(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117624
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】光電変換素子
(51)【国際特許分類】
H10K 30/50 20230101AFI20240822BHJP
H10K 30/40 20230101ALI20240822BHJP
H10K 30/85 20230101ALI20240822BHJP
【FI】
H10K30/50
H10K30/40
H10K30/85
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023824
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】519259342
【氏名又は名称】株式会社エネコートテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 温
(74)【代理人】
【識別番号】100132137
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 修平
(72)【発明者】
【氏名】久田 祐子
【テーマコード(参考)】
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
5F151AA20
5F151CB13
5F151CB27
5F151FA04
5F151FA06
5F151GA03
5F251AA20
5F251CB13
5F251CB27
5F251FA04
5F251FA06
5F251GA03
(57)【要約】
【課題】 優れた光電変換特性を示す光電変換素子を提供する。
【解決手段】 光電変換素子10は、支持体11上に、第1の電極12、電子輸送層13、光電変換層14、正孔輸送層15、及び第2の電極16が、この順序で積層された積層構造を有する。電子輸送層13は、4価の金属酸化物半導体および2価の金属酸化物半導体を含む。電子輸送層13における4価の金属酸化物半導体と2価の金属酸化物半導体との質量比は80:20~99:1である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極、電子輸送層、光電変換層、正孔輸送層、及び第2の電極が、この順序で積層され、
前記光電変換層は、ペロブスカイト化合物を含み、
前記電子輸送層は、4価の金属酸化物半導体および2価の金属酸化物半導体を含み、
前記電子輸送層における前記4価の金属酸化物半導体と前記2価の金属酸化物半導体との質量比が80:20~99:1である、光電変換素子。
【請求項2】
前記4価の金属酸化物半導体が二酸化スズであり、前記2価の金属酸化物半導体が酸化スズである、請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項3】
前記電子輸送層に、下記化学式(I)で記載される化合物を含有していることを特徴とする請求項1または2記載の光電変換素子。
A-L-X...(I)
上記式(I)中、Aはアミノ基、アルキル基、アリール基、アンモニウム基、またはヘテロ環基からなる群から選択される1種以上を有する1価の基を示し、Lはアルキレン基またはアリーレン基を示す。Xは前記4価の金属酸化物半導体または前記2価の金属酸化物半導体と反応可能な置換基を示す。
【請求項4】
前記化学式(I)におけるXが、シリル基、ホスホン酸基、スルホン酸基から選ばれることを特徴とする請求項3に記載の光電変換素子。
【請求項5】
前記ペロブスカイト化合物が、有機無機ペロブスカイト化合物である、請求項1または2に記載に記載の光電変換素子。
【請求項6】
前記有機無機ペロブスカイト化合物前が、スズ及び鉛の少なくとも一方を含む請求項5記載の光電変換素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、クリーンエネルギーとして、太陽光発電が注目を浴びており、太陽電池の開発が進んでいる。その一つとして、低コストで製造可能な次世代型の太陽電池として、ペロブスカイト材料を光吸収層に用いた太陽電池が急速に注目を集めている。例えば、非特許文献1では、ペロブスカイト材料を光吸収層に用いた溶液型の太陽電池が報告されている。また、非特許文献2には、固体型のペロブスカイト型太陽電池が高効率を示すことも報告されている。
【0003】
電子輸送層は、ガラス基板を用いた場合、高温焼成プロセスが適用できるため酸化チタンの前駆体溶液を基板に塗布・焼成することによって緻密で高性能な電子輸送層を形成することができる。一方、フィルム基板を用いた場合、高温プロセスが適用できないため、低温プロセスでデバイスを作製する必要があり、上述の方法を用いることができなかった。そこで、低温でも製膜できるように、酸化スズのコロイド溶液を塗布して電子輸送層として用いる方法が提案された(例えば非特許文献3)。しかしながら、コロイド溶液を塗布して膜を形成するため、緻密性に欠けるため、更なる高性能な電子輸送層の開発が求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】J. Am. Chem. Soc., 2009, Vol. 131, 6050-6051.
【非特許文献2】Science, 2012, Vol.388, 643-647.
【非特許文献3】J. Phys. Chem. C 2015, Vol. 119, 10212-10217.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、優れた発電効率を発揮する光電変換素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、光電変換素子である。当該光電変換素子は、第1の電極、電子輸送層、光電変換層、正孔輸送層、及び第2の電極が、この順序で積層され、前記光電変換層は、ペロブスカイト化合物を含み、前記電子輸送層は、4価の金属酸化物半導体および2価の金属酸化物半導体を含み、前記電子輸送層における前記4価の金属酸化物半導体と前記2価の金属酸化物半導体との質量比が80:20~99:1である。
上記態様の光電変換素子において、前記4価の金属酸化物半導体が二酸化スズであり、前記2価の金属酸化物半導体が酸化スズであってもよい。前記電子輸送層に、下記化学式(I)で記載される化合物を含有していてもよい。
A-L-X...(I)
上記式(I)中、Aはアミノ基、アルキル基、アリール基、アンモニウム基、またはヘテロ環基からなる群から選択される1種以上を有する1価の基を示し、Lはアルキレン基またはアリーレン基を示す。Xは前記4価の金属酸化物半導体または前記2価の金属酸化物半導体と反応可能な置換基を示す。
前記化学式(I)におけるXが、シリル基、ホスホン酸基、スルホン酸基から選ばれてもよい。前記ペロブスカイト化合物が、有機無機ペロブスカイト化合物であってもよい。前記有機無機ペロブスカイト化合物前が、スズ及び鉛の少なくとも一方を含んでもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、優れた発電効率を発揮する光電変換素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る光電変換素子の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明について、例を挙げてさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。なお、以下においては、実施形態に係る光電変換素子がペロブスカイト太陽電池である場合について説明する。
【0010】
[光電変換素子]
図1は、実施形態に係る光電変換素子10の構成の一例を示す断面図である。なお、
図1は、説明の便宜のため、適宜省略、誇張等をして模式的に描いている。
図1に示すように、光電変換素子10は、支持体(基板、基材などとも言う)11上に、第1の電極12、電子輸送層13、光電変換層14、正孔輸送層15、及び第2の電極16が、この順序で積層された積層構造(順構造)を有する。
以下、光電変換素子10の各構成について詳細に説明する。
【0011】
[支持体11]
支持体11は、特に限定されず、例えば、一般的な太陽電池等の光電変換素子に使用可能な基板を適宜用いてもよい。当該基板としては、例えば、ガラス、プラスチック板、プラスチック膜、無機結晶体等が挙げられる。また、これらの基板表面の一部又は全部の上に,金属膜,半導体膜,導電性膜及び絶縁性膜の少なくとも1種の膜が形成されている基板も、支持体11として好適に用いることができる。支持体11の大きさ、厚み等も特に限定されず、例えば、一般的な太陽電池等の光電変換素子と同様又はそれに準じてもよい。
【0012】
[第1の電極]
第1の電極12は、支持体11と正孔輸送層13との間に配置されている。第1の電極12は、後述する正孔輸送層13を支持するとともに、光電変換層14から正孔を取り出す機能を有する層である。また、第1の電極12は、例えば、カソード(正極)として働く層である。
【0013】
第1の電極12は、例えば、支持体11上に直接形成してもよい。第1の電極12は、例えば、導電体から形成された透明電極であってもよい。前記透明電極はとしては、特に限定されないが、例えば、スズドープ酸化インジウム(ITO)膜、不純物ドープの酸化インジウム(In2O3)膜、不純物ドープの酸化亜鉛(ZnO)膜、フッ素ドープ二酸化スズ(FTO)膜、これらの二種以上を積層して形成された積層膜、金、銀、銅、アルミニウム、タングステン、チタン、クロム、ニッケル、及びコバルトなどが挙げられる。これらは単独でも2種類以上の混合であっても、また、単層でも積層であっても構わない。また、これらの膜は、例えば拡散防止層として機能するものであってもよい。第1の電極12の厚みは特に制限されないが、例えば、シート抵抗が5~15Ω/□(単位面積当たり)となるように調整することが好ましい。第1の電極12の形成方法は特に限定されないが、例えば、形成する材料に応じ、公知の成膜方法により得ることができる。また、第1の電極12の形状も特に限定されないが、例えば、膜状であっても、メッシュ状のような格子状に形成されていても構わない。支持体11上に第1の電極12を形成する方法は特に限定されないが、例えば、公知の方法でもよく、例えば、真空蒸着やスパッタリング等の真空製膜が好ましい。また第1の電極12はパターニングされたものを用いてもよい。パターニング方法としては、特に限定されないが、例えば、レーザーやエッチング液に浸す方法、真空製膜時にマスクを用いてパターニングする方法等が挙げられ、本実施形態においては何れの方法であっても構わない。また、第1の電極12は、電気的抵抗値を下げる目的で、金属配線などを併用してもよい。当該金属配線(金属リード線)の材質としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、銅、銀、金、白金、ニッケルなどが挙げられる。前記金属リード線は、例えば、蒸着、スパッタリング、圧着などで第1の基板に形成し、その上にITOやFTOの層を設ける、あるいはITOやFTOの上に設けることにより併用することが可能である。
【0014】
[電子輸送層]
電子輸送層13は、第1の電極12と光電変換層14との間に配置されている。
電子輸送層13は、4価の金属酸化物半導体および2価の金属酸化物半導体を含む。4価の金属酸化物半導体および2価の金属酸化物半導体の結晶型は、特に制限されず、単結晶、多結晶、非晶質のいずれの結晶型でもよい。
4価の金属酸化物半導体としては、二酸化スズ(酸化スズ(IV))、酸化チタン(IV)が挙げられる。これらのうち、4価の金属酸化物として二酸化スズを用いることが好ましい。
2価の金属酸化物半導体としては、酸化スズ(酸化スズ(II))、酸化チタン(II)が挙げられる。これらのうち、2価の金属酸化物半導体として酸化スズを用いることが好ましい。
電子輸送層13における4価の金属酸化物半導体と2価の金属酸化物半導体との質量比は、80:20~99:1であることが好ましい。
電子輸送層13中、4価の金属酸化物半導体と2価の金属酸化物半導体との合計含有量(好ましくは、酸化スズ(IV)と酸化スズ(II)との合計含有量)は、電子輸送層13中の有機物以外の全質量に対して、30~100質量%が好ましく、80~100質量%がより好ましく、95~100質量%が更に好ましい。
電子輸送層13は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上述した金属酸化物半導体以外お半導体材料と含んでもよい。当該半導体材料としては、例えば、単体半導体、上述した金属酸化物半導体以外の化合物半導体、有機n型半導体などを挙げることができる。
化合物半導体としては、特に限定されないが、例えば、金属のカルコゲニド、具体的には、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、タンタル等の酸化物;カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモン、ビスマス等の硫化物;カドミウム、鉛等のセレン化物;カドミウム等のテルル化物などが挙げられる。他の化合物半導体としては亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物、ガリウム砒素、銅-インジウム-セレン化物、銅-インジウム-硫化物等が挙げられる。また、化合物半導体の結晶型に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、単結晶でも多結晶でもよく、非晶質でもよい。
【0015】
電子輸送層13の膜厚としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5nm~1000nmが好ましく、10nm~700nmがより好ましい。
【0016】
電子輸送層13の形成方法としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、真空中で薄膜を形成する方法(真空製膜法)、湿式製膜法などが挙げられる。真空製膜法としては、例えば、スパッタリング法、パルスレーザーデポジッション法(PLD法)、イオンビームスパッタ法、イオンアシスト法、イオンプレーティング法、真空蒸着法、アトミックレイヤーデポジッション法(ALD法)、化学気相成長法(CVD法)などが挙げられる。湿式製膜法としては、電子輸送材料を溶解した溶媒を塗布して形成する方法や、酸化物半導体の場合、ゾル-ゲル法が挙げられる。ゾル-ゲル法は、溶液から、加水分解や重合・縮合などの化学反応を経てゲルを作製し、その後、加熱処理によって緻密化を促進させる方法である。ゾル-ゲル法を用いた場合、ゾル溶液の塗布方法としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、また、湿式印刷方法として、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、スクリーン印刷などが挙げられる。また、ゾル溶液を塗布した後の加熱処理の際の温度としては、80℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。
【0017】
本実施形態では、特に湿式製膜によって電子輸送層13を形成することが望ましく、特にハロゲン化金属を水等で加水分解しながら、4価の金属酸化物半導体および2価の金属酸化物半導体を形成してもよい。ハロゲン化金属としては、塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、臭化スズ(II)、臭化スズ(IV)、フッ化スズ(II)、フッ化スズ(IV)、ヨウ化スズ(II)、ヨウ化スズ(IV)、塩化チタン、臭化チタン、ヨウ化チタンを挙げることができ、単独でも、2種以上の混合であっても構わない。ハロゲン化物を分散させるために用いられる溶媒は、加水分解するための水を含んでいればよく、有機溶媒と水の混合液を用いてもよい。使用できる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、2-プロパノール、2-メトキシエタノールなどのアルコール類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、アセトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸イソブチル、γ-ブチロラクトンなどのエステル類、アセトニトリル、3-メトキシプロピオニトリルなどのニトリル類を挙げることができる。
【0018】
本実施形態の光電変換素子における電子輸送層13は、膜中あるいは膜の表面に、下記化学式(I)で記載される化合物(以下、有機化合物という場合がある)を含んでもよい。
A-L-X...(I)
【0019】
上記式(I)中、Aはアミノ基、アルキル基、アリール基、アンモニウム基、またはヘテロ環基からなる群から選択される1種以上を有する1価の基を示す。
Aにおける上記アルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよく、炭素数は、たとえば1~6である。
Aにおける上記アリール基は、単環でも多環(例えば2~14環)でもよく、炭素数は6~40が好ましい。
Aにおける上記アンモニウム基は、「-N+RM
3 X-」で表される基が好ましい。
「-N+RM
3 X-」中、RMはそれぞれ独立に置換基を表す。RMで表される置換基としては、有機基(例えば炭素数1~6)が好ましく、炭化水素基(例えば炭素数1~6)がより好ましく、アルキル基又はアリール基が更に好ましく、アルキル基が特に好ましい。RMで表され得るアルキル基及びアリール基としては、例えば、Aにおける上記アルキル基及び上記アリール基として説明した基が同様に挙げられる。「-N+RM
3 X-」中、X-はアニオンを表し、例えば、水酸化物イオン、酸化物イオン、塩化物イオン、フッ化物イオン、及びシアン化物イオンが挙げられる。
Aにおける上記ヘテロ環基は、単環でも多環でもよく、芳香環のみからなってもよく、非芳香環のみからなってもよく、芳香環と非芳香環とが縮環していてもよく、環員原子数は3~40が好ましい。上記ヘテロ環基は環員原子として1以上(例えば1~5)のヘテロ原子を有する。上記ヘテロ環基のヘテロ原子としては、窒素原子、硫黄原子、及び酸素原子からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。上記ヘテロ環基の具体例としては、ピリジン環基、キノリン環基、アジリジン環基、アゼチジン環基、ピロリジン環基、イミダゾリジン環基、ピロール環基、ピラゾール環基、イミダゾール環基、トリアゾール環基、チアゾール環基、モルホリン環基、ピペリジン環基、ピペラジン環基、ピラジン環基、ヘキサメチレンイミン環基、インドール環基、キノキサリン環基、テトラヒドロフラン環基、フラン環基、テトラヒドロチオフェン環基、及びチオフェン環基が挙げられる。
【0020】
中でも、Aは、「-LA-AA」で表される基であることが好ましい。
「-LA-AA」中、AAは、上記アミノ基、上記アルキル基、上記アリール基、上記アンモニウム基、または上記ヘテロ環基を表す。
「-LA-AA」中、LAは、単結合又は2価の連結基を表す。
LAにおける2価の連結基としては、例えば、アルキレン基(直鎖状でも分岐鎖状でもよく、炭素数は1~8が好ましい)、-NRN-(RNは水素原子又は置換基。置換基としてはアルキル基が好ましく、当該アルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、炭素数は1~8が好ましい)、-C(=NRN)-(RNは-NRN-におけるRNと同様である)、カルボニル基、エーテル基、チオエーテル基、エステル基、カルボニルアミノ基、ビニレン基、ビニリデン基、アセチレン基、芳香環基(単環でも多環でもよく、ヘテロ環基を有していてもよい)、非芳香環基(単環でも多環でもよく、ヘテロ原子を有していてもよい)、及び、これらのうちの2以上(例えば2~6)の基の組み合わせからなる2価の連結基が挙げられる。
なお、上記2以上の基の組み合わせからなる2価の連結基は、同種の基を含んでいてもよい(ただし、アルキレン基同士が連続して結合する組み合わせは含まない)。
ただし、LAが2価の連結基であり、かつ、化学式(I)のLがアルキレン基である場合、LA中において、化学式(I)のLと直接結合する原子が、メチレン基を構成する炭素原子(-CH2-を構成する炭素原子)であることはない。
【0021】
上記式(I)中、Lはアルキレン基またはアリーレン基を示す。
アルキレン基は、直鎖状でも分岐状でもよく、炭素数は、たとえば1~6であり、2~3が好ましい。上記アリーレン基としては、たとえば、p-フェニレン基、m-フェニレン基、o-フェニレン基、置換フェニレン基、p,p’-ジフェニレンスルフォン基、p,p’-ビフェニレン基、p,p’-ジフェニレンエーテル基、p,p’-ジフェニレンカルボニル基、ナフタレン基等が挙げられる。
【0022】
上記式(I)中、Xは4価の金属酸化物半導体または2価の金属酸化物半導体と反応可能な置換基を示す。なお、電子輸送層13において、有機化合物が、Xで表される基において4価の金属酸化物半導体または2価の金属酸化物半導体等と反応していても、当該反応前の有機化合物に由来する化合物又は部分構造は、上記有機化合物に含めるものとする。
4価の金属酸化物半導体または2価の金属酸化物半導体と反応可能な置換基としては、カルボキシル基、ホスホン酸基、ボロン酸基、スルホン酸基、シリル基を挙げることができる。
上記シリル基は「-SiR3」で表される基である。「-SiR3」中のRは、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、置換基としては、有機基(例えば炭素数1~6)、水酸基、又はハロゲン原子が好ましく、アルコキシ基(直鎖状でも分岐鎖状でもよく、炭素数1~6が好ましい)がより好ましい。上記シリル基の具体例としては、ハロゲン化シリル基、アルコキシシリル基、ヒドロキシシリル基が挙げられる。
中でもXとしては、ホスホン酸基、スルホン酸基、又はシリル基が好ましい。
【0023】
上述の有機化合物の具体例としては、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、トリメトキシ[3-(メチルアミノ)プロピル]シラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、N-メチル-3-(トリエトキシシリル)プロパン-1-アミン、[3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、[3-(ジエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、塩化トリメチル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウム、トリメトキシ[3-(フェニルアミノ)プロピル]シラン、臭化トリメチル[3-(トリエトキシシリル)プロピル]アンモニウム、トリエトキシ(1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシル)シラン、トリエトキシ(1H,1H,2H,2H-ヘプタデカキサフルオロデシル)シラン、ペンタフルオロフェニルエトキシジメチルシラン、トリエトキシ(ペンタフルオロフェニル)シラン、トリメトキシ(3,3,3-トリフルオロプロピル)シラン、3-(トリエトキシシリル)プロピルイソシアナート、トリ[3-(トリメトキシシリル)プロピル]尿素、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、(3-ブロモプロピル)トリエトキシシラン、3-シアノプロピルトリエトキシシラン、3-(トリエトキシシリル)プロピオニトリル、1-(トリメチルシリル)イミダゾール、ビス[3-(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのシランカップリング剤、n-オクチルホスホン酸、(1-アミノエチル)ホスホン酸、ベンズヒドリルホスホン酸、(アミノエチル)ホスホン酸、ニトリロトリ(メチレンホスホン酸)、(3-ブロモプロピル)ホスホン酸、(4-アミノフェニル)ホスホン酸、(ピリジン-4-イルメチル)ホスホン酸・1水和物、グリシン-N,N-ビス(メチレンホスホン酸)、N,N,N‘,N’-エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、3-ホスホノプロピオン酸、りん酸二水素2-(1-メチルグアニジノ)エチルなどのホスホン酸及びそのエステル、アミノメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、4-ヒドラジノベンゼンスルホン酸、3-シクロヘキシルアミノプロパンスルホン酸、3-アミノベンゼンスルホン酸、3-モルホリノプロパンスルホン酸、ヒドロキシルアミン-O-スルホン酸、ノナフルオロ-1-ブタンスルホン酸、2-(4-ピリジル)エタンスルホン酸、3-アミノ-1-プロパンスルホン酸、3-(カルバムイミドイルチオ)-1-プロパンスルホン酸、2-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]エタンスルホン酸、クレアチンなどのスルホン酸及びそのエステルを挙げることができる。
【0024】
上述の有機化合物を含む電子輸送層13を形成する方法としては、ハロゲン化金属溶液に混合して得られる混合液を用いて電子輸送層を形成する方法、4価金属酸化物半導体または2価の金属酸化物半導体を含む電子輸送層を形成後に上述の有機化合物を被覆する方法が挙げられる。
金属酸化物半導体を含む溶液に上述の有機化合物を混合する方法に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。また、電子輸送層を形成した後、有機化合物を被覆する場合には、上述の有機化合物を溶解した溶液に接触させて、電子輸送層と上述の有機化合物を結合させる手法であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば浸漬法、スピンコート法、スプレー法、ディップ法、ローラ法、エアーナイフ法などを適用することができる。
金属酸化物半導体を含む溶液に上述の有機化合物を混合した混合液を用いて電子輸送層13を形成した場合など、電子輸送層13が有機物(好ましくは上述の有機化合物)を含む場合(好ましくは層の内部にも含む場合)において、有機物の含有量は、電子輸送層13の全質量に対して、0質量%超40質量%以下が好ましく、0.001~10質量%がより好ましく、0.02~1質量%が更に好ましい。
なお、4価の金属酸化物半導体または2価の金属酸化物半導体によって形成される層が、上述の有機化合物によって被覆されていてもよい。
【0025】
[光電変換層]
光電変換層14は、電子輸送層13と正孔輸送層15との間に配置されている。
光電変換層14(光吸収層、ペロブスカイト層と呼ばれる場合がある)は、特に限定されず、例えば、一般的な太陽電池等の光電変換素子に用いられる光電変換層と同様でもよい。光電変換層14は、例えば、ペロブスカイト化合物を含む。当該ペロブスカイト化合物は、例えば、下記化学式(III)で表される化合物であってもよい。
XαYβZγ...(III)
【0026】
化学式(III)において、α:β:γの比率は3:1:1であり、β及びγは1より大きい整数を表す。Xはハロゲンイオン、Yはアミノ基を有する有機化合物、Zは金属イオンを表す。ペロブスカイト層は、電子輸送層に隣接して配置されることが好ましい。なお、α:β:γの比率は、例えば、3:1.05:0.95のように、必ずしも3:1:1である必要はない。
【0027】
化学式(III)におけるXとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲンイオンが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
化学式(III)におけるYとしては、メチルアミン、エチルアミン、n-ブチルアミン、ホルムアミジンなどのアルキルアミン化合物イオン(アミノ基を有する有機化合物)や、有機に限らず、セシウム、カリウム、ルビジウムなどのアルカリ金属イオンが挙げられる。アルキルアミン化合物イオンやアルカリ金属イオンは、それぞれ1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、有機(アルキルアミン化合物イオン)と無機(アルカリ金属イオン)とを併用することもでき、例えば、セシウムイオンとホルムアミジンを併用してもよい。
【0029】
化学式(III)におけるZとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、鉛、インジウム、アンチモン、スズ、銅、ビスマス等の金属などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。特に鉛この中でも、特に鉛とスズの併用が好ましい。また、ペロブスカイト層は、ハロゲン化金属からなる層と有機カチオン分子が並んだ層が、交互に積層した層状ペロブスカイト構造を示すことが好ましい。ペロブスカイト層は、アルカリ金属を含有してもよい。ペロブスカイト層がアルカリ金属を少なくとも含有すると、出力が高くなる点で有利である。アルカリ金属としては、例えば、セシウム、ルビジウム、カリウムなどが挙げられる。これらの中でも、セシウムが好ましい。
【0030】
光電変換層14は、前述のとおり、ペロブスカイト化合物から形成されたペロブスカイト層であってもよい。このようなペロブスカイト層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ハロゲン化金属及びハロゲン化アルキルアミンを、溶解又は分散させた溶液を塗布した後に乾燥する方法などが挙げられる。
【0031】
また、ペロブスカイト層を形成する方法としては、例えば、ハロゲン化金属を溶解又は
分散させた溶液を塗布、乾燥した後、ハロゲン化アルキルアミンを溶解させた溶液中に浸
して、ペロブスカイト化合物を形成する二段階析出法などが挙げられる。
【0032】
ペロブスカイト層を形成する方法としては、他に、例えば、ハロゲン化金属及びハロゲン化アルキルアミンを溶解又は分散した溶液を塗布しながら、ペロブスカイト化合物にとっての貧溶媒(溶解度が小さい溶媒)を加えて結晶を析出させる方法などが挙げられる。
【0033】
ペロブスカイト層を形成する方法としては、他に、例えば、メチルアミンなどが充満
したガス中において、ハロゲン化金属を蒸着する方法等も挙げられる。
【0034】
ペロブスカイト層を形成する方法としては、ハロゲン化金属及びハロゲン化アルキルアミンを溶解又は分散した溶液を塗布しながら、ペロブスカイト化合物にとっての貧溶媒を加えて結晶を析出させる方法が特に好ましい。これらの溶液を塗布する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、浸漬法、スピンコート法、スプレー法、ディップ法、ローラ法、エアーナイフ法などが挙げられる。また、溶液を塗布する方法としては、例えば、二酸化炭素などを用いた超臨界流体中で析出させる方法であってもよい。上述の貧溶媒を加えて結晶を析出させる方法として、使用される貧溶媒としては、n-ヘキサン、n-オクタンなどの炭化水素類、メタノール、エタノール、2-プロパノールなどのアルコール類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類、アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸イソブチル、γ-ブチロラクトンなどのエステル類、アセトニトリル、3-メトキシプロピオニトリルなどのニトリル類、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼンなどの芳香族炭化水素化合物類、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒、クロロフロロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボンなどのフッ素系溶媒を挙げることができる。
【0035】
光電輸送層14の厚みは、特に限定されないが、欠陥や剥離による性能劣化をより抑制する観点から、50~1200nmが好ましく、200~1000nmがより好ましい。
【0036】
[正孔輸送層]
正孔輸送層15(正孔注入層とも言う)は、光電変換層14と第2の電極16との間に積層されている。
正孔輸送層15は、例えば、導電体、半導体、有機正孔輸送材料等を用いることができる。これらの材料は,光電変換層14から正孔を受け取り,正孔を輸送する正孔輸送材料として機能し得る。当該導電体及び半導体としては、例えば、CuI、CuInSe2,CuS等の1価銅を含む化合物半導体;GaP,NiO,CoO,FeO,Bi2O3,MoO2,Cr2O3等の銅以外の金属を含む化合物が挙げられる。なかでも、より効率的に正孔のみを受け取り、より高い正孔移動度を得る観点から、1価銅を含む半導体が好ましく,CuIがより好ましい。有機正孔輸送材料としては、例えば、ポリ-3-ヘキシルチオフェン(P3HT)、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等のポリチオフェン誘導体;2,2’,7,7’-テトラキス-(N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミン)-9,9’-スピロビフルオレン(Spiro-OMeTAD)等のフルオレン誘導体;ポリビニルカルバゾール等のカルバゾール誘導体;ポリ[ビス(4-フェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)アミン](PTAA)等のトリフェニルアミン誘導体;ジフェニルアミン誘導体;ポリシラン誘導体;ポリアニリン誘導体等が挙げられる。なかでも、より効率的に正孔のみを受け取り、より高い正孔移動度を得る観点から、トリフェニルアミン誘導体、フルオレン誘導体等が好ましく、PTAA、Spiro-OMeTADなどがより好ましい。
【0037】
正孔輸送層15中には,正孔輸送特性をさらに向上させることを目的として、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSI)、銀ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、トリフルオロメチルスルホニルオキシ銀、NOSbF6、SbCl5、SbF5,トリス(2-(1H-ピラゾール-1-イル)-4-tert-ブチルピリジン)コバルト(III)トリ[ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド]等の酸化剤を含むこともできる。また、正孔輸送層15中には,t-ブチルピリジン(TBP)、2-ピコリン、2,6-ルチジン等の塩基性化合物を含むこともできる。酸化剤及び塩基性化合物の含有量は、従来から通常使用される量とすることができる。
正孔輸送層15の膜厚は、より効率的に正孔のみを受け取り、より高い正孔移動度を得る観点から、例えば,50~800nmが好ましく、100~600nmがより好ましい。正孔輸送層15の形成方法は特に限定されず、公知の方法に従って行うことができる。例えば、ディップ法、スプレー法、スピンコート法、ブレードコート法などの湿式製膜や、スパッタ法等の真空製膜が挙げられる。
【0038】
[第2の電極]
第2の電極16は、光電変換層14が設けられる面とは反対側の正孔輸送層15の主表面に配置されている。
第2の電極16(例えば裏面電極であってもよい)は、例えば、正孔輸送層15を介して光電変換層14から正孔を取り出す機能を有する層である。また、第2の電極16は、例えば、カソード(正極)として働く層である。
【0039】
第2の電極16は、正孔輸送層15上に直接形成してもよい。また、第2の電極16の材質は、特に限定されず、例えば、第1の電極12と同様の材質を用いることができる。第2の電極16としては、その形状、構造、大きさについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。第2の電極16の材質としては、金属、炭素化合物、導電性金属酸化物、導電性高分子などが挙げられる。
【0040】
当該金属としては、例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウムなどが挙げられ、当該炭素化合物としては、例えば、グラファイト、フラーレン、カーボンナノチューブ、グラフェンなどが挙げられる。当該導電性金属酸化物としては、例えば、ITO、FTO、ATOなどが挙げられる。当該導電性高分子としては、例えば、ポリチオフェン、ポリアニリンなどが挙げられる。
【0041】
第2の電極16の形成に用いられる材料は、1種単独であってもよいし、上述した材料の2種以上であってもよい。第2の電極16は、用いられる材料の種類や正孔輸送層13の種類により、電子輸送層15上に塗布、ラミネート、真空蒸着、CVD、貼り合わせなどの方法を適宜用いることにより形成可能である。
【0042】
また、本実施形態の光電変換素子10においては、第1の電極12及び第2の電極16の少なくとも一方は実質的に透明であることが好ましい。
図1に示す、本実施形態の光電変換素子10では、第1の電極12を透明にして、入射光を第1の電極12側から入射させる形態が例示されている。この場合、第2の電極16(裏面電極)には光を反射させる材料を使用することが好ましく、金属、導電性酸化物を蒸着したガラス、プラスチック、金属薄膜などが好ましく用いられる。また、入射光側の電極である第1の電極12に反射防止層を設けることも有効な手段である。
【0043】
本実施形態では、第1の電極12、電子輸送層13、光電変換層14、正孔輸送層15、及び第2の電極16が、この順序で積層された順構造が例示され、支持体11の側から光が入射する形態が例示されているが、第2の電極16の側から光が入射される形態であってもよい。この場合、第2の電極16が透明電極であることが好ましい。
また、支持体11、第1の電極12、電子輸送層13、光電変換層14、光電変換層15、及び第2の電極16の各層間に、他の構成要素が存在していてもよいし存在していなくてもよい。
【0044】
[封止]
本実施形態の光電変換素子10は、水や酸素から光電変換素子10を構成する各層を保護するために封止されていてもよい。封止の構造は特に限定されないが、例えば、一般的な光電変換素子(例えば太陽電池)と同様でもよく、具体的には、例えば、光電変換素子10の外周部のみを封止材を塗布してガラスやフィルムで覆ってもよく、光電変換素子10の全面をガラスやフィルムで封止してもよい。
【0045】
光電変換素子10の封止に用いられる材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エポキシ樹脂やアクリル樹脂を用い、硬化させることが好ましいが、硬化していなくても、一部だけが硬化していてもよい。
【0046】
エポキシ樹脂は、特に限定されないが、例えば、水分散系、無溶剤系、固体系、加熱硬化型、硬化剤混合型、紫外線硬化型などが挙げられ、これらの中でも熱硬化型及び紫外線硬化型が好ましく、紫外線硬化型がより好ましい。なお、紫外線硬化型であっても、加熱を行うことは可能であり、紫外線硬化した後であっても加熱を行うことが好ましい。エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ノボラック型、環状脂肪族型、長鎖脂肪族型、グリシジルアミン型、グリシジルエーテル型、グリシジルエステル型などが挙げられ、これらは、単独で使用しても、2種以上の併用であってもよい。また、エポキシ樹脂には、必要に応じて硬化剤や各種添加剤を混合することが好ましい。既に市販されているエポキシ樹脂組成物を、本実施形態において使用することができる。中でも、太陽電池や有機EL素子用途向けに開発、市販されているエポキシ樹脂組成物もあり、本実施形態において特に有効に使用できる。市販されているエポキシ樹脂組成物としては、例えば、TB3118、TB3114、TB3124、TB3125F(株式会社スリーボンド製)、WorldRock5910、WorldRock5920、WorldRock8723(協立化学産業株式会社製)、WB90US(P)、WB90US-HV(株式会社モレスコ製)等が挙げられる。
【0047】
アクリル樹脂としては、特に限定されないが、例えば、太陽電池や有機EL素子用途向けに開発、市販されているものを有効に使用できる。市販されているアクリル樹脂組成物としては、例えば、TB3035B、TB3035C(株式会社スリーボンド製)等が挙げられる。
【0048】
硬化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アミン系、酸無水物系、ポリアミド系、その他の硬化剤などが挙げられる。アミン系硬化剤としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの脂肪族ポリアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族ポリアミンなどが挙げられ、酸無水物系硬化剤としては、無水フタル酸、テトラ及びヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ピロメリット酸、無水ヘット酸、ドデセニル無水コハク酸などが挙げられる。その他の硬化剤としては、イミダゾール類、ポリメルカプタンなどが挙げられる。これらは単独で使用しても、2種以上の併用であってもよい。
【0049】
添加剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、充填材(フィラー)、ギャップ剤、重合開始剤、乾燥剤(吸湿剤)、硬化促進剤、カップリング剤、可とう化剤、着色剤、難燃助剤、酸化防止剤、有機溶剤などが挙げられる。これらの中でも、充填材、ギャップ剤、硬化促進剤、重合開始剤、乾燥剤(吸湿剤)が好ましく、充填材及び重合開始剤がより好ましい。添加剤として充填材を含有することにより、水分や酸素の浸入を抑制し、更には硬化時の体積収縮の低減、硬化時あるいは加熱時のアウトガス量の低減、機械的強度の向上、熱伝導性や流動性の制御などの効果を得ることができる。そのため、添加剤として充填材を含むことは、様々な環境で安定した出力を維持する上で非常に有効である。
【0050】
また、光電変換素子10の出力特性やその耐久性に関しては、侵入する水分や酸素の影響だけでなく、封止部材の硬化時あるいは加熱時に発生するアウトガスの影響が無視できない。特に、加熱時に発生するアウトガスの影響は、高温環境保管における出力特性に大きな影響を及ぼす。封止部材に充填材やギャップ剤、乾燥剤を含有させることにより、これら自身が水分や酸素の浸入を抑制できるほか、封止部材の使用量を低減できることにより、アウトガスを低減させる効果を得ることができる。封止部材に充填材やギャップ剤、乾燥剤を含有させることは、硬化時だけでなく、光電変換素子を高温環境で保存する際にも有効である。
【0051】
前記充填材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結晶性あるいは不定形のシリカ、タルクなどのケイ酸塩鉱物、アルミナ、窒化アルミ、窒化珪素、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム等の無機系充填材などが挙げられる。これらの中でも、特にハイドロタルサイトが好ましい。また、これらは、単独で使用しても、2種以上の併用であってもよい。
【0052】
前記充填材の平均一次粒径は、特に限定されないが、0.1μm以上10μm以下が好ましく、1μm以上5μm以下がより好ましい。前記充填材の平均一次粒径が上記の好ましい範囲内であると、水分や酸素の侵入を抑制する効果を十分に得ることができ、粘度が適正となり、基板との密着性や脱泡性が向上し、封止部の幅の制御や作業性に対しても有効である。
【0053】
当該充填材の含有量としては、封止部材全体(100質量部)に対し、10質量部以上90質量部以下が好ましく、20質量部以上70質量部以下がより好ましい。前記充填材の含有量が上記の好ましい範囲内であることにより、水分や酸素の浸入抑制効果が十分に得られ、粘度も適正となり、密着性や作業性も良好となる。
【0054】
ギャップ剤は、ギャップ制御剤あるいはスペーサー剤とも称される。添加剤としてギャップ材を含むことにより、封止部のギャップを制御することが可能になる。例えば、第1の基板又は第1の電極の上に、封止部材を付与し、その上に第2の基板を載せて封止を行う場合、封止部材がギャップ剤を混合していることにより、封止部のギャップがギャップ剤のサイズに揃うため、容易に封止部のギャップを制御することができる。
【0055】
ギャップ剤としては、特に限定されないが、例えば、粒状でかつ粒径が均一であり、耐溶剤性や耐熱性が高いものが好ましく、目的に応じて適宜選択することができる。前記ギャップ剤としては、エポキシ樹脂と親和性が高く、粒子形状が球形であるものが好ましい。具体的には、ガラスビーズ、シリカ微粒子、有機樹脂微粒子などが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。ギャップ剤の粒径としては、設定する封止部のギャップに合わせて選択可能であるが、1μm以上100μm以下が好ましく、5μm以上50μm以下がより好ましい。
【0056】
前記重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、熱や光を用いて重合を開始させる重合開始剤が挙げられ、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱重合開始剤、光重合開始剤などが挙げられる。熱重合開始剤は、加熱によってラジカルやカチオンなどの活性種を発生する化合物であり、2,2’-アゾビスブチロニトリル(AIBN)のようなアゾ化合物や、過酸化ベンゾイル(BPO)などの過酸化物などが挙げられる。熱カチオン重合開始剤としては、ベンゼンスルホン酸エステルやアルキルスルホニウム塩等が用いられる。光重合開始剤は、エポキシ樹脂の場合光カチオン重合開始剤が好ましく用いられる。エポキシ樹脂に光カチオン重合開始剤を混合し、光照射を行うと光カチオン重合開始剤が分解して、酸を発生し、酸がエポキシ樹脂の重合を引き起こし、硬化反応が進行する。光カチオン重合開始剤は、硬化時の体積収縮が少なく、酸素阻害を受けず、貯蔵安定性が高いといった効果を有する。
【0057】
光カチオン重合開始剤としては、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタセロン化合物、シラノール・アルミニウム錯体などが挙げられる。また、重合開始剤として、光を照射することにより酸を発生する機能を有する光酸発生剤も使用できる。光酸発生剤は、カチオン重合を開始する酸として作用し、カチオン部とアニオン部からなるイオン性のスルホニウム塩系やヨードニウム塩系などのオニウム塩などが挙げられる。これらは、単独で使用しても、2種以上の併用であってもよい。
【0058】
重合開始剤の添加量としては、特に限定されず、使用する材料によって異なる場合があるが、封止部材全体(100質量部)に対し、0.5質量部以上10質量部以下が好ましく、1質量部以上5質量部以下がより好ましい。添加量が上記の好ましい範囲内であることにより、硬化が適正に進み、未硬化物の残存を低減することができ、またアウトガスが過剰になるのを防止できる。
【0059】
乾燥剤(吸湿剤とも称される)は、水分を物理的あるいは化学的に吸着、吸湿する機能を有する材料であり、封止部材に含有させることにより、耐湿性を更に高め、アウトガスの影響を低減できる。当該乾燥剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、粒子状であるものが好ましく、例えば、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、シリカゲル、モレキュラーシーブ、ゼオライトなどの無機吸水材料が挙げられる。これらの中でも、吸湿量が多いゼオライトが好ましい。これらは、単独で使用しても、2種以上の併用であってもよい。
【0060】
前記硬化促進剤(硬化触媒とも称される)は、硬化速度を速める材料であり、主に熱硬化型のエポキシ樹脂に用いられる。前記硬化促進剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、DBU(1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7)やDBN(1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)-ノネン-5)等の三級アミンあるいは三級アミン塩、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾールや2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール系、トリフェニルホスフィンやテトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等のホスフィンあるいはホスホニウム塩などが挙げられる。これらは、単独で使用しても、2種以上の併用であってもよい。
【0061】
カップリング剤は、分子結合力を高める効果を有する材料であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シランカップリング剤などが挙げられる。具体的には、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N-(2-(ビニルベンジルアミノ)エチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤などが挙げられる。これらは、単独で使用しても、2種以上の併用であってもよい。
【0062】
本実施形態においては、例えば、シート状接着剤を用いることができる。シート状接着剤とは、例えば、シート上に予め樹脂層を形成したもので、シートにはガラスやガスバリア性の高いフィルム等を用いることができる。また、封止樹脂のみでシートを形成していてもよい。シート状接着剤を、封止フィルム上に貼り付けることも可能である。封止フィルム上に、中空部を設けた構造にしてからデバイスと貼り合せることも可能である。
【0063】
封止フィルムを用いて光電変換素子10を挟むように支持体11と対向して配置される。封止フィルムの基材としては、その形状、構造、大きさ、種類については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。封止フィルムは、基材の表面に水分や酸素の通過を防ぐバリア層を形成しており、基材の一方の面だけでも両面に形成されていてもよい。
【0064】
当該バリア層は、例えば、金属酸化物、金属、高分子と金属アルコキシドより形成された混合物などを主成分とする材質で構成されていてもよい。当該金属酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、アルミニウム、などを挙げることができ、当該高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロースなどを挙げることができ、当該金属アルコキシドとしては、例えば、テトラエトキシシラン、トリイソプロポキシアルミニウム、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどを挙げることができる。
【0065】
上述のバリア層は、例えば、透明であっても不透明であっても構わない。また、バリア層は上記材料からの組合せによる単層であっても、複数の積層構造であっても構わない。バリア層の形成方法は、既知の方法を用いることができ、スパッタ法などの真空製膜、ディッピング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法、グラビア印刷法などの塗布方法を使用することができる。
【0066】
[配線]
本実施形態の光電変換素子10は、光によって発生した電流を効率的に取り出すため、電極、及び裏面電極にリード線(配線)を接続することが好ましい。リード線は、例えば、第1の電極12及び第2の電極16と、はんだ、銀ペースト、グラファイトのような導電性材料を用いて接続される。導電性材料は単独でも2種以上の混合または積層構造で用いても構わない。また、リード線を取り付けた部位は、物理的な保護の観点から、アクリル系樹脂やエポキシ系樹脂で覆っても構わない。
【0067】
リード線は、電気回路における電源や電子部品などを電気的に接続するための電線の総称であり、例えば、ビニール線、エナメル線などを挙げることができる。
【0068】
[アプリケーション]
本実施形態の光電変換素子10の用途及び使用方法は、特に限定されず、例えば、一般的な光電変換素子(例えば一般的な太陽電池)と同様の用途に広く用いることができる。本実施形態の光電変換素子10は、例えば、発生した電流を制御する回路基盤等と組み合わせることにより電源装置へ応用することができる。電源装置を利用している機器類としては、例えば、電子卓上計算機やソーラー電波腕時計などが挙げられる。また、携帯電話、電子ペーパー、温湿度計等に本実施形態の光電変換素子10を電源装置として適用することも可能である。また、充電式や乾電池式の電気器具の連続使用時間を延ばすための補助電源や、二次電池と組み合わせることによって夜間使用などにも応用可能である。また、電池交換や電源配線等が不要な自立型電源としても利用可能である。
【実施例0069】
以下、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0070】
[実施例1]
以下のようにして、実施例1の光電変換素子を作製(製造)した。
【0071】
塩化スズ(IV)(1.1g)と塩化スズ(II)(0.1g)をエタノール(20ml)に溶解し、蒸留水(0.1ml)を加えて、得られた溶液(酸化スズおよび酸化スズ前駆体を含む溶液、以下、単に「酸化スズ前駆体溶液」とよぶ場合がある)を室温で1時間攪拌を行った。得られた溶液(攪拌後の溶液)に含まれる粒子について、大塚電子製ELSZ-200を用いて粒子径の測定を行ったところ、3.5nm(D50)であった。この溶液を、ITOガラス基板(支持体であるガラス基板上に第1の電極が形成されたもの、25mm角サイズ)のITO上に1mL乗せ、スピンコーター(4,000rpm、60秒)を行い、次いでホットプレート上で140℃、30分加熱した。この手順によりITO上に二酸化スズと酸化スズ(一酸化スズ)とからなる電子輸送層を形成した。得られた電子輸送層における、4価の金属酸化物半導体と2価の金属半導体の質量比は、90:10である。
次に、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(0.1mM)を溶解したエタノール溶液を上記電子輸送層上に1ml乗せ、30秒静置し、スピンコーター(4,000rpm、60秒)で余分な溶液を除去し、次いでホットプレート上で100℃、5分加熱して電子輸送層(有機化合物によって被覆された電子輸送層)を形成した。次いで、ヨウ化セシウム(0.738g)、ヨウ化ホルムアミジン(7.512g)、臭化メチルアミン(0.905g)、ヨウ化鉛(23.888g)、臭化鉛(1.022g)をDMF(40.0mL)とジメチルスルホキシド(DMSO、12.0mL)に溶解した溶液を、上記基板上にスピンコートを用いて製膜した。スピンコートは3000rpm、開始から30秒後にクロロベンゼン(0.3mL)を滴下した。その後、150℃で10分加熱し、ペロブスカイト層(光電変換層)を得た。続いて、Spiro-OMeTAD(72.3mg)、[トリス(2-(1H-ピラゾル-1-イル)-4-tert-ブチルピリジン)コバルト(III)トリス(ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)](FK209、富士フィルム和光純薬株式会社、13.5mg)、4-t-ブチルピリジン(28.8μL)、及びLiTFSI(9.1mg)を1mLのクロロベンゼンに溶解させた溶液を30分間撹拌後、PTFEフィルターで濾過し、90μLをペロブスカイト層上にスピンコート(4,000rpm、30秒)したのち、70℃で30分間加熱乾燥した。最後に、真空蒸着によって金を80nm形成して光電変換素子を作製した。
【0072】
[太陽電池特性の評価]
実施例1で作製した光電変換素子の光電変換特性は、JISC8913:1998のシリコン結晶系太陽電池セルの出力測定方法に準拠した方法で測定した。結果を表1に示す。具体的には、AM1.5G相当のエアマスフィルターを組み合わせたソーラーシュミレーター(分光計器社製SMO-250III型)に、2次基準Si太陽電池で100mW/cm2の光量に調整して測定用光源とし、ペロブスカイト型太陽電池セルの試験サンプル(実施例1の光電変換素子)に光照射をしながら、ソースメーター(KeithleyInstrumentsInc.製、2400型汎用ソースメーター)を使用してI-Vカーブ特性を測定し、I-Vカーブ特性測定から得られた短絡電流(Isc)、開放電圧(Voc)、フィルファクター(FF)、そして、短絡電流密度(Jsc)、及び光電変換効率(PCE)を求めた。
【0073】
式1:短絡電流密度(Jsc;mA/cm2)=Isc(mA)/有効受光面S(cm2)
式2:光電変換効率(PCE;%)=Voc(V)×Jsc(mA/cm2)×FF×100/100(mW/cm2)
【0074】
[実施例2]
実施例1における3-アミノプロピルトリメトキシシランを、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシランに変更した以外は実施例1と同様にして実施例2の光電変換素子を作製し評価した。得られた電子輸送層における、4価の金属酸化物半導体と2価の金属半導体の質量比は、90:10である。太陽電池特性の結果を下記表1に示す。
【0075】
[実施例3]
実施例1における3-アミノプロピルトリメトキシシランを、塩化トリメチル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムに変更した以外は実施例1と同様にして実施例3の光電変換素子を作製し評価した。得られた電子輸送層における、4価の金属酸化物半導体と2価の金属半導体の質量比は、90:10である。太陽電池特性の結果を下記表1に示す。
【0076】
[実施例4]
実施例1における3-アミノプロピルトリメトキシシランを、1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]尿素に変更した以外は実施例1と同様にして実施例4の光電変換素子を作製し評価した。得られた電子輸送層における、4価の金属酸化物半導体と2価の金属半導体の質量比は、90:10である。太陽電池特性の結果を下記表1に示す。
【0077】
[実施例5]
実施例1における3-アミノプロピルトリメトキシシランを、(1-アミノエチル)ホスホン酸に変更した以外は実施例1と同様にして実施例5の光電変換素子を作製し評価した。得られた電子輸送層における、4価の金属酸化物半導体と2価の金属半導体の質量比は、90:10である。太陽電池特性の結果を下記表1に示す。
【0078】
[実施例6]
実施例1における塩化スズ(IV)(1.1g)と塩化スズ(II)(0.1g)を、塩化スズ(IV)(1.1g)と塩化スズ(II)(0.03g)に変更した以外は実施例1と同様にして実施例6の光電変換素子を作製し評価した。得られた電子輸送層における、4価の金属酸化物半導体と2価の金属半導体の質量比は、97:3である。太陽電池特性の結果を下記表1に示す。
【0079】
[実施例7]
実施例1における塩化スズ(IV)(1.1g)と塩化スズ(II)(0.1g)を、塩化スズ(IV)(1.1g)、塩化スズ(II)(0.03g)、塩化アンチモン(III)(0.01g)に変更した以外は実施例1と同様にして実施例7の光電変換素子を作製し評価した。得られた電子輸送層における、4価の金属酸化物半導体と2価の金属半導体の質量比は、97:3である。太陽電池特性の結果を下記表1に示す。
【0080】
[実施例8]
実施例1における塩化スズ(IV)(1.1g)と塩化スズ(II)(0.1g)をエタノール(20ml)に溶解し、蒸留水(0.1ml)を加えて、室温で1時間攪拌を行った操作を、室温で4時間攪拌を行った。得た溶液の粒子径は実施例1と同じ装置で測定した結果、5.2nm(D50)であった。この操作以降は実施例1と同様にして実施例8の光電変換素子を作製し評価した。得られた電子輸送層における、4価の金属酸化物半導体と2価の金属半導体の質量比は、90:10である。太陽電池特性の結果を下記表1に示す。
【0081】
[実施例9]
実施例1において作製した酸化スズ前駆体溶液に、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(0.1mM)エタノール溶液を0.3g加えて、室温で更に1時間攪拌を行った。この溶液をITOガラス基板のITO上に1mL乗せ、スピンコーター(4,000rpm、60秒)を行い、次いでホットプレート上で140℃、30分加熱した。この操作で得た電子輸送層上に、ペロブスカイト層を形成する以降の操作は実施例1と同様にして実施例9の光電変換素子を作製し評価した。得られた電子輸送層における、4価の金属酸化物半導体と2価の金属半導体の質量比は、90:10である。太陽電池特性の結果を下記表1に示す。
【0082】
[実施例10]
実施例1における塩化スズ(IV)(1.1g)と塩化スズ(II)(0.1g)を、それぞれ、臭化スズ(IV)(0.91g)と臭化スズ(II)(0.09g)に変更した以外は実施例1と同様にして実施例10の光電変換素子を作製し評価した。得られた電子輸送層における、4価の金属酸化物半導体と2価の金属半導体の質量比は、88:12である。太陽電池特性の結果を下記表1に示す。
【0083】
[実施例11]
実施例10における3-アミノプロピルトリメトキシシランを、2-(4-ピリジル)エタンスルホン酸に変更した以外は実施例1と同様にして実施例11の光電変換素子を作製し評価した。得られた電子輸送層における、4価の金属酸化物半導体と2価の金属半導体の質量比は、88:12である。太陽電池特性の結果を下記表1に示す。
【0084】
[実施例12]
実施例1における3-アミノプロピルトリメトキシシランを、3-(カルバムイミドイルチオ)-1-プロパンスルホン酸に変更した以外は実施例1と同様にして実施例12の光電変換素子を作製し評価した。得られた電子輸送層における、4価の金属酸化物半導体と2価の金属半導体の質量比は、90:10である。太陽電池特性の結果を下記表1に示す。
【0085】
[実施例13]
実施例1における塩化スズ(IV)(1.1g)と塩化スズ(II)(0.1g)をエタノール(20ml)に溶解し、蒸留水(0.1ml)を加えて、室温で1時間攪拌を行った操作を、室温で12時間攪拌を行った。得られた溶液に含まれる粒子の粒子径を実施例1と同じ装置で測定した結果、6.1nm(D50)であった。この操作以降は実施例1と同様にして実施例13の光電変換素子を作製し評価した。得られた電子輸送層における、4価の金属酸化物半導体と2価の金属半導体の質量比は、90:10である。太陽電池特性の結果を下記表1に示す。
【0086】
[実施例14]
実施例1における3-アミノプロピルトリメトキシシランを用いなかった以外は実施例1と同様にして実施例14の光電変換素子を作製し評価した。得られた電子輸送層における、4価の金属酸化物半導体と2価の金属半導体の質量比は、90:10である。太陽電池特性の結果を下記表1に示す。
【0087】
[比較例1]
実施例1における塩化スズ(IV)(1.1g)と塩化スズ(II)(0.1g)を、それぞれ塩化スズ(IV)(1.2g)に変更した以外は実施例1と同様にして光電変換素子を作製(製造)し、比較例1の光電変換効率を測定した。太陽電池特性の結果を下記表1に示す。
【0088】
[比較例2]
実施例1における塩化スズ(IV)(1.1g)と塩化スズ(II)(0.1g)を、それぞれ塩化スズ(II)(1.2g)に変更した以外は実施例1と同様にして比較例2の光電変換素子を作製(製造)し、光電変換効率を測定した。太陽電池特性の結果を下記表1に示す。
【0089】
[比較例3]
実施例1における塩化スズ(IV)(1.1g)と塩化スズ(II)(0.1g)を、それぞれ塩化スズ(IV)(0.6g)、塩化スズ(II)(0.6g)に変更した以外は実施例1と同様にして比較例3の光電変換素子を作製し評価した。得られた電子輸送層における、4価の金属酸化物半導体と2価の金属半導体の質量比は、44:55である。太陽電池特性の結果を下記表1に示す。
【0090】
[比較例4]
実施例1における塩化スズ(IV)(1.1g)と塩化スズ(II)(0.1g)を、それぞれ塩化スズ(IV)(0.9g)、塩化スズ(II)(0.3g)に変更した以外は実施例1と同様にして比較例4の光電変換素子を作製し評価した。得られた電子輸送層における、4価の金属酸化物半導体と2価の金属半導体の質量比は、71:29である。太陽電池特性の結果を下記表1に示す。
【0091】
[比較例5]
比較例1における塩化スズ(IV)(1.2g)に、塩化アンチモン(III)(0.01g)を加え、3-アミノプロピルトリメトキシシランの溶液を用いなかった以外は、比較例1と同様にして比較例5の光電変換素子を作製し評価した。太陽電池特性の結果を下記表1に示す。
【0092】
【0093】
前記表1より、実施例1と比較例1~4の比較から、また、実施例7と比較例5の比較から、4価の金属酸化物半導体と2価の金属酸化物半導体が特定の比率で混合することにより高性能な光電変換素子を得られることがわかる。
実施例1~13より、4価の金属酸化物半導体と2価の金属酸化物半導体を含む電子輸送層の形成後にこれらの金属酸化物半導体と反応する置換基を有する化合物を用いることで、高性能な光電変換素子が得られることがわかる。
また、実施例14より、金属酸化物半導体の添加剤を併用していなくても良好な特性を示すが、実施例1~13のように添加剤を併用することでより高い性能が発揮されることがわかる。
【0094】
以上のとおり、各実施例の光電変換素子は、良好な太陽電池特性を獲得できることが確認された。
【0095】
以上、実施形態及び実施例を用いて本発明を説明した。ただし、本発明は、以上において説明した実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、必要に応じて、任意にかつ適宜に組み合わせ、変更し、又は選択して採用できるものである。
以上、本発明の光電変換素子は、例えば、太陽電池として有用である。本発明の光電変換素子の用途及び使用方法は特に限定されず、例えば、一般的な光電変換素子(例えば、一般的な太陽電池)と同様の用途及び使用方法で、広範な分野に適用可能である。