(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125740
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】撮像素子
(51)【国際特許分類】
H04N 25/77 20230101AFI20240911BHJP
H04N 25/772 20230101ALI20240911BHJP
H04N 25/778 20230101ALI20240911BHJP
H04N 25/79 20230101ALI20240911BHJP
【FI】
H04N25/77
H04N25/772
H04N25/778
H04N25/79
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033767
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 周太郎
(72)【発明者】
【氏名】船水 航
(72)【発明者】
【氏名】猿渡 修
【テーマコード(参考)】
5C024
【Fターム(参考)】
5C024CX21
5C024EX43
5C024GX03
5C024GX14
5C024GX15
5C024GX16
5C024GX18
5C024GY39
5C024GY41
(57)【要約】 (修正有)
【課題】フォトダイオードの欠陥や読み出し回路RTSノイズに起因する画質の劣化を抑制する撮像素子を提供する。
【解決手段】撮像素子は、行方向と列方向とに並んで配置され、光を電荷に変換する複数の光電変換回路30をそれぞれ有する複数の画素回路20Aと、行方向と列方向とに並んで配置され、画素回路20Aから読み出された信号をデジタル信号に変換するために画素回路毎に設けられたAnalog-to-Digital Converter(ADC)23と、1つの画素回路が有する複数の光電変換回路のうち選択された光電変換回路と、1つの画素回路が有する変換部ADCとを接続するスイッチ25-1~25-2と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
行方向と列方向とに並んで配置され、光を電荷に変換する複数の光電変換回路(30)をそれぞれ有する複数の画素回路(20)と、
前記行方向と前記列方向とに並んで配置され、前記画素回路から読み出された信号をデジタル信号に変換する前記画素回路ごとの変換部(23)と、
1つの前記画素回路が有する複数の前記光電変換回路のうち選択された前記光電変換回路と、1つの前記画素回路が有する前記変換部とを接続する接続部(25)と、
を備える撮像素子(1)。
【請求項2】
前記接続部によって前記変換部に接続される光電変換回路は、前記複数の光電変換回路が有する欠陥または特性に関する接続情報に基づいて選択されたものである、
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項3】
前記接続部は、前記複数の画素回路に含まれる転送トランジスタおよびリセットトランジスタを制御する制御部と、前記複数の光電変換回路の中から選択された前記光電変換回路に含まれる転送トランジスタおよびリセットトランジスタと、をさらに接続する、
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項4】
前記複数の光電変換回路のそれぞれは、フォトダイオードと、前記フォトダイオードから前記変換部までの読み出し回路とをそれぞれ1つずつ備える、
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項5】
前記複数の光電変換回路は、複数の前記フォトダイオードが画素の中心近くに隣接して位置し、複数の前記読み出し回路が前記複数の前記フォトダイオードよりも前記画素の中心から遠くに位置するように配置される、
請求項4に記載の撮像素子。
【請求項6】
前記複数の画素回路のそれぞれは、複数のマイクロレンズを有し、
前記複数の光電変換回路は、前記画素回路が有する複数のマイクロレンズごとに設けられる、
請求項4に記載の撮像素子。
【請求項7】
前記複数の光電変換回路のそれぞれは、1つのフォトダイオードと、他の光電変換回路と共有の読み出し回路とを備える、
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項8】
前記複数の光電変換回路は、前記共有の読み出し回路が画素の中心近くに位置し、複数の前記フォトダイオードが前記共有の読み出し回路よりも前記画素の中心から遠くに位置するように配置される、
請求項7に記載の撮像素子。
【請求項9】
前記画素回路は、前記共有の読み出し回路を遮光する遮光部、または複数の前記フォトダイオードを分離する構造を有する、
請求項7に記載の撮像素子。
【請求項10】
前記複数の画素回路のそれぞれは、前記フォトダイオードごとにマイクロレンズを有する、
請求項7に記載の撮像素子。
【請求項11】
前記複数の光電変換回路のそれぞれは、他の光電変換回路と共有のフォトダイオードと、1つの読み出し回路とを備える、
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項12】
前記複数の光電変換回路は、前記共有のフォトダイオードが画素の中心近くに位置し、複数の前記読み出し回路が前記フォトダイオードよりも前記画素の中心から遠くに位置するように配置される、
請求項11に記載の撮像素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
画素が多数配列された画素部を有する撮像素子が知られている。このような撮像素子に関し、従来より、画素部の欠陥画素が問題となっていた(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本発明の一態様は、行方向と列方向とに並んで配置され、光を電荷に変換する複数の光電変換回路(30)をそれぞれ有する複数の画素回路(20)と、前記行方向と前記列方向とに並んで配置され、前記画素回路から読み出された信号をデジタル信号に変換する前記画素回路ごとの変換部(23)と、1つの前記画素回路が有する複数の前記光電変換回路のうち選択された前記光電変換回路と、1つの前記画素回路が有する前記変換部とを接続する接続部(25)と、を備える撮像素子(1)である。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】第1の実施形態の撮像素子の構成の概略を示す図である。
【
図2】従来の撮像素子における画素回路の構成例を示す概略図である。
【
図3】第1の実施形態の撮像素子により、画像の低下を抑制しつつ、ノイズの影響を低減する方法の概略を示す図である。
【
図4】第1の実施形態の撮像素子における画素回路の第1の構成例を示す図である。
【
図5】第1の実施形態の撮像素子における画素回路の第2の構成例を示す図である。
【
図6】第1の実施形態の撮像素子における画素回路の第3の構成例を示す図である。
【
図7】第1の実施形態の撮像素子における画素回路の第4の構成例を示す図である。
【
図8】第1の実施形態におけるフォトダイオードおよび読み出し回路の第1の配置例を示す図である。
【
図9】第1の実施形態におけるフォトダイオードおよび読み出し回路の第2の配置例を示す図である。
【
図10】第2の実施形態の撮像素子における画素回路の構成例を示す図である。
【
図11】第2の実施形態におけるフォトダイオードおよび読み出し回路の第1の配置例を示す図である。
【
図12】第2の実施形態におけるフォトダイオードおよび読み出し回路の第2の配置例を示す図である。
【
図13】第3の実施形態の撮像素子における画素回路の構成例を示す図である。
【
図14】第3の実施形態におけるフォトダイオードおよび読み出し回路の配置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
【0007】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態の撮像素子の構成の概略を示す図である。撮像素子1は、被写体を撮像して画像データを出力する回路である。撮像素子1は、例えば、画素アレイ11と、周辺回路12とを備える。画素アレイ11は、複数の画素回路20を備える。複数の画素回路20は、行方向と列方向とにそれぞれ並んで配置される。複数の画素回路20は、入射した光に応じた画素信号をそれぞれ生成する。
【0008】
周辺回路12は、画素アレイ11の各画素回路20から画素信号を読み出し、読み出した各画素信号を他の回路に出力する。なお、周辺回路12は、画素アレイ11から読み出した各画素信号に対して所定の処理を行った上で出力するように構成されてもよい。例えば、周辺回路12は、読み出した各画素信号に対してフィルタ処理や補正処理等を行ったものを出力するように構成されてもよいし、読み出した各画素信号に基づいて画像データを生成し、生成した画像データを出力するように構成されてもよい。
【0009】
図2は、従来の撮像素子における画素回路の構成例を示す概略図である。従来の撮像素子も、画素回路の集合である画素アレイと、周辺回路とを備える点においては、本実施形態の撮像素子1と同様である。
図2に示す従来の撮像素子における画素回路90は、例えば、フォトダイオードPDと、ADC(Analog-to-Digital Converter)93と、フォトダイオードPDからADC93までの読み出し回路とを備える。読み出し回路は、例えば、転送トランジスタTXと、フローティングディフュージョンFDと、リセットトランジスタRSTと、増幅トランジスタAMPと、選択トランジスタSELとが含まれる。フォトダイオードPD、ADC93および読み出し回路は、
図2に示すように、フォトダイオードPDと読み出し回路が配置される半導体基板と、ADC93が配置される半導体基板により構成される積層型の撮像素子でもよい。また、フォトダイオードPD、ADC93および読み出し回路は、単一の半導体基板に配置されてもよい。以下、積層型の撮像素子について、少なくともフォトダイオードPDが配置される半導体基板を「第1層」といい、少なくともADC93が配置される半導体基板を「第2層」ということにする。
【0010】
転送トランジスタTXは、フォトダイオードPDからフローティングディフュージョンFDに電荷を転送する。フローティングディフュージョンFDは、転送トランジスタTXを介してフォトダイオードPDの電荷を受け取って電荷を電圧に変換する。リセットトランジスタRSTは、フローティングディフュージョンFDの電位をリセットする。ここで、転送トランジスタTXのオン・オフのタイミングはTX制御回路91によって制御され、リセットトランジスタRSTのオン・オフのタイミングはRST制御回路92によって制御される。VDDは電源電位である。
【0011】
増幅トランジスタAMPは、フローティングディフュージョンFDの電位に応じた画素信号を出力する。選択トランジスタSELは、増幅トランジスタAMPから出力された画素信号をADC93に出力する。ADC93は、選択トランジスタSELによって出力された画素信号をデジタル信号に変換する。ADC93は、デジタル信号に変換された画素信号を後段に出力する。
【0012】
このような構成を有する従来の画素回路90では、以下の(1)~(3)に例示するノイズ等の影響により、画質が低下するといった課題や、製品出荷に耐える品質を有さない素子が一定数発生し、歩留まりが低くなるといった課題が発生していた。
(1)ソース接地増幅回路が作りこまれることにより生じるRTSノイズ(Random Telegraph Signal Noises)。
(2)フォトダイオードPDまたはフローティングディフュージョンFDのリーク電流によって生じるノイズ。
(3)パッド部の接合不良により生じるノイズ。
【0013】
なお、(2)については、製造後、後発的に発生してしまう場合もあり、放射線雰囲気中などの過酷な状況下においては、通常雰囲気中と比較して発生率が高まることから大きな課題となっていた。
【0014】
このような課題に対し、従来は、メディアンフィルタなどを用いた画像処理によって欠陥画素の画素値を補正したりしていたが、空間分解能が低下して画質が劣化してしまう場合があった。このため、ノイズの影響による画質の劣化を抑制する技術の開発が望まれていた。本実施形態の撮像素子は、このような課題を解決するために以下の構成を備えるものである。
【0015】
図3は、本実施形態の撮像素子により、画像の低下を抑制しつつ、ノイズの影響を低減する方法の概略を示す図である。上述のとおり、従来の撮像素子は、フォトダイオードPDと、読み出し回路RCとを備える第1層と、少なくともADC93を備える第2層とを備える構成であった。この場合、フォトダイオードPDの飽和電荷量が少なくてよい場合には、フォトダイオードPDの面積を小さくすることができるため、第1層には比較的空きスペースが多くなっていた。そのため、従来の撮像素子において、画素ごとにADCを備える場合には、第2層の回路規模が画素ごとの回路規模を決定する大きな要素となっていた(
図3(A)参照)。
【0016】
そこで、本実施形態では、従来の撮像素子において第1層に比較的空きスペースが多いことに着目し、画素ごとに複数のフォトダイオードPDおよび読み出し回路RCを備え、必要に応じてこれらを選択可能にする構成とした。例えば、
図3(B)は、フォトダイオードPDと読み出し回路RCとの組を画素ごとに4つ備えた構成例を示すものである。このような構成によれば、複数のフォトダイオードPDおよび読み出し回路RCのうちから状態の良いもの(欠陥が無いものや、RTSノイズの発生が少ないものなど)を選択して使用することができるため、ノイズの影響による画質の劣化を抑制することができる。
【0017】
また、このような構成によれば、1画素について使用できるフォトダイオードPDおよび読み出し回路RCが複数になるので、複数のフォトダイオードPDまたは読み出し回路RCに異なる性質を持たせるようにすることによって新たな機能を提供することも可能となる。例えば、複数のフォトダイオードPDごとに異なるカラーフィルタを適用することにより、フォトダイオードPDの感度を用途に応じて変化させるといったことが可能になる。
【0018】
図4~
図7は、第1の実施形態の撮像素子1における画素回路20Aの第1~第4の構成例を示す図である。第1の実施形態の画素回路20Aは、複数のフォトダイオードPDを備えるとともに、各フォトダイオードPDからADC23までの読み出し回路をフォトダイオードPDごとに備えるものである。例えば、複数のフォトダイオードPDおよび読み出し回路を有する第1層と、少なくともADC23を有する第2層とを備える。フォトダイオードPD、読み出し回路、TX制御回路21、RST制御回路22、およびADC23の各々は、それ自体は従来の画素回路90が備えるものと同様である。
図4および
図5は、1つのフォトダイオードPDと1つの読み出し回路の組(以下「単位回路」という。)30を2つ備える画素回路20Aを一例として示しているが、画素回路20Aは、同様の趣旨により3つ以上の光電変換回路30を備えるように構成されてもよい。
【0019】
図4および
図5にも示されるとおり、本実施形態の画素回路20Aは、複数の光電変換回路30を有する第1層の半導体基板を備え、複数の光電変換回路30のそれぞれを、TX制御回路21、RST制御回路22、ADC23、および記憶部24に接続した構成を有する。このような接続構成において、本実施形態の画素回路20Aは、複数の光電変換回路30の中から選択された光電変換回路30とADC23とを接続する接続部を少なくとも備えるものである。
【0020】
図4は、複数の光電変換回路30とADC23との間の接続を光電変換回路30ごとのスイッチ25-1~25-2によって切り替えるようにした画素回路20Aの構成例を示す。記憶部24には、複数の光電変換回路30のうちどの光電変換回路30をADC23に接続するかを示す情報(以下「接続情報」という。)が光電変換の実行前に予め記憶される。例えば、記憶部24には、複数の光電変換回路30について選択信号または非選択信号が接続情報として記憶され、各スイッチ25は選択信号が入力されている場合には対応する光電変換回路30をADC23に接続し、非選択信号が入力されている場合には対応する光電変換回路30をADC23から切断するように構成されてもよい。
【0021】
なお、この場合、接続情報は、周辺回路12によって生成され、予め記憶部24に記憶されるものとする。例えば、周辺回路12は、複数の光電変換回路30について、欠陥やノイズ発生等の異常の有無を検知する検知機能を有し、異常が検知された光電変換回路30について非選択信号を記録し、異常が検知されていない光電変換回路30について選択信号を記録するように構成されてもよい。このような構成によれば、各画素について使用するデータを複数の光電変換回路30から選択することができるため、ノイズの影響による画質の劣化を抑制することができる。
【0022】
また、
図5は、複数の光電変換回路30とADC23との間の接続に加え、複数の光電変換回路30と転送トランジスタTXとの間の接続、および複数の光電変換回路30とリセットトランジスタRSTとの間の接続についても、光電変換回路30ごとのスイッチ25-3~25-6によって切り替えるようにした画素回路20Aの構成例を示す。
【0023】
この場合、例えば、周辺回路12は、複数の光電変換回路30の属性(例えば用途や特性など)を示す属性情報を取得する取得機能を有し、使用する光電変換回路30を各光電変換回路30の属性情報に基づいて選択するように構成されてもよい。このような構成によれば、各画素について使用する光電変換回路30を必要に応じて切り替えることができるため、用途や特定の異なる複数の光電変換回路30によって可能となる新たな機能を実現することが可能となる。
【0024】
なお、上記の検知機能や取得機能、使用する光電変換回路30を選択する機能など、接続部の制御に関する機能の一部または全部は画素回路20Aに備えられてもよい。また、上記の例で第1層に配置された素子のうち、フォトダイオードPD以外の素子の一部または全部は第2層に配置されてもよい。例えば、
図6に示すように、画素回路20Aは、第1層はフォトダイオードPDのみを有し、それ以外の素子が第2層に配置されるように構成されてもよい。また、記憶部24は、Dフリップフロップ回路として画素回路20Aごとに配置されてもよいし、周辺回路12に配置されてもよい。また、例えば
図7に示すように、フローティングディフュージョンFDと転送トランジスタTXとの間で第1層および第2層を分けてもよい。
【0025】
以下、上記のような構成を有する第1の実施形態の撮像素子1についていくつかの実施例を挙げる。
【0026】
(第1実施例)
図8は、第1の実施形態におけるフォトダイオードPDおよび読み出し回路RCの第1の配置例を示す図である。
図8は、一例として、1画素につき、1つのマイクロレンズMLと、フォトダイオードPDおよび読み出し回路RCの組を4つ設けた場合における配置例を示す。すなわち、この配置例では、読み出し回路RCはフォトダイオードPDごとに存在する。この場合、記憶部24には欠陥の少ないフォトダイオードPDまたはRTS特性の読み出し回路RCを持つ光電変換回路30についての接続情報が予め記憶され、使用する光電変換回路30が、
図4~
図7と同様の趣旨により、記憶部24および各スイッチによって切り替えられるものとする。
【0027】
図8(A)および
図8(B)は好ましくない配置の例を示し、
図8(C)および
図8(D)は好ましい配置の例を示す。具体的には、
図8(A)および
図8(B)は、少なくとも2つのフォトダイオードPDの間に1つ以上の読み出し回路RCが配置された例を示す。例えば、
図8(A)は、横方向において、フォトダイオードPDと読み出し回路RCが交互に配置された例である。また、例えば、
図8(B)は、横方向において、2つのフォトダイオードPDの間に2つの読み出し回路RCが配置された例である。
【0028】
このような配置は、画素の中心から遠い位置にフォトダイオードPDが配置されることにより受光感度が下がるので好適でない。また、このような配置は、感度の中心(すなわち画素の中心)に近い位置に読み出し回路RCが配置されるため、フローティングディフュージョンFDに光が当たり、CDS(Correlated Double Sampling:相関二重サンプリング)処理に必要となるDARK信号を適切に取得することができない可能性が高くなるという点でも好適でない。
【0029】
そこで、本実施形態の撮像素子1では、
図8(C)および
図8(D)に例示されるように、画素の中心に近い位置にフォトダイオードPDを配置し、フォトダイオードPDよりも画素の中心から遠い位置に読み出し回路RCを配置する。例えば、
図8(C)は、横方向において、2つのフォトダイオードPDが2つの読み出し回路RCの間に隣り合うように配置された例である。また、例えば、
図8(D)は、フォトダイオードPDが読み出し回路RCよりも画素の中心に近くなるようにフォトダイオードPDおよび読み出し回路RCを対角線上に配置した例である。
【0030】
このような配置によれば、画素の中心から近い位置にフォトダイオードPDが配置されることにより受光感度の低下を抑制することができる。また、このような配置によれば、感度の中心(すなわち画素の中心)から遠い位置に読み出し回路RCが配置されるため、フローティングディフュージョンFDに光が当たりにくくすることができ、CDS処理に必要となるDARK信号を適切に取得することができる。さらに、このような配置によれば、各フォトダイオードPDからADC23までの読み出し回路を順次走査することによって、フォトダイオードPD間の位相差を検出することもできるため、記憶部24を駆動テーブルとして同位相のデータを読み出して対応づけることにより、複数の画像データを同時に取得することができる。
【0031】
(第2実施例)
図9は、第1の実施形態におけるフォトダイオードPDおよび読み出し回路RCの第2の配置例を示す図である。
図9は、一例として、1画素につき、4つのマイクロレンズMLを設け、光電変換回路30がマイクロレンズMLごとに1つずつ設けられた場合における配置例を示す。すなわち、この配置例では、第1実施例と同様に、読み出し回路RCがフォトダイオードPDごとに存在する。この場合、第1実施例と同様に、記憶部24には欠陥の少ないフォトダイオードPDまたはRTS特性の良い読み出し回路RCを持つ光電変換回路30の接続情報が予め記憶され、使用する光電変換回路30が、
図4~
図7と同様の趣旨により、記憶部24および各スイッチによって切り替えられるものとする。
【0032】
図9(A)、
図9(B)および
図9(C)のいずれも各マイクロレンズMLの感度の中心にフォトダイオードPDを配置し、フォトダイオードPDの周辺に読み出し回路RCを配置した例である。このような配置によれば、第1実施例と同様の効果が得られるとともに、記憶部24を駆動テーブルとして複数のフォトダイオードPDから順次データを読み出すことにより、必要に応じて画素数を最大4倍まで増大させることができる。また、この場合、各画素に含まれる複数のフォトダイオードPD(
図9の例では4つ)の特性を異ならせることにより、フォトダイオードPDごとに用途の異なるデータを取得することができる。
【0033】
<第2の実施形態>
図10は、第2の実施形態の撮像素子1における画素回路20Bの構成例を示す図である。第2の実施形態の画素回路20Bは、複数のフォトダイオードPDを備えるとともに、複数のフォトダイオードPDに対して1つの読み出し回路を備える点で第1の実施形態の撮像素子1と異なる。すなわち、第2の実施形態では、1つの読み出し回路RCが複数のフォトダイオードPDの読み出しで共有される。換言すれば、第2の実施形態の画素回路20Bは、1つのフォトダイオードPDと、他の光電変換回路と共有の読み出し回路とを持つ複数の光電変換回路を備えるということができる。この場合、記憶部24には欠陥の少ないフォトダイオードPDの接続情報が予め記憶され、使用するフォトダイオードPDが、
図4~
図7と同様の趣旨により、記憶部24およびスイッチによって切り替えられるものとする。この場合、例えば、TX制御回路21により、読み出し対象のフォトダイオードPDを選択してもよい。また、この場合、記憶部24が接続情報に基づく信号をTX制御回路21に送信してもよい。さらに、選択されなかったフォトダイオードPDから溢れた電荷によるノイズを抑制するため、第1層には不要な電荷を排出するためにフォトダイオードPDの電荷排出部(図示せず)が設けられてもよい。以下、第2の実施形態の撮像素子1についていくつかの実施例を挙げる。
【0034】
(第3実施例)
図11は、第2の実施形態におけるフォトダイオードPDおよび読み出し回路RCの第1の配置例を示す図である。
図11は、一例として、1画素につき、1つのマイクロレンズMLと、4つのフォトダイオードPDと、1つの読み出し回路RCとを設けた場合における配置例を示す。
【0035】
具体的には、
図11(A)は、1つの読み出し回路RCを画素の中心の近くに配置し、その周辺に4つのフォトダイオードPDを配置した例を示す。このような配置によれば、第1の実施形態と同様に、各画素について使用するフォトダイオードPDを複数のフォトダイオードPDから選択することができるため、ノイズの影響による画質の劣化を抑制することができるとともに、複数のフォトダイオードPDによって可能となる新たな機能を実現することが可能となる。また、このような配置によれば、第1実施例と同様に、記憶部24を駆動テーブルとして同位相のデータを読み出して対応づけることにより、複数の画像データを同時に取得することができる。なお、この場合、フローティングディフュージョンFDの遮光や、複数のフォトダイオードPD間の干渉を抑制するために、例えば
図11(B)に示すような遮光メタルやDTI(Deep Trench Isolation)構造40を設けてもよい。
【0036】
(第4実施例)
図12は、第2の実施形態におけるフォトダイオードPDおよび読み出し回路RCの第2の配置例を示す図である。
図12は、一例として、1画素につき、4つのマイクロレンズMLと1つの読み出し回路RCを設け、マイクロレンズMLごとに1つのフォトダイオードPDを配置する場合の配置例を示す。
【0037】
具体的には、
図12は、画素の中心に1つの読み出し回路RCを配置し、その読み出し回路RCの周辺にマイクロレンズMLごとのフォトダイオードPDを配置した例である。このような配置によれば、第3実施例と同様の効果が得られるとともに、記憶部24を駆動テーブルとして複数のフォトダイオードPDから順次データを読み出すことにより、必要に応じて画素数を最大4倍まで増大させることができる。また、この場合、各画素に含まれる複数のフォトダイオードPD(
図12の例では4つ)の特性を異ならせることにより、フォトダイオードPDごとに用途の異なるデータを取得することができる。
【0038】
(第3の実施形態)
図13は、第3の実施形態の画素回路20Cの構成例を示す図である。第3の実施形態の画素回路20Cは、1つのフォトダイオードPDに対して複数の読み出し回路を備える点で第1および第2の実施形態の撮像素子1と異なる。すなわち、第3の実施形態の画素回路20Cは、1つの読み出し回路と、他の光電変換回路と共有のフォトダイオードPDとを持つ複数の光電変換回路を備えるということができる。この場合、記憶部24には欠陥の少ない読み出し回路の接続情報が予め記憶され、使用する読み出し回路が、
図4~
図7と同様の趣旨により、記憶部24および各スイッチによって切り替えられるものとする。なお、
図13は、画素回路20Cが、1つのフォトダイオードPDに対して2つの読み出し回路を備える構成を一例として示しているが、画素回路20Cは、同様の趣旨により3つ以上の読み出し回路を備えるように構成されてもよい。以下、第3の実施形態の撮像素子1について実施例を挙げる。
【0039】
(第5実施例)
図14は、第3の実施形態におけるフォトダイオードPDおよび読み出し回路RCの配置例を示す図である。
図14は、一例として、1画素につき、1つのマイクロレンズMLと、1つのフォトダイオードPDと、2つの読出し回路RCを設けた場合の配置例を示す。
【0040】
具体的には、
図14は、画素の中心に1つのフォトダイオードPDを配置し、そのフォトダイオードPDを挟むように2つの読出し回路RCを配置した例である。このような配置によれば、RTS特性の良い読み出し回路RCを使用してデータを読み出すことができるため、ノイズの影響による画質の劣化を抑制することができる。また、このような配置によれば、感度の中心(すなわち画素の中心)から遠い位置に読み出し回路RCが配置されるため、フローティングディフュージョンFDに光が当たりにくくすることができ、CDS処理に必要となるDARK信号を適切に取得することができる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明したが、ここで本発明と上記実施形態とにおける対応関係について補足して説明する。
【0042】
(1)上記実施形態において、撮像素子1は、行方向と列方向とに並んで配置され、光を電荷に変換する複数の光電変換回路30をそれぞれ有する複数の画素回路20と、行方向と列方向とに並んで配置され、画素回路20から読み出された信号をデジタル信号に変換する画素回路20ごとのADC23と、1つの画素回路20が有する複数の光電変換回路30のうち選択された光電変換回路30と、当該1つの画素回路20が有するADC23とを接続するスイッチ25と、を備える。
【0043】
このように構成された撮像素子1によれば、各画素について使用するデータを複数の光電変換回路30から選択することができるため、ノイズの影響による画質の劣化を抑制することができる。
【0044】
(2)また、上記実施形態において、スイッチ25によってADC23に接続される光電変換回路30は、複数の光電変換回路30が有する欠陥または特性に関する接続情報に基づいて選択されたものである。
【0045】
このような構成により、複数の光電変換回路30の中から欠陥が少ないフォトダイオードPDまたはRTS特性の良い読み出し回路を有する光電変換回路30を選択して使用することができる。
【0046】
(3)また、上記実施形態において、スイッチ25は、複数の画素回路20に含まれる転送トランジスタRXおよびリセットトランジスタRSTを制御するTX制御部21およびRST制御部22と、複数の光電変換回路30の中から選択された光電変換回路30に含まれる転送トランジスタTXおよびリセットトランジスタRSTと、をさらに接続するように構成されてもよい。
【0047】
このような構成により、選択された読み出し回路のみを作動させることができるため、消費電力を削減することができる。
【0048】
(4)また、上記実施形態において、複数の光電変換回路30のそれぞれは、フォトダイオードPDと、フォトダイオードPDからADC23までの読み出し回路とをそれぞれ1つずつ備えるように構成されてもよい。
【0049】
このような構成により、複数の光電変換回路30の中から欠陥が少ないフォトダイオードPDまたはRTS特性の良い読み出し回路を有する光電変換回路30を選択して使用することができる。
【0050】
(5)また、上記実施形態において、複数の光電変換回路30は、複数のフォトダイオードPDが画素の中心近くに隣接して位置し、複数の読み出し回路が複数のフォトダイオードPDよりも画素の中心から遠くに位置するように配置されるように構成されてもよい。
【0051】
このような構成により、画素の中心から近い位置にフォトダイオードPDが配置されることにより受光感度の低下を抑制することができる。また、この場合、感度の中心(すなわち画素の中心)から遠い位置に読み出し回路が配置されるため、フローティングディフュージョンFDに光が当たりにくくすることができ、CDS処理に必要となるDARK信号を適切に取得することができる。さらに、この場合、各フォトダイオードPDからADC23までの読み出し回路を順次走査することによって、フォトダイオードPD間の位相差を検出することもできるため、同位相のデータを読み出して対応づけることにより、複数の画像データを同時に取得することができる。
【0052】
(6)また、上記実施形態において、複数の画素回路20のそれぞれは、複数のマイクロレンズMLを有し、複数の光電変換回路30は、画素回路20が有する複数のマイクロレンズMLごとに設けられてもよい。
【0053】
このような構成により、複数のフォトダイオードPDから順次データを読み出すことにより、必要に応じて画素数を最大4倍まで増大させることができる。また、この場合、各画素回路20に含まれる複数のフォトダイオードPDの特性を異ならせることにより、フォトダイオードPDごとに用途の異なるデータを取得することができる。
【0054】
(7)また、上記実施形態において、複数の光電変換回路30のそれぞれは、1つのフォトダイオードPDと、他の光電変換回路30と共有の読み出し回路とを備えるように構成されてもよい。
【0055】
このような構成により、複数の光電変換回路30の中から欠陥が少ないフォトダイオードPDを有する光電変換回路30を選択して使用することができる。
【0056】
(8)また、上記実施形態において、複数の光電変換回路30は、共有の読み出し回路が画素の中心近くに位置し、複数のフォトダイオードPDが共有の読み出し回路よりも画素の中心から遠くに位置するように配置されるように構成されてもよい。
【0057】
このような構成により、画素の中心から近い位置にフォトダイオードPDが配置されることにより受光感度の低下を抑制することができる。さらに、この場合、各フォトダイオードPDからADC23までの読み出し回路を順次走査することによって、フォトダイオードPD間の位相差を検出することもできるため、同位相のデータを読み出して対応づけることにより、複数の画像データを同時に取得することができる。
【0058】
(9)また、上記実施形態において、画素回路20は、共有の読み出し回路を遮光する遮光メタルや、複数のフォトダイオードPDを分離するDTI構造40を有するように構成されてもよい。
【0059】
このような構成により、フローティングディフュージョンFDに光が当たりにくくすることができ、CDS処理に必要となるDARK信号を適切に取得することができる。
【0060】
(10)また、上記実施形態において、複数の画素回路20のそれぞれは、フォトダイオードPDごとにマイクロレンズMLを有するように構成されてもよい。
【0061】
このような構成により、複数のフォトダイオードPDから順次データを読み出すことにより、必要に応じて画素数を最大4倍まで増大させることができる。また、この場合、各画素回路20に含まれる複数のフォトダイオードPDの特性を異ならせることにより、フォトダイオードPDごとに用途の異なるデータを取得することができる。
【0062】
(11)また、上記実施形態において、複数の光電変換回路30のそれぞれは、他の光電変換回路30と共有のフォトダイオードPDと、1つの読み出し回路とを備えるように構成されてもよい。
【0063】
このような構成により、複数の光電変換回路30の中からRTS特性の良い読み出し回路を有する光電変換回路30を選択して使用することができる。
【0064】
(12)また、上記実施形態において、複数の光電変換回路30は、共有のフォトダイオードPDが画素の中心近くに位置し、複数の読み出し回路がフォトダイオードPDよりも画素の中心から遠くに位置するように配置されるように構成されてもよい。
【0065】
このような構成により、RTS特性の良い読み出し回路を使用してデータを読み出すことができるため、ノイズの影響による画質の劣化を抑制することができる。また、この場合、感度の中心(すなわち画素の中心)から遠い位置に読み出し回路が配置されるため、フローティングディフュージョンFDに光が当たりにくくすることができ、CDS処理に必要となるDARK信号を適切に取得することができる。
【0066】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【符号の説明】
【0067】
1…撮像素子、11…画素アレイ、12…周辺回路、20,20A,20B,20C…画素回路、21…TX制御回路、22…RST制御回路、23…ADC(Analog-to-Digital Converter)、24…記憶部、25…スイッチ、30…光電変換回路、40…DTI(Deep Trench Isolation)構造、90…従来構成の画素回路、91…TX制御回路、92…RST制御回路、93…ADC