(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126365
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】減圧封止治具
(51)【国際特許分類】
A47J 41/02 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
A47J41/02 102D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034689
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000190677
【氏名又は名称】新光産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】部坂 正樹
【テーマコード(参考)】
4B002
【Fターム(参考)】
4B002AA02
4B002AA18
4B002BA31
4B002CA32
(57)【要約】
【課題】組立て及び分解が容易で、簡単な手順で減圧対象物を大気圧下の作業で確実に減圧して封止することができる施工性に優れた減圧封止治具を提供する。
【解決手段】排気管15の長手方向先側の排気口16の外周に形成された排気口フランジ17に封止蓋18が固定されることにより、排気口16が密閉される減圧対象物11の減圧及び封止に用いられる減圧封止治具10であって、排気管15に着脱可能に装着され、排気口フランジ17及び封止蓋18を密閉可能に覆って真空引きポンプと接続される減圧室20と、減圧室20に摺動可能に保持され封止蓋18を排気口フランジ17に向かって移動させる押圧具21とを有し、減圧室20は、押圧具21により封止蓋18が押圧されて排気口16が密閉され減圧対象物11が減圧された状態で開閉可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気管の長手方向先側の排気口の外周に形成された排気口フランジに封止蓋が固定されることにより、前記排気口が密閉される減圧対象物の減圧及び封止に用いられる減圧封止治具であって、
前記排気管に着脱可能に装着され、前記排気口フランジ及び前記封止蓋を密閉可能に覆って真空引きポンプと接続される減圧室と、該減圧室に摺動可能に保持され前記封止蓋を前記排気口フランジに向かって移動させる押圧具とを有し、前記減圧室は、前記押圧具により前記封止蓋が押圧されて前記排気口が密閉され前記減圧対象物が減圧された状態で開閉可能であることを特徴とする減圧封止治具。
【請求項2】
請求項1記載の減圧封止治具において、前記減圧室は、前記排気管の長手方向途中に設けられたジョイントプレートの基側に配置されるベースフランジと、前記ジョイントプレートを挟んで前記ベースフランジと対向配置され該ベースフランジに螺子止めされるカバーフランジと、前記カバーフランジの内側に保持され前記排気口フランジ及び前記封止蓋の外周を囲む透明パイプ部と、前記透明パイプ部の先側に連設され、前記押圧具を気密状態で摺動可能に保持する押圧具保持手段とを有することを特徴とする減圧封止治具。
【請求項3】
請求項2記載の減圧封止治具において、前記押圧具保持手段は、筒状に形成された外ケースと、該外ケースに内挿されたベローズと、中央部に貫通孔が形成され前記ベローズの先側を前記外ケースに固定して該外ケースの先側を封止するベローズ固定具と、前記ベローズの基側を閉塞するベローズカバーとを有し、前記押圧具は、前記封止蓋と前記ベローズカバーとの間に配置されるシャフトと、前記ベローズに内挿されて基側が前記ベローズカバーに当接し、先側が前記貫通孔から前記減圧室の外部に突出し、前記シャフトを介して前記封止蓋を押圧可能な押圧軸とを有することを特徴とする減圧封止治具。
【請求項4】
請求項2又は3記載の減圧封止治具において、前記押圧具保持手段は、前記外ケースの基側に連設され前記カバーフランジと着脱可能に連結されて前記透明パイプ部の先側を保持するパイプ押さえを有し、該パイプ押さえは、前記シャフトを摺動可能に保持するシャフト挿通部と、前記透明パイプ部と前記外ケースとを連通させる通気孔とを有することを特徴とする減圧封止治具。
【請求項5】
請求項3記載の減圧封止治具において、前記シャフトの基側端部に、前記封止蓋と着脱可能に連結される連結部が形成され、前記ベローズカバーの基側に、前記シャフトの先側端部を固定保持する嵌合部が形成されていることを特徴とする減圧封止治具。
【請求項6】
請求項3記載の減圧封止治具において、前記ベローズの基側端部に、前記押圧軸の基側端部を回動可能に保持する押圧軸保持部が形成され、前記押圧軸の先側に雄螺子部が形成され、前記押圧具は、複数のタイロッドを介して前記ベースフランジと着脱可能に連結される押圧フランジを有し、該押圧フランジの中央部に、前記押圧軸の前記雄螺子部と螺合される雌螺子孔が形成されたことを特徴とする減圧封止治具。
【請求項7】
請求項6記載の減圧封止治具において、前記減圧室の減圧時に、前記ベローズ固定具の先側で前記押圧軸に嵌着され、前記排気口フランジと前記封止蓋との初期間隔を設定するスペーサーを備えたことを特徴とする減圧封止治具。
【請求項8】
請求項1記載の減圧封止治具において、前記減圧室及び前記減圧対象物が減圧された状態で、前記押圧具によって前記封止蓋が押圧され、前記排気口フランジと前記封止蓋との間に、繰り返し使用可能な金属ガスケットが挟持されることにより、前記排気口が密閉されることを特徴とする減圧封止治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減圧対象物を減圧して封止するために用いられ、特に真空二重容器(魔法瓶)、真空容器、真空二重管等の真空構造体の真空引き及び封止に好適な減圧封止治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な真空引きの作業工程では大掛かりな設備を必要とし、ろう材又はガラスによる排気孔の封止方法も工程が煩雑で生産性に欠けるという問題があった。これに対し、例えば、特許文献1には、排気孔の周囲において構造部材に対して金属箔を介在させて金属板を抵抗溶接又は真空拡散接合し、排気孔を封止する真空構造体の封止方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、従来よりも封止工程が簡素化され、封止後の真空構造体の後加工も容易になるが、抵抗溶接及び真空拡散接合は、従来のろう材又はガラスによる封止と同様に、真空下で行われる必要がある。また、抵抗溶接及び真空拡散接合を行っている間は、金属箔及び金属板を加熱加圧し続けなければならない。
従って、構造及び工程がさらに簡素化され、減圧対象物の減圧及び封止を簡単かつ確実に行うことができる減圧封止治具の開発が望まれていた。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、組立て及び分解が容易で、簡単な手順で減圧対象物を大気圧下の作業で確実に減圧して封止することができる施工性に優れた減圧封止治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的に沿う本発明に係る減圧封止治具は、排気管の長手方向先側の排気口の外周に形成された排気口フランジに封止蓋が固定されることにより、前記排気口が密閉される減圧対象物の減圧及び封止に用いられる減圧封止治具であって、
前記排気管に着脱可能に装着され、前記排気口フランジ及び前記封止蓋を密閉可能に覆って真空引きポンプと接続される減圧室と、該減圧室に摺動可能に保持され前記封止蓋を前記排気口フランジに向かって移動させる押圧具とを有し、前記減圧室は、前記押圧具により前記封止蓋が押圧されて前記排気口が密閉され前記減圧対象物が減圧された状態で開閉可能である。
【0006】
本発明に係る減圧封止治具において、前記減圧室は、前記排気管の長手方向途中に設けられたジョイントプレートの基側に配置されるベースフランジと、前記ジョイントプレートを挟んで前記ベースフランジと対向配置され該ベースフランジに螺子止めされるカバーフランジと、前記カバーフランジの内側に保持され前記排気口フランジ及び前記封止蓋の外周を囲む透明パイプ部と、前記透明パイプ部の先側に連設され、前記押圧具を気密状態で摺動可能に保持する押圧具保持手段とを有することが好ましい。
【0007】
本発明に係る減圧封止治具において、前記押圧具保持手段は、筒状に形成された外ケースと、該外ケースに内挿されたベローズと、中央部に貫通孔が形成され前記ベローズの先側を前記外ケースに固定して該外ケースの先側を封止するベローズ固定具と、前記ベローズの基側を閉塞するベローズカバーとを有し、前記押圧具は、前記封止蓋と前記ベローズカバーとの間に配置されるシャフトと、前記ベローズに内挿されて基側が前記ベローズカバーに当接し、先側が前記貫通孔から前記減圧室の外部に突出し、前記シャフトを介して前記封止蓋を押圧可能な押圧軸とを有することが好ましい。
【0008】
本発明に係る減圧封止治具において、前記押圧具保持手段は、前記外ケースの基側に連設され前記カバーフランジと着脱可能に連結されて前記透明パイプ部の先側を保持するパイプ押さえを有し、該パイプ押さえは、前記シャフトを摺動可能に保持するシャフト挿通部と、前記透明パイプ部と前記外ケースとを連通させる通気孔とを有することができる。
【0009】
本発明に係る減圧封止治具において、前記シャフトの基側端部に、前記封止蓋と着脱可能に連結される連結部が形成され、前記ベローズカバーの基側に、前記シャフトの先側端部を固定保持する嵌合部が形成されてもよい。
【0010】
本発明に係る減圧封止治具において、前記ベローズの基側端部に、前記押圧軸の基側端部を回動可能に保持する押圧軸保持部が形成され、前記押圧軸の先側に雄螺子部が形成され、前記押圧具は、複数のタイロッドを介して前記ベースフランジと着脱可能に連結される押圧フランジを有し、該押圧フランジの中央部に、前記押圧軸の前記雄螺子部と螺合される雌螺子孔が形成されることが好ましい。
【0011】
本発明に係る減圧封止治具において、前記減圧室の減圧時に、前記ベローズ固定具の先側で前記押圧軸に嵌着され、前記排気口フランジと前記封止蓋との初期間隔を設定するスペーサーを備えてもよい。
【0012】
本発明に係る減圧封止治具において、前記減圧室及び前記減圧対象物が減圧された状態で、前記押圧具によって前記封止蓋が押圧され、前記排気口フランジと前記封止蓋との間に、繰り返し使用可能な金属ガスケットが挟持されることにより、前記排気口が密閉されることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る減圧封止治具によれば、減圧対象物の排気管に着脱可能に装着される減圧室で排気口フランジ及び封止蓋を覆って、減圧対象物及び減圧室の内部を減圧した後、押圧具により封止蓋を押圧して排気口を密閉できると共に、排気口が封止蓋で密閉された状態で減圧室を開放し、排気口フランジに封止蓋を固定して排気口を確実に密閉することができ、真空バルブを用いる必要がなく、減圧対象物の減圧及び封止の作業を簡素化することができる。
【0014】
本発明に係る減圧封止治具において、減圧室が、排気管の長手方向途中に設けられたジョイントプレートの基側に配置されるベースフランジと、ジョイントプレートを挟んでベースフランジと対向配置されベースフランジに螺子止めされるカバーフランジと、カバーフランジの内側に保持され排気口フランジ及び封止蓋の外周を囲む透明パイプ部と、透明パイプ部の先側に連設され、押圧具を気密状態で摺動可能に保持する押圧具保持手段とを有する場合、排気管への着脱が容易で、作業者は透明パイプ部を通して排気口フランジと封止蓋との密着状態を目視で確認することができ、封止蓋で排気口が密閉された状態で、押圧具に対し、カバーフランジ、透明パイプ部及び押圧具保持手段を摺動させて減圧室を開放することができる。
【0015】
本発明に係る減圧封止治具において、押圧具保持手段が、筒状に形成された外ケースと、外ケースに内挿されたベローズと、中央部に貫通孔が形成されベローズの先側を外ケースに固定して外ケースの先側を封止するベローズ固定具と、ベローズの基側を閉塞するベローズカバーとを有し、押圧具が、封止蓋とベローズカバーとの間に配置されるシャフトと、ベローズに内挿されて基側がベローズカバーに当接し、先側が貫通孔から減圧室の外部に突出し、シャフトを介して封止蓋を押圧可能な押圧軸とを有する場合、摺動する押圧軸の周囲をベローズで覆って減圧室の内部の密閉状態を維持しつつ、封止蓋を確実に押圧して排気口を密閉することができる。
【0016】
本発明に係る減圧封止治具において、押圧具保持手段が、外ケースの基側に連設されカバーフランジと着脱可能に連結されて透明パイプ部の先側を保持するパイプ押さえを有し、パイプ押さえが、シャフトを摺動可能に保持するシャフト挿通部と、透明パイプ部と外ケースとを連通させる通気孔とを有する場合、カバーフランジとパイプ押さえで透明パイプ部を挟持して、透明パイプ部と押圧具保持手段を一体化することができ、摺動するシャフトをパイプ押さえで支持することができると共に、減圧室の内部を均一に減圧することができる。
【0017】
本発明に係る減圧封止治具において、シャフトの基側端部に、封止蓋と着脱可能に連結される連結部が形成され、ベローズカバーの基側に、シャフトの先側端部を固定保持する嵌合部が形成されている場合、シャフトの軸ズレが防止され、押圧軸で押圧されるシャフトをスムーズかつ確実に摺動させて、封止蓋を排気口フランジに密着させることができる。
【0018】
本発明に係る減圧封止治具において、ベローズの基側端部に、押圧軸の基側端部を回動可能に保持する押圧軸保持部が形成され、押圧軸の先側に雄螺子部が形成され、押圧具が、複数のタイロッドを介してベースフランジと着脱可能に連結される押圧フランジを有し、押圧フランジの中央部に、押圧軸の雄螺子部と螺合される雌螺子孔が形成されている場合、押圧軸を回転させることにより、押圧軸の摺動に連動させてベローズを伸縮させ、シャフトを介して封止蓋を排気口フランジに向かって押圧する押圧軸の位置を固定し、封止蓋と排気口フランジとの密着状態を維持することができる。
【0019】
本発明に係る減圧封止治具において、減圧室の減圧時に、ベローズ固定具の先側で押圧軸に嵌着され、排気口フランジと封止蓋との初期間隔を設定するスペーサーを備えている場合、押圧軸の移動量を管理して、封止蓋と排気口フランジを確実に密着させることができる。
【0020】
本発明に係る減圧封止治具において、減圧室及び減圧対象物が減圧された状態で、押圧具によって封止蓋が押圧され、排気口フランジと封止蓋との間に、繰り返し使用可能な金属ガスケットが挟持されることにより、排気口が密閉される場合、従来のゴム又は空気の透過リークが懸念される樹脂製のOリング等による封止とは異なり、減圧対象物の減圧状態(高真空)が長期間にわたって維持されるだけでなく、低コスト化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る減圧封止治具が減圧対象物の排気管に装着された状態を示す部分断面正面図である。
【
図2】同減圧封止治具により減圧対象物及び減圧室の内部が減圧され排気口が封止蓋で密閉された状態を示す部分断面正面図である。
【
図3】同減圧封止治具により減圧対象物が減圧され排気口が封止蓋で密閉された後に減圧室が開放された状態を示す部分断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1~
図3に示す本発明の一実施の形態に係る減圧封止治具10は、減圧対象物11を減圧して封止するために用いられる。減圧対象物11は、内側容器壁12と外側容器壁13で構成され、内側容器壁12と外側容器壁13との間に形成される中空部14が減圧され真空となることにより、真空二重容器として使用される。減圧対象物11は、中空部14と連通する排気管15を有しており、排気管15の長手方向先側の排気口16の外周に排気口フランジ17が形成されている。この排気口フランジ17に封止蓋18が螺子止め固定されることにより、排気口16が密閉される。
【0023】
以下、減圧封止治具10の詳細について説明する。
減圧封止治具10は、排気管15に着脱可能に装着され、排気口フランジ17及び封止蓋18を密閉可能に覆って真空引きポンプ(図示せず)と接続される真空引きポンプ接続口19を有する減圧室20と、減圧室20に摺動可能に保持され封止蓋18を排気口フランジ17に向かって移動させる押圧具21とを有している。
減圧室20は、排気管15の長手方向途中(外側容器壁13の外表面と排気口フランジ17との間)に設けられたジョイントプレート22の基側に配置されるベースフランジ23と、ジョイントプレート22を挟んでベースフランジ23と対向配置されベースフランジ23に螺子止めされるカバーフランジ24を有している。
【0024】
本実施の形態では、ベースフランジ23が2つ割り(半割)で形成されることにより、ジョイントプレート22の基側に配置可能となっている。そして、平面視して、ベースフランジ23の円周上には複数(例えば4つ)の雌螺子孔23aが形成され、カバーフランジ24の円周上には、雌螺子孔23aの位置に対応して雄螺子挿通孔24aが形成されている。従って、雄螺子挿通孔24aから挿通されるカバーフランジ固定雄螺子25が雌螺子孔23aに螺合され、ベースフランジ23とカバーフランジ24が連結されることにより、ベースフランジ23とカバーフランジ24でジョイントプレート22が挟持され、減圧室20が排気管15に装着(固定)される。
【0025】
さらに、減圧室20は、カバーフランジ24の内側に保持され排気口フランジ17及び封止蓋18の外周を囲む透明パイプ部26と、透明パイプ部26の先側に連設され、押圧具21を気密状態(減圧室20の真空を含む減圧状態(密閉状態)を維持したまま)で摺動可能に保持する押圧具保持手段27とを有する。
押圧具保持手段27は、筒状に形成された外ケース28と、外ケース28に内挿されたベローズ29と、中央部に貫通孔30が形成されベローズ29の先側を外ケース28に固定して外ケース28の先側を封止するベローズ固定具31と、ベローズ29の基側を閉塞するベローズカバー32とを有している。
押圧具21は、封止蓋18とベローズカバー32との間に配置されるシャフト34と、ベローズ29に内挿されて基側がベローズカバー32に当接し、先側がベローズ固定具31の貫通孔30から減圧室20(押圧具保持手段26の外ケース28)の外部に突出し、シャフト34を介して封止蓋18を押圧可能な押圧軸35を有している。
【0026】
ここで、シャフト34の基側端部には、封止蓋18と着脱可能に連結される連結部36が形成され、ベローズカバー32の基側には、シャフト34の先側端部37を保持して軸ズレを防止する嵌合部38が形成されている。これにより、押圧軸35の力を確実にシャフト34に伝達することができ、減圧室20の外から封止蓋18を押圧して排気口フランジ17に密着させることができる。
なお、本実施の形態では、封止蓋18の先側表面の中央部に形成された凹部39に、Oリング40が装着されたシャフト34の連結部36が差し込まれることにより、封止蓋18にシャフト34が連結されているが、封止蓋側に凸部が形成され、シャフト側に凹部が形成されて両者が連結されてもよい。
また、本実施の形態では、ベローズカバー32の嵌合部38が凹状に形成され、シャフト34の先側端部37が凸状に形成されているが、ベローズカバーの嵌合部が凸状に形成され、シャフトの先側端部が凹状に形成されてもよい。なお、先側端部は、シャフトと一体に形成されてもよいし、別部材で形成されて溶接によりシャフトと一体化されてもよい。
【0027】
押圧具保持手段27は、外ケース28の基側に連設されカバーフランジ24と着脱可能に連結されて透明パイプ部26の先側を保持するパイプ押さえ42を有している。本実施の形態では、平面視して、カバーフランジ24の円周上に複数(例えば2つ)の雌螺子孔24bが形成され、パイプ押さえ42の円周上に、雌螺子孔24bの位置に対応して雄螺子挿通孔42aが形成されている。従って、雄螺子挿通孔42aから挿通される連結雄螺子43が雌螺子孔24bに螺合されることにより、カバーフランジ24とパイプ押さえ42が連結されて、カバーフランジ24とパイプ押さえ42で透明パイプ部26が保持(挟持)される。また、パイプ押さえ42は、シャフト34を摺動可能に保持するシャフト挿通部45と、透明パイプ部26と外ケース28とを連通させる通気孔46を有している。本実施の形態では、平面視してシャフト挿通部45の外周に等角度間隔で6つの円形の通気孔46が配置されているが、これは減圧時の排気のためであり、通気孔の形状、大きさ、数及び配置は、適宜、選択される。
【0028】
ジョイントプレート22とカバーフランジ24との接触面(カバーフランジ24の基側表面)、カバーフランジ24と透明パイプ部26との接触面(カバーフランジ24の内周面)及び透明パイプ部26とパイプ押さえ42との接触面(パイプ押さえ42の内周面)は、それぞれOリング47によって気密性が保たれている。透明パイプ部26の材質として耐熱ガラスが好適に用いられるが、これに限定されるものではなく、減圧によって破損しない耐久性を有する材質が適宜、選択される。
なお、排気口フランジ17及び封止蓋18の外周が透明パイプ部26で囲まれることにより、作業者は作業中に排気口フランジ17と封止蓋18との密着状態を目視で確認することができるが、排気口フランジ17と封止蓋18が密着すれば、押圧具21(押圧軸35)は動かなくなるので、目視による確認は必須ではなく、透明パイプ部の代わりに金属等で形成された不透明なパイプが使用されてもよい。
また、外ケース28、ベローズ固定具31及びパイプ押さえ42はステンレス等の金属で形成され、溶接により一体化されている。
【0029】
以上の構成により、減圧室20全体の気密性が保たれると共に、減圧時の変形が防止される。なお、本実施の形態では、直径の異なる2つの筒体28a、28bが連結(溶接)されて外ケース28が形成されているが、外ケースの形状はこれに限定されるものではなく、適宜、選択される。また、本実施の形態では、外ケース28の先側(筒体28a)に真空引きポンプ接続口19が形成されているが、真空引きポンプ接続口の位置は、適宜、選択される。
ベローズ29の基側端部には、押圧軸35の基側端部35aを回動可能に保持する押圧軸保持部48が形成されている。また、押圧軸35の先側に連結された雄螺子形成体50の外周に雄螺子部50aが形成されている。本実施の形態では、雄螺子形成体50の基側に押圧軸35より大径の嵌着部50bが形成されることにより、押圧軸35と雄螺子形成体50が連結(嵌着)され一体化されているが、押圧軸35への雄螺子形成体50の取付方法は、適宜、選択される。また、押圧軸の先側外周に直接、雄螺子部が形成されてもよい。
【0030】
押圧具21は、複数(例えば4本)のタイロッド52を介してベースフランジ23と着脱可能に連結される押圧フランジ53を有している。ここで、タイロッド52の両端部にはそれぞれ雄螺子部52a、52bが形成されている。そして、平面視して、ベースフランジ23の円周上には複数(例えば4つ)の連結用雌螺子孔23bが形成され、押圧フランジ53の円周上には、連結用雌螺子孔23bの位置に対応してタイロッド挿通孔53aが形成されている。従って、タイロッド52の基側の雄螺子部52aがベースフランジ23の連結用雌螺子孔23bに螺着され、タイロッド挿通孔53aに挿通されるタイロッド52の先側の雄螺子部52bに固定ナット54が螺着されることにより、ベースフランジ23と押圧フランジ53が連結され一定の間隔に保持される。また、押圧フランジ53の中央部には、押圧軸35の先側の雄螺子部50aと螺合される雌螺子部55が形成されている。そして、減圧室20の減圧時に、ベローズ固定具31の先側(ここでは、嵌着部50bとベローズ固定具31との間)で、押圧軸35に平面視してU字型又はC字型のスペーサー56が嵌着される。これにより、排気口フランジ17と封止蓋18との初期間隔(例えば10mm)を設定することができ、排気口16から確実に排気して中空部14を減圧することができる。減圧室20内の圧力は圧力計(図示せず)でモニタリングすることができ、減圧対象物11(中空部14)を所望の圧力(例えば真空)まで減圧することができる。
【0031】
図1において、減圧対象物11の中空部14及び減圧室20が減圧された状態からスペーサー56を取り外し、作業者が押圧軸35を回転させるだけで、
図2に示すように、押圧軸35を雌螺子孔55に沿って減圧対象物11側に移動させることができる。なお、雄螺子形成体50の先側端部には平面視して多角形状(四角形又は六角形)の工具装着部50cが形成されており、作業者はスパナ等の工具を用いて簡単に押圧軸35を回転させることができる。押圧軸35の移動に伴いベローズ29が伸長し、シャフト34が押圧軸35で押されて、封止蓋18が排気口フランジ17に近付き、やがて封止蓋18と排気口フランジ17が密着して排気口16が密閉される。
【0032】
その後、作業者は、
図2の状態からカバーフランジ固定雄螺子25を取り外し、カバーフランジ24に取付けられた取っ手57を排気口16の先側(ここでは上方)に向かって移動させる。このとき、ベースフランジ23と押圧フランジ53がタイロッド52で連結され、雄螺子部50aが、押圧フランジ53に形成された雌螺子孔54に螺合されているので、封止蓋18、シャフト34、ベローズカバー32及び押圧軸35は固定されたまま移動せず、
図3に示すように、カバーフランジ24、透明パイプ部26、外ケース28及びベローズ固定具31のみが押圧軸35に沿って移動し、ベローズ29が伸長する。つまり、減圧室20は、押圧具21により封止蓋18が押圧されて排気口16が密閉され減圧対象物11が減圧された状態で開閉可能となっている。
【0033】
図3に示すように、減圧室20が大気に開放された後、作業者が、ベースフランジ23と取っ手57の間にサポート具58を挟むことにより、ジョイントプレート22とカバーフランジ24の間にできた隙間59が維持される。ここで、平面視して、封止蓋18の円周上には複数(例えば4つ)の雌螺子孔18aが形成され、予め封止用雄螺子60が螺着されており、排気口フランジ17の円周上には、雌螺子孔18aの位置に対応して雄螺子挿通孔17aが形成されている。
従って、排気口フランジ17と封止蓋18が密着した状態では、封止用雄螺子60の先端が雄螺子挿通孔17aから排気口フランジ17の基側に突出した状態となるので、作業者は隙間59から封止用雄螺子60に図示しない封止用雌螺子(例えばUナット)を螺着させて排気口16を封止、固定することができる。排気口16の封止後は、作業者は、減圧封止治具10の各部の螺子を緩めて減圧封止治具10を分解し、排気管15から取り外すことができる。
なお、排気口フランジ17と封止蓋18との間に、金属ガスケット61が挟持されることにより、封止後の減圧対象物11の減圧状態が長期間にわたって安定的に維持される。また、金属ガスケット61は繰り返し使用することができ、減圧対象物11の減圧状態が低下した際には、作業者は上記と同じ手順で減圧対象物11の減圧及び封止を行うことができる。
【0034】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものであり、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。上記実施の形態では、減圧対象物が真空二重容器の場合について説明したが、減圧封止治具は、真空容器、真空二重管等の真空構造体を含むその他の減圧対象物の減圧(真空引き)及び封止に用いられる。
また、上記実施の形態では、排気口フランジと封止蓋の固定手段として、排気口フランジと封止蓋の外周のフランジ部が螺子止め固定されるフランジ継手が用いられているが、排気口フランジと封止蓋の外周のフランジ部がクランプバンドで固定されるフェルール継手が用いられてもよい。
【符号の説明】
【0035】
10:減圧封止治具、11:減圧対象物(真空二重容器)、12:内側容器壁、13:外側容器壁、14:中空部、15:排気管、16:排気口、17:排気口フランジ、17a:雄螺子挿通孔、18:封止蓋、18a:雌螺子孔、19:真空引きポンプ接続口、20:減圧室、21:押圧具、22:ジョイントプレート、23:ベースフランジ、23a:雌螺子孔、23b:連結用雌螺子孔、24:カバーフランジ、24a:雄螺子挿通孔、24b:雌螺子孔、25:カバーフランジ固定雄螺子、26:透明パイプ部、27:押圧具保持手段、28:外ケース、28a、28b:筒体、29:ベローズ、30:貫通孔、31:ベローズ固定具、32:ベローズカバー、34:シャフト、35押圧軸、35a:基側端部、36:連結部、37:先側端部、38:嵌合部、39:凹部、40:Oリング、42:パイプ押さえ、42a:雄螺子挿通孔、43:連結雄螺子、45:シャフト挿通部、46:通気孔、47:Oリング、48:押圧軸保持部、50:雄螺子形成体、50a:雄螺子部、50b:嵌着部、50c:工具装着部、52:タイロッド、52a、52b:雄螺子部、53:押圧フランジ、53a:タイロッド挿通孔、54:固定ナット、55:雌螺子部、56:スペーサー、57:取っ手、58:サポート具、59:隙間、60:封止用雄螺子、61:金属ガスケット