(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024130358
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】光電変換モジュール
(51)【国際特許分類】
H10K 39/12 20230101AFI20240920BHJP
H10K 30/81 20230101ALI20240920BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20240920BHJP
H10K 85/40 20230101ALI20240920BHJP
H10K 30/40 20230101ALN20240920BHJP
H10K 30/86 20230101ALN20240920BHJP
【FI】
H10K39/12
H10K30/81
H10K85/60
H10K85/40
H10K30/40
H10K30/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040033
(22)【出願日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】519259342
【氏名又は名称】株式会社エネコートテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110003557
【氏名又は名称】弁理士法人レクシード・テック
(72)【発明者】
【氏名】若宮 淳志
(72)【発明者】
【氏名】大橋 昇
(72)【発明者】
【氏名】西谷 純一
【テーマコード(参考)】
3K107
5F251
【Fターム(参考)】
3K107AA03
3K107CC21
3K107EE68
5F251AA20
5F251BA11
5F251CB13
5F251CB14
5F251EA09
5F251EA10
5F251EA16
5F251EA19
5F251FA04
5F251FA06
5F251FA13
5F251FA15
5F251FA17
5F251FA21
5F251GA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ショート箇所があっても、帯状セル全体を損失しない光電変換モジュールの提供を目的とする。
【解決手段】第一の電極42と、第一の電極上に位置する光電変換層43と、光電変換層上に位置する第二の電極44と、を含み、光電変換層及び第二の電極は、直列接続している方向に分割されており、第一の電極は、その一部が直列接続している方向に分割されずに残存して隣接する帯状セルと電気的に接続していることを特徴とする。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列接続している方向に複数に分割された帯状セルを有する光電変換モジュールであって、
第一の電極と、
前記第一の電極上に位置する光電変換層と、
前記光電変換層上に位置する第二の電極と、
を含み、
前記光電変換層及び前記第二の電極は、直列接続している方向に分割されており、
前記第一の電極は、その一部が直列接続している方向に分割されずに残存して隣接する帯状セルと電気的に接続していることを特徴とする光電変換モジュール。
【請求項2】
前記光電変換層は、ペロブスカイト化合物を含むことを特徴とする請求項1記載の光電変換モジュール。
【請求項3】
前記光電変換層と前記第一の電極の間、及び前記光電変換層と前記第二の電極の間の少なくとも一方に、電子輸送層又は正孔輸送層が存在することを特徴とする請求項1又は2記載の光電変換モジュール。
【請求項4】
前記光電変換層と前記第一の電極の間に、正孔輸送層が存在し、
前記正孔輸送層が、下記化学式(I)で表される化合物を含む請求項1から3のいずれか一項に記載の光電変換モジュール。
【化I】
前記化学式(I)において、
Ar
1は、芳香環を含む構造であり、前記芳香環を構成する原子中にヘテロ原子を含んでいても含んでいなくてもよく、
Ar
1は、-L
1-X
1以外の置換基を有していても有していなくてもよく、
-L
1-X
1は、1つでも複数でもよく、複数の場合は、各L
1及び各X
1は、互いに同一であっても異なっていてもよく、
各L
1は、Ar
1とX
1とを結合する原子団であるか、又は共有結合であり、
各X
1は、それぞれ、前記第1の電極との間で電荷を授受可能な基である。
【請求項5】
前記化学式(I)において、
各X1が、それぞれ、ホスホン酸基(-P=O(OH)2)、カルボキシ基(-COOH)、スルホ基(-SO3H)、ボロン酸基(-B(OH)2)、又はトリハロゲン化シリル基(-SiX3、ただしXはハロ基)、トリアルコキシシリル基(-Si(OR)3、ただしRはアルキル基)である請求項4に記載の光電変換モジュール。
【請求項6】
前記化学式(I)において、前記Ar
1が、下記化学式(I-1)で表される請求項4又は5に記載の光電変換モジュール。
【化I-1】
前記化学式(I-1)中、
Ar
11は、環状構造を含む原子団であり、前記環状構造は、芳香環でも非芳香環でもよく、単環でも縮合環でもスピロ環でもよく、環を構成する原子中にヘテロ原子を含んでいても含んでいなくてもよく、
Ar
12は、芳香環であり、環を構成する原子中にヘテロ原子を含んでいても含んでいなくてもよく、
Ar
12は、1つ以上の原子をAr
11と共有してAr
11と一体化していてもよく、
Ar
12は、1つでも複数でもよく、複数の場合は互いに同一でも異なっていてもよい。
【請求項7】
前記化学式(I-1)において、前記Ar
11が、下記化学式(a1)~(a10)のいずれかで表される請求項6に記載の光電変換モジュール。
【化a1-a10】
【請求項8】
前記化学式(I-1)において、前記各Ar
12が、それぞれ下記化学式(b)で表される請求項6又は7に記載の光電変換モジュール。
【化b】
前記化学式(b)において、
炭素原子C
1及びC
2は、前記化学式(I-1)中の前記Ar
11における前記環状構造を構成する原子の一部を兼ねており、
前記R
1は、水素原子、前記化学式(I)中のX
1、又は置換基であり、前記置換基は水素原子を含んでいても含んでいなくてもよく、前記置換基中の水素原子の少なくとも一つは、前記化学式(I)中のX
1で置換されていてもよく、
前記各R
11は、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子若しくは置換基であるか、又は、隣接する2つのR
11は、それらが結合するベンゼン環と一体となって縮合環を形成していてもよく、
前記各R
11は、さらに置換基を有していても有していなくてもよい。
【請求項9】
前記化学式(b)が、下記化学式(b1)~(b7)のいずれかで表される請求項8に記載の光電変換モジュール。
【化b1-b7】
前記化学式(b1)~(b7)において、C
1、C
2及びR
1は、それぞれ、前記化学式(b)と同じである。
【請求項10】
前記化学式(I)で表される化合物が、下記化学式A-1~A-23のいずれかで表される化合物である請求項4から9のいずれか一項に記載の光電変換モジュール。
【化A1A4】
【化A5A8】
【化A9A12】
【化A13A16】
【化A17A20】
【化A21A23】
前記化学式A-1~A-23において、
前記各R
1は、それぞれ、水素原子であるか、前記化学式(I)中のX
1であるか、又は、前記化学式(I)中のX
1でさらに置換された置換基であり、互いに同一でも異なっていてもよく、
前記各R
1のうち少なくとも1つは、前記化学式(I)中のX
1であるか、又は、前記化学式(I)中のX
1でさらに置換された置換基であり、
前記R
2は、置換基であり、1つでも複数でも存在しなくてもよく、複数の場合は、各R
2は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【請求項11】
前記化学式(I)で表される化合物が、下記化学式4PATAT、1-legged-3PATAT、1-legged-3PATAT-H、又は2-legged-3PATATで表される化合物である請求項4から10のいずれか一項に記載の光電変換モジュール。
【化4PATAT】
【化3PATAT1】
【化3PATATH】
【化3PATAT2】
【請求項12】
前記光電変換層と前記第一の電極の間に、正孔輸送層が存在し、
前記正孔輸送層は、下記化学式(III)で表される化合物を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の光電変換モジュール。
Ar-L-X (III)
(前記化学式(III)において、Arは、置換基を有していてもよい芳香環又はヘテロ環を含む構造を表し、Lは、ArとXを結合する2価の置換基を表し、Xは、ジヒドロキシホスホリル基(-P=O(OH)2)、カルボキシ基(-COOH)、スルホ基(-SO3H)、ボロン酸基(-B(OH)2)、トリハロゲン化シリル基(-SiX3、ただしXはハロゲン基)、トリアルコキシシリル基(-Si(OR)3、ただし、Rは、アルキル基)、トリヒドロキシシリル基、及びジアルキルホスホリル基からなる群より選ばれる。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光電変換モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、クリーンエネルギーとして、太陽光発電が注目を浴びており、太陽電池の開発が進んでいる。その一つとして、低コストで製造可能な次世代型の太陽電池として、ペロブスカイト材料を光吸収層に用いた太陽電池が急速に注目を集めている。例えば、非特許文献1では、ペロブスカイト材料を光吸収層に用いた溶液型の太陽電池が報告されている。また、非特許文献2には、固体型のペロブスカイト型太陽電池が高効率を示すことも報告されている。アモルファスシリコン太陽電池、色素増感太陽電池、有機薄膜太陽電池、そしてペロブスカイト型太陽電池のモジュール構造としては、セルを直列に接続する形状が多く報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Journal of the American Chemical Society, 2009, 131, 6050-6051.
【非特許文献2】Science, 2012, 388, 643-647.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アモルファスシリコン太陽電池や化合物系太陽電池の場合、セルを帯状に配置して直列に接続する方法が一般的である。しかしながら、帯状セルの一部にショート(あるいはリーク)する箇所が一つでもあると、その帯状セル全体がショートしたことになり、特性の大きな損失となってしまう。また、本開示のもう一つの課題は、逆型構造におけるホール輸送層に単分子層を形成するホール輸送材料を用いた太陽電池においては、長期連続動作中に単分子を形成していた正孔輸送層にリークが発生しやすく、その結果、性能低下してしまうことである。
【0005】
そこで、本開示は、ショート箇所があっても、帯状セル全体を損失しない光電変換モジュールの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本開示の光電変換モジュールは、直列接続している方向に複数に分割された帯状セルと有する光電変換モジュールであって、
第一の電極と、
前記第一の電極上に位置する光電変換層と、
前記光電変換層上に位置する第二の電極と、
を含み、
前記光電変換層及び前記第二の電極は、直列接続している方向に分割されており、
前記第一の電極は、その一部が直列接続している方向に分割されずに残存して隣接する帯状セルと電気的に接続していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ショート箇所があっても、帯状セル全体を損失しない、光電変換モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の光電変換モジュールの順型構造の一例を示す断面図である。
【
図2】
図2は、本開示の光電変換モジュールの逆型構造の一例を示す断面図である。
【
図3】
図3は、本開示の光電変換モジュールの外観図の一例である。
【
図4】
図4は、
図3に示す本開示の光電変換モジュールにおけるA-A’面における断面図の一例である。
【
図5】
図5は、
図3に示す本開示の光電変換モジュールにおけるB-B’面における断面図の一例である。
【
図6】
図6は、本開示の実施例1の第一の電極を示すパターン図の一例である。
【
図7】
図7は、本開示の実施例1の電極上に形成した光電変換層のパターン図の一例である。
【
図8】
図8は、本開示の実施例1の光電変換層上に形成した第二の電極を示すパターン図の一例である。
【
図9】
図9は、
図8の光電変換モジュールを横断する加工を行ったパターン図の一例である。
【
図10】
図10は、ショート箇所が横断加工処理無しによって受ける影響のイメージ図の一例である。
【
図11】
図11は、ショート箇所が横断加工処理によって受ける影響のイメージ図の一例である。
【
図12】
図12は、実施例で製造した化合物の
1HNMRチャートである。
【
図13】
図13は、実施例で製造した別の化合物の
1HNMRチャートである。
【
図14】
図14は、実施例で製造したさらに別の化合物の
1HNMRチャートである。
【
図15】
図15は、実施例で製造したさらに別の化合物の
1HNMRチャートである。
【
図16】
図16は、実施例で製造したさらに別の化合物の
1HNMRチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本開示について、例を挙げてさらに詳細に説明する。ただし、本開示は、以下の説明により限定されない。
【0010】
本開示において、特に断らない限り、「質量%」と「重量%」とは互いに読み替えてもよく、「質量部」と「重量部」とは互いに読み替えてもよい。
【0011】
本開示において、「上に」又は「面上に」は、上に、又は面上に直接接触した状態でもよいし、他の構成要素等を介した状態でもよい。
【0012】
本開示の光電変換モジュール(以下、単に「モジュール」という場合がある。)は、例えば、発電部、及びバイパス部を含み、前記発電部、及び前記バイパス部は、それぞれ、第一の電極、光電変換層、及び第二の電極を含み、前記第一の電極、前記光電変換層、及び前記第二の電極は、この順序で積層される。本開示の光電変換モジュールは、支持体を含んでもよい。ここで、前記第一の電極と、前記光電変換層との間には、前記第一の電極、前記光電変換層、前記第二の電極、及び前記支持体以外の他の構成要素(以下、単に「他の構成要素」という場合がある。)が含まれていてもよい。また、前記光電変換層と、前記第二の電極との間には、他の構成要素が含まれていてもよい。前記他の構成要素は、例えば、電子輸送層、正孔輸送層等が挙げられる。本開示の光電変換モジュールは、例えば、
図2に記載の逆型構造が挙げられる。前記逆型構造は、光が入射する支持体側から順番に、支持体、第一の電極、正孔輸送層、光電変換層、電子輸送層、及び第二の電極から構成されるものである。
【0013】
<直列モジュールについて>
本開示における直列モジュールの構造を
図3に示す。前記直列モジュールは、直列接続している方向に複数の帯状セルに分割されており(
図4)、光電変換層33と第二の電極34とは、分割されているが、第一の電極32は、その一部が分割されずに残存して隣接する帯状セルと電気的に接続していることが特徴である(
図5)。
【0014】
以下、本開示について、さらに例を挙げて具体的に説明する。ただし、本開示は、以下の例に限定されない。
【0015】
[光電変換モジュール]
ある態様において、本開示の光電変換モジュールは、例えば、前記第一の電極、前記電子輸送層、前記光電変換層、前記正孔輸送層、及び前記第二の電極がこの順序で積層されている順型構造(
図1)、及び、前記第一の電極、前記正孔輸送層、前記光電変換層、前記電子輸送層、及び前記第二の電極がこの順序で積層されている逆型構造(
図2)のいずれの構成であってもよいが、逆型構造であることが好ましい。本開示の光電変換モジュールは、例えば、前記第一の電極、前記正孔輸送層、前記光電変換層、前記電子輸送層、及び前記第二の電極以外の他の構成要素を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。例えば、前記第一の電極と、前記電子輸送層又は前記正孔輸送層との間には、他の構成要素が存在せず直接積層されていてもよいし、それらの間に他の構成要素が存在していてもよい。同様に、前記電子輸送層又は前記正孔輸送層と、前記光電変換層との間には、他の構成要素が存在せず直接積層されていてもよいし、それらの間に他の構成要素が存在していてもよい。同様に、前記光電変換層と、前記正孔輸送層又は前記電子輸送層との間には、他の構成要素が存在せず直接積層されていてもよいし、それらの間に他の構成要素が存在していてもよい。同様に、前記正孔輸送層又は前記電子輸送層と、前記第二の電極との間には、他の構成要素が存在せず直接積層されていてもよいし、それらの間に他の構成要素が存在していてもよい。
【0016】
以下、本開示の光電変換モジュールの構成及び各構成要素について、例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、本開示の光電変換モジュールは、以下の例に限定されない。なお、以下においては、主に、本開示の光電変換モジュールが太陽電池である場合について説明する。
【0017】
図1及び
図2に、本開示の光電変換モジュールの構成の一例をそれぞれ示す。なお、
図1及び
図2は、説明の便宜のため、適宜省略、誇張等をして模式的に描いている。
図1に示す順型構造である光電変換モジュール10は、支持体(基板、基材等とも言う。)11上に、第一の電極12、電子輸送層13、光電変換層14、正孔輸送層15、及び第二の電極16が、この順序で積層されている。
図2に示す逆型構造である光電変換モジュール20は、支持体(基板、基材等とも言う。)21上に、第一の電極22、正孔輸送層25、光電変換層24、電子輸送層23、及び第二の電極26が、この順序で積層されている。
【0018】
[支持体11、21]
支持体11、21は、特に限定されず、例えば、一般的な太陽電池等の光電変換モジュールに使用可能な基板を適宜用いてもよい。前記基板は、例えば、ガラス、プラスチックフィルムを含むプラスチック板、プラスチック膜、無機結晶体等が挙げられる。前記基板の厚みは、特に限定されず、例えば、本開示の光電変換モジュールのフレキシブル性を阻害しない厚みである。本開示において「フレキシブル」は、例えば、本開示の光電変換モジュールに応力をかけたあとに、割れやクラック等が生じず、光電変換モジュールの性能に影響を及ぼさない程度に柔軟であることを意味する。前記基板がガラスである場合、例えば、前記基板の厚みは0.5~1.1mmが好ましい。プラスチックフィルムである場合、例えば、前記基板の厚みは50~125μmが好ましい。また、これらの基板表面の一部又は全部の上に、金属膜、半導体膜、導電性膜、及び絶縁性膜の少なくとも1種の膜が形成されている基板も、支持体11、21として好適に用いることができる。支持体11、21の大きさ及び厚み等は、特に限定されず、例えば、一般的な太陽電池等の光電変換モジュールと同様又はそれに準じてもよい。
【0019】
[第一の電極12、22]
第一の電極12、22は、例えば、電子輸送層13や正孔輸送層25を支持するとともに、光電変換層14、24から電子あるいは正孔を取り出す機能を有する層である。また、第一の電極12はアノード(負極)として、第一の電極22はカソード(正極)として働く層である。
【0020】
第一の電極12、22は、例えば、支持体11、21上に直接形成してもよい。第一の電極12、22は、例えば、導電体から形成された透明電極であってもよい。前記透明電極は、特に限定されないが、例えば、スズドープ酸化インジウム(ITO)膜、不純物ドープの酸化インジウム(In2O3)膜、不純物ドープの酸化亜鉛(ZnO)膜、フッ素ドープ二酸化スズ(FTO)膜、これらの二種以上を積層して形成された積層膜、金、銀、銅、アルミニウム、タングステン、チタン、クロム、ニッケル、及びコバルト等が挙げられる。これらは単独でも2種類以上の混合であっても、また、単層でも積層であっても構わない。また、これらの膜は、例えば拡散防止層として機能するものであってもよい。第一の電極12、22の厚みは、特に制限されないが、例えば、シート抵抗が5~15Ω/□(単位面積当たり)となるように調整することが好ましい。第一の電極12、22の形成方法は、特に限定されないが、例えば、形成する材料に応じ、公知の成膜方法により得ることができる。また、第一の電極12、22の形状は、特に限定されないが、例えば、膜状であっても、メッシュ状のような格子状に形成されていても構わない。支持体11、21上に第一の電極12、22を形成する方法は、特に限定されないが、例えば、公知の方法でもよく、例えば、真空蒸着やスパッタリング等の真空製膜が好ましい。また、第一の電極12、22は、例えば、パターニングされたものを用いてもよい。前記パターニング方法としては、特に限定されないが、例えば、レーザーやエッチング液に浸す方法、真空製膜時にマスクを用いてパターニングする方法等が挙げられ、本開示においては何れの方法であっても構わない。また、第一の電極12、22は、例えば、電気的抵抗値を下げる目的で、金属配線等を併用してもよい。前記金属配線(金属リード線)の材質は、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、銅、銀、金、白金、及びニッケル等が挙げられる。前記金属リード線は、例えば、蒸着、スパッタリング、及び圧着等で第一の基板に形成し、その上にITOやFTOの層を設ける、あるいはITOやFTOの上に設けることにより併用することが可能である。
【0021】
[電子輸送層13、23]
電子輸送層13、23に用いられる材料は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、半導体材料が好ましい。前記半導体材料は、特に制限されず、公知のものを用いることができ、例えば、単体半導体、化合物半導体、有機n型半導体等が挙げられる。
【0022】
前記単体半導体は、特に限定されないが、例えば、シリコン、及びゲルマニウム等が挙げられる。
【0023】
前記化合物半導体は、特に限定されないが、例えば、金属のカルコゲニド、具体的には、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、タンタル等の酸化物;カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモン、ビスマス等の硫化物;カドミウム、鉛等のセレン化物;カドミウム等のテルル化物等が挙げられる。他の化合物半導体としては亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物、ガリウム砒素、銅-インジウム-セレン化物、銅-インジウム-硫化物等が挙げられる。
【0024】
前記有機n型半導体は、特に限定されないが、例えば、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボキシジイミド化合物、ナフタレンジイミド-ビチオフェン共重合体、ベンゾビスイミダゾベンゾフェナントロリン重合体、C60、C70、PCBM([6,6]-フェニル-C61-酪酸メチルエステル)等のフラーレン化合物、カルボニルブリッジ-ビチアゾール化合物、ALq3(トリス(8-キノリノラト)アルミニウム)、トリフェニレンビピリジル化合物、シロール化合物、及びオキサジアゾール化合物等が挙げられる。
【0025】
電子輸送層13、23に用いられる前述の材料の中でも、特に有機n型半導体が好ましい。
【0026】
電子輸送層13、23の形成に用いられる材料は、例えば、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。電子輸送層13、23の形成に用いられる材料が半導体材料の場合、前記半導体材料の結晶型は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、単結晶でも多結晶でもよく、非晶質でも構わない。
【0027】
電子輸送層13、23の膜厚は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、5nm~1000nmが好ましく、10nm~700nmがより好ましい。
【0028】
電子輸送層13、23の形成方法は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。前記形成方法は、例えば、真空中で薄膜を形成する方法(真空製膜法)、及び湿式製膜法等が挙げられる。前記真空製膜法は、例えば、スパッタリング法、パルスレーザーデポジッション法(PLD法)、イオンビームスパッタ法、イオンアシスト法、イオンプレーティング法、真空蒸着法、アトミックレイヤーデポジッション法(ALD法)、及び化学気相成長法(CVD法)等が挙げられる。前記湿式製膜法は、例えば、電子輸送材料を溶解した溶媒を塗布して形成する方法や、電子輸送層13、23の形成に用いられる材料が酸化物半導体の場合にはゾル-ゲル法等が挙げられる。前記ゾル-ゲル法は、溶液から、加水分解や重合・縮合等の化学反応を経てゲルを作製し、その後、加熱処理によって緻密化を促進させる方法である。前記ゾル-ゲル法を用いた場合、ゾル溶液の塗布方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、及びグラビアコート法が挙げられ、また、湿式印刷方法は、例えば、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、及びスクリーン印刷等が挙げられる。ゾル溶液を塗布した後の加熱処理の際の温度は、例えば、80℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。
【0029】
逆型構造の場合、電子輸送層23を形成後、第二の電極26との間に電子注入層(ホールブロッキング層)を形成しても構わない。電子注入層に用いられる材料としては、BCP(バソクプロイン)を挙げることができ、セシウムをドープしても構わない。電子注入層の膜厚は、例えば、1nm~100nmが好ましく、3nm~20nmがより好ましい。
【0030】
[正孔輸送層15、25]
正孔輸送層15、25は、電荷を輸送する機能を有する層である。正孔輸送層15、25には、例えば、導電体、半導体、有機正孔輸送材料等を用いることができる。前記有機正孔輸送材料は、ペロブスカイト層(光電変換層)14、24から正孔を受け取り、前記正孔を輸送する正孔輸送材料として機能し得る。前記導電体及び前記半導体は、無機正孔輸送材料あるいは前記有機正孔輸送材料が用いられる。前記無機正孔輸送材料は、例えば、CuI、CuInSe2、CuS等の1価銅を含む化合物半導体;GaP、NiO、CiO、FeO、Bi2O3、MoO3、Cr2O等の銅以外の金属を含む化合物等が挙げられる。前記無機正孔輸送材料は、より効率的に正孔のみを受け取り、より高い正孔移動度を得る観点から、1価銅を含む半導体が好ましく、CuIあるいはCuSCNがより好ましい。前記有機正孔輸送材料は、例えば、ポリ-3-ヘキシルチオフェン(P3HT)、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等のポリチオフェン誘導体;2,2’,7,7’-テトラキス-(N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミン)-9,9’-スピロビフルオレン(Spiro-OMeTAD)等のフルオレン誘導体;ポリビニルカルバゾール等のカルバゾール誘導体;ポリ[ビス(4-フェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)アミン](PTAA)等のトリフェニルアミン誘導体;ジフェニルアミン誘導体;ポリシラン誘導体;ポリアニリン誘導体等が挙げられる。前記有機正孔輸送材料は、より効率的に正孔のみを受け取り、より高い正孔移動度を得る観点から、トリフェニルアミン誘導体、フルオレン誘導体等が好ましく、PTAA、Spiro-OMeTAD等がより好ましい。
【0031】
正孔輸送層15、25は、例えば、下記化学式(I)で表される化合物を含んでいてもよい。
【0032】
【0033】
前記化学式(I)において、
Ar1は、芳香環を含む構造であり、前記芳香環を構成する原子中にヘテロ原子を含んでいても含んでいなくてもよく、
Ar1は、-L1-X1以外の置換基を有していても有していなくてもよく、
-L1-X1は、1つでも複数でもよく、複数の場合は、各L1及び各X1は、互いに同一であっても異なっていてもよく、
各L1は、Ar1とX1とを結合する原子団であるか、又は共有結合であり、
各X1は、それぞれ、前記第1の電極との間で電荷を授受可能な基である。
-L1-X1の数は、特に限定されないが、例えば、1~4の範囲でもよい。
【0034】
本開示の光電変換モジュールは、例えば、
前記化学式(I)において、
前記L1が、例えば、1,1-メチレン基、1,2-エチレン基などの2価のアルキレン基、ジエトキシエタンなどの2価のアルコキシ基等の2日の置換基を挙げることができ、これらは、前記X1以外の置換基を有していてもよいし有していなくてもよい。
【0035】
本開示の光電変換モジュールは、例えば、
前記化学式(I)において、
各X1が、それぞれ、ホスホン酸基(-P=O(OH)2)、カルボキシ基(-COOH)、スルホ基(-SO3H)、ボロン酸基(-B(OH)2)、トリハロゲン化シリル基(-SiX3、ただしXはハロ基)、又はトリアルコキシシリル基(-Si(OR)3、ただしRはアルキル基)であってもよい。
【0036】
本開示の光電変換モジュールは、例えば、前記化学式(I)において、前記Ar1が、下記化学式(I-1)で表されてもよい。
【0037】
【0038】
前記化学式(I-1)中、
Ar11は、環状構造を含む原子団であり、前記環状構造は、芳香環でも非芳香環でもよく、単環でも縮合環でもスピロ環でもよく、環を構成する原子中にヘテロ原子を含んでいても含んでいなくてもよく、
Ar12は、芳香環であり、環を構成する原子中にヘテロ原子を含んでいても含んでいなくてもよく、
Ar12は、1つ以上の原子をAr11と共有してAr11と一体化していてもよく、
Ar12は、1つでも複数でもよく、複数の場合は互いに同一でも異なっていてもよい。
Ar12の数は特に限定されないが、例えば、1~4の範囲でもよい。
【0039】
本開示の光電変換モジュールは、例えば、前記化学式(I-1)において、前記Ar11が、下記化学式(a1)~(a10)のいずれかで表されてもよい。
【0040】
【0041】
本開示の光電変換モジュールは、例えば、前記化学式(I-1)において、前記各Ar12が、それぞれ下記化学式(b)で表されてもよい。
【0042】
【0043】
前記化学式(b)において、
炭素原子C1及びC2は、前記化学式(I-1)中の前記Ar11における前記環状構造を構成する原子の一部を兼ねており、
前記R1は、水素原子、前記化学式(I)中のX1、又は置換基であり、前記置換基は水素原子を含んでいても含んでいなくてもよく、前記置換基中の水素原子の少なくとも一つは、前記化学式(I)中のX1で置換されていてもよく、
前記各R11は、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子若しくは置換基であるか、又は、隣接する2つのR11は、それらが結合するベンゼン環と一体となって縮合環を形成していてもよく、
前記各R11は、さらに置換基を有していても有していなくてもよい。
【0044】
本開示の光電変換モジュールは、例えば、前記化学式(b)が、下記化学式(b1)~(b7)のいずれかで表されてもよい。
【0045】
【化b1-b7】
前記化学式(b1)~(b7)において、C
1、C
2及びR
1は、それぞれ、前記化学式(b)と同じである。
【0046】
本開示の光電変換モジュールは、例えば、前記化学式(I)で表される化合物が、下記化学式A-1~A-23のいずれかで表される化合物であってもよい。
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
前記化学式A-1~A-23において、
前記各R1は、それぞれ、水素原子であるか、前記化学式(I)中のX1であるか、又は、前記化学式(I)中のX1でさらに置換された置換基であり、互いに同一でも異なっていてもよく、
前記各R1のうち少なくとも1つは、前記化学式(I)中のX1であるか、又は、前記化学式(I)中のX1でさらに置換された置換基であり、
前記R2は、置換基であり、1つでも複数でも存在しなくてもよく、複数の場合は、各R2は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0054】
前記化学式A-1~A-23において、R1が、前記化学式(I)中のX1でさらに置換された置換基である場合は、X1の数は、1でも複数でもよい。また、R1が、前記化学式(I)中のX1でさらに置換された置換基である場合は、例えば、前記化学式(I)中のX1でさらに置換されたアルキル基又はアルコキシ基であってもよい。
【0055】
前記化学式A-1~A-23において、前記置換基R2の数は特に限定されない。また、前記置換基R2は、例えば、それぞれ、アルキル基、アルコキシ基、又はハロ基(ハロゲン原子)であってもよい。
【0056】
本開示の光電変換モジュールは、例えば、前記化学式(I)で表される化合物が、下記化学式4PATAT、1-legged-3PATAT、1-legged-3PATAT-H、又は2-legged-3PATATで表される化合物であってもよい。
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
正孔輸送層15、25は、例えば、下記化学式(III)で表される化合物を含んでいてもよい。
Ar-L-X (III)
【0062】
前記化学式(III)において、
Arは、置換基を有していてもよい芳香環又はヘテロ環を含む構造を表し、
Lは、ArとXを結合する2価の置換基を表し、
Xは、ジヒドロキシホスホリル基(-P=O(OH)2)、カルボキシ基(-COOH)、スルホ基(-SO3H)、ボロン酸基(-B(OH)2)、トリハロゲン化シリル基(-SiX3、ただしXはハロゲン基)、トリアルコキシシリル基(-Si(OR)3、ただしRはアルキル基)、トリヒドロキシシリル基、及びジアルキルホスホリル基からなる群より選ばれる。
【0063】
前記化学式(III)において、Ar、L、及びXは、それぞれ、前記化学式(I)におけるAr1、L1及びX1の例示を援用できる。
【0064】
前記化学式(III)において、Arに結合する-L-Xの数は、1つでもよいし、複数でもよい。後者の場合、前記化学式(III)は、例えば、Ar(-L-X)nと表すこともできる。前記nは、例えば、正の整数であり、具体例として、1~4である。
【0065】
本開示の光電変換モジュールは、例えば、前記正孔輸送層が、さらに、共吸着剤を含んでいてもよい。
【0066】
本開示の光電変換モジュールは、例えば、前記共吸着剤が、下記化学式(II)で表される化合物であってもよい。
【0067】
【0068】
前記化学式(II)において、
L2は、アルキル基、アルコキシ基、又はアリール基、又はヘテロ環であり、L2の水素原子の少なくとも1つ以上がX2で置換されており、X2以外の置換基を有していても有してなくてもよく、
X2は、前記第1の電極との間で電荷を授受可能な基であり、1つでも複数でもよく、複数の場合は同一でも異なっていてもよい。
【0069】
本開示の光電変換モジュールは、例えば、
前記化学式(II)において、
各X2が、それぞれ、ホスホン酸基(-P=O(OH)2)、カルボキシ基(-COOH)、スルホ基(-SO3H)、ボロン酸基(-B(OH)2)、トリハロゲン化シリル基(-SiX3、ただしXはハロ基)、又はトリアルコキシシリル基(-Si(OR)3、ただしRはアルキル基)であってもよい。
【0070】
本開示の光電変換モジュールは、例えば、前記共吸着剤の分子量が2,000以下であってもよい。
【0071】
本開示において、鎖状の基又は原子団(例えば、アルキル基、不飽和脂肪族炭化水素基等の炭化水素基)は、特に断らない限り、直鎖状でも分枝状でも良く、その炭素数は、特に限定されないが、例えば、1~40、1~32、1~24、1~18、1~12、1~6、又は1~2(不飽和炭化水素基の場合は2以上)であっても良い。また、本開示において、環状の基又は原子団(例えば、芳香環、芳香族基等であり、例えば、アリール基、ヘテロアリール基等)の環員数(環を構成する原子の数)は、特に限定されないが、例えば、5~32、5~24、6~18、6~12、又は6~10であっても良い。また、置換基等に異性体が存在する場合は、特に断らない限り、どの異性体でも良く、例えば、単に「ナフチル基」という場合は、1-ナフチル基でも2-ナフチル基でも良い。
【0072】
本開示において、「置換基」は、特に限定されないが、例えば、アルキル基、不飽和脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、ヒドロキシ基(-OH)、メルカプト基(-SH)、アルキルチオ基(-SR、Rはアルキル基)、スルホ基、ニトロ基、ジアゾ基、シアノ基、及びトリフルオロメチル基等が挙げられる。
【0073】
また、本開示において、化合物に互変異性体又は立体異性体(例:幾何異性体、配座異性体及び光学異性体)等の異性体が存在する場合は、特に断らない限り、いずれの異性体も本開示に用いることができる。また、本開示において、化合物が塩を形成し得る場合は、特に断らない限り、前記塩も本開示に用いることができる。前記塩は、酸付加塩でも良いが、塩基付加塩でも良い。さらに、前記酸付加塩を形成する酸は、無機酸でも有機酸でも良く、前記塩基付加塩を形成する塩基は無機塩基でも有機塩基でも良い。前記無機酸は、特に限定されないが、例えば、硫酸、リン酸、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、次亜フッ素酸、次亜塩素酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、亜フッ素酸、亜塩素酸、亜臭素酸、亜ヨウ素酸、フッ素酸、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、過フッ素酸、過塩素酸、過臭素酸、及び過ヨウ素酸等が挙げられる。前記有機酸は、特に限定されないが、例えば、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、p-ブロモベンゼンスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、及び酢酸等が挙げられる。前記無機塩基は、特に限定されないが、例えば、水酸化アンモニウム、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、炭酸塩、及び炭酸水素塩等があげられ、より具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カルシウム、及び炭酸カルシウム等が挙げられる。前記有機塩基も特に限定されないが、例えば、エタノールアミン、トリエチルアミン及びトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン等が挙げられる。これらの塩の製造方法も特に限定されず、例えば、前記化合物に、前記のような酸や塩基を公知の方法により適宜付加させる等の方法で製造することができる。
【0074】
更に、前記有機正孔輸送材料は、正孔輸送特性をさらに向上させることを目的として、例えば、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSI)、銀ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、亜鉛ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド、ナトリウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド、リチウムノナフルオロ-N-[(トリフルオロメタン)スルホニル]ブタンスルホニルアミド、カリウムノナフルオロ-N-[(トリフルオロメタン)スルホニル]ブタンスルホニルアミド、ノナフルオロ-N-[(トリフルオロメタン)スルホニル]ブタンスルホニルアミド、リチウムN,N-ヘキサフルオロ-1,3-ジスルホニルイミド、ナトリウムN,N-ヘキサフルオロ-1,3-ジスルホニルイミド、トリフルオロメチルスルホニルオキシ銀、NOSbF6、SbCl5、SbF5、トリス(2-(1H-ピラゾール-1-イル)-4-tert-ブチルピリジン)コバルト(III)トリ[ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド]等の酸化剤を含んでもよい。また、正孔輸送層15、25中には、例えば、tert-ブチルピリジン(TBP)、2-ピコリン、2,6-ルチジン等の塩基性化合物等を含んでもよい。前記酸化剤及び前記塩基性化合物の含有量は、例えば、従来から通常使用される量とすることができる。正孔輸送層15、25の膜厚は、より効率的に正孔のみを受け取り、より高い正孔移動度を得る観点から、例えば、1~500nmが好ましく、2~300nmがより好ましい。正孔輸送層15、25を成膜する方法は、例えば、乾燥雰囲気下で行うことが好ましい。正孔輸送層15、25を成膜する方法は、例えば、有機正孔輸送材料を含む溶液を、乾燥雰囲気下、ペロブスカイト層(光吸収層)上に塗布(スピンコート等)し、30~180℃、特に100~150℃で加熱することが好ましい。
【0075】
また、逆型構造における正孔輸送層25は、例えば、単分子層を形成する正孔輸送化合物(以下、「単分子正孔輸送化合物」とも言う。)を用いることも可能である。前記単分子正孔輸送化合物は、例えば、逆型構造において、透明電極であるITO等と化学結合するアンカーを有することが望ましい。前記アンカーは、例えば、ホスホン酸基(-P=O(OH)2)、カルボキシ基(-COOH)、スルホ基(-SO3H)、ボロン酸基(-B(OH)2)、トリハロゲン化シリル基(-SiX3、ただしXはハロゲン原子)、トリアルコキシシリル基(-Si(OR)3、ただしRはアルキル基)等が挙げられる。前記アンカーは、特に、ホスホン酸基、トリハロゲン化シリル基、トリアルコキシシリル基が好ましい。
【0076】
前記単分子正孔輸送材料を用いた正孔輸送層25の形成方法は、特に限定されないが、例えば、前記単分子正孔輸送化合物を第一の電極22に吸着させて単分子層を形成させることにより、正孔輸送層25を形成することができる。前記単分子正孔輸送化合物を第一の電極22に吸着させて単分子層を形成させる方法は、特に限定されないが、例えば、前記単分子正孔輸送化合物を溶媒に溶解し、第一の電極22と接触させ結合させればよい。前記単分子正孔輸送化合物と第一の電極22との結合は、特に限定されず、物理的な結合であっても化学的な結合であっても構わない。前記結合の種類は、特に限定されず、例えば、水素結合、エステル結合、キレート結合等の何れであっても構わない。前記単分子正孔輸送化合物を溶解させるための前記溶媒は、特に限定されず、例えば、水及び有機溶媒の一方でもよいし、両方でもよい。前記溶媒は、より具体的には、例えば、水;メタノール、エタノール、2-プロパノール等のアルコール類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸イソブチル、γ-ブチロラクトン等のエステル類;テトラヒドロフラン、チオフェン等のヘテロ環類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;ジエチルスルホン、スルホラン等のスルホン類;アセトニトリル、3-メトキシプロピオニトリル等のニトリル類;ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族化合物類;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒;クロロフロロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン等のフッ素系溶媒等が挙げられる。前記溶媒は、単独で用いても2種類以上の混合で用いても構わない。
【0077】
前記単分子正孔輸送化合物を第一の電極22に吸着させて単分子層を形成させる具体的な方法は、特に限定されないが、例えば、ディッピング法、スプレー法、スピンコ-ト法、及びバーコート法等の既知の方法が挙げられる。前記吸着させる際の温度は、特に限定されないが、-20℃~100℃が好ましく、0℃~50℃がより好ましい。前記吸着させる時間は、特に限定されないが、例えば、1秒~48時間が好ましく、10秒~1時間がより好ましい。前記吸着処理後は、例えば、洗浄を行ってもよいし、行わなくてもよい。前記洗浄の方法は、特に限定されないが、例えば、公知の方法を適宜用いてもよい。
【0078】
前記吸着処理後、又は前記洗浄後には、加熱処理を行ってもよいし、行わなくてもよい。前記加熱処理の温度は、例えば、50℃~150℃が好ましく、70℃~120℃がより好ましい。前記加熱処理の時間は、例えば、1秒~48時間が好ましく、10秒~1時間がより好ましい。前記加熱処理は、例えば、大気下で行なってもよいし、真空中で行なってもよい。
【0079】
前記単分子正孔輸送化合物を第一の電極22に吸着させる際には、例えば、共吸着剤を併用してもよいし、併用しなくてもよい。前記共吸着剤は、例えば、前記単分子正孔輸送化合物だけでは電極表面を完全に被覆できない場合や、前記単分子正孔輸送化合物同士の相互作用を阻害する目的で添加することができる。
【0080】
前記共吸着剤は、特に限定されないが、例えば、n-ブチルホスホン酸、n-ヘキシルホスホン酸、n-デシルホスホン酸、n-オクタデシルホスホン酸、2-エチルヘキシルホスホン酸、メトキシメチルホスホン酸、3-アクリロイルオキシプロピルホスホン酸、11-ヒドロキシウンデシルホスホン酸、1H,1H,2H,2H-パーフルオロホスホン酸等のホスホン酸化合物、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、ノナン酸、フルオロ酢酸、α-クロロプロピオン酸、グリオキシル酸、及びケノデオキシコール酸等を挙げることができる。前記共吸着剤は、単独で用いても2種類以上の混合で用いても構わない。
【0081】
前記共吸着剤を第一の電極22に吸着させる方法は、特に限定されないが、前記単分子正孔輸送化合物と同様に、溶媒に溶解してから吸着させる方法が好ましい。前記溶媒は、特に限定されないが、例えば、前記単分子正孔輸送化合物について例示した前述の溶媒と同様でもよい。前記共吸着剤は、前記単分子正孔輸送化合物を一度基板に吸着させた後に、前記共吸着剤を溶解した溶媒に第一の電極22を浸漬して吸着させてもよいし、前記単分子正孔輸送化合物と一緒に有機溶媒に混合して溶解したものを用いてもよい。
【0082】
[光電変換層14、24]
光電変換層14、24は、特に限定されず、例えば、一般的な太陽電池等の光電変換モジュールに用いられる光電変換層と同様でもよい。光電変換層14、24は、例えば、ペロブスカイト化合物を含む。前記ペロブスカイト化合物は、例えば、下記化学式(IV)で表される化合物であってもよい。
XαYβZγ (IV)
【0083】
前記化学式(IV)において、α:β:γの比率は、例えば、3:1:1であり、Xはハロゲンイオン、Yは1価のカチオン、Zは2価のカチオンを表す。前記ペロブスカイト層は、電子輸送層に隣接して配置されることが好ましい。なお、α:β:γの比率は、例えば、3:1.05:0.95、3:0.95:1.05のように、必ずしも3:1:1である必要はない。α:β:γの比率は、例えば、3:(0.95~1.05):(0.95~1.05)である。
【0084】
前記化学式(IV)において、Xは、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩素、臭素、及びヨウ素等のハロゲンイオンが挙げられる。前記ハロゲンイオンは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0085】
前記化学式(IV)において、Yは、例えば、メチルアンモニウムカチオン、エチルアンモニウムカチオン、n-ブチルアンモニウムカチオン、ホルムアミジニウムカチオン等のアルキルアミン化合物イオン(アミノ基を有する有機化合物)や、有機に限らず、セシウムカチオン、カリウムカチオン、ルビジウムカチオン等のアルカリ金属イオンが挙げられる。前記アルキルアミン化合物イオン及び前記アルカリ金属イオンは、それぞれ1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、有機(アルキルアミン化合物イオン)と無機(アルカリ金属イオン)とを併用することもでき、例えば、セシウムイオンとホルムアミジンを併用してもよい。
【0086】
前記化学式(IV)において、Zは、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、鉛、インジウム、アンチモン、スズ、銅、ビスマス、ゲルマニウム等の2価の金属イオン等が挙げられる。前記2価の金属イオンは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記2価の金属イオンは、特に、鉛が好ましく、さらには、特に鉛とスズの併用が好ましい。
【0087】
光電変換層14、24は、前述の通り、ペロブスカイト化合物から形成されたものであってもよい。ペロブスカイト層を形成する方法は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ハロゲン化金属及びハロゲン化アルキルアミンを、溶解又は分散させた溶液を塗布した後に乾燥する方法等が挙げられる。
【0088】
また、前記ペロブスカイト層を形成する方法は、例えば、ハロゲン化金属を溶解又は分散させた溶液を塗布、乾燥した後、ハロゲン化アルキルアミンを溶解させた溶液中に浸して、ペロブスカイト化合物を形成する二段階析出法等が挙げられる。
【0089】
前記ペロブスカイト層を形成する方法は、他に、例えば、ハロゲン化金属及びハロゲン化アルキルアミンを溶解又は分散した溶液を塗布しながら、ペロブスカイト化合物にとっての貧溶媒(溶解度が小さい溶媒)を加えて結晶を析出させる方法等が挙げられる。また、前記ペロブスカイト層を形成する方法は、他に、例えば、メチルアミン等が充満したガス中において、ハロゲン化金属を蒸着する方法等が挙げられる。
【0090】
前記ペロブスカイト層を形成する方法は、ハロゲン化金属及びハロゲン化アルキルアミンを溶解又は分散した溶液を塗布しながら、ペロブスカイト化合物にとっての貧溶媒を加えて結晶を析出させる方法が特に好ましい。前記溶液を塗布する方法は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、浸漬法、スピンコート法、スプレー法、ディップ法、ローラ法、及びエアーナイフ法等が挙げられる。また、前記溶液を塗布する方法は、例えば、二酸化炭素等を用いた超臨界流体中で析出させる方法であってもよい。前記貧溶媒を加えて結晶を析出させる方法において、前記貧溶媒は、例えば、n-ヘキサン、n-オクタン等の炭化水素類;メタノール、エタノール、2-プロパノール等のアルコール類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸イソブチル、γ-ブチロラクトン等のエステル類;アセトニトリル、3-メトキシプロピオニトリル等のニトリル類;ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素化合物類;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒;クロロフロロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン等のフッ素系溶媒が挙げられる。
【0091】
前記ペロブスカイト層を形成する方法は、例えば、さらに、前記ペロブスカイト層を形成した後に溶媒を除去することを目的とした工程(溶媒除去工程)、又はペロブスカイト結晶を配置することを目的とした工程(結晶配置工程)を行っても良い。前記溶媒除去工程、及び前記結晶配置工程は、例えば、ドライエアー等を吹き付ける方法、ホットプレートやオーブン等で加熱する方法、真空乾燥する方法等を行ってもよい。前記溶媒除去工程、及び前記結晶配置工程において、加熱する温度は、例えば、50~200℃が好ましく、70~180℃がより好ましい。前記溶媒除去工程、及び前記結晶配置工程において、加熱する時間は、例えば、1~150分が好ましく、5~60分がより好ましい。また、光電変換層14、24の厚みは、特に限定されないが、欠陥や剥離による性能劣化をより抑制する観点から、例えば、50~1500nmが好ましく、200~1000nmがより好ましい。
【0092】
前記ペロブスカイト層を形成する方法は、例えば、1つ以上のカチオン及び1つ以上のアニオンから形成される塩を用いて、表面処理する工程(表面処理工程)を含んでも良い。前記カチオンは、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム等の無機カチオン;アンモニウムカチオン、メチルアミン、エチルアミン、n-ブチルアミン、イソペンチルアミン、ネオペンチルアミン、ホルムアミジン、アセトアミジン、ベンジルアミン、2-フェニルエチルアミン、2-(4-メトキシフェニル)エチルアミン、4-フルオロベンジルアミン、2-(4-フルオロフェニル)エチルアミン、1,4-フェニレンジアミン、5-アミノ吉草酸、メタミン、エチレンジアミン、p-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン、1,2-アダマンタンジアミン、1,3-アダマンタンジアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、グアニジン、アニリン、ピロール、イミダゾール、1-エチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、ベンズミダゾール、モルフォリン、ピロリジン、ピラゾール、トリアゾール、カルバゾール等のアミノ基を有する有機化合物;ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリン、フェナントロリン、2,2‘-ビピリジル、4,4’-ビピリジル等の窒素原子を含有するヘテロ環等から得られるカチオン等が挙げられる。前記アニオンは、例えば、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等のハロゲンイオン;ギ酸イオン、酢酸イオン等のカルボン酸イオン;イソシアナオートイオン、チオシアナートイオン、テトラフルオロボラートイオン、ヘキサフルオロリン酸イオン;トリフルオロメタンスルホニルイミドイオン等が挙げられる。
【0093】
前記カチオンと、前記アニオンとからなる塩は、例えば、1種以上の溶媒に溶解することが好ましい。前記溶媒は、例えば、イソプロパノール(2-プロパノール)、エタノール(EtOH)、メタノール(MeOH)、ブタノール等のアルコール類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類;トルエン、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン等の芳香族系溶媒等が挙げられる。前記溶媒は、例えば、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0094】
前記表面処理工程は、前記塩を溶解した溶液を、形成されたペロブスカイト層上に塗布、乾燥することで行う。前記溶液を塗布する方法は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、浸漬法、スピンコート法、スプレー法、ディップ法、ローラ法、及びエアーナイフ法等が挙げられる。前記表面処理工程において、前記塗布後に加熱処理を行ってもよく、加熱する場合、前記加熱の温度は、例えば、50~200℃が好ましく、70~180℃がより好ましい。前記加熱の時間は、例えば、1~150分が好ましく、5~60分がより好ましい。前記溶液を塗布する膜厚は、特に制限されない。
【0095】
[第二の電極16、26]
第二の電極16、26(例えば、裏面電極であってもよい)は、例えば、正孔輸送層又は電子輸送層を介して、光電変換層14、24から正孔又は電子を取り出す機能を有する層である。
【0096】
第二の電極16、26は、前記順型構造の場合は正孔輸送層15上に直接形成してもよく、前記逆型構造の場合は電子輸送層23上に直接形成してもよい。また、第二の電極16、26の材質は、特に限定されず、例えば、第一の電極12、22と同様の材質を用いることができる。第二の電極16、26において形状、構造、及び大きさは、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。第二の電極16、26の材質は、例えば、金属、炭素化合物、導電性金属酸化物、及び導電性高分子等が挙げられる。前記金属は、例えば、白金、金、銀、銅、及びアルミニウム等が挙げられる。前記炭素化合物は、例えば、グラファイト、フラーレン、カーボンナノチューブ、及びグラフェン等が挙げられる。前記導電性金属酸化物は、例えば、ITO、IZO、FTO、及びATO等が挙げられる。前記導電性高分子は、例えば、ポリチオフェン、及びポリアニリン等が挙げられる。また、第二の電極16、26の形成に用いられる材料は、例えば、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0097】
第二の電極16、26は、用いられる材料の種類や、正孔輸送層15又は電子輸送層23の種類により、適宜正孔輸送層15又は電子輸送層23上に塗布、ラミネート、真空蒸着、CVD、スパッタ、及び貼り合わせ等の方法を用いることにより形成可能である。
【0098】
また、本開示の光電変換モジュールにおいて、第一の電極12又は22、及び第二の電極16又は26の少なくとも一方は、実質的に透明であることが好ましい。本開示の光電変換モジュールを使用する際には、電極を透明にして、入射光を電極側から入射させることが好ましい。この場合、裏面電極(透明電極と反対側の電極であり、例えば、前記第二の電極)には光を反射させる材料を使用することが好ましく、金属、導電性酸化物を蒸着したガラス、プラスチック、及び金属薄膜等が好ましく用いられる。また、入射光側の電極に反射防止層を設けることも有効な手段である。
【0099】
さらに、本開示の光電変換モジュールの構成は、
図1、あるいは
図2の構成に限定されない。例えば、支持体11が、
図1とは逆側(
図1で第二の電極16の上側)に配置されており、支持体11上に、第二の電極16、電子輸送層15、光電変換層14、正孔輸送層13、及び第一の電極12が、この順序で積層されていてもよい。また、例えば、前述の通り、支持体11、第一の電極12、正孔輸送層13、光電変換層14、電子輸送層15、及び第二の電極16の各層間に、他の構成要素が存在していてもよいし、存在していなくてもよい。また、第一の電極12が透明電極で第二の電極16が裏面電極である例について説明したが、本開示の光電変換モジュールは、これに限定されない。例えば、本開示の光電変換モジュールにおいて、逆に、第一の電極が裏面電極で第二の電極が透明電極であってもよい。
【0100】
本開示の光電変換モジュールの総厚は、使用する支持体の厚みに応じて適宜変更可能である。
【0101】
[封止]
本開示の光電変換モジュール(例えば、太陽電池)は、水や酸素からデバイス守るために封止することが好ましい。封止の構造は、特に限定されないが、例えば、一般的な光電変換モジュール(例えば、太陽電池)と同様でもよく、具体的には、例えば、本開示の光電変換モジュールの外周部のみに封止部材を塗布してガラスやフィルムで覆ってもよく、本開示の光電変換モジュールの全面に封止部材を塗布してガラスやフィルムで覆ってもよく、本開示の光電変換モジュールの全面に封止部材を塗布したのみでもよい。
【0102】
前記封止部材の材質は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エポキシ樹脂やアクリル樹脂を用い、硬化させることが好ましいが、硬化していなくても、一部だけが硬化していても構わない。
【0103】
前記エポキシ樹脂は、特に限定されないが、例えば、水分散系、無溶剤系、固体系、加熱硬化型、硬化剤混合型、及び紫外線硬化型等が挙げられ、これらの中でも熱硬化型及び紫外線硬化型が好ましく、紫外線硬化型がより好ましい。なお、前記エポキシ樹脂が紫外線硬化型であっても、加熱を行うことは可能であり、紫外線硬化した後であっても加熱を行うことが好ましい。前記エポキシ樹脂は、具体的には、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ノボラック型、環状脂肪族型、長鎖脂肪族型、グリシジルアミン型、グリシジルエーテル型、及びグリシジルエステル型等が挙げられ、これらは、単独で使用してもよいし、2種以上の併用であってもよい。また、前記エポキシ樹脂は、必要に応じて硬化剤や各種添加剤を混合することが好ましい。既に市販されているエポキシ樹脂組成物を、本開示において使用することができる。前記市販されているエポキシ樹脂組成物は、太陽電池や有機EL素子用途向けに開発、市販されているエポキシ樹脂組成物が挙げられ、本開示において特に有効に使用できる。前記市販されているエポキシ樹脂組成物は、例えば、TB3118、TB3114、TB3124、TB3125F(株式会社スリーボンド製)、WorldRock5910、WorldRock5920、WorldRock8723(協立化学産業株式会社製)、WB90US(P)、及びWB90US-HV(モレスコ社製)等が挙げられる。
【0104】
前記アクリル樹脂は、特に限定されないが、例えば、太陽電池や有機EL素子用途向けに開発、市販されているものを有効に使用できる。前記市販されているアクリル樹脂組成物は、例えば、TB3035B、及びTB3035C(株式会社スリーボンド製)等が挙げられる。
【0105】
前記硬化剤は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アミン系、酸無水物系、ポリアミド系、及びその他の硬化剤等が挙げられる。前記アミン系硬化剤は、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族ポリアミン;メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族ポリアミン等が挙げられる。前記酸無水物系硬化剤は、例えば、無水フタル酸、テトラ及びヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ピロメリット酸、無水ヘット酸、及びドデセニル無水コハク酸等が挙げられる。前記その他の硬化剤は、例えば、イミダゾール類、ポリメルカプタン等が挙げられる。前記硬化剤は、単独の使用であってもよいし、2種以上の併用であってもよい。
【0106】
前記添加剤は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、充填材(フィラー)、ギャップ剤、重合開始剤、乾燥剤(吸湿剤)、硬化促進剤、カップリング剤、可とう化剤、着色剤、難燃助剤、酸化防止剤、及び有機溶剤等が挙げられ、充填材、ギャップ剤、硬化促進剤、重合開始剤、及び乾燥剤(吸湿剤)が好ましく、充填材及び重合開始剤がより好ましい。前記添加剤として前記充填材を含有することにより、水分や酸素の浸入を抑制し、更には硬化時の体積収縮の低減、硬化時あるいは加熱時のアウトガス量の低減、機械的強度の向上、及び熱伝導性や流動性の制御等の効果を得ることができる。そのため、前記添加剤として前記充填材を含むことは、様々な環境で安定した出力を維持する上で非常に有効である。
【0107】
また、光電変換モジュールの出力特性やその耐久性に関しては、侵入する水分や酸素の影響だけでなく、封止部材の硬化時あるいは加熱時に発生するアウトガスの影響が無視できない。特に、加熱時に発生するアウトガスの影響は、高温環境保管における出力特性に大きな影響を及ぼす。前記封止部材に前記充填材、前記ギャップ剤、前記乾燥剤を含有させることにより、これら自身が水分や酸素の浸入を抑制できるほか、前記封止部材の使用量を低減できることにより、アウトガスを低減させる効果を得ることができる。前記封止部材に前記充填材、前記ギャップ剤、前記乾燥剤を含有させることは、硬化時だけでなく、光電変換モジュールを高温環境で保存する際にも有効である。
【0108】
前記充填材は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結晶性あるいは不定形のシリカ、タルク等のケイ酸塩鉱物、アルミナ、窒化アルミ、窒化珪素、珪酸カルシウム、及び炭酸カルシウム等の無機系充填材等が挙げられ、特にハイドロタルサイトが好ましい。前記充填材は、単独の使用であってもよいし、2種以上の併用であってもよい。
【0109】
前記充填材の平均一次粒径は、特に限定されないが、0.1μm以上10μm以下が好ましく、1μm以上5μm以下がより好ましい。前記充填材の平均一次粒径が上記の好ましい範囲内であると、水分や酸素の侵入を抑制する効果を十分に得ることができ、粘度が適正となり、基板との密着性や脱泡性が向上し、封止部の幅の制御や作業性に対しても有効である。
【0110】
前記充填材の含有量は、封止部材全体(100質量部)に対し、10質量部以上90質量部以下が好ましく、20質量部以上70質量部以下がより好ましい。前記充填材の含有量が上記の好ましい範囲内であることにより、水分や酸素の浸入抑制効果が十分に得られ、粘度も適正となり、密着性や作業性も良好となる。
【0111】
前記ギャップ剤は、ギャップ制御剤あるいはスペーサー剤とも称される。前記添加剤として前記ギャップ剤を含むことにより、封止部のギャップを制御することが可能になる。例えば、基板又は第一の電極の上に、封止部材を付与し、その上に第二の基板を載せて封止を行う場合、封止部材がギャップ剤を混合していることにより、封止部のギャップがギャップ剤のサイズに揃うため、容易に封止部のギャップを制御することができる。
【0112】
前記ギャップ剤は、特に限定されないが、例えば、粒状でかつ粒径が均一であり、耐溶剤性や耐熱性が高いものが好ましく、目的に応じて適宜選択することができる。前記ギャップ剤は、エポキシ樹脂と親和性が高く、粒子形状が球形であるものが好ましい。前記ギャップ剤は、具体的には、ガラスビーズ、シリカ微粒子、有機樹脂微粒子等が好ましい。前記ギャップ剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。ギャップ剤の粒径は、設定する封止部のギャップに合わせて選択可能であるが、1μm以上100μm以下が好ましく、5μm以上50μm以下がより好ましい。
【0113】
前記重合開始剤は、特に限定されないが、例えば、熱や光を用いて重合を開始させる重合開始剤が挙げられ、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱カチオン重合開始剤、及び光カチオン重合開始剤等が挙げられる。前記熱重合開始剤は、加熱によってラジカルやカチオン等の活性種を発生する化合物であり、2,2’-アゾビスブチロニトリル(AIBN)のようなアゾ化合物や、過酸化ベンゾイル(BPO)等の過酸化物等が挙げられる。前記熱カチオン重合開始剤は、例えば、ベンゼンスルホン酸エステル、アルキルスルホニウム塩等が用いられる。前記光カチオン重合開始剤は、例えば、エポキシ樹脂の場合、光カチオン重合開始剤が好ましく用いられる。エポキシ樹脂に光カチオン重合開始剤を混合し、光照射を行うと、前記光カチオン重合開始剤が分解して、酸を発生し、酸がエポキシ樹脂の重合を引き起こし、硬化反応が進行する。前記光カチオン重合開始剤は、硬化時の体積収縮が少なく、酸素阻害を受けず、貯蔵安定性が高いといった効果を有する。
【0114】
前記光カチオン重合開始剤は、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタセロン化合物、及びシラノール・アルミニウム錯体等が挙げられる。前記重合開始剤として、光を照射することにより酸を発生する機能を有する光酸発生剤も使用できる。前記光酸発生剤は、カチオン重合を開始する酸として作用し、カチオン部とアニオン部からなるイオン性のスルホニウム塩系やヨードニウム塩系等のオニウム塩等が挙げられる。前記光酸発生剤は、単独の使用であってもよいし、2種以上の併用であってもよい。
【0115】
前記重合開始剤の添加量は、特に限定されず、使用する材料によって異なる場合があるが、封止部材全体(100質量部)に対し、0.5質量部以上10質量部以下が好ましく、1質量部以上5質量部以下がより好ましい。前記添加量が上記の好ましい範囲内であることにより、硬化が適正に進み、未硬化物の残存を低減することができ、またアウトガスが過剰になるのを防止できる。
【0116】
前記乾燥剤(吸湿剤とも称される)は、水分を物理的あるいは化学的に吸着、吸湿する機能を有する材料であり、封止部材に含有させることにより、耐湿性を更に高め、アウトガスの影響を低減できる。前記乾燥剤は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、粒子状であるものが好ましく、例えば、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、シリカゲル、モレキュラーシーブ、及びゼオライト等の無機吸水材料が挙げられ、吸湿量が多いゼオライトが好ましい。前記乾燥剤は、単独の使用であってもよいし、2種以上の併用であってもよい。
【0117】
前記硬化促進剤(硬化触媒とも称される)は、硬化速度を速める材料であり、主に熱硬化型のエポキシ樹脂に用いられる。前記硬化促進剤は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、DBU(1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7)やDBN(1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)-ノネン-5)等の三級アミンあるいは三級アミン塩;1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾールや2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール系;トリフェニルホスフィンやテトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等のホスフィンあるいはホスホニウム塩等が挙げられる。前記硬化促進剤は、単独の使用であってもよいし、2種以上の併用であってもよい。
【0118】
前記カップリング剤は、分子結合力を高める効果を有する材料であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シランカップリング剤等が挙げられる。前記カップリング剤は、具体的には、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N-(2-(ビニルベンジルアミノ)エチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、及び3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。前記カップリング剤は、単独の使用であってもよいし、2種以上の併用であってもよい。
【0119】
本開示において、例えば、シート状接着剤を用いることができる。前記シート状接着剤は、例えば、シート上に予め樹脂層を形成したもので、前記シートにはガラスやガスバリア性の高いフィルム等を用いることができる。また、封止樹脂のみで前記シートを形成していてもよい。前記シート状接着剤は、封止フィルム上に貼り付けることも可能である。前記封止フィルム上に、中空部を設けた構造にしてからデバイスと貼り合せることも可能である。
【0120】
前記封止フィルムを用いて封止する場合、光電変換デバイスを挟むように支持体と対向して配置される。前記封止フィルムの基材において、形状、構造、大きさ、及び種類は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。前記封止フィルムは、基材の表面に水分や酸素の通過を防ぐバリア層を形成しており、基材の一方の面だけでも両面に形成されていてもよい。
【0121】
前記バリア層は、例えば、金属酸化物、金属、高分子と金属アルコキシドより形成された混合物等を主成分とする材質で構成されていてもよい。前記金属酸化物は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、及びアルミニウム等が挙げられる。前記高分子は、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース等が挙げられる。前記金属アルコキシドは、例えば、テトラエトキシシラン、トリイソプロポキシアルミニウム、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0122】
前記バリア層は、例えば、透明であっても不透明であっても構わない。また、前記バリア層は、上記材料からの組合せによる単層であっても、複数の積層構造であっても構わない。前記バリア層の形成方法は、既知の方法を用いることができ、スパッタ法等の真空製膜、ディッピング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法、及びグラビア印刷法等の塗布方法を使用することができる。
【0123】
[配線]
本開示の光電変換モジュール(例えば太陽電池)は、光によって発生した電流を効率的に取り出すため、電極、及び裏面電極にリード線(配線)を接続することが好ましい。前記リード線は、例えば、前記第一の電極及び前記第二の電極と、はんだ、銀ペースト、グラファイトのような導電性材料を用いて接続される。前記導電性材料は、単独でも2種以上の混合又は積層構造で用いても構わない。また、前記リード線を取り付けた部位は、物理的な保護の観点から、アクリル系樹脂やエポキシ系樹脂で覆っても構わない。
【0124】
前記リード線は、電気回路における電源や電子部品等を電気的に接続するための電線の総称であり、例えば、ビニール線、エナメル線等を挙げることができる。
【0125】
[アプリケーション]
本開示の光電変換モジュールの用途及び使用方法は、特に限定されず、例えば、一般的な光電変換モジュール(例えば、一般的な太陽電池)と同様の用途に広く用いることができる。本開示の光電変換モジュール(例えば、太陽電池)は、例えば、発生した電流を制御する回路基盤等と組み合わせることにより電源装置へ応用することができる。電源装置を利用している機器類としては、例えば、電子卓上計算機やソーラー電波腕時計等が挙げられる。また、携帯電話、電子ペーパー、温湿度計等に本開示の光電変換モジュールを電源装置として適用することも可能である。また、充電式や乾電池式の電気器具の連続使用時間を延ばすための補助電源や、二次電池と組み合わせることによって夜間使用等にも応用可能である。また、電池交換や電源配線等が不要な自立型電源としても利用可能である。
【実施例0126】
以下、本開示の実施例について説明する。ただし、本開示は、以下の実施例に限定されない。
【0127】
[実施例1]
あらかじめ、
図6に示す形状にパターン化されたITOガラス基板41上に、 下記化学式(V)で表される化合物(0.1mmol/L)と、4-ホスホノブチル酸(12mmol/L)とを溶解したDMF溶液を載せ、スピンコーター(3,000rpm、30秒)を用いて塗布し、次いでホットプレート上で100℃、10分加熱乾燥を行い、前記第一の電極42上に単分子正孔輸送層を形成した(図示せず)。次に、ヨウ化セシウム(0.738g)、ヨウ化ホルムアミジン(7.512g)、臭化メチルアミン(0.905g)、ヨウ化鉛(23.888g)、臭化鉛(1.022g)を、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF、40.0mL)、及びジメチルスルホキシド(DMSO、12.0mL)に溶解させ、溶解した溶液を、スピンコートを用いて前記基板上に製膜した。前記スピンコートは、回転数を3000rpmとし、スピンコート開始から30秒後にクロロベンゼン(0.3mL)を前記基板のコート層上に滴下した。その後、150℃で10分加熱し、光電変換層としてペロブスカイト層を得た。次いで、C60を20nm(電子輸送層)、バソキュプロイン(BCP、8nm)(電子注入層)を真空蒸着にて製膜した(図示せず)。その後、レーザー加工装置を用いて光電変換層(ペロブスカイト層)のエッチング(除去)を行い、
図7に示すような光電変換層(ペロブスカイト層)43のパターンを形成した。最後に、真空蒸着によってAgを70nm形成し、レーザー加工装置を用いて第二の電極44のエッチング(除去)を行い、
図8に示すような形状の光電変換モジュール(ペロブスカイト太陽電池モジュール)を得た。そして最後に、
図9に示すように、帯状のセルを横断する方向にレーザー加工を行った。この時、第一の電極42をレーザー加工によってエッチングしないように加工を行った。なお、下記化学式(V)の化合物の合成例は後述する。
【0128】
【0129】
上述の手順で作製した光電変換モジュールに、AM1.5G相当のエアマスフィルターを組み合わせたソーラーシュミレーター(分光計器社製SMO-250III型、光量100mW/cm2)を照射し、ソースメーター(ケースレー製2400型)を用いて電圧と電流を測定した。その結果を表1に示す。
【0130】
[比較例1]
実施例1における帯状のセルを横断する方向へのレーザー加工を行う前に特性評価した(
図8に相当)。得た光電変換モジュールを実施例1と同様にして光電変換特性を測定した結果を表1に示す。
【0131】
[実施例2]
あらかじめ、
図6に示す形状にパターン化されたITOガラス基板41上に、コロイド状のSnO
2水溶液(アルファエーサー社製)をスピンコートで塗布し、100℃で乾燥させ、電子輸送層を得た(図示せず)。なお、本実施例ではガラス基板を用いたが、他の基板、例えば、実施形態記載のプラスチックフィルム等の基板を使用しても良い。前記基板を変更しても、本開示の光電変換モジュールの性能に差はなかった。次に、ヨウ化セシウム(0.738g)、ヨウ化ホルムアミジン(7.512g)、臭化メチルアミン(0.905g)、ヨウ化鉛(23.888g)、臭化鉛(1.022g)を、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF、40.0mL)及びジメチルスルホキシド(DMSO、12.0mL)に溶解させ、溶解した溶液を、スピンコートを用いて前記基板上に製膜した。スピンコートは、回転数を3000rpmとし、スピンコート開始から30秒後にクロロベンゼン(0.3mL)を前記基板のコート層上に滴下した。その後、150℃で10分加熱し、光電変換層としてペロブスカイト層を得た。次いで、spiro-OMeTAD(下記化学式(VI)に化学構造を示す)(72.3mg)、[トリス(2-(1H-ピラゾール-1-イル)-4-tert-ブチルピリジン)コバルト(III)トリス(ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)](FK209、富士フィルム和光純薬株式会社、13.5mg)、4-tert-ブチルピリジン(28.8μL)、及びリチウムビス(トルフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSI、9.1mg)をクロロベンゼン(1mL)に溶解させ、溶解させた溶液の層を光電変換層上にスピンコートで形成し、70℃で30分間加熱乾燥させ、正孔輸送層を得た(図示せず)。その後、レーザー加工装置を用いて光電変換層(ペロブスカイト層)43のエッチング(除去)を行い、
図7に示すような光電変換層(ペロブスカイト層)43のパターンを形成した。最後に、真空蒸着によってAuを70nm形成し、レーザー加工装置を用いて第二の電極44のエッチング(除去)を行い、
図8に示すような形状の光電変換モジュール(ペロブスカイト太陽電池モジュール)を得た。そして最後に、
図9に示すように、帯状のセルを横断する方向にレーザー加工を行った。この時、第一の電極42をレーザー加工によってエッチングしないように加工を行った。得た光電変換モジュールを実施例1と同様にして光電変換特性を測定した結果を表1に示す。
【0132】
【0133】
[比較例2]
実施例2における帯状のセルを横断する方向へのレーザー加工を行う前に特性評価した(
図8に相当)。得た光電変換モジュールを実施例1と同様にして光電変換特性を測定した結果を表1に示す。
【0134】
【0135】
実施例1について、帯状セルを横断する加工を行うことで、3つのサンプルとも良好な特性を得ることができた。帯状セルの横断加工を行わなかった比較例1において、サンプルNo.(1)とNo.(3)は帯状セルの1つが、No.(2)は2つ分がショートしてしまい、ショートしたセルの数だけ開放電圧が低下していることが分かる。ショートの原因は様々な要因が考えられるが、製造過程において異物がデバイス表面に付着するケースなどが考えられる。
図10に示すように、ショート箇所が一つでも存在すると、存在するセル全てが影響を受けてしまうのに対し、
図11に示す本開示のように帯状セルの横断加工を行うことで、ショートの影響を受ける範囲が少なくなり、太陽電池全体への影響が少なくなり、良好な性能が得られることが明確である。比較例2の場合は、(1)がショートにより低下したセルが1か所、(2)と(3)がセル2か所ショートしているのに対して、実施例2のように、横断加工することで、性能低下の影響が極力少なくなることは実施例1と同様の結果であった。
【0136】
[実施例3]
実施例1と同様にして光電変換モジュールを作製した。得た光電変換モジュールにAM1.5G相当のエアマスフィルターを組み合わせたソーラーシュミレーター(光量100mW/cm2)を500時間連続照射した。連続照射試験前後の太陽電池特性を表2に示す。
【0137】
[比較例3]
比較例1と同様にして光電変換モジュールを10枚作製した。その中からショートしていないサンプルを1枚選定し、実施例3と同様の連続照射試験を行った。結果を表2に示す。
【0138】
【0139】
表2より、帯状セルを横断する加工を行った実施例3は、連続照射試験を行っても維持率が97.4%と、ほとんど特性に変化はなかったのに対して、比較例3は維持率が44.5%と大きく低下していることが確認された。低下している要因を観察すると、2セル分に相当する開放電圧が低下していることから、2セルにショート箇所が発現し、大きく特性低下したと考えられる。
【0140】
[実施例4]
実施例1における(I)で表される化合物(0.1mmol/L)と4-ホスホノブチル酸(12mmol/L)を溶解したDMF溶液の代わりに、下記(VII)で表される化合物(1.0mmol/L)を溶解したDMF溶液に変更した以外は実施例1と同様にして光電変換モジュールを作製した。また、得た光電変換モジュールは、実施例1と同様にして特性を評価した。評価結果を表3に示す。
【0141】
【0142】
[比較例4]
実施例4における帯状のセルを横断する方向へのレーザー加工を行う前に特性評価した(
図8に相当)。得た光電変換モジュールを実施例1と同様にして光電変換特性を測定した結果を表3に示す。
【0143】
【0144】
表3より、比較例4はセル1ヶ分に相当する開放電圧が低下しているのに対して、帯状セルを横断処理した実施例4からは、良好な特性が得られていることが明確である。
【0145】
以上のとおり、本開示の光電変換モジュールは、帯状セルに横断する加工を施すことで、ショートの影響を極力少なくし、良好な性能の光電変換モジュールを提供することが可能である。また、本開示の帯状セルを横断加工処理することで単分子正孔輸送材料を用いた時の連続照射試験における特性低下を抑制することが可能である。
【0146】
つぎに、4-PATATを含む、前記化学式(I)に含まれる化合物の合成例について説明する。以下の実施例において、収率(%)は、特に断らない限り、物質量(モル)を基準とした収率(モル%)である。また、NMR(核磁気共鳴)スペクトルは、Bruker社製AV400Mを用いて測定した。
【0147】
[実施例A1:4-PATATの合成]
以下の合成例1~3の手順で、本発明の化合物(前記化学式(I)で表される化合物)の1種である4-PATATを合成(製造)した。
【0148】
合成例1 4-Br-TATの合成(製造)
【0149】
【0150】
前記スキーム1中の化合物TAT(345mg)とN,N-ジメチルフォルムアミド(DMF、3.5ml)を三口フラスコに入れ、アルゴンガス気流下、室温で攪拌しながら水素化ナトリウム(144mg)をゆっくりと加えた。10分後、1,4-ジブロモブタン(3.24g)を室温で攪拌しながら加え、更に1.5時間攪拌を続けた。その後、水を加えて反応を停止し、ジクロロメタンで3回抽出した。抽出した有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去した。それにより得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:n-ヘキサン/ジクロロメタン=2/1~1/1(体積比))で生成し、白色結晶の4Br-TAT(前記スキーム1中の化学式参照)を526mg得た。収率は、原料のTATを基準として70%であった。
【0151】
合成例2 4-PAE-TATの合成(製造)
【0152】
【0153】
4Br-TAT(400mg)、亜リン酸トリエチル(1.06g)を三口フラスコに入れ、アルゴンガス気流下、150℃で19.5時間加熱攪拌した。室温まで冷却した後、過剰の亜リン酸トリエチルを減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、無色オイル状の4PAE-TAT(前記スキーム2中の化学式参照)を597mg得た。収率は、原料の4Br-TATを基準として定量的であった。
【0154】
合成例3 4-PATATの合成(製造)
【0155】
【0156】
4PAE-TAT(500mg)、ジクロロメタン(15mL)を三口フラスコに入れ、室温で攪拌しながら、アルゴンガス気流下、臭化トリメチルシラン(0.821mg)をゆっくり加えた。15時間後、メタノール(10mL)を加えて更に2時間攪拌を続けた。反応液をゆっくりと留去し、得た残渣をジクロロメタン/メタノール=20/1(体積比)の溶媒で抽出し、淡青色結晶の4PATAT(前記スキーム3中の化学式参照)を302mg得た。収率は、原料の4PAE-TATを基準として74%であった。4PATATの
1H-NMR(DMSO-D
6、400MHz)スペクトルを
図12に示す。
【0157】
[実施例A2:1-legged-3PATATの合成]
以下の合成例4~6の手順で、本発明の化合物(前記化学式(I)で表される化合物)の1種である1-legged-3PATATを合成(製造)した。
【0158】
合成例4 1-legged-3PAE-TATの合成(製造)
【0159】
【0160】
前記スキーム4中の化合物TAT(1.04g)、DMF(10ml)を三口フラスコに入れ、アルゴンガス気流下、室温で攪拌しながら水素化ナトリウム(144mg)をゆっくりと加えた。次いで、(3-ブロモプロピル)ホスホン酸ジエチル(3.90g)を滴下し、滴下終了後、65℃で加熱攪拌した。36時間後、反応を停止し、酢酸エチルで3回抽出した。抽出した有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン/メタノール=100/1~50/1(体積比))で生成し、1-legged-3PAE-TAT(前記スキーム4中の化学式参照)を240mg得た。収率は、原料であるTATを基準として15%であった。1-legged-3PAE-TATの
1H-NMR(DMSO-D
6、400MHz)スペクトルを
図13に示す。
【0161】
合成例5 1-legged-3PAEE-TATの合成(製造)
【0162】
【0163】
1-legged-3PAE-TAT(215mg)、ヨウ化エチル(0.141mg)、DMF(4.1mL)を三口フラスコに入れ、アルゴンガス気流下、室温、攪拌しながら水素化ナトリウム(43.4mg)をゆっくりと加えた。1.5時間攪拌を続け、水を加えて反応を停止し、酢酸エチルで抽出した。硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:トルエン)で精製し、茶色オイル状の1-legged-3PAEE-TAT(前記スキーム5中の化学式を参照)を147mg得た。収率は、原料の1-legged-3PAE-TATを基準として63%であった。
【0164】
合成例6 1-legged-3PATATの合成(製造)
【0165】
【0166】
1-legged-3PAEE-TAT(115mg)、ジクロロメタン(5.4mL)を三口フラスコに入れ、室温で攪拌しながら、アルゴンガス気流下、臭化トリメチルシラン(0.10mg)をゆっくり加えた。16時間後、メタノール(3.6mL)を加えて更に15時間攪拌を続けた。反応液をゆっくりと留去し、得た残渣をジクロロメタン/メタノール=20/1の溶媒(体積比)で抽出し、淡青色結晶の1-legged-3PATAT(前記スキーム6中の化学式参照)を93mg得た。収率は、原料の1-legged-3PAEE-TATを基準として89%であった。
【0167】
[実施例A3:1-legged-3PATAT-Hの合成]
以下の合成例7の手順で、本発明の化合物(前記化学式(I)で表される化合物)の1種である1-legged-3PATAT-Hを合成(製造)した。
【0168】
合成例7 1-legged-3PATAT-Hの合成
【0169】
【0170】
前記スキーム4で合成(製造)した1-legged-3PAE-TAT(150mg)、ジクロロメタン(3.2mL)を三口フラスコに入れ、室温で攪拌しながら、アルゴンガス気流下、臭化トリメチルシラン(0.052mg)をゆっくり加えた。22時間後、反応液をゆっくりと留去し、得た残渣をジクロロメタン/メタノール=10/1(体積比)の溶媒で抽出し、ジクロロメタンで洗浄し、淡青色結晶の1-legged-3PATAT-H(前記スキーム7中の化学式参照)を56.2mg得た。収率は、原料である1-legged-3PAE-TATを基準として42%であった。1-legged-3PATAT-Hの
1H-NMR(DMSO-D
6、400MHz)スペクトルを
図14に示す。また、1-legged-3PATAT-Hの質量分析をBruker社製TIMS-TOF(IMS-QTOF)にて測定した結果、m/z=466.1324[M]
-を得た。
【0171】
[実施例A4:1-legged-3PATATの合成]
以下の合成例8~9の手順で、本発明の化合物(前記化学式(I)で表される化合物)の1種である1-legged-3PATATを合成(製造)した。
【0172】
合成例8 2-legged-3PAH-TATの合成(製造)
【0173】
【0174】
TAT(345mg)、DMF(10ml)を三口フラスコに入れ、アルゴンガス気流下、室温で攪拌しながら水素化ナトリウム(48mg)をゆっくりと加えた。次いで、(3-ブロモプロピル)ホスホン酸ジエチル(0.57g)を滴下し、滴下終了後、70℃で加熱攪拌した。36時間後、反応を停止しし、ジクロロメタンで3回抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル/メタノール=1/1~10/1(体積比))で生成し、2-legged-3PAH-TAT(前記スキーム8中の化学式参照)を157mg得た。収率は、原料であるTATを基準として22%であった。2-legged-3PAH-TATの
1H-NMR(DMSO-D
6、400MHz)スペクトルを
図15に示す。
【0175】
合成例9 2-legged-3PATATの合成(製造)
【0176】
【0177】
2-legged-3PAH-TAT(47mg)、ジクロロメタン(2.8mL)を三口フラスコに入れ、室温で攪拌しながら、アルゴンガス気流下、臭化トリメチルシラン(0.124mg)をゆっくり加えた。23時間後、反応液をゆっくりと留去し、得た残渣をジクロロメタン/メタノール=10/1(体積比)の溶媒で抽出し、ジクロロメタンで洗浄し、淡青色結晶の2-legged-3PATAT(前記スキーム9中の化学式参照)を15mg得た。収率は、原料である2-legged-3PAH-TATを基準として37%であった。2-legged-3PATATの
1H-NMR(DMSO-D
6、400MHz)スペクトルを
図16に示す。また、1-legged-3PATAT-Hの質量分析をBruker社製TIMS-TOF(IMS-QTOF)にて測定した結果、m/z=588.1459[M]
-を得た。
【0178】
以上、実施形態及び実施例を用いて本開示を説明した。ただし、本開示は、以上において説明した実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、必要に応じて、任意にかつ適宜に組み合わせ、変更し、又は選択して採用できるものである。
以上説明したとおり、本開示によれば、帯状セルを横断する加工を行うことにより、良好な性能の光電変換モジュールを提供することができる。本開示の光電変換モジュールは、例えば、太陽電池として有用である。本開示の光電変換モジュールの用途及び使用方法は特に限定されず、例えば、一般的な光電変換モジュール(例えば、一般的な太陽電池)と同様の用途及び使用方法で、広範な分野に適用可能である。