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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125925
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】タンデム型光電変換素子
(51)【国際特許分類】
   H10K 30/57 20230101AFI20240911BHJP
   H10K 30/40 20230101ALI20240911BHJP
   H10K 30/86 20230101ALI20240911BHJP
   H10K 30/85 20230101ALI20240911BHJP
   H10K 39/15 20230101ALI20240911BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20240911BHJP
【FI】
H10K30/57
H10K30/40
H10K30/86
H10K30/85
H10K39/15
H10K85/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034064
(22)【出願日】2023-03-06
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 太陽光発電主力電源化推進技術開発/太陽光発電の新市場創造技術開発委託研究、 産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】519259342
【氏名又は名称】株式会社エネコートテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201732
【弁理士】
【氏名又は名称】松縄 正登
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100227019
【弁理士】
【氏名又は名称】安 修央
(72)【発明者】
【氏名】若宮 淳志
(72)【発明者】
【氏名】金子 竜二
【テーマコード(参考)】
3K107
5F251
【Fターム(参考)】
3K107AA03
3K107DD71
3K107DD74
3K107DD78
3K107DD84
3K107EE68
5F251AA02
5F251AA05
5F251AA11
5F251DA15
5F251FA04
5F251FA06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】光電変換特性が良好なタンデム型光電変換素子を提供する。
【解決手段】第1の光電変換素子1100と第2の光電変換素子1200とが積層されたタンデム型光電変換素子1000であり、第1の光電変換素子と第2の光電変換素子とが光入射側から前記順序で積層され、第2の光電変換素子は、シリコンを含み、第1の光電変換素子は、光入射側から第1の電極1110、電子輸送層1120、光電変換層1130、正孔輸送層1140、及び第2の電極1150が前記順序で積層されており、光電変換層1130は、ペロブスカイト構造を含み、正孔輸送層1140が下記化学式(I)で表される化合物を含むことを特徴とするタンデム型光電変換素子。

【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光電変換素子と第2の光電変換素子とが積層されたタンデム型光電変換素子であり、
前記第1の光電変換素子と前記第2の光電変換素子とが光入射側から前記順序で積層され、
前記第2の光電変換素子は、シリコンを含み、
前記第1の光電変換素子は、光入射側から第1の電極、電子輸送層、光電変換層、正孔輸送層、及び第2の電極が前記順序で積層されており、
前記光電変換層は、ペロブスカイト構造を含み、
前記正孔輸送層が下記化学式(I)で表される化合物を含むことを特徴とするタンデム型光電変換素子。
【化I】
前記化学式(I)において、
Arは、芳香環を含む構造であり、前記芳香環を構成する原子中にヘテロ原子を含んでいても含んでいなくてもよく、
Arは、-L-X以外の置換基を有していても有していなくてもよく、
-L-Xは、1つでも複数でもよく、複数の場合は、各L及び各Xは、互いに同一であっても異なっていてもよく、
各Lは、ArとXとを結合する原子団であるか、又は共有結合であり、
各Xは、それぞれ、前記第1の電極との間で電荷を授受可能な基である。
【請求項2】
前記化学式(I)で表される化合物が、前記置換基L-Xを3つ以上有することを特徴とする請求項1記載のタンデム型光電変換素子。
【請求項3】
前記正孔輸送層が、前記化学式(I)で表されるに加えて、下記化学式(II)で表される化合物を含むことを特徴とする請求項1記載のタンデム型光電変換素子。

-L-X (II)

前記化学式(II)において、
は、アルコキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、ジヒドロキシホスホリル基、ジアルキルホスホリル基、ヒドロキシスルホニル基、置換又は無置換アミノ基、置換又は無置換アミノカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アミノカルボニルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アミノスルホニル基、窒素含有ヘテロ環基、及びからなる群から選択させる少なくとも一つの置換基を含む原子団であり、
各Lは、AとXとを結合する原子団であるか、又は共有結合であり、
は、それぞれ、前記第1の電極との間で電荷を授受可能な基である。
【請求項4】
前記第1の光電変換素子における前記電子輸送層が、金属酸化物を含むことを特徴とする請求項1記載のタンデム型光電変換素子。
【請求項5】
前記金属酸化物が酸化スズであることを特徴とする請求項4記載のタンデム型光電変換素子。
【請求項6】
前記第1の光電変換素子がペロブスカイト太陽電池であり、前記第2の光電変換素子がシリコン太陽電池である請求項1記載のタンデム型光電変換素子。
【請求項7】
太陽電池である請求項1から6のいずれか一項に記載のタンデム型光電変換素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンデム型光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、クリーンエネルギーとして、太陽光発電が注目を浴びており、太陽電池の開発が進んでいる。その一つとして、低コストで製造可能な次世代型の太陽電池として、ペロブスカイト材料を光吸収層に用いた太陽電池が急速に注目を集めている。例えば、非特許文献1では、ペロブスカイト材料を光吸収層に用いた溶液型の太陽電池が報告されている。また、非特許文献2には、固体型のペロブスカイト型太陽電池が高効率を示すことも報告されている。
【0003】
また、単結晶シリコン太陽電池を上回るタンデム型光電変換素子の開発が盛んに行われている(非特許文献3)。結晶シリコン太陽電池のバンドギャップエネルギーは1.1eVなので、このシリコン太陽電池に少なくとも1.5eV以上のバンドギャップエネルギーを有する太陽電池を組み合わせた積層タンデム太陽電池が期待されている。タンデム太陽電池は上部で短波長領域の光を吸収し、下部で長波長領域の光を吸収することで、吸収波長領域を広く利用することができるという利点がある。タンデム型光電変換素子にはトップセルから接合界面を通してボトムセルにキャリア輸送される二端子型と、それぞれのセルから独立して電力を取り出す四端子型が開発されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Journal of the American Chemical Society, 2009, 131, 6050-6051.
【非特許文献2】Science, 2012, 388, 643-647.
【非特許文献3】Nature Energy, 2017, 2, 17144.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
二端子型のタンデム型光電変換素子は、上下の太陽電池を連続して形成するものであり、配線が簡略化されるメリットはあるものの、上下の太陽電池の電流を整合する必要があった。また、下部の太陽電池上に直接上部太陽電池を形成していく必要があるので、光電変換特性が下部太陽電池の平面性の影響を受けやすいことが、タンデム型光電変換素子を作る際の課題である。
【0006】
そこで、本発明は、光電変換特性が良好なタンデム型光電変換素子の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の光電変換素子は、
第1の光電変換素子と第2の光電変換素子とが積層されたタンデム型光電変換素子であり、
前記第1の光電変換素子と前記第2の光電変換素子とが光入射側から前記順序で積層され、
前記第2の光電変換素子は、シリコンを含み、
前記第1の光電変換素子は、光入射側から第1の電極、電子輸送層、光電変換層、正孔輸送層、及び第2の電極が前記順序で積層されており、
前記光電変換層は、ペロブスカイト構造を含み、
前記正孔輸送層が下記化学式(I)で表される化合物を含むことを特徴とする。
【化I】
前記化学式(I)において、
Arは、芳香環を含む構造であり、前記芳香環を構成する原子中にヘテロ原子を含んでいても含んでいなくてもよく、
Arは、-L-X以外の置換基を有していても有していなくてもよく、
-L-Xは、1つでも複数でもよく、複数の場合は、各L及び各Xは、互いに同一であっても異なっていてもよく、
各Lは、ArとXとを結合する原子団であるか、又は共有結合であり、
各Xは、それぞれ、前記第1の電極との間で電荷を授受可能な基である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光電変換特性が良好なタンデム型光電変換素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明のタンデム型光電変換素子の構成の一例を示す断面図である。
図2図2は、本発明のタンデム型光電変換素子における第1の光電変換素子の構成の一例を示す断面図である。
図3図3は、本発明のタンデム型光電変換素子における第2の光電変換素子の構成の一例を示す断面図である。
図4図4は、実施例で製造した化合物3PATATの1HNMRチャートである。
図5図5は、実施例で製造した化合物3PATATの13CNMRチャートである。
図6図6は、実施例で製造した化合物3PATATの31PNMRチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明について、例を挙げてさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
【0011】
本発明において、特に断らない限り、「質量%」と「重量%」とは互いに読み替えてもよく、「質量部」と「重量部」とは互いに読み替えてもよい。
【0012】
本発明において、「上に」または「面上に」は、上に、または面上に直接接触した状態でもよいし、他の構成要素等を介した状態でもよい。
【0013】
[光電変換素子]
本発明のタンデム型光電変換素子は、前述のとおり、
第1の光電変換素子と第2の光電変換素子とが積層されたタンデム型光電変換素子であり、
前記第1の光電変換素子と前記第2の光電変換素子とが光入射側から前記順序で積層され、
前記第2の光電変換素子は、シリコンを含み、
前記第1の光電変換素子は、光入射側から第1の電極、電子輸送層、光電変換層、正孔輸送層、及び第2の電極が前記順序で積層されており、
前記光電変換層は、ペロブスカイト構造を含み、
前記正孔輸送層が下記化学式(I)で表される化合物を含むことを特徴とする。
【化I】
前記化学式(I)において、
Arは、芳香環を含む構造であり、前記芳香環を構成する原子中にヘテロ原子を含んでいても含んでいなくてもよく、
Arは、-L-X以外の置換基を有していても有していなくてもよく、
-L-Xは、1つでも複数でもよく、複数の場合は、各L及び各Xは、互いに同一であっても異なっていてもよく、
各Lは、ArとXとを結合する原子団であるか、又は共有結合であり、
各Xは、それぞれ、前記第1の電極との間で電荷を授受可能な基である。
【0014】
本発明のタンデム型光電変換素子において、前述のとおり、第1の光電変換素子(光入射側の光電変換素子)は、光電変換層がペロブスカイト構造を含み、第2の光電変換素子は、シリコンを含む。前記第1の光電変換素子は、例えば、ペロブスカイト太陽電池であってもよい。前記第2の光電変換素子は、例えば、シリコン太陽電池であってもよく、前記シリコン太陽電池は、例えば、結晶シリコン太陽電池であってもよい。また、本発明のタンデム型光電変換素子は、例えば、太陽電池であってもよい。以下においては、主に、前記第1の光電変換素子がペロブスカイト太陽電池であり、前記第2の光電変換素子がシリコン太陽電池であり、本発明のタンデム型光電変換素子が太陽電池である場合について説明するが、本発明はこれに限定されない。なお、以下において、本発明のタンデム型光電変換素子を、単に「本発明の光電変換素子」という場合がある。また、以下において、太陽電池である本発明のタンデム型光電変換素子を、「本発明のタンデム型太陽電池」又は単に「本発明の太陽電池」という場合がある。
【0015】
以下、本発明の光電変換素子の構成及び各構成要素について、例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、本発明の光電変換素子は以下の例に限定されない。なお、以下においては、主に、本発明の光電変換素子が太陽電池である場合について説明する。
【0016】
図1に、本発明のタンデム型光電変換素子の構成の一例を示す。なお、図1は、説明の便宜のため、適宜省略、誇張等をして模式的に描いている。図示のとおり、このタンデム型光電変換素子1000は、光入射側(光が入射する側、上部)に第1の光電変換素子1100が配置され、光入射側と反対側に第2の光電変換素子1200が配置され、その両者が積層されている。なお、同図において、矢印1は、タンデム型光電変換素子1000に入射する光を表す。本例では、第1の光電変換素子1100はペロブスカイト太陽電池である。ただし、前述のとおり、本発明では、前記第1の光電変換素子はペロブスカイト太陽電池に限定されない。また、本例では、第2の光電変換素子1200はシリコン太陽電池である。ただし、前述のとおり、本発明では、前記第2の光電変換素子はシリコン太陽電池に限定されない。
【0017】
図1において、第1の光電変換素子1100は、光入射側(光が入射する側)から、第1の電極1110、電子輸送層1120、光電変換層1130、正孔輸送層1140、及び第2の電極1150が前記順序で積層されて構成されている。第2の光電変換素子1200は、光入射側から、第2の電極1150、シリコン含有層1210、及び第3の電極1220が前記順序で積層されて構成されている。第1の光電変換素子1100における第2の電極1150と、第2の光電変換素子1200とは同一であり、1つの第2の電極1150を、第1の光電変換素子1100と第2の光電変換素子1200とで共有している。本例では、第2の光電変換素子1200は、前述のとおり、シリコン太陽電池である。このシリコン太陽電池は、例えば、単結晶シリコン太陽電池でもよいし、多結晶シリコン太陽電池でもよいが、単結晶シリコン太陽電池がより好ましい。
【0018】
[第1の光電変換素子(光入射側の光電変換素子)]
本発明のタンデム型太陽電池は、例えば、図1に示したように、第1の光電変換素子を、第2の変換素子上に、他の構成要素(例えばガラス、フィルム等の透明な支持体)を介さずに直接積層させて形成することができる。
【0019】
以下において、本発明のタンデム型太陽電池における第1の光電変換素子の各構成要素について、図1及び図2を参照しながら例を挙げて説明する。図2は、図1のタンデム型光電変換素子1000における第1の光電変換素子1100のみを図示した断面図である。図2において、図1と同一の構成要素は、同一の符号で示している。図1及び2において、第1の電極1110、電子輸送層1120、光電変換層1130、正孔輸送層1140、及び第2の電極1150における隣接する層同士は、他の構成要素を介さずに直接積層されていてもよいが、後述するように、間に他の構成要素を介して積層されていてもよい。
【0020】
[第1の電極]
第1の電極1110は、例えば、電子輸送層を介して光電変換層から電子を取り出す機能を有する層である。なお、第2の電極1150は、後述するように、光を透過する必要がある。
【0021】
第1の電極1110は、例えば、電子輸送層(電子注入層とも言う)1120上に、他の構成要素を介さずに直接形成してもよい。また、第1の電極1110の材質、形状、構造、大きさについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。第1の電極の材質としては、例えば、金属、炭素化合物、導電性金属酸化物、導電性高分子などが挙げられる。
【0022】
前記金属としては、例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウムなどが挙げられ、光透過できる膜厚で構成される。前記炭素化合物としては、例えば、グラファイト、フラーレン、カーボンナノチューブ、グラフェンなどが挙げられる。前記導電性金属酸化物としては、例えば、ITO、FTO、ATOなどが挙げられる。前記導電性高分子としては、例えば、ポリチオフェン、ポリアニリンなどが挙げられる。特にこの中でも、金属酸化物が好適であり、1種単独で使用してもよいし、例えば金属との2種以上の併用でも構わない。
【0023】
第1の電極1110の形成方法は特に限定されないが、例えば、用いられる材料の種類や電子輸送層1120の種類により、塗布、ラミネート、真空蒸着、CVD、貼り合わせなどの方法を用いることにより形成可能である。
【0024】
[電子輸送層]
電子輸送層1120に用いられる材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、半導体材料が好ましい。前記半導体材料としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができ、例えば、単体半導体、化合物半導体、有機n型半導体などを挙げることができる。
【0025】
前記単体半導体としては、特に限定されないが、例えば、シリコン、ゲルマニウムなどが挙げられる。
【0026】
前記化合物半導体としては、特に限定されないが、例えば、金属のカルコゲニド、具体的には、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、タンタル等の酸化物;カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモン、ビスマス等の硫化物;カドミウム、鉛等のセレン化物;カドミウム等のテルル化物などが挙げられる。他の化合物半導体としては亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物、ガリウム砒素、銅-インジウム-セレン化物、銅-インジウム-硫化物等が挙げられる。
【0027】
前記有機n型半導体としては、特に限定されないが、例えば、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボキシジイミド化合物、ナフタレンジイミド-ビチオフェン共重合体、ベンゾビスイミダゾベンゾフェナントロリン重合体、C60、C70、PCBM([6,6]-フェニル-C61-酪酸メチルエステル)などのフラーレン化合物、カルボニルブリッジ-ビチアゾール化合物、ALq3(トリス(8-キノリノラト)アルミニウム)、トリフェニレンビピリジル化合物、シロール化合物、オキサジアゾール化合物などを挙げることができる。
【0028】
電子輸送層1120に用いられる前述の材料の中でも、特に有機n型半導体が好ましい。
【0029】
電子輸送層1120の形成に用いられる材料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、半導体材料の結晶型としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、単結晶でも多結晶でもよく、非晶質でも構わない。
【0030】
電子輸送層1120の膜厚としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5nm~500nmが好ましく、10nm~100nmがより好ましい。
【0031】
電子輸送層1120の形成方法としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、真空中で薄膜を形成する方法(真空製膜法)、湿式製膜法などが挙げられる。真空製膜法としては、例えば、スパッタリング法、パルスレーザーデポジッション法(PLD法)、イオンビームスパッタ法、イオンアシスト法、イオンプレーティング法、真空蒸着法、アトミックレイヤーデポジッション法(ALD法)、化学気相成長法(CVD法)などが挙げられる。湿式製膜法としては、電子輸送材料を溶解した溶媒を塗布して形成する方法や、酸化物半導体の場合、ゾル-ゲル法が挙げられる。ゾル-ゲル法は、溶液から、加水分解や重合・縮合などの化学反応を経てゲルを作製し、その後、加熱処理によって緻密化を促進させる方法である。ゾル-ゲル法を用いた場合、ゾル溶液の塗布方法としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、また、湿式印刷方法として、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、スクリーン印刷などが挙げられる。また、ゾル溶液を塗布した後の加熱処理の際の温度としては、80℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。
【0032】
電子輸送層1120を形成後、例えば、電子輸送層1120と第1の電極との間に電子注入層(ホールブロッキング層、図示せず)を形成しても構わない。前記電子注入層に用いられる材料としては、特に限定されないが、例えば、BCP(バソクプロイン)を挙げることができ、セシウムをドープしても構わない。前記電子注入層の厚みは特に限定されないが、1~100nmが好ましく、3~20nmがより好ましい。
【0033】
[光電変換層]
光電変換層1130は、前述のとおりペロブスカイト構造を含み、例えば、ペロブスカイト化合物を含む。前記ペロブスカイト化合物は、例えば、下記化学式(III)で表される化合物であってもよい。

αβγ...(III)
【0034】
前記化学式(III)において、α:β:γの比率は、例えば3:1:1であり、β及びγは1より大きい整数を表す。Xは、例えばハロゲンイオンを表し、Yは、例えば1価のカチオンを表し、Zは、例えば2価のカチオンを表す。また、Yは、例えばアミノ基を有する有機化合物を表し、Zは、例えば金属イオンを表す。ペロブスカイト層(光電変換層)1130は、電子輸送層1120に対し、他の構成要素を介さずに直接隣接して配置されることが好ましい。なお、α:β:γの比率は、例えば、3:1.05:0.95のように、必ずしも3:1:1である必要はない。α:β:γの比率は、例えば、3:(0.95~1.05):(0.95~1.05)である。
【0035】
前記化学式(III)におけるXとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲンイオンが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
前記化学式(III)におけるYとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、n-ブチルアミン、ホルムアミジンなどのアルキルアミン化合物イオン(アミノ基を有する有機化合物)や、有機に限らず、セシウム、カリウム、ルビジウムなどのアルカリ金属イオンが挙げられる。アルキルアミン化合物イオンやアルカリ金属イオンは、それぞれ1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、Yは、例えば、有機物質(例えばアルキルアミン化合物イオン)と無機物質(例えばアルカリ金属イオン)とを併用することもでき、例えば、セシウムイオンとホルムアミジンを併用してもよい。
【0037】
前記化学式(III)におけるZとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、鉛、インジウム、アンチモン、スズ、銅、ビスマス等の金属などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。特に鉛この中でも、特に鉛とスズの併用が好ましい。また、ペロブスカイト層(光電変換層)1130は、例えば、ハロゲン化金属からなる層と有機カチオン分子が並んだ層が、交互に積層した層状ペロブスカイト構造を示すことが好ましい。ペロブスカイト層は、アルカリ金属を含有してもよい。ペロブスカイト層がアルカリ金属を少なくとも含有すると、出力が高くなる点で有利である。アルカリ金属としては、例えば、セシウム、ルビジウム、カリウムなどが挙げられる。これらの中でも、セシウムが好ましい。
【0038】
光電変換層1130は、前述のとおり、ペロブスカイト化合物から形成されたペロブスカイト層であってもよい。このようなペロブスカイト層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ハロゲン化金属及びハロゲン化アルキルアミンを、溶解又は分散させた溶液を塗布した後に乾燥する方法などが挙げられる。
【0039】
また、ペロブスカイト層を形成する方法としては、例えば、ハロゲン化金属を溶解又は
分散させた溶液を塗布、乾燥した後、ハロゲン化アルキルアミンを溶解させた溶液中に浸
して、ペロブスカイト化合物を形成する二段階析出法などが挙げられる。
【0040】
ペロブスカイト層を形成する方法としては、他に、例えば、ハロゲン化金属及びハロゲン化アルキルアミンを溶解又は分散した溶液を塗布しながら、ペロブスカイト化合物にとっての貧溶媒(溶解度が小さい溶媒)を加えて結晶を析出させる方法などが挙げられる。
【0041】
ペロブスカイト層を形成する方法としては、他に、例えば、メチルアミンなどが充満
したガス中において、ハロゲン化金属を蒸着する方法等も挙げられる。
【0042】
ペロブスカイト層を形成する方法としては、ハロゲン化金属及びハロゲン化アルキルアミンを溶解又は分散した溶液を塗布しながら、ペロブスカイト化合物にとっての貧溶媒を加えて結晶を析出させる方法が特に好ましい。これらの溶液を塗布する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、浸漬法、スピンコート法、スプレー法、ディップ法、ローラ法、エアーナイフ法などが挙げられる。また、溶液を塗布する方法としては、例えば、二酸化炭素などを用いた超臨界流体中で析出させる方法であってもよい。上述の貧溶媒を加えて結晶を析出させる方法として、使用される貧溶媒としては、n-ヘキサン、n-オクタンなどの炭化水素類、メタノール、エタノール、2-プロパノールなどのアルコール類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類、アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸イソブチル、γ-ブチロラクトンなどのエステル類、アセトニトリル、3-メトキシプロピオニトリルなどのニトリル類、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼンなどの芳香族炭化水素化合物類、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒、クロロフロロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボンなどのフッ素系溶媒を挙げることができる。
【0043】
光電輸送層1130(例えば光吸収層であり、例えばペロブスカイト層)の厚みは、特に限定されないが、欠陥や剥離による性能劣化をより抑制する観点から、50~1200nmが好ましく、200~2000nmがより好ましい。
【0044】
[正孔輸送層]
正孔輸送層1140は、前述のとおり、前記化学式(I)で表される化合物を含む。
【0045】
前記化学式(I)において、-L-Xの数は、特に限定されないが、例えば、1~4の範囲でもよい。
【0046】
本発明の光電変換素子は、例えば、前記化学式(I)において、各Xが、それぞれ、ホスホン酸基(-P=O(OH))、カルボキシ基(-COOH)、スルホ基(-SOH)、ボロン酸基(-B(OH))、トリハロゲン化シリル基(-SiX、ただしXはハロ基)、又はトリアルコキシシリル基(-Si(OR)、ただしRはアルキル基)であってもよい。
【0047】
本発明の光電変換素子は、例えば、前記化学式(I)において、前記Arが、下記化学式(I-1)で表されてもよい。
【0048】
【化I-1】
【0049】
前記化学式(I-1)中、
Ar11は、環状構造を含む原子団であり、前記環状構造は、芳香環でも非芳香環でもよく、単環でも縮合環でもスピロ環でもよく、環を構成する原子中にヘテロ原子を含んでいても含んでいなくてもよく、
Ar12は、芳香環であり、環を構成する原子中にヘテロ原子を含んでいても含んでいなくてもよく、
Ar12は、1つ以上の原子をAr11と共有してAr11と一体化していてもよく、
Ar12は、1つでも複数でもよく、複数の場合は互いに同一でも異なっていてもよい。
Ar12の数は特に限定されないが、例えば、1~4の範囲でもよい。
【0050】
本発明の光電変換素子は、例えば、前記化学式(I-1)において、前記Ar11が、下記化学式(a1)~(a10)のいずれかで表されてもよい。
【0051】
【化a1-a10】
【0052】
本発明の光電変換素子は、例えば、前記化学式(I-1)において、前記各Ar12が、それぞれ下記化学式(b)で表されてもよい。
【0053】
【化b】
【0054】
前記化学式(b)において、
炭素原子C及びCは、前記化学式(I-1)中の前記Ar11における前記環状構造を構成する原子の一部を兼ねており、
前記Rは、水素原子、前記化学式(I)中のX、又は置換基であり、前記置換基は水素原子を含んでいても含んでいなくてもよく、前記置換基中の水素原子の少なくとも一つは、前記化学式(I)中のXで置換されていてもよく、
前記各R11は、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子若しくは置換基であるか、又は、隣接する2つのR11は、それらが結合するベンゼン環と一体となって縮合環を形成していてもよく、
前記各R11は、さらに置換基を有していても有していなくてもよい。
【0055】
本発明の光電変換素子は、例えば、前記化学式(b)が、下記化学式(b1)~(b7)のいずれかで表されてもよい。
【0056】
【化b1-b7】
前記化学式(b1)~(b7)において、C、C及びRは、それぞれ、前記化学式(b)と同じである。
【0057】
本発明のタンデム型光電変換素子において、前記化学式(I)で表される化合物としては、具体的には、例えば、下記化学式A-1~A-23のいずれかで表される化合物を挙げることができる。
【0058】
【化A1A4】
【0059】
【化A5A8】
【0060】
【化A9A12】
【0061】
【化A13A16】
【0062】
【化A17A20】
【0063】
【化A21A23】
【0064】
前記化学式A-1~A-23において、前記各Rは、それぞれ、水素原子であるか、前記化学式(I)中のXであるか、又は、前記化学式(I)中のXでさらに置換された置換基であり、互いに同一でも異なっていてもよく、前記各Rのうち少なくとも1つは、前記化学式(I)中のXであるか、又は、前記化学式(I)中のXでさらに置換された置換基であり、前記Rは、置換基であり、1つでも複数でも存在しなくてもよく、複数の場合は、各Rは、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0065】
前記化学式A-1~A-23において、Rが、前記化学式(I)中のXでさらに置換された置換基である場合は、Xの数は、1でも複数でもよい。また、Rが、前記化学式(I)中のXでさらに置換された置換基である場合は、例えば、前記化学式(I)中のXでさらに置換されたアルキル基又はアルコキシ基であってもよい。
【0066】
前記化学式A-1~A-23において、前記置換基Rの数は特に限定されない。また、前記置換基Rは、例えば、それぞれ、アルキル基、アルコキシ基、又はハロ基(ハロゲン原子)であってもよい。
【0067】
本発明の光電変換素子は、例えば、前記化学式(I)で表される化合物が、下記化学式4PATAT、1-legged-3PATAT、1-legged-3PATAT-H、2-legged-3PATAT、4PATTI-C3、4PATTI-C4、又は3PATATで表される化合物であってもよい。
【0068】
【化4PATAT】
【0069】
【化3PATAT1】
【0070】
【化3PATATH】
【0071】
【化3PATAT2】
【0072】
【化4PATTI-C3】
【0073】
【化4PATTI-C4】
【0074】
【化3PATAT】
【0075】
本発明において、鎖状の基又は原子団(例えば、アルキル基、不飽和脂肪族炭化水素基等の炭化水素基)は、特に断らない限り、直鎖状でも分枝状でも良く、その炭素数は、特に限定されないが、例えば、1~40、1~32、1~24、1~18、1~12、1~6、または1~2(不飽和炭化水素基の場合は2以上)であっても良い。また、本発明において、環状の基又は原子団(例えば、芳香環、芳香族基等であり、例えば、アリール基、ヘテロアリール基等)の環員数(環を構成する原子の数)は、特に限定されないが、例えば、5~32、5~24、6~18、6~12、または6~10であっても良い。また、置換基等に異性体が存在する場合は、特に断らない限り、どの異性体でも良く、例えば、単に「ナフチル基」という場合は、1-ナフチル基でも2-ナフチル基でも良い。
【0076】
本発明において、「置換基」は、特に限されないが、例えば、アルキル基、不飽和脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、アミノ基(-NR、R、Rは水素、アルキル基、アリール基)、ヒドロキシ基(-OH)、メルカプト基(-SH)、アルキルチオ基(-SR、Rはアルキル基)、スルホ基、ニトロ基、ジアゾ基、シアノ基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
【0077】
また、本発明において、化合物に互変異性体または立体異性体(例:幾何異性体、配座異性体および光学異性体)等の異性体が存在する場合は、特に断らない限り、いずれの異性体も本発明に用いることができる。また、本発明において、化合物が塩を形成し得る場合は、特に断らない限り、前記塩も本発明に用いることができる。前記塩は、酸付加塩でも良いが、塩基付加塩でも良い。さらに、前記酸付加塩を形成する酸は無機酸でも有機酸でも良く、前記塩基付加塩を形成する塩基は無機塩基でも有機塩基でも良い。前記無機酸としては、特に限定されないが、例えば、硫酸、リン酸、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、次亜フッ素酸、次亜塩素酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、亜フッ素酸、亜塩素酸、亜臭素酸、亜ヨウ素酸、フッ素酸、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、過フッ素酸、過塩素酸、過臭素酸、および過ヨウ素酸等があげられる。前記有機酸も特に限定されないが、例えば、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、p-ブロモベンゼンスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸および酢酸等があげられる。前記無機塩基としては、特に限定されないが、例えば、水酸化アンモニウム、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩等があげられ、より具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カルシウムおよび炭酸カルシウム等があげられる。前記有機塩基も特に限定されないが、例えば、エタノールアミン、トリエチルアミンおよびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン等があげられる。これらの塩の製造方法も特に限定されず、例えば、前記化合物に、前記のような酸や塩基を公知の方法により適宜付加させる等の方法で製造することができる。これらの塩の製造方法は、例えば、あらかじめ塩を形成している化合物を用いてデバイスを作製する方法であってもよいし、塩を形成する前の化合物を用いてデバイスを作製し、その後塩を形成させる方法であってもよい。
【0078】
本発明において、前記化学式(I)で表される化合物は、前述のとおり、塩を形成していてもよく、その塩は酸付加塩が好ましい。前記酸付加塩を形成する酸は無機酸でも有機酸でもよい。前記無機酸及び前記有機酸は、特に限定されないが、その具体例は、例えば前述のとおりである。前記酸付加塩の製造方法も特に限定されないが、例えば、前述のとおりである。
【0079】
また、前記化学式(I)で表される化合物の合成(製造)方法は特に限定されず、例えば、類似の構造を有する化合物の合成方法と同様に、若しくはそれに準じて、又はそれを参考にして合成することができる。
【0080】
正孔輸送層1140は、前記化学式(I)で表される化合物以外の化合物を含んでいても含んでいなくてもよい。例えば、正孔輸送層1140は、前記化学式(I)で表される化合物に加えて、芳香族環やヘテロ環を有さない以下に示すような化合物を共吸着していてもよい。その共吸着剤の具体例としては、3-メトキシプロピオン酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、2-ヒドロキシプロピオン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、2-ペンテンニ酸、メチレンコハク酸、アリルマロン酸、イソプロピリデンコハク酸、アセチレンジカルボン酸、アセチレンジカルボン酸モノカリウム塩、アセチレンジカルボン酸ジカリウム塩、テレフテル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、4,4‘-ビフェニルジカルボン酸、4,4‘-ビフェニルジカルボン酸ジエチル、4-メトキシ安息香酸、3,4-ジメトキシ安息香酸、没食子酸、4-ピリジンカルボン酸、6-キノリンカルボン酸、アスパラギン酸、メチレンジホスホン酸、1,2-エチレンジホスホン酸、1,3-プロピレンジホスホン酸、3,4-ジメトキシフェニルホスホン酸、(4-ヒドロキシベンジル)ホスホン酸、4-ヒドロキシフェニルホスホン酸、(ピリジン-4-イルメチル)ホスホン酸、(ピリジン-3-イルメチル)ホスホン酸、4-ホスホノ安息香酸、テトラエチルエチレンジホスホネート、3-ホスホノプロピオン酸、4-ホスホノブチル酸、ジエチル(4-メトキシベンジル)ホスホネート、5-アミノ吉草酸、5-アミノ吉草酸よう化水素酸塩、3-アミノプロピルホスホン酸などを挙げることができる。
【0081】
前記化学式(I)で表される化合物及び共吸着剤は、例えば、第2の電極1150上に単分子層を形成する正孔輸送化合物として用いることができる。第2の電極1150は、例えば、透明電極であり、例えば、後述するように、ITO、IZO、IWO等の金属酸化物を挙げることができる。
【0082】
例えば、前記化学式(I)及び任意に共吸着剤を第2の電極1150に吸着させて単分子層を形成させ、その単分子層を正孔輸送層1140としてもよい。そのような単分子層を形成させる方法は、特に限定されないが、例えば、前記化学式(I)を単独で、又は前記化学式(I)を共吸着剤とともに溶媒に溶解させ、第2の電極1150と接触させて結合させればよい。前記化学式(I)で表される化合物及び共吸着剤と第2の電極1150との結合は、特に限定されず、物理的な結合であっても化学的な結合であっても構わない。前記結合の種類も特に限定されず、例えば、水素結合、エステル結合、キレート結合などの何れであっても構わない。前記化学式(I)で表される化合物及び共吸着剤を溶解させるための溶媒も特に限定されず、例えば、水及び有機溶媒の一方でもよいし、両方でもよい。前記溶媒としては、より具体的には、例えば、水、メタノール、エタノール、2-プロパノールなどのアルコール類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類、アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸イソブチル、γ-ブチロラクトンなどのエステル類、テトラヒドロフラン、チオフェンなどのヘテロ環類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアミド類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ジエチルスルホン、スルホランなどのスルホン類、アセトニトリル、3-メトキシプロピオニトリルなどのニトリル類、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼンなどの芳香族化合物類、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒、クロロフロロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボンなどのフッ素系溶媒を挙げることができ、単独で用いても2種類以上の混合で用いても構わない。
【0083】
前記化学式(I)又は前記化学式(I)及び共吸着剤を第2の電極1150に吸着させて単分子層を形成させる具体的な方法は、特に限定されないが、例えば、ディッピング法、スプレー法、スピンコ-ト法、バーコート法など既知の方法を挙げることができる。吸着する際の温度は、特に限定されないが、-20℃~100℃が好ましく、0℃~50℃がより好ましい。吸着する時間も特に限定されないが、例えば、1秒~48時間が好ましく、10秒~1時間がより好ましい。
【0084】
また、前記吸着処理後は、例えば、洗浄を行ってもよいし、行わなくてもよい。前記洗浄の方法も特に限定されないが、例えば、公知の方法を適宜用いてもよい。
【0085】
前記吸着処理後、又は前記洗浄後には、加熱処理を行ってもよいし、行わなくてもよい。前記加熱処理の温度は、50℃~150℃が好ましく、70℃~120℃がより好ましい。加熱処理時間は1秒~48時間が好ましく、10秒~1時間がより好ましい。また、この加熱処理は、例えば、大気下で行なってもよいし、真空中で行なってもよい。
【0086】
[第2の電極]
第2の電極1150は、例えば、正孔輸送層を介して光電変換層から正孔を取り出す機能を有する層である。第2の電極1150は、例えば、透明電極である。
【0087】
第2の電極1150は、例えば、第2の光電変換素子(下部太陽電池)1200におけるシリコン1210の上に直接形成してもよい。また、第2の電極1150の材質は、特に限定されないが、金属酸化物が好ましく、特に、ITO、IZO、IWOが好ましい。
【0088】
第2の電極1150を形成する方法は特に限定されないが、例えば、塗布、ラミネート、真空蒸着、CVD、貼り合わせなどの方法を用いることにより形成可能である。
【0089】
[第2の光電変換素子]
つぎに、本発明のタンデム型光電変換素子における前記第2の光電変換素子の各構成要素について、図1及び図3を参照しながら例を挙げて説明する。図3は、図1のタンデム型光電変換素子1000における第2の光電変換素子1200のみを図示した断面図である。図3において、図1と同一の構成要素は、同一の符号で示している。前述のとおり、図1に示す第2の光電変換素子1200は、光入射側から、第2の電極1150、シリコン含有層1210、及び第3の電極1220が前記順序で積層されて構成されている。シリコン含有層1210は、図1では単層として図示しているが、これに限定されず、例えば、アモルファスシリコン層と単結晶シリコン層との積層体であってもよい。図3におけるシリコン含有層1210は、図示のとおり、光入射側からアモルファスシリコン層(i/n)1211、n型単結晶シリコン層1212、及びアモルファスシリコン層(i/p)1213が前記順序で積層されて構成されている。また、第3の電極1220は、図1では単層として図示しているが、これに限定されず、例えば、積層体であってもよい。図3における第3の電極1220は、図示のとおり、光入射側からIWO層1221とAg層1222とが前記順序で積層されて構成されている。図1及び3に示した第2の光電変換素子1200において、隣接する層同士は、他の構成要素を介さずに直接積層されていてもよいが、後述するように、間に他の構成要素を介して積層されていてもよい。
【0090】
図1及び3における第2の光電変換素子(下部太陽電池)1200は、前述のとおりシリコン太陽電池である。本発明では、前記第2の光電変換素子はシリコン太陽電池が好ましいが、前述のとおり、シリコン太陽電池のみに限定されない。
【0091】
シリコン含有層1210は、シリコンを含み、又はシリコンを主成分として形成されている。前記シリコンはアモルファスシリコンでも結晶シリコンでもよい。また、シリコン含有層1210は、単層でも積層体でもよく、積層体の場合は、例えば、アモルファスシリコンと結晶シリコンとの積層体でもよく、例えば、図3に示した構造等であってもよい。前記結晶シリコンは、特に限定されないが、例えば、シリコンインゴットをスライスカットすることで得られるシリコンウエハ、そのシリコンウエハを研磨して得られるシリコンウエハ等を用いることができる。前記ウエハは単結晶であっても多結晶であってもよいが、単結晶が好ましい。さらに基板の上に作製された非晶質シリコンを結晶化させたものを使用することができる。さらに、CVD法、スパッタ法等を用いてシリコンを成膜時に結晶化させたものも利用できる。
【0092】
シリコン含有層1210に含まれるシリコンとして、例えば、p型シリコン半導体を用いることができる。前記p型シリコン半導体は、特に限定されないが、例えば、ホウ素、ガリウム等を添加物としてドープしたものを用いることができる。シリコンに含まれるこれらの添加物濃度は、特に限定されないが、例えば、1012~1021atom/cm以下が好ましく、1013~1020atom/cm以下がより好ましい。前記添加物濃度の下限値は特に限定されないが、例えば、0atom/cmを超える数値である。前記シリコンの抵抗率は、特に限定されないが、半導体中における電荷の移動及び空乏層の広がりの観点から、0.0001~1000Ωcmが好ましく、0.001~100Ωcm以上がより好ましい。
【0093】
シリコン含有層1210に含まれるシリコンとして、例えば、n型シリコン半導体を用いることができる。前記n型シリコン半導体は、特に限定されないが、例えば、リン、窒素、砒素等を添加物としてドープしたシリコンを使用してもよい。この場合、前記シリコン半導体層の厚みは、特に限定されないが、50μm以上が好ましい。また、前記厚みは、1000μm以下が好ましく、700μm以下がより好ましい。
【0094】
シリコン含有層1210は、結晶シリコン層の両面にアモルファスシリコン層を形成した構造であることが好ましい。この場合の単結晶シリコン層はn型が好ましい。また、この場合の前記アモルファスシリコン層は、実質的に真性(i型)なアモルファスシリコンを主成分とする材料で構成されることが好ましい。前記「実質的に真性」という意味は、導電型の不純物を含まない完全に真性である場合だけでなく、アモルファスシリコンの層が真性層として機能し得る範囲で微量のp型不純物またはn型不純物を含むことも包む。その場合のp型ドーパントとしては、特に限定されないが、例えばホウ素(B)が挙げられ、n型ドーパントとしては、例えばリン(P)が挙げられる。シリコン含有層1210は、例えば、前述のとおり、図3に示したように光入射側からアモルファスシリコン層(i/n)1211、n型単結晶シリコン層1212、及びアモルファスシリコン層(i/p)1213が前記順序で積層された構成でもよい。
【0095】
第2の光電変換素子1200においては、シリコン酸化膜が形成されていても良い。前記シリコン酸化膜の厚みは、特に限定されないが、1~14nmが好ましく、2~10nm以上がより好ましい。前記シリコン酸化膜は、例えば、シリコン含有層1210の電極側表面の全面を覆う形であってもよく、島状に覆う形であってもよい。前記シリコン酸化膜の形成方法としては、特に限定されないが、例えば、シリコン基板を酸化性の液体に浸漬させて酸化処理することにより基板の表面に極薄の酸化膜を形成する方法が挙げられる。前記酸化性の液体としては、特に限定されないが、硝酸、過酸化水素水、塩酸、オゾン溶解水、過塩素酸、アンモニア及び過酸化水素水の混合液、塩酸及び過酸化水素水の混合液、硫酸及び過酸化水素水の混合液から選択される少なくとも1種であることが好ましい。また、前記酸化膜の形成方法においては、前記酸化性の液体による処理後に不活性ガス中で熱処理することが好ましい。前記熱処理の加熱温度は、特に限定されないが、300℃以上が好ましく、500℃以上がより好ましい。
【0096】
第2の光電変換素子1200において、第2の電極1150は、第1の光電変換素子1100と共通である。第2の電極1150の材質、形成方法等は特に限定されないが、例えば前述のとおりである。
【0097】
第2の光電変換素子1200において、第2の電極1220の材質、形成方法等は、特に限定されず、例えば、一般的なシリコン太陽電池と同様又はそれに準じてもよい。p型をベースとするシリコン太陽電池における電極形成方法は、特に限定されないが、例えば、セル全面上のグリッド電極及び裏面電極をそれぞれスクリーン印刷で形成してもよい。セル全面のグリッド電極としては、例えば、薄いフィンガーラインと、フィンガーラインと直行に交差するバスバーを含むH型パターンをスクリーン印刷にて形成する。電極形成に用いられる導電性ペーストとしては、例えば、銀、銅、ニッケル、アルミニウムから作られるペースト、あるいは半田が好適であり、金属は単独でも混合でも構わない。
【0098】
[タンデム型光電変換素子の封止]
本発明のタンデム型光電変換素子は、水や酸素から本発明のタンデム型光電変換素子を守るために封止することが好ましい。封止の構造は特に限定されないが、例えば、一般的な光電変換素子と同様でもよく、具体的には、例えば、本発明の光電変換素子の外周部のみに封止材を塗布してガラスやフィルムで覆ってもよく、本発明の光電変換素子の全面に封止材を塗布してガラスやフィルムで覆ってもよく、本発明の光電変換素子の全面に封止材を塗布したのみでもよい。
【0099】
本発明のタンデム型光電変換素子を封止する封止部材の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エポキシ樹脂やアクリル樹脂を用い、硬化させることが好ましいが、硬化していなくても、一部だけが硬化していても構わない。
【0100】
前記エポキシ樹脂は、特に限定されないが、例えば、水分散系、無溶剤系、固体系、加熱硬化型、硬化剤混合型、紫外線硬化型などが挙げられ、これらの中でも熱硬化型及び紫外線硬化型が好ましく、紫外線硬化型がより好ましい。なお、紫外線硬化型であっても、加熱を行うことは可能であり、紫外線硬化した後であっても加熱を行うことが好ましい。エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ノボラック型、環状脂肪族型、長鎖脂肪族型、グリシジルアミン型、グリシジルエーテル型、グリシジルエステル型などが挙げられ、これらは、単独で使用しても、2種以上の併用であってもよい。また、エポキシ樹脂には、必要に応じて硬化剤や各種添加剤を混合することが好ましい。既に市販されているエポキシ樹脂組成物を、本発明において使用することができる。中でも、太陽電池や有機EL素子用途向けに開発、市販されているエポキシ樹脂組成物もあり、本発明において特に有効に使用できる。市販されているエポキシ樹脂組成物としては、例えば、TB3118、TB3114、TB3124、TB3125F(株式会社スリーボンド製)、WorldRock5910、WorldRock5920、WorldRock8723(協立化学産業株式会社製)、WB90US(P)、WB90US-HV(モレスコ社製)等が挙げられる。
【0101】
前記アクリル樹脂としては、特に限定されないが、例えば、太陽電池や有機EL素子用途向けに開発、市販されているものを有効に使用できる。市販されているアクリル樹脂組成物としては、例えば、TB3035B、TB3035C(株式会社スリーボンド製)等が挙げられる。
【0102】
前記硬化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アミン系、酸無水物系、ポリアミド系、その他の硬化剤などが挙げられる。アミン系硬化剤としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの脂肪族ポリアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族ポリアミンなどが挙げられ、酸無水物系硬化剤としては、無水フタル酸、テトラ及びヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ピロメリット酸、無水ヘット酸、ドデセニル無水コハク酸などが挙げられる。その他の硬化剤としては、イミダゾール類、ポリメルカプタンなどが挙げられる。これらは単独で使用しても、2種以上の併用であってもよい。
【0103】
前記添加剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、充填材(フィラー)、ギャップ剤、重合開始剤、乾燥剤(吸湿剤)、硬化促進剤、カップリング剤、可とう化剤、着色剤、難燃助剤、酸化防止剤、有機溶剤などが挙げられる。これらの中でも、充填材、ギャップ剤、硬化促進剤、重合開始剤、乾燥剤(吸湿剤)が好ましく、充填材及び重合開始剤がより好ましい。添加剤として充填材を含有することにより、水分や酸素の浸入を抑制し、更には硬化時の体積収縮の低減、硬化時あるいは加熱時のアウトガス量の低減、機械的強度の向上、熱伝導性や流動性の制御などの効果を得ることができる。そのため、添加剤として充填材を含むことは、様々な環境で安定した出力を維持する上で非常に有効である。
【0104】
また、光電変換素子の出力特性やその耐久性に関しては、侵入する水分や酸素の影響だけでなく、封止部材の硬化時あるいは加熱時に発生するアウトガスの影響が無視できない。特に、加熱時に発生するアウトガスの影響は、高温環境保管における出力特性に大きな影響を及ぼす。封止部材に充填材やギャップ剤、乾燥剤を含有させることにより、これら自身が水分や酸素の浸入を抑制できるほか、封止部材の使用量を低減できることにより、アウトガスを低減させる効果を得ることができる。封止部材に充填材やギャップ剤、乾燥剤を含有させることは、硬化時だけでなく、光電変換素子を高温環境で保存する際にも有効である。
【0105】
前記充填材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結晶性あるいは不定形のシリカ、タルクなどのケイ酸塩鉱物、アルミナ、窒化アルミ、窒化珪素、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム等の無機系充填材などが挙げられる。これらの中でも、特にハイドロタルサイトが好ましい。また、これらは、単独で使用しても、2種以上の併用であってもよい。
【0106】
前記充填材の平均一次粒径は、特に限定されないが、0.1μm以上10μm以下が好ましく、1μm以上5μm以下がより好ましい。前記充填材の平均一次粒径が上記の好ましい範囲内であると、水分や酸素の侵入を抑制する効果を十分に得ることができ、粘度が適正となり、基板との密着性や脱泡性が向上し、封止部の幅の制御や作業性に対しても有効である。
【0107】
前記充填材の含有量としては、封止部材全体(100質量部)に対し、10質量部以上90質量部以下が好ましく、20質量部以上70質量部以下がより好ましい。前記充填材の含有量が上記の好ましい範囲内であることにより、水分や酸素の浸入抑制効果が十分に得られ、粘度も適正となり、密着性や作業性も良好となる。
【0108】
前記ギャップ剤は、ギャップ制御剤あるいはスペーサー剤とも称される。添加剤としてギャップ剤を含むことにより、封止部のギャップを制御することが可能になる。例えば、第1の基板又は第1の電極の上に、封止部材を付与し、その上に第2の基板を載せて封止を行う場合、封止部材がギャップ剤を混合していることにより、封止部のギャップがギャップ剤のサイズに揃うため、容易に封止部のギャップを制御することができる。
【0109】
前記ギャップ剤としては、特に限定されないが、例えば、粒状でかつ粒径が均一であり、耐溶剤性や耐熱性が高いものが好ましく、目的に応じて適宜選択することができる。前記ギャップ剤としては、エポキシ樹脂と親和性が高く、粒子形状が球形であるものが好ましい。具体的には、ガラスビーズ、シリカ微粒子、有機樹脂微粒子などが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。ギャップ剤の粒径としては、設定する封止部のギャップに合わせて選択可能であるが、1μm以上100μm以下が好ましく、5μm以上50μm以下がより好ましい。
【0110】
前記重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、熱や光を用いて重合を開始させる重合開始剤が挙げられ、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱重合開始剤、光重合開始剤などが挙げられる。熱重合開始剤は、加熱によってラジカルやカチオンなどの活性種を発生する化合物であり、2,2’-アゾビスブチロニトリル(AIBN)のようなアゾ化合物や、過酸化ベンゾイル(BPO)などの過酸化物などが挙げられる。熱カチオン重合開始剤としては、ベンゼンスルホン酸エステルやアルキルスルホニウム塩等が用いられる。光重合開始剤は、エポキシ樹脂の場合光カチオン重合開始剤が好ましく用いられる。エポキシ樹脂に光カチオン重合開始剤を混合し、光照射を行うと光カチオン重合開始剤が分解して、酸を発生し、酸がエポキシ樹脂の重合を引き起こし、硬化反応が進行する。光カチオン重合開始剤は、硬化時の体積収縮が少なく、酸素阻害を受けず、貯蔵安定性が高いといった効果を有する。
【0111】
前記光カチオン重合開始剤としては、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタセロン化合物、シラノール・アルミニウム錯体などが挙げられる。また、重合開始剤として、光を照射することにより酸を発生する機能を有する光酸発生剤も使用できる。光酸発生剤は、カチオン重合を開始する酸として作用し、カチオン部とアニオン部からなるイオン性のスルホニウム塩系やヨードニウム塩系などのオニウム塩などが挙げられる。これらは、単独で使用しても、2種以上の併用であってもよい。
【0112】
前記重合開始剤の添加量としては、特に限定されず、使用する材料によって異なる場合があるが、封止部材全体(100質量部)に対し、0.5質量部以上10質量部以下が好ましく、1質量部以上5質量部以下がより好ましい。添加量が上記の好ましい範囲内であることにより、硬化が適正に進み、未硬化物の残存を低減することができ、またアウトガスが過剰になるのを防止できる。
【0113】
前記乾燥剤(吸湿剤とも称される)は、水分を物理的あるいは化学的に吸着、吸湿する機能を有する材料であり、封止部材に含有させることにより、耐湿性を更に高め、アウトガスの影響を低減できる。前記乾燥剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、粒子状であるものが好ましく、例えば、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、シリカゲル、モレキュラーシーブ、ゼオライトなどの無機吸水材料が挙げられる。これらの中でも、吸湿量が多いゼオライトが好ましい。これらは、単独で使用しても、2種以上の併用であってもよい。
【0114】
前記硬化促進剤(硬化触媒とも称される)は、硬化速度を速める材料であり、主に熱硬化型のエポキシ樹脂に用いられる。前記硬化促進剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、DBU(1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7)やDBN(1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)-ノネン-5)等の三級アミンあるいは三級アミン塩、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾールや2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール系、トリフェニルホスフィンやテトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等のホスフィンあるいはホスホニウム塩などが挙げられる。これらは、単独で使用しても、2種以上の併用であってもよい。
【0115】
前記カップリング剤は、分子結合力を高める効果を有する材料であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シランカップリング剤などが挙げられる。具体的には、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N-(2-(ビニルベンジルアミノ)エチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤などが挙げられる。これらは、単独で使用しても、2種以上の併用であってもよい。
【0116】
本発明においては、例えば、シート状接着剤を用いることができる。シート状接着剤とは、例えば、シート上に予め樹脂層を形成したもので、シートにはガラスやガスバリア性の高いフィルム等を用いることができる。また、封止樹脂のみでシートを形成していてもよい。シート状接着剤を、封止フィルム上に貼り付けることも可能である。封止フィルム上に、中空部を設けた構造にしてからデバイスと貼り合せることも可能である。
【0117】
前記封止フィルムを用いて封止する場合、光電変換デバイスを挟むように支持体と対向して配置される。封止フィルムの基材としては、その形状、構造、大きさ、種類については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。封止フィルムは、基材の表面に水分や酸素の通過を防ぐバリア層を形成しており、基材の一方の面だけでも両面に形成されていてもよい。
【0118】
前記バリア層は、例えば、金属酸化物、金属、高分子と金属アルコキシドより形成された混合物などを主成分とする材質で構成されていてもよい。前記金属酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、アルミニウム、などを挙げることができ、前記高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロースなどを挙げることができ、前記金属アルコキシドとしては、例えば、テトラエトキシシラン、トリイソプロポキシアルミニウム、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどを挙げることができる。
【0119】
前記バリア層は、例えば、透明であっても不透明であっても構わない。また、バリア層は上記材料からの組合せによる単層であっても、複数の積層構造であっても構わない。バリア層の形成方法は、既知の方法を用いることができ、スパッタ法などの真空製膜、ディッピング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法、グラビア印刷法などの塗布方法を使用することができる。
【0120】
本発明のタンデム型光電変換素子では、例えば、シリコンウエハを物理的に保護する目的で、支持体と充填剤を用いて封止を行ってもよい。前記支持体は、特に限定されないが、ガラス、プラスチックなど透明で強度を有するものが好ましい。前記充填剤も特に限定されないが、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、ポリオレフィンなどが好ましい。また、充填剤にUVカット機能を有する化合物を含有しても構わない。封止の形態も特に限定されないが、例えば、シリコンを充填剤で包含し、更に物理的強度を有するガラスなどで挟み込む形状が好ましい。支持体は光が太陽電池に届くように、一方は透明であることが好ましく、不透明側の支持体は光を反射できるように、白色であることが好ましい。
【0121】
[配線]
本発明の光電変換素子(例えば太陽電池)は、光によって発生した電流を効率的に取り出すため、電極、及び裏面電極にリード線(配線)を接続することが好ましい。リード線は、例えば、前記第1の電極及び前記第2の電極と、はんだ、銀ペースト、グラファイトのような導電性材料を用いて接続される。導電性材料は単独でも2種以上の混合または積層構造で用いても構わない。また、リード線を取り付けた部位は、物理的な保護の観点から、アクリル系樹脂やエポキシ系樹脂で覆っても構わない。
【0122】
リード線は、電気回路における電源や電子部品などを電気的に接続するための電線の総称であり、例えば、ビニール線、エナメル線などを挙げることができる。
【0123】
[アプリケーション]
本発明の光電変換素子の用途及び使用方法は、特に限定されず、例えば、一般的な光電変換素子(例えば一般的な太陽電池)と同様の用途に広く用いることができる。本発明の光電変換素子(例えば太陽電池)は、例えば、発生した電流を制御する回路基盤等と組み合わせることにより電源装置へ応用することができる。電源装置を利用している機器類としては、例えば、電子卓上計算機やソーラー電波腕時計などが挙げられる。また、携帯電話、電子ペーパー、温湿度計等に本発明の太陽電池を電源装置として適用することも可能である。また、充電式や乾電池式の電気器具の連続使用時間を延ばすための補助電源や、二次電池と組み合わせることによって夜間使用などにも応用可能である。また、電池交換や電源配線等が不要な自立型電源としても利用可能である。
【実施例0124】
以下、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0125】
[実施例1]
以下のようにして、本発明の光電変換素子であるタンデム型光電変換素子を作製した。
【0126】
まず、図3に示す構成を有するシリコン太陽電池1200を準備した。このシリコン太陽電池1200に対し、蒸留水、アセトン、2-プロパノールの順序で、それぞれに15分間ずつ浸漬して超音波洗浄を行った。次に、シリコン太陽電池1200における光が入射する側のIWO(第2の電極1150)上に、下記化学式3PATATで示される化合物を溶解したDMF溶液(0.1mM)を静置し、スピンコート(3,000rpm、30秒)を用いて製膜し、130℃、10分間加熱処理を行って正孔輸送層1140を形成した。次に、ヨウ化セシウム(0.0974g)、ヨウ化ホルムアミジン(0.9415g)、臭化メチルアミン(0.1848g)、ヨウ化鉛(2.6450g)、及び臭化鉛(0.6469g)をDMF(4.0mL)とジメチルスルホキシド(DMSO、1.0mL)との混合溶媒に溶解した溶液を、正孔輸送層1140上にスピンコートを用いて製膜した。スピンコートは1000rpmで10秒、次いで6000rpmで20秒行い、6000rpmに回転してから3秒後にクロロベンゼン(0.3mL)を滴下した。その後、150℃で10分加熱することにより、ペロブスカイト層(光電変換層)1130を得た。これを室温に冷却後、電子輸送層1120としてC60を20nm真空蒸着にて形成した。その電子輸送層1120の上に、原子層堆積法にて酸化スズを20nm形成した。この上にIZOをスパッタリングで200nm形成し、グリッド電極としてAgを真空蒸着で100nm形成し、フッ化マグネシウムを100nm真空蒸着で形成して、これらの層の積層体である第1の電極1110を形成した。以上のようにして、本実施例のタンデム型光電変換素子を作製(製造)した。
【0127】
【化3PATAT】
【0128】
なお、前記化学式3PATATで表される化合物は、以下のようにして合成した。
【0129】
<3-PATATの合成例>
まず、下記化学式(IV)で表される化合物を下記手順で合成した。すなわち、まず、オキシインドール(10.7g、80.55mmol)及びオキシ塩化リン(50mL)をフラスコに入れ、アルゴン雰囲気下、100℃で14時間加熱攪拌した。加熱攪拌後の反応液を室温まで冷却し、それを氷水に注ぎ込んで反応を停止した。その後、水酸化ナトリウム水溶液で中和し、析出物をろ過した。この析出物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタンのみ)で精製し、更にアセトンで再結晶して淡黄色結晶の化合物(IV)を5.8g(11.11mmol、収率41%)得た。
【0130】
【化IV】
【0131】
前記化合物(IV)(1.73g)、DMF(50ml)を三口フラスコに入れ、アルゴンガス気流下、室温で攪拌しながら水素化ナトリウム(360mg)をゆっくりと加えた。次いで、(3-ブロモプロピル)ホスホン酸ジエチル(2.9mL)を滴下し、滴下終了後、70℃で加熱攪拌した。加熱攪拌を36時間続けた後、反応溶液を水中に注ぎ込んで反応を停止し、ジクロロメタンで3回抽出した。抽出した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル/メタノール=1/0~1/1(体積比))で生成し、下記化学式(V)で表される化合物を2.17g得た。収率は、原料である化合物(IV)を基準として49%であった。
【0132】
【化V】
【0133】
前記化合物(V)(200mg)、ジクロロメタン(6mL)を三口フラスコに入れ、室温で攪拌しながら、アルゴンガス気流下、臭化トリメチルシラン(0.30mL)をゆっくり加えた。14時間後、反応溶液を減圧下濃縮し、固体残渣物を得た。この結晶をジクロロメタンとメタノールの混合溶媒(5/1、体積比)で再沈殿を繰り返し、ジクロロメタンで洗浄し、3PATATを125mg得た。収率は、原料の化合物(V)を基準として77%であった。この3PATATについて、1HNMR、13CNMR、31PNMR及びHRMS(MALDI)を測定した。それらの測定結果を以下に示す。また、1HNMR、13CNMR及び31PNMRについては、図4~6にチャートを示す。
【0134】
1HNMR(400MHz,DMSO-d6):δ8.30-8.28(d,J=8.0Hz,3H),7.91-7.89(d,J=8.0Hz,3H),7.51-7.47(t,J=7.2Hz,3H),7.41-7.37(t,J=7.6Hz,3H),5.08-5.05(t,J=6.8Hz,6H),1.95-1.85(m,6H),1.13-1.04(m,6H).
13CNMR(101MHz,DMSO-d6):δ141.0,137.8,123.2,122.5,121.5,120.4,111.4,103.2,46.8,46.6,25.2,23.8,23.0,22.9.
31PNMR(162MHz,DMSO-d6):δ24.75.
HRMS(MALDI)(m/z):[M]+calcd.forC33H36N3O9P3,711.1664;found,711.1653.
【0135】
[太陽電池特性の評価]
実施例1で作製したタンデム光電変換素子の光電変換特性は、JISC8913:1998のシリコン結晶系太陽電池セルの出力測定方法に準拠した方法で測定した。結果を表1に示す。AM1.5G相当のエアマスフィルターを組み合わせたソーラーシュミレーター(分光計器社製SMO-250III型)に、2次基準Si太陽電池で100mW/cmの光量に調整して測定用光源とし、ペロブスカイト型太陽電池セルの試験サンプル(実施例1で作製した封止デバイス)に光照射をしながら、ソースメーター(KeithleyInstrumentsInc.製、2400型汎用ソースメーター)を使用してI-Vカーブ特性を測定し、I-Vカーブ特性測定から得られた短絡電流(Isc)、開放電圧(Voc)、フィルファクター(FF)、そして、短絡電流密度(Jsc)、及び光電変換効率(PCE)を求めた。
【0136】
式1:短絡電流密度(Jsc;mA/cm)=Isc(mA)/有効受光面S(cm2
式2:光電変換効率(PCE;%)=Voc(V)×Jsc(mA/cm2)×FF×100/100(mW/cm2
【0137】
[実施例2]
実施例1における化学式3PATATで示される化合物を溶解したDMF溶液(0.1mM)を、化学式3PATATで示される化合物(0.1mM)、マレイン酸モノアミド(1.2mM)を溶解したDMF溶液に変更した以外は、実施例1と同様にしてタンデム型光電変換素子を作製し、デバイスの太陽電池特性を評価した。結果を表1に示す。
【0138】
[実施例3]
実施例1における化学式3PATATで示される化合物を溶解したDMF溶液(0.1mM)を、化学式3PATATで示される化合物(0.1mM)、4-ホスホノブチル酸(1.2mM)を溶解したDMF溶液に変更した以外は、実施例1と同様にしてタンデム型光電変換素子を作製し、デバイスの太陽電池特性を評価した。結果を表1に示す。
【0139】
[実施例4]
実施例1における化学式3PATATで示される化合物を溶解したDMF溶液(0.1mM)を、化学式3PATATで示される化合物(0.1mM)、4-ホスホノブチル酸(0.4mM)を溶解したDMF溶液に変更した以外は、実施例1と同様にしてタンデム型光電変換素子を作製し、デバイスの太陽電池特性を評価した。結果を表1に示す。
【0140】
[実施例5]
実施例1における化学式3PATATで示される化合物を溶解したDMF溶液(0.1mM)を、化学式3PATATで示される化合物(0.1mM)、5-アミノ吉草酸よう化水素酸塩(1.6mM)を溶解したDMF溶液に変更した以外は、実施例1と同様にしてタンデム型光電変換素子を作製し、デバイスの太陽電池特性を評価した。結果を表1に示す。
【0141】
[比較例1]
実施例1における化学式3PATATで示される化合物を溶解したDMF溶液(0.1mM)を、下記化学式(VI)で示される化合物(0.1mM)を溶解したDMF溶液に変更した以外は、実施例1と同様にしてタンデム型光電変換素子を作製し、デバイスの太陽電池特性を評価した。結果を表1に示す。
【0142】
【表1】
【0143】
前記表1より、本実施例で得られた本発明のタンデム型光電変換素子は、実施例1~4と比較例1の比較から、初期特性が高いだけでなく、高い耐久性を有していることが確認できた。
【0144】
本発明のタンデム型光電変換素子は、前述のとおり光電変換素子が良好である。具体的には、例えば、本実施例で確認できたとおり、
本発明のタンデム型光電変換素子の構成を用いることにより、良好な光電変換特性と良好な耐久性とを獲得できる。
【0145】
以上、実施形態及び実施例を用いて本発明を説明した。ただし、本発明は、以上において説明した実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、必要に応じて、任意にかつ適宜に組み合わせ、変更し、又は選択して採用できるものである。
【0146】
<付記>
上記実施形態及び実施例の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載し得るが、以下には限定されない。

(付記1)
第1の光電変換素子と第2の光電変換素子とが積層されたタンデム型光電変換素子であり、
前記第1の光電変換素子と前記第2の光電変換素子とが光入射側から前記順序で積層され、
前記第2の光電変換素子は、シリコンを含み、
前記第1の光電変換素子は、光入射側から第1の電極、電子輸送層、光電変換層、正孔輸送層、及び第2の電極が前記順序で積層されており、
前記光電変換層は、ペロブスカイト構造を含み、
前記正孔輸送層が下記化学式(I)で表される化合物を含むことを特徴とするタンデム型光電変換素子。
【化I】
前記化学式(I)において、
Arは、芳香環を含む構造であり、前記芳香環を構成する原子中にヘテロ原子を含んでいても含んでいなくてもよく、
Arは、-L-X以外の置換基を有していても有していなくてもよく、
-L-Xは、1つでも複数でもよく、複数の場合は、各L及び各Xは、互いに同一であっても異なっていてもよく、
各Lは、ArとXとを結合する原子団であるか、又は共有結合であり、
各Xは、それぞれ、前記第1の電極との間で電荷を授受可能な基である。
(付記2)
前記化学式(I)で表される化合物が、前記置換基L-Xを3つ以上有することを特徴とする付記1記載のタンデム型光電変換素子。
(付記3)
前記化学式(I)において、-L-Xの数が1~4の範囲である付記1又は2記載のタンデム型光電変換素子。
(付記4)
前記化学式(I)において、各Xが、それぞれ、ホスホン酸基(-P=O(OH))、カルボキシ基(-COOH)、スルホ基(-SOH)、ボロン酸基(-B(OH))、トリハロゲン化シリル基(-SiX、ただしXはハロ基)、又はトリアルコキシシリル基(-Si(OR)、ただしRはアルキル基)である付記1から3のいずれかに記載のタンデム型光電変換素子。
(付記5)
前記化学式(I)において、前記Arが、下記化学式(I-1)で表される付記1から4のいずれか一項に記載のタンデム型光電変換素子。
【化I-1】
前記化学式(I-1)中、
Ar11は、環状構造を含む原子団であり、前記環状構造は、芳香環でも非芳香環でもよく、単環でも縮合環でもスピロ環でもよく、環を構成する原子中にヘテロ原子を含んでいても含んでいなくてもよく、
Ar12は、芳香環であり、環を構成する原子中にヘテロ原子を含んでいても含んでいなくてもよく、
Ar12は、1つ以上の原子をAr11と共有してAr11と一体化していてもよく、
Ar12は、1つでも複数でもよく、複数の場合は互いに同一でも異なっていてもよい。
Ar12の数は特に限定されないが、例えば、1~4の範囲でもよい。
(付記6)
前記化学式(I-1)において、前記Ar11が、下記化学式(a1)~(a10)のいずれかで表される付記1から5のいずれかに記載のタンデム型光電変換素子。
【化a1-a10】
(付記7)
前記化学式(I-1)において、前記各Ar12が、それぞれ下記化学式(b)で表される付記1から6のいずれかに記載のタンデム型光電変換素子。
【化b】
前記化学式(b)において、
炭素原子C及びCは、前記化学式(I-1)中の前記Ar11における前記環状構造を構成する原子の一部を兼ねており、
前記Rは、水素原子、前記化学式(I)中のX、又は置換基であり、前記置換基は水素原子を含んでいても含んでいなくてもよく、前記置換基中の水素原子の少なくとも一つは、前記化学式(I)中のXで置換されていてもよく、
前記各R11は、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子若しくは置換基であるか、又は、隣接する2つのR11は、それらが結合するベンゼン環と一体となって縮合環を形成していてもよく、
前記各R11は、さらに置換基を有していても有していなくてもよい。
(付記8)
前記化学式(b)が、下記化学式(b1)~(b7)のいずれかで表される付記7に記載のタンデム型光電変換素子。
【化b1-b7】
前記化学式(b1)~(b7)において、C、C及びRは、それぞれ、前記化学式(b)と同じである。
(付記9)
前記化学式(I)で表される化合物が、下記化学式A-1~A-23のいずれかで表される化合物である付記1から8のいずれかに記載のタンデム型光電変換素子。
【化A1A4】
【化A5A8】
【化A9A12】
【化A13A16】
【化A17A20】
【化A21A23】
前記化学式A-1~A-23において、前記各Rは、それぞれ、水素原子であるか、前記化学式(I)中のXであるか、又は、前記化学式(I)中のXでさらに置換された置換基であり、互いに同一でも異なっていてもよく、前記各Rのうち少なくとも1つは、前記化学式(I)中のXであるか、又は、前記化学式(I)中のXでさらに置換された置換基であり、前記Rは、置換基であり、1つでも複数でも存在しなくてもよく、複数の場合は、各Rは、互いに同一でも異なっていてもよい。
(付記10)
前記化学式(I)で表される化合物が、下記化学式4PATAT、1-legged-3PATAT、1-legged-3PATAT-H、2-legged-3PATAT、4PATTI-C3、4PATTI-C4、又は3PATATで表される化合物である付記1から9のいずれかに記載のタンデム型光電変換素子。
【化4PATAT】
【化3PATAT1】
【化3PATATH】
【化3PATAT2】
【化4PATTI-C3】
【化4PATTI-C4】
【化3PATAT】
(付記11)
前記正孔輸送層が、前記化学式(I)で表されるに加えて、下記化学式(II)で表される化合物を含むことを特徴とする付記1から10のいずれかに記載のタンデム型光電変換素子。

-L-X (II)

前記化学式(II)において、
は、アルコキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、ジヒドロキシホスホリル基、ジアルキルホスホリル基、ヒドロキシスルホニル基、置換又は無置換アミノ基、置換又は無置換アミノカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アミノカルボニルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アミノスルホニル基、窒素含有ヘテロ環基、及びからなる群から選択させる少なくとも一つの置換基を含む原子団であり、
各Lは、AとXとを結合する原子団であるか、又は共有結合であり、
は、それぞれ、前記第1の電極との間で電荷を授受可能な基である。
(付記12)
前記第1の光電変換素子における前記電子輸送層が、金属酸化物を含むことを特徴とする付記1から11のいずれかに記載のタンデム型光電変換素子。
(付記13)
前記金属酸化物が酸化スズであることを特徴とする付記12記載のタンデム型光電変換素子。
(付記14)
前記第1の光電変換素子がペロブスカイト太陽電池であり、前記第2の光電変換素子がシリコン太陽電池である付記1から13のいずれか位に記載のタンデム型光電変換素子。
(付記15)
太陽電池である付記1から14のいずれかに記載のタンデム型光電変換素子。
【産業上の利用可能性】
【0147】
以上、説明したとおり、本発明によれば、光電変換特性が良好なタンデム型光電変換素子を提供することができる。本発明によれば、例えば、優れた光電変換特性を示し、かつペロブスカイト層の均質性が高く、歩留まりの高い光電変換素子を提供することも可能である。本発明の光電変換素子は、例えば、太陽電池として有用である。本発明の光電変換素子の用途及び使用方法は特に限定されず、例えば、一般的な光電変換素子(例えば、一般的な太陽電池)と同様の用途及び使用方法で、広範な分野に適用可能である。
【符号の説明】
【0148】
1000 タンデム型光電変換素子
1100 第1の光電変換素子
1110 第1の電極
1120 電子輸送層
1130 光電変換層
1140 正孔輸送層
1150 第2の電極
1200 第2の光電変換素子
1210 シリコン含有層
1211 アモルファスシリコン層(i/n)
1212 n型単結晶シリコン層
1213 アモルファスシリコン層(i/p)
1220 第3の電極
1221 IWO層
1222 Ag層

図1
図2
図3
図4
図5
図6