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特開2023-98907電子部品の製造方法、表示装置の製造方法、及び、支持テープ
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  • 特開-電子部品の製造方法、表示装置の製造方法、及び、支持テープ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098907
(43)【公開日】2023-07-11
(54)【発明の名称】電子部品の製造方法、表示装置の製造方法、及び、支持テープ
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/00 20060101AFI20230704BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20230704BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20230704BHJP
   H01L 33/00 20100101ALI20230704BHJP
【FI】
G09F9/00 338
C09J7/38
C09J201/00
H01L33/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054492
(22)【出願日】2023-03-30
(62)【分割の表示】P 2022517220の分割
【原出願日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】P 2020189556
(32)【優先日】2020-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】杉田 大平
(72)【発明者】
【氏名】畠井 宗宏
(72)【発明者】
【氏名】上田 洸造
(57)【要約】      (修正有)
【課題】チップ部品への糊残りを抑制し、かつ、チップ部品を歩留まりよく転写することができる電子部品の製造方法、該電子部品の製造方法を用いた表示装置の製造方法、及び、該製造方法に用いられる支持テープを提供する。
【解決手段】表面に硬化型粘着剤層を有する支持テープ3の前記硬化型粘着剤層上にチップ部品1を配置する工程と、前記支持テープの前記チップ部品が積層した面とは反対側の面よりエネルギー線を照射する工程と、前記支持テープの前記チップ部品が積層した面とは反対側の面より刺激を加え、チップ部品を支持テープから次部材5へ転写する工程とを有し、前記硬化型粘着剤層は重合性ポリマーと反応開始剤とを含有し、前記硬化型粘着剤層は、前記エネルギー線照射前の365nmの波長における紫外線吸収率が95%以上であり、前記エネルギー線照射後の365nmの波長における紫外線吸収率が95%以上である、電子部品の製造方法。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの表面に硬化型粘着剤層を有する支持テープの前記硬化型粘着剤層上にチップ部品を配置する工程(1)と、
前記チップ部品が配置された前記支持テープの前記チップ部品が積層した面とは反対側の面よりエネルギー線を照射する工程(2)と、
前記支持テープの前記チップ部品が積層した面とは反対側の面より刺激を加え、チップ部品を支持テープから次部材へ転写する工程(3)とを有し、
前記硬化型粘着剤層は重合性ポリマーと反応開始剤とを含有し、
前記硬化型粘着剤層は、前記エネルギー線照射前の365nmの波長における紫外線吸収率が95%以上であり、
前記エネルギー線照射後の365nmの波長における紫外線吸収率が95%以上である、
電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記エネルギー線は300nm以上450nm以下の波長の光である、請求項1記載の電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記刺激が300nm以上370nm以下の波長のレーザーである、請求項1又は2記載の電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記硬化型粘着剤層は、紫外線吸収剤を含有する、請求項1~3のいずれかに記載の電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記硬化型粘着剤層は、紫外線による光反応開始剤と紫外線による光反応開始剤以外の紫外線吸収剤とを含有する、請求項4に記載の電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記紫外線吸収剤の合計含有量が前記重合性ポリマー100重量部に対して6重量部以上である、請求項4又は5記載の電子部品の製造方法。
【請求項7】
前記紫外線による光反応開始剤の含有量は、前記重合性ポリマー100重量部に対して1重量部以上であり、前記紫外線吸収剤の合計100重量%に対して50重量%以下であることを特徴とする請求項5又は6に記載の電子部品の製造方法。
【請求項8】
前記硬化型粘着剤層の前記エネルギー線照射後の前記紫外線吸収率が99%以上である、請求項1~7のいずれかに記載の電子部品の製造方法。
【請求項9】
前記硬化型粘着剤層の前記エネルギー線照射後のゲル分率が90%以上である、請求項1~8のいずれかに記載の電子部品の製造方法。
【請求項10】
前記エネルギー線照射後における前記硬化型粘着剤層の剥離力が0.5N/25mm以下である、請求項1~9のいずれかに記載の電子部品の製造方法。
【請求項11】
前記支持テープは、両面粘着テープであり、前記両面粘着テープは、前記チップ部品が配置されない面の粘着剤層の300~450nmのエネルギー線透過率が90%以上である、請求項1~10のいずれかに記載の電子部品の製造方法。
【請求項12】
前記支持テープは、基材を有し、前記基材の300~450nmのエネルギー線透過率が90%以上である、請求項1~11のいずれかに記載の電子部品の製造方法。
【請求項13】
少なくとも1つの表面に硬化型粘着剤層を有する支持テープの前記硬化型粘着剤層上にマイクロLEDチップを配置する工程(1)と、
前記マイクロLEDチップが配置された前記支持テープの前記マイクロLEDチップが積層した面とは反対側の面よりエネルギー線を照射する工程(2)と、
前記支持テープの前記マイクロLEDチップが積層した面とは反対側の面より刺激を加え、マイクロLEDチップを支持テープから次部材へ転写する工程(3)とを有し、
前記硬化型粘着剤層は、重合性ポリマーと反応開始剤とを含有し、
前記硬化型粘着剤層は、前記エネルギー線照射前の365nmの波長における紫外線吸収率が99%以上であり、
前記エネルギー線照射後の365nmの波長における紫外線吸収率が95%以上である、
表示装置の製造方法。
【請求項14】
少なくとも1つの表面に硬化型粘着剤層を有する支持テープであり、
前記硬化型粘着剤層は重合性ポリマーと反応開始剤とを含有し、
前記硬化型粘着剤層は、エネルギー線照射前の365nmの波長における紫外線吸収率が95%以上であり、
前記エネルギー線照射後の365nmの波長における紫外線吸収率が95%以上である、支持テープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の製造方法、表示装置の製造方法、及び、該製造方法に用いられる支持テープに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロLEDディスプレイは、画素を構成するチップの1つ1つが微細な発光ダイオード(LED、Light Emitting Diode)チップであり、このマイクロLEDチップが自発光して画像を表示する表示装置である。マイクロLEDディスプレイは、コントラストが高く、応答速度が速く、また、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等で使用されるカラーフィルターを必要としないこと等により薄型化も可能であることから、次世代の表示装置として注目されている。
【0003】
マイクロLEDディスプレイにおいては、多数のマイクロLEDチップが平面状に高密度で敷き詰められている。このようなマイクロLEDディスプレイを製造する際には、粘着剤層を有する転写用基板上に多数のマイクロLEDチップが配置された転写用積層体から、駆動回路基板上にマイクロLEDチップを転写し、電気的に接続する工程が行われる。
マイクロLEDチップの転写工程では、転写用積層体のLEDチップが配置された面と、駆動回路基板の電極が形成された面とを対向させた状態で、転写用積層体からマイクロLEDチップを剥離させて転写する。
【0004】
転写用積層体からマイクロLEDチップを剥離させる方法としては、例えば、転写用積層体の基板の背面から粘着剤層に焦点をあててレーザー光を照射することで、マイクロLEDチップを剥離させる方法が知られている(例えば、特許文献1)。また、熱膨張性粒子、熱膨張性マイクロカプセル等を配合した粘着剤層を用い、転写用積層体と駆動回路基板とを熱圧着して熱膨張性粒子、熱膨張性マイクロカプセル等を熱膨張させることで、粘着剤層を変形させ、接着面積を低下させてマイクロLEDチップを剥離させる方法も知られている(例えば、特許文献2、3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-138949号公報
【特許文献2】特開2019-15899号公報
【特許文献3】特開2003-7986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1~3に記載のようなレーザー光を照射する方法又は熱膨張性粒子、熱膨張性マイクロカプセル等を用いる方法では、マイクロLEDチップに粘着剤層の残渣が付着するという問題がある。また、従来のレーザー光を照射する方法では、剥離不良によってマイクロLEDチップを剥離できないことがあり、歩留まりよくマイクロLEDチップを転写することが難しかった。
【0007】
本発明は、チップ部品への糊残りを抑制し、かつ、チップ部品を歩留まりよく転写することができる電子部品の製造方法、該電子部品の製造方法を用いた表示装置の製造方法、及び、該製造方法に用いられる支持テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、少なくとも1つの表面に硬化型粘着剤層を有する支持テープの前記硬化型粘着剤層上にチップ部品を配置する工程(1)と、前記チップ部品が配置された前記支持テープの前記チップ部品が積層した面とは反対側の面よりエネルギー線を照射する工程(2)と、前記支持テープの前記チップ部品が積層した面とは反対側の面より刺激を加え、チップ部品を支持テープから次部材へ転写する工程(3)とを有し、前記硬化型粘着剤層は重合性ポリマーと反応開始剤とを含有し、前記硬化型粘着剤層は、前記エネルギー線照射前の365nmの波長における紫外線吸収率が95%以上であり、前記エネルギー線照射後の365nmの波長における紫外線吸収率が95%以上である、電子部品の製造方法である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明の電子部品の製造方法は、まず、少なくとも1つの表面に硬化型粘着剤層を有する支持テープの上記硬化型粘着剤層上にチップ部品を配置する工程(1)を行う。
上記工程(1)の具体的な方法は特に限定されず、例えば、各チップ部品を個別に支持テープ上に配置する方法や、支持テープにウエハを貼り付けて個片化する方法や、基板や粘着テープ等の部材上に配置されたチップ部品を支持テープ上に転写する方法等が挙げられる。なかでも、生産効率に優れることから、部材上に配置されたチップ部品を支持テープ上に転写する方法が好ましい。より具体的には、上記工程(1)は、上記チップ部品を配置した部材の上記チップ部品側の面と上記支持テープとを貼り合わせ、上記部材を除去することで、上記支持テープの上記硬化型粘着剤層上にチップ部品を配置する工程であることが好ましい。
【0010】
ここで、上記工程(1)のなかでも上記チップ部品を転写して支持テープ上に配置する方法の様子を模式的に表した図を図1、2に示す。上記工程(1)では、図1に示すように、まずチップ部品1を配置した部材のチップ部品1が配列された面を、硬化型粘着剤層を有する支持テープ3の硬化型粘着剤層上に貼り合わせる。即ち、チップ部品1の背面を、支持テープ3の硬化型粘着剤層上へ貼り合わせる。その後、部材2を剥離等の方法で除去することで、図2に示すように、チップ部品1が支持テープ3の硬化型粘着剤層上へ転写される。上記支持テープ3は片面テープであっても両面テープであってもよいし、基材を有していてもいなくてもよいが、上記支持テープ3が両面テープである場合は、上記チップ部品1を転写する面とは反対側の面はガラス等の支持体4に貼り付けられることが好ましい。上記部材2は特に限定されず、例えば、ガラス基板、サファイヤ基板、シリコン基板、金属基板、有機基板等が挙げられる。
上記支持体4は特に限定されず、例えば、ガラス基板、サファイヤ基板、シリコン基板、金属基板、有機基板等が挙げられる。
【0011】
上記チップ部品は特に限定されず、例えば、マイクロLEDチップ、イメージセンサーの光学チップ等が挙げられる。なかでも、本発明の電子部品の製造方法は、糊残りなく、かつ、歩留まりよく剥離することが難しい極小のチップ部材において特に効果が高いことから、上記チップ部品がマイクロLEDであることが好ましい。
【0012】
本発明の電子部品の製造方法は、次いで、上記チップ部品が配置された上記支持テープの上記チップ部品が積層した面とは反対側の面よりエネルギー線を照射する工程(2)を行う。
ここで、上記工程(2)の様子を模式的に表した図を図3に示す。図3に示すように、上記工程(2)では硬化型粘着剤層上にチップ部品が配置された支持テープのチップ部品が積層した面とは反対側の面よりエネルギー線を照射する。エネルギー線を照射することにより支持テープ3の硬化型粘着剤層が硬化するため、支持テープ3の粘着力が低下し、チップ部品1への糊残りを抑えつつチップ部品1を剥離することが可能になる。また、糊残りのない正常なチップを転写できることから、不良品の数を減らすことができ、歩留まりを向上させることができる。
上記エネルギー線は上記硬化型粘着剤層を硬化させることができれば特に限定されず、例えば、超音波、光等が挙げられる。なかでも、硬化が容易に行えることから、上記エネルギー線は300nm以上450nm以下の波長の光であることが好ましい。なお、上記エネルギー線のエネルギー量は、上記硬化型粘着剤層を硬化できる程度であるため、後述する刺激のエネルギー量と比べて格段に小さいものである。
【0013】
上記エネルギー線が300nm以上450nm以下の波長の光である場合、上記工程(2)では、波長365nmの光を5mW/cm以上の照度で照射することが好ましく、10mW/cm以上の照度で照射することがより好ましく、20mW/cm以上の照度で照射することが更に好ましく、50mW/cm以上の照度で照射することが特に好ましい。また、波長365nmの光を300mJ/cm以上の積算照度で照射することが好ましく、500mJ/cm以上、10000mJ/cm以下の積算照度で照射することがより好ましく、500mJ/cm以上、7500mJ/cm以下の積算照度で照射することが更に好ましく、1000mJ/cm以上、5000mJ/cm以下の積算照度で照射することが特に好ましい。
【0014】
本発明の電子部品の製造方法は、次いで、上記支持テープの上記チップ部品が積層した面とは反対側の面より刺激を加え、チップ部品を支持テープから次部材へ転写する工程(3)を行う。
ここで、上記工程(3)の様子を模式的に表した図を図4に示す。図4に示すように、上記工程(3)では、チップ部品1が配置された支持テープ3の、チップ部品が積層した面とは反対側の面、つまり、支持テープの背面から、例えば光照射装置6から照射される光6aにより刺激を加える。上記刺激を支持テープ3に加えると、熱によって硬化型粘着剤の分子が切れて低分子化し、瞬間的に蒸発したり、高温となることで昇華したりするため、支持テープの光6aを照射した部分が焼き切れる。従って、上記刺激を支持テープ3のチップ部品1上の位置に加えることで、支持テープが焼き切れ、支持テープ3からチップ部品1が剥離して、次部材5上にチップ部品1が転写される。この際、上記工程(2)によって支持テープ3の硬化型粘着剤層は硬化しているため、チップ部品1への糊残りが起き難く、より軽い力でチップ部品を剥離できる。その結果、糊残りが起き難く、チップ部品を転写することができるため、歩留まりを向上させることができる。また、上記刺激によりチップ部品を剥離する方法は、ごく小さい範囲に対して剥離を起こさせることができるため、マイクロLEDのような極小のチップ部品が配列している場合であっても個別かつ歩留まりよく剥離することができる。更に、後述するが、上記支持テープ3の硬化型粘着剤層は特定波長の紫外線の吸収率が高く、上記刺激を効率よく熱や振動に変えることができるため、支持テープをよりムラなく確実に焼き切ることができ、更に糊残りを抑えられるとともに剥離不良を抑えることもできる。なお、図4では次部材5を基板として描写しているが、上記次部材5は、特に限定されず、例えば、ガラス基板、サファイヤ基板、シリコン基板、金属基板、有機基板や、駆動回路基板、粘着テープ等が挙げられる。
【0015】
上記刺激は、上記チップ部品を剥離することができれば特に限定されず、例えば、光、熱、電磁波又は電子線等が挙げられる。なかでも、マイクロLED等の極小のチップ部材であっても個別かつ歩留まりよく剥離できることから、上記刺激はレーザーであることが好ましく、300nm以上370nm以下の波長のレーザーであることがより好ましく、350nm以上370nm以下の波長のレーザーであることが更に好ましい。なお、上記刺激のエネルギー量は、支持テープを焼き切ることができる程度であるため、上記エネルギー線のエネルギー量よりも格段に大きいものである。
【0016】
上記工程(3)では支持テープ全体に対して上記刺激を加えてもよいし、上記支持テープの剥離させるチップ部品領域ごとに刺激を加えてもよい。上記支持テープ全体に対して刺激を加える場合は、複数の上記チップ部品を一挙に転写できる点で好ましく、上記支持テープの剥離させるチップ部品領域ごとに刺激を加える場合は、目的とする上記チップ部品のみを選択的に転写できる点で好ましい。
【0017】
上記刺激がレーザーである場合、上記レーザーの出力はパルス照射により、5nsec/パルスで50mJ/cm以上1500mJ/cm以下であることが好ましい。
レーザーの出力を上記範囲とすることで、目標のチップ部品上の支持テープのみを充分に焼き切ることができ、より糊残りなく確実にチップ部品を剥離することができる。また、目的とする上記チップ部品のみを選択的に転写することが容易となる。上記レーザーの出力は100mJ/cm以上であることがより好ましく、1000mJ/cm以下であることがより好ましい。
【0018】
上記硬化型粘着剤層は重合性ポリマーと反応開始剤とを含有する。
粘着剤層が重合性ポリマーと反応開始剤を含有する、つまり、硬化型粘着剤を含有することで、上記工程(1)では充分な粘着力でチップ部品を固定することができ、上記工程(2)で硬化型粘着剤層を硬化させることにより、上記工程(3)で糊残りなくチップ部品を転写することができる。
【0019】
上記反応開始剤は特に限定されず、例えば、光反応開始剤、熱反応開始剤等が挙げられ、なかでも、エネルギー線照射により活性化し、硬化型粘着剤層を硬化することができるため、光反応開始剤が好ましく、後述の紫外線吸収剤としての役割も果たせることから、紫外線による光反応開始剤を好適に用いることができる。
【0020】
上記重合性ポリマーは、例えば、分子内に官能基を持った(メタ)アクリル系ポリマー(以下、官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーという)を予め合成し、分子内に上記の官能基と反応する官能基とラジカル重合性の不飽和結合とを有する化合物(以下、官能基含有不飽和化合物という)を反応させることにより得ることができる。なお、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0021】
上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、例えば、アルキル基の炭素数が通常2~18の範囲にあるアクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルと、官能基含有モノマーと、更に必要に応じてこれらと共重合可能な他の改質用モノマーとを共重合させることにより得ることができる。
【0022】
上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は特に限定されないが、通常、20万~200万程度である。
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィを用いて決定することができ、例えば、カラムとしてHSPgelHR MB-M 6.0×150mm、溶出液としてTHFを用い、40℃で測定し、ポリスチレン標準により決定することができる。
【0023】
上記官能基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基含有モノマーや、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル等のヒドロキシル基含有モノマーや、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有モノマーが挙げられる。また、上記官能基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸イソシアネートエチル、メタクリル酸イソシアネートエチル等のイソシアネート基含有モノマーや、アクリル酸アミノエチル、メタクリル酸アミノエチル等のアミノ基含有モノマー等も挙げられる。
【0024】
上記共重合可能な他の改質用モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等の一般の(メタ)アクリル系ポリマーに用いられている各種のモノマーが挙げられる。
【0025】
上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーを得るには、原料モノマーを、重合開始剤の存在下にてラジカル反応させればよい。上記原料モノマーをラジカル反応させる方法、即ち、重合方法としては、従来公知の方法が用いられ、例えば、溶液重合(沸点重合又は定温重合)、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等が挙げられる。
上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーを得るためのラジカル反応に用いる重合開始剤は特に限定されず、例えば、有機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。上記有機過酸化物として、例えば、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート等が挙げられる。上記アゾ化合物として、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等が挙げられる。これらの重合開始剤は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0026】
上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーに反応させる官能基含有不飽和化合物としては、上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの官能基に応じて、上述した官能基含有モノマーと同様のものを使用できる。例えば、上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの官能基がカルボキシル基の場合は、エポキシ基含有モノマーやイソシアネート基含有モノマーが用いられる。上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの官能基がヒドロキシル基の場合は、イソシアネート基含有モノマーが用いられる。上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの官能基がエポキシ基の場合は、カルボキシル基含有モノマーやアクリルアミド等のアミド基含有モノマーが用いられる。上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの官能基がアミノ基の場合は、エポキシ基含有モノマーが用いられる。
【0027】
上記硬化型粘着剤層は、ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーを含有していてもよい。ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーを含有することにより、上記硬化型粘着剤層の光硬化性が向上する。
上記多官能オリゴマー又はモノマーは特に限定されないが、重量平均分子量が1万以下であることが好ましい。光照射又は加熱による上記硬化型粘着剤層の三次元網状化が効率よくなされることから、上記多官能オリゴマー又はモノマーは、重量平均分子量が5000以下でかつ分子内のラジカル重合性の不飽和結合の数が2~20個であることが好ましい。
【0028】
上記多官能オリゴマー又はモノマーとして、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、及び、これらのメタクリレート等が挙げられる。また、上記多官能オリゴマー又はモノマーとしては、例えば、1,4-ブチレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、市販のオリゴエステルアクリレート、及び、これらのメタクリレート等も挙げられる。これらの多官能オリゴマー又はモノマーは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0029】
上記硬化型粘着剤層は、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。
硬化型粘着剤層が紫外線吸収剤を含有することで、後述する紫外線吸収率を特定の範囲へ調節しやすくすることができる。その結果、上記工程(3)においてチップ部品をより糊残りなく剥離することができ、歩留まりをより向上させることができる。なお、本明細書において紫外線吸収剤とは、波長200nm~400nmの光を吸収することができるものであれば、特に限定されない。また、上記紫外線による光反応開始剤は、上記反応開始剤であると同時に上記紫外線吸収剤にも含まれる。
【0030】
上記硬化型粘着剤層は、紫外線による光反応開始剤と紫外線による光反応開始剤以外の紫外線吸収剤とを含有することが好ましい。上記紫外線による光反応開始剤を用いることで、上記反応開始剤としての役割を果たしながらも硬化型粘着剤層の硬化の際に未反応のまま残った紫外線による反応開始剤を剥離の際に紫外線吸収剤としても用いることができる。更に、光反応開始剤以外の紫外線吸収剤も併用することで、硬化型粘着剤層の硬化の際に光反応開始剤が大量に消費されてしまった場合であっても、紫外線吸収性の低下を抑えることができ、後述するエネルギー線照射後の紫外線吸収率を特定の範囲へ調節しやすくすることができる。
【0031】
上記紫外線による光反応開始剤は、例えば、350~370nmの波長の光を照射することにより活性化されるものが挙げられる。このような光重合開始剤としては、例えば、メトキシアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体化合物や、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物や、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジエチルケタール等のケタール誘導体化合物や、フォスフィンオキシド誘導体化合物が挙げられる。また、ビス(η5-シクロペンタジエニル)チタノセン誘導体化合物、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、トデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシメチルフェニルプロパン等も挙げられる。これらの紫外線による光反応開始剤は単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
上記紫外線による光反応開始剤の含有量は、上記重合性ポリマー100重量部に対して1重量部以上であることが好ましい。
紫外線による光反応開始剤の含有量を上記範囲とすることで、硬化型粘着剤層をより確実に硬化できるとともに、硬化後に残った未反応の光反応開始剤の量を後述する紫外線吸収率の範囲を満たす程度の量にしやすくすることができる。上記重合性ポリマー100重量部に対する上記紫外線による光反応開始剤の含有量は、2重量部以上であることがより好ましく、3重量部以上であることが更に好ましい。上記重合性ポリマー100重量部に対する上記紫外線による光反応開始剤の含有量の上限は特に限定されないが、例えば、10重量部以下、5重量部以下であることが好ましい。
【0033】
上記紫外線による光反応開始剤の含有量は、上記紫外線吸収剤の合計100重量%に対して50重量%以下であることが好ましい。
紫外線による光反応開始剤の含有量を上記範囲とすることで硬化型粘着剤層が硬化する際に上記紫外線による光反応開始剤が大量に消費されてしまった場合であっても、充分に紫外線吸収性を維持することが可能となる。上記紫外線吸収剤の合計100重量%に対する上記紫外線による光反応開始剤の含有量は、40重量%以下であることがより好ましく、30重量%以下であることが更に好ましい。上記紫外線吸収剤の合計に対する上記紫外線による光反応開始剤の含有量の下限は特に限定されないが例えば、15重量%であることが好ましい。
【0034】
上記紫外線による光反応開始剤以外の紫外線吸収剤としては特に限定されず、例えば、ベンゾトリアゾール系やヒドロキシルフェニルトリアジン系の他にメトキシケイヒ酸エチルヘキシル、メトキシケイヒ酸オクチル、パラメトキシ桂皮酸エチルヘキシル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン等が挙げられる。なかでも、粘着剤への配合適用性に優れることから、ベンゾトリアゾール系やヒドロキシルフェニルトリアジン系が好ましい。上記紫外線による光反応開始剤以外の紫外線吸収剤は単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
上記紫外線吸収剤は、合計含有量が上記重合性ポリマー100重量部に対して6重量部以上であることが好ましい。
上記紫外線吸収剤の総含有量を上記範囲とすることで、上記工程(3)の際により効率的に刺激を熱や振動に変えることができるため、チップ部品をより確実に剥離することができる。上記紫外線吸収剤の合計含有量は、10重量部以上であることがより好ましく、15重量部以上であることが更に好ましい。上記紫外線吸収剤の合計含有量の上限は特に限定されないが、上記工程(1)の際の粘着力を確保する観点から30重量部以下であることが好ましい。
【0036】
上記硬化型粘着剤層は、更に、ヒュームドシリカ等の無機フィラーを含有してもよい。無機フィラーを含有することにより、上記硬化型粘着剤層の凝集力が上がり、充分な粘着力で被着体に貼付でき、被着体を充分に固定できる。
【0037】
上記硬化型粘着剤層は、架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤を含有することにより、上記硬化型粘着剤層の凝集力が上がり、充分な粘着力で被着体に貼付でき、被着体を充分に固定できる。
上記架橋剤は特に限定されず、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。なかでも、より粘着力が高まることから、イソシアネート系架橋剤が好ましい。
【0038】
上記架橋剤の含有量は、上記硬化型粘着剤層を構成する粘着剤100重量部に対して0.01重量部以上、20重量部以下であることが好ましい。上記架橋剤の含有量が上記範囲内であることにより、上記粘着剤を適度に架橋して、粘着力を高めることができる。粘着力をより高める観点から、上記架橋剤の含有量のより好ましい下限は0.05重量部、より好ましい上限は15重量部であり、更に好ましい下限は0.1重量部、更に好ましい上限は10重量部である。
【0039】
上記硬化型粘着剤層は、可塑剤、樹脂、界面活性剤、ワックス、微粒子充填剤等の公知の添加剤を含有してもよい。これらの添加剤は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0040】
上記硬化型粘着剤層は、上記エネルギー線照射前の365nmの波長における紫外線吸収率が95%以上である。
エネルギー線照射前の365nmの波長における紫外線吸収率が上記範囲であることで、紫外線吸収剤として紫外線による光反応開始剤を用いた場合に、硬化型粘着剤層の硬化時に紫外線による光反応開始剤が消費された場合であっても、上記工程(3)の際にチップ部品を糊残りなく容易に剥離できる程度の紫外線吸収性を維持することができる。上記エネルギー線照射前の365nmの波長における紫外線吸収率は98%以上であることが好ましく、99%以上であることがより好ましく、99.5%以上であることが更に好ましい。上記エネルギー線照射前の365nmの波長における紫外線吸収率の上限は特に限定されず、高いほどよいものであるが、通常100%以下である。上記エネルギー線照射前の365nmの波長における紫外線吸収率は、重合性ポリマーの種類や紫外線吸収剤を用いることによって調節することができる。なお、上記支持テープが両面粘着テープであり、両面に硬化型粘着剤層を有する場合、上記紫外線吸収率は上記チップ部品と接する硬化型粘着剤層の紫外線吸収率を指す。
上記エネルギー線照射前の365nmの波長における紫外線吸収率は、紫外線照度計(アイグラフィックス社製、UVPF-A2、又はその同等品)とUVランプを用いて365nmの紫外線の吸収率(初期紫外線吸収率)を測定することにより得ることができる。
より具体的には、まず測定サンプルの一方の面において、波長365nmにおける照射量が20mw/cmになるようUVランプを調整する。測定サンプルの紫外線照射面(透過前)及び他方の面(透過後)における紫外線量を紫外線照度計により測定し、下記式から紫外線吸収率を算出する。尚、UVランプは30秒間照射し、測定を行う。
紫外線吸収率={(透過前紫外線量)-(透過後紫外線量)}/(透過前紫外線量)}×100(%)
【0041】
上記硬化型粘着剤層は、上記エネルギー線照射後の365nmの波長における紫外線吸収率が95%以上である。
従来の製造方法では、レーザーを当ててチップ部品を剥離すると、チップ部品にレーザーで焼き切れなかった粘着剤が残ってしまう場合があり、不良品発生の原因となっていた。また、従来の方法では、粘着剤が焼き切れないとチップ部品を剥離することができないこともあった。本発明では、エネルギー線照射後の365nmの波長における紫外線吸収率を上記範囲とすることで、上記工程(3)における刺激を効率よく熱や振動に変えることができ、支持テープをより確実に焼き切ることができ、糊残りなくチップ部品を剥離できる。また、支持テープをより確実に焼き切ることができると、より歩留まりを向上させることができる。上記エネルギー線照射後の365nmの波長における紫外線吸収率は96%以上であることが好ましく、99%以上であることがより好ましい。上記エネルギー線照射前の365nmの波長における紫外線吸収率の上限は特に限定されず、高いほどよいものであるが、通常100%以下である。上記エネルギー線照射後の365nmの波長における紫外線吸収率は、重合性ポリマーの種類や紫外線吸収剤を用いることによって調節することができる。なお、上記エネルギー線照射後の365nmの波長における紫外線吸収率は、測定サンプルに超高圧水銀紫外線照射器を用いて365nmの紫外線を積算照射量が3000mJ/cmとなるように照射した後、上記エネルギー線照射前の365nmの波長における紫外線吸収率と同様の測定を行うことで得ることができる。
【0042】
上記硬化型粘着剤層は、上記エネルギー線照射前のゲル分率が20重量%以上、70重量%以下であることが好ましい。エネルギー線照射前のゲル分率が上記範囲内であることにより、充分な粘着力で被着体に貼付でき、被着体を充分に固定できる。粘着力を良好にする観点から、上記硬化型粘着剤層のゲル分率は30重量%以上であることがより好ましく、60重量%以下であることが更に好ましい。
【0043】
上記硬化型粘着剤層は、前記エネルギー線照射後のゲル分率が90%以上であることが好ましい。
エネルギー線照射後のゲル分率が上記範囲内であることにより、よりチップ部品に糊残りし難くなるとともに、より軽い力でチップ部品を剥離することができる。上記エネルギー線照射後のゲル分率は93%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましい。上記エネルギー線照射後のゲル分率の上限は特に限定されないが、意図せぬチップ部品の剥離を抑える観点から99%以下であることが好ましい。
【0044】
上記ゲル分率の測定は、以下の方法で測定することができる。
支持テープから硬化型粘着剤層のみをこそぎ取り、秤取して酢酸エチル50ml中に浸漬し、振とう機で温度23度、200rpmの条件で24時間振とうする(以下、こそぎ取った粘着剤層のことを粘着剤組成物という)。振とう後、金属メッシュ(目開き#200メッシュ)を用いて、酢酸エチルと酢酸エチルを吸収し膨潤した粘着剤組成物を分離する。分離後の粘着剤組成物を110℃の条件下で1時間乾燥させ、乾燥後の金属メッシュを含む粘着剤組成物の重量を測定する。下記式を用いて硬化型粘着剤層のゲル分率を算出する。
ゲル分率(重量%)=100×(W1-W2)/W0
(W0:初期粘着剤組成物重量、W1:乾燥後の金属メッシュを含む粘着剤組成物重量、W2:金属メッシュの初期重量)
なお、エネルギー線照射後のゲル分率は、支持テープの基材側から超高圧水銀紫外線照射器を用いて365nmの紫外線を積算照射量が3000mJ/cmとなるように照射し、硬化型粘着剤層を硬化させてから、上記ゲル分率の測定を行う。
【0045】
上記硬化型粘着剤層は、上記エネルギー線照射後における剥離力が0.5N/25mm以下であることが好ましい。
硬化型粘着剤層のエネルギー線照射後における剥離力が上記範囲であることで、糊残りを抑えて容易にチップ部品を剥離することができるため、歩留まりを向上させることができる。上記硬化型粘着剤層のエネルギー線照射後における剥離力は、0.3N/25mm以下であることがより好ましく、0.2N/25mm以下であることが更に好ましい。なお、上記剥離力は、測定サンプルに超高圧水銀紫外線照射器を用いて365nmの紫外線を積算照射量が3000mJ/cmとなるように照射した後、JIS Z0237に準拠して、23℃、50%湿度の条件下、引張速度300mm/分の条件で180°方向の剥離試験を行うことで測定することができる。
【0046】
上記硬化型粘着剤層の厚みは特に限定されないが、200μm以下であることが好ましい。上記厚みが200μm以下であれば、上記硬化型粘着剤層の残渣をより抑えつつ、上記チップ部品を剥離することができる。上記厚みのより好ましい上限は50μm、更に好ましい上限は20μmである。上記厚みの下限は特に限定されないが、上記チップ部品を保持しつつ、剥離を良好にする観点から、好ましい下限は2μm、より好ましい下限は5μmである。
【0047】
上記支持テープは、片面粘着テープであっても両面粘着テープであってもよい。なかでも、支持体を用いる場合に、簡便に支持体へ貼り合わせることができることから、上記支持テープは両面粘着テープであることが好ましい。上記支持テープが両面粘着テープである場合、上記支持テープは少なくとも片面が上記硬化型粘着剤層であればよく、もう片面は硬化型粘着剤層であっても非硬化型の粘着剤層であってもよい。また、両面粘着テープの粘着剤層は、両面とも同じ成分の粘着剤を用いてもよく、異なる成分の粘着剤を用いてもよい。
【0048】
上記支持テープが両面粘着テープである場合、上記両面粘着テープは、上記チップ部品が配置されない面の300~450nmのエネルギー線透過率が90%以上であることが好ましい。
両面粘着テープのチップ部品が配置されない面の300~450nmのエネルギー線透過率を90%以上とすることで、支持テープを2種類の粘着剤層からなる両面粘着テープとした場合であっても、上記工程(2)の際に上記硬化型粘着剤層をより確実に硬化させることができる。
上記両面粘着テープの上記チップ部品が配置されていない面の300~450nmのエネルギー線透過率は、95%以上であることがより好ましい。
【0049】
また、上記支持テープは、基材を有するサポートタイプであってもよいし、基材を有さないノンサポートタイプであってもよいが、取り扱い、及び、裁断が容易になることから基材を有することが好ましい。上記基材は特に限定されないが、上記工程(2)において上記硬化型粘着剤層をより確実に硬化させる観点から、300~450nmのエネルギー線透過率が90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。
【0050】
上記基材の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、超高分子量ポリエチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、フッ素樹脂、液晶ポリマー等が挙げられる。なかでも、耐熱性に優れることから、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましい。
【0051】
上記基材の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は5μm、好ましい上限は188μmである。上記基材の厚みが上記範囲内であることにより、適度なコシがあって、取り扱い性に優れる支持テープとすることができる。上記基材の厚みのより好ましい下限は12μm、より好ましい上限は125μmである。
【0052】
本発明の電子部品の製造方法の用途は特に限定されず、どのようなチップ部品を用いた電子部品であっても歩留まりよく製造できるが、本発明はチップ部品への糊残りが起き難く、より軽い力でチップ部品を剥離できることから、糊残りなく、かつ、歩留まりよく転写することが難しい極小のチップ部品において特に効果が高い。そのため、本発明はチップ部品としてマイクロLEDを用いた表示装置の製造に好適である。
このような、少なくとも1つの表面に硬化型粘着剤層を有する支持テープの前記硬化型粘着剤層上にマイクロLEDチップを配置する工程(1)と、前記マイクロLEDチップが配置された前記支持テープの前記マイクロLEDチップが積層した面とは反対側の面よりエネルギー線を照射する工程(2)と、前記支持テープの前記マイクロLEDチップが積層した面とは反対側の面より刺激を加え、マイクロLEDチップを支持テープから次部材へ転写する工程(3)とを有し、前記硬化型粘着剤層は、重合性ポリマーと反応開始剤とを含有し、前記硬化型粘着剤層は、前記エネルギー線照射前の365nmの波長における紫外線吸収率が99%以上であり、前記エネルギー線照射後の365nmの波長における紫外線吸収率が95%以上である、表示装置の製造方法もまた、本発明の1つである。
なお硬化型粘着剤層、支持テープ及び各工程の詳細については、上記電子部品の製造方法と同様のもの及び方法を用いることができる。
【0053】
本発明の電子部品の製造方法及び表示装置の製造方法は、エネルギー線照射前後の365nmの波長における紫外線吸収率を特定の範囲とした支持テープを用いることで、チップ部品及びマイクロLEDチップへの糊残りを抑えるとともに、支持テープからチップ部品及びマイクロLEDチップをより確実に剥離でき、歩留まりを向上させることができるものである。
このような、少なくとも1つの表面に硬化型粘着剤層を有する支持テープであり、前記硬化型粘着剤層は重合性ポリマーと反応開始剤とを含有し、前記硬化型粘着剤層は、エネルギー線照射前の365nmの波長における紫外線吸収率が95%以上であり、前記エネルギー線照射後の365nmの波長における紫外線吸収率が95%以上である、支持テープもまた、本発明の1つである。
【0054】
本発明の支持テープの上記硬化型粘着剤層を構成する上記重合性ポリマー、上記反応開始剤及びその他成分の組成や構造、上記支持テープの上記硬化型粘着剤層以外の構成や構造、上記エネルギー線照射前の365nmの波長における紫外線吸収率及び上記エネルギー線照射後の365nmの波長における紫外線吸収率の測定方法については、本発明の電子部品の製造方法と同様のもの及び方法を用いることができる。
【0055】
本発明の支持テープの製造方法は特に限定されず、例えば、上記重合性ポリマーの溶液に、上記反応開始剤及び必要に応じて紫外線吸収剤等他の添加剤を加えて混合することで粘着剤溶液を調製し、離型フィルムに粘着剤溶液を塗工、乾燥させることで、硬化型粘着剤層からなるノンサポートタイプの支持テープを製造することができる。また、上記方法で製造した硬化型粘着剤層を基材と貼り合わせる又は上記粘着剤溶液を基材に塗布、乾燥させることで、サポートタイプの片面及び両面支持テープを製造することもできる。
【発明の効果】
【0056】
本発明によれば、チップ部品への糊残りを抑制し、かつ、チップ部品を歩留まりよく転写することができる電子部品の製造方法、該電子部品の製造方法を用いた表示装置の製造方法、及び、該製造方法に用いられる支持テープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】本発明の電子部品の製造方法における工程(1)の一例を模式的に示す図である。
図2】本発明の電子部品の製造方法における工程(1)の一例を模式的に示す図である。
図3】本発明の電子部品の製造方法における工程(2)の一例を模式的に示す図である。
図4】本発明の電子部品の製造方法における工程(3)の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0059】
(重合性ポリマーの合成)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応器を用意した。この反応器内に、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして2-エチルヘキシルアクリレート51重量部、イソボルニルアクリレート37重量部、官能基含有モノマーとしてアクリル酸1重量部、メタクリル酸ヒドロキシエチル19重量部、ラウリルメルカプタン0.01重量部と、酢酸エチル80重量部を加えた後、反応器を加熱して還流を開始した。続いて、上記反応器内に、重合開始剤として1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン0.01重量部を添加し、還流下で重合を開始させた。次に、重合開始から1時間後及び2時間後にも、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンを0.01重量部ずつ添加し、更に、重合開始から4時間後にt-ヘキシルパーオキシピバレートを0.05重量部添加して重合反応を継続させた。そして、重合開始から8時間後に、固形分55重量%、重量平均分子量60万の官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの酢酸エチル溶液を得た。
得られた官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーを含む酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、2-イソシアナトエチルメタクリレート12重量部を加えて反応させて(メタ)アクリル系ポリマー(重合性ポリマー)の酢酸エチル溶液を得た。
【0060】
(実施例1)
(1)支持テープの製造1
得られた重合性ポリマーの酢酸エチル溶液の樹脂固形分(重合性ポリマー)100重量部に対して、架橋剤(エスダイン硬化剤UA、積水フーラー社製)1.25重量部、光反応開始剤(紫外線による光反応開始剤、Omnirad651、豊通ケミプラス社製)1重量部、及び、紫外線吸収剤(Tinuvin 928、富士フイルム和光純薬社製)5重量部を混合した。これにより、硬化型粘着剤の酢酸エチル溶液を得た。
次いで、得られた硬化型粘着剤溶液を、コロナ処理がなされた厚み50μmのPETフィルム(基材)上に乾燥皮膜の厚さが20μmとなるようにドクターナイフで塗工し、常温で10分間静置した。その後、予め110℃に加温しておいたオーブンを用いて110℃、5分間加熱して塗工溶液を乾燥させ、硬化型粘着剤層と基材とを有する支持テープを得た。
【0061】
(2)剥離力の測定
厚さ1mmのSUS板の表面をエタノールで洗浄し、充分に乾燥させた。予め幅25mm、長さ10cmにカットした支持テープの硬化型粘着剤層側とSUS板とを重ね、2kgローラーを1往復させることで測定用サンプルを得た。
得られた測定サンプルについて、オートグラフ(島津製作所社製)を用い、JISZ0237に準じて、温度23℃、相対湿度50%の環境下で300mm/minの引張速度で180°方向に支持テープを引き剥がす剥離試験を行い、初期剥離力を測定した。
次いで、同様の方法で作製した別の測定用サンプルの支持テープ側に、超高圧水銀紫外線照射器を用いて365nmの紫外線を積算照射量が3000mJ/cmとなるように照射した。照射強度が100mW/cmとなるよう照度を調節した。その後初期剥離力と同様の方法で剥離試験を行い、エネルギー線照射後の剥離力を測定した。結果を表1に示した。
【0062】
(3)紫外線吸収率の測定
上記方法で硬化型粘着剤層のみの測定サンプルを作製した。得られた測定サンプルについて、紫外線照度計(アイグラフィックス社製、UVPF-A2)とUVランプを用いて以下の方法で365nmの紫外線の吸収率(初期紫外線吸収率)を測定した。
測定サンプルの一方の面において、波長365nmにおける照射量が20mw/cmになるようUVランプを調整した。測定サンプルの紫外線照射面(透過前)及び他方の面(透過後)における紫外線量を紫外線照度計により測定し、下記式から紫外線吸収率を算出した。尚、UVランプは30秒間照射し、測定した。
紫外線吸収率={(透過前紫外線量)-(透過後紫外線量)}/(透過前紫外線量)}×100(%)
次いで、測定サンプルに超高圧水銀紫外線照射器を用いて365nmの紫外線を積算照射量が3000mJ/cmとなるように照射した。その後同様の方法で365nmの紫外線の吸収率(エネルギー線照射後の紫外線吸収率)を測定した。結果を表1に示した。
【0063】
(4)エネルギー線照射後のゲル分率の測定
得られた支持テープを200mm×200mmにカットした。カットした支持テープの基材側から超高圧水銀紫外線照射器を用いて365nmの紫外線を積算照射量が3000mJ/cmとなるように照射し、硬化型粘着剤層を硬化させた。次いで硬化させた支持テープから硬化型粘着剤層のみをこそぎ取り、0.1g秤取して酢酸エチル50ml中に浸漬し、振とう機で温度23度、200rpmの条件で24時間振とうした(以下、こそぎ取った粘着剤層のことを粘着剤組成物という)。振とう後、金属メッシュ(目開き#200メッシュ)を用いて、酢酸エチルと酢酸エチルを吸収し膨潤した粘着剤組成物を分離した。分離後の粘着剤組成物を110℃の条件下で1時間乾燥させた。乾燥後の金属メッシュを含む粘着剤組成物の重量を測定し、下記式を用いて硬化型粘着剤層のエネルギー線照射後のゲル分率を算出した。結果を表1に示した。
ゲル分率(重量%)=100×(W1-W2)/W0
(W0:初期粘着剤組成物重量、W1:乾燥後の金属メッシュを含む粘着剤組成物重量、W2:金属メッシュの初期重量)
【0064】
(実施例2~6、比較例1、2)
光反応開始剤及び紫外線吸収剤の配合量を表1の通りとした以外は実施例1と同様にして支持テープを得て、各測定を行った。結果を表1に示した。
【0065】
(実施例7)
(支持テープの製造2)
得られた重合性ポリマーの酢酸エチル溶液の樹脂固形分(重合性ポリマー)100重量部に対して、架橋剤(エスダイン硬化剤UA、積水フーラー社製)1.25重量部、光反応開始剤(紫外線による光反応開始剤、OmniradTPO、豊通ケミプラス社製)1重量部、及び、紫外線吸収剤(Tinuvin 479、富士フイルム和光純薬社製)5重量部を混合した。これにより、硬化型粘着剤の酢酸エチル溶液を得た。
次いで、得られた硬化型粘着剤溶液を、コロナ処理がなされた厚み50μmのPETフィルム(基材)上に乾燥皮膜の厚さが20μmとなるようにドクターナイフで塗工し、常温で10分間静置した。その後、予め110℃に加温しておいたオーブンを用いて110℃、5分間加熱して塗工溶液を乾燥させ、硬化型粘着剤層と基材とを有する支持テープを得た。得られた支持テープについて実施例1と同様に各測定を行った。結果を表1に示した。
【0066】
<評価>
実施例及び比較例について、以下の方法により評価を行った。結果を表1に示した。
【0067】
(チップ部品の処理)
Siチップ(500μm×500μm角、厚み50μm)が10個配列されたウエハのSiチップ側の面と支持テープの硬化型粘着剤層側とを貼り合わせ、その後ウエハを剥離することで、Siチップを指示テープ上へ転写した。次いで、高圧水銀紫外線照射装置(GWSM-300R、タカトリ社製)を用いて365nmの紫外線を支持テープの基材側から積算照射量が3000mJ/cmとなるように照射することで、硬化型粘着剤層を硬化させた。その後、半導体固体レーザーを用いて、出力4W、4KHzの365nmのレーザーを支持テープの基材側から各Siチップに照射して、Siチップを支持テープから剥離した。
【0068】
(1)剥離性能の評価
上記チップ部品の処理において、Siチップがいくつ剥離できたかを測定した。
10個のSiチップをすべて剥離できた場合を「〇」、8~9個剥離できた場合を「△」、剥離できたSiチップが7個以下の場合を「×」としてチップ剥離性能を評価した。
【0069】
(2)糊残りの評価
上記チップ部品の処理後のSiチップ表面を顕微鏡にて観察し、糊残りの有無を確認した。糊残りが全くなかった場合を「○」、わずかに糊残りがあった場合(チップの表面の20%未満)を「△」、大量に糊残りがあった場合(チップの表面の20%以上)を「×」として糊残りを評価した。
【0070】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明によれば、チップ部品への糊残りを抑制し、かつ、チップ部品を歩留まりよく転写することができる電子部品の製造方法、該電子部品の製造方法を用いた表示装置の製造方法、及び、該製造方法に用いられる支持テープを提供することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 チップ部品
2 部材
3 支持テープ
4 支持体
5 次部材
6 光照射装置
6a 光

図1
図2
図3
図4