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  • 特開-コンクリートスリット緊張部材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113996
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】コンクリートスリット緊張部材
(51)【国際特許分類】
   E04C 5/07 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
E04C5/07
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019328
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】515179358
【氏名又は名称】衛藤 武志
(71)【出願人】
【識別番号】305035093
【氏名又は名称】株式会社ビルドランド
(74)【代理人】
【識別番号】110003476
【氏名又は名称】弁理士法人瑛彩知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】衛藤 武志
【テーマコード(参考)】
2E164
【Fターム(参考)】
2E164AA05
2E164AA11
2E164BA06
(57)【要約】
【課題】緊張部材をコンクリート表層に形成されたスリット穴に差し込んでコンクリートと嵌合させることで緊結部材も定着構造も必要とせず、そのコンクリートの体積および質量を増すことなく鉄筋部材と同等の耐力をコンクリートに容易に付加する。
【解決手段】繊維強化プラスチックの緊張部材をコンクリート表層に形成されたスリット穴に差し込んでコンクリートと嵌合させることで、鉄筋部材と同等の耐力を床、壁、柱、天井の平面部位およびトンネルの曲面部位に付加でき緊張部材はコンクリート表面に露出しないコンクリートスリット緊張部材。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート表層に形成されたスリット穴に緊張部材を差し込んでコンクリートと嵌合させることでコンクリートに緊張力を付加することを特徴としたコンクリートスリット緊張部材。
【請求項2】
緊張部材に接着剤が塗布またはスリット穴に接着剤が塗布あるいは充填あるいはその両方の方法で緊張部材とスリット穴とが互いに接着されて嵌合されており、その接着剤は熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂で編成されている。請求項1に記載のコンクリートスリット緊張部材。
【請求項3】
緊張部材は、高ヤング率のフィラメント糸を所定の本数に束ねた無撚または有撚の繊維束を緯糸で連結して帯状に形成し一定量の熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を繊維に含侵して編成されている請求項1~2のいずれか1項に記載のコンクリートスリット緊張部材。
【請求項4】
緊張部材は複層にすることで応力の調整ができ、その層間に一定量の熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を塗布して編成することができる請求項1~3のいずれか1項に記載のコンクリートスリット緊張部材
【請求項5】
緊張部材を差し込むスリット穴の溝巾は緊張部材の両側に0.1ミリ以上1ミリ以下のクリアランスを加算した溝巾であって、その溝深さは鉄筋コンクリートの被り厚さ以下の範囲に形成されている。請求項1~4のいずれか1項に記載のコンクリートスリット緊張部材
【請求項6】
緊張部材を差し込む前記スリット穴の溝深さは緊張部材あるいは、緊張部材と小間埋材とがコンクリート表面より突出しない範囲で形成されている。請求項5に記載のコンクリートスリット緊張部材
【請求項7】
緊張部材はスリット穴のなかで垂直方向と水平方向に交差させで配設することができる。請求項1~5のいずれか1項に記載のコンクリートスリット緊張部材
【請求項8】
緊張部材はスリット穴のなかで緊張部材の継手を設けることができる。請求項1~5のいずれか1項に記載のコンクリートスリット緊張部材
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する発明は、コンクリートスリット緊張部材に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリートの鉄筋部材の低下した耐力を同等の耐力に復元するには、その躯体の体積および質量を増すことなく復元することは困難である。
【0003】
繊維強化プラスチックの板状あるいはシート状の緊張部材を、その躯体の表層に接着する方法のみで鉄筋部材と同等の耐力を復元することは困難である。また、繊維強化プラスチックの棒状又は板状の緊張部材の場合は接着あるいは金属製アンカーあるいは定着構造を兼用する方法でコンクリートに係合あるいは連結されるから多工程が必要となり、更に部材はコンクリートの表面に露出するから暴露や火害による劣化を防ぐなんらかの処理も必要となる。
【0004】
特許文献1には、コンクリート表層のひび割れを抑制してひび割れの経過観察が可能な補強方法が開示されている。可視性の不織布の基材に格子状の炭素繊維が編み込まれた複層シートをコンクリート表層に可視性の接着材で接着する方法を用いることでひび割れ抑制とひび割れ観察とを付加しているが、そのシートは不織布と接着材で編成する必要があり暴露や火害による劣化が生じる。また、弾性率の低い不織布を積層するから補強効果も小さい。しかし、コンクリートスリット緊張部材であれば鉄筋部材と同等の耐力をコンクリートに容易に付加することができ、緊張部材はコンクリート表面に露出しないから劣化もないので広範囲に付設できると考えられる。
【0005】
特許文献2には、コンクリート表層の補強方法が開示されている。繊維強化合成樹脂製筋を2条一組として格子状に編成した網状筋材を金属製アンカーでコンクリートに係合する方法を用いて網状筋材の緊張力をコンクリートに伝達する緊結構造を必要とし、且つ網状筋材は表層に露出しているので無機の流動性硬化材で被覆する場合には躯体の体積と質量が増加する。しかし、コンクリートスリット緊張部材であれば鉄筋部材と同等の耐力をコンクリートに容易に付加することができ、緊張部材はコンクリート表面に露出しないから劣化もないので広範囲に付設できると考えられる。
【0006】
特許文献3には、棒状の繊維強化部材で構造物を補強する工法が開示されている。繊維強化部材の長辺方向の長さと同等の緊張付加装置を用いて前記の棒状部材に反力を付加して応力をコンクリートに伝達する定着構造をもち先貼りシートと剥離防止シート及び樹脂用枠モルタルと後貼りシートによるなど多工程が必要となる。しかし、コンクリートスリット緊張部材であれば鉄筋部材と同等の耐力をコンクリートに容易に付加することができ、緊張部材はコンクリート表面に露出しないから劣化もないので広範囲に付設できると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012-26238
【特許文献2】特開2013-79517
【特許文献3】特開2017-172275
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上の背景に鑑みて本発明は、高ヤング率の繊維強化プラスチックで編成された緊張部材をコンクリート表層に形成されたスリット穴に差し込んでコンクリートと嵌合させることで緊結部材も定着構造も不要で躯体の体積および質量を増すこともなく、鉄筋部材と同等の耐力を容易に床、壁、柱、天井の平面部位および曲面部位に付加できる。また、緊張部材はコンクリート表面に露出しないから劣化もないので広範囲に付設できると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るコンクリートスリット緊張部材は、コンクリート表層に形成されたスリット穴に前記緊張部材を差し込んでコンクリートと嵌合させることでコンクリートに緊張力を付加することを特徴としたコンクリートスリット緊張部材。
【0010】
本発明に係るコンクリートスリット緊張部材は、前記緊張部材に接着剤が塗布または前記スリット穴に接着剤が塗布あるいは充填あるいはその両方の方法で前記緊張部材と前記スリット穴とが互いに接着されて嵌合されており、その接着剤は熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂で編成されている前記緊張部材。
【0011】
本発明に係るコンクリートスリット緊張部材は、高ヤング率のフィラメント糸を所定の本数に束ねた無撚または有撚の繊維束を緯糸で連結して帯状に形成し一定量の熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を繊維に含侵して編成されている前記緊張部材
【0012】
本発明に係るコンクリートスリット緊張部材は前記緊張部材を複層にすることで応力の調整ができ、その層間に一定量の熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を塗布して編成することができる前記緊張部材。
【0013】
本発明に係るコンクリートスリット緊張部材は前記緊張部材を差し込む前記スリット穴の溝巾は前記緊張部材の両側に0.1ミリ以上1ミリ以下のクリアランスを加算した溝巾であって、その溝深さは鉄筋コンクリートの被り厚さ以下の範囲に形成されている。
【0014】
本発明に係るコンクリートスリット緊張部材は前記緊張部材を差し込む前記スリット穴の溝深さは前記緊張部材あるいは、前記緊張部材と小間埋材とがコンクリート表面より突出しない範囲で形成されている。
【0015】
本発明に係るコンクリートスリット緊張部材は前記緊張部材をスリット穴のなかで垂直方向と水平方向に交差させで編成することができる。
【0016】
本発明に係るコンクリートスリット緊張部材は前記緊張部材をスリット穴のなかで前記緊張部材の相互を接着剤により係合することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るコンクリートスリット緊張部材の緊張部材をコンクリート表層に形成されたスリット穴に差し込んでコンクリートと嵌合させることで緊結部材も定着構造も必要とせず、そのコンクリートの体積および質量を増すことなく鉄筋部材と同等の耐力をコンクリートに容易に付加することができる前記緊張部材。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係るコンクリートスリット緊張部材の詳細図。
図2】実施形態に係るコンクリートスリット緊張部材とコンクリートのスリット穴とが相互に嵌合した図(A)スリット穴と緊張部材(B)コンクリートに嵌合した緊張部材
図3】実施形態に係るコンクリートスリット緊張部材の緊張部材が相互に交差した部位とコンクリートの交差したスリット穴とが相互に嵌合した図(C)トンネル断面(D)曲面に交差したスリット穴と緊張部材(E)コンクリートに嵌合した緊張部材
図4】実施形態に係るコンクリートスリット緊張部材の緊張部材の相互の継手部位とコンクリートのスリット穴とが相互に嵌合した図(F)継手部位のスリット穴(G)コンクリートに嵌合した継手部位の緊張部材
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係るコンクリートスリット緊張部材の実施形態について、図1に緊張部材を詳細図で示している。所定の本数に束ねた繊維と樹脂で形成されている繊維束1、を互いに緯糸2、で連結した緊張部材100である。緊張部材100は応力に応じて積層にすることができ2層緊張部材3や3層緊張部材4や4層緊張部材5はその緊張部材100の積層間に一定量の熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を塗布して積層に編成したものの例である。
【0020】
本発明に係るコンクリートスリット緊張部材の実施形態について、図2に緊張部材とコンクリートのスリット穴とが相互に嵌合した形態を示している。
(A)はスリット穴と緊張部材の図で、コンクリート立方体6に上面のスリット穴8と上面の緊張部材100a、側面のスリット穴9と側面の緊張部材100b、底面のスリット穴10と底面の緊張部材100cとが嵌合する前の形態を示している。
(B)はコンクリートに嵌合した緊張部材の図で、コンクリート立面体6の上面、側面、底面のスリット穴8、9、10は上面、側面、底面の緊張部材100a、100b、100cがコンクリート立面体6のコンクリート表層から突出せずに形成されている。スリット穴に接着剤を塗布または充填した後にそれぞれの緊張部材に接着剤を塗布してコンクリート立面体6に嵌合している。
【0021】
本発明に係るコンクリートスリット緊張部材の実施形態について、図3に緊張部材が相互に交差した部位とコンクリートの交差したスリット穴とが相互に嵌合した形態を示している。
(C)はトンネル断面図で(D)コンクリート曲面体7aの位置を指している。
(D)は曲面に交差したスリット穴と緊張部材の図でコンクリート曲面体の拡大図7aのY方向のスリット穴、Y方向の緊張部材100dとX方向のスリット穴12、X方向の緊張部材100eとが嵌合する前の形態を示している。
(E)コンクリートに嵌合した緊張部材の図で、Y方向のスリット穴11はY方向の緊張部材100dと小間埋材13とがコンクリート曲面体7aのコンクリート表層から突出しない範囲で形成され、X方向のスリット穴はX方向の緊張部材100aがコンクリート表層から突出しない範囲で形成されている。Y,X両方向のスリット穴に接着剤を塗布または充填した後にY,X両方向の緊張部材100dと100eに接着剤を塗布してコンクリート曲面体7aに嵌合した後に暴露あるいは火害での劣化あるいは美観を目的とした小間埋材13を詰めて編成している。
【0022】
本発明に係るコンクリートスリット緊張部材の実施形態について、図4に緊張部材の相互の継手部位とコンクリートのスリット穴とが嵌合した形態を示している。
(F)は、継手部位のスリット穴の図で、緊張部材100fと緊張部材100gが相互に重なる継手部位に自由研削用研削盤20を用いてL方向のスリット穴とR方向のスリット穴を研削歯の厚さの寸法をどちらかにオフセットさせて平行に研削して交差させる。そのスリット穴の寸法17は250ミリ以上300ミリ以下で形成されている。
(G)は、コンクリートに嵌合した継手部位の緊張部材の図で、スリット穴の寸法17の範囲内に緊張部材の寸法18が収まる。L方向の緊張部材100fとR方向の緊張部材100gとが相互に重なる緊張部材の寸法18は200ミリ以上250ミリ以下で相対する緊張部材の層間には一定量の熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂の接着剤19が塗布されて係合されている。また、スリット穴には一定量の接着剤19が塗布または充填されて緊張部材とスリット穴とを嵌合している。
【符号の説明】
【0023】
100 緊張部材
1 繊維束
2 緯糸
3 2層緊張部材
4 3層緊張部材
5 4層緊張部材
100a 上面の緊張部材
100b 側面の緊張部材
100c 底面の緊張部材
100d Y方向の緊張部材
100e X方向の緊張部材
100f L方向の緊張部材
100g R方向の緊張部材
6 コンクリート立方体
7 コンクリート曲面体
7a コンクリート曲面体の拡大
8 上面のスリット穴
9 側面のスリット穴
10 底面のスリット穴
11 Y方向のスリット穴
12 X方向のスリット穴
13 小間埋材
14 コンクリート
15 L方向のスリット穴
16 R方向のスリット穴
17 スリット穴の寸法
18 緊張部材の寸法
19 接着剤
20 自由研削用研削盤
図1
図2
図3
図4