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特開2024-123626マルチコア光ファイバ利得等化部品の製造方法、その製造方法で製造されたマルチコア光ファイバ、およびマルチコア光ファイバ利得等化部品製造システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123626
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】マルチコア光ファイバ利得等化部品の製造方法、その製造方法で製造されたマルチコア光ファイバ、およびマルチコア光ファイバ利得等化部品製造システム
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/02 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
G02B6/02 416
G02B6/02 461
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031202
(22)【出願日】2023-03-01
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人情報通信研究機構、「革新的情報通信技術研究開発委託研究/Beyond 5G超大容量無線通信を支える空間多重光ネットワーク・ノード技術の研究開発 研究開発項目2 SDM 光ネットワークシステム技術 副題:経済性と転送性能に優れた空間多重光ネットワークの研究開発」委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100208605
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 龍一
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル エルソン
(72)【発明者】
【氏名】若山 雄太
(72)【発明者】
【氏名】吉兼 昇
【テーマコード(参考)】
2H250
【Fターム(参考)】
2H250AC64
2H250AC94
2H250AC95
2H250AG02
2H250AG15
2H250AG32
2H250AG63
(57)【要約】
【課題】マルチコア光ファイバに各コアの光学特定が均一となるブラッググレーティングを形成する。
【解決手段】複数のコアを有するマルチコア光ファイバに利得等化フィルタを形成するマルチコア光ファイバ利得等化部品の製造方法であって、マルチコア光ファイバを治具に固定する工程と、前記マルチコア光ファイバの軸方向に対して並行にフェーズマスクを設置する工程と、前記マルチコア光ファイバの各コアに、前記フェーズマスクを通して、紫外レーザ光を照射し、ブラッググレーティングを形成する工程と、前記マルチコア光ファイバの中心軸を中心として、前記マルチコア光ファイバを回転させる工程と、前記マルチコア光ファイバの中心軸方向に、前記マルチコア光ファイバを並行移動させる工程と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコアを有するマルチコア光ファイバに利得等化フィルタを形成するマルチコア光ファイバ利得等化部品の製造方法であって、
マルチコア光ファイバを治具に固定する工程と、
前記マルチコア光ファイバの軸方向に対して並行にフェーズマスクを設置する工程と、
前記マルチコア光ファイバの各コアに、前記フェーズマスクを通して、紫外レーザ光を照射し、ブラッググレーティングを形成する工程と、
前記マルチコア光ファイバの中心軸を中心として、前記マルチコア光ファイバを回転させる工程と、
前記マルチコア光ファイバの中心軸方向に、前記マルチコア光ファイバを並行移動させる工程と、を備え、
前記マルチコア光ファイバを回転させる工程の数および前記マルチコア光ファイバを回転させる角度は、前記マルチコア光ファイバのコア数またはコアの配置位置に基づいて算出されることを特徴とするマルチコア光ファイバ利得等化部品の製造方法。
【請求項2】
前記マルチコア光ファイバを一度に回転させる角度は、360度をコア数で除算した角度であることを特徴とする請求項1記載のマルチコア光ファイバ利得等化部品の製造方法。
【請求項3】
複数のコアを有するマルチコア光ファイバに利得等化フィルタを形成するマルチコア光ファイバ利得等化部品の製造方法であって、
マルチコア光ファイバを治具に固定する工程と、
前記マルチコア光ファイバの軸方向に対して並行にフェーズマスクを設置する工程と、
前記マルチコア光ファイバの各コアに、前記フェーズマスクを通して、紫外レーザ光を照射し、ブラッググレーティングを形成する工程と、
各コアの光パワーを測定すると共に、各コアの光パワーの差を算出する工程と、
前記マルチコア光ファイバの中心軸を中心に、前記マルチコア光ファイバを回転させる工程と、
前記マルチコア光ファイバの中心軸方向に、前記マルチコア光ファイバを並行移動させる工程と、を備え、
前記マルチコア光ファイバを回転させる工程の数は、前記照射後に測定される各コアの光パワーから算出された各コアの光パワーの差に基づいて決定されることを特徴とするマルチコア光ファイバ利得等化部品の製造方法。
【請求項4】
前記マルチコア光ファイバを一度に回転させる角度は、概略黄金角であることを特徴とする請求項3記載のマルチコア光ファイバ利得等化部品の製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4記載のいずれかに記載のマルチコア光ファイバ利得等化部品の製造方法によって製造されたマルチコア光ファイバ。
【請求項6】
複数のコアを有するマルチコア光ファイバに利得等化フィルタを形成するマルチコア光ファイバ利得等化部品製造システムであって、
マルチコア光ファイバを固定する支持部と、
光源から紫外レーザ光を照射する照射部と、
前記照射部から照射された紫外レーザ光を回折し、前記マルチコア光ファイバのコアにブラッググレーティングを形成するフェーズマスクと、
前記マルチコア光ファイバの中心軸を中心として、前記マルチコア光ファイバを回転させる回転部と、
前記マルチコア光ファイバの中心軸方向に、前記マルチコア光ファイバを並行移動させるスライド部と、を備え、
前記マルチコア光ファイバを回転させる工程の数および前記マルチコア光ファイバを回転させる角度は、コア数またはコアの配置位置に基づいて算出されることを特徴とするマルチコア光ファイバ利得等化部品製造システム。
【請求項7】
複数のコアを有するマルチコア光ファイバに利得等化フィルタを形成するマルチコア光ファイバ利得等化部品製造システムであって、
マルチコア光ファイバを固定する支持部と、
光源から紫外レーザ光を照射する照射部と、
前記照射部から照射された紫外レーザ光を回折し、前記マルチコア光ファイバのコアにブラッググレーティングを形成するフェーズマスクと、
各コアの光パワーを測定すると共に、各コアの光パワーの差を算出する制御部と、
前記マルチコア光ファイバの中心軸を中心として、前記マルチコア光ファイバを回転させる回転部と、
前記マルチコア光ファイバの中心軸方向に、前記マルチコア光ファイバを並行移動させるスライド部と、を備え、
前記制御部は、前記算出した各コアの光パワーの差に基づいて、前記マルチコア光ファイバを回転させる工程の数を決定することを特徴とするマルチコア光ファイバ利得等化部品製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のコアを有するマルチコアファイバに利得等化フィルタを形成するマルチコア光ファイバ利得等化部品の製造方法、その製造方法で製造されたマルチコア光ファイバ、およびマルチコア光ファイバ利得等化部品製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、シングルモード光ファイバ(SMF: Single-Mode Fiber)における伝送容量の物理的限界を打破する技術の一つとして、空間分割多重(SDM: Space-Division Multiplexing)通信技術が研究開発されている。SDM通信技術には、光ファイバ中に光が伝搬するコアを複数設けるマルチコア光ファイバ(MCF: Multi-Core Fiber)がある。
【0003】
マルチコア光ファイバは伝送容量の大容量化に向けた要素技術として盛んに研究開発が進められている。従来の光ファイバ通信であるシングルモード光ファイバを利用した通信で用いられてきた技術をマルチコア光ファイバにも適用することが検討されている。
【0004】
光ファイバ通信システムでは、光増幅器を用いて伝送距離を延伸するのが一般的である。そして、伝送距離を延伸するために構成部品として用いられる利得等化フィルタには、誘電多層膜を用いた空間型(誘電多層膜フィルタ)と、光ファイバ中のコアにブラッググレーディングを直接構成するファイバ型(ブラッググレーディングフィルタ)がある。非特許文献1では、マルチコア光ファイバの各コアにブラッググレーディングを形成し、増幅器の利得等化フィルタとして利用する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】FIFO-less Core-pumped Multicore Fibre Amplifier with Fibre Bragg Grating based Gain Flattening Filter, 若山 雄太 他
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ファイバ型利得等化フィルタは、コアに光パルスを照射し、利得を等化するように設計されたグレーディングを書き込んでいくことで、コア内に形成される。コアに光パルスを照射する際、照射する光の屈折を最小限に抑えるため、光ファイバ周辺には、マッチドオイルが充填されており、照射された光はファイバの屈折率分布による影響をあまり受けずに、光ファイバ内を基本的に直進する。
【0007】
したがって、光パルスの進行方向に対して、複数のコアが重ならないようにマルチコア光ファイバを設置し、各コアにグレーディングを書き込むことで、各コアにおける光照射パターンの違いを最小限に抑えることができ、その結果、各コア間の光学特性の差を最小限に抑えることができる。しかし、各コアと光パルスを照射する光源との距離は、それぞれ異なるため、各コア間の光学特性の差を完全になくすことは難しい。また、マルチコア光ファイバのコア数が多くなるほど、光照射の際、他のコアと重なりやすく、均一な光照射が難しくなる。非特許文献1では、光照射による各コア間の光学特性の均一性については、考慮されていない。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、マルチコア光ファイバの各コア間の光学特性の差を最小限に抑えるマルチコア光ファイバ利得等化部品の製造方法、その製造方法で製造されたマルチコア光ファイバ、およびマルチコア光ファイバ利得等化部品製造システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記の目的を達成するために、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明のマルチコア光ファイバ利得等化部品の製造方法は、複数のコアを有するマルチコア光ファイバに利得等化フィルタを形成するマルチコア光ファイバ利得等化部品の製造方法であって、マルチコア光ファイバを治具に固定する工程と、前記マルチコア光ファイバの軸方向に対して並行にフェーズマスクを設置する工程と、前記マルチコア光ファイバの各コアに、前記フェーズマスクを通して、紫外レーザ光を照射し、ブラッググレーティングを形成する工程と、前記マルチコア光ファイバの中心軸を中心として、前記マルチコア光ファイバを回転させる工程と、前記マルチコア光ファイバの中心軸方向に、前記マルチコア光ファイバを並行移動させる工程と、を備え、前記マルチコア光ファイバを回転させる工程の数および前記マルチコア光ファイバを回転させる角度は、前記マルチコア光ファイバのコア数またはコアの配置位置に基づいて算出されることを特徴としている。
【0010】
(2)また、本発明のマルチコア光ファイバ利得等化部品の製造方法において、前記マルチコア光ファイバを一度に回転させる角度は、360度をコア数で除算した角度であることを特徴としている。
【0011】
(3)また、本発明のマルチコア光ファイバ利得等化部品の製造方法は、複数のコアを有するマルチコア光ファイバに利得等化フィルタを形成するマルチコア光ファイバ利得等化部品の製造方法であって、マルチコア光ファイバを治具に固定する工程と、前記マルチコア光ファイバの軸方向に対して並行にフェーズマスクを設置する工程と、前記マルチコア光ファイバの各コアに、前記フェーズマスクを通して、紫外レーザ光を照射し、ブラッググレーティングを形成する工程と、各コアの光パワーを測定すると共に、各コアの光パワーの差を算出する工程と、前記マルチコア光ファイバの中心軸を中心に、前記マルチコア光ファイバを回転させる工程と、前記マルチコア光ファイバの中心軸方向に、前記マルチコア光ファイバを並行移動させる工程と、を備え、前記マルチコア光ファイバを回転させる工程の数は、前記照射後に測定される各コアの光パワーから算出された各コアの光パワーの差に基づいて決定されることを特徴としている。
【0012】
(4)また、本発明のマルチコア光ファイバ利得等化部品の製造方法において、前記マルチコア光ファイバを一度に回転させる角度は、概略黄金角であることを特徴としている。
【0013】
(5)また、本発明のマルチコア光ファイバは、(1)から(4)記載のマルチコア光ファイバ利得等化部品の製造方法によって製造されたマルチコア光ファイバ
【0014】
(6)また、本発明のマルチコア光ファイバ利得等化部品製造システムは、複数のコアを有するマルチコア光ファイバに利得等化フィルタを形成するマルチコア光ファイバ利得等化部品製造システムであって、マルチコア光ファイバを固定する支持部と、光源から紫外レーザ光を照射する照射部と、前記照射部から照射された紫外レーザ光を回折し、前記マルチコア光ファイバのコアにブラッググレーティングを形成するフェーズマスクと、前記マルチコア光ファイバの中心軸を中心として、前記マルチコア光ファイバを回転させる回転部と、前記マルチコア光ファイバの中心軸方向に、前記マルチコア光ファイバを並行移動させるスライド部と、を備え、前記マルチコア光ファイバを回転させる工程の数および前記マルチコア光ファイバを回転させる角度は、コア数またはコアの配置位置に基づいて算出されることを特徴としている。
【0015】
(7)また、本発明のマルチコア光ファイバ利得等化部品製造システムは、複数のコアを有するマルチコア光ファイバに利得等化フィルタを形成するマルチコア光ファイバ利得等化部品製造システムであって、マルチコア光ファイバを固定する支持部と、光源から紫外レーザ光を照射する照射部と、前記照射部から照射された紫外レーザ光を回折し、前記マルチコア光ファイバのコアにブラッググレーティングを形成するフェーズマスクと、各コアの光パワーを測定すると共に、各コアの光パワーの差を算出する制御部と、前記マルチコア光ファイバの中心軸を中心として、前記マルチコア光ファイバを回転させる回転部と、前記マルチコア光ファイバの中心軸方向に、前記マルチコア光ファイバを並行移動させるスライド部と、を備え、前記制御部は、前記算出した各コアの光パワーの差に基づいて、前記マルチコア光ファイバを回転させる工程の数を決定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、マルチコア光ファイバに各コアの光学特性が均一となるブラッググレーティングを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】マルチコア光ファイバの利得等化部品製造システムの概略構成を示す図である。
図2】(a)、(b)は、マルチコア光ファイバに紫外レーザ光を照射する様子を示すマルチコア光ファイバ1の断面図である。
図3】実施例1におけるマルチコア光ファイバの各コアに利得等化部品の製造手順を示すフロー図である。
図4】実施例2におけるマルチコア光ファイバの各コアに利得等化部品の製造手順を示すフロー図である。
図5】マルチコア光ファイバの各コアにブラッググレーティングが形成される手順の様子を示す図である
図6】マルチコア光ファイバの各コアにブラッググレーティングが形成される手順の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明者らは、マルチコアファイバの各コアにグレーディングを書き込む際、均一な光照射ができないことにより、各コア間の光学特性に差が生じ、伝送品質が低下しまう点に着目し、各コア間の光学特性の差を最小限に抑えるマルチコア光ファイバ利得等化部品の製造方法を見出し、本発明をするに至った。
【0019】
すなわち、本発明のマルチコア光ファイバ利得等化部品製造方法は、複数のコアを有するマルチコア光ファイバに利得等化フィルタを形成するマルチコア光ファイバ利得等化部品の製造方法であって、マルチコア光ファイバを治具に固定する工程と、前記マルチコア光ファイバの軸方向に対して並行にフェーズマスクを設置する工程と、前記マルチコア光ファイバの各コアに、前記フェーズマスクを通して、紫外レーザ光を照射し、ブラッググレーティングを形成する工程と、前記マルチコア光ファイバの中心軸を中心として、前記マルチコア光ファイバを回転させる工程と、前記マルチコア光ファイバの中心軸方向に、前記マルチコア光ファイバを並行移動させる工程と、を備えることを特徴としている。
【0020】
以下、本発明の各実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、説明の理解を容易にするため、各実施形態の図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0021】
本明細書の実施形態で用いるマルチコア光ファイバ(MCF: Multi-Core Fiber)は、1つのクラッド中に、光が伝搬する複数のコアを配置した光ファイバである。また、本明細書の実施形態では、4コアファイバ(4CF)を用いた例を一例として説明するが、これに限定されない。2CFであってもよいし、それ以上のコア数を有していてもよい。
【0022】
[マルチコア光ファイバの利得等化部品製造システム]
図1は、マルチコア光ファイバの利得等化部品製造システム100の概略構成を示す図である。マルチコア光ファイバの利得等化部品製造システム100(以下、単に利得等化部品製造システムともいう)は、照射部11と、フェーズマスク13と、支持部15と、回転部17と、スライド部19と、制御部(図示しない)を少なくとも備える。
【0023】
照射部11は、光源からマルチコア光ファイバにパルス光である紫外レーザ光を照射する。フェーズマスク13は、照射部11から照射された紫外レーザ光を回折し、回折した回折光により干渉縞を生成する。フェーズマスク13は、図1に示すように、マルチコア光ファイバ1の軸方向に並行となるよう設けられている。
【0024】
支持部15は、紫外レーザ光の照射位置にマルチコア光ファイバ1を配置し、紫外レーザ光を照射する際、マルチコア光ファイバ1が動かないよう、マルチコア光ファイバ1を固定する。回転部17は、マルチコア光ファイバ1の中心軸を軸としてマルチコア光ファイバ1を任意の角度回転させる。回転する方向は、右回転、左回転のいずれか一方方向のみならず、両方向に回転することができる。スライド部19は、マルチコア光ファイバ1の軸方向にマルチコア光ファイバ1を任意の距離スライドさせる。スライドする方向は、軸方向の前後にスライドすることができる。
【0025】
制御部は、マルチコア光ファイバ1に紫外レーザ光を照射した後、光源からマルチコア光ファイバに対し光を送信し出力された光パワーの測定、紫外レーザ光の照射位置の測定を行う。また、制御部は、マルチコア光ファイバの回転角度、回転回数、スライド距離を算出し、マルチコア光ファイバの回転角度、回転回数、スライド距離を制御する。
【0026】
このように構成された利得等化部品製造システム100において、支持部15に支持されたマルチコア光ファイバ1の各コア3に対し、フェーズマスク13で生成された干渉縞を照射する(以下、単にマルチコア光ファイバに紫外レーザ光を照射するともいう)ことにより、マルチコア光ファイバ1のコア3に利得等化部品であるブラッググレーティングが形成される。
【0027】
なお、各コアに紫外レーザ光を照射する際、照射する光の屈折を最小限に抑えるため、光ファイバ周辺には、マッチドオイルが充填されており、照射された紫外レーザ光は、光ファイバの屈折率分布による影響をあまり受けずに、光ファイバ内を基本的に直進する。
【0028】
図2(a)、(b)は、マルチコア光ファイバ1に紫外レーザ光を照射する様子を示すマルチコア光ファイバ1の断面図である。図2(a)に示すコアの配置位置で、マルチコア光ファイバ1に紫外レーザ光を照射した後、図中の矢印A方向にマルチコア光ファイバ1を任意の角度分回転させ、図2(b)に示すコアの配置位置で、マルチコア光ファイバ1に紫外レーザ光を照射した様子を示している。
【0029】
マルチコア光ファイバは、1つのクラッド中に、複数のコアが配置されているため、紫外レーザ光の進行方向に対して、複数のコアが重ならないようにマルチコア光ファイバを配置し、紫外レーザ光を照射することが理想的であるが、コアの配置形態やコア数によっては、紫外レーザ光を照射する際に、他のコアと重なり、各コアに同一のブラッググレーティングが形成されない場合がある。また、各コアと光源との距離に違いがあると、各コアに同一のブラッググレーティングが形成されない場合がある。さらに、フェーズマスクの種類によっては、回折光が変化している場合もある。その結果、各コアの光学特性が異なってしまい、マルチコア光ファイバの伝送損失に影響を与える。
【0030】
しかし、本実施形態に係るマルチコア光ファイバの利得等化部品製造システム100では、図2(a)、(b)に示すように、マルチコア光ファイバ1を回転または/および並行移動させ、複数回、異なる方向または/および異なる位置から、紫外レーザ光を照射することにより、各コアに均一の光学特性を有するブラッググレーティングを形成することができる。図2(a)、(b)では、紫外レーザ光の進行方向に対して、複数のコアが重ならないようにマルチコア光ファイバを配置している様子を示しているが、コアが重なっていてもかまわない。
【0031】
このように、本実施形態に係る利得等化部品製造システム100では、マルチコア光ファイバ1に対し、複数回、異なる方向または/および異なる位置から、紫外レーザ光を照射することにより、クラッド中のコアの配置やコアの数、フェーズマスクから照射される回折光などに関わらず、各コアに均一の光学特性を有するブラッググレーティングが形成され、コア間の光学特性の均一化を図ることができる。その結果、マルチコア光ファイバの伝送損失を小さく抑えることができる。
【0032】
[マルチコア光ファイバの利得等化部品の製造方法]
次に、マルチコア光ファイバの各コアに利得等化部品の製造方法について、説明する。
【0033】
[1]実施例1
図3は、実施例1におけるマルチコア光ファイバの各コアに利得等化部品の製造手順を示すフロー図である。実施例1では、コアの数、コアの配置位置を予め確認できている場合のマルチコア光ファイバの各コアに利得等化部品の製造方法について説明する。
【0034】
まず、フェーズマスクとマルチコア光ファイバが、マルチコア光ファイバの軸方向に並行となるよう配置する(ステップS1)。次に、光源から出射された紫外レーザ光を、フェーズマスクを通して、マルチコア光ファイバのコアに照射する(ステップS2)。次に、マルチコア光ファイバに光を送信し、出力光パワーを測定する(ステップS3)。
【0035】
マルチコア光ファイバを配置してから回転させた回転角度の合計が360度以上であるかどうかを判断し(ステップS4)、回転角度の合計が360度未満である場合、マルチコア光ファイバの中心軸方向にマルチコア光ファイバを任意の距離、スライドさせ、マルチコア光ファイバの中心軸を軸としてマルチコア光ファイバを任意の角度、回転させ(ステップS5)、ステップS2の処理へ戻る。
【0036】
一方、ステップS4において、回転角度の合計が360度以上となった場合は、処理を終了する。なお、マルチコア光ファイバを回転させる任意の回転角度、回転数、およびマルチコア光ファイバをスライドさせる任意の距離の決定方法の詳細については、後述する。
【0037】
(回転角度、回転数の決定方法)
実施例1におけるマルチコア光ファイバを回転させる任意の角度、回転数について、検討する。マルチコア光ファイバを回転させる角度を小さくし、回転回数を多くすることにより、各コアの光学特性がより均一となるブラッググレーティングを形成することができる。しかし、マルチコア光ファイバを回転する際に、回転軸がずれていた場合、各コアの光学特性が均一となるグレーディングを書き込むことはできない。また、同一箇所に何度もグレーディングを書き込むと、グレーティングが乱れてしまうため、好ましくない。さらに、コアにグレーディングを書き込める回数にも限界がある。
【0038】
そこで、実施例1では、コアの数、コアの配置位置を予め測定しておき、最初に紫外レーザ光を照射した位置から、合計回転角度が360度(または360度以上)となるまで、360度/コア数で求められる角度ずつ回転させ、マルチコア光ファイバに紫外レーザ光を照射し、ブラッググレーティングを形成させる。これにより、照射回数を好適な回数に抑え、かつ各コアの光学特性が均一となるブラッググレーティングを形成させることができる。回転数をコア数とし、回転角度を(360度/コア数)で算出した角度とするのが好ましいが、コア数やコアの配置によって、回転数を(コア数×n(n:2以上の整数))とし、回転角度を360度/(コア数×n)や、360度/(コア数×(1/n))などで算出した角度としてもよい。
【0039】
本実施形態では、4コアを有し、円周方向に90度ずつずれている正方格子配置のマルチコア光ファイバを用いているため、360度/4(コア数)で求められる角度90度ずつ回転させ、マルチコア光ファイバに紫外レーザ光を照射することにより、各コアの光学特性が均一となるブラッググレーディングを形成させることができる。また、回転角度は、90度の他、例えば、45度または180度であってもよい。
【0040】
さらに、照射位置は、例えば、180度右回転させて紫外レーザ光照射後、90度左回転させて紫外レーザ光の照射を行うなど、コア数、コアの配置、測定した出力光パワーの値などに応じて、マルチコア光ファイバの回転方向や回転角度を適宜変えて、紫外レーザ光の照射を行うことも可能である。
【0041】
(スライド距離の決定方法)
実施例1において、マルチコア光ファイバをスライドさせる任意の距離について、検討する。同一箇所に何度もグレーディングを書き込むと、グレーティングが乱れてしまうため、好ましくないことから、スライドさせる距離は、紫外レーザ光の照射幅より長い距離とする。紫外レーザ光の照射幅は、制御部で測定してもよいし、予め測定しておいてもよい。
【0042】
以上説明したように、実施例1では、ステップS5において、マルチコア光ファイバの軸方向にマルチコア光ファイバを任意の距離、スライドさせ、マルチコア光ファイバの中心軸を軸としてマルチコア光ファイバを任意の角度、回転させる工程と、マルチコア光ファイバに紫外レーザ光を照射する工程とを繰り返し行い、各コアの光学特性が均一となるブラッググレーティングを形成させているが、マルチコア光ファイバを軸方向にスライドさせることなく、マルチコア光ファイバの中心軸を軸としてマルチコア光ファイバを任意の角度、回転させる工程と、紫外レーザ光を照射する工程とを繰り返し行い、各コアの光学特性が均一となるブラッググレーティングを形成させてもよい。
【0043】
[2]実施例2
図4は、実施例2におけるマルチコア光ファイバの各コアに利得等化部品の製造手順を示すフロー図である。実施例2では、コアの数、コアの配置位置が確認できていない場合のマルチコア光ファイバの各コアに利得等化部品の製造方法ついて説明する。
【0044】
まず、フェーズマスクとマルチコア光ファイバが、マルチコア光ファイバの軸方向に並行となるよう設置する(ステップT1)。次に、光源から出射された紫外レーザ光を、フェーズマスクを通して、マルチコア光ファイバのコアに照射する(ステップT2)。次に、マルチコア光ファイバに光を送信し、コア毎の出力光パワーを測定する(ステップT3)。ここで、コア間の光パワーの差を算出する。
【0045】
各コア間の光パワーの差が許容範囲内であるかどうかを判断し(ステップT4)、各コアの光パワーの差が許容範囲内でない場合は、マルチコア光ファイバの軸方向にマルチコア光ファイバをスライドさせ、マルチコア光ファイバの中心軸を軸としてマルチコア光ファイバを任意の角度、回転させ(ステップT5)、ステップT2の処理へ戻る。
【0046】
一方、ステップT4において、各コアの光パワーの差が許容範囲内となった場合にも終了する。実施例2では、紫外レーザ光の照射後、各コアの光パワーの差が許容範囲内となるまで、マルチコア光ファイバを回転または/および並行移動させる方法であるため、事前にコアの数、コアの配置位置を予め測定しない、もしくは把握しておく必要はない。各コアの光パワーの差の許容範囲は、任意に決定することができる。例えば、各コア間の光パワーの差が0.5[dB]程度に収まることが好ましい。なお、マルチコア光ファイバを回転させる任意の回転角度、回転数、およびマルチコア光ファイバをスライドさせる任意の距離の決定方法の詳細については、後述する。
【0047】
(回転角度、回転数の決定方法)
実施例2におけるマルチコア光ファイバを回転させる任意の角度、回転数について、検討する。実施例2では、回転角度は、概略黄金角(222.5度または137.5度)とする。回転角度を最初に照射した位置から、概略黄金角となる角度222.5度または137.5度ずつ回転させ、マルチコア光ファイバに紫外レーザ光を照射することにより、各コアの光学特性が均一となるグレーディングを形成することができる。
【0048】
また、実施例2では、ステップT5において、マルチコア光ファイバを軸方向に任意の距離、スライドさせ、マルチコア光ファイバの中心軸を軸としてマルチコア光ファイバを任意の角度、回転させた後、マルチコア光ファイバに紫外レーザ光を照射しているが、マルチコア光ファイバを軸方向にスライドさせることなく、マルチコア光ファイバの中心軸を軸としてマルチコア光ファイバを任意の角度、回転させ、紫外レーザ光を照射することを繰り返すことにより、各コアの光学特性が均一となるブラッググレーティングを形成させてもよい。
【0049】
図5および図6は、マルチコア光ファイバの各コアにブラッググレーティングが形成される手順の様子を示す図である。まず、図5に示すように、マルチコア光ファイバ1のコア3にフェーズマスク13を通して紫外レーザ光を照射し、ブラッググレーティングを形成させ、マルチコア光ファイバ1を回転および並行移動させる。そして、図6に示すように、マルチコア光ファイバ1を回転および並行移動させた後、各コアの別の位置にマルチコア光ファイバ1のコア3にフェーズマスクを通して紫外レーザ光を照射し、ブラッググレーティングを形成させる。図5および図6に示す工程を、マルチコア光ファイバ1を360度回転させるまで、または各コアの光パワーの差が許容範囲内となるまで繰り返すことにより、各コア3に光学特性が均一となるブラッググレーティングを形成することができる。
【0050】
以上説明したように、各コアに均一の光学特性を有するブラッググレーティングが形成され、コア間の光学特性の均一化を図ることができる。その結果、マルチコア光ファイバの伝送損失を小さく抑えることができる。
【符号の説明】
【0051】
100 マルチコア光ファイバの利得等化部品製造システム
1 マルチコア光ファイバ
3 コア
11 照射部
13 フェーズマスク
15 支持部
17 回転部
19 スライド部
図1
図2
図3
図4
図5
図6