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特開2024-103731コンタクトレンズ、コンタクトレンズ用ケース、およびコンタクトレンズユニット
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  • 特開-コンタクトレンズ、コンタクトレンズ用ケース、およびコンタクトレンズユニット 図1
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  • 特開-コンタクトレンズ、コンタクトレンズ用ケース、およびコンタクトレンズユニット 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103731
(43)【公開日】2024-08-01
(54)【発明の名称】コンタクトレンズ、コンタクトレンズ用ケース、およびコンタクトレンズユニット
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/04 20060101AFI20240725BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20240725BHJP
   A45C 11/04 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
G02C7/04
G02B5/20
A45C11/04 B
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024090827
(22)【出願日】2024-06-04
(62)【分割の表示】P 2022546266の分割
【原出願日】2021-08-25
(31)【優先権主張番号】P 2020147852
(32)【優先日】2020-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】櫛田 伸子
(72)【発明者】
【氏名】石水 敬大
(57)【要約】
【課題】所定の波長帯の光を利用者の眼に照射して、該利用者の心身に非視覚的な作用をもたらすコンタクトレンズを実現する。
【解決手段】本開示の一態様に係るコンタクトレンズは、第1波長帯の光を受光したことに応じて、前記第1波長帯とは異なる第2波長帯の光を発する発光部を有し、前記第2波長帯は450nm以上及び600nm以下であり、前記発光部が発する前記第2波長帯の光の照度は、利用者の眼球に装着された場合に、前記利用者の眼の網膜上において、4Lux以上及び100Lux以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1波長帯の光を受光したことに応じて、前記第1波長帯とは異なる第2波長帯の光を発する発光部を有し、
前記第2波長帯は450nm以上及び600nm以下であり、
前記発光部が発する前記第2波長帯の光の照度は、利用者の眼球に装着された場合に、前記利用者の眼の網膜上において、4Lux以上及び100Lux以下である、コンタクトレンズ。
【請求項2】
前記発光部は、前記第1波長帯の光を受光後の所定期間、前記第2波長帯の光を発する、
請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項3】
前記コンタクトレンズが前記利用者の前記眼球に装着された場合に、前記眼球の瞳孔に対応する中央領域を備え、
前記中央領域は前記発光部の少なくとも一部を含む、
請求項1または2に記載のコンタクトレンズ。
【請求項4】
前記発光部は、前記第1波長帯の光を励起光とし、前記第2波長帯の光を蛍光として発する、蛍光色素を含んでいる、
請求項1から3のいずれか1項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項5】
前記発光部は、前記第2波長帯の光を透過する保護層によって被覆されており、
前記保護層は、接眼面側の保護層である第1保護層と、対物面側の保護層である第2保護層を含む、
請求項1から4のいずれか1項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項6】
前記コンタクトレンズの対物面から出射する方向の光を、前記コンタクトレンズの接眼面から出射する方向へ反射する反射部が、前記保護層に設けられている、
請求項5に記載のコンタクトレンズ。
【請求項7】
前記反射部は、前記第2保護層に設けられている、
請求項6に記載のコンタクトレンズ。
【請求項8】
前記第1保護層及び前記第2保護層は、シリコーンハイドロゲル又は非シリコーンハイドロゲルから構成される、
請求項5から7のいずれか1項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項9】
前記第2波長帯は、500nm以上及び550nm以下である、
請求項1から8のいずれか1項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項10】
前記第2波長帯の光のピークトップは、525nmである、
請求項1から9のいずれか1項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載のコンタクトレンズを収容可能な収容部と、
前記収容部内のコンタクトレンズに前記第1波長帯の光を照射する光源と、
前記光源に電力を供給する電源部と、を備える、
コンタクトレンズ用ケース。
【請求項12】
前記収容部を覆う蓋部をさらに備え、
前記光源は、前記蓋部に設けられている、
請求項11に記載のコンタクトレンズ用ケース。
【請求項13】
前記収容部を複数個備える、
請求項11または12に記載のコンタクトレンズ用ケース。
【請求項14】
請求項1から10のいずれか1項に記載のコンタクトレンズと、
請求項11から13のいずれか1項に記載のコンタクトレンズ用ケースと、を備える、
コンタクトレンズユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はコンタクトレンズ、コンタクトレンズ用ケース、およびコンタクトレンズユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
眼には、光受容能を有するものの視覚機能に対する直接的な関連性を有さない、内因性光感受性網膜神経節細胞(iPRGC:intrinsically photosensitive retinal ganglion cell)等の神経節細胞が存在する。
【0003】
内因性光感受性網膜神経節細胞が光を受容すると、心身にさまざまな非視覚的な作用をもたらすことが知られている。例えば、緑色の光に該当する波長帯の光を照射することで、急性および慢性の痛みが緩和されることが報告されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
所定の波長帯の光を利用者の眼に照射して、該利用者の心身に非視覚的な作用をもたらすコンタクトレンズを実現する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係るコンタクトレンズは、第1波長帯の光を受光したことに応じて、前記第1波長帯とは異なる第2波長帯の光を発する発光部を有し、前記第2波長帯は450nm以上及び600nm以下であり、前記発光部が発する前記第2波長帯の光の照度は、利用者の眼球に装着された場合に、前記利用者の眼の網膜上において、4Lux以上及び100Lux以下である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本開示の実施形態に係るコンタクトレンズを利用者が装着している様子を示す正面図である。
図2】コンタクトレンズの概略構成を示す分解斜視図である。
図3】反射部を有するコンタクトレンズの概略構成を示す分解斜視図である。
図4】コンタクトレンズユニットの構成の一例を示す斜視図である。
図5】コンタクトレンズユニットを利用した施術例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
〔実施形態1〕
以下、本開示の一実施形態について、詳細に説明する。本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上B以下」を意味する。
【0008】
(コンタクトレンズ1の概要)
コンタクトレンズ1は、装着した利用者の眼に所定の波長帯(第2波長帯)の光を照射して、利用者の瞳孔Pから網膜へと該所定の波長帯の光を入射させる。これにより、コンタクトレンズ1は、装着した利用者の心身に非視覚的な作用をもたらすことができる。
【0009】
(コンタクトレンズ1の概略)
まず、コンタクトレンズ1の概略構成について、図1を用いて説明する。図1は、本開示の実施形態に係るコンタクトレンズ1を利用者が装着している様子を示す正面図である。図1には、コンタクトレンズ1を装着している利用者の片方の眼が破線で示されている。
【0010】
図1に示すように、コンタクトレンズ1は、利用者の眼球に装着可能なレンズである。コンタクトレンズ1は、周縁部よりも中心部が突出した凸曲面を有する円板形状を有している。
【0011】
コンタクトレンズ1は、利用者の左眼または右眼のいずれか一方に装着されてもよいし、利用者の左右両眼に装着されてもよい。以下、単にコンタクトレンズ1枚を指す場合は、「コンタクトレンズ1」と呼称し、左右両眼用の一対のコンタクトレンズ1をまとめて指す場合は、「コンタクトレンズセット2」と呼称する。
【0012】
コンタクトレンズ1は、第1波長帯の光を受光したことに応じて、第1波長帯とは異なる第2波長帯の光を発する発光部10を有する。また、コンタクトレンズ1は、中央領域12と、該中央領域12を包囲する周縁領域17とを有していてもよい。ここで、中央領域12とは、利用者の眼の瞳孔Pに対応する領域である。中央領域12は、利用者がコンタクトレンズ1を装着した場合、該利用者の眼の瞳孔Pの正面に位置する。一方、周縁領域17は、中央領域12の辺縁と隣接し、中央領域12を包囲する領域である。一例として、周縁領域17は、利用者がコンタクトレンズ1を装着した際に、虹彩Iに対応する領域を含む領域であってもよい。
【0013】
中央領域12は、発光部10の少なくとも一部を含んでもよい。例えば、発光部10は、中央領域12内の一部に配されていてもよいし、中央領域12内の全体に配されていてもよい。図1には、中央領域12の中心部に発光部10が配されている場合を示している。発光部10は、これに限定されず、中央領域12と周縁領域17とに配されていてもよい。
【0014】
本開示の一態様によれば、所定の波長帯の光を利用者の眼に照射して、該利用者の心身に非視覚的な作用をもたらすことが可能なコンタクトレンズを実現することができる。
【0015】
<発光部10>
次に、発光部10について説明する。発光部10は、コンタクトレンズ1を眼球に装着している利用者の眼に、第2波長帯の光を照射することが可能である。発光部10は、中央領域12に配されているため、発光部10から発光した第2波長帯の光は、利用者の瞳孔Pから網膜に達する。
【0016】
発光部10は、利用者の眼に対して、第2波長帯の光を、所定の強度(例えば、網膜上での照度が4~100Lux)で照射することができればよく、発光部10の数は任意であってもよい。所定の強度が、4~100Luxであれば、対象者に眩しさを感じさせることなく、対象者が感じている疼痛等の身体の痛みを持続的に緩和することが可能である。例えば、図1に示すように、コンタクトレンズ1において、発光部10が1つ配されていてもよいし、複数配されていてもよい。また、発光部10の形状および大きさも任意であってよい。
【0017】
発光部10は、励起光(第1波長帯の光)を受光したことに応じて、蛍光(第2波長帯の光)を発する蛍光色素を含んでいてもよい。ここで、励起光とは、蛍光色素の分子を基底状態から励起状態へと変化させることが可能な、第1波長帯の光である。発光部10は、励起光を受光し終えた後の所定期間、蛍光を発する蛍光色素を含んでいてもよい。一例において、発光部10に適用する蛍光色素としては、蓄光材と呼称される蛍光色素であってよい。蓄光材は、蛍光色素分子を励起状態に変化させることが可能な第1波長帯の光である励起光を受光後の所定時間(例えば、3~4時間)蛍光を継続して発する性質を有する蛍光色素である。
【0018】
蓄光材は、既知の蓄光材を用いればよいが、放射性物質等の有害物質を含まないアルミン酸ストロンチウム系の蓄光材であってもよい。例えば、ユーロピウム(Eu)、ディスプロジウム(Dy)等の希土類元素が賦活されたアルミン酸ストロンチウム(SrAl、SrAl1425)等が挙げられる。蓄光材は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、畜光材は、耐水性に優れた顔料であってもよい。
【0019】
発光部10は、蛍光色素に限定されず、例えば、励起光(第1波長帯の光)を受光後の所定期間、リン光(第2波長帯の光)を発する有機化合物を含んでいてもよい。
【0020】
[発光部10が発する光の波長帯]
発光部10が発する光の波長帯は、利用者の眼に照射することで、該利用者の心身の状態を改善させる効果が期待される光の波長帯であればよい。
【0021】
緑色光を利用者の眼に照射することによって、照射後において、該利用者が感じている疼痛等の身体の痛みを持続的に緩和できる。発光の波長帯は、緑色光の波長帯であってもよい。この場合、発光の波長帯は、例えば、450~600nmであり、500~550nmであってもよい。発光は、ピークトップが525nmの緑色光であってもよい。
【0022】
紫色光を利用者の眼に照射することによって、該利用者の視力の低下の虞を低減したり、近視の進行速度を低下させたりできる。この場合、発光の波長帯は、紫色光の波長帯であってもよい。この場合、発光の波長帯は、例えば、350~410nmであってもよい。
【0023】
また、青色光を利用者の眼に照射することによって、該利用者の時差ボケの症状を緩和できる。この場合、発光の波長帯は、青色光の波長帯であってもよい。
【0024】
(コンタクトレンズ1の構成)
次に、コンタクトレンズ1の構成について、図2を用いて説明する。図2は、コンタクトレンズ1の概略構成を示す分解斜視図である。以下では、発光部10が、第1波長帯の励起光を受光したことに応じて、第2波長帯の蛍光を発する蛍光色素を含む場合を例に挙げて説明する。
【0025】
コンタクトレンズ1は、保護層を備えていてもよい。図2で示すように、一例において、コンタクトレンズ1は、コンタクトレンズ1の接眼面K(すなわち、後方湾曲面)および第1内側面Lを有する第1保護層11と、第2内側面Mおよび対物面N(すなわち、前方湾曲面)を有する第2保護層16と、発光部10を有する中間層15とを有している。ここで、接眼面Kは、コンタクトレンズ1の眼に接する側の面を意図しており、対物面Nは、コンタクトレンズ1の接眼面Kに対向する側の面を意図している。
【0026】
第1保護層11は、発光部10からの蛍光を透過可能である。すなわち、発光部10の少なくとも一部は、蛍光を透過する保護層によって被覆されている。発光部10から発光した蛍光の少なくとも一部は、第1内側面Lから入射して接眼面K方向へ進み、利用者の瞳孔Pを通過して網膜に達する。また、第1保護層11は、可視光を透過可能であってもよい。
【0027】
第2保護層16は、発光部10からの蛍光を透過可能であってもよい。すなわち、発光部10は、蛍光を透過する保護層によって被覆されていてもよい。発光部10から発光した蛍光の少なくとも一部は、第2内側面Mから入射して対物面N方向へ進み、利用者の瞼に達する。また、第2保護層16は、可視光を透過可能であってもよい。
【0028】
第2保護層16は、ある場合において、外部からの光を遮蔽または低減可能であってもよい。このような第2保護層16を有するコンタクトレンズ1は、発光部10から緑色の蛍光を利用者の眼に照射する場合、該利用者の眼に到達する、蛍光とは異なる波長帯の光の照度を低減させることができる。そのため、コンタクトレンズ1は、緑色の蛍光によって得られる痛み緩和効果を持続させることができる。
【0029】
発光部10は、第1保護層11および第2保護層16によって被覆されている。これにより、発光部10に適用された蛍光色素が、コンタクトレンズ1を装着している利用者の眼および瞼等に直接触れ、該利用者の身体に影響を及ぼすことを回避することができる。
【0030】
第1保護層11および第2保護層16は、例えば、シリコーンハイドロゲルおよび非シリコーンハイドロゲル等で構成されてもよい。
【0031】
(コンタクトレンズ1の製造方法)
コンタクトレンズ1の製造方法としては、既知の方法を用いればよく、例えば、レースカット法(切削研磨法)、キャストモールド法(鋳型法)、スピンキャスト法(遠心成形法)、およびこれらの方法を組み合わせた方法を用いてもよい。
【0032】
コンタクトレンズ1の原料としては、例えば、シリコーンハイドロゲルおよび非シリコーンハイドロゲル等が挙げられる。酸素透過性の観点より、コンタクトレンズ1の原料としては、シリコーンハイドロゲルを原料としてもよい。
【0033】
図2に示す構成を有するコンタクトレンズ1は、例えば、キャストモールド法と、サンドイッチ方式とを用いて製造されてもよい。具体的には、(1)まず、第2保護層16となる原料が対物面N側用の鋳型に流し込まれる。(2)続いて、蛍光色素を含む発光部10を有する中間層15が第2保護層16の上に設置される。(3)次に、中間層15の上から、第1保護層11となる原料がさらに流し込まれ、接眼面K側用の鋳型が上から被せられる。
【0034】
〔実施形態2〕
本開示の他の実施形態について、以下に説明する。説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0035】
発光部10から発光した蛍光は、接眼面Kから出射する方向の光と、対物面Nから出射する方向の光とを含む。本実施形態に係るコンタクトレンズ1aは、対物面Nから出射する方向の光を、利用者の眼の方向の光に変更して利用するための反射部13を有している点で、コンタクトレンズ1とは異なっている。
【0036】
ここでは、コンタクトレンズ1aの構成について、図3を用いて説明する。図3は、反射部13を有するコンタクトレンズ1aの概略構成を示す分解斜視図である。
【0037】
<反射部13>
反射部13は、対物面Nから出射する方向の光を接眼面Kから出射する方向へ反射する。反射部13は、第2保護層16に設けられていてもよい。反射部13は、発光部10の光を反射すればよく、例えば、鏡面反射材料、拡散反射材料、および再帰反射材料等から構成されていてもよい。
【0038】
反射部13は、図3に示すように、第2保護層16の第2内側面M上に配されていてもよいし、第2保護層16の対物面N上に配されていてもよい。反射部13が第2保護層16の第2内側面Mまたは対物面Nに配される場合、例えば、第2保護層16にミラーコーティングおよびアルミ蒸着等のコーティング処理を施すことによって、反射部13が設けられ得る。
【0039】
また、第2保護層16に対してプリズム加工等の加工を施し、第2保護層16自体が反射部13として機能する構成であってもよい。
【0040】
コンタクトレンズ1aは、反射部13を有していることにより、発光部10から発光した蛍光を効率的に利用者の眼に照射することができる。さらに、コンタクトレンズ1aは、コンタクトレンズ1に比べて、少ない蛍光色素量で発光部10を製造することが可能である。例えば、蓄光材等の蛍光色素の価格が高価である場合において、反射部13を有するコンタクトレンズ1aは、コンタクトレンズ1に比べて製造コストを低く抑えることができる。
【0041】
一方、反射部13は、第2保護層16の全体に設けられていてもよいし、第2保護層16の一部分に設けられてもよい。また、反射部13は、可視光の一部のみを反射してもよい。
【0042】
〔実施形態3〕
本開示の他の実施形態について、以下に説明する。説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0043】
(コンタクトレンズユニット100の構成)
コンタクトレンズ1、1aは、コンタクトレンズ1および1a専用のコンタクトレンズ用ケース40と組み合わされて、コンタクトレンズユニット100を構成してもよい。図4は、コンタクトレンズユニット100の構成の一例を示す斜視図である。
【0044】
(コンタクトレンズ用ケース40の構成)
コンタクトレンズ用ケース40は、利用者が使用していない期間に、コンタクトレンズ1、1aを保持可能であり、かつ、コンタクトレンズ1、1aに励起光を照射することが可能である。コンタクトレンズ用ケース40の構成について、図4を用いて説明する。
【0045】
例えば、青色光(例えば、410~470nmの波長)または紫色光(例えば、350~410nmの波長)等の可視光、あるいは紫外線(例えば、350nm未満の波長)を、励起光として使用することができる。励起光として、これらの波長の光を単独で用いてもよく、複数の組み合わせで用いてもよい。励起光として可視光を照射した場合には、コンタクトレンズの製品寿命を向上させることができる。また、励起光として紫色光または紫外線を照射した場合には、コンタクトレンズに付着した雑菌を低減することができる。
【0046】
図4には、左右両眼用の一対のコンタクトレンズ1(すなわち、コンタクトレンズセット2)を収容可能なコンタクトレンズ用ケース40が示されているが、これに限定されない。例えば、コンタクトレンズ用ケース40毎に1枚のコンタクトレンズ1、1aを収容する構成であってもよいし、3枚以上のコンタクトレンズ1、1aをまとめて収容する構成であってもよい。
【0047】
コンタクトレンズ用ケース40は、コンタクトレンズ1、1aを収容可能な収容部21と、収容部21内のコンタクトレンズ1、1aに励起光を照射する光源23と、光源23に電力を供給する電源部25と、を備えている。
【0048】
<収容部21>
収容部21は、コンタクトレンズ1を収容可能な凹部であってもよい。凹部は、内壁24を有している。凹部は、ケース本体20に設けられており、一例において、上側に開口した開口部27を有している。コンタクトレンズ1、1aは、開口部27から収容部21に収容される。図4では、各収容部21に1枚のコンタクトレンズ1、1aが収容されているが、これに限定されない。例えば、1つの収容部21が仕切りなどで区切られている場合、収容部21の2つ以上の凹部の内壁24の一部が連結した形状である場合などは、1つの収容部21に2枚以上のコンタクトレンズが収容されてもよい。
【0049】
収容部21は、コンタクトレンズ1、1aの他に、コンタクトレンズ1、1aをケアするための保存液および消毒液等の薬液を収容してもよい。薬液は、開口部27から収容部21に収容される。ただし、薬液は、後述する光源23から照射される励起光によって容易に分解しない成分を含むものであってもよい。
【0050】
コンタクトレンズ用ケース40が備える収容部21の数は特に限定されないが、例えば、1つであってもよく、複数であってもよい。例えば、収容部21の数が2つ以上であれば、少なくとも左右両眼用の一対のコンタクトレンズ1(すなわち、コンタクトレンズセット2)を収容することができる。
【0051】
<光源23>
光源23は、収容部21内に収容されたコンタクトレンズ1、1aに励起光を照射可能な任意の位置に設けられてもよい。一例として、光源23は、収容部21の底部に設けられてもよいし、収容部21の内側面に設けられてもよい。あるいは、光源23は、図4に示すように、後述する蓋部22に設けられていてもよい。また、コンタクトレンズ用ケース40が後述する蓋部22を備えている場合、光源23は蓋部22に設けられていてもよい。
【0052】
光源23は、例えば、発光ダイオード(LED)および半導体レーザ(LD)等の発光素子を含んでいてもよい。これらの発光素子を使用することにより、光源23は、発光部10の発光材料を効率的に励起することができる。あるいは、光源23は、発光素子に加えて、該発光素子からの光のうち、励起光のみを透過する光学フィルタ(例えば、バンドパスフィルタ)を備えていてもよい。
【0053】
<電源部25>
電源部25は、光源23に電力を供給する。電源部25は、任意の種類の電池(例えば、一次電池、二次電池、および燃料電池等)を受け付ける電池用端子を備えていてもよい。あるいは、電源部25は、コンセントに差し込み可能なプラグ等を有し、外部電源からの電力を受け取る構成であってもよい。
【0054】
コンタクトレンズ用ケース40は、蓋部22をさらに備え、光源23は、蓋部22に設けられていてもよい。光源23が蓋部22に設けられている場合、例えば、蓋部22とケース本体20とを接続する接続部26を介して、電源部25から光源23へ電力供給されてもよい。
【0055】
図4では、光源23は、各収容部21に対応する位置に、それぞれ1つずつ設けられているが、これに限定されない。例えば、各収容部21に対応する位置に、それぞれ複数の光源23が設けられていてもよい。あるいは、光源23は、複数の収容部21に向けて励起光を照射可能な位置に1つ設けられていてもよい。
【0056】
<蓋部22>
蓋部22は、収容部21の凹部を覆う部材である。コンタクトレンズ用ケース40が蓋部22を備えることにより、収容部21内に埃および塵等が侵入することを防ぐことができる。また、蓋部22は、光源23からコンタクトレンズ1、1aに照射される励起光が、コンタクトレンズ用ケース40の外部に漏れることを防ぐことができる。
【0057】
蓋部22およびコンタクトレンズ用ケース40は、樹脂製または金属製であってもよい。比較的高いエネルギーを有している励起光が、コンタクトレンズ用ケース40から外部に漏れることを防いでもよい。そこで、蓋部22およびケース本体20は、波長が短い光(例えば紫外線)を透過しないように構成されていてもよい。
【0058】
一例において、光源23は、蓋部22が閉じられたときに、収容部21の上部からコンタクトレンズ1、1aに励起光を照射し、蓋部22が開けられたときに消灯する構成であってもよい。例えば、光源23が励起光の照射を開始するトリガーとして、蓋部22が閉じられて、蓋部22と、ケース本体20とが係止されたことを検出した検出信号を利用してもよい。
【0059】
あるいは、蓋部22またはケース本体20に光源23の光照射のON/OFFを制御するためのボタンまたはスイッチ(図示せず)が設けられていてもよい。
【0060】
[変形例]
図4は、各コンタクトレンズ用ケース40が光源23を備える例を示したが、これに限定されない。例えば、コンタクトレンズユニット100は、コンタクトレンズ用ケース40とは別体の、複数のコンタクトレンズ用ケース40に対する、励起光の一括照射が可能な光源23を備える光源装置(図示せず)を備えていてもよい。
【0061】
一例において、コンタクトレンズ用ケース40の蓋部22およびケース本体20が、光源装置の光源23からの励起光を透過可能であってもよい。あるいは、蓋部22に、光源装置の光源23からの励起光が透過可能な窓部が設けられていてもよい。この構成を採用すれば、光源装置からの励起光を、複数のコンタクトレンズ用ケース40の各々に収容されているコンタクトレンズ1、1aに照射することができる。
【0062】
(コンタクトレンズユニット100の使用例)
一般的に、視力補正用コンタクトレンズおよびファッション用のカラーコンタクトレンズ等は、利用者が睡眠中はその機能を発揮することができない。これに対して、コンタクトレンズ1、1aは、利用者が睡眠中であっても機能を発揮することが可能である。
【0063】
以下では、コンタクトレンズユニット100を利用する利用者に、睡眠中にコンタクトレンズ1、1aを装着させる施術例を、図5を用いて説明する。図5は、コンタクトレンズユニット100を利用した施術例を示す図である。
【0064】
まず、t1時点において、就寝準備を行う利用者は、コンタクトレンズ用ケース40からコンタクトレンズ1、1aを取り出して、眼球に装着する。視力補正用コンタクトレンズを使用していた利用者は、装着していた視力補正用コンタクトレンズを眼から外してから、コンタクトレンズ1、1aを装着する。
【0065】
コンタクトレンズ用ケース40に収容されていたコンタクトレンズ1、1aは、光源23からの励起光を受光している期間、所定の発光強度(例えば、利用者の眼球に装着されたときに網膜に到達する光の照度が100Lux)の蛍光を発光していてもよい。
【0066】
コンタクトレンズ1、1aが発光する蛍光の強度は、コンタクトレンズ1、1aがコンタクトレンズ用ケース40から取り出されてから徐々に低下するものの、コンタクトレンズ1、1aの発光部10からの蛍光は、数時間(例えば3~4時間)持続する。利用者が装着してから数時間で、コンタクトレンズ1、1aの発光部10からの蛍光は消失するが(図5におけるt2時点)、利用者は、起床時までコンタクトレンズ1を装着したままでよい。
【0067】
次に、t3時点において、起床した利用者は、コンタクトレンズ1、1aを眼から外し、コンタクトレンズ用ケース40に収容する。視力補正用コンタクトレンズを使用する利用者は、コンタクトレンズ1、1aを眼から外してから、視力補正用コンタクトレンズを装着する。コンタクトレンズ用ケース40に収容されたコンタクトレンズ1、1aには、光源23からの励起光が照射される。コンタクトレンズ1、1aは、該利用者が次に就寝準備をするまで、コンタクトレンズ用ケース40内に保持される。この期間において、コンタクトレンズ1、1aは充分な励起光を受光する。
【0068】
t4時点において、利用者は、上記t1時点で行ったのと同様に、就寝準備を行う。t5時点は、t2時点と同じくコンタクトレンズ1、1aの蛍光の消失を示し、t6時点は、t3時点と同じく利用者がコンタクトレンズ1、1aをコンタクトレンズ用ケース40に収容したことを示す。このように、コンタクトレンズ1、1aを就寝前の利用者に装着させることによって、該利用者が睡眠中において、利用者の眼に発光部10からの、蛍光を照射することができる。このように、コンタクトレンズ1、1aは、心身に非視覚的な作用をもたらす所定の波長帯の蛍光を利用者の眼に照射する施術を、該利用者が睡眠中であっても実行可能とする。
【0069】
コンタクトレンズ1、1aは、衛生面を考慮して1回の使用毎に新しいものに交換されてもよい。あるいは、使用後のコンタクトレンズ1、1aを保存液および消毒液等の薬液中に浸すことによって、該コンタクトレンズ1、1aが繰り返し使用されてもよい。
【0070】
以上、本開示に係る発明について、諸図面および実施例に基づいて説明してきた。しかし、本開示に係る発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。すなわち、本開示に係る発明は本開示で示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示に係る発明の技術的範囲に含まれる。つまり、当業者であれば本開示に基づき種々の変形または修正を行うことが容易であることに注意されたい。また、これらの変形または修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。
【符号の説明】
【0071】
1、1a コンタクトレンズ
10 発光部
12 中央領域
13 反射部
15 中間層
11 第1保護層(接眼面側)
16 第2保護層(対物面側)
40 コンタクトレンズ用ケース
21 収容部
22 蓋部
23 光源
25 電源部
P 瞳孔
図1
図2
図3
図4
図5