(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129566
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】構内入換支援システム、構内入換支援方法、および車両運用管理支援システム
(51)【国際特許分類】
B61L 27/12 20220101AFI20240919BHJP
G06Q 50/40 20240101ALI20240919BHJP
【FI】
B61L27/12
G06Q50/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038867
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植松 凌太
(72)【発明者】
【氏名】皆川 剛
(72)【発明者】
【氏名】山下 祐子
【テーマコード(参考)】
5H161
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161JJ32
5H161JJ36
5H161JJ40
5L049CC41
5L050CC41
(57)【要約】
【課題】構内入換計画の好ましい修正を支援する技術を提供する。
【解決手段】線路および番線の各々に関し編成の到着時刻および出発時刻と編成に対する作業の作業時間とによる構内入換計画と、入区時刻および出区時刻を含む本線における列車の運行を示す運行情報と、構内における編成に対する作業の計画の時刻を含む構内の作業情報または前記構内における編成に対する作業の計画および実績の時刻を含む構内の作業情報とに基づいて、到着時刻、出発時刻、および作業時間の予測を行い、予測の結果と構内入換計画とに基づいて、複数の編成が競合する競合箇所を特定し、前記競合箇所における競合を解消する上で修正を行うべき線路または番線である修正箇所と修正手段の候補を抽出し、構内入換計画の修正箇所の候補のうち実際に修正される修正箇所を少なく抑えつつ前記競合箇所における競合を解消するように、修正手段の候補のうち実際に適用する修正手段の最適化処理により、構内入換の修正案を作成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構内における編成の入換の計画に対する修正を支援する構内入換支援システムであって、
ソフトウェアプログラムを格納する記憶装置と、
前記ソフトウェアプログラムを実行するプロセッサとを有し、
前記プロセッサは、
前記構内における編成が使用する資源である線路および番線の各々に関し編成が到着する時刻である到着時刻および編成が出発する時刻である出発時刻と前記構内における編成に対する作業の開始および終了の時刻を示す作業時間とによって前記構内での編成の移動を示す構内入換を事前に計画した構内入換計画と、編成が本線から前記構内へ入区する時刻である入区時刻および編成が前記構内から前記本線へ出区する時刻である出区時刻を含む本線における列車の運行を示す運行情報と、前記構内における編成に対する作業の計画の時刻を含む構内の作業情報または前記構内における編成に対する作業の計画および実績の時刻を含む構内の作業情報とに基づいて、前記到着時刻、前記出発時刻、および前記作業時間の予測を行い、
前記予測の結果と前記構内入換計画とに基づいて、複数の編成が競合する線路または番線を競合箇所として特定し、
前記競合箇所における競合を解消する上で修正を行うべき線路または番線である修正箇所の候補と前記修正箇所の候補についてどのような修正を行うべきかを示す修正手段の候補とを抽出し、
前記構内入換計画の前記修正箇所の候補のうち実際に修正される修正箇所を少なく抑えつつ前記競合箇所における競合を解消するように、前記修正手段の候補のうち実際に適用する修正手段の最適化処理により、構内入換の修正案を作成する、
構内入換支援システム。
【請求項2】
前記線路および/または前記番線は、相互の代替の容易さを考慮して予め所定のグループに分類されており、
前記修正手段の候補は、編成がグループ間を移動する手順である入換手順を含む、
請求項1に記載の構内入換支援システム。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記競合箇所が線路か番線かを示す資源種別、あるいは前記競合箇所で競合する編成の属性を示す属性情報、あるいは前記競合箇所で競合する編成が構内に入区する時刻または前記競合箇所で競合する編成が構内から出区する時刻を含む編成の入換情報に基づいて、前記修正箇所の候補および前記修正手段の候補を抽出する、
請求項1に記載の構内入換支援システム。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記競合箇所の資源がどの編成にも使用されていない時間である非占有時間を特定し、前記非占有時間に基づいて前記修正箇所の候補および前記修正手段の候補を抽出する、
請求項2に記載の構内入換支援システム。
【請求項5】
前記プロセッサは、
全ての競合箇所の資源が属するグループに属する資源の非占有時間の単位時間に対する割合を算出し、
前記割合が所定の閾値よりも下位の競合箇所を前記修正箇所の候補とし、前記入換手順を修正する修正手段の候補を抽出し、
前記割合が所定の閾値よりも上位の競合箇所を前記修正箇所の候補とし、前記グループに属する資源の使用の有無または使用の順序を修正する修正手段の候補を抽出する、
請求項4に記載の構内入換支援システム。
【請求項6】
前記プロセッサは、
1つ以上の競合箇所について、該競合箇所にて互いに競合する2つ以上の編成の優先度を算出し、
前記優先度に基づいて前記競合箇所を順位付けし、
前記順位が所定の閾値よりも上位の競合箇所を、資源の使用の有無または使用の順序を修正する修正箇所の候補とする、
請求項1に記載の構内入換支援システム。
【請求項7】
前記プロセッサは、
修正案が満たすべき所定の条件を予め定めておき、
修正案を作成すると、該修正案が前記条件を満たすか否か判定し、
前記修正案が前記条件を満たすまで、前記閾値を変更して修正箇所の候補および修正手段の候補を新たに抽出し、それまでに抽出した前記修正箇所の候補および前記修正手段の候補に追加することで、修正案の作成を繰り返す、
請求項6に記載の構内入換支援システム。
【請求項8】
前記プロセッサは、
資源における編成の到着時刻または出発時刻に対して、他の編成の移動に影響を及ぼさずに変更できる時間範囲を示す余裕時分を算出し、
前記余裕時分の範囲内で前記到着時刻または前記出発時刻を調整することで前記修正案を作成する、
請求項1に記載の構内入換支援システム。
【請求項9】
前記プロセッサは、
前記修正案に定められた時刻の前記構内入換計画における対応する時刻との差分または前記修正案における修正箇所の個数に基づく評価指標の算出と、前記修正案に存在する競合箇所または前記修正案における作業あるいは移動に要する時間が不足している箇所を含む違反項目の特定のいずれか一方または両方を行い、
前記評価指標と前記違反項目のいずれか一方または両方を出力する、
請求項1に記載の構内入換支援システム。
【請求項10】
前記プロセッサは、
本線における列車の運行計画と車両の運用計画のいずれか一方または両方を含む運行情報を外部システムから取得し、
前記修正案が前記違反項目を含む場合、前記違反項目と前記運行情報とに基づき、前記運行情報における修正すべき箇所の候補と該箇所についてどのような修正を行うべきかを示す修正手段の候補を特定し、前記外部システムに送信する、
請求項9に記載の構内入換支援システム。
【請求項11】
前記プロセッサは、
各作業者から計測された情報と前記作業者に関して入力された情報を含む前記作業者の作業の実施に関連する作業者情報を取得し、
前記作業者情報に基づく制約条件を前記最適化処理に加える、
請求項1に記載の構内入換支援システム。
【請求項12】
前記プロセッサは、
前記構内入換計画に対応する編成の進路を制御するための進路制御情報を外部システムから取得し、
前記修正案に応じて編成の進路を制御するように前記進路制御情報を前記外部システムに送信する、
請求項1に記載の構内入換支援システム。
【請求項13】
構内における編成の入換の計画に対する修正を支援するための構内入換支援方法であって、
ソフトウェアプログラムを格納する記憶装置と、前記ソフトウェアプログラムを実行するプロセッサとを有するコンピュータが、
前記構内における資源である線路および番線のそれぞれに関し編成が到着する時刻である到着時刻および編成が出発する時刻である出発時刻と前記構内における編成に対する作業の開始および終了の時刻を示す作業時間とによって前記構内での編成の移動を示す構内入換を事前に計画した構内入換計画と、編成が本線から前記構内へ入区する時刻である入区時刻および編成が前記構内から前記本線へ出区する時刻である出区時刻を含む本線における列車の運行を示す運行情報と、前記構内における編成に対する作業の計画の時刻を含む構内の作業情報または計画および実績の時刻を含む構内の作業情報とに基づいて、前記到着時刻、前記出発時刻、および前記作業時間の予測を行い、
前記予測の結果と前記構内入換計画とに基づいて、複数の編成が競合する線路または番線を競合箇所として特定し、
前記競合箇所における競合を解消する上で修正を行うべき線路または番線である修正箇所の候補と前記修正箇所の候補についてどのような修正を行うべきかを示す修正手段の候補とを抽出し、
前記構内入換計画の前記修正箇所の候補のうち実際に修正される修正箇所を少なく抑えつつ前記競合箇所における競合を解消するように、前記修正手段の候補のうち実際に適用する修正手段の最適化処理により、構内入換の修正案を作成する、
構内入換支援方法。
【請求項14】
構内における編成の入換の計画に対する修正、車両の運用、および車両の管理を支援する車両運用管理支援システムであって、
構内入換支援システムと、
車両運用システムと、
車両管理システムと、を有し、
前記構内入換支援システムは、
ソフトウェアプログラムを格納する記憶装置と、
前記ソフトウェアプログラムを実行するプロセッサとを有し、
前記プロセッサは、
前記構内における資源である線路および番線のそれぞれに関し編成が到着する時刻である到着時刻および編成が出発する時刻である出発時刻と前記構内における編成に対する作業の開始および終了の時刻を示す作業時間とによって前記構内での編成の移動を示す構内入換を事前に計画した構内入換計画と、編成が本線から前記構内へ入区する時刻である入区時刻および編成が前記構内から前記本線へ出区する時刻である出区時刻を含む本線における列車の運行を示す運行情報と、前記構内における編成に対する作業の計画の時刻を含む構内の作業情報または前記構内における編成に対する作業の計画および実績の時刻を含む構内の作業情報とに基づいて、前記到着時刻、前記出発時刻、および前記作業時間の予測を行い、
前記予測の結果と前記構内入換計画とに基づいて、複数の編成が競合する線路または番線を競合箇所として特定し、
前記競合箇所における競合を解消する上で修正を行うべき線路または番線である修正箇所の候補と前記修正箇所の候補についてどのような修正を行うべきかを示す修正手段の候補とを抽出し、
前記構内入換計画の前記修正箇所の候補のうち実際に修正される修正箇所を少なく抑えつつ前記競合箇所における競合を解消するように、前記修正手段の候補のうち実際に適用する修正手段の最適化処理により、構内入換の修正案を作成するものであり、
前記車両運用システムは、各列車の運行を定めた情報である運行計画を入力として、該運行計画に定められた列車の運行に対する列車の運用を定めた情報である運用計画を作成するものであり、
前記車両管理システムは、前記運行計画および前記運用計画における列車に対する車両または編成の割り当てと、該車両または編成に対する作業の計画および実績を管理するものである、
車両運用管理支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は構内入換を支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道事業者にとって車両基地の構内における作業計画を定めることは、安全性・安定性の高い輸送サービスを実現する上で非常に重要である。その中でも構内入換計画は、車両基地内の車両(または編成)の番線間の移動や、それに付随する車両(または編成)の検査・清掃などの作業を定めた計画であり、本線での列車運行と車両保守とを両立させる上で必要不可欠となっている。列車運行の観点からは、本線における列車の始発・終着に合わせ、編成を車両基地へ入区する入区時刻や、編成を車両基地から出区する出区時刻が定められている。車両保守の観点からは、構内において編成に対して行う作業の作業予定に備え、構内の線路や番線などの資源を編成に占有させる在線時間や、編成を資源間を移動させるのに要する転線時間が決められている。本線における運行計画を実現可能なものとするためには、入区時刻や出区時刻を含む様々な制約条件を満たす構内入換計画を用意する必要がある。
【0003】
この構内入換計画に従い、構内管理者は各作業に必要な構内作業員を手配する。ここで構内作業員には、例えば、編成の移動を担当する構内運転士や検査・清掃を担当する保守作業員などが含まれる。さらに構内管理者は、基本的な業務として、作業計画の策定や作業状況の監督などを行っている。また、構内管理者は、本線の運行計画や構内の作業計画の変更に応じて構内入換計画を修正することがある。構内入換計画を修正する作業を以下、修正作業とよぶ。
【0004】
編成の移動に関連する修正作業の事例としては、計画的なダイヤ改正や突発的な運行乱れへの対応が挙げられる。検査・清掃に関連する修正作業の事例として、運行前日までに作業予定が変更された場合と運行当日に作業に遅延やトラブルが発生した場合とが想定される。このような修正作業では、列車運行や車両保守に関する、車両運行計画など他の計画の動向を考慮しつつ、構内配線や進路の支障関係などに起因する複雑な制約条件についても遵守する必要がある。そのため、構内入換計画に対する修正案を作成することは、非常に困難な業務となっている。構内入換計画に対する修正案とは、修正を行った案の段階の構内入換計画である。
【0005】
このような背景のもとで構内管理者の業務負荷を低減するために、構内入換計画に対する修正案の作成を支援する技術が開示されている。例えば、特許文献1に記載された駅及び車両基地構内入換計画作成装置では、「ネットワーク作成手段1にて、ダイヤ改正前のデータからなる初期解、及び新設列車・作業内容が変わる列車などのダイヤ改正前とは条件が異なる列車についての列車変更データを、運用情報として入力し、これら初期解及び列車変更データからなる運用情報に基づき、初期段階の入換計画ネットワークを作成する。また、ネットワーク作成手段に対して、ダイヤ改正前の車両入換作業に従った作業開始時刻に相当する重みを持った作業開始時刻制約アークを設定する。これによって可能な限り従前と同じ作業内容の計画を立案する。」ことが開示されている。これにより、「ダイヤ前の運転時刻が変わらない列車について、可能な限り、従前と同じ内容の入換作業計画を立案することができ、不慣れにより生じる入換作業のトラブルを未然に防止する」ことが実現できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
構内入換計画に対する修正案を作成する事由の中でも、運行乱れ対応は現場の作業との連携をリアルタイムに実現しなければならず、より難易度の高い業務として位置づけられる。この運行乱れ対応では、本線列車の運行状況に応じて変更された運行計画を遵守するために、構内入換計画についても修正が必要になる。このとき、構内入換計画の修正内容は、各関係者に連絡され、現場の作業に反映される。そのため、運行当日に構内入換計画を大きく修正すると、構内管理者が行う調整業務の負担が増える。例えば、転線作業を1回増やす場合にも構内運転士の調整が必要になる。具体的には、構内管理者は、追加の転線作業を実施する時間に他の作業を行う予定がなく、現在いる位置から作業を行う場所まで移動が可能かどうかという観点から、追加の転線作業に割り当てることが可能な構内運転士を探した後、その構内運転士に実際に乗務可能かどうかを問い合わせて構内運転士から承諾を得る必要がある。また、構内入換計画に対する修正案の確認および連絡にかかる労力は少ない方が望ましいという観点からも修正箇所は少ない方が望ましい。このため、構内入換計画の修正にともなう確認、連絡および調整を少なく抑えることは、運行乱れ対応において重要である。
【0008】
特許文献1で開示された駅及び車両基地構内入換計画作成装置は、構内入換支援の手段が計画的なダイヤ改正時に対する修正案を立案するのみであり、運行乱れの状況に応じて修正箇所の数を少なく抑えた修正案を作成することについては特許文献1に記載も示唆もされていない。そのため、以下のような3つの課題が残されている。
【0009】
第1の課題として、特許文献1で開示された駅及び車両基地構内入換計画作成装置では、ネットワーク変形手段による複数の解候補の作成と、確率的選択手段による解候補の選択を繰り返すことで修正案を作成している。そのため、効果的でない解候補が作成され選択された場合、適当でない変更が修正案に反映されてしまう可能性がある。例えば、数箇所のみの番線変更という比較的小さな変更を適用すれば十分な状況において、順序変更や進路支障反転といった比較的大きな変更が確率的に選択される可能性がある。そうなると過剰な変更が修正案に含まれることが想定される。
【0010】
つぎに第2の課題として、特許文献1に開示された手法では、入換計画ネットワークの作成においてPERTを用いた分析を行っている。しかし、運行乱れが発生したときには運行計画の変更範囲が大きくなりやすく、構内入換計画への影響も広範囲に及ぶため、PERTを用いた分析では、修正対象の候補を絞り込めない可能性がある。ここでいう修正対象とは、構内入換計画の修正において、どの箇所でどの編成に対して、どのような修正手段を適用するかを指している。
【0011】
例えば、PERTのクリティカルパスに在線する、編成の異なる複数の在線情報(または転線情報)が存在する場合、それぞれどの在線情報(または転線情報)にどの修正手段を適用するか、という修正方針が無作為に決定されてしまうことが想定される。また、PERTのクリティカルパス以外に効果的な修正が可能な修正対象が存在している場合でもその効果的な修正対象は適用候補として列挙されないことが予想される。
【0012】
さらに第3の課題として、特許文献1で開示された手法では、構内作業の遅延やトラブルのような本線側に起因しない事象に対しては、修正対象が抽出されず、好適な修正案を作成できない可能性がある。例えば、構内における検査作業のみに遅れが発生している場合、本線における運行計画が変更されていないので、構内入換計画に対するネットワークに新たな制約アークが追加されず、その結果、入力とした事前に作成された構内入換計画が変更されずに修正案として提示されることが想定される。
【0013】
上記3つの課題から、本線における列車の運行状況や構内作業の進捗状況に応じて、適切な範囲での構内入換計画の修正の実現が望まれる。
【0014】
本発明の目的は、以上を鑑み、構内入換計画の好ましい修正を支援する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のひとつの態様による、構内における編成の入換の計画に対する修正を支援する構内入換支援システムは、ソフトウェアプログラムを格納する記憶装置と、前記ソフトウェアプログラムを実行するプロセッサとを有し、前記プロセッサは、前記構内における編成が使用する資源である線路および番線の各々に関する編成が到着する時刻である到着時刻および編成が出発する時刻である出発時刻と前記構内における編成に対する作業の開始および終了の時刻を示す作業時間とによって前記構内での編成の移動を示す構内入換を事前に計画した構内入換計画と、編成が本線から前記構内へ入区する時刻である入区時刻および編成が前記構内から前記本線へ出区する時刻である出区時刻を含む本線における列車の運行を示す運行情報と、前記構内における編成に対する作業の計画の時刻を含む構内の作業情報または計画および実績の時刻を含む構内の作業情報とに基づいて、前記到着時刻、前記出発時刻、および前記作業時間の予測を行い、前記予測の結果と前記構内入換計画とに基づいて、複数の編成が競合する線路または番線を競合箇所として特定し、前記競合箇所における競合を解消する上で修正を行うべき線路または番線である修正箇所の候補と前記修正箇所の候補についてどのような修正を行うべきかを示す修正手段の候補とを抽出し、前記構内入換計画の前記修正箇所の候補のうち実際に修正される修正箇所を少なく抑えつつ前記競合箇所における競合を解消するように、前記修正手段の候補のうち実際に適用する修正手段の最適化処理により、構内入換の修正案を作成する。
【発明の効果】
【0016】
本発明のひとつの態様によれば、修正箇所を少なく抑えて競合を解消するように構内入換の修正案を作成するので、構内入換の計画の修正にともなう確認、連絡および調整を少なく抑えた好ましい修正案の作成を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1の実施形態にかかる構内入換支援システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】第1の実施形態にかかる運行データの一例を示す図表である。
【
図3】第1の実施形態にかかる運用データの一例を示す図表である。
【
図4】第1の実施形態にかかる割当データの一例を示す図表である。
【
図5】第1の実施形態にかかる作業データの一例を示す図表である。
【
図6】第1の実施形態にかかる入換データの一例を示す図表である。
【
図7】第1の実施形態にかかる編成入出区データの一例を示す図表である。
【
図8】第1の実施形態にかかる編成作業データの一例を示す図表である。
【
図9】第1の実施形態にかかる修正対象データの一例を示す図表である。
【
図10】第1の実施形態を適用する車両基地の構内配線の一例を示す図表である。
【
図11】第1の実施形態にかかる構内入換支援システムの処理の概要を示すフローチャートである。
【
図12】第1の実施形態にかかる構内入換計画修正処理の概要を示すフローチャートである。
【
図13】第1の実施形態にかかる修正対象自動抽出処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図14】第1の実施形態にかかる構内入換計画最適化処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図15】第1の実施形態にかかる余裕時分分析処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図16】第1の実施形態にかかるユーザに提示される事前計画の画面の一例を示す図表である。
【
図17】第1の実施形態にかかるユーザに提示される予測結果の画面の一例を示す図表である。
【
図18】第1の実施形態にかかるユーザに提示される修正案の画面の一例を示す図表である。
【
図19】第2の実施形態を適用する本線の路線の一例を示す図表である。
【
図20】第2の実施形態にかかる連携処理の概要を示すフローチャートである。
【
図21】第2の実施形態にかかる構内入換向けデータ作成処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図22】第2の実施形態にかかるユーザに提示される事前計画の画面の一例を示す図表である。
【
図23】第2の実施形態にかかるユーザに提示される予測結果の画面の一例を示す図表である。
【
図24】第2の実施形態にかかるユーザに提示される修正案の画面の一例を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施する事が可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。
【0019】
図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0020】
以下の説明では、「テーブル」、「リスト」等の表現にて各種情報を説明することがあるが、各種情報は、これら以外のデータ構造で表現されていてもよい。データ構造に依存しないことを示すために「XXテーブル」、「XXリスト」等を「XX情報」や「XXデータ」と呼ぶことがある。識別情報について説明する際に、「識別情報」、「識別子」、「名」、「ID」、「番号」等の表現を用いた場合、これらについてはお互いに置換が可能である。
【0021】
同一あるいは同様な機能を有する構成要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。ただし、これらの複数の構成要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
【0022】
また、以下の説明では、プログラムを実行して行う処理を説明する場合があるが、プログラムは、プロセッサ(例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit))によって実行されることで、定められた処理を、適宜に記憶資源(例えばメモリ)および/またはインターフェースデバイス(例えば通信ポート)等を用いながら行うため、処理の主体がプロセッサとされてもよい。同様に、プログラムを実行して行う処理の主体が、プロセッサを有するコントローラ、装置、システム、計算機、ノードであってもよい。プログラムを実行して行う処理の主体は、演算部であれば良く、特定の処理を行う専用回路(例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit))を含んでいてもよい。
【0023】
プログラムは、プログラムソースから計算機のような装置にインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、プログラム配布サーバまたは計算機が読み取り可能な記憶メディアであってもよい。プログラムソースがプログラム配布サーバの場合、プログラム配布サーバはプロセッサと配布対象のプログラムを記憶する記憶資源を含み、プログラム配布サーバのプロセッサが配布対象のプログラムを他の計算機に配布してもよい。また、以下の説明において、2以上のプログラムが1つのプログラムとして実現されてもよいし、1つのプログラムが2以上のプログラムとして実現されてもよい。
【実施例0024】
以下に、本発明の第1の実施形態について詳細に説明する。
【0025】
(1.1 システム構成)
図1は本発明の第1の実施形態によるシステム構成を示した図である。
【0026】
この図において、符号100は構内入換支援システム、符号200は運行管理システム、符号300は車両運用システム、符号400は車両管理システム、符号500は構内制御システム、符号600はユーザ端末、符号700は通信ネットワーク、符号101はCPU(中央処理装置)、符号102はメモリ、符号103は入力装置、符号104は送受信部、符号105は記憶部、符号106は通信部である。
【0027】
構内入換支援システム100と、運行管理システム200と、車両運用システム300と、車両管理システム400と、構内制御システム500とは、通信ネットワーク700を介して相互に通信可能に接続されている。
【0028】
構内入換支援システム100は、運行管理システム200から取得した情報、車両運用システム300から取得した情報、車両管理システム400から取得した情報、構内制御システム500から取得した情報、およびユーザ端末600から入力された情報に基づき、構内入換計画に対する修正案を適宜作成または更新し、送受信部104から通信ネットワーク701を介してユーザ端末600に出力する。
【0029】
運行管理システム200は、通信ネットワーク702を介して複数の列車801と相互に通信可能に接続されている。運行管理システム200は、本線における各列車の運行を定めた情報である運行計画に従って管理対象である列車運行ネットワーク内の複数の列車801を制御する。運行管理システム200は、通信ネットワーク700を介して運行管理に関する各種情報を構内入換支援システム100に送信する。
【0030】
車両運用システム300は、運行計画を入力として、該運行計画に定められた列車の運行に対する列車の運用を定めた情報である運用計画を作成する。車両運用システム300は、通信ネットワーク700を介して列車運用に関する各種情報を構内入換支援システム100に送信する。
【0031】
車両管理システム400は、運行計画および運用計画における列車に対する車両または編成の割り当てと、車両または編成に対する作業の計画および実績を管理する。車両管理システム400は、通信ネットワーク703を介して構内作業端末802と相互に通信可能に接続されている。一例として、構内作業端末802はタブレット型端末である。なお、構内作業端末802として構内作業支援のための専用端末に加え、各構内作業員が保有している携帯端末やウェアラブル端末などを利用してもよい。車両管理システム400は、構内作業端末802からの情報を収集することができる。ここで、構内作業端末からの情報は、例えば、位置情報、生体情報、画像情報などの計測情報、作業者の属性、状態、要望などの入力情報である。ここで、位置情報は、GPS(Global Positioning System)、Wi-Fi、ビーコン、基地局の設備などにより測定された情報である。生体情報は、心拍、脳波、脈拍、血流、視線、体温などの作業者から計測される情報である。画像情報は、監視カメラや携帯端末のカメラで取得された情報である。作業者の属性は、資格や担当可能な(あるいは得意とする)作業項目などに関する情報である。作業者の状態は、作業中、待機中、休憩中といった活動状況や、担当作業の進捗状況などに関する情報である。作業者の要望は、勤務可能な時間帯や担当したい作業項目などに関する情報である。車両管理システム400は、通信ネットワーク700を介して車両管理に関する各種情報を構内入換支援システム100に送信する。
【0032】
構内制御システム500は、通信ネットワーク704を介して複数の編成803と相互に通信可能に接続されている。構内制御システム500は、構内入換計画に従って管理対象である構内入換ネットワーク内の複数の編成803を制御する。構内制御システム500は、通信ネットワーク700を介して構内制御に関する各種情報を構内入換支援システム100に送信する。
【0033】
構内入換支援システム100は、CPU101と、メモリ102と、入力装置103と、送受信部104と、記憶部105と、通信部106とを有した、ハードウェアとしては一般的なコンピュータにより実現することができる。
【0034】
CPU(中央処理装置)101は、記憶部104に格納されている各種ソフトウェアプログラムを実行する処理部である。メモリ102はCPU101の作業領域となる記憶装置である。CPU101は、ソフトウェアプログラムを実行する際にメモリ102へデータの書き込みあるいはデータの読み出しを行う。
【0035】
入力装置103は、PCシステムへの指令やデータ入力を行うために、PCシステムの操作者が操作する装置である。入力装置103は、例えば、キーボードやマウスによって構成される。マウスは一般にポインティングデバイスと呼ばれる装置の一種であり、本発明の実施形態1ではマウスを利用しているが、他のポインティングデバイスでもかまわなく、例えばトラックボールやポインティング・スティック、タッチパッド、タッチパネル、ペンタブレットなどがあげられる。
【0036】
送受信部104は、構内入換支援システム100と別端末との通信を可能にする。送受信部104は、例えば、NIC(Network Interface Card)のようなハードウェアを用いることができる。
【0037】
記憶部105は、CPU101が実行する各種プログラムとCPU101が処理に利用する各種データとが格納される記憶装置(例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive))である。なお、記憶部105に保存されたデータ等は、読み出すことによりメモリ102に複製を作成することができる。また、メモリ102に保存されたデータ等は、書き出すことにより記憶部105に複製を作成することができる。よって、記憶装置にデータなどを保存した場合、以降、メモリ102、記憶部105のどちらからも読み出せるものとする。また、記憶装置からデータ等を読み出す場合、メモリ102、記憶部105のどちらかに保存されているデータなどを読み出すものとする。
【0038】
通信部106は、通信ネットワーク700に接続され、構内入換支援システム100による通信ネットワーク700を介した運行管理システム200、車両運用システム300、車両管理システム400、および構内制御システム500との通信を可能にする。通信部106は、送受信部104と同様のハードウェアを用いてよい。
【0039】
記憶部105には、構内入換計画修正プログラムP01、修正対象自動抽出プログラムP02、余裕時分分析プログラムP03、構内入換予測プログラムP04、構内入換計画実行プログラムP05、および構内進路制御プログラムP06と、構内入換計画データD01、構内入換実績データD02、編成入出区データD03、編成作業データD04、基本データD05、および拡張入力データD06と、運行情報データベースD07、作業情報データベースD08、および修正履歴データベースD09とが格納されている。
【0040】
構内入換計画修正プログラムP01は、CPU101により実行されることで、構内入換計画修正処理を実現するソフトウェアプログラムである。構内入換計画修正処理は、構内入換計画データD01、構内入換実績データD02、編成入出区データD03、編成作業データD04、基本データD05、拡張入力データD06をもとに、構内入換計画に対する修正案を作成する処理である。構内入換計画修正処理の詳細は後述する。
【0041】
修正対象自動抽出プログラムP02は、CPU101により実行されることで、修正対象自動抽出処理を実現するソフトウェアプログラムである。修正対象自動抽出処理は、構内入換計画データD01、構内入換実績データD02、編成入出区データD03、編成作業データD04、基本データD05、拡張入力データD06をもとに、構内入換計画における修正対象を抽出する処理である。
【0042】
余裕時分分析プログラムP03は、CPU101により実行されることで、余裕時分分析処理を実現するソフトウェアプログラムである。余裕時分分析処理は、構内入換計画データD01、構内入換実績データD02、編成入出区データD03、編成作業データD04、基本データD05、拡張入力データD06をもとに、構内入換計画における余裕時分を分析する処理である。
【0043】
構内入換予測プログラムP04は、CPU101により実行されることで、構内入換予測処理を実現するソフトウェアプログラムである。構内入換予測処理は、構内入換計画データD01、構内入換実績データD02、編成入出区データD03、編成作業データD04、基本データD05、拡張入力データD06をもとに、将来の構内入換における編成の移動を予測する処理である。構内入換予測処理は特に限定されることはなく、例えば公知の技術を用いて実施することができる。
【0044】
構内入換計画実行プログラムP05は、CPU101により実行されることで、構内入換計画実行処理を実現するソフトウェアプログラムである。構内入換計画実行処理は、構内入換計画修正処理により作成された修正案において、ユーザが実行した変更を構内入換の実行計画に反映する処理である。構内入換計画実行処理は、実際に適用すべき変更がユーザにより選択されると、該当する変更内容を構内入換の実行計画に反映する。
【0045】
構内進路制御プログラムP06は、CPU101により実行されることで構内進路制御処理を実現するソフトウェアプログラムである。構内進路制御処理は、構内入換計画実行処理により変更内容が反映された実行計画をもとに、編成に対する制御動作を示す進路制御情報を更新する処理である。なお、構内進路制御処理は、構内入換計画修正処理により作成された修正案をもとに、進路制御情報を更新してもよい。
【0046】
構内入換計画データD01は、各編成がどの資源で何時に作業(または移動)を開始あるいは終了する予定であるかという事前計画を示すデータである。構内入換計画データD01のデータ構造は、入換データ(
図6)の形式で定義される。入換データの詳細については後述する。
【0047】
構内入換実績データD02は、各編成がどの資源で何時に作業(または移動)を開始あるいは終了したかという実績を示すデータである。構内入換実績データD02のデータ構造は、入換データ(
図6)の形式で定義される。入換データの詳細については後述する。
【0048】
編成入出区データD03は、各編成がどの資源で何時に入区あるいは出区する予定であるかという情報を示すデータである。編成入出区データD03の詳細は
図7を用いて後述する。
【0049】
編成作業データD04は、各編成がどの作業を何時に開始あるいは終了するかという情報を示すデータである。編成作業データD04の詳細は
図8を用いて後述する。
【0050】
基本データD05は、編成や設備などに関する処理の基礎となる情報を示すデータである。基本データD05には、例えば、編成の属性情報(編成に対するIDコード、編成種別、編成両数、編成の形式、編成の長さ、編成の所属する車両基地など)、設備の識別情報(車両基地、番線、線路に対するIDコードなど)、番線情報(各番線が分類される番線グループ、各番線の長さ、各番線の相対的な位置関係、各番線で在線可能な編成種別や編成両数、各番線で実施可能な作業種別など)、線路情報(各線路が分類される線路グループ、各線路の長さ、各線路の相対的な位置関係、各線路で走行可能な編成種別や編成両数)、進路情報(番線間の移動で使用する線路との接続関係、進路間の競合関係など)、時間情報(最小在線時間、基準移動時間、作業所要時間、続行時隔など)、作業員情報(構内運転士や保守作業員に対するIDコード、作業員種別、勤務時間帯など)などのデータが含まれる。番線グループは、種別や位置などの観点から分類された番線の集合である。例えば、同じ番線グループに属する番線は、地理的に近い位置にある同じ種別の番線であり、相互に代替が容易であってもよい。線路グループは、種別や位置などの観点から分類された線路の集合である。例えば、同じ線路グループに属する線路は、地理的に近い位置にある同じ種別の線路であり、相互に代替が容易であってもよい。最小在線時間は、ある編成がある番線に在線する場合に、その編成がその番線に到着してから出発するまでに最低限必要とする時間である。最小在線時間は、全ての番線で共通の値としてもよいし、時間帯や番線種別などに応じて異なる値を用いてもよい。基準移動時間は、ある編成がある番線を出発してから次の番線に到着するまでに最低限必要とする時間であり、各番線間に対応する値を、編成走行シミュレータ等を用いて算出し、格納しておく。なお、余裕時分を見込んで、ある編成がある番線を出発してから次の番線に到着するまでに掛かる時間の標準値を基準移動時間として用いてもよい。作業所要時間は、ある編成に対してある番線である作業を実施する場合に、その編成がその番線でその作業を開始してから終了するまでに最低限必要とする時間である。作業所要時間は、作業種別や番線種別などに応じた想定値を用いてもよいし、余裕時分を見込んで、ある編成に対してある番線で作業を開始してから終了するまでに掛かる時間の標準値を用いてもよい。
【0051】
拡張入力データD06は、外部から入力される構内入換計画修正時における条件を示すデータである。拡張入力データD06には、例えば、支障情報、作業遅延情報、閾値情報などのデータが含まれる。支障情報は、どの資源がどの時間帯に使用することができないかという情報を示すデータである。支障情報は、編成を移動することができない時間範囲や対象区間(番線グループ、番線間など)などの情報によって指定されてもよいし、事故や故障が発生した設備(番線、線路など)や編成などの情報によって指定されてもよい。作業遅延情報は、ある作業に対する遅延の見込み時間を示すデータである。作業遅延情報は、作業時間の増加分について数値や倍率を入力することで指定してもよいし、作業を実施する番線における在線時間を延長することで指定してもよい。閾値情報は、構内入換計画修正時に指定される各種パラメータである。閾値情報には、例えば、構内入換計画に対する修正案を作成する時間範囲や対象区間などのほか、修正対象自動抽出処理で使用するパラメータのデータが含まれる。
【0052】
運行情報データベースD07は、列車運行に関連する事前計画や予測結果、修正案、暫定計画、実行計画、および実績などの各種情報を保持するデータベースである。運行情報データベースD07には、あらかじめ登録された事前計画が格納されており、計測された実績、算出された予測結果、修正案、暫定計画などが随時格納される。運行情報データベースD07は、例えば、運行データ(
図2)、運用データ(
図3)などに対する各種情報を保持する。運行データは、各列車が何時にどこに到着あるいは出発するかという情報を示すデータである。運用データは、各列車が他のどの列車と接続関係をもつかという情報を示すデータである。運行データ、運用データの詳細については後述する。
【0053】
作業情報データベースD08は、構内作業に関連する事前計画や予測結果、修正案、暫定計画、実行計画、および実績などの各種情報を保持するデータベースである。作業情報データベースD08には、あらかじめ登録された事前計画が格納されており、計測された実績、算出された予測結果、修正案、暫定計画などが随時格納される。作業情報データベースD08は、例えば、割当データ(
図4)、作業データ(
図5)、入換データ(
図6)などに対する各種情報を保持する。割当データは、(ある日付に)各編成がどの運用に割り当てられるかという情報を示すデータである。作業データは、(ある日付に)各作業がどの編成に割り当てられるかという情報を示すデータである。入換データは、各編成がどの資源で何時に作業(または移動)を開始あるいは終了したかという情報を示すデータである。割当データ、作業データ、入換データの詳細については後述する。
【0054】
修正履歴データベースD09は、構内入換計画に対する修正案を作成する際に使用または算出される各種情報を保持するデータベースである。修正履歴データベースD09には、事前計画や予測結果、競合箇所、抽出指標、修正対象、修正案にくわえ、違反項目や評価指標などが紐付けられて随時格納される。競合箇所は、どの場所で、どの編成が競合しているかという情報を示す。抽出指標は、修正対象を抽出する際に使用する各種指標を示す。抽出指標は、例えば、各資源の占有時間(当該資源をある編成が使用している時間)や非占有時間(当該資源をどの編成も使用していない時間)などである。抽出指標は、上記に限定されるものではなく、密度(単位時間あたりに資源がどのくらい占有されているかを示す)や優先度(ある編成の構内入換がどのくらい優先されるかを示す)の情報を含んでもよい。なお、密度は1つの資源に対して算出されてもよいし、例えば、番線グループに含まれる番線や線路グループに含まれる線路など、複数の資源に対して算出されてもよい。修正対象は、どの場所で、どの編成に対して、どの修正手段を適用候補とするかという情報を示す。修正対象のデータ構造は、修正対象データ(
図9)の形式で定義される。評価指標は、修正案を評価した際に算出された各種指標を示す。評価指標は、例えば、事前計画と修正案における時刻(入区時刻、出区時刻、検査開始時刻、検査終了時刻など)の差分、事前計画に対する(または、修正案における)修正箇所の数、各修正手段の適用数、転線回数の差分である。評価指標は、上記に限定されるものではなく、各構内作業員の作業時間、残業時間、休憩時間に加え、各編成の検査時間、検査件数、および各設備の稼働時間、休止時間、消費電力などを含んでもよい。また、評価指標は、各指標に対する代表的な統計量(合計、平均、分散、標準偏差、中央値、最大値、最小値、比率など)として算出してもよい。なお、評価指標は、例えば、絶対値平均や二乗平均など、代表的な統計量を計算する際、各指標の絶対値、各指標を二乗した値、各指標を重み付けした値などを用いてもよい。違反項目は、修正案を評価した際に検出された各種違反を示す。違反項目は、例えば、番線競合(複数の編成で番線の使用時間が重複する)、線路競合(複数の編成で線路の使用時間が重複する)である。違反項目は、上記に限定されるものではなく、在線時間不足、移動時間不足などを含んでもよい。
【0055】
なお、システム構成は上記に限定されるものではなく、2以上のシステムが統合されて1つのシステムとして実現されてもよいし、1つのシステムが分割されて2以上のシステムとして実現されてもよい。例えば、車両運用システム300と車両管理システム400は1つのシステムに統合されてもよいし、運行管理システム200は運行計画システムと列車制御システムに分割されてもよい。また、各システムにおける機能は、他システムにおいて実現されてもよい。例えば、車両運用システム300の機能群が運行管理システム200や車両管理システム400などの他システムに含まれていてもよいし、構内制御システム500の機能群が構内入換支援システム100や車両管理システム400などの他システムに含まれてもよい。
【0056】
また、構内入換計画データD01、構内入換実績データD02、編成入出区データD03、編成作業データD04、基本データD05、拡張入力データD06をデータベースに格納する構成としてもよいし、運行情報データベースD07、作業情報データベースD08、修正履歴データベースD09に格納されている各種情報をデータベースの外で管理する構成としてもよい。
【0057】
以下の説明では、「作業の開始時刻」、「作業の終了時刻」等の表現にて構内入換の情報を説明することがあるが、構内入換の情報は、これら以外の記述で表現されていてもよい。対象を明確にするために「移動の終了時刻」、「番線への到着時刻」、「線路からの進出時刻」等を「作業の開始時刻」の代わりに用いることがある。同様に「移動の開始時刻」、「番線からの出発時刻」、「線路への進入時刻」等を「作業の終了時刻」の代わりに用いることがある。また、「番線での在線時間」と「番線の占有時間」についてもお互いに置換が可能である。
【0058】
(1.2 データ構造)
まず、処理の説明の前に、各データの構造の一例について説明する。
【0059】
(1.2.1 運行データのデータ構造)
運行データD10のデータ構造の一例について
図2を用いて説明する。
【0060】
運行データD10には、
図2に示すように、「列車番号」、「駅」、「番線」、「到着時刻」、「出発時刻」が含まれている。以降で運行データD10の各列に記載されている情報について説明する。
【0061】
「列車番号」には対象列車の列車番号が記載される。例えば、
図2に示されているのは、「列車番号」が「HR101」および「HR201」であるものに関する記述の一部である。
【0062】
「駅名」には当該列車の到着・出発・通過などに関わる駅の駅名が記載される。例えば、
図2の1行目は「駅名」が「St.A」であるものに関する記述であり、
図2の2行目は「駅名」が「St.B」であるものに関する記述である。
【0063】
「番線」には、当該列車の到着・出発・通過などに関わる番線の番線名が記載される。例えば、
図2の2行目は「番線」が「Track 1」であるものに関する記述であり、
図2の3行目は「番線」が「Track 2」であるものに関する記述である。
【0064】
「到着時刻」には、当該列車が当該駅に到着する時刻が記載される。なお、始発駅や通過駅などで到着時刻がない場合、例えば「-」等、データがないということを示すマーカーが設定される。
【0065】
「出発時刻」には、当該列車が当該駅を発車する時刻が記載される。なお、終点駅などで出発時刻がない場合、例えば「-」等、データがないということを示すマーカーが設定される。出発時刻には通過時刻を含んでも良いし、
図2では分けていないが、通過時刻を別フィールドとして用意しても良い。
【0066】
図2を参照し、運行データD10の例について説明する。例えば、
図2の1行目は、「列車番号」が「HR101」の列車が、「駅名」が「St.A」の駅における「番線」が「Tr.1」の番線から、「出発時刻」である「08:00」に出発することを示す。
図2の2行目は、「列車番号」が「HR101」の列車が、「駅名」が「St.B」の駅における「番線」が「Tr.1」の番線で、「到着時刻」である「08:03」に到着し、「出発時刻」である「08:05」に出発することを示す。
図2では、3点リーダ「・・・」によって省略されている部分が存在するが、実際には少なくとも列車数と、当該列車の到着・出発・通過などに関わる駅数との組み合わせの数だけ行が存在している。
【0067】
(1.2.2 運用データのデータ構造)
運用データD20のデータ構造の一例について
図3を用いて説明する。
【0068】
運用データD20には、
図3に示すように、「運用番号」、「列車番号」、「前運用列車」、「後運用列車」が含まれている。以降で運用データD20の各列に記載されている情報について説明する。
【0069】
「運用番号」には対象運用の運用番号が記載される。例えば、
図3に示されているのは、「運用番号」が「1」および「7」であるものに関する記述の一部である。
【0070】
「列車番号」には対象列車の列車番号が記載される。例えば、
図3に示されているのは、「列車番号」が「HR101」、「HR102」、「HR103」、「HR705」、「HR706」、および「HR707」であるものに関する記述の一部である。
【0071】
「前運用列車」には当該列車の前運用列車となる列車番号が記載される。ここで、前運用列車とは、対象列車と同一の車両(または編成)を使用する列車のうち、対象列車の直前に走行する列車である。例えば、
図3の2行目は「HR102」の列車の直前に「HR101」の列車が同一の車両を使用して走行することに関する記述である。なお、前運用列車がない場合、例えば「-」等、データがないということを示すマーカーが設定される。
【0072】
「後運用列車」には当該列車の後運用列車となる列車番号が記載される。ここで、後運用列車とは、対象列車と同一の車両(または編成)を使用する列車のうち、対象列車の直後に走行する列車である。例えば、
図3の2行目は「HR102」の列車の直後に「HR103」の列車が同一の車両を使用して走行することに関する記述である。なお、後運用列車がない場合、例えば「-」等、データがないということを示すマーカーが設定される。
【0073】
図3を参照し、運用データD20の例について説明する。例えば、
図3の1行目は、「運用番号」が「1」の運用において、「列車番号」が「HR101」の列車に対して、「前運用列車」が存在しないこと、「後運用列車」である「HR102」として同一の車両を使用して直後に走行する列車であることを示す。
図3の2行目は、「運用番号」が「1」の運用において、「列車番号」が「HR102」の列車に対して、「前運用列車」である「101」が同一の車両を使用して直前に走行する列車であること、「後運用列車」である「HR103」が同一の車両を使用して直後に走行する列車であることを示す。
図3では、3点リーダ「・・・」によって省略されている部分が存在するが、実際には少なくとも列車数分の行が存在している。
【0074】
なお、運用データD20の情報から、行路情報(同一の編成を使用する列車の集合)を定義することができる。
【0075】
(1.2.3 割当データのデータ構造)
割当データD30のデータ構造の一例について
図4を用いて説明する。
【0076】
割当データD30には、
図4に示すように、「日付」、「編成番号」、「運用番号」、「走行距離」、「累積走行距離」が含まれている。以降で割当データD30の各列に記載されている情報について説明する。
【0077】
「日付」には対象の日付情報が記載される。例えば、
図4に示されているのは、「日付」が「2022/02/22」および「2022/02/23」であるものに関する記述の一部である。
【0078】
「編成番号」には対象編成の編成番号が記載される。例えば、
図4に示されているのは、「編成番号」が「R01」、「R02」、「R03」であるものに関する記述の一部である。
【0079】
「運用番号」には当該編成が割り当てられる運用に対する運用番号が記載される。例えば、
図3に示されているのは、「運用番号」が「1」、「3」、「7」、「10」であるものに関する記述の一部である。なお、当該編成が割り当てられる運用がない場合、例えば「‐1」等、データがないということを示すマーカーが入力される。
【0080】
「走行距離」には当該日付の運行で当該編成が走行する距離が記載される。例えば、
図4の1行目は「走行距離」が「360」であるものに関する記述であり、
図4の2行目は「走行距離」が「0」であるものに関する記述である。
【0081】
「累積距離」には当該日付の運行開始までに当該編成が走行した距離が記載される。例えば、
図4の1行目は「累積距離」が「600000」であるものに関する記述であり、
図4の2行目は「累積距離」が「523000」であるものに関する記述である。
【0082】
図4を参照し、割当データD30の例について説明する。例えば、
図4の1行目は、「日付」が「2022/02/22」の日において、「編成番号」が「R01」の編成が、「運用番号」が「1」の運用に割り当てられ、運行当日に「走行距離」である「360」だけの距離を走行する予定であり、運行開始までに「累積距離」である「600000」だけの距離を走行している予定であることを示す。
図4では3点リーダ「・・・」によって省略されている部分が存在するが、実際には少なくとも日数と編成数の組み合わせの数だけ行が存在している。
【0083】
なお、割当データD30には、「編成番号」に代えてあるいは「編成番号」に加えて「車両番号」の情報を定義してもよい。ここで、「車両番号」には当該編成に含まれる車両の車両番号が記載される。これにより、車両単位で運用への割当や走行距離を管理することができる。
【0084】
また、割当データD30には、「所属」、「開始場所」、「終了場所」の情報を定義してもよい。ここで、「所属」には当該編成を保有している車両基地の情報が、「開始場所」には当該編成が運行開始時点において滞在している車両基地の情報が、「終了場所」には当該編成が運行開始時点において滞在している車両基地の情報がそれぞれ記載される。これにより、対象路線に複数の車両基地が存在する場合、列車の始発駅または終着駅に対して割当可能な編成を特定したり、運行終了時点において所属する車両基地に各編成が滞在するかどうかを判定したりできる。
【0085】
さらに、割当データD30には、「作業種別」や「作業場所」の情報を定義してもよい。ここで、「作業種別」には当該作業の種別番号が、「作業場所」には当該作業の実施場所がそれぞれ記載される。これにより、運行当日の作業が実施可能な運用に編成が割り当たっているか、運行翌日以降の作業が予定されている車両基地に編成が戻っているか、といった条件を判定できる。
【0086】
くわえて、「累積距離」には、検査条件(前回検査から次回検査までの走行距離が所定の値を超過していないこと)を判定する上で、編成の使用開始時点からの走行距離の合計を設定してもよいし、前回検査時点からの走行距離の合計を設定してもよい。前者の場合には前回検査時点における走行距離の合計を示す「前回検査時累積距離」を別途定義し「累積距離」との差分を算出することで検査条件を判定できる。後者の場合には当該編成に対する検査を実施した際に「累積距離」を「0」に初期化することで、検査条件を適宜判定できる。また、「累積距離」には、検査条件に達するまでに残っている走行距離を設定してもよい。検査に対して複数の種別が存在する場合、それぞれの種別に対応した「累積距離」や「前回検査時累積距離」を定義してもよい。例えば、「A検査」と「B検査」が存在する場合、「A検査累積距離」、「B検査累積距離」、「前回A検査時累積距離」、「前回B検査時累積距離」などを定義してもよい。
【0087】
(1.2.4 作業データのデータ構造)
作業データD40のデータ構造の一例について
図5を用いて説明する。
【0088】
作業データD40には、
図5に示すように、「日付」、「作業番号」、「編成番号」、「作業種別」、「作業項目」が含まれている。以降で作業データD40の各列に記載されている情報について説明する。
【0089】
「日付」には対象の日付情報が記載される。例えば、
図4に示されているのは、「日付」が「2022/02/22」であるものに関する記述の一部である。
【0090】
「作業番号」には対象作業の作業番号が記載される。例えば、
図5に示されているのは、「作業番号」が「1」、「2」、「3」、「31」、「32」、「33」であるものに関する記述である。
【0091】
「編成番号」には当該作業が実施される編成の編成番号が記載される。例えば、
図4に示されているのは、「編成番号」が「R01」、「R02」、「R03」、「R21」、「R22」であるものに関する記述の一部である。
【0092】
「作業種別」には当該作業の種別番号が記載される。例えば、
図5の1行目は「作業種別」が「0」であるもの(例えば、清掃作業)に関する記述であり、
図5の3行目は「作業種別」が「1」であるもの(例えば、検査作業)に関する記述である。なお、「作業種別」には、作業の規模や頻度などに応じて細分化した種別番号を設定してもよい。
【0093】
「作業項目」には当該作業の項目番号が記載される。例えば、
図5の1行目は「作業項目」が「90」であるものに関する記述であり、
図5の2行目は「作業項目」が「95」であるものに関する記述である。なお、「作業項目」には1つの項目番号のみを設定してもよいし、複数の項目番号を設定してもよい。
【0094】
図5を参照し、作業データD40の例について説明する。例えば、
図5の1行目は、「作業番号」が「1」の作業として、「編成番号」が「R01」の編成に、「作業種別」が「0」であり「作業項目」が「90」である作業を実施することを示す。
図5の2行目は、「作業番号」が「2」の作業として、「編成番号」が「R02」の編成に、「作業種別」が「0」であり「作業項目」が「95」である作業を実施することを示す。
図5では3点リーダ「・・・」によって省略されている部分が存在するが、実際には少なくとも作業数分の行が存在している。
【0095】
なお、作業データD40には、「編成番号」に代えてあるいは「編成番号」に加えて「車両番号」の情報を定義してもよい。ここで、「車両番号」には当該編成に含まれる車両の車両番号が記載される。これにより、車両単位で実施する作業を管理することができる。
【0096】
また、作業データD40には、「作業場所」の情報を定義してもよい。ここで、「作業場所」には当該作業の実施場所が記載される。これにより、対象路線に複数の車両基地が存在する場合でも作業の情報を一元管理できる。
【0097】
さらに、作業データD40には、「作業者」、「計測値」、「入力値」などの情報を定義してもよい。ここで、「作業者」には当該作業を実施する作業者の情報が記載される。「計測値」には、当該作業者に関する計測情報(位置情報、生体情報、画像情報)が記載される。「入力値」には、当該作業者に関する入力情報(属性、状態、要望)が記載される。これにより、構内入換計画に対する修正案を作成する際、計測情報や入力情報を用いることができる。なお、時系列信号のような連続値を扱う場合、「計測値」や「入力値」は別データとして定義して、「作業者」の情報によって作業データD40と紐づけてもよい。
【0098】
(1.2.5 入換データのデータ構造)
入換データD50のデータ構造の一例について
図6を用いて説明する。
【0099】
入換データD50には、
図6に示すように、「編成番号」、「資源」、「開始時刻」、「終了時刻」が含まれている。以降で入換データD50の各列に記載されている情報について説明する。
【0100】
「編成番号」には対象編成の編成番号が記載される。例えば、
図6に示されているのは、「編成番号」が「R01」および「R10」であるものに関する記述の一部である。
【0101】
「資源」には当該編成が使用する資源の情報が記載される。例えば、
図6の1行目は、「資源」が「Track 5」である番線に関する記述であり、
図6の2行目は、「資源」が「Line 15」である線路に関する記述である。なお、「資源」には線路の情報の代わりに、編成が移動する進路の情報を記載してもよい。
【0102】
「開始時刻」には、当該編成が当該資源で作業(または移動)を開始する時刻が記載される。なお、運行開始時点ですでに当該資源を占有している場合、例えば「-」等、データがないということを示すマーカーが入力される。なお、
図6では分けていないが、運行開始時点ですでに当該資源を占有しているという情報を別フィールドとして用意しても良い。
【0103】
「終了時刻」には、当該編成が当該資源で作業(または移動)を終了する時刻が記載される。なお、運行終了時点まで当該資源を占有している場合、例えば「-」等、データがないということを示すマーカーが入力される。なお、
図6では分けていないが、運行終了時点まで当該資源を占有しているという情報を別フィールドとして用意しても良い。
【0104】
図6を参照し、入換データD50の例について説明する。例えば、
図6の1行目は、「編成番号」が「R01」の編成が、「資源」が「Track 5」の番線において、運行開始時点から「終了時刻」である「07:00」まで在線することを示す。
図6の2行目は、「編成番号」が「R01」の編成が、「資源」が「Line 15」の線路において、「開始時刻」である「07:00」から「終了時刻」である「07:20」まで移動することを示す。
図6では3点リーダ「・・・」によって省略されている部分が存在するが、実際には少なくとも編成数と、当該編成の作業・移動などに関わる資源数との組み合わせの数だけ行が存在している。
【0105】
なお、入換データD50には、「資源グループ」の情報を定義してもよい。ここで、「資源グループ」には当該編成が使用する資源が属する資源グル-プが記載される。資源グループは、例えば、番線グループや線路グループである。これにより、入換データD50において、入換手順(番線グループ単位での一連の編成の動きを示す情報)を直接的に参照できる。
【0106】
(1.2.6 編成入出区データのデータ構造)
編成入出区データD60のデータ構造の一例について
図7を用いて説明する。
【0107】
編成入出区データD60には、
図7に示すように、「編成番号」、「入区番線」、「入区時刻」、「出区番線」、「出区時刻」が含まれている。以降で編成入出区データD60の各列に記載されている情報について説明する。
【0108】
「編成番号」には対象編成の編成番号が記載される。例えば、
図7に示されているのは、「編成番号」が「R01」、「R02」、「R03」、「R10」、「R11」、「R12」であるものに関する記述の一部である。
【0109】
「入区番線」には当該編成が構内に入区する際に使用する番線名が記載される。例えば、
図7の3行目は「入区番線」が「In」であるものに関する記述ある。なお、運行開始時点で構内に存在する編成の入区情報については、例えば、
図7の1行目の「Track 5」のように運行開始時点で在線している番線名が設定される。
【0110】
「入区時刻」には当該編成が構内に入区する時刻が記載される。例えば、
図7の3行目は「入区時刻」が「06:00」であるものに関する記述である。なお、運行開始時点で構内に存在する編成の入区情報については、例えば「-」等、データがないということを示すマーカーが設定される。また、
図7では分けていないが、運行開始時点で構内に存在するという情報を別フィールドとして用意しても良い。
【0111】
「出区番線」には当該編成が構内から出区する際に使用する番線名が記載される。例えば、
図7の1行目は「出区番線」が「Out」であるものに関する記述ある。なお、運行終了時点で構内に存在する編成の出区情報については、例えば、
図7の2行目の「Track 2」のように運行終了時点で在線している番線名が設定される。
【0112】
「出区時刻」には当該編成が構内から出区する時刻が記載される。例えば、
図7の1行目は「出区時刻」が「07:45」であるものに関する記述である。なお、運行終了時点で構内に存在する編成の出区情報については、例えば「-」等、データがないということを示すマーカーが設定される。また、
図7では分けていないが、運行終了時点で構内に存在するという情報を別フィールドとして用意しても良い。
【0113】
図7を参照し、編成入出区データD60の例について説明する。例えば、
図7の1行目は、「編成番号」が「R01」の編成が、「入区番線」が「Track 5」の番線に運行開始時点から在線しており、「出区番線」が「Out」の番線から「出区時刻」である「07:45」の時刻に出区することを示す。
図7の3行目は、「編成番号」が「R03」の編成が、「入区番線」が「In」の番線から「入区時刻」である「06:00」の時刻に入区し、「出区番線」が「Out」の番線から「出区時刻」である「08:00」の時刻に出区することを示す。
図7では3点リーダ「・・・」によって省略されている部分が存在するが、実際には少なくとも編成数と、当該編成の入区・出区に関わる情報の数との組み合わせの数だけ行が存在している。
【0114】
なお、同一編成が複数回にわたって出区する場合、それぞれの出区情報を別レコードに記載してよい。
【0115】
また、編成入出区データD60には、編成の属性情報を定義してもよい。例えば、「編成種別」、「編成両数」、「所属」、「形式」が記載される。「編成種別」には編成が分類される種別の情報が記載される。「編成両数」には編成を構成する車両の数の情報が記載される。「所属」には編成が所属する車両基地の情報が記載される。「形式」には編成の外観、動力、性能、構造などを特徴づける形式の情報が記載される。これにより、構内入換計画に対する修正案の作成時に編成の属性情報を直接的に参照できる。
【0116】
(1.2.7 編成作業データのデータ構造)
編成作業データD04のデータ構造の一例について
図8を用いて説明する。編成作業データD04は編成作業データD70に相当する。
【0117】
編成作業データD70には、
図8に示すように、「編成番号」、「作業番号」、「作業種別」、「開始時刻」、「終了時刻」が含まれている。以降で編成作業データD70の各列に記載されている情報について説明する。
【0118】
「編成番号」には対象編成の編成番号が記載される。例えば、
図8に示されているのは、「編成番号」が「R01」、「R02」、「R03」、「R21」、「R21」、「R22」であるものに関する記述の一部である。
【0119】
「作業番号」には当該編成に対して実施される作業の作業番号が記載される。例えば、
図8の1行目は「作業番号」が「1」であるものに関する記述であり、
図8の2行目は「作業番号」が「2」であるものに関する記述である。
【0120】
「作業種別」には当該編成に対して実施される当該作業の種別番号が記載される。例えば、
図8の1行目は「作業種別」が「0」であるもの(例えば、清掃作業)に関する記述であり、
図8の3行目は「作業種別」が「1」であるもの(例えば、検査作業)に関する記述である。なお、「作業種別」には、作業の規模や頻度などに応じて細分化した種別番号を設定してもよい。
【0121】
「開始時刻」には当該編成に対して当該作業を開始する時刻が記載される。例えば、
図8の1行目は「開始時刻」が「05:30」であるものに関する記述であり、
図8の2行目は「開始時刻」が「07:00」であるものに関する記述である。
【0122】
「終了時刻」には当該編成に対して当該作業を終了する時刻が記載される。例えば、
図8の1行目は「開始時刻」が「06:00」であるものに関する記述であり、
図8の2行目は「開始時刻」が「07:30」であるものに関する記述である。
【0123】
図8を参照し、編成作業データD70の例について説明する。例えば、
図8の1行目は、「編成番号」が「R01」の編成に対して、「作業番号」が「1」であり「作業種別」が「0」である作業を、「開始時刻」である「05:30」から「終了時間」である「06:00」までの時間で実施することを示す。
図8の2行目は、「編成番号」が「R02」の編成に対して、「作業番号」が「2」であり「作業種別」が「0」である作業を、「開始時刻」である「07:00」から「終了時刻」である「07:30」までの時間で実施することを示す。
図8では3点リーダ「・・・」によって省略されている部分が存在するが、実際には少なくとも作業数分の行が存在している。
【0124】
なお、編成作業データD70には、「番線」の情報を定義してもよい。ここで、「番線」には当該編成に対して当該作業を実施する番線名が記載される。これにより、各作業を実施する番線を事前に指定することができる。
【0125】
(1.2.8 修正対象データのデータ構造)
修正対象データD80のデータ構造の一例について
図9を用いて説明する。
【0126】
修正対象データD80には、
図9に示すように、「名称」、「編成番号」、「資源」、「理由」が含まれている。以降で修正対象データD80の各列に記載されている情報について説明する。
【0127】
「名称」には適用候補とする修正手段の名称が記載される。例えば、
図9に示されているのは、「名称」が「入換手順」、「開始時刻」、「終了時刻」、「使用線路」、「番線使用順序」であるものに関する記述の一部である。
【0128】
「編成番号」には当該修正手段の適用先となる編成の編成番号が記載される。例えば、
図9の1行目は「編成番号」が「R22」であるものに関する記述であり、
図9の2行目は「時間」が「R09」であるものに関する記述である。
【0129】
「資源」には当該修正手段の適用先となる資源名が記載される。例えば、
図9の2行目は「資源」が「Track 1」であるものに関する記述である。なお、修正手段が特定の資源に限定されない場合、例えば「-」等、データがないということを示すマーカーが設定される。
【0130】
「理由」には当該修正手段、当該編成、当該資源を修正対象とした理由が記載される。例えば、
図9の1行目は「理由」が「競合(Track 6)」であるものに関する記述であり、
図9の2行目は「理由」が「競合(Track 1)」であるものに関する記述である。なお、「理由」には1つの理由のみを設定してもよいし、複数の理由を設定してもよい。
【0131】
図9を参照し、修正対象データD80の例について説明する。例えば、
図9の1行目は、「名称」に示された「入換手順」を変更する修正手段を、「編成番号」が「R22」の編成に対して、「理由」に示された「競合(Track 6)」という理由で適用候補とすることを示す。
図9の2行目は、「名称」示された「開始時刻」を変更するという修正手段を、「編成番号」が「R09」の編成に対して「資源」である「Track 1」で行う作業に対して、「理由」に示された「競合(Track 1)」の理由で適用候補することを示す。
図9では3点リーダ「・・・」によって省略されている部分が存在するが、実際には少なくとも修正手段数分の行が存在している。
【0132】
(1.3 実施例を適用する車両基地の構内配線)
続いて、
図10に示された車両基地の構内配線の一例を参照し、本実施例を適用する状況について説明する。
【0133】
図10で示された構内配線の一例において、車両基地は、本線と接続する入区番線「In」および出区番線「Out」をもち、さらに留置・引上・作業などを行うための8つの番線をもつ。ここで、各番線は、種別や位置などの観点からいくつかの番線グループに分けられている。番線グループ「1」には「Track 1」が分類される。番線グループ「2」には「Track 2」、「Track 3」、「Track 4」が分類される。番線グループ「3」には「Track 5」が。番線グループ「4」には「Track 6」、「Track 7」、「Track 8」が分類される。
【0134】
図10に示された構内配線の一例において「Track 6」で作業遅延が発生した場合を想定する。このとき、当該作業の終了後の計画についても遅れが生じるため、各資源において複数の編成による競合が発生する可能性がある。
【0135】
なお、構内配線の特徴や作業状況は上記に限定されるものではない。例えば、小規模で単純な構造、大規模で複雑な構造などをもつ車両基地であってよい。作業遅延以外の理由で構内入換計画の修正が必要になる場合や作業遅延が別の場所や別の編成において発生している場合に本実施例による修正案の作成を適用してもよい。
【0136】
(1.4 構内入換支援システムの処理)
次に、上述した構内入換支援システム100の動作の概要について説明する。
【0137】
(1.4.1 概略)
図11は、
図1に示した構内入換支援システム100の動作の概要を説明するためのフローチャートである。
【0138】
ステップS101は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、処理終了要求の有無を調べる処理である。処理終了要求が存在しなければ、ステップS102へ進む。処理終了要求が存在する場合には、構内入換支援処理を終了する。
【0139】
ステップS102は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、構内入換計画の修正が要求されたか否かを調べる処理である。構内入換計画の修正が要求された場合には、ステップS103へ進む。構内入換計画の修正が要求されていない場合には、ステップS101へ進む。
【0140】
ステップS103は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、構内入換計画を修正する処理である。ステップS103の処理の詳細は後述する。
【0141】
ステップS104は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、構内入換計画に対する修正案を出力する処理である。ステップS104は、例えば、ステップS103で作成された修正案を送受信部104からユーザ端末600に出力する。
【0142】
以上、本発明の第1の実施形態における構内入換支援システム100の処理の概略を示した。
【0143】
以降、
図11のステップS103における構内入換計画修正処理の詳細を説明する。
【0144】
(1.4.2 ステップS103における処理の詳細: 構内入換計画修正処理)
ステップS103の処理の詳細について
図12を用いて説明する。
【0145】
(1.4.2.1 概略)
図12は、
図11に示した構内入換計画修正処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
【0146】
ステップS201は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、編成入出区情報に基づき、編成を分類する処理である。ステップS201は、例えば、計画時と現在の編成入出区情報を比較して、各編成を計画所定編成と計画未定編成に分類する。計画所定編成は、事前計画に定められた入換手順や割当資源にしたがって移動する予定の編成である。計画未定編成は、事前計画に定められた入換手順や割当資源にしたがって移動しない予定の編成である。ステップS201は、計画時と現在の入区時刻または出区時刻を比較して、入区時刻の差分または出区時刻の差分から所定の閾値以上の変化がない場合に対象編成を計画所定編成として分類し、所定の閾値以上の変化がある場合に対象編成を計画未定編成に分類する。また、事前計画が作成された後に入区情報や出区情報が追加または削除された編成は計画未定編成に分類する。なお、構内における作業の遅延やトラブルなどが発生し、編成入出区情報が計画時から変更されていない状況で修正案の作成が要求された場合、構内入換計画に含まれるすべての編成は計画所定編成に分類される。
【0147】
ステップS202は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、構内入換計画から計画未定編成を削除する処理である。ステップS202は、例えば、ステップS201で計画未定編成と分類された編成を順番に選択し、当該編成の入換情報を構内入換計画から削除する。
【0148】
ステップS203は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、計画所定編成に対する遅延予測を実行する処理である。遅延予測は、編成の到着時刻、出発時刻、あるいは作業時間に生じる遅れがどの程度の遅れかを予測する処理である。遅延予測の手法は特に限定されることはなく、例えば、特開2005-178742に開示された公知の技術に基づいて遅延予測を行ってもよい。また、ステップS203は、算出された予測結果において作業(または移動)の開始時刻や終了時刻が遅れた遅延編成のリストを作成する。さらに、ステップS203は、算出した予測結果を修正履歴データベースD09に登録する。なお、ステップS203は、編成入出区情報に変更があった編成や作業遅延が発生している編成に対してのみ遅延予測を実行することで、各資源における他編成との競合を許容して予測を行ってもよい。
【0149】
ステップS204は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、算出した予測結果に対する余裕時分を分析する処理である。ステップS204の処理の詳細は後述する。
【0150】
ステップS205aは、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、ステップS206からステップS210までの処理を、所定の終了条件が満たされるまで繰り返す処理である。ステップS205aは、繰返し処理の過程で、構内入換計画に対する修正案を複数作成する。ステップS205aに関わる繰返し処理は、ステップS205bに到達することで一巡したこととなる。ステップS205aは、例えば、実行可能な修正案が作成されるまで、ステップS206からステップS210までの処理を繰り返す。ここで、ステップS206の処理において、修正案の作成結果を用いて構内入換計画の修正条件を変更し、ステップS208で抽出される修正対象を、それまでに抽出した修正対象に追加する。これにより、実行可能な結果が得られるまで、構内入換計画の修正範囲を広げながら、修正案を作成することができる。なお、所定の終了条件は、修正案に対する評価指標が所定の基準を満たすこととしてもよいし、計算時間が所定の時間を超えることとしてもよい。
【0151】
ステップS206は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、構内入換計画の修正条件を決定する処理である。ステップS206は、例えば、修正対象を追加する際の閾値や最適化結果を活用する際のパラメータを決定する。修正対象を追加する際の閾値には、編成の状態(遅延編成、遅延原因編成、仮挿入された編成、違反項目が指摘された編成など)ごとに定められる上限値、修正手段の種類(入換手順、使用線路、線路使用順序、使用番線、番線使用順序、開始時刻、終了時刻など)ごとに定められる上限値、競合箇所の前後の作業や移動に対して定められる上限値が含まれる。編成の状態ごとに定められる上限値は、例えば、ステップS208で修正対象を抽出する際、「仮挿入された編成は3つまで」や「違反項目が指摘された編成は2つまで」など、各状態の編成をいくつまで修正対象としてよいかを指定する。修正手段の種類ごとに定められる上限値は、例えば、ステップS208で修正対象を抽出する際、「入換手順は3つまで」や「使用番線は5つまで」など、各修正手段をいくつまで修正対象としてよいかを指定する。競合箇所の前後の作業や移動に対して定められる上限値は、例えば、ステップS208で修正対象を抽出する際、「開始時刻や終了時刻が先行する作業や移動は1つまで」や「開始時刻や終了時刻が後続する作業や移動は1つまで」など、他編成と競合している編成の入換情報に対し、競合箇所における作業や移動を基準に前後の作業や移動をいくつまで修正対象としてよいかを指定する。なお、これらの上限値は、基本データD05に閾値のリストを定義しておくことで、ステップS205aからステップS205bまでのループごとに更新される。最適化結果を活用する際のパラメータには、計画未定編成の仮挿入(ステップS207)に対するパラメータや修正対象の自動抽出(ステップS208)に対するパラメータなどが含まれる。計画未定編成の仮挿入に対するパラメータは、例えば、ステップ210で指摘された違反項目に基づき、「Track 3を利用」や「Line 1以外を利用」など、各編成の入換情報を作成するにあたって作業や移動で使用する(または使用しない)資源の一部を事前に指定する。修正対象の自動抽出に対するパラメータは、例えば、ステップ210で指摘された違反項目に基づき、「Track 2の編成R51と編成R52」や「Line 1の編成R53と編成R54」など、ステップS208で特定する競合箇所の一部を事前に指定する。また、修正対象の自動抽出に対するパラメータは、違反項目を必ず修正対象に追加するために、「Track 6で編成R55に使用番線の変更を適用」や「Line 5で編成R56に線路使用順序の変更を適用」など、ステップ208で抽出する修正対象の一部を事前に指定してもよい。
【0152】
ステップS207は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、ステップS202にて一旦削除した計画未定編成を構内入換計画に仮挿入する処理である。ステップS207は、例えば、ステップS201で計画未定編成と分類された編成を順番に選択し、当該編成の入換情報を作成してステップS204で算出された予測結果に追加する。ここで、計画未定編成の仮挿入に対するパラメータが指定されている場合、作業や移動に対して使用する資源の制約を加えた上で入換情報を作成する。このステップS207では、当該編成の入換情報を作成する際、各資源における他編成との競合を許容してもよい。また、ステップS207では、作成された予測結果において仮挿入された編成のリストを作成する。なお、ステップS203では、作成した予測結果を修正履歴データベースD09に登録してもよい。
【0153】
ステップS208は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、構内入換計画における修正対象を自動抽出する処理である。ステップS208の処理の詳細は後述する。
【0154】
ステップS209は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、構内入換計画を最適化する処理である。ステップS209の処理の詳細は後述する。
【0155】
ステップS210は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、構内入換計画に対する修正案を評価する処理である。ステップS210では、例えば、修正案が実行可能であるかを判定する。さらに、ステップS210では、修正案が実行可能な場合に評価指標を算出し、修正案が実行不可能な場合に違反項目を特定する。評価指標は、修正案の修正がどれだけ好ましいものであるかを表す指標である。例えば、構内入換の計画の修正にともなう確認、連絡および調整を少なく抑えられていれば好ましいと言える。例えば、事前計画と修正案における時刻(入区時刻、出区時刻、検査開始時刻、検査終了時刻など)の差分、事前計画に対する(または、修正案における)修正箇所の数、各修正手段の適用数、転線回数の差分である。評価指標は、上記に限定されるものではなく、各構内作業員の作業時間、残業時間、休憩時間に加え、各編成の検査時間、検査件数、および各設備の稼働時間、休止時間、消費電力などを含んでもよい。また、評価指標は、各指標に対する代表的な統計量(合計、平均、分散、標準偏差、中央値、最大値、最小値、比率など)として算出してもよい。なお、評価指標は、例えば、絶対値平均や二乗平均など、代表的な統計量を計算する際、各指標の絶対値、各指標を二乗した値、各指標を重み付けした値などを用いてもよい。違反項目は、例えば、番線競合や線路競合である。違反項目は、上記に限定されるものではなく、在線時間不足、移動時間不足などを含んでもよい。なお、ステップS210は、算出した評価指標や特定した違反項目に加え、修正案を暫定計画として修正履歴データベースD09に登録する。
【0156】
ステップS205bは、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、ステップS205aに戻る処理である。
【0157】
ステップS211は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、作成した修正案に対する余裕時分を分析する処理である。ステップS211の処理の詳細は後述する。
【0158】
ステップS212は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、構内入換計画に対する修正案の時刻を調整する処理である。ステップS212は、例えば、ステップS211で算出した余裕時分から短縮または延長が可能な在線時間や移動時間を特定し、修正案に定められた各編成の入区時刻または出区時刻を変更する。これにより、本線の列車運行をなるべく遵守した修正案を作成することができる。また、ステップS212は、構内における作業や移動の開始時刻または終了時刻を調整することで、各編成の在線時間や移動時間を変更する。これにより、作業時間や資源の使用間隔に余裕時分をもたせることができる。
【0159】
以上、本発明の第1の実施形態におけるステップS103の構内入換計画修正処理の詳細を示した。
【0160】
【0161】
(1.4.3 ステップS208における処理の詳細: 修正対象自動抽出処理)
ステップS208における処理の詳細について
図13を用いて説明する。
【0162】
(1.4.3.1 概略)
図13は、
図12に示したステップS208の修正対象自動抽出処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
【0163】
ステップS301は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、線路と番線に関して占有時間の辞書を作成する処理である。占有時間は、線路あるいは番線が編成によって占有されている時間である。編成が線路上に存在するとき線路は編成に占有されていると言える。編成が番線上に存在するとき番線は編成に占有されていると言える。ステップS301は、例えば、構内入換の事前計画や予測結果を参照し、各番線や各線路の占有時間に関して開始時刻と終了時刻を辞書に登録する。なお、ステップS301は、各番線と各線路の非占有時間を算出してもよい。非占有時間は、線路あるいは番線が編成によって占有されていない時間である。
【0164】
ステップS302aは、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、ステップS303からステップS307までの処理を、編成情報の要素数だけ繰り返す処理である。ステップS302aは、繰返し処理の過程で、編成情報の各要素を順次選択する(以降では、選択した編成情報の要素を「対象編成」とよぶ)。ステップS302aに関わる繰返し処理は、ステップS302bに到達することで一巡したこととなる。
【0165】
ステップS303は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、対象編成に関する構内入換の事前計画と予測結果を取得する処理である。ステップS303は、例えば、対象編成の編成番号から関連する事前計画と予測結果を取得する。
【0166】
ステップS304は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、対象編成が遅延編成であるか否かを判定する処理である。遅延編成は、事前計画に対して遅延が生じることが予測される編成である。遅延編成である場合には、ステップ305へ進む。遅延編成でない場合には、ステップS306へ進む。
【0167】
ステップS305は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、事前計画と予測計画の時刻を比較することで遅延原因となっている競合箇所を列挙する処理である。ステップS305は、例えば、対象編成に関する構内入換の事前計画と予測結果で対応する入換情報の各要素に関して、作業(または移動)の開始時刻や終了時刻などが異なる場合、競合する資源と競合する編成を競合箇所として特定する。ここで、競合する資源には例えば以下に示す(1)~(4)がある。
【0168】
(1)作業の開始時刻(あるいは、番線への到着時刻または線路からの進出時刻)が異なる場合、当該作業を実施する番線
【0169】
(2)作業の終了時刻(あるいは、番線からの出発時刻または線路への進入時刻)が異なる場合、当該作業の直後の移動を実施する線路
【0170】
(3)移動の開始時刻(あるいは、番線からの出発時刻または線路への進入時刻)が異なる場合、当該移動を実施する線路
【0171】
(4)移動の終了時刻(あるいは、番線への到着時刻または線路への進出時刻)が異なる場合、当該移動の直後の作業を実施する番線
また、競合する編成は、例えば、他の編成の影響を受けて遅延する被遅延編成となる対象編成と、その対象編成の直前に競合する資源を使用する編成とである。なお、ステップS305は、作業(または移動)の開始時刻や終了時刻が異なる入換情報の要素のうち、編成ごとに最も早い時刻のみで競合箇所を列挙してもよいし、すべての要素で競合箇所を列挙してもよい。
【0172】
ステップS306は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、対象編成が仮挿入された編成(以下、仮挿入編成とよぶ)であるか否かを判定する処理である。対象編成が仮挿入編成である場合には、ステップ307へ進む。対象編成が仮挿入編成でない場合には、ステップS302bへ進む。
【0173】
ステップS307は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、事前計画と予測結果の時刻を基に、編成同士で占有時間が重複する箇所を競合箇所として列挙する処理である。ステップS307は、例えば、対象編成に関する構内入換の予測結果における入換情報の各要素に関して、対象編成が使用する資源の占有時間が、ステップS301で事前計画と予測結果から作成した辞書に登録されている当該資源の占有時間と重複している場合、競合する資源と競合する編成を競合箇所として特定する。ここで、競合する資源は、例えば、2以上の編成による使用時間が重複している番線や線路である。また、競合する編成は、例えば、被遅延編成となる対象編成に加え、対象編成の直前に競合する資源を使用する編成である。なお、仮挿入編成について3以上の編成が競合する場合、すべての編成を1つの競合箇所に含めて特定してもよいし、編成の組合せに対して競合箇所を特定してもよい。
【0174】
ステップS302bは、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、ステップS302aに戻る処理である。
【0175】
ステップS308は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、資源の非占有時間を算出することで競合箇所に関連する資源の密度により競合箇所を順位付けする処理である。ステップS308では、例えば、すべての競合箇所が示す資源に対して、以下の手続きを実施することで、競合箇所に関連する資源が属する番線グループや線路グループの密度を順位付けする。まず、ステップS308では、当該資源が属する番線グループや線路グループを検索する。つぎに、検索した番線グループや線路グループに属する資源に対し、ステップS301で事前計画と予測結果から作成した辞書に登録されている占有時間の情報から非占有時間を計算する。そして、ステップS308は、算出した非占有時間を用いて番線グループや線路グループの密度を算出し、番線グループや線路グループの密度による順位を決定する。ここで、密度は、例えば、番線グループ(または線路グループ)に属する各番線(または各線路)に対して稼働率(占有時間と非占有時間の和に対する占有時間の比率)を計算し、番線グループ(または線路グループ)における稼働率の平均値を求めることで算出できる。稼動率は、単位時間に対する占有時間の割合と言うこともできる。
【0176】
ステップS309は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、編成の優先度や代替資源を算出し、競合箇所を、編成間の優先度の差による順位と、代替番線数による順位と、代替線路数による順位とにより順位付けする処理である。ステップS309は、例えば、すべての競合箇所が示す編成に対して、以下の手続きを実施することで、編成間の優先度の差による、競合箇所の編成の順位を決定する。
【0177】
まず、編成についての出区予定の有無、検査予定の有無、編成の属性情報などから当該編成の優先度を算出する。ここで、出区予定や検査予定が「有」の編成や、特別な属性情報(優等列車に割当可能な編成種別、保有数が少ない編成両数など)をもつ編成に対して優先度を高く設定する。つぎに、被遅延編成(競合箇所を列挙した際の対象編成)とその競合関係にある編成の間で優先度の差を算出し、競合している編成間の優先度の差に対する順位を決定する。優先度の差が大きいほど順位を高くする。なお、ステップS309は、被遅延編成やその競合関係にある編成の優先度に対する順位を決定してもよい。
【0178】
また、ステップS309では、例えば、すべての競合箇所に関連する資源に対して、当該資源の代替となる番線や線路を検索し、代替となる番線や線路の個数を算出し、当該競合箇所について代替番線数による順位と代替線路数に対する順位とを決定する。
【0179】
ステップS310aは、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、ステップS311からステップS323までの処理を、競合箇所の数だけ繰り返す処理である。ステップS310aは、繰返し処理の過程で、競合箇所を順次選択する(以降では、選択した競合箇所を「対象の競合箇所」とよぶ)。ステップS310aに関わる繰返し処理は、ステップS310bに到達することで一巡したこととなる。
【0180】
ステップS311は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、対象の競合箇所が示す資源が属する番線グループや線路グループの密度の順位が所定の閾値以上であるか否かを判定する処理である。閾値以上である場合には、ステップ318へ進む。閾値以上でない場合には、ステップS312へ進む。
【0181】
ステップS312は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、対象の競合箇所が示す資源が線路であるか否かを判定する処理である。線路である場合には、ステップ313へ進む。線路でない場合には、ステップS315へ進む。
【0182】
ステップS313は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、対象の競合箇所が示す資源に対する代替線路数の順位が閾値以上であるか否かを判定する処理である。閾値以上である場合には、ステップ319へ進む。閾値以上でない場合には、ステップS314へ進む。
【0183】
ステップS314は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、対象の競合箇所が示す編成に対する優先度の差の順位が閾値以上であるか否かを判定する処理である。閾値以上である場合には、ステップ320へ進む。閾値以上でない場合には、ステップS315へ進む。
【0184】
ステップS315は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、対象の競合箇所が示す資源が番線であるか否かを判定する処理である。番線である場合には、ステップ316へ進む。番線でない場合には、ステップS323へ進む。
【0185】
ステップS316は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、対象の競合箇所が示す資源に対する代替番線数の順位が閾値以上であるか否かを判定する処理である。閾値以上である場合には、ステップ321へ進む。閾値以上でない場合には、ステップS317へ進む。
【0186】
ステップS317は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、対象の競合箇所が示す編成に対する優先度の差の順位が閾値以上であるか否かを判定する処理である。閾値以上である場合には、ステップ322へ進む。閾値以上でない場合には、ステップS323へ進む。
【0187】
ステップS318は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、対象の競合箇所が示す資源と編成の情報を入換手順の変数化リストに追加する処理である。ステップS318は、例えば、対象の競合箇所として特定された番線(または線路)に対するIDコード、被遅延編成に対するIDコード、被遅延編成と競合関係にある編成に対するIDコードを組にして入換手順の変数化リストに追加する。
【0188】
ステップS319は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、対象の競合箇所が示す資源と編成の情報を使用線路の変数化リストに追加する処理である。
ステップS319は、例えば、例えば、対象の競合箇所として特定された線路に対するIDコード、被遅延編成に対するIDコード、被遅延編成と競合関係にある編成に対するIDコードを組にして使用線路の変数化リストに追加する。
【0189】
ステップS320は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、対象の競合箇所が示す資源と編成の情報を線路使用順序の変数化リストに追加する処理である。ステップS320は、例えば、例えば、対象の競合箇所として特定された線路に対するIDコード、被遅延編成に対するIDコード、被遅延編成と競合関係にある編成に対するIDコードを組にして線路使用順序の変数化リストに追加する。
【0190】
ステップS321は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、対象の競合箇所が示す資源と編成の情報を使用番線の変数化リストに追加する処理である。ステップS321は、例えば、例えば、対象の競合箇所として特定された番線に対するIDコード、被遅延編成に対するIDコード、被遅延編成と競合関係にある編成に対するIDコードを組にして使用番線の変数化リストに追加する。
【0191】
ステップS322は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、対象の競合箇所が示す資源と編成の情報を番線使用順序の変数化リストに追加する処理である。ステップS322は、例えば、例えば、対象の競合箇所として特定された番線に対するIDコード、被遅延編成に対するIDコード、被遅延編成と競合関係にある編成に対するIDコードを組にして番線使用順序の変数化リストに追加する。
【0192】
ステップS323は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、対象の競合箇所が示す資源と編成の情報を割当時間の変数化リストに追加する処理である。ステップS323は、例えば、対象の競合箇所として特定された番線(または線路に対するIDコード)、被遅延編成に対するIDコード、被遅延編成と競合関係にある編成に対するIDコードを組にして入換手順の変数化リストに追加する。
【0193】
ステップS310bは、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、ステップS310aに戻る処理である。
【0194】
以上、本発明の第1の実施形態におけるステップS208の処理の詳細を示した。
【0195】
以降、
図12のステップ209における構内入換計画最適化処理の詳細を説明する。
【0196】
(1.4.4 ステップS209における処理の詳細: 構内入換計画最適化処理)
ステップS209における処理の詳細について
図14を用いて説明する。
【0197】
(1.4.4.1 概略)
図14は
図12で示したステップS209の構内入換計画最適化処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
【0198】
ステップS401は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、入換手順を生成する処理である。ステップS401では、例えば、入換手順の変数化リストにしたがい、以下の手続きを実施することで、入換手順の候補を生成する。まず、入換手順の変数化リストに登録されている編成の情報を取得する。つぎに、取得した編成の情報において、入換手順の情報を参照する。そして、参照した入換手順の情報をもとに、入換手順の変数化リストに登録されている資源に関連する箇所を中心に修正操作を加えることで、入換手順の候補を生成する。ここで、修正操作には、例えば、入換手順への番線グループの追加、入換手順からの番線グループの削除を含まれる。これにより、入換手順における編成の番線グループ間の移動に修正が加えられることになる。なお、ステップS401では、入換手順の変数化リストに登録されている各要素に対し、閾値情報として定義された数の分だけ入換手順の候補を生成する。ここで、閾値情報は、各要素で生成する入換手順の数に対する閾値を定義してもよいし、全要素に対して生成する入換手順の合計数に対する閾値を定義してもよい。
【0199】
ステップS402は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、定数と集合を定義する処理である。ステップS402では、例えば、基本データD05にしたがって、最小在線時間、基準移動時間、作業所要時間、続行時隔などの定数と、編成、各資源、番線グループ、線路グループなどに対する集合とを定義する。
【0200】
ステップS403は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、変数を定義する処理である。ステップS403は、例えば、各変数化リストにしたがって、入換手順の候補の選択有無、開始時刻や終了時刻など、最適化計算に用いる変数を定義する。なお、最適化計算に用いる変数は、上記に限定されるものではなく、各資源の使用有無や使用順序などを表現する変数を定義してもよい。
【0201】
ステップS404は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、制約条件を定義する処理である。ステップS404は、例えば、基本データD05と各変数化リストにしたがって、在線時間(または作業時間)や移動時間など、最適化計算で遵守する制約条件を定義する。在線時間に関する制約条件は、例えば、作業の終了時刻と開始時刻の差分がステップS402で定められた最小在線時間の値以上である、という条件として定義される。移動時間に関する制約条件は、例えば、移動の終了時刻と開始時刻の差分がステップS402で定められた基準移動時間の値以上である、という条件として定義される。なお、最適化計算で遵守する制約条件は、上記に限定されるものではなく、作業が割当られている場合の作業所要時間や各資源を使用する際の続行時隔などを表現する制約条件を定義してもよい。また、ステップS404は、構内作業端末802から情報を取得できる場合、作業者の計測情報(位置情報、生体情報、画像情報)や入力情報(属性、状態、要望)などを用いて、制約条件を定義してもよい。これにより、当該作業者の位置、嗜好、体調、属性、状態、要望などに配慮した修正案を作成することができる。
【0202】
ステップS405は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、目的関数を定義する処理である。ステップS405は、例えば、事前計画と修正案における時刻の差分に対する二乗和、事前計画に対する修正箇所の合計数など、最適化計算で最大化する(または最小化する)目的関数を定義する。なお、最適化計算で最大化する(または最小化する)目的関数は、上記に限定されるものではなく、構内作業員の作業時間の合計や設備の稼働時間の合計など、修正履歴データベースD09に登録された各評価指標を表現する目的関数を定義してもよい。また、ステップS405は、単一の評価指標に対する目的関数を定義してもよいし、複数の評価指標を組み合わせた目的関数(多目的な目的関数)を定義してもよい。
【0203】
ステップS406は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、最適化計算を実行する処理である。ステップS406では、例えば、ステップS402で定義された定数および集合を設定し、ステップS403で定義された変数の値を探索し、ステップS404で定義された制約条件を満足しつつ、ステップS405で定義された目的関数を最大化する(または最小化する)解を求める。構内入換計画の修正箇所の候補のうち実際に修正される修正箇所を少なく抑えつつ競合箇所における競合を解消するように、修正手段の候補のうち実際に適用する修正手段を最適化することになる。この最適化処理の結果、構内入換の修正案が作成される。
【0204】
ステップS407は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、最適化結果から構内入換の情報を取得する処理である。ステップS407は、例えば、ステップS406で求めた解の情報から、構内入換における各作業(または各移動)の開始時刻や終了時刻の情報を取得する。
【0205】
なお、最適化問題の定義や解法は、上記に限定されるものではなく、制約条件を満足する範囲で任意の定義や解法を用いてもよい。上記では、CP(Constraint Programming)やMIP(Mixed Integer Programming)などを用いて組合せ最適化問題に対する解を求める一例を示したが、CNN(Convolutional Neural Network)やQ-Learningなどの機械学習に関する技術で最適化問題に対する解を求めてもよいし、ヒューリスティックやグラフ理論などを用いた技術で最適化問題に対する解を求めてもよい。
【0206】
以上、本発明の第1の実施形態におけるステップS209の処理の詳細を示した。
【0207】
以降、
図12のステップS211に示した余裕時分分析処理の詳細を説明する。
【0208】
(1.4.5 ステップS211における処理の詳細:余裕時分分析処理)
ステップS211(およびステップS204)における処理の詳細について
図15を用いて説明する。
【0209】
(1.4.5.1 概略)
図15は
図12で示したステップS211(およびステップS204)の余裕時分分析処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
【0210】
ステップS501は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、所定の構内入換計画の情報を設定する処理である。ステップS501は、例えば、受領した構内入換計画にしたがって、各編成の作業や移動に関する開始時刻や終了時刻の情報を設定する。
【0211】
ステップS502は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、探索情報を初期化する処理である。ステップS502は、例えば、探索済みの編成が存在していない空の探索情報を作成する。
【0212】
ステップS503aは、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、ステップS504からステップS506までの処理を、所与の構内入換計画に含まれる全編成を挿入するまで繰り返す処理である。ステップS502aに関わる繰返し処理は、ステップS502bに到達することで一巡したこととなる。
【0213】
ステップS504は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、挿入する編成を選択する処理である。ステップS504は、例えば、未探索の編成の集合から編成を1つ選択する。
【0214】
ステップS505は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、所与の構内入換計画の開始時刻と終了時刻に基づき制約条件を設定する処理である。ステップS505は、例えば、以下の手続きを実施することで、対象編成を挿入する際の制約条件を設定する。まず、ステップS505は、ステップS501で設定した情報から対象編成の構内入換に関する開始時刻や終了時刻を取得する。つぎに、ステップS505は、取得した開始時刻や終了時刻から資源の使用有無や使用順序が遵守されるように、対象編成を挿入する際の制約条件を設定する。
【0215】
ステップS506は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、分析用の構内入換計画に対象編成を挿入する処理である。ステップS505は、例えば、CP(Constraint Programming)などを用いて、ステップS505で設定した制約条件を満足する解を求め、分析用の構内入換計画に対象編成の入換情報を追加する。また、ステップS506は、挿入した対象編成を探索情報に加える。なお、ステップS506は、対象編成の挿入に失敗した際、バックトラック処理により探索情報に定義されている編成の一部を分析用の構内入換計画から削除するが、所与の構内入換計画が実行可能な場合には、資源の使用有無や使用順序がそのまま反映されるため、バックトラック処理は発生しない。
【0216】
ステップS503bは、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、ステップS503aに戻る処理である。
【0217】
ステップS507は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、余裕時分に関する辞書を初期化する処理である。ステップS507は、例えば、余裕時分の情報が存在していない空の辞書を作成する。
【0218】
ステップS508aは、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、ステップS509aからステップS509bまでの処理を、分析用の構内入換計画に含まれる各編成に対して繰り返す処理である。ステップS508aは、繰返し処理の過程で、構内入換計画に含まれる各編成を順次選択する(以降では、選択した編成を「対象編成」とよぶ)。ステップS508aに関わる繰返し処理は、ステップS508bに到達することで一巡したこととなる。
【0219】
ステップS509aは、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、ステップS510からステップS511までの処理を、対象編成の各作業情報に対して繰り返す処理である。ステップS509aは、繰返し処理の過程で、対象編成の各作業情報を順次選択する(以降では、選択した作業を「対象作業」とよぶ)。ステップS509aに関わる繰返し処理は、ステップS509bに到達することで一巡したこととなる。
【0220】
ステップS510は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、対象作業の開始時刻と終了時刻のドメイン情報を参照する処理である。ステップS401は、例えば、CP(Constraint Programming)などを用いて探索した各変数のドメイン情報を参照する。ここで、ドメイン情報は、実行可能解となる条件のもとで、各変数がとりうる値の範囲を示す。
【0221】
ステップS511は、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、取得したドメイン情報を余裕時分に関する辞書に登録する処理である。ステップS511は、例えば、対象編成のIDコードおよび対象作業を実施する資源のIDコードの組と、ドメイン情報をセットにして余裕時分に関する辞書に登録する。
【0222】
ステップS509bは、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、ステップS509aに戻る処理である。
【0223】
ステップS508bは、
図1に示した構内入換支援システム100のCPU101が、ステップS508aに戻る処理である。
【0224】
以上、本発明の第1の実施形態におけるステップS211(およびステップS204)の処理の詳細を示した。
【0225】
【0226】
(1.5 ユーザに提示される構内入換支援情報)
第1の実施形態において、ユーザに提示される構内入換支援情報について
図16、
図17、
図18を用いて説明する。
【0227】
(1.5.1 構内入換支援情報の概略)
図16はユーザに提示される運行支援情報の画面の一例である。
【0228】
図16に示されるユーザに提示される構内入換支援情報は、「構内入換計画」、「入換情報」、「修正履歴」から構成される。なお、ユーザに提示される構内入換支援情報は、上記に限られるものでなく、例えば、構内における作業計画を示す「作業情報」や構内入換計画に対する評価値を示す「評価指標」などを含んでもよい。
【0229】
(1.5.2 構内入換計画の表示)
図16の「構内入換計画」には、例えば、縦軸を番線、横軸を時間としたグラフで構内入換計画が表示される。「構内入換計画」における構内入換計画の表示は、例えば、「事前計画」、「予測結果」、「修正案」、および「試行内容」といったタブを選択することにより切り替わる。
【0230】
「事前計画」は、例えば、事前に定められた構内入換計画を表示するためのタブである。「事前計画」には、例えば、構内入換計画データD01の情報が描画される。「事前計画」の表示内容については後述する。
【0231】
「予測結果」は、例えば、実績や作業遅延情報に基づき、将来の構内入換に関する予測結果を表示するためのタブである。「予測結果」には、例えば、構内入換計画に対して、構内入換予測プログラムP04が実行されることにより得られた予測結果が描画される。「予測結果」の表示内容については後述する。
【0232】
「修正案」は、例えば、構内入換支援システム100により作成された修正案を表示するためのタブである。「修正案」には、例えば、構内入換計画修正プログラムP01により、作成された修正案が描画される。「修正案」の表示内容については後述する。
【0233】
「試行内容」は、例えば、構内入換支援システム100において修正を試行中の構内入換計画を表示するためのタブである。「試行内容」には、例えば、構内入換計画修正プログラムP01の処理中において、暫定的な計画として更新されている構内入換計画が描画される。
【0234】
(1.5.3 事前計画の表示)
図16に示される「事前計画」の表示内容は、例えば、各線分が入区番線「In」で構内に入区してから各番線を経由する編成の移動や出区番線「Out」で構内から出区するまでに各番線を経由する編成の移動を表している。また、
図16に示される「事前計画」の表示内容には、「△印」の箇所で編成の入区が描画されており、「〇印」の箇所で編成の出区が描画されている。
【0235】
なお、編成の移動を表す各線分は、編成の属性情報や在線時の作業内容に応じて色付けされてもよいし、各番線を表す横線は当該番線の種別や番線グループの情報に応じて色付けされてもよい。
【0236】
(1.5.4 予測結果の表示)
図17に示される「予測結果」の表示内容は、例えば、各線分が入区番線「In」で構内に入区してから各番線を経由する編成の移動や出区番線「Out」で構内から出区するまでに各番線を経由する編成の移動を表している。また、
図17に示される「予測結果」には、「Track 6」の箇所で作業遅延が発生し、構内入換予測プログラムP04によって将来の構内入換に関する予測が行われた構内入換計画が描画されている。
【0237】
なお、編成の移動を表す各線分は、編成の遅延状況や競合状況に応じて色付けされてもよいし、各番線を表す横線は当該番線における遅延状況や競合状況に応じて色付けされてもよい。
【0238】
また、「予測結果」の表示内容は、上記に限定されるものではなく、事前計画の情報を点線や破線などで表示してもよいし、ステップS207で予測結果に追加された仮挿入編成の情報を表示してもよい。さらに、「予測結果」の表示内容は、ステップS203の処理の結果に合わせて、各資源における編成間の競合を遅延として描画してもよいし、使用時間(または占有時間)の重複として描画してもよい。
【0239】
(1.5.5 修正案の表示)
図18に示される「修正案」の表示内容は、例えば、各線分が入区番線「In」で構内に入区してから各番線を経由する編成の移動や出区番線「Out」で構内から出区するまでに各番線を経由する編成の移動を表している。また、
図18に示される「修正案」には、「Track 6」の箇所で作業遅延が発生し、構内入換計画修正プログラムP01によって一部の編成の入換情報が修正された構内入換計画が描画されている。
【0240】
なお、編成の移動を表す各線分は、編成に対する修正箇所や選択された修正履歴に応じて色付けされてもよいし、各番線を表す横線は当該番線における修正箇所や選択された修正履歴に応じて色付けされてもよい。
【0241】
(1.5.6 入換情報の提示)
図18の「入換情報」には、例えば、構内入換計画に定められる入換情報を表示する。「入換情報」における旅客流動に関する情報の表示は、例えば、「編成」、「資源」、および「時刻」といったタブを選択することにより切り替わる。
【0242】
「編成」は、例えば、各編成の作業時間や移動時間などを表示するためのタブである。「編成」には、例えば、修正履歴データベースD09に格納された事前計画、予測結果、修正案、暫定計画に関して、各編成の作業(または移動)に対する開始時刻や終了時刻などを表示する。なお、「編成」には、上記に限らず、例えば、編成の属性情報や割当予定の運用番号などを表示してもよい。
【0243】
「資源」は、例えば、各資源の占有時間や非占有時間を表示するためのタブである。「資源」には、例えば、修正履歴データベースD09に格納された事前計画、予測結果、修正案、暫定計画に関して、各資源の占有や非占有に対して、占有あるいは被占有が開始された時刻である開始時刻と終了した時刻である終了時刻などを表示する。なお、「資源」には、上記に限らず、例えば、資源の種別や番線グループ、線路グループなどを表示してもよい。
【0244】
「時刻」は、例えば、各時刻における編成の作業状況(または移動状況)を表示するためのタブである。「時刻」には、例えば、修正履歴データベースD09に格納された事前計画、予測結果、修正案、暫定計画に関して、ある時間帯に作業(または)移動を実施している編成の情報を表示する。なお、「時刻」には、上記に限らず、ある時刻において占有されている資源の情報やある時間帯で占有されていない資源の情報などを表示してもよい。
【0245】
なお、「入換情報」には、上記に限らず、例えば、編成入出区情報や編成作業情報などを表示してもよい。
【0246】
図16に示される「資源」の表示内容は、例えば、修正履歴データベースD09の情報に基づき、「分類」、「資源」、「開始時刻」、「終了時刻」、「編成」から構成される。
【0247】
「分類」には、各資源が「占有」と「非占有」のどちらの状態であるかが表示される。例えば、
図16の1行目は「分類」が「占有」であるものに関する表示であり、
図16の2行目と3行目は「分類」が「非占有」であるものに関する表示である。
【0248】
「資源」には、当該分類の状態にある資源が表示される。例えば、
図16の1行目と2行目は「資源」が「Track 1」であるものに関する表示であり、
図16の3行目は「資源」が「Line 10」であるものに関する表示である。
【0249】
「開始時刻」には、当該資源での作業(または移動)の開始時刻が記載される。例えば、
図16の1行目は「開始時刻」が「11:00」であるものに関する表示であり、
図16の2行目は「開始時刻」が「11:15」であるものに関する表示である。
【0250】
「終了時刻」には、当該資源での作業(または移動)の終了時刻が記載される。例えば、
図16の1行目は「終了時刻」が「11:15」であるものに関する表示であり、
図16の2行目は「終了時刻」が「12:15」であるものに関する表示である。
【0251】
「編成」には、当該資源で当該開始時刻から当該終了時刻の間に作業(または移動)を実施する編成番号が表示される。例えば、
図16の1行目は「編成」が「R10」であるものに関する表示である。なお、「分類」が「非占有」の場合、「編成」には、例えば「-」等、データが存在しないということを示すマーカーが入力される。
【0252】
なお、
図16の「入換情報」では、例えば、検索条件を指定することで参照したい分類、資源、開始時刻、終了時刻、編成などの情報を絞り込んで表示してもよいし、「構内入換計画」の表示部分から参照したい編成や番線をクリック、あるいはドラック&ドロップすることで対象の情報を表示してもよい。また、表示情報をあらかじめデータとして定義しておくことで、特定の分類、資源、開始時刻、終了時刻、編成などの情報のみを表示してもよい。
【0253】
(1.5.7 修正履歴の提示)
図18の「修正履歴」には、例えば、修正案を作成した際の修正履歴に関する情報を表示する。「修正履歴」における修正履歴に関する情報は、例えば、「全変更」、「確認済み」、「未確認」といったタブを選択することにより切り替わる。
【0254】
「全変更」は、例えば、修正案を作成した際に実施したすべての変更を表示するためのタブである。「全変更」には、例えば、修正履歴データベースD09に格納された修正案に対応する修正履歴データの情報を表示する。
【0255】
「確認済み」は、例えば、修正案を作成した際に実施した変更のうち、確認済みの変更を表示するためのタブである。「確認済み」には、例えば、修正履歴データベースD09に格納された修正案に対応する修正履歴データの情報のうち、すでにユーザが確認処理を実施した情報を表示する。
【0256】
「未確認」は、例えば、修正案を作成した際に実施した変更のうち、未確認の変更を表示するためのタブである。「未確認」には、例えば、修正履歴データベースD09に格納された修正案に対応する修正履歴データ
の情報のうち、まだユーザが確認処理を実施していない情報を表示する。
【0257】
図18に示される「全変更」の表示内容は、例えば、修正履歴データベースD09の情報に基づき、「名称」、「編成」、「資源」、「理由」から構成される。
【0258】
「名称」には、構内入換計画の修正で適用された修正手段の名称が表示される。例えば、
図18の1行目は「名称」が「入換手順」であるものに関する表示であり、
図18の2行目は「名称」が「開始時刻」であるものに関する表示である。
【0259】
「編成」には、構内入換計画において当該名称の修正手段が適用された編成が表示される。例えば、
図18の1行目は「編成」が「R22」であるものに関する表示であり、
図18の2行目は「編成」が「R09」であるものに関する表示である。
【0260】
「資源」には、構内入換計画において当該名称の修正手段が適用された資源が表示される。例えば、
図18の2行目と3行目は「資源」が「Track 1」であるものに関する表示である。なお、「名称」が「入換手順」のような特定の資源に限定されない修正手段の場合、「資源」には、例えば「-」等、データが存在しないということを示すマーカーを入力してもよいし、関連するすべての資源を入力してもよい。
【0261】
「理由」には、当該名称の修正手段が適用された理由が表示される。例えば、
図18の1行目は「理由」が「競合(Track 6)」であるものに関する表示であり、
図18の2行目と3行目は「理由」が「競合(Track 1)」であるものに関する表示である。「競合(Track 6)」は、Track 6の番線における競合を意味する。「競合(Track 1)」は、Track 1の番線における競合を意味する。
【0262】
なお、
図18の「修正履歴」では、例えば、検索条件を指定することで参照したい修正手段の名称、編成、資源、理由などの情報を絞り込んで表示してもよい。また、画面上で修正履歴を選択することで、「構内入換画面」の表示部分の該当箇所をハイライトしてもよい。
【0263】
このように、本発明の第1の実施形態において、事前計画と予測結果との比較により特定した線路・番線の競合箇所や非占有時間を用いて修正対象を決定し、構内入換計画の修正案を作成することにより、構内入換計画の修正にともなう確認・連絡・調整を少なく抑えた修正案を提示することができる。
【0264】
(1.6 変形例)
以上、本発明の第1の実施形態について説明したが、本発明の実施形態は例示したものに限るものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0265】
上述した第1の実施形態では、運行当日に作業遅延が発生した状況における修正案を作成している。しかし、本発明の実施形態は、これに限らない。本発明の実施形態の変形例として、例えば、運行前日までに作業予定が変更された場合に対して修正案を作成してもよい。ここで、修正案は、例えば、ステップS208で修正対象を抽出する際、予定されている作業が実施できない在線情報を競合箇所として特定し、ステップS209以降の処理で修正手段を適用することで作成できる。これにより、運行前日までに作業予定が変更された場合においても、構内入換計画の修正にともなう確認・連絡・調整を少なく抑えた修正案を提示することができる。なお、運行前日までの作業予定の変更に対して修正案を作成する場合、構内入換の実績情報は用いる必要がなく、構内入換の事前計画をもとに修正案を作成してよい。
【0266】
また、上述した第1の実施形態では、車両基地の構内入換計画に対する修正案を作成している。しかし、本発明の実施形態は、これに限らない。本発明の実施形態は、例えば、駅構内の入換計画に対する修正案を作成してもよい。ここで、駅構内の入換計画に対する修正案は、基本データD05に駅の設備情報を定義することで、車両基地の場合と同様に作成できる。これにより、駅構内での入換計画の修正が必要となった場合においても、修正にともなう確認・連絡・調整を少なく抑えた修正案を提示することができる。
【0267】
さらに、上述した第1の実施形態では、事前計画と修正案における時刻の差分に対する二乗和、事前計画に対する修正箇所の合計数などを目的関数とし、当該目的関数を最小化するような最適化計算により修正案を作成している。しかし、本発明の実施形態は、これに限らない。本発明の実施形態は、例えば、修正履歴データベースD09に登録された各評価指標を表現する目的関数を用いた最適化計算により、修正案を作成してもよい。これにより、所望の評価指標に重きを置いた修正案を提示することができる。例えば、構内作業員の作業時間の分散を目的関数とした最適化計算を行うことで、各構内作業員の作業時間を平準化するような修正案を提示することができる。さらに、事前計画に対する修正箇所の合計数に関して、運行終了時点で在線する番線のみに重みを設定し、それ以外の差分を無視することで、運行終了時点での修正案における各編成の在線状況が、事前計画における各編成の在線状況と近づくような修正案を提示することができる。
【0268】
上述した第1の実施形態では、
図18の構内入換支援情報において、複数作成された修正案のうち、最終的に選択された修正案を1つ表示する構成としたが、本発明の構成はこれに限るものではない。例えば、ステップS103で複数作成された修正案を2以上表示してもよい。これにより、ユーザは、複数の候補から好適な修正案を選択できる。
【0269】
また、上述した第1の実施形態では、
図18の構内入換支援情報において、構内入換計画に対する修正案を作成した後に修正履歴を表示する構成としたが、本発明の構成はこれに限るものではない。例えば、ステップS208で抽出した修正対象を、ステップS209の実行前にユーザに提示するような構成としてもよい。これにより、ユーザは、修正対象を編集・承認した上で、ステップS209以降の処理を実行することができる。
【0270】
さらに、上述した第1の実施形態では、
図18の構内入換支援情報において、構内入換計画に加え、入換情報と修正履歴を表示する構成としたが、本発明の構成はこれに限るものではない。例えば、ステップS210で算出した評価指標や違反項目を構内入換支援情報として提示するような構成としてもよい。これにより、ユーザは、修正案を確認する際、評価指標や違反項目の情報をもとに修正案の採否を判断できる。また、ユーザは、複数の修正案が表示されている場合、評価指標や違反項目の情報を比較することで、好適な修正案を選択できる。
【0271】
さらに、本発明の実施形態として編成の密度、編成の優先度、代替線路数・代替番線数を基準に抽出される修正対象は、第1の実施形態にて
図13を用いて例示したものに限定されることはない。例えば、編成の密度を基準として、番線の使用有無や使用順序を修正対象に含めてもよいし、編成の優先度を基準として入換手順や番線の使用有無、線路の使用有無を修正対象に含めてもよい。
なお、編成の移動を表す各線分は、編成の属性情報や在線時の作業内容に応じて色付けされてもよいし、各番線を表す横線は当該番線の種別や番線グループの情報に応じて色付けされてもよい。
なお、編成の移動を表す各線分は、編成の遅延状況や競合状況に応じて色付けされてもよいし、各番線を表す横線は当該番線における遅延状況や競合状況に応じて色付けされてもよい。
また、「予測結果」の表示内容は、上記に限定されるものではなく、事前計画の情報を点線や破線などで表示してもよいし、ステップS207で予測結果に追加された仮挿入編成の情報を表示してもよい。さらに、「予測結果」の表示内容は、ステップS203の処理の結果に合わせて、各資源における編成間の競合を遅延として描画してもよいし、使用時間(または占有時間)の重複として描画してもよい。
なお、編成の移動を表す各線分は、編成に対する修正箇所や選択された修正履歴に応じて色付けされてもよいし、各番線を表す横線は当該番線における修正箇所や選択された修正履歴に応じて色付けされてもよい。
「編成」は、例えば、各編成の作業時間や移動時間などを表示するためのタブである。「編成」には、例えば、修正履歴データベースD09に格納された事前計画、予測結果、修正案、暫定計画に関して、各編成の作業(または移動)に対する開始時刻や終了時刻などを表示する。なお、「編成」には、上記に限らず、例えば、編成の属性情報や割当予定の運用番号などを表示してもよい。
「資源」は、例えば、各資源の占有時間や非占有時間を表示するためのタブである。「資源」には、例えば、修正履歴データベースD09に格納された事前計画、予測結果、修正案、暫定計画に関して、各資源の占有や非占有に対する開始時刻や終了時刻などを表示する。なお、「資源」には、上記に限らず、例えば、資源の種別や番線グループ、線路グループなどを表示してもよい。
「時刻」は、例えば、各時刻における編成の作業状況(または移動状況)を表示するためのタブである。「時刻」には、例えば、修正履歴データベースD09に格納された事前計画、予測結果、修正案、暫定計画に関して、ある時間帯に作業(または)移動を実施している編成の情報を表示する。なお、「時刻」には、上記に限らず、ある時刻において占有されている資源の情報やある時間帯で占有されていない資源の情報などを表示してもよい。
「全変更」は、例えば、修正案を作成した際に実施したすべての変更を表示するためのタブである。「全変更」には、例えば、修正履歴データベースD09に格納された修正案に対応する修正履歴データの情報を表示する。
「確認済み」は、例えば、修正案を作成した際に実施した変更のうち、確認済みの変更を表示するためのタブである。「確認済み」には、例えば、修正履歴データベースD09に格納された修正案に対応する修正履歴データの情報のうち、すでにユーザが確認処理を実施した情報を表示する。
「未確認」は、例えば、修正案を作成した際に実施した変更のうち、未確認の変更を表示するためのタブである。「未確認」には、例えば、修正履歴データベースD09に格納された修正案に対応する修正履歴データの情報のうち、まだユーザが確認処理を実施していない情報を表示する。
上述したように、第2の実施形態では、運行管理システム200や車両運用システム300などと連携し、本線列車の運行情報を構内入換の予測結果に反映するような構成とした。このような構成とすることで、運行状況に応じた適切な範囲の構内入換計画を修正することができるため、運行乱れ対応においても、構内入換計画の修正にともなう確認・連絡・調整を少なく抑えた修正案を提示することができる。
上述した第2の実施形態では、輸送障害が発生した状況(運行乱れ対応)における修正案を作成している。しかし、本発明の実施形態は、これに限らない。本発明の実施形態の変形例として、例えば、運行前の計画変更(ダイヤ改正)に応じて修正案を作成してもよい。ここで、修正案は、例えば、ダイヤ改正による運行計画の変更を予測結果に反映することで、運行乱れ対応と同様に作成できる。これにより、ダイヤ改正が実施された場合においても、構内入換計画の修正にともなう確認・連絡・調整を少なく抑えた修正案を提示することができる。なお、ダイヤ改正に応じて修正案を作成する場合、列車運行の実績情報は用いる必要がなく、列車運行の計画情報をもとに修正案を作成してよい。
また、上述した第2の実施形態では、本線側から入区する遅延編成と構内側に在線する遅延編成を等しく扱って修正案を作成している。しかし、本発明の実施形態は、これに限らない。本発明の実施形態の変形例として、例えば、本線側から入区する遅延編成よりも構内側に在線する遅延編成の優先度を高く設定して修正案を作成してもよい。ここで、修正案は、本線側から入区する編成と構内側に在線する編成を区別するための情報を記憶する記憶部が備えるように構成し、ステップS309においてそれぞれの編成の優先度に差をつけることで、作成できる。これにより、より確度の高い情報に基づいて作成した修正案を提示することができる。