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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125932
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】インダクタ内蔵基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20240911BHJP
   H05K 1/16 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
H05K3/46 Q
H05K1/16 B
H05K3/46 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034076
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】籠橋 進
【テーマコード(参考)】
4E351
5E316
【Fターム(参考)】
4E351AA03
4E351AA04
4E351AA05
4E351BB09
4E351BB11
4E351BB14
4E351BB24
4E351BB33
4E351CC03
4E351CC06
4E351DD04
4E351GG20
5E316AA04
5E316AA12
5E316AA32
5E316AA43
5E316CC09
5E316CC10
5E316CC13
5E316CC32
5E316DD17
5E316DD24
5E316DD33
5E316DD47
5E316EE33
5E316FF07
5E316FF10
5E316FF13
5E316FF14
5E316GG08
5E316GG15
5E316GG17
5E316GG22
5E316GG28
5E316HH26
5E316HH33
5E316JJ14
(57)【要約】
【課題】導体層下の絶縁層に無機フィラーなどの無機粒子が露出することを防止し、精度よく導体パッドが形成され、コア基板の仕様によることなく、ビルドアップ部に含まれる微細な配線のファイン化が実現されたインダクタ内蔵基板を提供すること。
【解決手段】コア基板貫通スルーホールと磁性体貫通スルーホールとを有するコア基板と、前記コア基板の上に形成され、無機粒子と絶縁性樹脂とを含む最上の絶縁層と、前記最上の絶縁層の上面に形成され、スパッタ膜からなるシード層と、当該シード層上に形成された電解めっき層からなる最上の導体層と、を備えたインダクタ内蔵基板であって、前記最上の絶縁層の上面は、前記絶縁性樹脂のみで形成されている。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア基板貫通スルーホールと磁性体貫通スルーホールとを有するコア基板と、
前記コア基板の上に形成され、無機粒子と絶縁性樹脂とを含む最上の絶縁層と、
前記最上の絶縁層の上面に形成され、スパッタ膜からなるシード層と、当該シード層上に形成された電解めっき層からなる最上の導体層と、を備えたインダクタ内蔵基板であって、
前記最上の絶縁層の上面は、前記絶縁性樹脂のみで形成されている。
【請求項2】
請求項1に記載のインダクタ内蔵基板において、
さらに、前記最上の絶縁層を貫通するビアと、前記ビアに形成されるビア導体と、を有し、前記ビアの内壁面は、前記絶縁性樹脂と前記無機粒子で形成されている。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかに記載のインダクタ内蔵基板において、
さらに、前記最上の絶縁層の下に形成され、無機粒子と絶縁性樹脂とを含む内層の絶縁層を有し、前記最上の絶縁層に含まれる無機粒子の平均粒径が前記内層の絶縁層に含まれる無機粒子の平均粒径より小さい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インダクタ内蔵基板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、インダクタンスの大きなインダクタ内蔵基板を開示する。特許文献1に開示されたインダクタ内蔵基板は、開口と第1貫通孔が形成されたコア基板と、前記開口内に充填され、第2貫通孔を有する磁性体樹脂と、前記第1貫通孔に形成された金属膜から成る第1スルーホール導体と、前記第2貫通孔に形成された金属膜から成る第2スルーホール導体とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-178004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたインダクタ内蔵基板10は、コア基板30の第1面F上に上側のビルドアップ層450Fと、コア基板30の第2面S上に下側のビルドアップ層450Sとを有する。さらに、インダクタ内蔵基板10は、上側のビルドアップ層450F上に開口471Fを有するソルダーレジスト層470Fと、下側のビルドアップ層450S上に開口471Sを有するソルダーレジスト層470Sとを有する。上側のビルドアップ層450Fは、コア基板30の第1面F上に形成されている絶縁層450Aと当該絶縁層450A上の導体層458Aを有している。下側のビルドアップ層450Sは、コア基板30の第2面S上に形成されている絶縁層450Bと当該絶縁層450B上の導体層458Bを有している。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたインダクタ内蔵基板10は、絶縁層が無機フィラーを含んでいる場合には、絶縁層450A及び絶縁層450Bに含まれる無機フィラー粒子の周囲にシード層24を構成する無電解めっきが析出する。このようなインダクタ内蔵基板は、無機フィラー粒子の周囲に析出した無電解めっきの存在によりマイクロショートを発生する。さらに、このようなインダクタ内蔵基板に存在する無機フィラー粒子の周囲に析出した無電解めっきを除去するために当該インダクタ内蔵基板をエッチングするためのエッチング量が増加する。
【0006】
すなわち、特許文献1に記載されたインダクタ内蔵基板は、絶縁層に含まれる無機フィラー粒子が絶縁層の上面に露出していることにより、シード層が形成される絶縁層の表面は、粗面となっている。このため、特許文献1に記載されたインダクタ内蔵基板は、その絶縁層の表面にシード層をスパッタで形成すると、スパッタとその上に形成される電解銅めっきの結晶連続性を保持することができない。また、特許文献1に記載されたインダクタ内蔵基板は、シード層を形成する際のスパッタと絶縁層との密着力に欠けるという問題点を有する。そして、特許文献1に記載されたインダクタ内蔵基板は、精度良く導体パッドが形成されたものとなっていない。すなわち、特許文献1に記載されたインダクタ内蔵基板は、コア基板の仕様によって、ビルドアップ層に含まれる微細な配線のファイン化を実現することができない。
【0007】
本発明は、このような技術的事情に鑑みなされたものであって、導体層下の絶縁層に無機フィラーなどの無機粒子が露出することを防止し、精度よく導体パッドが形成され、コア基板の仕様によることなく、ビルドアップ部に含まれる微細な配線のファイン化が実現されたインダクタ内蔵基板を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るインダクタ内蔵基板は、コア基板貫通スルーホールと磁性体貫通スルーホールとを有するコア基板と、前記コア基板の上に形成され、無機粒子と絶縁性樹脂とを含む最上の絶縁層と、前記最上の絶縁層の上面に形成され、スパッタ膜からなるシード層と、当該シード層上に形成された電解めっき層からなる最上の導体層と、を備えたインダクタ内蔵基板であって、前記最上の絶縁層の上面は、前記絶縁性樹脂のみで形成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ビルドアップ部に含まれる導体パッドを精度よく形成することによって、コア基板の仕様によることなく、配線のファイン化が実現されたインダクタ内蔵基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係るインダクタ内蔵基板を模式的に示す断面図である。
図2A】本発明に係るインダクタ内蔵基板を構成する基板部材を模式的に示す断面図である。
図2B】本発明に係るインダクタ内蔵基板における第3ビルドアップ部を製造するための一工程を説明するための図である。
図2C】本発明に係るインダクタ内蔵基板における第3ビルドアップ部を製造するための一工程を説明するための図である。
図2D】本発明に係るインダクタ内蔵基板における第3ビルドアップ部を製造するための一工程を説明するための図である。
図2E】本発明に係るインダクタ内蔵基板における第3ビルドアップ部を製造するための一工程を説明するための図である。
図2F】本発明に係るインダクタ内蔵基板における第3ビルドアップ部を製造するための一工程を説明するための図である。
図2G】本発明に係るインダクタ内蔵基板における第3ビルドアップ部を製造するための一工程を説明するための図である。
図2H】本発明に係るインダクタ内蔵基板における第3ビルドアップ部を製造するための一工程を説明するための図である。
図2I】本発明に係るインダクタ内蔵基板における第3ビルドアップ部を製造するための一工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<インダクタ内蔵基板1の構造>
本発明に係るインダクタ内蔵基板は、コア基板の上面及び下面に複数のビルドアップ部を備えている。ここでは、一例として、コア基板の上面に第1ビルドアップと当該第1ビルドアップ部の上部に第3ビルドアップ部とを備え、コア基板の下面に第2ビルドアップ部と当該第2ビルドアップ部の下部に第4ビルドアップ部とを備えたインダクタ内蔵基板について説明する。なお、各ビルドアップ部は、絶縁層と当該絶縁層の上面に形成された導体層から形成される。
【0012】
図1は、本発明に係るインダクタ内蔵基板1を模式的に示す断面図である。図1に示されるように、本発明に係るインダクタ内蔵基板1は、その厚み方向の中心に位置するコア基板CSを備える。コア基板CSは、上側に位置するコア基板第1面CS1とコア基板第1面CS1の反対側に位置するコア基板第2面CS2とを有する。コア基板CSは、複数のコア基板CSが積層されて形成されていてもよい。なお、コア基板CSは、ガラスエポキシ樹脂等の絶縁材料から形成される。スルーホールTHは、ドリル、レーザ等により形成される。
【0013】
コア基板CSには、その厚み方向に貫通するコア基板貫通スルーホールTH1が形成されている。さらに、コア基板CSには、コア基板貫通スルーホールTH1に隣接する磁性体貫通スルーホールTH2が形成されている。磁性体貫通スルーホールTH2は、コア基板CSの開口内に充填された磁性体樹脂MRを貫通して形成されている。コア基板貫通スルーホールTH1及び磁性体貫通スルーホールTH2の形成は、ドリル、レーザ等により形成される。
【0014】
磁性体樹脂MRは、酸化鉄フィラー(磁性粒子)とエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂とを含んで構成される。磁性体樹脂MRに含まれる酸化鉄フィラー(磁性粒子)の含有量は、60~90重量%であることが好ましい。酸化鉄フィラー(磁性粒子)は、FeO、Fe、Fe等の酸化鉄から構成される。酸化鉄フィラー(磁性粒子)の平均粒径は、0.1~20μmであり、均一でない方が好ましい。
【0015】
コア基板貫通スルーホールTH1の内壁には、コア基板貫通スルーホール導体TC1が形成されている。磁性体貫通スルーホールTH2の内壁には、磁性体貫通スルーホール導体TC2がされている。コア基板貫通スルーホール導体TC1及び磁性体貫通導体TC2は、銅又はニッケル等の任意の金属を用い、例えば、金属箔、めっき、若しくはスパッタリング等により形成される金属膜によって形成される。
【0016】
コア基板貫通スルーホール導体TC1が形成されたコア基板貫通スルーホールTH1の内部には、樹脂充填剤Rが充填されている。磁性体貫通スルーホールTC2が形成された磁性体貫通スルーホールTH2の内部には、樹脂充填剤Rが充填されている。コア基板貫通スルーホール導体TC1と磁性体貫通スルーホール導体TC2は、コア基板導体層TCによって接続される。コア基板導体層TCは、コア基板第1面CS1側とコア基板第2面CS2側の両方に形成されている。コア基板導体層TCは無電解めっき層と電解めっき層から形成されていてもよい。
【0017】
インダクタ内蔵基板1は、コア基板第1面CS1上に形成され交互に積層される複数の第1絶縁層12及び第1導体層11を含む第1ビルドアップ部BU10と、コア基板第2面CS2上に形成され交互に積層される複数の第2絶縁層22及び複数の第2導体層21を含む第2ビルドアップ部BU20と、を備える。第1絶縁層12は、コア基板第1面CS1上に形成されたコア基板導体層TC上に形成されている。第1導体層11は、コア基板第1面CS1上に形成されたコア基板導体層TCを覆う第1絶縁層12上に形成されている。さらに、上方に位置する第1絶縁層12が上記第1導体層11を覆うように形成されている。第2絶縁層22は、コア基板第2面CS2上に形成されたコア基板導体層TC上に形成されている。第2導体層21は、コア基板第2面CS2上に形成されたコア基板導体層TCを覆う第2絶縁層22上に形成されている。さらに、下方に位置する第2絶縁層22が上記第2導体層21を覆うように形成されている。
【0018】
さらに、インダクタ内蔵基板1は、第1ビルドアップ部BU10上に形成され交互に積層される複数の第3絶縁層32及び複数の第3導体層31を含む第3ビルドアップ部BU30と、第2ビルドアップ部BU20上に形成され、交互に積層される少なくとも1層の第4絶縁層42及び少なくとも1層の第4導体層41を含む第4ビルドアップ部BU40と、を備える。第3ビルドアップ部BU30を形成する第3導体層31は、第1ビルドアップ部BU10を構成する第1導体層11を覆うように形成された第3絶縁層32上に形成される。最上の絶縁層である第3絶縁層32が上記第3導体層31を覆うように形成されている。最上の絶縁層である第3絶縁層32の上面には、最上の導体層である第3導体層31が形成されている。後述するように、最上の導体層である第3導体層31は、スパッタ膜からなるシード層と、当該シード層上に形成された電解めっき層からなる。
第4導体層41は、第2ビルドアップ部BU20を構成する第2導体層21を覆うように形成された第4絶縁層42上に形成される。さらに、最下の第4絶縁層42が上記第4導体層41を覆うように形成されている。最下の絶縁層である第4絶縁層42の下面には、最下の導体層である第4導体層42が形成されている。
なお、インダクタ内蔵基板1の反りを抑制する観点から、第1ビルドアップ部BU10に含まれる第1導体層11及び第1絶縁層12の層数と、第2ビルドアップ部BU20に含まれる第2導体層21及び第2絶縁層12の層数とが等しいことが好ましい。同様に、第3ビルドアップ部BU30に含まれる第3導体層31及び第3絶縁層32の層数と、第4ビルドアップ部BU40に含まれる第4導体層41及び第4絶縁層42の層数とが等しいことが好ましい。
【0019】
さらに、第1絶縁層12、第2絶縁層22、第3絶縁層32、及び第4絶縁層42には、それぞれの絶縁層を貫通する第1ビアV1、第2ビアV2、第3ビアV3、第4ビアV4が形成されている。第1ビアV1、第2ビアV2、第3ビアV3、第4ビアV4には、第1ビア導体VH1、第2ビア導体VH2、第3ビア導体VH3、第4ビア導体VH4がそれぞれ形成されている。第1ビア導体VH1~第4ビア導体VH4は、第1絶縁層12、第2絶縁層22、第3絶縁層32及び第4絶縁層42に形成されている各導体層を接続する。
【0020】
ここで、第1導体層11、第2導体層21、第3導体層31、第4導体層41、第1ビア導体VH1、第2ビア導体VH2、第3ビア導体VH3、及び第4ビア導体VH4は、銅又はニッケル等の任意の金属を用い、例えば、金属箔、めっき、若しくはスパッタリング等により形成される金属膜によって形成される。第1導体層11、第2導体層21、第3導体層31、第4導体層41、第1ビア導体VH1、第2ビア導体VH2、第3ビア導体VH3、及び第4ビア導体VH4は、2つ以上の金属層を有する多層構造を有していてもよく、無電解めっき膜、若しくはスパッタ膜である金属膜と、電解めっき膜層とを含む2層構造であってもよい。第1導体層11、第2導体層21、第3導体層31及び第4導体層41は、それぞれ所定の導体パターンを有するように、微細な配線を含んでいる。
【0021】
また、第1絶縁層12、第2絶縁層22、第3絶縁層32、及び第4絶縁層42は、無機フィラー等の無機粒子と絶縁性樹脂とを含んで形成されている。具体的には、第1絶縁層12は、第1無機粒子12Aと第1絶縁性樹脂12Bとを含んでいる。第2絶縁層22は、第2無機粒子22Aと第2絶縁性樹脂22Bとを含んでいる。第3絶縁層32は、第3無機粒子32Aと第3絶縁性樹脂32Bとを含んでいる。第4絶縁層42は、第4無機粒子42Aと第4絶縁性樹脂42Bとを含んでいる。
【0022】
第1無機粒子12A、第2無機粒子22A、第3無機粒子32A及び第4無機粒子42Aは、シリカ、アルミナ、タルク、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化亜鉛等からなる無機フィラーから構成される無機粒子であってもよい。第1絶縁性樹脂12B、第2絶縁性樹脂22B、第3絶縁性樹脂32B及び第4絶縁性樹脂42Bは、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂等の絶縁性樹脂であってもよく、具体的には、フッ素樹脂、液晶ポリマー(LCP)、フッ化エチレン樹脂(PTFE)、ポリエステル樹脂(PE)、変性ポリイミド樹脂(MPI)等を採用してもよい。
なお、第1絶縁層12~第4絶縁層42は、それぞれ第1無機粒子12A~第4無機粒子42Aを構成する無機フィラー等の無機粒子を含むエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂等の絶縁性樹脂を未硬化の樹脂シートとして作製して、当該樹脂シートを貼付した後、加熱処理により当該樹脂シートを硬化させることにより形成することができる。
【0023】
本発明に係るインダクタ内蔵基板1は、コア基板貫通スルーホールTH1と磁性体貫通スルーホールTH2とを有するコア基板CSと、コア基板CSの上に形成され、無機粒子と絶縁性樹脂とを含む最上の絶縁層を有している。具体的には、本発明に係るインダクタ内蔵基板1が備えている第3ビルドアップ部BU30に含まれる最上の絶縁層となる第3絶縁層32は、第3無機粒子32Aと第3絶縁性樹脂32Bとを含んでいる。ここで、第3導体層31を覆っている第3絶縁層32の上面33は、第3絶縁性樹脂32Bのみで形成されている。すなわち、第3絶縁層32の上面33には、第3無機粒子32Aが露出していない。このように、第3絶縁層32の上面33に第3無機粒子32Aが露出していない場合には、当該第3無機粒子32Aが存在していないため、第3絶縁層32の上面33をきわめて平坦に形成することができる。第3絶縁層32の上面33が有する表面粗さの値を小さくすることができる。例えば、第3絶縁層32の上面33を算術平均粗さRaで0.3μm以下の値とすることができる。
【0024】
その結果、最上の絶縁層の上面とその上面に形成されるシード層(スパッタ)との密着力とシード層(スパッタ)と電解銅めっきとの結晶連続性を確保することができる。さらに、本発明に係るインダクタ内蔵基板1は、第3導体層31を覆っている第3絶縁層32の上面である第3絶縁層の上面33は、第3絶縁性樹脂32Bのみで形成されているため、早いエッチングが可能となる。また、本発明に係るインダクタ内蔵基板1を構成する第3絶縁層32の上面33には、第3無機粒子32Aが露出していない。このため、本発明に係るインダクタ内蔵基板1は、第3絶縁層32に含まれる第3無機粒子32Aの周囲に無電解銅めっきが析出していないことにより、マイクロショートが発生しない。
【0025】
さらに、第1ビルドアップ部BU10に含まれる第1絶縁層12は、第1無機粒子12Aと第1絶縁性樹脂12Bとを含んでいる。ここで、第1導体層11を被覆する第1絶縁層12の上面を第1絶縁性樹脂12Bのみで形成することもできる。すなわち、第1絶縁層12の上面には、第1無機粒子12Aが露出していないようにすることができる。
【0026】
また、第4ビルドアップ部BU40に含まれる第4絶縁層42は、第4無機粒子42Aと第4絶縁性樹脂42Bとを含んでいる。ここで、第4導体層41を被覆する第4絶縁層42の下面を第4絶縁性樹脂42Bのみで形成することもできる。すなわち、第4絶縁層42の下面には、第4無機粒子42Aが露出していないようにすることができる。第2ビルドアップ部BU20に含まれる第2絶縁層22は、第2無機粒子22Aと第2絶縁性樹脂22Bとを含んでいる。ここで、第2絶縁層22の下面を第2絶縁性樹脂22Bのみで形成することもできる。すなわち、第2絶縁層22の下面には、第2無機粒子22Aが露出していないようにすることができる。
このように、最上の絶縁層である第3絶縁層上面33のみならず、最上の絶縁層の下に形成された内層の第1絶縁層12の上面、最下の絶縁層である第4絶縁層42の下面、最下の絶縁層の上に形成された内層の第2絶縁層22の下面をきわめて平坦に形成することによって、これらの絶縁層の表面とその表面に形成されるシード層(スパッタ)との密着力と、スパッタと電解銅めっきとの結晶連続性をより確保することができる。
【0027】
ここで、第1無機粒子12A、第2無機粒子22A、第3無機粒子32A及び第4無機粒子42Aは、互いに異なっていてもよい。第1無機粒子12A、第2無機粒子22A、第3無機粒子32A及び第4無機粒子42Aの平均粒径は、それぞれ異なっていてもよく、例えば、以下のように設定してもよい。具体的には、最上の絶縁層となる第3絶縁層32に含まれる第3無機粒子32Aの平均粒径が最上の絶縁層の下に形成された内層の絶縁層である第1絶縁層12に含まれる第1無機粒子12Aの平均粒径よりも小さく設定してもよい。すなわち、第3無機粒子32Aの平均粒径は、第1無機粒子12Aの平均粒径よりも小さい。最下の絶縁層である第4絶縁層42に含まれる第4無機粒子42Aの平均粒径が最下の絶縁層の上に形成された内層の絶縁層である第2絶縁層22に含まれる第2無機粒子22Aの平均粒径よりも小さく設定してもよい。すなわち、第4無機粒子42Aの平均粒径は、第2無機粒子12Aの平均粒径よりも小さい。例えば、第1無機粒子12Aの平均粒径及び第2無機粒子22Aの平均粒径を1.0~5.0μmに設定し、第3無機粒子32Aの平均粒径及び第4無機粒子42Aの平均粒径を0.1~1.0μm未満に設定してもよい。
【0028】
なお、インダクタ内蔵基板1は、第3ビルドアップ部BU30に含まれる最上の第3導体層31および最上の第3絶縁層32を被覆し、当該最上の導体層となる第3導体層31の一部を導体パッド31Pとして露出させる開口部を備えるソルダーレジスト層(図示しない。)を有していてもよい。さらに、第4ビルドアップ部BU40は、最下の導体層となる第4導体層41および最下の絶縁層となる第4絶縁層42を被覆するソルダーレジスト層(図示しない。)を有していてもよい。
【0029】
すなわち、ソルダーレジスト層は、インダクタ内蔵基板1の最上面に位置する被覆絶縁層、インダクタ内蔵基板1の最下面に位置する被覆絶縁層となる。最上面に位置するソルダーレジストの開口部から露出する最上の導体層となる第3導体層31の一部である導体パッド31P上にニッケル/錫等からなる保護膜を形成し、半田バンプを介してICチップ等の電子部品を複数搭載してもよい。同様に、最下面に位置するソルダーレジストの開口部から露出する最下の導体層となる第4導体層41の一部である導体パッド下にニッケル/錫等からなる保護膜を形成し、半田バンプを介してマザーボードに搭載してもよい。
【0030】
これらのソルダーレジスト層は、例えば、アルカリ可溶性樹脂、多官能アクリルモノマー、光重合開始剤、エポキシ樹脂、無機フィラー等を含有していてもよい。アルカリ可溶性樹脂としては、光硬化性と熱硬化性の両方の特性をもつアルカリ可溶性樹脂が挙げられ、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂にアクリル酸を付加させてエポキシアクリレート化した樹脂の2級の水酸基に酸無水物を付加させた樹脂が挙げられる。多官能アクリルモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等が挙げられる。光重合開始剤としては、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン等が挙げられる。エポキシ樹脂は、硬化剤として用いられる。アルカリ可溶性樹脂のカルボン酸と反応させることで架橋させ、耐熱性や耐薬品性の特性の向上を図っているが、カルボン酸とエポキシは常温でも反応が進むために、保存安定性が悪く、アルカリ現像型ソルダーレジストは一般的に使用前に混合する2液性の形態をとっている場合が多い。無機フィラーとしては、例えば、タルク、シリカ、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。
【0031】
本発明に係るインダクタ内蔵基板1は、最上の絶縁層を貫通するビアと、ビアに形成されるビア導体と、を有している。ビアの内壁面は、絶縁性樹脂と無機粒子で形成されている。最上の絶縁層となる第3絶縁層32は、当該第3絶縁層32を貫通する第3ビアV3を有しており、第3ビアV3には、第3ビア導体VH3が形成されている。ここで、第3ビアV3の内壁面は、第3絶縁性樹脂32Bと第3無機粒子32Aとで形成されている。さらに、第3ビアV3の内壁面は、第3絶縁性樹脂32Bの表面と第3無機粒子32Aの表面とで形成されていてもよい。第3無機粒子32Aの表面は、当該第3無機粒子32Aが切断された切断面からなる表面を含んで形成されていてもよい。また、第3ビアV3の内壁面は、第3絶縁性樹脂32Bのみで形成されていてもよい。第1絶縁層12の内層となる第1絶縁層12は、当該第1絶縁層12を貫通する第1ビアV1を有しており、第1ビアV1には、第1ビア導体VH1が形成されている。第1ビアV1の内壁面は、第1絶縁性樹脂12Bと第1無機粒子12Aとで形成されていてもよい。
【0032】
最下の絶縁層となる第4絶縁層42は、当該第4絶縁層12を貫通する第4ビアV4を有しており、第4ビアV4には、第4ビア導体VH4が形成されている。第4ビアV4の内壁面は、第4絶縁性樹脂42Bと第4無機粒子42Aとで形成されていてもよい。さらに、第4絶縁層42の上に形成され内層となる第2絶縁層22は、当該第2絶縁層22を貫通する第2ビアV2を有しており、第2ビアV2には、第2ビア導体VH2が形成されている。第2ビアV2の内壁面は、第2絶縁性樹脂22Bと第2無機粒子22Aとで形成されていてもよい。
【0033】
このように、本発明に係るインダクタ内蔵基板1の技術的特徴は、第3ビルドアップ部BU30にある。以下、図2A~Nを参照して、本発明に係るインダクタ内蔵基板1の技術的特徴である第3ビルドアップ部BU30の製造方法について説明する。
【0034】
<第3ビルドアップ部BU30の形成>
図2Aは、本発明に係るインダクタ内蔵基板1を構成する基板部材1aを模式的に示す断面図である。図2Aに示されるように基板部材1aは、第1面CS1上に形成され交互に積層される複数の第1絶縁層12及び第1導体層11を含む第1ビルドアップ部BU10と、第2面CS2上に形成され、交互に積層される複数の第2絶縁層22及び複数の第2導体層21を含む第2ビルドアップ部BU20と、第1ビルドアップ部BU10上に形成され、交互に積層される複数の第3絶縁層32及び複数の第3導体層31を含む第3ビルドアップ部BU30と、第2面上に形成され、交互に積層される少なくとも1層の第4絶縁層及び少なくとも1層の第4導体層を含む第4ビルドアップ部BU40と、を備える。
以下、図2Aにおいて破線で囲まれた基板部材1aの部分を中心に第3ビルドアップ部BU30を構成する第3ビルドアップ層L2に第3ビルドアップ層L1が形成される各工程を説明する。
【0035】
図2Bに示されるように、保護層35が第3絶縁層32の上面である第3絶縁層32上面33に形成されたものを準備し、第3ビルドアップ部BU30を構成する第3ビルドアップ層L2上に第3ビルドアップ層L1を形成する。ここで、保護層35が形成される第3絶縁層32は、最上の絶縁層となる。保護層35は、レーザ光等から第3絶縁層上面33を保護することができればよく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)製のフィルムを挙げることができる。なお、保護層35を第3絶縁層32から剥離し易くするために、保護層35と第3絶縁層上面33との間に離型剤を含む層を設けてもよい。
【0036】
図2Cに示されるように、基板部材1aに形成された保護層35の上方からレーザ光Lが照射される。レーザ光Lは、保護膜35と第3絶縁層32とを同時に貫通する。レーザ光Lが保護膜35と第3絶縁層32とを貫通することにより、開口部34が第3絶縁層32に形成される。開口部34が形成されることにより、開口部34の内部のビア底には、第3ビルドアップ部BU30の最も上層に位置している第3ビルドアップ層L1の下層に位置する第3ビルドアップ層L2に形成されており、第3ビルドアップ部BU30を構成する第3導体層31の一部を構成している導体パッド31Pが露出する。
【0037】
基板部材1aに形成された保護層35の上方からレーザ光Lが照射されることにより、当該レーザ光Lによって粉砕された第3絶縁性樹脂32Bが飛散する場合がある。しかしながら、第3絶縁層32の上面である第3絶縁層上面33は、保護層35によって保護されているので、粉砕された第3絶縁性樹脂32Bが第3絶縁層上面33に付着することがない。なお、レーザ光Lは、保護膜35と第3絶縁層32とを同時に貫通する光であればよく、例えば、UVレーザ光、COレーザ光等を使用することができる。
【0038】
図2Dに示されるように、第3絶縁層32を保護層35により被覆した状態において、開口部34の内部をプラズマPによりデスミア処理をする。開口部34の内部をデスミア処理することにより、第3絶縁層32から発生した粉砕された第3絶縁性樹脂32Bを含む樹脂残渣(スミア)を除去することができる。デスミア処理は、デスミア処理用ガスを使用し、当該処理用ガスから発生する活性種源により行う。樹脂残渣(スミア)を効率よく除去する観点から、例えば、デスミア処理用ガスとして、四フッ化炭素(CF)を使用してフッ素ラジカルを発生させ、当該フッ素ラジカルをデスミア処理に使用することができる。一方、保護層35により被覆された第3絶縁層上面33は、レーザ光Lによっても、デスミア処理によっても粗化されない。なお、レーザ光Lによるレーザ処理とデスミア処理とは均一処理設備により行うことができる。
【0039】
図2Eに示されるように、第3絶縁層上面33から保護層35を剥離することによって、保護層35が第3絶縁層32から除去される。なお、保護層35が第3絶縁層32から除去された後においても、第3絶縁層上面33は、粗化されない。ここで、第3絶縁層上面33は、第3絶縁性樹脂32Bのみで形成されているので、第3無機粒子32Aが露出していない。このため、第3絶縁層上面33は、きわめて平坦に形成されている。
【0040】
図2Fに示されるように、第3絶縁層上面33と、開口部34の内部を構成している開口部内壁34Aと、開口部34のビア底に露出している導体パッド31Pの上面とにシード層36が形成される。ここで、シード層36は、第3ビルドアップ部BU30を構成する最上の第3ビルドアップ層L1における最上の第3導体層31の一部として、導体パッド31Pを構成する。シード層36は、スパッタ膜からなる。シード層36の形成は、ドライプロセスにより行われる。シード層36は、銅等の金属から形成されてもよい。さらに、シード層36上に電解めっき層が形成される。第3絶縁層上面33には、第3無機粒子32Bが存在することなく、平坦に形成されている。このため、シード層36は、第3絶縁層上面33との密着力を十分に確保することができる。
【0041】
図2Gに示されるように、シード層36の表面であるシード層表面36Xに複数のめっきレジスト37が形成される。シード層表面36Xと、複数のめっきレジスト37を構成する隣接するめっきレジスト37とによってレジスト凹部37Aが形成される。
【0042】
図2Hに示されるように、シード層表面36Xに露出しているシード層36、隣接するめっきレジスト37によって形成されたレジスト凹部37Aに電解銅めっき層38が形成される。
【0043】
図2Iに示されるように、めっきレジスト37がシード層上面36Xから除去される。めっきレジスト37がシード層上面36Xから除去されることによって、当該めっきレジスト36の下層に形成されているシード層36が露出する。露出したシード層36は、エッチングにより除去される。その結果、第3絶縁層上面33が露出する。
【0044】
以上、図示の実施形態に基づき説明したが、本発明に係るインダクタ内蔵基板は、上述の実施形態に限られず、特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で適宜変更することができる。本発明に係るインダクタ内蔵基板は、積層セラミックチップコンデンサのみならず、例えば、SOP等のICパッケージ等の部品を実装したプリント回路板にも適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 インダクタ内蔵基板
CS コア基板
CS1 コア基板第1面(上面)
CS2 コア基板第2面(下面)
TH1 コア基板貫通スルーホール
TC1 コア基板貫通スルーホール導体
TH2 磁性体貫通スルーホール
TC2 磁性体貫通スルーホール導体
TC コア基板導体層
R 樹脂充填剤
MR 磁性体樹脂
BU10 第1ビルドアップ部
11 第1導体層
12 第1絶縁層
BU20 第1ビルドアップ部
21 第2導体層
22 第2絶縁層
BU30 第3ビルドアップ部
L1 第3ビルドアップ(上層)
L2 第3ビルドアップ(下層)
31 第3導体層
31P 導体パッド
32 第3絶縁層(最上)
32A 第3無機粒子
32B 第3絶縁性樹脂
33 第3絶縁層上面
34 開口部
34A 開口部内壁
35 保護膜
36 シード層
36X シード層上面
37 めっきレジスト
37A レジスト凹部
38 電解銅めっき層
BU40 第4ビルドアップ部
41 第4導体層
42 第4絶縁層
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I