(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129192
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】位置算出システム及び位置算出方法
(51)【国際特許分類】
G01S 5/14 20060101AFI20240919BHJP
【FI】
G01S5/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038226
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116964
【弁理士】
【氏名又は名称】山形 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100120477
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 賢改
(74)【代理人】
【識別番号】100135921
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 昌彦
(74)【代理人】
【氏名又は名称】半田 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100203677
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 力
(72)【発明者】
【氏名】庭野 浩武
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062BB05
5J062CC11
(57)【要約】
【課題】対象端末と、二つの通信機との間の距離を測定することで、対象端末の位置を算出できるようにする。
【解決手段】エリア判定システム100は、軌道に沿って移動する対象端末110と、第1の通信機130Aとの間の第1の三次元距離、及び、対象端末110と、第2の通信機130Bとの間の第2の三次元距離を測定し、対象端末110が存在する位置の高さを示す対象端末高さと、第1の通信機130Aが存在する位置の高さとから、第1の三次元距離を第1の二次元距離に変換し、対象端末高さと、第2の通信機130Bが存在する位置の高さとから、第2の三次元距離を第2の二次元距離に変換し、軌道に対して第1の通信機130A及び第2の通信機130Bが存在する側と、第1の二次元距離と、第2の二次元距離とから、二次元における座標系における対象端末110の位置を算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた軌道に沿って移動する対象端末と、第1の通信機との間の三次元における距離である第1の三次元距離、及び、前記対象端末と、水平面に投影した場合に前記軌道に対して前記第1の通信機と同じ側に配置されている第2の通信機との間の三次元における距離である第2の三次元距離を測定する測距部と、
前記対象端末が存在する位置の高さを示す対象端末高さと、前記第1の通信機が存在する位置の高さを示す第1の通信機高さとから、前記第1の三次元距離を、水平面における二次元の距離である第1の二次元距離に変換し、前記対象端末高さと、前記第2の通信機が存在する位置の高さを示す第2の通信機高さとから、前記第2の三次元距離を、水平面における二次元の距離である第2の二次元距離に変換し、前記軌道に対して前記第1の通信機及び前記第2の通信機が存在する側を示す存在側と、前記第1の二次元距離と、前記第2の二次元距離とから、前記軌道を第1の軸、及び、前記第1の軸に直交する第2の軸からなる二次元における座標系における前記対象端末の位置を算出する位置算出部と、を備えること
を特徴とする位置算出システム。
【請求項2】
前記算出された位置が、前記座標系において予め定められたエリアである期待エリア内に含まれるか否かを判定する存在判定部をさらに備えること
を特徴とする請求項1に記載の位置算出システム。
【請求項3】
前記期待エリアは、前記対象端末の移動方向毎に予め定められており、
前記測距部は、第1の時間及び前記第1の時間よりも後の第2の時間において、前記第1の三次元距離及び前記第2の三次元距離を測定し、
前記位置算出部は、前記第1の時間における前記対象端末の位置と、前記第2の時間における前記対象端末の位置とを算出し、
前記第1の時間における前記対象端末の位置と、前記第2の時間における前記対象端末の位置とから、前記対象端末の移動方向を算出する移動方向算出部と、
前記存在判定部は、前記算出された移動方向に対応する前記期待エリア内に、前記第2の時間における前記対象端末の位置が含まれるか否かを判定すること
を特徴とする請求項2に記載の位置算出システム。
【請求項4】
測距部が、予め定められた軌道に沿って移動する対象端末と、第1の通信機との間の三次元における距離である第1の三次元距離、及び、前記対象端末と、水平面に投影した場合に前記軌道に対して前記第1の通信機と同じ側に配置されている第2の通信機との間の三次元における距離である第2の三次元距離を測定し、
位置算出部が、前記対象端末が存在する位置の高さを示す対象端末高さと、前記第1の通信機が存在する位置の高さを示す第1の通信機高さとから、前記第1の三次元距離を、水平面における二次元の距離である第1の二次元距離に変換し、
前記位置算出部が、前記対象端末高さと、前記第2の通信機が存在する位置の高さを示す第2の通信機高さとから、前記第2の三次元距離を、水平面における二次元の距離である第2の二次元距離に変換し、
前記位置算出部が、前記軌道に対して前記第1の通信機及び前記第2の通信機が存在する側を示す存在側と、前記第1の二次元距離と、前記第2の二次元距離とから、前記軌道を第1の軸、及び、前記第1の軸に直交する第2の軸からなる二次元における座標系における前記対象端末の位置を算出すること
を特徴とする位置算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、位置算出システム及び位置算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象端末の三次元位置を算出するシステムとして、対象端末との距離をUWB(Ultra Wide Band)を用いた無線信号にて測距可能な四台の通信機を用いるシステムがある(例えば、特許文献1を参照)。このシステムは、対象端末と、四台の通信機との間の距離から対象端末の三次元位置を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の三次元位置算出システムは、三次元位置を算出するため、対象端末と、最低四台の通信機との間の距離が必要である。そのため、通信機の設置を行うことのできる場所の制約により、対象端末との距離を測定可能な四台以上の通信機を設置できない状況では、対象端末の三次元位置を算出することができない。
【0005】
そこで、本開示の一又は複数の態様は、対象端末と、二つの通信機との間の距離を測定することで、対象端末の位置を算出することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る位置算出システムは、予め定められた軌道に沿って移動する対象端末と、第1の通信機との間の三次元における距離である第1の三次元距離、及び、前記対象端末と、水平面に投影した場合に前記軌道に対して前記第1の通信機と同じ側に配置されている第2の通信機との間の三次元における距離である第2の三次元距離を測定する測距部と、前記対象端末が存在する位置の高さを示す対象端末高さと、前記第1の通信機が存在する位置の高さを示す第1の通信機高さとから、前記第1の三次元距離を、水平面における二次元の距離である第1の二次元距離に変換し、前記対象端末高さと、前記第2の通信機が存在する位置の高さを示す第2の通信機高さとから、前記第2の三次元距離を、水平面における二次元の距離である第2の二次元距離に変換し、前記軌道に対して前記第1の通信機及び前記第2の通信機が存在する側を示す存在側と、前記第1の二次元距離と、前記第2の二次元距離とから、前記軌道を第1の軸、及び、前記第1の軸に直交する第2の軸からなる二次元における座標系における前記対象端末の位置を算出する位置算出部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本開示の一態様に係る位置算出方法は、測距部が、予め定められた軌道に沿って移動する対象端末と、第1の通信機との間の三次元における距離である第1の三次元距離、及び、前記対象端末と、水平面に投影した場合に前記軌道に対して前記第1の通信機と同じ側に配置されている第2の通信機との間の三次元における距離である第2の三次元距離を測定し、位置算出部が、前記対象端末が存在する位置の高さを示す対象端末高さと、前記第1の通信機が存在する位置の高さを示す第1の通信機高さとから、前記第1の三次元距離を、水平面における二次元の距離である第1の二次元距離に変換し、前記位置算出部が、前記対象端末高さと、前記第2の通信機が存在する位置の高さを示す第2の通信機高さとから、前記第2の三次元距離を、水平面における二次元の距離である第2の二次元距離に変換し、前記位置算出部が、前記軌道に対して前記第1の通信機及び前記第2の通信機が存在する側を示す存在側と、前記第1の二次元距離と、前記第2の二次元距離とから、前記軌道を第1の軸、及び、前記第1の軸に直交する第2の軸からなる二次元における座標系における前記対象端末の位置を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一又は複数の態様によれば、対象端末と、二つの通信機との間の距離を測定することで、対象端末の位置を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る位置算出システムとしてのエリア判定システムの構成を概略的に示すブロック図である。
【
図2】実施の形態1における対象端末、位置算出装置及び情報記憶装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【
図3】(A)及び(B)は、ハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図4】実施の形態1に係るエリア判定システムにより、対象端末が特定エリアに存在するか否かを判定する動作を示すフローチャートである。
【
図5】三次元距離を二次元距離に変換する処理を説明するための概略図である。
【
図6】対象端末の位置を算出する処理を説明するための概略図である。
【
図7】実施の形態2に係る位置算出システムとしてのエリア判定システムの構成を概略的に示すブロック図である。
【
図8】実施の形態2における対象端末、位置算出装置及び情報記憶装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【
図9】実施の形態2に係るエリア判定システムにより、対象端末が特定エリアに存在するか否かを判定する動作を示すフローチャートである。
【
図10】対象端末の移動方向を判定する処理を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る位置算出システムとしてのエリア判定システム100の構成を概略的に示すブロック図である。
エリア判定システム100は、対象端末110と、第1の通信機130Aと、第2の通信機130Bと、位置算出装置150と、情報記憶装置170とを備える。
エリア判定システム100は、対象端末110の位置を算出して、算出された位置から、対象端末110が特定エリアに存在するか否かを判定するシステムである。
【0011】
ここで、対象端末110は、予め定められた軌道に沿って移動するものとする。実施の形態1では、対象端末110は、予め定められた軌道に沿って、
図1に示されているD方向に移動するものとする。
第1の通信機130A及び第2の通信機130Bは、水平面に投影した場合にその軌道に対して同じ側に配置されているものとする。そして、第1の通信機130A及び第2の通信機130Bは、対象端末110が移動する方向Dにおいて、距離を離して設置されているものとする。
【0012】
対象端末110は、第1の通信機130A及び第2の通信機130Bと無線で通信を行うことができるようにされている。ここでは、対象端末110は、第1の通信機130A及び第2の通信機130BとUWBを用いた無線通信を行うものとする。
また、対象端末110、位置算出装置150及び情報記憶装置170は、LAN(Local Area Network)等のネットワーク101に接続される。
【0013】
第1の通信機130Aは、対象端末110からの無線信号を受信すると、対象端末110に無線信号を応答する第1の通信部として機能する。
第2の通信機130Bは、対象端末110からの無線信号を受信すると、対象端末110に無線信号を応答する第2の通信部として機能する。
【0014】
対象端末110は、測距機能により、第1の通信機130A及び第2の通信機130Bとの間の距離を測定する。
位置算出装置150は、対象端末110で測定された距離を示す測距情報と、情報記憶装置170に記憶されている算出用情報とを用いて、対象端末110の位置を算出し、対象端末110の位置から、対象端末110が特定エリアに存在するか否かを判定する。
情報記憶装置170は、エリア判定システム100での処理に必要な情報を記憶する。
【0015】
図2は、実施の形態1における対象端末110、位置算出装置150及び情報記憶装置170の構成を概略的に示すブロック図である。
【0016】
対象端末110は、測距用通信部111と、測距部112と、情報通信部113とを備える。
測距用通信部111は、UWBを用いて、第1の通信機130A及び第2の通信機130Bと通信を行う。具体的には、測距用通信部111は、UWBを用いて、測距用の信号である送信信号を第1の通信機130A及び第2の通信機130Bに送信する。そして、測距用通信部111は、第1の通信機130A及び第2の通信機130Bから、送信信号の応答信号を受信する。
【0017】
測距部112は、測距用通信部111を介して無線通信を行うことで、第1の通信機130A及び第2の通信機130Bとの間の距離を測定する。例えば、測距部112は、送信信号と、その応答信号との往復時間から、第1の通信機130A及び第2の通信機130Bとの間の距離を測定する。そして、測距部112は、第1の通信機130A及び第2の通信機130Bとの間の距離を示す測距情報を生成する。
ここでは、測距部112は、対象端末110と、第1の通信機130Aとの間の三次元における距離である第1の三次元距離、及び、対象端末110と、第2の通信機130Bとの間の三次元における距離である第2の三次元距離を測定する。
【0018】
情報通信部113は、測距部112で生成された測距情報を、ネットワーク101を介して、位置算出装置150に送信する。
【0019】
以上に記載された測距部112の一部又は全部は、例えば、
図3(A)に示されているように、メモリ10と、メモリ10に格納されているプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ11とにより構成することができる。このようなプログラムは、ネットワークを通じて提供されてもよく、また、記録媒体に記録されて提供されてもよい。即ち、このようなプログラムは、例えば、プログラムプロダクトとして提供されてもよい。
【0020】
また、測距部112の一部又は全部は、例えば、
図3(B)に示されているように、単一回路、複合回路、プログラムで動作するプロセッサ、プログラムで動作する並列プロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等の処理回路12で構成することもできる。
以上のように、測距部112は、処理回路網により実現することができる。
【0021】
なお、測距用通信部111は、図示していないが、UWBを用いた無線通信I/F(InterFace)により構成することができる。
また、情報通信部113は、無線又は有線を用いた通信I/Fにより構成することができる。
【0022】
図2に戻り、位置算出装置150は、算出装置通信部151と、位置算出部152と、存在判定部153とを備える。
算出装置通信部151は、ネットワーク101を介して、対象端末110及び情報記憶装置170と通信を行う。例えば、算出装置通信部151は、対象端末110から測距情報を受信し、その測距情報を位置算出部152に与える。また、算出装置通信部151は、情報記憶装置170から算出用情報を受信し、その算出用情報を位置算出部152に与える。さらに、算出装置通信部151は、情報記憶装置170から期待エリア情報を受信し、その期待エリア情報を存在判定部153に与える。
【0023】
位置算出部152は、測距情報と、算出用情報とを使用して、対象端末110の位置を算出する。ここで、算出用情報は、対象端末110が第1の通信機130A及び第2の通信機130Bのどちら側に存在するかを示す存在側、対象端末110の、基準となる水平面からの高さ、並びに、第1の通信機130A及び第2の通信機130Bのそれぞれの、その水平面からの高さを示す情報である。
【0024】
例えば、位置算出部152は、対象端末110が存在する位置の高さを示す対象端末高さと、第1の通信機130Aが存在する位置の高さを示す第1の通信装置高さとから、第1の三次元距離を、水平面における二次元の距離である第1の二次元距離に変換する。
また、位置算出部152は、対象端末高さと、第2の通信機130Bが存在する位置の高さを示す第2の通信装置高さとから、第2の三次元距離を、水平面における二次元の距離である第2の二次元距離に変換する。
そして、位置算出部152は、第1の通信機130A及び第2の通信機130Bを結ぶ直線に対して、対象端末110が存在する側を示す存在側と、第1の二次元距離と、第2の二次元距離とから、その軌道を第1の軸、及び、第1の軸に直交する第2の軸からなる二次元の座標系における対象端末110の位置を算出する。なお、対象端末110の位置の具体的な算出方法については、後述する。
【0025】
存在判定部153は、位置算出部152で算出された位置が、上記の二次元の座標系において予め定められたエリアである期待エリア内に含まれるか否かを判定する。
例えば、存在判定部153は、位置算出部152で算出された対象端末110の位置が、期待エリア情報で示される期待エリア内に存在するか否かを判定する。実施の形態1における期待エリア情報は、対象端末110が存在することが期待される座標である期待座標と、期待座標として許容される範囲を示す座標許容値とを示す。ここでは、対象端末110が移動する軌道の少なくとも一部を含む水平面において、
第1の通信機130A及び第2の通信機130Bを結ぶ直線をY軸、そのY軸に直交するX軸からなる座標系で、期待座標が特定されており、座標許容値は、Y軸における値のプラス及びマイナスの範囲を示す。
【0026】
以上に記載された位置算出部152及び存在判定部153の一部又は全部は、例えば、
図3(A)に示されているように、メモリ10と、メモリ10に格納されているプログラムを実行するプロセッサ11とにより構成することができる。このようなプログラムは、ネットワークを通じて提供されてもよく、また、記録媒体に記録されて提供されてもよい。即ち、このようなプログラムは、例えば、プログラムプロダクトとして提供されてもよい。
【0027】
また、位置算出部152及び存在判定部153の一部又は全部は、例えば、
図3(B)に示されているように、処理回路12で構成することもできる。
以上のように、位置算出部152及び存在判定部153は、処理回路網により実現することができる。
【0028】
なお、算出装置通信部151は、無線又は有線を用いた通信I/Fにより構成することができる。
【0029】
図2に戻り、情報記憶装置170は、算出用情報記憶部171と、期待エリア情報記憶部172と、情報制御部173と、記憶装置通信部174とを備える。
【0030】
算出用情報記憶部171は、算出用情報を記憶する。
期待エリア情報記憶部172は、期待エリア情報を記憶する。
【0031】
情報制御部173は、算出用情報記憶部171から算出用情報を読み出し、その算出用情報を、記憶装置通信部174に、位置算出装置150へ送信させる。
また、情報制御部173は、期待エリア情報記憶部172から期待エリア情報を読み出し、その期待エリア情報を、記憶装置通信部174に、位置算出装置150へ送信させる。
【0032】
記憶装置通信部174は、ネットワーク101を介して、位置算出装置150と通信を行う。
【0033】
以上に記載された情報制御部173の一部又は全部は、例えば、
図3(A)に示されているように、メモリ10と、メモリ10に格納されているプログラムを実行するプロセッサ11とにより構成することができる。このようなプログラムは、ネットワークを通じて提供されてもよく、また、記録媒体に記録されて提供されてもよい。即ち、このようなプログラムは、例えば、プログラムプロダクトとして提供されてもよい。
【0034】
また、情報制御部173の一部又は全部は、例えば、
図3(B)に示されているように、処理回路12で構成することもできる。
以上のように、情報制御部173は、処理回路網により実現することができる。
【0035】
算出用情報記憶部171及び期待エリア情報記憶部172は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、揮発性メモリ及び不揮発性メモリ等の記憶装置により構成することができる。
なお、記憶装置通信部174は、無線又は有線を用いた通信I/Fにより構成することができる。
【0036】
図4は、実施の形態1に係るエリア判定システム100により、対象端末110が特定エリアに存在するか否かを判定する動作を示すフローチャートである。
まず、対象端末110の測距部112は、測距用通信部111を使用して、第1の通信機130A及び第2の通信機130Bのそれぞれに対して、UWBを用いた測距を実施する(S10)。これにより、測距部112は、第1の通信機130A及び第2の通信機130Bのそれぞれの三次元における距離である三次元距離を測定する。そして、測距部112は、このようにして測定された三次元距離を示す測距情報を生成し、その測距情報を、情報通信部113を使用して、ネットワーク101を介して、位置算出装置150に送る。
【0037】
次に、位置算出装置150の算出装置通信部151は、測距情報を受信し、その測距情報を位置算出部152に与える。位置算出部152は、測距情報で示される三次元距離を、二次元における距離である二次元距離に変換する(S11)。
【0038】
図5は、X軸、Y軸及びZ軸からなる三次元における三次元距離を、X軸及びY軸からなる二次元における二次元距離に変換する処理を説明するための概略図である。
図5において、対象端末110と、第1の通信機130Aとの間の三次元距離をd
3a、対象端末110と、第2の通信機130Bとの間の三次元距離をd
3b、対象端末110の、基準となる水平面からの高さをh、第1の通信機130Aの、その水平面からの高さをh
a、及び、第2の通信機130Bの、その水平面からの高さをh
bとする。
【0039】
このような場合、第1の通信機130Aの二次元距離d2aは、下記の(1)式により求めることができ、第2の通信機130Bの二次元距離d2bは、下記の(2)式により求めることができる。
【0040】
【0041】
ここで、X軸及びY軸からなる二次元の座標系は、Y軸を対象端末110の移動方向とし、X軸をY軸に対して垂直となるようにした水平面に存在するものとする。そして、Z軸は、その水平面に対して垂直方向に配置されている。なお、言い換えると、Y軸は、対象端末110の軌道と一致する。
なお、
図5では、高さの基準となる水平面を、X軸及びY軸を含む水平面として説明したが、このような例に限定されるものではない、任意の水平面を用いて、二次元距離を算出することができる。
【0042】
図4に戻り、位置算出部152は、ステップS11で求められた二次元距離(d
2a、d
2b)と、対象端末110の存在側から、二次元の座標系において、対象端末110の位置を算出する(S12)。
【0043】
図6は、対象端末110の位置を算出する処理を説明するための概略図である。
図6において、二次元座標110#は、X軸、Y軸及びZ軸からなる三次元における対象端末110の位置をX軸及びY軸からなる水平面に投影した位置を示し、二次元座標130A#は、X軸、Y軸及びZ軸からなる三次元における第1の通信機130Aの位置をX軸及びY軸からなる水平面に投影した位置を示し、二次元座標130B#は、X軸、Y軸及びZ軸からなる三次元における第2の通信機130Bの位置をX軸及びY軸からなる水平面に投影した位置を示している。
【0044】
第1の通信機130Aの二次元座標130A#を(xa,ya)、第2の通信機130Bの二次元座標130B#を(xb,yb)とすると、対象端末110の二次元座標110#(x,y)は、下記の(3)式及び(4)式の連立方程式の解として求めることができる。なお、(3)式及び(4)式の連立方程式の解は、2つ求めることができるが、情報記憶装置170から取得される算出用情報で示される存在側を参照することで、対象端末110の二次元座標110#を一意に求めることができる。
【0045】
【0046】
図4に戻り、存在判定部153は、ステップS12で求められた対象端末110の二次元座標と、情報記憶装置170から取得された期待エリア情報で示される期待エリアとを比較し、対象端末110の二次元座標が期待エリア内か否かを判定する(S13)。期待エリア情報には、期待座標と、座標許容値とが含まれており、存在判定部153は、期待座標に対して座標許容値で示される座標範囲として期待エリアを算出し、対象端末110の二次元座標がその期待エリア内であるか否かを判定する。
【0047】
以上のように、実施の形態1によれば、対象端末110に対して、第1の通信機130A及び第2の通信機130Bという二台の通信機を使用することで、対象端末110の位置を算出することができる。このため、従来では、四台の通信機が必要であったところ、二台の通信機に減らすことができる。
【0048】
例えば、対象端末110を含む列車が特定エリアに存在する場合にホームドアの開閉可否を判断するシステムのように、特定のエリアに対象端末が存在するか否かを判定するシステムに従来技術を適用すると、位置を特定したい範囲は限定的であるにもかかわらず四台以上の通信機が必要である。このため、従来技術は、対象端末の存在して欲しい期待エリアに対して、広いエリアをカバーする必要があり効率が悪い。さらに、列車のホームにおいては設置場所に制約があり、四台以上の通信機を設置することが困難な状況もある。
【0049】
以上のようなシステムとして、実施の形態1に記載されたエリア判定システム100を適用することで、通信機の設置数を減らして設置コスト及び機器コストを減らしつつ、対象端末110が特定エリアに存在するか否かの判定が可能となる。
【0050】
実施の形態2.
実施の形態1では対象端末110の移動方向は一方向のみであったが、実施の形態2では複数の方向に移動する例を示す。これにより、移動方向で異なる期待エリアを設定することができるようになる。
【0051】
図7は、実施の形態2に係る位置算出システムとしてのエリア判定システム200の構成を概略的に示すブロック図である。
エリア判定システム200は、対象端末210と、第1の通信機130Aと、第2の通信機130Bと、位置算出装置250と、情報記憶装置270とを備える。
実施の形態2に係るエリア判定システム200の第1の通信機130A及び第2の通信機130Bは、実施の形態1に係るエリア判定システム100の第1の通信機130A及び第2の通信機130Bと同様である。
【0052】
対象端末210は、第1の通信機130A及び第2の通信機130Bと無線で通信を行うことができるようにされている。ここでは、対象端末210は、第1の通信機130A及び第2の通信機130BとUWBを用いた無線通信を行うものとする。
また、対象端末210、位置算出装置250及び情報記憶装置270は、ネットワーク101に接続される。
【0053】
実施の形態2では、対象端末210は、予め定められた軌道を、予め定められた方向D又は方向Dとは反対の方向Eに移動するものとする。第1の通信機130A及び第2の通信機130Bは、対象端末210が移動する軌道に対して同じ側に配置され、対象端末210が移動する方向D及び方向Eにおいて、距離を離して設置されているものとする。
【0054】
対象端末210は、測距機能により、第1の通信機130A及び第2の通信機130Bとの間の距離を測定する。
実施の形態2では、対象端末210は、対象端末210が特定エリアに存在するか否かを判定する時間と、その時間よりも前の時間とにおいて、第1の通信機130A及び第2の通信機130Bとの間の距離を測定することで、対象端末210の移動方向を特定する。対象端末210が特定エリアに存在するか否かを判定する時間を第2の時間ともいい、第2の時間よりも前に距離を測定する時間を第1の時間ともいう。
【0055】
位置算出装置250は、第1の時間において測定された距離を示す測距情報である第1の測距情報と、第2の時間において測定された距離を示す測距情報である第2の測距情報と、情報記憶装置270に記憶されている算出用情報とを用いて、第1の時間における対象端末210の位置及び第2の時間における対象端末210の位置を算出し、これらの位置から、対象端末210の移動方向を算出する。そして、位置算出装置250は、対象端末210の移動方向と、第2の時間における対象端末210の位置とから、対象端末210が特定エリアに存在するか否かを判定する。
【0056】
情報記憶装置270は、エリア判定システム200での処理に必要な情報を記憶する。実施の形態2では、情報記憶装置270は、対象端末210の移動方向毎に、期待エリア情報を記憶する。
【0057】
図8は、実施の形態2における対象端末210、位置算出装置250及び情報記憶装置270の構成を概略的に示すブロック図である。
対象端末210は、測距用通信部111と、測距部212と、情報通信部113とを備える。
実施の形態2における対象端末210の測距用通信部111及び情報通信部113は、実施の形態1における対象端末110の測距用通信部111及び情報通信部113と同様である。
【0058】
測距部212は、上述のように、第1の時間において測距用通信部111を介して無線通信を行うことで、第1の通信機130A及び第2の通信機130Bとの間の三次元における距離を測定し、さらに、第2の時間において測距用通信部111を介して無線通信を行うことで、第1の通信機130A及び第2の通信機130Bとの間の三次元における距離を測定する。そして、測距部212は、第1の時間における、第1の通信機130A及び第2の通信機130Bとの間の三次元距離を示す第1の測距情報と、第2の時間における、第1の通信機130A及び第2の通信機130Bとの間の三次元距離を示す第2の測距情報とを生成する。そして、測距部212は、第1の測距情報及び第2の測距情報を、情報通信部113に位置算出装置250へ送信させる。
【0059】
ここで、実施の形態2における測距部212は、第1の時間及び第1の時間よりも後の第2の時間において、第1の通信機130Aとの三次元における距離である第1の三次元距離と、第2の通信機130Bとの三次元における距離である第2の三次元距離とを測定する。
【0060】
位置算出装置250は、算出装置通信部151と、位置算出部252と、存在判定部253と、移動方向算出部254とを備える。
実施の形態2における位置算出装置250の算出装置通信部151は、実施の形態1における位置算出装置150の算出装置通信部151と同様である。
【0061】
位置算出部252は、第1の測距情報と、第2の測距情報と、算出用情報とを使用して、第1の時間における対象端末210の位置と、第2の時間における対象端末210の位置とを算出する。対象端末210の位置の具体的な算出方法については、実施の形態1と同様である。
そして、位置算出部252は、第1の時間における対象端末210の位置と、第2の時間における対象端末210の位置とを移動方向算出部254に通知し、第2の時間における対象端末210の位置を存在判定部253に通知する。
【0062】
移動方向算出部254は、第1の時間における対象端末210の位置と、第2の時間における対象端末210の位置とから、対象端末210の移動方向を算出する。算出された移動方向は、存在判定部253に通知される。
【0063】
存在判定部253は、位置算出部252で算出された、第2の時間における対象端末210の位置が、移動方向算出部254で算出された移動方向に対応する期待エリア情報で示される期待エリア内に存在するか否かを判定する。
例えば、存在判定部253は、移動方向算出部254から通知を受けた移動方向に対応する期待エリア情報を、算出装置通信部151を介して、情報記憶装置270から受け取る。そして、存在判定部253は、受け取った期待エリア情報で示される期待エリア内に、第2の時間における対象端末210の位置が含まれるか否かを判定する。
【0064】
以上に記載された移動方向算出部254も、例えば、
図3(A)に示されているように、メモリ10と、メモリ10に格納されているプログラムを実行するプロセッサ11とにより構成することができる。このようなプログラムは、ネットワークを通じて提供されてもよく、また、記録媒体に記録されて提供されてもよい。即ち、このようなプログラムは、例えば、プログラムプロダクトとして提供されてもよい。
【0065】
また、移動方向算出部254は、例えば、
図3(B)に示されているように、処理回路12で構成することもできる。
以上のように、移動方向算出部254も、処理回路網により実現することができる。
【0066】
情報記憶装置270は、算出用情報記憶部171と、期待エリア情報記憶部272と、情報制御部273と、記憶装置通信部174とを備える。
実施の形態2における情報記憶装置270の算出用情報記憶部171及び記憶装置通信部174は、実施の形態1における情報記憶装置170の算出用情報記憶部171及び記憶装置通信部174と同様である。
【0067】
期待エリア情報記憶部272は、対象端末210の移動方向毎に期待エリア情報を記憶する。
【0068】
情報制御部273は、算出用情報記憶部171から算出用情報を読み出し、その算出用情報を、記憶装置通信部174に、位置算出装置250へ送信させる。
また、情報制御部273は、位置算出装置250から対象端末210の移動方向の通知を受けると、期待エリア情報記憶部272から、その移動方向に対応する期待エリア情報を読み出し、その期待エリア情報を、記憶装置通信部174に、位置算出装置250へ送信させる。
【0069】
図9は、実施の形態2に係るエリア判定システム100により、対象端末210が特定エリアに存在するか否かを判定する動作を示すフローチャートである。
まず、対象端末210の測距部212は、測距用通信部111を使用して、第1の時間及び第2の時間において、第1の通信機130A及び第2の通信機130Bのそれぞれに対して、UWBを用いた測距を実施する(S20)。これにより、測距部212は、第1の時間及び第2の時間のそれぞれにおいて、第1の通信機130A及び第2の通信機130Bのそれぞれの三次元における距離である三次元距離を測定する。そして、測距部212は、このようにして測定された、第1の時間における三次元距離を示す測距情報である第1の測距情報及び第2の時間における三次元距離を示す測距情報である第2の測距情報を生成し、その第1の測距情報及び第2の測距情報を、情報通信部113を使用して、ネットワーク101を介して、位置算出装置250に送る。
【0070】
次に、位置算出装置250の算出装置通信部151は、第1の測距情報及び第2の測距情報を受信し、その第1の測距情報及び第2の測距情報を位置算出部252に与える。位置算出部252は、第1の測距情報及び第2の測距情報で示される、第1の時間における三次元距離及び第2の時間における三次元距離のそれぞれを、二次元における距離である、第1の時間における二次元距離及び第2の時間における二次元距離に変換する(S21)。
【0071】
位置算出部252は、ステップS21で求められた、第1の時間における二次元距離及び第2の時間における二次元距離と、対象端末210の存在側から、対象端末210の、第1の時間における位置及び第2の時間における位置を算出する(S22)。
【0072】
次に、移動方向算出部254は、ステップS22で算出された、対象端末210の、第1の時間における位置及び第2の時間における位置から、対象端末210の移動方向を算出する(S23)。
【0073】
例えば、
図10に示されているように、第1の時間t
0における対象端末210の座標が(x
0,y
0)であり、第2の時間t
1における対象端末210の座標が(x
1,y
1)である場合には、移動方向算出部254は、y
1からy
0を減算して、その値が正であればY軸の正方向を移動方向、その値が負であればY軸の負方向を移動方向と判定する。
【0074】
図9に戻り、存在判定部253は、ステップS23で算出された移動方向に対応する期待エリア情報を、情報記憶装置270から取得して、ステップS22で求められた対象端末210の、第2の時間における二次元座標と、取得された期待エリア情報で示される期待エリアとを比較し、対象端末210の、第2の時間における二次元座標が期待エリア内か否かを判定する(S24)。
【0075】
以上のように、実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の効果の他、対象端末210の移動方向を対象端末210の二次元座標の時間変化から算出することができるため、例えば、上り及び下りの電車が停車するプラットホームのように、対象端末210の移動方向が一意に決まらない場合でも、エリア判定システム200を適用することができる。
【0076】
なお、実施の形態1及び2においては、対象端末110、210、位置算出装置150、250及び情報記憶装置170、270の三つで処理を行っているが、これらで実行される処理は、例えば、一又は複数のコンピュータ等の装置で実行することもできる。例えば、対象端末が、測距部112、位置算出部152、存在判定部153、算出用情報記憶部171及び期待エリア情報記憶部172の全てを備えていてもよい。この場合、位置算出装置150、250及び情報記憶装置170、270は、不要となる。
また、位置算出装置が、位置算出部152、252、存在判定部153、253、算出用情報記憶部171及び期待エリア情報記憶部172、272の全てを備えていてもよい。この場合、情報記憶装置170、270は不要となる。
さらに、対象端末110、210、位置算出装置150、250及び情報記憶装置170、270で行っている処理が、クラウド等の一又は複数のサーバで実行されてもよい。
【符号の説明】
【0077】
100,200 エリア判定システム、 110,210 対象端末、 111 測距用通信部、 112,212 測距部、 113 情報通信部、 130A 第1の通信機、 130B 第2の通信機、 150,250 位置算出装置、 151 算出装置通信部、 152,252 位置算出部、 153,253 存在判定部、 254 移動方向算出部、 170,270 情報記憶装置、 171 算出用情報記憶部、 172,272 期待エリア情報記憶部、 173,273 情報制御部、 174 記憶装置通信部。