(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120521
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】自律走行システム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20240829BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20240829BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
G05D1/02 S
E02F9/20 Q
E02F9/26 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027361
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】小原 大輝
(72)【発明者】
【氏名】一野瀬 昌則
(72)【発明者】
【氏名】魚津 信一
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
5H301
【Fターム(参考)】
2D003AA06
2D003AB01
2D003BA03
2D003BA07
2D003DB03
2D003DB04
2D003DB05
2D003DB07
2D003FA02
2D015HA03
2D015HB03
2D015HB04
2D015HB05
5H301AA03
5H301AA09
5H301BB02
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301FF11
5H301GG07
5H301GG14
5H301GG16
5H301LL01
5H301LL03
5H301LL06
5H301LL11
5H301LL14
(57)【要約】
【課題】搬送車両の走行車線と対向車線の境界線付近に障害物が存在する場合に、障害物を回避して搬送車両の走行の継続を可能とする自律走行システムを提供する。
【解決手段】自律走行システムを構成する制御装置は、障害物の位置、搬送車両の位置及び走行速度に基づいて、搬送車両が障害物の位置に到達するまでの時間である到達予測時間を演算し、他車両の位置及び走行速度と、到達予測時間とに基づいて、到達予測時間の経過後の他車両の予測位置を演算し、到達予測時間の経過後に他車両が障害物の近傍に存在していると判定された場合には走行車線を回避領域として設定し、到達予測時間の経過後に他車両が障害物の近傍に存在していないと判定された場合には走行車線及び走行車線に隣接する車線の双方を回避領域として設定し、搬送車両の位置と、障害物の位置と、回避領域とに基づいて、搬送車両が障害物を回避するための回避経路を回避領域内に生成する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行経路に沿って自律走行可能な搬送車両を制御する制御装置を備えた自律走行システムにおいて、
前記制御装置は、
前記搬送車両の走行車線内に障害物が位置している場合に、前記障害物の位置、前記搬送車両の位置及び走行速度に基づいて、前記搬送車両が前記障害物の位置に到達するまでの時間である到達予測時間を演算し、
前記搬送車両の周囲に存在する他車両の位置及び走行速度と、前記到達予測時間とに基づいて、前記到達予測時間の経過後の前記他車両の予測位置を演算し、
前記障害物の位置と、前記他車両の予測位置とに基づいて、前記到達予測時間の経過後に前記他車両が前記障害物の近傍に存在しているか否かを判定し、
前記到達予測時間の経過後に前記他車両が前記障害物の近傍に存在していると判定された場合には、前記走行車線を回避領域として設定し、前記走行車線に隣接する車線を回避領域として設定せず、
前記到達予測時間の経過後に前記他車両が前記障害物の近傍に存在していないと判定された場合には、前記走行車線及び前記走行車線に隣接する車線の双方を回避領域として設定し、
前記搬送車両の位置と、前記障害物の位置と、前記回避領域とに基づいて、前記搬送車両が前記障害物を回避するための前記走行経路としての回避経路を前記回避領域内に生成する、
ことを特徴とする自律走行システム。
【請求項2】
請求項1に記載の自律走行システムにおいて、
前記制御装置は、
前記障害物の位置と、前記障害物の横幅と、前記回避領域とに基づいて、前記搬送車両が前記障害物に接触することなく前記障害物の側方を通過できるか否かを判定し、
前記障害物の位置と、前記障害物の横幅及び高さと、前記回避領域とに基づいて、前記搬送車両が前記障害物に接触することなく前記障害物の上方を通過できるか否かを判定し、
前記搬送車両が前記障害物に接触することなく前記障害物の側方及び上方のいずれも通過できないと判定された場合には、前記搬送車両から見て前記障害物の手前で前記搬送車両を停止させ、
前記搬送車両が前記障害物に接触することなく前記障害物の側方を通過できると判定された場合には、前記障害物の側方を通る迂回経路を前記回避経路として生成し、
前記搬送車両が前記障害物に接触することなく前記障害物の上方を通過できると判定された場合には、前記障害物を跨ぐ跨ぎ経路を前記回避経路として生成する、
ことを特徴とする自律走行システム。
【請求項3】
請求項2に記載の自律走行システムにおいて、
前記制御装置は、
前記迂回経路及び前記跨ぎ経路の双方が生成された場合には、前記搬送車両が前記迂回経路の通過に要する時間である第1通過所要時間、及び前記搬送車両が前記跨ぎ経路の通過に要する時間である第2通過所要時間を算出し、
前記第1通過所要時間が前記第2通過所要時間よりも短い場合には、前記迂回経路を前記回避経路とし、
前記第2通過所要時間が前記第1通過所要時間よりも短い場合には、前記跨ぎ経路を前記回避経路とする、
ことを特徴とする自律走行システム。
【請求項4】
請求項1に記載の自律走行システムにおいて、
前記制御装置は、
前記搬送車両の走行優先度が前記他車両の走行優先度よりも高いか低いかを判定し、
前記到達予測時間の経過後に前記他車両が前記障害物の近傍に存在していると判定され、かつ、前記搬送車両の走行優先度が前記他車両の走行優先度よりも低いと判定された場合には、前記走行車線を回避領域として設定し、前記走行車線に隣接する車線を回避領域として設定せず、
前記到達予測時間の経過後に前記他車両が前記障害物の近傍に存在していると判定され、かつ、前記搬送車両の走行優先度が前記他車両の走行優先度よりも高いと判定された場合には、前記走行車線及び前記走行車線に隣接する車線の双方を回避領域として設定する、
ことを特徴とする自律走行システム。
【請求項5】
請求項4に記載の自律走行システムにおいて、
前記制御装置は、
前記搬送車両の積載量が前記他車両の積載量よりも大きい場合には、前記搬送車両の走行優先度が前記他車両の走行優先度よりも高いと判定する、
ことを特徴とする自律走行システム。
【請求項6】
請求項4に記載の自律走行システムにおいて、
前記制御装置は、
前記搬送車両の前記走行車線の勾配の情報を取得し、
取得した前記勾配の情報に基づいて、前記搬送車両から見て前記障害物の奥側であって、前記障害物から所定距離以内に上り勾配が存在するか否かを判定し、
前記上り勾配が存在すると判定された場合には、前記搬送車両の走行優先度が前記他車両の走行優先度よりも高いと判定する、
ことを特徴とする自律走行システム。
【請求項7】
請求項4に記載の自律走行システムにおいて、
前記制御装置は、
前記搬送車両に積込対象物を積み込む鉱山機械の稼働状態の情報を取得し、
前記搬送車両の積載状態が、空荷状態であるのか積荷状態であるのかを判定し、
前記鉱山機械の稼働状態が積込作業を行っていない待機状態であり、かつ、前記搬送車両の積載状態が前記空荷状態であることを含む条件が成立した場合には、前記搬送車両の走行優先度を前記条件が成立していない場合に比べて高く設定する、
ことを特徴とする自律走行システム。
【請求項8】
請求項4に記載の自律走行システムにおいて、
前記制御装置は、
前記搬送車両が有人車両であるか無人車両であるかを判定し、
前記搬送車両が有人車両であると判定された場合には、前記搬送車両の走行優先度を前記搬送車両が無人車両であると判定された場合に比べて高く設定する、
ことを特徴とする自律走行システム。
【請求項9】
請求項4に記載の自律走行システムにおいて、
前記制御装置は、前記到達予測時間の経過後に前記他車両が前記障害物の近傍に存在していると判定され、かつ、前記搬送車両の走行優先度が前記他車両の走行優先度よりも高いと判定された場合には、前記搬送車両が前記回避経路の終点に到達するまで、前記回避経路の終点よりも前記搬送車両側の領域への侵入を禁止する制御指令を前記他車両に送信する、
ことを特徴とする自律走行システム。
【請求項10】
請求項3に記載の自律走行システムにおいて、
前記制御装置は、
前記障害物の高さが高いほど、前記跨ぎ経路における前記搬送車両の走行速度の目標値を小さくし、
前記障害物の横幅が大きいほど、前記跨ぎ経路における前記搬送車両の走行速度の目標値を小さくする、
ことを特徴とする自律走行システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律走行システムに関する。
【背景技術】
【0002】
露天掘り鉱山等において、オペレータ(以下「運転手」ということがある)が搭乗することなく自律走行するダンプトラック(以下「無人車両」という)が知られている。鉱山の生産量にあたる土砂や鉱物の運搬量を増加させるために、運搬を担う無人車両は稼働時間内における走行距離を増加させる必要がある。しかしながら、鉱山には、路面を整備する鉱山機械、及び運搬中の無人車両からこぼれ落ちた岩などの障害物がある。無人車両は、進行方向に障害物を検知した場合、障害物の手前で停止することで障害物との接触を防止できる。しかしながら、無人車両を停止させると生産量が低下する。このため、生産量の改善には、無人車両を停止させずに障害物から回避させることが好ましい。
【0003】
従来、車両と障害物との接触を回避する経路を生成する機能を備えた車両制御装置が知られている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の車両制御装置は、自車と障害物の距離及び相対速度を算出する障害物特定部と、距離及び相対速度に基づいて自車の走行経路を選択する走路特定部と、選択された走行経路に基づいて目標走行経路を生成する走行経路生成部と、を備えている。走路特定部は、第二車線の走行中に第一車線の障害物を検出した場合、第二車線を走行し、障害物を通過した後に第一車線の車線中央に向かう第一経路と、第二車線から第一車線の車線中央に向かい、第一車線の車線中央を走行した後に、第二車線に向かい障害物を回避する第二経路と、第二車線から第一車線の車線中央よりも障害物回避方向寄りの走行経路に向かい、障害物回避方向寄りの走行経路を走行した後に、第二車線に向かい障害物を回避する第三経路と、の何れかを選択する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、自車の走行車線の境界線のうち、対向車線とは反対側の境界線上に障害物が存在する場合、自車の走行車線と対向車線との境界線付近を用いて障害物を回避することができる。しかしながら、鉱山などにおいて、無人車両から落ちた岩などの障害物が、自車の走行車線と対向車線との境界線付近に存在する場合には、特許文献1に記載の技術を用いることができない。
【0006】
本発明は、搬送車両の走行車線と、走行車線に隣接する車線との境界線付近に障害物が存在する場合に、障害物を回避して搬送車両の走行の継続を可能とする自律走行システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様による自律走行システムは、走行経路に沿って自律走行可能な搬送車両を制御する制御装置を備える。前記制御装置は、前記搬送車両の走行車線内に障害物が位置している場合に、前記障害物の位置、前記搬送車両の位置及び走行速度に基づいて、前記搬送車両が前記障害物の位置に到達するまでの時間である到達予測時間を演算し、前記搬送車両の周囲に存在する他車両の位置及び走行速度と、前記到達予測時間とに基づいて、前記到達予測時間の経過後の前記他車両の予測位置を演算し、前記障害物の位置と、前記他車両の予測位置とに基づいて、前記到達予測時間の経過後に前記他車両が前記障害物の近傍に存在しているか否かを判定し、前記到達予測時間の経過後に前記他車両が前記障害物の近傍に存在していると判定された場合には、前記走行車線を回避領域として設定し、前記走行車線に隣接する車線を回避領域として設定せず、前記到達予測時間の経過後に前記他車両が前記障害物の近傍に存在していないと判定された場合には、前記走行車線及び前記走行車線に隣接する車線の双方を回避領域として設定し、前記搬送車両の位置と、前記障害物の位置と、前記回避領域とに基づいて、前記搬送車両が前記障害物を回避するための前記走行経路としての回避経路を前記回避領域内に生成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、搬送車両の走行車線と、走行車線に隣接する車線との境界線付近に障害物が存在する場合に、障害物を回避して搬送車両の走行の継続を可能とする自律走行システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、露天掘り鉱山の作業現場を示す概略図であり、第1実施形態に係る自律走行システムを備えた無人車両について示す。
【
図3】
図3は、搬送路内を走行する無人車両の走行経路について示す図である。
【
図4A】
図4Aは、地図情報の第1テーブルの例を示す図である。
【
図4B】
図4Bは、地図情報の第2テーブルの例を示す図である。
【
図5】
図5は、障害物情報演算部により実行される障害物情報の演算処理の流れの一例について示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、走行車線を走行する自車両及び対向車線を走行する他車両(対向車両)について示す平面模式図である。
【
図7】
図7は、車両制御装置の主要な演算処理の流れ(メインフロー)の一例について示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、回避経路生成部により実行される回避領域の決定処理の流れの一例について示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、回避経路生成部により実行される回避経路の生成処理の流れの一例について示すフローチャートである。
【
図10A】
図10Aは、回避領域に応じた空間距離について示す図であり、走行車線及び対向車線が回避領域として設定された場合を示す。
【
図10B】
図10Bは、回避領域に応じた空間距離について示す図であり、走行車線のみが回避領域として設定された場合を示す。
【
図11A】
図11Aは、回避領域に応じた移動限界距離について示す図であり、走行車線及び対向車線が回避領域として設定された場合を示す。
【
図11B】
図11Bは、回避領域に応じた移動限界距離について示す図であり、走行車線のみが回避領域として設定された場合を示す。
【
図12】
図12は、露天掘り鉱山の作業現場を示す概略図であり、第2実施形態に係る自律走行システムを備えた管制局について示す。
【
図13】
図13は、無人車両、鉱山機械、及び管制局の構成を示す図である。
【
図14】
図14は、第2実施形態に係る管制サーバにより実行される回避領域の決定処理の流れの一例について示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。以下の説明は本発明の内容の具体例を示すものであり、本発明がこれらの説明に限定されるものではなく、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更及び修正が可能である。また、本発明を説明するための全図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0011】
<第1実施形態>
図1~
図11Bを参照して、本発明の第1実施形態に係る自律走行システムについて説明する。
図1は、露天掘り鉱山の作業現場を示す概略図であり、第1実施形態に係る自律走行システムを備えた無人車両20について示す。
図1に示すように、露天掘り鉱山の作業現場では、土砂や鉱石等の掘削作業、掘削した掘削物を無人車両20に積み込む積込作業、及び搬送路50の整備作業等を行う1台以上の鉱山機械30と、鉱山機械30から積み込まれた土砂や鉱石等の積荷を搬送する1台以上の無人車両20とが協働で作業を行う。なお、図中、自律走行が可能な各無人車両20を、20-1、20-2…として示している。
【0012】
無人車両20は、作業現場の形状から設定される搬送路50内を走行する。無人車両20は、オペレータが搭乗することなく、自律走行が可能な搬送車両である。無人車両20は、例えば、積荷を積載するベッセル(荷台)が設けられる車体21と、車体21に設けられる4つの車輪22と、を備えたダンプトラックである。なお、本第1実施形態では、作業現場に存在する無人車両(ダンプトラック)20は、全て同じ仕様(例えば、最大積載量が同じ)であり、同じ機能を備えている場合を例に説明する。鉱山機械30は、例えば、ブーム、アーム及びバケットを有する作業装置と、作業装置が取り付けられる車体と、車体に設けられるクローラと、を備えた油圧ショベルである。
【0013】
無人車両20同士、及び無人車両20と鉱山機械30は、無線通信回線40によって互いに通信可能に構成されている。具体的には、作業現場には複数の無線基地局41が設置されており、無人車両20同士、及び無人車両20と鉱山機械30は、これらの無線基地局41を介して互いに送受信を行っている。
【0014】
図2は、無人車両20の構成を示す図である。
図2に示すように、無人車両20は、ハードウェア構成として、車両制御装置100、外界センサ101、積載センサ102、位置センサ103、方位センサ104、速度センサ105、操舵角センサ106、走行駆動装置107、記憶装置108、及び無線通信装置109を備える。第1実施形態に係る自律走行システムは、車両制御装置100と記憶装置108とを含む。以下では、これらのハードウェアを備え、車両制御装置100の制御対象となっている無人車両20を自車両20Aと定義する。
【0015】
無線通信装置109は、無線通信回線40の一部を構成する無線基地局41と無線通信可能な通信装置であって、例えば2.1GHz帯等の帯域を感受帯域とする通信アンテナを含む通信インタフェースを有する。
【0016】
走行駆動装置107は、車両制御装置100からの走行制御指令に基づいて車輪22を操舵したり車輪22を回転させたりすることで、車体21を走行させる。走行駆動装置107は、例えば、エンジンと、エンジンによって駆動される発電機と、発電機によって発電された電力によって車輪22を駆動する走行モータ(電動モータ)と、車輪22を操舵するステアリング装置と、車輪22に制動力を付与するブレーキ装置とを有している。
【0017】
走行モータは、車輪22に駆動力を付与することにより、車体21を加速させる。ステアリング装置は、操舵角を変更するための操舵モータ(電動モータ)を有している。ブレーキ装置は、電気ブレーキ装置及び機械ブレーキ装置を含む。電気ブレーキ装置は、走行モータの発電による回生トルクを制動力として走行速度を減少させる回生ブレーキ装置である。機械ブレーキ装置は、電気ブレーキ装置よりも大きな制動力を発生することができる摩擦式の機械ブレーキ装置である。機械ブレーキ装置は、例えば、車輪22のホイール内に設けられるディスクブレーキ装置であり、摩擦力を制動力として走行速度を減少させる。
【0018】
車両制御装置100は、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置、所謂RAM(Random Access Memory)と呼ばれる揮発性メモリ、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリ、入出力インタフェース、及び、その他の周辺回路を備えたコンピュータで構成される。これらのハードウェアは、協働してソフトウェアを動作させ、複数の機能を実現する。なお、車両制御装置100は、1つのコンピュータで構成してもよいし、複数のコンピュータで構成してもよい。
【0019】
不揮発性メモリには、各種演算を実行可能なプログラム、各種演算に必要なデータ(判定処理に用いられる閾値、及び無人車両20Aの車幅、最低地上高、車輪22間の空間距離など)が格納されている。すなわち、不揮発性メモリは、本実施形態の機能を実現するプログラムを読み取り可能な記憶媒体(記憶装置)である。揮発性メモリは、処理装置による演算結果及び入出力インタフェースから入力された信号を一時的に記憶する記憶媒体(記憶装置)である。処理装置は、不揮発性メモリに記憶されたプログラムを揮発性メモリに展開して演算実行する装置であって、プログラムに従って入出力インタフェース、不揮発性メモリ及び揮発性メモリから取り入れたデータに対して所定の演算処理を行う。入出力インタフェースの入力部は、各種センサ101~106及び無線通信装置109から入力された信号を処理装置で演算可能なデータに変換する。また、入出力インタフェースの出力部は、処理装置での演算結果に応じた出力用の信号を生成し、その信号を走行駆動装置107及び無線通信装置109等に出力する。
【0020】
外界センサ101は、無人車両20の周囲の物体を認識するセンサである。外界センサ101は、自車両20Aと、自車両20Aの周囲にある物体(例えば、障害物、鉱山機械30、及び、他の無人車両20)との相対的な3次元位置を計測する。また、外界センサ101は、計測した相対的な位置に基づき、自車両20Aと物体との間の距離を計測する機能を有していてもよい。外界センサ101は、例えば、レーザ光を用いて当該外界センサ101と物体との相対的な3次元位置を計測可能なLIDAR(Light Detection And Ranging)である。なお、外界センサ101には、ミリ波レーダ、ステレオカメラなどを採用してもよい。
【0021】
積載センサ102は、自車両20Aの積載量を取得するためのものである。積載センサ102は、例えば、自車両20Aのサスペンションに作用する荷重あるいは油圧シリンダ(サスペンションシリンダ)内の作動油の圧力を検出し、その検出結果に基づいて自車両20Aの積載量を演算する。
【0022】
位置センサ103は、自車両20Aの位置(車体21の位置)を取得するためのものであり、方位センサ104は、自車両20Aの方位(車体21の向き)を取得するためのものである。位置センサ103及び方位センサ104は、例えば、複数のGNSS(Global Navigation Satellite System:全地球衛星測位システム)用のアンテナ(以下、GNSSアンテナと記す)と、GNSSアンテナで受信された複数の測位衛星からの衛星信号(GNSS電波)に基づいて、3次元空間の実座標で表される車体21の位置、及び基準方位からの角度である方位角を演算する測位演算装置と、を有する。車体21の位置は、例えば、地理座標系(グローバル座標系)における車体21の位置座標で表される。
【0023】
なお、位置センサ103及び方位センサ104は、単一のGNSSアンテナと、測位演算装置とによって構成してもよい。この場合、方位センサ104は、車体21の位置の軌跡から方位角を演算する。また、方位センサ104は、例えば、IMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)と、IMUにより検出された角加速度情報の時間変化から方位角を演算する演算装置とを備えたものであってもよい。
【0024】
速度センサ105は、自車両20Aの走行速度(車体21の移動速度)Vを取得するためのものである。速度センサ105は、例えば、車輪22の回転速度を検出する車輪速センサである。なお、速度センサ105は、位置センサ103により演算された車体21の位置の時間変化から速度を演算する装置であってもよい。
【0025】
操舵角センサ106は、自車両20Aの操舵角を取得するためのものである。操舵角センサ106は、例えば、ステアリング装置に取り付けられるエンコーダなどの角度検出装置である。
【0026】
車両制御装置100は、自車両20Aの動作を制御する。
図3は、搬送路50内を走行する無人車両20の走行経路11について示す図である。
図3は、無人車両20が走行する走行車線51のみで搬送路50が構成されている例について示しているが、搬送路50は走行車線51と走行車線51に隣接する対向車線52(
図6参照)によって構成される場合もある。
図3に示すように、車両制御装置100は、走行経路11に沿って自車両20Aを自律走行させるために、走行駆動装置107に対して走行制御指令を出力する。走行制御指令には、ブレーキ操作量、アクセル操作量、及び操舵角操作量が含まれる。
【0027】
走行経路11は、複数のノード12によって特定される。複数のノード12に関する情報(以下、地図情報とも記す)は、後述するように、記憶装置108に記憶される。走行経路11は、走行車線10内の曲線を示すデータであり、ノード12は走行経路11上の座標を示すデータである。車両制御装置100は、走行経路11との偏差が最小となるように自車両20Aを自律走行させてもよいし、ノード12上を通過するように自車両20Aを自律走行させてもよい。図示する例では、走行経路11が走行車線10の中心を通る曲線とされているが、走行経路11は走行車線10の中心から左右のいずれかにずれた位置に設けられていてもよい。また、図示する例では、ノード12は、走行経路11上に等間隔に配置されているが、不等間隔に配置されていてもよい。
【0028】
図2に示す記憶装置108は、データの読み書きが可能な不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)、各種の制御プログラム、アプリケーション・プログラム、データベース等が格納されている。記憶装置108は、地図情報記憶部181を含む。地図情報記憶部181には、
図4A及び
図4Bに示す地図情報がテーブル形式で記憶されている。
【0029】
図4Aは、地図情報の第1テーブルの例を示す図であり、
図4Bは、地図情報の第2テーブルの例を示す図である。
図4A及び
図4Bに示すように、地図情報は、走行経路11を規定するノードの位置、勾配、制限速度、及び車線の幅を規定する情報等を含む。
図4Aは、積込地点から積降地点に向かう経路に関する地図情報であり、
図4Bは、積降地点から積込地点に向かう経路に関する地図情報である。なお、第1テーブルと第2テーブルとを分けて記載しているが、第1テーブルと第2テーブルとを連続したデータテーブルとして設けられていてもよい。
【0030】
自車両20Aが第1テーブル(
図4A参照)のノード位置により規定される走行経路11に沿って走行している場合、第1テーブルが走行車線51に関する地図情報となり、第2テーブル(
図4B参照)が対向車線52に関する地図情報となる。以下では、自車両20Aが走行する車線に隣接する対向車線52を走行する他の無人車両20を対向車両20Bと定義する。また、本明細書では、自車両20Aが、第1テーブルのノード位置により規定される走行経路11に沿って走行している場合の制御、動作等を代表して説明する。なお、自車両20Aが第2テーブル(
図4B参照)のノード位置により規定される走行経路11に沿って走行している場合、第2テーブルが走行車線に関する地図情報となり、第1テーブル(
図4A参照)が対向車線に関する地図情報となる。
【0031】
第1テーブルには、ノード毎に、ノードID、ノード位置、制限速度、勾配、及び走行車線情報が定められている。第2テーブルには、ノード毎に、ノードID、ノード位置、制限速度、勾配、及び対向車線情報が定められている。
【0032】
ノードIDはノードを識別するための情報であり、ノード位置は走行経路11の経路形状を定める情報である。ノード位置は、例えば、作業現場に座標原点を設定した現場座標系の座標で特定される。現場座標系は、X,Y座標からなる2次元直交座標系である。なお、ノード位置は、地理座標系の座標で特定してもよい。現場座標系の座標と地理座標系の座標は変換が可能である。
【0033】
走行経路11の制限速度は、走行経路11の曲率及び勾配の少なくとも一方を加味して定められる。なお、走行経路11の曲率は、所定個数のノード12を円周上に持つ円の半径の逆数として求めることができる。また、走行経路11の曲率は、予め有人走行試験などにより、走行経路11に沿って無人車両20を走行させたときの車体21の方位角もしくは車体21の位置の時間変化から算出した走行軌跡の旋回半径の逆数として求めてもよい。
【0034】
走行経路11の勾配は、走行経路11の水平方向に対する傾きである。車線情報(走行車線情報及び対向車線情報)は、無人車両20が走行可能な領域である車線を規定するデータである。露天掘り鉱山の作業現場では、車道の通行のための帯状の領域である車線を形成するための車線形成線(車線境界線、中央線等)が物理的に存在していないことが多い。このため、本明細書では、記憶装置108に記憶されている車線情報によって規定される無人車両20が走行可能な領域を車線と定義する。なお、車線には、自車両20Aが走行する車線である走行車線51と、対向車両20Bが走行する車線である対向車線52とがある。
【0035】
本実施形態では、ノード12に無人車両20が位置した場合に、そのノード12から無人車両20の進行方向に直交する左右方向の距離DL,DRが、車線情報として地図情報記憶部181に記憶されている。
【0036】
図3を参照して、走行車線51の一例を説明する。本実施形態では、ノード12から左方向の距離DLによって、走行車線(走行可能領域)の左側の仮想的な車線形成線51Lが規定される。同様に、ノード12から右方向の距離DRによって、走行車線(走行可能領域)の右側の仮想的な車線形成線51Rが規定される。換言すれば、車線形成線51Lは、走行車線51の走行経路11を構成する複数のノード12のそれぞれから左方向に距離DLだけ離れた地点同士を結んだ仮想線に相当する。同様に、車線形成線51Rは、走行車線51の走行経路11を構成する複数のノード12のそれぞれから右方向に距離DRだけ離れた地点同士を結んだ仮想線に相当する。なお、本実施形態では、右側の車線形成線51Rは、自車両の走行車線51と、対向車線52とを区切る中央線として機能する(
図6参照)。なお、
図6に示す対向車線52についても同様である。つまり、対向車線情報である距離DL,DRにより対向車線52の車線形成線52L,52Rが規定される。
【0037】
図2を参照して、車両制御装置100の機能の詳細について説明する。
図2には、車両制御装置100の機能ブロック図が示されている。
図2に示すように、車両制御装置100は、処理装置が不揮発性メモリに記憶されているプログラムを実行することによって障害物情報演算部111、回避経路生成部112、制御目標生成部113、及び自律走行制御部114として機能する。
【0038】
障害物情報演算部111は、外界センサ101の検出結果に基づき、自車両20Aの進行方向に障害物90が存在することを検知する。障害物情報演算部111は、外界センサ101の検出結果に基づいて、自車両20Aの進行方向に存在する障害物の情報として、障害物の位置、障害物の高さ、及び障害物の横幅を演算する。障害物の位置には、障害物の中心の位置、及び障害物の上下左右端部の位置が含まれる。障害物の高さは、障害物の上下端部の位置に基づき算出される。障害物の横幅は、障害物の左右端部の位置に基づき算出される。
【0039】
回避経路生成部112は、障害物の情報に基づいて障害物を回避するための新たな走行経路としての回避経路を生成する。なお、「回避経路を生成する」とは、回避経路を構成する複数のノードを設定することを意味する。制御目標生成部113は、地図情報記憶部181に記憶されている地図情報に基づいて、走行速度の目標値である目標速度Vt及び操舵角の目標値である目標操舵角を含む制御目標を生成する。なお、回避経路が生成された場合には、制御目標生成部113は、回避経路に沿って自車両20Aを走行させるための制御目標を生成する。つまり、制御目標生成部113は、回避経路の始点ノードから終点ノードまでの範囲では、地図情報のノードの位置を無視して、回避経路を構成するノードの位置に基づいて制御目標を生成する。
【0040】
自律走行制御部114は、制御目標生成部113により生成された制御目標と、速度センサ105により取得された走行速度Vと、操舵角センサ106により取得された操舵角とに基づいて走行制御指令を生成する。自律走行制御部114は、生成した走行制御指令を走行駆動装置107に出力する。これにより、走行駆動装置107の各部が制御され、車体21が地図情報によって規定される走行経路11に沿って走行する。なお、回避経路が生成されている場合には、車体21は、新たな走行経路としての回避経路に沿って走行する。
【0041】
図5及び
図6を参照して、障害物の情報の演算処理について詳しく説明する。
図5は、障害物情報演算部271により実行される障害物情報の演算処理の流れの一例について示すフローチャートである。
図5のフローチャートに示す処理は、例えば、自車両20Aのイグニッションスイッチがオンされ、車両制御装置100が起動されることにより開始され、所定の制御周期(演算周期)で繰り返し実行される。
【0042】
図5に示すように、ステップS10において、障害物情報演算部111は、記憶装置108の地図情報記憶部181から地図情報、及び外界センサ101の検出結果を表すセンサ情報を取得し、処理をステップS13に進める。
【0043】
ステップS13において、障害物情報演算部111は、ステップS10で取得した外界センサ101のセンサ情報に基づいて、自車両20Aの進行方向(前方)にある障害物を検知する。ステップS15において、障害物情報演算部111は、検知した障害物の情報、すなわち障害物の位置、並びに障害物の大きさを表すパラメータである高さ及び横幅を演算する。
【0044】
図6を参照して、障害物情報演算部111による障害物情報の演算処理の詳細について説明する。
図6は、走行車線51を走行する自車両20A及び対向車線52を走行する他車両(対向車両)20Bについて示す平面模式図である。障害物情報演算部111は、例えば、
図6に示すように障害物90を囲う直方体91を演算する。障害物情報演算部111は、直方体91の下底面の中心を障害物の位置Po、直方体91の地面からの高さ(直方体91の下底面から上底面までの高さ)を障害物の高さHo、直方体91の走行経路11に垂直な水平方向(左右方向)の長さを障害物の横幅Woとして算出する。
図5に示すステップS13において、障害物90の情報(位置、大きさ)の演算処理が完了すると、処理がステップS15に進む。
【0045】
ステップS15において、障害物情報演算部111は、ステップS13で演算された障害物90の情報に基づき、障害物90が走行車線(走行可能領域)10内にあるか否かを判定する。障害物情報演算部111は、平面視で直方体91の少なくとも一部が走行車線10内に存在する場合には、障害物90が走行車線10内にあると判定する。障害物情報演算部111は、平面視で直方体91の全てが走行車線10内に存在しない場合には、障害物90が走行車線10内にないと判定する。ステップS15において、障害物90が走行車線10内にあると判定されると、処理がステップS17に進む。ステップS15において、障害物90が走行車線10内にないと判定されると、処理がステップS19に進む。
【0046】
ステップS17において、障害物情報演算部111は、障害物90の位置Po及び地図情報の第1テーブル(
図4A参照)に基づいて、障害物90の位置Poに最も近い走行車線10内のノード位置を特定する。障害物情報演算部111は、特定したノード位置のノードIDを走行車線障害物IDdxとして設定する。障害物情報演算部111は、障害物90の位置Po及び地図情報の第2テーブル(
図4B参照)に基づいて、障害物の位置Poに最も近い対向車線52内のノード位置を特定する。障害物情報演算部111は、特定したノード位置のノードIDを対向車線障害物IDoxとして設定する。
【0047】
ステップS19において、障害物情報演算部111は、走行車線障害物IDdx及び対向車線障害物IDoxが設定されている場合には、それらの設定を解除する。
【0048】
走行車線障害物IDdx及び対向車線障害物IDoxの設定処理(ステップS17)あるいは、走行車線障害物IDdx及び対向車線障害物IDoxの設定解除処理(ステップS19)が完了すると、本制御周期における
図5のフローチャートに示す処理が終了する。
【0049】
図7~
図11Bを参照して、回避経路の生成処理及び制御目標の生成処理について詳しく説明する。
図7は、車両制御装置100の主要な演算処理の流れ(メインフロー)の一例について示すフローチャートである。
図7のフローチャートに示す処理は、例えば、自車両20Aのイグニッションスイッチがオンされ、車両制御装置100が起動されることにより開始され、所定の制御周期(演算周期)で繰り返し実行される。
【0050】
図7に示すように、ステップS20において、回避経路生成部112は、障害物情報演算部111により走行車線障害物IDdx及び対向車線障害物IDoxが設定されているか否かを判定する。ステップS20の処理は、自車両20Aの前方に障害物90が検知され、かつ、検知された障害物90が走行車線10内にあるか否かを判定する処理に相当する。障害物IDdx,IDoxが設定されていると判定された場合、すなわち、自車両20Aの前方に障害物90が検知され、かつ、検知された障害物90が走行車線10内にあると判定された場合には、処理がステップS23に進む。ステップS20において、障害物IDdx,IDoxが設定されていないと判定された場合には、本制御周期における
図7のフローチャートに示す処理が終了する。つまり、自車両20Aの前方に障害物90が検知されていない、あるいは、検知された障害物90が走行車線10内にないと判定された場合には、自車両20Aが衝突する可能性のある障害物がないため、地図情報に基づき、走行経路11に沿った走行が行われる。
【0051】
ステップS23において、回避経路生成部112は、位置センサ103から自車両20Aの位置を取得するとともに、速度センサ105から自車両20Aの走行速度Vを取得して、処理をステップS26に進める。
【0052】
ステップS26において、回避経路生成部112は、ステップS17で設定された走行車線障害物IDdxのノード位置(座標)を取得する。回避経路生成部112は、走行車線障害物IDdxのノード位置と、ステップS23で取得した自車両20Aの位置に基づいて、自車両20Aの位置から走行車線障害物IDdxのノード位置までの走行経路11に沿った道のり(距離)を算出する。回避経路生成部112は、算出した道のり(距離)と、ステップS23で取得した自車両20Aの走行速度Vとに基づいて、自車両20Aが走行車線障害物IDdxのノード位置に到達するまでの時間である到達予測時間Taを算出する。
【0053】
ステップS30において、回避経路生成部112は、到達予測時間Ta、他車両20Bと障害物90との位置関係、自車両20Aと他車両20Bの積載量、及び走行経路11の勾配に基づいて、搬送路50のうち回避に使用できる領域(回避領域)を決定し、処理をステップS60に進める。
図8を参照して、回避領域の決定処理(ステップS30)の詳細について説明する。
【0054】
図8は、回避経路生成部112により実行される回避領域の決定処理の流れの一例について示すフローチャートである。回避領域の決定処理(ステップS30)では、先ず、ステップS131において、回避経路生成部112は、変数kを1に設定して処理をステップS133に進める。なお、変数kは、作業現場に存在する無人車両20のそれぞれに割り当てられる固有の番号である。変数kは、後述するステップS139において1ずつ増える自然数である。以下、変数kが割り当てられた無人車両20のことをk番目の無人車両20とも記す。
【0055】
作業現場の無人車両20は、該無人車両20が備えている位置センサ103及び速度センサ105の検出情報を所定の制御周期で取得し、無線通信回線40を介して他の無人車両20に送信している。ステップS133において、回避経路生成部112は、k番目の無人車両20から該無人車両20の位置Pk及び走行速度Vkを取得して、処理をステップS135に進める。
【0056】
ステップS135において、回避経路生成部112は、ステップS133で取得した走行速度VkとステップS26で算出した到達予測時間Taに基づき、k番目の無人車両の走行距離Dkを算出する(Dk=Vk・Ta)。回避経路生成部112は、ステップS133で取得した無人車両20の位置Pkと、地図情報に含まれる無人車両20の走行経路11と、走行距離Dkとに基づき、到達予測時間Taの経過時点でのk番目の無人車両20の予測位置Pkaを算出する。回避経路生成部112は、予測位置Pkaに最も近いノード位置を特定し、特定したノード位置のノードIDを他車両予測位置IDkとして設定する。
【0057】
次のステップS137において、回避経路生成部112は、ステップS17で設定された対向車線障害物IDoxと、ステップS135で設定された他車両予測位置IDkとに基づいて、到達予測時間Taの経過後(経過時点)にk番目の無人車両20が障害物90の近傍に存在しているか否かを判定する。回避経路生成部112は、他車両予測位置IDkのノード位置から予め定められた所定距離Dp以内に対向車線障害物IDoxが存在しない場合には、到達予測時間Taの経過後にk番目の無人車両20が障害物90の近傍に存在していないと判定し、処理をステップS139に進める。回避経路生成部112は、他車両予測位置IDkのノード位置から所定距離Dp以内に対向車線障害物IDoxが存在する場合には、到達予測時間Taの経過後にk番目の無人車両20が障害物90の近傍に存在していると判定し、処理をステップS143に進める。
【0058】
ステップS139において、回避経路生成部112は、変数kに1を足して処理をステップS141に進める。ステップS141において、回避経路生成部112は、変数kが、変数閾値kxよりも大きいか否かを判定する。変数閾値kxは、作業現場において変数kが割り当てられる無人車両20の総数に相当する。ステップS141において、ステップS139で設定された変数kが変数閾値kx以下と判定された場合には、処理がステップS133に戻る。また、ステップS141において、ステップS139で設定された変数kが変数閾値kxよりも大きいと判定された場合には、処理がステップS153に進む。したがって、ある無人車両20に対してステップS133~S137の処理が行われ、ステップS137で否定判定されると、次の無人車両20に対して、同様にステップS133~S137の処理が行われることになる。
【0059】
作業現場の無人車両20は、該無人車両20が備えている積載センサ102の検出情報を所定の制御周期で取得し、無線通信回線40を介して他の無人車両20に送信している。ステップS143において、回避経路生成部112は、積載センサ102から自車両20Aの積載量を取得するとともに、k番目の無人車両20から該無人車両20の積載量を取得して、処理をステップS144に進める。なお、ステップS143以降の処理では、説明の便宜上、k番目の無人車両20を対向車両20Bとも記す。
【0060】
ステップS144において、回避経路生成部112は、自車両20Aの積載状態、及び対向車両20Bの積載状態の判定を行う。回避経路生成部112は、ステップS143で取得した自車両20Aの積載量が、積載量閾値以上である場合には当該自車両20Aの積載状態を積荷状態と判定する。回避経路生成部112は、自車両20Aの積載量が、積載量閾値未満である場合には自車両20Aの積載状態を空荷状態と判定する。同様に、回避経路生成部112は、ステップS143で取得した無人車両20の積載量が、積載量閾値以上である場合には当該無人車両20の積載状態を積荷状態と判定する。回避経路生成部112は、無人車両20の積載量が、積載量閾値未満である場合には当該無人車両20の積載状態を空荷状態と判定する。
【0061】
ステップS145において、回避経路生成部112は、自車両20Aの積載状態が積荷状態であり、かつ、対向車両20Bの積載状態が空荷状態であるか否かを判定する。ステップS145において、自車両20Aの積載状態が積荷状態であり、かつ、対向車両20Bの積載状態が空荷状態であると判定されると、処理がステップS153に進む。ステップS145において、自車両20Aの積載状態が空荷状態であること、及び、対向車両20Bの積載状態が積荷状態であることの少なくとも一方が満たされていると判定された場合には、処理がステップS147に進む。
【0062】
なお、自車両20Aと対向車両20Bの仕様は同じであるため、ステップS145で肯定判定された場合、自車両20Aの積載量は対向車両20Bの積載量よりも大きいことを意味する。
【0063】
ステップS147において、回避経路生成部112は、自車両20Aが障害物90を通過した後の走行経路11の勾配、すなわち自車両20Aから見て障害物90の奥側の走行経路11を構成する複数のノード12の勾配を取得して、処理をステップS149に進める。なお、ステップS147で取得される複数のノード12の勾配は、走行車線障害物IDdxよりも自車両20Aの前方(進行方向)のノード12の勾配であって、走行車線障害物IDdxから予め定められた加速距離Da以内に存在するノード12の勾配である。加速距離Daは、例えば、回避動作で減速した車体21を地図情報で規定されている制限速度(
図4A参照)まで加速させるのに必要な距離に余裕値を加味して定められる。
【0064】
ステップS149において、回避経路生成部112は、ステップS147で取得された複数のノード12の勾配の中に、0(ゼロ)よりも大きい勾配が含まれているか否かが判定される。ステップS147で取得された複数のノード12の勾配の中に、0(ゼロ)よりも大きい勾配が含まれている場合とは、自車両20Aから見て障害物90の奥側であって、障害物90から加速距離Da以内に上り勾配が存在することを意味する。一方、ステップS147で取得された複数のノード12の勾配の中に、0よりも大きい勾配が含まれていない場合とは、自車両20Aから見て障害物90の奥側であって、障害物90から加速距離Da以内に上り勾配が存在しないことを意味する。
【0065】
ステップS149において、ステップS147で取得された複数のノード12の勾配の中に、0よりも大きい勾配が含まれていないと判定されると、処理がステップS151に進む。ステップS149において、ステップS147で取得された複数のノード12の勾配の中に、0よりも大きい勾配が含まれていると判定されると、処理がステップS153に進める。
【0066】
ステップS143~ステップS149までの処理は、自車両20Aの走行優先度が対向車両20Bの走行優先度よりも高いか低いかを判定する処理に相当する。本第1実施形態では、ステップS145の判定処理で否定判定され、かつ、ステップS149の判定処理で否定判定された場合には、自車両20Aの走行優先度が対向車両20Bの走行優先度よりも低いと判定され、処理がステップS151に進む。一方、ステップS145の判定処理で肯定判定された場合、あるいは、ステップS149の判定処理で肯定判定された場合には、自車両20Aの走行優先度が対向車両20Bの走行優先度よりも高いと判定され、処理がステップS153に進む。
【0067】
ステップS151において、回避経路生成部112は、走行車線51のみを回避に使用できる領域(回避領域)として決定する。ステップS153において、回避経路生成部112は、走行車線51及び対向車線52を回避に使用できる領域(回避領域)として決定する。回避領域の決定処理(ステップS151またはステップS153)が完了すると、本制御周期における
図8のフローチャートに示す処理が終了する。
【0068】
図7に示すように、回避領域決定処理(ステップS30)が完了すると、処理がステップS60に進む。ステップS60において、回避経路生成部112は、ステップS30において決定された回避領域に基づき、障害物90を回避する回避経路を生成し、処理をステップS90に進める。
図9を参照して、回避経路の生成処理の詳細について説明する。
【0069】
図9は、回避経路生成部112により実行される回避経路の生成処理の流れの一例について示すフローチャートである。回避経路の生成処理(ステップS90)では、先ず、ステップS161において、回避経路生成部112は、回避領域内に、2個以上の障害物90が外界センサ101によって検知されているか否かを判定する。回避経路生成部112は、回避領域内に、2個以上の障害物90が検知されていると判定された場合、処理をステップS163に進める。ステップS163において、回避経路生成部112は、回避経路を生成することなく自車両20Aを停止させることを決定し、本制御周期における
図9のフローチャートに示す処理を終了する。
【0070】
ステップS161において、回避領域内に、2個以上の障害物90が外界センサ101によって検知されていないと判定された場合、すなわち、外界センサ101によって検知されている回避領域内の障害物90は1つのみであると判定された場合、処理がステップS165に進む。
【0071】
ステップS165において、回避経路生成部112は、障害物90の位置Po、障害物90の横幅Wo、及び回避領域に基づき、自車両20Aから見て障害物90の左右の空間距離Ds1,Ds2を算出する。
【0072】
図10A及び
図10Bを参照して、回避領域に応じた空間距離Ds1,Ds2について説明する。
図10A及び
図10Bは、回避領域に応じた空間距離について示す図である。
図10Aは走行車線51及び対向車線52が回避領域として設定された場合を示し、
図10Bは走行車線51のみが回避領域として設定された場合を示す。
図10A及び
図10Bにおいて、回避領域は、斜線のハッチングで模式的に示されている。
【0073】
図10A及び
図10Bに示すように、空間距離Ds1は、障害物90の左端から回避領域の左側境界線(すなわち車線形成線51L)までの距離に相当する。
図10Aに示すように、回避領域が走行車線51と対向車線52で構成されている場合、空間距離Ds2は、障害物90の右端から回避領域の右側の境界線(すなわち車線形成線52L)までの距離に相当する。
図10Bに示すように、回避領域が走行車線51のみで構成されている場合、空間距離Ds2は、障害物90の右端から回避領域の右側の境界線(すなわち車線形成線51R)までの距離に相当する。
【0074】
したがって、
図9のステップS165の処理で演算される空間距離Ds2の値は、設定される回避領域によって異なる。空間距離Ds1,Ds2の算出処理(ステップS165)が完了すると、処理がステップS167に進む。
【0075】
ステップS167において、回避経路生成部112は、自車両20Aが障害物90に接触することなく障害物90の側方を通過できるか否かを判定する。本実施形態では、ステップS167において、回避経路生成部112は、ステップS165で算出した空間距離Ds1,Ds2が自車両20Aの車幅Wb以下であるか否かを判定する。空間距離Ds1が車幅Wb以下であり、かつ、空間距離Ds2が車幅Wb以下である場合、回避経路生成部112は、自車両20Aが障害物90に接触することなく障害物90の側方を通過できないと判定し、処理をステップS173に進める。一方、空間距離Ds1及び空間距離Ds2の少なくとも一方が車幅Wbよりも大きい場合、回避経路生成部112は、自車両20Aが障害物90に接触することなく障害物90の側方を通過できると判定し、処理をステップS169に進める。
【0076】
ステップS169において、回避経路生成部112は、自車両20Aの位置と、障害物90の位置と、回避領域とに基づいて、障害物90の側方を通る迂回経路を生成する。迂回経路は、自車両20Aの前方かつ障害物90の手前の走行経路11のノードが始点とされ、自車両20Aの前方かつ障害物90の奥の走行経路11のノードが終点とされる。なお、回避経路生成部112は、空間距離Ds1と空間距離Ds2のうち大きい方の空間の中心を通る経路を迂回経路として生成する。
【0077】
なお、迂回経路の生成方法はこれに限られない。例えば、回避経路生成部112は、以下のようにして迂回経路を生成してもよい。回避経路生成部112は、空間距離Ds1及び空間距離Ds2のそれぞれが車幅Wbよりも大きい場合には、障害物90の左側方の空間の中心を通過する左側迂回経路と、障害物90の右側方の空間の中心を通過する右側迂回経路とを生成する。回避経路生成部112は、左側迂回経路と右側迂回経路のうち、走行経路11からの進路の変更が最小となる経路を、回避経路の候補である迂回経路として選択する。
【0078】
また、本実施形態において、迂回経路は、平面視で障害物90の側方の空間の中心を車体21の中心が通過するように生成される。なお、迂回経路の生成方法はこれに限定されない。迂回経路は、障害物90の側方を車体21が通過する経路であればよい。このため、迂回経路は、例えば、車体21の中心から左右のいずれかにずれた位置が、平面視で障害物90の側方の空間の中心を通過するように生成されてもよい。
【0079】
迂回経路の生成処理(ステップS169)が完了すると、処理がステップS171に進む。ステップS171において、ステップS169で生成された迂回経路の通過に要する時間である第1通過所要時間Tbが算出される。具体的には、回避経路生成部112は、迂回経路の始点から終点までの経路長L1と、ステップS23で取得した自車両20Aの走行速度Vに基づき、第1通過所要時間Tbを算出する(Tb=L1/V)。
【0080】
自車両20Aが障害物90に接触することなく障害物90の側方を通過できないと判定された場合(ステップS167でYes)には、ステップS173において、回避経路生成部112は、迂回経路を生成せず、迂回時所要時間に無効値を設定する。
【0081】
第1通過所要時間Tbの算出処理(ステップS171)あるいは第1通過所要時間Tbの無効値設定処理(ステップS173)が完了すると、処理がステップS175に進む。ステップS175において、回避経路生成部112は、跨ぎ経路生成条件が成立したか否かを判定する。
【0082】
跨ぎ経路生成条件は、以下の(条件A)及び(条件B)の双方が満たされた場合に成立し、(条件A)及び(条件B)の少なくとも一方が満たされていない場合には成立しない。
(条件A)自車両20Aが障害物90と接触することなく障害物90の上方を通過できる。
(条件B)自車両20Aが回避領域から逸脱することなく障害物90の上方を通過できる。
【0083】
回避経路生成部112は、自車両20Aの左右の車輪22間の空間距離Dwが障害物90の横幅Woよりも大きく、かつ、自車両20Aの最低地上高(ロードクリアランス)Crが障害物90の高さHoよりも大きい場合に、(条件A)が満たされたと判定する。
【0084】
回避経路生成部112は、障害物90の位置Poに基づき、走行経路11から障害物90の位置Poまでの最短距離Doを算出する。回避経路生成部112は、地図情報(
図4A及び
図4B参照)に基づき、回避領域に応じた移動限界距離Do0を算出する。
【0085】
図11A及び
図11Bを参照して、回避領域に応じた移動限界距離Do0について説明する。
図11A及び
図11Bは、回避領域に応じた移動限界距離Do0について示す図である。
図11Aは走行車線51及び対向車線52が回避領域として設定された場合を示し、
図11Bは走行車線51のみが回避領域として設定された場合を示す。
図11A及び
図11Bにおいて、回避領域は、斜線のハッチングで模式的に示されている。
【0086】
図11A及び
図11Bに示すように、移動限界距離Do0は、回避領域から逸脱することなく車体21を横移動可能な距離の最大値に相当する。なお、回避領域から逸脱するとは、平面視で自車両20Aの一部が回避領域の外側にはみ出ることを指す。
図11Aに示すように、回避領域が走行車線51と対向車線52で構成されている場合、移動限界距離Do0は、例えば、走行車線51の走行経路11から対向車線52の車線形成線52Lまでの距離Do2から車幅Wbの半分を差し引くことにより算出される(Do0=Do2-Wb/2)。なお、図示しないが、移動限界距離Do0は、距離Do2から車幅Wbの半分を差し引くとともに、予め定めた余裕値をさらに差し引いて求めることが好ましい。
【0087】
図11Bに示すように、回避領域が走行車線51のみで構成されている場合、移動限界距離Do0は、例えば、走行車線51の走行経路11から走行車線51の車線形成線51Rまでの距離Do1から車幅Wbの半分を差し引くことにより算出される(Do0=Do1-Wb/2)。なお、図示しないが、移動限界距離Do0は、距離Do1から車幅Wbの半分を差し引くとともに、予め定めた余裕値をさらに差し引いて求めることが好ましい。
【0088】
回避経路生成部112は、障害物90の位置Poの走行経路11からの最短距離Doが移動限界距離Do0以下である場合に(条件B)が満たされたと判定する。例えば、
図11Aに示す例では、最短距離Doが移動限界距離Do0以下であるため、(条件B)は満たされている。回避経路生成部112は、障害物90の位置Poの走行経路11からの最短距離Doが移動限界距離Do0よりも大きい場合には、(条件B)は満たされていないと判定する。例えば、
図11Bに示す例では、最短距離Doが移動限界距離Do0よりも大きいため、(条件B)は満たされていない。
【0089】
図9に示すステップS175において、跨ぎ経路生成条件が成立したと判定された場合には、処理がステップS177に進み、跨ぎ経路生成条件が成立していないと判定された場合には、処理がステップS187に進む。
【0090】
ステップS177において、回避経路生成部112は、障害物90を跨ぐ経路である跨ぎ経路を生成する。跨ぎ経路は、自車両20Aの前方かつ障害物90の手前の走行経路11のノードが始点とされ、自車両20Aの前方かつ障害物90の奥の走行経路11のノードが終点とされる。本実施形態において、跨ぎ経路は、障害物90の位置(中心位置)Poの真上を車体21の中心が通過するように生成される。なお、跨ぎ経路の生成方法はこれに限定されない。跨ぎ経路は、障害物90の真上を車体21が通過する経路であればよい。このため、跨ぎ経路は、例えば、車体21の中心から左右のいずれかにずれた位置が、障害物90の位置(中心位置)Poを通過するように生成されてもよい。
【0091】
跨ぎ経路の生成処理(ステップS177)が完了すると、処理がステップS179に進む。ステップS179において、ステップS177で生成された跨ぎ経路の通過に要する時間である第2通過所要時間Tcが算出される。具体的には、回避経路生成部112は、跨ぎ経路の始点から終点までの経路長L2と、ステップS23で取得した自車両20Aの走行速度Vに基づき、第2通過所要時間Tcを算出する(Tc=L2/V)。
【0092】
第2通過所要時間Tcの算出処理(ステップS179)が完了すると、処理がステップS181に進む。ステップS181において、回避経路生成部112は、第1通過所要時間Tbに無効値が設定されているか否かを判定する。ステップS181において、第1通過所要時間Tbに無効値が設定されていないと判定された場合には、処理がステップS183に進み、第1通過所要時間Tbに無効値が設定されていると判定された場合には、処理がステップS185に進む。
【0093】
ステップS183において、回避経路生成部112は、第1通過所要時間Tbが第2通過所要時間Tcよりも大きいか否かを判定する。ステップS183において、第1通過所要時間Tbが第2通過所要時間Tcよりも大きいと判定された場合には、処理がステップS185に進み、第1通過所要時間Tbが第2通過所要時間Tc以下であると判定された場合には、処理がステップS189に進む。
【0094】
ステップS187において、回避経路生成部112は、ステップS181と同様の処理を行う。ステップS187において、第1通過所要時間Tbに無効値が設定されていないと判定された場合には、処理がステップS189に進み、第1通過所要時間Tbに無効値が設定されていると判定された場合には、処理がステップS163に進む。
【0095】
ステップS185において、回避経路生成部112は、ステップS177で生成された跨ぎ経路を回避経路として設定し、本制御周期における
図9のフローチャートに示す処理を終了する。ステップS189において、回避経路生成部112は、ステップS169で生成された迂回経路を回避経路として設定し、本制御周期における
図9のフローチャートに示す処理を終了する。
【0096】
図7に示すように、回避経路生成処理(ステップS60)が完了すると、処理がステップS90に進む。回避経路が生成されている場合、ステップS90において、制御目標生成部113は、回避経路に沿って車体21を走行させるための制御目標(目標速度Vt及び目標操舵角を含む)を生成する。制御目標生成部113は、回避経路に沿って車体21を走行させるために、回避経路の始点と終点との間のノードの目標速度Vtを回避経路の始点及び終点のノードに設定されている制限速度よりも低く設定する。また、自律走行制御部114は、制御目標に基づいて走行制御指令を生成する。生成された走行制御指令は、走行駆動装置107に出力される。これにより、走行駆動装置107の各部が制御され、車体21が回避経路に沿って走行する。
【0097】
ステップS60において跨ぎ経路が回避経路として生成された場合、自車両20Aの走行速度の目標値である目標速度Vtは、以下のように設定される。制御目標生成部113は、障害物90の高さHoが高いほど(すなわち、自車両20Aの最低地上高Crから障害物90の高さHoを差し引いた値が小さくなるほど)、跨ぎ経路における自車両20Aの目標速度Vtを小さくする。また、制御目標生成部113は、障害物90の横幅Woが大きいほど(すなわち、自車両20Aの左右の車輪22間の空間距離Dwから障害物90の横幅Woを差し引いた値が小さくなるほど)、跨ぎ経路における自車両20Aの目標速度Vtを小さくする。低速で車体21を走行させることにより、自車両20Aの回避経路に対する経路追従性能を高めることができる。その結果、跨ぎ経路に沿って走行する自車両20Aと障害物90との接触をより確実に防止することができる。
【0098】
自車両20Aが障害物90に接触することなく障害物90の側方及び上方のいずれも通過できないと判定された場合(ステップS175でNo、S187でYes)には、回避経路が生成されておらず、自車両20Aを停止させることが決定されている(ステップS163)。この場合、ステップS90において、制御目標生成部113は、自車両20Aから見て障害物90の手前のノードの目標速度Vtを0(ゼロ)に設定する。また、自律走行制御部114は、制御目標に基づいて走行制御指令を生成する。生成された走行制御指令は、走行駆動装置107に出力される。これにより、走行駆動装置107の各部が制御され、自車両20Aが障害物90の手前で停止する。
【0099】
なお、対向車両20Bが存在しており、かつ、生成された回避経路が対向車線52内を通る迂回経路である場合、車両制御装置100は、自車両20Aが回避経路(迂回経路)の終点に到達するまで、回避経路の終点よりも自車両20A側の領域への侵入を禁止する制御指令である侵入禁止指令を生成し、生成した侵入禁止指令を無線通信装置109を介して対向車両20Bに送信する。
【0100】
無人車両20(対向車両20B)は、侵入禁止指令を受信すると、無人車両20(自車両20A)の回避経路(迂回経路)の通過が完了するまで、迂回経路に無人車両20(対向車両20B)が侵入しないように、無人車両20(対向車両20B)の走行速度を減速させる、あるいは無人車両20(対向車両20B)を減速させる。
【0101】
-動作-
自車両20Aの走行車線51において、自車両20Aの前方に障害物90が検知された場合の自車両20Aの動作について説明する。車両制御装置100は、障害物90を検知すると到達予測時間Taを演算する。車両制御装置100は、到達予測時間Taの経過時点で障害物90の近傍に対向車両20Bが存在していないと判定した場合には、走行車線51だけでなく対向車線52も含めた回避領域を設定する。これにより、対向車線52を使用した回避動作が実行可能となる。
【0102】
車両制御装置100は、到達予測時間Taの経過時点で障害物90の近傍に対向車両20Bが存在していると判定した場合であっても、対向車両20Bよりも自車両20Aの走行優先度が高いときには、走行車線51及び対向車線52を回避領域として設定する。この場合、自車両20Aから対向車両20Bに侵入禁止指令が出力され、対向車両20Bを減速、あるいは停止させる。これにより、自車両20Aの走行(回避)を優先させることができる。
【0103】
積荷状態で再加速をした場合の燃料消費量は、空荷状態で再加速した場合の燃料消費量よりも大きい。自車両20Aの積載状態が積荷状態であり、かつ対向車両20Bの積載状態が空荷状態である場合において、仮に、回避領域を走行車線51のみに設定し、対向車両20Bの走行を優先させると、燃料消費量の観点で好ましくない。この場合、自車両20Aは減速から再加速のために使用する燃料消費量が、自車両20Aの走行を優先し、他車両20Bを再加速させる場合に比べて大きくなる。その結果、作業現場全体で見たときの運用コストが増加してしまう。これに対して、本実施形態では、自車両20Aの積載状態が積荷状態であり、かつ対向車両20Bの積載状態が空荷状態である場合には、走行車線51だけでなく対向車線52にも回避領域が設定される。これにより、自車両20Aの回避動作において走行速度の低減量を少なくすることができる。その結果、作業現場全体での生産性を高めることができる。
【0104】
自車両20Aが障害物90を回避した後の走行経路11において、障害物90の近傍に上り勾配が存在している場合、上り勾配が存在していない場合に比べて自車両20Aの燃料消費量が大きくなる。上り勾配での再加速は、平地や下り勾配での再加速に比べて燃料消費量が大きくなるためである。本実施形態では、障害物90の近傍に上り勾配が存在している場合には、回避領域を広くし、自車両20Aの回避動作において走行速度の低減量を小さくすることで作業現場全体での生産性を高めることができる。
【0105】
跨ぎ経路生成条件が成立している場合、車両制御装置100は、跨ぎ経路を生成する。迂回経路が生成されていない場合、あるいは、迂回経路が生成されているが第1通過所要時間Tbが第2通過所要時間Tcよりも大きい場合には、跨ぎ経路に沿って車体21を走行させる。これにより、自車両20Aは、効率よく障害物90に対する回避動作を実行できる。
【0106】
なお、回避領域内での障害物90の左右側方の空間が狭い場合には、迂回経路が生成されない。また、跨ぎ経路生成条件が成立しない場合には、跨ぎ経路が生成されない。車両制御装置100は、跨ぎ経路及び迂回経路のいずれも生成されなかった場合には、自車両20Aを停止させる。したがって、回避経路が生成されない場合であっても、自車両20Aと障害物90との接触を適切に防止することができる。
【0107】
上述した実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
【0108】
(1)本実施形態において、自律走行システムは、無人車両(搬送車両)20に搭載されている。自律走行システムは、走行経路11に沿って自律走行可能な自車両(搬送車両)20Aを制御する車両制御装置(制御装置)100を備えている。車両制御装置100は、自車両20Aの走行車線51内に障害物90が位置している場合に、障害物90の位置Po、自車両20Aの位置P及び走行速度Vに基づいて、自車両20Aが障害物90の位置Poに到達するまでの時間である到達予測時間Taを演算する(
図7のステップS20,S23,S26)。
【0109】
車両制御装置100は、自車両20Aの周囲に存在する他車両20Bの位置Pk及び走行速度Vkと、到達予測時間Taとに基づいて、到達予測時間Taの経過後の他車両20Bの予測位置Pkaを演算する(
図8のステップS133,S135)。車両制御装置100は、障害物90の位置Poと、他車両20Bの予測位置Pkaとに基づいて、到達予測時間Taの経過後に他車両20Bが障害物90の近傍に存在しているか否かを判定する(
図8のステップS137)。車両制御装置100は、到達予測時間Taの経過後に他車両20Bが障害物90の近傍に存在していると判定された場合には、走行車線51を回避領域として設定し、走行車線51に隣接する車線である対向車線52を回避領域として設定しない(
図8のステップS137でYes,S151)。車両制御装置100は、到達予測時間Taの経過後に他車両20Bが障害物90の近傍に存在していないと判定された場合には、走行車線51及び対向車線52の双方を回避領域として設定する(
図8のステップS137でNo,S153)。車両制御装置100は、自車両20Aの位置と、障害物90の位置Poと、回避領域とに基づいて、自車両20Aが障害物90を回避するための走行経路としての回避経路を回避領域内に生成する(
図7のステップS60)。車両制御装置100は、生成した回避経路に沿って自車両20Aを走行させる(
図7のステップS90)。
【0110】
したがって、本実施形態によれば、自車両20Aの走行車線51と、走行車線51に隣接する車線である対向車線52との境界線付近に障害物90が存在する場合に、障害物90を回避して自車両20Aの走行を継続させることができる。その結果、境界線付近に障害物90が存在する場合に自車両20Aを停止させる技術に比べて、作業現場での生産性を向上することができる。また、対向車両20Bとの接触の可能性がない場合には、対向車線52を利用して回避動作を実行できる。この場合、走行速度の低下を抑制しつつ回避動作ができるため、再加速に伴う燃料消費量を抑制することができる。
【0111】
(2)車両制御装置100は、障害物90の位置Poと、障害物90の横幅Woと、回避領域とに基づいて、自車両20Aが障害物90に接触することなく障害物90の側方を通過できるか否かを判定する(
図9のステップS165,S167)。車両制御装置100は、障害物90の位置Poと、障害物90の横幅Wo及び高さHoと、回避領域とに基づいて、自車両20Aが障害物90に接触することなく障害物90の上方を通過できるか否かを判定する(
図9のステップS175)。
【0112】
車両制御装置100は、自車両20Aが障害物90に接触することなく障害物90の側方及び上方のいずれも通過できないと判定された場合には、自車両20Aから見て障害物90の手前で自車両20Aを停止させる(
図9のS167でYes,S175でNo,S187でYes,S163)。車両制御装置100は、自車両20Aが障害物90に接触することなく障害物90の側方を通過できると判定された場合には、障害物90の側方を通る迂回経路を回避経路として生成する(
図9のS167でNo,S169)。車両制御装置100は、自車両20Aが障害物90に接触することなく障害物90の上方を通過できると判定された場合には、障害物90を跨ぐ跨ぎ経路を回避経路として生成する(
図9のS175でYes,S177)。
【0113】
この構成では、迂回経路及び跨ぎ経路のいずれかを回避経路として回避動作を実現することができる。したがって、本実施形態によれば、迂回経路のみ、あるいは、跨ぎ経路のみを回避経路として生成する技術に比べて、自車両20Aを停止させる頻度を低減できる。その結果、作業現場での生産性が向上する。
【0114】
(3)車両制御装置100は、迂回経路及び跨ぎ経路の双方が生成された場合には、自車両20Aが迂回経路の通過に要する時間である第1通過所要時間Tb、及び自車両20Aが跨ぎ経路の通過に要する時間である第2通過所要時間Tcを算出する(
図9のステップS171,S179)。車両制御装置100は、第1通過所要時間Tbが第2通過所要時間Tcよりも短い場合には、迂回経路を回避経路として設定する(
図9のステップS183でNo,S189)。車両制御装置100は、第2通過所要時間Tcが第1通過所要時間Tbよりも短い場合には、跨ぎ経路を回避経路として設定する(
図9のステップS183でYes,S185)。
【0115】
この構成では、回避動作の実現が可能な複数の回避経路が生成され、複数の回避経路のうち通過所要時間の短い経路が選択される。このため、運搬時間などの自車両20Aの走行時間が低減し、作業現場での生産性が向上する。
【0116】
(4)車両制御装置100は、自車両20Aの走行優先度が他車両20Bの走行優先度よりも高いか低いかを判定する(
図8のS143~S149)。車両制御装置100は、到達予測時間Taの経過後に他車両20Bが障害物90の近傍に存在していると判定され(
図8のS137でYes)、かつ、自車両20Aの走行優先度が他車両20Bの走行優先度よりも低いと判定された場合(
図8のS145でNo、かつS149でNo)には、走行車線51を回避領域として設定し、対向車線52を回避領域として設定しない(
図8のS151)。車両制御装置100は、到達予測時間Taの経過後に他車両20Bが障害物90の近傍に存在していると判定され(
図8のS137でYes)、かつ、自車両20Aの走行優先度が他車両20Bの走行優先度よりも高いと判定された場合(
図8のS145,S149のいずれかでYes)には、走行車線51及び対向車線52の双方を回避領域として設定する(
図8のS153)。
【0117】
この構成によれば、自車両20Aの回避動作に伴う減速により燃費効率が大きく低下する条件下では、回避領域が広く設定される。これにより、自車両20Aの回避動作に伴う減速を抑制することができるので、運用コストの増加を抑制し、生産性を改善できる。
【0118】
(5)車両制御装置100は、自車両20Aの積載量が対向車両(他車両)20Bの積載量よりも大きい場合には、自車両20Aの走行優先度が対向車両20Bの走行優先度よりも高いと判定する(
図8のステップS145でYes)。この構成によれば、自車両20Aの積荷状態での再加速に起因する燃料消費量の増加を抑制できる。その結果、作業現場全体での生産性を高めることができる。
【0119】
(6)車両制御装置100は、自車両20Aの走行車線51の勾配の情報を取得し、取得した勾配の情報に基づいて、自車両20Aから見て障害物90の奥側であって、障害物90から加速距離(所定距離)Da以内に上り勾配が存在するか否かを判定する(
図8のS147,S149)。車両制御装置100は、上り勾配が存在すると判定された場合には、自車両20Aの走行優先度が対向車両20Bの走行優先度よりも高いと判定する(
図8のS149でYes)。この構成によれば、自車両20Aが上り勾配での再加速に起因する燃料消費量の増加を抑制できる。その結果、作業現場全体での生産性を高めることができる。
【0120】
(7)車両制御装置100は、到達予測時間Taの経過後に対向車両20Bが障害物90の近傍に存在していると判定され、かつ、自車両20Aの走行優先度が対向車両20Bの走行優先度よりも高いと判定された場合には、自車両20Aが回避経路の終点に到達するまで、回避経路の終点よりも自車両20A側の領域への侵入を禁止する侵入禁止指令(制御指令)を対向車両20Bに送信する。この構成によれば、自車両20Aが対向車線52を利用して回避動作を実行している間、対向車両20Bを減速あるいは停止させることができる。これにより、回避動作を実行している自車両20Aと、対向車両20Bとの接触を確実に防止することができる。
【0121】
以上、第1実施形態に係る車両制御装置100は、走行車線51の幅、搬送路50の幅、及び対向車両20Bの有無等を考慮し、自車両20Aが障害物90の回避に利用可能な回避領域を演算する。これにより、搬送路50からの逸脱と対向車両20Bとの接触を防止した回避動作が実現される。さらに、自車両20Aの停車回数を削減することができるので、作業現場の生産性を向上することができる。
【0122】
<第2実施形態>
図12~
図14を参照して、本発明の第2実施形態に係る自律走行システムについて説明する。なお、第1実施形態で説明した構成と同一もしくは相当する構成には同一の参照記号を付し、相違点を主に説明する。第2実施形態では、作業現場で作業を行う複数の無人車両20及び複数の鉱山機械30の交通管制を行う管制局80において、回避経路を生成する例について説明する。第2実施形態に係る自律走行システムは、管制局80の管制サーバ200を含んで構成される。
【0123】
図12は、露天掘り鉱山の作業現場を示す概略図であり、第2実施形態に係る自律走行システムを備えた管制局80について示す。
図12に示す管制局80は、作業現場の近傍あるいは作業現場から遠く離れた場所に設けられる。管制局80には、管制サーバ200と、通信装置209とが設けられる。管制サーバ200は、通信装置209及び無線通信回線40を介して、1台以上の無人車両20及び1台以上の鉱山機械30の稼働情報を集約し、集約した稼働情報に基づき複数の無人車両20に対して制御信号を送信する。これにより、管制局80は、鉱山の生産性の向上を図る。なお、図中、各鉱山機械30を、30-1、30-2…として示している。
【0124】
図13は、無人車両20、鉱山機械30、及び管制局80の構成を示す図である。
図13に示す管制サーバ200は、第1実施形態で説明した車両制御装置100と同様、処理装置、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、入出力インタフェース、及び、その他の周辺回路を備えたコンピュータで構成される。また、通信装置209は、無線通信回線40と通信可能な通信インタフェースを有する。
【0125】
鉱山機械30は、機械制御装置300、無線通信装置309、記憶装置308、位置センサ303、及び速度センサ305を備える。機械制御装置300は、車両制御装置100と同様、処理装置、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、入出力インタフェース、及び、その他の周辺回路を備えたコンピュータで構成される。また、無線通信装置309は、無線通信装置109と同様の構成であり、無線通信回線40と通信可能な通信インタフェースを有する。
【0126】
管制局80、無人車両20、及び鉱山機械30は、無線通信回線40を介して、互いに情報の授受を行う。管制サーバ200の記憶装置には、各無人車両20の記憶装置108Bに記憶されている地図情報と同じ情報が記憶されている。
【0127】
無人車両20の記憶装置108Bは、作業情報記憶部182を有している。作業情報記憶部182には、時刻と無人車両20の走行優先度(作業優先度)とが紐づけられて記憶される。鉱山機械30の記憶装置308は、稼働情報記憶部382を有している。稼働情報記憶部382には、時刻と鉱山機械30の稼働状態とが紐づけられて記憶される。稼働情報には、鉱山機械30が無人車両20に対して積込作業を行っている稼働状態を示す「積込状態」と、鉱山機械30が無人車両20に対して積込作業を行っていない稼働状態を示す「待機状態」とが含まれる。
【0128】
無人車両20の車両制御装置100Bは、所定の制御周期で繰り返し走行優先度を演算し、演算した走行優先度を時刻とともに記憶装置108Bに記憶している。車両制御装置100Bは、例えば、以下で説明する優先度パラメータα1,α2,α3,α4を足し合わせることによって、走行優先度αを演算する(α=α1+α2+α3+α4)。
【0129】
車両制御装置100Bは、例えば、以下の(第1条件)~(第4条件)のそれぞれが成立しているか否かを判定する。
(第1条件)自車両20Aの積載状態が空荷状態であり、かつ、自車両20Aの空荷状態での走行経路11の終点(目的地)で作業を行う鉱山機械30が待機状態である。
(第2条件)自車両20Aの走行動作が、オペレータにより操作されている(すなわち、自律走行機能が解除され、自車両20Aが有人車両として動作している状態である)。
(第3条件)自車両20Aの積載状態が積荷状態である。
(第4条件)自車両20Aから見て障害物90の奥側であって、障害物90から加速距離Da以内に上り勾配が存在する。
【0130】
車両制御装置100Bは、(第1条件)が成立していない場合には優先度パラメータα1にα10(例えば、0)を設定し、(第1条件)が成立している場合には優先度パラメータα1にα11を設定する。α11は、α10よりも大きい。車両制御装置100Bは、(第2条件)が成立していない場合には優先度パラメータα2にα20(例えば、0)を設定し、(第2条件)が成立している場合には優先度パラメータα2にα21を設定する。α21は、α20よりも大きい。車両制御装置100Bは、(第3条件)が成立していない場合には優先度パラメータα3にα30(例えば、0)を設定し、(第3条件)が成立している場合には優先度パラメータα3にα31を設定する。α31は、α30よりも大きい。車両制御装置100Bは、(第4条件)が成立していない場合には優先度パラメータα4にα40(例えば、0)を設定し、(第4条件)が成立している場合には優先度パラメータα4にα41を設定する。α41は、α40よりも大きい。なお、α11,α21,α31,α41は、それぞれ同じ値としてもよいし、異なる値としてもよい。
【0131】
管制サーバ200は、第1実施形態に係る車両制御装置100の回避経路生成部112と同様の機能を備えている。つまり、管制サーバ200は、回避経路を生成する回避経路生成装置ともいえる。
【0132】
無人車両20の車両制御装置100は、障害物90を検知すると、障害物情報を演算し、その演算結果を無線通信回線40を介して管制局80に送信する。管制サーバ200は、受信した障害物情報と、他の無人車両20及び鉱山機械30の稼働情報とに基づいて、回避領域を決定する。管制サーバ200は、回避領域に応じて回避経路を生成し、生成した回避経路の情報を、無線通信回線40を介して、障害物90を検知した無人車両20に送信する。以下、回避経路の生成の対象となる無人車両20を対象車両とも記す。対象車両は、第1実施形態での自車両20Aに相当するため、同じ参照記号を付す。また、第1実施形態と同様、対象車両20Aの進行方向と反対の方向に進行する無人車両20を対向車両20Bと記す。
【0133】
図14は、
図8と同様の図であり、第2実施形態に係る管制サーバ200により実行される回避領域の決定処理の流れの一例について示すフローチャートである。
図14のフローチャートでは、
図8のフローチャートのステップS143~S149の処理に代えて、ステップS142B,S146Bの処理が実行される。
【0134】
ステップS142Bにおいて、管制サーバ200は、対象車両20Aの走行優先度αAと、対向車両20Bの走行優先度αBを取得して、処理をステップS146Bに進める。
【0135】
ステップS146Bにおいて、管制サーバ200は、ステップS142Bで取得した対象車両20A及び対向車両20Bの走行優先度αA,αBに基づき、対向車両20Bの走行優先度αBが対象車両20Aの走行優先度αAよりも低いか否かを判定する。ステップS146Bにおいて、対向車両20Bの走行優先度αBが対象車両20Aの走行優先度αAよりも高いと判定された場合には処理がステップS151に進む。この場合、対象車両20Aを減速あるいは停止させ、対向車両20Bを優先させて走行させることになる。ステップS146Bにおいて、対向車両20Bの走行優先度αBが対象車両20Aの走行優先度αAよりも低いと判定された場合には処理がステップS153に進む。この場合、対向車両20Bを減速あるいは停止させ、対象車両20Aを優先させて走行させることになる。
【0136】
以上のとおり、本第2実施形態に係る自律走行システムを構成する車両制御装置100Bは、自車両20Aに積込対象物を積み込む鉱山機械30の稼働状態の情報を取得する。車両制御装置100Bは、自車両20Aの積載状態が、空荷状態であるのか積荷状態であるのかを判定する。車両制御装置100Bは、鉱山機械30の稼働状態が積込作業を行っていない待機状態であり、かつ、自車両20Aの積載状態が空荷状態であることを含む第1条件が成立した場合には、自車両20Aの走行優先度を第1条件が成立していない場合に比べて高く設定する(α1=α11>α10)。
【0137】
鉱山機械30が積込状態である場合には、自車両20Aが積込場所に到達してもしばらく待機することになる。一方、鉱山機械30が待機状態である場合には、自車両20Aが積込場所に到達すると直ちに自車両20Aへの積込作業が開始される。したがって、上記構成によれば、鉱山機械30が待機状態である時間を短くすることにより、作業現場全体での生産性の向上を図ることができる。
【0138】
車両制御装置100Bは、自車両20Aが有人車両であるか無人車両であるかを判定する。自律走行機能は、無人車両20の外部及び無人車両20の運転室内の切替スイッチにより解除(無効)にすることができる。車両制御装置100Bは、自車両20Aが有人車両であると判定された場合には、自車両20Aの走行優先度を自車両20Aが無人車両であると判定された場合に比べて高く設定する(α2=α21>α20)。
【0139】
これにより、有人車両の減速、及び停止の機会を減らすことができるので、オペレータの操作負担を低減することができる。
【0140】
<第2実施形態の変形例>
上記第2実施形態では、無人車両20の車両制御装置100Bが走行優先度αを演算する例について説明した。しかしながら、走行優先度αの演算は、管制サーバ200が行ってもよい。この場合、管制サーバ200は、各無人車両20から該無人車両20の稼働情報を取得し、取得した稼働情報に基づき、走行優先度αを演算する。管制サーバ200は、各無人車両20から取得した走行優先度αに基づき、対象車両20Aの走行優先度αAが対向車両20Bの走行優先度αBよりも高いか低いかを判定する。
【0141】
次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、上述の異なる実施形態で説明した構成同士を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせることも可能である。
【0142】
<変形例1>
車両制御装置100及び管制サーバ200により実行される処理の構成及びその順番は、適宜変更することができきる。例えば、
図8のステップS143~S149の処理、及び
図14のステップS142B,S146Bは省略してもよい。また、
図8のステップS143~S145の処理のみ、あるいは、ステップS147,S149の処理のみを省略してもよい。
【0143】
<変形例2>
第2実施形態では、(第1条件)~(第4条件)の成立要否に基づいて設定された優先度パラメータを足し合わせることで走行優先度を演算する例について説明した。しかしながら、走行優先度の演算方法は、これに限定されない。(第1条件)~(第4条件)のうち、すくなくとも一つの条件の成立要否に基づいて走行優先度を演算してもよい。
【0144】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0145】
10…走行車線、11…走行経路、12…ノード、20…無人車両(搬送車両、ダンプトラック)、20A…自車両、対象車両(無人車両)、20B…対向車両、他車両(無人車両)、21…車体、22…車輪、30…鉱山機械、40…無線通信回線、50…搬送路、51…走行車線、51L,51R…車線形成線、52…対向車線、52L,52R…車線形成線、80…管制局、90…障害物、91…直方体、100,100B…車両制御装置(制御装置)、101…外界センサ、103…位置センサ、104…方位センサ、105…速度センサ、106…操舵角センサ、107…走行駆動装置、108,108B…記憶装置、109…無線通信装置、111…障害物情報演算部、112…回避経路生成部、113…制御目標生成部、114…自律走行制御部、181…地図情報記憶部、182…作業情報記憶部、200…管制サーバ(制御装置)、209…通信装置、271…障害物情報演算部、300…機械制御装置、303…位置センサ、305…速度センサ、308…記憶装置、309…無線通信装置、382…稼働情報記憶部、Ta…到達予測時間、Tb…第1通過所要時間、Tc…第2通過所要時間