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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107634
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】ロータおよびポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/2733 20220101AFI20240802BHJP
   F04D 13/06 20060101ALI20240802BHJP
   F04D 13/02 20060101ALI20240802BHJP
   H02K 7/14 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
H02K1/2733
F04D13/06 H
F04D13/02 H
H02K7/14 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011660
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(74)【代理人】
【識別番号】100196140
【弁理士】
【氏名又は名称】岩垂 裕司
(72)【発明者】
【氏名】伊佐治 直哉
【テーマコード(参考)】
3H130
5H607
5H622
【Fターム(参考)】
3H130AA02
3H130AB22
3H130AB46
3H130AC30
3H130BA13Z
3H130DA03Z
3H130DD04X
3H130EA01Z
3H130EB01Z
5H607AA12
5H607BB01
5H607BB07
5H607BB14
5H607BB25
5H607CC05
5H607FF06
5H622AA00
5H622CA01
5H622CA05
5H622DD02
5H622DD04
5H622PP03
5H622PP10
5H622PP12
(57)【要約】
【課題】ロータの円筒部に駆動マグネットを固定するポンプ装置において、周り止め用の嵌め合い箇所の寸法公差に起因する駆動マグネットの振動および異音を防止する。
【解決手段】ポンプ装置1のロータ4は、ロータ部材40の円筒部41の外周面に駆動マグネット8が固定される。ロータ部材40は、円筒部41から径方向外側に突出して駆動マグネット8の軸線方向の一方側L1の端部を支持する座部42と、駆動マグネット8の軸線方向の他方側L2の端部の内周縁を係止するカシメ部43を備える。駆動マグネット8に設けられた第1凹部81に座部42に設けられた第1凸部422が嵌合した第1周り止め部E1、および、駆動マグネット8に設けられた第2凹部84にカシメ部43に設けられた第2凸部431が嵌合した第2周り止め部E2により、駆動マグネット8の周り止めを行う。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ室に配置されるインペラと一体に回転するロータであって、
軸線方向に延びる円筒部を備えるロータ部材と、
前記円筒部の外周面に固定される駆動マグネットと、を備え、
前記ロータ部材は、前記円筒部から径方向外側に突出して前記駆動マグネットの前記軸線方向の一方側の端部を支持する座部と、前記駆動マグネットの前記軸線方向の他方側の端部の内周縁を係止するカシメ部と、を備え、
前記駆動マグネットと前記ロータ部材は、
前記駆動マグネットに設けられた第1凹部に前記座部に設けられた第1凸部が嵌合した第1周り止め部、および、前記駆動マグネットに設けられた第2凹部に前記カシメ部に設けられた第2凸部が嵌合した第2周り止め部を備え、
前記第2凹部は、少なくとも一部が前記第1凹部と同一角度位置に設けられていることを特徴とするロータ。
【請求項2】
前記円筒部の外周面には、前記軸線方向に延びるリブが周方向に複数配置され、周方向で隣り合うリブの間は、前記駆動マグネットと前記円筒部との隙間を前記ポンプ室の流体が流れる流路溝になっており、
複数の前記リブは、前記第2凸部と同一の角度位置に配置されて前記軸線方向の他方側の端部が前記第2凸部に接続される第1リブを含むことを特徴とする請求項1に記載のロータ。
【請求項3】
ポンプ室に配置されるインペラと一体に回転するロータであって、
軸線方向に延びる円筒部を備えるロータ部材と、
前記円筒部の外周面に固定される駆動マグネットと、を備え、
前記ロータ部材は、前記円筒部から径方向外側に突出して前記駆動マグネットの前記軸線方向の一方側の端部を支持する座部と、前記駆動マグネットの前記軸線方向の他方側の端部の内周縁を係止するカシメ部と、を備え、
前記円筒部の外周面には、前記軸線方向に延びるリブが周方向に複数配置され、周方向で隣り合うリブの間は、前記駆動マグネットと前記円筒部との隙間を前記ポンプ室の流体が流れる流路溝になっており、
前記駆動マグネットと前記ロータ部材は、
前記駆動マグネットに設けられた第1凹部に前記座部に設けられた第1凸部が嵌合した第1周り止め部、および、前記駆動マグネットに設けられた第2凹部に前記カシメ部に設けられた第2凸部が嵌合した第2周り止め部を備え、
複数の前記リブは、前記第2凸部と同一の角度位置に配置されて前記軸線方向の他方側の端部が前記第2凸部に接続される第1リブを含むことを特徴とするロータ。
【請求項4】
前記第1凹部および前記第2凹部は、回転対称な複数の位置に設けられていることを特徴とする請求項1または3に記載のロータ。
【請求項5】
前記駆動マグネットの外周面には、異なる磁極が周方向に交互に並んでおり、
前記第1凹部と前記第2凹部が配置される角度位置は、前記磁極の周方向の中央であることを特徴とする請求項1または3に記載のロータ。
【請求項6】
前記駆動マグネットの外周面には、異なる磁極が周方向に交互に並んでおり、
前記第1凹部と前記第2凹部が配置される角度位置は、隣り合う磁極の間の位置であることを特徴とする請求項1または3に記載のロータ。
【請求項7】
前記第1リブは、前記座部から前記軸線方向の他方側へ延びるリブ本体部と、前記リブ
本体部の先端から前記軸線方向の他方側へ延びて前記第2凸部に接続されるリブ先端部と、を備え、前記リブ先端部の周方向の幅は、前記リブ本体部の周方向の幅よりも小さく、
前記リブ先端部の周方向の幅は、前記第2凹部の周方向の幅よりも小さいことを特徴とする請求項2または3に記載のロータ。
【請求項8】
前記流路溝は、前記軸線方向に延びる第1溝部と、前記第1溝部に対して前記ロータの回転方向の後方側において前記軸線方向に延びる第2溝部と、周方向に延びて前記第1溝部および前記第2溝部の前記軸線方向の他方側の端部を接続する第3溝部と、を備え、
前記第1リブは、前記第1溝部に対して前記ロータの回転方向の前方側で隣り合う位置に配置されることを特徴とする請求項2または3に記載のロータ。
【請求項9】
前記座部は、前記第1溝部の前記軸線方向の一方側の端部の径方向外側に形成された溝部を備えることを特徴とする請求項8に記載のロータ。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のロータと、
前記駆動マグネットの外周側に配置される環状のステータと、
前記ステータの内周側および軸線方向の一方側を覆う樹脂封止部材と、
前記樹脂封止部材との間に前記ポンプ室を形成するケースと、
前記インペラと、を備えることを特徴とするポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インペラをモータによって回転させるポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2には、ポンプ室に配置されたインペラをモータで回転させるポンプ装置が記載される。モータは、インペラと一体に回転するロータを備える。ロータは、円筒状のラジアル軸受を内側に保持する円筒部を備えており、円筒部の外周側に円筒状の駆動マグネットが固定される。ロータの円筒部からは、駆動マグネットの端部を受ける座部が径方向外側に張り出している。駆動マグネットの端面に形成された凹部に、座部に設けられた凸部を嵌めることにより、ロータに対する駆動マグネットの回転が阻止される。ロータの円筒部の先端には、駆動マグネットの座部とは反対側の端面に重なるカシメ部(係合部)が設けられている。
【0003】
ロータは、ラジアル軸受を介して固定軸に回転可能に支持される。ロータが回転する際、摩擦等によりラジアル軸受が高温となり、その熱により駆動マグネットも高温となるため、部品の寿命低下や駆動マグネットの磁気特性低下が問題となる。特許文献2のポンプ装置では、駆動マグネットとロータの円筒部との間に、円筒部の外周面に形成されたリブによって区画される隙間が形成される。この隙間をポンプ室の流体が流れることにより、駆動マグネットの冷却を行う。駆動マグネットの端面に重なるカシメ部は、ポンプ室の流体が流れる流路を塞がない位置に形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-296687号公報
【特許文献2】特開2022-183752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
駆動マグネットにロータの凸部が嵌まる凹部を形成してロータに対する駆動マグネットの周り止めを行う構造では、周り止め用の凸部と凹部の寸法公差分のガタにより、起動時などに駆動マグネットが振動して異音を発生させるという問題がある。
【0006】
また、駆動マグネットに周り止め用の凹部を設けると、凹部の箇所でマグネットの体積が減少するため、磁力への影響が発生する。また、駆動マグネットの温度変化や、駆動マグネットの内側に円筒部を圧入する際に駆動マグネットに応力が加わったとき、凹部の位置からマグネットが割れやすくなるという問題がある。
【0007】
以上に鑑みて、本発明の課題は、ポンプ装置のインペラと一体に回転するロータにおいて、ロータ部材の円筒部に駆動マグネットを固定する際、周り止め用の嵌め合い箇所の寸法公差に起因する駆動マグネットの振動および異音を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、ポンプ室に配置されるインペラと一体に回転するロータであって、軸線方向に延びる円筒部を備えるロータ部材と、前記円筒部の外周面に固定される駆動マグネットと、を備え、前記ロータ部材は、前記円筒部から径方向外側に突出して前記駆動マグネットの前記軸線方向の一方側の端部を支持する座部と、前記駆動マグネットの前記軸線方向の他方側の端部の内周縁を係止するカシメ部と
、を備え、前記駆動マグネットと前記ロータ部材は、前記駆動マグネットに設けられた第1凹部に前記座部に設けられた第1凸部が嵌合した第1周り止め部、および、前記駆動マグネットに設けられた第2凹部に前記カシメ部に設けられた第2凸部が嵌合した第2周り止め部を備え、前記第2凹部は、少なくとも一部が前記第1凹部と同一角度位置に設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、駆動マグネットを座部とカシメ部の間に保持するので、駆動マグネットの軸線方向のガタつきをなくすことができる。また、駆動マグネット8の軸線方向の両端にそれぞれ周り止め部を設けたので、各周り止め部に加わる負荷を分散することができ、耐久性を高めることができる。さらに、第1周り止め部は、第1凹部と第1凸部との嵌め合いとする一方、第2周り止め部では、カシメにより第2凹部に樹脂を充填して第2凸部を形成する。従って、ロータを組み立てる際、第1凹部と第1凸部を嵌め合わせることにより周方向の位置決めを簡単に行うことができ、その後にカシメにより第2凸部を形成することで、駆動マグネットを周方向にガタつかない状態に固定できる。よって、駆動マグネットの振動による異音を抑制できる。
【0010】
さらに、第1の態様では、第1凹部と第2凹部の角度位置を揃えているので、マグネットに凹部を形成したことによる、磁力への影響や、割れの抑制を行うことができる。例えば、第1凹部と第2凹部をいずれも磁力への影響が少ない位置に配置できるので、マグネットの体積減少による磁力への影響を低減できる。あるいは、第1凹部と第2凹部をいずれも割れの起点となりにくい位置に配置できるので、駆動マグネットの割れを抑制することができる。
【0011】
本発明の第1の態様において、前記円筒部の外周面には、前記軸線方向に延びるリブが周方向に複数配置され、周方向で隣り合うリブの間は、前記駆動マグネットと前記円筒部との隙間を前記ポンプ室の流体が流れる流路溝になっており、複数の前記リブは、前記第2凸部と同一の角度位置に配置されて前記軸線方向の他方側の端部が前記第2凸部に接続される第1リブを含むことが好ましい。このようにすると、流路溝を流れる流体によって駆動マグネットを冷却でき、円筒部を介してラジアル軸受を冷却できる。従って、高温による部品の寿命低下および駆動マグネットの磁気特性低下を抑制できる。また、円筒部の外周面に形成されて流路溝を区画するリブ(第1リブ)の位置を第2凸部の位置と揃えることにより、第1リブの先端をカシメ部まで延ばすことによって、カシメ部を形成する際に第2凹部に充填される樹脂量を確保できる。従って、第2凹部への樹脂の充填不足による駆動マグネットのガタつきを抑制できる。
【0012】
また、上記課題を解決するために、本発明の第2の態様は、ポンプ室に配置されるインペラと一体に回転するロータであって、軸線方向に延びる円筒部を備えるロータ部材と、前記円筒部の外周面に固定される駆動マグネットと、を備え、前記ロータ部材は、前記円筒部から径方向外側に突出して前記駆動マグネットの前記軸線方向の一方側の端部を支持する座部と、前記駆動マグネットの前記軸線方向の他方側の端部の内周縁を係止するカシメ部と、を備え、前記円筒部の外周面には、前記軸線方向に延びるリブが周方向に複数配置され、周方向で隣り合うリブの間は、前記駆動マグネットと前記円筒部との隙間を前記ポンプ室の流体が流れる流路溝になっており、前記駆動マグネットと前記ロータ部材は、前記駆動マグネットに設けられた第1凹部に前記座部に設けられた第1凸部が嵌合した第1周り止め部、および、前記駆動マグネットに設けられた第2凹部に前記カシメ部に設けられた第2凸部が嵌合した第2周り止め部を備え、複数の前記リブは、前記第2凸部と同一の角度位置に配置されて前記軸線方向の他方側の端部が前記第2凸部に接続される第1リブを含むことを特徴とする。
【0013】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様と同様に、駆動マグネットを座部とカシメ部
の間に保持するので、駆動マグネットの軸線方向のガタつきをなくすことができる。また、駆動マグネット8の軸線方向の両端にそれぞれ周り止め部を設けたので、各周り止め部に加わる負荷を分散することができ、耐久性を高めることができる。さらに、第1周り止め部は、第1凹部と第1凸部との嵌め合いとする一方、第2周り止め部では、カシメにより第2凹部に樹脂を充填して第2凸部を形成する。従って、ロータを組み立てる際、第1凹部と第1凸部を嵌め合わせることにより周方向の位置決めを簡単に行うことができ、その後にカシメにより第2凸部を形成することで、駆動マグネットを周方向にガタつかない状態に固定できる。よって、駆動マグネットの振動による異音を抑制できる。
【0014】
さらに、第2の態様では、流路溝を流れる流体によって駆動マグネットを冷却でき、円筒部を介してラジアル軸受を冷却できる。従って、高温による部品の寿命低下および駆動マグネットの磁気特性低下を抑制できる。また、円筒部の外周面に形成されて流路溝を区画するリブ(第1リブ)の位置を第2凸部の位置と揃えることにより、第1リブの先端をカシメ部まで延ばすことによって、カシメ部を形成する際に第2凹部に充填される樹脂量を確保できる。従って、第2凹部への樹脂の充填不足による駆動マグネットのガタつきを抑制できる。
【0015】
本発明において、前記第1凹部および前記第2凹部は、回転対称な複数の位置に設けられていることが好ましい。このようにすると、第1凹部および第2凹部を設けたことによる、駆動マグネットの重量バランスの偏りを抑制でき、ロータの重心ずれを抑制できる。また、第1凹部と第1凸部が嵌合する回転位置が複数存在するので、ロータを組み立てる際、第1凹部と第1凸部を嵌め合わせる作業が容易である。
【0016】
本発明において、前記駆動マグネットの外周面には、異なる磁極が周方向に交互に並んでおり、前記第1凹部と前記第2凹部が配置される角度位置は、前記磁極の周方向の中央であることが好ましい。このように、磁極の周方向の中央に凹部を設けることにより、凹部を起点とする駆動マグネットの割れを抑制できる。
【0017】
本発明において、前記駆動マグネットの外周面には、異なる磁極が周方向に交互に並んでおり、前記第1凹部と前記第2凹部が配置される角度位置は、隣り合う磁極の間の位置であることが好ましい。このようにすると、凹部を設けたことによる磁束の減少を抑制できるとともに、磁力の乱れを抑制できる。従って、磁力への影響を抑制できる。
【0018】
本発明において、前記第1リブは、前記座部から前記軸線方向の他方側へ延びるリブ本体部と、前記リブ本体部の先端から前記軸線方向の他方側へ延びて前記第2凸部に接続されるリブ先端部と、を備え、前記リブ先端部の周方向の幅は、前記リブ本体部の周方向の幅よりも小さく、前記リブ先端部の周方向の幅は、前記第2凹部の周方向の幅よりも小さいことが好ましい。このように、第1リブの先端部(リブ先端部)の幅を細くすることにより、カシメ部を形成する際に、第2凹部に充填される樹脂を確保しつつ、リブ先端部が設けられた部位を簡単に潰すことができる。
【0019】
本発明において、前記流路溝は、前記軸線方向に延びる第1溝部と、前記第1溝部に対して前記ロータの回転方向の後方側において前記軸線方向に延びる第2溝部と、周方向に延びて前記第1溝部および前記第2溝部の前記軸線方向の他方側の端部を接続する第3溝部と、を備え、前記第1リブは、前記第1溝部に対して前記ロータの回転方向の前方側で隣り合う位置に配置されることが好ましい。このようにすると、流路溝は、軸線方向に延びる第1溝部と第2溝部を第3溝部によって軸線方向に1回折り返した形状(U字状)に接続した形状となる。従って、単に直線状の流路を設ける場合と比較して、流体に接する面積を広くすることができ、冷却効果を高めることができる。また、ロータが回転する際、慣性力によって回転方向の後方側へ流体が流れるので、冷却効果を高めることができる
【0020】
本発明において、前記座部は、前記第1溝部の前記軸線方向の一方側の端部の径方向外側に形成された溝部を備えることが好ましい。このようにすると、溝部と駆動マグネットの端面との間に第1溝部に連通する流入口が形成される。従って、慣性力によって回転方向の後方側へ流体が流れる際、負圧になる位置(第1溝部)に流入口が接続されるので、流路溝に流体が流入しやすい。よって、冷却効果を高めることができる。
【0021】
次に、本発明のポンプ装置は、ロータと、前記駆動マグネットの外周側に配置される環状のステータと、前記ステータの内周側を覆う隔壁を備える樹脂封止部材と、前記樹脂封止部材との間に前記ポンプ室を形成するケースと、前記インペラと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、駆動マグネットを座部とカシメ部の間に保持するので、駆動マグネットの軸線方向のガタつきをなくすことができる。また、駆動マグネット8の軸線方向の両端にそれぞれ周り止め部を設けたので、各周り止め部に加わる負荷を分散することができ、耐久性を高めることができる。さらに、第1周り止め部は、第1凹部と第1凸部との嵌め合いとする一方、第2周り止め部では、カシメにより第2凹部に樹脂を充填して第2凸部を形成する。従って、ロータを組み立てる際、第1凹部と第1凸部を嵌め合わせることにより周方向の位置決めを簡単に行うことができ、その後にカシメにより第2凸部を形成することで、駆動マグネットを周方向にガタつかない状態に固定できる。よって、駆動マグネットの振動による異音を抑制できる。
【0023】
さらに、本発明では、第1凹部と第2凹部の角度位置を揃えたことにより、マグネットに凹部を形成したことによる、磁力への影響や、割れの抑制を行うことができる。あるいは、円筒部の外周面に形成されて流路溝を区画するリブ(第1リブ)の角度位置と第2奥凹部の角度位置を揃えたことにより、カシメ部を形成する際に第2凹部に充填される樹脂量を確保できる。従って、第2凹部への樹脂の充填不足による駆動マグネットのガタつきを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明を適用したポンプ装置の外観斜視図である。
図2図1に示すポンプ装置を回転軸線を含む平面で切断した断面図である。
図3】ロータの側面図である。
図4】ロータおよびラジアル軸受を軸線方向の一方側から見た分解斜視図である。
図5】ロータおよびラジアル軸受を軸線方向の他方側から見た分解斜視図である。
図6】ロータ、ラジアル軸受、および支軸を回転軸線に対して垂直な平面で切断した断面図(図3のA-A位置で切断した断面図)である。
図7】ロータおよびラジアル軸受を回転軸線を含む平面(図6のB-B位置)で切断した部分断面図である。
図8】ロータおよびラジアル軸受を回転軸線を含む平面(図6のC-C位置)で切断した部分断面図である。
図9】製造途中のロータを軸線方向の他方側から見た底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係るポンプ装置1を説明する。以下の説明において、軸線方向とは、モータ10の回転軸線Lが延在している方向を意味し、径方向の内側および径方向の外側における径方向とは、回転軸線Lを中心とする半径方向を意味し、周方向とは、回転軸線Lを中心とする回転方向を意味する。また、回転軸線Lが延
在する方向と軸線方向とし、軸線方向の一方側をL1とし、軸線方向の他方側をL2とする。
【0026】
(全体構成)
図1は、本発明を適用したポンプ装置1の外観斜視図である。図2は、図1に示すポンプ装置1を回転軸線Lを含む平面で切断した断面図である。図1図2に示すように、ポンプ装置1は、軸線方向の一方側L1へ延びる吸入管21および吐出管22を備えたケース2と、ケース2に対して軸線方向の他方側L2に配置されたモータ10と、ケース2の内部のポンプ室20に配置されたインペラ25とを有する。インペラ25は、モータ10によって回転軸線L周りに回転駆動される。本形態のポンプ装置1において、ポンプ室20を流れる流体は液体である。ポンプ装置1は、例えば、環境温度や流体温度が変化しやすい条件で使用される。
【0027】
モータ10は、円環状のステータ3と、ステータ3の内側に配置されたロータ4と、ステータ3を覆う樹脂製のハウジング6と、ロータ4を回転可能に支持する支軸5を備える。支軸5は、金属製あるいはセラミック製である。インペラ25は、ロータ4と一体に回転する。図2に示すように、ポンプ装置1では、ステータ3に対して軸線方向の一方側L1にインペラ25およびポンプ室20が設けられている。
【0028】
図2に示すように、ポンプ室20は、ケース2とハウジング6との間に設けられている。ケース2は、ポンプ室20の軸線方向の一方側L1の壁面23、および周方向に延在する側壁29を構成する。図1に示すように、吸入管21はケース2の径方向の中心において軸線方向に延びており、吸入管21は、側壁29からモータ10の回転軸線Lに対して直交する方向に延びている。
【0029】
図2に示すように、ステータ3は、ステータコア31と、ステータコア31に対して軸線方向の一方側L1から重なるインシュレータ32と、ステータコア31に対して軸線方向の他方側L2から重なるインシュレータ33と、ステータコア31に設けられた複数の突極にインシュレータ32、33を介して巻回された複数のコイル35とを有する。モータ10は3相モータである。従って、複数のコイル35は、U相コイル、V相コイル、およびW相コイルによって構成される。
【0030】
ロータ4は、樹脂製のロータ部材40を備える。ロータ部材40は、軸線方向に延在する円筒部41と、円筒部41の軸線方向の一方側L1の端部に形成されたフランジ部45を備える。円筒部41は、ステータ3の径方向の内側からポンプ室20に向けて延在し、ポンプ室20で開口している。円筒部41の外周面には、円筒状の駆動マグネット8が保持される。駆動マグネット8は、ステータ3に径方向の内側で対向する。駆動マグネット8は、例えば、ネオジムボンド磁石からなる。
【0031】
ロータ部材40のフランジ部45には、軸線方向の一方側L1から羽根車24が連結される。本形態では、フランジ部45と羽根車24とによって、ロータ部材40の円筒部41に接続されたインペラ25が構成される。羽根車24は、フランジ部45に軸線方向で対向する円板部26と、円板部26から軸線方向の他方側L2に突出する複数の羽根部261を備える。羽根車24は、羽根部261を介してフランジ部45に固定される。円板部26の中央には中央穴260が形成されている。円板部26は、径方向の外側に向かうにしたがってフランジ部45の側に向かう方向に傾いている。複数の羽根部261は、等角度間隔に配置される。各羽根部261は、中央穴260の周囲から円弧状に湾曲しながら径方向の外側に延びる。
【0032】
ロータ部材40において、円筒部41の径方向の内側には筒状のラジアル軸受11が保
持される。ロータ4は、ラジアル軸受11を介して支軸5に回転可能に支持される。支軸5の軸線方向の他方側L2の端部は、ハウジング6の底壁63に形成された軸穴65に保持される。ケース2は、吸入管21の内周面からモータ10の側に延在する3本の支持部27を備える。支持部27の端部には、支軸5が内側に位置する筒部28が形成されており、支軸5の軸線方向の一方側L1の端部は筒部28に保持される。
【0033】
支軸5の軸線方向の一方側L1の端部には円環状のスラスト軸受12が装着されており、スラスト軸受12は、ラジアル軸受11と筒部28の間に配置される。ここで、支軸5の他方側L2の端部および軸穴65は、少なくとも一部が断面D字形状である。また、支軸5の一方側L1の端部およびスラスト軸受12の穴は断面D字形状である。従って、ハウジング6に対する支軸5およびスラスト軸受12の回転が阻止される。
【0034】
ハウジング6は、ステータ3を径方向の両側、および軸線方向の両側から覆う樹脂封止部材60である。樹脂封止部材60は、ポリフェニレンサルファイド(PPS:Polyphenylene Sulfide)からなる。ステータ3は、インサート成形により樹脂封止部材60と一体化される。ハウジング6は、ポンプ室20の軸線方向の一方側L1の壁面23に対向する第1隔壁部61と、ステータ3と駆動マグネット8との間に介在する第2隔壁部62と、第2隔壁部62の他方側L2の端に設けられた底壁63とを有する隔壁部材である。また、ハウジング6は、ステータ3を径方向の外側から覆う円筒状の胴部66を備える。
【0035】
図1図2に示すように、ハウジング6の軸線方向の他方側L2の端部64には、軸線方向の他方側L2からカバー18が固定される。図2に示すように、カバー18とハウジング6の底壁63との間には、コイル35に対する給電を制御する回路が設けられた基板19が配置される。基板19には、ステータ3からハウジング6の底壁63を貫通して軸線方向の他方側L2に突出した金属製の巻線端子71が半田により接続される。ハウジング6は、底壁63から軸線方向の他方側L2に突出する柱状部67を備える。基板19は、ねじ91によって柱状部67に固定される。
【0036】
図1に示すように、ハウジング6は、ステータ3の外周側を囲む胴部66から径方向外側へ延びる筒状のコネクタハウジング69を備える。コネクタハウジング69の内側には、一端が基板19に接続されたコネクタ端子が配置される。コネクタハウジング69にコネクタを連結すると、基板19に実装される回路で生成された駆動電流が巻線端子71を介して各コイル35に供給される。その結果、ロータ4がモータ10の回転軸線L周りに回転する。これにより、ポンプ室20内でインペラ25が回転してポンプ室20の内部が負圧となるため、流体は吸入管21からポンプ室20に吸い込まれて、吐出管22から吐出される。
【0037】
(駆動マグネットおよびラジアル軸受の保持構造)
図3は、ロータの側面図である。図4は、ロータ4およびラジアル軸受11を軸線方向の一方側L1から見た分解斜視図である。図5は、ロータ4およびラジアル軸受11を軸線方向の他方側L2から見た分解斜視図である。図6は、ロータ4、ラジアル軸受11、および支軸5を回転軸線Lに対して垂直な平面で切断した断面図(図3のA-A位置で切断した断面図)である。図7および図8は、ロータ4およびラジアル軸受11を回転軸線Lを含む平面で切断した部分断面図である、図7は、図6のB-B位置で切断した部分断面図であり、図8は、図6のC-C位置で切断した部分断面図である。
【0038】
本明細書において、XYZの3方向は互いに直交する方向である。X方向の一方側をX1とし、X方向の他方側をX2とし、Y方向の一方側をY1とし、Y方向の他方側をY2とし、Z方向の一方側をZ1とし、Z方向の他方側をZ2とする。Z方向は軸線方向と一
致し、Z1方向は軸線方向の一方側L1と一致し、Z2方向は軸線方向の他方側L2と一致する。
【0039】
図2図5に示すように、ロータ部材40は、フランジ部45から他方側L2に離間した位置で円筒部41から径方向外側へ突出した円環状の座部42を備える。円筒部41は、座部42から他方側L2へ延びるマグネット保持部410を備える。マグネット保持部410は、駆動マグネット8の内側に嵌って駆動マグネット8を保持する。その際、座部42は、駆動マグネット8の軸線方向の一方側L1の端部を支持する。図2図7図8に示すように、マグネット保持部410の軸線方向の他方側L2の端部には、駆動マグネット8の他方側L2の端部の内周縁に軸線方向で重なるカシメ部43が形成される。なお、図4および図5に示すロータ部材40の形状は、マグネット保持部410の他方側L2の先端部411を潰す前の形状であり、カシメ部43を形成する前の形状である。
【0040】
図7図8に示すように、マグネット保持部410の内周面には、軸線方向の他方側L2に凹む環状段部44が形成されている。環状段部44には、ラジアル軸受11の軸線方向の一方側L1の端部に設けられた環状凸部110が嵌合する。ロータ部材40は樹脂成型品であり、ラジアル軸受11は、インサート成形によりマグネット保持部410に固定されている。
【0041】
(駆動マグネットの周り止め構造)
図5に示すように、ロータ部材40の座部42には、軸線方向の一方側L1に凹む溝部421と、軸線方向の他方側L2に突出する第1凸部422が周方向に交互に設けられている。溝部421と第1凸部422は、それぞれ、等角度間隔で複数位置に設けられている。本形態では、溝部421と第1凸部422は、それぞれ、120度間隔で3箇所に設けられており、溝部421と第1凸部422は、15度ずらした角度位置に設けられている。溝部421は、座部42の内縁から外縁まで拡がる。座部42における溝部421の径方向外側の端縁は、内周側に切り欠かれている。
【0042】
第1凸部422は、マグネット保持部410の外周面に接続されており、座部42の径方向の途中位置まで延びている。駆動マグネット8をマグネット保持部410に固定する際、駆動マグネット8の軸線方向の一方側L1の端部を座部42に対して軸線方向の他方側L2から当接させる。その際、複数の第1凸部422は、それそれ、駆動マグネット8の軸線方向の一方側L1の端面に形成された第1凹部81(図4参照)に嵌合して第1周り止め部E1を形成する。これにより、ロータ部材40に対する駆動マグネット8の回転が阻止される。
【0043】
図4に示すように、駆動マグネット8の一方側L1の端面には、3箇所の第1凹部81と3箇所の3箇所のゲート痕82が等角度間隔で周方向に交互に設けられている。駆動マグネット8は、軸線方向の一方側L1の端部の外周縁が内周側に切り欠かれており、径方向の幅が駆動マグネット8の径方向の厚みよりも小さい環状凸部83が設けられている。第1凹部81は、環状凸部83の突出高さと同一の深さであり、環状凸部83を径方向に貫通している。
【0044】
マグネット保持部410の外周に駆動マグネット8を組み付けたとき、マグネット保持部410の軸線方向の他方側L2の先端部411(図4図5参照)は、駆動マグネット8の他方側L2の端面より他方側L2へ突出する。ロータ4を製造する際、マグネット保持部410の先端部411を潰すことによりカシメ部43が形成される(図3図7図8参照)。カシメ部43は、駆動マグネット8の他方側L2の端部の内周縁に全周で被さる。
【0045】
図5に示すように、駆動マグネット8の軸線方向の他方側L2の端部の内周縁には、軸線方向から見て半円形の第2凹部84が形成されている。カシメ部43は、第2凹部84に嵌合する第2凸部431を備える(図7参照)。第2凸部431は、熱カシメによりカシメ部43を形成する際に、マグネット保持部410の先端部411を潰した樹脂の一部が第2凹部84に充填されて、第2凹部84に嵌合する形状で硬化した部分である。従って、駆動マグネット8の軸線方向の他方側L2の端部では、複数の第2凹部84のそれぞれに、カシメ部43に形成された第2凸部431が嵌合して第2周り止め部E2を形成している。第2周り止め部E2は、第2凹部84に樹脂を充填して硬化させることにより第2凸部431を形成するので、駆動マグネット8をマグネット保持部410に対して周方向にガタつかないように固定することができる。
【0046】
第2凹部84は、周方向の幅が第1凹部81よりも狭く、軸線方向の深さが第1凹部81よりも浅い。本形態では、第1周り止め部E1と第2周り止め部E2の角度位置を揃えており、第2凹部84と第1凹部81が同一の角度位置に設けられている。より詳細には、第2凹部84は、第1凹部81の周方向の中央と同一の角度位置に設けられている(図9参照)。
【0047】
本形態では、駆動マグネット8の極数は6極であり、ステータ3のスロット数は9スロットである。従って、駆動マグネット8の外周面には、N極とS極が交互に3極ずつ着磁されている。駆動マグネット8の第1凹部81と第2凹部84は、磁極の谷間の位置、すなわち、周方向で隣り合うN極とS極の間の角度位置に形成されている(図4図5参照)。第1凹部81と第2凹部84が形成された位置では、駆動マグネット8の体積が減少するため、この位置を最も磁束密度が大きい磁極の周方向の中央でなく、磁極の谷間の位置とすることにより、第1凹部81と第2凹部84を設けたことによる磁力への影響を低減させることができる。
【0048】
(流路溝)
図4図5に示すように、ロータ部材40は、円筒部41におけるマグネット保持部410の外周面に形成された流路溝46を備える。流路溝46は、径方向内側に一定深さで凹む凹部である。駆動マグネット8の内側にマグネット保持部410を嵌め込むと、駆動マグネット8の内周面とマグネット保持部410との間には流路溝46によって規定される形状の流路F1(図6参照)が形成される。この流路F1は、駆動マグネット8とハウジング6の第2隔壁部62との隙間G1(図2参照)と連通する。そのため、隙間G1を経由してポンプ室20の流体が流路F1を流れるので、駆動マグネット8およびマグネット保持部410が冷却される。
【0049】
図5に示すR1方向は、ロータ4の回転方向の前方側であり、R2方向はロータ4の回転方向の後方側である。図5に示すように、流路溝46は、軸線方向に延びる第1溝部461と、第1溝部461に対してロータ4の回転方向の後方側R2において軸線方向に延びる第2溝部462と、周方向に延びて第1溝部461と第2溝部462の軸線方向の他方側L2の端部を接続する第3溝部463を備える。すなわち、流路溝46は、軸線方向に1回折り返した形状の溝であり、略U字状の溝である。
【0050】
図5に示すように、ロータ部材40の座部42には、軸線方向の一方側L1に凹む溝部421が形成されている。ロータ部材40のマグネット保持部410に駆動マグネット8部を固定すると、駆動マグネット8の軸線方向の一方側L1の端面である環状凸部83の先端面と溝部421の底面との間には径方向外側に開口する流入口48が形成される(図3図8参照)。図5に示すように、溝部421は第1溝部461と周方向の位置が一致するため、流入口48を介して第1溝部461と駆動マグネット8の外周側の隙間G1(図2参照)とが連通する。
【0051】
図5に示すように、流路溝46では、第3溝部463および第2溝部462は、流入口48(溝部421)に連通する第1溝部461に対して回転方向の後方側R2に設けられている。従って、ロータ4がR1方向に回転する際、慣性力によって第1溝部461の流体がR2方向に移動して第3溝部463および第2溝部462を流れ、図5に示すD方向の流れが発生する。これにより、第1溝部461内が負圧となるため、流入口48から第1溝部461に流体が流入する。従って、ロータ4が回転する間は、流路溝46を図5に示すD方向に流体が流れ続ける。
【0052】
座部42における第2溝部462の径方向外側の部分は、駆動マグネット8を支持する平坦面であるため、第2溝部462の径方向外側には、流入口48のような広い開口部が形成されない(図8参照)。このため、流路溝46は、流入側と流出側で差圧が発生するので、流路溝46に流体が流入しやすい。
【0053】
図4図6からわかるように、マグネット保持部410の外周面には、軸線方向に延びる複数のリブによって区画される略U字状の流路溝46が等角度間隔で3箇所に形成されている。複数のリブは、周方向で隣り合う流路溝46を区画する第1リブ51と、各流路溝46の周方向の中央において第1溝部461と第2溝部462を区画する第2リブ52を含む。第1リブ51は、軸線方向の一方側L1の端部が座部42に接続され、軸線方向の他方側L2の端部はマグネット保持部410の他方側L2の先端まで延びている。第2リブ52は、軸線方向の一方側L1の端部が座部42に接続され、軸線方向の他方側L2の端部は第3溝部463まで延びている。
【0054】
図5に示すように、第1リブ51は、座部42から軸線方向の他方側L2に延びるリブ本体部53と、リブ本体部53の先端の周方向の中央からマグネット保持部410の先端まで延びるリブ先端部54を備える。リブ先端部54の周方向の幅W1(図5図9参照)は、リブ本体部53の周方向の幅W0(図5図6参照)よりも小さい。図5図6に示すように、第1周り止め部E1を構成する第1凸部422は、リブ本体部53の周方向の中央に配置される。第1凸部422および第1凹部81の周方向の幅W2(図6参照)は、リブ本体部53の周方向の幅W0よりも小さい。
【0055】
図9は、製造途中のロータ4を軸線方向の他方側L2から見た底面図である。図9は、マグネット保持部410の先端部411が潰されておらず、カシメ部43が形成されていない状態を示している。図6図9に示すように、第1リブ51は、第1周り止め部E1および第2周り止め部E2と同じ角度位置に形成されている。
【0056】
マグネット保持部410に駆動マグネット8を組み付ける際、第1凹部81に第1凸部422を嵌合させて第1周り止め部E1を形成し、駆動マグネット8を周方向に位置決めする。ここで、カシメ部43を形成する前は、駆動マグネット8の軸線方向の他方側L2の端部からマグネット保持部410の先端部411が突出した状態に組み立てられている。このとき、図9の部分拡大図に示すように、駆動マグネット8の軸線方向の他方側L2の端部では、第2凹部84の周方向の中央にリブ先端部54が配置される。リブ先端部54の周方向の幅W1は、第2凹部84の周方向の幅W3よりも小さい。
【0057】
カシメ部43を形成する際、第2凹部84の周方向の中央でリブ先端部54が潰れる。リブ先端部54を構成していた樹脂は、第2凹部84に充填されて硬化し、第2凸部431を形成する(図7参照)。リブ先端部54の周方向の幅W1は、第2凹部84に充填される樹脂量を確保でき、且つ、カシメ部43を形成する際に先端部411を潰すことが困難にならない程度の寸法になっている。
【0058】
(本形態の主な作用効果)
以上のように、本形態のポンプ装置1は、ポンプ室20に配置されるインペラ25と一体に回転するロータ4と、ロータ4の外周側に配置されるステータ3を備えており、ステータ3の軸線方向の一方側L1および内周側を覆う樹脂封止部材60に軸線方向の一方側L1からケース2を固定して、樹脂封止部材60とケース2との間にポンプ室20が形成されている。本形態のロータ4は、軸線方向に延びる円筒部41を備えるロータ部材40と、円筒部41の外周面に固定される駆動マグネット8を備える。ロータ部材40は、円筒部41から径方向外側に突出して駆動マグネット8の軸線方向の一方側L1の端部を支持する座部42と、駆動マグネット8の軸線方向の他方側L2の端部の内周縁を係止するカシメ部43を備える。駆動マグネット8とロータ部材40は、駆動マグネット8に設けられた第1凹部81に座部42に設けられた第1凸部422が嵌合した第1周り止め部E1、および、駆動マグネット8に設けられた第2凹部84にカシメ部43に設けられた第2凸部431が嵌合した第2周り止め部E2を備える。第2凹部84は、第1凹部81と同一角度位置に設けられている。
【0059】
本形態では、このように、駆動マグネット8をカシメにより固定するので、駆動マグネット8の軸線方向のガタつきをなくすことができる。また、駆動マグネット8の軸線方向の両端にそれぞれ周り止め部(第1周り止め部E1、第2周り止め部E2)を設けたので、各周り止め部に加わる負荷を分散することができ、耐久性を高めることができる。さらに、第1周り止め部E1は、第1凹部81と第1凸部422との嵌め合いとする一方、第2周り止め部E2は、カシメ部43を形成する際に第2凹部84に樹脂を充填して第2凸部431を形成する。従って、ロータ4を組み立てる際、第1凹部81と第1凸部422を嵌め合わせることにより周方向の位置決めを簡単に行うことができ、その後にカシメにより第2凸部431を形成することで、部品の寸法公差に起因するガタが発生しない第2周り止め部E2を形成することができる。これにより、駆動マグネット8を周方向にガタつかない状態に固定できる。よって、駆動マグネット8の振動による異音を抑制できる。
【0060】
さらに、本形態では、駆動マグネット8に形成される第1凹部81と第2凹部84の角度位置を揃えているので、駆動マグネット8に凹部を形成したことによる、磁力への影響を抑制できる。すなわち、本形態では、第1凹部81と第2凹部84をいずれも磁極の谷間(すなわち、周方向で隣り合うN極とS極の間の角度位置)に設けており、磁束密度が低い位置に設けている。これにより、磁束密度が高い位置に凹部を設ける場合と比較して、磁力への影響を抑制することができ、磁力の乱れを抑制できる。
【0061】
なお、本形態では、第1凹部81と第2凹部84の角度位置を揃えるにあたって、第1凹部81の周方向の中央に第2凹部84を配置しているが、第2凹部84は、少なくとも一部が第1凹部81と同じ角度位置に配置されているものとすることができる。例えば軸線方向から見て第2凹部84の少なくとも一部が第1凹部81と重なる位置に配置されるものとすることができる。
【0062】
本形態では、第1凹部81および第2凹部84は、回転対称な複数の位置に設けられている。これにより、各周り止め部に加わる負荷をさらに少なくすることができる。また、ロータ4を組み立てる際、第1凹部81と第1凸部422が嵌合する回転位置が複数存在するので、第1凹部81と第1凸部422を嵌め合わせる作業が容易である。また、第1凹部81および第2凹部84を設けたことによる、駆動マグネット8の重量バランスの偏りを抑制でき、ロータ4の重心ずれを抑制できる。さらに、回転対称に配置することで、全ての第1凹部81および第2凹部84を適正な位置に設けることができる。例えば、第1凹部81および第2凹部84を120°の角度間隔で3箇所に設ける場合、6極9スロットの3相モータのロータ4では、駆動マグネット8の外周面にN極とS極が周方向に交互に6極並んでいるので、磁極の谷間(周方向で隣り合う磁極の間の角度位置)に全ての
第1凹部81および第2凹部84を配置することができる。従って、磁力への影響を抑制することができ、磁力の乱れを抑制できる。
【0063】
本形態では、円筒部41の外周面には、軸線方向に延びるリブ(第1リブ51,第2リブ52)が周方向に複数配置され、周方向で隣り合うリブの間は、駆動マグネット8と円筒部41との隙間をポンプ室20の流体が流れる流路溝46になっている。このような流路溝46を設けたことにより、流路溝46を流れる流体によって駆動マグネット8を冷却することができるとともに、円筒部41を介してラジアル軸受11を冷却することができる。これにより、高温による部品の寿命低下、および駆動マグネット8の磁気特性低下を抑制できる。
【0064】
また、本形態では、流路溝46を形成するための複数のリブは、第2凸部431と同一の角度位置に配置されて軸線方向の他方側L2の端部が第2凸部431に接続される第1リブ51を含む。このように、第1リブ51の位置を第2凸部431の位置と揃えることにより、第1リブ51の先端をカシメ部43まで延ばすことによって、カシメ部43を形成する際に第2凹部84に充填される樹脂量を確保できる。従って、第2凹部84への樹脂の充填不足による駆動マグネット8のガタつきを抑制できる。
【0065】
本形態では、第1リブ51は、座部42から軸線方向の他方側L2へ延びるリブ本体部53と、リブ本体部53の先端の周方向の中央からカシメ部43まで延びて第2凸部431に接続されるリブ先端部54と、を備える。リブ先端部54の周方向の幅W1は、リブ本体部53の周方向の幅W0よりも小さい。また、リブ先端部54の周方向の幅W1は、第2凹部84の周方向の幅W3よりも小さい。このように、リブ先端部54の幅を細くすることにより、カシメ部43を形成する際に、第2凹部84に充填される樹脂を確保しつつ、リブ先端部54が設けられた部位を簡単に潰すことができる。従って、カシメ部43を容易に形成することができる。
【0066】
本形態では、流路溝46は、軸線方向に延びる第1溝部461と、第1溝部461に対してロータ4の回転方向の後方側において軸線方向に延びる第2溝部462と、周方向に延びて第1溝部461および第2溝部462の軸線方向の他方側L2の端部を接続する第3溝部463と、を備え、第1リブ51は、第1溝部461に対してロータ4の回転方向の前方側で隣り合う位置に配置される。このように、流路溝46は、軸線方向に延びる第1溝部461と第2溝部462を第3溝部463によって軸線方向に1回折り返した形状(U字状)に接続した形状であるため、単に直線状の流路を設ける場合と比較して、流体に接する面積を広くすることができ、冷却効果を高めることができる。また、ロータ4が回転する際、慣性力によって回転方向の後方側R2へ流体が流れることを利用して、流路溝46を流体が流れ続けるように構成している。従って、冷却効果を高めることができるので、駆動マグネット8およびラジアル軸受の温度上昇を抑制でき、部品寿命の低下を抑制できる。また、駆動マグネット8の磁気特性の低下を抑制できる。
【0067】
本形態では、ロータ部材40の座部42は、第1溝部461の軸線方向の一方側L1の端部の径方向外側に形成された溝部421を備えており、溝部421と駆動マグネット8の端面との間には、第1溝部461に連通する流入口48が形成される。従って、流路溝46は、慣性力によって回転方向の後方側R2へ流体が移動する際、負圧になる位置(第1溝部461)に流入口48が接続されるので、流路溝46に流体が流入しやすい。よって、冷却効果を高めることができる。
【0068】
(変形例)
(1)上記形態において、第1凹部81と第2凹部84の角度位置は、磁極の谷間でなく、磁極の周方向の中央とすることもできる。例えば、第1凹部81と第2凹部84の角度
位置を上記形態の位置から30°ずらすことにより、磁極の周方向の中央に第1凹部81と第2凹部84を配置することができる。第1凹部81と第2凹部84を磁極の周方向の中央に配置した場合には、他の位置に配置した場合と比較して、第1凹部81と第2凹部84を起点とする駆動マグネット8の割れを抑制できるという効果が得られる。
【0069】
(2)上記形態は、駆動マグネット8の磁極数が6極の場合であったが、磁極数が6極とは異なる場合には、磁極の配置に合わせて、第1凹部81および第2凹部84の配置を磁極の谷間となる位置、あるいは、磁極の中央となる位置に変更することができる。
【0070】
(3)上記形態は、回転対称な3箇所に第1凹部81と第2凹部84を設けているが、第1凹部81と第2凹部84をそれぞれ1箇所のみ設けてもよい。また、第1凹部81と第2凹部84を複数位置に設ける場合、回転対称とならない位置に設けてもよい。
【0071】
(4)第1リブ51の形状は、上記と異なっていてもよい。例えば、リブ先端部54の周方向の幅W1は、第2凹部84の周方向の幅W3と同一、あるいは、第2凹部84の周方向の幅W3よりも大きくてもよい。あるいは、第1リブ51の先端部分を細くせず、第1リブ51の周方向の幅を一定にしてもよい。
【0072】
(5)流路溝46の形状は、上記形態と異なっていてもよい。例えば、流路溝46の形状を、軸線方向に折り返さない直線状の形状にすることができる。
【0073】
(他の形態1)
本発明は、第1周り止め部E1が第2周り止め部E2とは異なる角度位置に設けられていることを除き、上記形態およびその変形例と同様の構成を備えたロータを含む。例えば、ロータは、軸線方向に延びる円筒部を備えるロータ部材と、円筒部の外周面に固定される駆動マグネットと、を備え、ロータ部材は、円筒部から径方向外側に突出して駆動マグネットの軸線方向の一方側L1の端部を支持する座部と、駆動マグネットの軸線方向の他方側L2の端部の内周縁を係止するカシメ部と、を備え、円筒部の外周面には、軸線方向に延びるリブが周方向に複数配置され、周方向で隣り合うリブの間は、駆動マグネットと円筒部との隙間をポンプ室の流体が流れる流路溝になっており、駆動マグネットとロータ部材は、駆動マグネットに設けられた第1凹部に座部に設けられた第1凸部が嵌合した第1周り止め部、および、駆動マグネットに設けられた第2凹部にカシメ部に設けられた第2凸部が嵌合した第2周り止め部を備え、複数のリブは、第2凸部と同一の角度位置に配置されて軸線方向の他方側L2の端部が第2凸部に接続される第1リブを含む。
【0074】
第1周り止め部と第2周り止め部を異なる角度位置に設ける場合、駆動マグネットでは、第1凹部と第2凹部が異なる角度位置に設けられる。例えば、6極9スロットのモータの場合、第1凹部と第2凹部を60°ずらした角度位置に設けることができる。この場合、第1凹部と第2凹部の一方を磁極の谷間に配置し、第1凹部と第2凹部の他方を磁極の周方向の中央に配置することができる。
【0075】
このような構成でも、カシメ部により、駆動マグネットの軸線方向のガタつきをなくすことができる。また、駆動マグネットの軸線方向の両端にそれぞれ周り止め部(第1周り止め部、第2周り止め部)を設けるので、ロータが回転した際に、周り止め部に加わる負荷を分散することができ、耐久性を高めることができる。さらに、第1周り止め部は、第1凹部と第1凸部との嵌め合いとする一方、第2周り止め部は、カシメ部を形成する際に第2凹部84に樹脂を充填して第2凸部431を形成する。従って、ロータ4を組み立てる際、第1凹部と第1凸部を嵌め合わせることにより周方向の位置決めを簡単に行うことができ、その後にカシメにより第2凸部を形成することで、駆動マグネット8が周方向にガタつかない状態に固定できる。よって、駆動マグネットの振動による異音を抑制できる
【0076】
さらに、流路溝を流れる流体によって駆動マグネットを冷却することができるとともに、円筒部を介してラジアル軸受を冷却することができる。これにより、高温による部品の寿命低下、および駆動マグネットの磁気特性低下を抑制できる。そして、流路溝を形成する第1リブの先端をカシメ部まで延ばすことによって、カシメ部を形成する際に第2凹部に充填される樹脂量を確保できる。従って、第2凹部への樹脂の充填不足による駆動マグネットのガタつきを抑制できる。
【0077】
(他の形態2)
本発明は、駆動マグネット8とマグネット保持部410との間に流路溝46が設けられていないことを除き、上記のロータ4と同一の形態を含む。
【符号の説明】
【0078】
1…ポンプ装置、2…ケース、3…ステータ、4…ロータ、5…支軸、6…ハウジング、8…駆動マグネット、10…モータ、11…ラジアル軸受、12…スラスト軸受、18…カバー、19…基板、20…ポンプ室、21…吸入管、22…吐出管、23…壁面、24…羽根車、25…インペラ、26…円板部、27…支持部、28…筒部、29…側壁、31…ステータコア、32、33…インシュレータ、35…コイル、40…ロータ部材、41…円筒部、42…座部、43…カシメ部、44…環状段部、45…フランジ部、46…流路溝、48…流入口、51…第1リブ、52…第2リブ、53…リブ本体部、54…リブ先端部、60…樹脂封止部材、61…第1隔壁部、62…第2隔壁部、63…底壁、64…端部、65…軸穴、66…胴部、67…柱状部、69…コネクタハウジング、71…巻線端子、81…第1凹部、82…ゲート痕、83…環状凸部、84…第2凹部、110…環状凸部、260…中央穴、261…羽根部、410…マグネット保持部、411…先端部、421…溝部、422…第1凸部、431…第2凸部、461…第1溝部、462…第2溝部、463…第3溝部、E1…第1周り止め部、E2…第2周り止め部、F1…流路、G1…隙間、L…回転軸線、L1…軸線方向の一方側、L2…軸線方向の他方側、R1…回転方向の前方側、R2…回転方向の後方側、W0…リブ本体部の周方向の幅、W1…リブ先端部の周方向の幅、W2…第1凸部および第1凹部の周方向の幅、W3…第2凹部の周方向の幅
図1
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図9