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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104947
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】電流センサ
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/20 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
G01R15/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009404
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 優
(72)【発明者】
【氏名】田村 学
(72)【発明者】
【氏名】高野 秀昭
【テーマコード(参考)】
2G025
【Fターム(参考)】
2G025AA01
2G025AA02
2G025AA04
2G025AA07
2G025AA09
2G025AA15
2G025AB01
2G025AC01
(57)【要約】
【課題】
磁気検知部の温度上昇による測定精度の低下が抑えられた、大電流の測定に適した電流センサを提供すること。
【解決手段】
被測定電流が流れるバスバ2と、X方向においてバスバ2に対向配置された磁気検知部3と、バスバ2の一部および磁気検知部3を内包する筐体4とを備え、バスバ2は、X方向と直交するY方向において、筐体4のY1側から突出する第1接続端部2aと、筐体4のY2側から突出する第2接続端部2cとを有し、第1接続端部2aと第2接続端部2cとは、X方向およびY方向と直交するZ方向からみたときに、X方向における位置が異なり、バスバ2の磁気検知部3に対向する対向部2bが、Z方向からみたときに、Y方向と交差している電流センサ1。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定電流が流れるバスバと、第1方向において前記バスバに対向配置された磁気検知部と、前記バスバの一部および前記磁気検知部を内包する筐体とを備え、
前記バスバは、前記第1方向と直交する第2方向において、前記筐体の一方側から突出する第1接続端部と、前記筐体の他方側から突出する第2接続端部とを有し、
前記第1接続端部と前記第2接続端部とは、前記第1方向および前記第2方向と直交する第3方向からみたときに、前記第1方向における位置が異なり、
前記バスバの前記磁気検知部に対向する対向部が、前記第3方向からみたときに、前記第2方向と交差していることを特徴とする電流センサ。
【請求項2】
前記対向部は、前記第2方向の前記第1接続端部側から前記第2接続端部側に向けて、前記第1接続端部の突出箇所を通り前記第2方向および前記第3方向に平行な平面との距離が徐々に大きくなる、請求項1に記載の電流センサ。
【請求項3】
前記磁気検知部は検知面に平行な方向の磁界を検知可能であり、
前記検知面の法線方向が前記第1方向と平行になるように配置されている、請求項1に記載の電流センサ。
【請求項4】
前記筐体に保持された磁気シールドを有する、請求項1に記載の電流センサ。
【請求項5】
平板状に形成された平板部分を有する第1磁気シールドおよび、平板状に形成された平板部分を有する第2磁気シールドを備え、
前記第1磁気シールドは、前記平板部分の磁気シールド面の法線方向が前記対向部の対向面の法線方向と平行となるように、前記対向部を基準として前記磁気検知部とは前記第1方向における反対側に配置され、
前記第2磁気シールドは、前記平板部分の磁気シールド面の法線方向が前記磁気検知部の検知面の法線方向と平行となるように、前記磁気検知部を基準として前記対向部とは前記第1方向における反対側に配置されている、請求項1に記載の電流センサ。
【請求項6】
前記筐体は、前記第1方向に開口した収納空間を備えたケースと、前記収納空間を覆うカバーと、からなり、
前記磁気検知部が、前記収納空間に収納され、
前記バスバの前記対向部および前記第1磁気シールドが、前記ケースにインサート成形され、
前記第2磁気シールドが、前記カバーにインサート成形されている、請求項5に記載の電流センサ。
【請求項7】
前記磁気シールドは、平板状に形成された基部と、前記基部の前記第3方向における両端から前記基部の法線方向に平行な方向でかつ前記バスバがある側へ延設された側壁部と、を有し、
前記基部の法線方向と前記対向部の法線方向とが平行になり、前記基部と前記対向部とが対向するように前記磁気シールドが配置されている、請求項4に記載の電流センサ。
【請求項8】
前記筐体は、前記対向部を基準として、前記第1方向において前記磁気検知部が配置された側とは反対側にヒートシンク部を有する、請求項1に記載の電流センサ。
【請求項9】
前記バスバおよび前記磁気検知部を備えた構成を計測ユニットとしたときに、
複数の前記計測ユニットは、前記第3方向に沿って複数配置され、前記筐体によって一体に保持されている、請求項5に記載の電流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスバに流れる被測定電流により発生する磁界を検出し、検出した磁界から被測定電流の電流値を測定する電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種機器の制御や監視のために、各種機器に取り付けて各種機器に流れる被測定電流を測定する電流センサが用いられている。この種の電流センサとして、電流路に被測定電流が流れることによって生じる磁界を感知する磁電変換素子を用いた電流センサが知られている。
【0003】
特許文献1には、測定精度を低下させることなく小型化が可能な電流センサを提供することを目的とした、複数のバスバと、複数の磁気センサと、前記磁気センサが実装された回路基板と、ケースと、蓋部と、前記蓋部にインサート成形された磁気シールドとを備えた電流センサが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-102023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された電流センサは、バスバの両端がケースから突出する位置が上下方向で異なるため、ケース内のバスバに曲げ部を設けてケースの側壁部および底面部に沿うように階段状に引き回している。バスバを曲げることにより生じたスペースに磁気センサや磁気シールドを配置して、電流センサ内部の収納効率を向上させている。
【0006】
特許文献1に記載の電流センサは、磁気センサが2方向においてバスバと対向しているため、バスバに電流が流れてバスバが発熱すると、磁気センサ(磁気検知部)周辺の温度が高くなりやすいという問題がある。近年、ハイブリッド自動車(Hybrid Vehicle、HV)や電気自動車(Electric Vehicle、EV)等の大電流化が進んでいることに伴い、バスバの発熱量が大きくなっている。このため、磁気センサ周囲の温度が耐熱温度を超えて、電流センサの計測精度が低下するおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、磁気検知部の温度上昇による測定精度の低下が抑えられた、大電流の測定に適した電流センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上述した課題を解決するための手段として、以下の構成を備えている。
被測定電流が流れるバスバと、第1方向において前記バスバに対向配置された磁気検知部と、前記バスバの一部および前記磁気検知部を内包する筐体とを備え、前記バスバは、前記第1方向と直交する第2方向において、前記筐体の一方側から突出する第1接続端部と、前記筐体の他方側から突出する第2接続端部とを有し、前記第1接続端部と前記第2接続端部とは、前記第1方向および前記第2方向と直交する第3方向からみたときに、前記第1方向における位置が異なり、前記バスバの前記磁気検知部に対向する対向部が、前記第3方向からみたときに、前記第2方向と交差していることを特徴とする電流センサ。
【0009】
バスバの対向部を第2方向と交差させる配置によって、バスバをケースの側壁部および底面部に沿って引き回した場合に比べて、ケース内に位置するバスバの長さを短くすることができる。バスバが短くなることによりバスバの抵抗が下がり、被測定電流が流れたときのバスバの発熱量を小さくすることができる。
【0010】
前記対向部は、前記第2方向の前記第1接続端部側から前記第2接続端部側に向けて、前記第1接続端部の突出箇所を通り前記第2方向および前記第3方向に平行な平面との距離が徐々に大きくなるように形成されていてもよい。
第2接続端部側における対向部と上記平面との距離を大きくすることにより、パワーカード等の高温機器を第2接続端部に接続した場合における、高温機器に起因する熱のバスバおよび基板を介した磁気検知部への影響を低減できる。
【0011】
前記磁気検知部は検知面に平行な方向の磁界を検知可能であり、前記検知面の法線方向が前記第1方向と平行になるように配置されてもよい。
検知面をバスバに正対させることで、バスバに被測定電流が流れることにより生じる誘導磁界を磁気検知部によって精度良く検知できる。
【0012】
電流センサは、前記筐体に保持された磁気シールドを有していてもよい。
電流センサは、平板状に形成された平板部分を有する第1磁気シールド、および平板状に形成された平板部分を有する第2磁気シールドを備え、前記第1磁気シールドは、前記平板部分の磁気シールド面の法線方向が前記対向部の対向面の法線方向と平行となるように、前記対向部を基準として前記磁気検知部とは前記第1方向における反対側に配置され、前記第2磁気シールドは、前記平板部分の磁気シールド面の法線方向が前記磁気検知部の検知面の法線方向と平行となるように、前記磁気検知部を基準として前記対向部とは前記第1方向における反対側に配置されていてもよい。
磁気シールドにより、外部からの磁気ノイズの影響を低減できるため、電流センサの検知精度が向上する。
【0013】
前記筐体は、前記第1方向に開口した収納空間を備えたケースと、前記収納空間を覆うカバーと、からなり、前記磁気検知部が、前記収納空間に収納され、前記バスバの前記対向部および前記第1磁気シールドが、前記ケースにインサート成形され、前記第2磁気シールドが、前記カバーにインサート成形されていてもよい。
インサート成形により、第1磁気シールドおよび第2磁気シールドを所定位置に配置することができるため、各部材の相対的な位置関係の誤差を抑制して、検知精度の良い電流センサとなる。
【0014】
前記磁気シールドは、平板状に形成された基部と、前記基部の前記第3方向における両端から前記基部の法線方向に平行な方向でかつ前記バスバがある側へ延設された側壁部と、を有し、前記基部の法線方向と前記対向部の法線方向とが平行になり、前記基部と前記対向部とが対向するように前記磁気シールドが配置されていてもよい。
磁気シールドを基部と側壁部とを備えた断面U字形状とすることにより、外部からの磁気ノイズの影響を低減する効果が向上する。
【0015】
前記筐体は、前記対向部を基準として、前記第1方向において前記磁気検知部が配置された側とは反対側にヒートシンク部を有してもよい。
ヒートシンク部により収納空間内の熱を外部に放出して、収納空間内の温度上昇を抑制することができる。
【0016】
前記バスバおよび前記磁気検知部を備えた構成を計測ユニットとしたときに、複数の前記計測ユニットは、前記第3方向に沿って複数配置され、前記筐体によって一体に保持されていてもよい。
複数の計測ユニットを筐体に一体に保持することにより、各計測ユニットの位置関係が固定された状態で複数の電流を測定できる。このため、計測ユニットの相対的な位置の変化によって生じる測定誤差を抑えて、複数の電流を測定する際の精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、被測定電流が流れたときのバスバの発熱量を低減して磁気検知部の温度が高くなることを抑制できるため、大電流の測定に適した測定精度が良好な電流センサを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る電流センサを模式的に示す斜視図である。
図2図1のAA線における断面を模式的に示す一部断面斜視図である。
図3図1のAA線における断面を模式的に示す断面図である。
図4図1の電流センサの磁気シールド、バスバ、磁気検知部および基板の位置を模式的に示す断面図である。
図5図1のBB線における断面を模式的に示す断面図である。
図6】変形例に係る電流センサの断面を模式的に示す断面図である。
図7図6の電流センサを模式的に示す正面図である。
図8】他の変形例に係る電流センサの断面を模式的に示す断面図である。
図9】変形例に係る電流センサの磁気シールド、バスバ、磁気検知部および基板の位置を模式的に示す断面図である。
図10】従来の電流センサを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。各図面において同じ部材には同じ番号を付して、説明を省略する。各部材の位置関係を示すために、適宜、各図に基準座標を示す。基準座標は、バスバと磁気検知部とが対向配置された方向をX方向(第1方向)、筐体から第1接続端部および第2接続端部が突出する方向をY方向(第2方向)、X方向およびY方向と直交する方向をZ方向(第3方向)とする。X方向およびY方向が磁気検知部の感度軸に直交する方向であり、Z方向が磁気検知部の感度軸の方向である。
【0020】
図10は、従来の電流センサ100を模式的に示す断面図である。
電流センサ100は、バスバ102と外部との接続部として、筐体104から突出する第1接続端部102aおよび第2接続端部102cを備えている。第1接続端部102aと第2接続端部102cとは、X方向において筐体104から突出する位置が異なっている。第1接続端部102aと第2接続端部102cとの上下方向(X方向)の位置が違う場合、対向部102bを磁気検知部103の基板105の載置面105sに平行に配置し、対向部102bの両側を屈曲させたバスバ102を用いる。
【0021】
屈曲部を備えたバスバ102は、屈曲部の無いまっすぐなバスバよりも、第1接続端部102aと第2接続端部102cとの間の部分が長くなる。このため、屈曲部を備えたバスバ102の抵抗は、屈曲部が無いバスバよりも大きく、被測定電流による発熱量も大きい。
【0022】
また、屈曲部を備えたバスバ102は、磁気検知部103のX2方向およびY1方向に位置することから、二方向から磁気検知部103への熱の影響を及ぼす。このため、磁気検知部103は、一方向のみに位置するバスバよりも、屈曲部を備えたバスバ102からの熱の影響を受けやすい。
【0023】
磁気検知部103は、被測定電流が流れたときのバスバ102の発熱に加えて、パワー半導体と呼ばれるバスバ102に接続されたスイッチングデバイス(パワーモジュール)等の高温機器からの熱の影響を受ける。電流センサ100では、バスバ102における対向部102bが基板105の載置面105sに平行に配置されている。このため、第1接続端部102aまたは第2接続端部102cの何れに高温機器を接続した場合でも、バスバ102および基板105を介して、磁気検知部103が受ける高温機器の熱の影響は同程度である。
【0024】
そこで、本実施形態の電流センサは、磁気検知部103に対する高温機器からの熱の影響を抑えて、被測定電流の大電流化に対応して高精度の測定を可能とするために、従来のバスバ102とは異なるバスバを用いている。以下、本実施形態の電流センサについて説明する。
【0025】
図1は、本実施形態に係る電流センサ1を模式的に示す斜視図である。
図2および図3は、図1のAA線における断面を模式的に示す一部断面斜視図および断面図である。
【0026】
電流センサ1は、バスバ2と、磁気検知部3と、筐体4とを備えている。
バスバ2は、銅、真鍮、アルミ等で構成され、検出対象の被測定電流が流れる。バスバ2は、板状に形成され、バスバ2のX方向(第1方向)X1側の板面に、磁気検知部3が対向配置されている。そして、バスバ2は、X方向と直交するY方向(第2方向)における、筐体4のY1側(一方側)から突出する第1接続端部2aと、筐体4のY2側(他方側)から突出する第2接続端部2cとを有している。
【0027】
バスバ2の第1接続端部2aと第2接続端部2cとは、X方向およびY方向と直交するZ方向(第3方向)からみたときに、X方向における位置が異なっている。そこで、磁気検知部3が設けられた基板5の載置面5sに対向するバスバ2の対向部2bを、Z方向から見たときにY方向と交差するように設けている。本発明の実施形態において、X方向に見たときに磁気検知部3と重なる部分を含むバスバ2の平面を対向部2bという。
【0028】
対向部2bは、バスバ2をX方向に見たときに基板5と重なる部分を含んでおり、対向部2bを構成する2つの板面が筐体4の上下(X方向におけるX1とX2)にそれぞれ対応する。対向部2bを含むバスバ2の一部が、インサート成形によりケース4aと一体に形成されている。
【0029】
バスバ2は、図10に示すバスバ102のように、対向部102bを基板105の載置面105sに対して平行に設けるのではなく、対向部2bを基板5の載置面5sに平行なY方向と交差するように設けている。これにより、バスバ102においてX方向の位置が異なる第1接続端部2aと第2接続端部2cとをつなぐ部分の長さ、すなわちバスバ102において筐体4の内部に位置する部分の長さが短くなるため、バスバ2の抵抗値が小さくなる。電流センサ1では、バスバ2の抵抗値を小さくすることによって、被測定電流が流れたときのバスバ2の発熱量を低減させている。
【0030】
対向部2bは、Y方向における第1接続端部2a側(Y1側)から第2接続端部2c側(Y2側)に向けて、対向部2bと磁気検知部3が載置された基板5の載置面5sとの距離L1が徐々に大きくなるように構成されている。このため、相対的に高温となる高温機器を第2接続端部2cに接続することにより、高温機器の熱がバスバ2および基板5を介して、磁気検知部3に伝わることを低減できる。したがって、高温機器からの受熱量を小さくして、磁気検知部3が高温になることを抑制することができる。
【0031】
図2および図3では、対向部2bと載置面5sとの距離L1が徐々に大きくなるように構成された態様を示した。しかし、対向部2bは、第1接続端部2aの突出箇所2a1を通りY方向(第2方向)およびZ方向(第3方向)に平行な、図3に一点鎖線で示した平面との距離L2が徐々に大きくなるように形成されていればよい。
本発明の実施形態において、第1接続端部2aにおける筐体4から突出した箇所を突出箇所2a1といい、第2接続端部2cにおける筐体4から突出した箇所を突出箇所2c1という。
【0032】
バスバ2に被測定電流が流れたときに発生する磁界を検出する磁気検知部3は、検知面3sに平行な方向の磁界を検知することができる。より詳しく言えば、磁気検知部3はZ方向の磁界を検知することができ、Z方向が感度軸である。磁気検知部3は、検知面3sの法線N3sの方向がX方向(第1方向)と平行になるように、YZ平面と平行に配置されている。磁気検知部3の検知面3sをバスバ2の対向部2bに正対させることにより、バスバ2からの誘導磁界を精度よく検知できる。磁気検知部3の検出素子として、磁気抵抗効果素子、ホール素子等を用いることができる。
【0033】
筐体4は、X方向に開口した収納空間40を備えたケース4aと、収納空間40を覆うカバー4bとからなる。磁気検知部3が設けられた基板5は、エポキシガラスやセラミック等で構成される。基板5は、固定部材(図示せず)によりケース4aに固定され、収納空間40に収納されている。
【0034】
電流センサ1では、バスバ2の対向部2bおよび第1磁気シールド6がケース4aにインサート成形されている。また、第2磁気シールド7がカバー4bにインサート成形されている。詳細な構造については後述するが、第1磁気シールド6と第2磁気シールド7との間にバスバ2および磁気検知部3を配置することで、第1磁気シールド6および第2磁気シールド7により外乱磁場ノイズを遮断して、磁気検知部3に加わる外乱磁場ノイズを低減できるため、磁気検知部3の外乱磁場ノイズ耐性が向上する。
【0035】
第1磁気シールド6をケース4aに、第2磁気シールド7をカバー4bにそれぞれインサート成形することにより、第1磁気シールド6および第2磁気シールド7を所定の位置に配置することができるため、検知精度の良好な電流センサ1となる。第1磁気シールド6および第2磁気シールド7としては、例えば、同一形状の金属製の板状体を複数枚重ねたものが用いられる。なお、説明に用いる各図においては、板状体を複数枚重ねたものを簡略化して1枚の板状体として第1磁気シールド6および第2磁気シールド7を示している。
【0036】
図4は、図1の電流センサ1における、第1磁気シールド6、第2磁気シールド7、バスバ2、磁気検知部3および基板5の位置関係を模式的に示す断面図である。
電流センサ1の筐体4に保持されている第1磁気シールド6および第2磁気シールド7は、平板状に形成されている。
【0037】
第1磁気シールド6は、その磁気シールド面6sの法線方向と対向部2bの対向面2bsの法線方向とが平行となるように設けられる。第1磁気シールド6は、バスバ2の対向部2bを基準として磁気検知部3とはX方向における反対側(X2側)に配置されている。換言すると、第1磁気シールド6は、X方向において、バスバ2を挟んで磁気検知部3の反対側にある。
【0038】
第2磁気シールド7は、その磁気シールド面7sの法線方向と、磁気検知部3の検知面3sの法線方向とが平行となるように設けられる。第2磁気シールド7は、磁気検知部3を基準としてバスバ2の対向部2bとはX方向における反対側(X1側)に配置されている。換言すると、第2磁気シールド7は、X方向において、磁気検知部3を挟んでバスバ2の反対側にある。
【0039】
図3および図4に示すように、第1磁気シールド6および第2磁気シールド7が平板タイプであるとき、バスバ2側の第1磁気シールド6は磁気シールド面6sが対向部2bの対向面2bsに平行となるように、対向部2bに対向して配置される。磁気検知部3側の第2磁気シールド7は、磁気シールド面7sが磁気検知部3の検知面3sと平行になるように配置される。換言すれば、磁気シールド面6sの法線N6sと対向面2bsの法線N2bsとは平行であり、磁気シールド面7sの法線N7sと検知面3sの法線N3sとは平行であるが、磁気シールド面6sの法線N6sと磁気シールド面7sの法線N7sとは非平行となる。したがって、前述の通り、第1磁気シールド6と第2磁気シールド7との間にバスバ2および磁気検知部3が配置される構造となる。
【0040】
また、第1磁気シールド6をより第1接続端部2a側に寄せて、かつX方向に沿って見たときに磁気検知部3に重なる位置に配置する。すなわち、電流センサ1は、第1磁気シールド6のY方向における中点6cが、第1接続端部2aの突出箇所2a1と第2接続端部2cの突出箇所2c1とのY方向の中心線Cよりも、突出箇所2a1側に位置している。対して、図10に示す従来の電流センサ100は、第1磁気シールド106のY方向における中点106cが、第1接続端部102aの突出箇所102a1と第2接続端部102cの突出箇所102c1とのY方向の中心線C上に位置している。
電流センサ1を上述した構成とすることで、従来の電流センサ100における第1磁気シールド106よりもX1側に第1磁気シールド6を配置することが可能になる。したがって、X方向における電流センサ1の小型化が可能となる。
【0041】
なお、図3および図4では、全体が平板状に形成された第1磁気シールド6および第2磁気シールド7を示したが、第1磁気シールド6および第2磁気シールド7は、それぞれ、平板状に形成された平板部分を有していればよい。
【0042】
図5は、図1のBB線における断面を模式的に示す断面図である。
バスバ2および磁気検知部3を備えた構成を計測ユニット9としたとき、複数の計測ユニット9は、Z方向(第3方向)に沿って複数配置されており、筐体4によって一体に保持されている。
複数の計測ユニット9により、複数のバスバに流れる被測定電流を測定することが可能になる。また、複数の計測ユニット9を筐体4に一体に保持することにより、各計測ユニット9を所定の位置に維持することができるため、測定精度の良好な電流センサ1となる。
【0043】
電流センサ1の計測ユニット9はそれぞれ、第1磁気シールド6および第2磁気シールド7を備えている。しかし、複数のバスバ2および磁気検知部3に対して、共通の磁気シールドを設けてもよく、第1磁気シールド6および第2磁気シールド7の一方のみを備えた構成としてもよい。あるいは、平板状の磁気シールドに代えて、U字形状の磁気シールドを用いてもよい。
【0044】
<変形例>
図6は、変形例に係る電流センサ11の断面図である。
図7は、図6の電流センサ11の正面図である。
電流センサ11は、筐体4におけるケース4aがヒートシンク部41を備えている構成において、電流センサ1と異なっている。
【0045】
筐体4のケース4aは、バスバ2の対向部2bを基準として、磁気検知部3が配置された側とは反対側であるX方向X2側にヒートシンク部41を有している。図7に示すように、ヒートシンク部41は、複数の羽(フィン)状の部材を並べた構成によって、表面積を大きくして、収納空間40内の熱をケース4aの外部に放出する効率を向上させている。これにより、収納空間40内の温度上昇を抑制し、磁気検知部3の温度上昇を低減することができる。
【0046】
バスバ2の対向部2bをY方向と交差する方向に設けたことで生じたスペースにヒートシンク部41を形成することで、筐体4のサイズを大きくせずに磁気検知部3の耐熱性を向上させることができる。
【0047】
図8は、他の変形例に係る電流センサ12の断面図である。
電流センサ12は、バスバ2および第1磁気シールド6が筐体4のケース4aにインサート成形ではなく、固定部材により固定されている。また、磁気検知部3が設けられている載置面5sが基板5のX1側のバスバ2とは反対の面であり、筐体4がケース4aのみからなりカバー4bを備えておらず、ケース4aの外形がバスバ2の対向部2bに沿っていない。これらの点において、電流センサ12と電流センサ1とは異なっている。
【0048】
なお、本変形例の構造はカバー4bを省略するなどして小型化・軽量化・放熱性などの向上も目論んだものであり、上述した実施形態と同様にバスバ2などを筐体4にインサート成形して一体化した構造などとしてもよい。
【0049】
電流センサ12は、電流センサ1同様、対向部2bをY方向と交差するように設けたバスバ2を備えている。対向部2bを含む筐体4内の部分を短くすることにより、バスバ2の抵抗値を小さくして、被測定電流が流れたときのバスバ2の発熱量を低減させている。
【0050】
図9は、変形例に係る電流センサ13における、バスバ2、磁気検知部3、基板5および磁気シールド8の位置関係を示す断面図である。
電流センサ13は、平板タイプの第1磁気シールド6に代えて、断面コ字状のU字タイプの磁気シールド8を備えている。磁気シールド8は、平板状に形成された基部8aと、基部8aのZ方向(第3方向)における両端から基部8aの法線方向に平行なX方向で、かつバスバ2があるX1側へ延設された側壁部8bと、を有している。磁気シールド8は、基部8aの法線方向と対向部2bの対向面2bsの法線方向が平行となり、基部8aと対向部2bとが対向するように配置されている。
【0051】
電流センサ13は、断面U字形状の底部に相当する基部8aが対向部2bに平行となるように、かつ対向部2bに対向して配置され、U字形状の両側に相当する側壁部8bが磁気検知部3側へ延設された磁気シールド8を備えている。この構成により、磁気検知部3のバスバ2側からの磁気ノイズの影響をより効果的に低減することができる。
【0052】
図9の電流センサ13は、第2磁気シールド7を備えていないが、磁気シールド8と第2磁気シールド7とを備えた構成としてもよい。この場合には、磁気シールド8の基部8aにおけるバスバ2との対向面2bsの法線と第2磁気シールド7の磁気シールド面7sの法線とは、第1磁気シールド6の磁気シールド面6sの法線N6sと第2磁気シールド7の磁気シールド面7sの法線N7sとの関係と同様に、非平行となる(図3参照)。
【0053】
本明細書において開示された実施形態は、全ての点で例示であってこの実施形態に制限されるものではない。本発明の範囲は、上述した実施形態のみの説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、各種機器を制御したり監視したりするために、各種機器に取り付けて被測定電流を測定する電流センサとして有用である。
【符号の説明】
【0055】
1、11、12、13:電流センサ
2 :バスバ
2a :第1接続端部
2a1 :突出箇所
2b :対向部
2bs :対向面
2c :第2接続端部
2c1 :突出箇所
3 :磁気検知部
3s :検知面
4 :筐体
4a :ケース
4b :カバー
40 :収納空間
41 :ヒートシンク部
5 :基板
5s :載置面
6 :第1磁気シールド
6c :中点
6s :磁気シールド面
7 :第2磁気シールド
7s :磁気シールド面
8 :磁気シールド
8a :基部
8b :側壁部
9 :計測ユニット
100 :電流センサ
102 :バスバ
102a :第1接続端部
102a1:突出箇所
102b :対向部
102c :第2接続端部
102c1:突出箇所
103 :磁気検知部
104 :筐体
105 :基板
105s :載置面
106 :第1磁気シールド
106c :中点
L1、L2:距離
N2bs、N3s、N6s、N7s:法線
C :中心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10