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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106851
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】捲り装置
(51)【国際特許分類】
   B42D 9/04 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
B42D9/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011319
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝田 修弘
(72)【発明者】
【氏名】花谷 純次
(57)【要約】
【課題】捲り装置において、重送の発生を抑制する。
【解決手段】捲り装置は、重ね合わされた複数枚の用紙の一端が綴じられた冊子を見開き状態で保持する保持部と、前記保持部に保持された前記冊子に対し、その側方側から送風して最上の用紙とその次の用紙を分離する分離部と、前記分離部によって分離された前記次の用紙を押さえ位置にて押さえる押さえ部と、前記押さえ部が前記押さえ位置にて前記次の用紙を押さえている状態において、前記分離部によって分離された前記最上の用紙に対し、前記冊子の小口側から送風して前記最上の用紙を捲る捲り部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重ね合わされた複数枚の用紙の一端が綴じられた冊子を見開き状態で保持する保持部と、
前記保持部に保持された前記冊子に対し、その側方側から送風して最上の用紙とその次の用紙を分離する分離部と、
前記分離部によって分離された前記次の用紙を押さえ位置にて押さえる押さえ部と、
前記押さえ部が前記押さえ位置にて前記次の用紙を押さえている状態において、前記分離部によって分離された前記最上の用紙に対し、前記冊子の小口側から送風して前記最上の用紙を捲る捲り部と、
を備える捲り装置。
【請求項2】
前記分離部は、
前記押さえ部が前記最上の用紙から離隔した離隔位置に位置する状態で、前記最上の用紙と前記次の用紙とを分離する
請求項1に記載の捲り装置。
【請求項3】
前記押さえ部は、
前記分離部が前記最上の用紙と前記次の用紙とを分離した後に、前記離隔位置から前記押さえ位置への移動を開始し、前記分離部によって分離された前記次の用紙を前記押さえ位置にて押さえる
請求項2に記載の捲り装置。
【請求項4】
前記分離部は、
前記保持部に保持された前記冊子に対し、その側方側から送風して前記最上の用紙と前記次の用紙とを分離する送風部と、
前記送風部によって分離された前記最上の用紙を吸着する吸着部と、
を有し、
前記押さえ部は、前記吸着部が前記最上の用紙を吸着した状態において、前記最上の用紙から離隔した離隔位置から前記押さえ位置への移動を開始し、前記送風部によって分離された前記次の用紙を前記押さえ位置にて押さえる
請求項1に記載の捲り装置。
【請求項5】
前記押さえ部は、前記冊子の小口に沿った幅方向において前記吸着部の前記最上の用紙に対する吸着範囲と重なる前記押さえ位置にて、前記送風部によって分離された前記次の用紙を押さえる
請求項4に記載の捲り装置。
【請求項6】
前記分離部は、
前記吸着部が前記最上の用紙を吸着した状態において、前記次の用紙に対し下方側へ向けて空気を供給する供給部、
をさらに有し、
前記押さえ部は、前記供給部が前記次の用紙に対し下方側へ向けて空気を供給した後に、前記離隔位置から前記押さえ位置への移動を開始し、前記送風部によって分離された前記次の用紙を前記押さえ位置にて押さえる
請求項4に記載の捲り装置。
【請求項7】
前記供給部は、
前記次の用紙における前記冊子の小口に沿った幅方向の中央部に対し、下方側へ向けて空気を供給し、
前記押さえ部は、
前記次の用紙における前記幅方向の端部よりも前記中央部側の前記押さえ位置にて、前記次の用紙を押さえる
請求項6に記載の捲り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捲り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、書籍中のページをスキャンするために、前記書籍のページを自動的にめくるための装置であって、書籍保持部と、湾曲形成部と、ページ押さえ部と、送風部とを備えており、前記書籍保持部は、見開き状態における前記書籍を、前記書籍のページ部分が略上方を向く姿勢で保持する構成とされており、前記湾曲形成部は、前記書籍のページの下面を支持することによって、前記ページに、上方に凸となる湾曲を形成する構成となっており、前記ページ押さえ部は、前記ページの前小口側における前記ページの上面又は端面を支持しており、かつ、前記ページ押さえ部は、前記ページの前小口側において、前記ページに対して略下方に相対移動することによって、前記ページへの支持を、1ページごとに解放する構成となっており、前記送風部は、第1送風器を備えており、前記第1送風器は、前記ページ押さえ部による支持が解放された前記ページの下面に向けて、前記前小口側から空気を吹き付ける構成となっているページめくり装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6128783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
捲り装置としては、重ね合わされた複数枚の用紙の一端が綴じられた冊子を見開き状態で保持する保持部と、前記保持部に保持された前記冊子に対し、その側方側から送風して最上の用紙とその次の用紙を分離する分離部と、前記分離部によって分離された前記最上の用紙に対し、前記冊子の小口側から送風して前記最上の用紙を捲る捲り部と、を備える捲り装置が考えられる。
【0005】
当該捲り装置において、分離部によって分離された次の用紙が自由に移動できる状態において、捲り部が、最上の用紙に対し、冊子の小口側から送風して最上の用紙を捲る場合では、次の用紙に対しても送風され、重送が発生する場合がある。なお、重送とは、冊子の用紙が一度に複数枚、捲られることをいう。
【0006】
本開示は、分離部によって分離された次の用紙が自由に移動できる状態において、捲り部が、最上の用紙に対し、冊子の小口側から送風して最上の用紙を捲る場合に比べ、重送の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1態様は、重ね合わされた複数枚の用紙の一端が綴じられた冊子を見開き状態で保持する保持部と、前記保持部に保持された前記冊子に対し、その側方側から送風して最上の用紙とその次の用紙を分離する分離部と、前記分離部によって分離された前記次の用紙を押さえ位置にて押さえる押さえ部と、前記押さえ部が前記押さえ位置にて前記次の用紙を押さえている状態において、前記分離部によって分離された前記最上の用紙に対し、前記冊子の小口側から送風して前記最上の用紙を捲る捲り部と、を備える。
【0008】
第2態様では、第1態様において、前記分離部は、前記押さえ部が前記最上の用紙から離隔した離隔位置に位置する状態で、前記最上の用紙と前記次の用紙とを分離する。
【0009】
第3態様では、第2態様において、前記押さえ部は、前記分離部が前記最上の用紙と前記次の用紙とを分離した後に、前記離隔位置から前記押さえ位置への移動を開始し、前記分離部によって分離された前記次の用紙を前記押さえ位置にて押さえる。
【0010】
第4態様では、第1態様において、前記分離部は、前記保持部に保持された前記冊子に対し、その側方側から送風して前記最上の用紙と前記次の用紙とを分離する送風部と、前記送風部によって分離された前記最上の用紙を吸着する吸着部と、を有し、前記押さえ部は、前記吸着部が前記最上の用紙を吸着した状態において、前記最上の用紙から離隔した離隔位置から前記押さえ位置への移動を開始し、前記送風部によって分離された前記次の用紙を前記押さえ位置にて押さえる。
【0011】
第5態様では、第4態様において、前記押さえ部は、前記冊子の小口に沿った幅方向において前記吸着部の前記最上の用紙に対する吸着範囲と重なる前記押さえ位置にて、前記送風部によって分離された前記次の用紙を押さえる。
【0012】
第6態様では、第4態様において、前記分離部は、前記吸着部が前記最上の用紙を吸着した状態において、前記次の用紙に対し下方側へ向けて空気を供給する供給部、をさらに有し、前記押さえ部は、前記供給部が前記次の用紙に対し下方側へ向けて空気を供給した後に、前記離隔位置から前記押さえ位置への移動を開始し、前記送風部によって分離された前記次の用紙を前記押さえ位置にて押さえる。
【0013】
第7態様では、第6態様において、前記供給部は、前記次の用紙における前記冊子の小口に沿った幅方向の中央部に対し、下方側へ向けて空気を供給し、前記押さえ部は、前記次の用紙における前記幅方向の端部よりも前記中央部側の前記押さえ位置にて、前記次の用紙を押さえる。
【発明の効果】
【0014】
第1態様の構成によれば、分離部によって分離された次の用紙が自由に移動できる状態において、捲り部が、最上の用紙に対し、冊子の小口側から送風して最上の用紙を捲る場合に比べ、重送の発生が抑制される。
【0015】
第2態様の構成によれば、押さえ部が最上の用紙に接触する位置に位置する状態で、分離部が最上の用紙と次の用紙を分離する場合に比べ、分離部による最上の用紙の分離不良が抑制される。
【0016】
第3態様の構成によれば、分離部が最上の用紙と次の用紙を分離する前に、押さえ部が離隔位置から押さえ位置への移動を開始する場合に比べ、押さえ部による押さえ不良(例えば誤って最上の用紙を押さえてしまう不良)が抑制される。
【0017】
第4態様の構成によれば、吸着部による最上の用紙の吸着が行われていない状態において、押さえ部が押さえ位置への移動を開始する場合に比べ、押さえ部による押さえ不良が抑制される。
【0018】
第5態様の構成によれば、押さえ部が、冊子の小口に沿った幅方向において吸着部の最上の用紙に対する吸着範囲とずれた押さえ位置にて、次の用紙を押さえる場合に比べ、押さえ部による押さえ不良が抑制される。
【0019】
第6態様の構成によれば、押さえ部が、供給部が次の用紙に対し下方側へ向けて空気を供給する前に、押さえ位置への移動を開始する場合に比べ、押さえ部による押さえ不良が抑制される。
【0020】
第7態様の構成によれば、押さえ部が、次の用紙における幅方向の中央部よりも端部に接近した押さえ位置にて、次の用紙を押さえる場合に比べ、押さえ部による押さえ不良が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態に係る捲り装置の構成を示す概略正面図である。
図2】本実施形態に係る捲り装置の構成を示す概略平面図である。
図3】本実施形態に係る捲り装置において、押さえ部が離隔位置に位置する状態を示す概略正面図である。
図4図3に示される捲り装置において、第一送風部及び第二送風部が冊子へ送風する状態を示す概略正面図である。
図5図4に示される捲り装置において、吸着部が最上用紙を吸着した状態を示す概略正面図である。
図6図5に示される捲り装置において、供給部が空気を供給する状態を示す概略正面図である。
図7図6に示される捲り装置において、押さえ部が押え位置に移動した状態を示す概略正面図である。
図8図7に示される捲り装置において、最上用紙を吸着した吸着部を上方へ移動させた状態を示す概略正面図である。
図9図8に示される捲り装置において、最上用紙を捲った状態を示す概略正面図である。
図10図9に示される捲り装置において、押さえ部が離隔位置に移動した状態を示す概略正面図である。
図11】押さえ部の形状を変えた変形例を示す概略正面図である。
図12】押さえ部の配置位置を変えた変形例を示す概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。
【0023】
<捲り装置10>
まず、本実施形態に係る捲り装置10の構成を説明する。図1は、本実施形態に係る捲り装置10の構成を示す概略正面図である。図2は、本実施形態に係る捲り装置10の構成を示す概略平面図である。
【0024】
なお、図中に示す矢印UPは、装置の上方を示し、矢印DOは、装置の下方を示す。また、図中に示す矢印LHは、装置の左方を示し、矢印RHは、装置の右方を示す。また、図中に示す矢印FRは、装置の前方を示し、矢印RRは、装置の後方を示す。これらの方向は、説明の便宜上定めた方向であるから、装置構成がこれらの方向に限定されるものではない。なお、装置の各方向において、「装置」の語を省略して示す場合がある。すなわち、例えば、「装置の上方」を、単に「上方」と示す場合がある。
【0025】
また、下記の説明では、「上下方向」を、「上方及び下方の両方」又は「上方及び下方のいずれか一方」という意味で用いる場合がある。「左右方向」を、「右方及び左方の両方」又は「右方及び左方のいずれか一方」という意味で用いる場合がある。なお、「左右方向」は、側方、横方向、及び水平方向ともいえる。「前後方向」を、「前方及び後方の両方」又は「前方及び後方のいずれか一方」という意味で用いる場合がある。なお、「前後方向」は、側方、横方向、及び水平方向ともいえる。また、上下方向、左右方向、前後方向は、互いに交差する方向(具体的には、直交する方向)である。
【0026】
また、図中の「○」の中に「×」が記載された記号は、紙面の手前から奥へ向かう矢印を意味する。また、図中の「○」の中に「・」が記載された記号は、紙面の奥から手前へ向かう矢印を意味する。また、各図に示す各部分同士の上下方向、左右方向、前後方向の寸法比は、実際の寸法比と異なる場合がある。
【0027】
図1に示される捲り装置10は、冊子90における用紙99を捲る装置である。冊子90は、重ね合わされた複数枚の用紙99の一端が綴じられたものである。冊子90としては、例えば、書籍、パンフレットなどが挙げられる。
【0028】
捲り装置10は、具体的には、図1に示されるように、保持部20と、分離部30と、押さえ部80と、移動機構82と、捲り部50と、撮像部60と、を備えている。以下、捲り装置10の各部(具体的には、保持部20、分離部30、押さえ部80、移動機構82、捲り部50、及び撮像部60)について説明する。
【0029】
<保持部20>
保持部20は、冊子90を見開き状態で保持する構成部である。具体的には、保持部20は、図1に示されるように、冊子90の表紙91を保持する第一保持部21と、冊子90の裏表紙92を保持する第二保持部22と、冊子90の背表紙93を保持する第三保持部23と、を有している。
【0030】
冊子90は、見開き状態にて、表紙91が第一保持部21に載せられ、裏表紙92が第二保持部22に載せられ、背表紙93が第三保持部23に載せられる。このように、見開き状態にて第一保持部21、第二保持部22及び第三保持部23に載せられた冊子90は、例えば、第一保持部21に設けられたクリップ等の固定部(図示省略)によって、表紙91が第一保持部21に固定され、第二保持部22に設けられたクリップ等の固定部(図示省略)によって、裏表紙92が第二保持部22に固定される。
【0031】
<分離部30>
分離部30は、保持部20に保持された冊子90に対し、その側方側から送風して最上の用紙94(以下、最上用紙94という)とその次の用紙95(以下、次用紙95という)を分離する構成部である。本実施形態では、分離部30は、押さえ部80が離隔位置(図1及び図3に示される位置)に位置する状態で、最上用紙94と次用紙95とを分離する。
【0032】
分離部30は、具体的には、図1に示されるように、第一送風部31と、第二送風部32と、吸着部42と、移動機構44と、供給部33と、検知部46と、を有している。なお、図1では、第一送風部31と第二送風部32とは前後方向に重なって配置されている。
【0033】
<第一送風部31>
第一送風部31は、送風部の一例であり、保持部20に保持された冊子90に対し、その側方側から送風して最上用紙94と次用紙95とを分離する構成部である。この第一送風部31は、保持部20に保持された冊子90に対する前方側に配置されており、冊子90へ向かって後方側へ送風する。
【0034】
本実施形態では、第一送風部31は、例えば、軸流送風機により構成されている。なお、第一送風部31としては、遠心送風機(例えばシロッコファン)などの送風機であってもよく、冊子90へ送風する構成部であればよい。
【0035】
<第二送風部32>
第二送風部32は、送風部の一例であり、保持部20に保持された冊子90に対し、その側方側から送風して最上用紙94と次用紙95とを分離する構成部である。この第二送風部32は、保持部20に保持された冊子90に対する後方側に配置されており、冊子90へ向かって前方側へ送風する。
【0036】
本実施形態では、第二送風部32は、例えば、軸流送風機により構成されている。なお、第二送風部32としては、遠心送風機(例えばシロッコファン)などの送風機であってもよく、冊子90へ送風する構成部であればよい。
【0037】
<吸着部42及び移動機構44>
吸着部42は、第一送風部31及び第二送風部32によって分離された最上用紙94を吸着する構成部である。
【0038】
吸着部42は、図1に示されるように、下方側へ向けて開口し最上用紙94を吸着する吸着口42Aが形成された筐体42Bを有し、吸着口42Aを通じて空気を吸引することにより最上用紙94を吸着口42Aに吸着する(図5参照)。
【0039】
移動機構44は、吸着部42を移動させる機構である。移動機構44は、最上用紙94を吸着した吸着部42を上方へ移動させることで、最上用紙94を次用紙95から離隔する。移動機構44としては、吸着部42を上下方向に移動させるシリンダーなどの機構を用いることが可能である。
【0040】
<供給部33>
供給部33は、吸着部42が最上用紙94を吸着した状態において、次用紙95に対し下方側へ向けて空気を供給する構成部である。この供給部33は、保持部20に保持された冊子90に対する右方側に配置されている。
【0041】
さらに供給部33は、図2に示されるように、保持部20に保持された冊子90における前後方向の中央部に対向して配置されている。供給部33は、次用紙95における前後方向の中央部に対し、下方側へ向けて空気を供給する。当該前後方向は、冊子90の小口90Aに沿った幅方向の一例である。
【0042】
供給部33は、具体的には、例えば、供給装置331と、ノズル332と、を有している。供給装置331としては、例えば、空気をノズル332へ供給する送風機が用いられる。送風機としては、例えば、軸流送風機、及び遠心送風機(例えばシロッコファン)などが用いられる。なお、供給装置331としては、送風機に限られず、エアコンプレッサー等、他の供給部を用いてもよい。
【0043】
ノズル332は、吸着部42が最上用紙94を吸着した状態において、供給装置331から供給された空気を、次用紙95に対し下方側へ向けて吐出する。ノズル332は、例えば、保持部20に保持された冊子90の小口90Aに沿って開口している。なお、小口90Aとは、冊子90の背表紙93とは反対側の端部である。
【0044】
<検知部46>
検知部46は、吸着部42への最上用紙94の吸着を検知する構成部である。検知部46としては、送信部46A及び受信部46Bを有するセンサを用いることが可能である。当該センサでは、例えば、送信部46Aが、吸着部42における最上用紙94の吸着位置へ信号を送信し、受信部46Bが、吸着部42への最上用紙94の吸着による当該信号の変化を検知することで、吸着部42への最上用紙94の吸着を検知する。当該センサとしては、例えば、反射型又は透過型の光センサ、超音波センサ、その他のセンサを用いることが可能である。
【0045】
なお、検知部46は、例えば、筐体42Bの内部の圧力によって、吸着部42への最上用紙94の吸着を検知する構成であってもよい。また、吸着口42Aの周囲を囲むと共に吸着口42Aから下方へ張り出し、内部が負圧になることで上昇する筒体を設けた構成において、筒体の上昇を検知することにより、吸着部42への最上用紙94の吸着を検知してもよい。
【0046】
<押さえ部80及び移動機構82>
押さえ部80は、分離部30によって分離された次用紙95を押さえる構成部である。この押さえ部80は、例えば、上下方向が厚み方向とされた板状に形成された一対の板体81で構成されている。この一対の板体81は、左右方向に長さを有し、移動機構82から左方向側へ延び出ている。一対の板体81は、図2に示されるように、前後方向において、吸着部42の最上用紙94に対する吸着範囲と重なる位置に配置されている。
【0047】
移動機構82は、押さえ部80を押さえ位置と離隔位置とに移動させる機構である。押さえ位置は、押さえ部80が、分離部30によって分離された次用紙95を押さえる位置である。本実施形態では、押さえ位置は、押さえ部80が、前後方向において吸着部42の最上用紙94に対する吸着範囲と重なる位置とされている。具体的には、押さえ部80は、次用紙95における前端部及び後端部よりも前後方向の中央部側の押さえ位置にて、次用紙95を押さえる。
【0048】
離隔位置は、押さえ部80が最上用紙94から離隔した位置である。本実施形態では、離隔位置は、冊子90に対する右方側の位置である。
【0049】
移動機構82は、押さえ部80の右端部を支持し、左右方向へ沿って押さえ部80を移動させる。移動機構82としては、吸着部42を左右方向に沿って移動させるシリンダーなどの機構を用いることが可能である。
【0050】
本実施形態では、移動機構82は、分離部30が最上用紙94と次用紙95とを分離した後に、押さえ部80における離隔位置から押さえ位置への移動を開始する。具体的には、移動機構82は、吸着部42が最上用紙94を吸着した状態において、供給部33が次用紙95に対し下方側へ向けて空気を供給した後に、押さえ部80における離隔位置から押さえ位置への移動を開始する。さらに具体的には、供給部33が次用紙95に対し下方側へ向けて空気の供給を開始し、当該供給を終了した後に、移動機構82が、押さえ部80における離隔位置から押さえ位置への移動を開始する。
【0051】
したがって、本実施形態では、押さえ部80は、分離部30が最上用紙94と次用紙95とを分離した後に、離隔位置から押さえ位置への移動を開始し、分離部30によって分離された次用紙95を押さえ位置にて押さえる。具体的には、押さえ部80は、吸着部42が最上用紙94を吸着した状態であって、供給部33が次用紙95に対し下方側へ向けて空気を供給した後に、離隔位置から押さえ位置への移動を開始し、吸着部42が最上用紙94を吸着した状態において押さえ位置に移動する。そして、押さえ部80は、第一送風部31及び第二送風部32によって分離された次用紙95を押さえ位置にて押さえる。
【0052】
<捲り部50>
捲り部50は、保持部20に保持された冊子90の小口90A側から送風して最上用紙94を捲る構成部である。この捲り部50は、押さえ部80が押さえ位置にて次用紙95を押さえている状態において、分離部30によって分離された最上用紙94に対し、当該冊子90の小口90A側から送風して最上用紙94を捲る。
【0053】
捲り部50は、具体的には、前後方向に沿って配置された複数の送風部52を有している(図2参照)。複数の送風部52は、保持部20に保持された冊子90における最上用紙94の小口90Aへ向かって左方側へ送風する。送風部52は、例えば、軸流送風機により構成されている。なお、送風部52としては、遠心送風機(例えばシロッコファン)などの送風機であってもよく、冊子90へ送風する構成部であればよい。
【0054】
<撮像部60>
撮像部60(図1参照)は、保持部20に保持された冊子90の最上用紙94を撮像する構成部である。具体的には、撮像部60は、当該最上用紙94を撮像するカメラで構成されている。
【0055】
撮像部60は、最上用紙94が捲られたことを検知する検知部としても機能する。例えば、撮像部60が撮像した最上用紙94の形状(姿勢)に基づき、最上用紙94が捲られたことを検知する。
【0056】
なお、撮像部60は、冊子90における左右の最上用紙94の各々を撮像する一対のカメラで構成されていてもよい。
【0057】
<捲り装置10における各部の動作>
捲り装置10では、まず、押さえ部80が、離隔位置に位置する状態において(図3参照)、分離部30(具体的には、第一送風部31、第二送風部32、吸着部42、及び供給部33)が、保持部20に保持された冊子90に送風して最上用紙94と次用紙95とを分離する(図3図6参照)。
【0058】
分離部30では、具体的には、まず、第一送風部31及び第二送風部32が、保持部20に保持された冊子90に送風して最上用紙94と次用紙95とを分離する(図3及び図4参照)。次に、吸着部42が、最上用紙94を吸着する(図5参照)。
【0059】
検知部46が、吸着部42への最上用紙94の吸着を検知すると、第一送風部31及び第二送風部32が送風を停止すると共に、供給部33が、冊子90へ空気を供給して、最上用紙94に付着した場合の次用紙95を最上用紙94から分離する(図6参照)。すなわち、本実施形態では、供給部33が冊子90へ送風することで、第一送風部31及び第二送風部32による送風では最上用紙94から分離されなかった場合の次用紙95を最上用紙94から分離する。
【0060】
次に、押さえ部80が移動機構82により、離隔位置から押さえ位置に移動し、分離部30によって分離された次用紙95を押さえる(図7参照)。本実施形態では、押さえ部80は、吸着部42が最上用紙94を吸着した状態であって、供給部33が次用紙95に対し下方側へ向けて空気を供給した後に、離隔位置から押さえ位置への移動を開始し、吸着部42が最上用紙94を吸着した状態において押さえ位置にて、次用紙95を押さえる。
【0061】
次に、移動機構44が、最上用紙94を吸着した状態の吸着部42を上方へ移動させることで、最上用紙94の小口90Aを上方へ移動させる(図8参照)。
【0062】
次に、吸着部42による吸着を解除した後に、捲り部50が、最上用紙94へ送風して、最上用紙94を捲る(図9参照)。具体的には、吸着部42の空気の吸引を停止した後に、捲り部50が、最上用紙94への送風を開始する。このように、捲り部50は、吸着部42による吸着を解除した後に送風する。
【0063】
次に、撮像部60が、最上用紙94が捲られたことを検知すると、捲り部50が送風を停止し、押さえ部80が押さえ位置から離隔位置へ移動する(図10参照)。そして、撮像部60が次用紙95(捲られた後の最上用紙94)を撮像する。捲り装置10では、上記の一連の動作を繰り返すことで、冊子90のすべての用紙99を捲ると共に撮像する。
【0064】
<本実施形態の作用>
本実施形態では、捲り部50は、押さえ部80が押さえ位置にて次用紙95を押さえている状態において、分離部30によって分離された最上用紙94に対し、当該冊子90の小口90A側から送風して最上用紙94を捲る。
【0065】
このため、分離部30によって分離された次用紙95が自由に移動できる状態において、捲り部50が、最上用紙94に対し、冊子90の小口90A側から送風して最上用紙94を捲る場合に比べ、重送の発生が抑制される。
【0066】
また、本実施形態では、押さえ部80が、離隔位置に位置する状態において、分離部30が、保持部20に保持された冊子90に送風して最上用紙94と次用紙95とを分離する。
【0067】
このため、押さえ部80が最上用紙94に接触する位置に位置する状態で、分離部30が最上用紙94と次用紙95を分離する場合に比べ、分離部30による最上用紙94の分離不良が抑制される。
【0068】
また、本実施形態では、押さえ部80は、分離部30が最上用紙94と次用紙95とを分離した後に、離隔位置から押さえ位置への移動を開始し、分離部30によって分離された次用紙95を押さえ位置にて押さえる。
【0069】
このため、分離部30が最上用紙94と次用紙95を分離する前に、押さえ部80が離隔位置から押さえ位置への移動を開始する場合に比べ、押さえ部80による押さえ不良(例えば誤って最上用紙94を押さえてしまう不良)が抑制される。
【0070】
また、本実施形態では、押さえ部80は、吸着部42が最上用紙94を吸着した状態において、離隔位置から押さえ位置への移動を開始し、第一送風部31及び第二送風部32によって分離された次用紙95を押さえ位置にて押さえる。
【0071】
このため、吸着部42による最上用紙94の吸着が行われていない状態において、押さえ部80が押さえ位置への移動を開始する場合に比べ、押さえ部による押さえ不良が抑制される。
【0072】
押さえ部80部は、前後方向において吸着部42の最上用紙94に対する吸着範囲と重なる押さえ位置にて、第一送風部31及び第二送風部32によって分離された次用紙95を押さえる。
【0073】
このため、押さえ部80が、前後方向において吸着部42の最上用紙94に対する吸着範囲とずれた押さえ位置にて、第一送風部31及び第二送風部32によって分離された次用紙95を押さえる場合に比べ、押さえ部80による押さえ不良が抑制される。
【0074】
また、本実施形態では、押さえ部80は、供給部33が次用紙95に対し下方側へ向けて空気を供給した後に、離隔位置から押さえ位置への移動を開始し、第一送風部31及び第二送風部32によって分離された次用紙95を押さえ位置にて押さえる。
【0075】
このため、押さえ部80が、供給部33が次用紙95に対し下方側へ向けて空気を供給する前に、押さえ位置への移動を開始する場合に比べ、押さえ部による押さえ不良が抑制される。
【0076】
また、本実施形態では、押さえ部80は、次用紙95における前端部及び後端部よりも前後方向の中央部側の押さえ位置にて、次用紙95を押さえる。
【0077】
このため、押さえ部80が、次用紙95における前後方向の中央部よりも端部側の押さえ位置にて、次用紙95を押さえる場合に比べ、押さえ部80による押さえ不良が抑制される。
【0078】
<押さえ部80の変形例>
本実施形態では、押さえ部80は、上下方向が厚み方向とされた板状に形成されていたが、これに限られない。例えば、図11に示されるように、下方側(最上用紙94に接触して最上用紙94を押さえる側)に凸となる突出部80Kを有する構成であってもよい。これにより、押さえ部80が押え位置へ移動する際に、押さえ部80が最上用紙94に引っ掛かかりにくく、最上用紙94にしわ等が発生しにくい。
【0079】
また、押さえ部80の一対の板体81は、図2に示されるように、前後方向において、吸着部42の最上用紙94に対する吸着範囲と重なる位置に配置されていたが、これに限られない。一対の板体81は、図12に示されるように、吸着部42に対する前方側及び後方側に配置され、冊子90の前端部及び後端部において、次用紙95を押さえる構成であってもよい。
【0080】
<他の変形例>
本実施形態では、保持部20は、図1に示されるように、第一保持部21、第二保持部22及び第三保持部23を有していたが、これに限られない。保持部20は、例えば、第一保持部21及び第二保持部22のみを有する構成であってもよく、冊子90を見開き状態で保持する構成部であればよい。
【0081】
また、本実施形態では、分離部30は、第一送風部31、第二送風部32及び供給部33を有していたが、これに限られない。分離部30は、例えば、第一送風部31、第二送風部32及び供給部33のいずれか1つ又は2つを有する構成であってもよい。また、分離部30は、第一送風部31、第二送風部32及び供給部33に加えて、送風部を有する構成であってもよい。
【0082】
また、本実施形態では、捲り部50は、複数の送風部52を有していたが、これに限られない。捲り部50は、単一の送風部52を有する構成であってもよく、最上用紙94の小口90A側から送風して最上用紙94を捲る構成部であればよい。
【0083】
また、本実施形態では、分離部30は、吸着部42が最上用紙94の吸着を完了した後、捲り部50が送風を開始する前に送風を停止していたが、これに限られない。例えば、分離部30が、吸着部42が最上用紙94の吸着を完了した後も、捲り部50が送風を開始するまで送風を継続してもよい。
【0084】
本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、その主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形、変更、改良が可能である。例えば、上記に示した変形例は、適宜、複数を組み合わせて構成してもよい。
【0085】
<付記>
(((1)))
重ね合わされた複数枚の用紙の一端が綴じられた冊子を見開き状態で保持する保持部と、
前記保持部に保持された前記冊子に対し、その側方側から送風して最上の用紙とその次の用紙を分離する分離部と、
前記分離部によって分離された前記次の用紙を押さえ位置にて押さえる押さえ部と、
前記押さえ部が前記押さえ位置にて前記次の用紙を押さえている状態において、前記分離部によって分離された前記最上の用紙に対し、前記冊子の小口側から送風して前記最上の用紙を捲る捲り部と、
を備える捲り装置。
【0086】
(((2)))
前記分離部は、
前記押さえ部が前記最上の用紙から離隔した離隔位置に位置する状態で、前記最上の用紙と前記次の用紙とを分離する
(((1)))に記載の捲り装置。
【0087】
(((3)))
前記押さえ部は、
前記分離部が前記最上の用紙と前記次の用紙とを分離した後に、前記離隔位置から前記押さえ位置への移動を開始し、前記分離部によって分離された前記次の用紙を前記押さえ位置にて押さえる
(((2)))に記載の捲り装置。
【0088】
(((4)))
前記分離部は、
前記保持部に保持された前記冊子に対し、その側方側から送風して前記最上の用紙と前記次の用紙とを分離する送風部と、
前記送風部によって分離された前記最上の用紙を吸着する吸着部と、
を有し、
前記押さえ部は、前記吸着部が前記最上の用紙を吸着した状態において、前記最上の用紙から離隔した離隔位置から前記押さえ位置への移動を開始し、前記送風部によって分離された前記次の用紙を前記押さえ位置にて押さえる
(((1)))~(((3)))のいずれか1つに記載の捲り装置。
【0089】
(((5)))
前記押さえ部は、前記冊子の小口に沿った幅方向において前記吸着部の前記最上の用紙に対する吸着範囲と重なる前記押さえ位置にて、前記送風部によって分離された前記次の用紙を押さえる
(((4)))に記載の捲り装置。
【0090】
(((6)))
前記分離部は、
前記吸着部が前記最上の用紙を吸着した状態において、前記次の用紙に対し下方側へ向けて空気を供給する供給部、
をさらに有し、
前記押さえ部は、前記供給部が前記次の用紙に対し下方側へ向けて空気を供給した後に、前記離隔位置から前記押さえ位置への移動を開始し、前記送風部によって分離された前記次の用紙を前記押さえ位置にて押さえる
(((4)))又は(((5)))に記載の捲り装置。
【0091】
(((7)))
前記供給部は、
前記次の用紙における前記冊子の小口に沿った幅方向の中央部に対し、下方側へ向けて空気を供給し、
前記押さえ部は、
前記次の用紙における前記幅方向の端部よりも前記中央部側の前記押さえ位置にて、前記次の用紙を押さえる
(((6)))に記載の捲り装置。
【0092】
(((1)))の構成によれば、分離部によって分離された次の用紙が自由に移動できる状態において、捲り部が、最上の用紙に対し、冊子の小口側から送風して最上の用紙を捲る場合に比べ、重送の発生が抑制される。
【0093】
(((2)))の構成によれば、押さえ部が最上の用紙に接触する位置に位置する状態で、分離部が最上の用紙と次の用紙を分離する場合に比べ、分離部による最上の用紙の分離不良が抑制される。
【0094】
(((3)))の構成によれば、分離部が最上の用紙と次の用紙を分離する前に、押さえ部が離隔位置から押さえ位置への移動を開始する場合に比べ、押さえ部による押さえ不良(例えば誤って最上の用紙を押さえてしまう不良)が抑制される。
【0095】
(((4)))の構成によれば、吸着部による最上の用紙の吸着が行われていない状態において、押さえ部が押さえ位置への移動を開始する場合に比べ、押さえ部による押さえ不良が抑制される。
【0096】
(((5)))の構成によれば、押さえ部が、冊子の小口に沿った幅方向において吸着部の最上の用紙に対する吸着範囲とずれた押さえ位置にて、次の用紙を押さえる場合に比べ、押さえ部による押さえ不良が抑制される。
【0097】
(((6)))の構成によれば、押さえ部が、供給部が次の用紙に対し下方側へ向けて空気を供給する前に、押さえ位置への移動を開始する場合に比べ、押さえ部による押さえ不良が抑制される。
【0098】
(((7)))の構成によれば、押さえ部が、次の用紙における幅方向の中央部よりも端部に接近した押さえ位置にて、次の用紙を押さえる場合に比べ、押さえ部による押さえ不良が抑制される。
【符号の説明】
【0099】
10 捲り装置
20 保持部
21 第一保持部
22 第二保持部
23 第三保持部
30 分離部
31 第一送風部
32 第二送風部
33 供給部
42 吸着部
42A 吸着口
42B 筐体
44 移動機構
46 検知部
46A 送信部
46B 受信部
50 捲り部
52 送風部
60 撮像部
80 押さえ部
80K 突出部
81 板体
82 移動機構
90 冊子
90A 小口
91 表紙
92 裏表紙
93 背表紙
94 最上用紙
95 次用紙
99 用紙
331 供給装置
332 ノズル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12