IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社パスコの特許一覧

<>
  • 特開-監視システム 図1
  • 特開-監視システム 図2
  • 特開-監視システム 図3
  • 特開-監視システム 図4
  • 特開-監視システム 図5
  • 特開-監視システム 図6
  • 特開-監視システム 図7
  • 特開-監視システム 図8
  • 特開-監視システム 図9
  • 特開-監視システム 図10
  • 特開-監視システム 図11
  • 特開-監視システム 図12
  • 特開-監視システム 図13
  • 特開-監視システム 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010565
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】監視システム
(51)【国際特許分類】
   G01D 21/02 20060101AFI20240117BHJP
   G08C 15/00 20060101ALI20240117BHJP
   G01D 21/00 20060101ALI20240117BHJP
   G01B 21/00 20060101ALI20240117BHJP
   E01D 22/00 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
G01D21/02
G08C15/00 D
G01D21/00 Q
G01B21/00 C
E01D22/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111970
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000135771
【氏名又は名称】株式会社パスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 隆
(72)【発明者】
【氏名】荒 洋造
【テーマコード(参考)】
2D059
2F069
2F073
2F076
【Fターム(参考)】
2D059AA01
2D059AA03
2D059GG39
2F069AA06
2F069BB40
2F069DD02
2F069GG01
2F069GG04
2F069GG06
2F069GG07
2F069GG41
2F069HH09
2F069JJ13
2F069MM04
2F069QQ05
2F069QQ08
2F073AA01
2F073AA02
2F073AA11
2F073AB01
2F073AB12
2F073BB01
2F073BB09
2F073BC02
2F073CC03
2F073CC08
2F073CC12
2F073CD11
2F073DD05
2F073DD07
2F073DE13
2F073EE01
2F073FF01
2F073FG01
2F073FG02
2F073GG01
2F073GG04
2F073GG08
2F073GG09
2F076BA13
2F076BA14
2F076BA16
2F076BD02
2F076BD05
2F076BD17
2F076BE01
2F076BE05
2F076BE09
2F076BE18
(57)【要約】
【課題】異常の発生を適切に通知することが可能な監視システムを提供する。
【解決手段】計測装置は、橋梁の第1位置に設置される第1ユニットと、橋梁の第1位置から遊間を跨いだ第2位置に設置される第2ユニットと、第1ユニットと第2ユニットの間に配置され、且つ、第2ユニットに保持される接続部と、第1ユニットに配置され、且つ、接続部の移動量を計測するセンサと、情報処理装置と通信可能な第1通信部と、を有し、計測装置又は情報処理装置は、計測装置において機器異常が発生したか否かを判定する判定手段を有し、情報処理装置は、計測装置と通信可能な第2通信部と、移動量がしきい値を超えた場合は橋梁の管理者の第1連絡先に橋梁における異常の発生を通知し、機器異常が発生したと判定された場合は計測装置の管理者の第2連絡先に機器異常の発生を通知する通知手段と、を有する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測装置と、情報処理装置とを有する監視システムであって、
前記計測装置は、
橋梁の第1位置に設置される第1ユニットと、
橋梁の前記第1位置から遊間を跨いだ第2位置に設置される第2ユニットと、
前記第1ユニットと前記第2ユニットの間に配置され、且つ、前記第2ユニットに保持される接続部と、
前記第1ユニットに配置され、且つ、前記接続部の移動量を計測するセンサと、
前記情報処理装置と通信可能な第1通信部と、を有し、
前記計測装置又は前記情報処理装置は、前記計測装置において機器異常が発生したか否かを判定する判定手段を有し、
前記情報処理装置は、
前記計測装置と通信可能な第2通信部と、
前記移動量に基づく値がしきい値を超えた場合は橋梁の管理者の第1連絡先に橋梁における異常の発生を通知し、前記機器異常が発生したと判定された場合は前記計測装置の管理者の第2連絡先に前記機器異常の発生を通知する通知手段と、
を有することを特徴とする監視システム。
【請求項2】
前記第1位置及び前記第2位置のうちの一方は、橋梁の橋桁及び橋台のうちの一方に設定され、前記第1位置及び前記第2位置のうちの他方は、橋梁の橋桁及び橋台のうちの他方に設定される、請求項1に記載の監視システム。
【請求項3】
前記第1位置及び前記第2位置のうちの一方は、橋梁において固定支承により橋台に支えられた橋桁に設定される、請求項1または2に記載の監視システム。
【請求項4】
前記計測装置は、前記第1ユニットに配置され、且つ、前記第1ユニットの傾きを検出する第2センサをさらに有し、
前記判定手段は、前記傾きに基づく値が傾きしきい値を超えた場合に、前記機器異常が発生したと判定し、
前記第1位置は、橋梁の橋桁に設定され、
前記第2位置は、橋梁の橋台に設定される、請求項1または2に記載の監視システム。
【請求項5】
前記判定手段は、前記移動量に基づく値が前記しきい値を超える大きさの上限値を超えた場合に、前記機器異常が発生したと判定する、請求項1または2に記載の監視システム。
【請求項6】
計測装置と、情報処理装置とを有する監視システムであって、
前記計測装置は、
橋梁の第1位置に設置される第1ユニットと、
橋梁の前記第1位置から遊間を跨いだ第2位置に設置される第2ユニットと、
前記第1ユニットと前記第2ユニットの間に配置され、且つ、前記第2ユニットに保持される接続部と、
前記第1ユニットに配置され、且つ、前記接続部の移動量を計測するセンサと、
前記情報処理装置と通信可能な第1通信部と、を有し、
前記情報処理装置は、
前記計測装置と通信可能な第2通信部と、
橋梁における異常が発生した場合に、橋梁の管理者に橋梁における異常の発生を通知する通知手段と、を有し、
前記計測装置又は前記情報処理装置は、第1時間毎に前記移動量に基づく値と第1しきい値とを比較して前記移動量に基づく値が前記第1しきい値を超えた場合に橋梁における異常が発生したと判定するとともに、前記第1時間より短い第2時間毎に前記移動量に基づく値と前記第1しきい値を超える大きさの第2しきい値とを比較して前記移動量に基づく値が前記第2しきい値を超えた場合に橋梁における異常が発生したと判定する判定手段を有する、
ことを特徴とする監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、橋梁の維持管理のために、橋梁における変位を計測し、通信網を介して監視するシステムが開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数のケースと、各ケースの収容部が形成する空間に配置され、所定方向に移動可能なスケール部と、センサ部とを含む間隙幅データ収集システムが開示されている。各ケースは、構造物の間隙をまたいで構造物に設置され、センサ部は、スケール部における間隙をまたぐ第1の点と第2の点との間の長さを測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-120521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
橋梁を監視する監視システムでは、長期にわたる維持管理を効率的に行うために日常的には生じ得ない大きな変位を日常的な変位と区別して通知する、長期間にわたって監視を確実に継続するために変位を計測する機器に生じた不具合を通知する、及び/又は、橋梁や機器に生じた異常の緊急性を考慮した的確なタイミングで通知を行うといったように、異常の発生を適切に通知することが要求されている。
【0006】
本発明は、異常の発生を適切に通知することが可能な監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る監視システムは、計測装置と、情報処理装置とを有する監視システムであって、計測装置は、橋梁の第1位置に設置される第1ユニットと、橋梁の第1位置から遊間を跨いだ第2位置に設置される第2ユニットと、第1ユニットと第2ユニットの間に配置され、且つ、第2ユニットに保持される接続部と、第1ユニットに配置され、且つ、接続部の移動量を計測するセンサと、情報処理装置と通信可能な第1通信部と、を有し、計測装置又は情報処理装置は、計測装置において機器異常が発生したか否かを判定する判定手段を有し、情報処理装置は、計測装置と通信可能な第2通信部と、移動量に基づく値がしきい値を超えた場合は橋梁の管理者の第1連絡先に橋梁における異常の発生を通知し、機器異常が発生したと判定された場合は計測装置の管理者の第2連絡先に機器異常の発生を通知する通知手段と、を有する。
【0008】
また、本発明に係る監視システムにおいて、第1位置及び第2位置のうちの一方は、橋梁の橋桁及び橋台のうちの一方に設定され、第1位置及び第2位置のうちの他方は、橋梁の橋桁及び橋台のうちの他方に設定されることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る監視システムにおいて、第1位置及び第2位置のうちの一方は、橋梁において固定支承により橋台に支えられた橋桁に設定されることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る監視システムにおいて、計測装置は、第1ユニットに配置され、且つ、第1ユニットの傾きを検出する第2センサをさらに有し、判定手段は、傾きに基づく値が傾きしきい値を超えた場合に、機器異常が発生したと判定し、第1位置は、橋梁の橋桁に設定され、第2位置は、橋梁の橋台に設定されることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る監視システムにおいて、判定手段は、移動量に基づく値がしきい値を超える大きさの上限値を超えた場合に、機器異常が発生したと判定することが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る監視システムは、計測装置と、情報処理装置とを有する監視システムであって、計測装置は、橋梁の第1位置に設置される第1ユニットと、橋梁の第1位置から遊間を跨いだ第2位置に設置される第2ユニットと、第1ユニットと第2ユニットの間に配置され、且つ、第2ユニットに保持される接続部と、第1ユニットに配置され、且つ、接続部の移動量を計測するセンサと、情報処理装置と通信可能な第1通信部と、を有し、情報処理装置は、計測装置と通信可能な第2通信部と、橋梁における異常が発生した場合に、橋梁の管理者に橋梁における異常の発生を通知する通知手段と、を有し、計測装置又は情報処理装置は、第1時間毎に移動量に基づく値と第1しきい値とを比較して移動量に基づく値が第1しきい値を超えた場合に橋梁における異常が発生したと判定するとともに、第1時間より短い第2時間毎に移動量に基づく値と第1しきい値を超える大きさの第2しきい値とを比較して移動量に基づく値が第2しきい値を超えた場合に橋梁における異常が発生したと判定する判定手段を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る監視システムは、異常の発生を適切に通知することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】監視システム1の一例の構成図である。
図2】計測装置100の構成を説明するための模式図である。
図3】計測装置100の構成を説明するための模式図である。
図4】(A)、(B)は技術的意義について説明するための模式図である。
図5】橋桁B1にかかる荷重と、橋桁B1の移動量との関係を示すグラフである。
図6】計測装置100の概略構成を示すブロック図である。
図7】情報処理装置200の概略構成を示すブロック図である。
図8】管理処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図9】管理処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図10】(A)は第1変化量と温度の変化を示すグラフであり、(B)は第1変化量と温度の組合せの相関図であり、(C)は変化量と回帰直線E2との差の分布を示すグラフである。
図11】(A)は一日毎の回帰直線の傾きa及び切片bの変化を示すグラフであり、(B)は切片bと一日毎の平均温度とを示すグラフである。
図12】計測処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図13】計測処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図14】他の実施形態に係る監視システム1について説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明の様々な実施形態について説明する。本発明の技術的範囲はこれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明及びその均等物に及ぶことに留意されたい。
【0016】
以下では、日常的な変位(定常的な変位)に対して有意な差を有する変位(非定常的な変位)が生じたこと、すなわち日常的に計測される移動量(移動量の定常値)に対して有意な差を有する移動量(移動量の非定常値)が計測されたことを構造物(例:橋梁)の異常または変位異常と称する。
【0017】
図1は、本発明に係る監視システム1の一例の構成図である。
【0018】
監視システム1は、一又は複数の計測装置100と、情報処理装置200と、一又は複数の構造物管理者端末300と、一又は複数の装置管理者端末400とを有する。各計測装置100、情報処理装置200、各構造物管理者端末300及び各装置管理者端末400は、第1ネットワークN1及び第2ネットワークN2を介して相互に通信接続されている。第1ネットワークN1は、例えば携帯電話ネットワークである。各計測装置100は、基地局を介して第1ネットワークN1に通信接続される。なお、第1ネットワークN1は、無線LAN(Local Area Network)等でもよい。その場合、各計測装置100は、アクセスポイントを介して第1ネットワークN1に通信接続されてもよい。第2ネットワークN2は、イントラネット又はインターネット等である。第1ネットワークN1及び第2ネットワークN2は、ゲートウェイ装置等を介して通信接続される。情報処理装置200、各構造物管理者端末300及び各装置管理者端末400は、第2ネットワークN2に通信接続される。
【0019】
監視システム1は、橋梁、トンネル又はビル等の構造物における異常の発生を監視する。各構造物管理者端末300は、監視システム1の利用者(顧客)、即ち構造物(監視対象)の管理者(以下では構造物管理者と称する場合がある)が利用する装置である。各構造物管理者端末300は、パーソナルコンピュータ、ノート型パーソナルコンピュータ、タブレット型コンピュータ、スマートフォン等である。各装置管理者端末400は、計測装置100(監視システム1)の管理者(以下では装置管理者と称する場合がある)が利用する装置である。各装置管理者端末400は、パーソナルコンピュータ、ノート型パーソナルコンピュータ、タブレット型コンピュータ、スマートフォン等である。
【0020】
図2及び図3は、計測装置100の構成を説明するための模式図である。図2は、使用時における計測装置100の斜視図であり、図3は、第1ユニット110のフレームを外した状態の計測装置100の斜視図である。
【0021】
複数の計測装置100のそれぞれは、同様の構成及び機能を有する。図2及び図3に示すように、計測装置100は、基準物T2と、基準物T2に対して間隙を跨いだ位置に配置された、計測対象である対象物T1との間の距離の変化を計測することにより、基準物T2に対する対象物T1の変位、即ち相対位置の変化を計測する。間隙は、遊間、遊間以外として設けられた二つの物の間の空間、又は、ひび割れにより生じる隙間である。対象物T1は、例えば橋梁の橋桁、トンネル又はビル等である。対象物T1が橋桁である場合、基準物T2は、例えばその橋桁の端部が配置される、橋梁の橋台等である。対象物T1がトンネルである場合、基準物T2は、例えばそのトンネルのセグメントを連結する継手部等である。対象物T1がビルである場合、基準物T2は、例えばそのビルとビルの間をつなぐエキスパンションジョイント部の一方等である。なお、基準物T2及び対象物T1は、遊間を有する橋桁の、遊間を挟んで配置された各部、又は、遊間を有するトンネルの、遊間を挟んで配置された壁面等のように、同一の構造物でもよい。
【0022】
計測装置100は、第1ユニット110、第2ユニット120及び接続部130等を有する。第1ユニット110は、対象物T1内の間隙付近の適宜な位置P1に設置される。第2ユニット120は、対象物T1内の位置P1から間隙を跨いだ、基準物T2内の位置P2に、即ち対象物T1内の位置P1から離間した、基準物T2内の位置P2に設置される。位置P1は、第1位置の一例であり、位置P2は、第2位置の一例である。接続部130は、第1ユニット110と第2ユニット120の間に配置される。
【0023】
なお、第1ユニット110が対象物T1内の位置P1に、第2ユニット120が基準物T2内の位置P2に設置されるのでなく、第1ユニット110が基準物T2内の位置P2に、第2ユニット120が対象物T1内の位置P1に設置されてもよい。その場合、基準物T2内の位置P2が第1位置の一例であり、対象物T1内の位置P1が第2位置の一例である。橋梁が監視の対象である場合は、このように、第1ユニット110が設置される第1位置及び第2ユニット120が設置される第2位置のうちの一方は、橋梁の橋桁及び橋台のうちの一方に設定される。一方、第1ユニット110が設置される第1位置及び第2ユニット120が設置される第2位置のうちの他方は、橋梁の橋桁及び橋台のうちの他方に設定される。
【0024】
図4(A)、(B)は、第1ユニット110及び第2ユニット120が橋梁の橋桁及び橋台に設置されることの技術的意義について説明するための模式図である。図4(A)は正常な状態の橋桁B1及び橋台B2を示し、図4(B)は中央部分が損傷して亀裂(割れ目)が発生した橋桁Bと、橋台B2とを示す。橋桁B1の左側の端部は、固定支承U1により橋台B2に固定されるように支えられている。一方、橋桁B1の右側の端部は、可動支承U2により橋台B2に対して水平方向に移動可能に支えられている。図4(A)、(B)に示すように、橋桁B1自体及び橋桁B1上に存在する物体の重量により、橋桁B1の中央部分に多大な荷重がかかり、橋桁B1は下方に向けて撓み、中央部分に亀裂が発生する可能性がある。
【0025】
図5は、橋桁B1にかかる荷重と、橋桁B1の移動量との関係を示すグラフである。図5の横軸は橋桁B1にかかる荷重[kN]を示し、縦軸は橋桁B1の移動量[mm]を示す。グラフH1は、橋桁B1の固定支承U1側の端部の水平方向の移動量(橋台B2と橋桁B1の固定支承U1側の端部の間の水平方向の距離D1の変化量)を示す。グラフH2は、橋桁B1の可動支承U2側の端部の水平方向の移動量(橋台B2と橋桁B1の可動支承U2側の端部の間の水平方向の距離D2の変化量)を示す。グラフH3は、橋桁B1の固定支承U1側の端部の垂直方向の移動量(橋台B2と橋桁B1の固定支承U1側の端部の間の垂直方向の距離D3の変化量)を示す。グラフH4は、橋桁B1の亀裂部分の垂直方向の長さD4の変化量を示す。グラフH5は、橋桁B1の亀裂部分の水平方向の長さD5の変化量を示す。荷重K1は、ひび割れが発生し始める荷重を示す。荷重K2は、腹筋降伏が発生し始める荷重を示す。荷重K3は、直交ひび割れが発生し始める荷重を示す。荷重K4は、引張手筋降伏が発生し始める荷重を示す。
【0026】
図5に示すように、橋桁B1にかかる荷重が増大したときの、橋桁B1の端部の水平方向の移動量(グラフH1、H2)は、橋桁B1の端部の垂直方向の移動量(グラフH3)、橋桁B1の亀裂部分の垂直方向、水平方向の長さの変化量(グラフH4、H5)より十分に大きい。なお、損傷して亀裂が発生するまでもなく、伸長等により橋桁の撓みが発生する場合もある。その場合も同様に橋桁の端部の水平方向の移動量は他の移動量よりも十分に大きくなる。したがって、計測装置100は、第1ユニット110及び第2ユニット120を橋梁の橋桁B1及び橋台B2に設置し、橋桁B1と橋台B2の間の距離を監視することにより、橋梁の変位の発生を早期且つ確実に検出することができる。
【0027】
また、橋桁B1が下方に向けて撓んだ場合、橋桁B1の固定支承U1側の端部は橋台B2に支えられている一点を中心に揺動(回転)し、その結果、橋桁B1の固定支承U1側の端部の上面は、橋台B2から離れる方向に向けて水平方向に大きく移動する。一方、橋桁B1の可動支承U2側の端部は水平方向に移動可能に設けられているため、橋桁B1が下方に向けて撓んだ場合の可動支承U2側の端部の揺動軸(回転軸)はやや上方の位置となり、その結果、橋桁B1の可動支承U2側の端部の上面の移動量は小さくなる。したがって、図5に示すように、橋桁B1にかかる荷重が増大したときの、橋桁B1の固定支承U1側の端部の水平方向の移動量(グラフH1)は、橋桁B1の可動支承U2側の端部の水平方向の移動量(グラフH2)より大きくなる。したがって、計測装置100は、橋梁において固定支承U1により橋台に支えられた橋桁B1と橋台B2の間に設置されることが好ましい。即ち、第1ユニット110が設置される第1位置及び第2ユニット120が設置される第2位置のうちの一方は、橋梁において固定支承U1により橋台B2に支えられた橋桁B1に設定されることが好ましい。これにより、計測装置100は、橋梁の変位の発生をより早期且つ確実に検出することができる。
【0028】
なお、計測装置100は、橋梁において可動支承U2により橋台に支えられた橋桁B1と橋台B2の間に設置されてもよい。また、計測装置100は、橋桁の両端(固定支承U1により橋台B2に支えられた橋桁B1と橋台B2の間、及び、可動支承U2により橋台B2に支えられた橋桁B1と橋台B2の間の両方)に設置されてもよい。また、計測装置100は、間隔を空けて配置された相互に隣り合う橋桁の間に設置されてもよい。この場合、情報処理装置200は、一つの橋梁に設置された複数の計測装置100から送信された情報に基づいて、橋梁における変位異常が発生しているか否かを複合的に判定してもよい。
【0029】
図2及び図3に戻って、第1ユニット110は、略直方体の形状を有するフレームで囲まれた筐体(ケース)と第1センサ112等の内容物とで構成される。第1ユニット110の底面110aは、対象物T1の上面、底面又は側面等の表面に設置される設置面である。第1ユニット110の、第2ユニット120側の側面110bには、開口110cが形成される。第1ユニット110の上面110dには、開口110eが形成される。第1ユニット110には、固定部材111、第1センサ112、第2センサ113、温度センサ114、バッテリ115、基板116、第1通信装置117、アンテナ118及び制御ユニット119等が配置される。
【0030】
第2ユニット120は、略直方体の形状を有するフレームで囲まれた筐体(ケース)である。第2ユニット120の底面120aは、基準物T2の上面、底面又は側面等の表面に設置される設置面である。第2ユニット120の、第1ユニット110側の側面120bには、保持部121が設けられる。
【0031】
接続部130は、第1ユニット110と第2ユニット120の間に配置される。接続部130の一端は、第2ユニット120の保持部121に取り付けられる。接続部130の他端は、第1ユニット110の側面110bに形成された開口110cを介して第1ユニット110の内部に配置される。接続部130は、ロッド部131、ジャバラ部132、第1係止部133、第1被係止部134、クランク部135及び第2係止部136等を有する。
【0032】
図2において、矢印A1はロッド部131の延伸方向を示し、矢印A2は高さ方向を示し、矢印A3はロッド部131の延伸方向A1及び高さ方向A2と直交する横方向A3を示す。
【0033】
第1ユニット110の固定部材111は、接続部130のロッド部131を初期位置に固定させるための部材である。製品出荷時に、固定部材111は、上面110dから開口110eを介して第1ユニット110内部に挿入される。固定部材111の先端がロッド部131に形成された開口131aに係合することにより、固定部材111は、ロッド部131を初期位置に固定させる。これにより、計測装置100の輸送中又は設置中に、ロッド部131が第1ユニット110内部の部材、特に第1センサ112等に衝撃を与えることが防止され、第1ユニット110の故障の発生が防止される。また、計測装置100の輸送中又は設置中に、ロッド部131が計測範囲中央の初期位置からずれて第1センサ112の検知可能範囲を最大限に利用できなくなることが抑制される。
【0034】
一方、使用時(設置時)に、固定部材111が第1ユニット110から取り外されることにより、ロッド部131が移動可能となり、接続部130は、第1ユニット110に対してロッド部131の延伸方向A1に沿ってスライド移動可能となる。固定部材111が取り外された後、固定部材111の代わりに、蓋部材111bが開口110eに配置される。これにより、開口110eからの雨、埃等の進入が防止され、第1ユニット110の故障の発生が防止される。
【0035】
ロッド部131の初期位置は、ロッド部131の先端(第1センサ112により検知される位置)が第1センサ112の検知可能範囲の中心に配置される位置に設定される。これにより、計測装置100は、対象物T1が基準物T2から離間する方向に移動する場合と、基準物T2に接近する方向に移動する場合の両方について、対象物T1の移動距離の計測可能な上限を最大にすることができる。
【0036】
第1センサ112は、センサの一例である。第1センサ112は、第1ユニット110内部に、接続部130のロッド部131の先端(第2ユニット120の反対側の端部)と対向する位置に配置される。ロッド部131の、第2ユニット120の反対側の端部は、接続部の他端の一例である。第1センサ112は、リニアポジションセンサであり、例えば可変抵抗器である。第1センサ112は、ロッド部131の延伸方向A1に沿って延伸する抵抗体と、ロッド部131の先端の移動に従ってその抵抗体上を移動する接点(摺動子)とを含む。抵抗体の両端に設けられた端子には一定の電圧がかけられ、接点の抵抗体上の位置に応じて、接点から出力される電圧が変動する。したがって、第1センサ112は、接点から出力される電圧に基づいて、ロッド部131の先端の位置を検出し、接続部130の移動量を計測することができる。第1センサ112は、ロッド部131が初期位置に配置されている時に接点から出力される電圧に対する、接点から現在出力されている電圧の差に対応するロッド部131の変位、即ち接続部130の移動量を示す変位信号を制御ユニット119に出力する。なお、移動量は正値及び負値を含む。例えば、第1ユニット110が第2ユニット120から離間する方向の移動量が正値を示し、第1ユニット110が第2ユニット120に接近する方向の移動量が負値を示すように定められる。
【0037】
接続部130の一端は、第2ユニット120の保持部121に取り付けられ、それにより、接続部130は第2ユニット120に対して固定される(延伸方向A1にスライド移動しない)。第2ユニット120が設置される基準物T2内の位置P2に対して、第1ユニット110が設置される対象物T1内の位置P1が延伸方向A1に移動した場合、第1センサ112がロッド部131に対して移動し、その結果、第1センサ112から見てロッド部131が相対的に延伸方向A1に移動する。即ち、第1センサ112は、接続部130の他端側の変位を、接続部130の移動量、即ち第2ユニット120が設置される基準物T2内の位置P2と第1ユニット110が設置される対象物T1内の位置P1の間の距離の変化として計測する。
【0038】
なお、第1センサ112は、ロッド部131の延伸方向A1に沿って並べて配置された複数の発光器及び受光器でもよい。各発光器及び各受光器は、ロッド部131の先端の移動範囲を挟んで相互に対向して配置される。第1センサ112は、各受光器が対向して配置された各発光器から出射された光を受光しているか、ロッド部131に遮られて受光していないかにより、各発光器及び各受光器の間にロッド部131が存在するか否かを検出する。第1センサ112は、ロッド部131が初期位置に配置されている時に発光器から出射された光を受光する受光器の数に対する、発光器から出射された光を現在受光している受光器の数の差に対応するロッド部131の変位を示す変位信号を制御ユニット119に出力する。また、第1センサ112は、ロッド部131の先端に向けて光を照射する発光器と、発光器により照射され且つロッド部131の先端で反射した光を受光する受光器とを有してもよい。その場合、第1センサ112は、発光器が光を照射してから受光器が光を受光するまでの時間に基づいてロッド部131の変位を検出する。また、第1センサ112は、撮像センサ等の、ロッド部131の変位を検出可能な他の任意のセンサでもよい。
【0039】
第2センサ113は、第1ユニット110内部に固定して配置される。第2センサ113は、例えばピエゾ抵抗型の3軸加速度センサ又は静電容量型の3軸加速度センサ等であり、第1ユニット110に加わる加速度を3軸方向毎に検出し、検出した加速度を用いて第1ユニット110の傾き(向き)を検出する。第2センサ113は、検出した第1ユニット110の傾きを示す傾き信号を制御ユニット119に出力する。
【0040】
第2センサ113が第1ユニット110内部に固定して配置されることにより、計測装置100は、第1ユニット110の傾きを検出することができる。一般に、橋台は安定しており傾く可能性が低いが、橋桁は下方に撓み傾く可能性が高い。したがって、第1ユニット110が設置される第1位置は、橋梁の橋桁に設定され、第2ユニット120が設置される第2位置は、橋梁の橋台に設定されることが好ましい。第1ユニット110が橋桁側に設置されることにより、計測装置100は、橋桁の水平方向の移動量を検出しつつ、同時に橋桁の傾きを検出することができる。
【0041】
温度センサ114は、第1ユニット110内部に配置される。温度センサ114は、計測装置100が設置される環境、特に第1ユニット110内部における温度(気温)を検出し、検出した温度を示す温度信号を制御ユニット119に出力する。
【0042】
バッテリ115は、一次電池または二次電池である。バッテリ115は、第1センサ112、第2センサ113、温度センサ114、第1通信装置117、アンテナ118及び制御ユニット119と接続され、第1センサ112、第2センサ113、温度センサ114、第1通信装置117、アンテナ118及び制御ユニット119に電力を供給する。また、第1ユニット110には、バッテリ115の電池電圧を計測可能な電圧計(不図示)が設けられ、制御ユニット119は、電圧計によりバッテリ115の電池電圧を検出することができる。
【0043】
基板116は、様々な回路部品が実装された回路基板である。基板116は、樹脂材料等で形成され、第1ユニット110に固定されている。基板116の下面には、第1通信装置117が配置され、基板116の上面には、アンテナ118及び制御ユニット119が配置されている。
【0044】
第1通信装置117は、第1通信部及び出力部の一例であり、情報処理装置200と通信可能に設けられる。第1通信装置117は、無線通信インタフェース回路を備え、計測装置100を無線通信ネットワークに接続する。第1通信装置117は、アンテナ118を介して不図示の基地局との間でLTE(Long Term Evolution)方式、特にLPWA(Low Power Wide Area)方式等による無線通信を行う。なお、基地局との間の通信方式は、LTE方式に限定されず、CDMA(Code Division Multiple Access)方式、W-CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)方式、5G(Fifth Generation)方式等の他の通信方式でもよく、今後使用される通信方式でもよい。第1通信装置117は、制御ユニット119から供給されたデータを、基地局を介して情報処理装置200に送信する。第1通信装置117は、基地局を介して情報処理装置200から受信したデータを制御ユニット119に供給する。また、第1通信装置117は、制御ユニット119からの指示に従って、受信電波強度を制御ユニット119に供給する。なお、第1通信装置117は、アンテナ118を介して不図示のWifi(Wireless Fidelity)のアクセスポイントとの間でIEEE802.11規格の無線通信方式による無線通信を行うものでもよい。
【0045】
アンテナ118は、2GHz帯、1.7GHz帯、900MHz帯、800MHz帯等の帯域を感受帯域とするアンテナである。なお、アンテナ118は、主に2.4GHz帯、5GHz帯等を感受帯域とするアンテナでもよい。
【0046】
制御ユニット119は、計測装置100による処理を制御するユニットである。制御ユニット119は、例えばMCU(Micro Controller Unit)である。制御ユニット119の詳細については後述する。
【0047】
第2ユニット120の保持部121は、接続部130のクランク部135を回転可能に、接続部130の一端側に設けられた第2係止部136を保持する。即ち、保持部121は、接続部130の少なくとも一部を回転可能に接続部130の一端側を保持する。
【0048】
ロッド部131は、第1ユニット110の側面110bに形成された開口110cを介して、第1ユニット110の外部から内部に挿入される。ロッド部131の先端(第2ユニット120の反対側の端部)は、第1センサ112と対向する位置に配置される。ロッド部131は、その延伸方向A1に沿ってスライド移動可能に設けられ、且つ、その延伸方向A1を中心として回転しないように設けられる。ロッド部131は、例えば可能な限り短くしたステンレス鋼で形成される。これにより、気温差によるロッド部131の伸縮の発生が低減され、計測装置100は、気温に関わらず、対象物T1の変位を正しく計測することができる。
【0049】
ジャバラ部132は、第1ユニット110外部において、第1ユニット110の側面120bと当接し且つロッド部131の周囲を取り囲むように設けられる。ジャバラ部132が設けられることにより、第1ユニット110への水滴又は埃等の進入が抑制される。
【0050】
第1係止部133及び第1被係止部134は、係止部の一例である。第1係止部133は、ロッド部131の、第2ユニット120側の端部に設けられる。第1係止部133は、ロッド部131と別部材で形成される。なお、第1係止部133は、ロッド部131と一体に形成されてもよい。第1被係止部134は、クランク部135の、第1ユニット110側の端部に、第1係止部133に螺合するように設けられる。第1被係止部134は、クランク部135と別部材で形成される。なお、第1被係止部134は、クランク部135と一体に形成されてもよい。
【0051】
例えば、第1係止部133は、ナット形状(雌ねじ形状)を有し、第1被係止部134は、ボルト形状(雄ねじ形状)を有する。第1被係止部134は、第1係止部133に螺合することにより、第1係止部133に対して回転可能に設けられる。即ち、クランク部135は、ロッド部131に対して回転可能に設けられる。これにより、計測装置100は、第2ユニット120の設置時にクランク部135を回転させた際のロッド部131への負荷によるロッド部131の故障又は初期位置からのずれを抑制できる。
【0052】
また、第1被係止部134が第1係止部133に螺合して、第1被係止部134の先端が第1係止部133の開口(ねじ穴)の底面に達した場合、第1被係止部134の先端134aは第1係止部133の底面に押し付けられる。第1被係止部134の先端と第1係止部133の底面の間の摩擦力により、第1被係止部134は、第1係止部133に対して係止(固定)され、回転不能となる。したがって、ロッド部131に対するクランク部135の回転、即ち第1ユニット110に対するクランク部135の回転は係止される。このように、第1係止部133及び第1被係止部134は、第1ユニット110に対する接続部130の少なくとも一部の回転を係止させる。これにより、計測装置100の使用時に、第1ユニット110に対する接続部130の回転が制限され、計測装置100は、基準物T2及び対象物T1に安定した状態で配置される。したがって、計測装置100は、設置後のクランク部135の回転による計測誤差の発生を抑制できる。
【0053】
クランク部135は、第2ユニット120側の端部の軸と、第1ユニット110側の端部の軸とが略平行に且つずれて配置されるように、二点で略直角(約90°)に屈曲した棒状の部材である。即ち、クランク部135は、ロッド部131の延伸方向A1から見たときに、第1ユニット110側の端部の軸と第2ユニット120側の端部の軸とが異なる位置に配置されるように形成される。クランク部135の、第2ユニット120側の端部は、第1ユニット110側の端部の軸を中心として、即ちロッド部131の延伸方向A1を中心として、図2の矢印A4の方向に回転可能に設けられる。即ち、クランク部135は、ロッド部131の延伸方向A1に沿って回転可能に設けられる。クランク部135は、例えばステンレス鋼で形成される。これにより、気温差によるクランク部135の伸縮の発生が低減され、計測装置100は、気温に関わらず、対象物T1の変位を正しく計測することができる。
【0054】
第2係止部136は、クランク部135の、第2ユニット120側の端部に設けられる。第2ユニット120の保持部121は、第2係止部136に螺合するように設けられる。第2係止部136は、クランク部135と別部材で形成される。なお、第2係止部136は、クランク部135と一体に形成されてもよい。保持部121は、クランク部135の第2ユニット120側の端部の軸を中心として、即ち、クランク部135の第2ユニット120側の端部の延伸方向を中心として、図2の矢印A5の方向に回転可能に設けられる。即ち、第2ユニット120は、クランク部135の第2ユニット120側の端部の延伸方向に沿って回転可能に設けられる。保持部121は、第2ユニット120と別部材で形成される。なお、保持部121は、第2ユニット120と一体に形成されてもよい。
【0055】
例えば、第2係止部136は、ナット形状(雌ねじ形状)を有し、保持部121は、ボルト形状(雄ねじ形状)を有する。保持部121は、第2係止部136に螺合することにより、第2係止部136に対して回転可能に設けられる。これにより、第2ユニット120は、クランク部135に対して回転可能に設けられる。第2ユニット120がクランク部135に対して回転可能であることにより、計測装置100は、第2ユニット120の設置時に第2ユニット120を回転させた際のクランク部135への負荷を軽減でき、クランク部135が故障することを抑制できる。
【0056】
また、保持部121が第2係止部136に螺合して、保持部121の先端が第2係止部136の開口(ねじ穴)の底面に達した場合、保持部121の先端は第2係止部136の底面に押し付けられる。保持部121の先端と第2係止部136の底面の間の摩擦力により、保持部121は、第2係止部136に対して係止(固定)され、回転不能となる。したがって、クランク部135に対する第2ユニット120の回転は係止される。このように、第2係止部136は、接続部130の一端側に対する保持部121の回転を係止させる。これにより、計測装置100の使用時に、接続部130に対する第2ユニット120の回転が制限され、計測装置100は、基準物T2及び対象物T1に安定した状態で配置される。したがって、計測装置100は、設置後の第2ユニット120の回転による計測誤差の発生を抑制できる。
【0057】
上記したように、クランク部135の第2ユニット120側の端部の軸と、第1ユニット110側の端部の軸とは、略平行に且つずれて配置される。また、クランク部135の第2ユニット120側の端部は、第1ユニット110側の端部の軸を中心として回転可能に設けられる。これにより、クランク部135が回転することによって、高さ方向A2及び横方向A3のそれぞれにおいて、第2ユニット120は第1ユニット110に対してずれた位置に配置される。即ち、クランク部135は、第1ユニット110が設置される対象物T1内の位置P1と、第2ユニット120が設置される基準物T2内の位置P2との間に高低差があっても、第1ユニット110及び第2ユニット120をそれぞれ位置P1及び位置P2に配置可能である。これにより、計測装置100は、高低差を有する位置に第1ユニット110及び第2ユニット120を配置することが可能となり、基準物T2に対して高低差を有する対象物T1の変位を良好に測定できる。
【0058】
また、上記したように、第2ユニット120は、クランク部135に対して回転可能に設けられ、第2係止部136により、クランク部135に対する第2ユニット120の回転は係止される。即ち、第2係止部136は、第1ユニット110の底面110aに対して、第2ユニット120の底面120aが任意の角度に配置された状態で、接続部130の一端側に対する保持部121の回転、即ちクランク部135に対する第2ユニット120の回転を係止させる。これにより、計測装置100は、任意の角度差を有する位置に第1ユニット110及び第2ユニット120を配置することが可能となり、基準物T2の表面に対して任意の角度差を有する表面を持つ対象物T1の変位を良好に測定できる。また、計測装置100は、第1ユニット110及び第2ユニット120において設置面を固有の面とし、他の面を平面以外の任意の形状とすることができるため、設置の自由度を向上させることができる。
【0059】
このように、設置者は、計測装置100を基準物T2及び対象物T1上に容易且つ確実に設置することができる。
【0060】
図6は、計測装置100の概略構成を示すブロック図である。
【0061】
図6に示すように、第1センサ112、第2センサ113、温度センサ114、第1通信装置117及び制御ユニット119は、相互に接続される。制御ユニット119は、第1記憶装置140及び第1処理回路150等を有する。
【0062】
第1記憶装置140は、例えばRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等の半導体メモリを備える。第1記憶装置140は、第1処理回路150による処理に用いられるコンピュータプログラム、データ等を記憶する。コンピュータプログラムは、情報処理装置200から第1通信装置117を介して、又は、インストール用装置から不図示のシリアル通信回路を介して第1記憶装置140にインストールされる。なお、コンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて第1記憶装置140にインストールされてもよい。可搬型記録媒体は、例えばCD-ROM(compact disc read only memory)、DVD-ROM(digital versatile disc read only memory)等である。また、第1記憶装置140は、データとして計測情報、判定用パラメータ等を記憶する。計測情報、判定用パラメータ等の詳細については後述する。
【0063】
第1処理回路150は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。第1処理回路150は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等でもよい。第1処理回路150は、第1センサ112、第2センサ113、温度センサ114、第1通信装置117及び第1記憶装置140等と接続され、これらの各部を制御する。第1処理回路150は、第1記憶装置140に記憶されたプログラムを読み取り、読み取ったプログラムに従って動作することにより、第1取得手段151、判定手段152及び送信手段153として機能する。
【0064】
図7は、情報処理装置200の概略構成を示すブロック図である。
【0065】
情報処理装置200は、例えばサーバである。なお、情報処理装置200は、複数のコンピュータによって構成されてもよい。図7に示すように、情報処理装置200は、操作装置201、表示装置202、第2通信装置203、第2記憶装置210及び第2処理回路220等を有する。操作装置201、表示装置202、第2通信装置203、第2記憶装置210及び第2処理回路220は、相互に接続される。
【0066】
操作装置201は、キーボード、マウス等の入力デバイス及び入力デバイスから信号を取得するインタフェース回路を有し、利用者による操作を受け付け、利用者の入力に応じた信号を第2処理回路220に出力する。
【0067】
表示装置202は、液晶、有機EL等から構成されるディスプレイ及びディスプレイに画像データを出力するインタフェース回路を有し、第2処理回路220からの指示に従って、画像データをディスプレイに表示する。
【0068】
第2通信装置203は、第2通信部の一例であり、複数の計測装置100と通信可能に設けられる。第2通信装置203は、有線又は無線の通信インタフェース回路を備え、情報処理装置200を通信ネットワークに接続する。第2通信装置203は、例えばTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)等の通信プロトコルに従った有線通信を行う。なお、第2通信装置203は、第1通信装置117と同様の方式による無線通信を行ってもよい。第2通信装置203は、第2処理回路220から供給されたデータを計測装置100、構造物管理者端末300又は装置管理者端末400に送信する。また、第1通信装置117は、計測装置100、構造物管理者端末300又は装置管理者端末400から受信したデータを第2処理回路220に供給する。
【0069】
第2記憶装置210は、例えばRAM、ROM等の半導体メモリ、ハードディスク等の固定ディスク装置、又は、光ディスク等の可搬用の記憶装置等を備える。第2記憶装置210は、第2処理回路220による処理に用いられるコンピュータプログラム、データ等を記憶する。コンピュータプログラムは、不図示のサーバから第2通信装置203を介して第2記憶装置210にインストールされる。なお、コンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて第2記憶装置210にインストールされてもよい。可搬型記録媒体は、例えばCD-ROM、DVD-ROM等である。また、第2記憶装置210は、データとして、複数の計測装置100毎の計測情報、判定用パラメータ等を記憶する。
【0070】
第2処理回路220は、例えばCPUである。第2処理回路220は、LSI、ASIC、DSP、FPGA等でもよい。第2処理回路220は、操作装置201、表示装置202、第2通信装置203及び第2記憶装置210等と接続され、これらの各部を制御する。第2処理回路220は、第2記憶装置210に記憶されたプログラムを読み取り、読み取ったプログラムに従って動作することにより、制御手段221、第2取得手段222、算出手段223、設定手段224及び通知手段225として機能する。
【0071】
図8及び図9は、情報処理装置200によって実行される管理処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0072】
以下、図8及び図9に示したフローチャートを参照しつつ、情報処理装置200の管理処理の動作の例を説明する。なお、以下に説明する動作のフローは、予め第2記憶装置210に記憶されているプログラムに基づき主に第2処理回路220により情報処理装置200の各要素と協働して実行される。
【0073】
最初に、制御手段221は、装置管理者が利用する装置管理者端末400又は構造物管理者が利用する構造物管理者端末300から物件情報を受信したか否かを判定する(ステップS101)。制御手段221は、装置管理者又は構造物管理者により装置管理者端末400又は構造物管理者端末300に物件登録の指示が入力された場合に、物件登録を指示する旨を含む物件情報を、第2通信装置203を介して装置管理者端末400又は構造物管理者端末300から受信する。物件情報には、物件登録を指示する旨に加えて、装置管理者又は構造物管理者により入力された構造物管理者に関する構造物管理者情報、構造物に関する構造物情報、計測装置100に関する計測装置情報等の、契約に関する情報が含まれる。構造物管理者情報には、構造物管理者の連絡先(例えば、構造物管理者が構造物管理者端末300で閲覧可能な利用者のメールアドレス)等が含まれる。構造物管理者の連絡先は、第1連絡先の一例である。構造物情報には、構造物の識別情報である構造物ID等が含まれる。計測装置情報には、計測装置100の識別情報である装置ID、計測装置100と定期通信を行う定期通信時刻、計測装置100の設置位置を示す位置情報等が含まれる。新たな物件情報を受信していない場合、制御手段221は、ステップS103へ処理を移行する。
【0074】
一方、物件情報を受信した場合、制御手段221は、物件情報に含まれる構造物管理者情報、構造物情報及び計測装置情報を相互に関連付けて第2記憶装置210に記憶する(ステップS102)。
【0075】
次に、制御手段221は、装置管理者が利用する装置管理者端末400から設置情報を受信したか否かを判定する(ステップS103)。制御手段221は、装置管理者により計測装置100が設置された上で装置管理者端末400に設置情報が入力された場合に、入力された設置情報を、第2通信装置203を介して装置管理者端末400から受信する。設置情報には、設置された計測装置100の装置ID、設置日、運用開始日、運用開始フラグ及び判定用パラメータ送信日時等が含まれる。運用開始日は、設置日より特定の日数だけ後の日に設定される。特定の日数は、各計測装置100において、判定用パラメータを算出するために十分なデータ(後述する第1変化量及び第1温度)を取得できる期間(例えば1カ月)に予め設定される。運用開始フラグの初期値はOFFに設定される。判定用パラメータ送信日時の初期値は未送信を示す日時(例えば、ブランク)に設定される。新たな設置情報を受信していない場合、制御手段221は、ステップS106へ処理を移行する。
【0076】
一方、設置情報を受信した場合、制御手段221は、第2記憶装置210に記憶された装置IDの中から、設置情報に含まれる装置IDと一致する装置IDを特定し、設置情報に含まれる各情報を、特定した装置IDと関連付けて第2記憶装置210に記憶する(ステップS104)。次に、制御手段221は、設置情報を受信したこと、即ち計測装置100の設置が完了したことを示す設置完了通知(例えばメール)を、第2通信装置203を介して、その装置IDと関連付けられた構造物管理者の連絡先に送信する(ステップS105)。構造物管理者は、構造物管理者端末300を用いて設置完了通知を閲覧することにより、計測装置100の設置が完了したことを認識できる。
【0077】
次に、制御手段221は、第2通信装置203を介して何れかの計測装置100から計測情報を受信したか否かを判定する(ステップS106)。計測情報には、その計測装置100の装置ID、バッテリ115の電池電圧、第1通信装置117による受信電波強度、計測が実行された各計測日時、各計測日時における計測装置100(第1ユニット110)の温度、移動量及び傾き等が含まれる。新たに計測情報を受信していない場合、制御手段221は、ステップS111へ処理を移行する。一方、計測情報を受信した場合、制御手段221は、第2記憶装置210に記憶された装置IDの中から、計測情報に含まれる装置IDと一致する装置IDを特定し、計測情報に含まれる各情報を、特定した装置IDと関連付けて第2記憶装置210に記憶する(ステップS107)。
【0078】
次に、制御手段221は、受信した計測情報に含まれるバッテリ115の電池電圧が予め設定された電圧下限値未満であるか否かにより、電池異常が発生したか否かを判定する(ステップS108)。なお、制御手段221は、受信した計測情報に含まれる電池電圧が予め設定された電圧上限値より大きい場合も、電池異常が発生したと判定してもよい。また、温度によって電池電圧は変化することを考慮して、制御手段221は、1回の確認で電池異常と判定せず、電池電圧が電圧下限値未満であることが一定期間内に複数回確認された場合に電池異常と判定してもよい。電池異常が発生していない場合、制御手段221は、ステップS110へ処理を移行する。一方、電池異常が発生している場合、制御手段221は、機器異常が発生したことを示す機器異常通知(例えばメール)を、第2通信装置203を介して、装置管理者の連絡先(例えば、装置管理者が装置管理者端末400で閲覧可能な装置管理者のメールアドレス)に送信する(ステップS109)。装置管理者の連絡先は、第2連絡先の一例である。この機器異常通知には、計測情報に含まれる装置ID、及び、機器異常として電池異常が発生したこと等が含まれる。装置管理者は、装置管理者端末400を用いて機器異常通知を閲覧することにより、速やかに対象の計測装置100を交換することができる。
【0079】
次に、制御手段221は、受信した計測情報に含まれる第1通信装置117による受信電波強度が予め設定された電波強度下限値未満であるか否かにより、電波異常が発生したか否かを判定する(ステップS110)。なお、制御手段221は、受信した計測情報に含まれる受信電波強度が予め設定された電波強度上限値より大きい場合も、電波異常が発生したと判定してもよい。また、基地局側を要因とする一時的な通信不良である可能性を考慮して、制御手段221は、1回の確認で電波異常と判定せず、電波強度が下限値や上限値を超えたことが一定期間内に複数回確認された場合に電波異常と判定してもよい。電波異常が発生していない場合、制御手段221は、ステップS111へ処理を移行する。一方、電波異常が発生している場合、制御手段221は、機器異常通知を、第2通信装置203を介して、装置管理者の連絡先に送信する(ステップS109)。この機器異常通知には、計測情報に含まれる装置ID、及び、機器異常として電波異常が発生したこと等が含まれる。装置管理者は、機器異常通知を閲覧することにより、速やかに対象の計測装置100の設置環境を確認し、必要に応じて計測装置100を交換することができる。
【0080】
次に、制御手段221は、第2記憶装置210に装置IDが記憶された各計測装置100のうち、予め設定された期間内に計測情報を受信していない計測装置100(以下、未受信装置と称する場合がある)が存在するか否かを判定する(ステップS111)。制御手段221は、第2記憶装置210に記憶された定期通信時刻から予め設定された期間(例えば3分間)以内に計測情報を受信していない計測装置100を未受信装置として特定する。未受信装置が存在しない場合、制御手段221は、ステップS113へ処理を移行する。一方、未受信装置が存在する場合、制御手段221は、機器異常が発生したことを示す機器異常通知を、第2通信装置203を介して、装置管理者の連絡先に送信する(ステップS112)。この機器異常通知には、未受信装置として特定された計測装置100の装置ID、及び、機器異常として計測情報の未受信が発生したこと等が含まれる。装置管理者は、機器異常通知を閲覧することにより、速やかに対象の計測装置100の状態を確認し、必要に応じて計測装置100を交換することができる。
【0081】
次に、制御手段221は、第2記憶装置210に装置IDが記憶された各計測装置100のうち、現日付が運用開始日以降であり且つ判定用パラメータを未送信である計測装置100(以下、要設定装置と称する場合がある)が存在するか否かを判定する(ステップS113)。制御手段221は、現日付が第2記憶装置210に記憶された運用開始日以降であり且つ第2記憶装置210に記憶された判定用パラメータ送信日時が未送信を示す日時に設定された計測装置100を要設定装置として特定する。要設定装置が存在しない場合、制御手段221は、ステップS119へ処理を移行する。
【0082】
一方、要設定装置が存在する場合、第2取得手段222は、現在までの複数の時点における要設定装置の接続部130の移動量(第1ユニット110と第2ユニット120との間の距離の変化量)と、その各時点における要設定装置の温度(又は周辺温度)とを取得する(ステップS114)。以下では、現在までの複数の時点を第1時点と称し、第1時点における上記の移動量(変化量)を第1変化量と称し、第1時点における上記の温度を第1温度と称する場合がある。例えば、第2取得手段222は、第2記憶装置210において要設定装置の装置IDに関連付けて記憶された現在までの各計測日時における接続部130の移動量及び要設定装置の温度を第1変化量及び第1温度として取得する。なお、第2取得手段222は、気象庁の地域気象観測システム(アメダス)等から、各計測日時における要設定装置が設置された地域の気温を第1温度として取得してもよい。このように、第2取得手段222は、複数の第1時点における、位置P1に設置された第1ユニット110と、位置P2に設置された第2ユニット120との間の距離の第1変化量と、各第1時点における第1温度とを取得する。
【0083】
次に、算出手段223は、複数の第1時点における第1変化量と、各第1時点における第1温度との間の関係を示す関係式を算出する(ステップS115)。
【0084】
図10(A)は、特定の期間における第1変化量と第1温度の変化を示すグラフである。図10(A)の横軸は各計測日時を示し、左側の縦軸は各計測日時における第1変化量を示し、右側の縦軸は各計測日時における第1温度を示す。図10(A)のグラフG1は各計測日時における第1変化量の変化を示すグラフであり、グラフG2は各計測日時における第1温度の変化を示すグラフである。図10(A)に示すように、第1温度と第1変化量は、第1温度が高いほど第1変化量が小さくなり、第1温度が低いほど第1変化量が大きくなるという相関関係を有している。
【0085】
図10(B)は、特定の期間における各第1変化量と第1温度の組合せの相関図である。図10(B)の横軸は第1温度を示し、縦軸は第1変化量を示す。図10(B)の各点E1は、特定の期間における各第1変化量と第1温度の組合せに対応する点を示す。図10(B)に示すように、第1変化量は、第1温度に対して、傾きが負である略線形の関係を有している。
【0086】
算出手段223は、各第1時点における第1温度と、各第1時点における第1変化量とについて線形単回帰分析を行うことにより、第1変化量と第1温度との間の関係を示す関係式(1元1次式)を算出する。即ち、算出手段223は、第1変化量r(k)、及び、第1温度kについて、以下の式(1)で示される相関関数を関係式として算出する。
r(k)=a・k+b (1)
ここで、a、bは定数である。
【0087】
例えば、算出手段223は、最小二乗法、最尤推定法又はベイズ推定法等を利用して、第1変化量と第1温度との間の関係を示す回帰直線を算出する。図10(B)に示す例では、各第1変化量と各第1温度の組合せに対応する各点E1の相関の分布範囲の中心を通過する回帰直線E2が関係式として算出されている。このように、算出手段223は、各第1時点における第1温度と、各第1時点における第1変化量とについて線形単回帰分析を行うことにより、第1変化量と第1温度との間の関係を精度良く算出することができる。
【0088】
次に、設定手段224は、各第1時点における第1変化量xと、算出した関係式(r(k)=a・k+b)により各第1時点における第1温度kから算出される変化量r(k)との差(x-r(k))の分布の代表値である平均値μ及び標準偏差σを算出する(ステップS116)。以下では、差(x-r(k))を変化量差と称する場合がある。
【0089】
図10(C)は、特定の期間における各第1変化量と、算出された関係式によりその期間における第1温度から算出される変化量との変化量差を示すグラフである。図10(C)の横軸は変化量差を示し、右側の縦軸は各変化量差の頻度を示し、左側の縦軸は各変化量差の確率密度を示す。図10(C)のグラフG3は各変化量差の度数を示すグラフであり、グラフG4は、グラフG3に示される頻度分布の平均値μ及び標準偏差σを用いた正規分布である。変化量差の頻度分布は、正規分布によって近似できることがわかる。
【0090】
次に、設定手段224は、算出した平均値及び標準偏差に基づいて、運用開始後の第1ユニット110と第2ユニット120の間の距離の変化量に基づく値と比較するための第1しきい値を設定する(ステップS117)。第1しきい値は、しきい値の一例である。例えば、設定手段224は、算出した標準偏差σの所定倍の値を平均値μに加算、減算して第1しきい値を設定する。例えば、監視システム1は、平均値μに標準偏差σの3倍の値3σを加算、減算して(μ±3σ)を第1しきい値に設定することにより、99.7%の範囲を信頼区間として設定でき、第1位置と第2位置の間の距離が正常であるにもかかわらず、異常であると誤って判定することを抑制できる。なお、関係式を(x-r(k)-μ)とし第1しきい値を(±3σ)に設定しても等価である。設定手段224は、関係式及び第1しきい値を、第1位置と第2位置の間の距離が異常であるか否かを判定するための判定用パラメータとして、その要設定装置の装置IDと関連付けて第2記憶装置210に記憶する。
【0091】
このように、設定手段224は、複数の第1時点における第1変化量、各第1時点における第1温度及びその関係式に基づいて、第1しきい値を設定する。特に、設定手段224は、複数の第1時点における第1変化量と、その関係式により各第1時点における第1温度から算出される変化量との差の標準偏差、即ち分布に基づいて、第1しきい値を設定する。即ち、設定手段224は、複数の第1時点における第1変化量と、その関係式により各第1時点における第1温度から算出される変化量との差を統計処理することにより、第1しきい値を設定する。なお、設定手段224は、複数の第1時点における第1変化量と、その関係式により各第1時点における第1温度から算出される変化量との差の分散に基づいて、第1しきい値を設定してもよい。その場合、例えば、設定手段224は、変化量差の分散の所定倍の値を第1しきい値として設定する。
【0092】
また、算出手段223は、複数の第1時点における第1温度、及び、各第1時点を含む一又は複数の所定期間における第1温度の平均値と、各第1時点における第1変化量とについて線形重回帰分析を行うことにより、関係式(多元1次式)を算出してもよい。その場合、算出手段223は、第1変化量xと、瞬時温度である第1温度k1、及び、単一の期間又はそれぞれ異なる所定期間長を有する複数の期間における第1温度k1の平均値(k2、k3、…、kN)について、以下の式(2)で示される相関関数を関係式として算出する。
r(k1、k2、…、kN)=a1・k1+a2・k2+…+an・kN+b (2)
ここで、a1、a2、…、aN、bは定数である。
【0093】
例えば、算出手段223は、最小二乗法、最尤推定法又はベイズ推定法等を利用して、第1変化量と第1温度及び第1温度の平均値との間の関係を示す回帰直線を算出する。期間長は、一日、一週間、十日間、二十日間、三十日間等、温度の変化がある程度小さい期間長に設定される。
【0094】
この場合、設定手段224は、各第1時点における第1変化量(x)と、算出した関係式(2)により各第1時点における第1温度k1、及び、各所定期間長を有する複数の期間における第1温度k1の平均値(k2、k3、…、kN)から算出される変化量r(k1、k2、…、kN)との差(x-r(k1、k2、…、kN))の平均値μ及び標準偏差σを算出する。そして、設定手段224は、算出した平均値及び標準偏差に基づいて第1しきい値を設定する。
【0095】
図11(A)は、2021年11月25日から2022年4月28日まで1日毎に第1温度kと第1変化量xとについて線形単回帰分析を行うことにより算出した関係式r(k1)=a・k1+bの傾きa及び切片bを示すグラフである。図11(A)の横軸は各日を示し、左側の縦軸は各日における傾きaを示し、右側の縦軸は各日における切片bを示す。図11(A)のグラフG5は傾きaの変化を示すグラフであり、グラフG6は切片bの変化を示すグラフである。図11(A)に示すように、2021年11月25日から2022年4月28日までの期間において、傾きaの変動範囲は小さいが、切片bの変動範囲は大きい。つまり、図11(A)の例においては、瞬時温度k1だけでは第1変化量xとの関係を高精度に表せないことが分かる。
【0096】
図11(B)は、図11(A)に示した切片bと、各切片bに対応する日の平均温度k2とを示すグラフである。図11(B)の横軸は各日を示し、左側の縦軸は各日における切片bを示し、右側の縦軸は各日における平均温度k2を示す。図11(B)のグラフG7は切片bの変化を示すグラフであり、グラフG8は一日の平均温度k2の変化を示すグラフである。図11(B)に示すように、切片bは、温度の変化と連動して変化している。即ち、瞬時温度k1のみでなく一日の平均温度k2をも説明変数とすることで関係式を高精度化させることができる。したがって、算出手段223は第1変化量xと第1温度k1及びその日の平均温度k2との間の関係を示す回帰直線(r(k1、k2)=a1・k1+a2・k2+b)を算出し、設定手段224は第1時点における第1変化量xと当該時点における第1温度k1及び当該時点を含む一日における第1温度k1の平均値k2から算出される変化量(r(k1、k2))との差(x-r(k1、k2))の平均値μ及び標準偏差σを算出し、算出した平均値μ及び標準偏差σに基づいて第1しきい値を設定することで、高精度な判定が可能な第1しきい値を設定できる。さらに、橋梁によっては、または同一橋梁であっても計測位置によっては、一日の平均温度に対する傾きaが正であっても一週間の平均温度に対する傾きaが負であったりするなど、期間長が異なる複数種類の平均気温に対する傾きa及び/又は切片の相関関係が複合する場合もある。また、一日の平均温度に対する相関関係よりも一週間の平均温度に対する相関関係の方が支配的であるなど、他の期間長での平均気温に対する傾きa及び/又は切片の相関関係で表した方が高精度な場合もある。これらに対応するために、監視システム1は、一日の平均温度k2に加えて一週間の平均温度k3、十日間の平均温度k4、…を説明変数に用いることもでき、或いは一日の平均温度k2に代えて一週間の平均温度k3、十日間の平均温度k4、…を説明変数に用いることもできる。
【0097】
このように、算出手段223は、要設定装置毎に、即ち複数の計測装置100毎に、第1変化量と第1温度との間の関係を示す関係式を算出し、設定手段224は、要設定装置毎に、即ち複数の計測装置100毎に、第1しきい値を設定する。これにより、情報処理装置200は、計測装置100毎に、各計測装置100の設置環境に適した判定用パラメータを設定することができる。
【0098】
また、情報処理装置200は、各計測装置100を設置してから、判定用パラメータを算出するために十分なデータ(第1変化量及び第1温度)を取得した後に判定用パラメータを設定する。即ち、算出手段223は、複数の計測装置100毎に、第1取得手段151が複数の第1時点における第1変化量及び第1温度を取得した時に第1変化量と第1温度との間の関係を示す関係式を算出する。設定手段224は、複数の計測装置100毎に、第1取得手段151が複数の第1時点における第1変化量及び第1温度を取得し、算出手段223が関係式を算出した時に第1しきい値を設定する。これにより、情報処理装置200は、計測装置100毎に、適切なタイミングで判定用パラメータを設定することができる。
【0099】
次に、設定手段224は、運用開始の承認を依頼する承認依頼通知(例えばメール)を、第2通信装置203を介して、その要設定装置の装置IDと関連付けられた構造物管理者の連絡先に送信する(ステップS118)。承認依頼通知には、その要設定装置について算出された関係式と、その要設定装置について設定された第1しきい値と、その要設定装置の計測装置情報とが含まれる。
【0100】
次に、制御手段221は、装置管理者が利用する装置管理者端末400から運用開始の承認信号を受信したか否かを判定する(ステップS119)。構造物管理者は、承認依頼通知を受け取った場合、装置管理者に運用開始を承認する旨を伝える。構造物管理者から運用開始を承認する旨を伝えられた装置管理者は、装置管理者端末400を用いて、該当する計測装置100の運用開始の承認を入力する。制御手段221は、装置管理者により装置管理者端末400に運用開始の承認が入力された場合に、運用開始を承認する承認信号を、第2通信装置203を介して装置管理者端末400から受信する。承認信号には、運用開始が承認された計測装置100の装置IDが含まれる。新たな承認信号を受信していない場合、制御手段221は、ステップS121へ処理を移行する。一方、承認信号を受信した場合、制御手段221は、承認信号に含まれる装置IDと関連付けて第2記憶装置210に記憶された運用開始フラグをONに設定する(ステップS120)。
【0101】
なお、運用開始の承認の受付は、装置管理者を介さずに実行されてもよい。その場合、ステップS118において、設定手段224は、構造物管理者による承認操作を受け付けることが可能なWebページを生成し、そのWebページのURLを記した承認依頼通知を構造物管理者の連絡先に送信する。構造物管理者は、承認依頼通知を受け取った場合、そのWebページから該当する計測装置100の運用開始の承認を入力する。
【0102】
次に、制御手段221は、第2通信装置203を介して何れかの計測装置100から、判定用パラメータを要求するパラメータ要求信号を受信したか否かを判定する(ステップS121)。パラメータ要求信号には、その計測装置100の装置IDが含まれる。新たにパラメータ要求信号を受信していない場合、制御手段221は、ステップS124へ処理を移行する。一方、パラメータ要求信号を受信した場合、制御手段221は、パラメータ要求信号に含まれる装置IDと関連付けて第2記憶装置210に記憶された運用開始フラグがONに設定されているか否かを判定する(ステップS122)。運用開始フラグがONに設定されていない場合、制御手段221は、ステップS124へ処理を移行する。一方、運用開始フラグがONに設定されている場合、制御手段221は、パラメータ要求信号に含まれる装置IDと関連付けて第2記憶装置210に記憶された判定用パラメータ(関係式及び第1しきい値)を、第2通信装置203を介してパラメータ要求信号の送信元の計測装置100に送信する(ステップS123)。そして、制御手段221は、パラメータ要求信号に含まれる装置IDと関連付けて第2記憶装置210に記憶された判定用パラメータ送信日時に、現在の日時を設定する。
【0103】
次に、通知手段225は、第2通信装置203を介して何れかの計測装置100から、機器異常が発生したことを示す機器異常情報を受信したか否かを判定する(ステップS124)。機器異常情報には、その計測装置100の装置IDと、機器異常の種別とが含まれる。機器異常の種別には、接続部130の移動量が大きいことを示す移動量異常、又は、第1ユニット110の傾きが大きいことを示す傾き異常等が含まれる。新たに機器異常情報を受信していない場合、通知手段225は、ステップS128へ処理を移行する。
【0104】
一方、機器異常情報を受信した場合、通知手段225は、機器異常通知を、第2通信装置203を介して、装置管理者の連絡先に送信する(ステップS125)。この機器異常通知には、機器異常情報に含まれる装置IDと、機器異常の種別とが含まれる。機器異常情報は、計測装置100の判定手段152により、計測装置100において機器異常が発生したと判定されたときに送信される。即ち、通知手段225は、判定手段152により計測装置100において機器異常が発生したと判定された場合、装置管理者の連絡先に機器異常の発生を通知する。装置管理者は、装置管理者端末400を用いて機器異常通知を閲覧することにより、速やかに対象の計測装置100の状態を確認し、必要に応じて計測装置100を交換することができる。
【0105】
なお、機器異常が傾き異常である場合、構造物が傾斜している可能性がある。したがって、通知手段225は、機器異常が傾き異常である場合、機器異常通知を、装置管理者の連絡先に送信するとともに、構造物管理者の連絡先にも送信してもよい。また、機器異常が移動量異常である場合、災害等により構造物が大きく移動している可能性がある。したがって、通知手段225は、機器異常が移動量異常である場合、機器異常通知を、装置管理者の連絡先に送信するとともに、構造物管理者の連絡先にも送信してもよい。構造物管理者は、構造物管理者端末300を用いて機器異常通知を閲覧することにより、速やかに構造物の状態を確認し、必要に応じて適切な対策を講じることができる。
【0106】
次に、通知手段225は、第2通信装置203を介して何れかの計測装置100から、変位異常が発生したことを示す変位異常情報を受信したか否かを判定する(ステップS126)。変位異常情報には、その計測装置100の装置IDが含まれる。新たに変位異常情報を受信していない場合、通知手段225は、ステップS128へ処理を移行する。
【0107】
一方、変位異常情報を受信した場合、通知手段225は、変位異常通知を、第2通信装置203を介して、変位異常情報に含まれる装置IDと関連付けて第2記憶装置210に記憶された構造物管理者の連絡先に送信する(ステップS127)。この変位異常通知には、変位異常情報に含まれる装置IDと関連付けて第2記憶装置210に記憶された構造物情報及び計測装置情報と、対応する構造物を確認することを促す案内メッセージとが含まれる。変位異常情報は、計測装置100において第1センサ112により計測される接続部130の移動量に基づく値が第1しきい値を超えたときに送信される。即ち、通知手段225は、第1センサ112により計測される接続部130の移動量に基づく値が第1しきい値を超えた場合、即ち構造物における異常が発生した場合に、構造物管理者の連絡先に機器異常の発生を通知する。構造物管理者は、構造物管理者端末300を用いて変位異常通知を閲覧することにより、速やかに構造物の状態を確認し、適切な対策を講じることができる。
【0108】
なお、通知手段225は、変位異常通知を、構造物管理者の連絡先に送信するとともに、装置管理者の連絡先にも送信してもよい。その場合、構造物管理者が変位異常通知を装置管理者の連絡先に転送してもよい。装置管理者は、装置管理者端末400を用いて変位異常通知を閲覧することにより、該当する計測装置100の状態を速やかに確認し、必要に応じて交換することができる。
【0109】
次に、制御手段221は、構造物管理者が利用する構造物管理者端末300から計測情報の閲覧を要求する閲覧要求信号を受信したか否かを判定する(ステップS128)。制御手段221は、構造物管理者により構造物管理者端末300に計測情報の閲覧の要求が入力された場合に、計測情報の閲覧を要求する閲覧要求信号を、第2通信装置203を介して構造物管理者端末300から受信する。閲覧要求信号には、構造物管理者により入力された、計測情報の閲覧を所望する計測装置100の装置ID、及び、期間等が含まれる。期間は、例えば1日、1週間、1カ月、3カ月、1年、全期間の中から、構造物管理者により選択される。新たに閲覧要求信号を受信していない場合、制御手段221は、ステップS130へ処理を移行する。
【0110】
一方、閲覧要求信号を受信した場合、制御手段221は、閲覧要求信号に含まれる装置IDに関連付けて第2記憶装置210に記憶された計測情報の中から、指定された期間の計測情報を抽出する。制御手段221は、抽出した計測情報を、第2通信装置203を介して、閲覧要求信号の送信元の構造物管理者端末300に送信する(ステップS129)。なお、制御手段221は、抽出した計測情報に含まれる変位量と温度の、指定された期間内の変化を表すグラフを生成し、生成したグラフを描画したWebページ等を作成して構造物管理者端末300に表示させてもよい。構造物管理者は、構造物管理者端末300を用いて計測装置100における変位量と温度の変化を確認することができる。
【0111】
次に、制御手段221は、予め定められた集計日(例えば毎月1日又は毎週月曜日等)が到来したか否かを判定する(ステップS130)。集計日が到来していない場合、制御手段221は、ステップS101へ処理を戻す。
【0112】
一方、集計日が到来した場合、制御手段221は、第2記憶装置210に記憶された装置ID毎に、各計測装置100の計測情報を抽出し、集計する(ステップS131)。次に、制御手段221は、集計した各計測情報を、第2通信装置203を介して、各装置IDに対応付けて記憶された構造物管理者の連絡先に送信し(ステップS132)、ステップS101へ処理を戻す。なお、制御手段221は、抽出した計測情報に含まれる変位量と温度を含む各情報の変化を表すグラフを生成し、生成したグラフを描画したWebページ等を作成して各装置IDに対応付けて記憶された構造物管理者の連絡先に送信してもよい。各構造物管理者は、構造物管理者端末300を用いて各計測装置100における変位量と温度の変化を確認することができる。
【0113】
図12及び図13は、計測装置100によって実行される計測処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0114】
以下、図12及び図13に示したフローチャートを参照しつつ、計測装置100の計測処理の動作の例を説明する。なお、以下に説明する動作のフローは、予め第1記憶装置140に記憶されているプログラムに基づき主に第1処理回路150により計測装置100の各要素と協働して実行される。
【0115】
最初に、第1取得手段151は、割り込みが発生したか否かを判定する(ステップS201)。計測装置100の制御ユニット119は、割り込みコントローラを有する。第1センサ112は、接続部130の移動量に基づく値が第2しきい値を超えた場合、リミット信号を割り込みコントローラに出力する。即ち、第1センサ112は、接続部130の移動量に基づく値が、正の値を有する第2しきい値より大きい場合、又は、負の値を有する第2しきい値より小さい場合に、リミット信号を割り込みコントローラに出力する。接続部130の移動量に基づく値は、接続部130の移動量自体、又は、接続部130の移動量に対して所定のオフセットを加算もしくは減算した値又は所定の係数を乗算もしくは除算した値等である。割り込みコントローラは、第1センサ112からリミット信号が入力された場合、第1処理回路150に割り込み信号を出力する。第2しきい値は、上限値の一例である。第2しきい値は、計測装置100の設置環境に関わらず、全ての計測装置100に共通に設定されるしきい値であり、計測装置100毎に設定される第1しきい値を超える大きさに設定される。第2しきい値は、例えば、接続部130がその上限値を超えて移動した場合、計測装置100が損傷する可能性がある値(例えば±20mm程度)に予め設定される。
【0116】
また、第2センサ113は、第1ユニット110の傾きに基づく値が傾きしきい値を超えた場合、リミット信号を割り込みコントローラに出力する。即ち、第2センサ113は、第1ユニット110の傾きに基づく値が、正の値を有する傾きしきい値より大きい場合、又は、負の値を有する傾きしきい値より小さい場合に、リミット信号を割り込みコントローラに出力する。第1ユニット110の傾きに基づく値は、第1ユニット110の傾き自体、又は、第1ユニット110の傾きに対して所定のオフセットを加算もしくは減算した値又は所定の係数を乗算もしくは除算した値等である。割り込みコントローラは、第2センサ113からリミット信号が入力された場合、第1処理回路150に割り込み信号を出力する。傾きしきい値は、例えば、第1ユニット110において設置位置からの脱落、持ち去り又は災害もしくは強い外力による破損が発生したとみなせる値に予め設定される。第1取得手段151は、割り込みコントローラから割り込み信号を受信したときに割り込みが発生したと判定する。
【0117】
第1センサ112がリミット信号を出力してから割り込みが発生するまでの時間は、第2時間の一例である。なお、第1取得手段151は、ステップS201において、割り込みが発生したか否かを判定することに代えて、ポーリングにより予め設定された十分に短い第2時間(例えば1秒間)が経過したか否かを判定してもよい。新たに割り込みが発生していない場合、第1取得手段151は、ステップS216へ処理を移行させる。
【0118】
一方、割り込みが発生した場合、第1取得手段151は、第1センサ112から変位信号を取得し、取得した変位信号に示される移動量を取得する(ステップS202)。次に、第1取得手段151は、第2センサ113から傾き信号を取得し、取得した傾き信号に示される傾きを取得する(ステップS203)。
【0119】
次に、判定手段152は、取得した移動量に基づく値が第2しきい値を超えたか否かを判定する(ステップS204)。移動量に基づく値が第2しきい値を超えた場合、判定手段152は、計測装置100において機器異常が発生したと判定するとともに、構造物において変位異常が発生したと判定する(ステップS205)。次に、送信手段153は、第1通信装置117を介して情報処理装置200に機器異常情報及び変位異常情報を送信し(ステップS206)、ステップS208へ処理を移行する。この機器異常情報及び変位異常情報には、その計測装置100の装置ID、移動量及び傾き等が含まれる。また、機器異常情報において機器異常の種別として移動量異常が示される。これにより、監視システム1は、計測装置100が損傷して構造物の変位を正しく計測できない可能性がある場合に、装置管理者にその旨を通知し、計測装置100の交換を促すことができる。また、監視システム1は、災害等により構造物が大きく移動している場合に、構造物管理者にその旨を通知し、構造物の状態の確認を促すことができる。なお、送信手段153は、情報処理装置200から肯定応答を受信しなかった場合のように機器異常情報又は変位異常情報の送信に失敗した場合、所定回数(例えば5回程度)送信をリトライする。
【0120】
一方、移動量に基づく値が第2しきい値を超えていない場合、判定手段152は、計測装置100において機器異常が発生していないと判定するとともに、構造物において変位異常が発生していないと判定する(ステップS207)。このように、判定手段152は、計測装置100において機器異常が発生したか否かを判定するとともに、構造物において変位異常が発生したか否かを判定する。
【0121】
なお、判定手段152は、移動量に基づく値が第2しきい値を超えた場合に、計測装置100において機器異常が発生したと判定せず、情報処理装置200に機器異常情報を送信しなくてもよい。または、判定手段152は、移動量に基づく値が第2しきい値を超えた場合に、構造物において異常が発生したと判定せず、情報処理装置200に変位異常情報を送信しなくてもよい。
【0122】
次に、判定手段152は、取得した傾きに基づく値が傾きしきい値を超えたか否かを判定する(ステップS208)。傾きに基づく値が傾きしきい値を超えた場合、判定手段152は、計測装置100において機器異常が発生したと判定する(ステップS209)。次に、送信手段153は、第1通信装置117を介して情報処理装置200に、機器異常が発生したことを示す機器異常情報を送信し(ステップS210)、ステップS216へ処理を移行する。この機器異常情報には、その計測装置100の装置IDが含まれ、機器異常の種別として傾き異常が示される。これにより、監視システム1は、計測装置100が損傷して構造物の変位を正しく計測できない可能性がある場合に、装置管理者にその旨を通知し、計測装置100の交換を促すことができる。なお、送信手段153は、ステップS206の処理と同様に、機器異常情報の送信に失敗した場合、所定回数送信をリトライする。
【0123】
一方、傾きに基づく値が傾きしきい値を超えていない場合、判定手段152は、計測装置100において機器異常が発生していないと判定する(ステップS211)。このように、判定手段152は、計測装置100において機器異常が発生したか否かを判定する。
【0124】
次に、第1取得手段151は、第1間隔が経過したか否かと、通信フラグがONであるか否かと、を判定する(ステップS212)。第1間隔は、第1時間の一例であり、第2時間(第1センサ112がリミット信号を出力してから割り込みが発生するまでの時間)より十分に大きい時間に予め設定される。第1間隔は、計測装置100の状態を監視すべき間隔(例えば1時間未満の予め定められた時間)に予め設定される。例えば、割り込みコントローラが第1間隔毎に割り込み信号を第1処理回路150に出力し、第1取得手段151は、割り込みコントローラから割り込み信号を受信したときに第1間隔が経過したと判定する。通信フラグの初期値はOFFに設定される。また、通信フラグは、後述する処理において情報処理装置200への計測情報の送信に成功したときにONに設定され、失敗したときにOFFに設定される。まだ第1間隔が経過していない場合、又は、通信フラグがOFFである場合、第1取得手段151は、ステップS226へ処理を移行する。
【0125】
一方、第1間隔が経過し且つ通信フラグがONである場合、第1取得手段151は、現在日時を取得する(ステップS213)。次に、第1取得手段151は、温度センサ114から温度信号を取得し、取得した温度信号に示される温度を取得する(ステップS214)。次に、第1取得手段151は、第1センサ112から変位信号を取得し、取得した変位信号に示される移動量を取得する(ステップS215)。以下では、通信フラグがONである状態で第1間隔が経過した各時点を第2時点と称し、第2時点における上記の移動量を第2変化量と称し、第2時点における上記の温度を第2温度と称する場合がある。第1取得手段151は、ステップS215における移動量及びステップS214における温度を、それぞれ第2時点における第2変化量及び第2温度として取得する。次に、第1取得手段151は、第2センサ113から傾き信号を取得し、取得した傾き信号に示される傾きを取得する(ステップS216)。
【0126】
次に、判定手段152は、判定用パラメータ(関係式及び第1しきい値)を情報処理装置200から受信済みであるか否かを判定する(ステップS217)。判定用パラメータは、後述する処理で情報処理装置200から送信され、第1記憶装置140に記憶される。判定手段152は、判定用パラメータが第1記憶装置140に記憶されているか否かにより、判定用パラメータを情報処理装置200から受信済みであるか否かを判定する。判定用パラメータをまだ受信していない場合、判定手段152は、ステップS226へ処理を移行する。
【0127】
一方、判定用パラメータを既に受信している場合、判定手段152は、ステップS215で取得した第2変化量(移動量)を、第2温度及び判定用パラメータに含まれる関係式を用いて補正した補正値を算出する(ステップS218)。補正値は、第2変化量に基づく値の一例である。関係式が線形単回帰分析で算出されている場合、判定手段152は、各第2時点における第2変化量(x)と、関係式(r(k)=a・k+b)により各第2時点における第2温度(k)から算出される変化量(r(k))との差(x-r(k))を補正値として算出する。一方、関係式が線形重回帰分析で算出されている場合、判定手段152は、各第2時点における第2変化量(x)と、関係式(r(k1、k2、…、kN)=a1・k1+a2・k2+…+an・kN+b)により各第2時点における第2温度k1、及び、各所定期間における第2温度k1の平均値knから算出される変化量r(k1、k2、…、kN)との差(x-r(k1、k2、…、kN))を補正値として算出する。即ち、補正値は、第2温度に基づいて温度補償された変化量(移動量)である。但し、この場合、判定手段152は、各平均値が算出される所定期間が経過したか否かを判定し、全ての平均値が算出される所定期間が経過するまでは補正値を算出しない。判定手段152は、各所定期間が経過した場合に、各所定期間における平均値を算出して補正値を算出する。
【0128】
次に、判定手段152は、算出した補正値が判定用パラメータに含まれる第1しきい値を超えたか否かを判定する(ステップS219)。例えば、判定手段152は、補正値がμ-3σより小さい場合、又は、μ+3σよりも大きい場合に、補正値が第1しきい値を超えたと判定する。補正値が第1しきい値を超えた場合、判定手段152は、構造物において変位異常が発生したと判定する(ステップS220)。このように、判定手段152は、第2時点における、第1ユニット110と第2ユニット120との間の距離の第2変化量に基づく補正値と、第1しきい値とを比較することにより、第1ユニット110が設置される位置P1と第2ユニット120が設置される位置P2の間の距離が異常であるか否かを判定する。特に、判定手段152は、第2変化量を、関係式により第2時点における第2温度から算出される変化量を用いて補正した補正値と、第1しきい値とを比較することにより、第1ユニット110が設置される位置P1と第2ユニット120が設置される位置P2の間の距離が異常であるか否かを判定する。即ち、判定手段152は、第2変化量を、関係式により第2時点における第2温度から算出される変化量を用いて補正した補正値を判定に用いる。計測装置100における温度を考慮することにより、監視システム1は、第1ユニット110が設置される位置P1と第2ユニット120が設置される位置P2の間の距離が異常であるか否かを精度良く判定することができる。なお、ステップS218の処理が省略され、判定手段152は、第2変化量が第1しきい値を超えたか否かを判定することにより、構造物において変位異常が発生したか否かを判定してもよい。その場合、第2変化量自体が、第2変化量に基づく値の一例である。
【0129】
判定手段152は、自装置において事前に計測された第1変化量及び温度に基づいて設定された関係式を用いて第2変化量の温度補償を行うことにより、自装置が設置された環境、特に自装置の周辺温度に応じて第2変化量を適切に補正することができる。また、判定手段152は、自装置において事前に計測された第1変化量及び第1温度に基づいて設定された第1しきい値を用いて、構造物における変位異常が発生しているか否かを判定する。したがって、判定手段152は、構造物における変位異常が発生しているか否かを高精度に判定することができる。
【0130】
次に、判定手段152は、構造物において変位異常が発生したと判定されたときに変位異常情報を連続して送信するためのカウンタに特定の値を設定する(ステップS221)。特定の値は、任意の自然数(例えば5)に予め設定される。次に、送信手段153は、第1通信装置117を介して情報処理装置200に変位異常情報を送信することにより出力し(ステップS222)、ステップS226へ処理を移行する。変位異常情報は、判定手段152による判定結果に関する情報の一例である。この変位異常情報には、その計測装置100の装置IDと、直近の所定数(例えば10)の移動量及び傾きとが含まれる。これにより、構造物管理者は、変位異常が発生する直前の構造物の状態を確認でき、構造物の状況をより的確に把握することができる。なお、送信手段153は、ステップS206の処理と同様に、変位異常情報の送信に失敗した場合、所定回数送信をリトライする。
【0131】
このように、判定手段152は、第1時間(第1間隔)毎、及び、第2時間(第1センサ112がリミット信号を出力してから割り込みが発生するまでの時間)毎の、相互に異なる間隔毎に、構造物において変位異常が発生したか否かを判定する。判定手段152は、第1時間毎に、接続部130の移動量に基づく値と第1しきい値とを比較して接続部130の移動量に基づく値が第1しきい値を超えた場合に構造物における変位異常が発生したと判定する。一方、判定手段152は、第1時間より短い第2時間毎に、接続部130の移動量に基づく値と第1しきい値を超える大きさの第2しきい値とを比較して接続部130の移動量に基づく値が第2しきい値を超えた場合に構造物における機器異常の可能性をも有する変位異常が発生したと判定する。監視システム1は、日常的(定常的)な変位と非日常的(非定常的)な変位を弁別する判定基準での判定間隔を長く(第1時間毎)することにより、接続部130の日常的な変位を異常が発生したと誤って通知することを抑制することができる。一方、監視システム1は、非日常的な変位の中でも計測装置100の動作継続が危ぶまれる緊急性の高い変位か否かを弁別する判定基準での判定間隔を短く(第2時間毎)することにより、接続部130が大きく移動した場合にはより早期に管理者に通知することができる。
【0132】
一方、補正値が第1しきい値以下である場合、判定手段152は、構造物において変位異常が発生していないと判定する(ステップS223)。次に、判定手段152は、カウンタが0より大きいか否かを判定する(ステップS224)。カウンタが0である場合、判定手段152は、変位異常情報を送信することなく、ステップS226へ処理を移行する。一方、カウンタが0より大きい場合、判定手段152は、カウンタをデクリメント(-1)する(ステップS225)。次に、送信手段153は、第1通信装置117を介して情報処理装置200に変位異常情報を送信する(ステップS222)。この変位異常情報には、その計測装置100の装置IDと、最新の移動量及び傾きとが含まれる。カウンタを利用することにより、構造物管理者は、変位異常が発生した後の構造物の状態を確認でき、構造物の状況をより的確に把握することができる。なお、送信手段153は、ステップS206の処理と同様に、変位異常情報の送信に失敗した場合、所定回数送信をリトライする。
【0133】
次に、第1取得手段151は、ステップS213~S216で取得した現在日時、温度、移動量及び傾きを相互に関連付けて第1記憶装置140に記憶する(ステップS226)。即ち、第1取得手段151は、変位異常が発生したか否かに関わらず、各情報を第1記憶装置140に記憶しておく。この情報は、変位異常が発生した場合に、遡って読み出され、変位異常情報として情報処理装置200に送信される。また、ステップS212において、通信フラグがOFFに設定された場合、ステップS213~S216及びS226の処理は実行されない。したがって、計測装置100は、何らかの要因で情報処理装置200との通信接続できなくなったときに、第1記憶装置140に記憶された情報が、情報処理装置200と通信接続されていない間に計測された情報で上書きされて削除されることを防止できる。そのため、計測装置100は、第1記憶装置140として記憶容量の小さいデバイスを使用して装置コストの低減を図りつつ、変位異常が発生する直前の情報をより確実に情報処理装置200に送信することができる。
【0134】
次に、第1取得手段151は、第2間隔が経過したか否かを判定する(ステップS227)。第2間隔は、情報処理装置200と定期通信を行うべき間隔(例えば24時間)に予め設定される。例えば、割り込みコントローラが第2間隔毎に割り込み信号を第1処理回路150に出力し、第1取得手段151は、割り込みコントローラから割り込み信号を受信したときに第2間隔が経過したと判定する。まだ第2間隔が経過していない場合、第1取得手段151は、ステップS201へ処理を戻す。
【0135】
一方、第2間隔が経過した場合、第1取得手段151は、電圧計からバッテリ115の電池電圧を取得する(ステップS228)。次に、第1取得手段151は、第1通信装置117から受信電波強度を取得する(ステップS229)。次に、送信手段153は、第1通信装置117を介して情報処理装置200に計測情報を送信する(ステップS230)。計測情報には、ステップS228で取得された電池電圧、ステップS229で取得された受信電波強度に加えて、ステップS226で記憶され且つ情報処理装置200にまだ送信されていない現在日時、温度、移動量及び傾きのセットが含まれる。なお、送信手段153は、ステップS206の処理と同様に、計測情報の送信に失敗した場合、所定回数送信をリトライする。
【0136】
次に、送信手段153は、情報処理装置200への計測情報の送信に成功したか否かを判定する(ステップS231)。例えば、送信手段153は、所定回数のリトライの間に計測情報の送信に成功した場合、情報処理装置200への計測情報の送信に成功したと判定し、所定回数連続して計測情報の送信に失敗した場合、情報処理装置200への計測情報の送信に失敗したと判定する。送信手段153は、情報処理装置200への計測情報の送信に成功した場合、通信フラグをONに設定し(ステップS232)、情報処理装置200への計測情報の送信に失敗した場合、通信フラグをOFFに設定する(ステップS233)。通信フラグの初期値はOFFであり、情報処理装置200への計測情報の送信に最初に成功するまでは、ステップS226で現在日時、温度、移動量及び傾きは記憶されない。したがって、情報処理装置200に最初に送信される計測情報には、現在日時、温度、移動量及び傾きは含まれない。しかしながら、その計測情報の送信に成功した後は、ステップS226で現在日時、温度、移動量及び傾きが記憶され、以後に送信される計測情報には現在日時、温度、移動量及び傾きが含まれる。このように、複数の計測装置100の各送信手段153は、各第1時点における第1変化量及び第1温度と、各第2時点における第2変化量及び第2温度とを情報処理装置200に順次送信する。
【0137】
次に、第1取得手段151は、自装置用の判定用パラメータが情報処理装置200に記憶されているか否かを判定する(ステップS234)。第1取得手段151は、自装置用の判定用パラメータが情報処理装置200に記憶されているか否かを問い合わせる問合せ信号を、第1通信装置117を介して情報処理装置200に送信する。問合せ信号には、自装置の装置IDが含まれる。情報処理装置200の制御手段221は、第2通信装置203を介して計測装置100から問合せ信号を受信した場合、第2記憶装置210において、問合せ信号に含まれる装置IDと関連付けて判定用パラメータが記憶されているか否かを判定する。制御手段221は、判定用パラメータが記憶されているか否かを示す応答信号を、第2通信装置203を介して計測装置100に送信する。第1取得手段151は、第1通信装置117を介して情報処理装置200から応答信号を受信し、受信した応答信号に基づいて、自装置用の判定用パラメータが情報処理装置200に記憶されているか否かを判定する。自装置用の判定用パラメータが情報処理装置200に記憶されていない場合、第1取得手段151は、ステップS201へ処理を戻す。
【0138】
一方、自装置用の判定用パラメータが情報処理装置200に記憶されている場合、第1取得手段151は、判定用パラメータを情報処理装置200から取得して第1記憶装置140に記憶し(ステップS235)、ステップS201へ処理を戻す。第1取得手段151は、パラメータ要求信号を、第1通信装置117を介して情報処理装置200に送信し、第1通信装置117を介して情報処理装置200から判定用パラメータを受信することにより取得する。このパラメータ要求信号には、自装置の装置IDが含まれる。また、第1取得手段151は、計測装置100における調時(時刻合わせ)を実行する。
【0139】
なお、情報処理装置200は、計測装置100の運用が開始してからも、定期的に(例えば1カ月毎に)図8のステップS114~S118の処理を実行して、判定用パラメータを作成(更新)し、計測装置100に送信して更新させてもよい。これにより、監視システム1は、常に計測装置100の最新の環境に応じた適切な判定用パラメータを用いて、構造物における変位異常が発生しているか否かを高精度に判定することができる。また、数カ月程度では気温が大きく変化しないため、監視システム1は、全ての季節についての第1変化量及び第1温度の計測が完了するまで待つことなく計測装置100の運用を開始でき、利用者の利便性を向上させることができる。
【0140】
以上説明したように、監視システム1は、接続部130の移動量に基づく値が第1しきい値を超えた場合は構造物管理者の連絡先に橋梁における変位異常の発生を通知し、機器異常が発生した場合は装置管理者の連絡先に機器異常の発生を通知する。これにより、監視システム1は、発生した異常の種類に応じて適切な管理者に異常の発生を通知することができ、異常の発生を適切に通知することが可能となる。また、監視システム1は、相互に異なる二つの間隔で接続部130の移動量を監視しつつ、短い間隔で接続部130の移動量を監視する際の異常の判定基準を、長い間隔で接続部130の移動量を監視する際の異常の判定基準より厳しくする(異常に対して緊急性のレベル付けをする)。これにより、監視システム1は、緊急性が高い異常ほど早期に管理者に通知することができ、異常の発生を適切に通知することが可能となる。
【0141】
また、橋梁等の構造物に発生した、ひび割れ等の間隙における離隔距離は、温度変化等による日常的な構造物の伸縮の影響を受けて変化する。このような伸縮の影響は、構造物自体の変状(橋桁の撓み等、日常的には生じ得ない構造的な変化)の影響よりも大きい場合がある。また、このような構造物に発生する間隙における離隔距離は、構造物の規模(大きさ)、材質又は構造等の特性によっても異なる。監視システム1は、各計測装置100が計測する距離の変化量と温度の関係を考慮して、第1ユニット110が設置される位置P1と第2ユニット120が設置される位置P2の間の距離が異常であるか否かを判定する。これにより、監視システム1は、計測装置100が設置される環境における温度、又は、計測対象の構造物の特性に関わらず、第1ユニット110が設置される位置P1と第2ユニット120が設置される位置P2の間の距離が異常であるか否かを精度良く判定することが可能となる。
【0142】
図14は、他の実施形態に係る監視システム1について説明するためのグラフである。図14は、特定の期間における第1変化量と温度の変化を示すグラフである。図14の横軸は各計測日時を示し、左側の縦軸は各計測日時における第1変化量を示し、右側の縦軸は各計測日時における温度を示す。図14のグラフG9は、計測装置100の運用開始前の期間T1及び運用開始後の期間T2を含む期間内の第1変化量の変化を示すグラフである。グラフG10は1年間の期間T0を含む期間内の温度の変化を示すグラフである。グラフG9は監視システム1で計測した第1変化量の変化を示し、グラフG10は気象庁の地域気象観測システム(アメダス)から取得した温度の変化を示す。
【0143】
本実施形態に係る監視システム1は、年間気温の変動幅を用いて、関係式及び第1しきい値を設定する。図8のステップS114において、第2取得手段222は、現在までの複数の第1時点における要設定装置の接続部130の移動量(第1変化量)と、各第1時点における要設定装置が設置されたエリアの気温(温度)と、特定の1年間の複数の時点における要設定装置が設置されたエリアの気温(温度)と、を取得する。第2取得手段222は、第2記憶装置210において要設定装置の装置IDに関連付けて記憶された現在までの各計測日時における接続部130の移動量を第1変化量として取得する。また、第2取得手段222は、第2通信装置203を介して気象庁の地域気象観測システムから、各時点における要設定装置が設置されたエリアの気温(温度)を取得する。図14に示す例では、第2取得手段222は、計測装置100の運用開始前の期間T1内の各時点における第1変化量と、その期間T1内の各第1時点における要設定装置が設置されたエリアの気温と、その期間T1より前の1年間の期間T0の年間気温とを取得する。なお、年間気温を取得する期間T0は、期間T1を含む期間でもよいし、1年間より長い期間でもよい。しきい値を事後的に算出してもよい場合は、期間T0は期間T1よりも後の期間とすることもできる。
【0144】
第2取得手段222は、複数の第1時点における第1変化量の変動幅(最大値と最小値の差)を算出する。また、第2取得手段222は、複数の第1時点における気温(第1温度)の変動幅(最高気温と最低気温の差)と、年間の各時点における気温、即ち年間気温の変動幅(最高気温と最低気温の差)とを算出する。なお、第2取得手段222は、各第1時点における気温の変動幅と、年間気温の変動幅とを気象庁の地域気象観測システムから取得してもよい。図14に示す例では、第2取得手段222は、期間T1内の第1変化量の変動幅C1WIDTHと、期間T1内の気温(第1温度)の変動幅D1WIDTHと、期間T0内の気温(年間気温)の変動幅D0WIDTHとを算出する。
【0145】
ステップS115において、算出手段223は、複数の第1時点における第1変化量と、各第1時点における第1温度との間の関係を示す関係式を算出する。算出手段223は、年間気温の変動幅に対する、複数の第1時点における第1温度の変動幅の比と、年間の変化量の変動幅(推定値)に対する、複数の第1時点における第1変化量の変動幅の比とが等しいことを示す式を関係式として算出する。即ち、算出手段223は、年間の変動幅をC2WIDTHとすると、当該C2WIDTHと上記C1WIDTH、D1WIDTH及びD0WIDTHとを用いて、以下の関係式(3)を算出する。
D0WIDTH:D1WIDTH=C2WIDTH:C1WIDTH (3)
【0146】
ステップS116の処理は省略され、ステップS117において設定手段224は、年間気温の変動幅、複数の第1時点における第1温度の変動幅、複数の第1時点における第1変化量の変動幅、及び、上記関係式に基づいて、年間の変化量の変動幅を算出する。即ち、設定手段224は、D0WIDTH、D1WIDTH及びC1WIDTHを上記式(3)に代入することにより、D0WIDTH・D1WIDTH/C1WIDTHを計測装置100の年間の変化量の変動幅C2WIDTHとして算出(推定)する。次に、設定手段224は、算出した年間の第1変化量の変動幅に基づいて、第1しきい値を設定する。即ち、設定手段224は、第1しきい値として、第2変化量の上限値及び下限値を算出(推定)する。
【0147】
上記したように、温度と変化量は、温度が高いほど変化量が小さくなり、温度が低いほど変化量が大きくなるという相関関係を有している。したがって、第2変化量の上限値(年間の変化量の上限値)は、複数の第1時点における第1変化量の最大値に、年間気温の最小値と複数の第1時点における第1温度の最小値の差分に、年間気温の変動幅に対する年間の変化量の変動幅の割合を乗じた値を加算することにより推定される。即ち、設定手段224は、以下の式(4)に従って、第2変化量の上限値C2MAXを算出する。
C2MAX=C1MAX+|D1MIN-D0MIN|×(C2WIDTH/D0WIDTH) (4)
ここで、C1MAXは複数の第1時点における第1変化量の最大値であり、D1MINは複数の第1時点における第1温度の最小値であり、D0MINは年間気温の最小値である。
【0148】
一方、第2変化量の下限値(年間の変化量の下限値)は、複数の第1時点における第1変化量の最小値から、年間気温の最大値と複数の第1時点における第1温度の最大値の差分に、年間気温の変動幅に対する年間の変化量の変動幅の割合を乗じた値を減算することにより推定される。即ち、設定手段224は、以下の式(5)に従って、年間の変化量の下限値C2MINを算出する。
C2MIN=C1MIN+|D0MAX-D1MAX|×(C2WIDTH/D0WIDTH) (5)
ここで、C1MINは複数の第1時点における第1変化量の最小値であり、D0MAXは年間気温の最大値であり、D1MAXは複数の第1時点における第1温度の最大値である。
【0149】
なお、橋梁によっては、または同一橋梁であっても計測位置によっては、温度と変化量は、温度が高いほど変化量が大きくなり、温度が低いほど変化量が小さくなるという相関関係を有する場合もある。そのような場合は、第2変化量の上限値(年間の変化量の上限値)は、複数の第1時点における第1変化量の最大値に、年間気温の最大値と複数の第1時点における第1温度の最大値の差分に、年間気温の変動幅に対する年間の変化量の変動幅の割合を乗じた値を加算することにより推定されてもよい。即ち、設定手段224は、以下の式(6)に従って、第2変化量の上限値C2MAXを算出してもよい。
C2MAX=C1MAX+|D1MAX-D0MAX|×(C2WIDTH/D0WIDTH) (6)
【0150】
同様に、第2変化量の下限値(年間の変化量の下限値)は、複数の第1時点における第1変化量の最小値から、年間気温の最小値と複数の第1時点における第1温度の最小値の差分に、年間気温の変動幅に対する年間の変化量の変動幅の割合を乗じた値を減算することにより推定されてもよい。即ち、設定手段224は、以下の式(7)に従って、年間の変化量の下限値C2MINを算出してもよい。
C2MIN=C1MIN+|D0MIN-D1MIN|×(C2WIDTH/D0WIDTH) (7)
【0151】
図12のステップS218の処理は省略され、ステップS219において、判定手段152は、第2変化量と、第1しきい値、即ち年間の変化量の上限値及び下限値とを比較する。第2変化量が年間の変化量の上限値より高い値を有する場合、又は、第2変化量が年間の変化量の下限値より低い値を有する場合、判定手段152は、ステップS220において、構造物において変位異常が発生したと判定する。一方、第2変化量が年間の変化量の上限値以下であり且つ年間の変化量の下限値以上である場合、判定手段152は、ステップS222において、構造物において変位異常が発生していないと判定する。即ち、判定手段152は、第2変化量と、第1しきい値、即ち年間の変化量の上限値及び下限値とを比較することにより、第1ユニット110が設置される位置P1と第2ユニット120が設置される位置P2の間の距離が異常であるか否かを判定する。
【0152】
以上説明したように、監視システム1は、年間気温の変動幅を利用する場合も、第1ユニット110が設置される位置P1と第2ユニット120が設置される位置P2の間の距離が異常であるか否かを精度良く判定することが可能となる。
【0153】
以上、好適な実施形態について説明してきたが、実施形態はこれらに限定されない。例えば、接続部130は、クランク部を有さずに直線状に設けられてもよい。
【0154】
また、判定手段152は、相互に長さが異なる二つの時間間隔でのみ接続部130の移動量を監視するのでなく、相互に長さが異なる三つ以上の時間間隔で接続部130の移動量を監視してもよい。その場合、判定手段152は、接続部130の移動量を監視する時間間隔が短いほど異常の判定基準を厳しくし、接続部130の移動量を監視する時間間隔が長いほど異常の判定基準を緩やかにする。これにより、判定手段152は、接続部130の移動量をより柔軟に監視することができる。
【0155】
また、計測装置100と情報処理装置200の機能分担は、上記した例に限られず、計測装置100及び情報処理装置200の各手段を計測装置100と情報処理装置200の何れに配置するかは適宜変更可能である。例えば、情報処理装置200が判定手段152を有してもよい。その場合、判定手段152は、計測装置100から計測情報を受信した時に、受信した計測情報に基づいて、計測装置100において機器異常又は変位異常が発生したか否かを判定する。また、この場合、計測装置100は、図12のステップS201において割り込みが発生した場合、即時で計測情報を送信してもよい。これにより、判定手段152は、情報処理装置200上で動作する場合も、相互に長さが異なる二つの間隔で接続部130の移動量を監視しつつ、短い間隔で接続部130の移動量を監視する際の異常の判定基準を、長い間隔で接続部130の移動量を監視する際の異常の判定基準より厳しくすることができる。
【0156】
当業者は、本発明の精神および範囲から外れることなく、様々な変更、置換及び修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。例えば、上述した実施形態及び変形例は、本発明の範囲において、適宜に組み合わせて実施されてもよい。
【符号の説明】
【0157】
1 監視システム
100 計測装置
110 第1ユニット
112 第1センサ
113 第2センサ
117 第1通信装置
120 第2ユニット
130 接続部
152 判定手段
153 送信手段
200 情報処理装置
203 第2通信装置
223 算出手段
224 設定手段
225 通知手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14