(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024131469
(43)【公開日】2024-09-30
(54)【発明の名称】車両走行制御装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
G08G1/09 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041741
(22)【出願日】2023-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 正広
(74)【代理人】
【識別番号】100182051
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 直宏
(74)【代理人】
【識別番号】100179280
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 育郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180747
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 剛彦
(72)【発明者】
【氏名】溝口 雅人
(72)【発明者】
【氏名】小山 哉
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB05
5H181CC04
5H181CC05
5H181LL01
5H181LL04
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】信号機の青点灯を検出するための検出領域を用いる信号停止制御を改善する。
【解決方法】車両走行制御装置は、車両の外の信号機を撮像可能な車載カメラ、信号停止制御を実行可能な制御部、メモリ、を有する。制御部は、停止した時の車載カメラの撮像画像から、信号機の青点灯を検出するための画像中の検出領域を設定するとともに、画像中の基準物の情報をメモリに記録する。制御部は、検出範囲の設定後の撮像画像での基準物とメモリの基準物との差に基づいて、検出領域を調整し、調整した検出領域により信号機の青点灯を判断する。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられて、前記車両の外の信号機を撮像可能な車載カメラと、
前記車載カメラの撮像画像を解析して赤点灯している信号機の手前で停止する信号停止制御を実行可能な制御部と、
前記制御部が使用するメモリと、を有し、
前記制御部は、
停止した時の前記車両の前記車載カメラの撮像画像から、前記信号機の青点灯を検出するための画像中の検出領域を設定するとともに、画像中の基準物の情報を抽出して前記メモリに記録し、
検出範囲の設定後の前記車載カメラの撮像画像について前記検出領域において前記信号機の青点灯を判断して再発進するために、検出範囲の設定後の前記撮像画像での前記基準物と、前記メモリに記録されている停止時の前記撮像画像での前記基準物との差に基づいて、前記検出領域を調整する、
車両走行制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記基準物として、停止時の前記撮像画像において立設して撮像され得る立設基準物を抽出して、停止時の前記撮像画像での前記立設基準物の位置および範囲の情報を前記メモリに記録し、
検出範囲の設定後の前記撮像画像を横方向の1ライン分で解析することにより、検出範囲の設定後の前記撮像画像での前記立設基準物の位置および範囲を特定し、
前記立設基準物の横方向の位置の差に基づいて前記検出領域の位置を横方向へ移動させること、および、前記立設基準物の横方向の幅の差に基づいて前記検出領域の範囲を拡縮すること、の中の少なくとも横方向への位置移動を実行し、
調整後の前記検出領域を用いて、前記車載カメラの撮像画像での前記信号機の青点灯を判断する、
請求項1記載の、車両走行制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記信号機の青点灯を検出して前記車両を再発進させる制御を開始した後においても、前記検出領域の位置および範囲の中の少なくとも一方を調整して前記車載カメラの撮像画像での前記信号機の青点灯を判断し、
再発進制御を開始した後に前記検出領域において前記信号機が青点灯していないと判断する場合には、前記車両を再停止させる、
請求項1または2記載の、車両走行制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記検出領域を、停止時の撮像画像において前記信号機が撮像されている部分より小さい範囲であって、かつ、前記信号機の青点灯部分を含み得る範囲に設定する、
請求項3記載の、車両走行制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、
検出範囲の設定後の前記撮像画像の、調整した前記検出領域について青点灯しているか否かを判断し、
青点灯している場合には、前記車両を再発進させる制御を実行し、
青点灯していない場合には、前記車両を停止させる制御を実行する、
請求項4記載の、車両走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車といった車両が走行する道路には信号機が設置される。信号機の点灯色がたとえば赤色である場合、車両は、その手前で停止することが求められる。停止している車両は、信号機の点灯色が青色になると、再発進して走行を再開する。
車両の走行制御装置は、このような信号機での停止制御を実行できるようにすることが望まれる。特許文献1、2は、信号機に設けられる赤色、黄色、青色の各点灯色や矢印点灯を判別するために、領域を設定することを開示する。
そして、このように領域を設定することにより、車両の走行制御装置は、撮像画像の全体を処理することなく、その一部についての軽い負荷の処理により、短時間で青点灯を検出することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-053619号公報
【特許文献2】特開2021-002275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述するように領域を設定する信号停止のための走行制御では、信号機の青点灯を誤検出する可能性が残されている。
たとえば上述する信号停止のための走行制御は、車載カメラが設けられる車両が、停止制御中には移動しないことを前提として、その後の処理で使用する領域を設定している。一方で、車両は、信号での停止制御中に、たとえば後続車により軽く追突されてしまうと、停止制御が実行されているにもかかわらず、前へ移動してしまう可能性がある。また、車両の制動装置の性能が低下していると、車両は、停止制御中であっても進行方向へ微妙に移動してしまう可能性はゼロではない。
このような移動が信号停止制御中に生じると、車両の走行制御装置は、設定されている領域において、信号機が青点灯していることを判断できなくなる可能性がある。
また、移動後などでの検出領域に信号機以外のたとえば青色の標識などが含まれてしまうと、車両の走行制御装置は、信号機が青点灯に変化していると誤判断してしまう可能性がある。特に、設定する領域を、信号機の相対的な移動などを考慮して、信号機の実際の撮像サイズより大きくしてしまうと、移動が生じていない場合においても信号機の周囲の背景に含まれ得る青色の標識などに基づいて、信号機の青点灯を誤検出してしまう可能性が高まる。
【0005】
このように車両の車両走行制御装置では、信号機の青点灯を検出するための検出領域を用いる信号停止制御について改善することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施の形態に係る車両走行制御装置は、車両に設けられて、前記車両の外の信号機を撮像可能な車載カメラと、前記車載カメラの撮像画像を解析して赤点灯している信号機の手前で停止する信号停止制御を実行可能な制御部と、前記制御部が使用するメモリと、を有し、前記制御部は、停止した時の前記車両の前記車載カメラの撮像画像から、前記信号機の青点灯を検出するための画像中の検出領域を設定するとともに、画像中の基準物の情報を抽出して前記メモリに記録し、検出範囲の設定後の前記車載カメラの撮像画像について前記検出領域において前記信号機の青点灯を判断して再発進するために、検出範囲の設定後の前記撮像画像での前記基準物と、前記メモリに記録されている停止時の前記撮像画像での前記基準物との差に基づいて、前記検出領域を調整する。
【発明の効果】
【0007】
本発明において、再発進を判断するための検出範囲の設定後の撮像画像についての、信号機の青点灯を検出するための画像中の検出領域は、再発進を判断するための検出範囲の設定後の撮像画像での基準物と信号機との位置関係に基づいて調整される。すなわち、本発明では、再発進を判断するための検出範囲の設定後の撮像画像に用いる検出領域は、信号機の青点灯を検出するための画像中の検出領域を設定する際に使用した停止時の撮像画像での検出領域をそのままに用いない。
その結果、たとえば停止して検出領域を抽出した後に車両が制御部の制御によらずに移動することが仮にあったとしても、移動後の撮像画像における信号機に対して検出領域を合わせるように調整できるため、制御部は、信号機が青点灯にあることを確からしく検出することができる。そして、信号機が青点灯していることを確からしく検出した上で、制御部は、車両を再発進させることができる。
これに対して、仮にたとえば、検出範囲の設定後の撮像画像において停止時の撮像画像での検出領域をそのまま用いてしまうと、停止して検出領域を抽出した後に車両が制御部の制御によらずに移動してしまうことにより、信号機の青点灯の部分が、検出範囲から外れてしまう可能性がある。また、検出範囲についての信号機からずれた画像部分にたとえば青色の標識や看板などが撮像されて、それを青点灯と誤検出してしまう可能性がある。特に、検出範囲が、画像中の信号機またはその青点灯部分より大きく設定されて、信号機の背景を含むように設定されてしまう場合、停止後に車両が移動していなくとも、信号機の背景の青色の標識や看板を青点灯と誤検出してしまう可能性がある。
本発明では、これらの誤検出が生じ難くなり、信号機が青点灯していることを確からしく検出することができる。車両は、信号機が青点灯している状態において、それに応じて再発進することができる。
このように本発明では、信号機の青点灯を検出するための検出領域を用いる信号停止制御を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の第一実施形態に係る自動車の走行環境の一例の説明図である。
【
図2】
図2は、
図1の走行環境における自動車からの撮像画像の説明図である。
【
図3】
図3は、
図1の自動車の走行制御装置の基本的な構成図である。
【
図4】
図4は、
図3のCPUが走行中に実行する信号停止制御のフローチャートである。
【
図5】
図5は、
図3のCPUが信号停止後に実行することができる一般的な信号停止後制御のフローチャートである。
【
図6】
図6は、信号機が黄点灯である場合での撮像画像の説明図である。
【
図7】
図7は、信号機が赤点灯である場合での撮像画像の説明図である。
【
図8】
図8は、信号機が青点灯である場合での撮像画像の説明図である。
【
図9】
図9は、
図1の横型の信号機の撮像環境と、検出領域の設定との一例の関係の説明図である。
【
図10】
図10は、縦型の信号機についての検出領域の設定例の説明図である。
【
図11】
図11は、方向指示機を有する信号機についての複数の検出領域の設定例の説明図である。
【
図12】
図12は、本実施形態において信号機の撮像画像の青点灯部分に対して設定する検出領域の設定例の説明図である。
【
図13】
図13は、
図3のCPUが本実施形態において信号停止後に実行する信号停止後制御のフローチャートである。
【
図15】
図15は、本発明の第二実施形態に係る、自動車の走行を制御するサーバ装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0010】
[第一実施形態]
図1は、本発明の第一実施形態に係る自動車1の走行環境の一例の説明図である。
図1には、車両の一例として乗用の自動車1が示されている。車両には、この他にもたとえばトラックやバスなどの大型の自動車、小型のパーソナルモビリティ、モータサイクル、がある。
【0011】
図1の自動車1は、道路10を走行している。道路10には、信号機11、行き先などを案内するための標識12、看板、などが設けられる。信号機11、標識12、看板などは、道路10を走行する自動車1の乗員が視認し易くなるように、道路10沿いに立設される支柱14,15に取り付けられることが一般的である。信号機11は、たとえば交差点において自動車1の走行停止を指示する装置である。信号機11が赤点灯である場合、自動車1は、道路10に設けられた停止線13の手前で停止しなければならない。信号機11が黄点灯である場合、自動車1は、停止線13の手前で停止できるように減速しなければならない。信号機11が青点灯である場合、自動車1は、停止線13を越えて交差点などへ進むことができる。自動車1の乗員であるドライバは、自動車1を走行させる場合、これらの信号機11、標識12、看板などを視認しながら、自動車1の走行を操作または管理することが求められる。
【0012】
図2は、
図1の走行環境における自動車1からの撮像画像20の説明図である。
図1の自動車1は、後述するように車載カメラ36が設けることができる。車載カメラ36は、
図1に示すように自動車1の走行方向である前方へ向けて車室に設けられてよい。このような車載カメラ36は、
図2に示すように、自動車1の車室から前方を視た画像を撮像することができる。そして、
図2の撮像画像20には、自動車1の前部であるフードとともに、
図1の自動車1の外に実在する停止線13、信号機11、看板などが撮像されている。
なお、車載カメラ36は、この他にもたとえば自動車1の周囲360度を全体的に撮像するものであってもよい。周囲360度を全体的に撮像する車載カメラ36は、車内と車外とを撮像してもよい。また、自動車1には、複数台の車載カメラ36が、互いの画角をずらして設けられてもよい。複数台の車載カメラ36は、所定の位置関係で設けられて、共通に撮像している撮像物までの距離を演算できる配置とされてもよい。
【0013】
このような車外の撮像画像20が得られることにより、自動車1の走行制御装置30は、ドライバの運転操作を支援する制御を実行したり、ドライバの運転操作によらない自動運転により自動車1の走行を制御したり、することが可能である。自動車1の走行制御装置30は、たとえば車載カメラ36の撮像画像20を解析して撮像画像20の信号機11が赤点灯であると判断した場合、信号機11の手前の停止線13で停止するように自動車1の走行を制御することが可能である。このような自動車1の走行制御装置30は、信号停止制御可能なものである。
【0014】
図3は、
図1の自動車1の走行制御装置30の基本的な構成図である。
図3の走行制御装置30は、CPU(Central Processing Unit)31、メモリ32、タイマ33、入出力ポート34、および、これらが接続される制御バス35、を有する。入出力ポート34には、上述した車載カメラ36、車外通信装置37、などが接続される。
【0015】
車外通信装置37は、道路10などに対して設置される基地局100との間で無線通信路を確立する。基地局100は、キャリアによるものでも、ADAS(Advanced Driver Assistance Systems)用のものでもよい。車外通信装置37は、基地局100を通じて、基地局100に接続されているサーバ装置101との間で、情報を送受する。なお、サーバ装置101は、基地局100と対応するように分散して設けられてもよい。5G通信用の基地局100には、サーバ装置101としての機能を設けることが可能である。5G通信用の基地局100に設けられているサーバ装置101は、車外通信装置37との間で高速大容量の通信を実行することが可能である。
【0016】
入出力ポート34は、自動車1の走行制御のために使用する各種の装置が接続される。入出力ポート34には、
図3の車外を撮像する車載カメラ36、車外通信装置37の他に、加速度センサ、速度センサ、ドライバの操作の検出センサ、Lidar、赤外線センサ、車内カメラ、車内用の無線通信機、などが接続されてもよい。なお、自動車1には、CAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)といった規格に準拠した車ネットワークが設けられる。自動車1の走行制御のために使用する各種の装置は、直接には、車ネットワークに接続されていてもよい。この場合、
図3の走行制御装置30は、車ネットワークでの情報入出力を制御する車内通信デバイスを備え、車内通信デバイスを通じて他の制御装置との間で情報を入出力してよい。また、車内通信デバイスは、入出力ポート34に接続されても、制御バス35に接続されてもよい。
【0017】
タイマ33は、時間および時刻を計測する。
【0018】
メモリ32は、たとえば不揮発性の半導体メモリ、HDD(Hard Disk Drive)、RAM(Random Access Memory)、などで構成されてよい。メモリ32は、CPU31が実行するプログラムおよびデータを記録する。このようなデータには、自動車1において検出した撮像画像20などの情報、高精度地図データなどが記録されてよい。
【0019】
CPU31は、メモリ32に記録されているプログラムを読み込んで実行する。これにより、自動車1の走行を制御する制御部が実現される。
制御部としてのCPU31は、メモリ32に記録されている各種の情報に基づいて自動車1の走行状態を判断し、走行状態に応じた制御のための制御値を生成し、不図示の駆動制御装置、操舵制御装置、および制動制御装置へ出力する。駆動制御装置は、自動車1に設けられるエンジン、モータなどの動力源の動作を、制御値に基づいて制御する。操舵制御装置は、自動車1に設けられる操舵部材の動作を、制御値に基づいて制御する。制動制御装置は、自動車1に設けられる制動部材の動作を、制御値に基づいて制御する。制動部材は、モータの回生動作によるものでもよい。
【0020】
次に、信号停止制御について説明する。
図4は、
図3のCPU31が走行中に実行する信号停止制御のフローチャートである。
CPU31は、
図4の信号停止制御を、自動車1の走行中に繰り返しに実行してよい。自動車1は、自動車1に乗員が乗車してから、自動車1が駐車して乗員が降車するまでの期間において移動する。移動中に、自動車1は、走行と停止とを繰り返す。CPU31は、たとえば、自動車1のスタートボタンが操作されることにより
図4の信号停止制御を開始し、再度スタートボタンが操作されるまで
図4の信号停止制御を繰り返しに実行すればよい。
ここでは、まず、
図4において実線枠で示されている信号停止のための基本的な処理について説明する。
【0021】
ステップST1において、CPU31は、自車である自動車1が走行中であるか否かを判断する。CPU31は、たとえば速度センサの検出速度、車載カメラ36の撮像画像20の時系列的な変化、などの自車情報に基づいて、自車が0ではない有意な速度で走行中であるか否かを判断してよい。そして、自車がたとえば停止していて走行中でない場合、CPU31は、本制御を終了する。自車が0ではない有意な速度で走行中である場合、CPU31は、処理をステップST2へ進める。
【0022】
ステップST2において、CPU31は、車載カメラ36の最新の撮像画像20を取得する。
【0023】
ステップST3において、CPU31は、取得している撮像画像20を解析する。CPU31は、たとえば取得している撮像画像20の全体を解析して、撮像されている物を抽出または特定する。たとえば
図1に示す信号機11、標識12、看板などの撮像物が車載カメラ36の撮像画角の範囲内にある場合、その撮像物の像が撮像画像20に含まれる。CPU31は、たとえば撮像物ごとのパータンマッチングまたは機械学習結果を用いて、撮像画像20に含まれる撮像物を抽出または特定してよい。
なお、抽出または特定する撮像物を中空の信号機11や標識12に限定する場合、CPU31は、撮像画像20の全体ではなく、たとえば明らかな路面部分を除いて撮像画像20を解析してもよい。
【0024】
ステップST4において、CPU31は、撮像物に自車が走行する道路10または車線についての信号機11が抽出されているか否かを判断する。ステップST3において撮像画像20に含まれる撮像物として信号機11が抽出されていない場合、CPU31は、信号機11が抽出されていないと判断する。また、ステップST3において信号機11が抽出されている場合であっても、信号機11の撮像向きや撮像画像20中の位置に基づいて自車が走行する道路10または車線についての信号機11ではないと判断する場合、CPU31は、信号機11が抽出されていないと判断してよい。これらの場合、CPU31は、処理をステップST5へ進める。逆に、自車が走行する道路10または車線についての信号機11が抽出されている場合、CPU31は、処理をステップST6へ進める。
【0025】
ステップST5において、CPU31は、通常の走行制御を継続する。その後、CPU31は、本制御を終了する。
【0026】
ステップST6において、CPU31は、撮像画像20についての信号機11の画像部分を解析して、信号機11の点灯色が青でないか否かを判断する。信号機11は、停電などの事態が生じていない場合、赤色、青色、または黄色のいずれかに点灯している。ただし、信号機11には、点灯期間において高速で点滅するものがある。この信号機11の点滅周期と車載カメラ36の撮像周期と合致していない場合、車載カメラ36の撮像画像20に含まれる信号機11は、赤色、青色、または黄色のいずれにも点灯しない状態で撮像される可能性がある。信号機11の点灯色が青でないか否かを判断することにより、CPU31は、信号機11が赤点灯または黄点灯である場合、および、信号機11の点灯色が撮像画像20において特定できない場合において、信号機11の点灯色が青でないと判断し、処理をステップST7へ進める。撮像画像20において信号機11の点灯色が青でないと判断しない場合、すなわち撮像画像20において信号機11の点灯色が青である場合、CPU31は、処理をステップST5へ進める。この場合、CPU31は、通常の走行制御を継続する。なお、前回以前の本制御により後述するステップST7の減速制御を開始している場合、CPU31は、その減速制御から通常の走行制御へ復帰するように制御を実行してよい。
【0027】
ステップST7において、CPU31は、通常の走行制御を中断して、信号機11の手前の停止線13で停止するように減速制御を実行し、停止線13の手前で自車を停止させる。なお、前回以前の本制御により既に減速制御を開始している場合、CPU31は、その減速制御を継続すればよい。継続的に実行される減速制御において、CPU31は、信号機11の黄点灯部分42の抽出に基づいて減速制御を開始し、信号機11が赤点灯に替わったことを検出した場合に、停止線13の手前で自車が確実に停止するように減速度を高める制御を実行してもよい。
【0028】
ステップST8において、CPU31は、自車が停止しているか否かを判断する。減速制御の結果、自車は、信号機11の手前の停止線13において停止する。CPU31は、たとえば、速度センサの検出速度が0となっている場合、または車載カメラ36により時間間隔を開けて撮像された複数の画像において変化がない場合、自車が停止していると判断してよい。この場合、CPU31は、処理をステップST9へ進める。それ以外の場合、CPU31は、本制御を終了する。
【0029】
ステップST9において、CPU31は、取得している車載カメラ36の停止中の撮像画像20について、信号機11の青点灯を検出するための検出領域50を設定する。信号機11は、基本的に、赤点灯部分43、黄点灯部分42、青点灯部分41が水平方向または上下方向に並んでいる一方に長尺な外形を有する。CPU31は、信号機11の赤点灯にしたがって停止している最中の撮像画像20において、信号機11が撮像されている長尺な範囲の中で、赤点灯の部分とは反対側の部分について、青点灯を検出するための検出領域50を設定すればよい。
信号停止のための基本的な処理は、ステップST9において青点灯を検出するための検出領域50を設定することにより終了する。
【0030】
図5は、
図3のCPU31が信号停止後に実行することができる一般的な信号停止後制御のフローチャートである。
CPU31は、
図4の信号停止制御のステップST1からステップST9の処理を実行する場合、
図5の信号停止後制御を実行することが可能である。
CPU31は、
図4の信号停止制御においてステップST9の処理を実行した場合に、または、自動車1の走行中に、
図5の信号停止後制御を繰り返しに実行してよい。
【0031】
ステップST11において、CPU31は、自車が通常の走行制御を中断して、信号停止中であるか否かを判断する。CPU31は、たとえば
図4のステップST7の処理の実行により自車が停止しているか否かを判断してよい。自車が信号停止中でない場合、CPU31は、本制御を終了する。自車が信号停止中である場合、CPU31は、処理をステップST12へ進める。
【0032】
ステップST12において、CPU31は、車載カメラ36の最新の撮像画像20を取得する。車載カメラ36は、自車が信号停止中においても、周期的に画像を撮像する。
【0033】
ステップST13において、CPU31は、取得している最新の撮像画像20についての検出領域50を解析して、信号停止のきっかけとなった信号機11が青点灯であるか否かを判断する。自車が信号で停止し続けている場合、車載カメラ36の撮像画角は、基本的にステップST9でのものと同じになる。信号機11は、所定の時間が経過すると、赤点灯から青点灯に切り替わる。したがって、CPU31は、ステップST9で設定した検出領域50を用いて、信号停止のきっかけとなった信号機11が青点灯であるか否かを判断することができる。信号機11が青点灯へ変化していない場合、CPU31は、処理をステップST14へ進める。信号機11が青点灯へ変化している場合、CPU31は、処理をステップST15へ進める。
【0034】
ステップST14において、CPU31は、信号停止状態を維持する制御を実行する。CPU31は、自車を停止する制御を継続する。その後、CPU31は、本制御を終了する。
【0035】
ステップST15において、CPU31は、中断している通常の走行制御へ復帰するための再発進制御を実行する。CPU31は、停止している自車の走行を開始し、自車を加速させる再発進制御を実行する。その後、CPU31は、ステップST5などによる通常の走行制御へ復帰してよい。なお、停止からの加速制御は、通常の走行制御の一部として実行されてもよい。この場合、CPU31は、ステップST1の判断に使用する走行中を示すフラグを立てればよい。その後、CPU31は、本制御を終了する。
【0036】
次に、信号機11の点灯色の具体例に基づいて、
図4および
図5による信号停止および再発進の制御を説明する。
【0037】
図6は、信号機11が黄点灯である場合での撮像画像20の説明図である。
図6の撮像画像20では、信号機11の黄点灯部分42が含まれている。この場合、CPU31は、ステップST6において信号機11の点灯色が青ではないと判断し、ステップST7の減速制御を実行する。また、CPU31は、ステップST8において自車が停止していないと判断する。撮像画像20の信号機11が黄点灯である場合、CPU31は、自車の減速制御のみを実行する。
【0038】
図7は、信号機11が赤点灯である場合での撮像画像20の説明図である。
図7の撮像画像20には、信号機11の赤点灯部分43が含まれている。この場合、CPU31は、ステップST6において信号機11の点灯色が青ではないと判断し、ステップST7の減速制御を実行する。また、CPU31は、ステップST8において自車が停止していると判断し、ステップST9において撮像画像20について青点灯を検出するための検出領域50を設定する。
図7の信号機11は、横型である。この場合、CPU31は、信号機11の赤点灯部分43の左側の、黄点灯部分42を超えた位置に、青点灯部分41を検出するための検出領域50を設定すればよい。
また、自車が停止した後、CPU31は、
図5の信号停止後制御のステップST11において信号停止中であると判断し、設定した検出領域50を用いて、撮像画像20の信号機11が青点灯へ変化したか否かを判断する。信号機11が赤点灯を維持している場合、CPU31は、停止制御を維持する。
【0039】
図8は、信号機11が青点灯である場合での撮像画像20の説明図である。
図8の撮像画像20には、信号機11の青点灯部分41が含まれている。自車が信号停止をしている場合、CPU31は、
図5のステップST13において最新の撮像画像20の検出領域50が青点灯であると判断し、ステップST15の再発進制御を実行する。自車である自動車1は、再発進した後に、通常の走行に復帰する。また、CPU31は、
図4の走行中の信号停止制御のステップST1において走行中であると判断し、走行方向にある次の信号機11のための判断を開始する。
【0040】
このように自動車1の走行制御装置30は、信号停止制御を実行することにより、道路10に設置される信号機11の点灯色に応じて、自動車1の移動中に信号で停止して再発進することが可能になる。
しかしながら、上述した信号停止制御では、自動車1に設けられる車載カメラ36の撮像画像20により信号機11を撮像し、その撮像画像20に基づいて青点灯を判断して走行の停止と再発進とを制御する。このため、自動車1は、必ずしも良好な制御の下で走行できるとは限らない。
【0041】
たとえば、車載カメラ36の撮像画像20に基づく信号機11の青点灯の判断においては、信号機11の青点灯を誤検出する可能性がある。信号機11の青点灯を誤検出してしまうと、CPU31は、再発進の制御を実行してしまうことになる。CPU31は、再発進の後に再度、信号機11が赤点灯であること、または青点灯ではないことを検出するまで、再停止する制御を実行することができない。再停止する制御を実行するまで、自動車1は、走行し続けてしまう。
【0042】
図9は、
図1の横型の信号機11の撮像環境と、検出領域50の設定との一例の関係の説明図である。
図9の撮像画像20では、赤点灯の信号機11の後側に、青色を用いた道路案内の標識12が撮像されている。また、道路案内の標識12ではなく、青色を用いた広告用の看板が撮像されることもあり得る。
【0043】
CPU31は、このような撮像画像20について、信号機11の青点灯を検出するための検出領域50を設定する。
図9の検出領域50は、信号機11の青点灯部分41を確実に含むように、信号機11の像の周囲を含むように設定することが考えられる。
この場合での信号停止後の最新の撮像画像20には、
図9と同様に、青色を用いた標識12または看板が検出領域50に含まれる。CPU31は、信号機11の青点灯の検出領域50に、青色が含まれることに基づいて、信号機11が青点灯に変化したと誤って判断してしまう可能性がある。このように信号機11の青点灯を検出するために画像中に設定する検出領域50が、信号機11についての画像中の撮像サイズより大きい場合、CPU31は、信号機11の周囲にある背景の画像成分の色をも信号機11の青点灯であると誤検出してしまう可能性がある。
【0044】
また、このような撮像画像20に対して検出領域50を設定して信号機11の青点灯を判断する方法は、停止制御中の自動車1が動くことがなく、車載カメラ36が撮像する車外が基本的に変化しないことを前提にしている。このように撮像画像20の所定の位置に信号機11が撮像されることを前提として信号機11の青点灯を検出することにより、CPU31は、撮像画像20の全体を処理することなく軽い処理負荷で且つ短時間で青点灯を検出することが可能である。
しかしながら、自動車1は、自動車1の走行制御装置30が停止制御を実行してしまうにもかかわらず、移動してしまう可能性がある。たとえば、後続車により軽く追突された場合、自動車1は、停止制御を実行していても、前へ移動する。また、自動車1の制動装置の性能が低下している場合、自動車1は、停止制御中に進行方向へ微妙に移動してしまう可能性もある。これらの外乱や制御の脱調の可能性をゼロにすることは、極めて困難である。
【0045】
図10は、縦型の信号機11についての検出領域50の設定例の説明図である。
図10の縦型の信号機11では、CPU31は、赤点灯部分43の下側に、青点灯の検出領域50を設定するとよい。この場合でも、検出領域50には、
図9の場合と同様の課題が生じ得る。
【0046】
図11は、方向指示機16を有する信号機11についての複数の検出領域の設定例の説明図である。
図11の信号機11は、その下側に、左折点灯部分、直進点灯部分、および右折点灯部分を有する方向指示機16が設けられている。この場合、CPU31は、自車が走行する方向についての点灯部分について、信号機11についての第一の検出領域50とは別に、第二の検出領域51を設定してもよい。CPU31は、信号機11そのものの青点灯のための第一の検出領域50と、方向指示機16についての第二の検出領域51との、複数の検出領域を設定してもよい。方向指示機16についての別の検出領域51には、信号機11についての検出領域50と同様の課題が生じ得る。
【0047】
このように自動車1の走行制御装置30は、信号機11の青点灯を検出するための検出領域50を用いる信号停止制御について改善することが望まれる。
【0048】
そこで、本実施形態では、信号機11の青点灯部分41などに対して設定する検出領域50を、信号機11についての実際の撮像サイズより小さくなるように設定する。
図12は、本実施形態において信号機11の撮像画像20の青点灯部分41に対して設定する検出領域50の設定例の説明図である。
図12の検出領域50は、信号機11の外形に収まり、かつ、信号機11の青点灯部分41の略全体が含まれるように、設定されている。信号停止中に自動車1が動かない場合、
図12の検出領域50には、信号機11の周囲の背景の画像成分が含まれ得なくなる。
本実施形態のCPU31は、
図4のステップST9において、
図12の検出領域50を設定する。
このように本実施形態では、検出領域50を、停止時の撮像画像20において信号機11が撮像されている部分より小さい範囲であって、かつ、信号機11の青点灯部分41を含む範囲に設定する。
【0049】
また、本実施形態では、信号停止時の撮像画像20に基づいて信号機11の青点灯部分41に対して検出領域50を設定するとともに撮像されている基準物を抽出する。また、その基準物を用いて位置や範囲を調整した検出領域50を用いて、信号停止後の撮像画像20についての信号機11の青点灯を検出する検出領域50を調整する。以下、具体的に説明する。
【0050】
図4の信号停止制御においてステップST9の処理の後、CPU31は、処理をステップST21へ進める。
ステップST21において、信号停止時の撮像画像20について、さらに、基準物を抽出する。CPU31は、信号機11の青点灯部分41に対する検出領域50とともに基準物を抽出する。
ステップST22において、CPU31は、検出領域50および基準物についての情報をメモリ32に記録する。その後、CPU31は、
図4の信号停止制御を終了する。
【0051】
ここで、基準物は、撮像画像20に撮像されている固定的な物ものであれば利用可能であるが、好ましくは、支柱14,15、電柱などのように、撮像画像20において縦に延在するものにするとよい。
図2の撮像画像20には、信号機11の支柱14と、標識12の支柱15と、が含まれている。CPU31は、ステップST3の画像解析処理において、これらの支柱14,15や電柱を抽出することが可能である。この場合、CPU31は、ステップST3の画像解析処理において抽出している支柱14,15または電柱の1つを、基準物として抽出してよい。
【0052】
また、CPU31は、メモリ32に、撮像画像20における検出領域50の位置および範囲の情報とともに、撮像画像20における基準物の位置および範囲の情報を記録してよい。これらの情報は、撮像画像20を基準として、撮像画像20における検出領域50と基準物との相対的な位置関係61を示す情報になる。
なお、CPU31は、撮像画像20における検出領域50または基準物の位置を、たとえば、撮像画像20の左上画素を原点とした検出領域50または基準物の左上画素の位置により、メモリ32に記録してよい。
また、CPU31は、撮像画像20における検出領域50または基準物の範囲を、たとえば、範囲の左上画素の位置と、範囲の右下画素の位置と、により、メモリ32に記録してよい。
この場合、メモリ32には、撮像画像20の左上画素を原点にした、撮像画像20における検出領域50の左上画素の位置および右下画素の位置と、撮像画像20における基準物の左上画素の位置および右下画素の位置と、が記録されることになる。
【0053】
このような設定の記録状態において、本実施形態のCPU31は、
図5の替わりに、
図13の信号停止後制御を実行する。
【0054】
図13は、
図3のCPU31が本実施形態において信号停止後に実行する信号停止後制御のフローチャートである。
図13において、
図5と同様の処理については同一の番号を使用し、その説明を省略する。CPU31は、ステップST12において車載カメラ36の最新の撮像画像20を取得した後、処理をステップST31へ進める。
この際、メモリ32には、信号機11が赤点灯していることに基づいて停止した時の自動車1の車載カメラ36の撮像画像20から抽出した情報が記録されている。具体的には、メモリ32には、青点灯を検出するための画像中の検出領域50の位置および範囲の情報とともに、基準物としての電柱または支柱14,15の画像中の位置および範囲の情報が記録される。これらは、検出領域50と基準物との画像中での相対的な位置関係61を示す情報として利用できる。また、メモリ32には、画像中で基準物を特定するために使用する色などの特徴の情報が併せて記録されるとよい。
【0055】
ステップST31において、CPU31は、ステップST12で取得した最新の撮像画像20を解析して、メモリ32に記録されている基準物についての、最新の撮像画像20での位置および範囲を抽出する。本実施形態では、CPU31は、道路10に立設されている電柱または支柱14,15を、基準物として選択している。これらの立設基準物は、撮像画像20において上下方向に沿って延在する。このため、CPU31は、ステップST3と同様にステップST12で取得した最新の撮像画像20の全体を解析するのではなく、たとえば撮像画像20の横方向の1ライン分の画素52を解析し、立設基準物と同じ特徴を有する画素を、最新の撮像画像20での位置および範囲を抽出してよい。これにより、CPU31は、軽い処理負荷により、立設基準物の位置および範囲を抽出することができる。
たとえば信号停止制御中に自動車1が立設基準物へ近づいている場合、最新の撮像画像20での立設基準物の幅が広くなり、立設基準物と同じ特徴を有する画素の数は増える。
また、信号停止制御中に自動車1の向きが変化している場合、最新の撮像画像20での立設基準物の位置が変化し、立設基準物と同じ特徴を有する画素の位置も変化する。
基準物として立設基準物を用いることにより、CPU31の処理負荷を軽減しつつ、立設基準物の位置および範囲の変化を良好に抽出できる。
【0056】
ステップST32において、CPU31は、ステップST31の解析による基準物の情報を基準にして、メモリ32に記録されている検出領域50の位置および範囲を調整する。
CPU31は、今回の処理に係る検出範囲の設定後の最新の撮像画像20での基準物の位置および範囲と、メモリ32に記録されている信号停止時の撮像画像20での基準物の位置および範囲との差に基づいて、検出領域50の位置および範囲を調整すればよい。
たとえば、検出範囲の設定後の最新の撮像画像20での基準物の位置が、信号停止時の撮像画像20での基準物の位置と比べて、画像中で左側へ移動している場合、CPU31は、検出領域50の位置を、基準物の移動量で左方向へ移動させる。
逆に、検出範囲の設定後の最新の撮像画像20での基準物の位置が、信号停止時の撮像画像20での基準物の位置と比べて、画像中で右側へ移動している場合、CPU31は、検出領域50の位置を、基準物の移動量で右方向へ移動させる。
また、検出範囲の設定後の最新の撮像画像20での画素数による基準物の幅が、信号停止時の撮像画像20での画素数による基準物の幅と比べて、増加している場合、CPU31は、検出領域50の上下左右の範囲を、基準物の増加割合で拡大する。
逆に、検出範囲の設定後の最新の撮像画像20での画素数による基準物の幅が、信号停止時の撮像画像20での画素数による基準物の幅と比べて、減少している場合、CPU31は、検出領域50の上下左右の範囲を、基準物の減少割合で縮小する。
このようにCPU31は、検出範囲の設定後の撮像画像20を横方向の11ライン分の画素52のみを解析することにより得た、検出範囲の設定後の撮像画像20での電柱または支柱14,15といった立設基準物の位置および範囲を用いて、画像中の検出領域50の位置および範囲を調整する。CPU31は、電柱または支柱14,15といった立設基準物の横方向の位置の差に基づいて、検出領域50を横方向へ移動させる。また、CPU31は、立設基準物の幅の差に基づいて、検出領域50を拡縮する。
なお、CPU31は、さらに立設基準物の幅の差などに基づいて、たとえば、検出領域50を縦方向へ移動させてもよい。
また、CPU31は、検出領域50の位置および範囲の中の、少なくとも一方のみを調整してもよい。この場合、CPU31は、検出領域50の範囲より検出領域50の位置を調整するとよい。これにより、検出範囲に、信号機11の青点灯部分41が含まれ易くなる。
なお、
図11のように方向指示機16についての第二の検出領域51が設定されている場合、CPU31は、上述した第一の検出領域50と同様の処理により第二の検出領域51の位置および範囲についても調整するとよい。
【0057】
ステップST33において、CPU31は、ステップST12で取得している最新の撮像画像20についての、ステップST32にて位置および範囲を調整した調整後の検出領域50に基づいて、信号機11が青点灯へ変化しているか否かを判断する。
本実施形態では、検出領域50を、停止時の撮像画像20において信号機11が撮像されている部分より小さい範囲であって、かつ、信号機11の青点灯部分41を含む範囲に設定している。したがって、調整後の検出領域50には、信号機11のみが含まれている可能性が高い。その結果、CPU31は、信号機11の周囲の背景などの青色の標識12などに基づいて、信号機11が青点灯へ変化していると誤って判断し難い。
また、本実施形態では、そのような小さい検出領域50の位置および範囲を、基準物の位置および範囲の変化に応じて、調整している。したがって、調整後の検出領域50には、信号機11についての青点灯部分41が高い確実性で含まれている可能性が高い。その結果、CPU31は、調整後の検出領域50において、信号機11の青点灯部分41の青点灯の有無を、高い確実性で判断することができる。
このようにCPU31は、検出領域50での青点灯の判断において、信号機11が青点灯へ変化していると誤って判断し難い。たとえば停止制御中に自動車1が移動したとしても、CPU31は、信号機11が青点灯へ変化していると誤って判断し難い。
そして、実際に信号機11が青点灯している場合、CPU31は、検出領域50での青点灯の判断において、信号機11が青点灯していると判断する。この場合、CPU31は、処理をステップST15へ進める。ステップST15において、CPU31は、中断している通常の走行制御へ復帰するために、自動車1を再発進させる再発進制御を実行する。その後、CPU31は、処理をステップST34へ進める。
逆に、信号機11が青点灯していない場合、CPU31は、検出領域50での青点灯の判断において、信号機11が青点灯していないと判断する。信号機11が青点灯していない場合には、信号機11の点灯色が撮像画像20に含まれていない場合を含む。この場合、CPU31は、処理をステップST14へ進める。ステップST14において、CPU31は、自動車1を停止させる制御を実行して、信号停止状態を維持する。その後、CPU31は、本制御を終了する。
なお、
図11のように方向指示機16についての第二の検出領域51が設定されている場合、CPU31は、上述した第一の検出領域50と同様の処理により第二の検出領域51についての点灯の有無を判断してよい。
【0058】
ステップST34において、CPU31は、再発進後に所定の時間が経過したか否かを判断する。CPU31は、ステップST15の処理において、再発進後の経過時間をタイマ33に計測させてよい。
そして、タイマ33の計測時間が、所定の経過時間に達していない場合、CPU31は、処理をステップST12へ戻す。CPU31は、
図13のステップST12からステップST34の処理を繰り返す。そして、タイマ33の計測時間が、所定の経過時間に達すると、CPU31は、処理をステップST35へ進める。
このようにCPU31は、再発進制御を開始した後、所定の時間が経過するまでは、
図13のステップST12からステップST34の処理を繰り返す。そして、その間に検出領域50の判断により信号機11が青点灯ではないと判断することがあると、CPU31は、ステップST33の処理の後にステップST14の処理を実行して、再発進している自車を再停止させる制御を実行する。これにより、CPU31は、仮に信号機11の青点灯を誤って判断することがあったとしても、その判断の直後に時間を開けずに、自車である自動車1を再停止することができる。このような再発進後の再停止の判断ができない場合、CPU31は、十分に再発進をして
図4の走行中の信号停止制御のステップST6において信号機11が青点灯ではないと判断するまで、減速停止のための制御を実行することができない。また、この
図4のステップST6の処理をする前には、ステップST3において最新の撮像画像20の全体を解析する処理をしなければならない。CPU31は、再発進後に、比較的長い時間で走行した後でなければ、自動車1の走行を停止させることができない。この場合、自動車1のドライバなどの乗員は、自動車1がふらついているように感じて、不安を感じる可能性が高い。本実施形態では、そのような印象を与え難い。
逆に、タイマ33の計測時間が、所定の経過時間に達すると、CPU31は、処理をステップST35へ進める。この場合、タイマ33の計測時間が、所定の経過時間に達するまでの期間において、CPU31は、調整した検出領域50において信号機11が青点灯していると判断し続けていることになる。CPU31が信号機11の青点灯を誤って判断している可能性は極めて低い。
【0059】
ステップST35において、CPU31は、通常の走行制御への復帰処理を実行する。その後、CPU31は、本制御を終了する。
【0060】
このような制御により、CPU31は、信号機11の点灯色にしたがった再発進の確実性を高めることができる。信号停止中に外乱や脱調などの不具合があって、信号停止中の自動車1に不測の移動が生じたとしても、CPU31は、誤った青点灯の認識に基づいて再発進し難くなる。また、再発進をしたとしても、CPU31は、その後の青不点灯を再確認することにより、即時的に自動車1を再停止させることができる。再停止するまでの移動量および移動期間は、最小限に抑えられる。
【0061】
なお、信号機11とともに撮像される基準物についての画像中の位置および範囲の変化を用いることなく、検出領域50の位置および範囲を調整することは、極めて困難である。この場合、CPU31は、撮像画像20の一部である検出領域50のみについて青点灯の判定処理をするのではなく、
図4のステップST3と同様に撮像画像20の全体の解析により信号機11を抽出し、さらにその信号機11の点灯色を判断する必要がある。この場合のCPU31の処理負荷は、検出領域50のみについて処理をする場合と比べて、極めて大きい。特に、信号停止中に自動車1が移動してしまうことがあると、CPU31は、本来的には、青点灯の判断に検出領域50を使用することができない。CPU31は、
図4のステップST3と同様に撮像画像20の全体の解析を再実行して信号機11を抽出し、さらにその信号機11の点灯色を判断する必要がある。本実施形態では、このような信号停止中の移動があったとしても、信号機11の青点灯を容易にかつ短時間で判断することができる。
【0062】
また、上述した再発進制御を開始した後の所定の経過時間は、安全のためには長くすることが望ましい。ただし、経過時間を長くし過ぎると、自動車1が大きく移動してしまう。信号停止の際の信号機11が、車載カメラ36の撮像範囲外となる可能性がある。したがって、経過時間は、たとえば信号機11の各色の点灯での点滅周期や、車載カメラ36の撮像周期などを勘案して、これらの周期の最小公倍数の期間にしてよい。このような経過時間の設定であれば、その経過時間中の少なくとも1つの撮像画像20は、信号機11の点灯色を撮像することができる。
【0063】
図14は、
図13の制御による検出領域50の調整処理例の説明図である。
図14は、時刻T0、時刻T1、時刻T2の各々のタイミングでの信号機11およびその支柱14の位置が模式的に示されている。時間は、紙面の上から下へ流れる。紙面の左右方向は、撮像画像20での信号機11およびその支柱14の撮像位置を模式的に示している。
【0064】
図14の時刻T0において、信号機11は、赤点灯している。この場合、CPU31は、自車を停止させる。また、CPU31は、信号機11の赤点灯部分43に基づいて、青点灯を検出するための検出領域50を設定する。
その後、CPU31は、信号機11が青点灯に変化したと判断するまで、信号停止制御を繰り返して継続している。しかしながら、信号停止制御の自動車1が移動してしまうと、撮像画像20での信号機11の撮像位置は、ずれる。時刻T2では、信号機11の撮像位置は、時刻T1の位置より左側へずれている。また、信号機11の支柱14の撮像位置も、信号機11と同様に、時刻T1の位置より左側へずれる。その結果、検出領域50は、信号機11の撮像範囲に収まっているものの、信号機11の青点灯部分41から外れている。CPU31は、この検出領域50において青点灯を判断しようとしても、それを判断することはできない。
【0065】
このため、本実施形態のCPU31は、時刻T2での撮像画像20についての
図13のステップST32の調整処理において、検出領域50の位置および範囲を調整する。CPU31は、信号機11とともに撮像されている立設基準物としての支柱14の画像中の位置および範囲を基準として、信号機11と支柱との相対的な位置関係61が維持されるように、検出領域50の位置および範囲を調整する。具体的には、上述した例のように、CPU31は、時刻T2の撮像画像20の1ライン分の画素52の解析処理により、支柱14の幅の位置および範囲を特定し、信号機11についても支柱14と同様のずれが生じているものとして、検出領域50の位置および範囲を調整する。CPU31は、たとえば、時刻T2の撮像画像20での支柱14の位置と、時刻T0の撮像画像20での支柱14の位置との差により、検出領域50の位置をずらしてよい。また、CPU31は、支柱14の幅D2についての支柱14の幅D1に対する増減分により、検出領域50のサイズを増減してよい。
【0066】
これにより、時刻T2において示すように、検出領域50は、信号機11の撮像範囲に収まり、かつ、信号機11の青点灯部分41と重なるように、位置および範囲が調整され得る。このような調整後の検出領域50を用いて、信号機11の青点灯を判断することにより、CPU31は、信号機11の青点灯の有無を確からしく判断することができる。
【0067】
以上のように、本実施形態において、再発進を判断するための検出範囲の設定後の撮像画像20についての、信号機11の青点灯を検出するための画像中の検出領域50は、再発進を判断するための検出範囲の設定後の撮像画像20での基準物と信号機11との位置関係に基づいて調整される。すなわち、本実施形態では、再発進を判断するための検出範囲の設定後の撮像画像20に用いる検出領域50は、信号機11の青点灯を検出するための画像中の検出領域50を設定する際に使用した停止時の撮像画像20での検出領域50をそのままに用いない。
その結果、たとえば停止して検出領域50を抽出した後に自動車1が制御部としてのCPU31の制御によらずに移動することが仮にあったとしても、移動後の撮像画像20における信号機11に対して検出領域50の位置および範囲を合わせるように調整できる。その結果、CPU31は、信号機11が青点灯にあることを確からしく検出することができる。そして、信号機11が青点灯していることを確からしく検出した上で、CPU31は、自動車1を再発進させることができる。
これに対して、仮にたとえば、検出範囲の設定後の撮像画像20において停止時の撮像画像20での検出領域50をそのまま用いてしまうと、停止して検出領域50を抽出した後に自動車1がCPU31の制御によらずに移動してしまうことにより、信号機11の青点灯の部分が、検出範囲から外れてしまう可能性がある。また、検出範囲についての信号機11からずれた画像部分にたとえば青色の標識12や看板などが撮像されて、それを青点灯と誤検出してしまう可能性がある。特に、検出範囲が、画像中の信号機11またはその青点灯部分41より大きく設定されて、信号機11の背景を含むように設定されてしまう場合、停止後に自動車1が移動していなくとも、信号機11の背景の青色の標識12や看板を青点灯と誤検出してしまう可能性がある。
本実施形態では、これらの誤検出が生じ難くなり、信号機11が青点灯していることを確からしく検出することができる。自動車1は、信号機11が青点灯している状態において、それに応じて再発進することができる。
このように本実施形態では、信号機11の青点灯を検出するための検出領域50を用いる信号停止制御を改善することができる。
【0068】
特に、本実施形態では、基準物として、停止時の撮像画像20において立設して撮像され得る電柱または支柱を抽出している。この場合、CPU31は、停止時の撮像画像20での立設基準物である電柱または支柱14,15の位置および範囲の情報をメモリ32に記録し、その後の検出範囲の設定後の撮像画像20において電柱または支柱14,15を抽出する必要がある。この際、CPU31は、画像に立設して撮像される電柱または支柱14,15を基準物として抽出しているため、検出範囲の設定後の撮像画像20を横方向の1ライン分の画素52で解析するだけで、検出領域50の位置および範囲を確からしく調整するための情報を得ることができる。具体的にはたとえば、CPU31は、電柱または支柱14,15の横方向の位置の差に基づいて、検出領域50を横方向へ移動させてよい。また、CPU31は、電柱または支柱14,15の横方向の幅の差に基づいて、検出領域50を縦方向へ移動させ、または、検出領域50を拡縮してよい。これにより、CPU31は、検出範囲の設定後の撮像画像20の解析処理において電柱または支柱14,15の全体を抽出するように画像全体を解析する必要がない。CPU31は、検出範囲の設定後の撮像画像20に基づく検出領域50の調整処理を短時間で実行することができる。
【0069】
本実施形態では、CPU31は、信号機11の青点灯を検出して自動車1を再発進させる制御を開始した後においても、検出領域50の位置および範囲を調整して車載カメラ36の撮像画像20での信号機11の青点灯を判断し、再発進制御を開始した後に信号機11が青点灯していないと判断する場合には、再発進制御の後に自動車1を再停止させる。これにより、CPU31は、青点灯を誤判断して自動車1を再発進させた後においても、信号機11が実際には青点灯していないことを確認して、再発進させた自動車1を再び停止させることができる。
【0070】
特に、本実施形態では、検出領域50は、停止時の撮像画像20において信号機11が撮像されている部分より小さい範囲であって、かつ、信号機11の青点灯部分41を含む範囲に設定される。これにより、検出範囲には、信号機11の周囲の背景が含まれにくくなる。
そして、このように検出領域50を小さく設定しても、本実施形態では、その小さい検出領域50の位置および範囲を、同時に撮像され得る基準物の撮像部分に基づいて撮像画像20ごとに調整するため、撮像画像20に対して設定する検出領域50から信号機11の青点灯部分41が外れてしまうことは起き難い。
【0071】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について説明する。以下、上述した実施形態との相違点について主に説明する。上述した実施形態と同様の特徴については、上述した実施形態と同一の符号を用いて説明を省略する。
本実施形態では、サーバ装置101が、自動車1の走行を制御する。
【0072】
図15は、本発明の第二実施形態に係る、自動車1の走行を制御するサーバ装置101の説明図である。
図15のサーバ装置101は、サーバ通信デバイス102、サーバタイマ103、サーバメモリ104、サーバCPU105、および、これらが接続されるサーババス106、を有する。
【0073】
サーバ通信デバイス102は、たとえばインターネットなどの通信網に接続される。サーバ通信デバイス102は、
図3に示すように、通信網に接続されているたとえば基地局100を通じて、道路10を走行する自動車1の車外通信装置37との間で、情報を送受する。
【0074】
サーバタイマ103は、時刻または時間を計測する。
【0075】
サーバメモリ104は、サーバCPU105が実行するプログラムおよびデータを記録する。サーバメモリ104は、たとえば不揮発性の半導体メモリ、HDD、RAM、などで構成されてよい。
【0076】
サーバCPU105は、サーバメモリ104に記録されているプログラムを読み込んで実行する。これにより、サーバ制御部が実現される。サーバ制御部としてのサーバCPU105は、サーバ装置101の動作を管理する。サーバ制御部は、自動車1の走行を遠隔的に制御または支援する、自動車1の走行制御装置として機能し得る。この場合、サーバCPU105は、サーバ通信デバイス102を用いて、自動車1からその移動に関する情報を取得し、走行制御装置30のCPU31が自車の走行制御に使用することができる情報を自動車1へ送信する。
【0077】
そして、走行制御装置として機能するサーバCPU105は、自動車1の走行を制御または管理するために、自動車1から取得した情報を用いた
図4の走行中の信号停止制御と
図13の信号停止後制御とを実行することができる。この場合、自動車1の走行制御装置30のCPU31は、サーバ装置101のサーバCPU105の制御の下で、自車を信号機11の手前の停止線13において停止させたり、停止後に再発進させたり、することになる。
【0078】
なお、サーバ装置101のサーバCPU105と、自動車1の走行制御装置30のCPU31とは、それらが協働して、
図4の走行中の信号停止制御と
図13の信号停止後制御とを実行してもよい。
【0079】
以上の実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【符号の説明】
【0080】
1…自動車(車両)、10…道路、11…信号機、12…標識、13…停止線、14,15…支柱(立設基準物)、16…方向指示機、20…撮像画像、30…走行制御装置(車両走行制御装置)、31…CPU(制御部)、32…メモリ、33…タイマ、34…入出力ポート、35…制御バス、36…車載カメラ、37…車外通信装置、41…青点灯部分、42…黄点灯部分、43…赤点灯部分、50…検出領域(第一の検出領域)、51…第二の検出領域、52…1ライン分の画素、61…位置関係、100…基地局、101…サーバ装置、102…サーバ通信デバイス、103…サーバタイマ、104…サーバメモリ、105…サーバCPU、106…サーババス