(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109179
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】交換機、通信システム、通信方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04M 3/58 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
H04M3/58 Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013827
(22)【出願日】2023-02-01
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 康介
【テーマコード(参考)】
5K201
【Fターム(参考)】
5K201AA09
5K201BC08
5K201BC14
5K201CA08
5K201CB01
5K201CB05
5K201CB14
5K201DC05
5K201EA02
5K201EC03
5K201FA03
(57)【要約】
【課題】FMCを指向した、V字発信や着信転送が可能な通信システムにおいて、通信キャリア、特に無線キャリアの通信障害時に、通信の代替手段を提供することに貢献する交換機、通信システム、通信方法及びプログラムの提供。
【解決手段】電話回線の異常を検出する検出部と、自社側端末を所定の要素で認証する認証部と、前記認証部の認証結果に応じて、前記自社側端末との通話を他社側端末へ転送する転送部と、を有し、前記認証部は前記検出部の検出結果に応じて前記所定の要素とは異なる他の要素により認証を行う、交換機を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電話回線の異常を検出する検出部と、
自社側端末を所定の要素で認証する認証部と、
前記認証部の認証結果に応じて、前記自社側端末との通話を他社側端末へ転送する転送部と、
を有し、
前記認証部は前記検出部の検出結果に応じて前記所定の要素とは異なる他の要素により認証を行う、
交換機。
【請求項2】
前記認証部は、
前記検出部の検出結果が異常でない場合には、自社側端末の電話番号で認証し、
前記検出部の検出結果が異常である場合には、自社側端末に関連付けられた発信者の生体特徴量を要素として認証を行う、請求項1の交換機。
【請求項3】
前記認証部は、発信者の音声の特徴量により認証を行う請求項2の交換機。
【請求項4】
前記検出部の検出結果に応じて、前記自社側端末からボイスメールのメッセージを取得するVM(Voice Message)取得部と、
外線からの着信に対して前記ボイスメールのメッセージにて応答するVM応答部と、
を更に有する、請求項3の交換機。
【請求項5】
前記検出部は、外線からの着信を、自社側端末へ着信転送を行う際の発信時において所定の応答メッセージを認識することにより電話回線の異常を検出する、請求項1の交換機。
【請求項6】
前記電話回線の異常を自社側端末へ通知する通知部を有する請求項5の交換機。
【請求項7】
前記転送部は、自社側端末から発信先の電話番号を取得し、V字発信を行なうことにより通話を転送する、請求項1から6のいずれか一の交換機。
【請求項8】
電話回線の異常を検出する検出部と、
自社側端末を所定の要素で認証する認証部と、
前記認証部の認証結果に応じて、前記自社側端末との通話を他社側端末へ転送する転送部と、
を有し、
前記認証部は前記検出部の検出結果に応じて、前記所定の要素による認証に代えて音声を要素とする音声認証のための音声認証要求を送信する、
交換機と、
前記交換機より受信した前記音声認証要求に応じて音声認証を行う音声認証部と、
を有する、
音声認証装置と、
を含む、通信システム。
【請求項9】
交換機が各ステップを実行する通信方法であって、
電話回線の異常を検出するステップと、
前記異常を検出するステップの検出結果に応じて、自社側端末を所定の要素又は所定の要素とは異なる他の要素で認証するステップと、
前記認証するステップの認証結果に応じて、前記自社側端末との通話を他社側端末へ転送するステップと、
を含む通信方法。
【請求項10】
電話回線の異常を検出する処理と、
前記異常を検出する処理の検出結果に応じて、自社側端末を所定の要素又は所定の要素とは異なる他の要素で認証する処理と、
前記認証する処理の認証結果に応じて、前記自社側端末との通話を他社側端末へ転送する処理と、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交換機、通信システム、通信方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
キーテレホンシステム(構内交換機、PBX(Private Branch eXchange)を含む)の既存機能で、固定回線と移動体回線(モバイル回線)を自社が利用するPBXで接続するFMC(Fixed-Mobile Convergence)を指向したシステム等が存在する。
【0003】
コールバックによる通話や、外線に対する着信の転送、代表番号による発信等種々の機能を有しているシステムであるが、近年、移動通信キャリア回線のメンテナンス工事中にトラブルが発生する事例が頻発している。半日~数日ほど電話利用できなくなるケースもあり、契約している移動体キャリアの障害中はFMCサービスも機能しない。
【0004】
特許文献1には以下のような通信システム等が開示されている。該技術はいわゆるV字発信が可能なシステムである。個人利用の携帯端末等から業務用途で通話する際において、通話要求をサーバに送信し、認証を行う。認証が成功すると、サーバは交換機に個人利用の携帯端末へ第一の呼を発信することを指令する。第一の呼が前記携帯端末等と成立すると、サーバは第二の呼を顧客等の通信先へ当該交換機が有する代表番号等で発信することを指令する。第二の呼が成立すると、サーバは交換機に対して第一の呼による通話を第二の呼へ転送する指令を実行する。これにより、利用者は個人の携帯端末等から、交換機が設置されている企業等の代表番号等で通信先と通信を行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
なお、上記先行技術文献の各開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。以下の分析は、本発明者らによってなされたものである。
【0007】
特許文献1の技術では、いわゆるV字発信を行うにあたり、CTI(Computer Telephony Integration)装置がユーザID及びパスワードで認証を行い、発信者であるユーザ端末を識別している。CTI装置は、上記ユーザIDに関連付けられたユーザ端末の電話番号に発信する。
【0008】
特許文献1ではユーザID及びパスワードにてユーザ認証を行うことで、ユーザ端末の認証を行っているが、スマートフォンのようなキーボード等の入力インタフェースを有さない携帯電話等により発信を行う場合には、通常携帯電話がV字発信要求として発信を行った場合の発番通知によりPBX等がユーザ端末の認証を行うことが多い。
【0009】
ここで、ユーザ端末が利用するキャリアに通信障害が発生した場合、当該ユーザ端末の発番通知による認証が不可能となる。公衆電話等の代替手段で通話を行おうとしても発番が異なるので認証に失敗し、V字発信機能を利用することが不可能な状態に陥ってしまうという問題が生じる。
【0010】
また、上記事態に加えてダイヤルインによる外線着信をユーザ端末に転送する着信転送機能も転送先のキャリアの障害により、当然不可能となる。これらの場合には顧客等との通信が途絶えることとなるので、顧客に対して何らかの代替手段にてアナウンスを行う必要があるが、通信障害によりユーザ端末によりアナウンスを行うことは不可能である。
【0011】
そこで、本発明はFMCを指向した、V字発信や着信転送が可能な通信システムにおいて、通信キャリア、特に無線キャリアの通信障害時に、通信の代替手段を提供することに貢献する交換機、通信システム、通信方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明乃至開示の第一の視点によれば、電話回線の異常を検出する検出部と、自社側端末を所定の要素で認証する認証部と、前記認証部の認証結果に応じて、前記自社側端末との通話を他社側端末へ転送する転送部と、を有し、前記認証部は前記検出部の検出結果に応じて前記所定の要素とは異なる他の要素により認証を行う、交換機が提供される。
【0013】
本発明乃至開示の第二の視点によれば、電話回線の異常を検出する検出部と、自社側端末を所定の要素で認証する認証部と、前記認証部の認証結果に応じて、前記自社側端末との通話を他社側端末へ転送する転送部と、を有し、前記認証部は前記検出部の検出結果に応じて、前記所定の要素による認証に代えて音声を要素とする音声認証のための音声認証要求を送信する、交換機と、前記交換機より受信した前記音声認証要求に応じて音声認証を行う音声認証部と、を有する、音声認証装置と、を含む、通信システムが提供される。
【0014】
本発明乃至開示の第三の視点によれば、交換機が各ステップを実行する通信方法であって、電話回線の異常を検出するステップと、前記異常を検出するステップの検出結果に応じて、自社側端末を所定の要素又は所定の要素とは異なる他の要素で認証するステップと、前記認証するステップの認証結果に応じて、前記自社側端末との通話を他社側端末へ転送するステップと、を含む通信方法が提供される。
【0015】
本発明乃至開示の第四の視点によれば、電話回線の異常を検出する処理と、前記異常を検出する処理の検出結果に応じて、自社側端末を所定の要素又は所定の要素とは異なる他の要素で認証する処理と、前記認証する処理の認証結果に応じて、前記自社側端末との通話を他社側端末へ転送する処理と、をコンピュータに実行させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明乃至開示の各視点によれば、本発明は、FMCを指向した、V字発信や着信転送が可能な通信システムにおいて、通信キャリア、特に無線キャリアの通信障害時に、通信の代替手段を提供することに貢献する交換機、通信システム、通信方法及びプログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施形態に係る交換機の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】第1の実施形態にかかる交換機の処理の概要を示す概略図である。
【
図3】第1の実施形態に係る交換機の構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】第1の実施形態の交換機の動作の一例を示すためのフローチャートである。
【
図5】第1の実施形態にかかる交換機のハードウエア構成の一例を示す図である。
【
図6】第2の実施形態にかかる交換機の処理の概要を示す概略図である。
【
図7】第2の実施形態に係る交換機の構成の一例を示すブロック図である。
【
図8】第2の実施形態における交換機の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図9】第3の実施形態に係る通信システムの構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
初めに、一実施形態の概要について説明する。なお、この概要に付記した図面参照符号は、理解を助けるための一例として各要素に便宜上付記したものであり、この概要の記載はなんらの限定を意図するものではない。また、各図におけるブロック間の接続線は、双方向及び単方向の双方を含む。一方向矢印については、主たる信号(データ)の流れを模式的に示すものであり、双方向性を排除するものではない。更に、本願開示に示す回路図、ブロック図、内部構成図、接続図などにおいて、明示は省略するが、入力ポート及び出力ポートが各接続線の入力端及び出力端のそれぞれに存在する。入出力インタフェースも同様である。
【0019】
図1は一実施形態に係る交換機の構成の一例を示すブロック図である。この図にあるように、一実施形態に係る交換機10は、検出部11と、認証部12と、転送部13と、を有する。
【0020】
検出部11は、電話回線の異常を検出する。認証部12は、自社側端末を所定の要素で認証する。転送部13は、前記認証部の認証結果に応じて、前記自社側端末との通話を他社側端末へ転送する。認証部12は更に、検出部11の検出結果に応じて所定の要素とは異なる他の要素により認証を行う。
【0021】
上記の通り、一実施形態の交換機10では、検出部11の検出結果(電話回線が異常であるか否か)に応じて、所定の要素とは異なる他の要素に切り換えて自社側端末を認証することが可能である。例えば、自社側端末が接続している無線通信キャリア内で通信障害が起こった場合に、通常時であれば所定の要素である自社側端末が通知する発信者番号により認証するところ、代替手段の電話回線では認証が不可能であるので、別の要素による認証へ切り替えることで代替手段により通話することが可能である。
【0022】
以下に具体的な実施の形態について、図面を参照して更に詳しく説明する。なお、各実施形態において同一構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0023】
[第1の実施形態]
[処理の概要]
図2は、第1の実施形態にかかる交換機10の処理の概要を示す概略図である。通常時は、A社社員21は個人所有の携帯電話を業務用途で使用するために、いわゆるV字発信が可能な構内交換機(PBX)10を介して顧客23へ発信を行い、通話を行っている。携帯電話の電話番号は090-XXXX-XXXXであり、この番号の発信者番号通知を行うことで構内交換機10の認証を受けている。認証が成功すると、A社社員21と構内交換機10間の通話を、構内交換機10と顧客23との通話へ転送することで、構内交換機10の代表電話番号03-XXXX-ZZZZにより社員21と顧客23との通話を実現している。
【0024】
ところが、社員21が使用している携帯電話のキャリアに通信障害が生じ、公衆網(PSTN)への接続が絶たれた場合、社員21は例えば公衆電話24を用いて顧客23にコンタクトを取ろうとする。しかしながら番号通知による認証は、公衆電話の発信者番号は携帯電話と異なる03-XXXX-YYYYであるから当然認証に失敗する。本実施形態の構内交換機10は、このような場合に発信者番号に代えて他の要素により認証することが可能である。
【0025】
図2の例では、構内交換機10は、生体情報である社員21の音声により認証を行っている。本実施形態の構内交換機10は携帯電話キャリアのネットワークに通信障害が起こった場合に、これを検出し、認証の要素を発信者番号通知によるものから他の要素である社員21の音声により認証を行うといった代替手段を提供する。これにより少なくとも携帯電話キャリアに障害が生じても、社員21は、公衆網に接続された電話により、構内交換機10と接続することが可能であり、A社の代表番号にて顧客23と通話することが可能である。
【0026】
[構成]
図3は第1の実施形態に係る交換機10の構成の一例を示すブロック図である。この図にあるように、本実施形態の交換機10は、検出部11と、認証部12と、転送部13と、通知部14と、を有する。
【0027】
検出部11は、電話回線の異常を検出する。「電話回線の異常」とは、社員21が業務用途で用いている携帯電話のキャリアの回線や、その先の固定電話回線(PSTN)の異常を指す。検出部11は、その検出結果が異常である場合に、後述する認証部12へ通知を行う。
【0028】
検出部11は、種々の手段を用いて電話回線の異常を検出する。例えば、外線からのダイヤルイン着信があった場合に、自社側端末へ着信転送を行う際の発信時においてキャリア側から出力される所定の応答メッセージを音声認識により特定することにより電話回線の異常を検出する。具体的には、例えば、「おかけになった電話番号は、現在使われておりません。もう一度番号をお確かめの上おかけ直しください。」といったメッセージが流れると、固定電話回線(PSTN)は正常に運用されているが、その先の携帯電話網に異常が生じているということが分かる。すなわちこのようなメッセージを検出部11にて認識を行うことで、異常を検出することができる。なお、検出部11は上記のようなメッセージに関わらず、他のメッセージや、通知音で電話回線の異常を検出することができる。
【0029】
異常であるとの検出結果の場合において、交換機10は電話回線の異常を自社側端末へ通知する通知部を有する構成であってもよい。当該通知は、電話回線を介さずに例えばインターネット経由でメールを送信することにより通知するものであってもよい。
【0030】
認証部12は、自社側端末を所定の要素で認証する。「自社側端末」とは、自社が保有している端末に限られず、業務利用が可能な個人所有の端末も含む。また、通信障害発生時に代替手段として用いる公衆電話等も自社側端末に含まれる。「所定の要素」とは、種々の要素が考えられるが、本実施形態における「所定の要素」とは、一例として発信者通知番号が挙げられる。「認証」とは、通知された発信者番号を、認証部12内の発信者番号認証テーブルと照合し、テーブル内に番号が含まれているかどうかを判断する処理を指す。テーブル内に番号が含まれていれば認証が成功する。
【0031】
認証部12は更に、検出部11の検出結果に応じて前記所定の要素とは異なる他の要素により認証を行う事が可能である。例えば、検出部11において携帯電話回線の異常が検出された場合に、携帯電話の発信者番号通知を用いる認証は不可能である。この場合所定の要素である発信者番号とは異なる要素に切り換えて認証をすることが可能である。例えば、発信者の生体特徴量を要素として認証することが考えられる。例えば他のキャリアの携帯電話に付属する指紋認証センサや、内蔵カメラを用いた顔認証等が考えられる。最も利便性が高く望ましい態様としては、音声による認証が考えられる。
【0032】
例えば発信者の音声の特徴量である声紋により個人認証をすることが考えられる。
図2において、携帯電話回線の通信障害により携帯電話を使用できなくなった場合に、例えばA社社員21が公衆電話24を使用してA社交換機10側の緊急連絡用電話番号に架電すると、内蔵されているIVR(Interactive Voice Response)システムが応答する。社員21は、IVRの応答メッセージに応じて指定のフレーズを口ずさむと、交換機10はその音声を取得し、声紋を分析することにより個人を特定するための認証を行う。認証が成功すると、通常時の動作と同様に、公衆電話24と交換機10との通話を、交換機10と顧客23との通話に転送処理する。なお指定のフレーズは、利用者のみに通知されたパスフレーズであってもよい。
【0033】
上記の通り、認証部12は、検出部11の検出結果が異常でない場合には、自社側端末の電話番号で認証し、検出部11の検出結果が異常である場合には、自社側端末に関連付けられた発信者の生体特徴量を要素として認証を行う。また、発信者の生体特徴量として、発信者の音声を採用することができる。
【0034】
転送部13は、認証部12の認証結果に応じて、自社側端末との通話を他社側端末へ転送する。本実施形態の交換機10は、認証部12による認証が受理されると、
図2の社員21が使用している携帯電話、あるいは代替手段として使用している公衆電話や固定電話と交換機10との通話を、交換機10から顧客23への通話に転送する。もちろん、社員21と交換機10との通話は、いわゆるV字発信によるものでもよい。すなわち社員21が使用している端末と交換機10の間との通話は、社員21が交換機10へV字発信要求を送信し、認証部12での認証が受理された上で、交換機10から社員21へコールバックした通話であってもよい。なお、V字発信要求には通話先の顧客23の電話番号が含まれており、交換機10は顧客23に対して通話を確立する。これにより、社員21は通話料をほぼ支払うこと無く、顧客に対して通話をすることが可能である。
【0035】
[動作の説明]
図4は第1の実施形態の交換機10の動作の一例を示すためのフローチャートである。この図にあるように、まず(携帯)電話回線の異常を検出したか否かを判断する(ステップS41)。異常を検出した場合(ステップS41、Y)には、発信者にメールで通知する(ステップS42)。その後、発信者の音声により認証を行う(ステップS43)。認証の結果OKである場合(ステップS44、Y)には顧客等の発信先の電話番号を取得しV字発信を行う(ステップS45)。次にV字発信を行った自社側端末との通話を他社側端末との通話へ転送する(ステップS46)。認証の結果がNGの場合(ステップS44、N)には処理は終了する。
【0036】
電話回線の異常を検出しない場合(ステップS41、N)には、社員等の発信者の携帯電話等の発信者番号で認証を行う(ステップS47)。認証の結果OKである場合(ステップS48、Y)には顧客等の発信先の電話番号を取得しV字発信を行う(ステップS45)。次にV字発信を行った自社側端末との通話を他社側端末との通話へ転送する(ステップS46)。認証の結果NGである場合(ステップS48、N)には処理を終了する。
【0037】
[ハードウエア構成]
本実施形態の交換機10(特にIP-PBX)は、情報処理装置(コンピュータ)により構成可能であり、
図5に例示する構成を備える。例えば、交換機10は、内部バス55により相互に接続される、CPU(Central Processing Unit)51、メモリ52、入出力インタフェース53及び通信手段であるNIC(Network Interface Card)54等を備える。NICの先には、固定電話網との接続点であるVoIPゲートウェイが接続されていてもよい。
【0038】
但し、
図5に示す構成は、交換機10のハードウエア構成を限定する趣旨ではない。交換機10は、図示しないハードウエアを含んでもよいし、必要に応じて入出力インタフェース53を備えていなくともよい。また、交換機10に含まれるCPU等の数も
図5の例示に限定する趣旨ではなく、例えば、複数のCPUが交換機10に含まれていてもよい。またNIC54に関しても2以上のNICが交換機10に含まれていてもよい。
【0039】
メモリ52は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、補助記憶装置(ハードディスク等)である。
【0040】
入出力インタフェース53は、図示しない表示装置や入力装置のインタフェースとなる手段である。表示装置は、例えば、液晶ディスプレイ等である。入力装置は、例えば、タッチパネル、キーボードやマウス等のユーザ操作を受付ける装置である。
【0041】
交換機10の機能は、メモリ52に格納された検出プログラム、認証プログラム、応答受付プログラム、転送プログラム、通知プログラム等といったプログラム群(処理モジュール)と、メモリ52に保持されている発信者番号認証テーブルや生体認証のためのテンプレート等のデータ群により実現される。当該処理モジュールは、例えば、メモリ52に格納された各プログラムをCPU51が実行することで実現される。また、そのプログラムは、ネットワークを介してダウンロードするか、あるいは、プログラムを記憶した記憶媒体を用いて、更新することができる。更に、上記処理モジュールは、半導体チップにより実現されてもよい。即ち、上記処理モジュールが行う機能を何らかのハードウエア、及び/又は、ソフトウェアで実行する手段があればよい。
【0042】
なお、これらプログラム等の一部また全てを処理モジュールとしてパッケージ化して既存の交換機に導入(アドオン)することで、上記実施形態の機能を有する交換機を実現する態様であっても良い。
【0043】
[ハードウエアの動作]
交換機10は動作を開始すると、検出プログラムがメモリ52から呼び出され、CPU51により実行状態とされる。同プログラムは、電話回線の異常を検出する。具体的には、例えば外線からの着信転送を行う際の発信時に所定の応答メッセージを音声認識により認識することで異常を検出する。
【0044】
次に認証プログラムがメモリ52から呼び出されCPU51により実行状態となる。検出プログラムにより異常が検出されない場合には、認証プログラムにより発信者番号通知による電話番号を用いた認証を行う。認証が成功すると、転送プログラムがメモリ52から呼び出され、CPU51にて実行状態となる。同プログラムは発信者である自社社員と交換機10との通話を、交換機10と発信先である顧客との通話に転送を行う。
【0045】
検出プログラムにより異常が検出された場合には、認証プログラムは、発信者番号による認証から、音声認証へ認証方式を切り替える。具体的には例えば、社員からの外線着信に応答するIVRを起動し、社員との音声によるやり取りを実行する。認証プログラムは取得した音声の特徴量である声紋により個人認証を行う。認証が成功すると、転送プログラムがメモリ52から呼び出され、CPU51にて実行状態となる。同プログラムは上記と同様に、発信者である自社社員と交換機10との通話を、交換機10と発信先である顧客との通話に転送を行う。
【0046】
なお、検出プログラムにより異常が検出された場合には、通知プログラムがメモリ52から呼び出され、CPU51にて実行状態となる。同プログラムは、インターネット回線等を介して発信者である自社社員に向け回線の異常が検出された旨のメールを送信し通知を行う。
【0047】
転送プログラムは、認証プログラムによる認証が成功し、自社社員によるV字発信要求を取得すると、要求に含まれる発信先である顧客等の電話番号を取得する。そして、発信元の自社社員の端末に向けコールバックするとともに、発信先の顧客と通話をするべく取得された電話番号により発信する。転送プログラムは、両通話の接続が確立されると、発信元との通話を、発信先との通話に転送を行う。
【0048】
[効果の説明]
上記第1の実施形態に係る交換機10により、携帯電話回線網に異常が生じた場合においても、公衆電話等から通話を行い、所定の要素から他の要素である認証に切り替えることで認証を実行することが可能となる。これにより、障害発生時においても代替手段を用いてV字発信等の交換機10の機能を発揮することが可能である。
【0049】
[第2の実施形態]
[処理の概要]
図6は、第2の実施形態にかかる交換機10の処理の概要を示す概略図である。この図にあるように、社員21が使用している携帯電話キャリアで通信障害が発生し、発信者電話番号による認証が不可能な状態である。社員21は代替手段として公衆電話24により交換機10へ接続する。上記実施形態にて説明したように音声にて認証を行い、認証が成功した場合には、ボイスメールモジュールに対して通信障害が発生し、通話ができなくなっているとの顧客23宛てのメッセージを録音する。顧客23はダイヤルインで社員21に向け発信を試みた場合において、社員21の携帯電話の通話へ転送する代わりに、顧客23宛のボイスメールのメッセージを再生する。このようにして社員21は顧客23に状況を伝えることが可能であり、この場合はボイスメールが代替手段として機能を発揮することとなる。
【0050】
[構成]
図7は第2の実施形態に係る交換機10の構成の一例を示すブロック図である。この図にあるように、本実施形態の交換機10は、検出部11と、認証部12と、転送部13と、通知部14と、を有する。なお上記構成要件については上記実施形態にて説明済みであるので記載は省略する。本実施形態の交換機10の特徴は、VM取得部15とVM応答部16を有する点である。
【0051】
VM取得部15は、検出部11の検出結果に応じて、自社側端末からボイスメールのメッセージを取得する。具体的には認証部12による認証が成功した後に、IVRにより社員21と音声によるやり取りを行い、顧客23向けのメッセージを取得し記憶域に格納する。
【0052】
VM応答部16は、外線からの着信に対してボイスメールのメッセージにて応答する。具体的には顧客23から社員21向けにダイヤルインの外線着信があった場合において、社員21のメッセージを保存している記憶域にアクセスし、メッセージを再生する。さらに、VM取得部15は、顧客23のメッセージを取得してもよい。
【0053】
VM取得部15は、ボイスメールのメッセージを取得した際に、メッセージを音声認識によりテキストに変換しても良い。VM応答部16は、テキストに変換されたメッセージをメールにて社員21、又は顧客23に対して送信しても良い。
【0054】
[動作の説明]
図8は第2の実施形態の交換機10の動作の一例を示すためのフローチャートである。この図にあるように、まず電話回線の異常を検出する(ステップS81)。異常を検出しない場合(ステップS81、N)には発信者番号で認証する(ステップS82)。以降の処理(ステップS82-ステップS85)については、上記実施形態で説明済みであるので記載は省略する。
【0055】
電話回線の異常が検出された場合(ステップS81、Y)には発信者にメールで通知し(ステップS86)、発信者の音声により認証を行う(ステップS87)。認証の結果、OKである場合(ステップS88、Y)には、ボイスメールのメッセージ音声を取得する(ステップS89)。取得後、外線着信時においてはボイスメールのメッセージにて応答する(ステップS90)。認証がNGの場合(ステップS88、N)には処理が終了する。
【0056】
[効果の説明]
本実施形態の交換機10により、携帯電話キャリアの通信網に障害が生じた場合において、音声による認証の後、公衆電話や固定電話から顧客宛てのボイスメールを録音して格納することが可能である。ダイヤルインで顧客から着信があった場合にはボイスメールのメッセージが流れ、顧客に対して連絡事項を伝えることが可能である。このように、本実施形態の交換機10は通信障害時において代替手段を提供することが可能である。
【0057】
[第3の実施形態]
[構成]
図9は第3の実施形態に係る通信システムの構成の一例を示すブロック図である。この図にあるように通信システムは、交換機10と、音声認証装置90とを含む。交換機10は、検出部11と、認証部12と、転送部13と、を有する。検出部11と転送部13とは上記実施形態で説明済みであるので記載は省略する。音声認証装置90は音声認証部91を有する。
【0058】
認証部12は、交換機10において、自社側端末を所定の要素で認証する。認証部12は更に、検出部11の検出結果に応じて、前記所定の要素による認証に代えて音声を要素とする音声認証のための音声認証要求を送信する。
【0059】
音声認証部91は、交換機10より受信した音声認証要求に応じて音声認証を行う。
【0060】
本実施形態の通信システムは、既存の交換機に別個の認証装置を導入するといった態様である。これにより交換機10は新規に他の要素で認証を実行することが可能となる。
【0061】
前述の実施形態の一部又は全部は、以下の各付記のようにも記載することができる。しかしながら、以下の各付記は、あくまでも、本発明の単なる例示に過ぎず、本発明は、かかる場合のみに限るものではない。
[付記1]
上述の第一の視点に係る交換機のとおりである。
[付記2]
認証部は、検出部の検出結果が異常でない場合には、自社側端末の電話番号で認証し、 検出部の検出結果が異常である場合には、自社側端末に関連付けられた発信者の生体特徴量を要素として認証を行う、好ましくは付記1の交換機。
[付記3]
認証部は、発信者の音声の特徴量により認証を行う、好ましくは付記2の交換機。
[付記4]
検出部の検出結果に応じて、自社側端末からボイスメールのメッセージを取得するVM(Voice Message)取得部と、外線からの着信に対してボイスメールのメッセージにて応答するVM応答部と、を更に有する、好ましくは付記3の交換機。
[付記5]
検出部は、外線からの着信を、自社側端末へ着信転送を行う際の発信時において所定の応答メッセージを認識することにより電話回線の異常を検出する、好ましくは付記1の交換機。
[付記6]
電話回線の異常を自社側端末へ通知する通知部を有する、好ましくは付記5の交換機。
[付記7]
転送部は、自社側端末から発信先の電話番号を取得し、V字発信を行なうことにより通話を転送する、好ましくは付記1から6のいずれか一の交換機。
[付記8]
上述の第二の視点に係る通信システムのとおりである。
[付記9]
上述の第三の視点に係る通信方法のとおりである。
[付記10]
上述の第四の視点に係るプログラムのとおりである。
なお、付記8乃至付記10は、付記1と同様に、付記2~付記7に展開することが可能である。
【0062】
なお、引用した上記の特許文献等の各開示は、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明の全開示(特許請求の範囲を含む)の枠内において、更にその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施形態の変更・調整が可能である。また、本発明の全開示の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態ないし実施形態の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせ、ないし、選択(部分的削除を含む)が可能である。すなわち、本発明は、特許請求の範囲を含む全開示、技術的思想に従って当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。特に、本書に記載した数値範囲については、当該範囲内に含まれる任意の数値ないし小範囲が、別段の記載のない場合でも具体的に記載されているものと解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0063】
10:交換機
11:検出部
12:認証部
13:転送部
14:通知部
15:VM取得部
16:VM応答部
21:社員
23:顧客
24:公衆電話
51:CPU
52:メモリ
53:入出力インタフェース
54:NIC
55:内部バス
90:音声認証装置
91:音声認証部