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特開2024-113865耐食鋼の成分探索装置、耐食鋼の成分探索方法、およびプログラム
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  • 特開-耐食鋼の成分探索装置、耐食鋼の成分探索方法、およびプログラム 図1
  • 特開-耐食鋼の成分探索装置、耐食鋼の成分探索方法、およびプログラム 図2
  • 特開-耐食鋼の成分探索装置、耐食鋼の成分探索方法、およびプログラム 図3
  • 特開-耐食鋼の成分探索装置、耐食鋼の成分探索方法、およびプログラム 図4
  • 特開-耐食鋼の成分探索装置、耐食鋼の成分探索方法、およびプログラム 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113865
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】耐食鋼の成分探索装置、耐食鋼の成分探索方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G16C 60/00 20190101AFI20240816BHJP
【FI】
G16C60/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019110
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 悠
(72)【発明者】
【氏名】富尾 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】西本 工
(72)【発明者】
【氏名】筒井 和政
(72)【発明者】
【氏名】長澤 慎
(72)【発明者】
【氏名】児玉 正行
(72)【発明者】
【氏名】澤田 真也
(72)【発明者】
【氏名】川端 紀正
(57)【要約】
【課題】より広範に成分を探索することができる耐食鋼の成分探索装置、耐食鋼の成分探索方法、およびプログラムを提供する。
【解決手段】合金の成分を示すデータと前記合金の耐食性を示すデータとからなるデータセットに基づいて、合金の成分から合金の耐食性を予測する予測モデルを生成する予測モデル生成部と、合金の成分を示すデータを含む複数の探索候補から、前記予測モデルにより計算される獲得関数が最も大きい探索候補を探索対象として選択する探索対象選択部と、前記選択された複数の探索対象を複数のクラスタにクラスタリングするクラスタリング部と、前記クラスタにおける代表となる成分を決定する代表決定部と、を備える耐食鋼の成分探索装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合金の成分を示すデータと前記合金の耐食性を示すデータとからなるデータセットに基づいて、合金の成分から合金の耐食性を予測する予測モデルを生成する予測モデル生成部と、
合金の成分を示すデータを含む複数の探索候補から、前記予測モデルにより計算される獲得関数が最も大きい探索候補を探索対象として選択する探索対象選択部と、
前記選択された複数の探索対象を複数のクラスタにクラスタリングするクラスタリング部と、
前記クラスタにおける代表となる成分を決定する代表決定部と、
を備える耐食鋼の成分探索装置。
【請求項2】
前記探索対象選択部により選択された探索対象及び前記探索対象から予測される耐食性に基づいて、前記予測モデルを更新する予測モデル更新部と
をさらに備える請求項1に記載の耐食鋼の成分探索装置。
【請求項3】
前記合金の成分を示すデータは、合金の元素濃度、組織の占有率、又は介在物の大きさや濃度を含む、
請求項1に記載の耐食鋼の成分探索装置。
【請求項4】
前記合金の耐食性を示すデータは、合金の腐食速度又は強度である、
請求項1に記載の耐食鋼の成分探索装置。
【請求項5】
合金の成分を示すデータと前記合金の耐食性を示すデータとからなるデータセットに基づいて、合金の成分から合金の耐食性を予測する予測モデルを生成するステップと、
合金の成分を示すデータを含む複数の探索候補から、前記予測モデルにより計算される獲得関数が最も大きい探索候補を探索対象として選択するステップと、
前記選択された複数の探索対象を複数のクラスタにクラスタリングするステップと、
前記クラスタにおける代表となる成分を決定するステップと、
を有する耐食鋼の成分探索方法。
【請求項6】
コンピュータに請求項5に記載の方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐食鋼の成分探索装置、耐食鋼の成分探索方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
耐食鋼の製造においては、合金に含まれる元素の割合などを調整することで耐食性を向上させる研究が行われている。元素の割合など合金の成分は、しばしば研究者による経験に基づいて決定される。特に、耐食鋼の合金設計においては使用環境に応じて耐食性を担保すべきpHが異なるため、C, P, Ti, Cr, Ni, Cu等の種々の添加元素の添加量が時に大きく変動する。しかるに、新規の耐食鋼の開発においては、効率的かつ経済的な合金設計法が確立されていない。さらに、耐食鋼の利便性を向上させる目的で、複数のpHに対して優れた合金成分を探索するには、合金成分として含ませる元素単独の影響や複数の元素同士の相互作用の影響が環境によって異なってしまうため、膨大な量の組成の組み合わせでの探索および最適化が必要となる。
【0003】
例えば、典型的な耐食鋼の一つである高Crフェライト系ステンレス鋼は、酸化性環境(低pH)においては不働態化が促進されることで優れた耐食性を示すことが知られている。一方、高Crフェライト系ステンレス鋼は、還元性環境下(高pH)での腐食抵抗性がオーステナイト系ステンレス鋼に劣ることが知られているが、Moを添加することによって腐食抵抗性が改善されることが知られている。さらに、高Crフェライト系ステンレス鋼にCを添加した際にしばしば生ずる粒界部の選択腐食を防ぐ目的で、NbやTiの添加を行うことが有効である。このことは、NbCやTiCなどの析出物を優先的に生じさせることで、粒界近傍のCrの欠乏を阻害する働きをもつことによる。このように、耐食性は使用環境に応じて添加元素の種類、および添加量に依存した種々の化学反応、もしくは物理的な機構の複合、もしくは競合によってその多寡が決定される。すなわち、耐食鋼の耐食性は、添加元素の種類や添加量のわずかな変動に大きく左右される。特に、複数の環境下での耐食性の具備を志向する際には、それらの適性範囲をより慎重に見極める必要がある。
【0004】
耐食鋼の設計においては、複数の合金を調製した後、それらを適切な条件に設計された環境に曝すことでそれらの耐食性の具備如何を検証する。したがって、耐食鋼の合金設計においては、同時に複数の候補組成を検証可能であり、候補組成を何らかの方法で合理的に推定もしくは取得できる方法が強く望まれている。しかしながら、現状、そのような方法は提案されているとはいいがたい。
【0005】
一方、近年では機械学習あるいは数値的最適化技術に基づく種々の合金の設計方法が提案されている。例えば、特許文献1においては、カーネル法を活用したガウス過程回帰モデルを利用し、カーネルからの勾配を解析的もしくは数値的に算出した値を、UCB,EI,PIなどに代表される獲得関数と組み合わせることで、複数の機械的もしくは化学的特性を具備する合金の製造方法が提案されている。このような方法はベイズ最適化とも呼ばれる。しかしながら、獲得関数に勾配を組み込むことは探索ステップにおける勾配消失や勾配発散を伴う可能性が高く、添加元素の数が2種類以上となりうるような1種類以上の微量元素の添加を必要とする複数の環境への耐食性を備える合金設計のためには、適切な運用が困難な場合がある。さらには、多目的最適化において算出される探索候補の合金成分は、獲得関数のスコア、すなわち多寡により提示されるが、類似の組成が上位の候補に多く含まれてしまうことが課題となる。
【0006】
また、特許文献2においては、主に鉄鋼製品を対象とし、その製造時に生じる製品データの不均一性(同一製品に対する特性値の誤差)に着目し、それらを考慮した上での製品の不均一性をおさえつつ所望の特性を獲得しうる、機械学習法を基礎とした製造方法が提案されている。特許文献2に開示された方法は、データの不均一性への対処に立脚した方法であり、耐食鋼の設計においては前述した耐食性の測定方法において、同一組成の試料を複数調製し同時に検証することによって、データの不均一性に対処することができる。しかしながら、特許文献1と同様に、特許文献2によって選定される製造方法、すなわち合金組成は、類似の数値が算出されることがしばしば生ずる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-52737号公報
【特許文献2】特許第7028316号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Jin, X., Han, J. (2011). K-Means Clustering. In: Sammut, C., Webb, G.I. (eds) Encyclopedia of Machine Learning. Springer, Boston, MA.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1及び2に開示された方法においては、前述のように類似の組成が出力されてしまい、合金の組成の探索には適していない。
本発明の目的は、より広範に成分を探索することができる耐食鋼の成分探索装置、耐食鋼の成分探索方法、およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、合金の成分を示すデータと前記合金の耐食性を示すデータとからなるデータセットに基づいて、合金の成分から合金の耐食性を予測する予測モデルを生成する予測モデル生成部と、合金の成分を示すデータを含む複数の探索候補から、前記予測モデルにより計算される獲得関数が最も大きい探索候補を探索対象として選択する探索対象選択部と、前記選択された複数の探索対象を複数のクラスタにクラスタリングするクラスタリング部と、前記クラスタにおける代表となる成分を決定する代表決定部と、を備える耐食鋼の成分探索装置である。
【0011】
本発明の一態様は、合金の成分を示すデータと前記合金の耐食性を示すデータとからなるデータセットに基づいて、合金の成分から合金の耐食性を予測する予測モデルを生成するステップと、合金の成分を示すデータを含む複数の探索候補から、前記予測モデルにより計算される獲得関数が最も大きい探索候補を探索対象として選択するステップと、前記選択された複数の探索対象を複数のクラスタにクラスタリングするステップと、前記クラスタにおける代表となる成分を決定するステップと、を有する耐食鋼の成分探索方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、より広範に成分を探索することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係る成分探索装置1の構成を示す図である。
図2】データセットの一例を示す図である。
図3】探索候補となる合金のデータの一例を示す図である。
図4】成分探索装置1の動作を示すフローチャートである。
図5】記憶部14に記憶される探索対象・耐食性14Cを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本実施形態に係る成分探索装置1の構成を示す図である。
成分探索装置は、データセット取得部10、予測モデル生成部12、記憶部14、探索候補取得部16、探索対象選択部18、探索対象記録部19、予測モデル更新部20、クラスタリング部22、代表決定部23、出力部24を備える。記憶部14はデータセット14A、予測モデル14Bや探索対象・耐食性14Cを記憶する。
【0015】
データセット取得部10は、データセットを取得する。データセットは、合金の成分を示すデータと合金の耐食性を示すデータとが結び付けられたデータを含む。合金の成分を示すデータは、例えば合金の元素濃度、組織の占有率、又は介在物の大きさや濃度である。組織の占有率は例えば、合金におけるフェライトの面積率又はパーライトの面積率である。介在物の大きさは、例えば合金におけるMnSの粒径である。介在物の濃度は、例えば合金におけるCaSの面積当たりの個数である。
合金の耐食性を示すデータは、例えば合金の腐食速度又は強度である。強度は、例えば引張強度又はブリネル硬さを含む。合金の耐食性を示すデータは、複数の異なる環境における耐食性を示すデータを含んでもよい。異なる環境とは、例えば、合金の周囲のpH、酸素濃度、NaCl濃度、温度や合金の乾湿繰り返し条件を含む。
【0016】
図2は、データセットの一例を示す図である。図2に示すデータセットにおいて、合金の成分を示すデータ(x)は、元素の含有量である。図2に示すデータセットにおいて、合金の耐食性を示すデータ(y)は、腐食速度である。合金の成分を示すデータに含まれる元素の数をn(図2においてはn=12)とすると、データセットの各データ(x、y)は(n+1)次元のベクトルで表現される。
【0017】
データセット取得部10は、取得したデータセットを記憶部14に記録する。記憶部14は、記録されたデータセットをデータセット14Aとして記憶する。
【0018】
予測モデル生成部12は、データセットに基づいて予測モデルを生成する。予測モデルは、合金の成分から合金の耐食性を予測するモデルである。予測モデル生成部12は、例えばデータセットからガウス過程回帰を用いることで予測モデルを生成する。
予測モデル生成部12は、生成した予測モデルを記憶部14に記録する。記憶部14は、生成された予測モデルを予測モデル14Bとして記憶する。
【0019】
探索候補取得部16は、探索候補となる合金のデータを取得する。探索候補となる合金のデータは、合金の成分を示すデータを含むが、合金の耐食性を示すデータを含まない。図3は、探索候補となる合金のデータの一例を示す図である。図3に示す合金のデータにおいて、合金の成分を示すデータ(x’)は、元素の含有量である。
【0020】
探索対象選択部18は、探索候補となる合金の中から探索対象の合金を選択する。探索対象選択部18は、例えば予測モデル14Bを用いて各探索候補の合金のデータの獲得関数を計算し、最適な獲得関数が計算された探索候補の合金を探索対象の合金として選択する。獲得関数は例えばEI(Expected Improvement) scoreである。
また、探索対象選択部18は、予測モデル14Bを用いて探索対象である合金の耐食性を予測する。
【0021】
探索対象記録部19は、探索対象となる合金のデータを予測された耐食性とともに記憶部14に記録する。探索対象となる合金のデータと予測された耐食性とは、探索対象・耐食性14Cとして記憶部14に記憶される。
【0022】
予測モデル更新部20は、記憶部14に記憶されたデータセット14A及び探索対象・耐食性14Cに基づいて予測モデル14Bを更新する。予測モデル更新部20は、予測モデル生成部12と同様に、例えばデータセット14A及び探索対象・耐食性14Cからガウス過程回帰を用いることで予測モデル14Bを更新する。
【0023】
所定の条件を満たすまで、探索対象選択部18が探索対象を選択し、探索対象の耐食性を予測し、探索対象記録部19が探索対象と予測された耐食性を記録し、予測モデル更新部20が予測モデル14Bを更新する。これにより、記憶部14に記憶される探索対象と耐食性のデータが増加し、予測モデル14Bはより多くの合金の成分と合金の耐食性のデータに基づいて更新されることができる。そのため、実際に測定した耐食性のデータ数が少ない場合であっても、予測した耐食性を含むデータにより予測モデル14Bが更新され、より正確な予測をすることができる。
所定の条件は、例えば記憶部14に記憶される探索対象と耐食性のデータの数が所定の数以上であることである。所定の条件は、予測モデル14Bにより予測された耐食性が所定の値よりも小さいときであってもよい。
【0024】
クラスタリング部22は、探索対象・耐食性14Cをクラスタリングする。クラスタリング部22は、例えば非特許文献1に開示されているk-means法により探索対象・耐食性14Cを複数のクラスタに割り当てる。
クラスタリング部22によるクラスタリング手法はk-means法に限られない。例えば、k-medoids clustering、k-ways spectral clustering、又はkernel method-based clustering(kernel k-means method)などの方法により探索対象・耐食性14Cをクラスタリングしてもよい。また、クラスタリング部22は複数のクラスタリング手法を並行して使用し、クラスタリングした結果を比較してもよい。クラスタリングした結果の比較により、各クラスタの重心の妥当性や外れ値の有無を検討することができる。
【0025】
また、合金の成分を示すデータの種類が多い、つまり、クラスタリングにおける次元が多い場合には、より複雑なクラスタリング法であるk-ways spectral clustering、又はkernel method-based clusteringがより好ましい。
【0026】
代表決定部23は、各クラスタにおける代表となる合金の成分を決定する。クラスタにおける代表となる合金の成分は、例えばクラスタの重心座標に相当する合金の成分又はクラスタの中心座標に相当する合金の成分である。クラスタにおける代表となる合金の成分は、当該クラスタに割り当てられた探索対象となる合金のデータであってもよい。
【0027】
出力部24は、成分探索装置1による探索結果を出力する。探索結果は、例えば各クラスタにおける代表となる合金の成分である。耐食鋼を用いて耐食性の実験を行う者は、各クラスタにおける代表となる合金の成分を満たす耐食鋼を作成し、耐食性の実験を行う。実験者は各クラスタにおける代表となる合金の成分を満たす耐食鋼を作成することで、より大域的に成分ごとの耐食性を探索することができる。
探索結果には、探索対象・耐食性14C及び割り当てられたクラスタであってもよい。耐食鋼を用いて耐食性の実験を行う者は、例えば各クラスタから探索対象と予測された耐食性を1つ選択し、選択された探索対象それぞれを満たす耐食鋼を作成し、耐食性の実験を行ってもよい。
【0028】
図4は、成分探索装置1の動作を示すフローチャートである。初めにデータセット取得部10がデータセットを取得する(ステップS101)。予測モデル生成部12がデータセットに基づいて予測モデルを生成する(ステップS102)。探索候補取得部16が探索候補を取得する(ステップS103)。その後、探索対象選択部18が、探索候補の中から探索対象を選択する(ステップS104)。さらに探索対象選択部18が、予測モデルを用いて探索対象の耐食性を予測する(ステップS105)。探索対象記録部19が、探索対象とその耐食性を記憶部14に記録する(ステップS106)。予測モデル更新部20が、データセットと記録された探索対象及び耐食性に基づいて予測モデルを更新する(ステップS107)。このとき、所定の終了条件を満たしている場合は、クラスタリング部22は、記録された探索候補をクラスタリングする(ステップS109)。その後、代表決定部23は、各クラスタにおける代表となる合金の成分を決定する(ステップS110)。その後、出力部24は、探索結果を出力する(ステップS111)。所定の終了条件を満たさない場合は、ステップS104からの動作を繰り返す。
【0029】
図5は、記憶部14に記憶される探索対象・耐食性14Cを示す図である。図5のAは、記憶部14に記憶される探索対象・耐食性14Cを、獲得関数(EI score)の高い順に並べた図の一例である。獲得関数の高い探索対象は、その合金の成分を示すデータが近似することが多い。図5のBは、各クラスタにおける代表となる合金の成分を示す図の一例である。各クラスタにおける代表となる合金の成分は、図5のAに示す合金の成分と比較して、データが近似しない。そのため、耐食鋼を用いて耐食性の実験を行う者は、各クラスタにおける代表となる合金の成分を満たす耐食鋼を作成し、耐食性の実験を行うことでより大域的に成分ごとの耐食性を探索することができる。
【0030】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【0031】
上述した実施形態における成分探索装置1の一部又は全部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記録装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものを含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。また、成分探索装置1の一部または全部は、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 成分探索装置、10 データセット取得部、12 予測モデル生成部、14 記憶部、16 探索候補取得部、18 探索対象選択部、19 探索対象記録部、20 予測モデル更新部、22 クラスタリング部、23 代表決定部、24 出力部
図1
図2
図3
図4
図5