(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101776
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】回転ノズル装置
(51)【国際特許分類】
B05B 3/06 20060101AFI20240723BHJP
B08B 3/02 20060101ALI20240723BHJP
B60S 3/04 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
B05B3/06 Z
B08B3/02 G
B60S3/04
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005903
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】391017436
【氏名又は名称】株式会社洲本整備機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003465
【氏名又は名称】弁理士法人OHSHIMA&ASSOCIATES
(72)【発明者】
【氏名】番所 祥平
【テーマコード(参考)】
3B201
3D026
4F033
【Fターム(参考)】
3B201AA46
3B201AB54
3B201BB22
3B201BB33
3B201BB43
3B201BB59
3B201BB92
3D026AA02
3D026AA19
4F033PA01
4F033PB02
4F033PC05
4F033PD01
(57)【要約】
【課題】ローターと筒状カバーとの間にブレーキを設けつつ、その清掃を容易にして不純物の滞留を防止することのできる回転ノズル装置の提供。
【解決手段】ローター軸3にローター4を回転自在に外嵌装着する。ローター4の外周面から洗浄水2を噴射するノズル8を設ける。ノズル8の噴射方向をローター4の径方向に対して周方向に傾斜させる。噴射の反動でローター4を回転させながら洗浄水2を噴射する。ローター軸3に、ローター4をその外周面との間に間隔をあけて取り囲む筒状カバー9を固定する。筒状カバー9に接触してローター4の回転速度を抑えるブレーキ12を設ける。ブレーキ12をローター4と一体に回転するブレーキ収納部11の外周面から出没自在とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローター軸と、該ローター軸に対して回転自在に外嵌装着されたローターと、前記ローター軸に形成された給水路と、該給水路を介してローターの中央穴に供給された水をローターの外周面に導く導水路と、該導水路で導かれた水をローターの外周面から噴射するノズルと、を備え、前記ノズルの噴射方向がローターの径方向に対して周方向に傾斜し、噴射の反動でローターを回転させながら水を噴射する回転ノズル装置であって、
前記ローター軸に、ローターをその外周面との間に間隔をあけて取り囲む筒状カバーが固定されると共に、該筒状カバーに接触してローターの回転速度を抑えるブレーキが設けられ、
前記ブレーキは、ローターと一体に回転するブレーキ収納部の外周面から出没自在とされたことを特徴とする回転ノズル装置。
【請求項2】
前記ブレーキは、金属製のブレーキ保持金具の先端にブレーキゴムを固定した構造とされたことを特徴とする請求項1に記載の回転ノズル装置。
【請求項3】
前記筒状カバーのうちの周方向における一部の範囲に、ノズルが噴射する水を外部に放出する放出窓が形成されたことを特徴とする請求項1に記載の回転ノズル装置。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載の回転ノズル装置を備えたことを特徴とする洗浄機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車や食器、その他の物品の洗浄に用いるよう、噴射の反動でローターを回転させながら水を噴射する回転ノズル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車等の洗浄に用いられるノズル装置は、ノズルから噴射した高圧のジェット噴流によって汚れを除去するものであり、このようなノズル装置として、ノズルを径方向に対して周方向に傾斜させてローターに取り付け、その噴射の反動でローターを回転させながら洗浄水を噴射する回転ノズル装置を用いることがある(例えば特許文献1)。
【0003】
図5に示すように、特許文献1の回転ノズル装置は、回転自在なローター101の周側面のノズル102から水を噴射しつつ、その反動でローター101を回転させるものであり、ローター101の回転速度を抑えるブレーキを設けて、ローター101が回転することによる水の噴射衝撃の低下を抑えている。
【0004】
特許文献1におけるブレーキは、複数枚の弾性翼板103の基端をローター101の外側に枢止したものであり、ローター101の回転遠心力によって開いて、ローター101を取り囲む筒状カバー104に接触し、その摩擦抵抗によってローター101の回転速度を低速度化するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-148303号公報(段落0011~0013、0026、0029、0032、0033、
図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1におけるブレーキは、ローターと筒状カバーとの間に複数枚の弾性翼板を配置したものであり、その弾性翼板がローターと筒状カバーとの間を清掃する際の邪魔になって、ゴミなどの不純物を滞留させ、この不純物がローターの回転を阻害するおそれがある。
【0007】
本発明は、ローターと筒状カバーとの間にブレーキを設けつつ、その清掃を容易にして不純物の滞留を防止することのできる回転ノズル装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る回転ノズル装置は、ローター軸と、このローター軸に対して回転自在に外嵌装着したローターと、ローター軸に形成した給水路と、この給水路を介してローターの中央穴に供給した水をローターの外周面に導く導水路と、この導水路で導いた水をローターの外周面から噴射するノズルと、を備え、そのノズルの噴射方向をローターの径方向に対して周方向に傾斜させ、噴射の反動でローターを回転させながら水を噴射するものである。さらに、ローター軸に、ローターをその外周面との間に間隔をあけて取り囲む筒状カバーを固定すると共に、この筒状カバーに接触してローターの回転速度を抑えるブレーキを設けたものであり、そのブレーキをローターと一体に回転するブレーキ収納部の外周面から出没自在としたものである。
【0009】
上記構成によれば、ローターと一体に回転するブレーキ収納部の外周面からブレーキを出没自在とするので、ローターと筒状カバーとの間を清掃する際に、ブレーキ収納部にブレーキを没入させることができ、ブレーキが清掃の邪魔になって、ゴミなどの不純物が滞留するのを防止することができる。
【0010】
ブレーキは、ローターの回転による遠心力で外側の筒状カバーに押し付けられてローターの回転速度を抑えるものであり、その遠心力がローターの回転速度の二乗に比例して大きくなるので、ローターを適切な範囲の回転速度に容易に設定して、噴射する水の勢いの低下を抑えることができる。すなわち、ローターが水の噴射方向と反対の向きに高速回転することにより、噴射する水の勢いを弱めることになるが、ローターを適切な回転速度に設定することにより、ローターを回転させて水の噴射範囲を広げつつ、噴射する水の勢いの低下を抑えることができる。
【0011】
しかも、ブレーキをブレーキ収納部から出没させて筒状カバーに押し付けるので、従来の弾性翼板を開閉させる構造よりもブレーキ自体の変形を抑えることができ、ブレーキの変形による摩擦力の変動を抑えて、回転速度の調整を容易にすることができる。例えば、経年劣化などにより、ローターの回転速度が低下したような場合には、ブレーキの数を減らすだけで、回転速度を容易に調整することができる。
【0012】
また、ブレーキを金属製のブレーキ保持金具の先端にブレーキゴムを固定した構造とするようにしてもよい。
【0013】
この構成によると、筒状カバーに先端のブレーキゴムを接触させて、十分な摩擦係数を得ることができると共に、そのブレーキゴムを比較的に重さのある金属製のブレーキ保持金具に固定して、十分な遠心力で筒状カバーに押し付けることができる。これにより、ローターの回転速度を効果的に抑えることができ、しかも、ブレーキ保持金具の重さを調整することにより、遠心力の強さを調整することができ、ローターを適切な回転速度に設定することができる。
【0014】
また、筒状カバーのうちの周方向における一部の範囲に、ノズルが噴射する水を外部に放出する放出窓を形成するようにしてもよい。
【0015】
この構成によると、筒状カバーの一部の範囲に放出窓を形成するので、回転ノズル装置の全周のうちの所定の方向のみに水を噴射することができる。これにより、回転ノズル装置を、例えば、自動車の下方に挿入して底面を洗浄したり、自動車の側方に配置して側面を洗浄したりする横型回転ノズル装置として用いることができる。
【0016】
また、本発明は、上記の構成の回転ノズル装置を備えた洗浄機を提供する。
【0017】
この構成によると、上記の構成の回転ノズル装置が奏する効果と同じ効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のとおり、本発明によると、ノズルから水を噴射しながらローターを回転させ、このローターと一体のブレーキ収納部から出没するブレーキを筒状カバーに接触させるようにしている。
【0019】
これにより、ローターと筒状カバーとの間を清掃する際に、ブレーキ収納部にブレーキを没入させて、ブレーキが清掃の邪魔になるのを防止することができ、ローターと筒状カバーとの間にブレーキを設けつつ、その清掃を容易にして不純物の滞留を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る回転ノズル装置の斜視図で、筒状カバーの一部を切り欠いた図
【
図3】回転ノズル装置の動作と洗浄水の噴射状態の変化を示す図
【
図4】ブレーキ部分の断面図で、(a)はブレーキの没入状態を示し、(b)はブレーキの突出状態を示す
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る回転ノズル装置を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0022】
図1及び
図2に示すように、回転ノズル装置1は、高圧の洗浄水2を噴射して自動車の底面等の汚れを除去する横型回転ノズル装置であり、ローター軸3と、ローター軸3に対して回転自在に外嵌装着されたローター4と、ローター軸3に形成された給水路5と、給水路5を介してローター4の中央穴6に供給された洗浄水2をローター4の外周面に導く導水路7と、導水路7で導かれた洗浄水2をローター4の外周面から噴射するノズル8と、を備え、ノズル8の噴射方向をローター4の径方向に対して周方向に傾斜させることにより、噴射の反動でローター4を回転させながら洗浄水2を上方の所定範囲に噴射するようにしたものである。
【0023】
さらに、回転ノズル装置1では、ローター軸3に、ローター4をその外周面との間に間隔をあけて取り囲む有底の筒状カバー9を固定して、ノズル8が噴射する洗浄水2を筒状カバー9の上側部分に形成した放出窓10から上方の所定範囲に向けて放出すると共に、ローター4と一体に回転するブレーキ収納部11の外周面からブレーキ12を出没させ、このブレーキ12を筒状カバー9の内面に接触させてローター4の回転速度を抑えるようにしている。
【0024】
ローター軸3は、内側を給水路5とする円管状とされ、筒状カバー9の底部9aを挟みつつ、基端の雄ねじ部3aに、洗浄機の配管14に接続するアダプター15の雌ねじ部15aを螺合することにより、ローター軸3に筒状カバー9が固定される。ローター軸3に螺合されたアダプター15には、洗浄機の配管14が接続され、回転ノズル装置1を装備した洗浄機が構成される。
【0025】
ローター軸3の長さ方向で中央付近には、その管形状の内外を連通する複数の分岐孔16が形成され、アダプター15から洗浄水2を供給される給水路5を複数に分岐させつつ径方向に延設してローター4の中央穴6に至らせる。
【0026】
ローター4は、中央穴6を有する円柱状とされ、その中央穴6にローター軸3を挿通して、ローター軸2の先端に段付カラー17をビス止めすることにより、ローター軸3にローター4が回転自在に装着される。ローター4の基端側には、小径部4aが形成され、この小径部4aに、ローター4と一体に回転するリング状のブレーキ収納部11が外嵌固定される。
【0027】
導水路7は、ローター軸3の長さ方向における位置を分岐孔16に合わせて、ローター4の中央穴6から外周面に至るよう形成され、この導水路7の出口にノズル8が螺合装着される。導水路7及びノズル8は、給水路5から中央穴6に供給された洗浄水2を噴射する際の反動でローター4を回転させるように、ローター4の径方向に対して周方向に傾斜する向きに設定されている。
【0028】
筒状カバー9は、ローター4、ノズル8及びブレーキ収納部11を収容可能な長さ及び内径に設定され、その上側部分には、ローター軸3の長さ方向における位置をノズル8に合わせて、長穴状の放出窓10が形成されている。
【0029】
筒状カバー9の下側部分には、ローター軸3の長さ方向における位置をノズル8に合わせて、その外面に断面溝形のハーフリング17が取り付けられると共に、このハーフリング17に筒状カバー9の内側から洗浄水2を噴き込む噴込穴18が形成されている。
【0030】
筒状カバー9の先端部には、洗浄機の配管14を介して回転ノズル装置1を移動操作するよう、車輪19を支持するフレーム20がビス止めされ、このフレーム20に固定された蓋部21によって筒状カバー9の先端開口が塞がれている。
【0031】
ブレーキ収納部11は、ローター4の小径部4aに外嵌固定されるリング状で、その内外を貫通する複数の円孔22が形成され、各円孔22に、金属製のブレーキ保持金具12aの先端にブレーキゴム12bを固定した構造のブレーキ12が出没自在に収納されている。
【0032】
次に、回転ノズル装置1が高圧の洗浄水2を上方に噴射する様子を説明する。
【0033】
まず、洗浄機の配管14からアダプター15に高圧の洗浄水2を供給することにより、洗浄水2が、ローター軸3の内側の給水路5を通ってローター4の中央穴6に供給され、さらに、導水路7を通ってノズル8から噴射される。
【0034】
図3に示すように、ノズル8から噴射される洗浄水2は、その噴射方向がローター4の周方向に傾斜していることにより、ローター4の径方向外向きに噴き出しつつ、その反動でローター4を回転させる。
【0035】
ノズル8が上側に位置しているとき、洗浄水2は、筒状カバー9の放出窓10を通って上方に噴射され、高圧の洗浄水2が自動車の底面等に直に噴き付けられて洗浄する(
図3(a)、(b)参照)。
【0036】
ローター4が回転してノズル8が下側に移動したとき、洗浄水2は、筒状カバー9の内側から噴込穴18を通って外側のハーフリング17に噴き込まれた後、このハーフリング17の端部開口から上方に噴射されて、自動車の底面等に噴き付けられて洗浄する(
図3(c)、(d)参照)。
【0037】
このように、ノズル8からの噴射の反動でローター4を回転させることにより、洗浄水2は、放出窓10を通る範囲では、ノズル8から直に上方に噴射され、放出窓10から外れる範囲では、ノズル8から筒状カバー9の内側に噴射された後、ハーフリング17を介して上方に噴射される。これにより、ローター4の回転の全周において、洗浄水2を上方の所定範囲に噴射して、自動車の底面等に噴き付けて洗浄することができる。
【0038】
次に、ブレーキ12がローター4の回転速度を抑える様子を説明する。
【0039】
図4(a)に示すように、ローター4の静止状態では、複数のブレーキ12がブレーキ収納部11の各円孔22に没入して収納されており、ローター4及びブレーキ収納部11と筒状カバー9との間の清掃を容易にする。
【0040】
図4(b)に示すように、洗浄水2の噴射によってローター4が回転すると、遠心力により、各円孔22からブレーキ12が突出して、そのブレーキゴム12bが筒状カバー9の内面に接触し、摩擦力によって、ローター4の回転速度を抑える。
【0041】
ブレーキゴム12bと筒状カバー9との摩擦力は、ブレーキ12に作用する遠心力に比例し、その遠心力がローター4の回転速度の二乗に比例するので、回転速度が上昇するほどブレーキ12を強く作動させることができ、ローター4を適切な範囲の回転速度に抑えることができる。
【0042】
しかも、その遠心力は、ブレーキ12の重さに比例するので、ブレーキ12の重さ及び個数を調整することにより、ローター4を適切な範囲の回転速度に容易に設定することができる。例えば、経年劣化などにより、ローター4の回転速度が低下したような場合には、ブレーキ12を軽くしたり、その数を減らしたりするだけで、回転速度を容易に調整することができる。
【0043】
これにより、ローター4を過度に高速回転させて洗浄水2の噴射の勢いを弱めることなく、安定した速度で回転させ、自動車の底面等に高圧の洗浄水2を噴き付けて洗浄することができる。すなわち、ローター4が洗浄水2の噴射方向と反対の向きに高速回転することにより、噴射する洗浄水2の勢いを弱めることになるが、ローター4を適切な回転速度に設定することにより、噴射する洗浄水2の勢いの低下を抑えることができる。
【0044】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、適宜変更を加えることができる。例えば、ブレーキ12は、金属製のブレーキ保持金具12aの先端にブレーキゴム12bを固定した構造だけでなく、その全体を1つの素材で形成することもできる。
【0045】
また、本発明の回転ノズル装置は、ブレーキ収納部11の外周面から出没するブレーキ12を設けたものであればよく、放出窓10を形成した横型回転ノズル装置とするだけでなく、全周方向に洗浄水2を噴射するものであってもよい。また、本発明の回転ノズル装置は、洗浄機に装備するだけでなく、他の用途に用いることもできる。
【符号の説明】
【0046】
1 回転ノズル装置
2 洗浄水
3 ローター軸
3a 雄ねじ部
4 ローター
4a 小径部
5 給水路
6 中央穴
7 導水路
8 ノズル
9 筒状カバー
9a 底部
10 放出窓
11 ブレーキ収納部
12 ブレーキ
12a ブレーキ保持金具
12b ブレーキゴム
14 配管
15 アダプター
15a 雌ねじ部
16 分岐孔
17 ハーフリング
18 噴込孔
19 車輪
20 フレーム
21 蓋部
22 円孔