IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大洋技研工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-流体開閉弁 図1
  • 特開-流体開閉弁 図2
  • 特開-流体開閉弁 図3
  • 特開-流体開閉弁 図4
  • 特開-流体開閉弁 図5
  • 特開-流体開閉弁 図6
  • 特開-流体開閉弁 図7
  • 特開-流体開閉弁 図8
  • 特開-流体開閉弁 図9
  • 特開-流体開閉弁 図10
  • 特開-流体開閉弁 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098830
(43)【公開日】2023-07-11
(54)【発明の名称】流体開閉弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/524 20060101AFI20230704BHJP
   G05D 16/06 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
F16K31/524 C
G05D16/06 Z
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189420
(22)【出願日】2022-11-28
(31)【優先権主張番号】202111644135.8
(32)【優先日】2021-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210145977.7
(32)【優先日】2022-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】000208064
【氏名又は名称】大洋技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119585
【弁理士】
【氏名又は名称】東田 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100096998
【弁理士】
【氏名又は名称】碓氷 裕彦
(72)【発明者】
【氏名】邵 熙鵬
(72)【発明者】
【氏名】森 克巳
【テーマコード(参考)】
3H063
5H316
【Fターム(参考)】
3H063AA01
3H063BB50
3H063DB18
3H063GG03
5H316BB01
5H316DD02
5H316EE02
5H316EE10
5H316EE12
5H316FF14
5H316GG01
5H316JJ01
5H316KK02
5H316LL07
(57)【要約】
【課題】磁石を用いることなく、低圧側所定圧以下の状態での通路閉、作動圧の状態での通路開、高圧側所定圧より高い状態での通路閉の3通りの切り替えを確実に行う。
【解決手段】ダイヤフラム室に配置されダイヤフラムのダイヤフラム室側への変位方向である第1方向及びダイヤフラムの定圧室側への変位である第2方向にダイヤフラムと共に移動するカム構造体と、第1方向及び第2方向とは直交する方向であって、流入通路の弁座からダイヤフラム室に向かう方向である第3方向及び流入通路のダイヤフラム室から弁座に向かう方向である第4方向に移動して、弁座を開閉する弁体部材とを備える。ダイヤフラムの第1方向及び第2方向の移動を、カム構造体を介して弁体部材の第3方向及び第4方向の移動に変えて、通路の開閉を行う。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイヤフラム室、このダイヤフラム室に流体を流入する流入通路、この流入通路の前記ダイヤフラム室とは反対側面に形成される弁座、及び前記ダイヤフラム室から流体を流出する流出通路とを備えるバルブ本体と、
前記ダイヤフラム室とダイヤフラムを挟んで配置され内部が所定圧に保たれる定圧室を形成するバルブカバーと、
前記ダイヤフラム室に配置され、前記ダイヤフラムの前記ダイヤフラム室側への変位方向である第1方向及び前記ダイヤフラムの前記定圧室側への変位である第2方向に前記ダイヤフラムと共に移動するカム構造体と、
前記ダイヤフラムを前記第1方向に付勢するダイヤフラム付勢バネと、
前記カム構造体の前記第1方向及び前記第2方向の移動を支持するカムガイドと、
前記第1方向及び前記第2方向とは直交する方向であって、前記流入通路の前記弁座から前記ダイヤフラム室に向かう方向である第3方向及び前記流入通路の前記ダイヤフラム室から前記弁座に向かう方向である第4方向に移動して、前記弁座を開閉する弁体部材とを備え、
前記カム構造体は、前記第1方向の端側に形成される第1カム面と前記第2方向の端側に形成される第2カム面が、前記第1方向及び前記第2方向の中間部位に形成される第3カム面より前記第3方向に変移した形状であり、
前記弁体部材は、前記弁座と当接離脱する弁本体と、前記カム構造体と当接して前記カム構造体の前記第1方向及び前記第2方向の移動を前記第3方向及び第4方向の変位に代えて前記弁本体に伝える弁ロットとを備える
ことを特徴とする流体開閉弁。
【請求項2】
前記弁体部材は、前記弁本体を前記弁座側に付勢する弁付勢バネを更に備える
ことを特徴とする請求項1記載の流体開閉弁。
【請求項3】
前記弁体部材の前記弁ロットは、前記第3方向の先端にボール部材を収容する
ことを特徴とする請求項1記載の流体開閉弁。
【請求項4】
前記弁体部材の前記弁ロットは、前記第3方向の先端に摺動部材を前記第3方向及び前記第4方向に移動可能に収容するとともに、この摺動部材を前記第3方向に付勢する摺動部材付勢バネを備える
ことを特徴とする請求項1記載の流体開閉弁。
【請求項5】
前記カム構造体は、前記第1カム面と前記第2カム面と前記第3カム面が前記第1方向及び前記第2方向と平行な平面であり、前記第2カム面と前記第3カム面との間は前記第1方向に向かうにつれて前記第4方向に傾斜する傾斜面であり、前記第3カム面と前記第1カム面との間は前記第1方向に向かうにつれて前記第3方向に傾斜する傾斜面である
ことを特徴とする請求項1記載の流体開閉弁。
【請求項6】
前記カム構造体は、前記第1カム面に前記第3方向に窪んで前記弁ロットの前記第3方向の先端を受ける第1カム面凹部を備える
ことを特徴とする請求項1記載の流体開閉弁。
【請求項7】
前記カム構造体は、前記第2カム面に前記第3方向に窪んで前記弁ロットの前記第3方向の先端を受ける第2カム面凹部を備える
ことを特徴とする請求項1記載の流体開閉弁。
【請求項8】
前記カム構造体は、前記第3カム面に前記第4方向に膨らんで前記弁ロットの前記第1方向及び前記第2方向の移動を阻害する第3カム面凸部を備える
ことを特徴とする請求項1記載の流体開閉弁。
【請求項9】
前記バルブ本体の前記流入通路の前記弁体部材の流体流れ上流側には、流体の流量を調整する流量調整弁が配置され、
この流量調整弁は、
前記流入通路のうち前記弁本体の流体流れ上流側に配置される通路絞り部と、
この絞り部の流体流れ上流側に、前記絞り部と対向配置されるボール弁と、
このボール弁を前記絞り部より引き離す方向に付勢するボール弁付勢バネとを備える
ことを特徴とする請求項1記載の流体開閉弁。
【請求項10】
前記バルブ本体の前記流出通路には、流体流れを開閉切り替える流体切替弁が配置され、
この流体切替弁は、
筒形状をして前記流出通路に位置するバルブ室と、このバルブ室と軸方向に連続する円筒状の回動支持部とが、前記バルブ本体に形成され、
前記回動支持部に回転可能に配置されるバルブ基部と、このバルブ基部と一体に回動し前記バルブ室内を回動するバルブ部とを有するバルブ部材と、
前記バルブ部と一体に回動し、前記流出通路の前記バルブ室への開口部と対向して、前記開口部を閉じるシール部材とを備え、
前記回動支持部及び前記バルブ基部の中心軸位置に対して、前記シール部材の回動時の回動中心軸位置が偏芯しており、前記シール部材の回動に応じて前記シール部材は前記開口部に押圧される
ことを特徴とする請求項1記載の流体開閉弁。
【請求項11】
前記バルブ本体の前記流出通路の下流には、流出管が配置され、
この流出管は、前記バルブ本体に対して回動可能に保持されている
ことを特徴とする請求項1記載の流体開閉弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件の開示は流体の圧力に応じて流路の開閉を切り替える開閉弁に関し、例えば、ガス配管の開閉等に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
流体の開閉弁として、流体の圧力に応じて流体圧が低圧側所定圧より低い状態では流路を閉じ、低圧側所定圧と高圧側所定圧との間の作動圧の状態では流路を開き、流体圧が高圧側所定圧より高くなると流路を閉じる開閉弁が用いられる場合がある。特許文献1記載の流体開閉弁では、閉、開、閉の3つの状態を切り替えて維持するために、圧力に応じて変移するダイヤフラムと、ダイヤフラムの位置を保持する磁石とを用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】中国実用新案登録番号 CN213745105U号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ただ、磁石は周囲温度が高温となると磁力が低下するため、所定の状態を維持するのが困難となる場合がある。その為、本来流路を閉じてガス流れを遮断する必要がある状態でも、流路閉を維持できずガスを流してしまう恐れがある。
【0005】
本件開示は、上記点に鑑み、開閉の状態維持に磁石を用いることなくダイヤフラムの変位のみで弁体部材が流路を開いた状態及び閉じた状態を維持することができるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1は、ダイヤフラム室このダイヤフラム室に流体を流入する流入通路この流入通路のダイヤフラム室とは反対側面に形成される弁座及びダイヤフラム室から流体を流出する流出通路とを備えるバルブ本体と、ダイヤフラム室とダイヤフラムを挟んで配置され内部が所定圧に保たれる定圧室を形成するバルブカバーと、ダイヤフラム室に配置されダイヤフラムのダイヤフラム室側への変位方向である第1方向及びダイヤフラムの定圧室側への変位である第2方向にダイヤフラムと共に移動するカム構造体と、ダイヤフラムを第1方向に付勢するダイヤフラム付勢バネと、カム構造体の第1方向及び第2方向の移動を支持するカムガイドと、第1方向及び第2方向とは直交する方向であって、流入通路の弁座からダイヤフラム室に向かう方向である第3方向及び流入通路のダイヤフラム室から弁座に向かう方向である第4方向に移動して、弁座を開閉する弁体部材とを備えている。
【0007】
そして、本開示の第1のカム構造体は、第1方向の端側に形成される第1カム面と第2方向の端側に形成される第2カム面が、第1方向及び第2方向の中間部位に形成される第3カム面より第3方向に変移した形状である。かつ、本開示の第1の弁体部材は、弁座と当接離脱する弁本体と、カム構造体と当接してカム構造体の第1方向及び第2方向の移動を第3方向及び第4方向の変位に代えて弁本体に伝える弁ロットとを備えている。
【0008】
本開示の第1によれば、ダイヤフラムの第1方向及び第2方向の変位が、カム構造体と弁ロットとの協働により、弁体部材の第3方向及び第4方向の変位に変換される。その為、磁石等の部材を必要とすることなく、弁体部材の位置を第1カム面位置、第2カム面位置、及び第3カム面の位置に保持することができる。
【0009】
第2カム面の位置は、カム構造体の第2方向の端側であるので、ダイヤフラムが最も第1方向に変移した状態である。これはダイヤフラム室内の圧力が定圧室内圧力より低い状態に対応する。そして、その状態では弁ロットは第3方向に変移して、弁本体は弁座に当接し流入通路を閉じる。
【0010】
第3カム面の位置は、カム構造体の第1方向及び第2方向の中間部位であるので、ダイヤフラムは、第1方向の端側(第2カム面の位置)から第2方向に変移している。即ち、ダイヤフラム室内の圧力は、低圧側所定圧と高圧側所定圧との中間である作動圧となっている。この状態では、弁ロットは第4方向に変移して、弁本体は弁座から離脱し流入通路を開く。これにより作動圧の流体を流すことができる。
【0011】
第1カム面の位置は、カム構造体の第1方向の端側であるので、ダイヤフラムが最も第2方向に変移した状態である。これはダイヤフラム室内の圧力が定圧室内圧力に対して、高圧側所定圧より高い状態に対応する。高圧の流体が流れるのは望ましくないので、この状態では弁ロットは第3方向に変移する。それにより、弁本体は弁座に当接して流入通路を閉じる。
【0012】
本開示の第2は、弁体部材は弁本体を弁座側に付勢する弁付勢バネを更に備えている。弁付勢バネを配置することで、弁体部材の挙動を安定させることができる。
【0013】
本開示の第3は、弁体部材の弁ロットは第3方向先端にボール部材を回転可能に収容している。ボール部材を配置することで弁ロットがカム構造体に対して滑りやすくなる。それにより、弁ロットの第2カム面と第3カム面との間の移動、及び第3カム面と第2カム面との移動がスムーズになされる。
【0014】
本開示の第4は、弁体部材の弁ロットは第3方向先端に摺動部材を第3方向及び第4方向に移動可能に収容するとともに、この摺動部材を第3方向に付勢する摺動部材付勢バネを備えている。摺動部材をカム構造体に対して滑らかに移動させることができる。なお、摺動部材の第3方向及び第4方向への移動量は、第2カム面と第3カム面との変位量や第3カム面と第1カム面との変位量より小さいので、カム構造体に対して弁ロットを第3方向及び第4方向に変位することはできる。
【0015】
本開示の第5は、カム構造体は第1カム面、第2カム面及び第3カム面が第1方向及び第2方向と平行な平面としている。そして、第2カム面と第3カム面との間は第1方向に向かうにつれて第4方向に傾斜する傾斜面としてあり、第3カム面と第1カム面との間は第1方向に向かうにつれて第3方向に傾斜する傾斜面としている。
【0016】
第1カム面、第2カム面及び第3カム面が第1方向及び第2方向と平行な平面となっているので、弁ロットが第1カム面、第2カム面及び第3カム面と係合している状態で流体圧力が多少変動し、ダイヤフラムが第1方向及び第2方向に変移しても、弁体部材はその位置を保持することができる。これにより、弁本体による弁座の開閉を安定させることができる。
【0017】
本開示の第6は、カム構造体は第1カム面に第3方向に窪んで弁ロットの第3方向先端を受ける第1カム面凹部を備えている。上記のように弁ロットが第1カム面に当接しているのは、ダイヤフラム室内の圧力が高圧側所定圧より高くなった状態である。この状態では弁本体は弁座と当接して流入通路を確実に閉じていることが望ましい。そこで、弁ロットの第3方向先端を第1カム面凹部に嵌め合わせることで、弁本体の閉状態を確実に維持することができる。
【0018】
本開示の第7は、カム構造体は第2カム面に第3方向に窪んで弁ロットの第3方向先端を受ける第2カム面凹部を備えている。弁ロットが第2カム面に当接しているのは、ダイヤフラム室内の圧力が低圧側所定圧より低い状態である。この状態は流体開閉弁が流路に接続されていない状態も含まれる。即ち、流体開閉弁の輸送時も含まれ、その状態はカム構造体や弁体部材が移動しないことが望ましい。そこで、弁ロットの第3方向先端を第1カム面凹部に嵌め合わせることで、弁本体の閉状態を確実に維持できるようにしている。
【0019】
本開示の第8は、カム構造体は第3カム面に第4方向に膨らんで弁ロットの第1方向及び第2方向の移動を阻害する第3カム面凸部を備えている。弁ロットが第3カム面と当接しているのは、流体が所定の作動圧にある状態で、この状態はできる限り弁本体が弁座から離脱して流入通路を開いているのが望ましい。そこで、第3カム面凸部を設けることで、弁ロットが不必要に第2カム面側や第1カム面側に移動しないようにしている。
【0020】
本開示の第9は、バルブ本体の流入通路の弁体部材の流体流れ上流側には、流体の流量を調整する流量調整弁が配置されている。そして、この流量調整弁は、流入通路の内弁本体の流体流れ上流側に配置される絞り部と、この絞り部の流体流れ上流側に絞り部と対向配置されるボール弁と、このボール弁を絞り部より引き離す方向に付勢するボール弁付勢バネとを備えている。
【0021】
流体流量が増えてボール弁付勢バネの付勢力に勝れば、ボール弁は絞り部側に変移する。その結果、ボール弁と絞り部とにより流体の流路は絞られ、流通抵抗が増して流量が制限される。逆に、流量が適正値以下になれば、ボール弁付勢バネの付勢力によりボール弁は絞り部から引き離される。その結果、ボール弁と絞り部との間の流通抵抗が減少して流量が増すこととなる。この流量調整弁の挙動は下流の流体開閉と連動している。例えば流体流量が変動しても、流量調整弁を用いることで下流の流体開閉弁の挙動を安定させることができる。
【0022】
本開示の第10は、バルブ本体の流出通路には、流体流れを開閉切り替える流体切替弁が配置されている。そして、この流体切替弁は、筒形状をして流出通路に位置するバルブ室と、このバルブ室と軸方向に連続する円筒状の回動支持部とがバルブ本体に形成されている。また、回動支持部に回転可能に配置されるバルブ基部と、このバルブ基部と一体に回動しバルブ室内を回動するバルブ部とを有するバルブ部材と、バルブ部と一体に回動し流出通路のバルブ室への開口部と対向して開口部を閉じるシール部材とを備えている。
【0023】
そして、本開示の第10は、バルブ室の中心軸位置に対して、シール部材の回動時の回動中心軸位置が偏芯しており、シール部材の回動に応じてシール部材は開口部に押圧される流体切替弁である。
【0024】
本開示の第10では、バルブ室の中心軸位置に対して、シール部材の回動時の回動中心軸位置が偏芯している結果、シール部材の径方向位置が、シール部材の回動に応じて変位する。そのため、この変位を利用してシール部材を流体入口通路及び流体出口通路のいずれか一方に押圧することが可能である。このシール部材の押圧により、シール部材が流体入口通路及び流体出口通路のいずれか一方を確実にシールすることができる。
【0025】
本開示の第11は、バルブ本体の流出通路の下流に、流出管を配置している。そして、この流出管は、バルブ本体に対して回動可能に保持されている。これにより、流出管に接続する配管の取り回し方向を自在に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、流体開閉弁の第1状態の断面図である。
図2図2は、流体開閉弁の第2状態の断面図である。
図3図3は、流体開閉弁の第3状態の断面図である。
図4図4は、図1のIV-IV線に沿う断面図である。
図5図5は、図4よりバルブ部を90度回動させた状態の断面図である。
図6図6は、カム構造体の断面図である。
図7図7は、カム構造体の他の実施態様の断面図である。
図8図8は、弁ロットの他の実施態様の断面図である。
図9図9は、弁ロットの更に他の実施態様の断面図である。
図10図10は、弁ロットの更に他の実施態様の断面図である。
図11図11は、弁ロットの更に他の実施態様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1ないし図3において、1は流体開閉弁である。100はバルブ本体で、アルミニウム若しくはアルミニウム合金のダイキャストにより成形されている。このバルブ本体100には最大径が50~60ミリメートル程度の円筒形のダイヤフラム室110が形成されている。また、バルブ本体100には、このダイヤフラム室110に流体を流入する流入通路120も形成されている。なお、流体として本例ではガスを用いている。そして、流入通路120はガス会社等からのガス同入管に連結している。流入通路120の内径は5~10ミリメートル程度である。
【0028】
バルブ本体100には、この流入通路120のダイヤフラム室110とは反対側面に弁座130が形成されている。また、バルブ本体100には、ダイヤフラム室110から流体を流出する流出通路140も形成されている。流出通路140の内径も5~10ミリメートル程度である。そして、流出通路140の下流には、ポリアセタールPOMやナイロン等の樹脂製の流出管200が配置されている。
【0029】
流出管200とバルブ本体100の流出通路140との間は、Oリング210によりシールされている。また、流出管200とバルブ本体100の流出通路140とはサークリップ220で抜け止めがされている。なお、流出管200はバルブ本体100に対して360度回転可能である。流出管200には、家庭用のガスコンロ等のガス機器と流体開閉弁1とを繋ぐガス配管が接続される。その為、流出管200の外周にはガス配管の抜け止め構造230が形成されている。
【0030】
バルブ本体100のダイヤフラム室110と対向して、アルミニウム若しくはアルミニウム合金製のバルブカバー300が配置されている。このバルブカバー300とバルブ本体100とによって、ニトリルゴム製のダイヤフラム310の外周が挟持される。従って、ダイヤフラム室110はダイヤフラム310により閉じられる。また、バルブカバー300はダイヤフラム310によりダイヤフラム室110から仕切られる。バルブカバー300の内部は、ダイヤフラム310との間で定圧室320が形成されている。定圧室320は円筒状の開口部330を介して大気と連通し、従って、定圧室320は大気圧となっている。
【0031】
ダイヤフラム310の内周部には、金属製のロット340が配置されている。ロット340はステンレス、鉄、アルミニウム若しくはアルミニウム合金等で形成されている。そして、ロット340は、直径5ミリメートル程度、長さ30ミリメートル程度の円柱形状である。
【0032】
ダイヤフラム310の内周部には、ポリアセタールPOMやナイロン等の樹脂製で、円盤状をした保持板350が配置されている。そして、ダイヤフラム310の内周部はこの保持板350と共に、ロット340に形成された鍔部341とナット342とにより挟持されている。ロット340の上方部分はバルブカバー300の開口部330によって摺動支持されている。即ち、ロット340はその下方部がダイヤフラム310の内周部により保持され、上方部は開口部330により保持されている。
【0033】
ロット340の上部には、肩部343が形成されており、この肩部343に摘み部360が係止している。摘み部360は、ポリアセタールPOMやナイロン等の樹脂製で、概略円筒状をし、円筒状の中間部内周に、円盤状の連結部361が掲載されている。摘み部360のうちこの連結部361がロット340の肩部343に係止され、その状態でナット344によって締め付け固定されている。
【0034】
摘み部360の外周には、摘み部360の外径よりやや大きい内径を持つ円筒状をした摘みガイド362が配置されている。この摘みガイド362もポリアセタールPOMやナイロン等の樹脂製である。摘みガイド362の下端は内方向に屈曲して係止部363が形成され、この係止部363によりバルブカバー300の上面に保持されている。即ち、バルブカバー300には、バネ受け365がサークリップ366により固定され、このバネ受け365と係止部363との間に介在する摘みガイド固定バネ364によって、摘みガイド362はバルブカバー300に押し付けられている。これにより、摘み部360が第1方向に最大限変位した状態でも摘みガイド362がガタつくのを効果的に抑制できている。ただ、摘みガイド362は、バルブカバー300に直接溶着するようにしても良い。
【0035】
定圧室320には、ダイヤフラム310をダイヤフラム室110側に押圧するダイヤフラム付勢バネ370が配置されている。このダイヤフラム付勢バネ370は、バネ鋼製で、一端は保持板350に当接し、他端はバルブカバー300に形成された当接面301に当接している。
【0036】
ロット340の下端にはカム構造体400が配置されている。カム構造体400はポリアセタールPOMやナイロン等の樹脂製で、ロット340の下端に溶着されている。本例では、ダイヤフラム310、ロット340及びカム構造体400は、ダイヤフラム室110と定圧室320との圧力差に応じて図1ないし図3の上下方向に変移する。ただ、図における流体開閉弁1の配置状態は一例であり、ロット340等は必ずしも上下動するものには限られない。そこで、図における下方向を第1方向と呼び、上方向を第2方向とする。第1方向は、ダイヤフラム310等がダイヤフラム室110側へ変位する方向である。また、第2方向は、ダイヤフラム310等が定圧室320側へ変位する方向である。
【0037】
また、第1方向及び第2方向と直交する左右方向であって、右方向を第3方向とし、左方向を第4方向とする。第3方向は、流入通路120の弁座130からダイヤフラム室110に向かう流体の流れ方向でもあり、弁座130を閉じる方向でもある。そして、第4方向は流入通路120のダイヤフラム室110から弁座130に向かう方向でもあり、弁座130を開く方向でもある。
【0038】
カム構造体400の第1方向(下側)の端側には、第1カム面410が形成されている。第1カム面410は第1方向及び第2方向(上下方向)にほぼ平坦となっている。また、カム構造体400の第2方向(上側)の端側にも、第2カム面420が形成されている。第2カム面420も第1方向及び第2方向(上下方向)にほぼ平坦となっている。そして、第1カム面410と第2カム面420とは、第3方向及び第4方向(左右方向)にほぼ同じ位置に形成されている。
【0039】
カム構造体400の第1方向及び第2方向(上下方向)の中間部位には、第3カム面430が形成されている。この第3カム面430も第1方向及び第2方向(上下方向)にほぼ平坦となっている。そして、第3カム面430は、第1カム面410及び第2カム面420に比較して、第4方向(左方向)に位置している。換言すれば、第1カム面410及び第2カム面420の方が、第3カム面430より弁座130から離脱する方向(第3方向)に位置している。
【0040】
カム構造体400の第3カム面430と第1カム面410との間は第1方向(下方向)に向かうにつれて第3方向(右方向)に傾斜する傾斜面(第1傾斜面440)となっている。また、第2カム面420と第3カム面430との間は第1方向(下方向)に向かうにつれて第4方向(左方向)に傾斜する傾斜面(第2傾斜面450)となっている。
【0041】
カム構造体400の第1ないし第3カム面410、420、430の形成された面とは逆の第3方向(右方向)の構造体底面460は、第1方向及び第2方向(上下方向)に平坦となっている。そして、この構造体底面460は、バルブ本体100に形成された支持面150によって支持されている。即ち、カム構造体400は、支持面150に沿って第1方向及び第2方向(上下方向)に摺動する。その為、この支持面150は、カム構造体400の第1方向及び第2方向(上下方向)の移動を支持するカムガイドでもある。ただ、カム構造体400の第1方向及び第2方向(上下方向)の移動はロット340によっても支持されている。上述の通り、ロット340の移動は下方部がダイヤフラム310の内周部により保持され、上方部は開口部330により保持されているので、ダイヤフラム310と開口部330も、カム構造体400の第1方向及び第2方向(上下方向)の移動を支持するカムガイドである。
【0042】
カム構造体400と接するように弁体部材500が配置されている。弁体部材500は、ポリアセタールPOMやナイロン等の樹脂製で、弁座130と当接、離脱する弁本体510とカム構造体400と接する弁ロット520を一体成形している。
【0043】
弁ロット520は、バルブ本体100に形成された保持通路160によって、第3方向及び第4方向(左右方向)の移動が可能な状態で保持されている。弁ロット520の先端521は球形状をしており、カム構造体400の第1カム面410、第1傾斜面440、第3カム面430、第2傾斜面450及び第2カム面420に沿ってスムーズに移動できるようになっている。
【0044】
弁本体510の弁座130と当接する面には、ゴム製のシール材511が接着されており、弁本体510が弁座130に着座した際、流入通路120を確実に閉じるようにしている。また、弁本体510は、弁付勢バネ530の付勢力によって弁座130側に押圧されており、この弁付勢バネ530によっても、弁本体510が弁座130に着座した際のシールを確実にしている。
【0045】
流入通路120の弁体部材500の上流部には、流量調整弁600が配置されている。上記の弁付勢バネ530の一端は、この流量調整弁600の通路絞り部610に係止されている。弁付勢バネ530の他端は、弁本体510に当接している。
【0046】
流量調整弁600は、通路絞り部610と対向してボール弁620が配置され、このボール弁620と通路絞り部610との間には、ボール弁620を通路絞り部610から引き離す方向に付勢するボール弁付勢バネ630が配置されている。ボール弁620及びボール弁付勢バネ630は流量調整弁ハウジング640内に配置されている。流量調整弁ハウジング640には通路穴641が多数形成されており、流量調整弁ハウジング640によって、流入通路120が絞られることは無い。なお、通路絞り部610、ボール弁620及び流量調整弁ハウジング640はいずれもポリアセタールPOMやナイロン等の樹脂製である。そして、通路絞り部610と流量調整弁ハウジング640とは接着されている。
【0047】
流出通路140には、通路の開閉を切り替える流体切替弁700が配置されている。流体切替弁700は、バルブ部材710とシール部材720とを備える。図4及び図5に示すように、直線的に配置された流出通路140を横切るようにバルブ室705が形成されている。そして、このバルブ室705にバルブ部材710とシール部材720とが配置されている。
【0048】
バルブ本体100には、断面円形上の回動支持部730が形成されている。回動支持部730は、内径は15ミリメートル程度である。流出通路140が開口するバルブ室705は、回動支持部730の下方に形成されている。回動支持部730とバルブ室705とは連続した同一径の円筒形状である。
【0049】
バルブ部材710は、ポリアセタールPOMやナイロン等の樹脂製で、回動支持部730に嵌り合って回動するバルブ基部711と、このバルブ基部711の下方に一体形成されバルブ室705内を回動するバルブ部712を備えている。バルブ基部711及びバルブ部712は共に円柱形状で、バルブ基部711の外径は回動支持部730の内径と略同じである。
【0050】
バルブ基部711にはOリング保持溝が形成され、バルブ用Oリング713が保持される。このバルブ用Oリング713は回動支持部730の内周と密着し、バルブ室705より流体が漏出するのを防いでいる。
【0051】
バルブ部712の外径は10ミリメートル程度で、バルブ部712の中心軸Bは、バルブ基部711及び回動支持部730の中心軸Aから1ミリメートル程度偏芯している。従って、バルブ部712はバルブ室705内を偏芯して回動することとなる。
【0052】
ゴム製で円環状のシール部材720は、バルブ部712の外周のうち、流出通路140と対向する位置に配置されている。また、バルブ部712の外周で、このシール部材720が配置される部位にはローレット溝が形成されて、シール部材720がバルブ部712に確実に保持されるようになっている。
【0053】
次に、上記構成の流体開閉弁1の作動を説明する。通常の作動時には、流体切替弁700は図5の状態で、流出通路140を開いている。図1の状態は、流体開閉弁1がガス管と接続される前の状態及びガス管と接続されてもガスの圧力が大気圧より1キロパスカル未満高い第1状態である。図1の第1状態では、ダイヤフラム付勢バネ370により、ダイヤフラム310はダイヤフラム室110側(第1方向)に変移している。その為、弁ロット520の先端521は第2カム面420と当接している。
【0054】
弁体部材500の状態は、弁付勢バネ530の押圧力で保持している。その為、流体開閉弁1が配管と接続される前で、単体で輸送されている状態であっても、ロット340や弁体部材500等が移動することは、ダイヤフラム付勢バネ370や弁付勢バネ530の付勢力で、効果的に抑制されている。
【0055】
流体開閉弁1がガス配管と接続され、ダイヤフラム室110の圧力が大気圧より1キロパスカル程度以上上回ると、ダイヤフラム310は、ダイヤフラム付勢バネ370の付勢力に抗して定圧室320側(第2方向)に変移する。この変移に伴いカム構造体400も第2方向に移動する。このカム構造体400の移動に応じて、弁ロット520の先端521は第2傾斜面450と当接して、弁本体510を弁座130から引き離す方向(第4方向)に移動する。
【0056】
図2は、弁ロット520の先端521が第2傾斜面450を通過して第3カム面430と当接している第2状態である。図2の第2状態では、弁本体510のシール材511は弁座130から離脱しており、流入通路120は開いている。この状態でガスの流量は、流量調整弁600によって調整される。
【0057】
流量調整弁600のボール弁620は、ボール弁付勢バネ630によって流量調整弁ハウジング640側に押圧されている。その為、通常は、通路絞り部610は絞られていなく、所定量のガスを流すことができる。ただ、ガスの流量が所定量を超えると、ボール弁620がボール弁付勢バネ630の付勢力に抗して通路絞り部610側に変位する。そして、ボール弁620と通路絞り部610とによりガスの流路を絞って、ガスの流量を制限する。このボール弁620と通路絞り部610とボール弁付勢バネ630との協働により、ガスの流量を所定量に調整している。特に本実施態様では、流量調整弁600の挙動は下流の流体開閉弁1と連動している。ダイヤフラム310の移動に応じて第1状態から第2状態に切り替わるとガスの流れは流量0から一気に上昇することとなる。また、第2状態でもガス流量が急激に増加する可能性がある。そのような場合でも、流量調整弁600を備えることにより、下流に配置された流体開閉弁1の挙動を安定化させることができる。
【0058】
第3カム面430は所定の距離があるので、ダイヤフラム室110内の圧力が大気圧より1キロパスカル以上上昇して、カム構造体400が第1方向に移動しても、図2に示す第2状態を維持することができる。第2状態は、ダイヤフラム室110内のガス圧が定圧室320内の大気圧より0.8~8キロパスカル程度高い状態である。
【0059】
即ち、ガスの所定の作動圧は大気圧より0.8~8キロパスカル程度高い圧力である。低圧側所定圧である0.8キロパスカルを下回ると、弁ロット520の先端521は第2傾斜面450を超えて第1カム面410と接する。即ち、図1に示す第1状態に復帰する。
【0060】
第2状態(図2)と第1状態(図1)との対比から分かるように、摘み部360はその上方部が半分程度摘みガイド362より突出している。この摘み部360の上半分に所定の色や表示を付すことで、流体開閉弁1が所定の作動圧で作動していることを、視覚的に示すことができる。
【0061】
ダイヤフラム室110内のガス圧が定圧室320内の大気圧より8キロパスカル程度以上高くなって、高圧側所定圧より高くなると、弁ロット520の先端521は第1傾斜面440を超えて第1カム面410と対向する。図3が、ガス圧が高圧側所定圧より高くなった第3状態である。
【0062】
図2の第2状態と図3の第3状態との対比から分かるように、摘み部360は更に上方に変位して、その全体が摘みガイド362より突出している。即ち、摘み部360は上半分のみでなく下半分も摘みガイド362から露出している。その為、摘み部360の下半分に上半分とは異なる所定の色や表示を付すことで、ガス圧が高圧側所定圧より高くなって、流体開閉弁1が閉じていることを、視覚的に示すことができる。
【0063】
図6に示すように、第1傾斜面440の傾斜角度Cは、第2傾斜面450の傾斜角度Dより急勾配となっている。これにより、ガス圧が高圧側所定圧より高くなると直ちに第1カム面410に移動できるようにしている。また、第1カム面410側に一旦移動すると、第3カム面430側に復帰するのを困難としている。逆に、第2傾斜面450の傾斜角度Dは緩斜面であるので、図2に示すガス圧が所定の作動圧である第2状態と、図1に示すガス圧が低圧側所定圧より低くなった第1状態との切り替えは、比較的容易に行える。
【0064】
図3に示すように、ガス圧が高圧側所定圧より高くなって、流体開閉弁1が閉じている第3状態では、流体切替弁700で流出通路140を閉じるのが望ましい。流体切替弁700の切り替え動作は、作業者がバルブ部材710の上部に形成された操作部715を手動で回動させることで行う。
【0065】
図4が流出通路140を閉じた状態で、バルブ部712の中心軸Bは最も流出通路140の開口部側に変位している。この変位によりシール部材720を開口部に押し付けて、シール部材720を弾性変形させ、開口部を確実に塞いでいる。より具体的には、バルブ部712の中心軸Bが最も変位した状態でのバルブ部712外周と開口部との距離(1ミリメートル程度)より、シール部材720の肉厚(1.5ミリメートル程度)の方が大きいので、その差分シール部材720が押しつぶされて、開口部のシールを行う。
【0066】
なお、90度の回動動作の間、シール部材720はバルブ室705の内周に押し付けられることとなるが、押し付けられるのは、シール部材720の一部のみである。従って、操作部715の回動に必要な荷重を必要以上に高めることは無い。
【0067】
ガス圧の異常状態が解消して流体開閉弁1が機能復帰すれば、流体切替弁700も流出通路140を開く。作業者が操作部715を90度回動させた状態が図5で、バルブ部712の中心軸Bは、バルブ基部711及び回動支持部730の中心軸Aに対して図の上方に変位している。その結果、シール部材720は流出通路140の開口部から離れて、ガスが流れる状態に復帰する。
【0068】
なお、上述したのは、本開示の望ましい例であるが、本開示は種々の態様がある。図6の第1傾斜面440の傾斜角度Cや第2傾斜面450の傾斜角度Dは、一例であり他の角度も設定できる。ダイヤフラム室110内のガス圧と定圧室320の大気圧との差圧によりダイヤフラム310に加わる力を基として、ダイヤフラム付勢バネ370の設定荷重と、弁付勢バネ530の設定荷重を定める。そして、それらの設定荷重に応じて第1傾斜面440と第2傾斜面450の傾斜角度を設計することとなる。
【0069】
また、図7に示すように、第2カム面420に凹部421を設けても良い。凹部421の形状は、弁ロット520の先端521の球形状よりわずかに大きな球形状としている。凹部421に弁ロット520の先端521が嵌り合うことで、図1に示す第1状態を安定させることができる。上述のように、第1状態は流体開閉弁1の輸送状態も含んでいるので、輸送時の振動等によりダイヤフラム310、ロット340、弁体部材500等が変移するのを抑制できる。
【0070】
図7に示すように、第3カム面430の最も第2傾斜面450側(第2方向側)の部位に凸部431を設けても良い。凸部431を設けることで、低圧側所定圧にヒステリシスを与えることができる。これにより、図2に示す流入通路120が開いている第2状態を安定させることができる。
【0071】
更に、図7に示すように、第1カム面410に凹部411を設けても良い。凹部411の形状も第2カム面420の凹部421と同様、弁ロット520の先端521の球形状よりわずかに大きな球形状としている。凹部411に弁ロット520の先端521が嵌り合うことで、図3に示す流入通路120を閉じる第3状態を安定させることができる。ガス圧が高圧側所定圧より高くなって、流入通路120が閉じられると、その流入通路120閉の状態は維持するのが好ましいからである。
【0072】
図7に示す凹部411、凹部421、凸部431は全て形成してもよく、いずれかを形成しても良い。また、凹部411、421の形状も球形状に限らず底部に平面を有する形状としても良い。
【0073】
図8に示すように、弁ロット520の先端521を別部材のボール522としても良い。即ち、弁ロット520の先端521側に収容部523を設けて、この収容部523でボール522を保持するようにしても良い。収容部523は、ボール522を回転可能な状態で保持すれば一層望ましい。これにより、弁ロット520の先端521がカム構造体400に対してスムーズに移動することができる。
【0074】
図9に示すように、ボール522に代えて先端521を丸くした摺動部材524を用いて摺動部材付勢バネ525で収容部523に収容しても良い。なお、弁ロット520は第1傾斜面440や第2傾斜面450に沿って第3方向及び第4方向(左右方向)に移動しなければならないので、摺動部材524と摺動部材付勢バネ525は、弁ロット520の先端521がカム構造体400に対してスムーズに移動することができるように設定している。
【0075】
図10及び図11に示すように、弁ロット520の先端521を半円弧状としてもよい。このように半円弧形状とする場合には、弁ロット520とカム構造体400との接触部が点から線になり、力の伝達及び保持位置が安定する。また、弁ロット520の形状が円柱形状から断面四角形状となるので、保持通路160に保持された状態で弁ロット520の回動が防止できる。
【0076】
更に、弁ロット520の先端521の第1方向に傾斜面526を形成し、この傾斜面526に突起527を一体形成しても良い。弁ロット520が第2傾斜面450を移動する際には、まずこの突起527が第2傾斜面450と接することとなる。それにより、突起527がガイドとして機能し、弁ロット520は第2傾斜面450をスムーズに移動することができる。
【0077】
上述の実施態様では、カム構造体400は、支持面150、ダイヤフラム310と開口部330の3か所のカムガイドにより第1方向及び第2方向(上下方向)の移動が支持されていた。ただ、ダイヤフラム310と開口部330により充分移動が支持できる場合には、支持面150を廃止することも可能である。
【0078】
上述の実施態様では、摘み部360を設けて、流体開閉弁1がどの状態となっているのかを視覚的に分かるようにしていた。そして、作業者は摘み部360を操作することで、図2に示す第2状態(流入通路120が開)から図1に示す第1状態(流入通路120が閉)にすることも、逆に第1状態(流入通路120が閉)から第2状態(流入通路120が開)に戻すことも可能である。同様に、図3に示す第3状態から(流入通路120が閉)第2状態(流入通路120が開)に戻すことも可能である。ただ、流体開閉弁1の開閉をダイヤフラム310のみで行う場合には、摘み部360や摘みガイド362を廃止することも可能である。
【0079】
上述の実施態様では、カム構造体400とロット340とを別部材としていたが、一体に形成しても良い。そして、上記のように摘み部360を廃止する場合には、ロット340も廃止することができる。その場合には、カム構造体400を直接ダイヤフラム310に固定することとなる。また、ロット340を廃止した場合には、支持面150によってカム構造体400のカムガイドがなされることとなる。
【0080】
上述の実施態様では、流体開閉弁1が流出管200、流量調整弁600、及び流体切替弁700を備えていた。流出管200はガス配管の取り回し方向を変えることができて有用である。流量調整弁600は、ガスの流量を一定量に制限できて有用である。また、流体切替弁700もガスの流れを遮断することができて有用である。ただ、これらの機能は本開示の流体開閉弁1にとって必須ではなく、必要に応じて廃止することも可能である。
【0081】
上述の実施態様では、定圧室320を大気開放して大気圧としていた。ただ、定圧室320の圧力は、大気圧以外の所定の正圧若しくは負圧に維持してもよい。
【0082】
上述の実施態様では、樹脂材料としてポリアセタールPOMやナイロンを例示したが、他の材料としてもよい。また、樹脂材料に代えて亜鉛、鉄やアルミニウム合金等の金属製としてもよい。また、上記の実施態様で示した寸法は一例であり、他の大きさとすることは勿論可能である。
【0083】
上述の実施態様では、流体としてガスを用いた例を示した。ガスの圧力に応じて弁座130と当接離脱して流入通路120を開閉する使用方法は望ましい用途である。ただ、本開示の流体開閉弁は他の気体の開閉弁として用いることも可能であり、液体の開閉弁として用いることも可能である。
【符号の説明】
【0084】
1・・・流体開閉弁
100・・・バルブ本体
110・・・ダイヤフラム室
120・・・流入通路
130・・・弁座
140・・・流出通路
300・・・バルブカバー
310・・・ダイヤフラム
400・・・カム構造体
410・・・第1カム面
420・・・第2カム面
430・・・第3カム面
500・・・弁体部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11