(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097306
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】多成分FeCoSiM軟磁性合金及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C22C 38/00 20060101AFI20230630BHJP
C21D 6/00 20060101ALI20230630BHJP
C22B 9/16 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
C22C38/00 303S
C21D6/00 C
C22B9/16
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037301
(22)【出願日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】202111618066.3
(32)【優先日】2021-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】505072650
【氏名又は名称】浙江大学
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 海龍
(74)【代理人】
【識別番号】100132805
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 貴之
(72)【発明者】
【氏名】厳 密
(72)【発明者】
【氏名】呉 ▲ちん▼
(72)【発明者】
【氏名】陳 起明
(72)【発明者】
【氏名】金 佳瑩
(72)【発明者】
【氏名】姜 銀珠
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA07
4K001AA08
4K001AA10
4K001AA19
4K001AA23
4K001AA28
4K001BA23
4K001FA00
4K001FA10
4K001GA16
4K001GA17
(57)【要約】
【課題】本発明は多成分FeCoSiM軟磁性合金及びその製造方法に関するものである。
【解決手段】本発明の多成分FeCoSiM軟磁性合金において、Mは、V、Cr、Niのうち一種または複数の元素である。多成分FeCoSiM軟磁性合金中の各合金元素の百分率の総合は100%であり、合金の各成分の百分率において、Feは68~78at%であり、Coは4~12at%であり、Siは14~18at%であり、Vは0~4at%であり、Crは0~4at%であり、Niは0~4at%である。前記多成分FeCoSiM軟磁性合金の製造方法は、合金の組成成分の比例により原料を秤量して取った後、真空環境または保護ガスにおいて溶錬とアニーリング処理をするステップを含む。本発明は、多成分FeCoSiM軟磁性合金の各成分の含量を適当にすることにより、磁気結晶異方性常数を低減し、磁歪係数をゼロに接近させ、高い飽和磁化強度と小さい抗磁力を獲得することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多成分FeCoSiM軟磁性合金であって、前記軟磁性合金は、Fe、Co、Si及び遷移金属元素Mで組成され、Mは、V、Cr、Niのうち一種または複数の元素であり、合金の各成分の百分率において、Feは68~78at%であり、Coは4~12at%であり、Siは14~18at%であり、Vは0~4at%であり、Crは0~4at%であり、Niは0~4at%であることを特徴とする多成分FeCoSiM軟磁性合金。
【請求項2】
請求項1に記載の多成分FeCoSiM軟磁性合金を製造する方法であって、原料を用意するステップと、溶錬をするステップと、アニーリング処理をするステップとを含み、
原料を用意するステップにおいて、原料を洗浄した後合金の組成成分の比例により原料を秤量し、
溶錬をするステップにおいて、真空環境または保護ガスにおいてアーク溶解または誘導加熱溶解をすることにより合金鋳塊を獲得し、
アニーリング処理をするステップにおいて、真空環境または保護ガスにおいて合金鋳塊に対してアニーリング処理をすることを特徴とする多成分FeCoSiM軟磁性合金の製造方法。
【請求項3】
前記原料を用意するステップにおいて採用する原料は純度が99.9%以上である純金属であるか或いは非金属材料であることを特徴とする請求項2に記載の多成分FeCoSiM軟磁性合金の製造方法。
【請求項4】
前記原料を洗浄するとき、前記原料を無水酒精またはアセトンに送入した後、超音波洗浄方法により原料の表面のグリージーダートと有機物を除去することを特徴とする請求項2に記載の多成分FeCoSiM軟磁性合金の製造方法。
【請求項5】
前記溶錬をするステップにおいて、気圧が5×10-3Paより小さい真空環境を形成し、前記保護ガスとして純度が99.9vol%以上であるアルゴンまたはニトロゲンを採用することを特徴とする請求項2に記載の多成分FeCoSiM軟磁性合金の製造方法。
【請求項6】
前記溶錬をする過程において電磁撹拌を採用し、合金鋳塊に対して4~6回の溶錬をすることを特徴とする請求項2に記載の多成分FeCoSiM軟磁性合金の製造方法。
【請求項7】
前記アニーリングの温度は700~900℃であり、保温の時間は1~3時間であり、保温が終わると炉を冷却させることを特徴とする請求項2に記載の多成分FeCoSiM軟磁性合金の製造方法。
【請求項8】
前記アニーリング処理をするステップにおいて、気圧が5×10-3Paより小さい真空環境を形成し、前記保護ガスとして純度が99.9vol%以上であるアルゴンまたはアルゴンと5~10vol%の水素の混合気体を採用することを特徴とする請求項2に記載の多成分FeCoSiM軟磁性合金の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟磁性材料の技術に関し、具体的に、多成分FeCoSiM軟磁性合金及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
FeSi軟磁性合金は、使用量が最も多く、いろいろ分野に幅広く使用されている軟磁性材料である。例えば、電力の輸送、電子部品及び国防産業等の分野に幅広く使用されている。飽和磁束密度(Magnetic Flux Density)と抗磁力(coercive force)は、軟磁性合金の性能を決定する重要なパラメーターであり、かつ材料の変換効率とパワー損失(power loss)を決定することができる。FeSi軟磁性合金において、Si元素を添加することにより磁歪係数と磁気結晶異方性常数を有効に低減し、合金の抵抗を有効に増加させることができる。Siが非磁性元素であることにより合金の飽和磁化強度を大幅に低減することができる。他の元素を添加することによりFeSi合金の磁性性能を更に調節することもできる。FeSiAl合金は磁歪係数と磁気結晶異方性常数がゼロに接近しており、現在の段階において最も成功する三次元システムである。しかしながら、大量の非磁性元素SiとAIを添加することによりFeSiAl合金の導磁率(magnetic permeability)と抗磁力を向上させることができるが、飽和磁化強度を低減してしまうおそれがある。
【0003】
FeSi軟磁性合金の総合的な軟磁性性能を向上させるため、本発明は下記2つの方法により合金の成分を決定する。(1)磁性元素例えばCo等を添加することにより磁気結合(Magnetic coupling)と合金の飽和磁化強度を向上させる。(2)遷移金属元素または非金属元素を添加することにより飽和磁歪係数λsと磁気結晶異方性常数K1を同時にゼロに接近させ、かつより小さい抗磁力を獲得する。本発明はFeSi合金中のいろいろな磁性と遷移元素(transition element)の組成比例を適合にすることにより、合金の飽和磁化強度、磁歪及び磁気結晶異方性を調節し、かつ多成分FeCoSiM軟磁性合金の製造方法を改良することにより合金の総合的な軟磁性性能を向上させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、多成分FeCoSiM軟磁性合金の組成比例及びその製造方法を提供することにある。本発明の合金は、高い飽和磁化強度と低い抗磁力を具備し、かつ総合的な軟磁性性能を向上させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はつぎの技術的事項により実施される。
多成分FeCoSiM軟磁性合金であって、前記多成分FeCoSiM軟磁性合金は、Fe、Co、Si及び遷移金属元素Mで組成され、Mは、V、Cr、Niのうち一種または複数の元素であり、合金の各成分の百分率において、Feは68~78at%であり、Coは4~12at%であり、Siは14~18at%であり、Vは0~4at%であり、Crは0~4at%であり、Niは0~4at%である。
【0006】
前記多成分FeCoSiM軟磁性合金の製造方法であって、原料を用意するステップと、溶錬をするステップと、アニーリング処理をするステップとを含み、
原料を用意するステップにおいて、原料を洗浄した後合金の組成成分の比例により原料を秤量し、
溶錬をするステップにおいて、真空環境または保護ガスにおいてアーク溶解または誘導加熱溶解をすることにより合金鋳塊(ingot making)を獲得し、
アニーリング処理をするステップにおいて、真空環境または保護ガスにおいて合金鋳塊に対してアニーリング処理をする。
【0007】
前記多成分FeCoSiM軟磁性合金の製造方法において、前記原料を用意するステップにおいて採用する原料は純度が99.9%以上である純金属であるか或いは非金属材料であり、前記原料を洗浄するとき、前記原料を無水酒精またはアセトン(acetone)に送入した後、超音波洗浄方法により原料の表面のグリージーダート(greasy dirt)と有機物を除去する。
【0008】
前記多成分FeCoSiM軟磁性合金の製造方法において、前記溶錬をするステップにおいて、気圧が5×10-3Paより小さい真空環境を形成し、前記保護ガスとして純度が99.9vol%以上であるアルゴンまたはニトロゲンを採用し、かつ前記溶錬をする過程において電磁撹拌を採用し、合金鋳塊に対して4~6回の溶錬をすることによりセグリゲーション(segregation)を減少させる。
【0009】
前記多成分FeCoSiM軟磁性合金の製造方法において、前記アニーリングの温度は700~900℃であり、保温の時間は1~3時間であり、保温が終わると炉を冷却させる。前記アニーリング処理をするステップにおいて、気圧が5×10-3Paより小さい真空環境を形成し、前記保護ガスとして純度が99.9vol%以上であるアルゴンまたはアルゴンと5~10vol%の水素の混合気体を採用する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の多成分FeCoSiM軟磁性合金中のSiの含量は15~18at%である。従来のFe-6.5wt%Si(12.5at%Si)合金と比較してみると、本発明は、磁気結晶異方性常数をより低減し、磁歪係数を負数にし、磁性元素を添加することにより磁歪係数と磁気結晶異方性常数を容易に調節することができる。また、Siが添加されることにより、合金の抵抗を向上させ、高周波を採用することによる渦電流損(eddy current loss)を低減することができる。
【0011】
本発明の多成分FeCoSiM軟磁性合金中のCoの含量は4~12at%である。Coが添加されることにより、合金の飽和磁化強度を向上させ、Siの磁気希釈(Magnetic dilution)を低減し、かつ合金の磁歪係数と磁気結晶異方性常数を一定の範囲に調節することができる。また、V、Cr、Ni元素を添加され、合金中のSi、Coと複数の遷移元素が協力することにより、合金の磁歪係数と磁気結晶異方性常数をゼロに接近させ、かつ合金の飽和磁化強度を確保することができる。
【0012】
以上のとおり、本発明の多成分FeCoSiM軟磁性合金は、高い飽和磁化強度と小さい抗磁力を具備し、かつ優れている軟磁性性能を有している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施例1
多成分(polycomponent)FeCoSiM軟磁性合金(soft-magnetic alloy)の各成分の百分率において、Feは76at%であり、Siは15%であり、Coは6at%であり、Vは3at%である。その軟磁性合金の製造方法はつぎのステップを含む。
【0014】
(1)原料を用意するステップにおいて、純度が99.95%であるFe粒子、純度が99.95%であるCo粒子、純度が99.95%であるV粒子、純度が99.999%である多結晶シリコン(Pure Polysilicon)塊状原料を用意し、それらを無水酒精(absolute alcohol)に送入して5分間の超音波洗浄を実施した後、それらを乾燥させる。つぎに、組成成分の比例によりそれらの原料を秤量することによりそれらの総重量を90gにする。
【0015】
(2)合金の溶錬(smelting)を実施するステップにおいて、真空型アーク溶解炉(Electric arc melting furnace)内の気圧を5×10-3Paより小さい真空にし、保護ガスとして0.05MPaの高純度アルゴン(Argon)をアーク溶解炉内に注入した後、溶錬を一回に3分ずつ実施し、かつその溶錬を6回実施することにより成分が均等に混ぜられる軟磁性合金を獲得する。
【0016】
(3)アニーリング(annealing)処理において、溶錬後の合金を管状炉(Tubular furnace)内に送入し、保護ガスとして高純度アルゴンを管状炉内に注入し、900℃の温度下においてアニーリング処理を1時間実施した後、管状炉を冷却させる。
【0017】
製造した合金を静的ヒステリシスループ(static hysteresis loop)で測定した結果、製造された合金の飽和磁化強度(saturation magnetization)が171.0emu/gに達し、抗磁力(coercive force)が0.320eに達することがわかる。
【0018】
実施例2
多成分FeCoSiM軟磁性合金の各成分の百分率において、Feは68at%であり、Siは18%であり、Coは10at%であり、Crは4at%である。その軟磁性合金の製造方法はつぎのステップを含む。
【0019】
(1)原料を用意するステップにおいて、純度が99.95%であるFe粒子、純度が99.95%であるCo粒子、純度が99.95%であるCr粒子、純度が99.999%である多結晶シリコン塊状原料を用意し、それらを無水酒精に送入して5分間の超音波洗浄を実施した後、それらを乾燥させる。つぎに、組成成分の比例によりそれらの原料を秤量することによりそれらの総重量を40gにする。
【0020】
(2)合金の溶錬を実施するステップにおいて、真空誘導溶錬炉(induction melting furnace)の気圧を5×10-3Paより小さい真空にした後、溶錬を一回に5分ずつ実施し、かつその溶錬を4回実施することにより成分が均等に混ぜられる軟磁性合金を獲得する。
【0021】
(3)アニーリング処理において、溶錬後の合金を真空管状炉内に送入し、真空管状炉内の気圧を5×10-3Paより小さい真空にし、750℃の温度下においてアニーリング処理を3時間実施した後、管状炉を冷却させる。
【0022】
製造した合金を静的ヒステリシスループで測定した結果、製造された合金の飽和磁化強度が163.5emu/gに達し、抗磁力が0.250eに達することがわかる。
【0023】
実施例3
多成分FeCoSiM軟磁性合金の各成分の百分率において、Feは78at%であり、Siは15%であり、Coは4at%であり、Niは3at%である。その軟磁性合金の製造方法はつぎのステップを含む。
【0024】
(1)原料を用意するステップにおいて、純度が99.95%であるFe粒子、純度が99.95%であるCo粒子、純度が99.9%であるNi粒子、純度が99.999%である多結晶シリコン塊状原料を用意し、それらを無水酒精に送入して5分間の超音波洗浄を実施した後、それらを乾燥させる。つぎに、組成成分の比例によりそれらの原料を秤量することによりそれらの総重量を40gにする。
【0025】
(2)合金の溶錬を実施するステップにおいて、真空型アーク溶解炉内の気圧を5×10-3Paより小さい真空にし、保護ガスとして0.05MPaの高純度ニトロゲン(nitrogen)をアーク溶解炉内に注入した後、溶錬の過程において電磁撹拌(electromagnetic stirring)を採用する。溶錬を一回に4分ずつ実施し、かつその溶錬を6回実施することにより成分が均等に混ぜられる軟磁性合金を獲得する。
【0026】
(3)アニーリング処理において、溶錬後の合金を真空管状炉内に送入し、真空管状炉内の気圧を5×10-3Paより小さい真空にし、900℃の温度下においてアニーリング処理を1時間実施した後、管状炉を冷却させる。
【0027】
製造した合金を静的ヒステリシスループで測定した結果、製造された合金の飽和磁化強度が175.0emu/gに達し、抗磁力が0.300eに達することがわかる。
【0028】
実施例4
多成分FeCoSiM軟磁性合金の各成分の百分率において、Feは74at%であり、Siは17%であり、Coは6at%であり、Niは2at%であり、Crは1at%である。その軟磁性合金の製造方法はつぎのステップを含む。
【0029】
(1)原料を用意するステップにおいて、純度が99.95%であるFe粒子、純度が99.95%であるCo粒子、純度が99.9%であるNi粒子、純度が99.95%であるCr粒子、純度が99.999%である多結晶シリコン塊状原料を用意し、それらを無水酒精に送入して10分間の超音波洗浄を実施した後、それらを乾燥させる。つぎに、組成成分の比例によりそれらの原料を秤量することによりそれらの総重量を50gにする。
【0030】
(2)合金の溶錬を実施するステップにおいて、真空型アーク溶解炉内の気圧を5×10-3Paより小さい真空にし、保護ガスとして0.06MPaの高純度アルゴンをアーク溶解炉内に注入した後、溶錬の過程において電磁撹拌を採用する。溶錬を一回に5分ずつ実施し、かつその溶錬を5回実施することにより成分が均等に混ぜられる軟磁性合金を獲得する。
【0031】
(3)アニーリング処理において、溶錬後の合金を真空管状炉内に送入し、保護ガスとして高純度アルゴンを管状炉内に注入し、800℃の温度下においてアニーリング処理を1.5時間実施した後、管状炉を冷却させる。
【0032】
製造した合金を静的ヒステリシスループで測定した結果、製造された合金の飽和磁化強度が166.5emu/gに達し、抗磁力が0.350eに達することがわかる。
【0033】
実施例5
多成分FeCoSiM軟磁性合金の各成分の百分率において、Feは76at%であり、Siは18%であり、Coは4at%であり、Niは4at%であり、Vは2at%である。その軟磁性合金の製造方法はつぎのステップを含む。
【0034】
(1)原料を用意するステップにおいて、純度が99.95%であるFe粒子、純度が99.95%であるCo粒子、純度が99.9%であるNi粒子、純度が99.95%であるV粒子、純度が99.999%である多結晶シリコン塊状原料を用意し、それらを無水酒精に送入して5分間の超音波洗浄を実施した後、それらを乾燥させる。つぎに、組成成分の比例によりそれらの原料を秤量することによりそれらの総重量を50gにする。
【0035】
(2)合金の溶錬を実施するステップにおいて、真空型アーク溶解炉内の気圧を5×10-3Paより小さい真空にし、保護ガスとして0.05MPaの高純度アルゴンをアーク溶解炉内に注入した後、溶錬の過程において電磁撹拌を採用する。溶錬を一回に5分ずつ実施し、かつその溶錬を4回実施することにより成分が均等に混ぜられる軟磁性合金を獲得する。
【0036】
(3)アニーリング処理において、溶錬後の合金を真空管状炉内に送入し、保護ガスとしてアルゴンと10vol%の水素の混合気体を管状炉内に注入し、750℃の温度下においてアニーリング処理を3時間実施した後、管状炉を冷却させる。
【0037】
製造した合金を静的ヒステリシスループで測定した結果、製造された合金の飽和磁化強度が168.0emu/gに達し、抗磁力が0.280eに達することがわかる。
【0038】
実施例6
多成分FeCoSiM軟磁性合金の各成分の百分率において、Feは73at%であり、Siは16%であり、Coは6at%であり、Crは3at%であり、Vは2at%である。その軟磁性合金の製造方法はつぎのステップを含む。
【0039】
(1)原料を用意するステップにおいて、純度が99.95%であるFe粒子、純度が99.95%であるCo粒子、純度が99.9%であるNi粒子、純度が99.95%であるV粒子、純度が99.999%である多結晶シリコン塊状原料を用意し、それらを無水酒精に送入して5分間の超音波洗浄を実施した後、それらを乾燥させる。つぎに、組成成分の比例によりそれらの原料を秤量することによりそれらの総重量を50gにする。
【0040】
(2)合金の溶錬を実施するステップにおいて、真空型アーク溶解炉内の気圧を5×10-3Paより小さい真空にし、保護ガスとして0.05MPaの高純度アルゴンをアーク溶解炉内に注入した後、溶錬の過程において電磁撹拌を採用する。溶錬を一回に5分ずつ実施し、かつその溶錬を4回実施することにより成分が均等に混ぜられる軟磁性合金を獲得する。
【0041】
(3)アニーリング処理において、溶錬後の合金を真空管状炉内に送入し、保護ガスとして高純度アルゴンを管状炉内に注入し、850℃の温度下においてアニーリング処理を3時間実施した後、管状炉を冷却させる。
【0042】
製造した合金を静的ヒステリシスループで測定した結果、製造された合金の飽和磁化強度が168.0emu/gに達し、抗磁力が0.360eに達することがわかる。
【0043】
<付記1>
多成分FeCoSiM軟磁性合金であって、前記軟磁性合金は、Fe、Co、Si及び遷移金属元素Mで組成され、Mは、V、Cr、Niのうち一種または複数の元素であり、合金の各成分の百分率において、Feは68~78at%であり、Coは4~12at%であり、Siは14~18at%であり、Vは0~4at%であり、Crは0~4at%であり、Niは0~4at%であることを特徴とする多成分FeCoSiM軟磁性合金。
【0044】
<付記2>
原料を用意するステップと、溶錬をするステップと、アニーリング処理をするステップとを含み、
原料を用意するステップにおいて、合金の組成成分の比例により原料を秤量して取った後、秤量される原料を洗浄し、
溶錬をするステップにおいて、真空環境または保護ガスにおいてアーク溶解または誘導加熱溶解をすることにより合金鋳塊を獲得し、
アニーリング処理をするステップにおいて、真空環境または保護ガスにおいて合金鋳塊に対してアニーリング処理をすることを特徴とする付記1に記載の多成分FeCoSiM軟磁性合金の製造方法。
【0045】
<付記3>
前記原料を用意するステップにおいて採用する原料は純度が99.9%以上である純金属であるか或いは非金属材料であることを特徴とする付記2に記載の多成分FeCoSiM軟磁性合金の製造方法。
【0046】
<付記4>
前記原料を洗浄するとき、前記原料を無水酒精またはアセトンに送入した後、超音波洗浄方法により原料の表面のグリージーダートと有機物を除去することを特徴とする付記2に記載の多成分FeCoSiM軟磁性合金の製造方法。
【0047】
<付記5>
前記溶錬をするステップにおいて、気圧が5×10-3Paより小さい真空環境を形成し、前記保護ガスとして純度が99.9vol%以上であるアルゴンまたはニトロゲンを採用することを特徴とする付記2に記載の多成分FeCoSiM軟磁性合金の製造方法。
【0048】
<付記6>
前記溶錬をする過程において電磁撹拌を採用し、合金鋳塊に対して4~6回の溶錬をすることによりセグリゲーションを減少させることを特徴とする付記2に記載の多成分FeCoSiM軟磁性合金の製造方法。
【0049】
<付記7>
前記アニーリングの温度は700~900℃であり、保温の時間は1~3時間であり、保温が終わると炉を冷却させることを特徴とする付記2に記載の多成分FeCoSiM軟磁性合金の製造方法。
【0050】
<付記8>
前記アニーリング処理をするステップにおいて、気圧が5×10-3Paより小さい真空環境を形成し、前記保護ガスとして純度が99.9vol%以上であるアルゴンまたはアルゴンと5~10vol%の水素の混合気体を採用することを特徴とする付記2に記載の多成分FeCoSiM軟磁性合金の製造方法。