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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126036
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04014 20160101AFI20240912BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20240912BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20240912BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20240912BHJP
   H01M 8/249 20160101ALI20240912BHJP
   H01M 8/0668 20160101ALI20240912BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20240912BHJP
【FI】
H01M8/04014
H01M8/04 J
H01M8/04858
H01M8/04746
H01M8/249
H01M8/0668
H01M8/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034156
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【弁理士】
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【弁理士】
【氏名又は名称】伊達 研郎
(74)【代理人】
【識別番号】100184022
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 美保
(72)【発明者】
【氏名】奥 正雄
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA07
5H127AB17
5H127AB22
5H127AC15
5H127BA05
5H127BA12
5H127BA20
5H127BA33
5H127BA34
5H127BA59
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB17
5H127BB19
5H127BB37
5H127BB39
5H127DC12
5H127DC22
5H127DC42
(57)【要約】      (修正有)
【課題】改質ガスの生成に必要な高温状態を維持しつつ、高温の熱を必要とする熱利用設備に対して、燃料電池スタックの排ガスが持つ熱を供給できる燃料電池システムを提供する。
【解決手段】改質反応させて水素を含む改質ガスを生成する改質器20と、改質ガスと空気が供給されて直流電力を出力する燃料電池本体2と、アノード排ガスとカソード排ガスとを燃焼させ、改質器20に改質ガス生成に必要な熱を与える燃焼器21と、一端が燃料極2bに、他端が改質器20に接続され、アノード排ガスを循環させるリサイクルガス流路60と、リサイクルガス流路60から分岐され、燃焼器21に接続されるアノード排ガス分岐流路61と、一端が空気極2aに接続され、第1熱利用設備41にカソード排ガスの持つ熱を与える第1熱交換器31を経由して他端が燃焼器21に接続されるカソード排ガス流路62とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素を含む原燃料と水蒸気とを改質反応させて水素を含む改質ガスを生成する改質器と、
前記改質器から前記改質ガスが送られる燃料極及び空気供給源から空気が送られる空気極を有する燃料電池スタックにより直流電力を出力する燃料電池本体と、
前記燃料極から排出されたアノード排ガスと前記空気極から排出されたカソード排ガスとを燃焼させ、前記改質器に前記改質ガスの生成に必要な熱を与える燃焼器と、
一端が前記燃料極に、他端が前記改質器に接続され、前記アノード排ガスを循環させるリサイクルガス流路と、
前記リサイクルガス流路から分岐され、前記燃焼器に接続されるアノード排ガス分岐流路と、
一端が前記空気極に接続され、第1熱利用設備に前記カソード排ガスの持つ熱を与える第1熱交換器を経由して他端が前記燃焼器に接続されるカソード排ガス流路と、
を備える燃料電池システム。
【請求項2】
前記燃料電池本体の発電出力を低下させて、前記アノード排ガス分岐流路に供給する水素の量を増大させる請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記空気極への前記空気の流量、前記改質器への前記原燃料の流量、前記改質器への前記水蒸気の流量、前記リサイクルガス流路への前記アノード排ガスの流量、及び前記アノード排ガス分岐流路への前記アノード排ガスの流量の少なくともいずれかを調整して、前記発電出力を低下させる請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記燃料電池本体は複数の前記燃料電池スタックを備え、前記空気極への前記空気及び前記燃料極への前記改質ガスの少なくともいずれかの供給を停止するか流量を減少させるかを、前記燃料電池スタック毎又は2以上の前記燃料電池スタック毎に制御して、前記発電出力を低下させる請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記カソード排ガス流路は、前記カソード排ガスの流量を変化させるカソード排ガス流量調整弁を備え、前記カソード排ガス流量調整弁により前記第1熱利用設備へ供給する熱量を調整する請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記アノード排ガス分岐流路は、前記アノード排ガスに含まれる二酸化炭素を分離回収する二酸化炭素分離回収装置を備える請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記リサイクルガス流路は、前記アノード排ガスを冷却して前記アノード排ガス中に含まれる水分を回収する凝縮器を備え、前記凝縮器を介して前記アノード排ガスから回収した熱を、第2熱利用設備に与える請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記燃料電池本体で発電した電力で動作するヒートポンプを備え、前記凝縮器を介して前記アノード排ガスから回収した熱を、前記ヒートポンプにより昇温して前記第1熱利用設備に与える請求項7に記載の燃料電池システム。
【請求項9】
原燃料流路を流れる前記原燃料に工場の排熱を与える第2熱交換器、及び前記アノード排ガス分岐流路を流れる前記アノード排ガスに前記排熱を与える第3熱交換器の少なくともいずれか1つを備える請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項10】
前記燃料電池本体で発電した電力で動作する電気ボイラを備え、前記第1熱利用設備に熱を与える請求項1に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムは、燃料極と空気極の間に電解質を挟んで構成した単セルを積層した燃料電池スタックを備える燃料電池本体に水素と酸素を送り発電させる電池システムである。燃料電池スタックは、例えば炭化水素系の原燃料を改質した水素を含む改質ガスと空気より得た酸素を、電解質を介して隔てた状態で電気化学反応を生じさせることで発電する。この反応において排出される排ガスを有効利用する例もある。
【0003】
例えば特許文献1では、SOFC(Solid Oxide Fuel Cell)、MCFC(Molten-Carbonate Fuel Cells)等の高温作動型燃料電池システムにおいて、燃料電池スタックの排ガスを燃焼させ、その燃焼排ガスを例えば一般家庭や中小規模の飲食店等の小規模設備の廃棄物を処理する減容処理装置に導くことで、生ごみ等の乾燥、減容に利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-278176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の燃料電池システムにおいて、改質ガス生成に必要な高温状態を維持するために燃料電池スタックの排ガスを使用すると、例えば工場の熱風乾燥炉等の高温を必要とする熱利用設備に熱を供給できないという課題があった。
【0006】
本開示は上記のような課題を解決するためになされたものであり、改質ガスの生成に必要な高温状態を維持しつつ、燃料電池スタックの排ガスが持つ熱を燃料電池システム系外へ供給可能とする燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る燃料電池システムは、炭化水素を含む原燃料と水蒸気とを改質反応させて水素を含む改質ガスを生成する改質器と、改質器から改質ガスが送られる燃料極及び空気供給源から空気が送られる空気極を有する燃料電池スタックにより直流電力を出力する燃料電池本体と、燃料極から排出されたアノード排ガスと空気極から排出されたカソード排ガスとを燃焼させ、改質器に改質ガス生成に必要な熱を与える燃焼器と、一端が燃料極に、他端が改質器に接続され、アノード排ガスを循環させるリサイクルガス流路と、リサイクルガス流路から分岐され、燃焼器に接続されるアノード排ガス分岐流路と、一端が空気極に接続され、第1熱利用設備にカソード排ガスの持つ熱を与える第1熱交換器を経由して他端が燃焼器に接続されるカソード排ガス流路と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示の燃料電池システムによれば、改質ガスの生成に必要な高温状態を維持しつつ、高温の熱を必要とする熱利用設備に対して、燃料電池スタックの排ガスが持つ熱を供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係る燃料電池システムを示すブロック図である。
図2】実施の形態1に係る燃料電池スタックの変形例を示すブロック図である。
図3】実施の形態2に係る燃料電池システムを示すブロック図である。
図4】実施の形態3に係る燃料電池システムを示すブロック図である。
図5】実施の形態4に係る燃料電池システムを示すブロック図である。
図6】実施の形態5に係る燃料電池システムを示すブロック図である。
図7】実施の形態6に係る燃料電池システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
実施の形態1について図1を用いて詳細に説明する。図1に示すように燃料電池システム1は、燃料電池スタック3で構成された燃料電池本体2、原燃料から改質ガスを生成する改質器20、改質器20に熱を与える燃焼器21、例えば熱風乾燥炉等の高温を必要とする第1熱利用設備41の熱媒に熱を与える第1熱交換器31、燃料電池本体2と改質器20とを連通するリサイクルガス流路60、リサイクルガス流路60から分岐されて燃焼器21に接続されるアノード排ガス分岐流路61、及び燃料電池本体2と燃焼器21とを連通するカソード排ガス流路62を備える。ここで、図1中の矢印はガス又は液体の流れを示す。
【0011】
燃料電池システム1の構成及び動作を説明する。燃料電池本体2の原燃料は、原燃料供給源11により供給される例えばメタン等の炭化水素を含む都市ガスであり、原燃料流路51を通してミキサ24へ送られる。ミキサ24は、原燃料供給源11から供給される原燃料、水蒸気発生器22から水蒸気流路81を通して供給される水蒸気、及び燃料電池本体2から排出されるアノード排ガスの3つのガスを混合し、改質器20に供給する。ここで、原燃料流路51には原燃料流量調整弁72が、水蒸気流路81には水蒸気流量調整弁73がそれぞれ設けられ、ミキサ24に供給する原燃料及び水蒸気の流量を調整できる。
【0012】
改質器20は、図示しない触媒を備えており、上述の混合ガスを次の反応式(1)及び反応式(2)に示す改質反応により水素を主成分とする改質ガスに変換する。この改質反応は吸熱反応であるため、この反応熱を補償するため燃焼器21により熱が供給される。生成された改質ガスは、改質ガス供給流路52を通って燃料電池本体2へ供給される。
【0013】
CH+HO→CO+3H …(1)
CO+HO→CO+H …(2)
【0014】
燃料電池本体2は、空気極2aと燃料極2bとの間に電解質2cを挟んで構成した単セルを積層した燃料電池スタック3を備える固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。燃料極2bには改質ガスが供給され、次の反応式(3)に示す酸化反応によりアノード排ガスが生成される。空気極2aには、例えばブロワ等の空気供給源10から供給された空気が空気加熱器30を通過して昇温されて供給され、反応式(4)に示す還元反応によりカソード排ガスが生成される。ここで、空気流路53には空気流量調整弁71が設けられ、空気極2aに供給する空気の流量を調整できる。
【0015】
+H→HO+2e …(3)
1/2O+2e→O …(4)
【0016】
燃料極2bで生成された600℃程度のアノード排ガスは、リサイクルガス流路60へ排出され、水蒸気発生器22及び凝縮器23を経由した後、一部がリサイクルガス流路60の途中で分岐したアノード排ガス分岐流路61を通って燃焼器21に供給される。残りのアノード排ガスは、ミキサ24を経由して改質器20に供給される。アノード排ガスには発電で使用されなかった水素が残留しているため、燃焼器21では被燃焼物として利用され、改質器20では改質ガスとして再利用される。ここで、水蒸気発生器22では、水供給源12から供給される液体状態の水とアノード排ガスとの熱交換により、液体状態の水を気体状態に変換する。凝縮器23では、アノード排ガスは冷却され、アノード排ガス中に含まれる水蒸気が凝縮されて回収される。回収された水は、水供給源12から供給する水とともに、水蒸気発生器22に供給される。
【0017】
空気極2aで生成された600℃程度のカソード排ガスは、カソード排ガス流路62に排出され、高温熱供給用として機能する第1熱交換器31を経由して燃焼器21へ送られる。第1熱交換器31では、カソード排ガスと、熱媒用流路63を流れる例えば熱媒体油等の熱媒との熱交換により、熱媒を100~150℃に昇温する。この昇温された熱媒を介して燃料電池システム1の系外にある例えば熱風乾燥炉等の高温の熱を利用する第1熱利用設備41に熱が与えられる。
【0018】
アノード排ガス分岐流路61からアノード排ガスを、カソード排ガス流路62からカソード排ガスを受け入れる燃焼器21は、アノード排ガスに残留する水素を燃焼させ、反応式(1)及び反応式(2)で表される改質反応に必要な熱を改質器20に供給する。燃焼器21で発生した燃焼排ガスは、改質器20に熱を与えた後、空気加熱器30を経由して燃料電池システム1の系外に排出される。ここで空気加熱器30は、燃焼器21から排出された燃焼排ガスと空気供給源10から供給された空気との熱交換により、空気を昇温する。昇温された空気は空気極2aに供給される。
【0019】
次に、リサイクルガス流路60を通ってミキサ24を経由し、改質器20に供給されるアノード排ガスに着目する。アノード排ガス全量のうち、改質器20に供給されるアノード排ガス流量の割合をリサイクル率と定義する。リサイクル率が高い場合、改質反応に再利用されるアノード排ガス中の水素の量が増大するため原燃料の使用量を削減できる。これにより発電効率を向上させることができる。その反面、アノード排ガス分岐流路61を通って燃焼器21に供給される水素の量が減少するため、燃焼器21における燃焼熱が減少する。この場合、改質反応に必要な熱が不足するため、リサイクル率は熱バランスの観点から上限値を60%から70%程度とするのが好ましい。ここで、リサイクルガス流路60及びアノード排ガス分岐流路61には、アノード排ガス第1流量調整弁74及びアノード排ガス第2流量調整弁75がそれぞれ設けられ、これらの流量調整弁によりアノード排ガスの流量を調整してリサイクル率を変更できる。
【0020】
次に、第1熱交換器31で熱媒に熱を与えるカソード排ガスに着目する。カソード排ガスの熱を外部に与えると、改質器20に供給されるカソード排ガスの温度が低下するため、改質反応に必要な熱が不足してしまう。従ってここでは、この熱不足を補うために、燃焼器21へ供給するアノード排ガスに残留する水素の量を増大させて燃焼器21での燃焼熱を増強させる。例えば、燃料電池本体2の発電出力を低下させて水素の消費量を低下させることで、アノード排ガスに残留する水素の量を増大させることができる。この操作により、残留する水素の量が増大したアノード排ガスがアノード排ガス分岐流路61を通って燃焼器21に供給されるため、発電出力が定格の場合より燃焼熱を大きくできる。このように、カソード排ガスによる熱供給量と燃料電池本体2の発電量の割合である熱電比を制御することで第1熱利用設備41への熱熱供給を可能とする。
【0021】
具体的な発電出力の低下量について、例えば定格出力が10kWの燃料電池システム1の場合、第1熱交換器31に、入口部での温度が650℃のカソード排ガスを供給し、熱媒用流路63を流れる熱媒を介して第1熱利用設備41へ熱を与えた後、第1熱交換器31の出口部での温度が250℃のカソード排ガスを排出する条件を考える。この条件では、改質反応に必要な燃焼熱を燃焼器21で発生させるため、燃料電池本体2の発電出力を定格の10kWから6.8kWまで低下させる。この出力低下により、アノード排ガスに残留する水素の量が増大し、改質反応に必要な燃焼熱を燃焼器21で発生できる。ここで、第1熱交換器31の入口部及び出口部でのカソード排ガスの温度は、図示しない温度センサにより測定される。
【0022】
燃料電池本体2の発電出力を低下させるには、空気極2aへの空気の流量、改質器20への原燃料の流量、改質器20への水蒸気の流量、リサイクルガス流路60へのアノード排ガスの流量、及びアノード排ガス分岐流路61へのアノード排ガスの流量の少なくともいずれかを調整する。例えば制御装置4は、制御線4aから空気流量調整弁71、原燃料流量調整弁72、及び水蒸気流量調整弁73に開度調整の指令を出し、燃料電池スタック3への空気、原燃料、及び水蒸気の流量を減少させる。これにより、燃料電池スタック3における発電が抑制され、燃料電池本体2の発電出力が低下する。ここで、改質反応に必要な熱が不足しないように、制御線4aからアノード排ガス第1流量調整弁74及びアノード排ガス第2流量調整弁75に開度調整の指令を出し、リサイクル率を併せて調整してもよい。
【0023】
このように、アノード排ガスをリサイクルガス流路60により改質器20へ循環させて発電効率を向上させながら、カソード排ガスを第1熱交換器31へ供給し、熱媒用流路63を流れる熱媒を介してカソード排ガスの持つ熱を第1熱利用設備41へ熱を与える構成により、改質器20に熱を与えて改質ガスの生成に必要な高温状態を維持しつつ、例えば熱風乾燥炉等の高温の熱を必要とする第1熱利用設備41にカソード排ガスが持つ熱を供給できる。これにより、これまで第1熱利用設備41に熱を供給していた例えばボイラ等の設備の稼働率が低減されるため、CO2(二酸化炭素)排出量を削減できる。
【0024】
なお、本実施の形態において、カソード排ガスによる熱供給量と燃料電池本体2の発電量の割合である熱電比を制御する手段として、例えば熱媒に熱を与えるカソード排ガスの流量を調整することもできる。この場合、カソード排ガス流路62にカソード排ガス流量調整弁70を設け、カソード排ガス流量調整弁70の開度を制御装置4で制御するよう構成すればよい。
【0025】
また、図2に示すように燃料電池本体2が複数の燃料電池スタック3を備え、これらの燃料電池スタック3が並列に接続される燃料電池システム1の場合、空気流量調整弁71を空気分岐流路54に備えてもよい。制御装置4は、制御線4aから空気流量調整弁71に開度調整の指令を出し、燃料電池スタック3毎又は2以上の燃料電池スタック3毎に空気極2aへの空気の供給を停止するか流量を減少させる。同様に、改質ガス分岐流路55に図示しない改質ガス流量調整弁を設け、空気極2aへの空気及び燃料極2bへの改質ガスの少なくともいずれかの供給を停止するか流量を減少させるかを、燃料電池スタック2毎又は2以上の燃料電池スタック2毎に制御してもよい。これにより、燃料電池スタック3毎又は2以上の燃料電池スタック3毎に発電を停止又は抑制させ、燃料電池本体2の発電出力を低下させることができる。ここで、図2は燃料電池本体2が2つの燃料電池スタック3で構成された例を示しているが、燃料電池スタック3の数は2つに限られない。
【0026】
実施の形態2.
図3を用いて、実施の形態2に係る燃料電池システム1について説明する。実施の形態2では、実施の形態1のアノード排ガス分岐流路61に二酸化炭素分離回収装置50を設ける。その他の構成は実施の形態1と同様であり、同様の構成については説明を省略する。図3中の図1と同一符号は、同一又は相当部分を示す。また図3では、制御装置4、空気流量調整弁71、原燃料流量調整弁72、及び水蒸気流量調整弁73、アノード排ガス第1流量調整弁74、及びアノード排ガス第2流量調整弁75を図示しないが、実施の形態1と同様に機能する。
【0027】
二酸化炭素分離回収装置50は、例えば二酸化炭素分離膜やPSA(Pressure Swing Adsorption)を用いてCO2を回収する。これにより、アノード排ガス分岐流路61を通って燃焼器21に供給されるアノード排ガスからCO2を回収する。
【0028】
このように構成された燃料電池システムも同様に、改質器20に熱を与えて改質ガスの生成に必要な高温状態を維持しつつ、例えば熱風乾燥炉等の高温の熱を必要とする第1熱利用設備41にカソード排ガスが持つ熱を供給できる。
【0029】
さらに、燃焼器21に供給されるアノード排ガス中からCO2を回収するため、燃焼器21から排出されるCO2量を削減することができる。従って、さらにCO2排出量の削減効果を大きくすることができる。
【0030】
実施の形態3.
図4を用いて、実施の形態3に係る燃料電池システム1について説明する。実施の形態3では、凝縮器23の冷却水が流れる冷却水流路82を、例えば貯湯槽等の低温の熱を利用する第2熱利用設備42に接続する。その他の構成は実施の形態1と同様であり、同様の構成については説明を省略する。図4中の図1と同一符号は、同一又は相当部分を示す。また図4では、制御装置4、空気流量調整弁71、原燃料流量調整弁72、及び水蒸気流量調整弁73、アノード排ガス第1流量調整弁74、及びアノード排ガス第2流量調整弁75を図示しないが、実施の形態1と同様に機能する。
【0031】
冷却水流路82を循環する冷却水は、凝縮器23を介してアノード排ガスを冷却し、アノード排ガスに含まれる水蒸気を凝縮して回収する。アノード排ガスから熱を受け取った冷却水は、60℃程度の低温の熱を第2熱利用設備42に与える。
【0032】
このように構成された燃料電池システムも同様に、改質器20に熱を与えて改質ガスの生成に必要な高温状態を維持しつつ、例えば熱風乾燥炉等の高温の熱を必要とする第1熱利用設備41にカソード排ガスが持つ熱を供給できる。
【0033】
さらに、凝縮器23を介して冷却水がアノード排ガスから回収した低温の熱を第2熱利用設備42に与えることができるため、供給できる合計の熱量が増加する。これにより、これまで第2熱利用設備42に熱を供給していた例えばボイラ等の稼働率をさらに低減できるため、CO2排出量をさらに削減できる。
【0034】
実施の形態4.
図5を用いて、実施の形態4に係る燃料電池システム1について説明する。実施の形態4では、燃料電池本体2で発電した電力により動作するヒートポンプ43を備える。その他の構成は実施の形態1と同様であり、同様の構成については説明を省略する。図5中の図1と同一符号は、同一又は相当部分を示す。また図5では、制御装置4、空気流量調整弁71、原燃料流量調整弁72、及び水蒸気流量調整弁73、アノード排ガス第1流量調整弁74、及びアノード排ガス第2流量調整弁75を図示しないが、実施の形態1と同様に機能する。
【0035】
ヒートポンプ43には、冷却水流路82が接続され、凝縮器23とヒートポンプ43との間で冷却水が循環する。冷却水流路82を循環する冷却水は、凝縮器23を介してアノード排ガスを冷却し、アノード排ガスに含まれる水蒸気を凝縮して回収する。アノード排ガスから熱を受け取った冷却水は、60℃程度の低温の熱をヒートポンプ43に与える。ヒートポンプ43は、出力電力ライン91により供給された燃料電池本体2で発電した電力により動作し、冷却水の持つ低温の熱から熱媒に熱を与え、100~150℃の熱媒を供給する。この熱媒を介して高温の熱を利用する第1熱利用設備41に熱が与えられる。
【0036】
このように構成された燃料電池システムも同様に、改質器20に熱を与えて改質ガスの生成に必要な高温状態を維持しつつ、例えば熱風乾燥炉等の高温の熱を必要とする第1熱利用設備41にカソード排ガスが持つ熱を供給できる。
【0037】
さらに、凝縮器23を介して冷却水がアノード排ガスから回収した低温の熱を、ヒートポンプにより昇温して高温の熱として第1熱利用設備41に与えることができる。これにより、利用先が例えば貯湯槽等の低温の熱を利用する第2熱利用設備42に限られていた冷却水を、熱風乾燥炉等の高温の熱を必要とする第1熱利用設備41にも適用することができる。
【0038】
実施の形態5.
図6を用いて、実施の形態5に係る燃料電池システム1について説明する。実施の形態5では、原燃料流路51に第2熱交換器32を、アノード排ガス分岐流路61に第3熱交換器33を設け、これらに工場44の排熱を供給する。その他の構成は実施の形態1と同様であり、同様の構成については説明を省略する。図6中の図1と同一符号は、同一又は相当部分を示す。また図6では、制御装置4、空気流量調整弁71、原燃料流量調整弁72、及び水蒸気流量調整弁73、アノード排ガス第1流量調整弁74、及びアノード排ガス第2流量調整弁75を図示しないが、実施の形態1と同様に機能する。
【0039】
第2熱交換器32は、工場44の例えば200℃程度の排熱を受け取り、原燃料流路51を流れる原燃料との熱交換を行い、原燃料を昇温する。第3熱交換器33は、第2熱交換器32と同様に工場44の排熱を受け取り、アノード排ガス分岐流路61を流れるアノード排ガスとの熱交換を行い、アノード排ガスを昇温する。
【0040】
原燃料及びアノード排ガスを昇温すると、改質器20に供給される熱量が増大する。これにより、反応式(1)及び反応式(2)で表される改質反応に必要な熱が余るため、燃焼器21における燃焼を減らすことができる。従って、アノード排ガス分岐流路61を流れて燃焼器21に供給されるアノード排ガス流路を減らして、リサイクルガス流路60に流れるアノード排ガス流量、つまりリサイクル率を上昇させることができる。
【0041】
このように構成された燃料電池システムも同様に、改質器20に熱を与えて改質ガスの生成に必要な高温状態を維持しつつ、例えば熱風乾燥炉等の高温の熱を必要とする第1熱利用設備41にカソード排ガスが持つ熱を供給できる。
【0042】
さらに、原燃料に工場44の排熱を与える第2熱交換器32及びアノード排ガスに工場44の排熱を与える第3熱交換器33を備える構成により、改質反応に必要な熱が補われてリサイクル率が向上し、発電効率を向上させることができる。
【0043】
なお、第2熱交換器32及び第3熱交換器33を備える例について説明したが、いずれか1つで改質反応に必要な熱を補ってリサイクル率を向上できる場合は、第2熱交換器32又は第3熱交換器33のいずれか1つを設けてもよい。
【0044】
実施の形態6.
図7を用いて、実施の形態6に係る燃料電池システム1について説明する。実施の形態6では、燃料電池本体2で発電した電力により動作する電気ボイラ45を備える。その他の構成は実施の形態1と同様であり、同様の構成については説明を省略する。図7中の図1と同一符号は、同一又は相当部分を示す。また図7では、制御装置4、空気流量調整弁71、原燃料流量調整弁72、及び水蒸気流量調整弁73、アノード排ガス第1流量調整弁74、及びアノード排ガス第2流量調整弁75を図示しないが、実施の形態1と同様に機能する。
【0045】
電気ボイラ45は、出力電力ライン92により供給された燃料電池本体2の電力により動作して熱媒を加熱し、100~150℃に昇温する。電気ボイラ45で生成した高温の熱媒を介して、例えば熱風乾燥炉等の高温の熱を利用する第1熱利用設備41に熱が与えられる。
【0046】
このように構成された燃料電池システムも同様に、改質器20に熱を与えて改質ガスの生成に必要な高温状態を維持しつつ、例えば熱風乾燥炉等の高温の熱を必要とする第1熱利用設備41にカソード排ガスが持つ熱を供給できる。
【0047】
さらに、燃料電池本体2で発電した電力で動作する電気ボイラ45により第1熱利用設備41に熱を与えられるため、例えばボイラ等の設備の稼働率が低減され、CO2排出量を削減できる。また、二酸化炭素分離回収装置50をアノード排ガス分岐流路61に設けてアノード排ガス中からCO2を回収すると、燃料電池システム1の系外排出するCO2がさらに低減されるため、さらにCO2排出量を削減できる。
【0048】
なお、本実施の形態において、カソード排ガスからの熱供給を減らすか、カソード排ガスからの熱供給を停止して電気ボイラ45のみで熱利用設備40に熱を供給してもよい。この場合、カソード排ガスからの熱の供給量が低減するため、カソード排ガスの温度が高いまま燃焼器21に供給されるため、燃焼器21での燃焼熱を大きくできる。
【0049】
また、実施の形態1~6において、例えばリサイクル率が65%以上で、凝縮器23の温度を80~90℃程度に設定した場合、アノード排ガスに含まれる水蒸気の凝縮が抑制され、アノード排ガスに含まれる水蒸気のみで改質反応に必要な水蒸気が賄われるため、水供給源12、水蒸気発生器22、水蒸気流量調整弁73、及び水供給源12とミキサ24とを連通する水蒸気流路81を省略できる。これにより、水供給源12、水蒸気発生器22、水蒸気流量調整弁73、及び水蒸気流路81を省略した簡素なシステムで、カソード排ガスの熱を熱利用設備40に供給可能となる。
【0050】
また、複数の実施の形態を説明したが、上記の開示内容以外にも、各実施の形態に記載された特徴が矛盾しない限り、各実施の形態の自由な組み合わせ、各実施の形態の任意の構成要素の変形、又は各実施の形態の省略が可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 燃料電池システム、2 燃料電池本体、3 燃料電池スタック、4 制御装置、20 改質器、21 燃焼器、22 水蒸気発生器、23 凝縮器、24 ミキサ、31 第1熱交換器、32 第2熱交換器、33 第3熱交換器、41 第1熱利用設備、42 第2熱利用設備、43 ヒートポンプ、45 電気ボイラ、50 二酸化炭素分離回収装置、60 リサイクルガス流路、61 アノード排ガス分岐流路、62 カソード排ガス流路、70 カソード排ガス流量調整弁、71 空気流量調整弁、72 原燃料流量調整弁、73 水蒸気流量調整弁、74 アノード排ガス第1流量調整弁、75 アノード排ガス第2流量調整弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7