(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023099913
(43)【公開日】2023-07-14
(54)【発明の名称】直流電流遮断装置
(51)【国際特許分類】
H02J 1/00 20060101AFI20230707BHJP
H01H 33/59 20060101ALI20230707BHJP
H01H 9/54 20060101ALI20230707BHJP
H02H 3/087 20060101ALI20230707BHJP
【FI】
H02J1/00 301D
H01H33/59 B
H01H9/54 A
H02H3/087
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022000132
(22)【出願日】2022-01-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】児山 裕史
(72)【発明者】
【氏名】石黒 崇裕
【テーマコード(参考)】
5G004
5G028
5G034
5G165
【Fターム(参考)】
5G004AA04
5G004AB01
5G004BA03
5G028AA22
5G028FB03
5G028FB06
5G034AA08
5G165CA02
5G165CA05
(57)【要約】
【課題】複数の極を持つ直流送電システムに適用される、小規模な部品構成で実現することができる直流電流遮断装置を提供することである。
【解決手段】実施形態の直流電流遮断装置は、半導体遮断器と、複数の第1の転流回路と、複数の第2の転流回路と、第1の電流開閉要素と、第2の電流開閉要素と、を持つ。複数の第1の転流回路は、第1の端子に繋がる第1の正極線と、第2の端子に繋がる第2の正極線との間に流れる電流を選択的な向きで流す。複数の第2の転流回路は、第3の端子に繋がる第1の負極線と、第4の端子に繋がる第2の負極線との間に流れる電流を選択的な向きで流す。第1の電流開閉要素は、第1の転流回路を介して第1の正極線と第2の正極線との間に流れる電流を半導体遮断器に流す、あるいは阻止する。第2の電流開閉要素は、第2の転流回路を介して第1の負極線と第2の負極線との間に流れる電流を半導体遮断器に流す、あるいは阻止する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体遮断器と、
第1の端子に繋がる直流送電線である第1の正極線と、第2の端子に繋がる直流送電線である第2の正極線との間に流れる電流を選択的な向きで流す複数の第1の転流回路と、
第3の端子に繋がる直流送電線である第1の負極線と、第4の端子に繋がる直流送電線である第2の負極線との間に流れる電流を選択的な向きで流す複数の第2の転流回路と、
前記第1の転流回路を介して前記第1の正極線と前記第2の正極線との間に流れる電流を前記半導体遮断器に流す、あるいは阻止する第1の電流開閉要素と、
前記第2の転流回路を介して前記第1の負極線と前記第2の負極線との間に流れる電流を前記半導体遮断器に流す、あるいは阻止する第2の電流開閉要素と、
を備える直流電流遮断装置。
【請求項2】
いずれかの前記直流送電線に事故が発生した際に、
前記事故が発生した直流送電線である事故回線に繋がる前記第1の電流開閉要素、あるいは前記第2の電流開閉要素のいずれか一方から前記半導体遮断器に電流を流し、
前記事故回線に繋がる前記第1の転流回路、あるいは前記第2の転流回路のいずれか一方は、前記事故回線に流れる電流を前記半導体遮断器に向けて流す、
請求項1に記載の直流電流遮断装置。
【請求項3】
前記第1の電流開閉要素は、少なくとも一以上の機械式接点であり、
前記第2の電流開閉要素は、少なくとも一以上の機械式接点である、
請求項1または請求項2に記載の直流電流遮断装置。
【請求項4】
前記第1の電流開閉要素は、少なくとも一以上のサイリスタであり、
前記第2の電流開閉要素は、少なくとも一以上のサイリスタである、
請求項1または請求項2に記載の直流電流遮断装置。
【請求項5】
前記第1の電流開閉要素と前記第2の電流開閉要素とのそれぞれは、前記半導体遮断器に電流が流入する側に少なくとも一以上のダイオードが配置され、前記半導体遮断器から電流が流出する側に少なくとも一以上のサイリスタが配置される、
請求項1または請求項2に記載の直流電流遮断装置。
【請求項6】
前記第1の電流開閉要素と前記第2の電流開閉要素とのそれぞれは、前記半導体遮断器に電流が流入する側に少なくとも一以上のサイリスタが配置され、前記半導体遮断器から電流が流出する側に少なくとも一以上のダイオードが配置される、
請求項1または請求項2に記載の直流電流遮断装置。
【請求項7】
前記第1の転流回路と前記第2の転流回路とのそれぞれは、第1の機械式接点とブリッジ回路とを並列接続した並列回路と、少なくとも一以上の第1の機械式接点と、を直列接続した構成であり、
前記ブリッジ回路は、少なくとも一以上の半導体スイッチング素子と電圧源とを互いに接続した構成である、
請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載の直流電流遮断装置。
【請求項8】
前記第1の転流回路と前記第2の転流回路とのそれぞれは、機械式接点と、少なくとも一以上の自己消弧型の半導体スイッチング素子とを直列接続した直列回路である、
請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載の直流電流遮断装置。
【請求項9】
前記第1の転流回路と前記第2の転流回路とのそれぞれは、第1の機械式接点とブリッジ回路とを並列接続した並列回路と、少なくとも一以上の第1の機械式接点と、を直列接続した構成であり、
前記ブリッジ回路は、少なくとも一以上の半導体スイッチング素子と、少なくとも一以上のダイオードと、電圧源とを互いに接続した構成である、
請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載の直流電流遮断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、直流電流遮断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、直流送電を行う直流送電システムについて検討・導入が進められている。直流送電システムは、従来の交流送電システムに比べ、長距離大電力送電に適用した場合に、低コストで設置可能であり、かつ電力損失が少ない高効率システムを構築することが可能である。その一方、複数の発電端子を連系した直流送電システムにおいては、系統事故の発生した個所を遮断・隔離することが難しい。直流電流では、電流がゼロを横切る点(ゼロ点)が生じないため、機械式接点では電流を容易に遮断できないためである。これを解決するため、様々な構成の直流電流遮断装置が検討されている。直流電流遮断装置は、直流送電線で事故が発生した際に、この直流送電線に属する直流電流遮断器を開極することで事故回線を切り離し、健全回線による送電を維持するものである。
【0003】
直流電流遮断装置の一つの方式として、ハイブリッド方式がある。ハイブリッド方式の直流電流遮断装置は、主に機械式接点と半導体遮断器を備える。定常送電のとき、ハイブリッド方式の直流電流遮断装置は、機械式接点を通して直流電流を通電する。一方、事故回線を遮断するとき、ハイブリッド方式の直流電流遮断装置は、何らかの転流手段によって遮断する直流送電線に流れる直流電流を半導体遮断器に転流させ、半導体遮断器によって直流電流を遮断する。これにより、ハイブリッド方式の直流電流遮断装置では、定常送電時に直流電流の損失を低減し、遮断時には、高速に事故回線を遮断することができる。
【0004】
近年、例えば、正極と負極との複数の極を持つ直流送電システムの検討や導入も進められている。複数の極を持つ直流送電システムは、例えば、接地レベルを中性点とし、この中性点とそれぞれの極の直流送電線との間に極性が異なる直流電流を流す。これにより、複数の極を持つ直流送電システムでは、中性点には直流電流が流れず、それぞれの直流送電線の間で直流電流が流れる。つまり、複数の極を持つ直流送電システムは、二回線分の直流送電を行うことができる。複数の極を持つ直流送電システムでは、中性点を持つことにより、それぞれの極の直流送電線に接続される構成要素に必要な耐圧を低く抑える(ここでは、半分にする)ことができる。
【0005】
しかしながら、複数の極を持つ直流送電システムにおいてハイブリッド方式の直流電流遮断装置を適用する場合、それぞれの極の直流送電線に対してハイブリッド方式の直流電流遮断装置を接続する必要があった。このため、複数の極を持つ直流送電システムでは、直流送電を行う極の数が増えるほど、ハイブリッド方式の直流電流遮断装置の数が増加し、直流送電システムの部品規模が大きくなってしまう可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、複数の極を持つ直流送電システムに適用される、小規模な部品構成で実現することができる直流電流遮断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の直流電流遮断装置は、半導体遮断器と、複数の第1の転流回路と、複数の第2の転流回路と、第1の電流開閉要素と、第2の電流開閉要素と、を持つ。複数の第1の転流回路は、第1の端子に繋がる直流送電線である第1の正極線と、第2の端子に繋がる直流送電線である第2の正極線との間に流れる電流を選択的な向きで流す。複数の第2の転流回路は、第3の端子に繋がる直流送電線である第1の負極線と、第4の端子に繋がる直流送電線である第2の負極線との間に流れる電流を選択的な向きで流す。第1の電流開閉要素は、前記第1の転流回路を介して前記第1の正極線と前記第2の正極線との間に流れる電流を前記半導体遮断器に流す、あるいは阻止する。第2の電流開閉要素は、前記第2の転流回路を介して前記第1の負極線と前記第2の負極線との間に流れる電流を前記半導体遮断器に流す、あるいは阻止する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態に係る直流電流遮断装置が適用される直流送電システムの構成の一例を示す図。
【
図2】第1の実施形態の直流電流遮断装置の構成の一例を示す図。
【
図3】第1の具体例の直流電流遮断装置の構成の一例を示す図。
【
図4】第1の具体例の直流電流遮断装置の動作について説明するための図(その1)。
【
図5】第1の具体例の直流電流遮断装置の動作について説明するための図(その2)。
【
図6】第1の具体例の直流電流遮断装置の動作について説明するための図(その3)。
【
図7】第1の具体例の直流電流遮断装置の動作について説明するための図(その4)。
【
図8】第2の具体例の直流電流遮断装置の構成の一例を示す図。
【
図10】第3の具体例の直流電流遮断装置の構成の一例を示す図。
【
図11】第4の具体例の直流電流遮断装置の構成の一例を示す図。
【
図12】第2の実施形態に係る直流電流遮断装置が適用される直流送電システムの構成の一例を示す図。
【
図13】第2の実施形態の直流電流遮断装置の構成の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態の直流電流遮断装置を、図面を参照して説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
[直流送電システムの構成]
図1は、第1の実施形態に係る直流電流遮断装置(DCCB:Direct Current Circuit Breaker)が適用される直流送電システムの構成の一例を示す図である。
図1には、互いに送電を行う複数(
図1では三つ)の交流系統の送受電端の間を双極の直流送電線で接続した構成の直流送電システム1の一例を示している。直流送電システム1は、例えば、接地レベルを中性点とし、この中性点を基準とした正極と負極との異なる複数の極性を持つ直流電流を送電する、つまり、二回線分の直流送電を行う直流送電システムである。直流送電システム1における正極とは、中性点の電位を低電位側とし、直流送電線の電位を高電位側として表す極性である。直流送電システム1における負極とは、中性点の電位を高電位側とし、直流送電線の電位を低電位側として表す極性である。直流送電システム1では、直流電流の送電において、中性点には直流電流が流れず、正極側の直流送電線の電位と、負極側の直流送電線の電位との電位差に応じた直流電流が送電される。このため、直流送電システム1では、直流電流を送電するためにそれぞれの構成要素に要求される耐圧が、対応する一方の極に直流電流を流すために必要な耐圧となるなり、中性接地点を持たずに二つの直流送電線間の電位差に応じた直流電流を流す直流送電システムに比べて低く抑えることができる。より具体的には、直流送電システム1では、中性接地点を持たずに二つの直流送電線間の電位差に応じた直流電流を流す直流送電システムの半分の耐圧となる。
【0012】
直流送電システム1は、例えば、三つの交流系統AC(交流系統AC-1~AC-3)と、六つの電力変換器10(電力変換器10-P-1~10-P-3、10-N-1~10-N-3)と、三つの直流電流遮断装置20(直流電流遮断装置20-1~20-3)とを備える。
図1においては、それぞれの構成要素の符号の後に「-(ハイフン)」と文字とを付して、それぞれの構成要素が対応する直流電力(直流電流)の極性を表している。より具体的には、「-P」を付した構成要素が正極側の直流電流に対応し、「-N」を付した構成要素が負極側の直流電流に対応することを表している。さらに、
図1においては、それぞれの構成要素の符号の最後に「-(ハイフン)」と数字とを付して、それぞれの構成要素の対応関係を表している。直流送電システム1では、例えば、電力変換器10-P-1~10-P-3のそれぞれが、正極側の直流電流に対応し、電力変換器10-N-1~10-N-3のそれぞれが、負極側の直流電流に対応する。直流送電システム1では、例えば、電力変換器10-P-1および電力変換器10-N-1と、直流電流遮断装置20-1とが交流系統AC-1に対応する。同様に、直流送電システム1では、例えば、電力変換器10-P-2および電力変換器10-N-2と、直流電流遮断装置20-2とが交流系統AC-2に対応し、電力変換器10-P-3および電力変換器10-N-3と、直流電流遮断装置20-3とが交流系統AC-3に対応する。以下の説明においては、それぞれの構成要素が対応する直流電力(直流電流)の極性や、それぞれの構成要素の対応関係を区別しない場合には、それぞれの構成要素の符号に付したハイフンと文字や数字とを省略する。
【0013】
直流送電システム1において、対応するそれぞれの構成要素同士は、近隣に配置(設置)される。直流送電システム1では、交流系統AC-1と、交流系統AC-2と、交流系統AC-3との間で互いに送受電を行う。
【0014】
交流系統ACのそれぞれは、交流電力を送電する送電設備である。交流系統ACは、送電されてきた交流電力を、接続された先に存在する需要家に送電する。交流系統ACは、発電設備であってもよい。
【0015】
電力変換器10のそれぞれは、交流側に入力された交流電力(交流電流)を直流電力(直流電流)に変換して直流側に出力する、あるいは、直流側に入力された直流電力(直流電流)を交流電力(交流電流)に変換して交流側に出力する、交直変換器の一種である。電力変換器10-1~10-3のそれぞれは、例えば、交流/直流(AC/DC)コンバーターである。電力変換器10は、例えば、交流系統ACにより出力された三相の交流電流を、正極側の直流電流、あるいは負極側の直流電流に変換して、直流電流遮断装置20側に出力する。電力変換器10は、例えば、直流電流遮断装置20側より供給された正極側の直流電流、あるいは負極側の直流電流を三相の交流電流に変換して、交流系統AC側に出力する。電力変換器10は、例えば、互いに並列に接続された半導体スイッチング素子とダイオードとを備える半導体スイッチ部で構成されたハーフブリッジ回路を用いてアームを構成するモジュラーマルチレベル変換器(Modular Multilevel Converter:MMC)である。
【0016】
直流電流遮断装置20のそれぞれは、電力変換器10により出力された直流電流を送電する直流送電線LNが接続される。
図1に示した直流送電システム1では、電力変換器10のそれぞれが、直流電流遮断装置20-1~直流電流遮断装置20-3を介して、互いに対応する直流送電線LNによって接続されている。より具体的には、直流送電システム1では、直流電流遮断装置20-1と直流電流遮断装置20-2とが正極側の直流送電線LN-P-1と、負極側の直流送電線LN-N-1とによって接続されている。同様に、直流送電システム1では、電力変換器10のそれぞれが、直流電流遮断装置20-2と直流電流遮断装置20-3とを介して、正極側の直流送電線LN-P-2と、負極側の直流送電線LN-N-2とによって接続され、直流電流遮断装置20-1と直流電流遮断装置20-3とを介して、正極側の直流送電線LN-P-3と、負極側の直流送電線LN-N-3とによって接続されている。これにより、直流送電システム1では、電力変換器10のそれぞれが、直流電流遮断装置20-1と、直流電流遮断装置20-2と、直流電流遮断装置20-3と、互いに接続された直流送電線LNを介して、互いに直流電流を送電する。直流送電線LN-P-1は、「第1の正極線」の一例であり、直流送電線LN-P-3は、「第2の正極線」の一例であり、直流送電線LN-N-1は、「第1の負極線」の一例であり、直流送電線LN-N-3は、「第2の負極線」の一例である。
【0017】
それぞれの直流電流遮断装置20は、接続されたいずれかの直流送電線LNで事故が発生した際に、例えば、直流送電システム1における上位側の制御装置(不図示)や直流電流遮断装置20の制御装置(不図示)からの指示に応じて、系統事故(以下、単に「事故」という)が発生した直流送電線LN(事故回線)との接続点(接続端子)を電気的に遮断する。これにより、直流送電システム1では、事故回線を切り離し、健全回線による送電を維持する。
【0018】
不図示の上位側の制御装置や直流電流遮断装置20の不図示の制御装置(以下、それぞれの制御装置を区別せずに、「上位制御装置」という)は、直流電流遮断装置20が備えるそれぞれの構成要素を制御することにより、直流電流遮断装置20における直流送電線LNの遮断および導通を制御する。上位制御装置は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより以下の機能を実現するものである。上位制御装置の機能のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。上位制御装置の機能のうち一部または全部は、専用のLSIによって実現されてもよい。プログラムは、予め上位制御装置が備えるHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体が上位制御装置が備えるドライブ装置に装着されることで上位制御装置が備える記憶装置にインストールされてもよい。
【0019】
[直流電流遮断装置の構成]
次に、直流電流遮断装置20の構成の一例について説明する。
図2は、第1の実施形態の直流電流遮断装置20の構成の一例を示す図である。
図2には、対応する直流送電線LNの節点部分に構成する直流電流遮断装置20の一例を示している。
図2に示した直流電流遮断装置20は、例えば、直流電流遮断装置20-1の一例である。直流電流遮断装置20では、例えば、電力変換器10が変換して出力する正極側の直流電流の送電線(これも、直流送電線LNである)が電力変換器10側の端子b1に接続され、他の直流電流遮断装置20側の端子a1あるいは端子a2に正極側の直流送電線LN-Pが接続される。直流電流遮断装置20では、例えば、電力変換器10が変換して出力する負極側の直流電流の送電線(これも、直流送電線LNである)が電力変換器10側の端子b2に接続され、他の直流電流遮断装置20側の端子a3あるいは端子a4に負極側の直流送電線LN-Nが接続される。端子a1は、「第1の端子」の一例であり、端子a2は、「第2の端子」の一例であり、端子a3は、「第3の端子」の一例であり、端子a4は、「第4の端子」の一例である。
【0020】
直流電流遮断装置20は、例えば、複数の転流回路201(転流回路201-1~201-8)と、複数の電流開閉要素202(電流開閉要素202-1~202-4)と、一つの半導体遮断器203と、を備える。直流電流遮断装置20は、接続された正極側の直流送電線LN-Pおよび負極側の直流送電線LN-Nの遮断に用いる構成要素である半導体遮断器203を、全ての直流送電線LNで共有する構成である。この構成により、直流電流遮断装置20では、半導体遮断器203をそれぞれの直流送電線LNごとに複数備える構成よりも、直流電流遮断装置20、さらには直流送電システム1のサイズ(部品規模)を低減することができる。
【0021】
転流回路201のそれぞれは、両端に接続された直流送電線LNの間、あるいは電流開閉要素202に流れる直流電流の向き、あるいは大きさを切り替える(転流する)。転流回路201は、構成要素(以下、「転流要素」という)として、例えば、半導体スイッチング素子とダイオードとが互いに並列に接続された半導体スイッチ部を備える。転流回路201が備える半導体スイッチ部のオン状態およびオフ状態は、例えば、直流送電システム1における不図示の上位制御装置によって制御される。つまり、転流回路201は、上位制御装置による半導体スイッチ部のオンまたはオフのいずれかの状態への制御に応じて、両端に接続された直流送電線LNの間、あるいは電流開閉要素202に流れる直流電流を転流させる。
【0022】
転流回路201-1は、端子a1と電流開閉要素202-1との間に直列接続され、不図示の上位制御装置による制御に応じて、端子a1と電流開閉要素202-1との間に流れる正極側の直流電流を転流させる。転流回路201-2は、端子a1と電流開閉要素202-2との間に直列接続され、上位制御装置による制御に応じて、端子a1と電流開閉要素202-2との間に流れる正極側の直流電流を転流させる。転流回路201-3は、端子a2と電流開閉要素202-1との間に直列接続され、上位制御装置による制御に応じて、端子a2と電流開閉要素202-1との間に流れる正極側の直流電流を転流させる。転流回路201-4は、端子a2と電流開閉要素202-2との間に直列接続され、上位制御装置による制御に応じて、端子a2と電流開閉要素202-2との間に流れる正極側の直流電流を転流させる。転流回路201-5は、端子a3と電流開閉要素202-3との間に直列接続され、上位制御装置による制御に応じて、端子a3と電流開閉要素202-3との間に流れる負極側の直流電流を転流させる。転流回路201-6は、端子a3と電流開閉要素202-4との間に直列接続され、上位制御装置による制御に応じて、端子a3と電流開閉要素202-4との間に流れる負極側の直流電流を転流させる。転流回路201-7は、端子a4と電流開閉要素202-3との間に直列接続され、上位制御装置による制御に応じて、端子a4と電流開閉要素202-3との間に流れる負極側の直流電流を転流させる。転流回路201-8は、端子a4と電流開閉要素202-4との間に直列接続され、上位制御装置による制御に応じて、端子a4と電流開閉要素202-4との間に流れる負極側の直流電流を転流させる。転流回路201-1、転流回路201-2、転流回路201-3、および転流回路201-4は、「第1の転流回路」の一例であり、転流回路201-5、転流回路201-6、転流回路201-7、および転流回路201-8は、「第2の転流回路」の一例である。
【0023】
電流開閉要素202のそれぞれは、両端に接続された直流送電線LNの間に流れる直流電流を許容(直流電流が流れる方向を制限)、あるいは阻止する。電流開閉要素202の開状態および閉状態は、例えば、直流送電システム1における不図示の上位制御装置によって制御される。つまり、電流開閉要素202は、上位制御装置による開状態または閉状態のいずれかの状態への制御に応じて、両端に接続された直流送電線LNの間に直流電流が流れることを許容する(流れる方向を制限する)、あるいは流れを阻止する。
【0024】
電流開閉要素202-1は、転流回路201-1および転流回路201-3と、電流開閉要素202-3および半導体遮断器203との間に直列接続され、上位制御装置による制御に応じて、転流回路201-1および転流回路201-3側から半導体遮断器203側に正極側の直流電流が流れるのを許容し、電流開閉要素202-3側あるいは半導体遮断器203側から転流回路201-1および転流回路201-3側に電流が流れるのを阻止する。電流開閉要素202-2は、転流回路201-2および転流回路201-4と、電流開閉要素202-4および半導体遮断器203との間に直列接続され、上位制御装置による制御に応じて、半導体遮断器203側から転流回路201-2および転流回路201-4側に正極側の直流電流が流れるのを許容し、転流回路201-2および転流回路201-4側から半導体遮断器203側あるいは電流開閉要素202-4側に電流が流れるのを阻止する。電流開閉要素202-3は、転流回路201-5および転流回路201-7と、電流開閉要素202-1および半導体遮断器203との間に直列接続され、上位制御装置による制御に応じて、転流回路201-5および転流回路201-7側から半導体遮断器203側に負極側の直流電流が流れるのを許容し、電流開閉要素202-1側あるいは半導体遮断器203側から転流回路201-5および転流回路201-7側に電流が流れるのを阻止する。電流開閉要素202-4は、転流回路201-6および転流回路201-8と、電流開閉要素202-2および半導体遮断器203との間に直列接続され、上位制御装置による制御に応じて、半導体遮断器203側から転流回路201-6および転流回路201-8側に負極側の直流電流が流れるのを許容し、転流回路201-6および転流回路201-8側から半導体遮断器203側あるいは電流開閉要素202-2側に電流が流れるのを阻止する。電流開閉要素202-1および転流回路201-2は、「第1の電流開閉要素」の一例であり、電流開閉要素202-3および転流回路201-4は、「第2の電流開閉要素」の一例である。電流開閉要素202-1、転流回路201-2、電流開閉要素202-3、および転流回路201-4は、「電流開閉要素」の一例である。
【0025】
半導体遮断器203は、両端の間に流れる直流電流を許容、あるいは阻止(遮断)する。
図2には、半導体遮断器203の構成の一部を示している。
図2に示した半導体遮断器203は、例えば、互いに同じ向きで直列に接続された複数の半導体スイッチ部(
図2には二つの半導体スイッチ部のみを示している)の直列回路と、アレスタとが並列に接続された構成である。半導体スイッチ部のそれぞれは、例えば、互いに並列に接続された半導体スイッチング素子とダイオードとを備える。半導体遮断器203が備える半導体スイッチ部のオン状態およびオフ状態は、例えば、直流送電システム1における上位制御装置(不図示)によって制御される。つまり、半導体遮断器203は、不図示の上位制御装置による半導体スイッチ部のオンまたはオフのいずれかの状態への制御に応じて、両端の間に流れる直流電流を許容、あるいは阻止(遮断)する。半導体スイッチング素子は、例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)などのスイッチング素子である。半導体スイッチング素子は、IGBTに限定されず、自己消弧を実現可能な半導体スイッチング素子であれば、いかなるスイッチング素子であってもよい。アレスタは、半導体スイッチ部の直列回路が備える複数の半導体スイッチ部がオフ状態に制御された場合に、接続された直流送電線LNのインダクタンス分のエネルギーに起因して発生するサージエネルギーを消費(吸収)する。この構成により、半導体遮断器203は、上位制御装置による半導体スイッチ部のオンまたはオフのいずれかの状態への制御に応じて、両端の間に流れる直流電流を許容、あるいは阻止(遮断)する。
【0026】
直流電流遮断装置20では、半導体遮断器203が備える半導体スイッチ部を構成するダイオードのカソードに電流開閉要素202-1および電流開閉要素202-3が接続され、ダイオードのアノードに電流開閉要素202-2および電流開閉要素202-4が接続されている。従って、半導体遮断器203は、電流開閉要素202-1および電流開閉要素202-3側から電流開閉要素202-2および電流開閉要素202-4に流れる直流電流を、オン状態のときに許容し、オフ状態のときに遮断する。
【0027】
[直流電流遮断装置の第1の具体例]
次に、直流電流遮断装置20の第1の具体例の構成について説明する。
図3は、第1の具体例の直流電流遮断装置20の構成の一例を示す図である。
図3に示した第1の具体例の直流電流遮断装置20は、転流回路201が、例えば、機械式接点と双方向Hブリッジ回路とが並列に接続された並列回路2011と、機械式接点とが直列に接続された構成であり、電流開閉要素202が機械式接点である。並列回路2011が備える双方向Hブリッジ回路は、四つの半導体スイッチ部と、一つのコンデンサとが互いに接続されている。双方向Hブリッジ回路が備える半導体スイッチング素子も、半導体遮断器203が備える半導体スイッチ部の半導体スイッチング素子と同様に、例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)などのスイッチング素子である。ただし、転流回路201が備える半導体スイッチ部の半導体スイッチング素子は、半導体遮断器203が備える半導体スイッチ部の半導体スイッチング素子よりも耐圧が低いものであってもよい。半導体スイッチング素子は、IGBTに限定されず、自己消弧を実現可能な半導体スイッチング素子であれば、いかなるスイッチング素子であってもよい。並列回路2011は、「並列回路」の一例であり、並列回路2011を構成する機械式接点は、「第1の機械式接点」の一例であり、並列回路2011を構成する双方向Hブリッジ回路は、「ブリッジ回路」の一例である。双方向Hブリッジ回路が備える半導体スイッチ部は、「半導体スイッチング素子」の一例であり、双方向Hブリッジ回路が備えるコンデンサは、「電圧源」の一例である。
【0028】
[第1の具体例の直流電流遮断装置20における直流送電線LNの遮断の動作]
ここで、
図4~
図7を参照して、例えば、第1の具体例の直流電流遮断装置20が直流電流遮断装置20-1であり、端子a2に接続された直流送電線LN-P-3から端子a1に接続された直流送電線LN-P-1に正極側の直流電流が流れているときに、直流送電線LN-P-1において事故が発生した場合を例として、直流電流遮断装置20が直流送電線LN-P-1を遮断させる動作の一例について説明する。このとき、端子a3に接続された直流送電線LN-N-1と端子a4に接続された直流送電線LN-N-3とに流れる負極側の直流電流の経路には事故が発生していないものとする。
図4~
図7には、第1の具体例の直流電流遮断装置20が直流送電線LN-P-1を遮断させる動作における直流電流遮断装置20内の直流電流の流れを示している。
図4~
図7では、端子b1および端子b2に流れる直流電流、つまり、対応する電力変換器10-P-1と電力変換器10-N-1とのそれぞれの電力変換器10側に流れる直流電流の図示を省略している。
【0029】
直流電流遮断装置20における定常の送電状態(初期状態)において、全ての転流回路201が備える機械式接点は閉極され、全ての電流開閉要素202が備える機械式接点は開極されている。この場合、直流電流遮断装置20では、
図4に示すように、端子a2に入力された正極側の直流電流が、正極側の転流回路201-1~201-4のそれぞれを通って端子a1に流れ、端子a3に入力された負極側の直流電流が、負極側の転流回路201-5~201-8のそれぞれを通って端子a4に流れる。
【0030】
ここで、直流送電線LN-P-1に事故が発生した場合、不図示の上位制御装置は、以下のような手順で直流電流遮断装置20が備えるそれぞれの構成要素の開極、閉極、オン、オフを制御することにより、事故が発生した直流送電線LN-P-1を遮断する。
【0031】
(手順1):まず、上位制御装置は、事故が発生した直流送電線LN-P-1の極、つまり正極側の電流開閉要素202-1および電流開閉要素202-2を閉極させる。そして、上位制御装置は、転流回路201-1および転流回路201-4が備えるそれぞれの機械式接点を開極させる。つまり、上位制御装置は、転流回路201-1および転流回路201-4が備える並列回路2011内の機械式接点と、並列回路2011に直列接続された機械式接点との二つの機械式接点を開極させる。この場合でも、直流電流遮断装置20では、
図5に示すように、事故が発生した正極側において、転流回路201-1~201-4のそれぞれを通って、正極側の直流電流が端子a2から端子a1に流れている状態である。これは、それぞれの機械式接点を開極させただけでは、それぞれの機械式接点におけるそれぞれの接点間に生じたアークによって、直流送電線LN-P-1を電気的に遮断させた状態(遮断状態)にはならないからである。この場合でも、直流電流遮断装置20では、
図5に示すように、事故が発生していない側の負極側の直流電圧は、定常の送電状態から変わらずに、転流回路201-5~201-8のそれぞれを通って端子a3から端子a4に流れている。
【0032】
(手順2):次に、上位制御装置は、転流回路201-1および転流回路201-4が備える並列回路2011内の双方向Hブリッジ回路を構成するそれぞれの半導体スイッチング素子のうち二つをオン状態にし、並列回路2011内の機械式接点に流れる電流を打ち消す。これにより、直流電流遮断装置20では、転流回路201-1および転流回路201-4が備える並列回路2011内の機械式接点の接点間に生じたアークが消弧される。
【0033】
(手順3):次に、上位制御装置は、転流回路201-1および転流回路201-4が備える並列回路2011内の双方向Hブリッジ回路を構成するそれぞれの半導体スイッチング素子をオフ状態にし、半導体遮断器203が備えるそれぞれの半導体スイッチング素子をオン状態にする。これにより、直流電流遮断装置20では、
図6に示すように、端子a2に入力された正極側の直流電流が、転流回路201-3、電流開閉要素202-1、半導体遮断器203、電流開閉要素202-2、転流回路201-2のそれぞれを通って端子a1に流れる。つまり、直流電流遮断装置20では、端子a2に入力された正極側の直流電流が、半導体遮断器203に転流する。言い換えれば、直流電流遮断装置20では、発生した事故による事故電流が、半導体遮断器203に転流する。この場合でも、直流電流遮断装置20では、
図6に示すように、事故が発生していない側の負極側の直流電圧は、定常の送電状態から変わらずに、転流回路201-5~201-8のそれぞれを通って端子a3から端子a4に流れている。
【0034】
(手順4):次に、上位制御装置は、半導体遮断器203が備えるそれぞれの半導体スイッチング素子をオフ状態にする。これにより、直流電流遮断装置20では、
図7に示すように、事故が発生した直流送電線LN-P-1が遮断される。つまり、直流電流遮断装置20では、端子a2から、事故が発生した直流送電線LN-P-1が接続されている端子a1への正極側の直流電流の流れが遮断される。そして、上位制御装置は、事故が発生した直流送電線LN-P-1を電気的に隔離する動作を完了する。この場合でも、直流電流遮断装置20では、
図7に示すように、事故が発生していない側の負極側の直流電圧は、定常の送電状態から変わらずに、転流回路201-5~201-8のそれぞれを通って端子a3から端子a4に流れている。つまり、直流電流遮断装置20では、事故が発生していない側での送電は維持されている。
【0035】
このような手順によって、直流電流遮断装置20では、不図示の上位制御装置が、事故が発生した直流送電線LNが接続されている側の極に属する転流回路201や電流開閉要素202と、半導体遮断器203とのそれぞれの構成要素の開極、閉極、オン、オフを制御することによって、事故が発生した直流送電線LNを遮断する。このときも、直流電流遮断装置20では、事故が発生していない側の極における送電を維持することができる。ここで、直流電流遮断装置20が、例えば、正極側および負極側にさらに別の直流送電線LNを接続することができる構成である場合、事故が発生した極側においても、事故が発生した直流送電線LNを介さない送電は維持することができる。
【0036】
そして、直流電流遮断装置20では、正極側と負極側とで半導体遮断器203を共有しているため、半導体遮断器203をそれぞれの直流送電線LNごとに複数備える構成よりも、直流電流遮断装置20、さらには直流送電システム1の部品点数を大幅に削減し、サイズを低減することができる。
【0037】
上述した直流電流遮断装置20における直流送電線LN-P-1の遮断動作の一例では、正極側の直流電流が端子a2から端子a1に向かって流れる場合について説明した。しかし、正極側の直流電流は、
図4~
図7に示した向きと反対方向、つまり、端子a1から端子a2に向かって流れる場合もある。この場合でも、上位制御装置は、発生した事故による事故電流を半導体遮断器203に転流させるように制御すればよい。より具体的には、上位制御装置は、手順1において、転流回路201-2および転流回路201-3が備えるそれぞれの機械式接点を開極させて、手順2において、転流回路201-2および転流回路201-3が備える並列回路2011内の双方向Hブリッジ回路を構成するそれぞれの半導体スイッチング素子をオン状態にする。そして、上位制御装置は、手順3において、転流回路201-2および転流回路201-3が備える並列回路2011内の双方向Hブリッジ回路を構成するそれぞれの半導体スイッチング素子をオフ状態にし、半導体遮断器203が備えるそれぞれの半導体スイッチング素子をオン状態にして、事故電流を半導体遮断器203に転流させる。その後、上位制御装置は、手順4において、半導体遮断器203が備えるそれぞれの半導体スイッチング素子をオフ状態にして、事故が発生した直流送電線LNを遮断すればよい。
【0038】
[直流電流遮断装置の第2の具体例]
次に、直流電流遮断装置20の第2の具体例の構成について説明する。
図8は、第2の具体例の直流電流遮断装置20の構成の一例を示す図である。
図8に示した第2の具体例の直流電流遮断装置20(以下、「直流電流遮断装置21」という)では、転流回路201の構成が、第1の具体例の直流電流遮断装置20が備える転流回路201の構成から変わっている。直流電流遮断装置21が備える転流回路201(以下、「転流回路211」という)は、例えば、複数の半導体スイッチ部(
図8には二つの半導体スイッチ部のみを示している)が互いに逆向きで直列に接続された直列回路2111と、機械式接点とが直列に接続された構成である。直列回路2111が備える半導体スイッチ部を構成する半導体スイッチング素子も、第1の具体例の直流電流遮断装置20の転流回路201が備える半導体スイッチ部の半導体スイッチング素子と同様に、例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)などのスイッチング素子である。この場合の半導体スイッチング素子も、IGBTに限定されず、自己消弧を実現可能な半導体スイッチング素子であれば、いかなるスイッチング素子であってもよい。直列回路2111は、「直列回路」の一例であり、直列回路2111を構成する半導体スイッチ部は、「自己消弧型の半導体スイッチング素子」の一例であり、機械式接点は、「機械式接点」の一例である。
【0039】
[第2の具体例の直流電流遮断装置21における直流送電線LNの遮断の動作]
直流電流遮断装置21において事故が発生した直流送電線LNを遮断させる動作は、
図4~
図7を参照して説明した、第1の具体例の直流電流遮断装置20において事故が発生した直流送電線LNを遮断させる動作と同様である。つまり、上位制御装置は、直流電流遮断装置21でも、
図4~
図7に示したように事故電流を半導体遮断器203に転流させて、事故が発生した直流送電線LNを遮断すればよい。従って、直流電流遮断装置21における直流送電線LNの遮断の動作に関する詳細な説明は省略する。ただし、直流電流遮断装置21では、第1の具体例の直流電流遮断装置20が備える転流回路201が、転流回路211に代わっている。そして、転流回路211内の直列回路2111では、転流回路201内の並列回路2011が備えていた機械式接点とHブリッジ回路とを備えていない。このため、直流電流遮断装置21では、上位制御装置が第1の具体例の直流電流遮断装置20において制御していた、転流回路201が備える並列回路2011内の機械式接点を開極させる制御が省略され、Hブリッジ回路の半導体スイッチング素子のオン、オフ制御は、直列回路2111のオフ制御に置き換えられる。
【0040】
このようにして、直流電流遮断装置21でも、第1の具体例の直流電流遮断装置20と同様に、不図示の上位制御装置が、事故が発生した直流送電線LNが接続されている側の極に属する転流回路211や電流開閉要素202と、半導体遮断器203とのそれぞれの構成要素の開極、閉極、オン、オフを制御することによって、事故が発生した直流送電線LNを遮断することができる。このとき、直流電流遮断装置21でも、事故が発生していない側の極における送電を維持することができる。
【0041】
転流回路201や転流回路211が備える転流要素の構成は、
図3に示した第1の具体例の直流電流遮断装置20において転流回路201が備える、機械式接点と双方向Hブリッジ回路とが並列に接続された並列回路2011と、機械式接点とが直列に接続された構成や、
図8に示した直流電流遮断装置21において転流回路211が備える、複数の半導体スイッチ部の直列回路2111と、機械式接点とが直列に接続された構成に限定されない。
【0042】
ここで、転流回路が備える転流要素の別の構成について説明する。
図9は、転流回路201(転流回路211であってもよい)の別の構成の一例を示す図である。
図9に示した転流回路221は、例えば、機械式接点と単方向Hブリッジ回路とが並列に接続された並列回路2211と、機械式接点とが直列に接続された構成である。並列回路2011が備える単方向Hブリッジ回路は、二つの半導体スイッチ部、二つのダイオード、および一つのコンデンサが互いに接続されている。単方向Hブリッジ回路が備える半導体スイッチ部を構成する半導体スイッチング素子も、第1の具体例の直流電流遮断装置20の転流回路201や、直流電流遮断装置21の転流回路211が備える半導体スイッチ部の半導体スイッチング素子と同様に、例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)などのスイッチング素子である。この場合の半導体スイッチング素子も、IGBTに限定されず、自己消弧を実現可能な半導体スイッチング素子であれば、いかなるスイッチング素子であってもよい。並列回路2211は、「並列回路」の一例であり、並列回路2211を構成する機械式接点は、「第1の機械式接点」の一例であり、並列回路2211を構成する単方向Hブリッジ回路は、「ブリッジ回路」の一例である。単方向Hブリッジ回路が備える半導体スイッチ部は、「半導体スイッチング素子」の一例であり、単方向Hブリッジ回路が備えるコンデンサは、「電圧源」の一例である。
【0043】
転流回路が
図9に示した転流回路221の構成に代わっても、第1の実施形態の直流電流遮断装置20(直流電流遮断装置21も含む)は、不図示の上位制御装置が、上述したように事故が発生した直流送電線LNが接続されている側の極に属する転流回路221や電流開閉要素202と、半導体遮断器203とのそれぞれの構成要素の開極、閉極、オン、オフを制御することによって、事故が発生した直流送電線LNを遮断することができる。このとき、転流回路221を備える直流電流遮断装置20(直流電流遮断装置21も含む)でも、事故が発生していない側の極における送電を維持することができる。
【0044】
[直流電流遮断装置の第3の具体例]
次に、直流電流遮断装置20の第3の具体例の構成について説明する。
図10は、第3の具体例の直流電流遮断装置20の構成の一例を示す図である。
図10に示した第3の具体例の直流電流遮断装置20(以下、「直流電流遮断装置22」という)では、電流開閉要素202の構成が、第1の具体例の直流電流遮断装置20が備える電流開閉要素202の構成から変わっている。直流電流遮断装置22が備える電流開閉要素202(以下、「電流開閉要素222」という)は、例えば、サイリスタで構成される。電流開閉要素222は、複数のサイリスタが互いに同じ向きで直列に接続された構成であってもよい。サイリスタの向き、つまり、アノードとカソードとが接続される方向は、半導体遮断器203が直流電流を流す方向と同じ方向である。つまり、半導体遮断器203に直流電流が流入する側に配置される電流開閉要素222-1および電流開閉要素222-3では、カソードが半導体遮断器203側に接続され、半導体遮断器203から直流電流が流出する側に配置される電流開閉要素222-2および電流開閉要素222-4では、アノードが半導体遮断器203側に接続される。サイリスタのゲートは、例えば、直流送電システム1における不図示の上位制御装置によって制御される。電流開閉要素222は、上位制御装置によるサイリスタのゲートの制御に応じて、両端に接続された直流送電線LNの間に流れる直流電流を許容、あるいは阻止する。
【0045】
直流電流遮断装置22における直流送電線LNの遮断の動作は、上位制御装置が、第1の具体例の直流電流遮断装置20や第2の具体例の直流電流遮断装置21における直流送電線LNの遮断の動作と等価なものになるようにすればよい。従って、直流電流遮断装置22における直流送電線LNの遮断の動作に関する詳細な説明は省略する。
【0046】
直流電流遮断装置22でも、第1の具体例の直流電流遮断装置20や第2の具体例の直流電流遮断装置21と同様に、不図示の上位制御装置が、事故が発生した直流送電線LNが接続されている側の極に属する転流回路201や電流開閉要素222と、半導体遮断器203とのそれぞれの構成要素の開極、閉極、オン、オフを制御することによって、事故が発生した直流送電線LNを遮断することができる。このとき、直流電流遮断装置22でも、事故が発生していない側の極における送電を維持することができる。
【0047】
[直流電流遮断装置の第4の具体例]
次に、直流電流遮断装置20の第4の具体例の構成について説明する。
図11は、第4の具体例の直流電流遮断装置20の構成の一例を示す図である。
図11に示した第4の具体例の直流電流遮断装置20(以下、「直流電流遮断装置23」という)では、第3の具体例の直流電流遮断装置22が備える正極側の二つの電流開閉要素222のうちの一方と、負極側の二つの電流開閉要素222のうちの一方とのそれぞれの構成が、電流開閉要素232にそれぞれ代わっている。
図11に示した直流電流遮断装置23では、直流電流遮断装置22が備える正極側の電流開閉要素222-1が電流開閉要素232-1に代わり、負極側の電流開閉要素222-3が電流開閉要素232-3に代わっている。直流電流遮断装置23は、直流電流遮断装置22が備える正極側の電流開閉要素222-2が電流開閉要素232-2に代わり、負極側の電流開閉要素222-4が電流開閉要素232-4に代わってもよい。電流開閉要素232は、例えば、ダイオードで構成される。電流開閉要素232は、複数のダイオードが互いに同じ向きで直列に接続された構成であってもよい。電流開閉要素232が備えるダイオードの向き、つまり、アノードとカソードとが接続される方向は、直流電流遮断装置22が備える、対応する位置の電流開閉要素222と同じ向きである。つまり、直流電流遮断装置23でも、電流開閉要素232が備えるダイオードの向きは、半導体遮断器203が直流電流を流す際に流れる電流と同じ方向である。つまり、半導体遮断器203に直流電流が流入する側に配置される電流開閉要素222-1および電流開閉要素222-3に代わる電流開閉要素232では、カソードが半導体遮断器203側に接続され、半導体遮断器203から直流電流が流出する側に配置される電流開閉要素222-2および電流開閉要素222-4に代わる電流開閉要素232では、アノードが半導体遮断器203側に接続される。電流開閉要素232は、上位制御装置による制御によらずに、両端に接続された直流送電線LNの間に流れる直流電流を許容、あるいは阻止する。
【0048】
直流電流遮断装置23における直流送電線LNの遮断の動作は、上位制御装置が、第1の具体例の直流電流遮断装置20や、第2の具体例の直流電流遮断装置21、第3の具体例の直流電流遮断装置22における直流送電線LNの遮断の動作と等価なものになるようにすればよい。従って、直流電流遮断装置23における直流送電線LNの遮断の動作に関する詳細な説明は省略する。
【0049】
直流電流遮断装置23でも、第1の具体例の直流電流遮断装置20や、第2の具体例の直流電流遮断装置21、第3の具体例の直流電流遮断装置22と同様に、不図示の上位制御装置が、事故が発生した直流送電線LNが接続されている側の極に属する転流回路201や電流開閉要素222と、半導体遮断器203とのそれぞれの構成要素の開極、閉極、オン、オフを制御することによって、事故が発生した直流送電線LNを遮断することができる。このとき、直流電流遮断装置23でも、事故が発生していない側の極における送電を維持することができる。
【0050】
上記説明したように、第1の実施形態の直流電流遮断装置20は、送受電端の間を正極と負極との双極の直流送電線LNで接続した構成の直流送電システム1において、対応する直流送電線LNの節点部分に配置される。そして、第1の実施形態の直流電流遮断装置20は、上位制御装置が、事故が発生した直流送電線LNが接続されている側の極に属する転流回路201や電流開閉要素202と、半導体遮断器203とのそれぞれの構成要素の開極、閉極、オン、オフを制御することによって、事故が発生した直流送電線LNを遮断する。このとき、第1の実施形態の直流電流遮断装置20では、事故が発生していない側の極における送電が維持される。
【0051】
しかも、第1の実施形態の直流電流遮断装置20では、正極側の直流送電線LNの経路と、負極側の直流送電線LNの経路とで、半導体遮断器203を共有する。つまり、第1の実施形態の直流電流遮断装置20は、半導体遮断器203をそれぞれの直流送電線LNごとに複数備える構成ではなく、一つの半導体遮断器203をそれぞれの極で共有する構成である。これにより、第1の実施形態の直流電流遮断装置20では、少なくとも半導体遮断器203を構成するために要する部品点数(部品規模)を低減することができる。このことにより、第1の実施形態の直流電流遮断装置20を適用した直流送電システム1では、部品点数を大幅に削減し、サイズを低減することにより、設置するために必要な領域を小さくすることができる。
【0052】
直流電流遮断装置20の構成は、
図2に示した構成に限定されない。直流電流遮断装置20は、定常の送電状態では、
図4に示すような経路と同様の経路で電流を流すことができ、いずれかの直流送電線LNで事故が発生した場合には、
図5~
図7に示すような経路で事故電流を半導体遮断器203に転流させてから、事故が発生した直流送電線LNを遮断する構成であれば、いかなる構成であってもよい。つまり、直流電流遮断装置20の構成は、
図4~
図7に示した経路と同様の経路で導通させることができる構成であれば、
図2に示した構成要素以外の他の構成要素が経路中に設けられていてもよい。例えば、転流回路201や、電流開閉要素202、半導体遮断器203の構成を、直列または並列に接続した構成にしてもよい。
【0053】
直流電流遮断装置20では、正極側と負極側とのそれぞれの直流送電線LNの数が二つである、つまり、二回線である場合の構成を示したが、それぞれの極の回線数は、3回線以上であってもよい。直流電流遮断装置20では、直流電流が、正極と負極との二極である場合の構成を示したが、直流電流の極数は、3極以上であってもよい。直流電流遮断装置20では、正極側と負極側とのそれぞれで半導体遮断器203を共有する構成を示したが、それぞれの極の回線数が3回線以上である、または直流電流の極数が3極以上である場合、全ての回線あるいは極で半導体遮断器203を共有する構成でなくてもよい。つまり、少なくとも二回線あるいは二極で半導体遮断器203を共有する構成であれば、直流電流遮断装置20や直流送電システム1を構成する際の部品点数を削減し、サイズを低減する効果が得られる。
【0054】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について説明する。
図12は、第2の実施形態に係る直流電流遮断装置(DCCB)が適用される直流送電システムの構成の一例を示す図である。
図12の(a)には、比較のため、第1の実施形態の直流送電システム1の構成の一例を示し、
図12の(b)には、第2の実施形態の直流送電システム2の構成の一例を示している。ただし、
図12の(a)および
図12の(b)には、比較を容易にするため、二つの交流系統ACの間を双極の直流送電線LNで接続した直流送電システムの一例を示している。
【0055】
上述したように、第1の実施形態の直流電流遮断装置20は、
図12の(a)に示した直流送電システム1のような、正極と負極との双極の直流送電線LN、言い換えれば、正極側および負極側のそれぞれで一つずつの直流送電線LNで互いに送電を行う直流送電システムに対応する構成であった。
【0056】
これに対して、
図12の(b)に示した直流送電システム2は、正極側および負極側の直流送電線LNがそれぞれ二つずつ、つまり、二回線の構成である。以下の説明においては、この直流送電システム2の構成を「二双極」ともいう。
【0057】
直流送電システム2は、例えば、二つ交流系統AC(交流系統AC-1およびAC-2)と、八つの電力変換器10(電力変換器10-P1-1、10-P2-1、10-P1-2、10-P2-2、10-N1-1、10-N2-1、10-N1-2、および10-N2-2)と、二つの直流電流遮断装置25(直流電流遮断装置25-1および25-2)とを備える。直流送電システム2においては、第1の実施形態の直流送電システム1が備える構成要素と同様の機能を有する構成要素に同一の符号を付している。従って、直流送電システム2が備える構成要素において、第1の実施形態の直流送電システム1が備える構成要素と同様の構成や動作をする構成要素に関しての再度の詳細な説明は省略し、異なる構成や動作についてのみを説明する。
【0058】
図12の(b)に示した直流送電システム2においては、それぞれの構成要素の符号の後に「-(ハイフン)」と文字および数字とを付して、それぞれの構成要素が対応する直流電力(直流電流)の極性および極数を表している。より具体的には、「-P1」を付した構成要素が正極側の第1の直流電流に対応し、「-P2」を付した構成要素が正極側の第2の直流電流に対応し、「-N1」を付した構成要素が負極側の第1の直流電流に対応し、「-N2」を付した構成要素が負極側の第2の直流電流に対応することを表している。
図12の(b)においても、それぞれの構成要素の符号の最後に付した「-(ハイフン)」と数字とは、第1の実施形態と同様に、それぞれの構成要素の対応関係を表している。以下の説明においても、それぞれの構成要素が対応する直流電力(直流電流)の極性および極数や、それぞれの構成要素の対応関係を区別しない場合には、それぞれの構成要素の符号に付したハイフンと文字や数字とを省略する。
【0059】
直流送電システム2においても、直流送電システム1と同様に、対応するそれぞれの構成要素同士は、近隣に配置(設置)される。直流送電システム2では、交流系統AC-1と、交流系統AC-2との間で、互いに二双極で送受電を行う。
【0060】
直流電流遮断装置25のそれぞれは、直流電流遮断装置20と同様に、対応する電力変換器10により出力された直流電流を送電する直流送電線LNが接続される。直流電流遮断装置25は、正極側および負極側のそれぞれが二つずつの直流送電線LNに対応する構成である。
図12の(b)に示した直流送電システム2では、対応する電力変換器10同士が、直流電流遮断装置25-1および直流電流遮断装置25-2を介して、互いに対応する直流送電線LNによって接続されている。より具体的には、直流送電システム2では、電力変換器10のそれぞれが、直流電流遮断装置25-1と直流電流遮断装置25-2とを介して、正極側の第1の直流送電線LN-P1および第2の直流送電線LN-P2と、負極側の第1の直流送電線LN-N1および第2の直流送電線LN-N2とによって接続されている。これにより、直流送電システム2では、電力変換器10のそれぞれが、直流電流遮断装置25-1と直流電流遮断装置25-2と、互いに接続された二双極の直流送電線LNを介して、互いに直流電流を送電する。
【0061】
それぞれの直流電流遮断装置25も、接続されたいずれかの直流送電線LNで事故が発生した際に、例えば、直流送電システム2における不図示の上位側の制御装置や直流電流遮断装置25の不図示の制御装置などの上位制御装置からの指示に応じて、事故が発生した直流送電線LN(事故回線)との接続点(接続端子)を電気的に遮断する。これにより、直流送電システム2でも、事故回線を切り離し、健全回線による送電を維持する。
【0062】
[直流電流遮断装置の構成]
次に、直流電流遮断装置25の構成の一例について説明する。
図13は、第2の実施形態の直流電流遮断装置25の構成の一例を示す図である。
図13には、対応する直流送電線LNの節点部分に構成する直流電流遮断装置25の一例を示している。
図13に示した直流電流遮断装置25は、例えば、直流電流遮断装置25-1の一例である。直流電流遮断装置25では、例えば、電力変換器10-P1-1が変換して出力する正極側の第1の直流電流の送電線(これも、直流送電線LNである)が電力変換器10-P1-1側の端子b1に接続され、他の直流電流遮断装置25側の端子a1あるいは端子a2に正極側の第1の直流送電線LN-P1が接続される。直流電流遮断装置25では、例えば、電力変換器10-P2-1が変換して出力する正極側の第2の直流電流の送電線(これも、直流送電線LNである)が電力変換器10-P2-1側の端子b3に接続され、他の直流電流遮断装置25側の端子a5あるいは端子a6に正極側の第2の直流送電線LN-P2が接続される。直流電流遮断装置25では、例えば、電力変換器10-N1-1が変換して出力する負極側の第1の直流電流の送電線(これも、直流送電線LNである)が電力変換器10-N1-1側の端子b2に接続され、他の直流電流遮断装置25側の端子a3あるいは端子a4に負極側の第1の直流送電線LN-N1が接続される。直流電流遮断装置25では、例えば、電力変換器10-N2-1が変換して出力する負極側の第2の直流電流の送電線(これも、直流送電線LNである)が電力変換器10-N2-1側の端子b4に接続され、他の直流電流遮断装置25側の端子a7あるいは端子a8に負極側の第2の直流送電線LN-N2が接続される。
【0063】
直流電流遮断装置25は、例えば、複数の転流回路201(転流回路201-1~201-16)と、複数の電流開閉要素202(電流開閉要素202-1~202-8)と、一つの半導体遮断器203と、を備える。直流電流遮断装置25においては、第1の実施形態の直流電流遮断装置20が備える構成要素と同様の機能を有する構成要素に同一の符号を付している。直流電流遮断装置25が備えるそれぞれの構成要素は、備える数が異なるが、直流電流遮断装置20が備える対応する構成要素を同様である。従って、直流電流遮断装置25が備える構成要素に関しての再度の詳細な説明は省略する。
【0064】
直流電流遮断装置25では、転流回路201-1~201-8と、電流開閉要素202-1~202-4との構成が、正極側の第1の直流送電線LN-P1および負極側の第1の直流送電線LN-N1に対応する直流電流遮断装置の構成である。直流電流遮断装置25では、転流回路201-9~201-16と、電流開閉要素202-5~202-8との構成が、正極側の第2の直流送電線LN-P2および負極側の第2の直流送電線LN-N2に対応する直流電流遮断装置の構成である。そして、直流電流遮断装置25では、接続された正極側の第1の直流送電線LN-P1、第2の直流送電線LN-P2、負極側の第1の直流送電線LN-N1、および第2の直流送電線LN-N2の遮断に用いる構成要素である半導体遮断器203を、全ての直流送電線LNで共有している構成である。この構成により、直流電流遮断装置25でも、半導体遮断器203をそれぞれの直流送電線LNごとに複数備える構成よりも、直流電流遮断装置25、さらには直流送電システム2のサイズ(部品規模)を低減することができる。
【0065】
直流電流遮断装置25における直流送電線LNの遮断の動作は、上位制御装置が、第1の実施形態の直流電流遮断装置20における直流送電線LNの遮断の動作と等価なものになるようにすればよい。従って、直流電流遮断装置25における直流送電線LNの遮断の動作に関する詳細な説明は省略する。
【0066】
直流電流遮断装置25でも、第1の実施形態の直流電流遮断装置20と同様に、不図示の上位制御装置が、事故が発生した直流送電線LNが接続されている側の極に属する転流回路201や電流開閉要素202と、半導体遮断器203とのそれぞれの構成要素の開極、閉極、オン、オフを制御することによって、事故が発生した直流送電線LNを遮断することができる。このとき、直流電流遮断装置25でも、事故が発生していない側の極における送電を維持することができる。さらに、直流電流遮断装置25は、二双極の構成、つまり、正極側および負極側の直流送電線LNが二回線の構成であるため、いずれか一つの直流送電線LNに事故が発生したことによりその直流送電線LNを遮断したとしても、残り直流送電線LNを用いて、事故が発生していないときと等価な送電を維持することができる。
【0067】
上記説明したように、第2の実施形態の直流電流遮断装置25は、送受電端の間を正極と負極との双極の直流送電線LNを二回線で接続した二双極の構成の直流送電システム2において、対応する直流送電線LNの節点部分に配置される。そして、第2の実施形態の直流電流遮断装置25でも、第1の実施形態の直流電流遮断装置20と同様に、上位制御装置が、事故が発生した直流送電線LNが接続されている側の極に属する転流回路201や電流開閉要素202と、半導体遮断器203とのそれぞれの構成要素の開極、閉極、オン、オフを制御することによって、事故が発生した直流送電線LNを遮断する。このとき、第2の実施形態の直流電流遮断装置25では、事故が発生していない側の極における送電が維持される。さらに、第2の実施形態の直流電流遮断装置25では、二回線の構成の直流送電線LNのうち、事故が発生していない方の回線の直流送電線LNを用いて、事故が発生していないときと等価な送電が維持される。
【0068】
しかも、第2の実施形態の直流電流遮断装置25でも、第1の実施形態の直流電流遮断装置20と同様に、正極側の二回線の直流送電線LNの経路と、負極側の二回線の直流送電線LNの経路とで、半導体遮断器203を共有する。つまり、第2の実施形態の直流電流遮断装置25でも、第1の実施形態の直流電流遮断装置20と同様に、半導体遮断器203をそれぞれの直流送電線LNごとに複数備える構成ではなく、一つの半導体遮断器203をそれぞれの極で共有する構成である。これにより、第2の実施形態の直流電流遮断装置25でも、第1の実施形態の直流電流遮断装置20と同様に、少なくとも半導体遮断器203を構成するために要する部品点数(部品規模)を低減することができる。このことにより、第2の実施形態の直流電流遮断装置25を適用した直流送電システム2でも、第1の実施形態の直流電流遮断装置20を適用した直流送電システム1と同様に、部品点数を大幅に削減し、サイズを低減することにより、設置するために必要な領域を小さくすることができる。
【0069】
直流電流遮断装置25の構成は、
図13に示した構成に限定されない。直流電流遮断装置25も、直流電流遮断装置20と同様に、定常の送電状態では、
図4に示すような経路と等価な経路で電流を流すことができ、いずれかの直流送電線LNで事故が発生した場合には、
図5~
図7に示すような経路と等価な経路で事故電流を半導体遮断器203に転流させてから、事故が発生した直流送電線LNを遮断する構成であれば、いかなる構成であってもよい。つまり、直流電流遮断装置25の構成も、直流電流遮断装置20と同様に、
図4~
図7に示した経路と等価な経路で導通させることができる構成であれば、
図13に示した構成要素以外の他の構成要素が経路中に設けられていてもよい。例えば、直流電流遮断装置25でも、転流回路201や、電流開閉要素202、半導体遮断器203の構成を、直列または並列に接続した構成にしてもよい。
【0070】
直流電流遮断装置25でも、直流電流遮断装置20と同様に、正極側と負極側とのそれぞれの極の回線数は、3回線以上であってもよい。直流電流遮断装置25でも、直流電流遮断装置20と同様に、直流電流が、正極と負極との二極である場合の構成を示したが、直流電流の極数は、3極以上であってもよい。直流電流遮断装置25でも、直流電流遮断装置20と同様に、正極側と負極側とのそれぞれで半導体遮断器203を共有する構成を示したが、それぞれの極の回線数が3回線以上である、または直流電流の極数が3極以上である場合、全ての回線あるいは極で半導体遮断器203を共有する構成でなくてもよい。つまり、少なくとも二極および二回線で半導体遮断器203を共有する構成であれば、直流電流遮断装置25や直流送電システム2を構成する際の部品点数を削減し、サイズを低減する効果が得られる。
【0071】
上記に述べたとおり、各実施形態の直流電流遮断装置は、送受電端の間を正極と負極との双極の直流送電線で接続した構成の直流送電システムにおいて、対応する直流送電線の節点部分に配置される。そして、各実施形態の直流電流遮断装置では、上位制御装置(不図示)が、事故が発生した直流送電線が接続されている側の極に属する転流回路や電流開閉要素と、半導体遮断器とのそれぞれの構成要素の開極、閉極、オン、オフを制御することによって、事故が発生した直流送電線を遮断する。このとき、各実施形態の直流電流遮断装置では、事故が発生していない側の極における送電が維持される。
【0072】
しかも、各実施形態の直流電流遮断装置では、正極側の直流送電線の経路と、負極側の直流送電線の経路とで、半導体遮断器を共有する。つまり、各実施形態の直流電流遮断装置は、半導体遮断器をそれぞれの直流送電線ごとに複数備える構成ではなく、一つの半導体遮断器をそれぞれの極で共有する構成である。これにより、各実施形態の直流電流遮断装置では、少なくとも半導体遮断器を構成するために要する部品点数(部品規模)を低減することができる。このことにより、各実施形態の直流電流遮断装置を適用した直流送電システムでは、部品点数を大幅に削減し、サイズを低減することにより、設置するために必要な領域を小さくすることができる。
【0073】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、半導体遮断器(203)と、第1の端子(a1)に繋がる直流送電線(LN)である第1の正極線(LN-P-1)と、第2の端子(a2)に繋がる直流送電線である第2の正極線(LN-P-3)との間に流れる電流を選択的な向きで流す複数の第1の転流回路(201-1、201-2、201-3、および201-4)と、第3の端子(a3)に繋がる直流送電線である第1の負極線(LN-N-1)と、第4の端子(a4)に繋がる直流送電線である第2の負極線(LN-N-3)との間に流れる電流を選択的な向きで流す複数の第2の転流回路(201-5、201-6、201-7、および201-8)と、前記第1の転流回路を介して前記第1の正極線と前記第2の正極線との間に流れる電流を前記半導体遮断器に流す、あるいは阻止する第1の電流開閉要素(202-1および201-2)と、前記第2の転流回路を介して前記第1の負極線と前記第2の負極線との間に流れる電流を前記半導体遮断器に流す、あるいは阻止する第2の電流開閉要素(202-3および201-4)と、を備えることにより、小規模な部品構成で、複数の極を持つ直流送電システムに適用される直流電流遮断装置を実現することができる。
【0074】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0075】
1,2・・・直流送電システム、10,10-P-1,10-P-2,10-P-3,10-N-1,10-N-2,10-N-3,10-P1-1,10-P2-1,10-P1-2,10-P2-2,10-N1-1,10-N2-1,10-N1-2,10-N2-2・・・電力変換器、20,20-1,20-2,20-3,21,22,23,25,25-1,25-2・・・直流電流遮断装置、201,201-1,201-2,201-3,201-4,201-5,201-6,201-7,201-8,201-9,201-10,201-11,201-12,201-13,201-14,201-15,201-16,211,211-1,211-2,211-3,211-4,211-5,211-6,211-7,211-8,221・・・転流回路、2011,2211・・・並列回路、2111・・・直列回路、202,202-1,202-2,202-3,202-4,222,222-1,222-2,222-3,222-4,232,232-1,232-3・・・電流開閉要素、203・・・半導体遮断器、LN,LN-P-1,LN-P-2,LN-P-3,LN-N-1,LN-N-2,LN-N-3,LN-P1,LN-P2,LN-N1,LN-N2・・・直流送電線、AC,AC-1,AC-2,AC-3・・・交流系統