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特開2024-128688電気製品の樹脂製外装部品、電気製品および帯電抑制部材
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  • 特開-電気製品の樹脂製外装部品、電気製品および帯電抑制部材 図1
  • 特開-電気製品の樹脂製外装部品、電気製品および帯電抑制部材 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128688
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】電気製品の樹脂製外装部品、電気製品および帯電抑制部材
(51)【国際特許分類】
   H05F 1/02 20060101AFI20240913BHJP
   B32B 7/02 20190101ALI20240913BHJP
   B32B 3/26 20060101ALI20240913BHJP
   H05K 5/00 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
H05F1/02 K
B32B7/02
B32B3/26 A
H05K5/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037817
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久下 洋介
(72)【発明者】
【氏名】斎木 あゆみ
【テーマコード(参考)】
4E360
4F100
5G067
【Fターム(参考)】
4E360AA10
4E360AB12
4E360GA32
4E360GA35
4E360GB99
4E360GC08
4F100AK01
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100BA02
4F100BA07
4F100DC11
4F100DC11A
4F100DC11B
4F100DG15
4F100DG15B
4F100DJ00
4F100DJ00A
4F100DJ00B
4F100GB41
4F100GB48
4F100JG03
4F100JG03A
4F100JG03C
5G067AA53
(57)【要約】
【課題】電気製品の樹脂製外装部品への埃の付着を、実用的かつ効果的に抑制する。
【解決手段】本開示に係る電気製品10の樹脂製外装部品は、内側に位置する、樹脂製の第一樹脂層1と、第一樹脂層1の外側に積層され、表面が外部に露出する樹脂製の第二樹脂層2と、を備える。第二樹脂層2には、外部空間に通じている空隙から構成される空気層が含まれ、単位体積当たりの第二樹脂層2に含まれる空気層は、当該単位体積当たりの第一樹脂層1に含まれる空気層よりも多い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気製品の樹脂製外装部品であって、
内側に位置する、樹脂製の第一樹脂層と、
前記第一樹脂層の外側に積層され、表面が外部に露出する樹脂製の第二樹脂層と、
を備え、
前記第二樹脂層には、外部空間に通じている空隙から構成される空気層が含まれ、
単位体積当たりの前記第二樹脂層に含まれる空気層は、当該単位体積当たりの前記第一樹脂層に含まれる空気層よりも多い、電気製品の樹脂製外装部品。
【請求項2】
前記第二樹脂層は、前記第一樹脂層の外側に積層された不織布状の樹脂から形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電気製品の樹脂製外装部品。
【請求項3】
前記第一樹脂層と前記第二樹脂層とは、同一の素材から形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電気製品の樹脂製外装部品。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の電気製品の樹脂製外装部品と、
前記樹脂製外装部品に内蔵された放電デバイスと、
を備える電気製品。
【請求項5】
電気製品の樹脂製外装部品の外側に取り付け可能な樹脂製の帯電抑制部材であって、
外部空間に通じる空隙から構成される空気層を含み、単位体積当たりの当該空気層は、当該単位体積当たりの樹脂製外装部品に含まれる空気層よりも多い、ことを特徴とする帯電抑制部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気製品の樹脂製外装部品、この樹脂製外装部品を備えた電気製品、および、帯電抑制部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電気製品、例えば、ルームエアコン、空気清浄機および掃除機などには、樹脂製の外装部品を用いたものが多く存在する。電気製品の樹脂製外装部品は、当該電気製品の運転等を理由として電荷を帯びることで、周囲の埃を引き寄せる。電気製品の樹脂製外装部品に対しては、埃の付着への対策を施すことが望ましい。
【0003】
樹脂製の部材の帯電防止に関する技術として、特許文献1には、帯電防止建材及びその施工構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-250942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電気製品の運転時には電荷が発生し続け、当該電気製品の樹脂製外装部品も帯電し続ける。特許文献1に記載されているような素材の特性を利用した技術においては帯電防止の効果に限界があり、電気製品の樹脂製外装部品に対しては、帯電防止の効果を十分に得ることが難しい。また、特許文献1に記載されているような帯電防止剤を含む樹脂を用いた場合には、色彩等のデザインに制限が生じる可能性がある。特許文献1に記載されているような技術は、電気製品の樹脂製外装部品には適していない。
【0006】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものである。本開示の目的は、電気製品の樹脂製外装部品への埃の付着を、実用的かつ効果的に抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る電気製品の樹脂製外装部品は、内側に位置する、樹脂製の第一樹脂層と、前記第一樹脂層の外側に積層され、表面が外部に露出する樹脂製の第二樹脂層と、を備える。前記第二樹脂層には、外部空間に通じている空隙から構成される空気層が含まれ、単位体積当たりの前記第二樹脂層に含まれる空気層は、当該単位体積当たりの前記第一樹脂層に含まれる空気層よりも多い。
また、本開示に係る電気製品は、上記のように構成された電気製品の樹脂製外装部品と、前記樹脂製外装部品に内蔵された放電デバイスと、を備える。
また、本開示に係る帯電抑制部材は、電気製品の樹脂製外装部品の外側に取り付け可能な樹脂製の帯電抑制部材であって、外部空間に通じる空隙から構成される空気層を含み、単位体積当たりの当該空気層は、当該単位体積当たりの樹脂製外装部品に含まれることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、電気製品の樹脂製外装部品への埃の付着を、実用的かつ効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係る電気製品の樹脂製外装部品を模式的に示す図である。
図2】実施の形態1の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照して、実施の形態について説明する。各図における同一の符号は、同一の部分または相当する部分を示す。また、本開示では、重複する説明については、適宜に簡略化または省略する。なお、本開示は、その趣旨を逸脱しない範囲において、以下の実施の形態によって開示される構成のあらゆる変形およびあらゆる組み合わせを含み得るものである。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る電気製品の樹脂製外装部品を模式的に示す図である。図1は、設置面100に設置された電気製品10の断面を模式的に示している。なお、本開示における「電気製品」とは、「電化製品」あるいは「電気機器」等のその他の名称で呼称されるものも含むものである。また、「外装部品」とは、「筐体」あるいは「外殻」等のその他の名称で呼称されるものも含むものである。
【0012】
電気製品10には、任意の物が該当する。電気製品10としては、例えば、ルームエアコン、空気清浄機および掃除機などの家電製品が挙げられる。また、電気製品10は、一般家庭で用いられる家電製品に限られず、例えば、業務用機器などであってもよい。電気製品10の設置面100としては、壁、床あるいは電気製品10設置用の台など、任意の物が該当する。
【0013】
本実施の形態に係る電気製品10の外装部品は、樹脂製である。電気製品10の樹脂製外装部品は、樹脂製の第一樹脂層1および第二樹脂層2を備える。第一樹脂層1は、樹脂製外装部品の内側部分を構成するものであり、第二樹脂層2に対して内側に位置する。第二樹脂層2は、第一樹脂層1の外側に積層され、表面が外部に露出している。なお、第二樹脂層2は、第一樹脂層1の全体を覆うように構成されてもよいし、図1に示すように第一樹脂層1の一部を覆うように構成されてもよい。
【0014】
第一樹脂層1は、例えば、射出成形によって製造される。第一樹脂層1は、樹脂の充填率が高い樹脂部品である。第一樹脂層1には、気泡および空隙等からなる空気層が含まれていない、あるいは、極めて少量の空気層が含まれる。このように構成された第一樹脂層1は、樹脂製外装部品の強度を確保する。第一樹脂層1の表面は、例えば、平滑な形状に形成されている。
【0015】
第二樹脂層2は、樹脂製外装部品への埃の付着を防止するための層であり、第一樹脂層1に対して帯電防止の特性に優れた樹脂部品である。第二樹脂層2には、外部空間に通じている空隙から構成される空気層が含まれる。第二樹脂層2には、例えば、直径が2mm以下の微細な空隙が多数含まれている。第二樹脂層2に含まれる空気層は、均一に配置されていてもよいし不均一に配置されていてもよい。第二樹脂層2は、例えば、多数の繊維状の樹脂が絡み合った構造、あるいは、スポンジ状の構造を有している。第二樹脂層2の内部の空気層は、表面部分まで通じている。第二樹脂層2の表面部分には、凹凸が形成されている。
【0016】
第二樹脂層2は、例えば、直径2mm以下の細い繊維状の樹脂を第一樹脂層1に対して吐出して積層することで形成される。あるいは、第二樹脂層2は、樹脂材料を発泡させて形成した部材を第一樹脂層1に積層することで構成してもよい。また、第二樹脂層2は、例えば、メルトブロー等の製法を用いて、不織布状の樹脂を第一樹脂層1の外側に積層することで形成してもよい。第二樹脂層2を不織布状の樹脂から形成することで、空気層を形成する空隙の大きさを小さくしつつ、また、当該空隙を均一に配置することができる。これにより、樹脂製外装部品のデザイン性を損なうことを防止できる。
【0017】
上述したように、第二樹脂層2には、外部空間に通じている空隙から構成される空気層が含まれる。第一樹脂層1には、気泡および空隙等からなる空気層が含まれていない、あるいは、極めて少量の空気層が含まれる。単位体積当たりの第二樹脂層2に含まれる空気層は、当該単位体積当たりの第一樹脂層1に含まれる空気層よりも多い。言い換えると、特定体積の第二樹脂層2のうち樹脂部分が占める割合は、当該特定体積の第一樹脂層1のうち樹脂部分が占める割合よりも小さい。第二樹脂層2の樹脂の充填率は、第一樹脂層1の樹脂の充填率よりも低い。
【0018】
電気製品10に内蔵される電気部品の駆動等を要因として、外装部品の帯電が起こる。外装部品が帯びた電荷は、極性が異なる周囲の埃を引き寄せる。また、外装部品が帯電した場合、設置面100のうち外装部品に近い箇所に電界が生成される。この電界によって、埃の移動方向が変化し、設置面100に埃が引き寄せられることがある。例えば、外装部品の表面が高いプラスの帯電をしている場合、周囲の埃のうちプラスに帯電しているものは反発して移動し、電気製品10と設置面100との位置関係次第では、設置面100に埃が衝突して付着することがある。
【0019】
本実施の形態においては、外装部品の外側には、外部空間に通じている空隙から構成される空気層を含む第二樹脂層2がある。電気製品10の外表面側に外部空間に通じる空気層があり、外装部品の表面形状は平滑でなく不均一な複雑なものになっている。電気製品10の運転によって外装部品が帯電した場合において、空気層を構成する樹脂の曲面部および角部を頂点として電界の強度分布に変化が生じ、第二樹脂層2がない場合、すなわち外装部品の表面形状が平滑な場合に比べて、外装部品の表面側の電界強度が低くなる。本実施の形態においては、外装部品の内側に比べて、外側の電界強度を下げることができる。本実施の形態では、帯電防止の特性に優れた樹脂部品である第二樹脂層2を第一樹脂層1に積層することで、電気製品10の樹脂製外装部品への埃の付着を効果的に抑制することができる。また、本実施の形態では、樹脂製外装部品の表面側部分の構造の変更によって、電界分布の改善を行う。本実施の形態では、帯電防止剤などを必要とせずに、一般的な樹脂材料によって、電界分布の改善を実現できる。本実施の形態であれば、デザインの制限が生じることもなく、また、高価な材料を必要としないため量産が可能である。このように、本実施の形態であれば、電気製品10の樹脂製外装部品への埃の付着を、実用的かつ効果的に抑制することができる。
【0020】
また、図2は、実施の形態1の変形例を示す図である。電気製品10の設置面100のうちの電気製品10の周縁部分には、特に埃が付着しやすい。そこで、この部分への埃の付着を効果的に抑制するために、第一樹脂層1の外側うち、設置面100に近い一部のみに第二樹脂層2を設けても良い。第二樹脂層2を設ける箇所を限定することで、第一樹脂層1の露出する部分の割合を増やすことができ、例えば、意匠性を向上することができる。外装部品の表面全体を第二樹脂層2で覆う場合に比べて、デザインの自由度が高くなり、また、コストを削減することもできる。
【0021】
第一樹脂層1と第二樹脂層2とは、同一の素材から形成してもよい。各層の素材を同一にすることで、層同士の接着性を良好にすることができる。また、廃棄時に分解する必要がなく、より実用的な外装部品が得られる。
【0022】
本実施の形態に係る外装部品は、電気製品10のうち、特に、マイナスイオン発生部あるいは電気集塵部などの、放電デバイスを内蔵するものに有効である。放電デバイスは、その動作によって、外装部品を強く帯電させやすいためである。本実施の形態によれば、放電デバイスを備えた電気製品への埃の付着を効果的に抑制することができる。
【0023】
また、本実施の形態における第二樹脂層2は、電気製品の樹脂製外装部品の外側に取り付け可能な樹脂製の帯電抑制部材として構成することもできる。第二樹脂層2を外装部品から独立した帯電抑制部材とすることで、各種の電気製品に対応することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 第一樹脂層、 2 第二樹脂層、 10 電気製品、100 設置面
図1
図2