(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114519
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】四端子タンデム型太陽電池
(51)【国際特許分類】
H10K 39/15 20230101AFI20240816BHJP
H10K 30/40 20230101ALI20240816BHJP
【FI】
H10K39/15
H10K30/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020333
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】519259342
【氏名又は名称】株式会社エネコートテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 温
(74)【代理人】
【識別番号】100132137
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 修平
(72)【発明者】
【氏名】藤原 梨絵
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼濱 豪
【テーマコード(参考)】
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
5F151AA02
5F151AA07
5F151AA11
5F251AA02
5F251AA07
5F251AA11
(57)【要約】
【課題】 優れた光電変換特性および優れた耐久性を有する四端子タンデム型太陽電池を提供する。
【解決手段】 四端子タンデム型太陽電池10は、ペロブスカイト太陽電池100および非ペロブスカイト太陽電池200を有する。ペロブスカイト太陽電池100は、光が入射する側(上部)に配置されている。非ペロブスカイト太陽電池200は、ペロブスカイト太陽電池100の下方に配置されている。ペロブスカイト太陽電池100と非ペロブスカイト太陽電池200との間に接着層300が設けられている。接着層300はハイドロタルサイトを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極と、前記一対の電極間に設けられ、ペロブスカイト化合物を含有する第1の光電変換層とを有するペロブスカイト太陽電池と、
他の一対の電極と、前記他の一対の電極間に設けられ、シリコン半導体または化合物半導体を含む第2の光電変換層とを有する非ペロブスカイト太陽電池と、
前記ペロブスカイト太陽電池と前記非ペロブスカイト太陽電池との間に設けられた接着層と、
を備え、
前記接着層が、ハイドロタルサイトを含む、四端子タンデム型太陽電池。
【請求項2】
前記接着層が、酸化ストロンチウム、酸化カルシウムからなる群より選ばれる一種類以上をさらに含む、請求項1に記載の四端子タンデム型太陽電池。
【請求項3】
前記非ペロブスカイト太陽電池は、ペロブスカイト太陽電池の側に配される前記非ペロブスカイト太陽電池の一方の電極の外側に支持体を有し、
前記接着層の一方の主表面が前記ペロブスカイト太陽電池の一方の電極と接し、かつ、前記接着層の他方の主表面が前記支持体と接している、請求項1または2に記載の四端子タンデム型太陽電池。
【請求項4】
前記前記非ペロブスカイト太陽電池は、前記他の一対の電極および第2の光電変換層を封止する封止層を含み、
前記接着層の一方の主表面が前記ペロブスカイト太陽電池の一方の電極と接し、かつ、前記接着層の他方の主表面が前記封止層と接している、請求項1または2に記載の四端子タンデム型太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、四端子タンデム型太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、クリーンエネルギーとして、太陽光発電が注目を浴びており、太陽電池の開発が進んでいる。その一つとして、低コストで製造可能な次世代型の太陽電池として、ペロブスカイト材料を光吸収層に用いた太陽電池が急速に注目を集めている。例えば、非特許文献1では、ペロブスカイト材料を光吸収層に用いた溶液型の太陽電池が報告されている。また、非特許文献2には、固体型のペロブスカイト型太陽電池が高効率を示すことも報告されている。
【0003】
また、単結晶シリコン太陽電池を上回るタンデム型太陽電池の開発が盛んに行われている(非特許文献3)。結晶シリコン太陽電池のバンドギャップエネルギーは1.1eVなので、このシリコン太陽電池に少なくとも1.5eV以上のバンドギャップエネルギーを有する太陽電池を組み合わせた積層タンデム型太陽電池が期待されている。タンデム型太陽電池は上部で短波長領域の光を吸収し、下部で長波長領域の光を吸収することで、吸収波長領域を広く利用することができるという利点がある。タンデム型太陽電池にはトップセルから接合界面を通してボトムセルにキャリア輸送される二端子型と、それぞれのセルから独立して電力を取り出す四端子型が開発されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Journal of the American Chemical Society, 2009, 131, 6050-6051.
【非特許文献2】Science, 2012, 388, 643-647.
【非特許文献3】Nature Energy, 2017, 2, 17144.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
二端子型のタンデム型太陽電池では、上下の太陽電池が連続して配置される構造を有する。このため、二端子型のタンデム型太陽電池は、配線を簡略化できるというメリットを有する。しかし、上下の太陽電池の電流を整合する必要がある。一方、四端子型のタンデム型太陽電池では、電流整合の必要性がないというメリットを有する。しかし、四端子型のタンデム型太陽電池では、上部の太陽電池基板と下部の太陽電池基板の間に空気の層(エアギャップ)が存在する。このため、この層が光を屈折、散乱するなどの原因となり、下部の太陽電池から得られる電流が少なくなってしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、より優れた光電変換特性および優れた耐久性を示す四端子型タンデム太陽電池の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、四端子タンデム型太陽電池である。当該四端子タンデム型太陽電池は、一対の電極と、前記一対の電極間に設けられ、ペロブスカイト化合物を含有する第1の光電変換層とを有するペロブスカイト太陽電池と、他の一対の電極と、前記他の一対の電極間に設けられ、シリコン半導体または化合物半導体を含む第2の光電変換層とを有する非ペロブスカイト太陽電池と、前記ペロブスカイト太陽電池と前記非ペロブスカイト太陽電池との間に設けられた接着層と、を備え、前記接着層が、ハイドロタルサイトを含む。前記接着層が、酸化ストロンチウム、酸化カルシウムからなる群より選ばれる一種類以上をさらに含んでもよい。
前記非ペロブスカイト太陽電池は、ペロブスカイト太陽電池の側に配される前記非ペロブスカイト太陽電池の一方の電極の外側に支持体を有し、前記接着層の一方の主表面が前記ペロブスカイト太陽電池の一方の電極と接し、かつ、前記接着層の他方の主表面が前記支持体と接していてもよい。
前記前記非ペロブスカイト太陽電池は、前記他の一対の電極および第2の光電変換層を封止する封止層を含み、前記接着層の一方の主表面が前記ペロブスカイト太陽電池の一方の電極と接し、かつ、前記接着層の他方の主表面が前記封止層と接していてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、優れた光電変換特性および優れた耐久性を有する四端子タンデム型太陽電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る四端子タンデム型太陽電池における構成を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態2に係る四端子タンデム型太陽電池における構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明について、例を挙げてさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
【0011】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る四端子タンデム型太陽電池10における構成を示す概略断面図である。
図1に示すように、光が入射する側(上部)に上部太陽電池としてペロブスカイト太陽電池100が配置されており、ペロブスカイト太陽電池100の下方に、下部太陽電池として非ペロブスカイト太陽電池200が配置されている。ペロブスカイト太陽電池100と非ペロブスカイト太陽電池200との間に接着層300が設けられている。なお、ペロブスカイト太陽電池100の光吸収帯域は、非ペロブスカイト太陽電池200の光吸収帯域に対して少なくとも一部の領域が異なることが好ましい。
以下、実施形態1に係る四端子タンデム型太陽電池10の各構成について詳細に説明する。
【0012】
[ペロブスカイト太陽電池]
実施形態1に係る四端子タンデム型太陽電池10に含まれるペロブスカイト太陽電池100は、支持体110、第1の電極120、正孔輸送層130、光電変換層140、電子輸送層150、第2の電極160がこの順で積層された積層構造を有する。
【0013】
[支持体]
支持体110は、特に限定されず、例えば、一般的な太陽電池等の光電変換素子に使用可能な透明基板を適宜用いてもよい。当該透明基板としては、例えば、ガラス、プラスチック板、プラスチック膜、無機結晶体等が挙げられる。上記プラスチック板、上記プラスチック膜の材料としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル(PET等)、ポリカーボネート、ポリイミド、アクリル系樹脂などが挙げられる。また、これらの基板表面の一部又は全部の上に、金属膜、半導体膜、導電性膜及び絶縁性膜の少なくとも1種の膜が形成されていてもよい。支持体110の大きさ、厚み等は、特に限定されず、例えば、一般的な太陽電池等の光電変換素子と同様又はそれに準じてもよい。
【0014】
[第1の電極]
第1の電極120は、例えば、後述する正孔輸送層130を支持するとともに、光電変換層140から正孔を取り出す機能を有する層である。また、第1の電極120は、例えば、カソード(正極)として働く層である。
【0015】
第1の電極120は、例えば、支持体110の一方の主表面上に直接形成されていてもよい。第1の電極120は、例えば、導電体で形成された透明電極であってもよい。当該透明電極としては、特に限定されないが、例えば、スズドープ酸化インジウム(ITO)膜、不純物ドープの酸化インジウム(In2O3)膜、不純物ドープの酸化亜鉛(ZnO)膜、フッ素ドープ二酸化スズ(FTO)膜、これらの二種以上を積層して形成された積層膜、金、銀、銅、アルミニウム、タングステン、チタン、クロム、ニッケル、及びコバルトなどが挙げられる。第1の電極120は、これらの材料単独でも2種類以上の材料の混合であってもよく、また、単層でも積層であっても構わない。また、第1の電極120に用いられる膜は、例えば拡散防止層として機能してもよい。第1の電極120の厚みは特に制限されないが、例えば、シート抵抗が5~15Ω/□(単位面積当たり)となるように調整することが好ましい。第1の電極120の形成方法は特に限定されないが、例えば、形成する材料に応じ、公知の成膜方法により得ることができる。また、第1の電極120の形状も特に限定されないが、例えば、膜状であっても、メッシュ状のような格子状に形成されていても構わない。支持体110の一方の主表面上に第1の電極120を形成する方法は特に限定されないが、例えば、公知の方法でもよく、例えば、真空蒸着やスパッタリング等の真空製膜が好ましい。また第1の電極120はパターニング方法により形成されてもよい。パターニング方法としては、特に限定されないが、例えば、レーザーやエッチング液に浸す方法、真空製膜時にマスクを用いてパターニングする方法等が挙げられ、本実施形態においては何れの方法であっても構わない。また、第1の電極120は、電気的抵抗値を下げる目的で、金属配線などを併用してもよい。当該金属配線(金属リード線)の材質としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、銅、銀、金、白金、ニッケルなどが挙げられる。当該金属配線を、例えば、蒸着、スパッタリング、圧着などで支持体110の一方の主表面上に形成した後、その上に第1の電極120としてITO層やFTO層を設けてもよい。また、支持体110の一方の主表面上に第1の電極120としてITO層やFTO層を設けた後、第1の電極120の上に透明性を阻害しない範囲で金属配線を設けてもよい。
【0016】
[正孔輸送層]
正孔輸送層130を形成する材料として、例えば、導電体、半導体、有機正孔輸送材料等を用いることができる。当該材料は、ペロブスカイト層(光電変換層140)から正孔を受け取り、正孔を輸送する正孔輸送材料として機能し得る。
正孔輸送層130に用いられる導電体及び半導体としては、例えば、CuI、CuInSe2、CuS等の1価銅を含む化合物半導体;GaP、NiO、CoO、FeO、Bi2O3、MoO3、Cr2O3等の銅以外の金属を含む化合物が挙げられる。なかでも、より効率的に正孔のみを受け取り、より高い正孔移動度を得る観点から、1価銅を含む半導体が好ましく、CuIがより好ましい。
正孔輸送層130に用いられる有機正孔輸送材料としては、例えば、ポリ-3-ヘキシルチオフェン(P3HT)、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等のポリチオフェン誘導体;2,2’ ,7,7’-テトラキス-(N、N-ジ-p-メトキシフェニルアミン)-9,9’-スピロビフルオレン(Spiro-OMeTAD)等のフルオレン誘導体;ポリビニルカルバゾール等のカルバゾール誘導体;ポリ[ビス(4-フェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)アミン](PTAA)等のトリフェニルアミン誘導体;ジフェニルアミン誘導体;ポリシラン誘導体;ポリアニリン誘導体等が挙げられる。なかでも、より効率的に正孔のみを受け取り、より高い正孔移動度を得る観点から、正孔輸送層130に用いられる有機正孔輸送材料として、トリフェニルアミン誘導体、フルオレン誘導体等が好ましく、PTAA、Spiro-OMeTADなどがより好ましい。
【0017】
正孔輸送層130は、正孔輸送特性をさらに向上させることを目的として、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSI)、銀ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、トリフルオロメチルスルホニルオキシ銀、NOSbF6、SbCl5、SbF5、トリス(2-(1H-ピラゾール-1-イル)-4-tert-ブチルピリジン)コバルト(III)トリ[ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド]等の酸化剤を含んでもよい。また、正孔輸送層130は、t-ブチルピリジン(TBP)、2-ピコリン、2,6-ルチジン等の塩基性化合物を含んでもよい。正孔輸送層130に含まれる酸化剤及び塩基性化合物の含有量は、従来から通常使用される量とすることができる。正孔輸送層130の膜厚は、より効率的に正孔のみを受け取り、より高い正孔移動度を得る観点から、例えば、50~800nmが好ましく、100~600nmがより好ましい。正孔輸送層130の形成方法は特に限定されず、公知の方法に従って行うことができる。例えば、ディップ法、スプレー法、スピンコート法、ブレードコート法などの湿式製膜や、スパッタ法等の真空製膜が挙げられる。
【0018】
また、第一の電極120上に形成される正孔輸送層130は単分子層を形成する正孔輸送材料を用いても構わない。その具体例としては、下記化学式(I)で表される化合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
Ar1-L1-X1...(I)
【0019】
上記化学式(I)において、Ar1は、芳香環を含有する構造であり、前記芳香環を構成する原子中にヘテロ原子を含有していてもよい。また、Ar1は、-L1-X1以外の置換基を有していてもよい。-L1-X1は、単独あるいは複数でもよく、複数の場合は、各L1及び各X1は、互いに同一であっても異なっていてもよい。各L1は、Ar1とX1とを結合する2価の原子団であるか、又は共有結合であり、各X1は、それぞれ、第1の電極120に用いられる化合物と化学結合可能な基である。-L1-X1の数は、特に限定されないが、1~4の範囲でもよい。
【0020】
上記化学式(I)において、各X1が、それぞれ、ホスホン酸基(-P=O(OH)2)、カルボキシ基(-COOH)、スルホ基(-SO3H)、ボロン酸基(-B(OH)2)、トリハロゲン化シリル基(-SiX3、ただしXはハロ基)、又はトリアルコキシシリル基(-Si(OR)3、ただしRはアルキル基)であってもよい。
【0021】
具体的に、前記化学式(I)として、以下の化学式(A-01)~(A-30)で表される化合物を挙げることができる。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【0022】
本実施形態において、「置換基」は、特に限定されないが、例えば、アルキル基、不飽和脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、ヒドロキシ基(-OH)、メルカプト基(-SH)、アルキルチオ基(-SR、Rはアルキル基)、スルホ基、ニトロ基、ジアゾ基、シアノ基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
【0023】
また、本実施形態において、化合物に互変異性体または立体異性体(例:幾何異性体、配座異性体および光学異性体)等の異性体が存在する場合は、特に断らない限り、いずれの異性体も本実施形態に用いることができる。また、本実施形態における上記化学式(I)で表される化合物は塩を形成していてもよい。当該塩としては酸付加塩が好ましい。当該酸付加塩を形成する酸は無機酸でも有機酸でもよい。当該無機酸としては、特に限定されないが、例えば、硫酸、リン酸、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、次亜フッ素酸、次亜塩素酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、亜フッ素酸、亜塩素酸、亜臭素酸、亜ヨウ素酸、フッ素酸、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、過フッ素酸、過塩素酸、過臭素酸、および過ヨウ素酸等があげられる。上記有機酸は特に限定されないが、例えば、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、p-ブロモベンゼンスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸および酢酸等が挙げられる。これらの塩の製造方法も特に限定されるものではなく、あらかじめ塩を形成している化合物を用いて正孔輸送層130を作製する方法、塩を形成する前の化合物を用いて層を作製し、その後塩を形成させて正孔輸送層130を作製する方法の何れであっても構わない。
【0024】
正孔輸送層130は、上述の化学式(I)で表される化合物に加えて、下記の化学式(II)で表される化合物を含んでもよい。
A1-L2-X2...(II)
A1は、窒素原子を有する置換基であり、酸付加塩を形成している置換基である。具体的には、アンモニウム塩、アジリジニウム塩、アジリニウム塩、アゼチジニウム塩、ピロリジニウム塩、ピロリニウム塩、ピラゾリニウム塩、ピロリニウム塩、ピラゾリニウム塩、イミダゾリニウム塩、トリアゾリニウム塩、テトラゾリニウム塩、ピペリジニウム塩、ピペラジニウム塩、ピリジニウム塩、ピラジニウム塩、モルホリニウム塩、チアゾリニウム塩、アゼパニウム塩、アゼピニウム塩、インドリニウム塩、インドリニウム塩、キノリニウム塩、イソキノリニウム塩、キノキサリニウム塩、フェナントロリニウム塩、フェナジニウム塩などが挙げられ、反応する酸としては、上述の有機酸、無機酸のいずれであっても混合であっても構わない。
【0025】
化学式(II)で表される化合物の具体例としては、3-メトキシプロピオン酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、2-ヒドロキシプロピオン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、2-ペンテンニ酸、メチレンコハク酸、アリルマロン酸、イソプロピリデンコハク酸、アセチレンジカルボン酸、アセチレンジカルボン酸モノカリウム塩、アセチレンジカルボン酸ジカリウム塩、テレフテル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、4、4‘-ビフェニルジカルボン酸、4、4‘-ビフェニルジカルボン酸ジエチル、4-メトキシ安息香酸、3、4-ジメトキシ安息香酸、没食子酸、4-ピリジンカルボン酸、6-キノリンカルボン酸、アスパラギン酸、メチレンジホスホン酸、1、2-エチレンジホスホン酸、1、3-プロピレンジホスホン酸、3、4-ジメトキシフェニルホスホン酸、(4-ヒドロキシベンジル)ホスホン酸、4-ヒドロキシフェニルホスホン酸、(ピリジン-4-イルメチル)ホスホン酸、(ピリジン-3-イルメチル)ホスホン酸、4-ホスホノ安息香酸、テトラエチルエチレンジホスホネート、3-ホスホノプロピオン酸、4-ホスホノブチル酸、ジエチル(4-メトキシベンジル)ホスホネートなどを挙げることができ、更に、以下に示す化学式(B-01)~(B-52)で表される化合物を挙げることができる。
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【0026】
化学式(I)で表される化合物及び前記化学式(II)で表される化合物は、例えば、透明導電膜上に単分子層を形成する正孔(ホール)輸送化合物として用いることができる。前記透明導電膜は、例えば、透明電極である第1の電極120であり、当該透明電極として、例えば、前述のとおりITO等が挙げられる。
【0027】
正孔輸送層130の形成方法は特に限定されないが、p型金属酸化物層を最初に形成し、次に、前記化学式(I)で表される化合物、または前記化学式(I)で表される化合物と前記化学式(II)で表される化合物とをp型金属酸化物層の表面に吸着させる方法が挙げられる。p型金属酸化物の形成方法は特に限定されるものではないが、スパッタリング法、ALD法、CVD法、EBなどを用いた蒸着法などの真空製膜方法、p型金属酸化物の前駆体を用いたゾルゲル法、p型金属酸化物の微粒子を分散した溶液を塗布する方法などが挙げられる。溶液を塗布する方法は、スプレー法、キャスト法、インクジェット法、スクリーン印刷法、ダイコート法、グラビア法などが、一般的な印刷方法を用いることができる。また、溶液塗布後に溶媒を乾燥する目的で加熱処理をすることが好ましい。正孔輸送層130の膜厚は1~1000nmが好ましく、10~500nmがより好ましい。
【0028】
化学式(I)で表される化合物、化学式(I)で表される化合物及び化学式(II)で表される化合物により単分子層を形成させる方法は、特に限定されないが、例えば、化学式(I)で表される化合物単独、あるいは化学式(I)で表される化合物及び化学式(II)で表される化合物を溶媒に溶解し、第1の電極120上に積層されたp型金属酸化物層と接触させて結合させればよい。化学式(I)で表される化合物及び化学式(II)で表される化合物とp型金属酸化物層との結合は、特に限定されず、物理的な結合であっても化学的な結合であっても構わない。前記結合の種類も特に限定されず、例えば、水素結合、エステル結合、キレート結合などの何れであっても構わない。化学式(I)で表される化合物及び化学式(II)で表される化合物を溶解させるための溶媒も特に限定されず、例えば、水及び有機溶媒の一方でもよいし、両方でもよい。当該溶媒としては、より具体的には、水、メタノール、エタノール、2-プロパノールなどのアルコール類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類、アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸イソブチル、γ-ブチロラクトンなどのエステル類、テトラヒドロフラン、チオフェンなどのヘテロ環類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアミド類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ジエチルスルホン、スルホランなどのスルホン類、アセトニトリル、3-メトキシプロピオニトリルなどのニトリル類、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼンなどの芳香族化合物類、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒、クロロフロロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボンなどのフッ素系溶媒を挙げることができ、単独で用いても2種類以上の混合で用いても構わない。
【0029】
化学式(I)で表される化合物、または化学式(I)で表される化合物及び前記化学式(II)で表される化合物をp型金属酸化物層に吸着させて単分子層を形成させる具体的な方法は、特に限定されないが、例えば、ディッピング法、スプレー法、スピンコ-ト法、バーコート法など既知の方法を挙げることができる。吸着する際の温度は、特に限定されないが、-20℃~100℃が好ましく、0℃~50℃がより好ましい。吸着する時間も特に限定されないが、例えば、1秒~48時間が好ましく、10秒~1時間がより好ましい。
【0030】
また、上述した吸着処理後に、例えば、洗浄を行ってもよいし、行わなくてもよい。当該洗浄の方法は特に限定されないが、例えば、純水による洗浄などの公知の方法を適宜用いてもよい。
【0031】
上述した吸着処理後、又は洗浄後に、加熱処理を行ってもよいし、行わなくてもよい。当該加熱処理の温度は、50℃~150℃が好ましく、70℃~120℃がより好ましい。加熱処理時間は1秒~48時間が好ましく、10秒~1時間がより好ましい。また、この加熱処理は、例えば、大気下で行なってもよいし、真空中で行なってもよい。
【0032】
更に、正孔輸送層130の製造方法として、上述した正孔輸送材料を吸着して正孔輸送層を形成した後に、酸を反応させる処理を行っても構わない。用いる酸は有機酸でも無機酸でも構わない。また反応させる方法は酸を溶解した溶液と上述の正孔輸送層130を接触させて塩を形成させる方法であればどのような手法であっても構わない。また、塩を形成後に洗浄したり、加熱や真空乾燥を行っても構わない。
【0033】
[光電変換層]
光電変換層140は、一対の第1の電極120、第2の電極160の間に設けられている。
光電変換層140は、特に限定されず、例えば、一般的なペロブスカイト太陽電池の光電変換素子に用いられる光電変換層と同様でもよい。光電変換層140は、ペロブスカイト化合物を含む。当該ペロブスカイト化合物は、例えば、下記化学式(III)で表される化合物であってもよい。
XαYβZγ...(III)
【0034】
上記化学式(III)において、α:β:γの比率は3:1:1であり、β及びγは1より大きい整数を表す。Xはハロゲンイオン、Yはアミノ基を有する有機化合物、Zは金属イオンを表す。ペロブスカイト層は、電子輸送層に隣接して配置されることが好ましい。なお、α:β:γの比率は、例えば、3:1.05:0.95のように、必ずしも3:1:1である必要はない。
【0035】
上記化学式(III)におけるXとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲンイオンが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
上記化学式(III)におけるYとしては、メチルアミン、エチルアミン、n-ブチルアミン、ホルムアミジンなどのアルキルアミン化合物イオン(アミノ基を有する有機化合物)や、有機に限らず、セシウム、カリウム、ルビジウムなどのアルカリ金属イオンが挙げられる。アルキルアミン化合物イオンやアルカリ金属イオンは、それぞれ1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、有機(アルキルアミン化合物イオン)と無機(アルカリ金属イオン)とを併用することもでき、例えば、セシウムイオンとホルムアミジンを併用してもよい。
【0037】
上記化学式(III)におけるZとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、鉛、インジウム、アンチモン、スズ、銅、ビスマス等の金属などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。特に鉛この中でも、特に鉛とスズの併用が好ましい。また、ペロブスカイト層は、ハロゲン化金属からなる層と有機カチオン分子が並んだ層が、交互に積層した層状ペロブスカイト構造を示すことが好ましい。ペロブスカイト層は、アルカリ金属を含有してもよい。ペロブスカイト層がアルカリ金属を少なくとも含有すると、出力が高くなる点で有利である。アルカリ金属としては、例えば、セシウム、ルビジウム、カリウムなどが挙げられる。これらの中でも、セシウムが好ましい。
【0038】
光電変換層140は、前述のとおり、ペロブスカイト化合物から形成されたペロブスカイト層であってもよい。このようなペロブスカイト層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ハロゲン化金属及びハロゲン化アルキルアミンを、溶解又は分散させた溶液を塗布した後に乾燥する方法などが挙げられる。
【0039】
また、ペロブスカイト層を形成する方法としては、例えば、ハロゲン化金属を溶解又は分散させた溶液を塗布、乾燥した後、ハロゲン化アルキルアミンを溶解させた溶液中に浸して、ペロブスカイト化合物を形成する二段階析出法などが挙げられる。
【0040】
ペロブスカイト層を形成する方法としては、他に、例えば、ハロゲン化金属及びハロゲン化アルキルアミンを溶解又は分散した溶液を塗布しながら、ペロブスカイト化合物にとっての貧溶媒(溶解度が小さい溶媒)を加えて結晶を析出させる方法などが挙げられる。
【0041】
ペロブスカイト層を形成する方法としては、他に、例えば、メチルアミンなどが充満したガス中において、ハロゲン化金属を蒸着する方法等も挙げられる。
【0042】
ペロブスカイト層を形成する方法としては、ハロゲン化金属及びハロゲン化アルキルアミンを溶解又は分散した溶液を塗布しながら、ペロブスカイト化合物にとっての貧溶媒を加えて結晶を析出させる方法が特に好ましい。これらの溶液を塗布する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、浸漬法、スピンコート法、スプレー法、ディップ法、ローラ法、エアーナイフ法などが挙げられる。また、溶液を塗布する方法としては、例えば、二酸化炭素などを用いた超臨界流体中で析出させる方法であってもよい。上述の貧溶媒を加えて結晶を析出させる方法として、使用される貧溶媒としては、n-ヘキサン、n-オクタンなどの炭化水素類、メタノール、エタノール、2-プロパノールなどのアルコール類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類、アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸イソブチル、γ-ブチロラクトンなどのエステル類、アセトニトリル、3-メトキシプロピオニトリルなどのニトリル類、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼンなどの芳香族炭化水素化合物類、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒、クロロフロロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボンなどのフッ素系溶媒を挙げることができる。
【0043】
光電輸送層140(換言すると、光吸収層、またはペロブスカイト層)の厚みは、特に限定されないが、欠陥や剥離による性能劣化をより抑制する観点から、50~1200nmが好ましく、200~1000nmがより好ましい。
【0044】
[電子輸送層]
電子輸送層(電子注入層とも言う)150に用いられる材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、半導体材料が好ましい。前記半導体材料としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができ、例えば、単体半導体、化合物半導体、有機n型半導体などを挙げることができる。
【0045】
単体半導体としては、特に限定されないが、例えば、シリコン、ゲルマニウムなどが挙げられる。
【0046】
化合物半導体としては、特に限定されないが、例えば、金属のカルコゲニド、具体的には、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、タンタル等の酸化物;カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモン、ビスマス等の硫化物;カドミウム、鉛等のセレン化物;カドミウム等のテルル化物などが挙げられる。他の化合物半導体としては亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物、ガリウム砒素、銅-インジウム-セレン化物、銅-インジウム-硫化物等が挙げられる。
【0047】
有機n型半導体としては、特に限定されないが、例えば、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボキシジイミド化合物、ナフタレンジイミド-ビチオフェン共重合体、ベンゾビスイミダゾベンゾフェナントロリン重合体、C60、C70、PCBM([6,6]-フェニル-C61-酪酸メチルエステル)などのフレーラン化合物、カルボニルブリッジ-ビチアゾール化合物、ALq3(トリス(8-キノリノラト)アルミニウム)、トリフェニレンビピリジル化合物、シロール化合物、オキサジアゾール化合物などを挙げることができる。
【0048】
電子輸送層150に用いられる前述の材料の中でも、特に有機n型半導体が好ましい。
【0049】
電子輸送層150の形成に用いられる材料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、半導体材料の結晶型としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、単結晶でも多結晶でもよく、非晶質でも構わない。
【0050】
電子輸送層150の膜厚としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5nm~1000nmが好ましく、10nm~700nmがより好ましい。
【0051】
電子輸送層150の形成方法としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、真空中で薄膜を形成する方法(真空製膜法)、湿式製膜法などが挙げられる。真空製膜法としては、例えば、スパッタリング法、パルスレーザーデポジッション法(PLD法)、イオンビームスパッタ法、イオンアシスト法、イオンプレーティング法、真空蒸着法、アトミックレイヤーデポジッション法(ALD法)、化学気相成長法(CVD法)などが挙げられる。湿式製膜法としては、電子輸送材料を溶解した溶媒を塗布して形成する方法や、酸化物半導体の場合、ゾル-ゲル法が挙げられる。ゾル-ゲル法は、溶液から、加水分解や重合・縮合などの化学反応を経てゲルを作製し、その後、加熱処理によって緻密化を促進させる方法である。ゾル-ゲル法を用いた場合、ゾル溶液の塗布方法としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、また、湿式印刷方法として、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、スクリーン印刷などが挙げられる。また、ゾル溶液を塗布した後の加熱処理の際の温度としては、80℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。
【0052】
電子輸送層150を形成後、後述する第2の電極160との間に電子注入層(ホールブロッキング層)を形成しても構わない。電子注入層に用いられる材料としては、BCP(バソクプロイン)を挙げることができ、セシウムをドープしても構わない。電子注入層は1~100nmが好ましく、3~20nmがより好ましい。
【0053】
[第2の電極]
第2の電極160は、電子輸送層150を介して光電変換層140から電子を取り出す機能を有する層である。換言すると、第2の電極160は、アノード(負極)として働く層である。第2の電極160は裏面電極と呼ばれる場合がある。
【0054】
第2の電極160は、電子輸送層150上に直接形成してもよい。第2の電極160の材質は、特に限定されず、例えば、第1の電極120と同様の材質を用いることができる。第2の電極160としては、その形状、構造、大きさについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。第2の電極160の材質としては、金属、炭素化合物、導電性金属酸化物、導電性高分子などが挙げられる。
【0055】
金属としては、例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウムなどが挙げられる。
【0056】
炭素化合物としては、例えば、グラファイト、フラーレン、カーボンナノチューブ、グラフェンなどが挙げられる。
【0057】
導電性金属酸化物としては、例えば、ITO、FTO、ATOなどが挙げられる。
【0058】
導電性高分子としては、例えば、ポリチオフェン、ポリアニリンなどが挙げられる。
【0059】
第2の電極160の形成に用いられる材料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0060】
第2の電極160は、用いられる材料の種類や正孔輸送層130の種類により、電子輸送層150上に塗布、ラミネート、真空蒸着、CVD、貼り合わせなどの方法を用いることにより形成可能である。
【0061】
また、本実施形態のペロブスカイト太陽電池100においては、第1の電極120及び第2の電極160の両方が実質的に透明であることが好ましい。
【0062】
なお、本実施形態では、ペロブスカイト太陽電池100として、支持体110の一方の主表面上に、第1の電極120、正孔輸送層130、光電変換層140、電子輸送層150、及び第2の電極160がこの順で積層された逆型ペロブスカイト太陽電池が例示されているが、支持体110の一方の主表面上に、第2の電極160、電子輸送層150、光電変換層140、正孔輸送層130、及び第1の電極120が、この順で積層された順型ペロブスカイト太陽電池を用いてもよい。
また、第1の電極120、正孔輸送層130、光電変換層140、電子輸送層150、及び第2の電極160の各層間に、他の構成要素が存在していてもよいし存在していなくてもよい。
【0063】
[封止]
ペロブスカイト太陽電池100は、水や酸素からペロブスカイト太陽電池100を構成する各層を保護するために封止されていてもよい。封止の構造は特に限定されないが、例えば、一般的な光電変換素子(例えば太陽電池)と同様でもよく、具体的には、例えば、本実施形態に用いられるペロブスカイト太陽電池100の外周部のみをガラスやフィルムで覆って封止してもよく、本実施形態に用いられるペロブスカイト太陽電池100の全面をガラスやフィルムで覆って封止してもよい。
【0064】
ペロブスカイト太陽電池100の封止に用いられる材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エポキシ樹脂やアクリル樹脂を用い、硬化させることが好ましい。など、上記材料の一部だけが硬化していてもよい。
【0065】
エポキシ樹脂は、特に限定されないが、例えば、水分散系、無溶剤系、固体系、加熱硬化型、硬化剤混合型、紫外線硬化型などが挙げられ、これらの中でも熱硬化型及び紫外線硬化型が好ましく、紫外線硬化型がより好ましい。なお、紫外線硬化型であっても、加熱を行うことは可能であり、紫外線硬化した後であっても加熱を行うことが好ましい。エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ノボラック型、環状脂肪族型、長鎖脂肪族型、グリシジルアミン型、グリシジルエーテル型、グリシジルエステル型などが挙げられ、これらは、単独で使用しても、2種以上の併用であってもよい。また、エポキシ樹脂には、必要に応じて硬化剤や各種添加剤を混合することが好ましい。既に市販されているエポキシ樹脂組成物を、本実施形態において使用することができる。中でも、太陽電池や有機EL素子用途向けに開発、市販されているエポキシ樹脂組成物もあり、本実施形態において特に有効に使用できる。市販されているエポキシ樹脂組成物としては、例えば、TB3118、TB3114、TB3124、TB3125F(株式会社スリーボンド製)、WorldRock5910、WorldRock5920、WorldRock8723(協立化学産業株式会社製)、WB90US(P)、WB90US-HV(モレスコ社製)等が挙げられる。
【0066】
アクリル樹脂としては、特に限定されないが、例えば、太陽電池や有機EL素子用途向けに開発、市販されているものを有効に使用できる。市販されているアクリル樹脂組成物としては、例えば、TB3035B、TB3035C(株式会社スリーボンド製)等が挙げられる。
【0067】
硬化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アミン系、酸無水物系、ポリアミド系、その他の硬化剤などが挙げられる。アミン系硬化剤としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの脂肪族ポリアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族ポリアミンなどが挙げられ、酸無水物系硬化剤としては、無水フタル酸、テトラ及びヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ピロメリット酸、無水ヘット酸、ドデセニル無水コハク酸などが挙げられる。その他の硬化剤としては、イミダゾール類、ポリメルカプタンなどが挙げられる。これらは単独で使用しても、2種以上の併用であってもよい。
【0068】
添加剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、充填材(フィラー)、ギャップ剤、重合開始剤、乾燥剤(吸湿剤)、硬化促進剤、カップリング剤、可とう化剤、着色剤、難燃助剤、酸化防止剤、有機溶剤などが挙げられる。これらの中でも、充填材、ギャップ剤、硬化促進剤、重合開始剤、乾燥剤(吸湿剤)が好ましく、充填材及び重合開始剤がより好ましい。添加剤として充填材を含有することにより、水分や酸素の浸入を抑制し、更には硬化時の体積収縮の低減、硬化時あるいは加熱時のアウトガス量の低減、機械的強度の向上、熱伝導性や流動性の制御などの効果を得ることができる。そのため、添加剤として充填材を含むことは、様々な環境で安定した出力を維持する上で非常に有効である。
【0069】
また、ペロブスカイト太陽電池100の出力特性やその耐久性に関しては、侵入する水分や酸素の影響だけでなく、封止部材の硬化時あるいは加熱時に発生するアウトガスの影響が無視できない。特に、加熱時に発生するアウトガスの影響は、高温環境保管における出力特性に大きな影響を及ぼす。封止部材に充填材やギャップ剤、乾燥剤を含有させることにより、これら自身が水分や酸素の浸入を抑制できるほか、封止部材の使用量を低減できることにより、アウトガスを低減させる効果を得ることができる。封止部材に充填材やギャップ剤、乾燥剤を含有させることは、硬化時だけでなく、光電変換素子を高温環境で保存する際にも有効である。
【0070】
当該充填材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結晶性あるいは不定形のシリカ、タルクなどのケイ酸塩鉱物、アルミナ、窒化アルミ、窒化珪素、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム等の無機系充填材などが挙げられる。
【0071】
充填材の平均一次粒径は、特に限定されないが、0.1μm以上10μm以下が好ましく、1μm以上5μm以下がより好ましい。前記充填材の平均一次粒径が上記の好ましい範囲内であると、水分や酸素の侵入を抑制する効果を十分に得ることができ、粘度が適正となり、基板との密着性や脱泡性が向上し、封止部の幅の制御や作業性に対しても有効である。
【0072】
充填材の含有量としては、封止部材全体(100質量部)に対し、10質量部以上90質量部以下が好ましく、20質量部以上70質量部以下がより好ましい。前記充填材の含有量が上記の好ましい範囲内であることにより、水分や酸素の浸入抑制効果が十分に得られ、粘度も適正となり、密着性や作業性も良好となる。
【0073】
ギャップ剤は、ギャップ制御剤あるいはスペーサー剤とも称される。添加剤としてギャップ材を含むことにより、封止部のギャップを制御することが可能になる。例えば、第1の基板又は第1の電極の上に、封止部材を付与し、その上に第2の基板を載せて封止を行う場合、封止部材がギャップ剤を混合していることにより、封止部のギャップがギャップ剤のサイズに揃うため、容易に封止部のギャップを制御することができる。
【0074】
ギャップ剤としては、特に限定されないが、例えば、粒状でかつ粒径が均一であり、耐溶剤性や耐熱性が高いものが好ましく、目的に応じて適宜選択することができる。ギャップ剤としては、エポキシ樹脂と親和性が高く、粒子形状が球形であるものが好ましい。具体的には、ガラスビーズ、シリカ微粒子、有機樹脂微粒子などが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。ギャップ剤の粒径としては、設定する封止部のギャップに合わせて選択可能であるが、1μm以上100μm以下が好ましく、5μm以上50μm以下がより好ましい。
【0075】
重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、熱や光を用いて重合を開始させる重合開始剤が挙げられ、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱重合開始剤、光重合開始剤などが挙げられる。熱重合開始剤は、加熱によってラジカルやカチオンなどの活性種を発生する化合物であり、2、2’-アゾビスブチロニトリル(AIBN)のようなアゾ化合物や、過酸化ベンゾイル(BPO)などの過酸化物などが挙げられる。熱カチオン重合開始剤としては、ベンゼンスルホン酸エステルやアルキルスルホニウム塩等が用いられる。光重合開始剤は、エポキシ樹脂の場合光カチオン重合開始剤が好ましく用いられる。エポキシ樹脂に光カチオン重合開始剤を混合し、光照射を行うと光カチオン重合開始剤が分解して、酸を発生し、酸がエポキシ樹脂の重合を引き起こし、硬化反応が進行する。光カチオン重合開始剤は、硬化時の体積収縮が少なく、酸素阻害を受けず、貯蔵安定性が高いといった効果を有する。
【0076】
光カチオン重合開始剤としては、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタセロン化合物、シラノール・アルミニウム錯体などが挙げられる。また、重合開始剤として、光を照射することにより酸を発生する機能を有する光酸発生剤も使用できる。光酸発生剤は、カチオン重合を開始する酸として作用し、カチオン部とアニオン部からなるイオン性のスルホニウム塩系やヨードニウム塩系などのオニウム塩などが挙げられる。これらは、単独で使用しても、2種以上の併用であってもよい。
【0077】
重合開始剤の添加量としては、特に限定されず、使用する材料によって異なる場合があるが、封止部材全体(100質量部)に対し、0.5質量部以上10質量部以下が好ましく、1質量部以上5質量部以下がより好ましい。添加量が上記の好ましい範囲内であることにより、硬化が適正に進み、未硬化物の残存を低減することができ、またアウトガスが過剰になるのを防止できる。
【0078】
乾燥剤(吸湿剤とも称される)は、水分を物理的あるいは化学的に吸着、吸湿する機能を有する材料であり、封止部材に含有させることにより、耐湿性を更に高め、アウトガスの影響を低減できる。当該乾燥剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、粒子状であるものが好ましく、例えば、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、シリカゲル、モレキュラーシーブ、ゼオライトなどの無機吸水材料が挙げられる。これらの中でも、吸湿量が多いゼオライトが好ましい。これらは、単独で使用しても、2種以上の併用であってもよい。
【0079】
硬化促進剤(硬化触媒とも称される)は、硬化速度を速める材料であり、主に熱硬化型のエポキシ樹脂に用いられる。前記硬化促進剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、DBU(1、8-ジアザビシクロ(5、4、0)-ウンデセン-7)やDBN(1、5-ジアザビシクロ(4、3、0)-ノネン-5)等の三級アミンあるいは三級アミン塩、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾールや2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール系、トリフェニルホスフィンやテトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等のホスフィンあるいはホスホニウム塩などが挙げられる。これらは、単独で使用しても、2種以上の併用であってもよい。
【0080】
カップリング剤は、分子結合力を高める効果を有する材料であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シランカップリング剤などが挙げられる。具体的には、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N-(2-(ビニルベンジルアミノ)エチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤などが挙げられる。これらは、単独で使用しても、2種以上の併用であってもよい。
【0081】
本実施形態においては、例えば、封止のためにシート状接着剤を用いることができる。シート状接着剤とは、例えば、シート上に予め樹脂層を形成したもので、シートにはガラスやガスバリア性の高いフィルム等を用いることができる。また、封止樹脂のみでシートを形成していてもよい。シート状接着剤を、封止フィルム上に貼り付けることも可能である。封止フィルム上に、中空部を設けた構造にしてからデバイスと貼り合せることも可能である。
【0082】
封止フィルムを用いて封止する場合、例えば、ペロブスカイト太陽電池100を挟むように支持体110と対向して配置される。封止フィルムの基材としては、その形状、構造、大きさ、種類については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。封止フィルムは、基材の表面に水分や酸素の通過を防ぐバリア層を形成しており、基材の一方の面だけでも両面に形成されていてもよい。
【0083】
当該バリア層は、例えば、金属酸化物、金属、高分子と金属アルコキシドより形成された混合物などを主成分とする材質で構成されていてもよい。当該金属酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、アルミニウム、などを挙げることができ、当該高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロースなどを挙げることができ、当該金属アルコキシドとしては、例えば、テトラエトキシシラン、トリイソプロポキシアルミニウム、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどを挙げることができる。
【0084】
上述のバリア層は、例えば、透明であることが好ましい。また、バリア層は上記材料からの組合せによる単層であっても、複数の積層構造であっても構わない。バリア層の形成方法は、既知の方法を用いることができ、スパッタ法などの真空製膜、ディッピング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法、グラビア印刷法などの塗布方法を使用することができる。
【0085】
[配線]
本実施形態に用いられるペロブスカイト太陽電池100は、光によって発生した電流を効率的に取り出すため、電極、及び裏面電極にリード線(配線)を接続することが好ましい。リード線は、例えば、第1の電極120及び前記第2の電極160と、はんだ、銀ペースト、グラファイトのような導電性材料を用いて接続される。導電性材料は単独でも2種以上の混合または積層構造で用いても構わない。また、リード線を取り付けた部位は、物理的な保護の観点から、アクリル系樹脂やエポキシ系樹脂で覆っても構わない。
【0086】
リード線は、電気回路における電源や電子部品などを電気的に接続するための電線の総称であり、例えば、ビニール線、エナメル線などを挙げることができる。
【0087】
[非ペロブスカイト太陽電池]
本実施形態では非ペロブスカイト太陽電池200として、シリコン太陽電池が例示される。非ペロブスカイト太陽電池200は、第3の電極210と第4の電極230との間にシリコン半導体220が狭持された構造を有する。
【0088】
[シリコン半導体]
シリコン半導体220としては、シリコンインゴットをスライスカットすることで得られるシリコンウエハ、そのシリコンウエハを研磨して得られるシリコンウエハなどを用いることができる。シリコンウエハは単結晶であっても多結晶であってもよいが、単結晶が好ましい。この他、シリコン半導体220として、基板の上に作製された非晶質シリコンを結晶化させたものを使用することができる。また、シリコン半導体220として、CVD法、スパッタ法等を用いてシリコンを成膜時に結晶化させたものも利用できる。
【0089】
シリコン半導体220として、p型シリコン半導体を用いる場合、例えば、ホウ素、ガリウム等を添加物としてドープしたものを用いることができる。シリコンに含まれるこれらの添加物濃度は、1012~1021atom/cm3以下が好ましく、1013~1020atom/cm3以下がより好ましい。シリコン半導体220の抵抗率は、半導体中における電荷の移動及び空乏層の広がりの観点から、0.0001~1000Ωcmが好ましく、0.001~100Ωcm以上がより好ましい。
【0090】
シリコン半導体220として、n型シリコン半導体を用いる場合、例えば、リン、窒素、砒素等を添加物としてドープしたシリコンが使用される。
シリコン半導体220として、キャリア移動とコストの観点から単結晶又は多結晶のp型シリコンウエハを用いることが好ましい。シリコン半導体220の厚みは50μm以上が好ましく、1000μm以下が好ましく、700μm以下がより好ましい。
なお、本実施形態では、光電変換層としてシリコン半導体が用いられているが、光電変換層として化合物半導体を用いてもよい。
【0091】
[第3の電極、第4の電極]
第3の電極210、第4の電極230は、一方がカソード(正極)として働き、他方がアノード(負極)として働く。
第3の電極210として、導電体で形成された透明電極を用いることができる。当該透明電極としては、特に限定されないが、例えば、スズドープ酸化インジウム(ITO)膜、不純物ドープの酸化インジウム(In2O3)膜、不純物ドープの酸化亜鉛(ZnO)膜、フッ素ドープ二酸化スズ(FTO)膜、これらの二種以上を積層して形成された積層膜、金、銀、銅、アルミニウム、タングステン、チタン、クロム、ニッケル、及びコバルトなどが挙げられる。第1の電極120は、これらの材料単独でも2種類以上の材料の混合であってもよく、また、単層でも積層であっても構わない。
第4の電極230の材質としては、金属、炭素化合物、導電性金属酸化物、導電性高分子などが挙げられる。
金属としては、例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウムなどが挙げられる。
炭素化合物としては、例えば、グラファイト、フラーレン、カーボンナノチューブ、グラフェンなどが挙げられる。
導電性金属酸化物としては、例えば、ITO、FTO、ATOなどが挙げられる。
導電性高分子としては、例えば、ポリチオフェン、ポリアニリンなどが挙げられる。
第4の電極230の形成に用いられる材料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の非ペロブスカイト太陽電池200においては、シリコン半導体220の裏面側つまり、第4の電極230側に、シリコン酸化膜を作製することで開放電圧を向上させることができる。発電効率の観点から、当該シリコン酸化膜の厚みは1~14nmが好ましく、2~10nm以上がより好ましい。なお、シリコン酸化膜は、シリコン半導体220の第4の電極230側の表面全体を覆う形であってもよく、島状に覆う形であってもよい。シリコン酸化膜の作製方法としては、シリコン基板を酸化性の液体に浸漬させて酸化処理することによりシリコン基板の表面に極薄の酸化膜を形成する方法が挙げられる。酸化性の液体は、硝酸、過酸化水素水、塩酸、オゾン溶解水、過塩素酸、アンモニア及び過酸化水素水の混合液、塩酸及び過酸化水素水の混合液、硫酸及び過酸化水素水の混合液から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。また、酸化膜の形成方法においては、酸化性の液体による処理後に不活性ガス中で熱処理することが好ましい。加熱温度としては300℃以上が好ましく、500℃以上がより好ましい。
【0092】
p型をベースとするシリコン太陽電池における電極形成としては、セル全面上のグリッド電極及び裏面電極をそれぞれスクリーン印刷で形成する方法が挙げられる。セル全面のグリッド電極としては、薄いフィンガーラインと、フィンガーラインと直交に交差するバスバーを含むH型パターンをスクリーン印刷にて形成する。電極形成に用いられる導電性ペーストとしては、銀、銅、ニッケル、アルミニウムから作られるペースト、あるいは半田が好適であり、金属は単独でも混合でも構わない。
【0093】
[封止層]
本実施形態では、第3の電極210、シリコン半導体220および第4の電極230が封止層240により封止されている。これにより、シリコン半導体220が物理的に保護される。
封止層240の材料として、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、ポリオレフィンなどが挙げられる。また、封止層240は、UVカット機能を有する化合物を含有してもよい。物理的強度を高める観点から、封止層240をガラス板などで狭持してもよい。
【0094】
本実施形態では、封止層240の上面に支持体250が配置されている。支持体250は、非ペロブスカイト太陽電池200に光が届くように、透明であることが好ましい。支持体250としては、例えば、支持体110に用いることができるものとして説明したものを同様に使用できる。
【0095】
[バックフィルム]
本実施形態では、封止層240の下面にバックフィルム260が配置されている。バックフィルム260は、光を反射できるように、白色であることが好ましい。
【0096】
[接着層]
接着層300は、ペロブスカイト太陽電池100と非ペロブスカイト太陽電池200との間に設けられている。換言すると、接着層300により、ペロブスカイト太陽電池100と非ペロブスカイト太陽電池200とが隙間なく固定されている。
接着層300は、少なくとも無機成分(後述するハイドロタルサイトと、所望により加えられるその他の無機成分)を含み、当該無機成分に加えて後述する有機成分をさらに含むことが好ましい。
有機成分の含有量は、接着層300の全質量に対して、50質量%以上100質量%未満が好ましく、65~98質量%がより好ましく、70~90質量%が更に好ましい。
有機成分としては、例えば、高分子成分が挙げられ、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド、ポリオレフィン(ポリブタジエン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン等)、フェノール樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、シリコン樹脂が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用してもよい。
上記エポキシ樹脂、上記アクリル樹脂としては、例えば、ペロブスカイト太陽電池100の封止に用いられる材料として述べたエポキシ樹脂、アクリル樹脂が同様に使用できる。
中でも、有機成分としては、エポキシ樹脂及びポリオレフィンの少なくとも一方を含むことが好ましく、両方を含むことがより好ましい。上記ポリオレフィンとしては、ポリイソブチレン及びポリプロピレンの一種又は両方を含むことが好ましい。
接着層300が有機成分としてこれらの成分を含むことで、接着層300の密着性、柔軟性、強度、耐熱性等をバランス良く高めることができる。
接着層300中、エポキシ樹脂とポリオレフィンとの合計質量に対する、エポキシ樹脂の含有量は、20~99質量%が好ましく、45~90質量%がより好ましく、60~80質量%が更に好ましい。
有機成分は上述した以外の成分を含んでもよい。
接着層300は、無機成分として少なくともハイドロタルサイトを含む。接着層300は、無機成分として、ハイドロタルサイトに加えて、酸化ストロンチウム及び/又は酸化カルシウムを含むことが好ましい。これによれば、四端子タンデム型太陽電池10に侵入した水分をトラップすることができ、ひいては、四端子タンデム型太陽電池10の耐久性を高めることができる。
無機成分の全質量に対して、ハイドロタルサイトの含有量は、30~100質量%が好ましく、60~100質量%がより好ましく、90~100質量%が更に好ましい。
無機成分の全質量に対して、ハイドロタルサイト、酸化ストロンチウム、及び酸化カルシウムの合計含有量は、40~100質量%が好ましく、70~100質量%がより好ましく、95~100質量%が更に好ましい。
接着層300は、上述した成分以外にも周知の添加剤を含んでもよい。
接着層300の厚さは特に制限されないが、たとえば、5~100μmまたは10~50μmである。
接着層300の形成方法の一例としては、上述した各種原料を含む接着剤組成物をスピンコート法を用いて成膜した後、加熱処理を施す方法が挙げられる。
また、接着層300は、接着剤シート(シート状接着剤)を用いて形成してもよい。この場合、例えば、ペロブスカイト太陽電池100と非ペロブスカイト太陽電池200との間に接着剤シートを挟み込んで接着してもよい。接着に際しては、適宜、加圧及び/又は加熱してもよい。
【0097】
(実施形態2)
図2は、実施形態2に係る四端子タンデム型太陽電池10における構成を示す概略断面図である。実施形態2に係る四端子タンデム型太陽電池10に関して、実施形態1に係る四端子タンデム型太陽電池10と同様な構成については適宜説明を省略し、実施形態1に係る四端子タンデム型太陽電池10と異なる構成について説明する。
【0098】
本実施形態の四端子タンデム型太陽電池10では、非ペロブスカイト太陽電池200において、実施形態1の支持体250が用いられていない。このため、接着層300が封止層240に直接接する状態で、ペロブスカイト太陽電池100と非ペロブスカイト太陽電池200との間が接着層300により埋められている。
【0099】
以上説明した四端子タンデム型太陽電池10によれば、ペロブスカイト太陽電池100と非ペロブスカイト太陽電池200との間を接着層300で埋めることにより、ペロブスカイト太陽電池100と非ペロブスカイト太陽電池200との間で光の屈折、散乱を抑制しつつ、耐久性を向上させることができる。
【0100】
[アプリケーション]
本実施形態に係る四端子タンデム型太陽電池10の用途及び使用方法は、特に限定されず、例えば、一般的な光電変換素子(例えば一般的な太陽電池)と同様の用途に広く用いることができる。本実施形態の四端子タンデム型太陽電池10は、例えば、発生した電流を制御する回路基盤等と組み合わせることにより電源装置へ応用することができる。電源装置を利用している機器類としては、例えば、電子卓上計算機やソーラー電波腕時計などが挙げられる。また、携帯電話、電子ペーパー、温湿度計等に本実施形態の四端子タンデム型太陽電池10を電源装置として適用することも可能である。また、充電式や乾電池式の電気器具の連続使用時間を延ばすための補助電源や、二次電池と組み合わせることによって夜間使用などにも応用可能である。また、電池交換や電源配線等が不要な自立型電源としても利用可能である。
【実施例0101】
以下、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0102】
[実施例1]
以下のようにして、実施例1の四端子タンデム型太陽電池を作製(製造)した。
【0103】
[ペロブスカイト太陽電池の作製]
上述の(A-15)(0.1mmol/L)と共吸着剤として4-ホスホノブチル酸(12mmol/L)を溶解したDMF溶液を、ITOガラス基板(支持体であるガラス基板上に第1の電極としてITOが形成されたもの、25mm角サイズ)のITO上に1mL乗せ、スピンコーター(3、000rpm、30秒)を用いて前記ITO(第1の電極)上に単分子層(正孔輸送層)を形成した。次に、ヨウ化セシウム(0.738g)、ヨウ化ホルムアミジン(7.512g)、臭化メチルアミン(0.905g)、ヨウ化鉛(23.888g)、臭化鉛(1.022g)をDMF(40.0mL)とジメチルスルホキシド(DMSO、12.0mL)に溶解した溶液を、上記基板上にスピンコートを用いて製膜した。スピンコート(3000rpm)の開始から30秒後にクロロベンゼン(0.3mL)を滴下した。その後、150℃で10分加熱し、ペロブスカイト層(光電変換層)を得た。次いで、C60を20nm(電子輸送層)、バソキュプロイン(BCP、8nm)(電子注入層)をそれぞれ真空蒸着法を用いて形成し、次いでIZO(200nm)(第2の電極)をスパッタ法により製膜し、ペロブスカイト太陽電池(上部太陽電池)を作製した。
[シリコン太陽電池の作製]
約200μm厚のn型シリコンウエハの表面を洗浄し、ウエハの両面に水素ドープのアモルファスシリコンをCVDにて約10nmの厚みで製膜した。光が入射する側(フロント)と裏面(リア)にITOを70nmの厚みで形成した。その後、両面にスクリーン印刷にてAgペーストを設けた。PETフィルム(支持体)上にEVAシートを配置し、その上に作製したシリコン太陽電池を配置し、更にその上にEVAシートを配置し、最後にバックシートとして白色のバックシートを配置し、真空下、150℃で30分加熱してシリコン太陽電池(下部太陽電池)を作製した。
【0104】
[接着剤の合成]
接着剤として、ハイドロタルサイト(富士フィルム和光純薬社製、1.0g)、ポリイソブチレン(Aldrich社製、1.0g)、ポリプロピレン(Aldrich社製、1.0g)、エポック製エポキシ樹脂(E-01-001主剤:3.0g、硬化剤:1.5g)、トルエン(1.0g)を混合し、超音波ホモジナイザーで分散した。得た混合液を、シリコン樹脂で離型処理したPETフィルム上にスピンコートで薄膜を形成し、120℃で加熱を行い、接着剤シートを得た。当該接着剤シートの膜厚は約23μmであった。
【0105】
[四端子タンデム型太陽電池の作製]
シリコン太陽電池の支持体(PETフィルム)上に、上述の手順で得た接着剤シートを配置し、ペロブスカイト太陽電池の第二電極側に配置されるように真空ラミネーター(真空度1Pa、加熱80℃、加圧0.3MPa、時間30秒)にて貼り合わせを行った。得られた四端子タンデム型太陽電池の構造は、
図1と同様である。
【0106】
[太陽電池特性の評価]
実施例1で作製したペロブスカイト太陽電池単独、シリコン太陽電池単独の光電変換特性、並びに四端子タンデム型太陽電池の光電変換特性を、JISC8913:1998のシリコン結晶系太陽電池セルの出力測定方法に準拠した方法で測定した。結果を表1に示す。AM1.5G相当のエアマスフィルターを組み合わせたソーラーシュミレーター(分光計器社製SMO-250III型)に、2次基準Si太陽電池で100mW/cm2の光量に調整して測定用光源とし、ペロブスカイト型太陽電池セルの試験サンプル(実施例1で作製した封止デバイス)に光照射をしながら、ソースメーター(KeithleyInstrumentsInc.製、2400型汎用ソースメーター)を使用してI-Vカーブ特性を測定し、I-Vカーブ特性測定から得られた短絡電流(Isc)、開放電圧(Voc)、フィルファクター(FF)、そして、短絡電流密度(Jsc)、及び光電変換効率(PCE)を求めた。
四端子タンデム型太陽電池の作成直後に行われた光電変換特性の測定(初期特性の測定)の後、同じ四端子タンデム型太陽電池を85℃、85%RHの環境下に500時間整地した後、同様に光電変換特性の測定(耐久試験後の測定)を行った。
【0107】
式1:短絡電流密度(Jsc;mA/cm2)=Isc(mA)/有効受光面S(cm2)
式2:光電変換効率(PCE;%)=Voc(V)×Jsc(mA/cm2)×FF×100/100(mW/cm2)
【0108】
[実施例2]
実施例1におけるシリコン太陽電池の支持体(PETフィルム)を用いずにEVAシートが表面に露出したシリコン太陽電池(下部太陽電池)を作製し、このEVAシートの上に直接上述の接着剤シートを配置したこと以外は実施例1と同様にして四端子タンデム型太陽電池を作製(製造)し、光電変換効率を測定した。得られた四端子タンデム型太陽電池の構造は、
図2と同様である。また、太陽電池特性の結果を下記表1に示す。
【0109】
[実施例3]
実施例1における接着剤に、酸化カルシウム(Aldrich社製、0.01g)をさらに加えて超音波ホモジナイザーを行った以外は実施例1と同様にして四端子タンデム型太陽電池を作製(製造)し、光電変換効率を測定した。太陽電池特性の結果を下記表1に示す。
【0110】
[実施例4]
実施例1で用いた接着剤に、酸化ストロンチウム(Aldrich社製、0.01g)をさらに加えて超音波ホモジナイザーを行った以外は実施例1と同様にして四端子タンデム型太陽電池を作製(製造)し、光電変換効率を測定した。太陽電池特性の結果を下記表1に示す。
【0111】
[比較例1]
実施例1におけるハイドロタルサイトを除いた以外は、実施例と同様にして四端子タンデムデバイス型太陽電池を作製(製造)し、光電変換効率を測定した。太陽電池特性の結果を下記表1に示す。
【0112】
【0113】
表1に示すように、ペロブスカイト太陽電池とシリコン太陽電池との間に接着層を配置して空気層が存在しないようにすることにより、良好な太陽電池特性を得つつ、耐久性を向上させることができることが確認された。
本発明の四端子タンデム型太陽電池は、光電変換素子として有用である。本発明の四端子タンデム型太陽電池は、一般的な光電変換素子(例えば、一般的な太陽電池)と同様の用途及び使用方法で、広範な分野に適用可能である。
10 四端子タンデム型太陽電池、100 ペロブスカイト太陽電池、110 支持体、120 第1の電極、130 正孔輸送層、140 光電変換層、150 電子輸送層、160 第2の電極、200 非ペロブスカイト太陽電池、210 第3の電極、220 シリコン半導体、230 第4の電極、240 封止層、250 支持体、260 バックフィルム、300 接着層