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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118235
(43)【公開日】2024-08-30
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/38 20060101AFI20240823BHJP
【FI】
E02F3/38 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024566
(22)【出願日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西尾 一馬
(57)【要約】
【課題】第1ブームに対して第2ブームを労力を要さず容易に回動させることが可能な作業機械を提供する。
【解決手段】作業機械は、第1ブームと、基端及び先端を結ぶ第1軸線周りに回転可能に第1ブームの先端に支持された第2ブームと、第2ブームの先端に支持されたアームと、アームの先端に支持されたアタッチメントと、第2ブームの第1軸線周りの回転をロックまたはロック解除するロック装置とを備える。ロック装置は、複数の位置決め孔の1つに進入して第2ブームの回転をロックするロック位置、及び位置決め孔から退出して第2ブームの回転を許容する非ロック位置の間を、第1軸線と平行な第4軸線に沿って進退可能なロックピンと、ロックピンをロック位置に向けて付勢する付勢部材と、ロックピンをロック位置と非ロック位置とに操作するレバーとを備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、前記車体に支持されて動作する作業装置とを備え、
前記作業装置は、
前記車体に起伏可能に支持された第1ブームと、
基端及び先端を結ぶ第1軸線周りに回転可能に前記第1ブームの先端に支持された第2ブームと、
前記第1軸線に直交する第2軸線周りに回動可能に前記第2ブームの先端に支持されたアームと、
前記第2軸線に平行な第3軸線周りに回動可能に前記アームの先端に支持されたアタッチメントと、
前記第2ブームの前記第1軸線周りの回転をロックまたはロック解除するロック装置とを備える作業機械において、
前記第2ブームの基端には、前記第1軸線を中心とする仮想円上の周方向に離間した位置に複数の位置決め孔が形成され、
前記ロック装置は、
複数の前記位置決め孔の1つに進入して前記第2ブームの回転をロックするロック位置、及び前記位置決め孔から退出して前記第2ブームの回転を許容する非ロック位置の間を、前記第1軸線と平行な第4軸線に沿って進退可能なロックピンと、
前記ロックピンを前記ロック位置に向けて付勢する付勢部材と、
前記ロックピンを前記ロック位置と前記非ロック位置とに操作するレバーとを備えることを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記レバーは、前記ロックピンから前記第4軸線に直交する方向に突出して設けられ、前記ロックピンの周方向に離間した位置において、互いに異なる方向に突出して一対設けられることを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1に記載の作業機械において、
前記ロック装置は、前記ロックピンを、前記第4軸線に沿って進退可能で且つ前記第4軸線周りに回転可能に収容する筒体を備え、
前記レバーは、
前記ロックピンが前記ロック位置のときに、前記筒体の側壁を貫通し且つ前記第4軸線の方向に延びるスリットを通じて前記筒体の外側に突出して、前記ロックピンの前記第4軸線周りの回転を阻止し、
前記ロックピンが前記非ロック位置のときに、前記スリットの前記第2ブームと反対側の端部から退出して、前記ロックピンの前記第4軸線周りの回転を許容することを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項1に記載の作業機械において、
前記第2ブームの基端には、前記第1軸線に沿って突出する連結ピンが設けられ、
前記第1ブームの先端には、前記連結ピンを収容するピン収容部が形成され、
前記ピン収容部から突出する前記連結ピンの先端には、前記第2ブームを回転させる回転治具を装着可能な治具装着部が設けられていることを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項2に記載の作業機械において、
前記ロックピンを操作する操作治具を備え、
前記操作治具は、
長尺棒状の一対の把持部と、
一対の前記把持部それぞれの先端に取り付けられて、前記ロックピンを前記非ロック位置に向けて引き出し可能に一対の前記レバーそれぞれに係止される一対の係止部と、
一対の前記把持部それぞれの先端に取り付けられて、前記ロックピンを前記ロック位置に向けて押込み可能に一対の前記レバーそれぞれに当接する一対の当接部とを備えることを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アタッチメントの回動方向を切り替え可能な作業機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば製鉄所などにおいて、港とプラントとの間に敷設されたベルトコンベアで、原料を搬送することが行われている。ベルトコンベア上の原料の一部は、搬送の過程でベルトコンベアから脱落して、ベルトコンベアの下に堆積する。そのため、ベルトコンベアの下から原料(以下、「対象物」と表記する。)を掻き出す作業が必要となる。
【0003】
このような作業を実現するために、例えば特許文献1には、第1ブーム及び第2ブームと、第2ブームの先端に回動可能に支持されたアームと、アームの先端に回動可能に支持されたバケットと、第1ブームに対して第2ブームを回転させる回転機構とを備える作業機械が開示されている。
【0004】
また、このような作業機械には、第2ブームの回転をロックまたはロック解除するために、第2ブームにロック機構を設けるのが一般的である。ロック機構は、例えば、第1ブームのロック孔にピンを挿抜することによって、ロックまたはロック解除を切り替える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭62-120552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記構成の作業機械において、第2ブームを回転させる際には、重力による第2ブームの意図しない回転を防止するために、第2ブームを鉛直方向下向きに向けた状態で作業を行うのが一般的である。そのため、ロック機構が第2ブーム側に設けられていると、ロックピンを上方に引き抜くことになるので、非常に大きな力が必要になり労力を要するという課題がある。
【0007】
本発明は、このような従来技術の実情からなされたもので、その目的は、第1ブームに対して第2ブームを労力を要さず容易に回動させることが可能な作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、車体と、前記車体に支持されて動作する作業装置とを備え、前記作業装置は、前記車体に起伏可能に支持された第1ブームと、基端及び先端を結ぶ第1軸線周りに回転可能に前記第1ブームの先端に支持された第2ブームと、前記第1軸線に直交する第2軸線周りに回動可能に前記第2ブームの先端に支持されたアームと、前記第2軸線に平行な第3軸線周りに回動可能に前記アームの先端に支持されたアタッチメントと、前記第2ブームの前記第1軸線周りの回転をロックまたはロック解除するロック装置とを備える作業機械において、前記第2ブームの基端には、前記第1軸線を中心とする仮想円上の周方向に離間した位置に複数の位置決め孔が形成され、前記ロック装置は、複数の前記位置決め孔の1つに進入して前記第2ブームの回転をロックするロック位置、及び前記位置決め孔から退出して前記第2ブームの回転を許容する非ロック位置の間を、前記第1軸線と平行な第4軸線に沿って進退可能なロックピンと、前記ロックピンを前記ロック位置に向けて付勢する付勢部材と、前記ロックピンを前記ロック位置と前記非ロック位置とに操作するレバーとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第1ブームに対して第2ブームを労力を要さず容易に回動させることが可能な作業機械を得ることができる。なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る作業機械の側面図である。
図2】フロント作業機を掻き出し姿勢にした作業機械の平面図及び側面図である。
図3】第1ブーム及び第2ブームの側面図である。
図4】第1ブームの先端の拡大図である。
図5】第2ブームの基端の拡大図である。
図6】操作治具を示す図である。
図7】ロックピンが非ロック位置のときのロック装置の断面図である。
図8】ロックピンがロック位置のときのロック装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る作業機械1の実施形態について、図面を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る作業機械1の側面図である。図2は、フロント作業機10を掻き出し姿勢にした作業機械1の平面図(A)及び側面図(B)である。なお、本明細書中の前後左右は、特に断らない限り、作業機械1に搭乗して操作するオペレータの視点を基準としている。
【0012】
[作業機械1の全体構成]
本実施形態に係る作業機械1は、掘削作業及び掻出作業の両方を行える機械である。掘削作業とは、土砂を掘削する一般的な油圧ショベルの作業を指す。掻出作業とは、ベルトコンベアなどの障害物の下に堆積した対象物を掻き出す作業(所謂、「落鋼処理」)を指す。作業機械1は、図1に示すように、下部走行体2と、上部旋回体3と、フロント作業機10(作業装置)とを主に備える。
【0013】
下部走行体2は、上部旋回体3及びフロント作業機10を支持した状態で、自走(前進、後退、旋回)可能に構成されている。下部走行体2は、一対のクローラ4を備える。エンジン(図示省略)の駆動力が伝達されて走行モータ(図示省略)が回転することによって、クローラ4が回転する。これにより、下部走行体2が走行する。但し、下部走行体2は、クローラ4に代えて、装輪式であってもよい。
【0014】
上部旋回体3は、旋回可能な状態で下部走行体2に支持されている。より詳細には、上部旋回体3は、エンジンの駆動力が伝達されて旋回モータ(図示省略)が回転することによって、下部走行体2に対して旋回する。上部旋回体3は、ベースとなる旋回フレーム5と、旋回フレーム5に支持されるキャブ6と、作業機械1を動作させる駆動力を発生させるエンジンとを主に備える。また、旋回フレーム5の前部には、フロント作業機10が配置されている。下部走行体2及び上部旋回体3は、車体の一例である。但し、車体は、下部走行体2及び上部旋回体3に分かれていなくてもよい。
【0015】
キャブ6は、旋回フレーム5に支持されている。キャブ6の内部には、オペレータが着席するシートと、シートに着席したオペレータが操作する操作装置とが配置されている。キャブ6に搭乗したオペレータが操作装置を操作すると、下部走行体2が走行し、上部旋回体3が旋回し、フロント作業機10が動作する。
【0016】
フロント作業機10は、作業機械1の前端で且つ作業機械1の幅方向の中央において、起伏可能な状態で旋回フレーム5に支持されている。フロント作業機10は、油圧ポンプ(図示省略)から作動油が供給されることによって動作(起伏、回動)する。フロント作業機10は、第1ブーム11と、第2ブーム12と、アーム13と、バケット14(アタッチメント)と、ブームシリンダ15と、アームシリンダ16と、バケットシリンダ17(アタッチメントシリンダ)とを主に備える。
【0017】
第1ブーム11は、基端が旋回フレーム5に支持され、先端で第2ブーム12を支持している。より詳細には、第1ブーム11は、上部旋回体3の幅方向(左右方向)に延びる起伏軸線X0周りに起伏可能に旋回フレーム5に支持されている。換言すれば、第1ブーム11は、上下方向及び前後方向に拡がる起伏平面に沿って起伏する。ブームシリンダ15は、一端が旋回フレーム5に支持され、他端が第1ブーム11の先端部に支持されている。そして、第1ブーム11は、ブームシリンダ15が伸長することによって起立し、ブームシリンダ15が縮小することによって倒伏する。
【0018】
第2ブーム12は、基端が第1ブーム11の先端に支持され、先端でアーム13を支持している。また、第2ブーム12は、第1軸線X1周りに回転可能に第1ブーム11の先端に支持されている。第1軸線X1は、第2ブーム12の基端と先端とを結ぶ仮想線である。また、第1軸線X1は、起伏軸線X0、第2軸線X2、及び第3軸線X3と直交している。さらに、第1軸線X1は、第1ブーム11が最大まで起立したときに、上下方向に延設される。
【0019】
本実施形態において、第1ブーム11に対する第2ブーム12の回転は、作業員によって手動で行われる。但し、作業機械1(フロント作業機10)は、第1ブーム11に対して、第2ブーム12を第1軸線X1周りに回転させるアクチュエータ(例えば、油圧モータ)をさらに備えていてもよい。
【0020】
アーム13は、基端が第2ブーム12の先端に支持され、他端でバケット14を支持している。より詳細には、アーム13は、第2軸線X2周りに回動可能に第2ブーム12の先端に支持されている。アームシリンダ16は、一端が第2ブーム12の基端部に支持され、他端がアーム13の基端部に支持されている。そして、アーム13は、アームシリンダ16が伸縮することによって、第2軸線X2周りに回動する。
【0021】
バケット14は、第3軸線X3周りに回動可能にアーム13の先端に支持されている。バケットシリンダ17は、一端がアーム13の基端側に支持され、他端がバケット14に支持されている。そして、バケット14は、バケットシリンダ17が伸縮することによって、第3軸線X3周りに回動(クラウド、ダンプ)する。なお、アタッチメントの具体例はバケット14に限定されない。
【0022】
第2軸線X2及び第3軸線X3は、互いに平行であり、且つ第1軸線X1と常に直交する。また、第2軸線X2及び第3軸線X3は、フロント作業機10が後述する掘削姿勢のときに、左右方向に延設される(すなわち、起伏軸線X0に平行になる)。
【0023】
[第1ブーム11及び第2ブーム12の連結部分の構成]
次に、図3図5を参照して、第1ブーム11及び第2ブーム12を連結し、且つ第1ブーム11に対して第2ブーム12を回転させるための構成を説明する。図3は、第1ブーム11及び第2ブーム12の側面図である。図4は、第1ブーム11の先端の拡大図である。図5は、第2ブーム12の基端の拡大図である。
【0024】
図3及び図4に示すように、第1ブーム11の先端には、第1プレート11Aと、ピン収容部11Bと、後述するロック装置20とが設けられている。第1プレート11Aは、第1ブーム11の先端において、第1軸線X1に直交する方向に延設された板状の部材である。ピン収容部11Bは、第1プレート11Aに支持された円筒形状の部材である。また、ピン収容部11Bの中心は、第1軸線X1に一致する。さらに、ピン収容部11Bの軸方向の両端は、開放されている。ロック装置20は、ピン収容部11Bから第1軸線X1の径方向にズレた位置において、第1プレート11Aに支持されている。
【0025】
図3及び図5に示すように、第2ブーム12の基端には、第2プレート12Aと、連結ピン12Bとが設けられている。第2プレート12Aは、第2ブーム12の先端において、第1軸線X1に直交する方向に延設された板状の部材である。すなわち、第1プレート11A及び第2プレート12Aは、第1軸線X1の延設方向に所定の間隔を隔てて、互いに平行に配置される。連結ピン12Bは、第2プレート12Aから第1ブーム11に向けて突出する円柱形状の部材である。連結ピン12Bの中心は、第1軸線X1に一致する。また、連結ピン12Bの延設方向は、第1軸線X1の延設方向に一致する。そして、連結ピン12Bは、ピン収容部11Bに収容される。さらに、連結ピン12Bは、ピン収容部11Bの内部で第1軸線X1周りに回転する。
【0026】
連結ピン12Bの先端には、治具装着部12Cが設けられている。図7及び図8に示すように、連結ピン12Bがピン収容部11Bの軸方向の一方側の端部から進入すると、治具装着部12Cはピン収容部11Bの軸方向の他方側の端部から突出する。そして、治具装着部12Cの外周面にナット12Dが螺合されることによって、第1ブーム11及び第2ブーム12が連結される。また、治具装着部12Cには、図7に示す回転治具40が装着される。本実施形態に係る回転治具40は六角レンチであり、治具装着部12Cは六角穴である。但し、回転治具40及び治具装着部12Cの具体例は、これに限定されない。
【0027】
また、第2プレート12Aには、複数の位置決め孔12E、12F、12Gが形成されている。位置決め孔12E、12F、12Gは、第1軸線X1を中心とする仮想円C(図5に一点鎖線で示す)上に配置されている。また、位置決め孔12E、12F、12Gは、仮想円Cの周方向に離間した位置に配置されている。そして、位置決め孔12E、12F、12Gは、第2プレート12Aを第1軸線X1の延設方向に貫通している。本実施形態では、位置決め孔12E、12F、12Gの間隔は90°に設定されている。位置決め孔12E、12F、12Gには、ロック装置20のロックピン22が挿抜される。
【0028】
ロックピン22が位置決め孔12Eに挿入されたとき、第2軸線X2及び第3軸線X3が上部旋回体3の幅方向に延設される。換言すれば、起伏軸線X0、第2軸線X2、及び第3軸線X3が平行になる。このときのフロント作業機10の姿勢は、掘削作業が可能な掘削姿勢である。また、第1ブーム11を最大まで起立させた状態で、ロックピン22が位置決め孔12F、12Gに挿入されたとき、第2軸線X2及び第3軸線X3が起伏軸線X0に直交する前後方向を向く。さらに、この状態から第1ブーム11を最大まで倒伏させると、図2に示すように、第2軸線X2及び第3軸線X3が起伏軸線X0に直交する上下方向を向いて、フロント作業機10が掻き出し作業が可能な掻き出し姿勢になる。
【0029】
[ロック装置20の構成]
ロック装置20は、第1ブーム11に対する第2ブーム12の第1軸線X1周りの回転をロックまたはロック解除する装置である。図4に示すように、ロック装置20は、第1ブーム11の先端に取り付けられている。また、図4図7、及び図8に示すように、ロック装置20は、筒体21と、ロックピン22と、一対のレバー23A、23Bと、コイルバネ24(付勢部材)とを主に備える。
【0030】
筒体21は、軸方向の両端が開放された円筒形状の外形を呈する。筒体21は、第1ブーム11の先端(より詳細には、第1プレート11A)に固定されている。筒体21の中心は、第1軸線X1と平行な第4軸線X4に一致する。また、筒体21の軸方向は、第4軸線X4の延設方向に一致する。そして、筒体21は、内部空間にロックピン22を収容する筐体としての役割を担う。より詳細には、筒体21は、第4軸線X4に沿って進退可能で且つ第4軸線X4周りに回転可能にロックピン22を収容する。
【0031】
また、図7及び図8に示すように、筒体21の側壁には、スリット21A、21Bが形成されている。スリット21A、21Bは、周方向に所定の間隔(本実施形態では180°間隔)を隔てて設けられている。また、スリット21A、21Bは、筒体21の側壁を厚み方向に貫通している。さらに、スリット21Aは、第4軸線X4の延設方向に延びている。そして、スリット21A、21Bの第2ブーム12側の端部は閉塞され、第2ブーム12と反対側の端部は開放されている。
【0032】
ロックピン22は、位置決め孔12E、12F、12Gに進入可能な円柱形状の外形を呈する。ロックピン22は、第4軸線X4に沿って進退可能で且つ第4軸線X4周りに回転可能に筒体21に収容されている。そして、ロックピン22は、後述するロック位置及び非ロック位置の間を第4軸線X4に沿って進退する。ロック位置及び非ロック位置は、第4軸線X4の延設方向に離間した位置である。また、ロック位置は、非ロック位置より第2ブーム12側の位置である。
【0033】
一対のレバー23A、23Bは、オペレータがロックピン22をロック位置と非ロック位置とに操作するためのものである。また、一対のレバー23A、23Bは、ロックピン22の外周面から第4軸線X4に直交する方向に突出して設けられている。さらに、一対のレバー23A、23Bは、ロックピン22の周方向に離間(本実施形態では、180°)した位置において、互いに異なる方向(本実施形態では、反対方向)に突出している。
【0034】
ロック位置は、筒体21から第2ブーム12側に突出して、位置決め孔12E、12F、12Gの1つに進入するロックピン22の位置である。これにより、第2ブーム12の第1軸線X1周りの回転が阻止される。また、ロックピン22がロック位置のとき、図8(A)に示すように、一対のレバー23A、23Bは、一対のスリット21A、21Bを通じて筒体21の外側に突出している。これにより、ロックピン22の第4軸線X4周りの回転が阻止される。
【0035】
非ロック位置は、位置決め孔12E、12F、12Gから抜去されて、筒体21の内部に没入するロックピン22の位置である。これにより、第2ブーム12の第1軸線X1周りの回転が許容される。また、ロックピン22が非ロック位置のとき、図7(A)に示すように、一対のレバー23A、23Bは、一対のスリット21A、21Bの開放側の端部から退出している。これにより、ロックピン22の第4軸線X4周りの回転が許容される。さらに、図7(B)に示すように、ロックピン22を第4軸線X4周りに回転させることによって、第4軸線X4の延設方向から見て、スリット21A、21Bとレバー23A、23Bとがズレた位置に配置される。これにより、ロックピン22のロック位置への移動が阻止される。
【0036】
コイルバネ24は、一端が第1ブーム11に固定され、他端がロックピン22に当接されている。そして、コイルバネ24は、ロックピン22をロック位置に向けて付勢する。すなわち、図8(A)に示すように、ロック位置のロックピン22は、コイルバネ24の付勢力によってロック位置に維持される。また、図8(B)に示すように、第4軸線X4の延設方向から見て、スリット21A、21Bとレバー23A、23Bとを対面させると、ロックピン22は、コイルバネ24によってロック位置に向けて移動しようとする。
【0037】
[操作治具30の構成]
図6は、操作治具30を示す図である。操作治具30は、ロックピン22を操作するための治具である。より詳細には、操作治具30は、ロックピン22をロック位置及び非ロック位置に移動させると共に、ロックピン22を第4軸線X4周りに回転させるための治具である。図6に示すように、操作治具30は、一対の把持部31A、31Bと、1以上(本実施形態では、3つ)の連結部32A、32B、32Cと、一対の係止部33A、33Bと、一対の当接部34A、34Bとを主に備える。
【0038】
一対の把持部31A、31Bは、概ね直線的に延びる長尺棒状の部材である。そして、一対の把持部31A、31Bは、所定の間隔を隔てて平行に配置されている。連結部32A、32B、32Cは、一対の把持部31A、31Bの延設方向に離間した位置において、一対の把持部31A、31Bを連結している。係止部33A及び当接部34Aは、把持部31Aの先端に取り付けられている。同様に、係止部33B及び当接部34Bは、把持部31Bの先端に取り付けられている。係止部33A及び当接部34A、係止部33B及び当接部34Bは、側面視したときにS字形状の外形を呈する。
【0039】
一対の係止部33A、33Bは、一対の把持部31A、31Bの先端(すなわち、係止部33A、33Bが設けられた端部)を上に向けて、一対の把持部31A、31Bを引き下げる際に、一対のレバー23A、23Bに上側から係止され得る部分である。より詳細には、一対の係止部33A、33Bは、一対の把持部31A、31Bの先端を上に向けたときに、下側が凹曲面となっている。そして、一対の係止部33A、33Bを一対のレバー23A、23Bの上側に係止して、一対の把持部31A、31Bを引き下げると、ロックピン22をロック位置から非ロック位置に引き出すことができる。また、一対の係止部33A、33Bを一対のレバー23A、23Bの上側に係止して、操作治具30を第4軸線X4周りに回転させると、ロックピン22が第4軸周りに回転する。
【0040】
一対の当接部34A、34Bは、一対の把持部31A、31Bの先端(すなわち、当接部34A、34Bが設けられた端部)を上に向けて、一対の把持部31A、31Bを押し上げる際に、一対のレバー23A、23Bに下側から当接し得る部分である。より詳細には、一対の当接部34A、34Bは、一対の把持部31A、31Bの先端を上に向けたときに、上側が凹曲面となっている。そして、一対の当接部34A、34Bを一対のレバー23A、23Bの下側に当接させて、一対の把持部31A、31Bを押し上げると、ロックピン22を非ロック位置からロック位置に押し込むことができる。
【0041】
[第2ブーム12を回転させる手順]
次に、図7及び図8を参照して、操作治具30及び回転治具40を用いて、第1ブーム11に対して第2ブーム12を回転させる手順を説明する。図7は、ロックピン22が非ロック位置のときのロック装置20の断面図である。図8は、ロックピン22がロック位置のときのロック装置20の断面図である。
【0042】
以下、ロックピン22を位置決め孔12Eから抜去し、第2ブーム12を第1軸線X1周りに回転させた後、ロックピン22を位置決め孔12Fに挿入する手順を説明する。なお、以下に説明する第2ブーム12の回転作業は、図1に示すように、第1ブーム11を最大まで起立させて、第2ブーム12(すなわち、第1軸線X1)が鉛直方向に延設された状態で行われる。
【0043】
まず、作業者は、一対の係止部33A、33Bを一対のレバー23A、23Bの上側に係止して、一対の把持部31A、31Bを引き下げる。これにより、図7(B)に示すように、コイルバネ24の付勢力に抗して、ロックピン22がロック位置から非ロック位置に移動する。これにより、ロックピン22が位置決め孔12Eから退出する。また、一対のレバー23A、23Bは、スリット21A、21Bの下端から下方に退出する。これにより、ロックピン22が第4軸線X4周りに回転可能になる。
【0044】
次に、作業者は、上下方向から見てレバー23A、23Bがスリット21A、21Bから外れるまで、操作治具30を第4軸線X4周りに回転させる。これにより、レバー23A、23Bが筒体21の下端に当接して、ロックピン22の非ロック位置からロック位置への移動が阻止される。
【0045】
次に、図7(A)に示すように、作業者は、治具装着部12Cに回転治具40を装着して回転させる。これにより、ピン収容部11B内で連結ピン12Bが第1軸線X1周りに回転する。すなわち、第1ブーム11に対して第2ブーム12が第1軸線X1周りに回転する。そして、作業者は、第4軸線X4の延設方向から見て、ロックピン22が位置決め孔12Fに重なるまで、第2ブーム12を回転させる。
【0046】
次に、図8(B)に示すように、作業者は、一対の当接部34A、34Bを一対のレバー23A、23Bの下側に当接させる。次に、作業者は、第4軸線X4の延設方向から見て、レバー23A、23Bがスリット21A、21Bに重なるまで、操作治具30を第4軸線X4周りに回転させる。これにより、コイルバネ24の付勢力によって、一対のレバー23A、23Bが一対のスリット21A、21Bに進入し、ロックピン22が非ロック位置からロック位置に移動しようとする。
【0047】
但し、ロックピン22が位置決め孔12Fの周壁に引っ掛かって、ロック位置に移動できない場合がある。そこで、作業者は、一対の当接部34A、34Bを一対のレバー23A、23Bの下側に当接させた状態で、操作治具30を押し上げる。これにより、図8(A)に示すように、ロックピン22が位置決め孔12Fに押し込まれて、ロック位置に到達する。これにより、第2ブーム12の回転が再び阻止される。
【0048】
上記の実施形態によれば、例えば以下の作用効果を奏する。
【0049】
上記の実施形態によれば、ロック装置20を第1ブーム11に取り付けることによって、作業者は、第1ブーム11に対して第2ブーム12を回転させる作業を、図1に示すような姿勢で実施することができる。特に、コイルバネ24の付勢力に抗してロックピン22を非ロック位置に引き下げる作業を、作業者の体重を利用して実施することができる。その結果、ロック装置20を第2ブーム12側に設ける場合と比較して、小さな力で労力を要さず容易に第2ブーム12を回転させることができる。
【0050】
また、上記の実施形態によれば、ロック装置20を第2ブーム12側に設ける場合と比較して、第1ブーム11に対して第2ブーム12を回転させる作業を低い位置で実施できる。特に、長尺棒状の把持部31A、31Bを備える操作治具30を用いることによって、さらに低い位置で作業を実施できる。同様に、回転治具40を用いることによって、第2ブーム12を回転させる作業を低い位置で実施できる。その結果、大型の作業機械1でも労力を要さず容易に第2ブーム12を回転させることができる。
【0051】
また、上記の実施形態によれば、ロックピン22に一対のレバー23A、23Bを設けることによって、操作治具30による作業がスムーズになる。但し、ロックピン22を移動させる作業は、操作治具30を用いずに、作業者がレバー23A、23Bを直接把持して行ってもよい。この場合、レバー23A、23Bの一方を省略してもよい。
【0052】
さらに、上記の実施形態によれば、一対のスリット21A、21Bに対して一対のレバー23A、23Bを進退させることによって、第4軸線X4の延設方向に沿ったロックピン22の移動、及び第4軸線X4周りのロックピン22の回転を制御(阻止、許容)することができる。
【0053】
なお、作業機械1の具体例は、図1の例に限定されない。また、本発明は、操作治具30及び回転治具40を備えない作業機械1として観念することができる。さらに、本発明は、操作治具30及び回転治具40の一方または両方を備える作業機械1として観念することもできる。
【0054】
上述した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 作業機械
2 下部走行体(車体)
3 上部旋回体(車体)
4 クローラ
5 旋回フレーム
6 キャブ
10 フロント作業機(作業装置)
11 第1ブーム
11A 第1プレート
11B ピン収容部
12 第2ブーム
12A 第2プレート
12B 連結ピン
12C 治具装着部
12D ナット
12E,12F,12G 位置決め孔
13 アーム
14 バケット
15 ブームシリンダ
16 アームシリンダ
17 バケットシリンダ
20 ロック装置
21 筒体
21A,21B スリット
22 ロックピン
23A,23B レバー
24 コイルバネ
30 操作治具
31A,31B 把持部
32A,32B,32C 連結部
33A,33B 係止部
34A,34B 当接部
40 回転治具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8