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特開2023-98037マイクロ流路チップ及びマイクロ流路チップの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098037
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】マイクロ流路チップ及びマイクロ流路チップの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/08 20060101AFI20230703BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20230703BHJP
   B81B 1/00 20060101ALI20230703BHJP
   B81C 1/00 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
G01N35/08 A
G01N37/00 101
B81B1/00
B81C1/00
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021214522
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】矢澤 紘子
【テーマコード(参考)】
2G058
3C081
【Fターム(参考)】
2G058DA07
3C081AA13
3C081BA06
3C081BA23
3C081CA23
3C081CA32
3C081DA03
3C081DA06
3C081DA10
3C081DA11
3C081DA31
3C081EA27
(57)【要約】
【課題】マイクロ流路内に生じる気泡を特定領域に退避させて送液の安定性を向上し、且つ接着剤成分の流路内への溶出を防いで流路内の溶液の反応阻害を抑制することができるマイクロ流路チップを提供することを目的とする。
【解決手段】マイクロ流路チップ1は、流路部13と、カバー層12と、基板10と、カバー層12と基板10との間に配置されて流路部13を形成する一対の隔壁層11と、を備え、隔壁層11は、カバー層12と接触する上接触面101の流路部13側の端部においてカバー層12から離れるように湾曲する湾曲部115を有し、流路部13には、湾曲部115とカバー層12の流路部13側の裏面12aとで形成され流路部13内に生じる気泡を退避させる気泡退避領域130が設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ流路チップであって、
流路と、
第一支持部材と、
第二支持部材と、
前記第一支持部材と前記第二支持部材との間に配置されて流路を形成する一対の隔壁部と、
を備え、
前記隔壁部は、
前記第一支持部材と接触する接触面の流路側の端部において前記第一支持部材から離れるように湾曲する湾曲部を有し、
前記流路には、前記湾曲部と前記第一支持部材の前記流路側の面とで形成され該流路内に生じる気泡を退避させる気泡退避領域が設けられている
ことを特徴とするマイクロ流路チップ。
【請求項2】
前記流路の幅は、
前記隔壁部のうち前記湾曲部で形成される領域において前記第一支持部材に近づくに従って拡大し、前記隔壁部のうち前記湾曲部以外の部分で形成される領域において一定である
ことを特徴とする請求項1記載のマイクロ流路チップ。
【請求項3】
前記隔壁部は、
前記第二支持部材の表面に沿って前記流路の横断方向に延在する延在部を有し、断面視で前記第二支持部材に向かって幅が広くなっている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のマイクロ流路チップ。
【請求項4】
前記延在部は、断面視で凹形状に湾曲した湾曲面を有している
ことを特徴とする請求項3に記載のマイクロ流路チップ。
【請求項5】
前記流路の幅は、
前記隔壁部のうち前記延在部で形成される領域において前記第二支持部材に近づくに従って縮小する
ことを特徴とする請求項3又は4に記載のマイクロ流路チップ。
【請求項6】
前記隔壁部は、
前記湾曲部である第一湾曲部と、前記第二支持部材と接触する接触面の前記流路側の端部において前記第二支持部材から離れる方向に湾曲した第二湾曲部とを有し、
前記流路には、前記気泡退避領域である第一気泡退避領域と、
前記第二湾曲部と前記第二支持部材の前記流路側の面とで形成され該流路内に生じる気泡を退避させる第二気泡退避領域と、が設けられている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のマイクロ流路チップ。
【請求項7】
前記流路の幅は、
前記隔壁部のうち前記第二湾曲部で形成される領域において前記第二支持部材に近づくに従って拡大する
ことを特徴とする請求項6に記載のマイクロ流路チップ。
【請求項8】
前記第一支持部材は、前記隔壁部の上面側に設けられて前記流路の上部を覆うカバー層であり、
前記第二支持部材は、前記隔壁部の底面側に設けられて前記流路の底部を形成する基板である
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のマイクロ流路チップ。
【請求項9】
前記第一支持部材は、前記隔壁部の底面側に設けられて前記流路の底部を形成する基板であり、
前記第二支持部材は、前記隔壁部の上面側に設けられて前記流路の上部を覆うカバー層である
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のマイクロ流路チップ。
【請求項10】
前記隔壁部と前記基板との間に密着層が設けられている
ことを特徴とする請求項8又は9項に記載のマイクロ流路チップ。
【請求項11】
前記隔壁部を形成する樹脂材料は、紫外光領域である190nm以上400nm以下の波長の光に対して感光性を有する感光性樹脂である、
ことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のマイクロ流路チップ。
【請求項12】
基板上に、樹脂を塗工する工程と、
塗工した前記樹脂を露光する工程と、
露光した前記樹脂を現像及び洗浄し、前記基板上において流路を画定する隔壁部を形成する工程と、
前記隔壁部をポストベーク処理する工程と、
前記隔壁部の前記基板とは反対側の面にカバー層を接合する工程と、を含み、
前記現像により前記基板上の余分な樹脂を除去することで、前記隔壁部の前記基板と反対側の面における流路側の端部において凸形状に湾曲した上側湾曲部を形成する
ことを特徴とするマイクロ流路チップの製造方法。
【請求項13】
前記現像により、前記隔壁部の前記基板側において、前記隔壁部を断面視で前記基板に向かって幅が広くなる形状とする
ことを特徴とする請求項12に記載のマイクロ流路チップの製造方法。
【請求項14】
前記現像により、前記隔壁部の前記基板と接触する面における流路側の端部において凸形状に湾曲した下側湾曲部を形成する
ことを特徴とする請求項12に記載のマイクロ流路チップの製造方法。
【請求項15】
基板上に、樹脂を塗工する工程と、
塗工した前記樹脂を露光する工程と、
露光した前記樹脂を現像及び洗浄し、前記基板上において流路を画定する隔壁部を形成する工程と、
前記隔壁部をポストベーク処理する工程と、
前記隔壁部の前記基板とは反対側の面にカバー層を接合する工程と、を含み、
前記現像により前記基板上の余分な樹脂を除去することで、前記隔壁部の前記基板と接触する面の流路側の端部において凸形状に湾曲した湾曲部を形成する
ことを特徴とするマイクロ流路チップの製造方法。
【請求項16】
前記樹脂を露光する工程において、感光性樹脂を、紫外光領域のうち250nm以上350nm以下の波長の光に感光させ、
前記現像により、前記隔壁部の前記基板と反対側において、前記隔壁部を断面視で前記カバー層に向かって幅が広くなる形状とする
ことを特徴とする請求項15に記載のマイクロ流路チップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マイクロ流路チップ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、リソプロセスや厚膜プロセス技術を応用して、微細な反応場を形成し、数μLから数nL単位での検査を可能とする技術が提案されている。このような微細な反応場を利用した技術をμ-TAS(Micro Total Analysis system)という。
【0003】
μ-TASは、遺伝子検査、染色体検査、細胞検査、医薬品開発などの領域や、バイオ技術、環境中の微量な物質検査、農作物等の飼育環境の調査、農作物の遺伝子検査などに応用される。μ-TAS技術の導入により、自動化、高速化、高精度化、低コスト、迅速性、環境インパクトの低減など、大きな効果を得られる。
【0004】
μ-TASでは、多くの場合、基板上に形成されたマイクロメートルサイズの流路(マイクロ流路、マイクロチャンネル)が利用され、このような基板はチップ、マイクロチップ、マイクロ流路チップなどと呼ばれる。
【0005】
ところで、マイクロ流路チップにおいて、マイクロ流路を流れる反応溶液には、気泡が発生する場合ある。気泡は、例えばマイクロ流路チップに反応溶液等の流体を注液する際の気泡の巻き込みや、反応溶液の加熱による沸騰、マイクロ流路内の流れの不均一による泡噛み、又は、反応溶液自身からの発泡等によって発生する。
このような気泡の発生は、マイクロ流路における送液の不安定化や、反応溶液の反応の阻害等を引き起こしてしまう。
【0006】
例えば特許文献1には、マイクロ流路内の気泡を抜く方法として、流体を通さずに空気のみを通す網状部材を有する気泡分離部を流路に取り付けることにより、マイクロ流体への空気の巻き込みによって発生する気泡を除去する方法が開示されている。また、特許文献2には、部材同士を接着剤で接合してマイクロ流路チップを作製する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006-223118号公報
【特許文献2】特開2007-240461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、マイクロ流路チップの作製においては、特許文献2に記載のように接着剤を用いて部材同士を接合することが一般的である。しかしながら、特許文献1に開示されているような気泡分離部を、接着材によってマイクロ流路に貼り付ける場合、接着剤の成分がマイクロ流路内を流れる溶液中へ溶出し、これにより溶液の反応阻害が生じ得るといった問題がある。
【0009】
そこで、本開示は上記課題に鑑み、マイクロ流路内に生じる気泡を特定領域に退避させて送液の安定性を向上し、且つ接着剤成分の流路内への溶出を防いで流路内の溶液の反応阻害を抑制することができるマイクロ流路チップ、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係るマイクロ流路チップは、マイクロ流路チップであって、流路と、第一支持部材と、第二支持部材と、前記第一支持部材と前記第二支持部材との間に配置されて流路を形成する一対の隔壁部と、を備え、前記隔壁部は、前記第一支持部材と接触する接触面の流路側の端部において前記第一支持部材から離れるように湾曲する湾曲部を有し、前記流路には、前記湾曲部と前記第一支持部材の前記流路側の面とで形成され該流路内に生じる気泡を退避させる気泡退避領域が設けられていることを特徴とするマイクロ流路チップ。
【0011】
また、本開示の一態様に係るマイクロ流路チップの製造方法は、基板上に、樹脂を塗工する工程と、塗工した前記樹脂を露光する工程と、露光した前記樹脂を現像及び洗浄し、前記基板上において流路を画定する隔壁部を形成する工程と、前記隔壁部をポストベーク処理する工程と、前記隔壁部の前記基板とは反対側の面にカバー層を接合する工程と、を含み、前記現像により前記基板上の余分な樹脂を除去することで、前記隔壁部の前記基板と反対側の面における流路側の端部において凸形状に湾曲した上側湾曲部を形成することを特徴とする。
また、本開示の他の態様に係るマイクロ流路チップの製造方法は、基板上に、樹脂を塗工する工程と、塗工した前記樹脂を露光する工程と、露光した前記樹脂を現像及び洗浄し、前記基板上において流路を画定する隔壁部を形成する工程と、前記隔壁部をポストベーク処理する工程と、前記隔壁部の前記基板とは反対側の面にカバー層を接合する工程と、を含み、前記現像により前記基板上の余分な樹脂を除去することで、前記隔壁部の前記基板と接触する面の流路側の端部において凸形状に湾曲した湾曲部を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本開示の態様によればマイクロ流路内に生じる気泡を特定領域に退避させて送液の安定性を向上し、且つ接着剤成分の流路内への溶出を防いで流路内の溶液の反応阻害を抑制することができるマイクロ流路チップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の第一実施形態に係るマイクロ流路チップの一構成例を示す平面模式図であり、
図2】は本開示の第一実施形態に係るマイクロ流路チップの一構成例を示す断面模式図である。
図3】本開示の第一実施形態に係るマイクロ流路チップの製造方法の一例を示すフローチャートである。
図4】本開示の第一実施形態の変形例に係るマイクロ流路チップの一構成例を示す断面模式図である。
図5】本開示の第二実施形態に係るマイクロ流路チップの一構成例を示す断面模式図である。
図6】本開示の第二実施形態の変形例に係るマイクロ流路チップの一構成例を示す断面模式図である。
図7】感光性樹脂層における光透過率の一例を示す線グラフである。
図8】本開示の第三実施形態に係るマイクロ流路チップの一構成例を示す断面模式図である。
図9】本開示の第四実施形態に係るマイクロ流路チップの一構成例を示す断面模式図である。
図10】本開示の第四実施形態の第一変形例に係るマイクロ流路チップの一構成例を示す断面模式図である。
図11】本開示の第四実施形態の第二変形例に係るマイクロ流路チップの一構成例を示す断面模式図である。
図12】本開示の第四実施形態の第三変形例に係るマイクロ流路チップの一構成例を示す断面模式図である。
図13】本開示の第四実施形態の第四変形例に係るマイクロ流路チップの一構成例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態を通じて本開示を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。また、図面は特許請求の範囲にかかる発明を模式的に示すものであり、各部の幅、厚さ等の寸法は現実のものとは異なり、これらの比率も現実のものとは異なる。
【0015】
本開示の第一実施形態に係るマイクロ流路チップについて説明する。なお、以下の説明では、マイクロ流路チップの基板側を「下」、マイクロ流路チップの基板側と反対側(蓋材側)を「上」として説明する場合がある。
【0016】
本発明者らは、鋭意検討の結果、マイクロ流路チップにおいて、壁部を特定の形状とすることにより、流路内において気泡を退避させるための領域(気泡退避領域)を形成することが可能となることを見出した。これにより、本発明者らは、マイクロ流路内に生じる気泡を特定領域に退避させて送液の安定性を向上し、且つ接着剤成分の流路内への溶出を防いで流路内の溶液の反応阻害を抑制することができるマイクロ流路チップ及びその製造方法を発明するに至った。
以下、図面を参照して本開示の各実施形態の各態様について説明する。
【0017】
1.第一実施形態
(1.1)マイクロ流路チップの基本構成
図1及び図2は、本開示の第一実施形態(以下、「本実施形態」という)に係るマイクロ流路チップ1の一構成例を説明するための概略図である。具体的には、図1は本実施形態のマイクロ流路チップ1の平面概略図である。また、図2は、図1に示すA-A線でマイクロ流路チップ1を切断した断面を示す概略断面図である。
【0018】
図1に示すように、マイクロ流路チップ1は、流体(例えば液体)を導入するための入力部4と、入力部4から導入された流体が流れる流路部13と、流路部13から流体を排出するための出力部5とを備えている。マイクロ流路チップ1において、流路部13は、カバー層12に覆われており、入力部4および出力部5は、カバー層12に設けられた貫通孔である。カバー層12の詳細は後述する。
図1では、透明性を有するカバー層12を介して視認される流路部13を図示している。
【0019】
マイクロ流路チップ1において、入力部4及び出力部5は、少なくとも1つ以上設けられていればよく、それぞれ複数個設けられていてもよい。またマイクロ流路チップ1において、流路部13は、複数設けられてもよいし、入力部4から導入された流体の合流や分離が可能な設計であってもよい。
【0020】
ここで、マイクロ流路チップ1において、流路部13を構成する部材の詳細について説明する。図2に示すように、マイクロ流路チップ1は、2つの支持部材(第一支持部材、第二支持部材)に挟まれた壁部によって流体が流れる流路である流路部13が画定されている。本例では、隔壁層11の上面側に設けられて流路部13の上部を覆うカバー層12が第一支持部材に相当し、隔壁層11の底面側に設けられて流路部13の底部を形成する基板10が第二支持部材に相当する。つまり、マイクロ流路チップ1は、流路部13と、カバー層(第一支持部材の一例)12と、基板(第二支持部材の一例)10と、カバー層12と基板10との間に配置されて流路部13を形成する一対の隔壁層(隔壁部の一例)11と、を備えている。
【0021】
入力部4から導入された流体が流れる流路部13は、基板10と隔壁層11とカバー層12とに囲まれた領域である。流路部13は、基板10上に対向して設けられた一対の隔壁層11によって画定され、基板10とは反対側を蓋材となるカバー層12に覆われている。上述のように、流路部13には、カバー層12に設けられた入力部4(図1(a)参照)から流体が導入され、流路部13を流れた流体は出力部5から排出される。
【0022】
詳しくは後述するが、本実施形態に係るマイクロ流路チップ1において、隔壁層11は、カバー層12と接触する上接触面101の流路部13側の端部101aにおいてカバー層12から離れるように湾曲する湾曲部115を有している。また、流路部13には、湾曲部115とカバー層12の流路部13側の面である裏面12aとで形成され流路部13内に生じる気泡を退避させる気泡退避領域130が設けられている。
図2に示すように、気泡退避領域130は、隔壁層11を特定の形状とする、すなわち隔壁層11に湾曲部115を設けたことによって形成されたものであって、別部材を接着剤によって貼りつけたものではない。これにより、マイクロ流路チップ1は、流路部13内に生じる気泡を気泡退避領域130に退避させて送液の安定性を向上し、且つ接着剤成分の流路内への溶出を防いで流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。
【0023】
(1.1.1)基板
基板10は、マイクロ流路チップ1の基礎となる部材であり、基板10上に設けられた隔壁層11によって流路部13が構成される。つまり、基板10および隔壁層11は、マイクロ流路チップ1の本体部といえる。
基板10は、透光性材料又は非透光性材料のいずれかによって形成することができる。例えば、流路部13内の状態(流体の状態)を光によって検出、観察する場合は、該光に対して透明性に優れる材料を用いることができる。透光性材料としては、樹脂又はガラス等を用いることができる。基板10を形成する透光性材料に用いる樹脂としては、マイクロ流路チップ1の本体部の形成に適しているという観点から、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリプロピレン、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0024】
また例えば、流路部13内の状態(流体の状態)を光によって検出、観察する必要がない場合は、非透光性材料を用いてもよい。非透光性材料としては、シリコンウエハ、銅板等が挙げられる。基板10の厚みは特に限定されないが、流路形成工程においてはある程度の剛性は必要となることから、10μm(0.01mm)以上10mm以下の範囲内が好ましい。
【0025】
(1.1.2)隔壁層
隔壁層11は、基板10上に設けられて、流路部13を形成する構成である。隔壁層11は、樹脂材料で形成することができる。隔壁層11の樹脂材料としては、例えば感光性樹脂を用いることができる。
【0026】
隔壁層11を形成する感光性樹脂は、紫外光領域である190nm以上400nm以下の波長の光に対して感光性を有することが望ましい。当該感光性樹脂としては、液体レジスト又はドライフィルムレジスト等のフォトレジストを用いることができる。これらの感光性樹脂は、感光領域が溶解するポジ型、又は感光領域が不溶化するネガ型のいずれであってもよい。マイクロ流路チップ1における隔壁層11の形成に適する感光性樹脂組成物としては、アルカリ可溶性高分子と付加重合性モノマーと光重合開始剤とを含むラジカルネガ型の感光性樹脂を挙げることができる。例えば、感光性樹脂材料としては、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂(ウレタンアクリレート系樹脂)、エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ノルボルネン系樹脂、フェノールノボラック系樹脂、その他の感光性を有する樹脂を単独で又は複数混合あるいは共重合して用いることができる。
【0027】
なお本実施形態においては、隔壁層11の樹脂材料は感光性樹脂に限定されるものではなく、例えば、シリコーンゴム(PDMS:ポリジメチルシロキサン)や、合成樹脂を用いてもよい。合成樹脂としては、例えばポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン樹脂(PS)、ポリプロピレン(PP)、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)などを用いることができる。隔壁層11の樹脂材料は、用途に応じて適宜選択されることが望ましい。
また、基板10上における隔壁層11の厚み、すなわち流路部13の高さは特に限定されないが、流路部13に導入される流体に含まれる解析・検査対象の物質(例えば、薬剤、菌、細胞、赤血球、白血球等)よりは流路部13の高さを大きくする必要がある。このため、隔壁層11の厚み、すなわち流路部13の高さは、5μm以上100μm以下の範囲内が好ましい。
また同様に、解析・検査対象の物質よりは流路部13の幅を大きくする必要から、隔壁層11によって画定される流路部13の幅は、5μm以上100μm以下の範囲内が好ましい。
また、隔壁層11により確定される流路長は、反応溶液の十分な反応時間を確保する必要から、10mm以上100mm以下の範囲内が好ましく、30mm以上70mm以下の範囲内がより好ましく、40mm以上60mm以下の範囲内がさらに好ましい。
【0028】
(1.1.3)カバー層
本実施形態に係るマイクロ流路チップ1において、カバー層12は、隔壁層11の基板10とは反対側の面に設けられており、図1(b)に示すように流路部13を覆う蓋材である。上述のように、カバー層12は、隔壁層11の基板10とは反対側の面に設けられており、隔壁層11を挟んで基板10と対向している。より具体的には、図1(b)に示すように、断面視においてカバー層12は側端部が隔壁層11に支持され、中央領域が基板10と対向しており、該中央領域が流路部13の上部を画定している
【0029】
カバー層12は、透光性材料又は非透光性材料のいずれかによって形成することができる。例えば、流路内の状態を光によって検出、観察する場合は、該光に対して透明性に優れる材料を用いることができる。透光性材料としては、樹脂又はガラス等を用いることができる。カバー層12を形成する樹脂としては、マイクロ流路チップ1の本体部の形成に適しているという観点から、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリプロピレン、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。カバー層12の厚みは特に限定されないが、カバー層12に対して入力部4および出力部5それぞれに該当する貫通孔を設けることを鑑みると、10μm以上10mm以下の範囲内が好ましい。またカバー層12には、隔壁層11との接合前に、流体(液体)を導入する入力部4、流体を排出する出力部5のそれぞれに相当する孔を予め開けておくことが望ましい。
【0030】
(1.1.4)隔壁層の形状と流路の構成
ここで、本実施形態に係るマイクロ流路チップ1における隔壁層11の形状、および流路部13の構成について、詳細に説明する。まず、流路部13を形成する隔壁層11の形状について説明する。
【0031】
(1.1.4.1)隔壁層の形状と流路の構成
本実施形態に係るマイクロ流路チップ1における隔壁層11の形状、および流路部13の構成について、詳細に説明する。まず、流路部13を形成する隔壁層11の形状について説明する。
図2に示すように、マイクロ流路チップ1の隔壁層11は、カバー層12と接触する上接触面101の流路側の端部101aにおいて第一支持部材(カバー層12)から離れるように湾曲する湾曲部115を有している。また流路部13には、隔壁層11(具体的には、湾曲部115)と第一支持部材(カバー層12)の流路部13側の面(裏面12a)とで形成され、流路部13内の気泡を退避させる気泡退避領域130が設けられる。これにより、マイクロ流路チップ1において流路部13内に発生する気泡を特定領域に退避させて送液の安定性を向上することができる。また、気泡退避領域130は、接着剤を用いて別部材を貼り付けて設けたものではなく、隔壁層11を特定の形状とする(湾曲部115を形成する)ことにより設けられたものである。このため、マイクロ流路チップ1は、接着剤成分の流路内への溶出を防いで流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。以下、隔壁層11の形状についてより詳細に説明する。
【0032】
図2に示すように、マイクロ流路チップ1の隔壁層11は、上接触面101、下接触面102および側面110を有している。
上接触面101は、隔壁層11の上面であって、隔壁層11とカバー層12とが接触する面である。また下接触面102は、隔壁層11の底面であって、隔壁層11と基板10とが接触する面である。つまり、隔壁層11は、上接触面101においてカバー層12と接着(接合)され、下接触面102において基板10と接着(接合)されている。
【0033】
側面110は、隔壁層11の側面であって流路部13を形成する面である。側面110は、隔壁層11の上接触面101の端部101aから下接触面の端部102aに亘って形成されており、端部101aにおいてカバー層12と接続し、端部102aにおいて基板10と接続している。つまり、端部101aは側面110の上端部に相当し、端部102aは、側面110の下端部に相当する。
【0034】
側面110の一の端部側には湾曲した斜面である湾曲面111が設けられている。具体的には、側面110の上端部である端部101a側に湾曲面111が形成されている。
一方、側面110の他の端部である下端部(端部102a)側には湾曲面は設けられていない。つまり、側面110において、湾曲面111は下端部(端部102a)を含まずに形成されている。側面110において、湾曲面111が設けられていない領域には、平坦面112が形成されている。
【0035】
平坦面112は、隔壁層11の端部102a(側面110の下端部)において基板10と接続し、隔壁層11の端部101a(側面110の上端部)と端部102a(側面110の下端部)との間に位置する中間端部110aにおいて湾曲面111と接続している。
つまり、側面110の下端部(端部102a)は平坦面112の下端部に相当し、中間端部110aは平坦面112の上端部に相当する。また側面110の中間端部110aは湾曲面111の下端部に相当し、側面110の上端部(端部101a)は湾曲面111の上端部に相当する。
【0036】
ここで、隔壁層11において湾曲面111を含む領域(湾曲面111を有する湾曲部115を有する領域)を上側領域11aとし、平坦面112を含む領域を下側領域11bとする。理解を容易にするため、図2では隔壁層11の上側領域11aと下側領域11bとを仮想点線によって区切っている。なお、隔壁層11において上側領域11aと下側領域11bとは一体形成されていることが好ましいが、別体として形成されてもよい。つまり、隔壁層11は複層(例えば2層)構造であってもよい。
【0037】
隔壁層11の幅W1は、平坦面112を含む下側領域11bにおいて一定であり、湾曲面111を含む上側領域11aにおいてカバー層12に向かって縮小している。したがって、隔壁層11における上接触面101の面積は、下接触面102の面積よりも小さくなっている。つまり、隔壁層11とカバー層12とを接合するための接合領域は、隔壁層11と基板10とを接合するための接合領域よりも面積が小さくなっている。
【0038】
このため、マイクロ流路チップ1において、流路部13の幅(流路幅W2)は、隔壁層11のうち湾曲面111を含む湾曲部115で形成される領域において、第一支持部材であるカバー層12に近づくに従って拡大する。さらに、流路幅W2は、隔壁層11のうち湾曲面111以外の部分(本例では平坦面112)で形成される領域において一定である。これにより、マイクロ流路チップ1は、流路部13において気泡退避領域130を形成するための領域を確保することができる。流路部13における流路幅W2、気泡退避領域130の詳細は、後述する。
なお、本実施形態において隔壁層11の上接触面101の面積は下接触面102より小さいものの、隔壁層11とカバー層12との接合において密着性を十分に維持可能であって、マイクロ流路チップ1の使用時における液漏れや破損などを抑制可能に形成されているものとする。
【0039】
次いで、隔壁層11の側面110に設けられる湾曲面111について具体的に説明する。
本実施形態に係るマイクロ流路チップ1の隔壁層11において、湾曲面111は、側面110の一部に形成されており、断面視で凸形状に湾曲している。ここで、「断面視」における「断面」は、例えばマイクロ流路チップ1を厚み方向(流路部13の長手方向と直交する方向)に切断した断面であって、少なくとも隔壁層11とカバー層12と流路部13とを含む断面である。言い換えれば、湾曲面111は、隔壁層11の上接触面101(第一支持部材と接する接触面)の流路部13側の端部である端部101aを含んで形成されており、上接触面101の端部101aにおいて(端部101aを起点として)、カバー層12から離れるように湾曲している。
【0040】
上述のように隔壁層11において湾曲面111は、平坦面112の上端部に相当する中間端部110aから端部101aに亘って形成されている。湾曲面111は、側面110の一の端部(本例では上端部)である端部101aを含んで形成されており、端部101aにおいてカバー層12に接続している。
【0041】
湾曲面111は、隔壁層11の上側領域11aにおける側面110、すなわち側面110のカバー層12側の領域に形成されている。
図2に示すように、隔壁層11の上側領域11aにおいて、湾曲面111の上端部(上接触面101の流路部13側の端部)である端部101aは、湾曲面111の下端部(中間端部110a)よりも流路部13の中央から離れて位置している。すなわち、湾曲面111の上端部(端部101a)は、中間端部110aよりも対向する隔壁層11から離れて位置している。
言い換えれば、隔壁層11において、湾曲面111の下端部(中間端部110a)は、湾曲面111の上端部(端部101a)よりも流路部13の中央寄りに位置している。すなわち、湾曲面111の下端部(中間端部110a)は、湾曲面111の上端部(端部101a)よりも対向する隔壁層11の近くに位置している。
【0042】
湾曲面111は、平坦面112と接続する中間端部110aから、側面110の上端部(端部101a)に向かって凸形状に湾曲してカバー層12と接続している。具体的には、湾曲面111は、中間端部110aを起点として、流路部13の中央および対向する隔壁層11から離れるように湾曲してカバー層12と接続している。
これにより、断面視において隔壁層11の幅W1は、カバー層12に近づくに従って、流路部13の中央および対向する隔壁層11から離れる方向に縮小することとなる。したがって、断面視において隔壁層11は、カバー層12に向かうにつれて幅W1が縮小する形状となる。
【0043】
隔壁層11の幅W1は、カバー層12に近づくに従って連続的に減少する。より具体的には、隔壁層11の上側領域11aにおける幅W1は、カバー層12に近づくに従って連続的に流路部13の中央および対向する隔壁層11から離れる方向に縮小する。
ここで「連続的に縮小する」とは、上側領域11aにおいて湾曲面111と平坦面112とが接続する中間端部110aから湾曲面111とカバー層12とが接続する端部101aに向かうにつれて、隔壁層11の幅W1が拡大(伸長)することなく継続的に縮小することを示す。
【0044】
図2に示すように、凸形状に湾曲した湾曲面111において最も突出した凸部111aは湾曲面111の下端部である中間端部110a(平坦面112の上端部)よりも、流路部13の中央から離れて位置している。したがって、隔壁層11の幅W1は、湾曲面111の凸部111aにおいても拡大することなく継続的に減少している。これにより、流路部13のカバー層12側において流路幅W2を確実に拡大し、カバー層12と隔壁層11との間に気泡退避領域130を設けることができる。
【0045】
また図2に示すように、隔壁層11の上側領域11aには、湾曲部115が設けられている。湾曲部115は、流路部13側の端部において湾曲面111を含んで形成されている。このため、湾曲部115は、上接触面101の流路部13側の端部101aにおいてカバー層12から離れるように湾曲している。これにより、流路部13のカバー層12側において流路幅W2が拡大し、気泡退避領域130を設けることができる。
【0046】
また図2に示すように、隔壁層11の上側領域11aにおいて、上接触面101の端部101a(側面110の上端部)と側面110の中間端部110aとは、断面視で凸形状の円弧状となる湾曲面111で連結されている。このため図2に示すように、湾曲部115の流路部13側の端部は角丸形状を有している。湾曲部115の流路部13側の端部が角丸形状を有することで、流路部13の送液の安定性をより向上させることができる。さらに、流路部13内に生じた気泡が気泡退避領域130に集約され易くなる。
【0047】
次に、基板10、隔壁層11およびカバー層12で形成される流路部13の構成について説明する。流路部13の流路幅W2は、対向する一対の隔壁層11間の幅、すなわち側面110間の幅として画定される。
上述のように、断面視において隔壁層11は、カバー層12に向かうにつれて幅W1が縮小する形状である。このため、図2に示すように、一対の隔壁層11における側面110間の幅は、基板10側よりもカバー層12側の方が広くなっている。したがって、流路部13の流路幅W2は、基板10側からカバー層12側に向かって広くなっている。
【0048】
具体的には、流路幅W2は、基板10の表面10aが露出する流路部13の最下部(底部)の領域、すなわち一対の隔壁層11における端部102a間が最も狭くなっている。上述のように、隔壁層11の幅W1は、側面110の下端部(端部102a)から中間端部110aにかけて形成される平坦面112を含む下側領域11bにおいて、一定である。このため、一対の隔壁層11の下側領域11b間の流路幅W2、すなわち一対の隔壁層11の平坦面112間の流路幅W2は、一定となる。したがって、流路部13における平坦面112間の領域は、流路幅W2が最も狭い領域となる。
【0049】
また、流路幅W2は、カバー層12の裏面12aが露出する流路部13の最上部、すなわち一対の隔壁層11における側面110の上端部(端部101a)間が最も広くなっている。
【0050】
上述のように、隔壁層11の幅W1は、側面110の中間端部110aから端部101aにかけて形成される湾曲面111を含む上側領域11aにおいて、カバー層12に向かって連続的に縮小している。具体的には図2に示すように、対向する一対の隔壁層11において、上側領域11aに設けられた湾曲部115は、流路部13側の端部(湾曲面111)が互いに離れるように湾曲している。また、湾曲部115は、流路部13側の端部において、カバー層12から離れるように湾曲している。
【0051】
このため、一対の隔壁層11の上側領域11a間の流路幅W2、すなわち一対の隔壁層11の湾曲面111間の流路幅W2は、カバー層12に近づくに従って連続的に拡大する。言い換えれば、流路幅W2は、カバー層12に近付くにつれて、流路部13の中央から離れる方向に伸長する。つまり、流路部13における湾曲面111間の領域は、流路幅W2がカバー層12に近づくに従って連続的に拡大(伸長)する領域となる。
ここで、「連続的に拡大(伸長)する」とは、流路部13の流路幅W2が、流路部13の中間領域(一対の隔壁層11の中間端部110a間)から流路部13の最上部の領域(一対の隔壁層11の端部101a間)に向かうにつれて、増大することなく継続的に拡大(伸長)することを示す。
【0052】
このように、流路部13の幅は、隔壁層11のうち湾曲部115で形成される領域、より具体的には湾曲面111で形成される領域においてカバー層12に近づくに従って拡大し、隔壁層11のうち湾曲部115(湾曲面111)以外の部分、すなわち平坦面112で形成される領域において一定である。これにより、隔壁層11の幅W1が縮小される領域をカバー層12側、つまり隔壁層11の上側領域11aに限定することができる。このため、マイクロ流路チップ1は、一対の隔壁層11の湾曲面111間の領域において気泡退避領域130を形成可能な流路幅W2の広さを確保しつつ、隔壁層11と基板10とを接合するための接合領域の面積を確保することができる。したがって、マイクロ流路チップ1は、マイクロ流路内に生じる気泡を特定領域(気泡退避領域130)に退避させて送液の安定性を向上しつつ、隔壁層11と基板10との密着性を向上することができる。
(2.3)気泡退避領域
また本実施形態に係るマイクロ流路チップ1において、流路部13には流路部13内に生じる気泡を退避させる気泡退避領域130が設けられている。図2に示すように、気泡退避領域130は、隔壁層11の湾曲部115(具体的には、湾曲面111)とカバー層12の流路部13側の面である裏面12aとで形成されている。
【0053】
流路部13内の気泡は、例えばマイクロ流路チップ1に反応溶液等の流体を注液する際の気泡の巻き込みや、反応溶液の加熱による沸騰、マイクロ流路内の流れの不均一による泡噛み、又は、反応溶液自身からの発泡等によって発生する。
上述のような気泡が流路部13内、特に中央付近の領域である流路部13の中央領域E1を漂っていると、送液が不安定になったり、カバー層12や基板10を介して流路部13内を観察する際において視認性が低減したりする場合がある。図2では一例として、流路部13における気泡退避領域130以外の領域を、中央領域E1として図示している。なお、中央領域E1は、図2に示す位置に限られず、より流路部23の中央に近い領域に限定してもよい。
【0054】
本実施形態に係るマイクロ流路チップ1では、流路部13に気泡退避領域130を設けることにより、流路部13内の特定の領域(中央領域E1以外の領域)に気泡を留めることができる。これにより、送液を安定させ且つ流路部13内を観察する際の視認性を向上することができる。
【0055】
図2に示すように、本実施形態に係るマイクロ流路チップ1において、気泡退避領域130は、隔壁層11の湾曲部115(湾曲面111)とカバー層12の裏面12aとで形成された凹部であって湾曲面111の上端部(端部102a)が最奥部となる。より具体的には、気泡退避領域130は、隔壁層11の湾曲面111とカバー層12の裏面12aとが湾曲面111の上端部となる端部101aで接続されてなる角部である。
つまり、気泡退避領域130は、流路部13において流路幅W2が最も広い流路最上部の左右両端に形成されている。このため、気泡退避領域130に気泡を退避させることで、流路部13の中央領域E1から離れた領域に気泡を留めることができる。これにより、本実施形態に係るマイクロ流路チップ1は、送液の安定性をより向上させ、且つ流路部13内を観察する際の視認性をさらに向上することができる。
【0056】
流路部13内に発生した気泡は、例えば送液時の圧力等によって中央領域E1から流路部13の左右両端に向かって流体(例えば反応溶液)中を移動(上昇)し、気泡退避領域130に集約される。図2に示すように、本例において角部として形成される気泡退避領域130は、最奥部である端部101aに向かうほど高さが狭くなっていく。
これにより、気泡退避領域130に集まった気泡が気泡退避領域130に滞留し易くなり、流路部13の中央領域E1方向へ離脱することを抑制することができる。
【0057】
また図2に示すように、気泡退避領域130は、隔壁層11とカバー層12とで流路部13内に形成される領域であって、別部材を接着剤で貼り付けた構成ではない。これにより、マイクロ流路チップ1は、送液の安定性を向上し、且つ接着剤成分の流路内への溶出を防いで流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。
【0058】
このように、本実施形態に係るマイクロ流路チップ1は、流路部13と、第一支持部材であるカバー層12と、第二支持部材である基板10と、カバー層12と基板10との間に配置されて流路部13を形成する一対の隔壁層11と、を備えている。また隔壁層11は、カバー層12と接触する上接触面101の流路部13側の端部101aにおいてカバー層12から離れるように湾曲する湾曲部115を有している。また流路部13には、湾曲部115とカバー層12の流路部13側の面である裏面12aとで形成され流路部13内に生じる気泡を退避させる気泡退避領域130が設けられている。
これにより、マイクロ流路チップ1は、マイクロ流路内に生じる気泡を特定領域に退避させて送液の安定性を向上し、且つ接着剤成分の流路内への溶出を防いで流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。
また、マイクロ流路チップ1において、流路部13の流路幅W2は、隔壁層11のうち湾曲部115で形成される領域においてカバー層12に近づくに従って拡大し、隔壁層11のうち湾曲部115以外の部分で形成される領域(平坦面112で形成される領域)において一定である。これにより、マイクロ流路チップ1は隔壁層11と基板10との接合領域の面積が確保され、送液を安定させ且つ隔壁層11と基板10との密着性を向上することができる。
【0059】
(1.2)マイクロ流路チップの製造方法
次に、本実施形態に係るマイクロ流路チップ1の製造方法について説明する。図2は、本実施形態に係るマイクロ流路チップ1の製造方法の一例を示すフローチャートである。
ここでは、隔壁層11を感光性樹脂で形成する場合を例にとって説明する。
【0060】
(ステップS1)
本実施形態に係るマイクロ流路チップ1の製造方法では、まず基板10上へ樹脂を塗工する工程を行う。これにより、基板10上に隔壁層11を形成するための樹脂層を設ける。本実施形態に係るマイクロ流路チップ1の製造方法では、例えば基板10上に感光性樹
脂による樹脂層(感光性樹脂層)を形成する。
【0061】
基板10上への感光性樹脂層の形成方法は、例えば、基板10への感光性樹脂の塗工により行われる。塗工は、例えば、スピンコーティング、スプレーコーティング、バーコーティングなどにより行われることができ、中でも膜厚制御性の観点からはスピンコーティングが好ましい。基板10上には、例えば液状、固体状、ゲル状、フィルム状など種々の形態の感光性樹脂を塗工することができる。中でも、液体レジストによって感光性樹脂層を形成することが好ましい。
また、基板10上には、樹脂層(例えば、感光性樹脂層)の厚み、すなわち隔壁層11の厚みが5μm以上100μm以下の範囲内となるように樹脂(例えば、感光性樹脂)を塗工すればよい。
【0062】
(ステップS2)
基板10上に感光性樹脂を形成すると、次に、基板10上に塗工した樹脂(例えば、感光性樹脂)内に含まれる溶媒(溶剤)を除去する目的で加熱処理(プリベーク処理)する工程を行う。なお、本実施形態に係るマイクロ流路チップ1の製造方法において、プリベーク処理は必須の工程ではなく、適宜、樹脂の特性に合わせて最適な温度、時間で実施すればよい。例えば、基板10上の樹脂層が感光性樹脂である場合は、プリベーク温度、時間は感光性樹脂の特性に応じて、適宜、最適な条件で行う。
【0063】
(ステップS3)
次に、基板10上に塗工した樹脂(例えば感光性樹脂)を露光する工程を行う。具体的には、基板10上に塗工した感光性樹脂には、露光により流路パターンが描画される。露光は、例えば、紫外線を光源とした露光装置、レーザー描画装置により行うことができる。中でも、紫外線を光源としたプロキシミティ露光やコンタクト露光装置を用いた露光が好ましい。プロキシミティ露光装置の場合、マイクロ流路チップ1における流路パターン配列を有するフォトマスクを介して露光が行われる。フォトマスクはクロム及び酸化クロムの二層構造を遮光膜とするフォトマスクなどを使用すればよい。
また上述のように、隔壁層11には、紫外光領域である190nm以上400nm以下の波長の光に対して感光性を有する感光性樹脂が用いられる。したがって、本工程(露光工程)では、基板10上に塗工される感光性樹脂を、190nm以上400nm以下の波長の光に感光させればよい。
【0064】
なお、基板10上における樹脂層の形成に化学増幅型レジストなどを用いる場合には、露光により発生した酸の触媒反応を促すために、露光後にさらに加熱処理(ポストエクスポージャーベーク:PEB)を行うとよい。
【0065】
(ステップS4)
次に、露光した感光性樹脂に対して現像を行い、流路パターンを形成する工程を行う。
現像は、例えば、スプレー、ディップ、パドル形式などの現像装置にて感光性樹脂と現像液の反応により行われる。現像液は、例えば炭酸ナトリウム水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化カリウム、有機溶剤などを用いることができる。現像液は感光性樹脂の特性に応じた最適なものを適宜使用すればよく、これらに限定されるものではない。また、濃度や現像処理時間は、感光性樹脂の特性に合わせて適宜最適な条件に調整することができる。
【0066】
(ステップS5)
次に、洗浄により基板10上の樹脂層(感光性樹脂層)から現像に用いた現像液を完全に除去する工程を行う。洗浄は、例えば、スプレー、シャワー、浸漬形式などの洗浄装置によって行うことができる。洗浄水としては、例えば純水、イソプロピルアルコールなどから、現像処理に用いた現像液を除去するために最適な洗浄水を適宜使用すればよい。洗浄後はスピンドライヤ、IPAベーパドライヤ、自然乾燥などにより乾燥を行う。
【0067】
(ステップS6)
次に、流路パターン、すなわち流路部13を形成する隔壁層11に対して加熱処理(ポストベーク)する工程を行う。このポストベーク処理により、現像や洗浄時の残留水分を除去する。ポストベーク処理は、例えば、ホットプレート、オーブン、などを用いて行われる。上記ステップS5の洗浄工程での乾燥が不十分な場合、現像液や洗浄時の水分が隔壁層11に残留している場合がある。また、プリベーク処理において除去されなかった溶剤も隔壁層11に残留している場合がある。ポストベーク処理を行うことで、それらを除去することができる。
【0068】
(ステップS8)
次に、ポストベーク処理後の隔壁層11にカバー層12を接合する工程を行う。本工程では、図1(b)に示すように、隔壁層11の基板10とは反対側の面にカバー層12を接合する。これにより、流路部13がカバー層12に覆われ、図1(a)、図1(b)に示すマイクロ流路チップ1が形成される。
【0069】
隔壁層11とカバー層12との接合方法としては、隔壁層11とカバー層12との接合面に表面改質処理を施した上での熱圧着による方法や、接着剤を用いる方法、隔壁層11とカバー層12との接合面の表面改質処理により接路接合する方法を実施してもよい。
例えば、上記熱圧着による方法では、ポストベーク処理後に、隔壁層11、及び隔壁層11との接合前のカバー層12(蓋材)に対して表面改質処理する工程を実施すればよい。表面改質処理の一例としては、例えばプラズマ処理がある。
【0070】
表面改質処理を行った基板同士を熱圧着で接合させる場合、例えば熱プレス機や熱ロール機を用いた熱圧着を用いることが好ましい。カバー層12には、隔壁層11との接合前に、予め流体の入力部4、出力部5(図1(a)参照)に相当する孔をおくことが望ましい。これにより、隔壁層11との接合後に孔を開ける場合よりも、ゴミやコンタミネーションの問題が生じることを抑制することができる。
【0071】
また、隔壁層11とカバー層12との接合方法として接着剤を用いて接合する場合、接着剤は隔壁層11およびカバー層12を構成する材料との親和性などに基づいて決定することができる。接着剤は、隔壁層11とカバー層12とを接合できるものであれば、特に限定されない。例えば、本実施形態における接着剤としては、アクリル樹脂系接着剤や、ウレタン樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤等を用いることができる。
【0072】
また、表面改質処理によって接合する方法としては、プラズマ処理、コロナ放電処理、エキシマレーザー処理などがある。この場合、隔壁層11の表面の反応性を向上させ、隔壁層11とカバー層12との親和性及び接着の相性に応じて、適宜最適な処理方法を選択すればよい。
【0073】
このように、本実施形態に係るマイクロ流路チップ1の製造方法では、フォトリソグラフィーを用いて基板10上に流路部13を構成する隔壁層11を形成することができる。
例えば基板10上に塗工された感光性樹脂がポジ型レジストの場合、露光領域が現像時に溶解されて流路部13となり、未露光領域に残存する感光性樹脂が隔壁層11となる。また、基板10上に塗工された感光性樹脂がネガ型レジストの場合、露光領域に残存する感光性樹脂が隔壁層11となり、未露光領域が現像時に溶解されて流路部13となる。
【0074】
また本実施形態では、現像工程(ステップS4)において基板10上の余分な樹脂(ここでは感光性樹脂)を除去することで、隔壁層11を断面視でカバー層12に向かって幅W1が狭くなる形状に形成することができる。
例えば本実施形態おいて、隔壁層11の形状は、現像時間や現像液の濃度等の調整によって制御することができる。一例として、現像時間を長くするほど、多くの樹脂を溶解させることができる。具体的には、例えば現像時間を長くすることで、感光性樹脂層の上側(カバー層12を接合する側)の樹脂を下側(基板10側)よりも多く溶解させることができる。この場合、隔壁層11の上側領域11aを形成する側に残存する樹脂量を、下側領域11bを形成する側に残存する樹脂量よりも少なくすることができる。これにより、隔壁層11を、カバー層12に向かうほど幅W1が小さくなる形状(断面視でカバー層12に向かって幅W1が狭くなる形状)に形成することができる。
【0075】
また、例えば現像時における現像時間や現像液の使用量等の調整により、隔壁層11の側面110の形状を所望の形状に形成することができる。
具体的には、現像により、隔壁層11の上接触面101(基板10と反対側の面)における流路部13側の端部101aにおいて、凸形状に湾曲した湾曲部(上側湾曲部の一例)115を形成することができる。例えば、現像時において隔壁層11の上側領域11aを形成する際に、特に流路部13側の樹脂を多く溶解させて除去することで、凹形状に湾曲した湾曲面111を有する湾曲部115を形成することができる。
【0076】
また現像時において隔壁層11の下側領域11bを形成する際に、感光性樹脂層の下側(基板10に接合する側)からの一部領域において一定量の樹脂を溶解させて除去し、残存する樹脂の量を一定とすればよい。これにより、隔壁層11の下側領域11bにおいて隔壁層11の幅W1を一定とすることができる。さらに、現像時間や現像液の濃度等の調整により、下側領域11bにおける側面110を平面形状として、平坦面112を形成することができる。
このように、マイクロ流路チップ1の製造方法において、現像による感光性樹脂層の溶解の度合を制御することにより、隔壁層11の側面110に湾曲部115および平坦面112を形成することができる。
【0077】
また、感光性樹脂層をポジ型レジストで形成する場合、感光性樹脂層の上部(カバー層12の接合部分に近い部分)ほど露光量が多くなり、下部(基板10に近い部分)ほど露光量が少なくなる。このため感光性樹脂層の上部ほど現像時に溶解して除去し易く、下部ほど現像時に溶解せずに残存し易い。このため、基板10上に残存して隔壁層11となる感光性樹脂は、基板10に向かうほど多くなる。したがってポジ型レジストを用いることにより、隔壁層11の上側領域11aにおいてより容易に、残存する樹脂の量をカバー層12に向かうほど少なくすることができる。すなわち、より容易に湾曲部115を形成することができる。
【0078】
さらに、上述のようにして形成した隔壁層11上にカバー層12を接合する(ステップS8)ことにより、接着剤によって別部材を貼り付けることなく、流路内に生じる気泡を退避させる気泡退避領域130を形成することができる。具体的には、湾曲部115を設けた隔壁層11にカバー層12を接合することで、湾曲部115とカバー層12の流路部13側の裏面12aとの間に気泡退避領域130を形成ことができる。
【0079】
以上説明したように、本実施形態に係るマイクロ流路チップ1の製造方法は、基板10上に、樹脂を塗工する工程(上記ステップS1)と、塗工した樹脂を露光する工程(上記ステップS3)と、露光した樹脂を現像及び洗浄し基板10上に流路部13を画定する隔壁層11を形成する工程(上記ステップS4および上記ステップS5)と、隔壁層11をポストベーク処理する工程(上記ステップS6)と、隔壁層11の基板10とは反対側の面にカバー層12を接合する工程(上記ステップS8)と、を含んでいる。さらに、現像工程(ステップS4)において基板10上の余分な樹脂(ここでは感光性樹脂)を除去することで、隔壁層11の基板10と反対側の面である上接触面101における流路部13側の端部、すなわち端部101aにおいて凸形状に湾曲した上側湾曲部(湾曲部115)を形成する。
【0080】
これにより、マイクロ流路チップ1において、隔壁層11の湾曲部115とカバー層12(具体的には裏面12a)との間に気泡退避させることが可能な特定領域(気泡退避領域130)が形成される。したがって、マイクロ流路チップ1は、マイクロ流路内に生じる気泡を特定領域に退避させて送液の安定性を向上することができる。また上述のように、気泡退避領域130は、接着剤を用いて別部材を貼り付けた構成ではない。したがって、接着剤成分の流路内への溶出を防いで流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。
このように、上述した製造方法により、マイクロ流路内に生じる気泡を特定領域に退避させて送液の安定性を向上し、且つ接着剤成分の流路内への溶出を防いで流路内の溶液の反応阻害を抑制することができるマイクロ流路チップ1を得ることができる。
【0081】
(1.3)変形例
以下、本実施形態の変形例に係るマイクロ流路チップについて、図4を用いて説明する。図4は、本実施形態の変形例に係るマイクロ流路チップ103の一構成例を説明するための断面図である。
マイクロ流路チップ103は、基板10と、基板10上に流路部23を形成する隔壁層21と、カバー層12と、を備えている。図4に示すように、マイクロ流路チップ103は、隔壁層21の下側領域21bが延在部225による裾引き形状を有する点で、上述のマイクロ流路チップ1と相違する。
【0082】
以下、隔壁層21および隔壁層21で画定される流路部23について説明する。なお、隔壁層21および流路部23以外の各構成(基板10およびカバー層12)については、マイクロ流路チップ1の基板10およびカバー層12と同様の構成であるため、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0083】
(1.3.1)隔壁層の形状と流路の構成
本変形例に係るマイクロ流路チップ103における隔壁層21の形状、および流路部23の構成について、詳細に説明する。まず、流路部23を形成する隔壁層21の形状について説明する。
【0084】
図4に示すように、マイクロ流路チップ103の隔壁層21は、上接触面101、下接触面102および側面210を有している。マイクロ流路チップ103の隔壁層21において、上記マイクロ流路チップ1の隔壁層11と同様の構成は、同一の記号を付して詳しい説明を省略する。
【0085】
図4に示すように、マイクロ流路チップ103の隔壁層21は、第二支持部材である基板10の表面10aに沿って流路部23の横断方向に延在する延在部225を有し、断面視で第二支持部材に向かって幅が広くなっている。このため、マイクロ流路チップ103において、隔壁層21と基板10とを接合するための接合領域の面積が拡大される。つまり、隔壁層21は、断面視で幅W11が第一支持部材であるカバー層12に向かって縮小し、第二支持部材である基板10に向かって拡大する形状を有している。
これによりマイクロ流路チップ103は、送液の安定性を向上し、且つ流路内の溶液の反応阻害を抑制可能であるとともに、隔壁層21と基板10との密着性を向上することができる。
【0086】
ここで、「断面視」における「断面」は、例えばマイクロ流路チップ103を厚み方向(流路部23の長手方向と直交する方向)に切断した断面であって、基板10、隔壁層21、カバー層12および流路部23を含む断面である。以下、隔壁層21の形状についてより詳細に説明する。
【0087】
側面210は、隔壁層21の側面であって流路部23を形成する面である。本変形例において、端部101aは側面210の上端部に相当し、端部102aは、側面210の下端部に相当する。
【0088】
図4に示すように、側面210の一の端部側には湾曲面111が設けられている。具体的には、上記マイクロ流路チップ1と同様に、側面210の上端部(端部101a)側に湾曲面111が形成されている。
また、側面210の他の端部側には、凹形状に湾曲した斜面である湾曲面221が設けられている。具体的には、側面210の下端部(端部102a)側に湾曲面221が形成されている。さらに、側面210において湾曲面(湾曲面111,221)が設けられていない領域、すなわち湾曲面111と湾曲面221との間の領域には、平坦面212が形成されている。隔壁層21の側面210が湾曲面111と反対側に湾曲面221を備える点で、マイクロ流路チップ103の隔壁層21は、上記マイクロ流路チップ1の隔壁層11と異なる。
【0089】
平坦面212は、第一中間端部210aにおいて湾曲面111と接続し、第二中間端部210bにおいて湾曲面221と接続している。つまり、平坦面212は側面210の第一中間端部210aから第二中間端部210bに亘って形成されており、第一中間端部210aが平坦面212の上端部に相当し、第二中間端部210bは平坦面212の下端部に相当する。
【0090】
また、湾曲面111は、上記マイクロ流路チップ1における隔壁層11の中間端部110aに代えて、隔壁層21の第一中間端部210aにおいて平坦面212と接続している。つまり、本変形例において湾曲面111は、側面(本例では側面210)の上端部である端部101aから第一中間端部210aに亘って形成されており、側面210の第一中間端部210aが湾曲面111の下端部に相当する。これ以外は、本変形例によるマイクロ流路チップ103の湾曲面111は、上記マイクロ流路チップ1の湾曲面111と同等である。また同様に、本変形例によるマイクロ流路チップ103の湾曲面111を有する湾曲部115は、上記マイクロ流路チップ1の湾曲部115と同等である。
以下、本変形例における湾曲面111、湾曲部115については、詳細な説明は省略する。
【0091】
また、湾曲面221は、側面210の第二中間端部210bにおいて平坦面212と接続し、側面210の下端部である端部102aにおいて基板10と接続している。つまり、湾曲面221は側面210の第二中間端部210bから端部102aに亘って形成されており、側面210の第二中間端部210bが湾曲面221の上端部に相当し、側面210の下端部である端部102aが湾曲面221の下端部に相当する。
【0092】
ここで、隔壁層21において、湾曲面111を含む領域を上側領域21aとし、湾曲面221を含む領域を下側領域21bとし、平坦面212を含む領域を中間領域21cとする。理解を容易にするため、図4では隔壁層21の上側領域21a、下側領域21bおよび中間領域21cを仮想点線によって区切っている。なお、隔壁層21において上側領域21a、下側領域21bおよび中間領域21cは一体形成されていることが好ましいが、別体として形成されてもよい。つまり、隔壁層21は複層(例えば3層)構造であってもよい。
【0093】
隔壁層21の幅W11は、湾曲面111を含む上側領域21aにおいてカバー層12に向かって縮小し、湾曲面221を含む下側領域21bにおいて基板10に向かって拡大し、平坦面212を含む中間領域21cにおいて一定である。これにより、マイクロ流路チップ103は、流路部23において気泡退避領域130を形成するための領域を確保することができ、さらに隔壁層21で形成される流路部23の幅(流路幅W12)の広さを保持しながら、隔壁層21と基板10とを接合するための接合領域の面積を拡大することができる。
【0094】
次いで、隔壁層21の側面210に設けられる湾曲面221について具体的に説明する。湾曲面221は、側面210の残余の一部(隔壁層21の下側領域21bにおける側面210)に形成されており、断面視で凹形状に湾曲している。つまり湾曲面221は、側面210の基板10側の領域に形成されている。
【0095】
図4に示すように、隔壁層21の下側領域21bにおいて、側面210の下端部である端部102aは、湾曲面221の上端部(第二中間端部210b)よりも流路部23の中央寄りに位置している。具体的には、隔壁層21の下接触面102は、基板10の表面10aに沿って流路部23の中央方向(対向する隔壁層21方向)延在している。このため、側面210の下端部(端部102a)は、第二中間端部210bよりも対向する隔壁層21の近くに位置している。
言い換えれば、隔壁層21において、湾曲面221の上端部(第二中間端部210b)は湾曲面221の下端部(端部102a)よりも流路部23の中央から離れて位置している。すなわち、湾曲面221の上端部(第二中間端部210b)は、湾曲面221の下端部となる端部102aよりも対向する隔壁層21から離れて位置している。
【0096】
湾曲面221は、第二中間端部210bから、端部102aに向かって凹形状に湾曲して基板10と接続している。これにより、隔壁層21の幅W11は、基板10に近づくに従って、流路部23の中央方向、すなわち対向する隔壁層21の方向(流路部23の横断方向)に伸長することとなる。したがって、断面視において隔壁層21は、基板10に向かうにつれて幅W11が広がる形状となる。
【0097】
隔壁層21の下側領域21bにおける幅W11は、基板10に近づくに従って連続的に拡大する。より具体的には、隔壁層21の下側領域21bにおける幅W11は、基板10に近づくに従って連続的に流路部23の中央方向、すなわち横断方向に伸長して拡大する。ここで「連続的に拡大(伸長)する」とは、湾曲面221の上端部である第二中間端部210bから湾曲面221の下端部である端部102aに向かうにつれて、隔壁層21の幅W11が減少(短縮)することなく継続的に拡大(伸長)することを示す。
【0098】
図4に示すように、凹形状の湾曲面221において、最奥部221aは湾曲面221の上端部である第二中間端部210bよりも、流路部23の中央寄りに位置している。したがって、隔壁層21の幅W11は、湾曲面221の最奥部221aにおいても減少することなく継続的に拡大している。これにより、マイクロ流路チップ103において隔壁層21と基板10とを接合するための接合領域の面積が確実に拡大し、隔壁層21と基板10との密着性をより確実に向上することができる。
【0099】
また図4に示すように、隔壁層21は、基板10の表面10aに沿って流路部23の横断方向に延在する延在部225を有し、断面視で第二支持部材である基板10に向かって幅が広くなっている。具体的には、延在部225は流路部23の中央方向、すなわち対向する隔壁層21方向に延在している。これにより、延在部225は裾引き形状を有しており、隔壁層21は、基板10に向かって幅が広くなっている。
【0100】
また延在部225は、断面視で凹形状に湾曲した湾曲面221を有している。このため、延在部225は、流路部23の横断方向に向かって厚みが縮小する形状を有する。これにより、マイクロ流路チップ103は、隔壁層21と基板10との接合面積を拡大しつつ、湾曲面221が平面状である場合と比べて隔壁層21の幅W11の拡大に伴う流路部23の幅(流路幅W12)の縮小を低減することができる。
【0101】
以上説明したように、本変形例によるマイクロ流路チップ103において、隔壁層21は、第二支持部材(基板10)の表面10aに沿って流路部23の横断方向に延在する延在部225を有し、断面視で第二支持部材に向かって幅が広くなっている。
これによりマイクロ流路チップ103は、送液の安定性を向上し、且つ流路内の溶液の反応阻害を抑制可能であるとともに、隔壁層21と基板10との密着性を向上することができる。
【0102】
また、隔壁層21において延在部225は、断面視で凹形状に湾曲した湾曲面221を有している。
これにより、マイクロ流路チップ103は、隔壁層21の幅W11の拡大に伴う流路部23の幅(流路幅W12)の縮小を低減することができ、送液の安定性をさらに向上し、且つ隔壁層21と基板10との密着性を向上することができる。
【0103】
次に、基板10、隔壁層21およびカバー層12で形成される流路部23の構成について説明する。流路部23の流路幅W12は、対向する一対の隔壁層21間の幅、すなわち側面210間の幅として画定される。
上述のように、断面視において隔壁層21は、カバー層12に向かうにつれて幅W11が縮小し、基板10に向かうにつれて幅W11が広がる形状である。このため、図4に示すように、一対の隔壁層21における側面210間の幅は、平坦面212間よりもカバー層12側の領域の方が広くなっており、平坦面212間よりも基板10側の領域の方が狭くなっている。したがって、流路部23の流路幅W12は、流路部23の高さ(隔壁層21の厚み)の中央領域から、カバー層12に向かって広くなり、基板10に向かって狭くなっている。
【0104】
具体的には、流路幅W12は、カバー層12の裏面12aが露出する流路部23の最上部、すなわち一対の隔壁層21における側面210の上端部(上接触面101の端部101a)間が最も広くなっている。これは、上記マイクロ流路チップ1において、流路部13の最上部(一対の隔壁層11における端部101a間)の流路幅W2が最も広くなっている構造と同様である。
【0105】
また、流路幅W12は、基板10の表面10aが露出する流路部23の底部、すなわち一対の隔壁層21における側面210の下端部(端部102a)間が最も狭くなっている。
上述のように、隔壁層21の幅W11は、側面210の第二中間端部210bから下端部(端部102a)にかけて形成される湾曲面221を含む下側領域21bにおいて、基板10に向かって連続的に拡大している。具体的には、対向する一対の隔壁層21において、湾曲面221を含む延在部225は、互いに近づくようにして流路部23の横断方向に延在している。
【0106】
このため、一対の隔壁層21における延在部225間の幅は、基板10に近づくに従って狭くなる(縮小する)。つまり、流路部23の幅(流路幅W12)は、隔壁層21のうち延在部225で形成される領域において基板10に近づくに従って縮小する。より具体的には、一対の隔壁層21における湾曲面221間の幅は、基板10に近づくに従って連続的に狭くなる(縮小する)。つまり、一対の隔壁層21における湾曲面221間の流路幅W12は、基板10に近づくに従って連続的に狭くなる(縮小する)。
ここで、「連続的に縮小する」とは、流路部23の流路幅W12が、平坦面212の下端部間の領域(一対の隔壁層21の第二中間端部210b間の領域)から流路部23の底部(一対の隔壁層21の端部102a間)に向かうにつれて、増大することなく継続的に縮小することを示す。
【0107】
また上述のように、隔壁層21の幅W11は、側面210の第一中間端部210aから第二中間端部210bにかけて形成される平坦面212を含む中間領域21cにおいて、一定である。このため、一対の隔壁層21における平坦面212間の幅は、一定である。つまり、一対の隔壁層21における平坦面212間(中間領域21c間)の流路幅W12は、一定となる。より具体的には、平坦面212間の流路幅W12は、湾曲面111間(上側領域21a間)よりも狭く、湾曲面221間(下側領域21b間)よりも広くなっている。
【0108】
このように、流路部23の幅は、隔壁層21のうち湾曲部115で形成される領域、より具体的には湾曲面111で形成される領域においてカバー層12に近づくに従って拡大し、隔壁層21のうち平坦面212で形成される領域において一定である。
さらに、流路部23の幅(流路幅W12)は、隔壁層21のうち延在部225で形成される領域において基板10に近づくに従って縮小する。
これにより、隔壁層21の幅W11が縮小される領域をカバー層12側、つまり隔壁層21の上側領域21aに限定し、隔壁層21の下側領域21bにおいて隔壁層21の幅W11を拡大することができる。このため、マイクロ流路チップ103は、一対の隔壁層21の湾曲面111間の領域において気泡退避領域130を形成可能な流路幅W12の広さを確保しつつ、隔壁層21と基板10とを接合するための接合領域の面積を拡大することができる。したがって、マイクロ流路チップ103は、マイクロ流路内に生じる気泡を特定領域(気泡退避領域130)に退避させて送液の安定性を向上しつつ、隔壁層21と基板10との密着性をさらに向上することができる。
【0109】
また、流路幅W12は、平坦面212で形成される領域において一定であり、且つ延在部225で形成される領域よりも広い。これにより、流路幅W12が縮小される領域を流路部23の底部側(基板10側)、つまり湾曲面221間に限定することができる。このため、マイクロ流路チップ103は、一対の隔壁層21の平坦面212間の領域において流路部23の流路幅W12の広さを維持しつつ、隔壁層21と基板10とを接合するための接合領域の面積を確実に拡大することができる。したがって、マイクロ流路チップ103は、流路部23内の流体(反応溶液など)の送液性および流路部23内を観察する際の視認性を向上しつつ、隔壁層21と基板10との密着性をより確実に向上することができる。
【0110】
また図4に示すように、流路部23は、一対の隔壁層21の下側領域21b間の領域、すなわち湾曲面221間の領域において、断面視で角丸形状を有している。ここでの「断面視」における「断面」は、マイクロ流路チップ103を厚み方向(流路部23の長手方向と直交する方向)に切断した断面であって、基板10、隔壁層21、カバー層12および流路部23を含む断面である。湾曲面221間の領域において、流路部23が断面視で角丸形状であることにより、流路部23における流体(例えば反応溶液)の送液速度や流量を安定させることができる。
【0111】
また本変形例に係るマイクロ流路チップ103において、流路部23には流路部23内に生じる気泡を退避させる気泡退避領域130が設けられている。図4に示すように、気泡退避領域130は、隔壁層21の湾曲部115(具体的には、湾曲面111)とカバー層12の流路部23側の面である裏面12aとで形成されている。マイクロ流路チップ103における気泡退避領域130は、上記マイクロ流路チップ1における気泡退避領域130と同等の構成であるため、詳しい説明は省略する。
【0112】
(1.3.2)マイクロ流路チップの製造方法
本変形例に係るマイクロ流路チップ103の基本的な製造方法は、上記第一実施形態に係るマイクロ流路チップ1の製造方法(図3参照)と同様であるため、詳細な説明は省略する。本変形例においても、マイクロ流路チップ1と同様に、現像工程(ステップS4)において、現像時間や現像液の使用量等の調整により、湾曲部115、平坦面(本例では、平坦面212)を形成すればよい。
【0113】
また、本変形例では、現像工程(ステップS4)において、基板10上の余分な樹脂(ここでは感光性樹脂)を除去することで、隔壁層21の下側領域21bを裾引き形状とすることができる。より具体的には、現像により、隔壁層21の基板10側において、隔壁層21を断面視で基板10に向かって幅が広くなる形状とすることができる。これにより、隔壁層21と基板10との密着性がより向上されたマイクロ流路チップを得ることができる。
【0114】
例えば本変形例では、感光性樹脂層の厚み方向の中間部分(本例では、隔壁層21において平坦面212を形成する中間領域21c)よりも下側において、基板10に向かうほど、現像時における樹脂の溶解度合いを低減させればよい。これにより、除去される樹脂の量を減少させて基板10に向かうほど多くの樹脂を残存させることができる。したがって、隔壁層21の下側領域21bにおいて、隔壁層21の幅W11を基板10に向かって拡大する形状とすることができる。
【0115】
さらに、現像時間や現像液の濃度等の調整により、下側領域21bにおける側面210を凹形状に湾曲した形状として、湾曲面221を形成すればよい。これにより、下側領域21bに湾曲面221を含んだ延在部225を形成することができる。
このように、マイクロ流路チップ103の製造方法において、現像による感光性樹脂層の溶解の度合を制御することにより、隔壁層11の側面110に湾曲部115および平坦面112を形成することができる。
【0116】
2.第二実施形態
(2.1)マイクロ流路チップ2の構成
以下、本開示の第二実施形態に係るマイクロ流路チップについて、図5を用いて説明する。図5は、本開示の第二実施形態に係るマイクロ流路チップ2の一構成例を説明するための断面図である。
【0117】
(2.1.1)マイクロ流路チップ2の概要
図5に示すように、マイクロ流路チップ2は、隔壁層31の下側領域31bに湾曲部315が形成されている点で、上記第一実施形態に係るマイクロ流路チップ1と相違する。以下、マイクロ流路チップ2における隔壁層31および隔壁層31で画定される流路部33について説明する。
なお、マイクロ流路チップ2における基板10およびカバー層12については、マイクロ流路チップ1の基板10およびカバー層12と同様の構成であるため、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0118】
図5に示すように、マイクロ流路チップ2は、2つの支持部材(第一支持部材、第二支持部材)に挟まれた壁部によって流体が流れる流路である流路部33が画定されている。本例では、隔壁層11の底面側に設けられて流路部13の底部を形成する基板10が第一支持部材に相当し、隔壁層11の上面側に設けられて流路部13の上部を覆うカバー層12が第二支持部材に相当する。つまり、マイクロ流路チップ2は、流路部33と、基板(第一支持部材の一例)10と、カバー層(第二支持部材の一例)12と、基板10とカバー層12との間に配置されて流路部33を形成する一対の隔壁層(隔壁部の一例)31と、を備えている。これにより、マイクロ流路チップ2は、上記マイクロ流路チップ1と同様に、流路部33内に発生する気泡を特定領域に退避させて送液の安定性を向上し、且つ接着剤成分の流路内への溶出を防いで流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。
【0119】
(2.1.2)隔壁層の形状と流路の構成
本実施形態に係るマイクロ流路チップ2における隔壁層31の形状、および流路部33の構成について、詳細に説明する。まず、流路部33を形成する隔壁層31の形状について説明する。図5に示すように、マイクロ流路チップ2の隔壁層31は、基板10側に湾曲部315を有している。つまり隔壁層31は、上記第一実施形態に係るマイクロ流路チップ1の隔壁層11の上下を反転させた形状を有している。
【0120】
具体的には、マイクロ流路チップ2の隔壁層31は、第一支持部材である基板10と接触する下接触面102の流路側の端部102aにおいて第一支持部材(基板10)から離れるように湾曲する湾曲部315を有している。また流路部33には、隔壁層31(具体的には、湾曲部315)と第一支持部材(基板10)の流路部33側の面(表面10a)とで形成され、流路部33内の気泡を退避させる気泡退避領域150が設けられている。これにより、マイクロ流路チップ1において流路部33内に発生する気泡を特定領域に退避させて送液の安定性を向上することができる。また、気泡退避領域150は、接着剤を用いて別部材を貼り付けて設けたものではなく、隔壁層31を特定の形状とする(湾曲部315を形成する)ことにより設けられたものである。このため、マイクロ流路チップ3は、接着剤成分の流路内への溶出を防いで流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。以下、隔壁層31の形状についてより詳細に説明する。
【0121】
図5に示すように、マイクロ流路チップ2の隔壁層31は、上接触面101、下接触面102および側面110を有している。マイクロ流路チップ2の隔壁層31において、上記第一実施形態に係るマイクロ流路チップ1の隔壁層11と同様の構成は、同一の記号を付して詳しい説明を省略する。
【0122】
側面310は、隔壁層31の側面であって流路部33を形成する面である。側面310は、隔壁層31の上接触面101の端部101aから下接触面の端部102aに亘って形成されており、端部101a(側面310の上端部)においてカバー層12と接続し、端部102a(側面310の下端部)において基板10と接続している。
【0123】
側面310の一の端部側(本例では、基板10側の端部102a側)には湾曲した斜面である湾曲面311が設けられている。
一方、側面310の他の端部である下端部(端部101a)側には湾曲面は設けられていない。つまり、側面310において、湾曲面311は上端部(端部101a)を含まずに形成されている。側面310において、湾曲面311が設けられていない領域には、平坦面312が形成されている。
【0124】
平坦面312は、隔壁層31の端部101a(側面110の上端部)においてカバー層12と接続し、隔壁層31の端部101aと端部102aとの間に位置する中間端部310aにおいて湾曲面311と接続している。つまり、側面310の上端部(端部101a)は平坦面312の上端部に相当し、中間端部310aは平坦面312の下端部に相当する。
【0125】
ここで、隔壁層31において平坦面312を含む領域を上側領域31aとし、湾曲面311を含む領域(湾曲面311を有する湾曲部315を有する領域)を下側領域31bとする。理解を容易にするため、図5では隔壁層31の上側領域31aと下側領域31bとを仮想点線によって区切っている。なお、隔壁層31において上側領域31aと下側領域31bとは一体形成されていることが好ましいが、別体として形成されてもよい。つまり、隔壁層31は複層(例えば2層)構造であってもよい。
【0126】
隔壁層31の幅W21は、平坦面312を含む上側領域31aにおいて一定であり、湾曲面311を含む下側領域31bにおいて基板10に向かって縮小している。したがって、隔壁層31における下接触面102の面積は、上接触面101の面積よりも小さくなっている。つまり、隔壁層31と基板10とを接合するための接合領域は、隔壁層31とカバー層12とを接合するための接合領域よりも面積が小さくなっている。
【0127】
このため、マイクロ流路チップ2において、流路部33の幅(流路幅W22)は、隔壁層31のうち湾曲面311を含む湾曲部315で形成される領域において、第一支持部材である基板10に近づくに従って拡大する。さらに、流路幅W22は、隔壁層31のうち湾曲面311以外の部分(本例では平坦面312)で形成される領域において一定である。これにより、マイクロ流路チップ2は、流路部33において気泡退避領域150を形成するための領域を確保することができる。流路部33における流路幅W22、気泡退避領域150の詳細は、後述する。
なお、本実施形態において隔壁層11の下接触面102の面積は上接触面101より小さいものの、隔壁層31と基板10との接合において密着性を十分に維持可能であって、マイクロ流路チップ2の使用時における液漏れや破損などを抑制可能に形成されているものとする。
【0128】
次いで、隔壁層31の側面310に設けられる湾曲面311について具体的に説明する。
本実施形態に係るマイクロ流路チップ2の隔壁層31において、湾曲面311は、側面310の一部に形成されており、断面視で凸形状に湾曲している。ここで、「断面視」における「断面」は、例えばマイクロ流路チップ2を厚み方向(流路部33の長手方向と直交する方向)に切断した断面であって、少なくとも隔壁層31とカバー層12と流路部33とを含む断面である。言い換えれば、湾曲面311は、隔壁層31の下接触面102(第一支持部材と接する接触面)の流路部33側の端部である端部102aを含んで形成されており、下接触面102の端部102aにおいて(端部102aを起点として)、基板10から離れるように湾曲している。
【0129】
隔壁層31において湾曲面311は、平坦面312の下端部に相当する中間端部310aから側面310の下端部に相当する端部102aに亘って形成されている。中間端部310aは湾曲面311の上端部に相当し、端部102aは湾曲面311の下端部に相当する。湾曲面311は、側面310の一の端部(本例では下端部)である端部102aを含んで形成されており、端部102aにおいて基板10に接続している。
【0130】
湾曲面311は、隔壁層31の下側領域31bにおける側面310、すなわち側面310の基板10側の領域に形成されている。
図5に示すように、隔壁層31の下側領域31bにおいて、湾曲面311の下端部(下接触面102の流路部33側の端部)である端部102aは、湾曲面311の上端部(中間端部310a)よりも流路部33の中央から離れて位置している。すなわち、湾曲面311の下端部(端部102a)は、中間端部310aよりも対向する隔壁層31から離れて位置している。
言い換えれば、隔壁層31において、湾曲面311の上端部(中間端部310a)は、湾曲面311の下端部(端部102a)よりも流路部33の中央寄りに位置している。すなわち、湾曲面311の上端部(中間端部310a)は、湾曲面311の下端部(端部102a)よりも対向する隔壁層31の近くに位置している。
【0131】
湾曲面311は、平坦面312と接続する中間端部310aから、側面310の下端部(端部102a)に向かって凸形状に湾曲して基板10と接続している。具体的には、湾曲面311は、中間端部310aを起点として、流路部33の中央および対向する隔壁層31から離れるように湾曲して基板10と接続している。
これにより、断面視において隔壁層31の幅W21は、基板10に近づくに従って、流路部33の中央および対向する隔壁層31から離れる方向に縮小することとなる。したがって、断面視において隔壁層31は、基板10に向かうにつれて幅W21が縮小する形状となる。
【0132】
隔壁層31の幅W21は、基板10に近づくに従って連続的に減少する。より具体的には、隔壁層31の下側領域31bにおける幅W21は、基板10に近づくに従って連続的に流路部33の中央および対向する隔壁層31から離れる方向に縮小する。
ここで「連続的に縮小する」とは、下側領域31bにおいて湾曲面311と平坦面312とが接続する中間端部310aから湾曲面311と基板10とが接続する端部102aに向かうにつれて、隔壁層31の幅W21が拡大(伸長)することなく継続的に縮小することを示す。
【0133】
図5に示すように、凸形状に湾曲した湾曲面311において最も突出した凸部311aは、湾曲面311の上端部である中間端部310a(平坦面312の下端部)よりも、流路部33の中央から離れて位置している。したがって、隔壁層31の幅W21は、湾曲面311の凸部311aにおいても拡大することなく継続的に減少している。これにより、流路部33の基板10側において流路幅W22を確実に拡大し、基板10と隔壁層11との間に気泡退避領域150を設けることができる。
【0134】
また図5に示すように、隔壁層31の下側領域31bには、湾曲部315が設けられている。湾曲部315は、流路部33側の端部において湾曲面311を含んで形成されている。このため、湾曲部315は、第一支持部材と接触する接触面(下接触面102)の流路部33側の端部102aにおいて基板10から離れるように湾曲している。これにより、流路部33の基板10側において流路幅W22が拡大し、気泡退避領域150を設けることができる。
【0135】
また図5に示すように、隔壁層31の下側領域31bにおいて、下接触面102の端部102a(側面110の下端部)と側面310の中間端部310aとは、断面視で凸形状の円弧状となる湾曲面311で連結されている。このため図5に示すように、湾曲部315の流路部33側の端部は角丸形状を有している。湾曲部315の流路部33側の端部が角丸形状を有することで、流路部33の送液の安定性をより向上させることができる。さらに、流路部33内に生じた気泡が気泡退避領域150に集約され易くなる。
【0136】
次に、基板10、隔壁層31およびカバー層12で形成される流路部33の構成について説明する。流路部33の流路幅W22は、対向する一対の隔壁層31間の幅、すなわち側面310間の幅として画定される。
上述のように、断面視において隔壁層31は、基板10に向かうにつれて幅W21が縮小する形状である。このため、図5に示すように、一対の隔壁層31における側面310間の幅は、基板10側よりも基板10側の方が広くなっている。したがって、流路部33の流路幅W22は、基板10側から基板10側に向かって広くなっている。
【0137】
具体的には、流路幅W22は、カバー層12の裏面12aが露出する流路部33の最上部の領域、すなわち一対の隔壁層31における端部101a間が最も狭くなっている。上述のように、隔壁層31の幅W21は、側面310の上端部(端部102a)から中間端部310aにかけて形成される平坦面312を含む上側領域31aにおいて、一定である。このため、一対の隔壁層31の上側領域31a間の流路幅W22、すなわち一対の隔壁層31の平坦面312間の流路幅W22は、一定となる。したがって、流路部33における平坦面312間の領域は、流路幅W22が最も狭い領域となる。
【0138】
また、流路幅W22は、基板10の表面10aが露出する流路部33の最下部(底部)、すなわち一対の隔壁層31における側面310の下端部(端部102a)間が最も広くなっている。
【0139】
上述のように、隔壁層31の幅W21は、側面310の中間端部310aから端部102aにかけて形成される湾曲面311を含む下側領域31bにおいて、基板10に向かって連続的に縮小している。具体的には図5に示すように、対向する一対の隔壁層31において、下側領域31bに設けられた湾曲部315は、流路部33側の端部(湾曲面311)が互いに離れるように湾曲している。また、湾曲部315は、流路部33側の端部において、基板10から離れるように湾曲している。
【0140】
このため、一対の隔壁層31の下側領域31b間の流路幅W22、すなわち一対の隔壁層31の湾曲面311間の流路幅W22は、基板10に近づくに従って連続的に拡大する。言い換えれば、流路幅W22は、基板10に近付くにつれて、流路部33の中央から離れる方向に伸長する。つまり、流路部33における湾曲面311間の領域は、流路幅W22が基板10に近づくに従って連続的に拡大(伸長)する領域となる。
ここで、「連続的に拡大(伸長)する」とは、流路部33の流路幅W22が、流路部33の中間領域(一対の隔壁層31の中間端部310a間)から流路部33の最下部の領域(一対の隔壁層11の端部102a間)に向かうにつれて、増大することなく継続的に拡大(伸長)することを示す。
【0141】
このように、流路部33の幅は、隔壁層31のうち湾曲部315で形成される領域、より具体的には湾曲面311で形成される領域において基板10に近づくに従って拡大し、隔壁層31のうち湾曲部315(湾曲面311)以外の部分、すなわち平坦面312で形成される領域において一定である。これにより、隔壁層31の幅W21が縮小される領域を基板10側、つまり隔壁層31の下側領域31bに限定することができる。このため、マイクロ流路チップ2は、一対の隔壁層31の湾曲面311間の領域において気泡退避領域150を形成可能な流路幅W22の広さを確保しつつ、隔壁層31とカバー層12とを接合するための接合領域の面積を確保することができる。したがって、マイクロ流路チップ2は、マイクロ流路内に生じる気泡を特定領域(気泡退避領域150)に退避させて送液の安定性を向上しつつ、隔壁層31とカバー層12との密着性を向上することができる。
【0142】
(2.1.3)気泡退避領域
また本実施形態に係るマイクロ流路チップ2において、流路部33には流路部33内に生じる気泡を退避させる気泡退避領域150が設けられている。図5に示すように、気泡退避領域150は、隔壁層31の湾曲部315(具体的には、湾曲面311)と基板10の流路部33側の面である表面10aとで形成されている。この点で、気泡退避領域150は、上記第一実施形態に係るマイクロ流路チップ1の気泡退避領域130と異なる
【0143】
本実施形態に係るマイクロ流路チップ2では、流路部33に気泡退避領域150を設けることにより、流路部33内の特定の領域(中央領域E1以外の領域)に気泡を留めることができる。これにより、マイクロ流路チップ1と同様に、送液を安定させ且つ流路部33内を観察する際の視認性を向上することができる。
【0144】
図5に示すように、本実施形態に係るマイクロ流路チップ2において、気泡退避領域150は、隔壁層31の湾曲部315(湾曲面311)と基板10の表面10aとで形成された凹部であって湾曲面311の下端部(端部102a)が最奥部となる。より具体的には、気泡退避領域150は、隔壁層31の湾曲面311と基板10の表面10aとが湾曲面311の下端部となる端部102aで接続されてなる角部である。
つまり、気泡退避領域150は、流路部33において流路幅W22が最も広い流路最上部の左右両端に形成されている。このため、気泡退避領域150に気泡を退避させることで、流路部33の中央領域E1から離れた領域に気泡を留めることができる。これにより、本実施形態に係るマイクロ流路チップ2は、送液の安定性をより向上させ、且つ流路部33内を観察する際の視認性をさらに向上することができる。
【0145】
流路部33内に発生した気泡は、例えば送液時の圧力等によって中央領域E1から流路部33の左右両端に向かって流体(例えば反応溶液)中を移動し、気泡退避領域150に集約される。図5に示すように、本例において角部として形成される気泡退避領域150は、最奥部である端部102aに向かうほど高さが狭くなっていく。
これにより、気泡退避領域150に集まった気泡が気泡退避領域150に滞留し易くなり、流路部33の中央領域E1方向へ離脱することを抑制することができる。
【0146】
また図5に示すように、気泡退避領域150は、隔壁層31と基板10とで流路部33内に形成される領域であって、別部材を接着剤で貼り付けた構成ではない。これにより、マイクロ流路チップ2は、マイクロ流路チップ1と同様に、送液の安定性を向上し、且つ接着剤成分の流路内への溶出を防いで流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。
【0147】
このように、本実施形態に係るマイクロ流路チップ2は、流路部33と、第一支持部材である基板10と、第二支持部材であるカバー層12と、基板10とカバー層12との間に配置されて流路部33を形成する一対の隔壁層31と、を備えている。また隔壁層31は、基板10と接触する下接触面102の流路部33側の端部102aにおいて基板10から離れるように湾曲する湾曲部315を有している。また流路部33には、湾曲部315と基板10の流路部33側の面である表面10aとで形成され流路部33内に生じる気泡を退避させる気泡退避領域150が設けられている。
これにより、マイクロ流路チップ2は、マイクロ流路内に生じる気泡を特定領域に退避させて送液の安定性を向上し、且つ接着剤成分の流路内への溶出を防いで流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。
また、マイクロ流路チップ2において、流路部33の流路幅W22は、隔壁層31のうち湾曲部315で形成される領域において基板10に近づくに従って拡大し、隔壁層31のうち湾曲部315以外の部分で形成される領域(平坦面312で形成される領域)において一定である。これにより、マイクロ流路チップ2は隔壁層31とカバー層12との接合領域の面積が確保され、送液を安定させ且つ隔壁層31とカバー層12との密着性を向上することができる。
【0148】
(2.2)マイクロ流路チップの製造方法
本実施形態に係るマイクロ流路チップ2の基本的な製造方法は、上記第一実施形態に係るマイクロ流路チップ1の製造方法(図3参照)と同様に、基板10上に、樹脂を塗工する工程(上記ステップS1)と、塗工した樹脂を露光する工程(上記ステップS3)と、露光した樹脂を現像及び洗浄し基板10上に流路部13を画定する隔壁層11を形成する工程(上記ステップS4および上記ステップS5)と、隔壁層11をポストベーク処理する工程(上記ステップS6)と、隔壁層11の基板10とは反対側の面にカバー層12を接合する工程(上記ステップS8)と、を含んでいる。このため、詳細な説明は省略する。
【0149】
本実施形態においても、マイクロ流路チップ1と同様に、現像工程(ステップS4)において、現像時間や現像液の使用量等の調整により、湾曲部315、平坦面(本例では、平坦面312)を形成すればよい。これにより、基板10上の余分な樹脂(ここでは感光性樹脂)を除去することで、隔壁層31を断面視で基板10に向かって幅W21が狭くなる形状に形成することができる。
【0150】
本実施形態では、感光性樹脂層の厚み方向の中間部分よりも下側(本例では、中間端部310aより下側)において、現像時における現像時間や現像液の濃度等の調整により、隔壁層31の一部に湾曲部315を形成すればよい。
例えば本実施形態では、例えば、現像時において隔壁層31の上側領域31aを形成する際に、感光性樹脂層の上側(カバー層12を接合する側)からの一部領域において一定量の樹脂を溶解させて除去し、残存する樹脂の量を一定とすればよい。これにより、隔壁層31の上側領域31aにおいて隔壁層31の幅W21を一定とすることができる。さらに、現像時間や現像液の濃度等の調整により、上側領域31aにおける側面310を平面形状として、平坦面312を形成することができる。
【0151】
また感光性樹脂層の残余の領域(基板10側の領域)において、基板10に向かうほど樹脂の溶解度合いを大きくして除去する樹脂の量を増加させ、基板10に向かうほど残存する樹脂を少なくすればよい。例えば、現像時において隔壁層31の下側領域31bを形成する際に、特に基板10と接触する下接触面102における流路部33側の端部において多くの樹脂を溶解させて除去し、残存する樹脂の量を少なくすればよい。これにより、下側領域31bにおいて、基板10から離れるように凸形状に湾曲した湾曲面311を有する湾曲部315を形成し、隔壁層31の幅W21を基板10に向かって縮小する形状とすることができる。
【0152】
このように、本実施形態では現像により基板上の余分な樹脂を除去することで、隔壁層31の基板10と接触する下接触面102における流路部33側の端部102aにおいて凸形状に湾曲した湾曲部315を形成することができる。
【0153】
また、本実施形態では、未露光領域が現像時に溶解されるネガ型レジストで感光性樹脂層を形成することで、感光性樹脂層の下側において、現像時に樹脂を溶解させ易くすることができる。このため、隔壁層31をより容易に、断面視で基板10に向かって幅が縮小広くなる形状とすることができる。
【0154】
(2.3)変形例
以下、本実施形態の変形例に係るマイクロ流路チップについて、図6を用いて説明する。図6は、本実施形態の変形例に係るマイクロ流路チップ201の一構成例を説明するための断面図である。
マイクロ流路チップ201は、基板10と、基板10上に流路部43を形成する隔壁層41と、カバー層12と、を備えている。図6に示すように、マイクロ流路チップ201は、隔壁層41の上側領域41aが延在部425による裾引き形状を有する点で、上述のマイクロ流路チップ2と相違する。
【0155】
以下、隔壁層41および隔壁層41で画定される流路部43について説明する。なお、隔壁層41および流路部43以外の各構成(基板10およびカバー層12)については、マイクロ流路チップ1の基板10およびカバー層12と同様の構成であるため、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0156】
(2.3.1)隔壁層の形状と流路の構成
本変形例に係るマイクロ流路チップ201における隔壁層41の形状、および流路部43の構成について、詳細に説明する。まず、流路部43を形成する隔壁層41の形状について説明する。
【0157】
図6に示すように、マイクロ流路チップ201の隔壁層41は、上接触面101、下接触面102および側面410を有している。マイクロ流路チップ201の隔壁層41において、上記マイクロ流路チップ2の隔壁層31と同様の構成は、同一の記号を付して詳しい説明を省略する。
【0158】
また図6に示すように、マイクロ流路チップ201の隔壁層41は、第二支持部材であるカバー層12の裏面12aに沿って流路部43の横断方向に延在する延在部425を有し、断面視で第二支持部材(カバー層12)に向かって幅が広くなっている。このため、マイクロ流路チップ201において、隔壁層41とカバー層12とを接合するための接合領域の面積が拡大される。つまり、隔壁層41は、断面視で幅W31が第一支持部材である基板10に向かって縮小し、且つ幅W31が第二支持部材であるカバー層12に向かって拡大する形状を有している。
これによりマイクロ流路チップ201は、送液の安定性を向上し、且つ流路内の溶液の反応阻害を抑制可能であるとともに、隔壁層41とカバー層12との密着性を向上することができる。
【0159】
ここで、「断面視」における「断面」は、例えばマイクロ流路チップ201を厚み方向(流路部43の長手方向と直交する方向)に切断した断面であって、基板10、隔壁層41、カバー層12および流路部43を含む断面である。以下、隔壁層41の形状についてより詳細に説明する。
【0160】
側面410は、隔壁層41の側面であって流路部43を形成する面である。本変形例において、端部101aは側面410の上端部に相当し、端部102aは、側面410の下端部に相当する。
【0161】
図6に示すように、側面410の一の端部側には湾曲面311が設けられている。具体的には、上記マイクロ流路チップ2と同様に、側面410の下端部(端部102a)側に湾曲面311が形成されている。
また、側面410の他の端部側には、凹形状に湾曲した斜面である湾曲面421が設けられている。具体的には、側面410の上端部(端部101a)側に湾曲面421が形成されている。さらに、側面410において湾曲面(湾曲面311,421)が設けられていない領域、すなわち湾曲面311と湾曲面421との間の領域には、平坦面412が形成されている。隔壁層41の側面410が湾曲面311と反対側に湾曲面421を備える点で、マイクロ流路チップ201の隔壁層41は、上記マイクロ流路チップ2の隔壁層31と異なる。
【0162】
平坦面412は、第一中間端部410aにおいて湾曲面421と接続し、第二中間端部410bにおいて湾曲面311と接続している。つまり、平坦面412は側面410の第一中間端部410aから第二中間端部410bに亘って形成されており、第一中間端部410aが平坦面412の上端部に相当し、第二中間端部410bは平坦面412の下端部に相当する。
【0163】
また、湾曲面421は、側面410の第一中間端部410aにおいて平坦面412と接続し、側面410の上端部である端部101aにおいてカバー層12と接続している。つまり、湾曲面421は側面410の第一中間端部410aから端部101aに亘って形成されており、側面410の第一中間端部410aが湾曲面421の下端部に相当し、側面410の上端部である端部101aが湾曲面421の上端部に相当する。
【0164】
また、湾曲面311は、上記マイクロ流路チップ2における隔壁層31の中間端部310aに代えて、隔壁層41の第二中間端部410bにおいて平坦面412と接続している。つまり、本変形例において湾曲面311は、側面(本例では側面410)の下端部である端部101bから第二中間端部410bに亘って形成されており、側面410の第二中間端部410bが湾曲面311の下端部に相当する。
これ以外は、本変形例によるマイクロ流路チップ201の湾曲面311は、上記マイクロ流路チップ2の湾曲面311と同等である。また同様に、本変形例によるマイクロ流路チップ201の湾曲面311を有する湾曲部315は、上記マイクロ流路チップ2の湾曲部115と同等である。
以下、本変形例における湾曲面311、湾曲部315については、詳細な説明は省略する。
【0165】
ここで、隔壁層41において、湾曲面421を含む領域を上側領域41aとし、湾曲面311を含む領域を下側領域41bとし、平坦面412を含む領域を中間領域41cとする。理解を容易にするため、図6では隔壁層41の上側領域41a、下側領域41bおよび中間領域41cを仮想点線によって区切っている。なお、隔壁層41において上側領域41a、下側領域41bおよび中間領域41cは一体形成されていることが好ましいが、別体として形成されてもよい。つまり、隔壁層41は複層(例えば3層)構造であってもよい。
【0166】
隔壁層41の幅W31は、湾曲面311を含む下側領域41bにおいて基板10に向かって縮小し、湾曲面421を含む上側領域41aにおいてカバー層12に向かって拡大し、平坦面412を含む中間領域41cにおいて一定である。これにより、マイクロ流路チップ201は、流路部43において気泡退避領域150を形成するための領域を確保することができ、さらに隔壁層41で形成される流路部43の幅(流路幅W32)の広さを保持しながら、隔壁層41とカバー層12とを接合するための接合領域の面積を拡大することができる。
【0167】
次いで、隔壁層41の側面410に設けられる湾曲面421について具体的に説明する。湾曲面421は、側面410の残余の一部(隔壁層41の上側領域41aにおける側面410)に形成されており、断面視で凹形状に湾曲している。つまり湾曲面421は、側面410のカバー層12側の領域に形成されている。
【0168】
図6に示すように、隔壁層41の上側領域41aにおいて、側面410の上端部である端部101aは、第一中間端部410a(湾曲面421の下端部)よりも流路部43の中央寄りに位置している。具体的には、隔壁層41の上接触面101は、カバー層12裏面12aに沿って流路部43の中央方向(対向する隔壁層41方向)延在している。このため、側面410の上端部である端部101aは、第一中間端部410aよりも対向する隔壁層41の近くに位置している。
言い換えれば、隔壁層41において、湾曲面421の下端部(第一中間端部410a)は湾曲面421の上端部(端部101a)よりも流路部43の中央から離れて位置している。すなわち、湾曲面421の下端部は、湾曲面421の上端部となる端部101aよりも対向する隔壁層41から離れて位置している。
【0169】
湾曲面421は、第一中間端部410aから、端部101aに向かって凹形状に湾曲してカバー層12と接続している。これにより、隔壁層41の幅W31は、カバー層12に近づくに従って、流路部43の中央方向、すなわち対向する隔壁層41の方向(流路部43の横断方向)に伸長することとなる。したがって、断面視において隔壁層41は、カバー層12に向かうにつれて幅W31が広がる形状となる。
【0170】
隔壁層41の上側領域41aにおける幅W31は、カバー層12に近づくに従って連続的に拡大する。より具体的には、隔壁層41の上側領域41aにおける幅W31は、カバー層12に近づくに従って連続的に流路部43の中央方向、すなわち横断方向に伸長して拡大する。ここで「連続的に拡大(伸長)する」とは、湾曲面421の下端部である第一中間端部410aから湾曲面421の上端部である端部101aに向かうにつれて、隔壁層41の幅W31が減少(短縮)することなく継続的に拡大(伸長)することを示す。
【0171】
図6に示すように、凹形状の湾曲面421において、最奥部421aは湾曲面421の下端部である第一中間端部410aよりも、流路部43の中央寄りに位置している。したがって、隔壁層41の幅W31は、湾曲面421の最奥部421aにおいても減少することなく継続的に拡大している。これにより、マイクロ流路チップ201において隔壁層41とカバー層12とを接合するための接合領域の面積が確実に拡大し、隔壁層41とカバー層12との密着性をより確実に向上することができる。
【0172】
また図6に示すように、隔壁層41は、カバー層12の裏面12aに沿って流路部43の横断方向に延在する延在部425を有し、断面視で第二支持部材であるカバー層12に向かって幅が広くなっている。具体的には、延在部425は流路部43の中央方向、すなわち対向する隔壁層41方向に延在している。これにより、延在部425は裾引き形状を有しており、隔壁層41は、カバー層12に向かって幅が広くなっている。
【0173】
また延在部425は、断面視で凹形状に湾曲した湾曲面421を有している。このため、延在部425は、流路部43の横断方向に向かって厚みが縮小する形状を有する。これにより、マイクロ流路チップ201は、隔壁層41とカバー層12との接合面積を拡大しつつ、湾曲面421が平面状である場合と比べて隔壁層41の幅W31の拡大に伴う流路部43の幅(流路幅W32)の縮小を低減することができる。
【0174】
以上説明したように、本変形例によるマイクロ流路チップ201において、隔壁層41は、第二支持部材(カバー層12)の表面に沿って流路部43の横断方向に延在する延在部425を有し、断面視で第二支持部材(カバー層12)に向かって幅が広くなっている。
これによりマイクロ流路チップ201は、送液の安定性を向上し、且つ流路内の溶液の反応阻害を抑制可能であるとともに、隔壁層41とカバー層12との密着性を向上することができる。
【0175】
また、隔壁層41において延在部425は、断面視で凹形状に湾曲した湾曲面421を有している。
これにより、マイクロ流路チップ201は、隔壁層41の幅W31の拡大に伴う流路部43の幅(流路幅W32)の縮小を低減することができ、送液の安定性をさらに向上し、且つ隔壁層41とカバー層12との密着性を向上することができる。
【0176】
次に、基板10、隔壁層41およびカバー層12で形成される流路部43の構成について説明する。流路部43の流路幅W32は、対向する一対の隔壁層41間の幅、すなわち側面410間の幅として画定される。
上述のように、断面視において隔壁層41は、基板10に向かうにつれて幅W31が縮小し、カバー層12に向かうにつれて幅W31が広がる形状である。このため、図6に示すように、一対の隔壁層41における側面410間の幅は、平坦面412間よりも基板10側の領域の方が広くなっており、平坦面412間よりもカバー層12側の領域の方が狭くなっている。したがって、流路部43の流路幅W32は、流路部43の高さ(隔壁層41の厚み)の中央領域から、基板10に向かって広くなり、カバー層12に向かって狭くなっている。
【0177】
具体的には、流路幅W32は、基板10の表面10aが露出する流路部43の最下部(底部)、すなわち一対の隔壁層41における側面410の下端部(端部102a)間が最も広くなっている。これは、上記マイクロ流路チップ2において、流路部33の最下部(一対の隔壁層31における端部102a間)の流路幅W22が最も広くなっている構造と同様である。
【0178】
また、流路幅W32は、カバー層12の裏面12aが露出する流路部43の最上部、すなわち一対の隔壁層41における側面410の上端部(端部102a)間が最も狭くなっている。
上述のように、隔壁層41の幅W31は、側面410の第一中間端部410aから上端部(端部101a)にかけて形成される湾曲面421を含む上側領域41aにおいて、カバー層12に向かって連続的に拡大している。具体的には、対向する一対の隔壁層41において、湾曲面421を含む延在部425は、互いに近づくようにして流路部43の横断方向に延在している。
【0179】
このため、一対の隔壁層41における湾延在部425間の幅は、カバー層12に近づくに従って狭くなる(縮小する)。つまり、流路部43の幅(流路幅W32)は、隔壁層41のうち延在部425で形成される領域においてカバー層12に近づくに従って縮小する。より具体的には、一対の隔壁層41における湾曲面421間の幅は、カバー層12に近づくに従って連続的に狭くなる(縮小する)。つまり、一対の隔壁層41における湾曲面421間の流路幅W32は、カバー層12に近づくに従って連続的に狭くなる(縮小する)。
【0180】
ここで、「連続的に縮小する」とは、流路部43の流路幅W32が、平坦面412の上端部間の領域(第一中間端部410a間の領域)から流路部43の最上部(端部101a間)に向かうにつれて、増大することなく継続的に縮小することを示す。
【0181】
また上述のように、隔壁層41の幅W31は、側面410の第一中間端部410aから第二中間端部410bにかけて形成される平坦面412を含む中間領域41cにおいて、一定である。このため、一対の隔壁層41における平坦面412間の幅は、一定である。つまり、一対の隔壁層41における平坦面412間(中間領域41c間)の流路幅W32は、一定となる。より具体的には、平坦面412間の流路幅W32は、湾曲面311間(下側領域41b間)よりも狭く、湾曲面421間(上側領域41a間)よりも広くなっている。
【0182】
このように、流路部43の幅は、隔壁層41のうち湾曲部315で形成される領域、より具体的には湾曲面311で形成される領域において基板10に近づくに従って拡大し、隔壁層41のうち平坦面412で形成される領域において一定である。
さらに、流路部43の幅(流路幅W32)は、隔壁層41のうち延在部425で形成される領域においてカバー層12に近づくに従って縮小する。
これにより、隔壁層41の幅W31が縮小される領域を基板10側、つまり隔壁層41の下側領域41bに限定し、隔壁層41の上側領域41aにおいて隔壁層41の幅W31を拡大することができる。このため、マイクロ流路チップ201は、一対の隔壁層41の湾曲面311間の領域において気泡退避領域150を形成可能な流路幅W32の広さを確保しつつ、隔壁層41とカバー層12とを接合するための接合領域の面積を拡大することができる。したがって、マイクロ流路チップ201は、マイクロ流路内に生じる気泡を特定領域(気泡退避領域130)に退避させて送液の安定性を向上しつつ、隔壁層41とカバー層12との密着性をさらに向上することができる。
【0183】
また、流路幅W32は、平坦面412で形成される領域において一定であり、且つ延在部425で形成される領域よりも広い。これにより、流路幅W32が縮小される領域を流路部43の最上部側(カバー層12側)、つまり湾曲面421間に限定することができる。このため、マイクロ流路チップ201は、一対の隔壁層41の平坦面412間の領域において流路部43の流路幅W32の広さを維持しつつ、隔壁層41とカバー層12とを接合するための接合領域の面積を確実に拡大することができる。したがって、マイクロ流路チップ201は、流路部43内の流体(反応溶液など)の送液性および流路部43内を観察する際の視認性を向上しつつ、隔壁層41とカバー層12との密着性をより確実に向上することができる。
【0184】
また図6に示すように、流路部43は、一対の隔壁層41の上側領域41a間の領域、すなわち湾曲面421間の領域において、断面視で角丸形状を有している。ここでの「断面視」における「断面」は、マイクロ流路チップ201を厚み方向(流路部43の長手方向と直交する方向)に切断した断面であって、基板10、隔壁層41、カバー層12および流路部43を含む断面である。湾曲面421間の領域において、流路部43が断面視で角丸形状であることにより、流路部43における流体(例えば反応溶液)の送液速度や流量を安定させることができる。
【0185】
また本変形例に係るマイクロ流路チップ201において、流路部43には流路部43内に生じる気泡を退避させる気泡退避領域150が設けられている。図6に示すように、気泡退避領域150は、隔壁層41の湾曲部315(具体的には、湾曲面311)と基板10の流路部43側の面である表面10aとで形成されている。マイクロ流路チップ201における気泡退避領域150は、上記マイクロ流路チップ2における気泡退避領域150と同等の構成であるため、詳しい説明は省略する。
【0186】
(2.3.2)マイクロ流路チップの製造方法
本変形例に係るマイクロ流路チップ201の基本的な製造方法は、上記マイクロ流路チップ2の製造方法と同様であるため、詳細な説明は省略する。
本変形例においては、露光工程(ステップS3)における露光時の紫外光領域の調整と、現像工程(ステップS4)における感光性樹脂層の余分な樹脂の除去により、隔壁層41の上側領域41aを、断面視でカバー層12に向かって幅W31が広くなる形状に形成することができる。
【0187】
一例として、隔壁層41を形成するための感光性樹脂層を、ネガ型レジストで形成する場合について、図7を用いて説明する。図7は、ネガ型レジストで形成された感光性樹脂層における光透過率(ここでは、紫外光の透過率)、および露光装置が照射する露光光(本例では紫外光)のスペクトル(透過スペクトル)の一例を併せて示す線グラフである。図7では、感光性樹脂層の光透過率を膜厚ごと(20~100μm)に示している。
図7に示すように、本例では点線枠で示す特定の波長領域に、露光光のスペクトルのピークが存在している。さらに本例では、上記特定の波長領域の光について、膜厚に応じて光透過率が異なっている。このような場合、露光工程での感光性樹脂層における露光量は、感光性樹脂層の表面から内部に向かって相対的に減少していく。具体的には、図7において点線枠で示す特定の波長領域の光(紫外光)について、感光性樹脂層の内部に進むほど露光量が減少する。
【0188】
ここで特定の波長領域の光とは、例えば紫外光領域のうち250nm以上350nm以下の範囲内の波長の紫外光に相当する。例えば図7は、感光性樹脂層において、膜厚が厚くなるに従って、特定の波長領域の紫外光の透過率が減少していくことを示している。言い換えれば、膜厚が薄い部分、すなわち感光性樹脂層の表層部(上部)の光透過率は、膜厚の厚い部分、すなわち感光性樹脂層の内部(下部)よりも露光量が多いことを示している。
【0189】
感光性樹脂層の上側ほど露光量が多いということは、すなわち感光性樹脂層の上側(カバー層12を接合する側)ほど樹脂(ネガ型レジスト)の硬化が進み易いことを示す。このため、現像時にも感光性樹脂層の上部では、溶解されずに残存する樹脂量が多くなる。つまり、露光工程(ステップS3)において基板10上の感光性樹脂を上記特定の波長領域の光(紫外光領域のうち250nm以上350nm以下の波長の光)に感光させ、現像により基板10上の余分な樹脂を除去することで、隔壁層41の基板10と反対側において、隔壁層41を断面視でカバー層12に向かって幅が広くなる形状に形成することができる。すなわち、隔壁層41の幅W31をカバー層12に向かって拡大させ、隔壁層41の上側領域を裾引き形状とすることができる。
【0190】
また現像により、感光性樹脂層において硬化した樹脂の下側を溶解させて余分な樹脂を除去することで、隔壁層41の側面410に凹形状に湾曲した湾曲面421を形成することができる。このとき、例えば現像時間の現像時間や現像液の使用量等を調整することで、隔壁層41の上側領域41aの側面410の一部に、断面視で凹形状に湾曲した湾曲面421を形成することができる。したがって、現像により、隔壁層41の上側領域41aにおける側面410の一部(上側領域41aの側面410)に、一の端部(端部101a)がカバー層12に接する湾曲面421を形成することができる。これにより、隔壁層41の上側領域41aに湾曲面421を含んだ延在部425を形成することができる。
【0191】
また詳しい説明は省略するが、上記マイクロ流路チップ2の製造方法と同様にして、現像により、隔壁層41の下側領域41bに湾曲面311を形成し、隔壁層41の中間領域41cに平坦面(本例では、平坦面412)を形成すればよい。これにより、下側領域41bの幅W31が断面視で第一支持部材である基板10に向かって縮小し、且つ上側領域41aの幅W31が断面視で第二支持部材であるカバー層12に向かって拡大し、さらに中間領域41cの幅W31が一定である、マイクロ流路チップ201を得ることができる。
【0192】
3.第三実施形態
(3.1)マイクロ流路チップ3の構成
以下、本開示の第三実施形態に係るマイクロ流路チップについて、図8を用いて説明する。図8は、本開示の第三実施形態に係るマイクロ流路チップ3の一構成例を説明するための断面図である。
【0193】
(3.1.1)マイクロ流路チップ3の概要
図8に示すように、マイクロ流路チップ3は、隔壁層51の側面510において、複数の湾曲部(湾曲部115,315)を有する点で、上記第一実施形態に係るマイクロ流路チップ1,2と相違する。以下、マイクロ流路チップ3における隔壁層51および隔壁層51で画定される流路部53について説明する。
なお、マイクロ流路チップ3における基板10およびカバー層12については、マイクロ流路チップ1の基板10およびカバー層12と同様の構成であるため、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0194】
図8に示すように、マイクロ流路チップ3は、2つの支持部材(第一支持部材、第二支持部材)に挟まれた壁部によって流体が流れる流路である流路部53が画定されている。本例では、上記第一実施形態に係るマイクロ流路チップ1と同様に、カバー層12が第一支持部材に相当し、基板10が第一支持部材に相当する。
【0195】
(3.1.2)隔壁層の形状と流路の構成
本実施形態に係るマイクロ流路チップ3における隔壁層51の形状、および流路部53の構成について、詳細に説明する。まず、流路部53を形成する隔壁層51の形状について説明する。
【0196】
図8に示すように、隔壁層51は、第一支持部材(本例では、カバー層12)に設けられた湾曲部115(第一湾曲部の一例)と、第二支持部材(本例では、基板10)に接触する下接触面102の流路部53側の端部において第二支持部材である基板10から離れる方向に湾曲した湾曲部315(第二湾曲部の一例)とを有している。また流路部53には、湾曲部115と第一支持部材であるカバー層12の裏面12aとで形成され流路部53内に生じる気泡を退避させる気泡退避領域130(第一気泡退避領域の一例)と、湾曲部315と第二支持部材である基板10の流路部53側の面である表面10aとで形成され流路部53内に生じる気泡を退避させる気泡退避領域150(第二気泡退避領域の一例)と、が設けられている。
マイクロ流路チップ3は、複数(本例では、2つ)の気泡退避領域(気泡退避領域130,150)を有することで、流路部53内に発生する気泡をより確実に特定領域に退避させて送液の安定性をさらに向上し、且つ接着剤成分の流路内への溶出を防いで流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。
【0197】
図8に示すように、マイクロ流路チップ3の隔壁層51は、上接触面101、下接触面102および側面510を有している。
マイクロ流路チップ3の隔壁層51において、上記マイクロ流路チップ1,2の隔壁層11,31と同様の構成は、同一の記号を付して詳しい説明を省略する。
【0198】
側面510は、隔壁層51の側面であって流路部53を形成する面である。本実施形態において、端部101aは側面510の上端部に相当し、端部102aは、側面510の下端部に相当する。
【0199】
図8に示すように、側面510の一の端部側には湾曲面111が設けられている。具体的には、上記マイクロ流路チップ1と同様に、隔壁層の側面(本例では、側面510)の上端部(端部101a)側に湾曲面111が形成されている。また、側面510の他の端部側には、湾曲面311が設けられている。具体的には、上記マイクロ流路チップ2と同様に、隔壁層の側面(本例では、側面510)の下端部(端部102a)側に湾曲面311が形成されている。
さらに、側面510において湾曲面(湾曲面111,311)が設けられていない領域、すなわち湾曲面111と湾曲面311との間の領域には、平坦面512が形成されている。隔壁層51の側面510の上下の両端部のそれぞれに湾曲面111,311)を備える点で、マイクロ流路チップ3の隔壁層51は、上記マイクロ流路チップ1の隔壁層11および上記マイクロ流路チップ2の隔壁層31と異なる。
【0200】
平坦面512は、第一中間端部510aにおいて湾曲面111と接続し、第二中間端部510bにおいて湾曲面311と接続している。つまり、平坦面512は上記マイクロ流路チップ103,201の平坦面(平坦面212,412)と同様に、側面(本例では、側面510)の第一中間端部(本例では、第一中間端部510a)から第二中間端部(本例では、第二中間端部510b)に亘って形成されている。
本実施形態において、第一中間端部510aが平坦面512の上端部に相当し、第二中間端部510bは平坦面512の下端部に相当する。
【0201】
湾曲面111は、上記マイクロ流路チップ1における隔壁層11の中間端部110aに代えて、隔壁層51の第一中間端部510aにおいて平坦面512と接続している。つまり、本実施形態において湾曲面111は、側面(本例では側面510)の上端部である端部101aから第一中間端部510aに亘って形成されており、側面510の第一中間端部510aが湾曲面311の下端部に相当する。これ以外は、本実施形態によるマイクロ流路チップ3の湾曲面111および湾曲面111を有する湾曲部115は、上記マイクロ流路チップ1の湾曲面111を有する湾曲部115と同等である。
【0202】
また、隔壁層51の湾曲面311は、上記マイクロ流路チップ2における隔壁層31の中間端部310aに代えて、隔壁層51の第二中間端部510bにおいて平坦面512と接続している。つまり、本実施形態において湾曲面311は、側面(本例では側面510)の下端部である端部102aから第二中間端部510bに亘って形成されており、側面510の第二中間端部510bが湾曲面311の上端部に相当する。これ以外は、本実施形態によるマイクロ流路チップ3の湾曲面311および湾曲面311を有する湾曲部315は、上記マイクロ流路チップ2の湾曲面311を有する湾曲部315と同等である。
また本実施形態における平坦面512は、上記マイクロ流路チップ103,201の平坦面(平坦面212,412)と同様の構成である。
以下、本実施形態における湾曲面111,311、湾曲部115,315および平坦面512については、詳細な説明は省略する。
【0203】
ここで、隔壁層51において、湾曲面111を含む領域を上側領域51aとし、湾曲面311を含む領域を下側領域51bとし、平坦面512を含む領域を中間領域51cとする。理解を容易にするため、図8では隔壁層51の上側領域51a、下側領域51bおよび中間領域51cを仮想点線によって区切っている。なお、隔壁層51において上側領域51a、下側領域51bおよび中間領域51cは一体形成されていることが好ましいが、別体として形成されてもよい。つまり、隔壁層51は複層(例えば3層)構造であってもよい。
【0204】
隔壁層51の幅W41は、湾曲面111を含む上側領域51aにおいてカバー層12に向かって縮小し、湾曲面311を含む下側領域51bにおいて基板10に向かって縮小し、平坦面512を含む中間領域51cにおいて一定である。これにより、マイクロ流路チップ3は、流路部53において気泡退避領域130,150を形成するための領域を確保することができる。
【0205】
次に、基板10、隔壁層51およびカバー層12で形成される流路部53の構成について説明する。流路部53の流路幅W42は、対向する一対の隔壁層51間の幅、すなわち側面510間の幅として画定される。
【0206】
上述のように、断面視において隔壁層51は、カバー層12、基板10のそれぞれに向かうにつれて幅W41が縮小する形状である。このため、図8に示すように、一対の隔壁層51における側面510間の幅は、平坦面512間よりもカバー層12および基板10側の領域の方が広くなっており、平坦面512間が最も狭くなっている。したがって、流路部53の流路幅W42は、流路部53の高さ(隔壁層51の厚み)の中央領域から、カバー層12、基板10のそれぞれに向かって広くなり、当該中央領域において他の領域よりも狭くなっている。
【0207】
具体的には、流路部53の幅(流路幅W42)は、隔壁層51のうち湾曲部115で形成される領域(側面510のうち湾曲面111で形成される領域)において第一支持部材であるカバー層12に近づくに従って拡大する。また流路幅W42は、隔壁層51のうち湾曲部315で形成される領域(側面510のうち湾曲面311で形成される領域)において第二支持部材である基板10に近づくに従って拡大する。
【0208】
より具体的には、流路幅W42は、カバー層12の裏面12aが露出する流路部53の最上部および、基板10の表面10aが露出する流路部53の最下部(底部)が最も広くなっている。すなわち、一対の隔壁層51における側面510の上下端部(端部101a,102a)間が最も広くなっている。これは、上記マイクロ流路チップ1において流路部13の最上部の流路幅W2が最も広く、上記マイクロ流路チップ2において流路部33の最下部の流路幅W22が最も広くなる構造と同様である。
【0209】
また図8に示すように、本実施形態に係るマイクロ流路チップ3において、流路部53には気泡退避領域130,150が設けられている。これにより、マイクロ流路チップ3は、流路部53内に発生する気泡をより確実に特定領域に退避させて送液の安定性をさらに向上し、且つ接着剤成分の流路内への溶出を防いで流路内の溶液の反応阻害を抑制することができる。
マイクロ流路チップ3における気泡退避領域130,150は、上記マイクロ流路チップ1,2における気泡退避領域130、150と同等の構成であるため、詳しい説明は省略する。
【0210】
(3.2)マイクロ流路チップの製造方法
本実施形態に係るマイクロ流路チップ3の基本的な製造方法は、上記第一実施形態に係るマイクロ流路チップ1の製造方法(図3参照)と同様であるため、詳細な説明は省略する。本実施形態においても、マイクロ流路チップ1,2と同様に、現像工程(ステップS4)において、現像時間や現像液の使用量等の調整により、湾曲部115、平坦面(本例では、平坦面512)、湾曲部315を形成すればよい。
【0211】
例えば本実施形態において、現像により基板上の余分な樹脂(ここでは感光性樹脂)を除去することで、隔壁層51のカバー層12と接触する上接触面101における流路部53側の端部101aにおいて凸形状に湾曲した湾曲部115(上側湾曲部の一例)を形成すればよい。また現像により基板上の余分な樹脂を除去することで、隔壁層51の基板10と接触する下接触面102における流路部53側の端部102aにおいて凸形状に湾曲した湾曲部315(下側湾曲部)を形成すればよい。
これにより、基板10上の余分な樹脂(ここでは感光性樹脂)を除去して、隔壁層51を断面視でカバー層12、基板10のそれぞれに向かって幅W41が狭くなる形状に形成することができる。
【0212】
例えば感光性樹脂層をポジ型レジストで形成する場合、露光時において、紫外光の露光方向の調整や、露光装置から放射された光を集光することにより、感光性樹脂層(ポジ型レジストの層)の上部と下部(基板10側)の露光量を同等としてもよい。これにより、現像時において、感光性樹脂層の上部及び下部において溶解される樹脂量が多くなる。一方、露光量が少ない感光性樹脂層の中間部分は、現像時において上部及び下部に比べて溶解される樹脂量が少なく、残存する樹脂量が少なくなる。
これにより、隔壁層51の上側領域51a、下側領域51bの幅W41をカバー層12、基板10に向かって縮小させ、隔壁層51の中間領域51cにおける、隔壁層51の幅W41を、上側領域51a、下側領域51bよりも大きくすることができる。
【0213】
また本実施形態において、感光性樹脂層による隔壁層をポジ型レジストとネガ型レジストとの2層構造としてもよい。具体的には、基板10側にネガ型レジストを塗工して露光し、現像によって湾曲部315(下側湾曲部)を有する下側領域51bを形成する。その後に下側領域51bの上にポジ型レジストを塗工して露光し、現像によって湾曲部115(上側湾曲部)を有する上側領域51aを形成する。このようにして、隔壁層51を2層構造としてもよい。下側領域51bを形成する際において、感光性樹脂層の基板10側のネガ型レジストで形成された領域では、基板10に向かうほど露光量が少ないため溶解し易く、現像時に残存する樹脂量が少なくなる。また上側領域51aを形成する際において、感光性樹脂層のカバー層12側のポジ型レジストで形成された領域は、上述のように露光量が多いことで溶解し易くなり、現像時に残存する樹脂量が少なくなる。これにより、隔壁層51の上側領域51a、下側領域51bの幅W41をカバー層12、基板10に向かって縮小させることができる。またこの場合も、現像により湾曲部315と湾曲部115との間の側面510に平坦面512を設け、中間領域51cを形成すればよい。
【0214】
4.第4実施形態
(4.1)マイクロ流路チップ6の概要
以下、本開示の第二実施形態に係るマイクロ流路チップ6について、図9を用いて説明する。図9は、本開示の第二実施形態に係るマイクロ流路チップ100の一構成例を説明するための断面図である。
マイクロ流路チップ6は、基板10と、基板10上に配置された密着層15と、基板10上に流路部13を形成する隔壁層11と、カバー層12と、を備えている。すなわち、マイクロ流路チップ6は、隔壁層11と基板10との間に密着層15を備える点で、第一実施形態に係るマイクロ流路チップ1と相違する。
【0215】
(4.2)密着層の構成
以下、密着層15について説明する。なお、密着層15以外の各構成(基板10、隔壁層11、カバー層12及び流路部13)については、マイクロ流路チップ1と同様の構成であるため、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0216】
マイクロ流路チップ6には、基板10と樹脂層(例えば感光性樹脂層)、すなわち隔壁層11との密着性を向上する目的で、基板10上に疎水化表面処理(HMDS処理)を施したり、薄膜の樹脂をコートしてもよい。特に基板10にガラスを用いる場合などは、図9に示すように基板10と隔壁層11(感光性樹脂層)との間に薄膜による密着層15を設けてもよい。この場合、流路部13を流れる流体(例えば液体)は、基板10ではなく密着層15と接することになる。このため、密着層15は、流路部13に導入される流体への耐性を有していればよい。基板10上に密着層15を設けることで、感光性樹脂による流路パターンの解像性向上などへも寄与することができる。
【0217】
(4.3)変形例
以下、本実施形態の変形例に係るマイクロ流路チップについて、図10から図13を用いて説明する。
【0218】
(4.3.1)第一変形例
まず、図10を用いて、本実施形態の第一変形例に係るマイクロ流路チップ601の構成について説明する。図10は、本変形例に係るマイクロ流路チップ601の構成例を示す断面模式図である。マイクロ流路チップ601は、上記第一実施形態の変形例に係るマイクロ流路チップ103に、密着層を追加した構成である。
【0219】
マイクロ流路チップ601は、基板10と、基板10上に配置された密着層15と、基板10上に流路部23を形成する隔壁層21と、カバー層12と、を備えている。すなわち、マイクロ流路チップ601は、隔壁層21と基板10との間に密着層15を備える点で、第一実施形態の第一変形例に係るマイクロ流路チップ103と相違する。
【0220】
本変形例における密着層15は、上記第四実施形態に係るマイクロ流路チップ100における密着層15と同等であるため、説明は省略する。密着層15を設けることで、マイクロ流路チップ601において、基板10と樹脂層(例えば感光性樹脂層)、すなわち隔壁層21との密着性を向上することができる。
【0221】
(4.3.2)第二変形例
次に、図11を用いて、本実施形態の第二変形例に係るマイクロ流路チップ602の構成について説明する。図11は、本変形例に係るマイクロ流路チップ602の構成例を示す断面模式図である。マイクロ流路チップ602は、上記第二実施形態に係るマイクロ流路チップ2に、密着層を追加した構成である。
【0222】
マイクロ流路チップ602は、基板10と、基板10上に配置された密着層15と、基板10上に流路部33を形成する隔壁層31と、カバー層12と、を備えている。すなわち、マイクロ流路チップ602は、隔壁層31と基板10との間に密着層15を備える点で、第二実施形態に係るマイクロ流路チップ2と相違する。
【0223】
本変形例における密着層15は、上記第四実施形態に係るマイクロ流路チップ100における密着層15と同等であるため、説明は省略する。密着層15を設けることで、マイクロ流路チップ602において、基板10と樹脂層(例えば感光性樹脂層)、すなわち隔壁層31との密着性を向上することができる。
【0224】
(4.3.3)第三変形例
次に、図12を用いて、本実施形態の第三変形例に係るマイクロ流路チップ603の構成について説明する。図12は、本変形例に係るマイクロ流路チップ603の構成例を示す断面模式図である。マイクロ流路チップ603は、上記第二実施形態の変形例に係るマイクロ流路チップ201に、密着層を追加した構成である。
【0225】
マイクロ流路チップ603は、基板10と、基板10上に配置された密着層15と、基板10上に流路部43を形成する隔壁層41と、カバー層12と、を備えている。すなわち、マイクロ流路チップ603は、隔壁層41と基板10との間に密着層15を備える点で、第二実施形態の変形例に係るマイクロ流路チップ201と相違する。
【0226】
本変形例における密着層15は、上記第四実施形態に係るマイクロ流路チップ100における密着層15と同等であるため、説明は省略する。密着層15を設けることで、マイクロ流路チップ603において、基板10と樹脂層(例えば感光性樹脂層)、すなわち隔壁層41との密着性を向上することができる。
【0227】
(4.3.4)第四変形例
次に、図13を用いて、本実施形態の第四変形例に係るマイクロ流路チップ604の構成について説明する。図12は、本変形例に係るマイクロ流路チップ604の構成例を示す断面模式図である。マイクロ流路チップ604は、上記第三実施形態に係るマイクロ流路チップ3に、密着層を追加した構成である。
【0228】
マイクロ流路チップ604は、基板10と、基板10上に配置された密着層15と、基板10上に流路部53を形成する隔壁層51と、カバー層12と、を備えている。すなわち、マイクロ流路チップ604は、隔壁層51と基板10との間に密着層15を備える点で、第三実施形態に係るマイクロ流路チップ3と相違する。
【0229】
本変形例における密着層15は、上記第四実施形態に係るマイクロ流路チップ100における密着層15と同等であるため、説明は省略する。密着層15を設けることで、マイクロ流路チップ604において、基板10と樹脂層(例えば感光性樹脂層)、すなわち隔壁層51との密着性を向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0230】
本開示は、研究用途、診断用途、検査、分析、培養などを目的としたマイクロ流路チップにおいて、複雑な製造工程が必要なく上蓋を形成できるマイクロ流路チップ及びその製造方法として好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0231】
1、2、3、103、201 … マイクロ流路チップ
4 … 入力部
5 … 出力部
10 … 基板
11、21、31、41、51 … 隔壁層
12 … カバー層
13、23、33、43、53 … 流路部
15 … 密着層
110、210、310、410、510 … 側面
111、221、311、421… 湾曲面
115、315… 湾曲部
225、425… 延在部
130、150 … 気泡退避領域
112、212、312、412、512 … 平坦面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2023-05-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ流路チップであって、
流路と、
第一支持部材と、
第二支持部材と、
前記第一支持部材と前記第二支持部材との間に配置されて流路を形成する一対の隔壁部と、
を備え、
前記隔壁部は、
前記第一支持部材と接触する接触面の流路側の端部において前記第一支持部材から離れるように湾曲する湾曲部と、前記第二支持部材の表面に沿って前記流路の横断方向に延在する延在部とを有し、断面視で前記第二支持部材に向かって幅が広くなっており、
前記流路には、前記湾曲部と前記第一支持部材の前記流路側の面とで形成され該流路内に生じる気泡を退避させる気泡退避領域が設けられている
ことを特徴とするマイクロ流路チップ。
【請求項2】
前記延在部は、断面視で凹形状に湾曲した湾曲面を有している
ことを特徴とする請求項に記載のマイクロ流路チップ。
【請求項3】
前記流路の幅は、
前記隔壁部のうち前記延在部で形成される領域において前記第二支持部材に近づくに従って縮小する
ことを特徴とする請求項又はに記載のマイクロ流路チップ。
【請求項4】
前記流路の幅は、
前記隔壁部のうち前記湾曲部で形成される領域において前記第一支持部材に近づくに従って拡大し、前記隔壁部のうち前記湾曲部及び前記延在部以外の部分で形成される領域において一定である
ことを特徴とする請求項記載のマイクロ流路チップ。
【請求項5】
前記第一支持部材は、前記隔壁部の上面側に設けられて前記流路の上部を覆うカバー層であり、
前記第二支持部材は、前記隔壁部の底面側に設けられて前記流路の底部を形成する基板である
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のマイクロ流路チップ。
【請求項6】
前記第一支持部材は、前記隔壁部の底面側に設けられて前記流路の底部を形成する基板であり、
前記第二支持部材は、前記隔壁部の上面側に設けられて前記流路の上部を覆うカバー層である
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のマイクロ流路チップ。
【請求項7】
前記隔壁部と前記基板との間に密着層が設けられている
ことを特徴とする請求項又は項に記載のマイクロ流路チップ。
【請求項8】
前記隔壁部を形成する樹脂材料は、紫外光領域である190nm以上400nm以下の波長の光に対して感光性を有する感光性樹脂である、
ことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載のマイクロ流路チップ。
【請求項9】
基板上に、樹脂を塗工する工程と、
塗工した前記樹脂を露光する工程と、
露光した前記樹脂を現像及び洗浄し、前記基板上において流路を画定する隔壁部を形成する工程と、
前記隔壁部をポストベーク処理する工程と、
前記隔壁部の前記基板とは反対側の面にカバー層を接合する工程と、を含み、
前記現像により前記基板上の余分な樹脂を除去することで、前記隔壁部の前記基板と反対側の面における流路側の端部において凸形状に湾曲した上側湾曲部を形成し、
前記現像により、前記隔壁部の前記基板側において、前記隔壁部を断面視で前記基板に向かって幅が広くなる形状とする
ことを特徴とするマイクロ流路チップの製造方法。
【請求項10】
基板上に、樹脂を塗工する工程と、
塗工した前記樹脂を露光する工程と、
露光した前記樹脂を現像及び洗浄し、前記基板上において流路を画定する隔壁部を形成する工程と、
前記隔壁部をポストベーク処理する工程と、
前記隔壁部の前記基板とは反対側の面にカバー層を接合する工程と、を含み、
前記現像により前記基板上の余分な樹脂を除去することで、前記隔壁部の前記基板と接触する面の流路側の端部において凸形状に湾曲した湾曲部を形成する
ことを特徴とするマイクロ流路チップの製造方法。
【請求項11】
前記樹脂を露光する工程において、感光性樹脂を、紫外光領域のうち250nm以上350nm以下の波長の光に感光させ、
前記現像により、前記隔壁部の前記基板と反対側において、前記隔壁部を断面視で前記カバー層に向かって幅が広くなる形状とする
ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロ流路チップの製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係るマイクロ流路チップは、マイクロ流路チップであって、流路と、第一支持部材と、第二支持部材と、前記第一支持部材と前記第二支持部材との間に配置されて流路を形成する一対の隔壁部と、を備え、前記隔壁部は、前記第一支持部材と接触する接触面の流路側の端部において前記第一支持部材から離れるように湾曲する湾曲部と、前記第二支持部材の表面に沿って前記流路の横断方向に延在する延在部とを有し、断面視で前記第二支持部材に向かって幅が広くなっており、前記流路には、前記湾曲部と前記第一支持部材の前記流路側の面とで形成され該流路内に生じる気泡を退避させる気泡退避領域が設けられていることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
また、本開示の一態様に係るマイクロ流路チップの製造方法は、基板上に、樹脂を塗工する工程と、塗工した前記樹脂を露光する工程と、露光した前記樹脂を現像及び洗浄し、前記基板上において流路を画定する隔壁部を形成する工程と、前記隔壁部をポストベーク処理する工程と、前記隔壁部の前記基板とは反対側の面にカバー層を接合する工程と、を含み、前記現像により前記基板上の余分な樹脂を除去することで、前記隔壁部の前記基板と反対側の面における流路側の端部において凸形状に湾曲した上側湾曲部を形成し、前記現像により、前記隔壁部の前記基板側において、前記隔壁部を断面視で前記基板に向かって幅が広くなる形状とすることを特徴とする。
また、本開示の他の態様に係るマイクロ流路チップの製造方法は、基板上に、樹脂を塗工する工程と、塗工した前記樹脂を露光する工程と、露光した前記樹脂を現像及び洗浄し、前記基板上において流路を画定する隔壁部を形成する工程と、前記隔壁部をポストベーク処理する工程と、前記隔壁部の前記基板とは反対側の面にカバー層を接合する工程と、を含み、前記現像により前記基板上の余分な樹脂を除去することで、前記隔壁部の前記基板と接触する面の流路側の端部において凸形状に湾曲した湾曲部を形成することを特徴とする。