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特開2024-103267作業機械の操作支援装置、作業機械および操作支援システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103267
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】作業機械の操作支援装置、作業機械および操作支援システム
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20240725BHJP
   G05G 5/03 20080401ALI20240725BHJP
【FI】
E02F9/26 B
G05G5/03 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007509
(22)【出願日】2023-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】栗田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】永井 政樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 卓
【テーマコード(参考)】
2D015
3J070
【Fターム(参考)】
2D015HA03
2D015HB01
3J070AA03
3J070BA01
3J070BA17
3J070BA47
3J070BA51
3J070CC71
3J070CE10
3J070DA03
3J070DA21
(57)【要約】
【課題】本発明は、アタッチメントの関節機構の出力余裕のオペレータによる認識精度の向上を図りうる装置等を提供する。
【解決手段】遠隔入力インターフェース210(出力機器)を通じて指標情報がオペレータに対して提供またはフィードバックされる。これにより、作業機構44(アタッチメント)の角関節機構の関節負荷率(負荷余裕度)を当該オペレータに視覚、聴覚および触覚のいずれか1つを通じて知覚させることができる。このため、関節機構の過負荷を回避する観点から、オペレータに適当に作業機械40を操作させることができ、ひいては当該作業機械40による作業機構44を用いた作業効率の向上が図られる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械のアタッチメントを構成する関節機構の負荷と、前記関節機構の角度の計測値に応じて定まる当該関節機構の最大出力と、に基づいて定まる前記関節機構の負荷余裕度を表わす指標情報を、前記作業機械を操作するオペレータに対して出力機器を通じて提供する
操作支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の操作支援装置において、
前記指標情報として、前記関節機構の最大出力に対する前記関節機構の負荷の比率である関節負荷率を、前記作業機械を操作するオペレータに前記出力機器を通じて提供する
操作支援装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の操作支援装置において、
前記関節機構の関節角度の計測値に加えて、前記作業機械または前記アタッチメントの諸元を表わす諸元情報に基づいて当該関節機構の最大出力を定める
操作支援装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の操作支援装置において、
前記出力機器が、前記作業機械を操作するための操作レバーに、前記指標情報としての力を作用させる操作レバーアクチュエータにより構成されている
操作支援装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の操作支援装置において、
入力機器を通じて設定された設定情報に基づいて、前記出力機器を通じて提供される前記指標情報を変調する
操作支援装置。
【請求項6】
請求項1または2に記載の操作支援装置において、
前記指標情報を、前記作業機械を遠隔操作する遠隔操作装置を構成する前記出力機器または当該遠隔操作装置に設けられた前記出力機器を通じて前記オペレータに対して提供する
操作支援装置。
【請求項7】
請求項6に記載の操作支援装置において、
前記遠隔操作装置は複数の前記作業機械を遠隔操作可能であり、当該複数の前記作業機械のうち前記遠隔操作装置により遠隔操作されている一の作業機械の前記指標情報を前記オペレータに対して前記出力機器を通じて提供する
操作支援装置。
【請求項8】
請求項6に記載の操作支援装置において、
前記作業機械の前記関節機構の関節角度の計測値に加えて、前記作業機械または前記アタッチメントの諸元を表わす諸元情報を、ネットワーク通信に基づいて認識し、認識した前記諸元情報に基づいて当該関節機構の最大出力を定める
操作支援装置。
【請求項9】
請求項1または2に記載の操作支援装置において、
前記出力機器が、前記指標情報としての指標画像を表示する画像出力装置により構成されている
操作支援装置。
【請求項10】
アタッチメントを構成する関節機構と、前記関節機構の負荷を計測する負荷計測器と、前記関節機構の角度を計測する角度計測器と、情報を提供可能な出力機器と、を備えた作業機械であって、
前記負荷計測器により計測される前記関節機構の負荷と、前記角度計測器により計測される前記関節機構の角度の計測値と、に基づいて定まる前記関節機構の負荷余裕度を表わす指標情報を、前記作業機械を操作するオペレータに対して前記出力機器を通じて提供する
作業機械。
【請求項11】
アタッチメントを構成する関節機構と、前記関節機構の負荷を計測する負荷計測器と、前記関節機構の角度を計測する角度計測器と、を備えた作業機械と、前記作業機械を遠隔操作する遠隔操作装置と、を備えている操作支援システムであって、
前記遠隔操作装置には、情報を提供可能な出力機器が構成されている、または前記出力機器が設けられており、
前記負荷計測器により計測される前記関節機構の負荷と、前記角度計測器により計測される前記関節機構の角度の計測値と、に基づいて定まる前記関節機構の負荷余裕度を表わす指標情報を、前記作業機械を操作するオペレータに対して前記出力機器を通じて提供する
操作支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械等の作業機械のオペレータによる操作を支援する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クレーンなどの建設機械を構成するブームに実際に作用する力に基づいて操作レバーに反力を提示する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-042018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、作業機械によっては、そのアタッチメントの姿勢の相違に応じて、当該アタッチメントの関節機構の最大出力が相違する。このため、アタッチメントの関節機構の負荷を操作レバーに単にフィードバックするだけでは、当該関節機構の最大出力までの出力余裕・マージンの大きさをオペレータに知覚させることができない。このため、例えば、アタッチメントが油圧駆動される場合、オペレータが予期せぬ段階で作動油圧が油圧回路を構成するリリーフバルブのリリーフ圧に到達してしまい、アタッチメントの駆動速度の低下など生産効率の低下を招く可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、アタッチメントの関節機構の出力余裕のオペレータによる認識精度の向上を図りうる装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の操作支援装置は、
作業機械のアタッチメントを構成する関節機構の負荷と、前記関節機構の角度の計測値に応じて定まる当該関節機構の最大出力と、に基づいて定まる前記関節機構の負荷余裕度を表わす指標情報を、前記作業機械を操作するオペレータに対して出力機器を通じて提供する。
【0007】
当該構成の操作支援装置によれば、出力機器を通じて指標情報がオペレータに対して提供またはフィードバックされることにより、アタッチメントの関節機構の負荷余裕度を当該オペレータに知覚させることができる。このため、関節機構の過負荷を回避する観点から、オペレータに適当に作業機械を操作させることができ、ひいては当該作業機械によるアタッチメントを用いた作業効率の向上が図られる。
【0008】
本発明の操作支援装置において、
前記指標情報として、前記関節機構の最大出力に対する前記関節機構の負荷の比率である関節負荷率を、前記作業機械を操作するオペレータに前記出力機器を通じて提供する
ことが好ましい。
【0009】
当該構成の操作支援装置によれば、出力機器を通じて指標情報がオペレータに対して提供またはフィードバックされることにより、アタッチメントの関節機構の負荷余裕度を負荷余裕率の形態で当該オペレータに知覚させることができる。これにより、関節機構の関節角度に応じた最大出力の相違による負荷余裕度の変動幅が抑制されるので、その分だけ負荷余裕度をオペレータに的確に知覚させることができる。そして、関節機構の過負荷を回避する観点から、オペレータに適当に作業機械を操作させることができ、ひいては当該作業機械によるアタッチメントを用いた作業効率の向上が図られる。
【0010】
本発明の操作支援装置において、
前記関節機構の関節角度の計測値に加えて、前記作業機械または前記アタッチメントの諸元を表わす諸元情報に基づいて当該関節機構の最大出力を定める
ことが好ましい。
【0011】
当該構成の操作支援装置によれば、作業機械またはアタッチメントの諸元を表わす諸元情報が勘案された形で、当該アタッチメントの関節機構の負荷余裕度をオペレータに知覚させることができる。これにより、作業機械またはアタッチメントの諸元の相違に応じた最大出力の相違による負荷余裕度をオペレータに知覚させることができる。そして、関節機構の過負荷を回避する観点から、オペレータに適当に作業機械を操作させることができ、ひいては当該作業機械によるアタッチメントを用いた作業効率の向上が図られる。
【0012】
本発明の操作支援装置において、
前記出力機器が、前記作業機械を操作するための操作レバーに、前記指標情報としての力を作用させる操作レバーアクチュエータにより構成されている
ことが好ましい。
【0013】
当該構成の操作支援装置によれば、出力機器である操作レバーアクチュエータを通じて指標情報が操作レバーに作用する力の形態でオペレータに対して提供またはフィードバックされることにより、当該力の強弱によりアタッチメントの関節機構の負荷余裕度を当該オペレータに知覚させることができる。このため、関節機構の過負荷を回避する観点から、オペレータに適当に作業機械を操作させることができ、ひいては当該作業機械によるアタッチメントを用いた作業効率の向上が図られる。
【0014】
本発明の操作支援装置において、
入力機器を通じて設定された設定情報に基づいて、前記出力機器を通じて提供される前記指標情報を変調する
ことが好ましい。
【0015】
当該構成の操作支援装置によれば、入力機器を通じて設定された設定情報に基づいて出力機器を通じて提供される当該指標情報が変調される。これにより、出力機器を通じて指標情報がオペレータに対して提供またはフィードバックされる際、アタッチメントの関節機構の負荷余裕度を、当該オペレータにその所望の変調態様で知覚させることができる。このため、関節機構の過負荷を回避する観点から、オペレータに適当に作業機械を操作させることができ、ひいては当該作業機械によるアタッチメントを用いた作業効率の向上が図られる。
【0016】
本発明の操作支援装置において、
前記指標情報を、前記作業機械を遠隔操作する遠隔操作装置を構成する前記出力機器または当該遠隔操作装置に設けられた前記出力機器を通じて前記オペレータに対して提供することが好ましい。
【0017】
当該構成の遠隔操作装置によれば、遠隔操作装置を構成する出力機器または当該遠隔操作装置に設けられた出力機器を通じて指標情報がオペレータに対して提供またはフィードバックされる。これにより、遠隔操作装置を通じて遠隔操作している作業機械を構成するアタッチメントの関節機構の負荷余裕度を当該オペレータに知覚させることができる。このため、関節機構の過負荷を回避する観点から、オペレータに適当に作業機械を遠隔操作させることができ、ひいては当該作業機械によるアタッチメントを用いた作業効率の向上が図られる。
【0018】
本発明の操作支援装置において、
前記遠隔操作装置は複数の前記作業機械を遠隔操作可能であり、当該複数の前記作業機械のうち前記遠隔操作装置により遠隔操作されている一の作業機械の前記指標情報を前記オペレータに対して前記出力機器を通じて提供する
ことが好ましい。
【0019】
当該構成の遠隔操作装置によれば、遠隔操作装置を通じて一の作業機械を遠隔操作している際には、出力機器を通じて当該一の作業機械の負荷余裕度を表わす指標情報がオペレータに対して提供またはフィードバックされ、遠隔操作装置を通じて他の作業機械を遠隔操作している際には、出力機器を通じて当該他の作業機械の負荷余裕度を表わす指標情報がオペレータに対して提供またはフィードバックされる。これにより、遠隔操作装置を通じて複数の作業機械を切り替えながら遠隔操作している状況で、操作中の作業機械を構成するアタッチメントの関節機構の負荷余裕度を当該オペレータに知覚させることができる。このため、関節機構の過負荷を回避する観点から、オペレータに適当に作業機械を遠隔操作させることができ、ひいては当該作業機械によるアタッチメントを用いた作業効率の向上が図られる。
【0020】
本発明の操作支援装置において、
前記作業機械の前記関節機構の関節角度の計測値に加えて、前記作業機械または前記アタッチメントの諸元を表わす諸元情報を、ネットワーク通信に基づいて認識し、認識した前記諸元情報に基づいて当該関節機構の最大出力を定める
ことが好ましい。
【0021】
当該構成の操作支援装置によれば、遠隔操作装置により操作されている状態の一の作業機械またはそのアタッチメントの諸元を表わす諸元情報が、ネットワーク通信により認識される。そして、当該諸元情報が勘案された形で、当該アタッチメントの関節機構の負荷余裕度をオペレータに知覚させることができる。これにより、当該一の作業機械またはアタッチメントの諸元の相違に応じた最大出力の相違による負荷余裕度をオペレータに知覚させることができる。そして、関節機構の過負荷を回避する観点から、オペレータに適当に作業機械を操作させることができ、ひいては当該作業機械によるアタッチメントを用いた作業効率の向上が図られる。
【0022】
本発明の操作支援装置において、
前記出力機器が、前記指標情報としての指標画像を表示する画像出力装置により構成されている
ことが好ましい。
【0023】
当該構成の操作支援装置によれば、出力機器である画像出力装置を通じて指標情報が指標画像の形態でオペレータに対して提供またはフィードバックされることにより、アタッチメントの関節機構の負荷余裕度を当該オペレータに知覚させることができる。このため、関節機構の過負荷を回避する観点から、オペレータに適当に作業機械を操作させることができ、ひいては当該作業機械によるアタッチメントを用いた作業効率の向上が図られる。
【0024】
また、本発明の作業機械は、
アタッチメントを構成する関節機構と、前記関節機構の負荷を計測する負荷計測器と、前記関節機構の角度を計測する角度計測器と、情報を提供可能な出力機器と、を備えた作業機械であって、前記負荷計測器により計測される前記関節機構の負荷と、前記角度計測器により計測される前記関節機構の角度の計測値と、に基づいて定まる前記関節機構の負荷余裕度を表わす指標情報を、前記作業機械を操作するオペレータに対して前記出力機器を通じて提供する。
【0025】
また、本発明の操作支援システムは、
アタッチメントを構成する関節機構と、前記関節機構の負荷を計測する負荷計測器と、前記関節機構の角度を計測する角度計測器と、を備えた作業機械と、前記作業機械を遠隔操作する遠隔操作装置と、を備えている操作支援システムであって、前記遠隔操作装置には、情報を提供可能な出力機器が構成されている、または前記出力機器が設けられており、前記負荷計測器により計測される前記関節機構の負荷と、前記角度計測器により計測される前記関節機構の角度の計測値と、に基づいて定まる前記関節機構の負荷余裕度を表わす指標情報を、前記作業機械を操作するオペレータに対して前記出力機器を通じて提供する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態としての操作支援システムの構成説明図。
図2】遠隔操作装置の構成に関する説明図。
図3】作業機械の構成に関する説明図。
図4】一実施形態の作業支援装置の機能に関する説明図。
図5】関節機構の最大出力と関節角度および諸元情報との関係に関する説明図。
図6】作業環境画像および指標情報の出力形態に関する説明図。
図7】指標情報の他の出力形態に関する説明図。
図8】指標情報の他の出力形態に関する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(操作支援装置の構成)
図1に示されている操作支援システムは、本発明の一実施形態としての操作支援装置10と、操作支援装置10と相互にネットワーク通信可能に構成されている遠隔操作装置20および/または作業機械40と、により構成されている。操作支援装置10および遠隔操作装置20の相互通信ネットワークと、操作支援装置10および作業機械40の相互通信ネットワークと、は同一であってもよく相違していてもよい。
【0028】
(操作支援装置の構成)
操作支援装置10は、一または複数のコンピュータまたはサーバコンピュータにより構成されている。図1に示されているように、操作支援装置10は、データベース102と、関節負荷認識要素121と、関節最大出力認識要素122と、指標情報生成要素124と、を備えている。
【0029】
データベース102は、撮像画像データのほか、作業機構44の諸元情報を実機識別子に関連付けて記憶保持する。データベース102は、操作支援装置10とネットワーク通信可能に構成されているデータベースサーバまたはデバイス等により構成されていてもよい。操作支援装置10の各構成要素は、演算処理装置(シングルコアプロセッサまたはマルチコアプロセッサもしくはこれを構成するプロセッサコア)により構成され、メモリなどの記憶装置から必要なデータおよびソフトウェアを読み取り、当該データを対象として当該ソフトウェアにしたがった後述の演算処理を実行する。
【0030】
本発明の構成要素が情報(またはデータ)を「認識する」とは、当該情報を受信、読み取りまたは検索等により取得すること、基礎となるデータまたは信号に対して演算処理を実行することにより当該情報を決定、測定、同定、推定、予測等することなど、当該情報を後続の演算処理の実行に際して利用可能な形態で準備するあらゆる処理を包含する概念である。
【0031】
(遠隔操作装置の構成)
図1に示されているように、遠隔操作装置20は、遠隔制御装置200と、遠隔入力インターフェース210と、遠隔出力インターフェース220と、遠隔通信機器240と、を備えている。遠隔制御装置200は、演算処理装置(シングルコアプロセッサまたはマルチコアプロセッサもしくはこれを構成するプロセッサコア)により構成され、メモリなどの記憶装置から必要なデータおよびソフトウェアを読み取り、当該データを対象として当該ソフトウェアにしたがった演算処理を実行する。
【0032】
遠隔入力インターフェース210は、遠隔操作機構211を備えている。遠隔出力インターフェース220は、遠隔画像出力装置221と、遠隔音響出力装置222と、遠隔力覚生成装置224と、を備えている。
【0033】
遠隔操作機構211には、走行用操作装置と、旋回用操作装置と、ブーム用操作装置と、アーム用操作装置と、バケット用操作装置と、が含まれている。各操作装置は、回動操作を受ける操作レバーを有している。走行用操作装置の操作レバー(走行レバー)は、作業機械40の下部走行体41を動かすために操作される。走行レバーは、走行ペダルを兼ねていてもよい。例えば、走行レバーの基部または下端部に固定されている走行ペダルが設けられていてもよい。旋回用操作装置の操作レバー(旋回レバー)は、作業機械40の旋回機構43を構成する油圧式の旋回モータを動かすために操作される。ブーム用操作装置の操作レバー(ブームレバー)は、作業機械40のブームシリンダ442を動かすために操作される。アーム用操作装置の操作レバー(アームレバー)は作業機械40のアームシリンダ444を動かすために操作される。バケット用操作装置の操作レバー(バケットレバー)は作業機械40のバケットシリンダ446を動かすために操作される。
【0034】
遠隔操作機構211を構成する各操作レバーは、例えば、図2に示されているように、オペレータが着座するためのシートStの周囲に配置されている。シートStは、アームレスト付きのハイバックチェアのような形態であるが、ヘッドレストがないローバックチェアのような形態、または、背もたれがないチェアのような形態など、オペレータが着座できる任意の形態の着座部であってもよい。
【0035】
シートStの前方に左右のクローラに応じた左右走行レバー2110が左右横並びに配置されている。一つの操作レバーが複数の操作レバーを兼ねていてもよい。例えば、図2に示されているシートStの左側フレームの前方に設けられている左側操作レバー2111が、前後方向に操作された場合にアームレバーとして機能し、かつ、左右方向に操作された場合に旋回レバーとして機能してもよい。同様に、図2に示されているシートStの右側フレームの前方に設けられている右側操作レバー2112が、前後方向に操作された場合にブームレバーとして機能し、かつ、左右方向に操作された場合にバケットレバーとして機能してもよい。レバーパターンは、オペレータによる遠隔入力インターフェース210の所定操作に応じて任意に変更されてもよい。
【0036】
遠隔画像出力装置221は、例えば図2に示されているように、シートStの前方、左斜め前方および右斜め前方のそれぞれに配置された略矩形状の画面を有する中央遠隔画像出力装置2210、左側遠隔画像出力装置2211および右側遠隔画像出力装置2212により構成されている。中央遠隔画像出力装置2210、左側遠隔画像出力装置2211および右側遠隔画像出力装置2212のそれぞれの画面(画像表示領域)の形状およびサイズは同じであってもよく相違していてもよい。遠隔画像出力装置221は、単一の湾曲したまたは湾曲可能な画像出力装置、シートStの前方を囲むように配置される2つまたは4つ以上の画像出力装置により構成されていてもよい。遠隔画像出力装置221は、遠隔操作装置20を操作するオペレータにより携帯される情報端末装置が有する画像出力装置により構成されていてもよい。
【0037】
図2に示されているように、中央遠隔画像出力装置2210の画面および左側遠隔画像出力装置2211の画面が傾斜角度φ1(例えば、120°≦φ1≦150°)をなすように、左側遠隔画像出力装置2211の右縁が、中央遠隔画像出力装置2210の左縁に隣接している。図2に示されているように、中央遠隔画像出力装置2210の画面および右側遠隔画像出力装置2212の画面が傾斜角度φ2(例えば、120°≦φ2≦150°)をなすように、右側遠隔画像出力装置2212の左縁が、中央遠隔画像出力装置2210の右縁に隣接している。当該傾斜角度φ1およびφ2は同じであっても相違していてもよい。
【0038】
中央遠隔画像出力装置2210、左側遠隔画像出力装置2211および右側遠隔画像出力装置2212のそれぞれの画面は、鉛直方向に対して平行であってもよく、鉛直方向に対して傾斜していてもよい。中央遠隔画像出力装置2210、左側遠隔画像出力装置2211および右側遠隔画像出力装置2212のうち少なくとも1つの画像出力装置が、複数に分割された画像出力装置により構成されていてもよい。例えば、中央遠隔画像出力装置2210が、略矩形状の画面を有する上下に隣接する画像出力装置により構成されていてもよい。中央遠隔画像出力装置2210、左側遠隔画像出力装置2211および右側遠隔画像出力装置2212が湾曲形状のまたは湾曲可能に構成された単一の画像出力装置(例えば、有機ELパネル)により構成されていてもよい。
【0039】
遠隔音響出力装置222は、一または複数のスピーカーにより構成され、例えば図2に示されているように、シートStの後方、左アームレスト後部および右アームレスト後部のそれぞれに配置された中央音響出力装置2220、左側音響出力装置2221および右側音響出力装置2222により構成されている。中央音響出力装置2220、左側音響出力装置2221および右側音響出力装置2222のそれぞれの仕様は同じであってもよく相違していてもよい。
【0040】
遠隔力覚生成装置224は、遠隔操作機構211を構成する左側操作レバー2111および/または右側操作レバー2112に対して力を作用させる操作レバーアクチュエータにより構成されている。当該力は、例えば、左側操作レバー2111および/または右側操作レバー2112を傾倒させる力である。
【0041】
(作業機械の構成)
作業機械40は、例えばクローラショベル(建設機械)であり、図3に示されているように、クローラ式の下部走行体41と、下部走行体41に旋回機構43を介して旋回中心軸Cを旋回中心として旋回可能に搭載されている上部旋回体42と、を備えている。上部旋回体42の前方左側部にはキャブ42C(運転室)が設けられている。上部旋回体42の前方中央部には作業機構44(アタッチメント)が設けられている。
【0042】
図3に示されているように、作業機構44は、上部旋回体42の前端に対して起伏可能に装着されているブーム441と、ブーム441の先端に対して回動可能に連結されているアーム443と、アーム443の先端に対して回動可能に連結されているバケット445と、を備え、上部旋回体42に対してブーム441が起伏可能である第1関節機構と、ブーム441に対してアーム443が回動可能である第2関節機構と、アーム443に対してバケット445が回動可能である第3関節機構と、が構成されている。さらに、作業機構44には、伸縮可能な油圧シリンダにより構成されているブームシリンダ442、アームシリンダ444およびバケットシリンダ446が装着されている。
【0043】
ブームシリンダ442は、基端部が上部旋回体42に回動可能に取り付けられ、先端部がブーム441に回動可能に取り付けられており、作動油の供給を受けることにより伸縮してブーム441を起伏方向に回動させることで第1関節機構を曲げ伸ばしさせる。アームシリンダ444は、基端部がブーム441に回動可能に取り付けられ、先端部がアーム443に回動可能に取り付けられており、作動油の供給を受けることにより伸縮してアーム443をブーム441に対して水平軸回りに回動させることで第2関節機構を曲げ伸ばしさせる。バケットシリンダ446は、基端部がアーム443に回動可能に取り付けられ、先端部がバケット445に回動可能に取り付けられたリンク部材に回動可能に取り付けられており、作動油の供給を受けることにより伸縮してバケット445をアーム443に対して水平軸回りに回動させることで第3関節機構を曲げ伸ばしさせる。
【0044】
図1に示されているように、作業機械40は、実機制御装置400と、実機入力インターフェース410と、実機出力インターフェース420と、実機通信機器440と、を備えている。実機制御装置400の構成要素のそれぞれは、演算処理装置(シングルコアプロセッサまたはマルチコアプロセッサもしくはこれを構成するプロセッサコア)により構成され、メモリなどの記憶装置から必要なデータおよびソフトウェアを読み取り、当該データを対象として当該ソフトウェアにしたがった演算処理を実行する。
【0045】
実機入力インターフェース410は、実機操作機構411と、実機撮像装置412と、関節負荷センサ414と、関節角度センサ416と、を備えている。
【0046】
実機操作機構411は、キャブ42Cの内部に配置されたシートの周囲に遠隔操作機構211と同様に配置された複数の操作レバーを備えている。遠隔操作レバーの操作態様に応じた信号を受信し、当該受信信号に基づいて実機操作レバーを動かす駆動機構またはロボットがキャブ42Cに設けられている。実機撮像装置412は、例えばキャブ42Cの内部に設置され、フロントウィンドウおよび左右サイドウィンドウ越しに作業機構44の少なくとも一部を含む環境を撮像する。フロントウィンドウおよびサイドウィンドウのうち一部または全部が省略されていてもよい。
【0047】
関節負荷センサ414は、第1関節機構、第2関節機構および第3関節機構のそれぞれにかかっている負荷qkに応じた信号を出力するように構成されている。負荷qkは、各関節機構を曲げる又は伸ばす力に釣り合う力である。各関節機構は、それぞれシリンダ442、444、446の伸縮に応じて曲げ伸ばしされるため、各シリンダを伸縮させるための力を発揮する油圧をそれぞれ把握することで各関節機構にかかっている負荷qkを算出することができる。そこで、関節負荷センサ414は、ブームシリンダ442、アームシリンダ444および/またはバケットシリンダ446に作用する作動油の油圧に応じた信号を出力する油圧センサにより構成されている。また、作業機構44は各関節機構にかかっている負荷により伸張又は圧縮の力の大きさに応じて表面や内部が歪むため、作業機構44の歪みの量を把握することで各関節機構にかかっている負荷qkを算出することができる。そこで、関節負荷センサ414は、ブーム441、アーム443および/またはバケット445に対して一箇所また複数の異なる箇所で取り付けられたひずみゲージにより構成されていてもよい。なお、第1関節機構、第2関節機構および第3関節機構のいずれかが電動機(電動モータなど)により駆動される構成の場合には、当該電動機の駆動力を計測することで各関節機構にかかっている負荷qkが算出される。
【0048】
関節角度センサ416は、実機座標系における作業機構44の各関節機構の関節角度θkに応じた信号を出力する。作業機構44の各関節機構の関節角度には、上部旋回体42に対するブーム441の起伏角度としての関節角度θ1、ブーム441に対するアーム443の回動角度としての関節角度θ2、および、アーム443に対するバケット445の回動角度としての関節角度θ3が含まれている。関節角度θ1は、例えば、上部旋回体42の旋回中心軸Cに直行する平面Pと、ブーム441の基端部の回動軸とブーム441の先端部の回動軸(アーム443の基端部の回動軸)と、を結ぶ直線L1とのなす角度であり、ブーム441が起伏方向S1に回動されることで関節角度θ1が変化する。関節角度θ2は、例えば、直線L1と、アーム443の基端部の回動軸とアーム443の先端部の回動軸(バケット445の基端部の回動軸)と、を結ぶ直線L2とのなす角度であり、アーム443が回動方向S2に回動されることで関節角度θ2が変化する。関節角度θ3は、例えば、バケット445の基端部の回動軸と、バケット445の先端部と、を結ぶ直線L3とのなす角度であり、バケット445が回動方向S3に回動されることで関節角度θ3を変化する。
【0049】
(機能)
前記構成の操作支援装置および撮像機能制御システムの機能について図4に示されているフローチャートを用いて説明する。当該フローチャートにおいて「C●」というブロックは、記載の簡略のために用いられ、データの送信および/または受信を意味し、当該データの送信および/または受信を条件として分岐方向の処理が実行される条件分岐を意味している。
【0050】
遠隔操作装置20の通信データの少なくとも一部には、当該通信データの発信元・受信先である当該遠隔操作装置20を識別するための遠隔操作識別子が含まれている。作業機械40の通信データの少なくとも一部には、当該通信データの発信元・受信先である当該作業機械40を識別するための実機識別子が含まれている。
【0051】
遠隔操作装置20において、遠隔制御装置200により、遠隔通信機器240を通じて、操作支援装置10に対して「実機環境確認要求」が送信される(図4/STEP210)。オペレータにより遠隔入力インターフェース210を通じた指定操作の有無が判定され、当該判定結果が肯定的である場合に実機環境確認要求が送信されてもよい。「指定操作」は、例えば、オペレータが遠隔操作を意図する作業機械40を指定するための遠隔入力インターフェース210におけるタップなど、当該作業機械40を起動させるまたは遠隔操作を開始するための操作である。
【0052】
操作支援装置10において、実機環境確認要求が受信された場合、操作支援装置10から当該実機環境確認要求が該当する作業機械40に対して送信される(図4/C10)。
【0053】
作業機械40において、実機通信機器440を通じて実機環境確認要求が受信された場合(図4/C40)、実機制御装置400が実機撮像装置412を通じて取得された撮像画像(適当な画像処理が施されていてもよい。)を表わす撮像画像データが操作支援装置10に対して送信される(図4/STEP410)。操作支援装置10において、撮像画像データが受信された場合(図4/C11)、当該撮像画像データに応じた作業環境画像データが操作支援装置10から遠隔操作装置20に対して送信される(図4/STEP120)。
【0054】
遠隔操作装置20において、遠隔通信機器240を通じて作業環境画像データが受信された場合(図4/C21)、遠隔制御装置200により、作業環境画像データに応じた環境画像が遠隔画像出力装置221に出力される(図4/STEP211)。これにより、例えば、図6に示されているように、作業機構44のブーム441、アーム443およびバケット445が映り込み、作業機械40の前方の状況を表わす作業環境画像が遠隔画像出力装置221に出力される。
【0055】
オペレータは、遠隔画像出力装置221に出力された作業環境画像を見ながら、遠隔操作機構211を構成する操作レバーを操作することで、作業機構44、ひいてはバケット445の動作を制御することができる。遠隔操作装置20において、遠隔制御装置200により遠隔操作機構211の操作態様が認識され、かつ、遠隔通信機器240を通じて、当該操作態様に応じた遠隔操作指令が操作支援装置10に対して送信される(図4/STEP212)。
【0056】
操作支援装置10において当該遠隔操作指令が受信された場合、当該遠隔操作指令が作業機械40に対して送信される(図4/C12)。
【0057】
作業機械40において、実機制御装置400により、実機無線通信機器422を通じて操作指令が受信された場合(図4/C42)、作業機構44等の動作が制御される(図4/STEP412)。例えば、バケット445により作業機械40の前方の土および/または石などを掘り起こしてすくい、上部旋回体42を下部走行体41に対して旋回させたうえで、適当な場所にバケット445から当該土等を落とす作業が実行される。
【0058】
実機制御装置400から実機状態を表わす実機状態データが操作支援装置10に対して送信される(図4/STEP414)。実機状態データには、関節負荷センサ414の出力信号または各関節機構の負荷qkを表わすデータおよび関節角度センサ416の出力信号または各関節機構の関節角度を表わすデータが含まれている。
【0059】
操作支援装置10において、実機状態データが受信された場合(図4/C14)、当該実機状態データに含まれている各関節機構の負荷qk(実負荷)を表わすデータに基づき、関節負荷認識要素121により、第1関節機構、第2関節機構および第3関節機構のそれぞれの負荷q1、q2およびq3が認識される(図4/STEP121)。
【0060】
さらに、当該実機状態データに含まれている各関節機構の関節角度を表わすデータに基づき、関節最大出力認識要素122により、第1関節機構、第2関節機構および第3関節機構のそれぞれの最大出力Q1、Q2およびQ3が認識される(図4/STEP122)。
【0061】
ところで、第k関節機構(k=1,2,3)の最大出力Qkは、その関節角度θkおよび諸元情報Skに応じて変動する。例えば、図5に一点鎖線および二点鎖線のそれぞれにより概念的に示されているように、第k関節機構の最大出力Qkは、関節角度θkが最小値から大きくなるのに応じて、極大値に達するまでは大きくなり、極大値に達した後には小さくなるというように、関節角度θkに応じて変動する。
【0062】
また、第k関節機構の最大出力Qkは、図5に一点鎖線および二点鎖線のそれぞれにより概念的に示されているように、関節角度θ1が同じであっても、リンクのサイズおよび/または自重が大きいほど大きいなど、諸元情報Skの相違(Sk=X1の場合およびSk=X2の場合)に応じて変動する。
【0063】
このため、第k関節機構(k=1,2,3)の最大出力Qkは、その関節角度θkおよび諸元情報Skに基づいて定められる。諸元情報Skには、ブーム441および/またはアーム443(リンク)の長さ(サイズ)、自重および(油圧回路を構成するリリーフバルブの)リリーフ圧など、諸元を表わすパラメータが含まれている。各関節機構の最大出力Qkは、その関節角度θkおよび諸元情報Skを変数とする関数Qk(θk,Sk)として定義されていてもよく、最大出力Qkと関節角度θkおよび諸元情報Skとの相関関係を表わすテーブルにより定義されていてもよい。該当する作業機械40またはその作業機構44の諸元情報Skは、実機状態データに含まれているまたは付随している当該作業機械40の実機識別子に基づき、データベース102から検索される。
関節角度θ3は、関節角度θ2および関節角度θ1を考慮して地表面GLに対する角度に補正されてもよい。関節角度θ2は、関節角度θ1を考慮して地表面GLに対する角度に補正されてもよい。関節角度θkは、重力の作用する方向に垂直な水平面に対する角度に補正されてもよい。関節角度θkに対する最大出力Qkは、バケット445が接触する地形の形状に応じて補正されてもよく、例えば、下部走行体41が地表面GLに位置する状態でバケット445で地表面GLを掘削する場合と、下部走行体41が地表面GLに位置する状態でバケット445で地表面GLとは異なる面(地表面GLに対して傾斜している斜面、地表面GLに対して高さの異なる面、など)を掘削する場合とで、最大出力Qkと関節角度θkの関係性を異ならせるように補正される。より具体的には、バケット445が接触する地形の形状が地表面GLよりも上側に位置するほど関節角度θkに対する最大出力Qkが上がりやすく、バケット445が接触する地形の形状が地表面GLよりも下側に位置するほど関節角度θkに対する最大出力Qkが下がりやすくなるように最大出力Qkと関節角度θkの関係性が補正される。バケット445が接触する地形の形状は、ネットワーク通信に基づいてデータベース102等から提供されてもよいし、作業機械40に地形の形状を計測可能な装置を搭載することで取得されてもよい。これらの補正処理の少なくとも一部をすることで、より正確に最大出力Qkを見積もることができる。
【0064】
第1関節機構の最大出力Q1は、関節角度θ1および諸元情報S1が同じであっても、第2関節機構の関節角度θ2および諸元情報S2(ならびに第3関節機構の関節角度θ3および諸元情報S3)が相違する場合には相違する。このため、第1関節機構の最大出力Q1が、その関節角度θ1および諸元情報S1に加えて、第2関節機構の関節角度θ2および諸元情報S2、さらには第3関節機構の関節角度θ3および諸元情報S3に基づいて定められてもよい。同様に、第2関節機構の最大出力Q2が、第2関節機構の関節角度θ2および諸元情報S2に加えて、第3関節機構の関節角度θ3および諸元情報S3に基づいて定められてもよい。
【0065】
第k関節機構の最大出力Qkが、諸元情報Skによらずに、関節角度θk(ならびに必要に応じて他の関節機構の関節角度)に基づいて定められてもよい。
【0066】
そして、指標情報生成要素124により、第k関節機構の最大出力Qkに対する負荷qkに基づき、第k関節機構の負荷余裕度を表わす指標情報が生成され、かつ、操作支援装置10から遠隔操作装置20に対して当該指標情報が送信される(図4/STEP124)。
【0067】
具体的には、第k関節機構の最大出力Qkに対する負荷qkの比率である関節負荷率rk=(qk/Qk)が負荷余裕度として求められる。そのほか、第k関節機構の最大出力Qkに対する負荷qkの偏差ΔQk=Qk-qk、または、最大出力Qkに対する当該偏差ΔQkの比率(Qk-qk)/Qkなど、負荷qkが大きくなるほど値が小さくなるような任意の変数が負荷余裕度として求められてもよい。遠隔操作装置20に対して送信される指標情報には、当該指標情報の遠隔出力インターフェース220を通じた出力形態の指令が含まれていてもよい。
【0068】
遠隔操作装置20において遠隔制御装置200により指標情報が受信された場合(図4/C22)、遠隔出力インターフェース220(出力機器)を通じて当該指標情報が出力される(図4/STEP214)。
【0069】
具体的には、第k関節機構の関節負荷率rk(負荷余裕度)の高低を表わす第k指標画像が遠隔画像出力装置221に出力される。例えば、図6に示されているように、第k関節機構の関節負荷率rkを表わす棒グラフ状のインジケータとしての第k指標画像Mk=Mk(rk)が作業環境画像に重畳されて出力される。オペレータは、このような指標画像Mkを視認することで負荷余裕度を知覚できる。
【0070】
各指標画像Mkは上下方向の長さが同一となるように横並べに配置されており、例えば、第1関節機構に対応する指標画像M1と、第2関節機構に対応する指標画像M2と、第3関節機構に対応する指標画像M3と、が指標画像Mkとして出力される。各指標画像Mkのそれぞれの位置に各関節負荷率rkの数値を重畳して出力してもよい。第k指標画像Mkは、棒グラフを構成しており関節負荷率rkに応じて上下方向の長さが変化する変動指標画像Mrkを有しており、変動指標画像Mrkは各指標画像Mk毎に異なる色に配色される。関節負荷率rkが0の場合には変動指標画像Mrkはその上下方向の長さが最小(ゼロ)となり、関節負荷率rkが最小(ゼロ)から大きくなると関節負荷率rkに応じて変動指標画像Mrkの上下方向の長さが上方に伸びていき、関節負荷率rkが1に達すると変動指標画像Mrkの上下方向の長さが最大となる。上下方向の長さが最大となった状態の変動指標画像Mrkの上端の位置を示す指標画像が出力されてもよく、例えば、図6では上下方向の長さが最大となった状態の変動指標画像Mrkの外形に対応する枠を変動指標画像Mrkに重畳している。また、第k関節機構の回動方向に応じて出力される指標画像Mkが変更されてもよく、例えば、第k関節機構が回動されることで関節角度θkが増加する場合には、図7(a)に示されるように出力する変動指標画像Mrkを関節負荷率rkが大きくなるほど上下方向の長さが上方に伸びていくように出力し、第k関節機構回動されることで関節角度θkが減少する場合には、図7(b)に示されるように出力する変動指標画像Mrkを関節負荷率rkが大きくなるほど上下方向の長さが下方に伸びていくように出力するようにしてもよい。 第k指標画像Mkは、第k関節機構の関節負荷率rkを表わす円グラフ状のインジケータであってもよく、当該関節負荷率rkの時系列を表わす折れ線グラフ(横軸‥時間、縦軸‥関節負荷率rk)であってもよい。第k指標画像Mkは、作業環境画像に重畳されない形態で出力されてもよい。関節負荷率r1が高くなるほど、第k指標画像Mkの明度が変化し(例えば、低くなり)、かつ/または、色相が青から赤に色相環に沿って近くなるように当該画像領域の色が調節されてもよい。
【0071】
そのほか、例えば、図8に示されているように、ブーム441、アーム443およびバケット445を表わす画像領域により第k指標画像が構成されている、作業機械40を模擬的に表わす実機モデル画像が遠隔画像出力装置221に出力されてもよい。例えば、第1関節機構の関節負荷率r1が高くなるほど、ブーム441を表わす画像領域の明度が低くなり、かつ/または、色相が青から赤に色相環に沿って近くなるように当該画像領域の色が調節されてもよい。ブーム441、アーム443およびバケット445のそれぞれを表示している位置に各関節負荷率rkの数値を重畳して出力してもよい。
【0072】
第k関節機構の関節負荷率rk(負荷余裕度)の高低を表わす第k指標音響Ak=Ak(rk)が遠隔音響出力装置222から出力されてもよい。具体的には、左側操作レバー2111および/または右側操作レバー2112の操作態様と各関節機構の関節角度の制御態様または変化態様との関係に応じて、中央音響出力装置2220、左側音響出力装置2221および右側音響出力装置2222のそれぞれから相互に周波数が異なる第k指標音響Ak=Ak(rk)が付与される。
【0073】
例えば、(1)右側操作レバー2112の前後の並進(または傾動)、(2)左側操作レバー2111の前後の並進および(3)右側操作レバー2112の左右の並進のそれぞれにより、第1、第2および第3関節機構のそれぞれの関節角度θ1、θ2およびθ3が制御される場合について考える。この場合、(1)第1関節機構の関節負荷率r1の高低に応じて音圧の高低が変化する第1指標音響A1が右側音響出力装置2222から出力される。また、(2)第2関節機構の関節負荷率r2の高低に応じて音圧の高低が変化する第2指標音響A2が左側音響出力装置2221から出力される。(3)第3関節機構の関節負荷率r3の高低に応じて音圧の高低が変化する第3指標音響A3が中央音響出力装置2220から出力される。
【0074】
遠隔音響出力装置222が単一の音響出力装置により構成され、第1指標音響A1、第2指標音響A2および第3指標音響A3が順に出現する単一の指標音響が断続的に当該単一の音響出力装置から出力されてもよい。
【0075】
遠隔力覚生成要素224により、第k関節機構の関節負荷率rk(負荷余裕度)の高低に応じて強弱が変化する第k指標圧力が遠隔操作機構211に伝達されてもよい。この場合、左側操作レバー2111および/または右側操作レバー2112の操作態様と各関節機構の関節角度の制御態様または変化態様との関係に応じて、操作レバーアクチュエータによって左側操作レバー2111および/または右側操作レバー2112に対して第k指標圧力fk=fk(rk)が付与される。
【0076】
例えば、(1)右側操作レバー2112の前後の並進(または傾動)、(2)左側操作レバー2111の前後の並進および(3)右側操作レバー2112の左右の並進のそれぞれにより、第1、第2および第3関節機構のそれぞれの関節角度θ1、θ2およびθ3が制御される場合について考える。この場合、(1)第1関節機構の関節負荷率r1の高低に応じて強弱が変化する第1指標圧力f1(または反力)が右側操作レバー2112に対して、前後方向(右側操作レバー2112が(オペレータの右手から)前後のいずれかの方向力を受けている場合には当該力の作用方向とは反対方向)に付与される。また、(2)第2関節機構の関節負荷率r2の高低に応じて強弱が変化する第2指標圧力f2(または反力)が左側操作レバー2111に対して、前後方向(左側操作レバー2111が(オペレータの左手から)前後のいずれかの方向に力を受けている場合には当該力の作用方向とは反対方向)に付与される。(3)第3関節機構の関節負荷率r3の高低に応じて強弱が変化する第3指標圧力f3(または反力)が右側操作レバー2112に対して、左右方向(右側操作レバー2112が(オペレータの右手から)左右いずれかの方向に力を受けている場合には当該力の作用方向とは反対方向)に付与される。左側操作レバー2111および右側操作レバー2112のそれぞれに作用する力は、例えば、各操作レバーに設けられた操作力センサまたは圧力センサ(図示略)の出力信号に応じて測定されうる。オペレータは、作業機械40の操作のために握る右側操作レバー2112や左側操作レバー2111に付与される第k指標圧力fkを手に受けることで負荷余裕度を知覚できる。
【0077】
指標情報として、第k指標画像Mk、第k指標音響Akおよび第k指標圧力fkのうち少なくとも1つが遠隔出力インターフェース220を通じて出力されうる。第k関節機構の関節負荷率rkを表わす指標情報の出力形態(第k指標画像Mk、第k指標音響Akおよび第k指標圧力fkの一部または全部)の組み合わせがさまざまに変更されてもよい。例えば、第k1関節機構(k1=1,2,3)の関節負荷率rk1が第k1指標画像Mk1として遠隔画像出力装置221に出力され、第k2関節機構(k2≠k1、k2=1,2,3)の関節負荷率rk2が第k1指標圧力fk2として遠隔力覚生成装置224から出力され、または、第k2指標画像Mk2として遠隔音響出力装置222から出力されてもよい。指標状態の出力形態の組み合わせは、遠隔入力インターフェース210を通じて可変的に設定されてもよい。
【0078】
遠隔入力インターフェース210(入力機器)を通じて設定された設定情報に基づき、遠隔出力インターフェース220(出力機器)を通じて提供される指標情報が変調されてもよい。例えば、設定情報としてゲイン係数が大きく設定された場合、第k指標画像Mkのサイズが大きく、かつ/または、彩度もしくは明度が高くなるように変調され、第k指標音響Akの音圧が高くまたは周波数が高くなるように変調され、かつ/または、第k指標圧力fkが強くなるように変調されてもよい。
【0079】
指標情報として、第k関節機構の関節負荷率rkが閾値rk_th以上になったことを要件として、第k指標画像Mk、第k指標音響Akおよび第k指標圧力fkのうち少なくとも1つが遠隔出力インターフェース220を通じて出力されてもよい。第k指標画像Mk、第k指標音響Akおよび第k指標圧力fkのそれぞれに対して、共通の閾値rk_thが適用されてもよく、異なるまたは個別の閾値rk_thが適用されてもよい。例えば、第k指標音響Akに適用される閾値rk_thが、第k指標画像Mkおよび第k指標圧力fkに適用される閾値rk_thよりも大きく設定されてもよい。閾値rk_thが遠隔入力インターフェース210を通じて可変的に設定されてもよい。
【0080】
その後、遠隔操作装置20による作業機械40の遠隔操作が停止されるまで、遠隔操作装置20から操作支援装置10に対する「実機環境確認要求」の送信処理(図4/STEP210)または作業機械40から操作支援装置10に対する撮像画像データの送信処理(図4/STEP410)以降の処理が繰り返される。
【0081】
(作用効果)
前記機能を発揮する操作支援装置10によれば、遠隔入力インターフェース210(出力機器)を通じて指標情報がオペレータに対して提供またはフィードバックされる(図4/STEP214、図6図8参照)。これにより、作業機構44(アタッチメント)の角関節機構の関節負荷率(負荷余裕度)を当該オペレータに視覚、聴覚および触覚のいずれか1つを通じて知覚させることができる。このため、関節機構の過負荷を回避する観点から、オペレータに適当に作業機械40を操作させることができ、ひいては当該作業機械40による作業機構44を用いた作業効率の向上が図られる。
【0082】
(本発明の他の実施形態)
前記実施形態では、操作支援装置10が遠隔操作装置20および作業機械40とは別個のコンピュータにより構成されていたが、他の実施形態として、操作支援装置10が、遠隔操作装置20の遠隔制御装置200または作業機械40の実機制御装置400により構成されていてもよい。操作支援装置10が遠隔操作装置20の遠隔制御装置200により構成されている場合、前記実施形態における操作支援装置10と遠隔操作装置20とのデータ通信は、遠隔操作装置20の内部ネットワークまたは遠隔制御装置200を構成するネットワークを介して実行される。操作支援装置10が作業機械40の実機制御装置400により構成されている場合、前記実施形態における操作支援装置10と作業機械40とのデータ通信は、作業機械40の内部ネットワークまたは実機制御装置400を構成するネットワークを介して実行される。
【0083】
前記実施形態では、作業機械40がオペレータにより遠隔操作装置20を通じて遠隔操作されていたが、他の実施形態として、作業機械40が当該作業機械40に搭乗したオペレータにより実機搭乗操作されてもよい。この場合、実機出力インターフェース420は、遠隔出力インターフェース220と同様の構成であり、遠隔画像出力装置221、遠隔音響出力装置222および遠隔力覚生成装置224のそれぞれと同様の構成の実機画像出力装置と、実機音響出力装置および実機力覚生成装置224を備えている。
【0084】
当該他の実施形態において、操作支援装置10から作業機械40に対して指標情報(必要に応じて、当該指標情報の出力形態の指令)が送信され、実機出力インターフェース420を通じて支援情報が出力される(図4/STEP124→‥→STEP214、図6図8参照)。例えば、遠隔画像出力装置221に相当する実機画像出力装置を通じて第k指標画像Mkが出力されてもよい。これに加えてまたは代えて、遠隔力覚生成装置224に相当する実機力覚生成装置を通じて第k指標圧力fkが実機操作機構411を構成する操作レバーに伝達されてもよい。遠隔音響出力装置222に相当する実機音響出力装置を通じて第k指標音響Akが出力されてもよい。
【0085】
操作支援装置10によって生成される指標情報は、オペレータ、作業者および/または施工管理者が携帯する、スマートフォンまたはタブレットのような端末機器を構成する画像出力装置および/または音響出力装置および/または力覚生成装置(圧電素子)を通じて出力されてもよい。
【符号の説明】
【0086】
10‥操作支援装置
102‥データベース
121‥関節負荷認識要素
122‥関節最大出力認識要素
124‥指標情報生成要素
140‥実機通信機器
20‥遠隔操作装置
200‥遠隔制御装置
210‥遠隔入力インターフェース
211‥遠隔操作機構
2111‥左側操作レバー
2112‥右側操作レバー
220‥遠隔出力インターフェース
221‥遠隔画像出力装置
222‥遠隔音響出力装置
224‥遠隔力覚生成要素
240‥遠隔通信機器
40‥作業機械
41‥下部走行体
42‥上部旋回体
42C‥キャブ(運転室)
44‥作業機構(アタッチメント)
445‥バケット
400‥実機制御装置
410‥実機入力インターフェース
412‥実機撮像装置
420‥実機出力インターフェース
1‥第1指標画像
2‥第2指標画像
3‥第3指標画像。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8