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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128344
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】検出装置及び検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/04 20060101AFI20240913BHJP
   G01R 31/71 20200101ALI20240913BHJP
   H05K 1/14 20060101ALI20240913BHJP
   H05K 3/36 20060101ALI20240913BHJP
   H01R 4/02 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
G01N27/04 Z
G01R31/71
H05K1/14 G
H05K3/36 B
H01R4/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037270
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】前間 寛行
【テーマコード(参考)】
2G014
2G060
5E085
5E344
【Fターム(参考)】
2G014AA02
2G014AB24
2G014AB52
2G014AB59
2G014AC18
2G060AA09
2G060AE04
2G060AF07
2G060AG11
2G060KA15
5E085BB08
5E085BB26
5E085DD01
5E085JJ09
5E344AA01
5E344AA22
5E344BB02
5E344CD02
5E344DD02
5E344EE21
5E344EE26
5E344EE30
(57)【要約】
【課題】はんだ接合部を含む構造体の信頼性を高めることが可能な技術を提供することを目的とする。
【解決手段】検出装置は、取得部と、検出部とを備える。取得部は、構造体について抵抗値を取得する。構造体は、第1基板と、第2基板と、はんだ接合部とを含む。はんだ接合部は、第1基板及び第2基板の間を接合する。検出部は、取得部で取得された抵抗値のミリオームオーダーの変化に基づいて、前記はんだ接合部のクラック状態を検出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、第2基板と、前記第1基板及び前記第2基板の間を接合するはんだ接合部とを含む構造体について抵抗値を取得する取得部と、
前記抵抗値のミリオームオーダーの変化に基づいて、前記はんだ接合部のクラック状態を検出する検出部と
を備える、検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検出装置であって、
前記抵抗値は、前記はんだ接合部の抵抗値を含む、検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の検出装置であって、
前記取得部は、前記はんだ接合部と電気的に接続されることによってブリッジを形成する第1抵抗、第2抵抗、及び、第3抵抗を含み、
前記検出部は、前記ブリッジと接続されたオペアンプを含む、検出装置。
【請求項4】
請求項2に記載の検出装置であって、
前記はんだ接合部は、平面視において前記第1基板及び前記第2基板の角部に設けられている、検出装置。
【請求項5】
請求項1に記載の検出装置であって、
前記抵抗値は、前記第1基板及び前記第2基板の一方に設けられたひずみゲージの抵抗値を含む、検出装置。
【請求項6】
請求項5に記載の検出装置であって、
前記取得部は、前記ひずみゲージと電気的に接続されることによってブリッジを形成する第1抵抗、第2抵抗、及び、第3抵抗を含み、
前記検出部は、前記ブリッジと接続されたオペアンプを含む、検出装置。
【請求項7】
請求項5に記載の検出装置であって、
前記ひずみゲージは、平面視において前記第1基板及び前記第2基板の前記一方の角部に設けられている、検出装置。
【請求項8】
請求項1に記載の検出装置であって、
前記抵抗値は、前記第1基板及び前記第2基板の少なくとも一方に設けられたサーミスタの抵抗値を含む、検出装置。
【請求項9】
請求項8に記載の検出装置であって、
前記取得部は、
前記サーミスタが前記第1基板及び前記第2基板の一方に設けられている場合には、前記サーミスタと電気的に接続されることによってブリッジを形成する第1抵抗、第2抵抗、及び、第3抵抗を含み、前記サーミスタが前記第1基板及び前記第2基板の両方に設けられている場合には、前記サーミスタの両方と電気的に接続されることによってブリッジを形成する第1抵抗、及び、第2抵抗を含み、
前記検出部は、前記ブリッジと接続されたオペアンプを含む、検出装置。
【請求項10】
請求項8に記載の検出装置であって、
前記サーミスタは、平面視において前記第1基板及び前記第2基板の前記少なくとも一方の角部に設けられている、検出装置。
【請求項11】
請求項3、6または9に記載の検出装置であって、
前記取得部が前記第1抵抗、前記第2抵抗、及び、前記第3抵抗を含む場合には、前記第1抵抗、前記第2抵抗、及び、前記第3抵抗のいずれかが可変抵抗であり、
前記取得部が前記第1抵抗、及び、前記第2抵抗を含む場合には、前記第1抵抗、及び、前記第2抵抗のいずれかが可変抵抗である、検出装置。
【請求項12】
請求項1から請求項10のうちのいずれか1項に記載の検出装置であって、
前記第1基板及び前記第2基板のそれぞれは、電子機器の基板、集積回路の基板、または、半導体基板を含む、検出装置。
【請求項13】
第1基板と、第2基板と、前記第1基板及び前記第2基板の間を接合するはんだ接合部とを含む構造体について抵抗値を取得し、
前記抵抗値のミリオームオーダーの変化に基づいて、前記はんだ接合部のクラック状態を検出する、検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検出装置及び検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動運転などの人命にかかわる用途の移動機器において、高集積化及び高信頼性化が求められている。これらのうちの高集積化を実現するために、例えばBGA(Ball Grid Array)及びLGA(Land Grid Array)などのはんだ接合部を有するリードレスパッケージIC(Integrated Circuit)が提案されている。しかしながら、はんだ接合部の強度はリード部品の強度よりも低く、また、基板に挟まれたはんだ接合部の状態を確認することが難しいため、はんだ接合部を含む構造体の信頼性を高めることが求められている。
【0003】
そこで、例えば特許文献1には、はんだ接合部を含む構造体の抵抗値の変化に基づいて、はんだ接合部のクラックの発生を検出することにより、はんだ接合部を含む構造体の信頼性を高める技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-260957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術では、クラック発生後のはんだ接合部の割れた部分同士が、ほとんど接触していないことを想定しているため、抵抗値の変化がMΩオーダーであるか否かによって、はんだ接合部にクラックが発生しているか否かを検出する。しかしながら、このような従来技術では、進行中のクラックの有無、または、はんだ接合部の割れた部分同士がほとんど接触しているクラックの有無を検出できない。このため、はんだ接合部を含む構造体の信頼性を十分に高めることができないという問題があった。
【0006】
そこで、本開示は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、はんだ接合部を含む構造体の信頼性を高めることが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る検出装置は、第1基板と、第2基板と、第1基板及び第2基板の間を接合するはんだ接合部とを含む構造体について抵抗値を取得する取得部と、抵抗値のミリオームオーダーの変化に基づいて、はんだ接合部のクラック状態を検出する検出部とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、構造体についての抵抗値のミリオームオーダーの変化に基づいて、はんだ接合部のクラック状態を検出する。このような構成によれば、はんだ接合部を含む構造体の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係る検出装置のブロック構成及び構造体の断面構成を示す図である。
図2】実施の形態2に係る検出装置の回路構成を示す図である。
図3】実施の形態2の変形例1に係る検出装置の回路構成を示す図である。
図4】実施の形態2の変形例2に係る検出装置の回路構成を示す図である。
図5】実施の形態3に係る構造体の断面構成を示す図である。
図6】実施の形態3に係る構造体の断面構成を示す図である。
図7】実施の形態4に係る構造体の断面構成を示す図である。
図8】実施の形態4に係る構造体の断面構成を示す図である。
図9】実施の形態4の変形例1に係る構造体の断面構成を示す図である。
図10】実施の形態4の変形例1に係る検出装置の回路構成を示す図である。
図11】その他の変形例に係る構造体の断面構成を示す図である。
図12】その他の変形例に係る構造体の平面構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施の形態1>
図1は、本実施の形態1に係る検出装置1のブロック構成と、当該検出装置1の検出対象となる構造体6の断面構成とを示す図である。
【0011】
構造体6は、第1基板6aと、第2基板6bと、はんだ接合部6cとを含んでおり、はんだ接合部6cは、第1基板6aと第2基板6bとの間を接合する。本実施の形態1では、第1基板6a及び第2基板6bのそれぞれは、電子機器のプリント基板などの基板であるが、後述するように、これに限ったものではない。はんだ接合部6cは、例えばBGA及びLGAのはんだなどであり、第1基板6aの金属パターンと第2基板6bの金属パターンとを接合する。
【0012】
検出装置1は、取得部11と検出部12とを備える。
【0013】
取得部11は、構造体6について抵抗値を取得する。実施の形態2で説明するように、取得部11で取得される抵抗値は、はんだ接合部6cの抵抗値を含んでもよい。また、実施の形態3で説明するように、取得部11で取得される抵抗値は、第1基板6a及び第2基板6bの一方に設けられたひずみゲージの抵抗値を含んでもよい。また、実施の形態4で説明するように、取得部11で取得される抵抗値は、第1基板6a及び第2基板6bの少なくとも一方に設けられたサーミスタの抵抗値を含んでもよい。なお、本明細書において、例えばA、B、C、…、及び、Zの少なくとも一方とは、A、B、C、…、及び、Zのグループから1つ以上抜き出した全ての組合せのうちのいずれか1つであることを意味する。
【0014】
検出部12は、取得部11で取得された抵抗値のミリオームオーダーの変化に基づいて、はんだ接合部6cのクラック状態を検出する。ミリオームオーダーの変化は、例えば10m未満の変化である。クラック状態は、例えば、はんだ接合部6cの進行中のクラックの有無、または、はんだ接合部6cの割れた部分同士がほとんど接触しているクラック(以下、接触クラックと記す)の有無を含む。以下の説明では、進行中のクラックまたは接触クラックが生じている状態を異常状態と記し、進行中のクラックも接触クラックも生じていない状態を正常状態と記すこともある。
【0015】
検出装置1と接続された信号処理装置2は、進行中のクラックまたは接触クラックがはんだ接合部6cにあると検出部12で検出された場合に、構造体6で実現されている機能を制限したり、修理及び交換をユーザに通知したりする。
【0016】
<実施の形態1のまとめ>
以上のような本実施の形態1に係る検出装置1によれば、はんだ接合部6cを含む構造体6についての抵抗値のミリオームオーダーの変化に基づいて、はんだ接合部6cのクラック状態、つまり、はんだ接合部6cが正常状態であるか異常状態であるかを検出する。このような構成によれば、はんだ接合部6cにおける進行中のクラックまたは接触クラックを検出することができるので、構造体6の信頼性を高めることができる。
【0017】
<実施の形態2>
図2は、本実施の形態2に係る検出装置1の回路構成を示す図である。以下、本実施の形態2に係る構成要素のうち、上述の構成要素と同じまたは類似する構成要素については同じまたは類似する参照符号を付し、異なる構成要素について主に説明する。
【0018】
本実施の形態2では、取得部11で取得される抵抗値は、はんだ接合部6cの抵抗値を含む。取得部11は、はんだ接合部6cと電気的に接続されることによってブリッジを形成する第1抵抗11a、第2抵抗11b、及び、第3抵抗11cを含むように構成されている。検出部12は、当該ブリッジと接続されたオペアンプ12aを含むように構成されている。
【0019】
第1基板6aの金属パターンと、第2基板6bの金属パターンとの間は、第1はんだ接合部6c1と第2はんだ接合部6c2とによって電気的に接続されている。なお本実施の形態1では、第1基板6aの金属パターンに関して、第1はんだ接合部6c1と接続された金属パターンと、第2はんだ接合部6c2と接続された金属パターンとは直接的に接続されている。一方、第2基板6bの金属パターンに関して、第1はんだ接合部6c1と接続された金属パターンと、第2はんだ接合部6c2と接続された金属パターンとは直接的に接続されていない。
【0020】
第1はんだ接合部6c1と接続された第2基板6bの金属パターンは、第1抵抗11a、第2抵抗11b、第3抵抗11cをこの順に介して、第2はんだ接合部6c2と接続された第2基板6bの金属パターンと電気的に接続されている。電源11dは、第1抵抗11aと第2抵抗11bとからなる直列体と並列接続されている。第1抵抗11aと第2抵抗11bとの間の接続点は、オペアンプ12aの非反転入力端子と接続されている。第2はんだ接合部6c2と接続された第2基板6bの金属パターンと、第3抵抗11cとの間の接続点は、オペアンプ12aの反転入力端子と接続されている。
【0021】
ここで、第2基板6bの金属パターンから、第1はんだ接合部6c1、第1基板6aの金属パターン、第2はんだ接合部6c2、及び、第2基板6bの金属パターンまでの抵抗値を抵抗値RXと記す。また、第1抵抗11a、第2抵抗11b、及び、第3抵抗11cの抵抗値をそれぞれ抵抗値R1、抵抗値R2、及び、抵抗値R3と記す。
【0022】
上記構成によれば、オペアンプ12aは、RX<R2×R3/R1の場合に+信号を出力し、オペアンプ12aは、RX>R2×R3/R1の場合に-信号を出力する。一方、はんだ接合部6cが異常状態である場合の抵抗値RXは、はんだ接合部6cが正常状態である場合の抵抗値RXから、ミリオームオーダーの抵抗値だけ変化する。
【0023】
そこで、抵抗値R1,R2,R3を適切に調整し、オペアンプ12aで平衡状態を監視するようにすれば、オペアンプ12aは、正常状態の場合に+信号を出力し、異常状態の場合に-信号を出力することができる。例えば、抵抗値RXが数mΩ程度である場合には、抵抗値R1は数十Ω~数百Ωであり、抵抗値R2は数十kΩであり、抵抗値R3は数Ωであるように構成されてもよい。
【0024】
<実施の形態2のまとめ>
以上のような本実施の形態2に係る検出装置1によれば、はんだ接合部6cの抵抗値を含む抵抗値RXのミリオームオーダーの変化に基づいて、はんだ接合部6cのクラック状態を検出する。このような構成によれば、構造体6の信頼性を高めることができる。
【0025】
また本実施の形態2によれば、取得部11は、第1抵抗11a、第2抵抗11b、及び、第3抵抗11cを含み、検出部12はオペアンプ12aを含む。このような構成によれば、オペアンプ12aは数百以上の増幅率で入力値を増幅することができるため、はんだ接合部6cの抵抗値の変化が小さくても、クラック状態に対する検出装置1の検出精度を高めることができる。また上記構成によれば、検出装置1のコスト及びサイズを抑制することができる。
【0026】
<実施の形態2の変形例1>
図3は、実施の形態2の変形例1に係る検出装置1の回路構成を示す図である。構造体6の構造、素材、及び、実装条件によって抵抗値RXは変化する。そこで図3の構成では、図2の構成の第2抵抗11bが可変抵抗となっている。このような構成によれば、第2抵抗11bの抵抗値R2を適宜変更することによって、様々な構造体6の構造、素材、及び、実装条件についてクラック状態を検出することができる。
【0027】
なお、第2抵抗11bではなく、第1抵抗11a及び第3抵抗11cが可変抵抗であってもよい。しかしながら、第2抵抗11bの抵抗値R2は比較的大きな値に設定されるため、第2抵抗11bが可変抵抗である場合には、オペアンプ12aの出力を適切化するための調整が容易になる。
【0028】
<実施の形態2の変形例2>
図4は、実施の形態2の変形例2に係る検出装置1の回路構成を示す図である。何らかの不安定な機械的な力が被測定箇所に加わることによって、抵抗値RXが動的に変化し、オペアンプ12aの出力が安定しないことがある。そこで図4のように、ラッチ回路13がオペアンプ12aの出力に接続されてもよい。このような構成によれば、検出装置1は、安定した検出結果を信号処理装置2に出力することができる。
【0029】
<実施の形態3>
図5及び図6は、本実施の形態3に係る構造体6の断面構成を示す図である。以下、本実施の形態3に係る構成要素のうち、上述の構成要素と同じまたは類似する構成要素については同じまたは類似する参照符号を付し、異なる構成要素について主に説明する。
【0030】
本実施の形態3では、取得部11で取得される抵抗値は、第1基板6a及び第2基板6bの一方に設けられたひずみゲージ6dの抵抗値を含む。以下では、ひずみゲージ6dは、第1基板6aに設けられている構成について説明するが、第2基板6bに設けられている構成の説明も概ね以下と同様である。なお、ひずみゲージ6dは、クラック状態を検出すべきはんだ接合部6cに可能な限り近づけて設けられることが好ましい。
【0031】
第1基板6aの温度が上げられ、第2基板6bにその温度の熱が実質的に伝わる前には、第1基板6aは熱膨張するが、第2基板6bは熱膨張しない。図5のように、はんだ接合部6cが正常状態である場合には、第1基板6aの熱膨張がはんだ接合部6cによって妨げられる力が大きくなるので、第1基板6aのひずみも、ひずみゲージ6dの抵抗値の変化も比較的大きくなる。一方、図6のように、はんだ接合部6cが異常状態である場合には、第1基板6aの熱膨張がはんだ接合部6cによって妨げられる力が小さくなるので、第1基板6aのひずみも、ひずみゲージ6dの抵抗値の変化も比較的小さくなる。この結果、はんだ接合部6cが異常状態である場合の抵抗値は、はんだ接合部6cが正常状態である場合の抵抗値から、ミリオームオーダーの抵抗値だけ変化する。
【0032】
そこで本実施の形態3では、実施の形態2の図2と同様に、取得部11が、ひずみゲージ6dと電気的に接続されることによってブリッジを形成する第1抵抗11a、第2抵抗11b、及び、第3抵抗11cを含むように構成されている。そして、検出部12は、当該ブリッジと接続されたオペアンプ12aを含むように構成されている。
【0033】
<実施の形態3のまとめ>
以上のような本実施の形態3に係る検出装置1によれば、ひずみゲージ6dの抵抗値を含む抵抗値のミリオームオーダーの変化に基づいて、はんだ接合部6cのクラック状態を検出する。このような構成によれば、構造体6の信頼性を高めることができる。
【0034】
また本実施の形態3によれば、取得部11は、第1抵抗11a、第2抵抗11b、及び、第3抵抗11cを含み、検出部12はオペアンプ12aを含む。このような構成によれば、オペアンプ12aは数百以上の増幅率で入力値を増幅することができるため、ひずみゲージ6dの抵抗値の変化が小さくても、クラック状態に対する検出装置1の検出精度を高めることができる。また上記構成によれば、検出装置1のコスト及びサイズを抑制することができる。
【0035】
<実施の形態3の変形例1>
実施の形態3では、第1基板6aの温度が上げられ、第2基板6bにその温度の熱が実質的に伝わる前、つまり、第1基板6aは熱膨張するが、第2基板6bは熱膨張しない間に、クラック状態を検出した。もし、第1基板6aの熱膨張係数と第2基板6bの熱膨張係数とが異なる場合には、第1基板6a及び第2基板6bが熱膨張している間でも、クラック状態を検出することができる。
【0036】
<実施の形態3の変形例2>
実施の形態2の変形例1と同様に、第1抵抗11a~第3抵抗11cのいずれかが可変抵抗であってもよいし、実施の形態2の変形例2と同様に、ラッチ回路13がオペアンプ12aの出力に接続されてもよい。
【0037】
<実施の形態3の変形例3>
検出部12は、同一の構造を有する複数の構造体6について、温度の変化と、ひずみゲージ6dの抵抗値の変化との組を、正常状態及び異常状態かについてグループ化してもよい。そして、検出部12は、複数の構造体6と同一の構造を有する一つの構造体6の温度の変化と、ひずみゲージ6dの抵抗値の変化との組が、正常状態及び異常状態のどちらのグループに属するかを判定することによって、当該一つの構造体6のクラック状態を検出してもよい。
【0038】
また、検出部12は、複数のひずみゲージ6dが設けられた一つの構造体6について、温度の変化と、複数のひずみゲージ6dの抵抗値の変化との組を、正常状態及び異常状態かについてグループ化してもよい。そして、検出部12は、構造体6の温度の変化と、一つのひずみゲージ6dの抵抗値の変化との組が、正常状態及び異常状態のどちらのグループに属するかを判定することによって、当該一つのひずみゲージ6d周辺のはんだ接合部6cのクラック状態を検出してもよい。また以上で説明したグループ化には機械学習(訓練)が用いられてもよい。
【0039】
<実施の形態4>
図7及び図8は、本実施の形態4に係る構造体6の断面構成を示す図である。以下、本実施の形態4に係る構成要素のうち、上述の構成要素と同じまたは類似する構成要素については同じまたは類似する参照符号を付し、異なる構成要素について主に説明する。
【0040】
本実施の形態4では、取得部11で取得される抵抗値は、第1基板6a及び第2基板6bのいずれかに設けられたサーミスタ6eの抵抗値を含む。以下では、サーミスタ6eは、第2基板6bに設けられている構成について説明するが、第1基板6aに設けられている構成の説明も概ね以下と同様である。なお、サーミスタ6eは、クラック状態を検出すべきはんだ接合部6cに可能な限り近づけて設けられることが好ましい。
【0041】
第1基板6aの温度を上げると、その温度がはんだ接合部6cを介して第2基板6bに伝わる。図7のように、はんだ接合部6cが正常状態である場合には、はんだ接合部6cの熱伝導が大きいので、第1基板6aの温度上昇に伴う第2基板6bの温度上昇は大きくなり、サーミスタ6eの抵抗値の変化は比較的大きくなる。一方、図8のように、はんだ接合部6cが異常状態である場合には、はんだ接合部6cの熱伝導が小さいので、第1基板6aの温度上昇に伴う第2基板6bの温度上昇は小さくなり、サーミスタ6eの抵抗値の変化は比較的小さくなる。この結果、はんだ接合部6cが異常状態である場合の抵抗値は、はんだ接合部6cが正常状態である場合の抵抗値からも、ミリオームオーダーの抵抗値だけ変化する。
【0042】
そこで本実施の形態4では、実施の形態2の図2と同様に、取得部11が、サーミスタ6eと電気的に接続されることによってブリッジを形成する第1抵抗11a、第2抵抗11b、及び、第3抵抗11cを含むように構成されている。そして、検出部12は、当該ブリッジと接続されたオペアンプ12aを含むように構成されている。
【0043】
<実施の形態4のまとめ>
以上のような本実施の形態4に係る検出装置1によれば、サーミスタ6eの抵抗値を含む抵抗値のミリオームオーダーの変化に基づいて、はんだ接合部6cのクラック状態を検出する。このような構成によれば、構造体6の信頼性を高めることができる。
【0044】
また本実施の形態4によれば、取得部11は、第1抵抗11a、第2抵抗11b、及び、第3抵抗11cを含み、検出部12はオペアンプ12aを含む。このような構成によれば、オペアンプ12aは数百以上の増幅率で入力値を増幅することができるため、サーミスタ6eの抵抗値の変化が小さくても、クラック状態に対する検出装置1の検出精度を高めることができる。また上記構成によれば、検出装置1のコスト及びサイズを抑制することができる。
【0045】
<実施の形態4の変形例1>
実施の形態4では、サーミスタ6eは、第1基板6a及び第2基板6bのいずれかに設けられる場合について説明したが、第1基板6a及び第2基板6bの両方に設けられてもよい。つまり図9に示すように、第1基板6aに第1サーミスタ6e1が設けられ、第2基板6bに第2サーミスタ6e2が設けられてもよい。この場合、取得部11は、図10に示すように、第1サーミスタ6e1及び第2サーミスタ6e2と電気的に接続されることによってブリッジを形成する第1抵抗11a及び第2抵抗11bを含んでもよい。検出部12は、当該ブリッジと接続されたオペアンプ12aを含んでもよい。
【0046】
第1サーミスタ6e1及び第2サーミスタ6e2の抵抗値は、それぞれ抵抗値RH1及び抵抗値RH2であるとする。このような構成によれば、オペアンプ12aは、RH2<R2×R3/RH1の場合に+信号を出力し、オペアンプ12aは、RH2>R2×R3/RH1の場合に-信号を出力する。抵抗値R2,R3を適切に調整し、オペアンプ12aで平衡状態を監視するようにすれば、オペアンプ12aは、正常状態及び異常状態の一方の場合に+信号を出力し、他方の場合に-信号を出力することができる。
【0047】
<実施の形態4の変形例2>
実施の形態2の変形例1と同様に、第1抵抗11a~第3抵抗11cのいずれかが可変抵抗であってもよいし、実施の形態2の変形例2と同様に、ラッチ回路13がオペアンプ12aの出力に接続されてもよい。
【0048】
また実施の形態3の変形例3と同様に、検出部12は、複数の構造体6と同一の構造を有する一つの構造体6の温度の変化と、サーミスタ6eの抵抗値の変化との組が、正常状態及び異常状態のどちらのグループに属するかを判定することによって、当該一つの構造体6のクラック状態を検出してもよい。また、検出部12は、構造体6の温度の変化と、一つのサーミスタ6eの抵抗値の変化との組が、正常状態及び異常状態のどちらのグループに属するかを判定することによって、当該一つのサーミスタ6e周辺のはんだ接合部6cのクラック状態を検出してもよい。
【0049】
<その他の変形例>
実施の形態1~4では、第1基板及び第2基板のそれぞれは、電子機器の基板であると説明したが、これに限ったものではなく、電子機器の基板、集積回路の基板、または、半導体基板を含んでいればよい。例えば図11に示すように、上側の半導体基板6pが第1基板として設けられてもよいし、真ん中の集積回路のプリント基板6qが第2基板として設けられてもよい。そして、真ん中の集積回路のプリント基板6qが第1基板として設けられてもよいし、下側の電子機器のプリント基板6rが第2基板として設けられてもよい。また、信号処理装置2は、第1基板及び第2基板に適宜設けられてもよい。
【0050】
また、実施の形態3で説明したようなひずみは、各基板の角部に集中するため、基板の角部に設けられたはんだ接合部6cは、基板の他の部分に設けられたはんだ接合部6cよりもクラックが生じやすい。そこで図12に示すように、ひずみゲージ6dは、平面視において第1基板6a及び第2基板6bの一方の角部に設けられることが好しい。同様に、抵抗値が取得されるはんだ接合部6cは、平面視において第1基板6a及び第2基板6bの角部に設けられることが好ましく、サーミスタ6eは、平面視において第1基板6a及び第2基板6bの少なくとも一方の角部に設けられることが好しい。このような構成によれば、クラック状態に対する検出装置の検出精度を高めることができる。
【0051】
なお、各実施の形態及び各変形例を自由に組み合わせたり、各実施の形態及び各変形例を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【0052】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0053】
(付記1)
第1基板と、第2基板と、前記第1基板及び前記第2基板の間を接合するはんだ接合部とを含む構造体について抵抗値を取得する取得部と、
前記抵抗値のミリオームオーダーの変化に基づいて、前記はんだ接合部のクラック状態を検出する検出部と
を備える、検出装置。
【0054】
(付記2)
前記抵抗値は、前記はんだ接合部の抵抗値を含む、付記1に記載の検出装置。
【0055】
(付記3)
前記取得部は、前記はんだ接合部と電気的に接続されることによってブリッジを形成する第1抵抗、第2抵抗、及び、第3抵抗を含み、
前記検出部は、前記ブリッジと接続されたオペアンプを含む、付記2に記載の検出装置。
【0056】
(付記4)
前記はんだ接合部は、平面視において前記第1基板及び前記第2基板の角部に設けられている、付記2または付記3に記載の検出装置。
【0057】
(付記5)
前記抵抗値は、前記第1基板及び前記第2基板の一方に設けられたひずみゲージの抵抗値を含む、付記1に記載の検出装置。
【0058】
(付記6)
前記取得部は、前記ひずみゲージと電気的に接続されることによってブリッジを形成する第1抵抗、第2抵抗、及び、第3抵抗を含み、
前記検出部は、前記ブリッジと接続されたオペアンプを含む、付記5に記載の検出装置。
【0059】
(付記7)
前記ひずみゲージは、平面視において前記第1基板及び前記第2基板の前記一方の角部に設けられている、付記5または付記6に記載の検出装置。
【0060】
(付記8)
前記抵抗値は、前記第1基板及び前記第2基板の少なくとも一方に設けられたサーミスタの抵抗値を含む、付記1に記載の検出装置。
【0061】
(付記9)
前記取得部は、
前記サーミスタが前記第1基板及び前記第2基板の一方に設けられている場合には、前記サーミスタと電気的に接続されることによってブリッジを形成する第1抵抗、第2抵抗、及び、第3抵抗を含み、前記サーミスタが前記第1基板及び前記第2基板の両方に設けられている場合には、前記サーミスタの両方と電気的に接続されることによってブリッジを形成する第1抵抗、及び、第2抵抗を含み、
前記検出部は、前記ブリッジと接続されたオペアンプを含む、付記8に記載の検出装置。
【0062】
(付記10)
前記サーミスタは、平面視において前記第1基板及び前記第2基板の前記少なくとも一方の角部に設けられている、付記8または付記9に記載の検出装置。
【0063】
(付記11)
前記取得部が前記第1抵抗、前記第2抵抗、及び、前記第3抵抗を含む場合には、前記第1抵抗、前記第2抵抗、及び、前記第3抵抗のいずれかが可変抵抗であり、
前記取得部が前記第1抵抗、及び、前記第2抵抗を含む場合には、前記第1抵抗、及び、前記第2抵抗のいずれかが可変抵抗である、付記3,6または9に記載の検出装置。
【0064】
(付記12)
前記第1基板及び前記第2基板のそれぞれは、電子機器の基板、集積回路の基板、または、半導体基板を含む、付記1から付記11のうちのいずれか1項に記載の検出装置。
【0065】
(付記13)
第1基板と、第2基板と、前記第1基板及び前記第2基板の間を接合するはんだ接合部とを含む構造体について抵抗値を取得し、
前記抵抗値のミリオームオーダーの変化に基づいて、前記はんだ接合部のクラック状態を検出する、検出方法。
【符号の説明】
【0066】
1 検出装置、6 構造体、6a 第1基板、6b 第2基板、6c はんだ接合部、6d ひずみゲージ、6e サーミスタ、11 取得部、11a 第1抵抗、11b 第2抵抗、11c 第3抵抗、12 検出部、12a オペアンプ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12