(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010350
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】フォトマスク欠陥検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/956 20060101AFI20240117BHJP
【FI】
G01N21/956 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111639
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】522212882
【氏名又は名称】株式会社トッパンフォトマスク
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】五十川 健
(72)【発明者】
【氏名】米谷 匡司
(72)【発明者】
【氏名】吉原 正人
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA56
2G051AB02
2G051AC21
2G051BA05
2G051BA10
2G051BB02
2G051BB03
2G051CA03
2G051CA07
2G051CB01
2G051CB02
2G051EA20
(57)【要約】
【課題】 欠陥の検出精度を高めつつ、検査時間をより短縮可能なフォトマスク欠陥検査装置を提供すること。
【解決手段】 フォトマスク4を透過したレーザー光21及びフォトマスク4のマスクパターンで反射されたレーザー光22を検出する高分解能検出器7及び低分解能検出器8を備えるようにした。また、検査部11が、高精細領域30へのレーザー光21、22照射時に高分解能検出器7から出力された信号、及び低精細領域31へのレーザー光21、22照射時に低分解能検出器8から出力された信号に基づいて、マスクパターンの欠陥の検査を行う分割検査を行うようにした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトマスクのマスクパターンの描画データに基づき、前記マスクパターン内の各部を高精細領域と前記高精細領域よりも精細度が低い低精細領域とに区分する区分部と、
前記フォトマスクにレーザー光を照射するレーザー光照射部と、
前記フォトマスクを透過したレーザー光及び前記マスクパターンで反射されたレーザー光の少なくとも何れかを検出する高分解能検出器、及び前記高分解能検出器よりも分解能が低い低分解能検出器と、
前記高精細領域へのレーザー光照射時に前記高分解能検出器から出力された信号、及び前記低精細領域へのレーザー光照射時に前記低分解能検出器から出力された信号に基づいて、前記マスクパターンの欠陥を検査する分割検査を行う検査部とを備える
フォトマスク欠陥検査装置。
【請求項2】
前記区分部は、前記マスクパターンの粗密状態及び最小寸法の少なくとも一方に基づき、前記マスクパターン内の各部の区分を行う
請求項1に記載のフォトマスク欠陥検査装置。
【請求項3】
前記フォトマスクを透過したレーザー光及び前記マスクパターンで反射されたレーザー光の少なくとも何れかを分岐させ、分岐されたレーザー光の一方を前記高分解能検出器に入射させ、他方を前記低分解能検出器に入射させる光分岐部を備え、
前記高分解能検出器の校正及び前記低分解能検出器の校正は並行して行われる
請求項1に記載のフォトマスク欠陥検査装置。
【請求項4】
前記フォトマスクに前記分割検査を行った場合にかかる時間と、前記高精細領域へのレーザー光照射時と前記低精細領域へのレーザー光照射時との何れにおいても前記高分解能検出器からの出力信号に基づいて前記欠陥を検査する一括検査を行った場合にかかる時間とのどちらが短いかを判定する検査時間判定部を備え、
前記検査時間判定部の判定結果を基に前記検査部による前記欠陥の検査手法を設定する
請求項1に記載のフォトマスク欠陥検査装置。
【請求項5】
前記フォトマスクの外形状は、矩形であり、
前記フォトマスクに対するレーザー光の照射位置が所定の走査方向に沿って走査されるように、前記フォトマスクを保持して移動するステージと、
前記矩形の所定の1辺が前記走査方向と平行となるように前記ステージに保持された前記フォトマスクに前記分割検査を行った場合にかかる時間と、前記1辺が前記走査方向と直交するように前記ステージに保持された前記フォトマスクに前記分割検査を行った場合にかかる時間とのどちらが短いかを判定する検査時間判定部とを備え、
前記検査時間判定部の判定結果を基に前記レーザー光の照射位置の走査方向に対する前記フォトマスクの角度を設定する
請求項1に記載のフォトマスク欠陥検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトマスク欠陥検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体の動作速度の高速化や小型化が急速に進展したことに伴い、半導体の原版となるフォトマスクにおいて、マスクパターンの微細化や高精度化(高精細化)が要求されている。フォトマスクの製造工程においては、工程毎に専用の装置に投入してフォトマスクの製造が進められるが、高精細なマスクパターンを保証するためには、最後に、フォトマスク上に形成されているマスクパターンの欠陥の検出及び除去を行う必要がある。
例えば、特許文献1には、TAT(Turn Around Time)の短縮とコストの削減を図ることが可能なマスクパターンの欠陥検査の方法として、描画パターン(マスクパターン)を所定の特徴基準に従って複数のランクに分類する工程と、ランク毎に検査精度を決定し、決定した検査精度を満たしているか否かによって、フォトマスクの良否を判定する工程、つまり、描画パターン(マスクパターン)の欠陥を判定する工程とが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなマスクパターンの欠陥検査では、検査時間の更なる短縮が求められている。
本発明は、欠陥の検出精度を高めつつ、検査時間をより短縮可能なフォトマスク欠陥検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係るフォトマスク欠陥検査装置は、(a)フォトマスクのマスクパターンの描画データに基づき、マスクパターン内の各部を高精細領域と高精細領域よりも精細度が低い低精細領域とに区分する区分部と、(b)フォトマスクにレーザー光を照射するレーザー光照射部と、(c)フォトマスクを透過したレーザー光及びマスクパターンで反射されたレーザー光の少なくとも何れかを検出する高分解能検出器、及び高分解能検出器よりも分解能が低い低分解能検出器と、(d)高精細領域へのレーザー光照射時に高分解能検出器から出力された信号、及び低精細領域へのレーザー光照射時に低分解能検出器から出力された信号に基づいて、マスクパターンの欠陥を検査する分割検査を行う検査部とを備えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、一台の装置で、高精細領域と低精細領域とを検査できる。それゆえ、欠陥の検出精度を高めつつ、検査時間をより短縮可能なフォトマスク欠陥検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係るフォトマスク欠陥検査装置の全体構成を示す図である。
【
図2】フォトマスクに対するレーザー光の照射位置の走査状態を示す図である。
【
図4】検査エリアを区分して得られる高精細領域を示す図である。
【
図5】検査エリアを区分して得られる低精細領域を示す図である。
【
図6】マスクパターンの画像の一部を拡大して示す図である。
【
図8】形状差の画像の一部を拡大して示す図である。
【
図9】検査エリア区分処理のフローチャートを示す図である。
【
図10A】マスク回転角決定処理のフローチャートを示す図であって、ステップS201~S210を示す図である。
【
図10B】マスク回転角決定処理のフローチャートを示す図であって、ステップS211~S222を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の発明者らは、フォトマスク欠陥検査装置について、以下の課題を発見した。
フォトマスク欠陥検査装置において、欠陥の検出精度と検査時間とは、フォトマスクを透過又はフォトマスクで反射したレーザー光を検出する検出器の種類、分解能、感度の設定で決まる。例えば、分解能を高く設定した検出器を用いた場合、検出精度が高精度である反面、検査に長時間かかってしまう。また、例えば、分解能を低く設定した検出器を用いた場合、検査が短時間で済む反面、検出精度が低下してしまう。そのため、検出器の分解能の設定を、微細パターン向けと粗いパターン向けとで切り替えることが考えられる。特に、近年のフォトマスクは、1枚のフォトマスクにメインパターンによる微細パターンと、周辺パターンによる粗いパターンとが混載しているレイアウトが多いため、フォトマスクを全面検査するのに、分解能の設定を切り替えて、分解能が高い設定と分解能が低い設定との両方で検査することは、欠陥の検出精度と検査時間との点で有効と考えられる。
【0009】
しかしながら、フォトマスク欠陥検査装置には、分解能の設定は、1回の検査で一意の設定しかできないという制約がある。それゆえ、例えば、メインパターンの検査は高分解能で検査可能な先端装置で行い、周辺パターンの検査は早い時間で処理可能な旧装置で行うことが考えられるが、装置の変更に時間がかかってしまい、マスク製作のリードタイムが伸びてしまうという問題がある。なお、検査装置数を増やすことで、リードタイムの短縮を期待することができるが、設置スペースのひっ迫や設備投資の増額が懸念される。
【0010】
以下に、本発明の実施形態に係るフォトマスク欠陥検査装置の一例を、
図1~
図10Bを参照しながら説明する。本発明の実施形態は以下の順序で説明する。
1.フォトマスク欠陥検査装置の全体の構成
2.検査エリア区分処理
3.マスク回転角決定処理
【0011】
[1.フォトマスク欠陥検査装置の全体構成]
本発明の実施形態に係るフォトマスク欠陥検査装置について説明する。
図1は、実施形態に係るフォトマスク欠陥検査装置1の全体構成を示す図である。
図1に示したフォトマスク欠陥検査装置1は、透明基板2と、透明基板2の一方の面S1に配置され、マスクパターンを形成する遮光膜3とを含むフォトマスク4を検査して、マスクパターンの欠陥を検査するための装置である。フォトマスク4の外形状は、矩形とする(
図2参照)。また、フォトマスク欠陥検査装置1の動作モードとして、高精度検査を行う高精度モードと、高精度検査よりも精度が低い低精度検査を行う低精度モードとを有している。
【0012】
図1に示すように、フォトマスク欠陥検査装置1は、レーザー光照射部5と、光分岐部6と、高分解能検出器7と、低分解能検出器8と、ステージ9と、サーバー10とを備えている。
レーザー光照射部5は、フォトマスク4にレーザー光21、22を照射する。具体的には、レーザー光照射部5は、DUV(deep ultra violet)レーザー発振器15と、ビームスプリッタ16と、透過光学系17と、反射光学系18と、画像光学系19とを有している。DUVレーザー発振器15は、サーバー10からの制御信号に従い、深紫外線波長域のレーザー光20を発振し、ビームスプリッタ16に入射させる。また、ビームスプリッタ16は、入射されたレーザー光20が透過光学系17及び反射光学系18のそれぞれに入射されるように、レーザー光20をレーザー光21とレーザー光22とに分岐させる。
【0013】
また、透過光学系17は、分岐されたレーザー光21がフォトマスク4の透明基板2を透過するように、レーザー光21を透明基板2の他方の面S2に入射させる。これにより、透明基板2を透過したレーザー光21のうちマスクパターンのスリットに入射したレーザー光21が画像光学系19に入射される。また、反射光学系18は、ビームスプリッタ16から入射されたレーザー光22を、透明基板2の一方の面S1に入射させる。これにより、レーザー光22のうちマスクパターンの遮光膜3で反射されたレーザー光22のみが画像光学系19に入射される。その際、透過光学系17及び反射光学系18は、サーバー10からの制御信号に従い、動作モードが低精度モードである場合には、高精度モードである場合よりもレーザー光21のスポット半径が大きくなるように光学系を調整する。
また、画像光学系19は、透過光学系17から入射されたレーザー光21と、反射光学系18から入射されたレーザー光22とを収束させて光分岐部6に入射させる。
【0014】
また、光分岐部6は、入射されたレーザー光21が高分解能検出器7及び低分解能検出器8のそれぞれに入射されるように、レーザー光21をレーザー光23とレーザー光24とに分岐させる。同様に、光分岐部6は、レーザー光22が高分解能検出器7及び低分解能検出器8のそれぞれに入射されるように、レーザー光22をレーザー光25とレーザー光26とに分岐させる。即ち、光分岐部6は、フォトマスク4を透過したレーザー光21及びフォトマスク4のマスクパターンで反射されたレーザー光22のそれぞれを分岐させ、分岐されたレーザー光23、25、24、26の一方(23、25)を高分解能検出器7に検出させ、他方(24、26)を低分解能検出器8に検出させる、と言える。光分岐部6としては、例えば、ビームスプリッタを採用できる。
【0015】
高分解能検出器7及び低分解能検出器8は、二次元アレイ状に配列された複数の光検出素子を有している。高分解能検出器7の光検出素子は、光分岐部6から入射されたレーザー光23、25の強度に応じた出力信号を生成する。同様に、低分解能検出器8の光検出素子は、光分岐部6から入射されたレーザー光24、26の強度に応じた出力信号を生成する。低分解能検出器8のピクセルサイズ(光検出素子のサイズ)は、高分解能検出器7のピクセルサイズよりも大きくなっている。即ち、低分解能検出器8の分解能は、高分解能検出器7の分解能よりも低くなっている。高分解能検出器7の出力信号及び低分解能検出器8の出力信号は、サーバー10に出力される。また、高分解能検出器7の校正と低分解能検出器8の校正とは並行して行われる。校正としては、例えば、欠陥検査の開始直前に校生装置(不図示)によって行われる各種キャリブレーションが挙げられる。
なお、本実施形態では、フォトマスク4を透過したレーザー光21及びフォトマスク4のマスクパターンで反射されたレーザー光22の両方を高分解能検出器7及び低分解能検出器8で検出する例を示したが、他の構成としてもよく、レーザー光21、22の少なくとも何れかを高分解能検出器7及び低分解能検出器8で検出する構成であればよい。
【0016】
ステージ9は、フォトマスク4に対するレーザー光21、22の照射位置X(
図2参照)が所定の走査方向に沿って走査されるように、フォトマスク4を保持して移動する。
図2では、照射位置Xがフォトマスク4の左側から右側に走査され、1ラインの走査を終えると、直上のラインの走査が開始される構成とした場合を例示している。その際、レーザー光21、22の照射位置Xの走査間隔は、フォトマスク欠陥検査装置1の動作モードが低精度モードである場合には、高精度モードである場合よりも広くする。これにより、低精度モードである場合には、高精度モードである場合よりも、走査にかかる時間を短縮できる。また、フォトマスク4の保持態様としては、例えば、フォトマスク4の外形状(矩形)の所定の1辺が照射位置Xの走査方向と平行となるようにステージ9に保持された態様(以下、「マスク回転角0度」とも呼ぶ)と、その1辺が走査方向と直交するようにステージ9に保持された態様(以下、「マスク回転角90度」とも呼ぶ)とを取り得る。マスク回転角0度とマスク回転角90度との何れの保持態様を採用するのかは、サーバー10が実行する後述のマスク回転角決定処理(
図10A、
図10B参照)で決定される。
【0017】
サーバー10は、プロセッサと、ROMと、RAMと、記録媒体とを備え、デ-タ等の伝送路であるバスを介して各構成要素間が互いに接続されている。プロセッサは、例えば、MPU(Micro Processor Unit)等の演算回路で構成され、フォトマスク欠陥検査装置1全体を制御する。また、プロセッサは、例えば、記録媒体が記憶しているプログラムに従い、検査エリア区分処理やマスク回転角決定処理等を実行可能な検査部11、区分部12、検査時間判定部13の機能を実現する。検査エリア区分処理は、欠陥検査を行う検査エリア27(
図3参照)内の各部を高精細領域30(
図4参照)と高精細領域30よりも精細度が低い低精細領域31(
図5参照)とに区分する処理である。
【0018】
また、マスク回転角決定処理は、レーザー光21、22の照射位置Xの走査方向に対するフォトマスク4の角度や、分割検査と一括検査との何れを行うのかを決定する処理である。分割検査は、高精細領域30へのレーザー光21、22照射時には、動作モードを高精度モードに切り替え、低精細領域31へのレーザー光21、22照射時には、低精度モードに切り替え、高精細領域30へのレーザー光21、22照射時に高分解能検出器7から出力された信号、及び低精細領域31へのレーザー光21、22照射時に低分解能検出器8から出力された信号に基づいて、マスクパターンの欠陥の検査を行う検査手法である。また、一括検査は、高精細領域30へのレーザー光21、22照射時と低精細領域31へのレーザー光21、22照射時との何れにおいても、動作モードを高精度モードに維持して、高分解能検出器7からの出力信号に基づいてマスクパターンの欠陥の検査を行う検査手法である。検査エリア区分処理、マスク回転角決定処理の詳細については後述する。
【0019】
また、検査部11は、マスク回転角決定処理の処理結果に基づき、フォトマスク欠陥検査装置1の各構成要素に制御信号を出力し、分割検査と、一括検査とを実行可能となっている。分割検査及び一括検査では、検査部11が、高分解能検出器7及び低分解能検出器8からの出力信号に基づいてマスクパターンの画像100(
図6参照)を形成し、形成した画像と予め用意した参照画像200(
図7参照)とを比較して形状差の画像300(
図8)を形成し、形成した画像300が示す形状差をマスクパターンの欠陥として認識する。特に、分割検査においては、高分解能検出器7からの出力信号を基に高精細領域30の画像を形成し、低分解能検出器8からの出力信号を基に低精細領域31の画像を形成し、これらの画像を組み合わせることで、
図6に示したマスクパターンの画像100を形成する。一括検査においては、高精細領域30及び低精細領域31に関わらず、高分解能検出器7からの出力信号のみに基づき
図6に示したマスクパターンの画像100を形成する。
【0020】
以上説明したように、本実施形態のフォトマスク欠陥検査装置1では、フォトマスク4を透過したレーザー光21及びフォトマスク4のマスクパターンで反射されたレーザー光22を検出する高分解能検出器7及び低分解能検出器8を備えるようにした。また、検査部11が、高精細領域30へのレーザー光21、22照射時に高分解能検出器7から出力された信号、及び低精細領域31へのレーザー光21、22照射時に低分解能検出器8から出力された信号に基づいて、マスクパターンの欠陥の検査を行う分割検査を行うようにした。それゆえ、一台の装置で、高精細領域30と低精細領域31との両方を検査できる。そのため、欠陥の検出精度を高めつつ、検査時間をより短縮することができる。
【0021】
[2.検査エリア区分処理]
次に、サーバー10の区分部12が実行する検査エリア区分処理について説明する。検査エリア区分処理は、マスクパターンの欠陥検査の開始前に実行される。
図9に示すように、まずステップS101では、区分部12が、検査対象となるフォトマスク4のマスクパターンの描画データを取り込む。描画データとしては、例えば、マスクブランクへのマスクパターンの形成時に用いた画像データを採用することができる。
続いてステップS102に移行して、区分部12が、ステップS101で取り込んだ描画データに基づき、マスクパターン内の各部を高精細領域30と低精細領域31とに区分する。区分方法としては、例えば、マスクパターンの粗密状態及び最小寸法の少なくとも一方に基づきマスクパターン内の各部の区分を行う方法(マスクルールチェック)、目視チェックを採用できる。例えば、
図3に示すように、描画データのマスクパターンの領域を検査エリア27とし、検査エリア27からメインパターン28と周辺パターン29とを抽出し、
図4に示すように、メインパターン28が位置する部分を高精細領域30に区分し、
図5に示すように、周辺パターン29が位置する部分を低精細領域31に区分する。
【0022】
続いてステップS103に移行して、区分部12が、ステップS102で区分された検査エリア27内の複数の領域それぞれについて、高精細領域30であるか低精細領域31であるかを判定する。そして、区分部12が、複数の領域のうちから判定対象とする領域を選択し、選択した領域が高精細領域30であると判定した場合には(Yes)、ステップS104に移行する。一方、高精細領域30ではないと判定した場合には(No)、低精細領域31であると判定し、ステップS105に移行する。ステップS103の判定、並びにステップS103の後のステップS104及びS105による検査レシピの作成は、検査エリア27内の複数の領域すべてについて行う。また、例えば、1回目のステップS103で、高精細領域30が選択され、2回目のステップS103で、低精細領域31が選択されるように設定しておく。
【0023】
ステップS104では、区分部12が、ステップS103で判定した高精細領域30の欠陥検査を高分解能検出器7を用いて行う場合の検査レシピ(以下、「第1検査レシピ」とも呼ぶ)を作成する。第1検査レシピの作成を終えた後、ステップS103に戻る。
ステップS105では、区分部12が、低精細領域31の検査結果を低分解能検出器8を用いて行う場合の検査レシピ(以下、「第2検査レシピ」とも呼ぶ)を作成する。
ステップS103~S105により、第1検査レシピと第2検査レシピとが得られ、検査エリア27のすべての領域についての、分割検査用の検査レシピが得られる。
【0024】
[3.マスク回転角決定処理]
次に、サーバー10の検査時間判定部13が実行するマスク回転角決定処理について説明する。マスク回転角決定処理は、上記した検査エリア区分処理の終了後で、且つマスクパターンの欠陥検査の開始前に実行される。
図10A及び
図10Bに示すように、まずステップS201では、検査時間判定部13が、マスク回転角0度である場合の検査時間の計算と、マスク回転角90度である場合の検査時間の計算との何れを行うのかを判定する。そして、マスク回転角0度である場合の検査時間の計算を行うと判定した場合には(0度)、ステップS202に移行する。一方、マスク回転角90度である場合の検査時間の計算を行うと判定した場合には(90度)、ステップS211に移行する。例えば、1回目のステップS201で、マスク回転角0度である場合の検査時間の計算を行うと判定されて、2回目のステップS201で、マスク回転角90度である場合の検査時間の計算を行うと判定されるように設定しておく。
【0025】
ステップS202では、検査時間判定部13が、ステップS101で取り込んだ描画データに基づき、マスク回転角0度とした場合の検査エリア27を確認する。
続いてステップS203に移行して、検査時間判定部13が、ステップS202で確認した検査エリア27を描画密度や検査レシピで重みづけを行った上で、単位面積当たりの処理時間で検査時間を計算し、マスク回転角0度の検査エリア27を一括検査する場合の検査時間Aを算出する。検査時間Aの計算は、例えば、下記(1)式に従って行われる。
検査時間A=検査エリアの面積×描画密度/単位面積当たりの処理時間…(1)
ここで、単位面積あたりの処理時間としては、例えば、動作モードを高精度モードとして、高精度検査を行う場合にかかる時間を採用できる。
【0026】
続いてステップS204に移行して、検査時間判定部13が、上記した検査エリア区分処理のステップS102による検査エリア27の分割結果に基づき、ステップS202で確認した検査エリア27内の複数の領域それぞれについて、高精細領域30であるかを判定する。そして、検査時間判定部13が、複数の領域のうちから判定対象とする領域を選択し、選択した領域が高精細領域30であると判定した場合には(Yes)、ステップS205に移行する。一方、高精細領域30ではないと判定した場合には(No)、低精細領域31であると判定し、ステップS206に移行する。ステップS204の判定、並びにステップS205及びS206による検査時間の計算は、検査エリア27内の複数の領域すべてについて行う。例えば、1回目のステップS204で、高精細領域30が選択され、2回目のステップS204で、低精細領域31が選択されるように設定しておく。
【0027】
ステップS205では、検査時間判定部13が、ステップS204で判定した高精細領域30を描画密度や検査条件で重みづけを行った上で、単位面積当たりの処理時間で検査時間を計算し、マスク回転角0度である場合の高精細領域30を検査する場合の検査時間Bを算出する。検査時間Bの計算は、例えば、下記(2)式に従って行われる。検査時間Bの算出を終えた後、ステップS204に戻る。
検査時間B=高精細領域の面積×描画密度/単位面積当たりの処理時間…(2)
ここで、単位面積あたりの処理時間としては、例えば、動作モードを高精度モードとして、高精度検査を行う場合にかかる時間を採用できる。
【0028】
ステップS206では、検査時間判定部13が、ステップS204で判定した低精細領域31を描画密度や検査条件で重みづけを行った上で、単位面積当たりの処理時間で検査時間を計算し、マスク回転角0度である場合の低精細領域31を検査する場合の検査時間Cを算出する。検査時間Cの計算は、例えば、下記(3)式に従って行われる。
検査時間C=低精細領域の面積×描画密度/単位面積当たりの処理時間…(3)
ここで、単位面積あたりの処理時間としては、例えば、動作モードを低精度モードとして、低精度検査を行う場合にかかる時間を採用できる。
【0029】
続いてステップS207に移行して、検査時間判定部13が、検査時間Aが検査時間B、検査時間C及び切替時間Pの合計値よりも大きいか(A>B+C+P)を判定する。切替時間Pは、分割検査の実行時に高精細領域30と低精細領域31との境界で透過光学系17や反射光学系18を調整する際にかかる時間であり、境界の数が多いほど大きな値になる。また、B+C+Pは、マスク回転角0度となるようにステージ9に保持されたフォトマスク4に分割検査を行った場合にかかる時間である。そのため、A>B+C+Pの判定は、フォトマスク4に分割検査を行った場合にかかる時間と、一括検査を行った場合にかかる時間とのどちらが短いかの判定となっている。そして、検査時間判定部13が、A>B+C+Pであると判定した場合には(Yes)、フォトマスク4に分割検査を行った場合にかかる時間のほうが短いと判定し、ステップS208に移行する。一方、A≦B+C+Pであると判定した場合には(No)、フォトマスク4に一括検査を行った場合にかかる時間のほうが短いと判定し、ステップS209に移行する。
ステップS208では、検査時間判定部13が、マスク回転角0度とする場合には分割検査が早いと判定した後、ステップS210に移行する。
一方、ステップS209では、検査時間判定部13が、マスク回転角0度とする場合には一括検査が早いと判定した後、ステップS210に移行する。
【0030】
ステップS210では、検査時間判定部13が、ステップS208で分割検査が早いと判定された場合には、分割検査にかかる時間(検査時間B、検査時間C及び切替時間Pの合計値(B+C+P))を、マスク回転角0度である場合の最短検査時間Gとする。一方、ステップS209で一括検査が早いと判定された場合には、一括検査にかかる時間(検査時間A)を、マスク回転角0度である場合の最短検査時間Gとする。最短検査時間Gの設定を終えた後、ステップS201に戻る。
ステップS207~S210により、一括検査にかかる時間Aと分割検査にかかる時間B+C+Pを比較して、検査時間が短い検査手法を判定することができる。
【0031】
一方、ステップS211では、検査時間判定部13が、ステップS101で取り込んだ描画データに基づき、マスク回転角90度とした場合の検査エリア27を確認する。
続いてステップS212に移行して、検査時間判定部13が、ステップS211で確認した検査エリア27を描画密度や検査レシピで重みづけを行った上で、単位面積当たりの処理時間で検査時間を計算し、マスク回転角90度の検査エリア27を一括検査する場合の検査時間Dを算出する。検査時間Dの計算は、例えば下記(4)式に従って行われる。
検査時間D=検査エリアの面積×描画密度/単位面積当たりの処理時間…(4)
ここで、単位面積あたりの処理時間としては、例えば、動作モードを高精度モードとして、高精度検査を行う場合にかかる時間を採用できる。
【0032】
続いてステップS213に移行して、検査時間判定部13が、上記した検査エリア区分処理のステップS102による検査エリア27の分割結果に基づき、ステップS211で確認した検査エリア27内の複数の領域それぞれについて、高精細領域30であるかを判定する。そして、検査時間判定部13が、複数の領域のうちから判定対象とする領域を選択し、選択した領域が高精細領域30であると判定した場合には(Yes)、ステップS214に移行する。一方、高精細領域30ではないと判定した場合には(No)、低精細領域31であると判定し、ステップS215に移行する。ステップS213の判定、並びにステップS214及びS215による検査時間の計算は、検査エリア27内の複数の領域すべてについて行う。例えば、1回目のステップS213で、高精細領域30が選択され、2回目のステップS213で、低精細領域31が選択されるように設定しておく。
【0033】
ステップS214では、検査時間判定部13が、ステップS213で判定した高精細領域30を描画密度や検査条件で重みづけを行った上で、単位面積当たりの処理時間で検査時間を計算し、マスク回転角90度である場合の高精細領域30を検査する場合の検査時間Eを算出する。検査時間Eの計算は、例えば、下記(5)式に従って行われる。検査時間Eの算出を終えた後、ステップS213に戻る。
検査時間E=高精細領域の面積×描画密度/単位面積当たりの処理時間…(5)
ここで、単位面積あたりの処理時間としては、例えば、動作モードを高精度モードとして、高精度検査を行う場合にかかる時間を採用できる。
【0034】
ステップS215では、検査時間判定部13が、ステップS213で判定した低精細領域31を描画密度や検査条件で重みづけを行った上で、単位面積当たりの処理時間で検査時間を計算し、マスク回転角90度である場合の低精細領域31を検査する場合の検査時間Fを算出する。検査時間Fの計算は、例えば、下記(6)式に従って行われる。
検査時間F=低精細領域の面積×描画密度/単位面積当たりの処理時間…(6)
ここで、単位面積あたりの処理時間としては、例えば、動作モードを低精度モードとして、低精度検査を行う場合にかかる時間を採用できる。
【0035】
続いてステップS216に移行して、検査時間判定部13が、検査時間Dが検査時間E、検査時間F及び切替時間Qの合計値よりも大きいか(D>E+F+Q)を判定する。切替時間Qは、分割検査の実行時に高精細領域30と低精細領域31との境界で透過光学系17や反射光学系18を調整する際にかかる時間であり、境界の数が多いほど大きな値になる。また、E+F+Qは、マスク回転角90度となるようにステージ9に保持されたフォトマスク4に分割検査を行った場合にかかる時間である。そのため、D>E+F+Qの判定は、フォトマスク4に分割検査を行った場合にかかる時間と、一括検査を行った場合にかかる時間とのどちらが短いかの判定となっている。そして、検査時間判定部13が、D>E+F+Qであると判定した場合には(Yes)、フォトマスク4に分割検査を行った場合にかかる時間のほうが短いと判定し、ステップS217に移行する。一方、D≦E+F+Qであると判定した場合には(No)、フォトマスク4に一括検査を行った場合にかかる時間のほうが短いと判定し、ステップS218に移行する。
ステップS217では、検査時間判定部13が、マスク回転角90度とする場合には分割検査が早いと判定した後、ステップS219に移行する。
一方、ステップS218では、検査時間判定部13が、マスク回転角90度とする場合には一括検査が早いと判定した後、ステップS219に移行する。
【0036】
ステップS219では、検査時間判定部13が、ステップS217で分割検査が早いと判定された場合には、分割検査にかかる時間(検査時間E、検査時間F及び切替時間Qの合計値(E+F+Q))を、マスク回転角90度である場合の最短検査時間Hとする。一方、ステップS218で一括検査が早いと判定された場合には、一括検査にかかる時間(検査時間D)を、マスク回転角90度である場合の最短検査時間Hとする。
ステップS216~S219により、一括検査にかかる時間Dと分割検査にかかる時間E+F+Qを比較して、検査時間が短い検査手法を判定することができる。
【0037】
続いてステップS220に移行して、検査時間判定部13が、マスク回転角0度である場合の最短検査時間Gが、マスク回転角90度である場合の最短検査時間Hよりも短いかを判定する(G<H)。ここで、例えば、最短検査時間GがB+C+Pであり、最短検査時間HがE+F+Qである場合には、G<Hの判定は、マスク回転角0度となるようにステージ9に保持されたフォトマスク4に分割検査を行った場合にかかる時間と、マスク回転角90度となるようにステージ9に保持されたフォトマスク4に分割検査を行った場合にかかる時間とのどちらが短いかの判定となっている。そして、検査時間判定部13が、G<Hであると判定した場合には(Yes)、ステップS221に移行する。一方、G≧Hであると判定した場合には(No)、ステップS222に移行する。
【0038】
ステップS221では、検査時間判定部13が、ステップS220の判定結果を基にレーザー光21、22の照射位置Xの走査方向に対するフォトマスク4の角度(マスク回転角0度)を設定する。一例としては、検査時間判定部13は、搬送装置(不図示)に、フォトマスク4をステージ9に搬送させ、ステージ9に、マスク回転角0度となるようにフォトマスク4を保持させる。また、ステップS210、S219、S220の判定結果を基に検査部11による欠陥の検査手法を設定する。一例としては、ステップS207~210で分割検査が早いと判定された場合には、検査時間判定部13は、検査部11に、マスクパターンの検査手法として分割検査を用いるように各構成要素9,17,18の制御等を行わせる。一方、ステップS207~210で一括検査が早いと判定された場合には、検査時間判定部13は、検査部11に、マスクパターンの検査手法として一括検査を用いるように各構成要素9,17,18の制御等を行わせる。
【0039】
一方、ステップS222では、検査時間判定部13が、ステップS220の判定結果を基にレーザー光21、22の照射位置Xの走査方向に対するフォトマスク4の角度(マスク回転角90度)を設定する。一例としては、検査時間判定部13は、搬送装置に、フォトマスク4をステージ9に搬送させ、ステージ9に、マスク回転角90度となるようにフォトマスク4を保持させる。また、ステップS210、S219、S220の判定結果を基に検査部11による欠陥の検査手法を設定する。一例としては、ステップS216~219で分割検査が早いと判定された場合には、検査時間判定部13は、検査部11に、マスクパターンの検査手法として分割検査を用いるように各構成要素9,17,18の制御等を行わせる。一方、ステップS216~219で一括検査が早いと判定された場合には、検査時間判定部13は、検査部11に、マスクパターンの検査手法として一括検査を用いるように各構成要素9,17,18の制御等を行わせる。
ステップS220~S222により、最短検査時間G、Hを比較して、検査時間が短いマスク回転角を判定することができ、欠陥検査にかかる時間をより短縮できる。
なお、本実施形態では、ステップS221、S222において、検査時間判定部13が、マスク回転角0度やマスク回転角90度となるようにフォトマスク4をステージ9に保持させる役目を自動的に行う例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、フォトマスク4の保持態様をディスプレイ(不図示)に表示し、ユーザの手動操作によって、その保持態様でフォトマスク4をステージ9に保持させる構成としてもよい。
また、本実施形態では、ステップS221、S222において、検査時間判定部13が、分割検査や一括検査等の検査手法を検査部11に伝える役目を自動的に行う例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、検査手法をディスプレイ(不図示)に表示し、ユーザの手動操作によって、検査手法を検査部11に伝える構成としてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1…フォトマスク欠陥検査装置、2…透明基板、3…遮光膜、4…フォトマスク、5…レーザー光照射部、6…光分岐部、7…高分解能検出器、8…低分解能検出器、9…ステージ、10…サーバー、11…検査部、12…区分部、13…検査時間判定部、15…DUVレーザー発振器、16…ビームスプリッタ、17…透過光学系、18…反射光学系、19…画像光学系、20,21,22,23,24,25,26…レーザー光、27…検査エリア、28…メインパターン、29…周辺パターン、30…高精細領域、31…低精細領域、100…マスクパターンの画像、200…参照画像、300…形状差の画像