IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 青木あすなろ建設株式会社の特許一覧 ▶ 遠州スプリング有限会社の特許一覧

<>
  • 特開-固定部材および充填方法 図1
  • 特開-固定部材および充填方法 図2
  • 特開-固定部材および充填方法 図3
  • 特開-固定部材および充填方法 図4
  • 特開-固定部材および充填方法 図5
  • 特開-固定部材および充填方法 図6
  • 特開-固定部材および充填方法 図7
  • 特開-固定部材および充填方法 図8
  • 特開-固定部材および充填方法 図9
  • 特開-固定部材および充填方法 図10
  • 特開-固定部材および充填方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107956
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】固定部材および充填方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/80 20060101AFI20240802BHJP
   E04B 1/41 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
E02D5/80 Z
E04B1/41 502N
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012167
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】593089046
【氏名又は名称】青木あすなろ建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】517068704
【氏名又は名称】遠州スプリング有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 悠樹
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 彬
(72)【発明者】
【氏名】粟屋 紘介
【テーマコード(参考)】
2D041
2E125
【Fターム(参考)】
2D041GA01
2D041GB01
2D041GC14
2E125AA45
2E125AC14
2E125BA02
(57)【要約】
【課題】プレートのずれを防止するための固定部材を補強部材に装着する際の手間を軽減する。
【解決手段】軸状の補強部材Kが設置された穿孔Rにおける開口部Qを塞ぐためのプレート200を固定するために、当該補強部材Kに装着される固定部材100であって、前記補強部材Kの周方向に沿った弧状であり、一部が開口する装着部11と、前記装着部11から突出する支持部13とを具備し、前記装着部11は、前記補強部材Kの軸方向に沿った第1位置M1と第2位置M2との間に位置し、前記第1位置M1は、前記第2位置M2よりも前記軸方向の一方側に位置し、前記支持部13は、前記第1位置M1または前記第1位置M1よりも前記一方側に位置し、前記プレート200に当接する当接部131を含み、前記装着部11の開口は、前記補強部材Kの外径より小さく、前記開口から前記補強部材Kの外周面に装着される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸状の補強部材が設置された穿孔における開口部を塞ぐためのプレートを固定するために、当該補強部材に装着される固定部材であって、
前記補強部材の周方向に沿った弧状であり、一部が開口する装着部と、
前記装着部から突出する支持部とを具備し、
前記装着部は、前記補強部材の軸方向に沿った第1位置と第2位置との間に位置し、
前記第1位置は、前記第2位置よりも前記軸方向の一方側に位置し、
前記支持部は、前記第1位置または前記第1位置よりも前記一方側に位置し、前記プレートに当接する当接部を含み、
前記装着部の開口は、前記補強部材の外径より小さく、
前記装着部の開口から前記補強部材の外周面に装着される
固定部材。
【請求項2】
2個の前記支持部を含み、
前記装着部は、
前記補強部材の周方向に沿った弧状であり、前記軸方向からみて第1端部と第2端部とをそれぞれが含むN(Nは3以上の奇数)個の締付部と、
((N-1)/2)個の第1接続部と、
((N-1)/2)個の第2接続部とを有し、
前記N個の締付部は、前記第1位置と第2位置との間において前記軸方向に沿って配列し、
前記各第1接続部は、前記第2位置側からk(kは奇数)番目に位置する締付部の第1端部と(k+1)番目に位置する締付部の第1端部とを接続し、
前記各第2接続部は、前記第2位置側から(k+1)番目に位置する締付部の第2端部と(k+2)番目に位置する締付部の第2端部とを接続し、
一方の支持部は、前記第1位置側における端部に位置する締付部の第1端部から突出し、
他方の支持部は、前記第2位置側における端部に位置する締付部の第2端部から突出し、
前記装着部の開口は、前記N個の締付部の各々における第1端部と第2端部との間隔のうち最も狭い当該間隔である
請求項1の固定部材。
【請求項3】
前記支持部は、複数あり、
前記複数の支持部の各々における前記当接部は、前記軸方向における位置が同じである
請求項1の固定部材。
【請求項4】
前記支持部は、前記装着部から前記軸方向の一方側に突出する直線状の連結部を含み、
前記当接部は、前記連結部の先端から前記装着部から離れる方向に突出する部分である
請求項1の固定部材。
【請求項5】
前記装着部と前記支持部とは、一連の線材からなる
請求項1から請求項4の固定部材。
【請求項6】
請求項1の固定部材を用いて、前記補強部材が設置された穿孔内に充填材を充填する方法であって、
前記プレートに当接するように前記固定部材を補強部材に装着した状態で、前記穿孔内に充填材を充填する工程を含む
充填方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補強部材が設置された穿孔内に充填材を充填する際に用いられる固定部材の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、不安定な地盤を補強するためにロックボルトなどの補強部材を打設するアンカー工が従来から行われている。アンカー工では、地盤に設けた穿孔に補強部材を挿入した後にモルタルなどの充填材を充填することで、補強部材を固定する場合がある。
【0003】
充填材を充填する際には、穿孔内の空気を抜くためのパイプや充填材を注入するためのパイプが、補強部材とともに穿孔に挿入される。そして、充填材が穿孔内から漏出することを防ぐために、穿孔における地盤表面の開口部は、それらのパイプや補強部材が穿孔内に挿入された状態で、例えばパット材で塞がれる。パット材が硬化した後に、充填材を注入するためのパイプを介して穿孔内に充填材が充填される。
【0004】
しかし、パット材で開口部を塞ぐ工程には手間がかかるという問題や、硬化材が硬化するまでにある程度の時間を必要とすることから作業性が悪いという問題があった。
【0005】
そこで、補強部材が貫通できるプレートをパット材に代えて用いることで穿孔の開口部を塞ぐ技術がある。例えば、特許文献1には、補強部材が挿通される取付孔と、充填材を注入するための充填孔とが設けられた鋼製プレートが開示されている。鋼製プレートを、補強部材が貫通した状態で開口部を塞ぐように設置した後に、充填孔から充填材が充填される。
【0006】
ここで、充填材を充填する際に、穿孔内に充填される充填材から鋼製プレートに圧力が加わる。したがって、鋼製プレートがずれる(すなわち開口部から離れる方向に移動する)ことが想定される。鋼製プレートがすれてしまうと、開口部を十分に塞ぐことができず、充填材が穿孔内から漏出する恐れがある。
【0007】
特許文献1には、補強部材の一部にねじ溝が設けられていて、鋼製プレートからみて開口部とは反対側にナットを係合させることで、補強部材に対して鋼製プレートを強固に固定することが記載されている。したがって、充填材の充填時に鋼製プレートがずれることを防ぐことができると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012-144957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1の技術では、ナットは、補強部材の端部(穿孔に挿入されていない側の端部)から挿入して、ネジ溝まで到達させる。そして、ナットを回して補強部材に装着する必要がある。すなわち、補強部材にナットを装着する際の手間がかかるという問題がある。以上の事情を考慮して、本発明では、プレートのずれを防止するための固定部材を補強部材に装着する際の手間を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1]軸状の補強部材が設置された穿孔における開口部を塞ぐためのプレートを固定するために、当該補強部材に装着される固定部材であって、前記補強部材の周方向に沿った弧状であり、一部が開口する装着部と、前記装着部から突出する支持部とを具備し、前記装着部は、前記補強部材の軸方向に沿った第1位置と第2位置との間に位置し、前記第1位置は、前記第2位置よりも前記軸方向の一方側に位置し、前記支持部は、前記第1位置または前記第1位置よりも前記一方側に位置し、前記プレートに当接する当接部を含み、前記装着部の開口は、前記補強部材の外径より小さく、前記開口から前記補強部材の外周面に装着される固定部材。
【0011】
[2]2個の前記支持部を含み、前記装着部は、前記補強部材の周方向に沿った弧状であり、前記軸方向からみて第1端部と第2端部とをそれぞれが含むN(Nは3以上の奇数)個の締付部と、((N-1)/2)個の第1接続部と、((N-1)/2)個の第2接続部とを有し、前記N個の締付部は、前記第1位置と第2位置との間において前記軸方向に沿って配列し、前記各第1接続部は、前記第2位置側からk(kは奇数)番目に位置する締付部の第1端部と(k+1)番目に位置する締付部の第1端部とを接続し、前記各第2接続部は、前記第2位置側から(k+1)番目に位置する締付部の第2端部と(k+2)番目に位置する締付部の第2端部とを接続し、一方の支持部は、前記第1位置側における端部に位置する締付部の第1端部から突出し、他方の支持部は、前記第2位置側における端部に位置する締付部の第2端部から突出し、前記開口は、前記N個の締付部の各々における第1端部と第2端部との間隔のうち最も狭い当該間隔である[1]の固定部材。
【0012】
[3]前記支持部は、複数あり、前記複数の支持部の各々における前記当接部は、前記軸方向における位置が同じである[1]または[2]の固定部材。
【0013】
[4]前記支持部は、前記装着部から前記軸方向の一方側に突出する直線状の連結部を含み、前記当接部は、前記連結部の先端から前記装着部から離れる方向に突出する部分である[1]から[3]の固定部材。
【0014】
[5]前記装着部と前記支持部とは、一連の線材からなる[1]から[4]の固定部材。
【0015】
[1]から[5]の固定部材を用いて、前記補強部材が設置された穿孔内に充填材を充填する方法であって、前記プレートに当接するように前記固定部材を補強部材に装着した状態で、前記穿孔内に充填材を充填する工程を含む充填方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、固定部材を補強部材に装着する際の手間が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係る補強部材(穿孔内に設置された状態)の側面図である。
図2】実施形態に係るシールプレートの平面図である。
図3】実施形態に係る固定部材の斜視図である。
図4】実施形態に係る固定部材の正面図である。
図5】実施形態に係る固定部材の背面図である。
図6】実施形態に係る固定部材の上面図である。
図7】実施形態に係る固定部材の側面図である。
図8】実施形態に係る固定部材の1個の締付部に着目した正面図である。
図9】実施形態に係る固定部材を示す写真である。
図10】実施形態に係る固定部材が補強部材に装着された状態を示す写真である。
図11】実施形態に係るシールプレートの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本実施形態の固定部材100は、軸状の補強部材Kが設置された穿孔R内に充填材を注入する際に、当該穿孔Rにおける開口部Qを塞ぐためのプレート(以下「シールプレート」という)200を固定するための部材である。
【0019】
図1は、穿孔R内に設置された補強部材Kの側面図である。補強部材Kは、軸状の部材であり、例えば、アンカーボルト、ロックボルトやグラウンドアンカーである。なお、補強部材Kは、典型的にはリブと節とを有する異形棒鋼であるが、補強部材Kの種類は異形棒鋼には限定されず、全ねじ鋼棒や表面に凹凸がない丸鋼であってもよい。
【0020】
以下の説明では、補強部材Kの軸方向をX方向と表記し、X方向に直交する方向をY方向と表記し、X方向およびY方向の双方に直交する方向をZ方向と表記する。
【0021】
補強部材Kが設置される穿孔Rは、対象となる部分(以下「対象部分」)に設けられる。対象部分は、例えば地盤(地山など)やコンクリート構造物である。補強部材Kは、一方の端部側(X方向の負側の端部側)は、穿孔R内に埋設されずに、穿孔Rの外部に位置する。
【0022】
シールプレート200は、補強部材Kに装着される。図2は、補強部材Kに装着された状態のシールプレート200をX方向の負側からみたときの図である。なお、図2では、固定部材100の図示は便宜的に省略する。図1および図2に例示される通り、シールプレート200は、平面視において円板状のプレート部21を含む。プレート部21は、補強部材Kが挿通される取付孔Uと、第1貫通孔H1および第2貫通孔H2とを有する。
【0023】
取付孔Uは、シールプレート200の中心部に形成される。取付孔Uに補強部材Kが貫通した状態で、穿孔Rにおける開口部Qを塞ぐように、シールプレート200が補強部材Kに設けられる。開口部Qは、取付孔Uの内壁面と補強部材Kの外周面との間隔であるとも換言できる。シールプレート200は、穿孔R内に充填する充填材が開口部Qから漏出しないようにするための部材である。
【0024】
シールプレート200は、穿孔R内に設置された補強部材Kに取り付けられた状態で、開口部Qを塞ぐことが可能な大きさに形成される。具体的には、シールプレート200は、平面視において、穿孔Rの内径を上回る大きさに形成される。なお、シールプレート200は、開口部Qを塞ぐことが可能であれば、円盤状には限定されず、例えば平面視において多角形状であってもよい。
【0025】
取付孔Uの直径は、補強部材Kの外形に応じて設定される。補強部材Kの外周面と取付孔Uの内周面との間に、充填材が漏出するような隙間がないように取付孔Uを形成する。
【0026】
第1貫通孔H1は、充填材を充填するためのパイプP1を設置するための貫通孔である。パイプP1は、第1貫通孔H1を貫通するように設けられる。第2貫通孔H2は、穿孔R内の空気を抜くためのパイプP2を設置するための貫通孔である。パイプP2は、第2貫通孔H2を貫通するように設けられる。第1貫通孔H1と第2貫通孔H2とを設ける位置は、任意であるが、例えば取付孔Uを挟んで相互に反対側に設けられる。シールプレート200の詳細については、後述する。
【0027】
図3から図7は、本実施形態に係る固定部材100の図である。図3は、固定部材100の斜視図であり、図4は、X方向の負側からみたときの固定部材100の正面図であり、図5は、X方向の正側からみたときの固定部材100の背面図であり、図6は、Z方向の正側からみたときの固定部材100の上面図であり、図7は、Y方向の正側からみたときの固定部材100の側面図である。
【0028】
図3から図7に例示される通り、固定部材100は、装着部11と支持部13とを具備する。本実施形態では、装着部11が2個の支持部13(13a,13b)を具備する構成を例示する。以下の説明では、一方の支持部13を第1支持部13aと表記し、他方の支持部13を第2支持部13bと表記する。本実施形態では、装着部11と支持部13とが一連の線材からなる場合を例示する。
【0029】
装着部11は、図3に例示される通り、補強部材Kの周方向に沿った弧状の部材であり、一部が開口Oする。固定部材100は、装着部11の開口Oから補強部材Kの外周面に装着される。開口Oについては、後述する。
【0030】
図3および図6に例示される通り、装着部11は、X方向(補強部材Kの軸方向)に沿った第1位置M1と第2位置M2との間に位置する。第1位置M1は、第2位置M2よりもX方向の正側(「補強部材Kの軸方向の一方側」の例示)に位置する。第1位置M1は、装着部11におけるX方向の正側の端部(最もX方向の正側に位置する部分)がある位置であり、第2位置M2は、装着部11におけるX方向の負側の端部(最もX方向の負側に位置する部分)がある位置であるとも換言できる。すなわち、装着部11は、X方向において第1位置M1から第2位置M2にわたり存在する。
【0031】
本実施形態の装着部11は、N(Nは3以上の奇数)個の締付部112と、((N-1)/2)個の第1接続部114と、((N-1)/2)個の第2接続部116とを具備する。第1実施系形態では、Nが3である場合を例示する。すなわち、装着部11は、3個の締付部112と1個の第1接続部114と1個の第2接続部116とを具備する。
【0032】
なお、装着部11は、本実施形態のように複数の部材で構成される場合には、図4および図5に例示される通り、X方向からみたときに全体の形状が補強部材Kの周方向に沿った弧状であればよい。
【0033】
図3に例示される通り、各締付部112は、補強部材Kの周方向に沿った弧状であり、X方向(補強部材Kの軸方向)からみて第1端部T1と第2端部T2とを含む部材である。図6に例示される通り、3個の締付部112は、第1位置M1と第2位置M2との間においてX方向に沿って配列する。各締付部112は、所定の間隔Dで配列される。締付部112は、弧状であれば、完全な円弧状になる必要はなく、補強部材Kの外周面に沿うように弧状になっていればよい。
【0034】
以下の説明では、3個の締付部112を区別する必要があるときは、X方向の負側の端部に位置する締付部112を「締付部112a」と表記し、X方向の正側の端部に位置する締付部112を「締付部112c」と表記し、締付部112aと締付部112cとの間に位置する締付部112を「締付部112b」と表記する。図6に例示される通り、締付部112cは、第1位置M1側における端部に位置する締付部112であり、締付部112aは、第2位置M2側における端部に位置する締付部112であるとも換言できる。図8は、締付部112bにのみ着目した正面図である。
【0035】
図6および図7に例示される通り、本実施形態では、各締付部112が平行になるように配置される。例えば、X方向に直交するY-Z平面に位置するように各締付部112が配置される。各締付部112は、所定の間隔Dで配置される。なお、本実施形態では、締付部112aと締付部112bとの間隔Dと、締付部112bと締付部112cとの間隔Dとが、同じである場合を例示するが、相違してもよい。
【0036】
間隔Dは、例え3~15mmであり、好ましくは4.5~7.5mmであり、固定部材100が取り付けられる対象となる補強部材Kの種類に応じて適宜に変更し得る。図1では、間隔Dは、周方向にわたり一定である構成を例示するが、周方向に沿って相違してもよい。図4および図5に例示される通り、各締付部112は、X方向からみたときに重なるように配置される。ただし、X方向からみて各締付部112が重ならない構成も採用される。
【0037】
図6に例示される通り、本実施形態において、第1位置M1とは、締付部112cにおけるX方向の正側の端部(最もX方向の正側に位置する部分)がある位置であり、第2位置M2とは、装着部11におけるX方向の負側の端部(最もX方向の負側に位置する部分)がある位置である。
【0038】
図4図5および図8には、X方向からみたときに各締付部112の内側で画定される仮想的な円(以下「仮想円S」という)が図示されている。図4には、締付部112aにおける仮想円S1が示されていて、図5には、締付部112cにおける仮想円S3が示されていて、図8には、締付部112bにおける仮想円S2が示されている。なお、本実施形態では、X方向からみたときに各締付部112が重なるように配置されているから、各締付部112における仮想円Sも重なる。
【0039】
本実施形態では、仮想円Sは、X方向からみたときに、締付部112の内側(内周側)において、円周の少なくとも一部が締付部112の内周に接触し、かつ、円周の全体が締付部112の内側に位置する状態で、直径が最大となる円である。締付部112が完全な円弧状でない場合についても同様である。なお、Z方向は、締付部112bにおける仮想円S2の中心と、締付部112bにおける第1端部T1と第2端部T2とを結ぶ線分の中点とを通る直線に平行な方向とも換言できる。
【0040】
仮想円Sの直径は、装着対象となる補強部材Kの直径に応じて適宜に変更し得る。固定部材100を強固に補強部材Kに装着する観点からは、補強部材Kの外径より小さい構成が好適である。例えば、仮想円Sの直径が補強部材Kの外径の0.75~1.0倍になるように、締付部112が形成される。なお、本発明において補強部材Kの外径(最外径)とは、補強部材Kが異形棒鋼である場合には、補強部材Kの公称直径(節とリブとを含めない部分の直径)である。補強部材が全ねじ鋼棒である場合には、雄ねじ外径を補強部材Kの外径とする。
【0041】
締付部112bの弧長(すなわち周方向に沿った長さ)は、補強部材Kの外径を直径とする円の円周よりも小さく、例えば当該円周の0.5~0.95倍である。なお、Z方向は、X方向に直交し、締付部112bにおける弧長の中点を通る線分に平行な方向であるとも換言できる。
【0042】
図3から図5に例示される通り、本実施形態では、締付部112aおよび締付部112cの弧長が締付部112bの弧長よりも短い構成を例示する。
【0043】
図4に例示される通り、締付部112aの第2端部T2は、X方向の負側からみたときに、締付部112bの第2端部T2よりもZ方向の正側に位置(締付部112bの弧長の中点に近い位置)する。一方で、締付部112aの第1端部T1は、X方向の負側からみたときに、締付部112bの第1端部T1と同じ位置にある。
【0044】
図5に例示される通り、締付部112cの第1端部T1は、X方向の正側からみたときに、締付部112bの第1端部T1よりもZ方向の正側(締付部112bの弧長の中点に近い位置)に位置する。一方で、締付部112cの第2端部T2は、X方向の正側からみたときに、締付部112bの第2端部T2と同じ位置にある。
【0045】
ただし、各締付部112の関係は以上の例示には限定されず、例えば、締付部112の弧長が同じである構成や締付部112bの弧長が締付部112aや締付部112cよりも短い構成も採用される。
【0046】
図4図5および図8には、各締付部112における第1端部T1と第2端部T2との間隔F(Fa,Fb,Fc)が図示されている。図4には締付部112aの間隔Faが図示され、図5には締付部112cの間隔Fcが図示され、図8には締付部112bの間隔Fbが図示しされている。
【0047】
締付部112bにおける間隔Fbは、3個の締付部112の間隔Fのうち最も狭い。本実施形態では、締付部112bの間隔Fbを装着部11の開口Oとする。すなわち、装着部11の開口Oは、N個の締付部112の各々における第1端部T1と第2端部T2との間隔Fのうち最も狭い間隔Fであるとも換言できる。
【0048】
締付部112bにおける間隔Fbは、補強部材Kの外径より小さい。すなわち、装着部11の開口Oは、補強部材Kの外径より小さい。
【0049】
間隔Fは、例えば、補強部材Kの外径を基準とすると当該外径の0.5~0.75倍であり、仮想円Sの直径を基準とすると当該直径の0.6~0.9倍が想定される。具体的には、間隔Fは、補強部材Kの外径に応じて、例えば5~40mmの範囲内で設定される。
【0050】
なお、装着部11を強固に補強部材Kに装着させる観点からは、締付部112aにおける間隔Faおよび締付部112cにおける間隔Fcも補強部材Kの外径より小さいことが好ましく、補強部材Kの外径より小さいことがさらに好ましい。ただし、間隔Faおよび間隔Fcが補強部材Kの外径よりも大きい構成も想定される。
【0051】
図3に例示される通り、第1接続部114は、装着部11のうち、締付部112aの第1端部T1と締付部112bの第1端部T1とを接続する部分である。本実施形態の第1接続部114は、締付部112aの第1端部T1から締付部112bの第1端部T1に向かって連続的に曲線を描くように形成される。ただし、第1接続部114の形状は、締付部112aの第1端部T1と、締付部112bの第1端部T1とを接続することが可能であれば任意である。
【0052】
図3に例示される通り、第2接続部116は、装着部11のうち、締付部112bの第2端部T2と締付部112cの第2端部T2とを接続する部分である。本実施形態の第2接続部116は、締付部112bの第2端部T2から締付部112cの第2端部T2に向かって連続的に曲線を描くように形成される。ただし、第2接続部116の形状は、締付部112bの第2端部T2と、締付部112cの第2端部T2とを接続することが可能であれば任意である。
【0053】
図3から図6に例示される通り、支持部13(13a,13b)は、固定部材100のうち装着部11から突出する部分である。図1に例示される通り、支持部13は、装着部11から、補強部材Kから離れる方向に突出する。図6に例示される通り、各支持部13は、装着部11からX方向の正側に向かって突出するとも換言できる。
【0054】
図3から図6に例示される通り、第1支持部13aは、締付部112c(第1位置M1側における端部に位置する締付部112)の第1端部T1から突出する部分である。
【0055】
第2支持部13bは、締付部112a(第2位置M2側における端部に位置する締付部112)の第2端部T2から突出する部分である。
【0056】
各支持部13は、当接部131と連結部132とを含む。当接部131は、第1位置M1よりもX方向の正側(「補強部材Kの軸方向の一方側」の例示)に位置する部分である。図1に例示される通り、当接部131がシールプレート200(穿孔Rとは反対側の表面)に当接する。支持部13のうちシールプレート200に当接する部分が当接部131であるとも換言できる。
【0057】
図3から図6に例示される通り、連結部132は、装着部11からX方向の正側に突出する直線状の部分である。本実施形態では、連結部132の先端(X方向の正側の端部)が第1位置M1よりもX方向の正側に位置する場合を例示する。本実施形態の当接部131は、連結部132の先端から、装着部11とは反対側に突出する部分である。
【0058】
図6に例示される通り、第1支持部13aの連結部132は、Z方向からみたときに、締付部112cの第1端部T1から、当該締付部112cから離れる方向に傾斜する。図6には、シールプレート200の表面E(穿孔とは反対側の表面)が便宜的に図示されている。
【0059】
第1支持部13aにおける当接部131は、Z方向からみたときに、連結部132の先端(連結部132におけるX方向の正側の端部)から、Y方向の正側に向かって(装着部11とは反対側に向かって)延在する直線状の部分である。当接部131は、シールプレート200の表面Eに平行な方向に延在するとも換言できる。なお、X方向からみたときに、締付部112cに対して第1支持部13aが傾斜する角度θcは、当接部131がシールプレート200に当接することができれば、任意であるが、例えば90~180°である。
【0060】
図6に例示される通り、第2支持部13bの連結部132は、Z方向からみたときに、締付部112aの第2端部T2から、当該締付部112aから離れる方向に傾斜する。
【0061】
第2支持部13bにおける当接部131は、Z方向からみたときに、連結部132の先端(連結部132におけるX方向の正側の端部)から、Y方向の負側に向かって(装着部11とは反対側に向かって)延在する直線状の部分である。当接部131は、シールプレート200の表面Eに平行な方向に延在するとも換言できる。なお、X方向からみたときに、締付部112cに対して第1支持部13aが傾斜する角度θaは、当接部131がシールプレート200に当接することができれば、任意であるが、例えば100~150°である。
【0062】
本実施形態のように、複数の支持部13(13a,13b)が複数ある場合には、複数の支持部13の各々における当接部131は、X方向における位置が同じである構成が好ましい。各当接部131のX方向における位置が同じであることで、複数の当接部131がシールプレート200に適切に当接することができるという利点がある。
【0063】
図9は、本実施形態の一例に係る固定部材100の写真であり、図10は、図9の固定部材100が装着された補強部材Kの写真である。
【0064】
固定部材100は、装着部11における開口O(締付部112の間隔Fb)から補強部材Kの外周面に装着される。上述した通り、装着部11の開口Oは、補強部材Kの外径より小さい。そして、固定部材100の開口Oは、固定部材100に外力が加わることで変化する。具体的には、固定部材100を開口Oから補強部材Kの外周面に押し当てることで開口Oが広がり、図10のように補強部材Kの外周面に装着することが可能になる。開口Oは、典型的には、弾性変形により可変である。したがって、固定部材100を強固に補強部材Kに装着することができる。ただし、開口Oが弾性変形により可変であることは必須ではなく、固定部材100を補強部材Kに装着することが可能であれば、開口Oが塑性変形により可変であってもよい。なお、実際には、締付部112aの間隔Faおよび締付部112cの間隔Fcも間隔Fbと同様に広がることで、本実施形態の固定部材100が補強部材Kに装着できる。
【0065】
図11は、補強部材Kに装着される前のシールプレート200の平面図である。シールプレート200は、半円状の2つの第1部材211と第2部材212とを含む。第1部材211と第2部材212とは、プレート部21(図2)を構成する部分である。具体的には、第1部材211と第2部材212とを蝶番23で軸支さている。具体的には、第1部材211と第2部材212とは、相対的に移動可能なように蝶番23により軸支するされている。第1部材211および第2部材212における外周面において周方向に沿った一方の端部側に蝶番23が設けられている。
【0066】
第1部材211と第2部材212とは、第1係合部25および第2係合部27により円盤状(図2の状態)になるように相互に固定可能である。第1係合部25は、第2部材212における外周面において周方向に沿った他方の端部側(蝶番23とは反対側の端部側)に設けられる。第2係合部27は、第1部材211における外周面において周方向に沿った他方の端部側(蝶番23とは反対側の端部側)に設けられる。例えば、第1係合部25は、フック状の部材であり、第2係合部27は、第1部材211の外周面から突出する突起状の部材である。第1係合部25および第2係合部27の形状は、相互に係合することが可能であれば、任意である。
【0067】
第1部材211には、補強部材Kの外周面(半周)に沿うように形成された凹部U1が形成される。第2部材212には、補強部材Kの外周面(半周)に沿うように形成された凹部U2が形成される。凹部U1と凹部U2とは、第1部材211と第2部材212とが、第1係合部25および第2係合部27により固定されたときに取付孔Uをなすような位置に形成される。
【0068】
第1部材211には、パイプP1の外周面(半周)に沿うように形成された凹部H1aが形成される。第2部材212には、パイプP1の外周面(半周)に沿うように形成された凹部H1bが形成される。凹部H1aと凹部H1bとは、第1部材211と第2部材212とが、第1係合部25および第2係合部27により固定されたときに第1貫通孔H1をなすような位置に形成される。
【0069】
第1部材211には、パイプP2の外周面(半周)に沿うように形成された凹部H2aが形成される。第2部材212には、パイプP2の外周面(半周)に沿うように形成された凹部H2bが形成される。凹部H2aと凹部H2bとは、第1部材211と第2部材212とが、第1係合部25および第2係合部27により固定されたときに第2貫通孔H2をなすような位置に形成される。
【0070】
シールプレート200は、図1に例示される通り、所望する位置(開口部Qを塞ぐ位置)において補強部材Kの外周面に装着される。第1部材211と第2部材212とで補強部材Kの外周面を挟み込むようにして、第1係合部25および第2係合部27により第1部材211と第2部材212とを相互に固定することで、補強部材Kにシールプレート200を装着できる。なお、第1部材211と第2部材212との係合を解除することで、補強部材Kからシールプレート200を取り外すことも可能である。
【0071】
以上の説明から理解される通り、本実施形態のシールプレート200は、固定部材100に取り付けた状態で、取付孔Uと第1貫通孔H1と第2貫通孔H2とを有する円盤状の形状(すなわちプレート部21)になる。
【0072】
なお、取付孔U(凹部U1および凹部U2)の内周面は、補強部材Kとシールプレート200の密着性を向上させるために、パッキンJが設けられる。パッキンJは、図2および図10において、便宜的に網掛けで図示する。
【0073】
なお、シールプレート200は、補強部材Kが貫通した状態で開口部Qを塞ぎ、開口部Qを塞いだ状態で充填材を注入することが可能であれば、以上の例示には限定されない。例えば、プレート部が中心部に取付孔Uを具備する1個の円環状の部材でなるシールプレート200(蝶番23や第1係合部25および第2係合部27がないシールプレート200)であってもよい。プレート部が1個の円環状の部材でなる場合には、補強部材Kの端部(穿孔Rの外部から露出する側の端部)から取付孔Uに当該補強部材Kを挿通させて、シールプレート200を設置してもよい。また、第1貫通孔H1と第2貫通孔H2とは、一方が第1部材211に設けられ、他方が第2部材212に設けられてもよい。
【0074】
図1に例示される通り、シールプレート200における穿孔Rとは反対側の表面に、固定部材100の当接部131が当接するように補強部材Kに当該固定部材100が装着される。固定部材100が装着された後に、パイプP1を介して穿孔R内に充填材が充填される。シールプレート200は、固定部材100の当接部131が当接することで、支持部13により支持されている。したがって、穿孔R内に充填される充填材に押圧されたシールプレート200がずれる(X方向の負側に移動する)ことを防ぐことができる。なお、穿孔R内の空気はパイプP2を介して排出される。
【0075】
以上の説明から理解される通り、装着部11の開口Oから補強部材Kの外周面に固定部材100を装着することができる。したがって、補強部材Kの端部(穿孔Rに挿入されていない側の端部)から挿入して、補強部材Kに形成されたネジ溝まで到達したら回して補強部材Kに装着するナットを固定部材100とする構成(以下「比較例」という)と比較して、補強部材Kに装着する際の手間を軽減すことが可能である。比較例は、例えば特許文献1の技術である。
【0076】
また、比較例1では、補強部材Kにナットが係合するためのネジ溝を形成するための加工をする必要がある(すなわち、一般に流通する補強部材Kは用いることができない)。それに対して、本実施形態の構成によれば、補強部材Kに特殊な加工をすることなく、固定部材100の装着が可能である。
【0077】
<変形例>
以上に例示した各形態は多様に変形され得る。前述の各形態に適用され得る具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0078】
(1)本発明の適用の対象となる補強部材Kには、軸状の部材であって、固定部材100を取り付けることが可能であれば、ロックボルト、グラウンドアンカーおよびアンカーボルトには限定されない。
【0079】
(2)固定部材100が具備する締付部112の個数は、任意であり、複数個(N個)であっても1個でもよい。固定部材100が1個の締付部112を具備する場合には、第1接続部114および第2接続部116は省略される。
【0080】
(3)装着部11は、N(Nは2以上の整数)の締付部112と、相互に隣接する2個の締付部112を接続するための(N-1)個の接続部とを具備してもよい。支持部13は、例えば、N個の締付部112のうち第1位置M1側の端部または第2位置M2側の端部にある締付部112の第1端部T1または第2端部T2から突出する。
【0081】
(4)締付部112がN個ある場合において第1接続部114および第2接続部116が省略される場合もある。例えば、相互に隣接する2個の締付部112において第1端部T1同士が直接接続され、第2端部T2同士が直接接続される場合には、第1接続部114が省略される。さらに。固定部材100が締付部112と第1接続部114と第2接続部116とは異なる部分を含む構成も採用される。
【0082】
(5)以上の例示では、装着部11の開口Oが締付部112bの間隔Fbである構成を例示したが、装着部11の開口Oとなる部分は装着部11の形状に応じて適宜に相違し得る。装着部11は、補強部材の外径より小さい開口Oを有していればよい。
【0083】
(6)当接部131がシールプレート200の表面に平行な方向に延在することは必須ではなく、当接部131がシールプレート200の表面に対して交差するように延在してもよい。ただし、当接部131がシールプレート200の表面に平行な方向に延在する構成によれば、シールプレート200に強固に当接することができる。
【0084】
(7)当接部131の形状は、直線状には限定されず、曲線状であってもよい。また、当接部131を線材で形成せずに、シールプレート200との接触面積が増加するような板状や柱状の部材で当接部131を形成してもよい。以上の説明から理解される通り、当接部131の形状は、第1位置M1よりもX方向の正側に位置し、シールプレート200に当接することが可能であれば、任意である。
【0085】
(8)連結部132の形状は、当接部131が第1位置M1よりもX方向の正側に位置するように、当接部131と装着部11(締付部112)とを連結することが可能であれば、任意である。例えば、曲線状の連結部132であってもよい。
【0086】
(9)支持部13の形状は、当接部131を含めば、任意である。すなわち、支持部13が連結部132を含まない構成や支持部13が連結部132以外の部分を含む構成も採用される。また、複数の支持部13の間において各支持部13の形状が相違してもよい。
【0087】
(10)本実施形態ではNが3である場合を例示したが、Nは3以上の奇数であれば任意である。例えば、Nが5である場合には、第2位置M2側から、1番目の締付部112と2番目の締付部112とを接続するための第1接続部114と、3番目の締付部112と4番目の締付部112とを接続するための第1接続部114と、2番目の締付部112と3番目の締付部112とを接続するための第2接続部116と、4番目の締付部112と5番目の締付部112とを接続するための第2接続部116とを装着部11が有する。すなわち、2(=(N-1)/2)個の第1接続部114と、2(=(N-1)/2)個の第2接続部116とを装着部11が有する。そして、第1接続部114は、第2位置M2側からk(kは奇数)番目に位置する締付部112の第1端部T1と(k+1)番目に位置する締付部112の第1端部T1とを接続し、第2接続部116は、第2位置M2側からみて(k+1)番目に位置する締付部112の第2端部T2と(k+2)番目に位置する締付部112の第2端部T2とを接続する要素である。
【0088】
N個の締付部112と((N-1)/2)個の第1接続部114と((N-1)/2)個の第2接続部116とを含む装着部11と、2個の支持部13とを固定部材100が具備する構成によれば、一連の線材で、複数の締付部112と、2個の支持部13を含む固定部材100を形成できるという利点がある。なお、一方の支持部13は、第1位置M1側における端部に位置する締付部112の第1端部T1から突出し、他方の支持部13は、第2位置M2側における端部に位置する締付部112の第2端部T2から突出する。
【0089】
(11)固定部材100(線材)の線径は、例えば直径1.0~5.0mmであり、線材の種類(金属種)や補強部材Kの外径に応じて適宜に変更し得る。なお、補強部材Kを構成する線材は、例えばステンレスなどの金属で形成される。
【0090】
(12)図4には、便宜的に、X方向からみたときにおける、仮想円S1の中心Vと締付部112aの第2端部T2とを結ぶ線分と、当該中心Vと締付部112cの第1端部T1とを結ぶ線分とがなす角度θ1が図示されている。角度θ1は、X方向からみたときに開口Oとは反対側において、中心Vと締付部112aの第2端部T2とを結ぶ線分と当該中心Vと、締付部112cの第1端部T1とを結ぶ線分とがなす角度である。角度θ1は、90~180°になるように締付部112aの第2端部T2と締付部112cの第1端部T1とが位置することが好ましい。
【0091】
また、図8には、便宜的に、X方向からみたときおける、仮想円S2の中心Vと第1接続部114の先端とを通る線部と、当該中心Vと第2接続部116の先端とを通る線部とがなす角度θ2が図示されている。第1接続部114の先端とは、X方向からみたときに、第2接続部116に最も近い部分(最もY方向の負側に位置する部分)である。同様に、第2接続部116の先端とは、X方向からみたときに、第1接続部114に最も近い部分(最もY方向の正側に位置する部分)である。角度θ2は、例えば30°以上180°以下であり、好適には45°以上120°以下であり、さらに好適には50°以上90°以下に設定される。角度θ2を以上の範囲内に設定することで、装着部11をより強固に補強部材Kに装着することが可能である。
【0092】
(13)N個の締付部112がある場合に、相互に隣接する2個の締付部112を接続するための接続部は、1個には限定されず、例えば2個以上あってもよい。すなわち、少なくとも(N-1)個の接続部を具備すればよい。
【0093】
(14)締付部112が線材で構成されることは必須ではない。例えば、薄板状の締付部112も採用され得る。第1端部T1と第2端部T2との間隔から補強部材Kに固定部材100を装着することが可能であれば、締付部112の形状は任意である。同様に、第1接続部114と第2接続部116とは、線材には限定されない。ただし、締付部112と第1接続部114と第2接続部116とを線材で形成する構成によれば、例えば薄板状で締付部112と第1接続部114と第2接続部116と形成する構成と比較して、例えば異形棒鋼のように表面に凹凸がある補強部材Kに装着する場合に、凹凸の影響を受けずに装着できるという利点がある。
【0094】
(15)固定部材100が一連の線材で構成されることは必須ではない。例えば、複数の線材を接合して固定部材100を構成してもよい。ただし、固定部材100が一連の線材でなる構成によれば、複数の部材を接合してなる固定部材100と比較して、製造が容易であるという利点もある。
【0095】
(16)第1接続部114および第2接続部116は、曲線状に形成することは必須ではない。例えば、第1接続部114および第2接続部116を直線状に形成してもよい。
【0096】
(17)間隔Dは、周方向に沿って一定であってもよいし、変化してもよい。図1の例示では、間隔Dが周方向に沿って一定であるとは、Z方向の正側からみたときに、相互に隣り合う2個の締付部112が平行に配列されている場合である。一方で、間隔Dが周方向に沿って変化する場合とは、例えば、Z方向の正側からみたときに、相互に隣り合う2個の締付部112の一方が他方に対して傾いて配列されている場合である。
【0097】
(18)本発明は、固定部材100を用いて、補強部材Kが設置された穿孔R内に充填材を充填する方法であって、シールプレート200に当接するように固定部材100を補強部材Kに装着した状態で、穿孔R内に充填材を充填する工程を含む充填方法としても観念できる。
【0098】
(19)図6では当接部131が、第1位置M1よりもX方向の正側に位置する場合を例示した。ただし、当接部131は、シールプレートに当接可能であれば、第1位置M1にあってもよい。当接部131が第1位置M1にある場合には、第1支持部13aにおいては、例えば、締付部112cの第1端部T1から、角度θcが180°になるように(シールプレート200の表面に平行になるように)、突出する当接部131を含む(連結部132は省略され得る)。ただし、当接部131が第1位置M1よりもX方向の正側に位置する構成によれば、当接部131が第1位置M1にある構成と比較して、シールプレート200に確実に当接できるという利点がある。
【0099】
(20)本発明において「一定である」「一致する」「同じ(同等)である」「重なる」と記載する場合には、厳密に「一定である」「一致する」「同じ(同等)である」「重なる」場合はもちろんのこと、製造上の誤差の範囲内で「一定である」「一致する」「同等(同じ)である」「重なる」場合も包含される。
【符号の説明】
【0100】
11 :装着部
13 :支持部
21 :プレート部
23 :蝶番
25 :第1係合部
27 :第2係合部
100 :固定部材
112 :締付部
114 :第1接続部
116 :第2接続部
131 :当接部
132 :連結部
200 :シールプレート
211 :第1部材
212 :第2部材
H1 :第1貫通孔
H2 :第2貫通孔
J :パッキン
K :補強部材
M1 :第1位置
M2 :第2位置
O :開口
P1 :パイプ
P2 :パイプ
Q :開口部
R :穿孔
T1 :第1端部
T2 :第2端部
U :取付孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11