(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133574
(43)【公開日】2024-10-02
(54)【発明の名称】マイクロ波場において電気アークを生成可能な多孔質複合材料、その調製方法、およびその使用
(51)【国際特許分類】
C04B 41/85 20060101AFI20240925BHJP
C04B 38/00 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
C04B41/85 G
C04B38/00 303Z
【審査請求】有
【請求項の数】27
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024107304
(22)【出願日】2024-07-03
(62)【分割の表示】P 2021523303の分割
【原出願日】2019-09-27
(31)【優先権主張番号】201811264415.4
(32)【優先日】2018-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201811264420.5
(32)【優先日】2018-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201811264422.4
(32)【優先日】2018-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201811264424.3
(32)【優先日】2018-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201811264425.8
(32)【優先日】2018-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201811264432.8
(32)【優先日】2018-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201811264439.X
(32)【優先日】2018-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201811264451.0
(32)【優先日】2018-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201811264452.5
(32)【優先日】2018-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201811264454.4
(32)【優先日】2018-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201811264455.9
(32)【優先日】2018-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】510016575
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司北京化工研究院
【氏名又は名称原語表記】BEIJING RESEARCH INSTITUTE OF CHEMICAL INDUSTRY,CHINA PETROLEUM & CHEMICAL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】NO.14,BEISANHUAN EAST ROAD,CHAOYANG DISTRICT,BEIJING 100013,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】蒋海斌
(72)【発明者】
【氏名】喬金▲リョウ▼
(72)【発明者】
【氏名】張暁紅
(72)【発明者】
【氏名】劉文▲ロ▼
(72)【発明者】
【氏名】宋志海
(72)【発明者】
【氏名】戚桂村
(72)【発明者】
【氏名】高建明
(72)【発明者】
【氏名】蔡傳倫
(72)【発明者】
【氏名】李秉海
(72)【発明者】
【氏名】王湘
(72)【発明者】
【氏名】頼金梅
(72)【発明者】
【氏名】茹越
(72)【発明者】
【氏名】張紅彬
(72)【発明者】
【氏名】韓朋
(72)【発明者】
【氏名】黄文▲ケイ▼
(72)【発明者】
【氏名】張江茹
(72)【発明者】
【氏名】趙亜▲テイ▼
(72)【発明者】
【氏名】姜超
(72)【発明者】
【氏名】孫▲シュ▼▲キ▼
(72)【発明者】
【氏名】郭照▲エン▼
(72)【発明者】
【氏名】陳松
(57)【要約】 (修正有)
【課題】マイクロ波場でアークを発生させることができる多孔質複合材料、そのための調製方法およびその使用を提供する。
【解決手段】無機多孔質骨格と、当該無機多孔質骨格上に支持された炭素材料とを含んだ、多孔質複合材料であって、前記無機多孔質骨格の平均孔径が、0.2~1000μmであり、前記無機多孔質骨格は、多孔質構造を有する無機材料であり、前記炭素材料が、グラフェン、カーボンナノチューブ、グラファイト、カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンドット、カーボンナノワイヤ、炭化可能有機物または炭化可能有機物を含む混合物を炭化して得られる生成物、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機多孔質骨格と、当該無機多孔質骨格上に支持された炭素材料とを含んだ、マイクロ波場でアークを発生させることができる多孔質複合材料であって、
前記無機多孔質骨格の平均孔径が、0.2~1000μmであり、
前記無機多孔質骨格は、多孔質構造を有する無機材料であり、前記無機材料は、炭素、ケイ酸塩、アルミン酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、ゲルマネート、チタネート、酸化物、窒化物、炭化物、ホウ化物、硫化物、ケイ化物、ハロゲン化物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択され、
前記無機多孔質骨格は、メラミンスポンジの炭化後の骨格、フェノール樹脂スポンジの炭化後の骨格、無機繊維によって構成される多孔質骨格、無機粒子の充填によって構成される骨格、およびセラミック繊維骨格前駆体を焼成した後に得られるセラミック繊維骨格からなる群から選択される少なくとも1つの骨格を有し、
前記炭素材料が、グラフェン、カーボンナノチューブ、グラファイト、カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンドット、カーボンナノワイヤ、炭化可能有機物または炭化可能有機物を含む混合物を炭化して得られる生成物、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、
多孔質複合材料。
【請求項2】
前記無機多孔質骨格の平均孔径は、0.2~500μmであり、および/または、
前記無機多孔質骨格の多孔率は、1%~99.99%である、
ことを特徴とする請求項1に記載の多孔質複合材料。
【請求項3】
前記炭素材料の割合が、前記多孔質複合材料の全質量に対して、0.001%~99%である、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の多孔質複合材料。
【請求項4】
前記多孔質複合材料がマイクロ波場で生成する電気アークによって、当該多孔質複合材料は、温度が1000℃超に達する、
ことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の多孔質複合材料。
【請求項5】
前記炭素材料が、グラフェン、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、炭化可能有機物または炭化可能有機物を含む混合物を炭化して得られる生成物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、
ことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の多孔質複合材料。
【請求項6】
前記炭化可能有機物は、合成有機ポリマー化合物および天然の有機ポリマー化合物から選択される、
ことを特徴とする請求項1に記載の多孔質複合材料。
【請求項7】
前記合成有機ポリマー化合物は、ゴムまたはプラスチックであり、
前記プラスチックは、熱硬化性プラスチックおよび熱可塑性プラスチックを含み、
前記天然の有機ポリマー化合物は、デンプン、ビスコース繊維、リグニンおよびセルロースからなる群から選択される少なくとも1つである、
ことを特徴とする請求項6に記載の多孔質複合材料。
【請求項8】
前記合成有機ポリマー化合物は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂、ポリスチレン、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、スチレンブタジエンゴム、ポリウレタンゴム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、
ことを特徴とする請求項7に記載の多孔質複合材料。
【請求項9】
炭化可能有機物を含む前記混合物は、炭化可能な有機物質と、他の金属を含まない有機物質および/または金属を含まない無機物質との混合物である、
ことを特徴とする請求項1に記載の多孔質複合材料。
【請求項10】
炭化可能有機物を含む前記混合物は、石炭、天然ピッチ、石油ピッチまたはコールタールピッチおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、
ことを特徴とする請求項9に記載の多孔質複合材料。
【請求項11】
前記酸化物が、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化セリウム、酸化チタン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択され、前記窒化物が、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化ジルコニウム、窒化ハフニウム、窒化タンタルおよびこれらの組み合わせからなる群から選択され、前記炭化物が、炭化ケイ素、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化タンタル、およびこれらの組み合わせからなる群から選択され、前記ホウ化物が、ホウ化ジルコニウム、ホウ化ハフニウム、ホウ化タンタル、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、
ことを特徴とする請求項1から10の何れか1項に記載の多孔質複合材料。
【請求項12】
前記無機多孔質骨格は、メラミンスポンジの炭化後の骨格、フェノール樹脂スポンジの炭化後の骨格、アルミニウムシリケート繊維の多孔質骨格、ムライト繊維の多孔質骨格、アルミナ繊維の多孔質骨格、ジルコニア繊維の多孔質骨格、酸化マグネシウム繊維の多孔質骨格、窒化ホウ素繊維の多孔質骨格、炭化ホウ素繊維の多孔質骨格、炭化ケイ素繊維の多孔質骨格、チタン酸カリウム繊維の多孔質骨格、およびセラミック繊維骨格前駆体の焼成後に得られるセラミック繊維骨格のうちの少なくとも1つである、
ことを特徴とする請求項1から11の何れか1項に記載の多孔質複合材料。
【請求項13】
請求項1から12の何れか1項に記載の多孔質複合材料を調製する調製方法であって、
工程(1):無機多孔質骨格または無機多孔質骨格前駆体を炭素材料および/または炭素材料前駆体の溶液または分散液に浸漬して、当該無機多孔質骨格または無機多孔質骨格前駆体の孔を当該溶液または分散液で満たす工程;
工程(2):工程(1)で得られた多孔質材料を加熱乾燥することにより、前記無機多孔質骨格または無機多孔質骨格前駆体上に炭素材料または炭素材料前駆体を析出または固化させて支持させる工程;
工程(3):炭素材料前駆体または無機多孔質骨格前駆体の少なくとも1つが出発材料として使用される場合に、工程(2)で得られた前記多孔質材料を不活性ガス雰囲気下で加熱して、当該無機多孔質骨格前駆体を無機多孔質骨格に変換し、および/または当該炭素材料前駆体を還元または炭化する工程;
を含む、
ことを特徴とする調製方法。
【請求項14】
工程(1)における炭素材料または炭素材料前駆体の溶液または分散液は、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリクロロベンゼン、クロロホルム、シクロヘキサン、カプロン酸エチル、酢酸ブチル、二硫化炭素、ケトン、アセトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、水、およびアルコール、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される溶媒を含み、
および/または、
工程(1)における前記溶液または分散液の濃度が0.001~1g/mLであり;および/または、
工程(1)において、前記炭素材料および/または炭素前駆体材料は、無機多孔質骨格材料または無機多孔質骨格材料前駆体と、炭素材料および/または炭素材料前駆体とを合せた全質量の0.001%~99.999%含まれる、
ことを特徴とする請求項13に記載の調製方法。
【請求項15】
前記工程(1)における炭素材料または炭素材料前駆体の溶液または分散液の前記溶媒は、水および/またはエタノールである、
ことを特徴とする請求項14に記載の調製方法。
【請求項16】
工程(2)における加熱および乾燥が、50~250℃で行われる、
ことを特徴とする請求項13から15の何れか1項に記載の調製方法。
【請求項17】
工程(2)における加熱および乾燥が、マイクロ波による加熱によりおこなわれ、
前記マイクロ波の出力は、1W~100KWであり、
前記マイクロ波による加熱時間は、2~200分である、
ことを特徴とする請求項16に記載の調製方法。
【請求項18】
前記無機多孔質骨格前駆体は、セラミック前駆体、炭化可能有機物の多孔質材料、または炭化可能有機物を含む混合物の多孔質材料、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、および/または、
前記炭素材料前駆体は、グラフェン酸化物、改質カーボンナノチューブ、改質カーボンナノファイバー、改質グラファイト、改質カーボンブラック、改質カーボンファイバー、炭化可能有機物または炭化性有機物を含む混合物、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、および/または、
前記工程(3)の加熱は、400~1800℃の温度で行われる、
ことを特徴とする請求項13から17の何れか1項に記載の調製方法。
【請求項19】
前記工程(3)の加熱は、マイクロ波による加熱であり、
前記マイクロ波の出力は、100W~100KWであり、
前記マイクロ波による加熱時間は、好ましくは0.5~200分である、
ことを特徴とする請求項18に記載の調製方法。
【請求項20】
有機化合物を含有する材料のマイクロ波による高温加熱、熱分解、および再利用分野における、又は、バイオマス熱分解、植物油処理、廃高分子材料熱分解、石油化学熱分解、炭素繊維複合材料リサイクル、生ゴミ処理、VOC排ガス処理又はCOD下水処理といった高温触媒分野における、請求項1から12の何れか1項に記載の多孔質複合材料の使用。
【請求項21】
有機化合物含有材料を熱分解および/またはリサイクルするための方法であって、
前記有機化合物含有材料を、請求項1から12の何れか1項に記載の多孔質複合材料と接触させ、
不活性雰囲気下または真空下において、前記有機化合物含有材料と前記多孔質複合材料とにマイクロ波場が印加され、当該多孔質複合材料がマイクロ波場において電気アークを発生させて、高温に急速に到達し、前記有機化合物含有材料に含まれる有機化合物を熱分解させる、
ことを特徴とする、有機化合物含有材料を熱分解および/またはリサイクルするための方法。
【請求項22】
前記有機化合物含有材料は、有機物、有機物を含む混合物、または有機物を含む複合材料である、
ことを特徴とする請求項21に記載の、有機化合物含有材料を熱分解および/またはリサイクルするための方法。
【請求項23】
前記有機化合物含有材料は、次の(i)~(i)からなる群から選択される、ことを特徴とする請求項21に記載の方法;
(i)廃プラスチック、又は、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンターポリマー、ポリカーボネート、ポリ乳酸、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、ポリオキシメチレン、ポリフェニレンエーテルおよびポリフェニレンスルフィドからなる群から選択される少なくとも1つ;あるいは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリアミド、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンターポリマー、ポリカーボネート、ポリ乳酸、ポリメチルメタクリレートおよびポリオキシメチレンからなる群から選択される少なくとも1つ;あるいは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネートおよびポリアミドからなる群から選択される少なくとも1つ;
(ii)廃ゴム、又は、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ニトリルゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、ネオプレン、スチレン系ブロック共重合体及びシリコーンゴムからなる群から選択される少なくとも1つ;あるいは、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム及びエチレンプロピレンゴムからなる群から選択される少なくとも1つ;
(iii)バイオマス、又は、わら、バガス、木の枝、葉、木材チップ、もみ殻、稲茎、稲わら、ピーナッツ殻、ココナッツ殻、ヤシ種皮、クルミ殻、マカダミアナッツ殻、ピスタチオ殻、小麦わら、トウモロコシ茎およびトウモロコシ穂軸からなる群から選択される少なくとも1つ;
(iv)植物油、又は、パーム油、菜種油、ヒマワリ油、大豆油、落花生油、亜麻仁油およびヒマシ油からなる群から選択される少なくとも1つ;あるいは、パーム油、菜種油、ヒマワリ油および大豆油からなる群から選択される少なくとも1つ;
(v)ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、フェノール樹脂およびエポキシ樹脂からなる群から選択されるポリマーマトリクスを含有する炭素繊維複合材料;
および、
(vi)回路基板。
【請求項24】
前記有機化合物含有材料の前記多孔質複合材料に対する重量比率が、1:99~99:1であり;および/または、
前記マイクロ波場のマイクロ波の出力が1W~100KWであり;および/または、
マイクロ波の照射時間が0.1~200分間である、
請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記有機化合物含有材料が、炭素繊維複合材料であり、
当該炭素繊維複合材料中のポリマーマトリックスを熱分解した後、残りの炭素繊維をリサイクルする、
請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記有機化合物含有材料が、回路基板であり、
当該回路基板を熱分解することによって得られた固体残渣を処理して、その中の金属成分と非金属成分とをそれぞれ分離してリサイクルし、および/または、
当該回路基板を熱分解することによって得られたガス生成物を収集する、
請求項21に記載の方法。
【請求項27】
熱分解生成物に含まれる水素が収集される、
請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、マイクロ波加熱、マイクロ波高温熱分解および廃棄物資源利用の分野に関する。具体的には、本発明は、マイクロ波場でアークを発生させることができる多孔質複合材料、そのための調製方法およびその使用、有機化合物を含む物質を熱分解および/またはリサイクルする方法に関する。
【0002】
〔背景技術〕
化学原料の90%以上は、石油、シェールガス、石炭などの化石エネルギーに由来する。しかしながら、化石エネルギーは再生不能であり、その使用中にCO2を生成する。したがって、現在、環境にやさしい再生可能エネルギーの開発は、エネルギー分野における焦点の1つとなっている。より持続可能な経済・社会開発のためには、化石エネルギーを再生可能なバイオマスエネルギーに置き換えることが急務である。その中でも、植物油は、低価格、大規模栽培などの特徴により、研究対象となっている。2012年から2013年にかけて、パーム油、菜種油、ひまわり油、大豆油などの主要植物油が世界で4億6200万トン生産された。近年、熱分解技術の急速な発展により、熱分解技術は、比較的効率的で成熟したバイオマス利用技術の1つとなっている。
【0003】
別の態様では、1950年代以降、人類は83億トンのプラスチックを生産しており、そのうち63億トンが廃棄物となっている。廃プラスチック63億トンのうち、再資源化率は9%、焼却率は12%、残りの79%(約55億トン)が埋め立てられて自然環境に蓄積されている。人類は、プラスチックの生産速度を依然として加速している。現在、プラスチックの年間生産量は4億トンに達している。2050年までに、世界には120億トンの廃プラスチックが存在すると推定されている。毎年800万トンを超えるプラスチックが海洋に投入されている。制限が課せられなければ、2050年までに、海洋には魚よりも多くのプラスチックゴミが存在するのであろう。近年、海洋および河川の生物、並びに飲料水へのプラスチック粒子の汚染について、最上級の国際的刊行物が順次発行されている。海洋および河川の生物並びに飲料水へのプラスチック粒子の汚染は、プラスチック汚染に対する社会全体の関心を喚起してきた。2018年、国連環境計画は、使い捨てプラスチックによる汚染問題に初めて焦点を当てた。また、国連環境計画は「世界環境デー」のテーマとして「やめよう、プラスチック汚染」を発表し、世界中にプラスチック汚染の「宣戦布告」を呼びかけた。
【0004】
プラスチック汚染の問題を解決するために、科学的研究者は、絶え間ない努力を払ってきた。1970年以来、自然環境で分解可能なプラスチックの調製に向けられた多くの研究がなされてきた。しかしながら、分解性プラスチックは生物医学、農業用マルチフィルム及びごみ袋等においてのみ重要な用途を有し、リサイクルが必要な場合には、分解性プラスチックの存在が、リサイクルされたプラスチック物品の性能に重大な影響を及ぼす。さらに、分解性プラスチックは、理想的でない自然環境で分解するのに比較的長い時間がかかり、したがって、白色汚染の問題を効果的に解決することができない。
【0005】
現在、機械的リサイクルは、廃プラスチックを処理するための唯一の広く使用されている技術的解決策である。主な工程は、有機残渣の連続的な除去、洗浄、粉砕、および溶融および再処理である。溶融および再処理のプロセスでは、一般に、性能を維持するために新しい材料をブレンドすることが必要である。異なるプラスチックは処理プロセスに対して異なる反応を示し、これは、機械的リサイクルの技術的解決策は、ごく少数のタイプのプラスチックにのみ適用可能である。現在、ポリエチレンテレフタレート(PET)とポリエチレン(PE)のみがリサイクルされており、それぞれ年間プラスチック生産量の9%と37%を占めている。高温で溶融および流動しない温度感受性プラスチック、複合材料、およびプラスチック(熱硬化性プラスチックなど)は、この方法では処理することができない。
【0006】
廃プラスチックを化学変換または熱変換により小分子炭化水素(ガス、液体油または固体ワックス)に調製するケミカルリサイクル法は、機械的リサイクルを上回る技術的解決策であると考えられる。そして、得られた生成物は、燃料または化学原料として使用することができる。しかしながら、この技術的解決策は主に高コストのために、現在広く使用されていない。一方では、ケミカルリサイクル処理の大部分が高価な触媒を必要とする。また、触媒の選択性は原料が純粋なポリマーでなければならないことを必要とし、これは、廃プラスチックの時間のかかる労働集約的な選別を必要とする。一方、ケミカルリサイクル処理は、多くのエネルギーを消費する。
【0007】
また、世界経済の急速な発展に伴い、様々な産業においてゴム材料が広く使用されており、ゴム製品に対する需要も増加している。自動車の出現は人間の生産と生活に大きな利便性をもたらし、社会の発展を促進した。同時に、無視しにくい隠れた危険、すなわち環境および資源問題の悪化ももたらした。自動車の製造が年々増加することにつれて、資源の消費及び廃タイヤの量は増加し続けている。中国は広大な領土と人口を有し、タイヤを使用する大国である。廃タイヤは土地資源や環境空間を多く占有し、さらに廃タイヤの分解に要する未知の時間の間、圧縮して浄化することが容易ではないばかりでなく、生分解が困難である。廃タイヤは、環境に大きな害を与え、処理が困難であるため、「ブラック汚染」と呼ばれている。廃ゴム資源の再利用が急務となっている。
【0008】
他の態様によれば、カーボンファイバー複合材料は、軽重量、高強度、及び良好な耐食性等の優れた特性を有する。炭素繊維複合材料は航空宇宙、新エネルギー、自動車産業、スポーツ用品などのハイテク分野で広く使用されている。炭素繊維複合材料の普及に伴い、発生する炭素繊維複合材料廃棄物は日々増加している。大量の炭素繊維複合材料廃棄物が人々の注目を集めており、これは環境保護及び経済的利益に多大な影響を及ぼす。環境保全や国際情勢への関心が高まる中、エネルギー・資源危機の原因となっている。また、炭素繊維複合材料中の炭素繊維は高価で総合性能に優れており、炭素繊維リサイクル技術の研究は今後の重要な開発動向である。
【0009】
現在の炭素繊維リサイクル技術には、主に、物理的リサイクル法および化学的リサイクル法が含まれる。物理的リサイクル法は、新素材の原料である炭素繊維複合材料廃棄物を粉砕・溶融するものである。しかしながら、この方法は複合材料の種々の成分の特性を損ない、特に、そこから炭素繊維を得ることができず、リサイクル性を達成することができない。ケミカルリサイクルとは、熱分解または有機溶剤分解を利用して炭素繊維複合材廃棄物から炭素繊維をリサイクルする手法である。有機溶剤分解による再利用により、清浄なカーボンファイバーが得られる。しかし、再資源化には多量の有機溶剤が使用され、環境汚染の原因となる。使用済み溶媒の分離(液体分離、抽出、蒸留など)は操作が複雑であり、高いリサイクルコストをもたらす。また、この方法は、カーボンファイバー強化樹脂複合材のマトリックス樹脂の種類および硬化剤の種類についても選択的であり、全てのマトリックス樹脂に適しているわけではない。従来技術に開示された最も工業的に実行可能なものは、炭素繊維複合材料の熱分解である。しかしながら、従来の加熱方法は、一般に効率が低く、エネルギーコストが高すぎる。
【0010】
プリント基板(PCB)は、ほとんどすべての電子情報製品の必須部品であり、電子部品および電気制御などの様々な産業分野で広く使用されている。PCB製造における基板材料として、銅クラッド積層体は、基板、銅箔および接着剤の3つの部分から主に構成される。基板は、高分子合成樹脂と補強材とから構成されている。接着剤は、通常、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シアネートエステル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂等である。2000年に入ると、銅張積層体の年間生産量は160,100トンに達した。2006年、中国のプリント回路基板出力は日本を上回り、世界最大の生産性を誇るプリント回路基板メーカーとなった。これまで、世界のPCBの約40%は中国で生産されているが、廃棄プリント回路基板(WPCB)の量も膨大である。機械的処理および酸溶解のような既存のWPCB処理方法は主に回路基板中の金属のリサイクルに焦点を当てているが、回路基板中の非金属成分の有効なリサイクルを伴うことは稀であり、さらに、これらの方法のほとんどは環境安全性に大きな脅威をもたらす。したがって、洗浄で効率的なWPCB処理方法を考案することは、現在の研究の重要な問題の1つである。
【0011】
マイクロ波とは、赤外線と超高周波(UHF)電波との間の波長を有し、非常に強い透過能力を有し、1mから1mmの間の波長を有し、対応する300GHzから300MHzの周波数を有する電磁波を指す。マイクロ波発生器のマグネトロンは、マイクロ波を発生するために電源の出力を受け取る。マイクロ波は導波路を介してマイクロ波加熱器に伝達される。そして、加熱される材料は、マイクロ波場のアクション下で加熱される。マイクロ波加熱モードは通常の熱伝達とは全く異なる。高周波電場は、毎秒数億個の速度で、印加電場および方向を周期的に変更させる。その結果、材料中の極性分子は、電場により、並びに、分子間の摩擦およびスクイーズアクションにより、高周波数で振動する。材料は急速に加熱され、それによって材料の内部温度および表面温度が同時に急速に上昇する。
【0012】
近年、触媒を用いないマイクロ波熱分解技術が開発されている。現在最も一般的に使用されているポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルなど、ある程度汚染された廃プラスチックを同時に処理し、化学原料に熱分解することができる。さらに、マイクロ波熱分解法は廃ゴムを単量体に熱分解し、次いで再重合して使用するためにも使用される。したがって、マイクロ波熱分解技術はプラスチック汚染の問題を解決し、ゴム資源を再利用するための鍵となることが期待される。
【0013】
特許出願CN102585860A、特許出願CN103252226A、特許出願CN106520176Aなどの数多くの特許が、マイクロ波のこの特性を利用した熱分解の技術を開示している。しかしながら、それらはすべて、マイクロ波場で熱を発生させ、熱分解される材料に熱を伝達し、それによって熱分解目的を達成するために、炭化ケイ素のような通常のマイクロ波感受性材料を使用する。このような方法では、高い作業温度、理想的な効率および製品組成を達成することができない。従って、マイクロ波場で高温を迅速に発生させ、材料に熱を伝達できるマイクロ波加熱材料を開発することが依然として必要である。また、廃プラスチック、廃ゴム、バイオマスまたは植物油のマイクロ波高温熱分解のための効率的な方法を開発することが依然として必要である。また、炭素繊維複合材料のマイクロ波高温熱分解および炭素繊維のリサイクルのための効率的な方法、ならびに有効な資源リサイクルを達成するための回路基板のマイクロ波高温熱分解のための方法を開発することが依然として必要である。このような材料および方法の開発は、多大な応用の見通しを有する。
【0014】
〔発明の開示〕
従来技術の問題に鑑み、本発明の目的は、多孔質複合材料、ならびにその調製方法および使用を提供することである。多孔質複合材料はマイクロ波場において電気アークを発生させて、迅速に(例えば、数十秒~数分以内に)高温(特に1000℃を超える)を発生させることができる。それによって、有機化合物含有材料(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリスチレンなどのプラスチック;ゴム;植物油;バイオマス;炭素繊維複合材料;回路基板)の効果的なマイクロ波高温加熱またはマイクロ波熱分解を達成し、熱分解生成物中の有益な物質を化学原料として、または他の局面での適用のためにリサイクルする。さらに、多孔質複合材料自体は高温に耐えることができ、工業用途に適している。
【0015】
本発明の他の目的は、多孔質複合材料の製造方法を簡単かつ容易に実施し、大規模製造を容易に実現することである。
【0016】
本発明の他の目的は、多孔質複合材料を用いて、有機化合物含有材料をマイクロ波高温加熱またはマイクロ波熱分解する方法によって、効率的な操作を達成することができることである。熱分解生成物は高い付加価値を達成することができ、特に、主に軽質成分(特に気相または小分子ガス)である。
【0017】
本発明の別の目的は、資源の有効なリサイクルを達成するための、回路基板のマイクロ波高温熱分解のための方法を提供することである。熱分解ガス生成物はリサイクル価値の高いガスとすることができ、固体残渣は、金属成分と非金属成分との分離を容易に実現することができる。また、固体残渣は、金属及びガラス繊維の効率的な回収を容易に実現することができる。これにより、廃回路基板のすべての構成部品のクリーンかつ効率的な回収を実現した。
【0018】
本発明の上記目的は、マイクロ波場で電気アークを発生させることができる多孔質複合材料によって達成することができる。マイクロ波場において電気アークを発生させることができる多孔質複合材料は、無機多孔質骨格と、無機多孔質骨格上に支持された炭素材料とを含む。
【0019】
具体的には、本発明の第1の態様によれば、無機多孔質骨格と、無機多孔質骨格上に支持された炭素材料とを含む、マイクロ波場で電気アークを発生させることができる多孔質複合材料を提供する。無機多孔質骨格の平均孔径は0.2~1000μmである。
【0020】
ここで、「支持された」とは、炭素材料が特異的な結合力によって無機質多孔質骨格の表面及び/又は構造中に固定されていることを意味し、表面とは、気相と接することができる多孔質骨格の全ての界面を意味し、「固定されている」とは、細孔チャネルの内側というよりむしろ、多孔質骨格自体の内側に嵌め込まれているか又は固定されていることを意味する。
【0021】
電気アークはガス放電現象を指し、高温電離ガスのビームであり、一種のプラズマでもある。
【0022】
炭素材料は、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラファイト、カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンドット、カーボンナノワイヤ、炭化可能有機物の炭化によって得られる生成物、および炭化可能有機物の混合物の炭化後の生成物からなる群;好ましくはグラフェン、カーボンナノチューブ、炭化可能有機物の炭化によって得られる生成物、および炭化可能有機物の混合物の炭化後の生成物からなる群、から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0023】
炭化とは、一定の温度および大気条件下で有機物を処理し、有機物中の水素、酸素、窒素、硫黄等の全部または大部分を揮発させて、炭素含有量の多い合成原料を得るプロセスをいう。
【0024】
炭化可能有機物とは、合成有機高分子化合物と天然有機高分子化合物とを含む有機ポリマー化合物をいう;
当該合成有機高分子化合物は、好ましくはゴム、または熱硬化性プラスチックおよび熱可塑性プラスチックを含むプラスチック、より好ましくはエポキシ樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂、ポリスチレン、スチレン-ジビニルベンゼンコポリマー、ポリアクリロニトリル、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、スチレンブタジエンゴムおよびポリウレタンゴムからなる群から選択される少なくとも1種であり;
天然有機高分子化合物は、好ましくはデンプン、ビスコース繊維、リグニンおよびセルロースからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0025】
炭化可能有機物を含む混合物は、炭化可能な有機物質と、他の金属を含まない有機物質および/または金属を含まない無機物質との混合物を指し、好ましくは、石炭、天然ピッチ、石油ピッチまたはコールタールピッチからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0026】
炭素材料の割合は、多孔質複合材料の全質量に対して、0.001%~99%、好ましくは0.01%~90%、より好ましくは0.1%~80%とすることができる。
【0027】
無機多孔質骨格とは、多孔質構造を有する無機材料をいう。無機多孔質骨格の平均孔径は、0.2~1000μm、好ましくは0.2~500μm、より好ましくは0.5~500μm、特に好ましくは0.5~250μm、または0.2~250μmである。無機多孔質骨格の多孔率は、1%~99.99%、好ましくは10%~99.9%、より好ましくは30%~99%であってもよい。
【0028】
ここで、平均孔径は走査型電子顕微鏡(SEM)で測定する。まず、個々の細孔の細孔径は、個々の細孔の中心を通る直線の2つの交点とSEM写真の細孔の輪郭との間の距離の最小値によって決定される。そして、平均孔径は、SEM写真に示した全ての細孔の細孔径値の数平均値によって決定される。
【0029】
多孔率は、GB/T 23561.4-2009を参照して決定される。
【0030】
無機材料は炭素、ケイ酸塩、アルミン酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、ゲルマネート、チタネート、酸化物、窒化物、炭化物、ホウ化物、硫化物、ケイ化物およびハロゲン化物のうちの1つまたは複数の組み合わせであってもよく、好ましくは炭素、ケイ酸塩、チタネート、酸化物、炭化物、窒化物およびホウ化物のうちの1つまたは複数の組み合わせである。ここで酸化物は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化セリウムおよび酸化チタンからなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。また、窒化物は、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化ジルコニウム、窒化ハフニウムおよび窒化タンタルからなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。炭化物は、炭化ケイ素、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウムおよび炭化タンタルからなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。ホウ化物は、ホウ化ジルコニウム、ホウ化ハフニウムおよびホウ化タンタルからなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。無機多孔質骨格の無機材料は、より好ましくは炭素、ケイ酸塩、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、窒化ホウ素、およびチタン酸カリウムからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0031】
好ましくは、無機多孔質骨格は、以下の骨格のうちの少なくとも1つである。すなわち、ポリマースポンジの炭化後に得られる炭素骨格、無機繊維によって構成された多孔質骨格、無機スポンジ骨格、無機粒子の充填によって構成される骨格、セラミック多孔質骨格前駆体をベーキングした後に得られるセラミック多孔質骨格、セラミック繊維骨格前駆体をベーキングした後に得られるセラミック繊維骨格のうちの少なくとも1つであり;好ましくはメラミンスポンジの炭化後に得られる骨格、フェノール樹脂スポンジの炭化後の骨格、ケイ酸アルミニウム繊維(ケイ酸アルミニウムロックウールなど)の多孔質骨格、ムライト繊維の多孔質骨格、アルミナ繊維(アルミナ繊維板など)の多孔質骨格、ジルコニア繊維の多孔質骨格、酸化マグネシウム繊維の多孔質骨格、窒化ホウ素繊維の多孔質骨格、炭化ホウ素繊維の多孔質骨格、炭化ケイ素繊維の多孔質骨格、チタン酸カリウム繊維の多孔質骨格、およびセラミック繊維骨格前駆体をベーキングした後に得られるセラミック繊維骨格のうちの少なくとも1つである。
【0032】
無機多孔質骨格の多孔質構造は、スポンジ様構造形態などの骨格材料自体の細孔構造、または繊維綿、繊維フェルト、ファイバーボード、および他の構造形態などの繊維材料の充填によって形成される細孔構造、または砂杭構造形態などの粒状材料の充填によって形成される細孔構造、または上記の様々な形態の組合せに由来しうるものである。無機多孔質骨格の多孔質構造は、好ましくは繊維材料の充填によって形成された細孔構造由来のものである。特に、上記のような無機繊維によって構成される多孔質骨格に注目すべきである。その中の「多孔質」は繊維材料の充填によって形成された骨格中の細孔構造を指すが、繊維自体が多孔質であることを意味しない。
【0033】
本発明による多孔質複合材料は、マイクロ波場において、例えば900wのマイクロ波場において、高温電気アークを発生させることができる。多孔質複合材料は、その温度を1000℃を超えて上昇させることができる電気アークを発生させることができ、多孔質複合材料自体は、3000℃までの高温に耐えることができる。本発明に係る、マイクロ波場で電気アークを発生させることができるこの多孔質複合材料は、効率的なマイクロ波加熱材料である。
【0034】
<調製方法>
本発明に係る第2の態様によれば、多孔質複合材料の調製方法が提供される。本発明による調製方法は、以下の工程を含む:
工程(1): 無機多孔質骨格または無機多孔質骨格前駆体の孔が溶液または分散液で満たされるように、無機多孔質骨格または無機多孔質骨格前駆体を炭素材料および/または炭素材料前駆体の溶液または分散液に浸漬する工程;
工程(2): 工程(1)で得られた多孔質材料を加熱乾燥することにより、無機多孔質骨格または無機多孔質骨格前駆体上に炭素材料または炭素材料前駆体を析出または固化させて支持させる工程;
工程(3): 炭素材料前駆体又は無機多孔質骨格前駆体の少なくとも一方を出発材料として使用する場合には、以下の工程をさらに実施する:工程(2)で得られた多孔質材料を不活性ガス雰囲気下で加熱して、無機多孔質骨格前駆体を無機多孔質骨格に変換する工程、および/または炭素材料前駆体を還元又は炭化する工程。
【0035】
工程(1)における炭素物質またはその前駆物質の溶液または分散液は、以下から選択される溶媒を含み得る:ベンゼン、トルエン、キシレン、トリクロロベンゼン、クロロホルム、シクロヘキサン、カプロン酸エチル、酢酸ブチル、二硫化炭素、ケトン、アセトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、水およびアルコール;ここで、アルコールは好ましくはプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、イソプロパノールおよびエタノールからなる群より選択される少なくとも1つである。
【0036】
本願発明の前記製造方法において用いられる支持用の炭素材料前駆体は、支持の前において、人および環境にやさしい溶媒に溶解または分散させることができる前駆体であることが好ましく、そのため、調製処理が「地球に優しい」。人体及び環境にやさしい溶剤は、エタノール、水及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種である。すなわち、工程aにおける溶媒は、より好ましくは水および/またはエタノールを含む溶媒であり、さらに好ましくは、水および/またはエタノールである。
【0037】
溶液または分散液は、溶媒中の炭素材料および/または炭素材料前駆体の十分な溶解または十分な分散を達成することのみが必要である。一般に、その濃度は、0.001~1g/mL、好ましくは0.002~0.8g/mL、さらに好ましくは0.003g~0.5g/mLであり得る。
【0038】
工程(2)における加熱および乾燥は50~250℃、好ましくは60~200℃、より好ましくは80~180℃の温度で行うことができ、マイクロ波加熱が好ましい。マイクロ波の出力は、1W~100KW、好ましくは500W~10KWであってもよい。マイクロ波加熱時間は、2~200分、好ましくは20~200分とすることができる。
【0039】
無機多孔質骨格前駆体は無機多孔質骨格に変換可能な多孔質材料であり、セラミック前駆体、炭化可能有機物の多孔質材料または炭化可能有機物の混合物の多孔質材料からなる群から選択される少なくとも1つであり得る。
【0040】
炭素材料前駆体は、グラフェン酸化物、改質カーボンナノチューブ、改質カーボンナノファイバー、改質グラファイト、改質カーボンブラック、改質カーボンファイバー、および炭化可能有機物または炭化可能有機物を含む混合物のうちの少なくとも1つであってもよい。改質カーボンナノチューブ、改質カーボンナノファイバー、改質グラファイト、改質カーボンブラック、および改質カーボンファイバーは水または有機溶剤中のこれらの炭素材料の分散性を改善し、安定な分散液を得るために前処理される炭素材料を指す。例えば、分散剤および界面活性剤による前処理、または、親水基のグラフト化等による前処理を行う。これらの前処理手段は全て、従来技術における分散性を改善するための前処理手段を採用している。グラフェンの水性分散、グラフェンのエタノール分散、グラフェンの水性スラリー、グラフェンの油性スラリー、酸化物グラフェンの水性分散、酸化物グラフェンのエタノール分散、酸化物グラフェンのN-メチルピロリドン分散、酸化物グラフェンの水性分散、カーボンナノチューブの水性分散、カルボキシル化カーボンナノチューブの水性分散、カーボンナノチューブのエタノール分散、カーボンナノチューブのジメチルホルムアミド分散、カーボンナノチューブのN-メチルピロリドンスラリーなど、上記の前処理が施された炭素材料も、全て市販されている。
【0041】
工程(3)の加熱温度は400~1800℃、好ましくは600~1500℃、より好ましくは800~1200℃とすることができ、マイクロ波加熱が好ましい。マイクロ波出力は、100W~100KW、好ましくは700W~20KWであってもよい。マイクロ波加熱時間は、0.5~200分、好ましくは1~100分とすることができる。
【0042】
一実施形態では、調製方法が以下のステップを含む:
a. 支持用炭素材料または炭素材料前駆体の溶液または分散液の調製;
b. 無機多孔質骨格または無機多孔質骨格前駆体を、工程aの溶液または分散液に浸漬する工程であって、無機多孔質骨格または無機多孔質骨格前駆体の細孔に前記溶液または分散液を充填する工程であり、炭素材料および/または炭素材料前駆体が、無機多孔質骨格材料または無機多孔質骨格材料前駆体と、炭素材料および/または炭素材料前駆体との総質量の0.001%~99.999%、好ましくは0.01%~99.99%、およびより好ましくは0.1%~99.9%含む;
c. 工程bで得られた多孔質材料を取り出し、その後、加熱および乾燥し、炭素材料または炭素材料前駆体を沈殿または固化させ、無機多孔質骨格または無機多孔質骨格前駆体上に支持する;加熱および乾燥温度は、50~250℃、好ましくは60~200℃、より好ましくは80~180℃である;
上記出発原料が炭素材料及び無機多孔質骨格である場合には、工程cの後にマイクロ波場で電気アークを発生させることができる多孔質複合材料を得る工程を含む;
さらに、使用される出発材料が炭素材料前駆体または無機多孔質フレームワーク前駆体の少なくとも1つを含む場合、以下の工程dを実施する;
d. 工程cで得られた多孔質材料を不活性ガス雰囲気下で加熱して、無機多孔質骨格前駆体を無機多孔質骨格に変換し、および/または炭素材料前駆体を還元または炭化し、それによって、マイクロ波場で電気アークを発生させることができる多孔質複合材料を得る;加熱温度は400~1800℃、好ましくは600~1500℃、より好ましくは800~1200℃である。
【0043】
本発明の製造方法において、無機多孔質骨格上に担持される炭素材料がグラフェンである場合には、工程(1)または工程aにおいて、グラフェン酸化物の水溶液を用いることが好ましい。
【0044】
無機多孔質骨格上に担持された炭素材料がカーボンナノチューブである場合、工程(1)または工程aにおいて、カーボンナノチューブの分散液を用いることが好ましい。
【0045】
支持のためのカーボン材前駆体として熱硬化性プラスチックを選択する場合、工程(1)または工程aにおいて、従来技術において選択された熱硬化性プラスチックの従来の硬化剤に従って、適切な硬化システムを整備する必要がある。硬化システムにおいて、以下のグループから選択される任意の1つ以上の添加剤が添加され得る:硬化促進剤、染料、顔料、着色剤、酸化防止剤、安定剤、可塑剤、滑沢剤、流動調整剤または助剤、難燃剤、滴下防止剤、固化防止剤、接着促進剤、導電剤、多価金属イオン、衝撃調整剤、放出助剤、核形成剤など。添加剤の使用量は通常の量であってもよいし、実際の条件に応じて調整することができる。支持用炭素材料前駆体として熱硬化性プラスチックを選択した場合、工程cで加熱した後、炭素材料前駆体として使用した熱硬化性樹脂を硬化させ、無機多孔質骨格上に支持させる。
【0046】
支持用炭素材料前駆体として熱硬化性プラスチックを選択する場合、工程(1)または工程aにおいて、上記熱硬化性プラスチックおよびその硬化システムを溶解させて支持用炭素材料前駆体溶液を得るために、従来技術における対応する良い溶媒が選択される。
【0047】
支持用炭素材料前駆体として熱可塑性物質を選択する場合、支持用炭素材料前駆体の溶液には、酸化防止剤、共酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、オゾン安定剤、加工助剤、可塑剤、軟化剤、ブロッキング防止剤、発泡剤、染料、顔料、ワックス、増量剤、有機酸、難燃剤、シランカップリング剤およびプラスチック加工中に従来技術で一般的に使用される他の添加剤を添加することができる。使用される添加剤の量は従来の量であってもよいし、実際の状況に応じて調整されてもよい。
【0048】
本発明に係る調製方法では、無機多孔質骨格の細孔は、数回圧搾するか、全く圧搾しないことによって、支持する炭素材料または炭素材料前駆体の溶液または分散液を充填することができる。
【0049】
本発明の製造方法の工程(2)において、工程(1)で得られた多孔質材料を取り出した後、工程(1)で得られた多孔質材料中に支持させるための炭素材料または炭素材料前駆体の過剰な溶液または分散液を除去する手段を講じてもよいし、しなくてもよい。上記の測定は圧搾操作および遠心操作のうちの1つまたは2つを含むが、これらに限定されない。
【0050】
本発明による調製方法の工程(2)および(3)における加熱は好ましくはマイクロ波加熱であり得、これは効率的であるだけでなく、均一な加熱を達成し得る。
【0051】
具体的には工程(2)において、マイクロ波の出力は1W~100KW、好ましくは500W~10KWであってもよく、マイクロ波照射時間は2~200分、好ましくは20~200分である。
【0052】
工程(3)ではマイクロ波の出力が100W~100KW、好ましくは700W~20KWであってもよく、マイクロ波照射時間は0.5~200分、好ましくは1~100分である。
【0053】
本発明の製造方法の工程(3)における加熱は、不活性ガス雰囲気下で行う必要がある。不活性ガス雰囲気は、従来技術で一般に使用される不活性ガス雰囲気、好ましくは窒素から選択される。
【0054】
本発明による調製方法において使用される装置は、全て共通のものである。
【0055】
<適用例>
本発明による多孔質複合材料は、無機多孔質骨格と炭素材料との組み合わせにより、予想外にも優れた機械的特性を示す。本発明の多孔質複合材料は、マイクロ波場、例えば900wのマイクロ波場で急速に高温を発生させるために電気アークを発生させることができる。本発明による多孔質複合材料は、多孔質複合材料の温度を1000℃超に上昇させることができる電気アークを発生させることができる。これにより、前記多孔質複合材料は、マイクロ波高温加熱、バイオマス熱分解、植物油処理、廃ポリマー材料熱分解、石油化学熱分解、炭素繊維複合材料リサイクル、ごみ処理、VOC廃ガス処理、COD汚水処理、および高温触媒などの分野で使用することができる。同時に、多孔質複合材料自体は高温に耐性があり、その調製プロセスは単純かつ実施が容易であり、それにより、大規模調製が容易に実現される。
【0056】
したがって、第3の態様によれば、本発明は、有機化合物を含む物質(例えば、有機物、有機物を含む混合物または有機物を含む複合材料)、高温触媒および他の分野の、マイクロ波高温加熱、熱分解およびリサイクルのための、本発明による多孔質複合材料の使用を提供し、特にバイオマス熱分解、植物油処理、廃ポリマー材料熱分解、石油化学熱分解、炭素繊維複合材料リサイクル、ごみ処理、VOC廃ガス処理またはCOD汚水処理のための使用を提供する。
【0057】
石油化学製造工程においては、原料として石油分留生成物(石油ガスを含む)が一般的に使用され、長鎖炭化水素分子を種々の短鎖ガス状炭化水素と少量の液状炭化水素とに分解して有機化学原料を提供するために、熱分解よりも温度が使用される石油化学熱分解手段。
【0058】
本発明による多孔質複合材料は、有機化合物を含む物質を熱分解および/またはリサイクルするのに特に適していてもよい。
【0059】
したがって、第4の態様によれば、本発明は、有機化合物を含む物質を熱分解および/またはリサイクルするための方法を提供する。有機化合物を含む物質を、本発明による多孔質複合材料と、不活性雰囲気下または真空下で接触させ、有機化合物および多孔質複合材料を含む上記物質にマイクロ波場を印加する。多孔質複合材料はマイクロ波場において電気アークを発生させ、それによって急速に高温に達し、有機化合物を含む物質を熱分解する。
【0060】
有機化合物含有材料は、有機材料、有機材料を含む混合物、および有機材料含有の複合材料を含み、これらは、例えば以下から選択されてもよい:
-廃プラスチック;ここで、廃プラスチックとは、民生用、工業用および他の目的のために使用されたプラスチックおよびそれらの混合物を指す。廃プラスチックの例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。具体的には、ポリオレフィン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリアリレートのうちの少なくとも1つのようなポリエステルとそれらの混合物)、ポリアミド、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンターポリマー、ポリカーボネート、ポリ乳酸、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、ポリオキシメチレン、ポリオキシメチレンエーテルおよびポリフェニレンスルフィドのうちの少なくとも1つ;好ましくはポリエチレンおよびその混合物(低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンおよび超高分子量ポリエチレンのうちの少なくとも1つを含んでいるものであるが、これらに限定されない)、ポリプロピレンおよびその混合物、ポリ塩化ビニルおよびその混合物、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン及びその混合物(通常のポリスチレン、発泡ポリスチレン、高衝撃ポリスチレン及びシンジオタクチックポリスチレンを含むが、これらに限定されない)、ポリアミド、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンターポリマー、ポリカーボネート、ポリ乳酸、ポリメチルメタクリレートおよびポリオキシメチレン;より好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネートおよびポリアミドのうちの少なくとも1つ。廃プラスチックは一緒に混合され、分別することなく直接処理することができ、それによって、分解生成物に特別な要件がある場合には、廃プラスチックをタイプに応じて処理する必要があることを除いて、廃プラスチックの処理手順を単純化する。
【0061】
-廃ゴム;ここで、廃ゴムとは、最終的に廃棄または交換されて使用されてきた、民生用、工業および他の目的のためのゴムおよびそれらの混合物を指し、好ましくは天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ニトリルゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、ネオプレン、スチレン系ブロックコポリマーおよびシリコーンゴムのうちの少なくとも1つ、より好ましくは天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴムおよびエチレンプロピレンゴムのうちの少なくとも1つ。廃棄ゴムは一緒に混合され、選別することなく直接処理され、それによって廃棄ゴムの処理手順を単純化することができる;ただし、分解生成物に特別な要件がある場合には、廃棄ゴムがタイプに応じて処理される必要がある。
【0062】
-バイオマス;ここで、バイオマスとは、セルロース、ヘミセルロース、リグニンを主成分とする光合成により生成される種々の動物、植物、藻類であって、わら、バガス、木枝、葉、木材チップ、もみ殻、稲茎、わら、ピーナッツ殻、ココナッツ殻、ヤシ種皮、クルミ殻、マカダミアナッツ殻、ピスタチオ殻、小麦わら、トウモロコシ茎、およびトウモロコシ穂軸のうちの少なくとも1つを含むが、これらに限定されない。
【0063】
-植物油;ここで、本明細書において、植物油とは、植物の果実、種子および胚、ならびにそれらの混合物から得られる油脂をいう。植物の果実、種子および胚芽から得られる油脂としては、パーム油、菜種油、ヒマワリ油、大豆油、落花生油、亜麻仁油およびヒマシ油の少なくとも1つ、好ましくはパーム油、菜種油、ヒマワリ油および大豆油の少なくとも1つが挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
-炭素繊維複合材料;ここで、炭素繊維複合材料は、従来技術における炭素繊維強化ポリマー複合材料であることが好ましい。炭素繊維と複合化されたポリマーマトリクスはポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、フェノール樹脂およびエポキシ樹脂のうちの少なくとも1つを含むが、これらに限定されない。
【0065】
-回路基板;ここで、回路基板は、現在の技術的状態で製造される種々の回路基板とすることができる。
【0066】
炭素繊維複合材料の場合、不活性雰囲気下または真空中で、マイクロ波場が炭素繊維複合材料および多孔質複合材料に印加され、多孔質複合材料は、マイクロ波場において電気アークを発生させ、それによって、炭素繊維複合材料中のポリマーマトリックスを熱分解するために急速に高温に達し、一方、炭素繊維は残り、リサイクルされる。
【0067】
回路基板の場合、回路基板は多孔質複合材料と接触し、不活性雰囲気下または真空下で、マイクロ波場が回路基板および多孔質複合材料に印加される。多孔質複合材料は、マイクロ波下で電気アークを発生し、急速に高温に達することにより、回路基板内の高分子合成樹脂などの有機材料を熱分解し、発熱量の高い可燃性ガスであるガス生成物や固体残渣を大量に得るものであり、固体残渣は、緩い構造で分離が容易な金属成分と、主にガラス繊維混合物などの非金属成分とを含む。
【0068】
有機化合物を含む物質と多孔質複合材料との重量比率は、1:99~99:1、好ましくは1:50~50:1、より好ましくは1:30~30:1、より好ましくは1:10~10:1であってよい。
【0069】
マイクロ波場のマイクロ波出力は、1W~100KW、より好ましくは100W~50KW、より好ましくは200W~50KW、より好ましくは500W~20KW、最も好ましくは700W~20KW、特に例えば700W、900Wまたは1500Wであり得る。マイクロ波照射の時間は、0.1~200分間、より好ましくは0.5~150分間、最も好ましくは1~100分間とすることができる。電気アークはマイクロ波の場で発生し、700~3000℃、好ましくは800~2500℃、より好ましくは800~2000℃に迅速に到達することができる。これにより、有機化合物を含む物質中の有機化合物が熱分解される。
【0070】
例えば、パーム油を熱分解するためのマイクロ波出力は200W~80KW、好ましくは300W~50KWとすることができ、マイクロ波照射時間は、0.2~200分、好ましくは0.3~150分とすることができる。菜種油を熱分解するためのマイクロ波出力は100W~50KW、好ましくは200W~30KWとすることができ、マイクロ波照射時間は、0.1~150分、好ましくは0.2~130分とすることができる。ヒマワリ油を熱分解するためのマイクロ波出力は80W~60KW、好ましくは200W~40KWとすることができ、マイクロ波照射時間は、0.3~120分、好ましくは0.4~100分とすることができる。大豆油を熱分解するためのマイクロ波出力は120W~40KW、好ましくは200W~30KWとすることができ、マイクロ波照射時間は、0.2~100分、好ましくは0.5~90分とすることができる。ピーナッツ油を熱分解するためのマイクロ波出力は100W~10KW、好ましくは300W~8KWとすることができ、マイクロ波照射時間は、0.3~100分、好ましくは0.5~90分とすることができる。亜麻仁油を熱分解するためのマイクロ波出力は150W~80KW、好ましくは300W~50KWとすることができ、マイクロ波照射時間は、0.1~80分、好ましくは0.3~70分とすることができる。ヒマシ油を熱分解するためのマイクロ波出力は200W~50KW、好ましくは300W~40KWとすることができ、マイクロ波放射時間は、0.5~70分、好ましくは0.6~60分とすることができる。わらを熱分解するためのマイクロ波出力は100W~70KW、マイクロ波照射時間は0.2~150分とすることができる。バガスを熱分解するためのマイクロ波出力は80W~50KWとすることができ、マイクロ波照射時間は0.2~120分とすることができる。木枝を熱分解するためのマイクロ波出力は120W~100KW、マイクロ波照射時間は0.5~200分とすることができる。葉を熱分解するためのマイクロ波出力は50W~40KW、マイクロ波照射時間は0.1~80分とすることができる。木材チップを熱分解するためのマイクロ波出力は100W~10KWで、マイクロ波照射時間は0.2~100分とすることができる。もみ殻を熱分解するためのマイクロ波出力は80W~80KW、マイクロ波照射時間は0.2~120分が可能である。稲茎を熱分解するためのマイクロ波出力は100W~70KWで、マイクロ波照射時間は0.2~100分である。稲わらを熱分解するためのマイクロ波出力は50W~60KW、マイクロ波照射時間は0.2~60分が可能である。ピーナッツ殻を熱分解するためのマイクロ波出力は100W~50KWとすることができ、マイクロ波照射時間は、0.3~70分とすることができる。ココナッツ殻を熱分解するためのマイクロ波出力は200W~80KWとすることができ、マイクロ波照射時間は0.5~150分とすることができる。パーム種子の外皮を熱分解するためのマイクロ波出力は100W~50KWで、マイクロ波照射時間は0.3~100分とすることができる。トウモロコシの穂軸を熱分解するためのマイクロ波出力は80W~50KWであり、マイクロ波照射時間は0.2~70分とすることができる。天然ゴムを熱分解するためのマイクロ波出力は100W~50KW、マイクロ波照射時間は0.5~150分が可能である。ブタジエンゴムを熱分解するためのマイクロ波出力は120W~60KWとすることができ、マイクロ波照射時間は、0.5~120分とすることができる。スチレンブタジエンゴムを熱分解するためのマイクロ波出力は150W~80KWとすることができ、マイクロ波照射時間は、0.6~200分とすることができる。イソプレンゴムを熱分解するためのマイクロ波出力は100W~60KWとすることができ、マイクロ波照射時間は、0.5~150分とすることができる。エチレンプロピレンゴムを熱分解するためのマイクロ波出力は200W~70KWとすることができ、マイクロ波照射時間は、0.2~100分とすることができる。
【0071】
マイクロ波場は、家庭用電子レンジ、工業化されたマイクロ波装置(マイクロ波熱分解反応器など)などの従来技術における様々なマイクロ波装置によって生成することができる。
【0072】
不活性雰囲気は、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、またはキセノン、好ましくは窒素のような、従来技術で一般に使用される不活性ガス雰囲気である。
【0073】
有機化合物含有物質および多孔質複合材料は、様々な方法で接触させることができる。有機化合物含有物質が廃プラスチックなどの固体である場合、物質は多孔質複合材料上に配置され、多孔質複合材料によって構成されるキャビティ内に配置され、または多孔質複合材料などによって覆われることができ、好ましくは固体物質(例えば、回路基板)は押しつぶされ、次いで多孔質複合材料と接触する。有機化合物含有物質が植物油のような液体である場合は、1つの有用なモードはバッチモードであり、すなわち、最初に、植物油が多孔質複合材料に添加される。その場合、多孔質複合材料は、植物油を細孔に自動的に吸収する。次に、マイクロ波熱分解を行う。もう1つの有用なモードは連続モードである。すなわち、マイクロ波熱分解の際に、ポンプ(蠕動ポンプなど)を使用して、石英パイプを通して多孔質材料の表面に植物油を連続的に添加する。上記ポンピング速度は、植物油と多孔質複合材料との混合物のマイクロ波場での滞留時間を保証するだけでよい。有機化合物含有物質が固体と液体との混合物である場合、上記の接触モードの混合形態を対応させて採用することができる。
【0074】
本発明の方法において、有機化合物含有物質および多孔質複合材料を配置または運搬するために使用される装置はマイクロ波を透過させることができ、1200℃を超える高温に耐えることができる、前記装置は、石英るつぼ、石英反応器、石英管、アルミナるつぼ、アルミナ反応器、アルミナ管などの様々な容器またはパイプであり得る。
【0075】
本発明の方法における有機化合物含有物質は、熱分解後にガス化される。熱分解後に得られたガスは後続の処理またはリサイクルのために収集することができ、例えば、分離後に、ガスは、後続の反応および製造のための燃料として、または化学工業原料として使用される。熱分解後の残渣は廃棄物として、または炭素繊維複合材料のために廃棄され、熱分解後の残渣は主に炭素繊維であり、これは、不純物の除去後に回収して再使用することができ、または回路基板のために、回路基板の熱分解から得られた固体残渣を処理して、その中の金属成分および非金属成分を分離し、それぞれリサイクルすることができる。固体残渣の上記分離は、従来技術における種々の分離方法および装置を採用することができる。
【0076】
ガス収集は従来技術において一般的な方法であり、ガス収集装置を使用して、好ましくは不活性雰囲気下で実施することができる。例えば、電子レンジとして家庭用電子レンジを用いる場合には、窒素で保護されたグローブボックス内に、有機化合物と多孔質複合材料とからなる物質が充填された石英るつぼを真空バッグに入れて封止する。マイクロ波の下で反応させた後、るつぼを真空バッグを横切って開き、試料採取のために注射器を真空バッグに押し込む。ガス入口およびガス排気口を有する工業用電子レンジ(マイクロ波熱分解反応器など)が使用される場合、ガス収集モードは、反応プロセス中に窒素によるパージが実行され、ガス収集バッグによるサンプリングおよび収集がガス排気口で実行されるようなものである。
【0077】
本発明の方法は、多孔質複合材料を利用して、マイクロ波場において電気アークを発生させ、それによって高温を急速に発生させて、有機化合物を含む物質を熱分解する。熱分解生成物はリサイクルのための化学原料として使用することができ、または熱分解後に残った炭素繊維または金属などの貴重な残渣をリサイクルすることができ、特に廃回路基板の完全なリサイクルを達成することができる。この方法は効率的であり、生成物組成物は高い付加価値を有する。
【0078】
〔実施例〕
以下の実施例を参照して本発明をさらに説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0079】
実施例における実験データは、以下の機器および測定方法を用いて測定した:
1. 多孔質複合材料中に支持された炭素材料の質量百分率の決定:
1)出発材料として無機多孔質骨格材料を用いた場合、最初に出発材料である無機多孔質骨格材料の重量を測定し、最後に得られた多孔質複合材料の重量を測定する。両者の重量差分を支持炭素材料の重量とし、多孔質複合材料中に支持された炭素材料の質量百分率を求めた。
【0080】
2)出発原料に無機多孔質骨格前駆体を使用したときは、同じ重量の2つの無機多孔質骨格前駆体のサンプルを使用した。これらのうちの1つを本発明の実施例で使用し、他方は上記の調製方法の工程cおよびdのみを実施した参考例で使用した。実験終了後、実施例で得られた多孔質複合材料の重量を秤量し、参考例で得られた試料の最終重量を秤量した。両者の重量差分を担持炭素材料の重量とし、多孔質複合材料中に支持された炭素材料の質量百分率を求めた。
2. 以下の例および比較例において熱分解されたガスのクロマトグラフ分析は、特に断りのない限り、Agilent社(米国)が製造するAgilent 6890Nガスクロマトグラフを用いて行った。使用したAgilent社のAgilent6890NガスクロマトグラフはFID検出器を備え、クロマトグラフカラムとしてHP-PLOT AL2O3キャピラリーカラム(50m×0.53mm×15μm)を備え、キャリアガスとしてHeを用い、線速度41cm/、秒、入口温度200℃、検出器温度250℃、分割比15:1、注入試料体積0.25ml(気体)、昇温プログラムを備え、最初の温度は55℃で3分間維持し、その後4℃/分で120℃に増加させて4分間維持し、さらに20℃/分で170℃に増加させ、10分間維持した。
3. 無機多孔質骨格および多孔質複合材料の平均孔径は以下のようにして求めた。個々の細孔の細孔径は、走査電子顕微鏡(SEM)写真における個々の細孔の中心と細孔の輪郭とを通る直線の2つの交点間の距離の中で最小の値によって決定した。そして、平均孔径は、SEM写真に示した全ての細孔の細孔径値の平均によって求めた。使用したSEMは、倍率200倍の日立S-4800(日立、日本)であった。
4. 多孔率は、GB/T 23561.4-2009を参照して決定した。
【0081】
実施例で使用した出発物質は、全て商業的に入手可能であった。
【0082】
<多孔質複合材料の調製>
[実施例1]
(1)グラフェン酸化物(JCGO-95-1-2.6-W、10mg/ml、Nanjing Ji Cang Nano Tech Co、LTD.)の水性分散液500mlを秤量し、ビーカーに入れた;
(2)グラフェン酸化物の水性分散液中に、フェノール樹脂(フェノール発泡体、平均孔径300μm、多孔率99%、長州スミサース・オーシスフローラルフォーム(株))からなる多孔質骨格2gを浸漬した。その結果、分散液は、多孔質骨格の細孔チャネルに十分に入り込んだ;
(3)浸漬した多孔質材料を取り出し、ステンレス鋼トレー上に置き、これを180℃のオーブンに入れ、1時間加熱し、それによって材料を乾燥させ、予備還元した;
(4)乾燥した多孔質材料を家庭用電子レンジ(700w、M1-L213Bモデル、Midea)に入れ、高出力で2分間マイクロ波処理し、予備還元されたグラフェン酸化物をグラフェンに還元し、フェノール樹脂骨格を炭素骨格(平均孔径200μm、多孔率99%)に炭化した。これにより、マイクロ波場で電気アークを発生させることができる、炭素多孔質骨格上にグラフェンが支持された多孔質複合材料を得た。グラフェンは、多孔質複合材料の全質量の10%を構成した。
【0083】
[実施例2]
(1)カーボンナノチューブ(XFWDM、100mg/ml、Nanjing XFNANO Materials Tech Co、Ltd.)の分散液500mlを測定し、ビーカーに入れた;
(2)カーボンナノチューブの分散液に、フェノール樹脂(フェノール発泡体、平均孔径200μm、多孔率99%、長州スミサース・オーシスフローラルフォーム(株))からなる多孔質骨格2gを浸漬した。その結果、カーボンナノチューブの分散液は、多孔質骨格の細孔チャネルに十分に入り込んだ;
(3)浸漬した多孔質材料を取り出し、ステンレス鋼トレー上に置き、これを80℃のオーブンに入れ、5時間加熱し、それによって材料を乾燥させた;
(4)乾燥した多孔質材料を管状炉に入れ、窒素雰囲気下、800℃で1時間炭化し、マイクロ波場で電気アークを発生させることができる、カーボン多孔質骨格上にカーボンナノチューブを支持した多孔質複合材料(炭素骨格の平均孔径は140μm、多孔率は99%)を得た。カーボンナノチューブは、多孔質複合材料の総質量の30%を含んでいた。
【0084】
[実施例3]
(1)カーボンナノチューブ(XFWDM、100mg/ml、Nanjing XFNANO Materials Tech Co、Ltd.)の分散液500mlを秤量し、ビーカーに入れた;
(2)ケイ酸塩(平均孔径150μm、多孔率90%、山東ルヤン省エネルギー材料(株))で構成される繊維質綿状の多孔質骨格の5gをカーボンナノチューブの分散液に浸漬し、分散液が多孔質骨格の細孔チャネルに十分入るように数回圧搾した;
(3)浸漬した多孔質材料を取り出し、ステンレス製トレーに載せ、150℃のオーブンに入れ、2時間加熱し、乾燥させて、マイクロ波場で電気アークを発生させることができる、ケイ酸塩繊維多孔質骨格上にカーボンナノチューブを支持した多孔質複合材料を得た。カーボンナノチューブは、多孔質複合材料の総質量の10%を含んでいた。
【0085】
[実施例4]
(1)粉末フェノール樹脂(2123、Xinxiang Bomafengfan Industry Co、Ltd.)30gとヘキサメチレンテトラミン硬化剤3.6gを秤量し、ビーカーに入れ、エタノール500mlを注ぎ、マグネチックスターラーで1時間撹拌し、成分が全て溶解するまで撹拌した;
(2)ケイ酸塩(平均孔径150μm、多孔率90% Shandong Luyang Energy-saving Materials Co、Ltd.)からなる繊維状綿状多孔質骨格5gを、配合溶液に浸漬し、数回圧搾した。その結果、溶液は、多孔質骨格の細孔チャネルに十分に入り込んだ;
(3)浸漬した多孔質材料を取り出してステンレス鋼トレー上に置き、180℃の炉内に置き、2時間加熱することにより、材料を乾燥させて溶媒を除去し、フェノール樹脂を硬化させた;
(4)乾燥、硬化した多孔質材料を管状炉に入れ、窒素雰囲気下、1000℃で1時間炭化してフェノール樹脂を炭化し、マイクロ波場で電気アークを発生させることができる、珪酸塩繊維多孔質骨格上にフェノール樹脂炭化物を支持した多孔質複合材料を得た。炭素材料は、多孔質複合材料の全質量の5%を構成した。
【0086】
[実施例5]
(1)液状フェノール樹脂(2152、Jining Baiyi Chemicals)50gを秤量し、ビーカーに入れ、エタノール500mlを注ぎ、マグネチックスターラーで1時間攪拌し、溶解させた;
(2)アルミナ(平均孔径100μm、多孔率85%、山東ルヤン省エネルギー材料(株))からなる板状多孔質骨格8gを配合溶液に浸漬した。その結果、溶液は、多孔質骨格の細孔チャネルに十分に入り込んだ;
(3)浸漬した多孔質材料を取り出してステンレス鋼トレー上に置き、180℃の炉内に置き、2時間加熱することにより、材料を乾燥させて溶媒を除去し、フェノール樹脂を硬化させた;
(4)乾燥硬化した多孔質材料を管状炉に入れ、窒素雰囲気下、900℃で1時間炭化してフェノール樹脂を炭化し、マイクロ波場で電気アークを発生させることができる、アルミナ繊維多孔質骨格上にフェノール樹脂炭化物を支持した多孔質複合材料を得た。炭素材料は、多孔質複合材料の全質量の6%を構成した。
【0087】
[実施例6]
(1)水可溶性デンプン(医薬品グレード、品番:S104454、上海アラジンバイオケミカルテクノロジー株式会社)30gを秤量し、ビーカーに入れ、脱イオン水500mlを注ぎ、磁気ロータで1時間攪拌し、溶解させた;
(2)アルミナ(平均孔径100μm、多孔率85%、山東ルヤン省エネルギー材料(株))からなる繊維マット状多孔質骨格8gを配合溶液に浸漬した。その結果、溶液は、多孔質骨格の細孔チャネルに十分に入り込んだ;
(3)浸漬した多孔質材料を取り出し、マイクロ波熱分解反応器(XOLJ-2000N、Nanjing Atpio Instrument Manufacturing Co、Ltd.)に入れ、10KWの出力で2分間マイクロ波処理し、多孔質材料を乾燥させた;
(4)乾燥した多孔質材料を管状炉に入れ、窒素雰囲気下、1200℃で1時間炭化し、水可溶性デンプンを炭化し、マイクロ波場で電気アークを発生させることができる、アルミナ繊維多孔質骨格上にデンプン炭化物を担持した多孔質複合材料を得た。炭素材料は、多孔質複合材料の全質量の0.1%を構成した。
【0088】
[実施例7]
(1)水可溶性デンプン(医薬品グレード、品番: S104454、上海アラジンバイオケミカルテクノロジー株式会社)50gを秤量し、ビーカーに入れ、脱イオン水500mlを注ぎ、磁気ロータで1時間攪拌し、溶解させた;
(2)アルミナ(平均孔径100μm、多孔率85%、山東ルヤン省エネルギー材料(株))からなる繊維綿状多孔質骨格8gを配合溶液に浸漬し、数回圧搾した。その結果、溶液は、多孔質骨格の細孔チャネルに十分に入り込んだ;
(3)浸漬した多孔質材料を取り出し、マイクロ波熱分解反応器(XOLJ-2000N、Nanjing Atpio Instrument Manufacturing Co、Ltd.)に入れ、500Wの出力で2時間、マイクロ波によって処理し、多孔質材料を乾燥させた;
(4)乾燥した多孔質材料を管状炉に入れ、窒素雰囲気下、1000℃で1時間炭化し、デンプンを炭化することにより、マイクロ波場で電気アークを発生させることができる、アルミナ繊維多孔質骨格上にデンプン炭化物を担持した多孔質複合材料を得た。炭素材料は、多孔質複合材料の全質量の0.2%を構成した。
【0089】
[実施例8]
(1)液状フェノール樹脂(2152、Jining Baiyi Chemicals)2kgを秤量し、ビーカーに入れ、エタノール4Lを注ぎ、マグネチックスターラーで1時間攪拌し、溶解させた;
(2)フェノール樹脂(フェノール発泡体、平均孔径500μm、多孔率99%、長州スミサース・オーシスフローラルフォーム(株))からなる多孔質骨格2gを配合液に浸漬した。その結果、溶液は、多孔質骨格の細孔チャネルに十分に入り込んだ;
(3)浸漬した多孔質材料を取り出し、ステンレス鋼トレー上に置き、これを150℃のオーブンに入れ、2時間加熱し、それによって材料を乾燥させた;
(4)乾燥した多孔質材料をマイクロ波熱分解反応器(XOLJ-2000N、Nanjing Atpio Instrument Manufacturing Co、Ltd.)に入れ、20KWの出力で100分間、窒素雰囲気下でマイクロ波処理し、マイクロ波場で電気アークを発生させることができる、炭素多孔質骨格上にフェノール樹脂炭化物を支持した多孔質複合材料(炭素骨格は350μmの平均孔径および99%の多孔率を有する)を得た。無機炭素骨格上に支持された炭素材料は、多孔質複合材料の全質量の80%を構成した。
【0090】
[実施例9]
(1)液状フェノール樹脂(2152、Jining Baiyi Chemicals)0.3gを秤量し、ビーカーに入れ、エタノール100mlを注ぎ、マグネチックスターラーで1時間攪拌し、溶解させた;
(2)活性アルミナ300g(平均孔径0.05μm、多孔率30%、山東海洋化学工業(株))を配合溶液に浸漬した。その結果、溶液は、活性アルミナの細孔チャネルに十分に入り込んだ;
(3)浸漬した多孔質材料を取り出し、ステンレス鋼トレー上に置き、これを150℃のオーブンに入れ、2時間加熱し、それによって材料を乾燥させた;
(4)乾燥した多孔質材料を管状炉に入れ、窒素雰囲気下、1000℃で1時間炭化してフェノール樹脂を炭化し、マイクロ波場で電気アークを発生させることができる、活性アルミナ(多孔質骨格)上にフェノール樹脂炭化物を支持した多孔質複合材料を得た。炭素材料は、多孔質複合材料の全質量の0.05%を構成した。
【0091】
[実施例10]
(1)粉末フェノール樹脂(2123、Xinxiang Bomafengfan Industry Co、Ltd.)30gおよびヘキサメチレンテトラミン硬化剤3.6gを秤量し、ビーカーに入れ、エタノール500mlを注ぎ、溶解するまで磁気ロータで1時間攪拌した;
(2)酸化マグネシウム(平均孔径100μm、多孔率80%、Jinan Huolong Thermal Ceramics Co、Ltd.)からなる繊維板状多孔質骨格8gを配合溶液に浸漬した。その結果、溶液は、多孔質骨格の細孔チャネルに十分に入り込んだ;
(3)浸漬した多孔質材料を取り出してステンレス鋼トレー上に置き、180℃の炉内に置き、2時間加熱することにより、材料を乾燥させて溶媒を除去し、フェノール樹脂を硬化させた;
(4)乾燥、硬化した多孔質材料を管状炉に入れ、窒素雰囲気下、1000℃で1時間炭化してフェノール樹脂を炭化し、マイクロ波場で電気アークを発生させることができる、酸化マグネシウム繊維多孔質骨格上にフェノール樹脂炭化物を担持した多孔質複合材料を得た。炭素材料は、多孔質複合材料の全質量の3%を構成した。
【0092】
[実施例11]
(1)水可溶性デンプン(医薬品グレード、上海アラジンバイオケミカルテクノロジー株式会社)100gを秤量し、ビーカーに入れ、脱イオン水500mlを注ぎ、磁気ロータで1時間攪拌し、溶解させた;
(2)ジルコニア(平均孔径150μm、多孔率80%)からなる繊維板状多孔質骨格8gを配合溶液中に浸漬した(Jinan Huolong Thermal Ceramics Co、Ltd.)。その結果、溶液は、多孔質骨格の細孔チャネルに十分に入り込んだ;
(3)浸漬した多孔質材料を取り出し、マイクロ波熱分解反応器(XOLJ-2000N、Nanjing Atpio Instrument Manufacturing Co、Ltd.)に入れ、3KWの出力で20分間、マイクロ波によって処理し、多孔質材料を乾燥させた;
(4)乾燥した多孔質材料を管状炉に入れ、窒素雰囲気下、900℃で2時間炭化し、デンプンを炭化することにより、マイクロ波場で電気アークを発生させることができる、ジルコニア繊維多孔質骨格上にデンプン炭化物を支持した多孔質複合材料を得た。炭素材料は、多孔質複合材料の全質量の0.5%を構成した。
【0093】
[実施例12]
(1)液状フェノール樹脂(2152、Jining Baiyi Chemicals)50gを秤量し、ビーカーに入れ、エタノール500mlを注ぎ、マグネチックスターラーで1時間攪拌し、溶解させた;
(2)窒化ホウ素(平均孔径100μm、多孔率80%、Jinan Huolong Thermal Ceramics Co、Ltd.)で構成した繊維板状多孔質骨格の8gを調合溶液に浸漬した。その結果、溶液は、多孔質骨格の細孔チャネルに十分に入り込んだ;
(3)浸漬した多孔質材料を取り出してステンレス鋼トレー上に置き、180℃の炉内に置き、2時間加熱することにより、材料を乾燥させて溶媒を除去し、フェノール樹脂を硬化させた;
(4)乾燥硬化した多孔質材料を管状炉に入れ、窒素雰囲気下、900℃で1時間炭化してフェノール樹脂を炭化し、マイクロ波場で電気アークを発生させることができる、窒化ホウ素繊維多孔質骨格にフェノール樹脂炭化物を支持した多孔質複合材料を得た。炭素材料は、多孔質複合材料の全質量の5%を構成した。
【0094】
[実施例13]
(1)液状フェノール樹脂(2152、Jining Baiyi Chemicals)100gを秤量し、ビーカーに入れ、エタノール500mlを注ぎ、マグネチックスターラーで1時間攪拌し、溶解させた;
(2)炭化ケイ素(平均孔径100μm、多孔率80%)からなる繊維板状多孔質骨格8gを、配合溶液中に浸漬した(Jinan Huolong Thermal Ceramics Co、Ltd.)。その結果、溶液は、多孔質骨格の細孔チャネルに十分に入り込んだ;
(3)浸漬した多孔質材料を取り出してステンレス鋼トレー上に置き、180℃の炉内に置き、2時間加熱することにより、材料を乾燥させて溶媒を除去し、フェノール樹脂を硬化させた;
(4)乾燥硬化した多孔質材料を管状炉に入れ、窒素雰囲気下、800℃で1時間炭化してフェノール樹脂を炭化し、マイクロ波場で電気アークを発生させることができる、炭化珪素繊維多孔質骨格上にフェノール樹脂炭化物を支持した多孔質複合材料を得た。炭素材料は、多孔質複合材料の全質量の10%を構成した。
【0095】
[実施例14]
(1)液状フェノール樹脂(2152、Jining Baiyi Chemicals)100gを秤量し、ビーカーに入れ、エタノール500mlを注ぎ、マグネチックスターラーで1時間攪拌し、溶解させた;
(2)チタン酸カリウム(平均孔径100μm、多孔率80%)からなる繊維板状の多孔質骨格8gを、配合溶液に浸漬した(Jinan Huolong Thermal Ceramics Co、Ltd.)。その結果、溶液は、多孔質骨格の細孔チャネルに十分に入り込んだ;
(3)浸漬した多孔質材料を取り出してステンレス鋼トレー上に置き、180℃の炉内に置き、2時間加熱することにより、材料を乾燥させて溶媒を除去し、フェノール樹脂を硬化させた;
(4)乾燥硬化した多孔質材料を管状炉に入れ、窒素雰囲気下、800℃で1時間炭化してフェノール樹脂を炭化し、マイクロ波場で電気アークを発生させることができるチタン酸カリウム繊維多孔質骨格上にフェノール樹脂炭化物を担持した多孔質複合材料を得た。炭素材料は、多孔質複合材料の全質量の10%を構成した。
【0096】
<廃プラスチックのマイクロ波熱分解>:
[実施例15]
飲料ボトル本体(PET)、飲料ボトルキャップ(HDPE)、温室膜(LLDPE)、PPペレット、PPランチボックスフラグメント、パッケージポリスチレン(PS)フォーム、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンターポリマートレー(ABS)、ナイロンパイプフラグメント(PA6)および透明水カップ(PC)の各々0.5g並びにポリ塩化ビニル(PVC)ホース0.5gの各々を、はさみで切るか秤量し、それぞれ実施例1で得られた多孔質複合材料1gの上に置き、その後、窒素で保護した後、家庭用電子レンジ(700w)中で30秒間、高出力マイクロ波により熱分解した。実施例1で得られた多孔質複合材料を用いて、家庭用電子レンジ(700w)で30秒間という短時間、マイクロ波処理した後、全ての材料を熱分解し、ガス化した。残留物はほとんどなく、ポリ塩化ビニル(塩ビ)ホースには黒色物質が少量のみ残留していた。すべての過程で激しいアーク放電現象が観察された。多孔質複合材料は、マイクロ波場において電気アークを発生させ、それによって高温を急速に発生させ、材料に熱を伝達して材料を急速に熱分解した。
【0097】
実施例2~14で得られた試料を用いて、上記工程と同様の実験を行い、同様の実験現象および結果を得た。実施例2~14で得られた全ての多孔質複合材料はマイクロ波場において電気アークを発生させることができ、それによって、高温を急速に発生させ、材料に熱を伝達して材料を急速に熱分解することができた。
【0098】
[実施例16]
飲料ボトルキャップ(HDPE)50g、PPランチボックス断片50g、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンターポリマートレー(ABS)50g、ナイロンチューブ断片(PA6)50g及び透明水カップ(PC)50g、パッケージ発泡体(PS)3g、ハウスフィルム(LLDPE)10g、飲料ボトル本体(PET)50g、使い捨て透明プラスチックカップ(PS)断片50g及びポリ塩化ビニル(PVC)ホース断片50gをはさみで切り、実施例1で得られた多孔質複合材料30gにより構成されるキャビティ内にそれぞれ配置し、その後、マイクロ波熱分解反応器(XOLJ-2000N、南京アトピオ器具製造(株))を用いて窒素で保護した後、5分間、1500Wの出力で処理した。また、ポリ塩化ビニルホースでは、全ての材料に残渣はほとんど見られず、黒色物質は少量しか残っていなかった。
【0099】
マイクロ波中に電気アークを発生させる多孔質複合材料で構成されるキャビティ内への、熱分解される材料の配置は、具体的には以下のように実施された。まず、多孔質複合材料の一部を石英反応器の底部および周囲に配置して、上方開口部を有するキャビティを形成する。次に、材料をキャビティ内に配置する。最後に、材料の頂部を残りの多孔質複合材料で覆う。
【0100】
実施例2~14で得られた試料を用いて、上記工程と同様の実験を行い、同様の実験現象および結果を得た。実施例2~14で得られた全ての多孔質複合材料はマイクロ波中で電気アークを発生させることができ、それによって、高温を急速に発生させ、それを材料に移動させて材料を急速に熱分解することができた。
【0101】
[比較例1]
飲料ボトルキャップ(HDPE)断片0.5g、PPランチボックス断片0.5g、PETボトル身体断片0.5g、PSフォームおよびPVCホース0.5gを、それぞれ炭化ケイ素粉末(98.5%、Sinopharm Chemical Reagent Beijing Co、Ltd.)1g上に置き、窒素で保護した後、家庭用電子レンジ(700w)中で30秒間高出力マイクロ波処理した。マイクロ波プロセス中のすべての材料にスパークはなかった。マイクロ波処理後、HDPEボトルキャップ、PPランチボックス断片、ペット断片、PSフォームおよびPVCホースは全て変化せず、石英るつぼの底部のみがわずかに温まっていた。
【0102】
[比較例2]
0.5gの飲料ボトルキャップ(HDPE)断片を1gの活性炭粉末(AR、≧200メッシュ、品目番号C112223、Shanghai Aladdin Bio-Chem Technology Co、LTD.)上に置き、窒素で保護した後、家庭用電子レンジ(700w)中で30秒間高出力マイクロ波処理した。マイクロ波プロセス中に、電気アークが時々現れた。マイクロ波処理後、HDPEボトルキャップは溶融したが、完全には消失しなかった。HDPEの重量減量は、秤量後に25%であることが見出された。
【0103】
[実施例17]
以下のパラメーターを除いて、他のパラメーターおよび工程は、実施例15と同じであった:
実施例1で得られた試料1gを用いて、マイクロ波熱分解反応器(XOLJ-2000N、Nanjing Atpio Instrument Manufacturing Co、Ltd.)を用い、HDPE0.5g、PP0.5g、およびLLDPE0.5gを、それぞれ700Wの出力で30秒間(または家庭用電子レンジ(700W)を高出力で30秒間)熱分解し、得られたガスをクロマトグラフィー分析し、検出された主成分を表1-1に示した。
【0104】
実施例1で得られた試料1gを用いて、マイクロ波熱分解反応器(XOLJ-2000N、Nanjing Atpio Instrument Manufacturing Co、Ltd.)を用い、0.5gのPETを700Wの出力で30秒間(または家庭用電子レンジ(700W)を高出力で30秒間)熱分解し、得られたガスをクロマトグラフィー分析し、検出された主成分を表1-2に示した。
【0105】
実施例1で得られた試料1gを用いて、マイクロ波熱分解反応器(XOLJ-2000N、Nanjing Atpio Instrument Manufacturing Co、Ltd.)を用い、0.5gのPSを700Wの出力で30秒間(または家庭用電子レンジ(700W)を高出力で30秒間)熱分解し、得られたガスをクロマトグラフィー分析し、検出された主成分を表1-3に示した。
【0106】
実施例1で得られた試料1gを用いて、家庭用電子レンジ(700W)を用い、PVC0.5gを高出力で30秒間熱分解し、得られたガスをクロマトグラフィー分析に供した。検出された主成分を表1-4に示した。
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
[実施例18]
以下のパラメーターを除いて、他のパラメーターおよび工程は、実施例15と同じであった:
実施例6で得られたサンプル30gを、マイクロ波熱分解反応器を用いて、HDPE50g、PP50g、LLDPE50gを1500Wの出力で10分間熱分解し、得られたガスをクロマトグラフィー分析に供した。検出された主成分を表2-1に示す。
【0112】
実施例6で得られたサンプル30gを、マイクロ波熱分解反応器を用いて、1500Wの出力で20分間、PET50gを熱分解するために使用し、次いで、得られたガスをクロマトグラフィー分析に供した。検出された主成分を表2-2に示す。
【0113】
実施例6で得られたサンプル30gを用いて、マイクロ波熱分解反応器を用いて、出力1500Wで40分間、PS3gを熱分解し、得られたガスをクロマトグラフィー分析に供した。検出された主成分を表2-3に示す。
【0114】
実施例6で得られたサンプル30gを、マイクロ波熱分解反応器を用いて、1500Wの出力で15分間、使い捨て透明プラスチックカップ(PS)断片50gを熱分解するために使用し、次いで、得られたガスをクロマトグラフィー分析に供した。検出された主成分を表2-4に示す。
【0115】
実施例6で得られたサンプル30gを、マイクロ波熱分解反応器を用いて1500Wの出力で15分間、50gのPVCホース断片を熱分解するために使用し、次いで、得られたガスをクロマトグラフィー分析に供した。検出された主成分を表2-5に示す。
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
[比較例3]
(1)液状フェノール樹脂(2152、Jining Baiyi Chemicals)50gを秤量し、ビーカーに入れ、エタノール500mlを注ぎ、マグネチックスターラーで1時間攪拌し、溶解させた;
(2)アルミナ(平均孔径100nm、Pu-Yuan Nanotechnology limited company、Hefei,China)からなる繊維板状多孔質骨格8gを、溶液が多孔質骨格の細孔チャネルに十分に入るように、処方溶液に浸漬した;
(3)浸漬した多孔質材料を取り出してステンレス鋼トレー上に置き、これを180℃の炉内に置き、2時間加熱することにより、溶媒を除去し、フェノール樹脂を硬化させた;
(4)乾燥・硬化した多孔質体を管状炉に入れ、900℃で1時間、窒素雰囲気中で炭化し、フェノール樹脂を炭化した。
【0122】
飲料ボトルキャップ(HDPE)断片0.5gを、工程(4)で得られた材料1g上に置き、続いて、窒素で保護した後、家庭用電子レンジ(700w)中で30秒間高出力マイクロ波処理した。マイクロ波処理中、スパークは全くなく、マイクロ波処理後、HDPEボトルキャップは変化しなかった。無機多孔質骨格の細孔径が小さい場合、効果的な熱分解を達成するためにマイクロ波場で電気アークを発生させることができる多孔質複合材料は得られなかったことが分かった。
【0123】
<植物油のマイクロ波熱分解>:
[実施例19]
パーム油、菜種油、ヒマワリ油、大豆油をそれぞれ0.5gずつ、実施例1で得られた多孔質複合材料1g上に配置し、油を多孔質複合材料に自動的に吸収させ、窒素で保護した後、家庭用電子レンジ(700w)内で30秒間の高出力マイクロ波熱分解を行い(またはマイクロ波熱分解反応器(XOLJ-2000N、Nanjing Atpio Instrument Manufacturing Co、Ltd.)を用いて、700Wの出力で30分間の熱分解)を行い、その後、秤量して、多孔質複合材料中に材料の残渣がほとんどないことを確認した。実施例1で得られた多孔質複合材料を用いて、マイクロ波(700w)で30秒間という短時間処理した後、全ての材料を熱分解し、ガス化したところ、激しいアーク放電現象が観察された。多孔質複合材料は、マイクロ波場において電気アークを発生させ、それによって高温を急速に発生させ、材料に熱を伝達して材料を急速に熱分解した。熱分解後に得られたガスをクロマトグラフ分析に供し、検出された主成分を表3-1に示す。
【0124】
【0125】
[実施例20]
パーム油、菜種油、ひまわり油、大豆油をそれぞれ100gのビーカーに入れ、実施例1で得られた多孔質複合材料30gを窒素500ml/分で10分間パージした石英反応器に入れ、流量を100ml/分に調整した後、マイクロ波熱分解反応器(XOLJ-2000N、南京アトピオ工業(株)))を1500Wの出力で起動し、石英反応器内の多孔質複合材料の表面に上記の植物油を、約2g/分の速度で、蠕動ポンプ(LongerPump BT100-2J精度蠕動ポンプ)を用いて、石英毛管を通して連続的に添加し、ガス中に連続的に熱分解した。操作終了後、ほとんど物質は残らなかった。
【0126】
実施例2~14で得られた多孔質複合材料を用いて、上記工程と同様の実験を行ったところ、同様の実験現象および結果が得られた。
【0127】
[比較例4]
パーム油0.5gを炭化ケイ素粉末(98.5%、Sinopharm Chemical Reagent Beijing Co、Ltd.)1gに滴下し、窒素保護後、家庭用電子レンジ(700w)で30秒間、高出力マイクロ波処理した。マイクロ波処理中にはスパークは全くなく、石英るつぼの底部のみがわずかに温まっていた。マイクロ波処理後、重量測定は、パーム油の質量が明らかに変化しなかったことを示した。
【0128】
[実施例21]
以下のパラメーターを除いて、他のパラメーターおよび工程は、実施例19と同じであった:
実施例6で得られたサンプル30gを、1500Wの出力で、マイクロ波熱分解反応器を用い、2g/分の供給速度で、パーム油、ナタネ油、ヒマワリ油、大豆油の各100gの熱分解に用いた。得られたガスをクロマトグラフィにより分析した。検出された主成分を表3-2に示す。
【0129】
【0130】
<バイオマスのマイクロ波による熱分解>
[実施例22]
実施例1で得られた多孔質複合材料1gに、わら、バガス、木の枝、葉、木材チップ、もみ殻、稲わら、ピーナッツ殻、ココナッツ殻、ヤシ殻、トウモロコシ穂軸をそれぞれ0.5gずつ、それぞれ載せ、窒素で保護した後、家庭用電子レンジ(700w)で30秒間、高出力マイクロ波により熱分解した。実施例1で得られた多孔質複合材料を用いて、家庭用電子レンジ(700w)で30秒間という短時間電子レンジ処理した後、全ての材料を熱分解し、ガス化したところ、黒色物質のみが残存した。この過程で活発なアーク放電現象が観測された。多孔質複合材料は、マイクロ波中で電気アークを発生させ、それによって高温を急速に発生させ、材料に熱を伝達して材料を急速に熱分解した。
【0131】
わら、バガス、木枝、葉、木材チップ、もみ殻、稲わら、ピーナッツ殻、ココナッツ殻、ヤシ種皮、トウモロコシ殻、トウモロコシ穂軸のそれぞれ50gを、実施例1で得られた多孔質複合材料30gで構成されるキャビティ内にそれぞれ配置し、窒素で保護した後、マイクロ波熱分解反応器(XOLJ-2000N、Nanjing Atpio Instrument Manufacturing Co、Ltd.)を用いて、1500Wの出力で5分間処理した。全ての材料について、黒色物質のみが残った。
【0132】
多孔質複合材料によって構成されるキャビティ内への熱分解されるべき材料の配置は、特に以下のように操作された。まず、多孔質複合材料の一部を石英反応器の底部および周囲に配置して、上方開口部を有するキャビティを形成する。次に、材料をキャビティ内に配置する。最後に、材料の頂部を残りの多孔質複合材料で覆う。
【0133】
実施例2~14で得られた試料を用いて、上記工程と同様の実験を行い、同様の実験現象および結果を得た。
【0134】
[比較例5]
もみ殻0.5gを炭化ケイ素粉末(98.5%、Sinopharm Chemical Reagent Beijing Co、Ltd.)1g上に置き、窒素保護後、家庭用電子レンジ(700w)で30秒間高出力マイクロ波処理した。マイクロ波プロセスの間、スパークは全くなかった。マイクロ波処理後、もみ殻は変化せず、石英るつぼの底部のみがわずかに温まっていた。
【0135】
[実施例23]
以下のパラメーターを除き、他のパラメーターおよび工程は実施例22のものと同じであった:
実施例1で得られたサンプル1gを、家庭用電子レンジ(700W)を用いて、高出力で30秒間、それぞれ、0.5gのわらおよびもみ殻を熱分解するために使用した。次に、得られたガスをクロマトグラフィー分析に供した。COおよびCO2以外に検出された主成分を表4-1に示す。
【0136】
実施例6で得られた試料の30gを、出力1500W、15分のマイクロ波熱分解反応器を用いて、わら50gともみ殻のそれぞれの熱分解に用いた。次に、得られたガスをクロマトグラフィー分析に供した。COおよびCO2以外に検出された主成分を表4-2に示す。
【0137】
【0138】
【0139】
<廃ゴムのマイクロ波による熱分解>
[実施例24]
実施例1で得られた多孔質複合材料1gに、それぞれ0.5gの自動車タイヤ(Hankook)断片、スチレン-ブタジエンゴム(Beijing Rubber Products Factory)、エチレン-プロピレンゴム(Beijing Rubber Products Factory)サンプルを載せ、窒素で保護した後、家庭用電子レンジ(700w)で30秒間、高出力マイクロ波により熱分解した。実施例1で得られた多孔質複合材料を用いて、家庭用電子レンジ(700w)で30秒間という短時間、電子レンジ処理した後、全ての材料を熱分解し、ガス化した;自動車タイヤ断片については1つのピンチに押しつぶされた黒色物質のみが残存し;スチレン-ブタジエンゴムおよびエチレン-プロピレンゴムのサンプルについては、残渣は残存しなかった。この過程で活発なアーク放電現象が観測された。多孔質複合材料は、マイクロ波中で電気アークを発生させ、それによって高温を急速に発生させ、材料に熱を伝達して材料を急速に熱分解した。
【0140】
実施例1で得られたマイクロ波中でアークを発生させた多孔質複合材料30gからなるキャビティ内に、自動車タイヤ(Hankook)断片、スチレンブタジエンゴム(Beijing Rubber Products Factory)、エチレンプロピレンゴム(Beijing Rubber Products Factory)サンプル50gをそれぞれ入れ、窒素保護後、マイクロ波熱分解反応器(XOLJ-2000N、Nanjing Atpio Instrument Manufacturing Co、Ltd.)を用いて1500Wの出力で5分間処理した。家庭用電子レンジ(700w)で30秒間という短時間、マイクロ波により処理した後、全ての材料を熱分解し、ガス化した;自動車用タイヤの断片については、1つのピンチに押しつぶされた黒色物質のみが残存し;スチレン-ブタジエンゴムおよびエチレン-プロピレンゴムサンプルについては、残渣は残存しなかった。
【0141】
多孔質複合材料によって構成されるキャビティ内への熱分解される材料の配置は、特に、以下のように操作された:最初に、多孔質複合材料の一部を石英反応器の底部および周囲に配置して、上方開口部を有するキャビティを形成し、次いで、材料をキャビティ内に配置し、最後に、材料の上部を残りの多孔質複合材料で覆った。
【0142】
実施例2~14で得られた多孔質複合材料を用いて、上記工程と同様の実験を行ったところ、同様の実験現象および結果が得られた。
【0143】
[比較例6]
スチレン-ブタジエンゴム試料0.5gを炭化ケイ素粉末(98.5%、Sinopharm Chemical Reagent Beijing Co、Ltd.)1g上に置き、窒素で保護した後、家庭用電子レンジ(700w)中で30秒間、高出力マイクロ波によって処理した。マイクロ波処理プロセスの間、スパークは全くなかった。マイクロ波処理後、スチレンブタジエンゴムサンプルは変化せず、石英るつぼの底部のみがわずかに温まっていた。
【0144】
[実施例25]
実施例1で得られた多孔質複合材料1gに、それぞれ0.5gの自動車用タイヤ(Hankook)破片、スチレンブタジエンゴム(Beijing Rubber Products Factory)、エチレンプロピレンゴム(Beijing Rubber Products Factory)サンプルを載せ、窒素保護後、家庭用電子レンジ(700w)で30秒間、高出力マイクロ波により熱分解し、クロマトグラフィー分析を行った。CO、CO2以外の主成分を表5-1、5-2、5-3に示す。
【0145】
上記と同様の工程により、実施例6で得られたサンプル30gを用い、マイクロ波熱分解反応器を用いて、自動車タイヤ(Hankook)断片、スチレン-ブタジエンゴム(Beijing Rubber Products Factory)及びエチレン-プロピレンゴム(Beijing Rubber Products Factory)のサンプル50gを、それぞれ1500Wの出力で15分間熱分解し、得られたガスをクロマトグラフィー分析に供した。CO、CO2以外の主成分を表5-4、5-5、5-6に示す。
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
<炭素繊維複合材料のマイクロ波による熱分解>:
[実施例26]
実施例1で得られた多孔質複合材料1gの上に炭素繊維強化エポキシ樹脂複合材料(長州華田繊維複合材料(株))2gを載せ、家庭用電子レンジ(700w)で高出力マイクロ波による熱分解を40秒間行った。炭素繊維複合材を取り出し、秤量したところ、重量ロスが見られ、炭素繊維は容易に剥離することができた。マイクロ波処理中、活発なアーク放電現象を観測した。多孔質複合材料は、マイクロ波中で電気アークを発生させ、それによって高温を急速に発生させ、材料に熱を伝達して材料を急速に熱分解した。
【0153】
実施例1で得られた、マイクロ波中でアークを発生させる多孔質複合材料30gからなるキャビティ内に、炭素繊維強化エポキシ樹脂複合材料(長州華田繊維複合材料(株))50gを入れ、窒素保護後、マイクロ波熱分解反応器(XOLJ-2000N、Nanjing Atpio Instrument Manufacturing Co、Ltd.)を用いて、1500Wの電気で5分間処理した。炭素繊維複合材を取り出し、秤量したところ、重量ロスが見られ、不織布から炭素繊維を容易に剥離することができた。
【0154】
マイクロ波中で電気アークを発生させる多孔質複合材料で構成されるキャビティ内への熱分解される材料の配置は、具体的には以下のように操作された。まず、マイクロ波で電気アークを発生させた多孔質複合材料の一部を、石英反応器の底部および周囲に配置して、上方開口部を有するキャビティを形成する。次に、材料をキャビティ内に配置する。最後に、材料の頂部を残りの多孔質複合材料で覆う。
【0155】
実施例2~14で得られた試料を用いて、上記工程と同様の実験を行い、同様の実験現象および結果を得た。実施例2~14で得られた全ての多孔質複合材料はマイクロ波中で電気アークを発生させることができ、それによって、高温を急速に発生させ、それを材料に移動させて材料を急速に熱分解することができた。
【0156】
[比較例7]
炭化ケイ素粉末(98.5%、Sinopharm Chemical Reagent Beijing Co、Ltd.)1gの上に炭素繊維強化エポキシ樹脂複合材料(Changzhou Huatan Fiber Composite Co、Ltd.)2gを置き、窒素保護後、家庭用電子レンジ(700w)で30秒間高出力マイクロ波処理した。マイクロ波処理プロセスの間、スパークは全くなかった。マイクロ波処理後、材料は変化せず、石英るつぼの底部のみがわずかに温まっていた。
【0157】
[実施例27]
実施例1で得られた、マイクロ波でアークを発生させた多孔質複合材料1gの上に炭素繊維強化エポキシ樹脂複合材料(長州華田繊維複合材料(株))2gを載せ、家庭用電子レンジ(700w)で、高出力マイクロ波による熱分解を40秒間行った。その後、炭素繊維複合材料を取り出した。秤量後、36%の重量ロスが見られ、カーボンファイバーは不織布から容易に剥がすことができた。採取したガスをクロマトグラフィー分析に供し、検出された主成分を表6に示す。
【0158】
実施例6で得られた、マイクロ波中でアークを発生させた多孔質複合材料30gからなるキャビティ内に、炭素繊維強化ポリプロピレン複合材料(長州華田繊維複合材料(株))30gを入れ、窒素保護後、マイクロ波熱分解反応器(XOLJ-2000N、Nanjing Atpio Instrument Manufacturing Co、Ltd.)を用いて、1500Wの出力で5分間処理した。秤量後、38%の重量ロスが見られ、カーボンファイバーは不織布から容易に剥がすことができた。採取したガスをクロマトグラフィー分析に供し、検出された主成分を表6に示す。
【0159】
実施例7で得られた、マイクロ波中でアークを発生させる多孔質複合材料30gからなるキャビティ内に、炭素繊維強化ナイロン複合材料(長州華田繊維複合材料(株))50gを配置し、窒素保護後、マイクロ波熱分解反応器(XOLJ-2000N、南京熱器具製造(株))を用いて2000Wの出力で10分間処理した。秤量後、39%の重量低下が見られ、カーボンファイバーは不織布から容易に剥がすことができた。採取したガスをクロマトグラフィー分析に供し、検出された主成分を表6に示す。
【0160】
マイクロ波で電気アークを発生させる多孔質複合材料で構成されるキャビティ内への材料の配置は、具体的には以下のように操作した。まず、マイクロ波で電気アークを発生させた多孔質複合材料の一部を石英反応器の底部および周囲に配置して、上方開口部を有するキャビティを形成する。次に、材料をキャビティ内に配置する。最後に、材料の頂部を残りの多孔質複合材料で覆った。
【0161】
【0162】
<回路基板のマイクロ波による熱分解>:
以下の実施例において、収集されたガスは、以下のようにクロマトグラフィー分析された:熱分解後に収集されたガス生成物は、ASTM D1945-14法に従って、精製ガス分析器(HP Agilent 7890 A、1つのFIDおよび2つのTCD(熱伝導率検出器)を含む3つのチャネルで構成される)を使用して分析された。炭化水素をFIDチャネル上で分析した。窒素キャリアガスを使用する1つのTCDを使用して、水素含有量を決定したが、これは水素キャリアガスとヘリウムキャリアガスとの間に伝導率のわずかな差があったからである。CO、CO2、N2、およびO2の検出には、ヘリウムをキャリアガスとして使用する他のTCDを使用した。定量分析のために、応答係数を、RGA(精製ガス分析)較正ガス標準を使用することによって決定した。
【0163】
[実施例28]
実施例1で得られた多孔質複合材50gで構成されるキャビティ内に、廃回路基板(廃回路基板は面積約1cm2の不規則な小片に予め破砕しておいた;回路基板を廃コンピュータマザーボードから分解した、ブランドギガバイト)10gを入れ、全体をマイクロ波熱分解反応器(Qingdao Makewave Instrument Manufacturing Co、Ltd.、model MKX-R1C1B)に入れ、窒素で保護し、マイクロ波熱分解反応器で、900Wの出力で5分間処理した。多孔質複合材料は、マイクロ波中で電気アークを発生させ、それによって急速に高温を発生させ、それを材料に移して材料を急速に熱分解した。回収したガス成分をガスクロマトグラフィー分析に供した。
【0164】
熱分解ガス生成物の主成分を表7-1に示す。反応終了後の固体残渣の質量は、緩い構造で分離しやすい金属成分、ガラス繊維混合物等を主成分とする非金属成分を含めて、熱分解前の30%であった。単純な粉砕の後、その中の金属部品および非金属部品(主にガラス繊維)を分離し、回収することができた。
【0165】
多孔質複合材料で構成されるキャビティ内への、熱分解される回路基板の配置は、具体的には以下のように操作された。まず、多孔質複合材料の一部を石英反応器の内部に配置し、多孔質複合材料を順に配置して、上方に開口を有する中空キャビティを形成する。その後、キャビティ内に廃回路基板を入れる。最後に、材料の頂部を残りの多孔質複合材料で覆った。
【0166】
実施例2~14で得られた試料を用いて、上記工程と同様の実験を行い、同様の実験現象および結果を得た。反応終了後の固体残渣の質量は、熱分解前の約28~35%であった。実施例2~14で得られた全ての多孔質複合材料は、マイクロ波場で電気アークを発生させることができ、それによって高温を急速に発生させ、それを材料に移して材料を急速に熱分解することができた。
【0167】
[比較例8]
廃回路基板10gと炭化ケイ素粉末50g(98.5%、Sinopharm Chemical Reagent Beijing Co、Ltd.)を均一に混合した後、石英反応槽に入れ、マイクロ波反応器(MKX-R1C1B、Qingdao Makewave Instrument Manufacturing Co、Ltd.)に入れ、窒素で保護した後、マイクロ波熱分解反応器で、900Wの出力で5分間処理した。マイクロ波処理中にスパークは全くなく、廃回路基板はマイクロ波処理後も変化せず、石英反応タンクの底部のみわずかに温まった。
【0168】
[実施例29]
以下のパラメーターを除いて、他のパラメーターおよび工程は、実施例28と同じであった:
廃回路基板10および実施例6で得られた、マイクロ波中で電気アークを発生させた多層複合材料30gを均一に混合し、水晶反応槽に置き、その後全体をマイクロ波熱分解反応器に置き、窒素で保護した後、1,200Wの出力で10分間、マイクロ波熱分解反応器で処理した。多孔質複合材料は、マイクロ波中で電気アークを発生させ、それによって急速に高温を発生させ、それを材料に移して材料を急速に熱分解した。回収したガス成分をガスクロマトグラフィー分析に供した。熱分解ガス生成物の主成分を表7-2に示す。反応終了後の固体残渣の質量は、熱分解前の32%であった。また、金属と基板とは緩い構造を有しており、単純な粉砕により、金属と非金属部品とを分離して回収することができた。
【0169】
[実施例30]
以下のパラメーターを除いて、他のパラメーターおよび工程は、実施例28と同じであった:
実施例2で得られた、マイクロ波中でアークを発生させた多孔質複合材料15gと、廃回路基板10gとを均一に混合し、石英反応槽に入れた後、全体をマイクロ波熱分解反応器に入れ、窒素で保護した後、マイクロ波熱分解反応器で、900Wの出力で20分間処理した。多孔質複合材料は、マイクロ波中で電気アークを発生させ、それによって急速に高温を発生させ、それを材料に移して材料を急速に熱分解した。回収したガス成分をガスクロマトグラフィー分析に供した。熱分解ガス生成物の主成分を表7-3に示す。反応終了後の固体残渣の質量は、熱分解前の30%であった。また、金属と基板とは緩い構造を有しており、単純な粉砕により、金属と非金属部品とを分離して回収することができた。
【0170】
[実施例31]
以下のパラメーターを除いて、他のパラメーターおよび工程は、実施例28と同じであった:
実施例11で得られた、マイクロ波中でアークを発生させた多孔質複合材料60gと、廃回路基板2gとを均一に混合し、石英反応槽に入れた後、全体をマイクロ波熱分解反応器に入れ、窒素保護後、マイクロ波熱分解反応器で、900Wの出力で5分間処理した。多孔質複合材料は、マイクロ波中で電気アークを発生させ、それによって急速に高温を発生させ、それを材料に移して材料を急速に熱分解した。回収したガス成分をガスクロマトグラフィー分析に供した。熱分解ガス生成物の主成分を表7-4に示す。反応終了後の固体残渣の質量は、熱分解前の30%であった。また、金属と基板とは緩い構造を有しており、単純な粉砕により、金属と非金属部品とを分離して回収することができた。
【0171】
[実施例32]
以下のパラメーターを除いて、他のパラメーターおよび工程は、実施例28と同じであった:
実施例8で得られた、マイクロ波で発生した電気アーク内の多層複合材料5gと、廃回路基板20gとを均一に混合し、水晶反応槽に置いた後、全体をマイクロ波熱分解反応器に置き、窒素で保護後、マイクロ波熱分解反応器で1000Wの出力で30分間処理した。多孔質複合材料は、マイクロ波中で電気アークを発生させ、それによって急速に高温を発生させ、それを材料に移して材料を急速に熱分解した。回収したガス成分をガスクロマトグラフィー分析に供した。熱分解ガス生成物の主成分を表7-5に示す。反応終了後の固体残渣の質量は、熱分解前の31%であった。また、金属と基板とは緩い構造を有しており、単純な粉砕により、金属と非金属部品とを分離して回収することができた。
【0172】
【0173】
【0174】
【0175】
【0176】
【0177】
表中のデータから、熱分解生成物が比較的高い割合の水素を含み、従って、これを集めて燃料として使用することができることも分かった。