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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128879
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】組立体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/64 20060101AFI20240913BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20240913BHJP
   F16B 4/00 20060101ALI20240913BHJP
   B29C 65/66 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
B29C65/64
B29C45/00
F16B4/00 D
B29C65/66
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038147
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川村 直也
【テーマコード(参考)】
4F206
4F211
【Fターム(参考)】
4F206AA13
4F206AA34
4F206AH12
4F206JA07
4F206JL02
4F206JQ81
4F206JW15
4F206JW21
4F211AA13
4F211AA34
4F211AD03
4F211AF01
4F211AG13
4F211AR07
4F211TA08
4F211TC11
4F211TN87
4F211TQ09
(57)【要約】
【課題】外径と軸方向の長さが異なる複数の円体から選択した一の円体を、共通の樹脂成形品の凹部内に保持できる組立体と、その組立体の製造方法を得る。
【解決手段】外径と軸方向の長さが異なる複数の円体から選択した一の円体12と、複数の円体の何れの長さよりも深く、複数の円体の何れの外径よりも小さい開口径とされた凹部22を有し、凹部22の開口から底までの内径が開口から底に向かって徐々に拡大しており、軸方向の一端面が底に接触するまで凹部22に圧入された一の円体12の軸方向の他端面側における周縁部を凹部22の内周壁で保持する樹脂成形品20と、を備えた組立体10とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外径と軸方向の長さが異なる複数の円体から選択した一の円体と、
該複数の円体の何れの該長さよりも深く、該複数の円体の何れの該外径よりも小さい開口径とされた凹部を有し、該凹部の開口から底までの内径が該開口から該底に向かって徐々に拡大しており、該軸方向の一端面が該底に接触するまで該凹部に圧入された該一の円体の該軸方向の他端面側における周縁部を該凹部の内周壁で保持する樹脂成形品と、
を備えた組立体。
【請求項2】
前記円体の前記一端面側の周縁部及び前記開口の周縁部の少なくとも一方に、前記円体を前記凹部に圧入する際に、前記開口の周縁部を弾性変形させて拡径するための面取部が形成されている請求項1に記載の組立体。
【請求項3】
前記面取部がC面である請求項2に記載の組立体。
【請求項4】
前記底は平板環状に形成されており、該底の内周面に複数のゲート跡が周方向に等間隔に形成されている請求項1~請求項3の何れか1項に記載の組立体。
【請求項5】
請求項4に記載の組立体を製造する方法であって、
金型における前記底の内周面を成形する部位に周方向に等間隔に形成された複数のゲートから前記金型の内部に溶融樹脂材料を注入する注入工程と、
前記金型の内部で前記溶融樹脂材料が冷却されてなる前記樹脂成形品を該金型の内部から取り出した後、該樹脂成形品を更に冷却する冷却工程と、
前記円体を前記樹脂成形品の前記凹部に圧入する圧入工程と、
を有する組立体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組立体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軸受を保持する筒状部と、筒状部の下側に位置し、筒状部の内径側に突出する弾性部と、を有する樹脂製の軸受ホルダは、従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-079040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、外径と軸方向の長さが異なる複数の円体から選択した一の円体を、共通の樹脂成形品の凹部内に保持できる組立体と、その組立体の製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明に係る第1の態様の組立体は、外径と軸方向の長さが異なる複数の円体から選択した一の円体と、該複数の円体の何れの該長さよりも深く、該複数の円体の何れの該外径よりも小さい開口径とされた凹部を有し、該凹部の開口から底までの内径が該開口から該底に向かって徐々に拡大しており、該軸方向の一端面が該底に接触するまで該凹部に圧入された該一の円体の該軸方向の他端面側における周縁部を該凹部の内周壁で保持する樹脂成形品と、を備えている。
【0006】
また、本発明に係る第2の態様の組立体は、第1の態様の組立体であって、前記円体の前記一端面側の周縁部及び前記開口の周縁部の少なくとも一方に、前記円体を前記凹部に圧入する際に、前記開口の周縁部を弾性変形させて拡径するための面取部が形成されている。
【0007】
また、本発明に係る第3の態様の組立体は、第2の態様の組立体であって、前記面取部がC面である。
【0008】
また、本発明に係る第4の態様の組立体は、第1~第3の何れか1つの態様の組立体であって、前記底は平板環状に形成されており、該底の内周面に複数のゲート跡が周方向に等間隔に形成されている。
【0009】
また、本発明に係る第5の態様の組立体の製造方法は、第4の態様の組立体を製造する方法であって、金型における前記底の内周面を成形する部位に周方向に等間隔に形成された複数のゲートから前記金型の内部に溶融樹脂材料を注入する注入工程と、前記金型の内部で前記溶融樹脂材料が冷却されてなる前記樹脂成形品を該金型の内部から取り出した後、該樹脂成形品を更に冷却する冷却工程と、前記円体を前記樹脂成形品の前記凹部に圧入する圧入工程と、を有している。
【発明の効果】
【0010】
第1の態様の発明によれば、外径と軸方向の長さが異なる複数の円体から選択した一の円体を、共通の樹脂成形品の凹部内に保持することができる。
【0011】
第2の態様の発明によれば、面取部が形成されていない場合に比べて、凹部に円体を容易に圧入することができる。
【0012】
第3の態様の発明によれば、面取部がR面である場合に比べて、凹部に円体を容易に圧入することができる。
【0013】
第4の態様の発明によれば、凹部の開口から底までの内径が開口から底に向かって徐々に拡大する形状を成形時の冷却工程における樹脂材料のヒケによって自動的に形成することができる。
【0014】
第5の態様の発明によれば、凹部の開口から底までの内径が開口から底に向かって徐々に拡大する形状を冷却工程における樹脂材料のヒケによって自動的に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る組立体を円体側から見て示す概略斜視図である。
図2】本実施形態に係る組立体を成形品側から見て示す概略斜視図である。
図3】本実施形態に係る成形品と円体とを示す概略分解側面図である。
図4】(A)本実施形態に係る成形品に円体を圧入する前の状態を拡大して示す概略側面図である。(B)本実施形態に係る成形品に円体を圧入した後の状態を拡大して示す概略側面図である。
図5】金型から取り出された本実施形態に係る成形品を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を基に詳細に説明する。図1図2に示されるように、本実施形態に係る組立体10は、例えばベアリング(軸受)等の円筒状の金属製部品である円体12と、その円体12が圧入される凹部22を有する樹脂成形品(以下、単に「成形品」という)20と、を備えている。したがって、この組立体10は、軸受装置とも言える。
【0017】
円体12は、複数種類用意されており、全ての円体12において、外径と軸方向の長さが異なっている。換言すれば、異なる種類の円体12では、外径と軸方向の長さが異なっている。本実施形態では、その中(複数種類の円体12の中)から選択された任意の1種類の(一の)円体12だけが図示されている。成形品20は、1種類だけ用意されており、複数種類の円体12に対して、共通の成形品20となっている。
【0018】
成形品20は、予め決められた樹脂材料で射出成形されることにより、その外周面にギア部18を有する略円筒形状に形成されている。そして、成形品20のギア部18よりも径方向内側における軸方向一方側には、予め決められた長さ及び内径を有する円筒部21が形成されている。
【0019】
円筒部21の外周面には、軸方向に延びる複数のリブ21Aが周方向に等間隔に形成されている。なお、「予め決められた樹脂材料」としては、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂などの熱可塑性樹脂が例示できる。
【0020】
また、成形品20のギア部18よりも径方向内側における軸方向他方側には、円体12が圧入される有底円筒状(有底環状、有底円形状)の凹部22が形成されている。図3図4に示されるように、この凹部22は、その深さDが、全て(何れ)の円体12の軸方向の長さよりも深く、かつ、その開口径(開口の周縁部24における内径であり、後述する面取部24Aにおける軸方向一方側の最小径)Rが、全て(何れ)の円体12の外径よりも小さくなるように形成されている。ここで、「全て(何れ)の円体12」とは、全ての種類(何れの種類)の円体12と同義である。
【0021】
そして、この凹部22の開口の周縁部24には、軸方向と直交する径方向から見て、予め決められた傾斜角度とされたC面となる面取部24Aが形成されている(図4(A)参照)。具体的には、この面取部24Aは、その軸方向他方側の最大径が、圧入される円体12の直径よりも大きくなるように、その傾斜角度が設定されている。
【0022】
なお、C面とは、交差する面の部分(角部)を取り除いて平面にする加工(C面取り)により形成された当該平面のことである。C面は、C面に対応する部分が形成された金型等を用いて形成する場合に限定されるものではなく、角部をバイト等の工具により切削して形成してもよい。
【0023】
また、「予め決められた傾斜角度」とは、成形品20において、軸方向とC面の交差角度が鈍角になる角度であり、例えば135°である。換言すれば、「予め決められた傾斜角度」とは、C面取りの観点から表現すると、軸方向とC面の交差角度が鋭角になる角度であり、例えば45°である。
【0024】
したがって、この面取部24Aにより、円体12の凹部22内への圧入がし易くなる構成になっている。すなわち、円体12を凹部22に圧入する際には、円体12の軸方向の一端面14側の周縁部14Aが面取部24Aを軸方向一方側へ押すことが可能となり、それによって、開口の周縁部24が拡径する方向(径方向外側)へ弾性変形するようになっている。
【0025】
また、この凹部22の底の一例としての底壁28は、凹部22の内周壁26の軸方向一方側の端部から径方向内側へ連続する予め決められた幅の平板環状(平板ドーナツ状)に形成されている。換言すれば、底壁28は、凹部22の内周壁26の軸方向一方側の端部から径方向内側へ突出するように形成された予め決められた突出量(突出長さ)の環状平板(ドーナツ状平板)29における軸方向他方側を向く面に形成されている。さらに換言すれば、凹部22の底壁28の中心部には、予め決められた内径を有する円形状の貫通孔28Aが形成されている(図2も参照)。環状平板29の内周面で構成される貫通孔28Aは、円筒部21の内部と、凹部22の内部とを通じさせている。
【0026】
また、この凹部22は、その開口の周縁部24から底壁28までの内周壁26の内径が、その(開口の)周縁部24から底壁28に向かって徐々に拡大するように形成されている。換言すると、面取部24Aの軸方向一方側の端から底壁28に至る内周壁26の内径は、面取部24Aの軸方向一方側の端から底壁28に向かって徐々に拡大するように形成されている。
【0027】
面取部24Aの軸方向一方側の端が形成する円の直径は、面取部24Aにおける軸方向一方側の最小径であり、全ての(何れの)の種類の円体12の外径よりも小さい。そのため、円体12は、その軸方向の一端面14が凹部22の底壁28(底面)に接触するまで、その凹部22の内部に圧入された際、その(円体12の)軸方向の他端面16側における周縁部16Aが、凹部22の内周壁26によって線状に保持される構成になっている。なお、円体12を凹部22に圧入する際に弾性変形により径方向外側に拡径していた開口の周縁部24は、円体12を凹部22の内部に圧入された際には、弾性変形が解除された状態(復元された状態)となっている。
【0028】
ここで、凹部22の開口の周縁部24から底壁28までの内周壁26の内径が、その(開口の)周縁部24から底壁28に向かって徐々に拡大する形状になるように凹部22を形成する方法について説明する。
【0029】
図5は、金型から取り出された成形品20を軸方向一方側から見た概略平面図である。図5に示されるように、図示しない金型の内部(キャビティ)で冷却されて、その金型の内部から取り出された成形品20には、溶融された樹脂材料の流路となったランナー30が環状平板29の内周面に接続されて残された状態になっている。
【0030】
このランナー30で示されるように、成形品20を射出成形する際、溶融された樹脂材料を金型の内部へ注入するためのゲート(図示省略)は、環状平板29の内周面側に複数(例えば6個)設けられている。換言すれば、ゲートは、凹部22の底壁28の内周面28B側に設けられている。なお、以降、溶融された樹脂材料は、溶融樹脂材料と表現することがある。
【0031】
具体的に説明すると、金型において、溶融樹脂材料の流路は、環状平板29を成形するキャビティ部分の内側の周方向に等間隔に3個設けられており、各流路には、周方向に離隔した2本の細流路(ランナー30における流路跡32)が設けられている。そして、各細流路の下流側端部(流路跡32の下流側端部32A)が環状平板29の内周面を成形するキャビティ部分にゲートとして繋がっている。
【0032】
換言すれば、ゲートは、底壁28の内周面28Bを成形するキャビティの部位に繋がっている。つまり、溶融された樹脂材料が、周方向に等間隔に設けられた複数(6個)の流路からゲートを介してキャビティに流入されることにより、底壁28が形成される環状平板29からほぼ放射状に順に成形品20の各部に溶融樹脂材料が流れ込むようになっている。
【0033】
また、金型の内部(キャビティ)に充填された溶融樹脂材料は、その金型の内部で樹脂材料の熱変形温度以下に達するまで冷却されて成形品20となる。このとき、その成形品20の外側の面には、内側の面よりも肉厚が厚いスキン層が形成される。そして、金型の内部から取り出された成形品20は、その後、常温に達するまで更に冷却されるが、その常温に達するまでの間、成形品20の内側の面(凹部22の内周壁26)は、外側の面よりも温度が高い状態になっている。
【0034】
そのため、成形品20の内側の面(凹部22の内周壁26)には、樹脂材料の所謂「ヒケ」が生じ、その「ヒケ」により、凹部22の内周壁26の内径が、上記のような形状となるように自動的に成形される。特に、成形品20の内側の面の中でも、ゲートが位置していた環状平板29は、溶融樹脂材料が最後にキャビティ内に注入される部分であるため、その他の部分よりも温度が高い状態になっている。
【0035】
このため、環状平板29及びその近傍は、最後に常温になる部分であり、最も「ヒケ」が生じる部分であると言える。したがって、凹部22の開口の周縁部24から底壁28までの内周壁26の内径が、その周縁部24から底壁28に向かって徐々に拡大する形状になるように自動的に形成される。ここで、「ヒケ」とは、射出成形後の冷却過程(工程)において、樹脂が収縮することにより成形品の表面に発生するへこみ(窪み、凹み)のことである。
【0036】
なお、金型に設けられた複数(6個)の流路により形成されたランナー30は、成形品20が金型の内部から取り出され、常温に達するまで冷却された後、又は常温に達するまで冷却されるまでの間に、流路跡32の下流側端部32Aから切断されて取り除かれる。そのため、図1図2に示されるように、環状平板29の内周面には、複数(6個)のゲート跡Gが周方向に等間隔に形成されている。換言すれば、成形品20の凹部22における底壁28の内周面28Bには、複数(6個)のゲート跡Gが周方向に等間隔に形成されている。
【0037】
以上のような構成とされた本実施形態に係る組立体10において、次にその作用(製造方法を含む)について説明する。
【0038】
組立体10は、成形品20の凹部22内に円体12が圧入されることで製造される。円体12は全ての種類が既製品(市販品)であるため、組立体10を製造する際には、成形品20を製造する。すなわち、溶融された樹脂材料を金型のキャビティにおける複数(6個)のゲートから注入する(注入工程)。なお、上記したように、各ゲートは、成形品20の環状平板29の内周面を成形する部位(部分)に周方向に等間隔に形成されている。換言すれば、各ゲートは、凹部22における底壁28の内周面28Bを成形する部位に周方向に等間隔に形成されている。
【0039】
溶融樹脂材料が金型の内部(キャビティ)へ充填されると、その溶融樹脂材料は金型の内部で冷却されて成形品20となり、その成形品20は金型の内部から取り出される。そして、金型から取り出された成形品20は、常温に達するまで更に冷却される(冷却工程)。
【0040】
この冷却工程において、上記した樹脂材料の「ヒケ」により、凹部22の開口の周縁部24から底壁28までの内周壁26の内径が、その周縁部24から底壁28に向かって徐々に拡大するように自動的に形成される。換言すると、成形品20は、面取部24Aの軸方向一方側の端から底壁28に至る内周壁26の内径が、面取部24Aの軸方向一方側の端から底壁28に向かって徐々に拡大するように自動的に形成される。
【0041】
こうして、成形品20が製造されたら(冷却工程で成形品20が製造された後)、その凹部22内へ円体12を圧入する(圧入工程)。すなわち、成形品20及び円体12は、それぞれ凹部22の中心軸と円体12の中心軸とが一致するように、かつ凹部22の底壁28(底面)と円体12の軸方向の一端面14とが平行になるように、夫々図示しない治具(チャック等)によって保持される。
【0042】
そして、例えば、上記の治具による保持状態を維持したまま、円体12を保持する治具を、成形品20を保持する治具へ向かって移動させることにより、円体12が、成形品20の凹部22内へ圧入される。このとき、円体12の外径が、凹部22の開口径Rより大きくなっているが(図3参照)、凹部22の開口の周縁部24には、面取部24Aが形成されており、その面取部24Aの最大径は、圧入される円体12の直径よりも大きくなっている(図4(A)参照)。
【0043】
ここで、「面取部24Aの最大径」とは、成形品20の軸方向他方側を向く面において面取部24Aが形成する円の直径のことである。換言すると、「面取部24Aの最大径」とは、成形品20の軸方向他方側を向く面と、面取部24Aを構成する面(C面)とが交差することにより形成される円の直径のことである。
【0044】
したがって、円体12の軸方向の一端面14側における周縁部14Aを面取部24Aに押し付けると(周縁部14Aが面取部24Aを軸方向一方側へ押圧すると)、凹部22の開口の周縁部24が拡径する方向(径方向外側)へ弾性変形されつつ、円体12の周縁部14Aが面取部24Aによって径方向内側へ案内される。これにより、円体12が凹部22内へ挿入され易くなり、その円体12は、その軸方向の一端面14が凹部22の底壁28に接触するまで、その凹部22の内部に圧入される。
【0045】
ここで、凹部22の深さDは、全ての円体12の軸方向の長さよりも深くなっていることから(図3図4(A)参照)、この円体12の軸方向の長さは、凹部22の深さDよりも短い。換言すると、複数種類の円体12から任意に選択した一種類の円体12(一の円体12)の軸方向の長さは、凹部22における面取部24Aの軸方向一方側の端から底壁28に至る深さ(長さ)よりも短い。そのため、円体12が、上記のように凹部22の内部に圧入された際には、その(円体12の)軸方向の他端面16側における周縁部16Aが、凹部22の内周壁26によって線状に保持される(図4(B)参照)。
【0046】
なお、円体12の外径(直径)は、凹部22の底壁28の直径よりも小さい。換言すれば、複数種類の円体12から任意に選択した一種類の円体12(一の円体12)の外径(直径)は、凹部22の底壁28と内周壁26とが交差することにより形成される円の直径よりも小さい。
【0047】
これにより、凹部22内に圧入された円体12が、その凹部22内から抜け出ることが防止される。つまり、円体12が成形品20の凹部22内に収容されて保持された組立体10が完成する。このように、本実施形態によれば、外径と軸方向の長さが異なる複数の円体12から選択した一の円体12が、共通の成形品20の凹部22内に保持された組立体10が製造される。
【0048】
しかも、上記したように、凹部22の開口の周縁部24には、面取部24Aが形成されているため、面取部24Aが形成されていない場合に比べて、凹部22に円体12が容易に圧入される。特に、その面取部24AがC面とされていると、面取部24Aが例えばR面とされている場合に比べて、より一層凹部22に円体12が圧入され易くなる。ここで、R面とは、交差する面の部分(角部)を取り除いて曲面にする加工(R面取り)により形成された当該曲面のことである。
【0049】
また、本実施形態では、冷却工程における樹脂材料の「ヒケ」によって、凹部22の形状は、凹部22の開口の周縁部24から底壁28までの内周壁26の内径が、その周縁部24から底壁28に向かって徐々に拡大するように自動的に形成される。したがって、凹部22内に工具等を挿入して、上記形状に切削加工する必要がなく、そのような切削加工によって上記形状を形成する場合に比べて、容易かつ低コストで成形品20が製造される。
【0050】
以上、本実施形態に係る組立体10及び組立体10の製造方法について、図面を基に説明したが、本実施形態に係る組立体10及び組立体10の製造方法は、図示のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能なものである。
【0051】
例えば、円体12は、円柱状(軸方向の長さが極端に短い短円柱状、円板状なども含む)に形成されている金属製部品であってもよい。つまり、円体12は、円柱状の円柱体と、実施形態で例示した円筒状の円筒体と、を含む概念である。また、凹部22の開口の周縁部24から底壁28までの内周壁26の内径が、その周縁部24から底壁28に向かって徐々に拡大するように、上記した冷却工程後に更に切削加工によって形成するようにしてもよい。
【0052】
また、C面となる面取部は、円体12の軸方向の一端面14側の外周縁部である周縁部14Aに形成されていてもよい。この場合の面取部は、その最小径が、凹部22の開口の周縁部24(面取部24Aは形成されていない)の内径よりも小さくなるように、その傾斜角度が設定される。
【0053】
ここで、「円体12に形成した面取部の最小径」とは、円体12の軸方向一方側を向く一端面14において面取部が形成する円の直径のことである。換言すると、「円体12に形成した面取部の最小径」とは、円体12の一端面14と、円体12の周縁部14Aに形成した面取部であるC面とが交差することにより形成される円の直径のことである。また、C面となる面取部は、円体12の軸方向の一端面14側の周縁部14Aと凹部22の開口の周縁部24との両方に形成されていてもよい。
【0054】
また、図示は省略するが、例えば開口の周縁部24に沿うように複数の薄い板(シム)を凹部22内に挿入し、その複数の薄い板で開口の周縁部24を押し広げるように(円体12で複数の薄い板を開口の周縁部24に押し付けるように)して、凹部22内に円体12を圧入するようにしてもよい。
【0055】
これによれば、凹部22の開口の周縁部24に面取部24Aが形成されていなくても、その複数の薄い板により、その周縁部24が弾性変形して押し広げられるため、凹部22に円体12が容易に圧入される。なお、円体12を凹部22に圧入した後、その薄い板を凹部22から抜くと、その周縁部24は弾性変形が解除されて復元するため、円体12の軸方向の他端面16側における周縁部16Aが、凹部22の内周壁26によって線状に保持される。
【0056】
また、前記した実施形態では、底壁28は、凹部22の内周壁26の軸方向一方側の端部から径方向内側へ、予め決められた突出長さで突出した環状平板(ドーナツ状平板)29における軸方向他方側を向く面に形成されているものを示したが、これに限定されるものではない。底壁28は、円形の平板における軸方向他方側を向く面に形成されていても良い。換言すると、底壁28には、中央部に貫通孔28Aが形成されていなくても良い。この場合は、上記円形の平板における軸方向一方側を向く面に複数(例えば6個)のゲートが等間隔(例えば60°間隔)で円状に位置、又は、上記円形の平板における軸方向一方側を向く面の中央部の1箇所にゲートが位置されていれば良い。
【0057】
(付記)
(((1)))
外径と軸方向の長さが異なる複数の円体から選択した一の円体と、
該複数の円体の何れの該長さよりも深く、該複数の円体の何れの該外径よりも小さい開口径とされた凹部を有し、該凹部の開口から底までの内径が該開口から該底に向かって徐々に拡大しており、該軸方向の一端面が該底に接触するまで該凹部に圧入された該一の円体の該軸方向の他端面側における周縁部を該凹部の内周壁で保持する樹脂成形品と、
を備えた組立体。
(((2)))
前記円体の前記一端面側の周縁部及び前記開口の周縁部の少なくとも一方に、前記円体を前記凹部に圧入する際に、前記開口を弾性変形させて拡径するための面取部が形成されている(((1)))に記載の組立体。
(((3)))
前記面取部がC面である(((2)))に記載の組立体。
(((4)))
前記底は平板環状に形成されており、該底の内周面に複数のゲート跡が周方向に等間隔に形成されている(((1)))~(((3)))の何れか1つに記載の組立体。
(((5)))
(((4)))に記載の組立体を製造する方法であって、
金型における前記底の内周面を成形する部位に周方向に等間隔に形成された複数のゲートから前記金型の内部に溶融樹脂材料を注入する注入工程と、
前記金型の内部で前記溶融樹脂材料が冷却されてなる前記樹脂成形品を該金型の内部から取り出した後、該樹脂成形品を更に冷却する冷却工程と、
前記円体を前記樹脂成形品の前記凹部に圧入する圧入工程と、
を有する組立体の製造方法。
【0058】
(((1)))に係る組立体によれば、外径と軸方向の長さが異なる複数の円体の1つを、凹部から抜け出ないように共通の樹脂成形品で保持することができる。
(((2)))に係る組立体によれば、面取部が形成されていない場合に比べて、凹部に円体を容易に圧入することができる。
(((3)))に係る組立体によれば、面取部がR面である場合に比べて、凹部に円体を容易に圧入することができる。
(((4)))に係る組立体によれば、凹部の開口から底までの内径が開口から底に向かって徐々に拡大する形状を成形時の冷却工程における樹脂材料のヒケによって自動的に形成することができる。
(((5)))に係る組立体の製造方法によれば、凹部の開口から底までの内径が開口から底に向かって徐々に拡大する形状を冷却工程における樹脂材料のヒケによって自動的に形成することができる。
【符号の説明】
【0059】
10 組立体
12 円体
14 一端面
14A 周縁部
16 他端面
16A 周縁部
20 樹脂成形品
22 凹部
24 周縁部
24A 面取部
26 内周壁
28 底壁(底の一例)
G ゲート跡
図1
図2
図3
図4
図5