酸ナトリウムを化学薬品供給ポンプ11a用いて逆洗水に供給し、分離膜モジュール4内に塩素濃度が300mg/Lとなるように適宜調整した。次に、逆洗ポンプ7、化学薬品供給ポンプ11aを停止し、分離膜モジュール4内が300mg/Lの状態で20分間保持した。その後、バルブV4を開き、分離膜モジュール4内の化学薬液を系外に排出し、バルブ4を閉じる。バルブV1を開き、原水供給ポンプ2を稼働させ、原水を分離モジュール4内に供給後、バルブV2を開き、バルブV3を閉じ、膜ろ過工程に戻り、先述した工程を繰り返した。
【0014】
本発明では、
図2に示すような化学洗浄変更ステップに従い、入力条件31では、定期的にSDI測定ユニットで測定した膜ろ過水SDI測定値と膜ろ過水SDI基準範囲(実施例1では上限値3、下限値1に設定)を入力値とした。演算ステップ32では、膜ろ過水SDI測定値が膜ろ過水SDI基準範囲内か否かを判断する。次に、化学洗浄実施判定ステップ33では、測定値が基準範囲内の場合には運転条件を現状のまま継続する。一方、測定値が基準範囲を逸脱している場合には、化学洗浄を変更すべきと判定し、化学洗浄条件決定ステップ34で測定値が基準範囲の上限値より大きい場合には、膜ろ過水SDI値を低減させるように化学洗浄条件(化学洗浄頻度、化学薬品濃度、化学薬品接触時間、洗浄薬液温度)を毎回の逆圧洗浄時、次亜塩素酸ナトリウム濃度10mg/L、化学薬品接触時間60秒、洗浄薬液温度25℃で決定し、測定値が基準範囲の下限値より小さい場合には、1日に1回逆圧洗浄時、次亜塩素酸ナトリウム濃度300mg/L、化学薬品接触時間20分、洗浄薬液温度25℃で決定する。変更ステップ35において化学洗浄条件決定ステップ34で決定した化学洗浄を変更させるように制御信号を送信した。
【0015】
その結果、1ヶ月間、分離膜モジュール4の膜ろ過水SDI15<3で運転でき、分離膜モジュール4の膜ろ過水SDI15が3を逸脱したタイミング、つまり、ろ過差圧が100kPa(ろ過差圧の上限値:150kPa)で、化学洗浄を変更し、SDI15が3以下の膜ろ過水を、半透膜ユニット12に継続して供給することができた。
<比較例1>
分離膜モジュール4の膜ろ過水SDI15が上限値3を超過したタイミングで化学洗浄を実施せずに、ろ過差圧の上限値(=150kPa)まで運転継続すること以外は、実施例1と全く同じとした。
【0016】
その結果、分離膜モジュール4のろ過差圧が100~150kPaの期間では、SDI15が3以下の膜ろ過水を、半透膜ユニット12に供給することができず、半透膜ユニット12の圧損上昇が緩やかに発生した。
<比較例2>
分離膜モジュール4の膜ろ過水SDI15が上限値3を超過したタイミングで化学洗浄実施せずに、凝集剤として塩化第二鉄を1.5mg-Fe/L添加すること以外は実施例1と全く同じとした。
その結果、膜ろ過水のSDI15が2.7まで低下したが、分離膜モジュール4の洗浄排水中に凝集剤で添加したFeが多量に含まれるために環境負荷が高くなってしまう問題が発生した。
<比較例3>
膜ろ過水のSDIに基づき、分離膜モジュール4の化学洗浄条件を変更せず、分離膜モジュール4の毎回の逆圧洗浄時、次亜塩素酸ナトリウム濃度10mg/Lを適用すること以外は実施例1と全く同じとした。
その結果、膜ろ過水のSDI15<3.0を維持できたが、酸化剤中和のために亜硫酸水素ナトリウムの添加頻度が高くなったことによって、亜硫酸水素ナトリウムを餌としてバイオファウリングが増殖し、半透膜ユニット12の圧損上昇が発生した。
<実施例2>
分離膜モジュール4の膜ろ過水SDI15が上限値3を超過したタイミングで、次亜塩素酸ナトリウム濃度3000mg/L、化学薬品接触時間1時間、洗浄薬液温度25℃として化学洗浄を実施した以外は実施例1と全く同じとした。
その結果、分離膜モジュール4の膜ろ過水SDI15が3を逸脱したタイミングで化学洗浄を実施した結果、膜ろ過水のSDI15が2.1まで低下し、その後、1ヶ月間、分離膜モジュール4の膜ろ過水SDI15<3で運転できた。
<実施例3>
分離膜モジュール4の膜ろ過水SDI15が上限値3を超過せず、ろ過差圧が上限値(150kPa)を超過したタイミングで次亜塩素酸ナトリウム濃度3000mg/L、化学薬品接触時間1時間、洗浄薬液温度25℃として化学洗浄を実施した以外は実施例1と全く同じとした。
その結果、分離膜モジュール4の膜ろ過水SDI15が3を逸脱せず、その後、1ヶ月間、分離膜モジュール4の膜ろ過水SDI15<3で運転できた。