(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011344
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】光ファイバ用母材の製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 37/012 20060101AFI20240118BHJP
C03B 37/018 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
C03B37/012 Z
C03B37/018 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113267
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 隆成
【テーマコード(参考)】
4G021
【Fターム(参考)】
4G021BA00
4G021EA03
4G021EB26
(57)【要約】
【課題】 光ファイバの生産性の低下を抑制し得る光ファイバ用母材の製造方法を提供する。
【解決手段】 光ファイバ用母材1Pの製造方法は、本体部としてのコアガラス体10Pと外側部としてのクラッドガラス体11Pの一部である第1ガラス層21とから成る中間母材1PPを形成する中間母材形成工程P1と、第1ガラス層21の外周面にガラス微粒子を堆積させて被覆多孔質ガラス体を形成し、被覆多孔質ガラス体を焼結して、クラッドガラス体11Pの他の一部となる第2ガラス層22を形成するガラス層形成工程P3と、を備え、ガラス層形成工程P3では、中間母材1PPの外径に対する第2ガラス層22の外径の比が、屈折率分布のプロファイルが中間母材1PPの屈折率分布のプロファイルと類似する参照母材のプリフォームアナライザで正常に測定された屈折率分布に基づいて設定される値となるように、第1ガラス層21の外周面にガラス微粒子を堆積させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロッド状の本体部、及び前記本体部と異なる屈折率を有し前記本体部の外周面を囲う外側部を含む光ファイバ用母材の製造方法であって、
多孔質ガラス体を焼結して、前記本体部と前記外側部の一部である第1ガラス層とから成る中間母材を形成する中間母材形成工程と、
前記第1ガラス層の外周面にガラス微粒子を堆積させて被覆多孔質ガラス体を形成し、前記被覆多孔質ガラス体を焼結して、前記外側部の他の一部となる第2ガラス層を形成するガラス層形成工程と、
を備え、
前記ガラス層形成工程では、前記中間母材の外径に対する前記第2ガラス層の外径の比が、屈折率分布のプロファイルが前記中間母材の屈折率分布のプロファイルと類似する参照母材のプリフォームアナライザで正常に測定された屈折率分布に基づいて設定される値となるように、前記第1ガラス層の外周面に前記ガラス微粒子を堆積させる
ことを特徴とする光ファイバ用母材の製造方法。
【請求項2】
前記参照母材は、前記中間母材形成工程と同じ条件及び同じ装置で形成された別の中間母材を延伸したガラス部材である
ことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ用母材の製造方法。
【請求項3】
前記参照母材は、前記中間母材から切り離された前記中間母材の一部を延伸したガラス部材である
ことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ用母材の製造方法。
【請求項4】
前記ガラス層形成工程では、前記中間母材の外径に対する前記第2ガラス層の外径の比が、複数の前記参照母材の屈折率分布から得られる相関関係に基づいて設定される値となるように、前記第1ガラス層の外周面に前記ガラス微粒子を堆積させ、
前記中間母材及びそれぞれの前記参照母材の屈折率分布は、屈折率の変化に基づく所定の特徴を有する特徴部を含み、
前記中間母材の前記特徴部は、前記プリフォームアナライザで正常に測定可能な範囲に位置し、
前記相関関係は、それぞれの前記参照母材の半径に対する当該参照母材の中心から当該参照母材における前記特徴部までの距離の比と、それぞれの前記参照母材の屈折率分布に基づいて設定される前記中間母材の外径に対する前記第2ガラス層の外径の比との相関関係である
ことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ用母材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ用母材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバの製造に用いる光ファイバ用母材を製造する方法として、多孔質ガラス体を焼結して形成される中間母材から光ファイバ用母材を製造することが知られている。この場合、例えば、中間母材の外周面を囲う被覆多孔質ガラス体を形成し、当該被覆多孔質ガラス体を焼結して中間母材の外周面を囲うガラス層を形成することで、光ファイバ用母材を製造する。また、上記の多孔質ガラス体、及び被覆多孔質ガラス体は、OVD法(Outside Vapor Deposition method)やVAD法(Vapor Phase Axial Deposition method)等を用いてガラス微粒子を多層に堆積させることにより形成される。
【0003】
このような製造方法において、例えば、中間母材は、コアとなるコアガラス体と、クラッドの一部となるガラス体から成りコアガラス体の外周面を囲う第1ガラス層とから構成され、中間母材の外周面を囲うガラス層は、クラッドの他の一部となるガラス体から成る第2ガラス層とされることがある。この場合、被覆多孔質ガラス体を形成する前に、中間母材の屈折率分布に基づいて、中間母材の外径に対するコアガラス体の外径の比等を求めて、当該比等から中間母材の外径に対する第2ガラス層の外径の比を設定する。そして、中間母材の外径に対する第2ガラス層の外径の比が設定した値となるように、被覆多孔質ガラス体を形成する。中間母材の屈折率分布の測定方法として、プリフォームアナライザを用いた測定が知られている。プリフォームアナライザは、レーザ光を中間母材の長手方向と垂直な方向から入射させると共に径方向に走査させて、中間母材から出射するレーザ光が屈折する角度を測定することで、中間母材の屈折率分布を測定する。
【0004】
上記のように、中間母材はガラス微粒子が多層に堆積された多孔質ガラス体が焼結されたものである。このため、中間母材の屈折率分布には、多孔質ガラス体におけるガラス微粒子のそれぞれの層に対応する微細な屈折率のゆらぎが生じ、このゆらぎは脈理と呼ばれることがある。プリフォームアナライザのレーザ光は、この脈理によって回折等することがあり、この場合、レーザ光の屈折角を正確に測定できず、測定される屈折率分布に乱れが生じる。このような測定異常が生じると、中間母材の外径に対する第2ガラス層の外径の比を設定できず、所望の光学特性を有する光ファイバ用母材を製造できない。
【0005】
下記特許文献1には、多孔質ガラス体を焼結して形成される光ファイバ用母材を延伸することで、脈理の周期を短くして、脈理による測定異常を抑制することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
中間母材の屈折率分布の測定結果に脈理による乱れが生じる場合、上記特許文献1のように、中間母材を延伸して屈折率分布の測定結果に脈理による乱れが生じないようにして、延伸した中間母材に対して上記の比を設定することが考えられる。しかし、中間母材を延伸すると、最終的に得られる光ファイバ用母材の径が小さくなる。このため、光ファイバ用母材から製造できる光ファイバの条長が短くなり、光ファイバの生産性が低下する。
【0008】
そこで、本発明は、光ファイバの生産性の低下を抑制し得る光ファイバ用母材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様1は、ロッド状の本体部、及び前記本体部と異なる屈折率を有し前記本体部の外周面を囲う外側部を含む光ファイバ用母材の製造方法であって、多孔質ガラス体を焼結して、前記本体部と前記外側部の一部である第1ガラス層とから成る中間母材を形成する中間母材形成工程と、前記第1ガラス層の外周面にガラス微粒子を堆積させて被覆多孔質ガラス体を形成し、前記被覆多孔質ガラス体を焼結して、前記外側部の他の一部となる第2ガラス層を形成するガラス層形成工程と、を備え、前記ガラス層形成工程では、前記中間母材の外径に対する前記第2ガラス層の外径の比が、屈折率分布のプロファイルが前記中間母材の屈折率分布のプロファイルと類似する参照母材のプリフォームアナライザで正常に測定された屈折率分布に基づいて設定される値となるように、前記第1ガラス層の外周面に前記ガラス微粒子を堆積させることを特徴とする。
【0010】
屈折率分布のプロファイルが互いに類似する中間母材における中間母材の外径に対する第2ガラス層の外径の比は、概ね同じとなる。このため、第2ガラス層が形成されたそれぞれの中間母材の屈折率分布のプロファイルは、互いに類似する。このため、得られる光ファイバ用母材の屈折率分布のプロファイルは互いに類似し得、製造される光ファイバの光学特性も類似する。態様1では、上記のように、中間母材の外径に対する第2ガラス層の外径の比が、プリフォームアナライザで正常に測定された参照母材の屈折率分布に基づいて設定される値となるように、第1ガラス層の外周面にガラス微粒子を堆積させる。この参照母材の屈折率分布のプロファイルは、中間母材の屈折率分布のプロファイルと類似する。このため、態様1によれば、プリフォームアナライザによって測定した屈折率分布の測定結果に脈理による乱れが生じるような中間母材であっても、この乱れが生じなくなるような中間母材の延伸をせずに上記の比を設定できる。従って、態様1によれば、製造される光ファイバ用母材の径が小さくなることを抑制し得、光ファイバの生産性の低下を抑制し得る。なお、中間母材の屈折率分布のプロファイルと類似するプロファイルとして、例えば、中間母材の屈折率分布のプロファイルを半径方向に縮小したプロファイルと概ね同じものが挙げられる。また、このようなプロファイルを有する参照母材として、例えば、上記中間母材形成工程と同じ条件及び同じ装置で同じ日に形成された別の中間母材を延伸したガラス部材、別の日に形成された当該ガラス部材、上記中間母材形成工程と同じ条件であるが別の装置で形成された中間母材を延伸したガラス部材、中間母材から切り離された当該中間母材の一部を延伸したガラス部材等が挙げられる。これらガラス部材は、中間母材より外径が小さいため、中間母材より脈理の周期が短く、脈理による乱れが生じなくなり得る。
【0011】
本発明の態様2は、態様1の光ファイバ用母材の製造方法において、前記参照母材は、前記中間母材形成工程と同じ条件及び同じ装置で形成された別の中間母材を延伸したガラス部材であることを特徴とする。
【0012】
中間母材と同じ条件及び同じ装置で形成された別の中間母材を延伸したガラス部材の屈折率分布のプロファイルは、中間母材の屈折率分布のプロファイルを延伸倍率に応じて半径方向に縮小したプロファイルと概ね同じになる。つまり、中心から径方向への距離をガラス部材の外径で割ることによって正規化された径方向の位置が横軸であるガラス部材の屈折率分布と、中心から径方向への距離を中間母材の外径で割ることによって正規化された径方向の位置が横軸である中間母材の屈折率分布とが概ね同じになる。態様2では、このようなガラス部材が参照母材である。このため、態様2によれば、屈折率分布の測定結果に脈理による乱れが生じるような中間母材であっても、この乱れが生じなくなるような中間母材の延伸をせずに上記の比を設定できる。また、態様2によれば、参照母材を容易に準備できる。
【0013】
本発明の態様3は、態様1の光ファイバ用母材の製造方法において、前記参照母材は、前記中間母材から切り離された前記中間母材の一部を延伸したガラス部材であることを特徴とする。
【0014】
中間母材の一部を延伸したガラス部材の屈折率分布のプロファイルは、態様2と同様に、中間母材の屈折率分布のプロファイルを半径方向に縮小したプロファイルと概ね同じとなる。態様3では、このようなガラス部材が参照母材である。このため、態様3によれば、屈折率分布の測定結果に脈理による乱れが生じるような中間母材であっても、この乱れが生じなくなるような中間母材の全体の延伸をせずに上記の比を設定できる。また、中間母材の一部を延伸したガラス部材の屈折率分布のプロファイルは、中間母材と同じ条件及び同じ装置で形成された別の中間母材を延伸したガラス部材の屈折率分布のプロファイルより、中間母材の屈折率分布のプロファイルを延伸倍率に応じて半径方向に縮小したプロファイルに酷似する傾向にある。これは、例えば、中間母材と同じ条件及び同じ装置で別の中間母材を形成しても、ガラス微粒子の堆積の仕方等に僅かな差異が生じるためである。このため、態様3によれば、中間母材と同じ条件及び同じ装置で形成された別の中間母材を延伸したガラス部材が参照母材である場合と比べて、上記の比をより適切な値にし得る。
【0015】
本発明の態様4は、態様1の光ファイバ用母材の製造方法において、前記ガラス層形成工程では、前記中間母材の外径に対する前記第2ガラス層の外径の比が、複数の前記参照母材の屈折率分布から得られる相関関係に基づいて設定される値となるように、前記第1ガラス層の外周面に前記ガラス微粒子を堆積させ、前記中間母材及びそれぞれの前記参照母材の屈折率分布は、屈折率の変化に基づく所定の特徴を有する特徴部を含み、前記中間母材の前記特徴部は、前記プリフォームアナライザで正常に測定可能な範囲に位置し、前記相関関係は、それぞれの前記参照母材の半径に対する当該参照母材の中心から当該参照母材における前記特徴部までの距離の比と、それぞれの前記参照母材の屈折率分布に基づいて設定される前記中間母材の外径に対する前記第2ガラス層の外径の比との相関関係であることを特徴とする。
【0016】
プリフォームアナライザでは中間母材を径方向に横断するようにレーザ光を走査するため、屈折率分布の測定結果のうち、脈理による乱れが生じた箇所より外側は正常な屈折率分布となり、当該箇所より中心側が正常でない屈折率分布となる。このため、正常に測定された範囲の屈折率分布のプロファイルは、参照母材のこの範囲に対応する範囲の屈折率分布のプロファイルと類似する。本発明者は、類似するこれらプロファイルと、参照母材の屈折率分布に基づいて設定される中間母材の外径に対する第2ガラス層の外径の比との関係について鋭意研究を重ねた。その結果、中間母材及び参照母材の屈折率分布が、屈折率の変化に基づく所定の特徴を有する特徴部を含む場合、上記の相関関係が概ね比例関係であることを見出した。このため、中間母材の特徴部がプリフォームアナライザで正常に測定可能な範囲に位置する場合、この相関関係に基づいて中間母材の外径に対する第2ガラス層の外径の比を設定できる。従って、態様4によれば、屈折率分布の測定結果に脈理による乱れが生じるような中間母材であっても、乱れが生じなくなるような中間母材の延伸をせずに上記の相関関係に基づいて中間母材の外径に対する第2ガラス層の外径の比を設定できる。なお、特徴部として、例えば、半径方向における外側から中心に向かって屈折率が初めて所定値となる部位等が挙げられる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、光ファイバの生産性の低下を抑制し得る光ファイバ用母材の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る光ファイバ用母材の長手方向に垂直な断面の様子を概略的に示す図である。
【
図2】第1実施形態における中間母材の長手方向に垂直な断面の様子を概略的に示す図である。
【
図3】第1実施形態に係る光ファイバ用母材の製造方法の工程を示すフローチャートである。
【
図4】第1実施形態における設定工程のフローチャートである。
【
図5】測定された中間母材の屈折率分布、及び参照母材の屈折率分布を示す図である。
【
図6】それぞれの参照母材の半径に対する当該参照母材の中心から当該参照母材における特徴部までの距離の比と、それぞれの参照母材の屈折率分布に基づいて設定される中間母材の外径に対する第2ガラス層の外径の比との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る光ファイバ用母材の製造方法が添付図面とともに例示される。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良することができる。なお、以下で参照する図面では、理解を容易にするために、各部材の寸法を変えて示す場合がある。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係る光ファイバ用母材の長手方向に垂直な断面の様子を概略的に示す図である。
図1に示すように、本実施形態の光ファイバ用母材1Pは、ロッド状のコアガラス体10Pと、クラッドガラス体11Pとを含む。クラッドガラス体11Pは、コアガラス体10Pの外周面を囲む。当該断面におけるクラッドガラス体11Pの外形は略円形であり、コアガラス体10Pはクラッドガラス体11Pの中心に配置されている。光ファイバ用母材1Pの外径は、制限されないが、例えば、150mmである。
【0021】
コアガラス体10Pの屈折率とクラッドガラス体11Pの屈折率とは互いに異なる。本実施形態では、コアガラス体10Pはゲルマニウム(Ge)等の屈折率が高くなるドーパントが添加されたシリカガラスからなり、クラッドガラス体11Pは何ら添加物の無いシリカガラスからなる。なお、コアガラス体10Pが何ら添加物の無いシリカガラスからなり、クラッドガラス体11Pがフッ素(F)等の屈折率が低くなるドーパントが添加されたシリカガラスからなっていてもよい。また、コアガラス体10Pが屈折率を高くするドーパントが添加されたシリカガラスからなり、クラッドガラス体11Pが屈折率を低くするドーパントが添加されたシリカガラスからなっていてもよい。また、屈折率を高くするドーパント及び屈折率を低くするドーパントは制限されるものではない。
【0022】
このような光ファイバ用母材1Pは、コアガラス体10Pを本体部とすると、クラッドガラス体11Pは、本体部と異なる屈折率を有し当該本体部の外周面を囲う外側部と理解できる。また、詳細については後述するが、光ファイバ用母材1Pは、ロッド状の中間母材の外周面に第2ガラス層を形成することで製造される。次に、中間母材について説明する。
【0023】
図2は、本実施形態における中間母材の長手方向に垂直な断面の様子を概略的に示す図である。
図2に示すように、中間母材1PPは、コアガラス体10Pと、クラッドガラス体11Pの一部である第1ガラス層21とから構成される。なお、
図1には、第1ガラス層21の外周面が一点鎖線で示されており、この一点鎖線より内側が中間母材1PPである。クラッドガラス体11Pのうち、この一点鎖線より内側が第1ガラス層21であり、外側が前述の第2ガラス層22であり、第2ガラス層22は、クラッドガラス体11Pにおける第1ガラス層21以外の部位である。また、本実施形態の中間母材1PPの外径は、60mmであるが、制限されるものではない。
【0024】
次に、本実施形態に係る光ファイバ用母材の製造方法について説明する。
【0025】
図3は、本実施形態に係る光ファイバ用母材1Pの製造方法の工程を示すフローチャートである。
図3に示すように、本実施形態の光ファイバ用母材1Pの製造方法は、中間母材形成工程P1と、設定工程P2と、ガラス層形成工程P3と、を含む。
【0026】
<中間母材形成工程P1>
本工程は、ガラス微粒子を多層に堆積させて多孔質ガラス体を形成し、当該多孔質ガラス体を焼結して、光ファイバ用母材1Pの一部である中間母材1PPを形成する工程である。本実施形態では、
図2に示す中間母材1PPが形成されるように、ガラス微粒子を多層に堆積させて多孔質ガラス体を形成し、当該多孔質ガラス体を焼結する。ガラス微粒子を堆積させる方法として、例えば、OVD法、VAD法が挙げられ、本実施形態ではVAD法によってガラス微粒子を堆積させて多孔質ガラス体を形成する。
【0027】
<設定工程P2>
本工程は、後述するガラス層形成工程P3において形成する第2ガラス層22の外径を設定する工程である。
図4は、本実施形態における本工程のフローチャートである。
図4に示すように、本工程は、ステップSP21~SP25を含む。
【0028】
(ステップSP21)
本ステップは、中間母材形成工程P1によって形成される中間母材1PPの屈折率分布を、プリフォームアナライザを用いて測定するステップである。プリフォームアナライザは、レーザ光を中間母材1PPの長手方向と垂直な方向から入射させると共に中間母材1PPの径方向に走査させて、中間母材1PPから出射するレーザ光が屈折する角度を測定することで、中間母材1PPの屈折率分布を測定する。本実施形態では、プリフォームアナライザにおけるレーザ光のパワーのピーク波長は632nmであり、中間母材1PPに入射する際のレーザ光の直径は概ね30μmであるが、プリフォームアナライザは制限されるものではない。また、本実施形態における屈折率分布は、中間母材1PPの中心から径方向への距離を中間母材1PPの外径で割ることによって正規化された径方向の位置を横軸とし、測定された屈折率を中間母材1PPの外周縁部での屈折率で割ることによって正規化された比屈折率Δ(%)を縦軸としたグラフである。なお、屈折率分布は、制限されるものではなく、例えば、横軸は、中間母材1PPの中心から径方向への距離であってもよい。また、縦軸は、測定された屈折率を純粋石英ガラスの屈折率で割ることによって正規化された比屈折率Δ(%)であってもよく、測定された屈折率であってもよい。
【0029】
(ステップSP22)
本ステップは、ステップSP21の後に行うステップであり、ステップSP21で得られた中間母材1PPの屈折率分布が正常であるか否かを判断するステップである。前述のように、中間母材1PPはガラス微粒子が多層に堆積された多孔質ガラス体が焼結されたものである。このため、中間母材1PPの屈折率分布には脈理が生じ、プリフォームアナライザのレーザ光がこの脈理によって回折等して、測定される屈折率分布に乱れが生じ、屈折率分布を正常に測定できないことがある。本ステップでは、中間母材1PPの屈折率分布に脈理による乱れが生じずに、屈折率分布が正常であるか否かを判断する。当該判断は、作業者が行ってもよく、マイクロコントローラ等の装置によって行ってもよい。
【0030】
(ステップSP23)
本ステップは、ステップSP22において中間母材1PPの屈折率分布が正常であると判断する場合に行うステップである。本ステップでは、ステップSP21において得られる中間母材1PPの屈折率分布に基づいて、中間母材1PPの外径に対するコアガラス体10Pの外径の比等を求めて、中間母材1PPの外径に対する第2ガラス層22の外径の比を設定する。本実施形態では、第2ガラス層22が形成された中間母材1PPの屈折率分布が
図1に示す光ファイバ用母材1Pの屈折率分布と同じとなるように、上記の比を設定する。
【0031】
(ステップSP24)
本ステップは、ステップSP22において中間母材1PPの屈折率分布が正常でないと判断する場合に行うステップである。本ステップでは、屈折率分布のプロファイルが中間母材1PPの屈折率分布のプロファイルと類似し、屈折率分布をプリフォームアナライザで正常に測定可能な参照母材を準備する。そして、当該参照母材の屈折率分布を、プリフォームアナライザを用いて測定する。なお、中間母材1PPの屈折率分布のプロファイルと類似するプロファイルとして、例えば、中間母材1PPの屈折率分布のプロファイルを半径方向に縮小したプロファイルと概ね同じものが挙げられる。
【0032】
本実施形態では、参照母材は、上記の中間母材形成工程P1と同じ条件及び同じ装置で形成された別の中間母材を長手方向に延伸したガラス部材である。この参照母材は、中間母材1PPと同様に、コアガラス体10Pと第1ガラス層21とから成る。また、参照母材の外径は中間母材1PPの外径より小さいが、参照母材の屈折率分布のプロファイルは、中間母材1PPの屈折率分布のプロファイルを延伸倍率に応じて半径方向に縮小したプロファイルと概ね同じになる。つまり、中心から径方向への距離を参照母材の外径で割ることによって正規化された径方向の位置が横軸である参照母材の屈折率分布と、中心から径方向への距離を中間母材1PPの外径で割ることによって正規化された径方向の位置が横軸である中間母材1PPの屈折率分布とが概ね同じになる。また、参照母材の屈折率分布における脈理の周期は、中間母材1PPの屈折率分布における脈理の周期より短く、参照母材の屈折率分布の測定結果に脈理による乱れがなくなるほどに短い。つまり、屈折率分布の測定結果に脈理による乱れがなくなるように、別の中間母材を延伸する。本実施形態の参照母材は、外径が60mmの別の中間母材の外径を、外径が30mmと成るように延伸したガラス部材であるが、別の中間母材の延伸の程度は、制限されるものではない。例えば、外径が0.5倍以下となるように別の中間母材を延伸して、参照母材を形成する。
【0033】
図5は、測定された中間母材1PPの屈折率分布、及び参照母材の屈折率分布を示す図である。
図5において、中間母材1PPの屈折率分布は実線で示され、参照母材の屈折率分布は点線で示されている。また、横軸は、中間母材1PPの中心から径方向への距離を中間母材1PPの外径で割ることによって正規化された径方向の位置であり、縦軸は、測定された屈折率を中間母材1PPの外周縁部での屈折率で割ることによって正規化された比屈折率Δ(%)である。
図5に示す中間母材1PPの屈折率分布では、比屈折率Δが負の値まで急峻に減少し、正常でない屈折率分布である範囲EAがある。これは、中間母材1PPの屈折率分布の測定結果に脈理による乱れが生じているためと考えられる。
【0034】
(ステップSP25)
本ステップは、ステップSP24の後に行うステップである。本ステップでは、ステップSP24において測定した参照母材の屈折率分布に基づいて、参照母材の外径に対する当該参照母材におけるコアガラス体10Pの外径の比等を求めて、参照母材の外径に対する第2ガラス層22の外径の比を設定する。本実施形態では、第2ガラス層22が形成された参照母材の屈折率分布のプロファイルが
図1に示す光ファイバ用母材1Pの屈折率分布のプロファイルを参照母材の作製時の延伸倍率に応じて半径方向に縮小したプロファイルと同じとなるように、上記の比を設定し、当該比を中間母材1PPにおける比とする。
【0035】
このように、本実施形態では、中間母材1PPの屈折率分布を正常に測定できる場合、中間母材1PPの屈折率分布に基づいて中間母材1PPの外径に対する第2ガラス層22の外径の比を設定する。また、中間母材1PPの屈折率分布を正常に測定できない場合、屈折率分布のプロファイルが中間母材1PPの屈折率分布のプロファイルと類似する参照母材のプリフォームアナライザで正常に測定された屈折率分布に基づいて上記の比を設定する。
【0036】
<ガラス層形成工程P3>
本工程は、中間母材1PPの第1ガラス層21の外周面にガラス微粒子を堆積させて第1ガラス層21の外周面を囲う被覆多孔質ガラス体を形成し、被覆多孔質ガラス体を焼結して、クラッドガラス体11Pの他の一部となる第2ガラス層22を形成する工程である。被覆多孔質ガラス体を形成する際には、中間母材1PPの外径に対する第2ガラス層22の外径の比が設定工程P2で設定された値となるように、OVD法によって第1ガラス層21の外周面にガラス微粒子を堆積させて、被覆多孔質ガラス体を形成する。
【0037】
上記のように、設定工程P2では、測定した中間母材1PPの屈折率分布が正常である場合、当該中間母材1PPの屈折率分布に基づいて、第2ガラス層22が形成された中間母材1PPの屈折率分布が
図1に示す光ファイバ用母材1Pの屈折率分布と同じとなるように、上記の比が設定される。このため、第2ガラス層22が形成されることによって、第1ガラス層21及び第2ガラス層22から成る部位が光ファイバ用母材1Pのクラッドガラス体11Pとなり、光ファイバ用母材1Pが得られる。
【0038】
また、設定工程P2では、測定した中間母材1PPの屈折率分布が正常でない場合、第2ガラス層22が形成された参照母材の屈折率分布のプロファイルが
図1に示す光ファイバ用母材1Pの屈折率分布のプロファイルを参照母材の作製時の延伸倍率に応じて半径方向に縮小したプロファイルと同じとなるように、上記の比が設定される。前述のように参照母材の屈折率分布のプロファイルは中間母材1PPの屈折率分布のプロファイルを半径方向に縮小したプロファイルと概ね同じになる。このため、参照母材の外径に対する当該参照母材におけるコアガラス体10Pの外径の比は、中間母材1PPの外径に対する当該中間母材1PPにおけるコアガラス体10Pの外径の比と概ね同じとなる。このため、測定した中間母材1PPの屈折率分布が正常でない場合に設定工程P2で設定される上記の比は、測定した中間母材1PPの屈折率分布が正常な場合に設定される当該比と概ね同じとなる。このため、この場合においても、第2ガラス層22が形成されることによって、第1ガラス層21及び第2ガラス層22から成る部位が光ファイバ用母材1Pのクラッドガラス体11Pとなり、光ファイバ用母材1Pが得られる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態の光ファイバ用母材の製造方法は、中間母材形成工程P1及びガラス層形成工程P3を備える。光ファイバ用母材1Pは、ロッド状のコアガラス体10P、及びコアガラス体10Pの外周面を囲うクラッドガラス体11Pを含む。中間母材形成工程では、多孔質ガラス体を焼結して、コアガラス体10Pとクラッドガラス体11Pの一部である第1ガラス層21とから成る中間母材1PPを形成する。ガラス層形成工程P3では、第1ガラス層21の外周面にガラス微粒子を堆積させて被覆多孔質ガラス体を形成し、当該被覆多孔質ガラス体を焼結して、クラッドガラス体11Pの他の一部となる第2ガラス層22を形成する。そして、プリフォームアナライザで中間母材1PPの屈折率分布が正常に測定できない場合、ガラス層形成工程P3では、中間母材1PPの外径に対する第2ガラス層22の外径の比が、プリフォームアナライザで正常に測定された参照母材の屈折率分布に基づいて設定される値となるように、第1ガラス層21の外周面にガラス微粒子を堆積させる。この参照母材の屈折率分布のプロファイルは、中間母材1PPの屈折率分布のプロファイルと類似し、参照母材は、中間母材形成工程P1と同じ条件及び同じ装置で形成された別の中間母材を延伸したガラス部材である。
【0040】
このため、前述のように、上記の比は、測定した中間母材1PPの屈折率分布が正常な場合に設定される当該比と概ね同じとなる。従って、本実施形態の光ファイバ用母材の製造方法によれば、プリフォームアナライザによって測定した屈折率分布の測定結果に脈理による乱れが生じるような中間母材1PPであっても、この乱れが生じなくなるような中間母材1PPの延伸をせずに上記の比を設定できる。従って、本実施形態の光ファイバ用母材の製造方法によれば、製造される光ファイバ用母材の径が小さくなることを抑制し得、光ファイバの生産性の低下を抑制し得る。また、本実施形態の光ファイバ用母材の製造方法によれば、参照母材を容易に準備できる。
【0041】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。本実施形態の光ファイバ用母材の製造方法では、設定工程P2のステップSP24が第1実施形態におけるステップSP24と異なる。このため、以下では、ステップSP24の説明をし、他のステップの説明については省略する。
【0042】
本実施形態のステップSP24では、第1実施形態における参照母材と異なる参照母材を準備する。本実施形態のステップSP24では、中間母材1PPの長手方向の一端部を切断し、長尺な他端部側を中間母材1PPとする。このため、短尺な他端部側は、中間母材1PPから切り離された中間母材1PPの一部であり、当該一部を延伸したガラス部材を参照母材とする。そして、この参照母材の屈折率分布を、プリフォームアナライザを用いて測定する。本実施形態の参照母材は、中間母材1PPと同様に、コアガラス体10Pと第1ガラス層21とから成る。また、参照母材の外径は中間母材1PPの外径より小さく、参照母材の屈折率分布のプロファイルは、中間母材1PPの屈折率分布のプロファイルを半径方向に縮小したプロファイルと概ね同じとなる。また、参照母材の屈折率分布における脈理の周期は、中間母材1PPの屈折率分布における脈理の周期より短く、ガラス部材の屈折率分布の測定結果に脈理による乱れがなくなるほどに短い。つまり、プリフォームアナライザによって屈折率分布を正常に測定できるように、中間母材1PPの一部を延伸する。例えば、外径が0.5倍以下となるように中間母材1PPの一部を延伸して、参照母材を形成する。そして、プリフォームアナライザによって当該参照母材の屈折率分布を測定する。
【0043】
本実施形態の光ファイバ用母材の製造方法によれば、第1実施形態と同様に、屈折率分布の測定結果に脈理による乱れが生じるような中間母材1PPであっても、乱れが生じなくなるような中間母材1PPの全体の延伸をせずに、中間母材1PPの外径に対する第2ガラス層22の外径の比を設定できる。また、中間母材1PPの一部を延伸したガラス部材の屈折率分布のプロファイルは、中間母材1PPと同じ条件及び同じ装置で形成された別の中間母材を延伸したガラス部材の屈折率分布のプロファイルより、中間母材1PPの屈折率分布のプロファイルを参照母材の作製時の延伸倍率に応じて半径方向に縮小したプロファイルに酷似する傾向にある。これは、例えば、中間母材1PPと同じ条件及び同じ装置で別の中間母材を形成しても、ガラス微粒子の堆積の仕方等に僅かな差異が生じるためである。このため、本実施形態の光ファイバ用母材の製造方法によれば、中間母材1PPと同じ条件及び同じ装置で形成された別の中間母材を延伸したガラス部材が参照母材である場合と比べて、上記の比をより適切な値にし得る。
【0044】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。本実施形態の光ファイバ用母材の製造方法では、設定工程P2が第1実施形態の設定工程P2と異なる。
【0045】
図示による説明は省略するが、本実施形態の設定工程P2は、ステップSP24を含まない。また、本実施形態では、ステップSP22において中間母材1PPの屈折率プロファイルに異常が生じていると判断する場合にステップSP25を行うと共に、当該ステップSP25が第1実施形態のステップSP25と異なる。このため、以下では、ステップSP25の説明をし、他のステップの説明については省略する。
【0046】
本実施形態では、中間母材1PPの屈折率プロファイルに類似する複数の参照母材の屈折率プロファイルから得られる相関関係に基づいて、中間母材1PPの外径に対する第2ガラス層の外径の比を設定する。本実施形態の複数の参照母材は、第1実施形態と同様に、中間母材形成工程P1と同じ条件及び同じ装置で形成された複数の別の中間母材のそれぞれを屈折率分布の測定結果に脈理による乱れがなくなるように長手方向に延伸した複数のガラス部材である。このため、これら参照母材は、中間母材1PPと同様に、コアガラス体10Pと第1ガラス層21とから成り、これら参照母材の屈折率分布のプロファイルは、中間母材1PPの屈折率分布のプロファイルに類似する。また、これら参照母材の屈折率分布は、プリフォームアナライザによって正常に測定できる。本実施形態では、これら参照母材を予め準備し、それぞれの参照母材の屈折率分布を、プリフォームアナライザを用いて測定する。
【0047】
プリフォームアナライザでは中間母材1PPを径方向に横断するようにレーザ光を走査するため、
図5に示すように、屈折率分布の測定結果のうち、脈理による乱れが生じた箇所より外側は正常な屈折率分布となり、当該箇所より中心側が正常でない屈折率分布となる。このため、正常に測定された範囲の屈折率分布のプロファイルは、参照母材におけるこの範囲に対応する範囲の屈折率分布のプロファイルと類似する。本発明者は、類似するこれらプロファイルと、参照母材の屈折率分布に基づいて設定される中間母材の外径に対する第2ガラス層の外径の比との関係について鋭意研究を重ねた。その結果、中間母材及び参照母材の屈折率分布が、屈折率の変化に基づく所定の特徴を有する特徴部を含む場合、それぞれの参照母材の半径に対する当該参照母材の中心から当該参照母材における上記の特徴部までの距離の比と、それぞれの参照母材の屈折率分布に基づいて設定される中間母材1PPの外径に対する第2ガラス層22の外径の比との相関関係が概ね比例関係であることを見出した。このため、中間母材における正常に測定された範囲に上記の特徴部がある場合、上記の相関関係に基づいて中間母材1PPの外径に対する第2ガラス層22の外径の比を設定できる。
【0048】
本実施形態では、
図5に示すように、中間母材1PPの屈折率分布のうち正常に測定された範囲では、外側から中心に向かって比屈折率Δが増加し、ある地点から中心側では比屈折率Δの変化率が大きくなる。このような特徴を鑑みて、本実施形態では、上記の特徴部を、半径方向における外側から中心に向かって比屈折率Δが初めて所定値となる部位PT1とする。また、所定値は、この部位PT1が比屈折率Δの変化率が大きくなる部位PT2より中心側となる値とし、
図5には所定値を示す一点鎖線が示されている。本実施形態では、特徴部を上記の部位PT1として、上記の相関関係を求める。
【0049】
図6は、それぞれの参照母材の半径に対する当該参照母材の中心から当該母材における特徴部までの距離の比と、それぞれの参照母材の屈折率分布に基づいて設定される中間母材1PPの外径に対する第2ガラス層22の外径の比との関係を示すグラフである。
図6に示すように、これら2つの比には、概ね比例関係である相関関係があり、
図6には、この比例関係を示す直線が破線で示されている。本実施形態では、中間母材1PPの外径に対する第2ガラス層22の外径の比を、この相関関係に基づいて設定する。このように、本実施形態の光ファイバ用母材の製造方法によれば、屈折率分布の測定結果に脈理による乱れが生じるような中間母材1PPであっても、乱れが生じなくなるような中間母材1PPの延伸をせずに、中間母材1PPの外径に対する第2ガラス層22の外径の比を設定できる。
【0050】
なお、屈折率の変化に基づく所定の特徴を有する特徴部は、制限されるものではない。この特徴部は、屈折率の変化に基づいて一意に決まる部位であり、中間母材1PPの当該特徴部が測定可能な範囲に位置していればよい。
【0051】
以上、本発明について、上記実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0052】
例えば、上記実施形態では、本体部としてのコアガラス体10Pと外側部としてのクラッドガラス体11Pとを含む光ファイバ用母材1Pを例に説明した。しかし、光ファイバ用母材1Pは、ロッド状の本体部、及び当該本体部と異なる屈折率を有し本体部の外周面を囲う外側部を含んでいればよい。
【0053】
例えば、本体部は、ロッド状の内側コアガラス体と当該内側コアガラス体より低い屈折率を有し当該内側コアガラス体の外周面を囲う外側コアガラス体とからなっていてもよい。この場合、コアの屈折率分布が中心に向かって段階的に高くなる光ファイバを製造できる。また、この場合、本体部が内側コアガラス体から成り、外側部が外側コアガラス体とクラッドガラス体11Pとから成っていてもよい。この場合、例えば、中間母材1PPにおける第1ガラス層21が外側コアガラス体の一部であり、ガラス層形成工程P3で形成される第2ガラス層22が外側コアガラス体の残りの部分及びクラッドガラス体11Pであってもよい。また、第1ガラス層21が外側コアガラス体の全体及びクラッドガラス体11Pの一部であり、第2ガラス層22がクラッドガラス体11Pの残りの部分であってもよい。
【0054】
また、外側部は、例えば、本体部の外周面を囲う内側クラッドガラス体と当該内側クラッドガラス体と屈折率の異なり当該内側クラッドガラス体の外周面を囲う外側クラッドガラス体から成っていてもよい。この場合、例えば、中間母材1PPにおける第1ガラス層21が内側クラッドガラス体の一部であり、ガラス層形成工程P3で形成される第2ガラス層22が内側クラッドガラス体の残りの部分及び外側クラッドガラス体であってもよい。また、第1ガラス層21が内側クラッドガラス体の全体及び外側クラッドガラス体の一部であり、第2ガラス層22が外側クラッドガラス体の残りの部分であってもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、中間母材の外径に対する第2ガラス層の外径の比を、第2ガラス層22が形成されることで光ファイバ用母材1Pが得られるような比となるように設定する設定工程P2を例に説明した。しかし、上記の比は、光ファイバ用母材1Pが得られるような比よりも小さくてもよい。この場合、例えば、第2ガラス層22が形成された中間母材1PPに対して、設定工程P2、及びガラス層形成工程P3を少なくとも1回行うことで、光ファイバ用母材1Pを得ることができる。
【0056】
また、第1及び第3実施形態の参照母材は、中間母材形成工程P1と同じ条件及び同じ装置で形成された別の中間母材を延伸したガラス部材であった。しかし、第1及び第3実施形態では、参照母材は、プリフォームアナライザで正常に屈折率分布を測定可能であり、屈折率分布のプロファイルが中間母材1PPの屈折率分布のプロファイルと類似するガラス部材であればよく、制限されるものではない。参照母材として、例えば、中間母材形成工程P1と同じ条件及び同じ装置で同じ日に形成された別の中間母材を延伸したガラス部材、別の日に形成された当該ガラス部材、中間母材形成工程P1と同じ条件であるが別の装置で形成された中間母材を延伸したガラス部材等が挙げられる。また、このような参照母材の屈折率分布をプリフォームアナライザで測定する場合の径方向の測定間隔を、中間母材1PPの場合と比べて広くしてもよい。このようにすることで、得られる参照母材の屈折率分布の測定結果が粗くなり、当該測定結果に脈理による乱れが生じにくくし得る。
【0057】
また、第1及び第2実施形態では、ステップSP21からステップSP25を含む設定工程P2を例に説明した。しかし、第1及び第2実施形態では、ステップSP21、ステップSP22、及びステップSP23が省略されてもよい。つまり、中間母材1PPの屈折率分布を測定せずに、参照母材の屈折率分布に基づいて中間母材の外径に対する第2ガラス層の外径の比を設定してもよい。
【0058】
また、光ファイバ用母材の製造方法は、設定工程P2の前に中間母材1PPを延伸する工程を備えていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上説明したように、本発明によれば、光ファイバの生産性の低下を抑制し得る光ファイバ用母材の製造方法が提供され、光ファイバ通信等の分野で利用することが期待される。
【符号の説明】
【0060】
1P・・・光ファイバ用母材
1PP・・・中間母材
10P・・・コアガラス体(本体部)
11P・・・クラッドガラス体(外側部)
21・・・第1ガラス層
22・・・第2ガラス層
P1・・・中間母材形成工程
P2・・・設定工程
P3・・・ガラス層形成工程