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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131241
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】シート搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 3/52 20060101AFI20240920BHJP
   B41J 29/13 20060101ALI20240920BHJP
   B41J 29/08 20060101ALI20240920BHJP
   H04N 1/04 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B65H3/52 310Z
B41J29/13
B41J29/08 A
H04N1/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041377
(22)【出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】謝 添錦
【テーマコード(参考)】
2C061
3F343
5C072
【Fターム(参考)】
2C061AP07
2C061AQ06
2C061BB08
2C061BB19
2C061CD07
2C061CD11
2C061CD12
2C061CE05
2C061DF01
2C061DF05
2C061DF17
2C061DF24
2C061HJ02
3F343FA03
3F343FB01
3F343FC28
3F343GA02
3F343GB01
3F343GC01
3F343GD01
3F343HA01
3F343HA12
3F343JD04
3F343JD08
3F343JD32
3F343JD40
3F343KB05
3F343KB17
3F343LA16
5C072AA01
5C072NA01
(57)【要約】
【課題】シート搬送中のカバーの振動を防止する。
【解決手段】ADF装置10は、供給トレイ11と、搬送機構12と、ADFカバー13とを備える。搬送機構12は、分離ローラ33と、分離ローラ33と共にシートを把持する分離パッド34と、搬送用モータ51と、搬送用モータ51の駆動力を分離ローラ33に伝達する伝達機構52とを含む。分離パッド34は、ADFカバー13に上向きの荷重Fa、Fbが作用するように構成され、伝達機構52は、動作時に、ADFカバー13に下向き成分が荷重Fa、Fbより小さい荷重Fd、Fnが作用するように構成される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートが載置される載置台と、
上記シートを搬送する搬送機構と、
上記搬送機構を覆うカバーと、を備え、
上記搬送機構は、上記載置台に載置された上記シートを搬送路に沿って搬送するローラと、上記ローラに対向し、上記ローラと共に上記シートを把持する対向部材と、上記ローラを駆動するモータと、上記モータの駆動力を上記ローラに伝達する伝達機構と、を含み、
上記対向部材は、上記カバーに対して、第1向きに向く第1成分を有する第1荷重が作用するように構成され、
上記伝達機構は、上記モータの駆動力を上記ローラに伝達する間、上記カバーに対して、上記第1向きの反対向きである第2向きに向き、かつ、上記第1成分より小さい第2成分を有する第2荷重が作用するように構成されているシート搬送装置。
【請求項2】
上記伝達機構は、上記第2荷重の上記第2成分と、上記カバーの重量による荷重の上記第2向きに向く成分との和が、上記第1荷重の上記第1成分より小さくなるように構成されている請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項3】
上記カバーは、第1回転軸を中心として、上記搬送機構を覆う第1位置から上記搬送機構を露出させる第2位置へ移動する開く向きと、上記第2位置から上記第1位置へ移動する閉じる向きとに回動可能であり、
上記第1荷重は、上記カバーを上記開く向きに回動させるように作用し、
上記第2荷重は、上記カバーを上記閉じる向きに回動させるように作用する請求項2に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
上記第2荷重は、少なくとも、上記搬送路に沿って搬送される上記シートと上記対向部材と間の摩擦による第3荷重と、上記伝達機構から上記ローラに作用する第4荷重と、を含み、
上記伝達機構は、上記第4荷重が上記カバーを上記開く向きに回動させるように作用するように構成されている請求項3に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
上記伝達機構は、上記モータの駆動力により回転する第1ギヤと、上記ローラの回転軸である第2回転軸に取り付けられ、上記第1ギヤと係合する第2ギヤとを含み、
上記第1ギヤと上記第2ギヤとの係合により発生する荷重が上記開く向きに向くような位置に、上記第1ギヤが位置する請求項3に記載のシート搬送装置。
【請求項6】
上記伝達機構は、上記ローラを上記第2回転軸を中心として正回転および逆回転させ、
上記ローラが正回転する間、および上記ローラが逆回転する間に、上記第1ギヤと上記第2ギヤとの係合により発生する荷重が上記開く向きに向くような位置に、上記第1ギヤが位置する請求項5に記載のシート搬送装置。
【請求項7】
上記対向部材は、軟質材料で形成され、上記搬送路に沿って搬送される上記シートの一方の面に当接する分離パッドであり、上記ローラは、上記搬送路に沿って搬送される上記シートの他方の面に当接し、上記対向部材と協働して、上記搬送路に沿って搬送される上記シートを1枚ずつに分離する分離ローラである請求項1から6のいずれかに記載のシート搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレイに載置されたシートを搬送するシート搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、トレイに載置されたシートを画像の読み取り位置まで搬送するシート搬送装置が記載されている。特許文献1に記載のシート搬送装置では、給送ローラは、トレイに載置されたシートを搬送路へ送り込む。分離ローラは、分離パッドと協働して、搬送路へ送り込まれたシートを1枚ずつに分離する。第1搬送ローラとピンチローラとは、1枚ずつに分離されたシートを把持し、搬送方向の下流に向かって搬送する。このシート搬送装置は、搬送路を覆うカバーを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-077631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のシート搬送装置では、カバーに作用する荷重の向きが、装置の動作状態に応じて変化する。待機時、第1搬送ローラによる搬送時、および搬送終了後のローラ逆回転時には、カバーに対してカバーが開く向きに荷重が作用する。一方、シートの分離時、およびシートが分離ローラを通過した後の搬送時には、カバーに対してカバーが閉じる向きに荷重が作用する。このため、シート搬送中にカバーが上下方向(カバーが開く向きと閉じる向き)に振動することが問題になることがある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、シート搬送中のカバーの振動を防止できる手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明のシート搬送装置は、シートが載置される載置台と、上記シートを搬送する搬送機構と、上記搬送機構を覆うカバーと、を備えている。上記搬送機構は、上記載置台に載置された上記シートを搬送路に沿って搬送するローラと、上記ローラに対向し、上記ローラと共に上記シートを把持する対向部材と、上記ローラを駆動するモータと、上記モータの駆動力を上記ローラに伝達する伝達機構と、を含んでいる。上記対向部材は、上記カバーに対して、第1向きに向く第1成分を有する第1荷重が作用するように構成され、上記伝達機構は、上記モータの駆動力を上記ローラに伝達する間、上記カバーに対して、上記第1向きの反対向きである第2向きに向き、かつ、上記第1成分より小さい第2成分を有する第2荷重が作用するように構成されている。
【0007】
上記のシート搬送装置によれば、ローラの駆動時に、第1向きの第1成分を有する第1荷重と、第1成分より小さい反対向きの第2成分を有する第2荷重とがカバーに対して作用するように、伝達機構が構成されているので、ローラの駆動時と非駆動時とでカバーに作用する荷重の向きが同じになる。したがって、シート搬送中のカバーの振動を防止できる。
【0008】
(2) 好ましくは、上記伝達機構は、上記第2荷重の上記第2成分と、上記カバーの重量による荷重の上記第2向きに向く成分との和が、上記第1荷重の上記第1成分より小さくなるように構成されていてもよい。
【0009】
(3) 好ましくは、上記カバーは、第1回転軸を中心として、上記搬送機構を覆う第1位置から上記搬送機構を露出させる第2位置へ移動する開く向きと、上記第2位置から上記第1位置へ移動する閉じる向きとに回動可能であり、上記第1荷重は、上記カバーを上記開く向きに回動させるように作用し、上記第2荷重は、上記カバーを上記閉じる向きに回動させるように作用してもよい。
【0010】
(4) 好ましくは、上記第2荷重は、少なくとも、上記搬送路に沿って搬送される上記シートと上記対向部材と間の摩擦による第3荷重と、上記伝達機構から上記ローラに作用する第4荷重と、を含み、上記伝達機構は、上記第4荷重が上記カバーを上記開く向きに回動させるように作用するように構成されていてもよい。
【0011】
(5) 好ましくは、上記伝達機構は、上記モータの駆動力により回転する第1ギヤと、上記ローラの回転軸である第2回転軸に取り付けられ、上記第1ギヤと係合する第2ギヤとを含み、上記第1ギヤと上記第2ギヤとの係合により発生する荷重が上記開く向きに向くような位置に、上記第1ギヤが位置してもよい。
【0012】
(6) 好ましくは、上記伝達機構は、上記ローラを上記第2回転軸を中心として正回転および逆回転させ、上記ローラが正回転する間、および上記ローラが逆回転する間に、上記第1ギヤと上記第2ギヤとの係合により発生する荷重が上記開く向きに向くような位置に、上記第1ギヤが位置してもよい。
【0013】
(7) 好ましくは、上記対向部材は、軟質材料で形成され、上記搬送路に沿って搬送される上記シートの一方の面に当接する分離パッドであり、上記ローラは、上記搬送路に沿って搬送される上記シートの他方の面に当接し、上記対向部材と協働して、上記搬送路に沿って搬送される上記シートを1枚ずつに分離する分離ローラであってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、シート搬送中のカバーの振動を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施形態に係るADF装置10を備えた複合機100の概略構成図である。
図2図2は、ADF装置10およびFB部111の斜視図である。
図3図3(A)は、図2のA-A’面に沿った断面図であり、図3(B)は、図3(A)の部分拡大図である。
図4図4(A)は、図2のB-B’面に沿った断面図であり、図4(B)は、図4(A)の部分拡大図である。
図5図5(A)は、ADFカバー13にかかる荷重を示す模式図であり、図5(B)は、ADFカバー13にかかる他の荷重を示す模式図であり、図5(C)は、伝達機構52に含まれる連結ギヤ53および分離ギヤ54を示す図でる。
図6図6(A)は、待機時に分離ローラ33にかかる荷重を示す模式図であり、図6(B)は、シート分離時に分離ローラ33にかかる荷重を示す模式図であり、図6(C)は、第1搬送ローラ35による搬送時に分離ローラ33にかかる荷重を示す模式図であり、図6(D)は、ローラ逆回転時に分離ローラ33にかかる荷重を示す模式図である。
図7図7(A)は、ローラ正回転時の連結ギヤ53の限界位置を示す図であり、図7(B)は、ローラの逆回転時の連結ギヤ53の限界位置を示す図であり、図7(C)は、連結ギヤ53の位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係るシート搬送装置について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。以下の説明では、矢印の起点から終点に向かう進みが向きと表現され、矢印の起点と終点とを結ぶ線上の往来が方向と表現される。また、図1に示される複合機100が使用可能に設置された状態を基準として上下方向7が定義され、図1の紙面に直交する方向が前後方向8と称され、図1の横方向が左右方向9と称される。上下方向7、前後方向8、および左右方向9は、互いに直交している。
【0017】
[複合機100の構成]
本発明の実施形態に係るシート搬送装置は、例えば、図1に示される複合機100に設けられる。複合機100は、読取ユニット110と、本体ユニット120とを備えている。読取ユニット110は、本体ユニット120の上に位置する。読取ユニット110は、ADF(Automatic Document Feeder)装置10と、FB(Flatbed)部111とを備えている。ADF装置10は、FB部111の上に位置する。ADF装置10は、シート搬送装置の一例である。
【0018】
図1に示されるように、本体ユニット120は、扁平な箱状形状を有し、内部に画像形成部121を有する。画像形成部121は、インクジェット方式またはレーザ方式などにより、複合機100に接続された外部装置(例えば、パーソナルコンピュータ)から受信された画像データや、読取ユニット110で読み取られた画像データに基づき、シート(図示せず)に画像を記録する。
【0019】
FB部111は、上面にプラテンガラス112を有し、内部にイメージセンサ113と走査機構(図示せず)とを有する。イメージセンサ113は、例えば、CIS(Contact Image Sensor)やCCD(Charge Coupled Device)などの画像読み取りセンサである。イメージセンサ113は、プラテンガラス112のすぐ下に位置する。FB部111の前面には、操作部114が設けられている(図2参照)。
【0020】
[ADF装置10の動作の概要]
ADF装置10は、供給トレイ11と、搬送機構12と、ADFカバー13と、排出トレイ14とを備えている。ADF装置10は、左右方向9に延伸する回転軸17(図2参照)を中心として、FB部111の上面を覆う被覆位置と、FB部111の上面を露出させる露出位置との間で回動可能である。
【0021】
複合機100の利用者は、シートから画像を読み取るときに、ADF装置10を用いる場合と、ADF装置10を用いない場合とがある。利用者は、ADF装置10を用いずにシートから画像を読み取るときには、ADF装置10を露出位置に移動し、シートをプラテンガラス112上に載置する。その後、利用者は、ADF装置10を被覆位置に移動し、操作部114を操作して読み取り指示を入力する。走査機構は、読み取り指示に応じて、プラテンガラス112上のシートの範囲を含むように、イメージセンサ113を左右方向9に移動する。イメージセンサ113は、プラテンガラス112上に載置されたシートから画像を読み取る。
【0022】
利用者は、ADF装置10を用いてシートから画像を読み取るときには、ADF装置10を被覆位置に移動し、シートSを供給トレイ11上に載置する。供給トレイ11には、1枚または複数枚のシートSが載置される。その後、利用者は、操作部114を操作して読み取り指示を入力する。搬送機構12は、読み取り指示に応じて、供給トレイ11に載置されたシートSを搬送機構12内の搬送路21(図1参照)に沿って搬送し、排出トレイ14から排出する。搬送路21においてFB部111に最も近い位置のすぐ下には、搬送中のシートSをFB部111に対して露出する開口22が位置する。イメージセンサ113は、読み取り指示に応じて、開口22の下に移動し、その位置で搬送中のシートSから画像を読み取る。なお、シートSは、例えば、紙やOHPシートなど、任意のシート状部材である。
【0023】
[ADF装置10の構成]
図1および図2に示されるように、ADF装置10において、搬送機構12は左半分に位置し、供給トレイ11および排出トレイ14は右半分に位置する。排出トレイ14は、供給トレイ11の下方に位置する。供給トレイ11の上面、および排出トレイ14の上面は、左下がりの傾斜面である。供給トレイ11には、前後方向8にスライド可能なガイド部材15、16が設けられる(図2参照)。ガイド部材15、16は、互いに接近または離間することにより、供給トレイ11に載置された各種サイズのシートSを前後から挟む。供給トレイ11は、載置台の一例である。
【0024】
図2に示されるように、ADFカバー13は、供給トレイ11の左端とADF装置10の左端との間で、前後方向8および左右方向9に延在する略平板状の部材である。ADFカバー13の左端は、下向きに屈曲している。ADFカバー13は、搬送機構12を覆う。ADFカバー13は、カバーの一例である。
【0025】
図3(B)に示されるように、ADFカバー13は、左下部分において、前後方向8に延伸する回転軸23を中心として回動可能に支持されている。図3(B)において実線で示されるADFカバー13の位置は、搬送機構12を覆う位置である(以下、この位置は「第1位置」と称される)。図3(B)において破線で示されるADFカバー13の位置は、搬送機構12を露出させる位置である(以下、この位置は「第2位置」と称される)。ADFカバー13は、回転軸23を中心として、第1位置から第2位置へ移動する開く向きD1と、第2位置から第1位置へ移動する閉じる向きD2とに回動可能である。ADFカバー13が第1位置に位置するとき、ADFカバー13は、ロック機構(図示せず)によって、ADF装置10の本体部(ADFカバー以外の部分)に固定されている。回転軸23は、第1回転軸の一例である。
【0026】
[搬送機構12]
図3(A)は、図2のA-A’面に沿った断面図である。図3(B)は、図3(A)の部分拡大図である。図4(A)は、図2のB-B’面に沿った断面図である。図4(B)は、図3(A)の部分拡大図である。これらの図面には、後から視たADF装置10が記載されている。
【0027】
図3(B)に示されるように、搬送機構12は、ローラホルダ31、給送ローラ32、分離ローラ33、分離パッド34、第1搬送ローラ35、第1ピンチローラ36、第2搬送ローラ37、第2ピンチローラ38、および排紙ローラ39を含んでいる。
【0028】
ローラホルダ31は、給送ローラ32と分離ローラ33とを収容するホルダである。給送ローラ32、分離ローラ33、第1搬送ローラ35、第1ピンチローラ36、第2搬送ローラ37、第2ピンチローラ38、および排紙ローラ39は、いずれも、前後方向8に沿った回転軸を中心として回転するローラである。分離パッド34は、前後方向8に延在する平板状の部材である。
【0029】
給送ローラ32は、供給トレイ11の左端付近に位置する。分離ローラ33は、給送ローラ32の左上に位置する。分離パッド34は、分離ローラ33の下に左上がりに配置される。分離ローラ33と分離パッド34とは、斜め方向に対向する。第1搬送ローラ35は、分離ローラ33の左に位置する。第1ピンチローラ36は、第1搬送ローラ35の上に位置する。第1搬送ローラ35と第1ピンチローラ36とは、上下方向7に対向する。第2搬送ローラ37は、第1搬送ローラ35の左下に位置する。第2ピンチローラ38は、第2搬送ローラ37の左下に位置する。第2搬送ローラ37と第2ピンチローラ38とは、斜め方向に対向する。排紙ローラ39は、排出トレイ14の左端付近に位置する。
【0030】
搬送機構12内の必要な位置には、シートSを案内するガイド部材が設けられている。供給トレイ11に載置されたシートSは、給送ローラ32の下、分離ローラ33と分離パッド34との間、第1搬送ローラ35と第1ピンチローラ36との間、第2搬送ローラ37と第2ピンチローラ38との間、開口22の上、および排紙ローラ39の下を通過して、排出トレイ14に搬送される。このようにADF装置10は、図1に示される搬送路21を有する。
【0031】
給送ローラ32、分離ローラ33、第1ピンチローラ36、および第2ピンチローラ38、搬送中のシートSの一方の面(供給トレイ11に載置されたときの上面)に当接する。分離パッド34、第1搬送ローラ35、第2搬送ローラ37および排紙ローラ39は、搬送中のシートSの他方の面(供給トレイ11に載置されたときの下面。以下、裏面と称される)に当接する。図3(B)に示されるように、搬送路21の上半分より上に位置する要素(ローラホルダ31、給送ローラ32、分離ローラ33、および第1ピンチローラ36)は、ADFカバー13に固定されている。
【0032】
分離パッド34は、ゴムやエラストマーなどの軟質材料で形成されており、搬送中のシートSの裏面に当接する。分離パッド34は、分離バネ41(図5(A)参照)によって分離ローラ33に向けて付勢されている。分離ローラ33と分離パッド34とは、シートSを把持し、把持したシートSを搬送路21の下流に向けて搬送する。分離ローラ33は、分離パッド34と協働して、搬送路21に沿って搬送されるシートSを1枚ずつに分離する。分離ローラ33と分離パッド34との間を通過したシートSは、1枚ずつ搬送路21に沿って搬送される。
【0033】
第1ピンチローラ36は、搬送バネ42(図5(A)参照)によって上向きに付勢されている。第1搬送ローラ35と第1ピンチローラ36とは、シートSを把持し、把持したシートSを搬送路21の下流に向けて搬送する。同様に、第2搬送ローラ37と第2ピンチローラ38とは、シートSを把持し、把持したシートSを搬送路21の下流に向けて搬送する。分離ローラ33および第1搬送ローラ35は、ローラの一例である。分離パッド34および第1ピンチローラ36は、対向部材の一例である。
【0034】
[搬送用モータ51と伝達機構52]
搬送機構12は、図5(C)に示される搬送用モータ51と、伝達機構52とを含んでいる。搬送用モータ51は、給送ローラ32、分離ローラ33、第1搬送ローラ35、第2搬送ローラ37、および排紙ローラ39(以下、これらのローラは「駆動ローラ」と称される)を駆動するモータである。搬送用モータ51と駆動ローラとの間には、伝達機構52が介在する。伝達機構52は、ギヤやクラッチなどを含み、搬送用モータ51の駆動力を駆動ローラに伝達する。
【0035】
図5(C)に示されるように、伝達機構52は、連結ギヤ53と、連結ギヤ53と係合する分離ギヤ54とを含んでいる。図4(B)および図5(C)に示されるように、連結ギヤ53は前後方向8に延伸する回転軸55を有し、分離ギヤ54は前後方向8に延伸する回転軸56を有する。図5(A)から図5(C)に示されるように、分離ローラ33は、分離ギヤ54と同じ回転軸56を有する。搬送用モータ51は、モータの一例である。連結ギヤ53は、第1ギヤの一例である。分離ギヤ54は、第2ギヤの一例である。回転軸56は、第2回転軸の一例である。
【0036】
搬送用モータ51と連結ギヤ53との間には、図示しないギヤやクラッチなどが介在する。連結ギヤ53は、搬送用モータ51の駆動力により、回転軸55を中心として回転する。分離ローラ33と分離ギヤ54とは、搬送用モータ51から連結ギヤ53を介して駆動力を受けて、回転軸56を中心として回転する。分離ローラ33の回転向きは、分離ギヤ54の回転向きと同じで、連結ギヤ53の回転向きの反対である。給送ローラ32は、分離ローラ33と連動して回転する。給送ローラ32の回転向きは、分離ローラ33の回転向きと同じである。
【0037】
伝達機構52は、シート搬送時に給送ローラ32や分離ローラ33などを所定向きに回転させ、最終シートの搬送後に給送ローラ32や分離ローラ33などを逆向きに回転させる。図5(B)に示されるように、シート搬送時、伝達機構52は、連結ギヤ53を回転軸55を中心として時計回りに回転させ、分離ローラ33と分離ギヤ54とを回転軸56を中心として反時計回りに回転させる(正回転)。最後のシート搬送後に、伝達機構52は、連結ギヤ53を回転軸55を中心として反時計回りに回転させ、分離ローラ33と分離ギヤ54とを回転軸56を中心として時計回りに回転させる(逆回転)。
【0038】
[ADFカバー13にかかる荷重]
ADF装置10の待機時および動作時に、ADFカバー13には各種の荷重がかかる。ADF装置10の待機時、ADFカバー13には、分離バネ41からの荷重Fa、搬送バネ42からの荷重Fb、および、ADFカバー13の重量による荷重Fcがかかる(図5(A)参照)。また、分離ローラ33と分離パッド34によるシートの分離時、ADFカバー13には、シートと分離パッド34との間の摩擦による荷重Fd、および、分離ギヤ54からの正回転時の荷重Fnがかかる(図5(B)参照)。ADF装置10の待機時および動作時に、ADFカバー13に対してかかる荷重が変化すると、ADFカバー13は上下方向7に振動することがある。
【0039】
そこで、本実施形態に係るADF装置10は、シート搬送中のADFカバー13の振動を防止するために、ADFカバー13に対して常に同じ向きの荷重がかかるように構成される。具体的には、ADF装置10は、ADFカバー13に対して常にADFカバー13を開く向きD1に回動させる荷重がかかるように構成される。
【0040】
上述されたように、ADF装置10の待機時、ADFカバー13には荷重Fa、Fb、Fcがかかる(図6(A)参照)。ADF装置10は、分離バネ41による回転軸23周りのモーメント(荷重Faによる回転モーメント)と搬送バネ42による回転軸23周りのモーメント(荷重Fbによる回転モーメント)との和が、ADFカバー13の重量による回転軸23周りのモーメント(荷重Fcによるモーメント)より大きくなるように構成される。
【0041】
このためには、ADFカバー13の重量を軽くすればよい。例えば、ADFカバー13を軽い材料で形成したり、ADFカバー13の厚さを薄くしたり、ADFカバー13に開口を設けたりすることにより、ADFカバー13の重量を軽くできる。また、回転軸23から遠い部分の重量は回転モーメントに大きな影響を与えるので、ADFカバー13のうち回転軸23から遠い部分の厚さを薄くしたり、遠い部分に開口を設けたりしてもよい。
【0042】
上述されたように、分離ローラ33と分離パッド34とによるシートの分離時、ADFカバー13には荷重Fa、Fb、Fcに加えて、荷重Fd、Fnがかかる(図6(B)参照)。ADF装置10は、分離バネ41による回転軸23周りのモーメント(荷重Faによる回転モーメント)と分離ギヤ54による回転軸23周りのモーメント(正回転時の荷重Fnによる回転モーメント)との和が、分離パッド34との間の摩擦荷重による回転軸23周りのモーメントより大きくなるように構成される。
【0043】
より詳細には、ADF装置10では、シート分離時に、ADFカバー13に対してADFカバー13を開く向きD1に回動させる荷重がかかるようにするために、伝達機構52は、正回転時の荷重FnがADFカバー13を開く向きD1に回動させるように作用するように構成される。
【0044】
図5(C)に示されるように、正回転時の荷重Fnは、連結ギヤ53と分離ギヤ54との係合により発生する荷重である。荷重Fnの向きは、連結ギヤ53と分離ギヤ54との位置関係と、各ギヤの歯の形状とによって決定される。分離ギヤ54の位置と、各ギヤの歯の形状とが既に決まっている場合、荷重Fnの向きは連結ギヤ53の位置によって決定される。例えば、連結ギヤ53を後述する図7(C)に示される位置に配置することにより、荷重Fnの向きをADFカバー13を開く向きD1に回動させる向きに設定できる。
【0045】
以下、荷重Fa、Fbを合わせた荷重を「第1荷重」、荷重Fd、Fnを合わせた荷重を「第2荷重」と称する。連結ギヤ53を図7(C)に示される位置に配置することにより、第2荷重の下向き成分を第1荷重の上向き成分より小さくし、第2荷重の下向き成分とADFカバー13の重量による荷重の下向き成分との和を第1荷重の上向き成分より小さくする。
【0046】
このように伝達機構52は、搬送用モータ51の駆動力を分離ローラ33などに伝達する間、ADFカバー13に対して第1荷重の上向き成分より小さい下向き成分を有する第2荷重が作用するに構成されている。また、伝達機構52は、第2荷重の下向き成分とADFカバー13の重量による荷重の下向き成分との和が第1荷重の上向き成分より小さくなるように構成されている。以上の説明において、上向き成分は、第1向きの第1成分の一例である。下向き成分は、第2向きの第2成分の一例である。荷重Fdは、第3荷重の一例である。荷重Fnは、第4荷重の一例である。
【0047】
シートSの先端が第1搬送ローラ35と第1ピンチローラ36とによって把持された以降、シートSは第1搬送ローラ35によって搬送される。第1搬送ローラ35の回転速度は、分離ローラ33の回転速度より速い。このため、第1搬送ローラ35による搬送時、シートと分離パッド34との間の摩擦は小さくなり、摩擦による荷重Fd、および正回転時の荷重Fnは無視できる程度に小さくなる。このため、第1搬送ローラ35による搬送時、ADF装置10の待機時と同様に、ADFカバー13には荷重Fa、Fb、Fcがかかる(図6(C)参照)。このとき、ADF装置10の待機時と同様に、ADFカバー13に対して、ADFカバー13を開く向きD1に回動させる荷重がかかる。
【0048】
シートSの後端が分離ローラ33を通過すると、分離ローラ33と分離パッド34とにより次のシートが分離される。このとき、ADFカバー13には、図6(B)と同様に、荷重Fa、Fb、Fc、Fd、Fnがかかる。このとき、先のシート分離時と同様に、ADFカバー13に対して、ADFカバー13を開く向きD1に回動させる荷重がかかる。
【0049】
最後のシート搬送後に、伝達機構52は、給送ローラ32を逆回転させる。給送ローラ32と分離ローラ33とは連動して回転するので、このとき連結ギヤ53および分離ギヤ54も逆回転する。このため、ローラ逆回転時、ADFカバー13には、荷重Fa、Fb、Fcに加えて、分離ギヤ54からの逆回転時の荷重Frがかかる(図6(D)参照)。逆回転時の荷重Frの向きは、正回転時の荷重Fnの向きの逆向きである。ADF装置10では、ローラ逆回転時に、ADFカバー13に対してADFカバー13を開く向きD1に回動させる荷重がかかるようにするために、伝達機構52は、逆回転時の荷重FrがADFカバー13を開く向きD1に回動させるように作用させるように構成される。
【0050】
[連結ギヤ53の位置]
分離ギヤ54に対する連結ギヤ53の相対位置は、シート搬送時の条件(すなわち、ローラ正回転時の条件)と、ローラ逆回転時の条件との両方を満たすように決定される。図7(A)に示される連結ギヤ53の位置は、ローラ正回転時の条件を満たす限界位置である。これより低い連結ギヤ53の位置は、ローラ正回転時の条件を満たし、これより高い連結ギヤ53の位置は、ローラ正回転時の条件を満たさないとする。図7(B)に示される連結ギヤ53の位置は、ローラ逆回転時の条件を満たす限界位置である。これより時計回り向きに進んだ連結ギヤ53の位置は、ローラ逆回転時の条件を満たし、これより反時計回り向きに進んだ連結ギヤ53の位置は、ローラ逆回転時の条件を満たさないとする。
【0051】
図7(C)に示されるように、連結ギヤ53は、図7(A)に示される位置(図7(C)においてPaと記載)と、図7(B)に示される位置(図7(C)においてPbと記載)との間に配置される。連結ギヤ53は、例えば、位置Paと位置Pbのちょうど中間の位置に配置される。
【0052】
このように、連結ギヤ53は、分離ローラ33が正回転する間に連結ギヤ53と分離ギヤ54との係合により発生する正回転時の荷重Fn、および、分離ローラ33が逆回転する間に連結ギヤ53と分離ギヤ54との係合により発生する逆回転時の荷重Frの両方が、ADFカバー13を開く向きD1に向くような位置に位置する。
【0053】
[実施形態の作用効果]
以上に示されるように、本発明の実施形態に係るADF装置10(シート搬送装置)は、供給トレイ11(載置台)と、搬送機構12と、ADFカバー13(カバー)とを備えている。搬送機構12は、シートSを搬送するローラ(分離ローラ33、第1搬送ローラ35)と、ローラと共にシートSを把持する対向部材(分離パッド34、第1ピンチローラ36)と、搬送用モータ51と、伝達機構52とを含んでいる。対向部材は、ADFカバー13に対して、上向き(第1向き)の第1成分を有する第1荷重Fa、Fbが作用するように構成され、伝達機構52は、搬送用モータ51の駆動力をローラに伝達する間、ADFカバー13に対して、第1成分より小さい下向き(第2向き)の第2成分を有する第2荷重Fd、Fnが作用するように構成されている。
【0054】
このようなADF装置10によれば、分離ローラ33の駆動時に、上向きの第1成分を有する第1荷重と、第1成分より小さい下向きの第2成分を有する第2荷重とがADFカバー13に対して作用するように、伝達機構52が構成されているので、分離ローラ33の駆動時と非駆動時とでADFカバー13に作用する荷重の向きが同じになる。したがって、シートSの搬送中のADFカバー13の振動を防止できる。
【0055】
また、伝達機構52は、第2荷重の下向き成分と、ADFカバー13の重量による荷重Fcの下向き成分との和が、第1荷重の第1成分より小さくなるように構成されている。このようにADFカバー13の重量による荷重を含めて、ADFカバー13に作用する下向きの荷重が、ADFカバー13に作用する上向きの荷重より小さくなるように、伝達機構52が構成されているので、分離ローラ33の駆動時と非駆動時とでADFカバー13に作用する荷重の向きを同じにし、シートSの搬送中のADFカバー13の振動を防止できる。
【0056】
また、ADFカバー13は、回転軸23を中心として、開く向きD1と閉じる向きD2とに回動可能であり、第1荷重は、ADFカバー13を開く向きD2に回動させるように作用し、第2荷重は、ADFカバー13を閉じる向きD1に回動させるように作用する。したがって、ADFカバー13が開く向きD1と閉じる向きD2とに回動可能である場合に、分離ローラ33の駆動時および非駆動時に、ADFカバー13を開く向きD1に回動させる荷重をADFカバー13に作用させて、シートSの搬送中のADFカバー13の振動を防止できる。
【0057】
また、第2荷重は、少なくとも、シートSと分離パッド34と間の摩擦による荷重Fd(第3荷重)と、伝達機構52から分離ローラ33に作用する荷重Fn(第4荷重)と、を含み、伝達機構52は、荷重FnがADFカバー13を開く向きD1に回動させるように作用するように構成されている。このように第2荷重に含まれる荷重FnがADFカバー13を開く向きD1に回動させるように作用するので、ADFカバー13を開く向きD1に回動させる荷重をADFカバー13に作用させて、シートSの搬送中のADFカバー13の振動を防止できる。
【0058】
また、伝達機構52は、連結ギヤ53(第1ギヤ)と分離ギヤ54(第2ギヤ)とを含み、連結ギヤ53と分離ギヤ54との係合により発生する荷重Fdが開く向きD1に向くような位置に、連結ギヤ53が位置する。したがって、連結ギヤ53と分離ギヤ54との係合により発生する荷重FdがADFカバー13を開く向きD1に回動させるように作用するので、ADFカバー13を開く向きD1に回動させる荷重をADFカバー13に作用させて、シートSの搬送中のADFカバー13の振動を防止できる。
【0059】
また、伝達機構52は、分離ローラ33を回転軸55を中心として正回転および逆回転させ、分離ローラ33が正回転する間、および分離ローラ33が逆回転する間に、連結ギヤ53と分離ギヤ54との係合により発生する荷重Fn、Frが開く向きD1に向くような位置に、連結ギヤ53が位置する。したがって、分離ローラ33の正回転時および逆回転時に、連結ギヤ53と分離ギヤ54との係合により発生する荷重がADFカバー13を開く向きに回動させるように作用するので、ADFカバー13を開く向きに回動させる荷重をADFカバー13に作用させて、シートSの搬送中のADFカバー13の振動を防止できる。
【0060】
また、対向部材は分離パッド34であり、ローラは分離ローラ33である。したがって、搬送路21上でシートSを1枚ずつに分離するときに、分離ローラ33の駆動時と非駆動時とでADFカバー13に作用する荷重の向きを同じにし、シートS搬送中のADFカバー13の振動を防止できる。
【0061】
[変形例]
本発明の実施形態に係るシート搬送装置については、各種の変形例を構成できる。例えば、変形例に係るシート搬送装置は、図1に示される複合機100以外の装置に設けられてもよい。また、変形例に係るシート搬送装置は、図2に示される外観以外の外観を有していてもよく、図3などに示される断面構造以外の断面構造を有していてもよい。また、伝達機構52の構成は任意でよく、搬送用モータ51と連結ギヤ53との間には任意の部材が介在していてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10・・・ADF装置(シート搬送装置)
11・・・供給トレイ(載置台)
12・・・搬送機構
13・・・ADFカバー(カバー)
21・・・搬送路
23・・・回転軸(第1回転軸)
33・・・分離ローラ(ローラ)
34・・・分離パッド(対向部材)
35・・・第1搬送ローラ(ローラ)
36・・・第1ピンチローラ(対向部材)
51・・・搬送用モータ(モータ)
52・・・伝達機構
53・・・連結ギヤ(第1ギヤ)
54・・・分離ギヤ(第2ギヤ)
56・・・回転軸(第2回転軸)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7