(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103691
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】充填用ポリオール液剤、充填用ポリウレタン組成物、及びポリウレタンフォーム
(51)【国際特許分類】
C08G 18/08 20060101AFI20240725BHJP
C08G 18/42 20060101ALI20240725BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20240725BHJP
C08G 18/09 20060101ALI20240725BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20240725BHJP
【FI】
C08G18/08 038
C08G18/42
C08G18/48
C08G18/09 020
C08G101:00
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024089913
(22)【出願日】2024-06-03
(62)【分割の表示】P 2020129226の分割
【原出願日】2020-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(74)【代理人】
【識別番号】100165021
【弁理士】
【氏名又は名称】千々松 宏
(72)【発明者】
【氏名】小原 峻士
(72)【発明者】
【氏名】荻野 敦史
(57)【要約】
【課題】構造体の空洞部に充填する際の充填性に優れることで、場所により密度のバラつきの少ないポリウレタンフォームを形成でき、かつポリオールとポリイソシアネートとの反応が十分に進行した品質に優れるポリウレタンフォームを得られるポリオール液剤を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、ポリオール、触媒、及びフィラーを含有し、前記触媒の含有量が0.3~5質量%である充填用ポリオール液剤である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール、触媒、及びフィラーを含有し、前記触媒の含有量が0.3~5質量%である充填用ポリオール液剤。
【請求項2】
さらに発泡剤を含有する、請求項1に記載の充填用ポリオール液剤。
【請求項3】
前記ポリオールが、ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールから選択される少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の充填用ポリオール液剤。
【請求項4】
前記触媒が、樹脂化触媒及び三量化触媒を含む、請求項1~3のいずれかに記載の充填用ポリオール液剤。
【請求項5】
前記フィラーが固形難燃剤を含む、請求項1~4のいずれかに記載の充填用ポリオール液剤。
【請求項6】
さらに整泡剤を含有する、請求項1~5のいずれかに記載の充填用ポリオール液剤。
【請求項7】
さらに沈降抑制剤を含有する、請求項1~6のいずれかに記載の充填用ポリオール液剤。
【請求項8】
前記ポリオール液剤中の発泡剤以外の混合成分の25℃における粘度が、3000mPa・s以上60000mPa・s以下である、請求項1~7のいずれかに記載の充填用ポリオール液剤。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載のポリオール液剤、及びポリイソシアネート液剤を含む充填用ポリウレタン組成物。
【請求項10】
イソシアネートインデックスが200~600である、請求項9に記載の充填用ポリウレタン組成物。
【請求項11】
液温40℃におけるゲルタイムが4~60秒である、請求項9又は10に記載の充填用ポリウレタン組成物。
【請求項12】
請求項9~11のいずれかに記載されたポリウレタン組成物から形成されるポリウレタンフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充填用ポリオール液剤、該ポリオール液剤を含む充填用ポリウレタン組成物、及び該ポリウレタン組成物により形成されるポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリウレタンフォームは、自動車などの車両、建具などにおいて断熱材として使用されている。一般に、ポリウレタンフォームは別々の容器に充填されたポリオール液剤とポリイソシアネート液剤を吐出し混合することにより形成される。
ポリオール液剤には、形成されるポリウレタンフォームに難燃性を付与するために、固形難燃剤などのフィラーを含有させることが知られている。例えば特許文献1では、ポリオール、触媒、発泡剤、整泡剤、および難燃剤を含有し、ポリオール100重量部に対する前記触媒の量が10重量部~56重量部である、吹き付け塗装用のポリオール組成物(ポリオール液剤)に関する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した、吹き付け塗装用のポリオール液剤は、現場で補修することなどを目的にして、ポリイソシアネート液剤と共に建具などの構造体表面に吹き付けることで、ポリウレタンフォームを形成する目的で使用される。そのため、吹付後の液だれなどを防止し施工性を向上させる観点から、ポリオールとポリイソシアネートとの反応性が高いことが求められる。
これに対して、パネルやフラットデッキなどの構造体の断熱性や難燃性を向上させる観点から、構造体の空洞部にポリウレタンフォームを形成させる方法も知られている。この場合、ポリオール液剤をポリイソシアネート液剤と共に、構造体の空洞部に充填する必要があるが、例えば上記した吹き付け塗装用のポリオール液剤を用いた場合などは、充填後すぐに充填口近傍でフォームが形成され、空洞部の端部まで充填できない場合があった。また、ある程度充填が出来ても形成されるポリウレタンフォームの密度が空洞の充填口近傍と空洞の端部とで、大きく異なるなど、場所による密度の高低が生じて、品質のバラつきが生じる問題があった。特に、難燃性を向上させることなどを目的としてポリオール液剤にフィラーを含有させた場合においてこのような問題が顕著に生じていた。
また、フォームの形成速度を遅くして、構造体の空洞部への充填性を向上させた場合には、発泡し硬化する前に両液剤が分離したり、あるいはウレタン化反応、三量化反応が進行し難くなり、形成されるポリウレタンフォームの難燃性が低下するなど、ポリウレタンフォームの品質低下の問題が生じていた。
【0005】
そこで、本発明は、構造体の空洞部に充填する際の充填性に優れることで、場所により密度のバラつきの少ないポリウレタンフォームを形成でき、かつポリオールとポリイソシアネートとの反応が十分に進行した品質に優れるポリウレタンフォームを得られる充填用ポリオール液剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、ポリオール、触媒、及びフィラーを含有し、前記触媒の含有量が一定範囲である充填用ポリオール液剤により上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、以下の[1]~[12]である。
[1]ポリオール、触媒、及びフィラーを含有し、前記触媒の含有量が0.3~5質量%である充填用ポリオール液剤。
[2]さらに発泡剤を含有する、上記[1]に記載の充填用ポリオール液剤。
[3]前記ポリオールが、ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールから選択される少なくとも1種を含む、上記[1]又は[2]に記載の充填用ポリオール液剤。
[4]前記触媒が、樹脂化触媒及び三量化触媒を含む、上記[1]~[3]のいずれかに記載の充填用ポリオール液剤。
[5]前記フィラーが固形難燃剤を含む、上記[1]~[4]のいずれかに記載の充填用ポリオール液剤。
[6]さらに整泡剤を含有する、上記[1]~[5]のいずれかに記載の充填用ポリオール液剤。
[7]さらに沈降抑制剤を含有する、上記[1]~[6]のいずれかに記載の充填用ポリオール液剤。
[8]前記ポリオール液剤中の発泡剤以外の混合成分の25℃における粘度が、3000mPa・s以上60000mPa・s以下である、上記[1]~[7]のいずれかに記載の充填用ポリオール液剤。
[9]上記[1]~[8]のいずれかに記載のポリオール液剤、及びポリイソシアネート液剤を含む充填用ポリウレタン組成物。
[10]イソシアネートインデックスが200~600である、上記[9]に記載の充填用ポリウレタン組成物。
[11]液温40℃におけるゲルタイムが4~60秒である、上記[9]又は[10]に記載の充填用ポリウレタン組成物。
[12]上記[9]~[11]のいずれかに記載されたポリウレタン組成物から形成されるポリウレタンフォーム。
【発明の効果】
【0007】
本発明のポリオール液剤は、イソシアネート液剤と共に構造体の空洞部に充填する際の充填性に優れ、場所により密度のバラつきの少ないポリウレタンフォームを形成できる。また、本発明のポリオール液剤を用いることで、ポリイソシアネートとの反応が十分に進行した品質に優れるポリウレタンフォームが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[充填用ポリオール液剤]
本発明の充填用ポリオール液剤は、ポリオール、触媒、及びフィラーを含有し、前記触媒の含有量が0.3~5質量%である充填用ポリオール液剤である。ここで充填用とは、現場にて吹付け作業により建具などの構造体表面にポリウレタンフォームを形成する使用態様とは異なり、構造体が有する空洞部に充填することを目的に使用することを意味する。より詳細には、完成品としての構造体内部の空洞部に、注入口を設けるなどして充填したり、あるいは該構造体の製造段階にある未完成構造体が有する空洞部に、製造工程の一部(製造ラインの一部)として充填することを目的に使用することなどを意味する。
構造体が有する空洞部は一定の形状を有しており、空洞部分にポリオール液剤及びポリイソシアネート液剤を含むポリウレタン組成物を充填する際には、該空洞部分の内壁に沿って充填口近傍から、空洞の端部に向かって、ポリオール組成物が充填されていき、発泡及び硬化して、空洞の形状に対応したポリウレタンフォームが形成される。本発明の充填用ポリオール液剤は、イソシアネート液剤と共に構造体の空洞部に充填する際の充填性に優れ、場所により密度のバラつきの少ないポリウレタンフォームを形成でき、得られたポリウレタンフォームは、ウレタン化反応及び三量化反応が十分に進行した品質に優れるポリウレタンフォームである。
【0009】
[触媒]
本発明の充填用ポリオール液剤(以下単にポリオール液剤ともいう)は、触媒を含有し、該触媒の含有量が0.3~5質量%である。触媒の含有量が0.3質量%未満であると、ポリオールとポリイソシアネートとの反応が不十分となり、優れた難燃性を備えるポリウレタンフォーム得難くなる。また、触媒の含有量が5質量%を超えると、ポリオールとポリイソシアネートとの反応性が高くなりすぎて、ポリウレタン組成物を構造体の空洞部に充填する際に、充填口近傍にポリウレタンフォームが短時間で形成されることにより、構造体の空洞部分全体に組成物を充填し難くなる。さらに形成されたポリウレタンフォームの密度が場所により大きく異なるため、物性が不均一となってしまう。
場所により密度のバラつきの少ないポリウレタンフォームを形成でき、かつ反応が十分に進行した品質に優れるポリウレタンフォームを得る観点から、触媒の含有量は好ましくは0.4~3質量%であり、より好ましくは0.6~2質量%である。
上記した触媒量は、ポリオール液剤全量を基準にした量である。なお、触媒は溶媒に溶解させて製品として販売されていることが多いが、本発明の触媒量は触媒を溶解させている溶媒の量は含まず、溶媒に溶解されている触媒自体(すなわち、溶質)の量を意味する。
【0010】
また、後述するように、ポリオール液剤とポリイソシアネート液剤とを混合し、ポリウレタン組成物とするが、該ポリウレタン組成物中の触媒量(ポリウレタン組成物全量基準の触媒量)は、好ましくは0.2~3質量%であり、より好ましくは0.3~1.5質量%であり、さらに好ましくは0.4~1質量%である。触媒量がこれら上限値以下であると、ポリウレタン組成物を構造体の空洞部に充填しやすいことにより、密度差の少ないポリウレタンフォームが得られる。触媒量がこれら下限値以上であると、反応が十分に進行した品質に優れるポリウレタンフォームを得やすくなる。
【0011】
上記触媒としては、例えば、樹脂化触媒、三量化触媒などが挙げられる。ウレタン化反応及び三量化反応を適切に進行させ、難燃性に優れるポリウレタンフォームを得る観点から、触媒は、好ましくは樹脂化触媒及び三量化触媒の両方を含むことが好ましい。
【0012】
<樹脂化触媒>
樹脂化触媒は、ポリオールとポリイソシアネートとの反応を促進させる触媒である。樹脂化触媒としては、イミダゾール化合物、ピペラジン化合物などのアミン系触媒、金属系触媒などが挙げられる。
イミダゾール化合物としては、イミダゾール環の1位の第2級アミンをアルキル基、アルケニル基などで置換した3級アミンが挙げられる。具体的には、N-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-エチル-2-メチルイミダゾール、1-メチル-2-エチルイミダゾール、1,2-ジエチルイミダゾール、及び1-イソブチル-2-メチルイミダゾールなどが挙げられる。また、イミダゾール環中の第2級アミンをシアノエチル基で置換したイミダゾール化合物なども挙げられる。
また、ピペラジン化合物として、N-メチル-N’,N’-ジメチルアミノエチルピペラジン、トリメチルアミノエチルピペラジンなどの3級アミンが挙げられる。
アミン系触媒としては、イミダゾール化合物、ピペラジン化合物以外にも、ペンタメチルジエチレントリアミン、トリエチルアミン、N-メチルモルホリンビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’-トリメチルアミノエチル-エタノールアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、ジアザビシクロウンデセン、トリエチレンジアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、トリプロピルアミン等の各種の3級アミンなどが挙げられる。
【0013】
金属系触媒としては、鉛、錫、ビスマス、銅、亜鉛、コバルト、ニッケル等の金属塩が挙げられ、好ましくは鉛、錫、ビスマス、銅、亜鉛、コバルト、ニッケル等の有機酸金属塩である。より好ましくはジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫バーサテート等の有機酸錫塩、ビスマストリオクテート、ビスマストリス(2-エチルへキサノエート)等の有機酸ビスマス塩などが挙げられ、中でも有機酸ビスマス塩が好ましい。
樹脂化触媒は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。樹脂化触媒としては、アミン系触媒及び金属系触媒から選択される少なくとも1種が好ましく、アミン系触媒及び金属系触媒を併用することが好ましい。
【0014】
ポリオール液剤における樹脂化触媒の含有量は、好ましくは0.1~4質量%であり、より好ましくは0.3~3質量%である。樹脂化触媒の含有量がこのような範囲であると、ポリオールとイソシアネートとの反応が適切に進行しやすくなる。また、樹脂化触媒と三量化触媒を併用する場合において、樹脂化触媒の含有量を上記範囲としつつ、三量化触媒の含有量を後述する所定の範囲に調整することで、ポリウレタン組成物の構造物の空洞部への充填性が向上し、かつ形成されるポリウレタンフォームの難燃性などの物性も良好となる。
【0015】
<三量化触媒>
三量化触媒は、ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基を反応させて三量化させ、イソシアヌレート環の生成を促進する触媒である。三量化触媒としては、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4-ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジアルキルアミノアルキル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン等の窒素含有芳香族化合物、酢酸カリウム、2-エチルヘキサン酸カリウム、オクチル酸カリウム等のカルボン酸アルカリ金属塩、トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、トリフェニルアンモニウム塩等の3級アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラフェニルアンモニウム塩、トリエチルモノメチルアンモニウム塩、カルボン酸4級アンモニウム塩等の4級アンモニウム塩等を使用できる。上記カルボン酸アンモニウム塩におけるカルボン酸の好適な具体例としては、2-エチルヘキサン酸、2,2-ジメチルプロパン酸、酢酸、及びギ酸からなる群から選択される少なくとも1種である。三量化触媒は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよいが2種以上を併用することが好ましい。
三量化触媒としては、カルボン酸アルカリ金属塩及びカルボン酸4級アンモニウム塩からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、カルボン酸金属塩とカルボン酸4級アンモニウム塩とを併用することが好ましい。
【0016】
ポリオール液剤における三量化触媒の含有量は、好ましくは0.05~2質量%であり、より好ましくは0.1~1.5質量%である。三量化触媒の含有量がこのような範囲であると、三量化反応が適切に進行させることができる。また、上記した樹脂化触媒と三量化触媒を併用する場合において、樹脂化触媒の含有量及び三量化触媒の含有量を、それぞれ上記した所定の範囲に調整することで、ポリウレタン組成物の構造物の空洞部への充填性が向上し、かつ形成されるポリウレタンフォームの難燃性などの物性も良好となる。
【0017】
[ポリオール]
ポリオール液剤に含まれるポリオールとしては、例えば、ポリラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール、及びポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0018】
ポリラクトンポリオールとしては、例えば、ポリプロピオラクトングリコール、ポリカプロラクトングリコール、及びポリバレロラクトングリコール等が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、及びノナンジオール等の水酸基含有化合物と、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等との脱アルコール反応により得られるポリオール等が挙げられる。
【0019】
芳香族ポリオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、及びクレゾールノボラック等が挙げられる。
脂環族ポリオールとしては、例えば、シクロヘキサンジオール、メチルシクロヘキサンジオール、イソホロンジオール、ジシクロへキシルメタンジオール、及びジメチルジシクロへキシルメタンジオール等が挙げられる。
【0020】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、多塩基酸と多価アルコールとを脱水縮合して得られる重合体、及びヒドロキシカルボン酸と前記多価アルコール等との縮合物が挙げられる。
多塩基酸としては、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イソフタル酸(m-フタル酸)、テレフタル酸(p-フタル酸)、及びコハク酸等が挙げられる。また、多価アルコールとしては、例えば、ビスフェノールA、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6-ヘキサングリコール、及びネオペンチルグリコール等が挙げられる。
また、ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、ひまし油、ひまし油とエチレングリコールの反応生成物等が挙げられる。
【0021】
ポリマーポリオールとしては、例えば、芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、脂肪族ポリオール、及びポリエステルポリオール等に対し、アクリロニトリル、スチレン、メチルアクリレート、及びメタクリレート等のエチレン性不飽和化合物をグラフト重合させた重合体、ポリブタジエンポリオール、又はこれらの水素添加物等が挙げられる。
【0022】
ポリエーテルポリオ-ルとしては、例えば、活性水素を2個以上有する低分子量活性水素化合物等の少なくとも1種の存在下に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等のアルキレンオキサイドの少なくとも1種を開環重合させて得られる重合体が挙げられる。活性水素を2個以上有する低分子量活性水素化合物としては、例えば、ビスフェノールA、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオ-ル等のジオール類、グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオール類、エチレンジアミン、及びブチレンジアミン等のアミン類等が挙げられる。
【0023】
本発明に使用するポリオールとしては、ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールから選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、ポリエステルポリオールを少なくとも含むことが好ましい。中でも、イソフタル酸(m-フタル酸)、テレフタル酸(p-フタル酸)等の芳香族環を有する多塩基酸と、ビスフェノールA、エチレングリコール、及び1,2-プロピレングリコール等の2価アルコールとを脱水縮合して得られるポリエステルポリオールを含むことがより好ましい。
【0024】
ポリオールの水酸基価は、20~300mgKOH/gが好ましく、30~275mgKOH/gがより好ましく、50~250mgKOH/gが更に好ましい。ポリオールの水酸基価が前記上限値以下であるとポリオール液剤の粘度が過度に大きくならず、取り扱い性等の観点で好ましい。いっぽう、ポリオールの水酸基価が前記下限値以上であるとポリウレタンフォームの架橋密度が上がることにより強度が高くなる。
なお、ポリオールの水酸基価は、JIS K 1557-1:2007に従って測定可能である。
【0025】
[フィラー]
ポリオール液剤は、フィラーを含有する。フィラーを含有させることにより、フィラーの種類に応じた機能をポリウレタンフォームに付与することができる。フィラーは、難燃剤を含むことが好ましい。フィラーとして難燃剤を使用することで、ポリウレタンフォームに高い難燃性能を付与できる。
フィラーとして用いられる難燃剤は固形難燃剤である。本発明では、固形難燃剤を使用することで、難燃性をより効果的に高めることができる。なお、固形難燃剤とは、常温(23℃)、常圧(1気圧)において、固体となる難燃剤である。
【0026】
固形難燃剤は、難燃性をより効果的に高める観点から、赤燐系難燃剤、ホウ素含有難燃剤、臭素含有難燃剤、リン酸塩含有難燃剤、塩素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、金属水酸化物、及び針状フィラーからなる群から選ばれる少なくとも1つが好ましい。
【0027】
<赤燐系難燃剤>
赤燐系難燃剤は、赤燐単体からなるものでもよいが、赤燐に樹脂、金属水酸化物、金属酸化物などを被膜したものでもよいし、赤燐に樹脂、金属水酸化物、金属酸化物などと混合したものでもよい。赤燐を被膜し、または赤燐と混合する樹脂は、特に限定されないがフェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、及びシリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。被膜ないし混合する化合物としては、難燃性の観点から、金属水酸化物が好ましい。金属水酸化物は、後述するものを適宜選択して使用するとよい。
【0028】
赤燐系難燃剤の配合量は、ポリオール100質量部に対して、好ましくは3~60質量部、より好ましくは10~50質量部であり、更に好ましくは20~45質量部である。赤燐系難燃剤の配合量をこれら下限値以上とすることで、赤燐系難燃剤を含有させた効果を発揮しやすくなる。一方で、上限値以下とすることで、赤燐系難燃剤によって発泡が阻害されたりすることがない。
【0029】
<ホウ素含有難燃剤>
ホウ素含有難燃剤としては、ホウ砂、酸化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸塩等が挙げられる。酸化ホウ素としては、例えば、三酸化二ホウ素、三酸化ホウ素、二酸化二ホウ素、三酸化四ホウ素、五酸化四ホウ素等が挙げられる。
ホウ酸塩としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表第4族、第12族、第13族の元素およびアンモニウムのホウ酸塩等が挙げられる。具体的には、ホウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸セシウム等のホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸バリウム等のホウ酸アルカリ土類金属塩、ホウ酸ジルコニウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸アンモニウム等が挙げられる。
ホウ素含有難燃剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ホウ素含有難燃剤は、ホウ酸塩であることが好ましく、ホウ酸亜鉛がより好ましい。
【0030】
ホウ素含有難燃剤の配合量は、特に限定されないが、ポリオール100質量部に対して、好ましくは3~45質量部、より好ましくは5~40質量部、更に好ましくは10~25質量部である。ホウ素含有難燃剤の配合量をこれら下限値以上とすることで、ホウ素含有難燃剤を含有させた効果を発揮しやすくなり、難燃性が高められる。一方で、上限値以下とすることでホウ素含有難燃剤によって発泡が阻害されたりすることがない。
【0031】
<臭素含有難燃剤>
臭素含有難燃剤としては、分子構造中に臭素を含有し、常温、常圧で固体となる化合物であれば特に限定されないが、例えば、臭素化芳香環含有芳香族化合物等が挙げられる。
臭素化芳香環含有芳香族化合物としては、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、ヘキサブロモビフェニル、デカブロモビフェニル、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモジフェニルエーテル、ビス(ペンタブロモフェノキシ)エタン、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)、テトラブロモビスフェノールA等のモノマー系有機臭素化合物が挙げられる。
【0032】
また、臭素化芳香環含有芳香族化合物は、臭素化合物ポリマーであってもよい。具体的には、臭素化ビスフェノールAを原料として製造されたポリカーボネートオリゴマー、このポリカーボネートオリゴマーとビスフェノールAとの共重合物等の臭素化ポリカーボネート、臭素化ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジエポキシ化合物などが挙げられる。さらには、臭素化フェノール類とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるモノエポキシ化合物等の臭素化エポキシ化合物、ポリ(臭素化ベンジルアクリレート)、臭素化ポリフェニレンエーテルと臭素化ビスフェノールAと塩化シアヌールとの臭素化フェノールの縮合物、臭素化(ポリスチレン)、ポリ(臭素化スチレン)、架橋臭素化ポリスチレン等の臭素化ポリスチレン、架橋または非架橋臭素化ポリ(-メチルスチレン)等が挙げられる。
また、ヘキサブロモシクロドデカンなどの臭素化芳香環含有芳香族化合物以外の化合物であってもよい。
これら臭素含有難燃剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、上記した中では、臭素化芳香環含有芳香族化合物が好ましく、中でも、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)などのモノマー系有機臭素化合物が好ましい。
【0033】
臭素含有難燃剤の配合量は、ポリオール100質量部に対して、好ましくは3~60質量部、より好ましくは10~50質量部であり、更に好ましくは20~45質量部である。臭素含有難燃剤の配合量をこれら下限値以上とすることで、臭素含有難燃剤を含有させた効果を発揮しやすくなる。いっぽう、上限値以下とすることで、臭素含有難燃剤によって発泡が阻害されたりすることがない。
【0034】
<リン酸塩含有難燃剤>
リン酸塩含有難燃剤としては、例えば、各種リン酸と周期表IA族~IVB族の金属、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミン、環中に窒素を含む複素環式化合物から選ばれる少なくとも一種の金属または化合物との塩からなるリン酸塩が挙げられる。
リン酸としては、特に限定されないが、モノリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸等が挙げられる。
周期表IA族~IVB族の金属として、リチウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、鉄(II)、鉄(III)、アルミニウム等が挙げられる。
前記脂肪族アミンとして、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ピペラジン等が挙げられる。芳香族アミンとしては、アニリン、o-トリイジン、2,4,6-トリメチルアニリン、アニシジン、3-(トリフルオロメチル)アニリン等が挙げられる。環中に窒素を含む複素環式化合物として、ピリジン、トリアジン、メラミン等が挙げられる。
【0035】
リン酸塩含有難燃剤の具体例としては、例えば、第三リン酸アルミニウム等のモノリン酸塩、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩等が挙げられる。ここで、ポリリン酸塩としては、特に限定されないが、例えば、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸ピペラジン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウムアミド、ポリリン酸アルミニウム等が挙げられる。
リン酸塩含有難燃剤は、上記したものから1種もしくは2種以上を使用することができる。
【0036】
リン酸塩含有難燃剤の配合量は、特に限定されないが、ポリオール100質量部に対して、3~40質量部、より好ましくは5~35質量部、更に好ましくは10~30質量部である。リン酸塩含有難燃剤の配合量をこれら下限値以上とすることで、リン酸塩含有難燃剤を含有させた効果を発揮しやすくなる。いっぽう、上限値以下とすることでリン酸塩含有難燃剤によって発泡が阻害されたりすることがない。
【0037】
<塩素含有難燃剤>
塩素含有難燃剤は、難燃性樹脂組成物に通常用いられるものが挙げられ、例えば、ポリ塩化ナフタレン、クロレンド酸、「デクロランプラス」の商品名で販売されるドデカクロロドデカヒドロジメタノジベンゾシクロオクテンなどが挙げられる。
塩素含有難燃剤の配合量は、特に限定されないが、ポリオール100質量部に対して、好ましくは3~40質量部、より好ましくは5~35質量部、更に好ましくは10~30質量部である。塩素含有難燃剤の配合量をこれら下限値以上とすることで、塩素含有難燃剤を含有させた効果を発揮しやすくなる。一方で、上限値以下とすることで塩素含有難燃剤によって発泡が阻害されたりすることがない。
【0038】
<アンチモン含有難燃剤>
アンチモン含有難燃剤としては、例えば、酸化アンチモン、アンチモン酸塩、ピロアンチモン酸塩等が挙げられる。酸化アンチモンとしては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等が挙げられる。アンチモン酸塩としては、例えば、アンチモン酸ナトリウム、アンチモン酸カリウム等が挙げられる。ピロアンチモン酸塩としては、例えば、ピロアンチモン酸ナトリウム、ピロアンチモン酸カリウム等が挙げられる。
アンチモン含有難燃剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明に使用する好ましいアンチモン含有難燃剤は三酸化アンチモンである。
【0039】
アンチモン含有難燃剤の配合量は、特に限定されないが、ポリオール100質量部に対して、好ましくは1~40質量部、より好ましくは2~35質量部、更に好ましくは3~30質量部である。アンチモン含有難燃剤の配合量をこれら下限値以上とすることで、アンチモン含有難燃剤を含有させた効果を発揮しやすくなり、難燃性が高められる。一方で、上限値以下とすることでアンチモン含有難燃剤によって発泡が阻害されたりすることがない。
【0040】
<金属水酸化物>
本発明に使用する金属水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、水酸化ニッケル、水酸化ジルコニウム、水酸化チタン、水酸化亜鉛、水酸化銅、水酸化バナジウム、水酸化スズ等が挙げられる。金属水酸化物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
金属水酸化物の配合量は、ポリオール100質量部に対して、例えば、0.1~50質量部、好ましくは0.2~30質量部、より好ましくは0.3~20質量部、更に好ましくは0.5~15質量部である。金属水酸化物の配合量をこれら下限値以上とすることで、金属水酸化物を含有させた効果を発揮しやすくなり、難燃性が高められる。一方で、上限値以下とすることで金属水酸化物によって発泡が阻害されたりすることがない。
【0042】
<針状フィラー>
針状フィラーとしては、例えば、チタン酸カリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、マグネシウム含有ウィスカー、珪素含有ウィスカー、ウォラストナイト、セピオライト、ゾノライト、エレスタダイト、ベーマイト、棒状ヒドロキシアパタイト、ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、スラグ繊維、石膏繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、硼素繊維、ステンレス繊維等が挙げられる。
これらの針状フィラーは、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0043】
本発明に使用する針状フィラーのアスペクト比(長さ/直径)の範囲は、5~50の範囲であることが好ましく、10~40の範囲であればより好ましい。なお、当該アスペクト比は、走査型電子顕微鏡で針状フィラーを観察してその長さと幅を測定して求めることができる。
【0044】
針状フィラーの配合量は、ポリオール100質量部に対して、例えば、10~100質量部、好ましくは20~90質量部、より好ましくは30~80質量部、さらに好ましくは40~70質量部である。針状フィラーをこれら下限値以上とすることで、ポリウレタンフォームの燃焼後の形状が保持されやすくなる。一方、これら上限値以下とすることで針状フィラーによって発泡が阻害されにくくなる。
【0045】
固形難燃剤としては、上記したものの中では、赤燐系難燃剤、ホウ素含有難燃剤、臭素含有難燃剤などが好ましい。
また、固形難燃剤は、複数の固形難燃剤を併用することも好ましい。この場合、赤燐系難燃剤、ホウ素含有難燃剤及び臭素含有難燃剤を併用することが好ましい。これらを併用することにより難燃性をより一層向上しやすくなる。
【0046】
<固形難燃剤の配合量>
固形難燃剤の配合量は、特に限定されないが、ポリオール100質量部に対して、例えば10~200質量部であり、好ましくは20~150質量部であり、より好ましくは40~120質量部である。固形難燃剤の配合量をこれら下限値以上とすることで、ポリウレタンフォームに適切な難燃性を付与できる。固形難燃剤の配合量をこれら上限値以下とすることで、ポリウレタン組成物を構造体の内部に充填しやすくなり、場所によって密度差の少ないポリウレタンフォームを得やすくなる。
【0047】
フィラーとしては、上記した難燃剤以外の無機充填剤が配合されてもよい。無機充填剤として、アルミナ、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、フェライト類、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーソナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム、タルク、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、イモゴライト、セリサイト、ガラスビーズ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、各種金属粉、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、硫化モリブデン、炭化ケイ素、各種磁性粉、フライアッシュ等を適宜使用できる。無機充填剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0048】
ポリオール液剤におけるフィラーの含有量は、ポリオール100質量部に対して、例えば10~300質量部であり、好ましくは20~150質量部であり、より好ましくは40~120質量部である。フィラーの配合量をこれら下限値以上とすることで、ポリウレタンフォームにフィラーの種類に応じた機能を付与しやすくなる。フィラーの配合量をこれら上限値以下とすることで、ポリウレタン組成物を構造体の内部に充填しやすくなり、場所によって密度差の少ないポリウレタンフォームを得やすくなる。
【0049】
[液状難燃剤]
ポリオール液剤は、液状難燃剤を含有してもよい。液状難燃剤とは、常温(23℃)、常圧(1気圧)にて液体となる難燃剤である。液状難燃剤の具体例としては、リン酸エステルが挙げられる。液状難燃剤は、固体難燃剤とは異なり保管中に沈殿物が生じ難く、取り扱い性に優れる。
【0050】
リン酸エステルとしては、モノリン酸エステル、縮合リン酸エステル等を使用することが好ましい。モノリン酸エステルとしては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2-エチルヘキシル)ホスフェートなどのトリアルキルホスフェート、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェートなどのハロゲン含有リン酸エステル、トリブトキシエチルホスフェートなどのトリアルコキシホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2-エチルヘキシル)ホスフェートなどの芳香環含有リン酸エステル、モノイソデシルホスフェート、ジイソデシルホスフェートなどの酸性リン酸エステル等が挙げられる。
【0051】
縮合リン酸エステルとしては、例えば、トリアルキルポリホスフェート、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート、ビスフェノールAポリフェニルホスフェートなどの芳香族縮合リン酸エステルが挙げられる。
縮合リン酸エステルの市販品としては、例えば、大八化学工業株式会社製の「CR-733S」、「CR-741」、「CR747」、ADEKA社製の「アデカスタブPFR」、「FP-600」等が挙げられる。
【0052】
液状難燃剤は、上記したものの中から1種単独で使用してもよいし、2種以を併用してもよい。これらの中でも、ポリウレタンフォームの製造を容易にする観点、及びポリウレタンフォームの難燃性を向上させる観点から、モノリン酸エステルが好ましく、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェートがより好ましい。
【0053】
液状難燃剤を含有する場合、その配合量は、ポリオール100質量部に対して、5~80質量部が好ましく、10~70質量部がより好ましく、20~60質量部が更に好ましい。
【0054】
[沈降抑制剤]
ポリオール液剤は、沈降抑制剤を含有してもよい。沈降抑制剤は、常温又は低温での長期間の保管中に、ポリオール液剤に分散されたフィラーの沈殿を抑制し、液剤を手で振るだけでフィラーを均一に分散させやすくする。沈降抑制剤は、一般的に常温、常圧で固体となるものであり、通常、液剤において固形分(不溶分)となる。
【0055】
沈降抑制剤としては、特に限定はない。沈降抑制剤の具体例は、粉状シリカ、有機クレー、カーボンブラック、水添ひまし油ワックス、脂肪酸アミドワックス等である。これらの1種又は2種以上が使用される。
粉状シリカとしては、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、シリカゲルなどを使用できる。これらの中では、ヒュームドシリカが好ましく、特に疎水性ヒュームドシリカが好ましい。ヒュームドシリカとしては、日本アエロジル社のアエロジル(登録商標)などを使用できる。
有機クレーとしては、有機物親和性フィロケイ酸塩などを使用できる。
カーボンブラックとしては、ファーネス法、チャンネル法、サーマル法等の方法で製造されたものを使用できる。カーボンブラックは、市販品を適宜選択して使用すればよい。
水添ひまし油ワックス、脂肪酸アミドワックス等は、液体中で膨潤ゲル構造を形成するものである。
なお、これらは、一般的に、チクソトロピック付与剤、増粘剤、沈降防止剤、たれ防止剤等の名称により市販されており、市販品を適宜選択して使用できる。
【0056】
好ましい沈降抑制剤は増粘作用を有する沈降抑制剤であり、中でも沈降抑制剤を構成する元素としてSiを含むものがより好ましい。増粘作用を有する沈降抑制剤の具体例は、ヒュームドシリカ、有機物親和性フィロケイ酸塩であり、ヒュームドシリカがより好ましい。
【0057】
沈降抑制剤を含有する場合、その含有量は、特に限定されないが、ポリオール100質量部に対して、例えば0.1~20質量部、好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは1~5質量部である。沈降抑制剤の含有量を上記下限値以上とすることで、ポリオール液剤を増粘し、フィラーの沈降を抑制して、その分散性を良好にできる。また、沈降抑制剤の含有量を上記上限値以下とすることで、液剤の粘度が過度に大きくなることによる取扱い性の低下が防止される。
【0058】
[発泡剤]
本発明のポリオール液剤は、発泡剤を含有することが好ましい。発泡剤により、ポリオール液剤とポリイソシアネート液剤を混合し発泡させて、ポリウレタンフォームを形成させることができる。なお、発泡剤は、ポリオール液剤及び後述するポリイソシアネート液剤の少なくとも一方に含有されるが、ポリオール液剤に含有されることが好ましい。
発泡剤としては特に限定されないが、例えば、炭化水素化合物、塩素化脂肪族炭化水素化合物、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン化合物、ハイドロフルオロオレフィンなどの有機系発泡剤、窒素ガス、酸素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガスなどの無機系発泡剤が挙げられ、中でも有機系発泡剤を用いることが好ましい。
【0059】
上記炭化水素化合物としては、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等が挙げられる。
上記塩素化脂肪族炭化水素化合物としては、ジクロロエタン、プロピルクロリド、イソプロピルクロリド、ブチルクロリド、イソブチルクロリド、ペンチルクロリド、イソペンチルクロリド等が挙げられる。
上記ハイドロフルオロカーボンとしては、CHF3、CH2F2、CH3F等が挙げられる。
【0060】
上記ハイドロクロロフルオロカーボン化合物としては、ジクロロモノフルオロエタン、(例えば、HCFC141b(1,1-ジクロロ-1-フルオロエタン)、HCFC22(クロロジフルオロメタン)、HCFC142b(1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン))、HFC-245fa(1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン)、HFC-365mfc(1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン)等が挙げられる。
【0061】
上記ハイドロフルオロオレフィンとしては、例えば、炭素数が3~6であるフルオロアルケン等を挙げることができる。また、ハイドロフルオロオレフィンは塩素原子を有するハイドロクロロフルオロオレフィンであってもよく、したがって、炭素数が3~6であるクロロフルオロアルケン等であってもよい。ハイドロフルオロオレフィンは、炭素数が3又は4のものが好ましい。
より具体的には、トリフルオロプロペン、HFO-1234等のテトラフルオロプロペン、HFO-1225等のペンタフルオロプロペン、HFO-1233等のクロロトリフルオロプロペン、クロロジフルオロプロペン、クロロトリフルオロプロペン、及びクロロテトラフルオロプロペン等が挙げられる。より具体的には、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)、1,1,3,3-テトラフルオロプロペン、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye)、1,1,1-トリフルオロプロペン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225zc)、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロブト-2-エン、1,1,2,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225yc)、1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225yez)、(E)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1233zd(E))、(Z)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1233zd(Z))(Z)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブト-2-エン(HFO-1336mzz(Z))、(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブト-2-エン(HFO-1336mzz(E))、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、(E)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd(E))、(Z)-2,3,3,3-テトラフルオロ-1-クロロプロペン(HCFO-1224yd(Z))等が挙げられる。
【0062】
良好なフォーム形成や環境負荷を低減させるなどの観点から、発泡剤としてハイドロフルオロオレフィンを使用することが好ましい。
【0063】
発泡剤の含有量は、ポリオール100質量部に対して、5~80質量部が好ましく、10~70質量部がより好ましく、20~60質量部が更に好ましい。前記発泡剤の含有量が前記下限値以上であると発泡が促進され、得られるポリウレタンフォームの密度を低減できる。一方、前記発泡剤の含有量が前記上限値以下であると発泡が過度に進行することを抑制できる。
【0064】
なお、発泡剤は、触媒などと共存させることによる劣化を防ぐ観点から、使用直前にポリオール液剤に配合することが好ましい。すなわち、発泡剤以外の混合成分からなるポリオール液剤を調製して保管し、使用直前に該混合成分からなるポリオール液剤に、発泡剤を加えて使用することが好ましい。なお、混合成分とは、ポリオール、触媒、フィラーを必須として含み、これ以外にも必要に応じて整泡剤、沈降抑制剤などの各種添加剤を含有させてもよい。
ポリオール液剤中の発泡剤以外の混合成分、すなわち発泡剤を配合する前のポリオール液剤の25℃における粘度は、3000mPa・s以上60000mPa・s以下であることが好ましい。粘度を3000mPa・s以上とすることにより、混合成分からなるポリオール液剤に含まれるフィラーが沈殿して、ハードケーキングを形成することを抑制ができる。粘度を60000mPa・s以下とすることにより、発泡剤を配合したときのポリオール液剤の粘度を後述する所定範囲に調整しやすくなり、ポリイソシアネート液剤と効率的に混合させることが可能となる。ポリオール液剤中の発泡剤以外の混合成分の粘度は、より好ましくは3500mPa・s以上50000mPa・s以下であり、さらに好ましくは4000mPa・s以上40000mPa・s以下である。
【0065】
発泡剤を配合した後、すなわち発泡剤を含むポリオール液剤の25℃における粘度は、好ましくは2500mPa・s以下であり、より好ましくは2000mPa・s以下であり、さらに好ましくは1500mPa・s以下である。
なお、ポリオール液剤中の発泡剤以外の混合成分の粘度及び発泡剤を含むポリオール液剤の粘度は、実施例に記載の方法で測定される。
【0066】
[水]
ポリオール液剤は、水を含有してもよい。水を含有することで、ポリウレタンフォームを形成するときの発泡性が良好となる。
水の配合量は、ポリオール100質量部に対して、例えば0.1~10質量部、好ましくは0.2~5質量部、より好ましくは0.3~3質量部である。水の配合量をこれら範囲内とすることで、ポリウレタン組成物を適切に発泡しやすくなる。
【0067】
[整泡剤]
ポリオール液剤は、整泡剤を含有すること好ましい。整泡剤は、ポリオール液剤とポリイソシアネート液剤から得られるポリウレタン組成物の発泡性を向上させる。
整泡剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレン系整泡剤、オルガノポリシロキサン等のシリコーン系整泡剤等の界面活性剤等が挙げられる。これらの整泡剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
整泡剤の配合量は、ポリオール100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましく、0.5~8質量部がより好ましく、1~5質量部が更に好ましい。整泡剤の配合量がこれら下限値以上であるとポリウレタン組成物を発泡させやすくなり、均質なポリウレタンフォームを得やすくなる。また、整泡剤の配合量がこれら上限値以下であると製造コストと得られる効果のバランスが良好になる。
【0068】
(その他成分)
ポリオール液剤は、本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤、熱安定剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、粘着付与樹脂等の添加剤、ポリブテン、石油樹脂等の粘着付与剤等から選択される1種以上を含むことができる。
【0069】
[充填用ポリウレタン組成物]
本発明の充填用ポリウレタン組成物(以下、単にポリウレタン組成物ともいう)は、上記したポリオール液剤及びポリイソシアネート液剤を含む。本発明のポリウレタンフォームは、ポリウレタン組成物から形成される。具体的には、ポリオール液剤とポリイソシアネート液剤を混合したポリウレタン組成物を、反応及び発泡させた反応生成物である。
本発明で使用するポリウレタン組成物は、一般的に2液型であり、別々に保管した本発明のポリオール液剤と、ポリイソシアネート液剤とを混合して、反応及び発泡させてポリウレタンフォームを得るとよい。なお、ポリイソシアネート液剤には、上記したフィラー、発泡剤、触媒、その他成分などのポリイソシアネート以外の成分が必要に応じて配合されていてもよい。
【0070】
(ポリイソシアネート)
ポリイソシアネート液剤は、ポリイソシアネートを含む。ポリイソシアネートとしては、ポリウレタンフォームの形成に使用される公知のポリイソシアネートを用いることができ、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、及び脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、及びポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等が挙げられる。
【0071】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、及びジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0072】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0073】
これらの中でも、使いやすさの観点、及び入手容易性の観点から、芳香族ポリイソシアネートが好ましく、ジフェニルメタンジイソシアネートがより好ましい。ポリイソシアネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0074】
(イソシアネートインデックス)
本発明のポリウレタン組成物のイソシアネートインデックスに特に制限はないが、200~600が好ましく、350~550がより好ましい。。イソシアネートインデックスが前記下限値以上であると、ポリオールに対するポリイソシアネートの量が過剰になりポリイソシアネートの三量化体によるイソシアヌレート結合が生成し易くなる結果、ポリウレタンフォームの難燃性が向上する。さらに、上記下限値以上とすると、イソシアヌレート結合を有するポリウレタンフォーム、すなわち難燃性と断熱性とを高い水準で兼ね備えるポリウレタンフォームを製造しやすい。また、イソシアネートインデックスが上記上限値以下であると、得られるポリウレタンフォームの難燃性と製造コストとのバランスが良好になる。
【0075】
なお、イソシアネートインデックスは、以下の方法により計算することができる。
イソシアネートインデックス
=ポリイソシアネートの当量数÷(ポリオールの当量数+水の当量数)×100
ここで、各当量数は以下のとおり計算することができる。
・ポリイソシアネートの当量数=ポリイソシアネートの使用量(g)×NCO含有量(質量%)/NCOの分子量(モル)×100
・ポリオールの当量数=OHV×ポリオールの使用量(g)÷KOHの分子量(ミリモル)
OHVはポリオールの水酸基価(mgKOH/g)である。
・水の当量数=水の使用量(g)/水の分子量(モル)×水のOH基の数
上記各式において、NCOの分子量は42(モル)、KOHの分子量は56100(ミリモル)、水の分子量は18(モル)、水のOH基の数は2とする。
【0076】
また、ポリオール液剤とポリイソシアネート液剤を混合する際には、両者の体積比(ポリオール液剤/ポリイソシアネート液剤)を例えば1/1.4~1.4/1、好ましくは1/1.2~1.2/1の範囲とすればよい。
【0077】
(ゲルタイム)
本発明のポリウレタン組成物のゲルタイムは、4~60秒であることが好ましく、10~45秒であることがより好ましい。ゲルタイムがこれら上限値以下であれば、ウレタン化反応が適切に進行し、ポリウレタンフォームとしての性能が良好になる。ゲルタイムが下限値以上であると、ポリウレタン組成物を構造体の空洞部に充填する際に、充填不良や密度のバラつきが生じ難くなる。ここで、ゲルタイムはポリウレタン組成物の液温を40℃に調整したときの値である。また、ゲルタイムは、ポリオール液剤とポリイソシアネート液剤を混合し、撹拌開始した時間を測定開始時間(0秒)として、発泡中のフォームに突き刺した棒に、フォームが糸を引くようになるまでの時間(秒)である。例えばスプレーガンを用いたときは、測定開始時間(0秒)とはトリガーを引いた時間を意味する。
【0078】
[ポリオール組成物、ポリウレタン組成物の使用]
本発明の充填用ポリオール液剤、及びこれを含む充填用ポリウレタン組成物は、構造体の空洞部に充填することを目的に使用される。構造体としては、工場などにより一連の工程を経て製造された完成構造体であってもよいし、完成構造体を製造する前の未完成構造体であってもよい。
完成構造体の空洞部へのポリウレタン組成物の充填は、主として完成構造体を構成する部材により周囲を囲まれた空洞部への充填であり、例えば、完成構造体の一部に注入口を設けて、充填される。未完成構造体の空洞部への充填は、完成構造体を形成する前の製造工程の一つとして行う充填であり、少なくとも一部が開放されている空洞部への充填である。具体的には、製造工程において、開放された空洞部を備える未完成構造体を製造し、開放部分から空洞部へポリウレタン組成物を充填して、ポリウレタンフォームを形成させ、その後、開放部分を閉塞する。開放部分の閉塞は、開放部分を接着、溶接するなどして行うことができる。また、開放部分に蓋をするように部材を設けることなどで、閉塞してもよい。
【0079】
完成構造体としては、空洞を有するものであれば特にされず、建築物に用いられる部材であってもよいし、自動車などの乗り物に用いられる部材であってもよい。完成構造体の具体例としては、例えば、板状部材、枠材などが挙げられる。板状部材としては、例えば、パネル、フラットデッキなどが挙げられる。
パネルとしては、空洞を有するものであれば特に制限されず、正面視で長方形、正方形、三角形などあらゆる形状のパネルであってよい。パネルは、その内部全体が空洞であってもよいし、パネル内部に複数部材が備えられ、パネル内部の空洞部の一部が細長の空洞となっていてもよい。
フラットデッキは、例えば、鋼板などの金属板をロール成形などすることで得られる。
フラットデッキは、床又は屋根構造において、例えば上面にコンクリートが打設されるための型枠材として使用される。
フラットデッキは、上面が平坦面とされたフラット部を有し、フラット部の下面に、複
数の補強リブが突設されている。各補強リブは、内部に空洞がある突条であり、長手方向
に沿って延在して配置され、長手方向における両端部が圧潰されて閉塞されている。各補
強リブの空洞は、細長の空洞である。フラットデッキの補強リブの断面形状は、内部に空洞が形成される限り特に限定されず、三角形、四角形などでもよいし、その他の形状でもよい。フラットデッキにおいて、ポリウレタン組成物は、補強リブの空洞に充填され、補強リブにはポリウレタン組成物を注入により充填するための注入孔が設けられる。
【0080】
枠材は、内部に細長の空洞を有し、例えば、窓、扉などの建具における開口部を取り囲む枠体の一部または全部を構成する部材である。例えば、枠体は、一対の側枠部と、上枠部と、下枠部からなるが、枠材は、これら枠部の少なく一部を構成すればよい。
【0081】
未完成構造体とは、例えば上記した板状部材や枠材などの完成構造体の製造段階における構造体であって、一部が開放されている構造体である。未完成構造体の例としては、フラットデッキであれば、鋼板などの金属板に、ロール成型機などにより開口部を有する凹部を複数形成した構造体が挙げられる。該構造体の凹部に開口部からポリウレタン樹脂組成物を充填した後、開口部を溶接などの手段により閉塞することで補強リブを形成させ、フラットデッキを製造することができる。また、未完成構造体の別の例としては、パネルを構成する側面の一部が設けられていないことにより、一部が開放されている構造体などが挙げられ、開放部分からポリウレタン樹脂組成物を充填した後、側面を構成する部材で閉塞して、パネルを製造することができる。
【0082】
本発明のポリオール液剤を含むポリウレタン組成物は、充填性に優れるため、構造体が細長の空洞を有している場合においても、端部まで充填可能であり、場所により密度差の少ない品質に優れるポリウレタンフォームを形成できる。
なお、細長の空洞とは、断面寸法に対する長手方向の長さが、例えば2倍以上、好ましくは2.5倍以上となるものである。ここで、断面寸法とは、空洞の横断面において最大長さとなる部分であり、例えば楕円ならば長径であり、矩形や方形ならば対角線の長さである。なお、断面形状の大きさ(すなわち、断面寸法)が長手方向に沿って変化する場合には、その変動する部分における最大の断面寸法を上記断面寸法とすればよい。
なお、細長の空洞を有する構造体の場合、完成構造体又は未完成構造体のいずれでもよいが、完成構造体の場合には、細長の空洞の端部や、上記のように注入孔から空洞内部にポリウレタン組成物を充填させるとよい。このような場合でも、上記ポリウレタン組成物を使用することで空洞の端部まで充填可能である。
【0083】
ポリウレタン組成物の構造体の空洞部への充填方法は、特に限定されないが、例えば、ポリオール液剤とポリイソシアネート液剤を予め用意して、これらを混合してポリウレタン組成物とし、これをスプレーガンにより空洞に充填するとよい。より具体的には、スプレーガンを備える発泡装置を使用して、発泡装置においてポリオール液剤と、ポリイソシアネート液剤とを混合して、その混合物をスプレーガンに充填することが好ましい。
スプレーガンにより充填されたポリウレタン組成物は、構造体が備える空洞部に充填され、ポリオールとポリイソシアネートが反応し、発泡することにより、ポリウレタンフォームが形成される。
ポリウレタン組成物は、上記したとおり、特定のポリオール液剤を用いているため、構造体の空洞部に充填しやすく、ポリウレタンフォームも適切に形成され、かつ形成されたポリウレタンフォームは場所による密度差が少なく品質に優れるものである。
【実施例0084】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
実施例及び比較例で用いた各成分を下記に示す。
【0085】
<ポリオール>
(1)ポリエステルポリオール(川崎化成工業社製マキシモールRLK-087、水酸基価200mgKOH/g)
(2)ポリエステルポリオール(日立化成社製PHANTOL SV-208、水酸基価235mgKOH/g)
【0086】
<触媒>
(1)三量化触媒:カルボン酸4級アンモニウム塩(エボニック ジャパン株式会社製DABCO TMR-7)、濃度45~55質量%
(2)三量化触媒:2-エチルヘキサン酸カリウム塩(エアープロダクツ社製、製品名:
DABCO K-15)、濃度70~80質量%
(3)樹脂化触媒(金属系):2-エチルヘキサン酸ビスマス(日東化成社製、製品名:Bi28)、濃度81~90質量%
(4)樹脂化触媒(アミン系):1,2-ジメチルイミダゾール(東ソー株式会社製TOYOCAT-DM70)濃度65~75質量%
(5)樹脂化触媒(アミン系):1,2-ジメチルイミダゾール(花王社製、製品名:カオライザー No.390)濃度65~75質量%
【0087】
<整泡剤>
・ポリオキシアルキレン系整泡剤(東レダウコーニング社製SH-193)
【0088】
<液状難燃剤>
・トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート(大八化学社製TMCPP)
【0089】
<発泡剤>
・HFO-1233zd(E)(セントラル硝子社製ソルスティスLBA)
【0090】
<フィラー>
(1)針状フィラー ウォラストナイト(キンセイマテック社製SH-1250)
(2)赤燐系難燃剤(燐化学工業株式会社製ノーバエクセル140、金属水酸化物被覆、赤燐分94質量%以上)
(3)ホウ酸亜鉛(早川商事社製Firebrake ZB)
(4)エチレンビス(ペンタブロモフェニル)(アルベマール社製SAYTEX 8010)
【0091】
<沈降抑制剤>
・フュームドシリカ(日本アエロジル社製アエロジルR976S)
<水>
・水
【0092】
<ポリイソシアネート>
ポリイソシアネート(MDI、住友化学株式会社製、商品名:スミジュール44V20)
【0093】
粘度の測定方法は、以下のとおりである。
<粘度>
表1に示すポリオール液剤の成分のうち、発泡剤を除く成分を表1に示す配合割合で300mLのポリプロピレン製のカップに入れて混合し、混合成分(発泡剤を除くポリオール液剤)とした。該混合成分について、液温25℃にてB型粘度計を用いて、1rpmの条件で測定し、回転開始1分後に測定された値を、混合成分(発泡剤を除いたポリオール液剤)の粘度とした。
別途、表1に示すポリオール液剤のすべての成分を表1に示す配合割合で300mLのポリプロピレン製のカップに入れて混合し、発泡剤を含むポリオール液剤を調製した。各成分の配合は、発泡剤以外の成分を最初にカップに導入して攪拌した後に、発泡剤を導入し更に混合して行った。該発泡剤を含むポリオール液剤について、液温25℃にてB型粘度計を用いて、60rpmの条件で測定し、回転開始1分後に測定された値を発泡剤を含むポリオール液剤の粘度とした。
【0094】
[実施例1~11、比較例1~2]
表1に示す配合のポリオール液剤及びポリイソシアネート液剤をそれぞれ準備して、発泡装置(グラコ社製HFR)、及びスプレーガン(グラコ社製EPガン)を用いて、以下の各種評価を行った。
【0095】
準備したポリオール液剤及びポリイソシアネート液剤を発泡装置に導入し液温を40℃に調整した。その後、スプレーガンにより両液が混合されたポリウレタン組成物を、吐出速度100cc/秒で吐出させ、200g~400gの重量になるようにポリウレタンフォームを形成させ、以下のようにゲルタイム、及びタックフリータイムを評価した。
【0096】
(ゲルタイム)
スプレーガンのトリガーを引いたタイミングを測定開始時間(0秒)として、発泡中のフォームに突き刺した棒に、フォームが糸を引くようになるまでの時間(秒)をゲルタイムとした。ゲルタイムが短すぎると、吐出途中でポリウレタン組成物の硬化が始まってしまい、ポリオール組成物を構造体の空洞部に充填する際に、充填不良や密度のバラつきが生じやすい。また、ゲルタイムが短すぎると、十分にウレタン化反応が進行しないため、ポリウレタンフォームとしての性能不良が発生しやすい。したがって、ゲルタイムは4~60秒が好ましく、10~45秒がより好ましい。
【0097】
(タックフリータイム)
スプレーガンのトリガーを引いたタイミングを測定開始時間(0秒)として、発泡中のポリウレタンフォームの表面からべたつきがなくなるまでの時間をタックフリータイムとして、以下の基準で評価した。タックフリータイムが長すぎると、十分にウレタン化反応が進行しないため、ポリウレタンフォームとしての性能不良が発生する。
〇・・タックフリータイムが150秒未満
△・・タックフリータイムが150秒以上300秒未満
×・・タックフリータイムが300秒以上
【0098】
(密度のバラつき)
細長の空洞を有し、内面に離型剤が塗布されている金属筒(断面40mm×30mm、長さ1400mm)準備した。ポリオール液剤及びポリイソシアネート液剤を発泡装置に導入し液温を40℃に調整した後、スプレーガンにより両液が混合されたポリウレタン組成物を、該金属筒の長手方向中央から、吐出速度50cc/秒で100g吐出させ、金属筒の空洞部に充填して、金属筒の空洞の形状に対応した長さ1400mmのポリウレタンフォームを形成させた。得られたポリウレタンフォームの両端部を200mmずつ切り取り、残った長さ1000mmのポリウレタンフォームを長さ200mmずつ切り分け、5つの試験片を得た。該5つの試験片の密度を測定し、密度のバラつきを評価した。5つの試験片の密度平均をAkg/m3とした時、各試験片の密度が全て収まる範囲により評価した。
〇・・A±10%未満 kg/m3
△・・A±20%未満 kg/m3
×・・A±20%以上 kg/m3
【0099】
(総合評価)
◎・・ゲルタイムが10~45秒であり、タックフリータイム及び密度のバラつきの評価が両方〇
〇・・ゲルタイムが4~60秒の範囲であり、タックフリータイム及び密度のバラつきの評価が両方〇(ただし、◎の場合を除く)
△・・ゲルタイムが4~60秒の範囲であり、タックフリータイム及び密度のバラつきの評価の一方が〇であり、他方が△
×・・ゲルタイムが4秒未満もしくは60秒超、もしくはタックフリータイム及び密度のバラつきの評価の少なくとも一方が×
【0100】
【0101】
本発明の要件を満足するポリオール液剤を用いた各実施例では、ゲルタイムが適切な値となっており、構造体の空洞部分の全体にポリウレタン組成物を充填でき、形成されたポリウレタンフォームは密度差が少なく、さらにタックフリータイムが一定以下であるためポリウレタンフォームとしての性能に優れるものであった。
これに対して、本発明の要件を満足しないポリオール液剤を用いた各比較例では、ゲルタイムが適切な範囲から外れており、形成されたポリウレタンフォームの密度差が大きいか、またはタックフリータイムが長いため、ポリウレタンフォームとしての性能に劣っていた。